(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(54)【発明の名称】連続チョクラルスキー法を用いる単結晶シリコンインゴットの成長方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20220615BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C30B29/06 502J
C30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561639
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(85)【翻訳文提出日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 US2020027953
(87)【国際公開番号】W WO2020214531
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン,カリシマ マリー
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジェウ
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EB01
4G077FH04
4G077GA01
4G077GA05
4G077HA12
4G077PF17
(57)【要約】
連続チョクラルスキー法による単結晶シリコンインゴットの成長方法が開示される。融液深さおよび熱条件は、シリコン融液が消費されるにつれて、シリコン融液が連続的に補充されるために成長中に一定であり、ルツボ位置は固定される。臨界v/Gはホットゾーン構成によって決定され、成長中の融液へのシリコンの連続的な補充は、インゴットの本体の実質的部分の成長中に臨界v/Gと一致する一定の引上速度にてインゴットの成長を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続チョクラルスキー法による単結晶シリコンインゴットの製造方法であって、
多結晶シリコンの初期投入量をルツボに加えること;
前記多結晶シリコンの初期投入量を含むルツボを加熱して、シリコン融液をルツボにて形成させること、ここでは、前記シリコン融液は、溶融シリコンの初期ボリュームを含み、かつ初期の融液高さレベルを有する;
シリコン種結晶をシリコン融液と接触させること;
前記シリコン種結晶を引いて、ネック部を成長させること、ここでは、前記シリコン種結晶は前記ネック部の成長中にネック部引上速度にて引かれる;
前記シリコン種結晶を引いて、前記ネック部に隣接する外側に広がる種コーンを成長させること、ここでは、前記シリコン種結晶は前記外側に広がる種コーンの成長中に種コーン引上速度にて引かれる;および
前記シリコン種結晶を引いて、外側に広がる種コーンに隣接する前記単結晶シリコンインゴットの本体を成長させること、ここでは、前記シリコン融液は、前記単結晶シリコンインゴットの本体の成長中に、あるボリュームの溶融シリコンおよび融液高さレベルを含む、
を含み、
前記単結晶シリコンインゴットの本体は、初期の可変的な本体引上速度および一定の本体引上速度にて成長させ、前記単結晶シリコンインゴットの本体は、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの約20%未満について、初期の可変的な本体引上速度で成長され、かつ、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約30%の成長について、一定の本体引上速度で成長される;および
さらに、多結晶をルツボへと連続供給し、それにより、前記単結晶シリコンインゴットの本体の成長中に、ルツボにおいて溶融シリコンのボリュームおよび融液高さレベルを補充する、前記製造方法。
【請求項2】
磁界が、前記単結晶シリコンインゴットの本体の成長中に前記シリコン融液に印加される、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
水平磁界が、前記単結晶シリコンインゴットの本体の成長中に前記シリコン融液に印加される、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
先端磁界が、前記単結晶シリコンインゴットの本体の成長中に前記シリコン融液に印加される、請求項2記載の製造方法。
【請求項5】
印加された前記磁界が、前記単結晶シリコンインゴットの本体の成長の少なくとも約70%の間、実質的に一定の融液/固体界面プロファイルを維持する、請求項2記載の製造方法。
【請求項6】
印加された前記磁界が、前記単結晶シリコンインゴットの本体の成長の約70%~約90%の間、実質的に一定の融液/固体界面プロファイルを維持する、請求項2記載の製造方法。
【請求項7】
前記単結晶シリコンインゴットの本体が、少なくとも約1000ミリメートル長、少なくとも1400ミリメートル長、または少なくとも1500ミリメートル長である、請求項1~6のいずれか1記載の製造方法。
【請求項8】
前記単結晶シリコンインゴットの本体が、少なくとも2000ミリメートル長、少なくとも2200ミリメートル長、少なくとも約3000ミリメートル長、または少なくとも約4000ミリメートル長である、請求項1~6のいずれか1記載の製造方法。
【請求項9】
前記単結晶シリコンインゴットの本体の直径が、少なくとも約150ミリメートル、または少なくとも約200ミリメートルである、請求項1~8のいずれか1記載の製造方法。
【請求項10】
前記単結晶シリコンインゴットの本体の直径が、少なくとも約300ミリメートル、または少なくとも約450ミリメートルである、請求項1~8のいずれか1記載の方法
【請求項11】
前記一定の本体引上速度が、約0.4mm/分~約0.8mm/分、約0.4mm/分~約0.7mm/分、または約0.4mm/分~約0.65mm/分である、請求項1~10のいずれか1記載の製造方法。
【請求項12】
前記単結晶シリコンインゴットの本体が、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの約5%~約20%について、初期の可変的な本体引上速度で成長される、請求項1~11のいずれか1記載の製造方法。
【請求項13】
前記単結晶シリコンインゴットの本体が、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約50%の成長中に一定の本体引上速度で成長される、請求項1~12のいずれか1記載の製造方法。
【請求項14】
前記単結晶シリコンインゴットの本体が、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約70%の成長中に一定の本体引上速度で成長される、請求項1~12のいずれか1記載の製造方法。
【請求項15】
前記単結晶シリコンインゴットの本体が、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約80%の成長中に一定の本体引上速度で成長される、請求項1~12のいずれか1記載の製造方法。
【請求項16】
前記単結晶シリコンインゴットの本体が、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約90%の成長中に一定の本体引上速度で成長される、請求項1~12のいずれか1記載の製造方法。
【請求項17】
前記本体引上速度が、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも70%にわたり、凝集した点欠陥を回避するのに十分な一定の臨界引上速度である、請求項1~16のいずれか1記載の製造方法。
【請求項18】
前記本体引上速度が、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも90%にわたり、凝集した点欠陥を回避するのに十分な一定の臨界引上速度である、請求項1~16のいずれか1記載の製造方法。
【請求項19】
溶融シリコンのボリュームが、前記単結晶シリコンインゴットの本体の少なくとも約90%の成長中に、約1.0体積%以下変化する、請求項1~18のいずれか1記載の製造方法。
【請求項20】
溶融シリコンのボリュームが、前記単結晶シリコンインゴットの本体の少なくとも約90%の成長中に、約0.5体積%以下変化する、請求項1~18のいずれか1記載の製造方法。
【請求項21】
溶融シリコンのボリュームが、前記単結晶シリコンインゴットの本体の少なくとも約90%の成長中に、約0.1体積%以下変化する、請求項1~18のいずれか1記載の製造方法。
【請求項22】
前記融液高さレベルが、前記単結晶シリコンインゴットの本体の少なくとも約90%の成長中に、約+/-0.5ミリメートル未満変化する、請求項1~18のいずれか1記載の製造方法。
【請求項23】
前記単結晶シリコンインゴットの本体が、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約70%にわたる完全シリコンを含む、請求項1~22のいずれか1記載の製造方法。
【請求項24】
前記単結晶シリコンインゴットの本体が、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約80%にわたる完全シリコンを含む、請求項1~22のいずれか1記載の製造方法。
【請求項25】
前記単結晶シリコンインゴットの本体が、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約90%にわたる完全シリコンを含む、請求項1~22のいずれか1記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年4月18日付けで出願された米国仮出願第62/835,735号の優先権を主張し、その全体が記載されるかのように、その開示を出典明示して本願明細書の一部とみなす。
【0002】
(開示の分野)
本開示の分野は、連続チョクラルスキー法を用いる結晶シリコンインゴットの成長方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
半導体電子部品の製作の大部分のプロセスについての出発物質である単結晶シリコンは、一般的にチョクラルスキー(「Cz」)法によって製造される。この方法において、多結晶シリコン(「ポリシリコン」)は、ルツボに投入し溶融され、種結晶を溶融シリコンと接触させて、単結晶は緩徐抽出(または、スロー取出し;slow extraction)によって成長(または、育成;grawn)させる。ネックの形成が完了した後、結晶の直径は、例えば、所望または目標の直径に到達するまで引上速度(pulling rate)および/または溶融温度を減少させることにより拡張される。次いで、およそ一定の直径を有する結晶の円筒状本体は、溶融レベルの減少を補いつつ、引上速度(pull rate)および溶融温度をコントロールすることにより成長させる。溶融シリコンにつき成長プロセスの終わり付近だか、ルツボが空になる前に、結晶直径を典型的に徐々に低下させて、エンドコーン(end-cone)の形態にてテール端(tail end)を形成させる。エンドコーンは、通常、結晶引上速度およびルツボに供給された熱量を増加させることにより形成される。次いで、直径が十分に小さくなった場合、結晶は融液(または融解物、または融成物;melt)から分離される。
【0004】
チョクラルスキー成長技術は、バッチ・チョクラルスキー法および連続チョクラルスキー法を含む。バッチCZにおいて、単一の多結晶投入量は、ルツボに充填(load)され、単一投入量は、単結晶シリコンインゴットを成長させるのに十分であるべきであり、その後、ルツボはシリコン融液を実質的に枯渇する。連続チョクラルスキー(CCZ)成長において、多結晶シリコンは、溶融シリコンに連続的または周期的に加えて、成長プロセス中に融液を補充でき、その結果、複数のインゴットを成長プロセス中に単一のルツボから引き上げることができる。
【0005】
CCZプロセスを実施するために、従来のバッチ・チョクラルスキー成長チャンバおよび装置を改変して、成長しているインゴットの特性に悪影響することなく、連続的または半連続的な方法で融液に付加的な多結晶シリコンを供給するための手段を含める。種結晶を融液から連続的に成長させるので、粒状多結晶シリコンのごとき固体多結晶シリコンを融液に加えて、融液を補充する。融液に加えられる付加的な固体多結晶シリコンの供給速度は、プロセス・パラメーターを維持するように典型的にコントロールされる。同時の結晶成長に対するこの補充活動(replenishing activity)の悪影響を低減するために、従来の石英ルツボをしばしば変更して、シリコンインゴットが引き上げられる内側成長ゾーンに加えて、さらなる材料が送達される、外側または環状の融解ゾーンを提供する。これらのゾーンは、相互に流体連通している。
【0006】
近代のマイクロ電子デバイスの連続的収縮サイズは、シリコン基板の品質に対する挑戦的な制限(challenging restrictions)を課し、これは、成長微小欠陥(grown-in microdefect)のサイズおよび分布によって実質的に決定される。チョクラルスキー(CZ)プロセスおよびフロート・ゾーン(または、浮遊帯溶融;Float Zone)(FZ)プロセスによって成長したシリコン結晶中で形成された大部分の微小欠陥は、シリコン-空孔および自己格子間(または、自己格子間原子;self-interstitials)(または単に、格子間)の固有(または、真性;intrinsic)点欠陥の凝集体(または塊成物;agglomerates)である。
【0007】
一連の研究は、格子間凝集体が、2つの形態、すなわち、Bスワール(swirl)欠陥(またはB欠陥)と命名された球状格子間クラスター、およびAスワール欠陥(またはA欠陥)と命名された転位ループで存在することを確立した。その後、D欠陥として知られる後に発見された空孔凝集体(vacancy agglomerates)が8面空間(または、ボイド;vioid)であると確認された。ヴォロンコフ(Voronkov)は、結晶成長条件に基づいてシリコン結晶中で観察された微小欠陥分布の広く受け入れられた説明を提供した。ヴォロンコのモデルまたは理論によれば、融液/結晶界面の近くの温度場は、点欠陥の再結合を駆動し、(点欠陥がそれぞれの平衡濃度で存在する)融液/結晶界面から、結晶バルクへそれらの拡散に駆動力を供給する。拡散および対流の双方による点欠陥の輸送間の相互作用およびそれらの再結合は、再結合長(recombination length)と命名された界面からの短距離を越えた点欠陥濃度を確立する。典型的には、過剰点欠陥濃度と命名された、再結合長(recombination length)を越えた、空孔濃度および格子間濃度の間の差は、実質的に結晶の側面から離れて一定のままである。急速に引上げられた結晶において、再結合長を越えたそれらの拡散による点欠陥の空間的再分布は、一般的に重要ではなく―点欠陥のシンク(sink)またはソースとして働く結晶の側面に近い領域の例外では重要である。したがって、再結合長を越えた過剰点欠陥濃度がポジティブであるならば、空孔は過剰のままであり、凝集して、より低温にてD欠陥を形成する。過剰点欠陥濃度がネガティブであるならば、格子間(または、格子間原子;interstitial)は優位な点欠陥のままであり、凝集して、A欠陥およびB欠陥を形成する。過剰点欠陥濃度が、いくつかの検出閾値未満であるならば、検出可能な微小欠陥は形成されない。かくして、典型的には、成長微小欠陥のタイプは、再結合長を越えて確立された過剰点欠陥濃度によって簡単に決定される。過剰点欠陥濃度を確立するプロセスは、初期取込みと命名され、優位な点欠陥種は、取り込まれた優位な点欠陥と命名される。取り込まれた点欠陥のタイプは、結晶引上速度(v)-対-界面(または、インターフェース;interface)の近くに軸方向の温度勾配の大きさ(G)の比によって決定される。より高いv/Gでは、界面での空孔濃度が格子間濃度より高いので、点欠陥の対流はそれらの拡散を支配し、空孔は取り込まれた優位な点欠陥のままである。より低いv/Gでは、拡散は対流を支配し、優位な点ポイントとして速く拡散する格子間の取り込みを可能にする。その臨界値に近いv/Gでは、双方の点欠陥は、非常に低い比較可能な濃度で組み込まれ、相互に互いに消滅させ合い、かくして、より低温にていずれの微小欠陥の潜在的形成も抑制する。観察された空間の微小欠陥分布は、Gの半径方向における不均一性およびvの軸方向の変化によって引き起こされたv/Gの変化により、典型的に説明することができる。半径方向の微小欠陥分布の著しい特徴は酸化物粒子であり、これらの酸化物粒子は、比較的より低い取り込まれた空孔濃度の領域において、臨界v/Gをわずかに上回るv/Gの小さな範囲での空孔との酸素の相互作用を介して形成される。これらの粒子は、OSF(酸化誘発積層欠陥(oxidation-induced stacking faults))リングとしての熱酸化によって明らかにすることができる狭い空間帯を形成する。全くしばしば、OSFリングは、V/I境界として知られる空孔優位および格子間優位の隣接する結晶領域間の境界を示す。
【0008】
しかしながら、多数の近年のプロセスにおけるより低速度で成長させたCZ結晶中の微小欠陥分布は、結晶の側面によって誘発された拡散を含む結晶バルク中の点欠陥の拡散によって影響される。したがって、CZ結晶中の微小欠陥分布の正確な定量化は、好ましくは、2次元の点欠陥拡散を軸方向および半径方向の双方で組み込む。点欠陥濃度場(field)だけの定量化は、形成された微小欠陥のタイプがそれによって直接的に決定されるので、CZ結晶中の微小欠陥分布を定性的に捕捉できる。しかしながら、微小欠陥分布のより正確な定量化について、点欠陥の凝集を捕捉することが必要である。従来、微小欠陥分布は、点欠陥の初期の取込みおよび微小欠陥の引き続いての形成の分離により定量化される。このアプローチは、より高温の領域(微小欠陥密度が無視できる場所)からより低温の領域(微小欠陥がより高密度で存在し、点欠陥を消費する場所)まで核生成領域の近くの優位な点欠陥の拡散を無視する。あるいは、結晶中の各位置での微小欠陥集団のサイズ分布の予測に基づいた正確な数値シミュレーションは、数値的に高価である。
【0009】
空孔および格子間優位の材料の間の移行は、v/Gの臨界値にて生じ、それは、現在、約2.5×10-5cm2/sKであるようである。v/Gの値が臨界値を超過するならば、空孔は優位な固有点欠陥であり、空孔の濃度は、v/Gの増加につれて増加する。v/Gの値が臨界値未満であるならば、シリコン自己格子間は、優位な固有点欠陥であり、その濃度はv/Gの減少につれて増加する。したがって、成長速度(vに影響する)ならびにホットゾーン構成(Gに影響する)のごときプロセス条件をコントロールして、単結晶シリコン内の固有点欠陥が優位に空孔(v/Gは臨界値より一般的に大きい)または自己格子間(v/Gは一般的に臨界値未満である)になるかどうかを判断できる。
【0010】
一般的には、凝集した欠陥形成は2工程で生じる。最初に、所与の温度にて過飽和されている固有点欠陥の結果である「核生成」なる欠陥が生じ;この「核生成閾値」温度を超えると、固有点欠陥はシリコン格子において可溶のままである。凝集された固有点欠陥についての核生成温度は、約1000℃より大きい。
【0011】
一旦、この「核生成閾値」温度に到達すれば、固有点欠陥は凝集する;すなわち、シリコン格子の「固溶体」からのこれらの点欠陥の析出が生じる。
それらが存在するインゴットの部分の温度が第2の閾値温度(すなわち、「拡散閾値」)を超えて維持される限り、固有点欠陥はシリコン格子を介して拡散し続けるであろう。この「拡散閾値」温度未満で、固有点欠陥は、商業上の実際的な期間内でもはや移動的ではない。
【0012】
インゴットが「拡散閾値」温度を超えたままである間は、シリコン格子を介して、空孔または格子間の固有点欠陥は、凝集した空孔欠陥または格子間欠陥がそれぞれ、既に存在する部位へ拡散し、所与の凝集した欠陥にサイズを増させる。これらの凝集した欠陥部位が「シンク」として実質的に働くので、成長が生じ、凝集のより有利なエネルギー状態のために固有点欠陥を引きつけて集める。
【0013】
空孔型欠陥は、D欠陥、フローパターン欠陥(FPD)、ゲート酸化膜完全性(GOI)欠陥、結晶起因粒子(COP)欠陥として観察可能なかかる結晶欠陥、ならびに走査赤外線鏡検法およびレーザー走査断層撮影法のごとき赤外光散乱技術によって観察される、あるクラスのバルク欠陥の起原であると認識されている。また、過剰空孔の領域に存在するのは、酸素または二酸化ケイ素のクラスターである。これらのクラスターのいくつかは、小さく、比較的歪がないままであり、かかるシリコンから調製されたデバイスの大多数に害を実質的にもたらさない。これらのクラスターのいくつかは、リング酸化誘起積層欠陥(OISF)の核として作用するのに十分に大きいものである。この特定の欠陥は、過剰空孔の存在によって触媒された従前に核が形成された酸素凝集体によって促進されることが推測されている。酸化物クラスターは、適度な空孔濃度の存在下で1000℃未満のCZ成長中で主として形成される。
【0014】
自己格子間に関連する欠陥は、余り研究されていない。それらは格子間タイプの転位ループまたはネットワークの低密度であると一般的に見なされている。かかる欠陥は、重要なウェーハ性能基準であるゲート酸化膜完全性欠如(failure)の原因ではないが、それらは漏電電流問題に通常関連した、他のタイプのデバイス故障の原因であると広く認識されている。
【0015】
この点に関して、概して言えば、シリコン格子中の格子間形態の酸素が、固有点欠陥ではなくシリコンの点欠陥であると典型的に考えられるが、シリコン格子空孔およびシリコン自己格子間(または、単に格子間)が典型的に固有点欠陥であると典型的に考えられることが注目されるべきである。したがって、実質的にすべての微小欠陥は、凝集した点欠陥と一般的に見なし得るが、一方、D欠陥(またはボイド;void)、ならびにA欠陥およびB欠陥(すなわち、格子間欠陥)は、より詳細には、凝集した固有点欠陥と見なし得る。酸素クラスターは空孔の吸収により形成され;かくして、酸素クラスターは空孔および酸素の双方の凝集体と見なすことができる。
【0016】
さらに、チョクラルスキーシリコン中のかかる空孔および自己格子間の凝集された点欠陥の密度が、歴史上、約1×103/cm3~約1×107/cm3の範囲内にあり、一方、酸素クラスターの密度が、およそ1×108/cm3~1×1010/cm3で変化することが注目されるべきである。したがって、凝集した固有点欠陥は、かかる欠陥が複雑な高度集積回路の生成において、単結晶シリコン材料の生産力(yield potential)にかなり強い衝撃を与えかねないために、デバイス製造者に重要性を急速に増大させるものである。
【0017】
前記に照らして、多数の適用において、引き続いてシリコンウェーハにスライスされるシリコン結晶の一部またはすべてが、これらの凝集した固有点欠陥を実質的に含まないことが好ましい。現在まで、実質的に欠陥を含まないシリコン結晶を成長させるためのいくつかのアプローチが報告されてきている。概して言えば、これらのアプローチのすべては、成長しているCZ単結晶シリコン結晶中に存在する初期のタイプおよび濃度の固有点欠陥を決定するために、v/G比をコントロールすることを含む。しかしながら、加えて、かかるアプローチは、延長された拡散時間がその中の固有点欠陥の濃度を抑制するのを可能にするために、結晶の引き続いての熱履歴をコントロールし、かくして、その結晶の一部またはすべてにおける凝集した固有点欠陥の形成を制限または回避することを含み得る。(例えば、特許文献1~6ご参照;これらの全内容をここに出典明示して本明細書の一部みなす。)しかしながら、別法として、かかるアプローチは、急速に冷却されたシリコン(RCS)成長プロセスを含むこともでき、その一部における凝集した固有点欠陥の形成をコントロールするために、次いで、結晶の引き続いての熱履歴をコントロールして、標的核生成温度を介して結晶の少なくとも一部を急速に冷却し得る。また、これらのアプローチの一方または双方は、成長した結晶の少なくとも一部が長期間の核生成温度を超えることを維持するのを可能にして、標的核生成温度を介して結晶のこの一部を急速に冷却するのに先立ち、固有点欠陥の濃度を低減し、かくして、その中の凝集した固有点欠陥の形成を実質的に制限または回避し得る。(例えば、特許文献7ご参照、その全開示をここに出典明示して本明細書の一部みなす。)依然としてさらに、方法は、凝固されたインゴットの冷却速度、および界面(G)付近の軸方向の温度勾配の半径方向の変化の同時のコントロールにより、インゴットの中心から端縁(edge)の点欠陥の凝集を低下または消失させるように開発されてきている。(例えば、特許文献8ご参照、その全開示をここに出典明示して本明細書の一部みなす。)
【0018】
凝集した点欠陥、例えば、結晶起因ピット(pits)(COP)の欠如につき製造者の要件を満たす研磨(または、ポリッシュド;polished)シリコンウェーハは、中性シリコン(Neutral Silicon)または完全シリコンといい得る。完全シリコンウェーハは、例えば、より高いエピタクシアル堆積のウェーハに対する代替的な低コスト研磨ウェーハとして多数の半導体適用につき好ましい。過去20年間に、多数のシリコンウェーハ供給者が、市場内のコスト圧力に伝統的により敏感であったほとんどメモリー(DRAM/NAND/FLASH)市場への販売のために200mmおよび300mmの双方の直径の欠陥なしおよびCOPなしのウェーハ製品を開発してきた。
カスタマー適用デバイスノードが収縮したので、許容できる欠陥性についての工業規格は、光ポイント散乱(LLS)およびゲート酸化膜強度(GOI)の許容レベルの点からこの時間枠上で発展してきた。例えば、工業用COPフリーの仕様(または、スペック;specification)は、かつては0.12umサイズ未満にて数百未満であり得た。より現在の基準は、完全シリコンとして適格とするために0.026umサイズ以下で20未満のCOPを要求する。もう一つの例として、MOS型トランジスター中のGOIについての過去の基準は、≦8MV(Bモード)にて95%であった。現在、仕様は10~12MV(Dモード)にて99%まで移っている。この要求の上に、BMD密度(バルクの微小欠陥)およびBMDサイズ分布によって伝統的に測定されたウェーハを横切る改善された半径方向の酸素析出の必要性が、デバイス・リソグラフィ中にパターン形成されたオーバーレイに衝撃を与え得る加工またはゆがめ(processing or warp)中に基板スリップを回避するために、デバイスノードが収縮するので、必要とされる。これらの仕様(LLS、GOI、BMD均一性等)が厳しくなったので、欠陥およびCOPフリーシリコン成長のためのコントロール・ウィンドウはかなり収縮し、プロセスの結晶の処理量をかなり低下させてきた。これは、許容できるバンド構造(これはオペレーションのプロセス・ウィンドウに直接的に翻訳できる)が、仕様で経時的に変わったためである。
【0019】
このセクションは、読者に様々な態様の開示に関係し得る技術の様々な態様を伝えるように意図され、それらは、後記に記載および/または特許請求される。この議論は、本開示の様々な態様についてのよりよい理解を促すために読者に背景的な情報を提供する点で有用であると考えられる。したがって、これらの記載が、この見解において、先行技術の承認としてではなく読まれるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6,287,380号明細書
【特許文献2】米国特許第6,287,380号明細書
【特許文献3】米国特許第6,254,672号明細書
【特許文献4】米国特許第5,919,302号明細書
【特許文献5】米国特許第6,312,516号明細書
【特許文献6】米国特許第6,328,795号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0196587号
【特許文献8】米国特許第8,673,248号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
(要約)
本開示の1つの態様は、連続チョクラルスキー法による単結晶シリコンインゴットの製造方法に指向される。前記方法は、多結晶シリコンの初期投入量(または、初期装填量;initial charge)をルツボに加えること;前記多結晶シリコンの初期投入量を含むルツボを加熱して、シリコン融液をルツボにて形成させること、ここでは、前記シリコン融液は、溶融シリコンの初期ボリューム(または、量、または体積;volume)を含み、かつ初期の融液高さレベル(melt elevation level)を有する;シリコン種結晶をシリコン融液と接触させること;前記シリコン種結晶を引いて(または、引き上げて;withdraw)、ネック部を成長させること、ここでは、前記シリコン種結晶は前記ネック部の成長中にネック部引上速度にて引かれる;前記シリコン種結晶を引いて、前記ネック部に隣接する外側に広がる(または、外側にフレアを有する;outwardly flaring)種コーン(seed-cone)を成長させること、ここでは、前記シリコン種結晶は、前記外側に広がる種コーンの成長中に種コーン引上速度にて引かれる;および前記シリコン種結晶を引いて、外側に広がる種コーンに隣接する前記単結晶シリコンインゴットの本体(または、メインボディ;main body)を成長させること、ここでは、前記シリコン融液は、前記単結晶シリコンインゴットの本体の成長中に、あるボリュームの溶融シリコンおよび融液高さレベルを含む、を含み、前記単結晶シリコンインゴットの本体は、初期の可変的な(variable)本体引上速度および一定の本体引上速度にて成長させ、前記単結晶シリコンインゴットの本体は、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの約20%未満について、初期の可変的な本体引上速度で成長され、かつ、前記単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約30%の成長について、一定の本体引上速度で成長される;および、さらに、多結晶をルツボへと連続供給し、それにより、前記単結晶シリコンインゴットの本体の成長中に、ルツボにおいて溶融シリコンのボリュームおよび融液高さレベルを補充する。
【0022】
様々な精製は、本開示の前記態様に関連して注目された特徴につき存在する。また、さらなる特徴は、本開示の前記態様において同様に組み込み得る。これらの精製およびさらなる特徴は、個々にまたはいずれかの組合せで存在し得る。例えば、本開示の例示された具体例のいずれかに関連して後記に議論された様々な特徴は、本開示の前記態様のいずれかに、単独またはいずれかの組合せにおいて組み込み得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1A(早期のボディ成長)、1B(中間のボディ成長)および1C(後期のボディ成長)は、典型的なバッチ・チョクラルスキー法中に結晶長の関数として、融液ボリュームまたは深さ、およびルツボ位置を示す。
【
図2】
図2は、典型的なバッチCzプロセスによって成長されたインゴット中の十分な欠陥性コントロールを達成するのに必要とされる引上速度の一定の変化を示すグラフである。
【
図3】
図3は、磁界(または、磁場;magnetic field)の印加を含む典型的なバッチCzプロセスによって成長されたインゴット中で十分な欠陥性コントロールを達成するのに必要な引上速度プロファイル(または、形状、形態;profile)を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明方法による典型的な連続Czプロセスによって成長されたインゴット中で十分な欠陥性コントロールを達成するのに必要な引上速度プロファイルを示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明方法による典型的な連続Czプロセスに適している典型的なルツボ構成(または、配置;configuration)を示す。
【
図6】
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、本発明方法による典型的な連続Czプロセスの融液レベルおよびインゴット成長を示す。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、本発明方法による典型的な連続Czプロセスによってインゴットの成長中にシリコン融液に印加された磁界を示す。
【0024】
対応する参照文字は、図面の全体にわたって対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(詳細な説明)
本発明の文脈において、「完全シリコン」は、Perfect Silicon(登録商標)(SunEdison Semiconductor,Ltd.)のその基準を満たすかまたは超える条件下で成長されたチョクラルスキーで成長した単結晶シリコンインゴットからスライスされた単結晶シリコンウェーハをいう。これらの基準は、凝集した欠陥、DSOD(直接表面酸化物欠陥)、COP(結晶起因ピットまたは粒子)、D欠陥およびI欠陥等についての工業仕様を満たすかまたは超えるインゴットを含む。例えば、「完全シリコン」ウェーハは、検出できないFPD(Seccoエッチング技術によるフローパターン欠陥)およびDSOD(電気的ブレークダウン後の直接表面酸化物欠陥粒子カウント)、およびSeccoエッチング技術によるゼロI欠陥(A欠陥)により特徴付けされ得る。Seccoエッチ(または、エッチング;etch)は、シリコンの様々な結晶学的(100)、(111)および(110)平面中の転位および他の格子欠陥を適切に明らかにするために、アルカリ二クロム酸塩およびフッ化水素酸の希釈水溶液を適用することを含む。エッチは系統(小傾角粒界(low angle grain boundaries))および滑り線の双方をもたらす。本発明方法は、単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約70%にわたる、例えば、単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約80%にわたる、または単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約90%さえにわたる完全シリコンを含む単結晶シリコンインゴットの成長を可能にする。いくつかの具体例において、単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約70%にわたり、例えば、単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約80%にわたり、または単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約90%さえにわたり成長されたインゴットからスライスされたウェーハは、検出できないFPD(Seccoエッチング技術によるフローパターン欠陥)およびDSOD(電気的ブレークダウン後の直接表面酸化物欠陥粒子カウント)およびSeccoエッチングの技術によるゼロI欠陥(A欠陥)により特徴付けられる。いくつかの具体例において、単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約70%にわたり、例えば、単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約80%にわたり、または単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約90%さえにわたり成長されたインゴットからスライスされたウェーハは、≦8MV(Bモード)にて95%での、好ましくは10~12MV(Dモード)にて99%でのMOS型トランジスター中のGOIにより特徴付けられる。
【0026】
単結晶シリコンインゴットを成長させるための従来のバッチ・チョクラルスキー法において、結晶の融液/界面および熱的条件の双方は、インゴット成長中のシリコン融液の消費およびルツボ位置の変動性(または、可変性;variability)のためにインゴット長さの増加の関数として連続的に変化する。融液消耗(depletion)およびルツボの移動の描写を
図1に見出し得る。
図1A(早期のボディ成長)、1B(中間のボディ成長)および1C(後期のボディ成長)は、バッチCzプロセス中の結晶長の関数として融液レベルおよびルツボ高さを示す。融液条件、例えば、質量、高さレベルおよびルツボ位置が、バッチプロセス中に連続的に変化しているので、欠陥性を最小限にするのに必要なv/G比(成長速度V/軸方向の温度勾配G)は、結晶長を連続的に変化させ、結晶の品質を変える。所望の品質をプロセス・ウィンドウ内の仕様を満たすように維持するために、いくつかのパラメーターの連続制御調節が位置によって必要とされる。これらのパラメーターは、ルツボ回転速度(C/R)、種回転速度(S/R)、種リフト速度(S/L)、ヒーター出力、反射器高さ等を含む。
図2ご参照、これは典型的なバッチCzプロセスによって成長されたインゴット中で十分な欠陥性コントロールを達成するのに必要な引上速度の一定の変化を示すグラフである。三角形(---▲---)によって規定された線は、臨界v/G値を達成するための常に変化する臨界引上速度である。引上速度は、正方形(---■---)により示される上部臨界引上速度(「UCL」)、および菱形(---◆---)により示される下部臨界引上速度(「LCL」)内で変化でき、許容できる欠陥性コントロールを達成し得る。これらの3種の線は、完全シリコンを生成することができる引上速度を示す。上部および下部の引上速度境界内では、優位な固有点欠陥を有する完全シリコンを生成し得る。例えば、適用された引上速度が
図2(ならびに
図3および
図4)中の三角形および正方形で標識された線間でコントロールされる場合、空孔優位な(「Pv」)シリコンは生成され、適用された引上速度が
図2(また
図3および4)中の三角形および菱形で標識された線間でコントロールされる場合、格子間優位な(「Pi」)シリコンが生成される。
図2(ならびに
図3および
図4)に描かれた例において、早期および中間部分のインゴット成長において、「Pv」と標識されたインゴット断面積の表示によって示されるごとく、空孔優位な点欠陥を有する完全シリコンを成長し得る。
図2は、インゴットが中心から端縁まで優位な空孔であることを示す。
図2に示された例において、後期の成長において、インゴットは、空孔優位な点欠陥および格子間優位な点欠陥の領域により特徴付けされ、これは、「Pi」と標識された断面積領域中で表示される。例えば、全インゴットの半径未満の中心から半径方向の長さまで格子間優位なものであるインゴットが成長でき、それはインゴットの端縁まで空孔優位な材料のバンドにより囲まれている。依然として、後期の領域において、インゴットの断面積は、中心にある(in the center)空孔優位な材料を示し、これは、端縁で空孔優位な材料のもう一つのバンドに囲まれる。これらの描写は単に例示のためのものであり、本発明方法で限定するようには意図されない。完全シリコン、すなわち、検出できる凝集した点欠陥を含まないインゴットおよびそのライスされたウェーハは、部分的にインゴットの引上速度によって過剰点欠陥(空孔および格子間シリコン)の適当なコントロールに起因する。空孔および格子間のごとき固有点欠陥がチョクラルスキー法によって成長されたインゴットに生じる。かかる欠陥の存在は、シリコンが完全かどうかに関する衝撃を有さない。むしろ、完全シリコンは、COP、DSODおよびI欠陥のごとき凝集した点欠陥を含まないと特徴付けられる。
【0027】
また、
図2(ならびに
図3および
図4も)は、いずれかの結晶長での臨界v/Gの上限および下限外の引上速度の関数としてインゴットを生じ得る凝集した欠陥を示す。上部の臨界引上速度を超過する(v/Gが臨界v/Gより高い)ならば生じ得る欠陥は、DSOD(直接表面酸化物欠陥)またはCOP(結晶起因ピットまたは粒子)を含む。引上速度が下部臨界引上速度未満である(v/Gが臨界v/Gより低い)ならば生じる得る欠陥は、I-欠陥を含む。また、これらの欠陥が生じるバンドは、インゴット断面積に示される。優位な過剰点欠陥が空孔である領域において、空孔欠陥の凝集は、COP、Czシリコン結晶成長および冷却中の空孔の凝集および析出によるDSODのごときバルク欠陥を形成する。優位な過剰点欠陥が格子間シリコン原子である領域において、それらは凝集して、格子間シリコンの凝集/析出によるI欠陥のごときバルク欠陥を形成し、転位をパンチアウト(punch out)する。v/Gのいずれの小さな偏差も、空孔または格子間シリコン原子のいずれかの凝集によって欠陥を形成するであろう。
【0028】
磁界、例えば、水平または先端(cusp)の磁界を印加して、ルツボの内の融液流れパターン(または、融解フローパターン)を変更し、かつ結晶/融液界面の形状および高さのコントロールの増強を可能にでき、それにより、品質管理を高める。しかしながら、
図3に例示されるごとく、許容できる欠陥性コントロールを達成するために、依然として引上速度および他のパラメーターを変更しなければならない。
図3は、印加された磁界での典型的なバッチCzプロセスによって成長されたインゴットにおける十分な欠陥性コントロールを達成するのに必要な引上速度プロファイルを示すグラフである。三角形(---▲---)によって規定された線は、臨界v/G値を達成するための臨界引上速度であり、必要ならば、それは単結晶シリコンインゴットの成長中に連続的に変更される。引上速度は、正方形(---■---)により示される上部の臨界引上速度(「UCL」)、および菱形(---◆---)により示される下部の臨界引上速度(「LCL」)内で変化でき、依然として許容できる欠陥性コントロールを達成し得る。単結晶シリコンインゴットの断面積中の固有点欠陥および凝集した点欠陥の領域は、実質的に
図2の記載において上記されるものと同じである。
【0029】
本発明方法によれば、単結晶シリコンインゴットは、融液が消費されるにつれて、連続的に補充されるために、融液深さ(すなわち、溶融シリコンの高さレベル)および熱条件が、成長中に実質的に一定のままであることを可能にする条件下、連続チョクラルスキー(CCZ)法によって成長される。いくつかの具体例において、実質的に一定の高さレベルの溶融シリコンの維持は、固定位置においてルツボを維持することを可能にする。一旦v/Gが適切なホットゾーン構成で固定されれば、プロセス・ウィンドウは結晶長の実質的部分にわたり固定されるであろう(すなわち、コントロール調節はない)。一旦、プロセス条件(S/R、パワー、ガス流および/または圧力、磁束密度、先端またはHMCZ MGP位置)が設定されれば、ガス流、チャンバ圧およびC/Rを用いて、酸素含量をコントロールする。したがって、本発明方法は、引上速度がインゴットの実質的な長さの成長中に一定である連続チョクラルスキー(CCZ)法によって単結晶シリコンインゴットの成長を可能にし、この方法により成長したインゴットは、インゴットの軸長の実質的部分にわたり一定で許容できる欠陥性コントロール、Oi均一性およびBMD均一性を有する。
【0030】
すべての条件が定常状態に設定された後、全結晶長において所望の欠陥性コントロールを有する単結晶シリコンインゴットを生成するための引上速度は、従来のCzプロセスと比較して、プロセスコントロールによる生成における一定のかなり低下した品質損失になるであろう。
図4は、本発明による典型的な連続チョクラルスキー成長方法中の単結晶シリコンインゴットの軸長の関数としての引上速度のグラフである。
図4に示されるごとく、一定の引上速度は、単結晶シリコンインゴットの本体部分の成長の実質的部分にわたり維持される。三角形(---▲---)によって規定された線は、臨界v/G値を達成する臨界引上速度であり、これは、単結晶シリコンインゴットの本体部分の成長の実質的部分にわたり、初期変化領域(initial varying region)に続いて、一定の引上速度の領域を有する。引上速度は、正方形(---■---)により示される上部の臨界引上速度(「UCL」)、および菱形(---◆---)により示される下部の臨界引上速度(「LCL」)内で変化し、依然として許容できる欠陥性コントロールを達成し得る。単結晶シリコンインゴットの断面積中の固有点欠陥および凝集した点欠陥の領域は、実質的に
図2の記載において上記されるものと同じである。
【0031】
本発明方法によるCCZプロセスにおいて、多結晶シリコン供給は、結晶成長と連続し、それにより融液ボリュームは、結晶長に拘わらず実質的に初期投入融液深さと実質的に同様に維持される。融液高さ(melt elevation)が成長している結晶重量と連続的に供給された多結晶シリコンとの間の質量収支によってコントロールされるので、融液および成長している結晶における熱条件およびは軸方向の成長の全体にわたって不変である。その後、一旦、所望の結晶/融液界面が磁界、C/RおよびS/R、引上速度、ヒーター出力等のごときパラメーターにより決定および固定されれば、欠陥品質およびOiコントロールは結晶軸の成長の全体にわたって一定に維持されるであろう。さらに、熱条件および結晶/融液界面が結晶成長の間に固定されるために、所与のHZおよび結晶/融液界面についての一定の引上速度は、準定常(guasi-steady)状態コントロールにおいて全結晶長にわたり用いることができる。
【0032】
本発明方法によれば、欠陥性コントロールのための必要条件を満たす単結晶シリコンインゴットの成長を達成するのに適当な熱条件は、ホットゾーン構成によって設定される。この成長方法は連続チョクラルスキー法である。したがって、炉室(furnace chamber)は多結晶シリコンの連続供給のための手段、例えば、供給管を含む。チャンクポリシリコンを用い得るが、ルツボに加えられた固体ポリシリコンは典型的には粒状ポリシリコンであり、それは粒状ポリシリコンでの用途のために最適化されたポリシリコン・フィーダーを用いて、ルツボに供給される。チャンクポリシリコンは、典型的には3~45ミリメートル(例えば、最大寸法)のサイズを有し、粒状ポリシリコンは、典型的には400~1400ミクロンのサイズを有する。粒状ポリシリコンは、より小さなサイズにより供給速度の容易でかつ正確なコントロールを提供することを含めたいくつかの有利さを有する。しかしながら、粒状ポリシリコンのコストは、その生成に用いられる化学蒸着プロセスまたは他の製造方法によりチャンクポリシリコンのものより典型的に高い。チャンクポリシリコンは、より安価にかつそのより大きなサイズを与えるより高い供給速度を可能にするという有利さを有する。加熱ユニットの位置、冷却ジャケットおよび電源コントロールの操作を調節して、多結晶シリコン・フィーダーを適応させる。
【0033】
異なる融解ゾーンに融液を分ける複数の堰(20、30、40)または流体障壁(または、バリアー;barrier)を有するルツボ10の描写を
図5に示す。その例示された具体例において、ルツボアセンブリ10は、シリコン融液の内側融解ゾーン22を規定する第1の堰20(広く、流動性の障壁)を含む。内側融解ゾーン22は、単結晶シリコンインゴット50を成長させる成長領域である。第2の堰30は、シリコン融液の中間の融解ゾーン32を規定する。最終的に、第3の堰40は、シリコン融液の外側融解ゾーン42を規定する。供給管(図示せず)は、インゴットの成長中に実質的に一定の融液の高さレベルおよびボリュームを維持するのに十分な速度にて、粒、チャンクまたは粒およびチャンクの組合せであり得る多結晶シリコンを外側融解ゾーン42に供給する。第1の堰20、第2の堰30および第3の堰40の各々は、一般的に環状形状を有し、溶融シリコンが、内側融解ゾーン22の成長領域の方向へ半径方向に内側へ流れることを可能にするようにその中に規定された少なくとも1つの開口部を有する。
図5に示されたルツボ構成は、本発明のプロセスを行なうために典型的でかつ適当である。CCZに適当な他の構成は、本発明の範囲から逸脱することなく用い得る。例えば、ルツボ10は第2の堰30を欠如し得るか、および/または第3の堰40を欠如し得る。
【0034】
一般的に、インゴットが取り出される融液は、初期のシリコン投入量を形成するために、多結晶シリコンをルツボに負荷することにより形成される。概して、初期投入量は、約100キログラム~約200キログラムの多結晶シリコンであり、それは粒、チャンク、または粒およびチャンクの組合せであり得る。初期投入量の質量は所望の結晶直径およびHZ設計に依存する。多結晶シリコンが結晶成長中に連続的に供給されるので、初期投入量は結晶長を反映しない。例えば、多結晶シリコンが連続的に供給され、かつチャンバ高さが十分に高いならば、結晶長は長さ2000mm、3000mmまたは4000mmさえまで延長することができる。ルツボは、
図5に示された構成、またはCCZ成長に適当なもう一つの構成を有し得る。例えば、流動床リアクター中のシランまたはハロシランの熱分解によって生成された粒状多結晶シリコン、またはシーメンス・リアクターにおいて生成された多結晶シリコンを含めた様々なソースの多結晶シリコンを用い得る。一旦、多結晶シリコンをルツボに加えて、投入量を形成するならば、投入量をシリコンのおよそ融解温度(例えば、約1412℃)を超える温度に加熱して、投入量を融解し、それにより溶融シリコンを含むシリコン融液を形成する。シリコン融液は、溶融シリコンの初期のボリュームを有し、初期の融液高さレベルを有し、これらのパラメーターは初期投入量のサイズによって決定される。いくつかの具体例において、シリコン融液を含むルツボを少なくとも約1425℃、少なくとも約1450℃または少なくとも約1500℃でさえの温度に加熱される。
【0035】
一旦、投入量を液化して、溶融シリコンを含むシリコン融液を形成すれば、シリコン種結晶を低下させて、融液と接触させる。次いで、シリコン種結晶は、それに付着した融液から取り出して(すなわち、
図5に関して、種結晶部分およびネック52)、それにより、融液の表面付近、またはその表面にて融液/固体界面を形成する。一般的に、ネック部を形成するための初期引上速度は高い。いくつかの具体例において、シリコン種結晶およびネック部は、少なくとも約1.0mm/分、例えば、約1.5mm/分~約6mm/分、例えば、約3mm/分~約5mm/分のネック部引上速度にて引かれる。いくつかの具体例において、シリコン種結晶およびルツボは、反対方向(すなわち、反回転)で回転する。反回転はシリコン融液において対流を達成する。結晶の回転を主に用いて、対称な温度プロファイルを提供し、不純物の角度変化を抑制し、また、結晶の融液界面形状をコントロールする。いくつかの具体例において、シリコン種結晶は、約5rpm~約30rpm、または約5rpm~約20rpm、または約8rpm~約20rpm、または約10rpm~約20rpmの速度で回転させる。いくつかの具体例において、ルツボは、約0.5rpm~約10rpm、または約1rpm~約10rpm、または約4rpm~約10rpm、または約5rpm~約10rpmの速度で回転させる。いくつかの具体例において、種結晶はルツボより速い速度で回転させる。いくつかの具体例において、種結晶は、ルツボの回転速度より少なくとも1rpm高い、例えば、少なくとも3rpm高い、または少なくとも5rpm高い速度で回転させる。一般的に、ネック部52は、約300ミリメートル~約700ミリメートル、例えば、約450ミリメートル~約550ミリメートルの長さを有する。しかしながら、ネック部52の長さはこれらの範囲外で変化し得る。
【0036】
ネック52の形成後に、
図5に関して、ネック52に隣接する外側に広がる種コーン部分54を成長させる。概して、引上速度は、ネック部引上速度から外側に広がる種コーン部分54を成長させるのに適当な速度まで減少する。例えば、外側に広がる種コーンの成長中の種コーン引上速度は、約0.5mm/分~約2.0mm/分、例えば、約1.0mm/分である。いくつかの具体例において、外側に広がる種コーン54は、約100ミリメートル~約400ミリメートル、例えば、約150ミリメートル~約250ミリメートルの長さを有する。外側に広がる種コーン54の長さは、これらの範囲外で変化し得る。いくつかの具体例において、外側に広がる種コーン54は、約150mm、少なくとも約150ミリメートル、約200mm、少なくとも約200ミリメートル、約300mm、少なくとも約300mm、約450mmまたは少なくとも約450mmさえの端部(terminal)直径まで成長させる。外側に広がる種コーン54の端部直径は、単結晶シリコンインゴットの本体の一定直径の直径と一般的に等価である。
【0037】
次いで、ネック52および外側に広がる種コーン54の形成後に、コーン部分に隣接する一定の直径を有する主要なインゴットボディ56を成長させる。主要なインゴットボディ56の一定直径部分は、周囲縁、周囲縁と平行な中心軸、および中心軸から周囲縁まで延在する半径を有する。また、中心軸は、外側に広がる種コーン54およびネック52を通り抜ける。主要なインゴットボディ56の直径は変更でき、いくつかの具体例において、直径は、約150mm、少なくとも約150ミリメートル、約200mm、少なくとも約200ミリメートル、約300mm、少なくとも約300mm、約450mmまたは少なくとも約450mmさえであり得る。単結晶シリコンインゴットの主要なインゴットボディ52は、結局成長させて、少なくとも約1000ミリメートル長、例えば、少なくとも1400ミリメートル長、例えば、少なくとも1500ミリメートル長、または少なくとも2000ミリメートル長、または少なくとも2200ミリメートル長、例えば、2200ミリメートル長、または少なくとも約3000ミリメートル長、または少なくとも約4000ミリメートル長である。
【0038】
図4は、本発明方法のいくつかの具体例による単結晶シリコンインゴットの本体を引き上げるための典型的でかつ非限定の引上速度プロトコールを示す。典型的な例示から明らかなように、引上速度は、比較的高い引上速度から最小の引上速度まで低下し、次いで、単結晶シリコンインゴットの本体の成長のかなりの部分について一定の引上速度まで上昇する。本発明のプロセスによれば、引上速度を選択して、完全シリコン、すなわち、凝集した欠陥、DSOD(直接表面酸化欠陥)、COP(結晶起因ピット)、D欠陥、およびI欠陥等から選択された欠如検出可能な凝集した欠陥により特徴付けされたシリコンを達成する。初期の高い引上速度は、約0.5mm/分~約2.0mm/分、例えば、約1.0mm/分であり得、次いで、約0.4mm/分と同じくらい低いまたは約0.3mm/分と同じくらい低いものであり得る引上速度まで減少し、その後、約0.4mm/分~約0.8mm/分、約0.4mm/分~約0.7mm/分または約0.4mm/分~約0.65mm/分の一定の引上速度まで増加する。
【0039】
本発明方法を実施するのに適当な炉室100内のホットゾーン構成の典型的でかつ非限定の例は、
図6A、
図6Bおよび
図6Cにおいて示される。他のホットゾーン構成は本発明方法を実施するの適当である。ホットゾーン構成は、冷却用ジャケット102、反射器104、サイドヒーター106および底部ヒーター108を含む。成長している結晶直径およびメニスカスの形状および高さは、頂部ウィンドウに位置するカメラ(描写されず)によってモニターされる。カメラから得られたデータは、サイドヒーター106および底部ヒーター108へのフィードバックを可能にする。結晶成長中に、パワー分布(または、出力分布;power distribution)をヒーター間で調節して、融液/固体界面の均一性を可能にでき、すなわち、メニスカスの所望の形状および高さを維持し得る。反射器104は、ヒーターおよびルツボを含む炉の高温部分から融液への熱流を反映するであろう。反射器104は、炉の高温部分から冷却部分(冷却用ジャケット102によって維持される)への熱移動を低下させ、それにより、炉のこれらの2つの領域間の分離を維持する。反射器は、軸方向の温度勾配および半径方向の温度勾配をコントロールするのを助け、これらの勾配は、成長しているインゴットに溶融シリコンの凝固および結晶化を駆動する。
【0040】
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、それぞれ、第1の工程、第2の工程および第3の工程を示し、
図4に示される引上速度の領域に対応する。すなわち、
図6Aに示された第1の工程は、
図4における引上速度が高くかつ最小値まで減少する領域に対応する。
図6Bに示された第2の工程は、
図4における引上速度が最小であり、一定の引上速度に増加する領域に対応する。
図6Cに示された第3の工程は、
図4における一定の引上速度の領域に対応する。各工程中、多結晶シリコンがインゴット112の成長中に融液に連続的に供給される(
図5を参照)ので、融液110は、本発明の具体例による一定の融液ボリュームおよび融液高さレベルを保持する。
【0041】
可変的引上速度により特徴付けされた単結晶シリコンインゴットの本体を成長させる初期領域は、単結晶シリコンインゴットの本体の全長の約20%未満を包含し得る。いくつかの具体例において、可変的引上速度レジーム(または、状態;regime)は、単結晶シリコンインゴットの本体長さの約5%~約20%、例えば、単結晶シリコンインゴットの本体長さの約5%~約15%、または単結晶シリコンインゴットの本体長さの約10%~約15%を包含し得る。可変的引上速度条件下で成長された単結晶シリコンインゴットの本体長さのパーセンテージは、インゴットの本体の全長に部分的に依存する。例えば、可変率条件下で引上げられたインゴットの本体長さは、約50mm~約200mm、約100mm~約200mm、例えば、約150mm~約200mmで変化し得る。200mmが可変率条件下で成長し、インゴットの本体の全長が1400mmであるならば、本体の約14%が可変率条件下で成長されるが、一方、本体の約9%だけは、2200mmの合計の本体長さにつき、可変的速度条件下で成長される。
【0042】
本体の初期領域が可変的引上速度条件下で成長された後、本体の残りは、一定の引上速度下で成長される。いくつかの具体例において、インゴットの本体は、単結晶シリコンインゴットの長さの少なくとも約30%、例えば、単結晶シリコンインゴットの長さの少なくとも約50%、単結晶シリコンインゴットの長さの少なくとも約70%、単結晶シリコンインゴットの長さの少なくとも約80%、単結晶シリコンインゴットの長さの少なくとも約90%さえの成長中に一定の本体引上速度で成長される。いくつかの具体例において、一定の本体引上速度は、約0.4mm/分~約0.8mm/分、約0.4mm/分~約0.7mm/分、または約0.4mm/分~約0.65mm/分である。
【0043】
単結晶シリコンインゴットの本体の成長中に、多結晶シリコン、すなわち、粒、チャンクまたは粒およびチャンクの組合せを溶融シリコンに加えて、それにより、溶融シリコンの一定のボリュームおよび一定の融液高さレベルを達成する。本発明方法によれば、単結晶シリコンインゴットの本体の軸長の実質的部分の成長中の実質的に一定の融液ボリュームの維持は、一定の引上速度での単結晶シリコンインゴットの本体の軸長の実質的部分にわたり高インゴット品質の達成を可能にする。結晶長に拘わらず一定の融液ボリュームは、一定の結晶/融液界面を可能にし、かくして、インゴットの本体の実質的部分にわたり均一な結晶品質を可能にする。したがって、いくつかの具体例において、溶融シリコンのボリュームは、単結晶シリコンインゴットの本体の少なくとも90%の成長中に約1.0体積%以下、または単結晶シリコンインゴットの本体の少なくとも90%の成長中に約0.5体積%以下、または単結晶シリコンインゴットの本体の少なくとも90%の成長中に約0.1体積%以下変化する。もう一つの方法を述べると、いくつかの具体例において、融液高さレベルは、単結晶シリコンインゴットの本体の少なくとも90%の成長中に約+/-0.5ミリメートル未満変化する。
【0044】
加えて、本発明のプロセスによれば、磁界はシリコン融液を含むルツボに印加し得る。一方の先端または水平磁界(または、磁場;magnet field)を印加して、適切な結晶/融液界面、すなわち、メニスカス(meniscus)の形状および高さを設定することができる。磁界を用いて、所望の結晶/融液界面形状および高さを第1に固定し、酸素含量Oiのコントロールは従属する目的である。
【0045】
融液流および融液/固体界面の形状のコントロールおよび、したがって、インゴットの品質は、単結晶シリコンインゴットの本体の成長中のシリコン融液への磁界の印加によって高め得る。いくつかの具体例において、印加された磁界は、単結晶シリコンインゴットの本体の成長の少なくとも約70%の間、または単結晶シリコンインゴットの本体の成長の約70%~約90%の間で実質的に一定の融液/固体界面プロファイルを維持する。磁界は、シリコン融液流に影響する電磁力を印加し、したがって、融液中の熱移動が影響される。それは、結晶/融液界面のプロファイル、および結晶を成長させる温度を変更し、これらは完全シリコンの重要なコントロールパラメーターである。
【0046】
磁界はインゴットの酸素含量および均一性に強く影響する。インゴットの酸素ソースは、石英ルツボ壁の融解、(融液流動力学によってコントロールされた)融液を含まない表面での蒸発SiOx(g)および成長している結晶表面への取込みからのものである。磁界は成長中に伝達性の融液流に強く影響し、酸素蒸発および取込みに強く影響することができる。時間増分による単結晶シリコンインゴットへの酸素取り込みの変化は、以下の方程式:
【0047】
【数1】
により融液中の酸素の拡散および対流によりコントロールされる。
【0048】
Cは、凝固しているシリコンの酸素の濃度であり、tは時間であり、vは対流速度(融液流速度)であり、ρ(ロー)はシリコン融液の密度であり、∇は勾配(d/dx)である。印加された磁界は、融解速度(v)および融液中の酸素濃度の勾配(dC/dx=∇C)に影響する。磁界の結果、定常状態融液流が生じるので、インゴットへの酸素O
iの取込みは時間定数であり、これは半径方向および軸方向の酸素濃度均一性を高める。SOURCEなる用語は、2つのパラメーターである、酸素の生成(S
i(l)+S
iO
2(s)→S
iO
x(g))である石英(S
iO
2)ルツボの融解、および融液からの酸素(S
iO
x(g))の除去(消失)である蒸発に由来する。バッチCzプロセスにおいて、このSOURCEなる用語は一定ではない。代わりに、結晶を成長させるにつれて、融液質量が減少するので、そのSOURCEは結晶長に依存する。インゴットがそのボディ長の実質的部分を成長させる場合、残る融液ボリュームは低く、その結果、ルツボに接触するシリコン融液のその量は減少し、したがって、ルツボから融液に取り込まれた酸素濃度を低下させるように導く。したがって、他項(拡散、対流、蒸発)が一定であるならば、凝固しているシリコン結晶に組み込まれる酸素は減少する。融液がない表面(融液およびガス間の接触表面)領域は、S
iO
x(g)の蒸発速度に影響する。バッチCzプロセスでの小さな融液質量は、
図1Cに示されるルツボの形状により比較的より小さな表面積を有する。S
iO
x(g)のより少ない蒸発は、凝固しているシリコン結晶へのより多くの酸素取り込みを意味する。本発明方法によれば、結晶のインゴットを成長させるにつれて、ポリシリコンが加えられるので、融液質量は一定に維持される。したがって、すべてのソース項(融液へのS
iO
2ルツボ融解による酸素の生成、および融液がない表面を介するS
iO
x(g)ガスの蒸発)は一定である。したがって、拡散および対流なる項は、凝固しているシリコン結晶の酸素に影響する。印加された磁界は、酸素の取込みがインゴットの全長さの成長中に軸方向および半径方向で均一でかつ安定しているので、融液流をより安定にする(すなわち、時間独立の定常条件と同様に融液流は一定である)。いくつかの具体例において、格子間酸素は、約4PPMA~約18PPMAの濃度のインゴットに組み込み得る。いくつかの具体例において、格子間酸素は、約10PPMA~約35PPMAの濃度のインゴットに組み込み得る。いくつかの具体例において、インゴットは、約15PPMA以下、または約10PPMA以下の濃度で酸素を含む。格子間酸素は、SEMI MF 1188-1105によって測定し得る。
【0049】
いくつかの具体例において、水平磁界は、単結晶シリコンインゴットの本体の成長中にシリコン融液に印加される。かかる水平の場は、
図7Aに示され、これは、
図5に示されるごとき、ルツボおよび成長しているインゴット上に置かれた水平磁界の描写である。水平磁界の存在下の結晶成長は、通常の電磁石200の極間にシリコン融液を保持するルツボの配置により達成される。いくつかの具体例において、水平磁界は、融液領域の約0.2テスラ~約0.4テスラの磁束密度を有し得る。融液における磁界変化は、所与の強さの+/-約0.03テスラ未満である。水平磁界の印加は、流動性運動の反対方向で、融液対流を駆動する力に対抗して、軸方向に沿ってローレンツの力を生じさせる。かくして、融液中の対流は抑制され、界面付近の結晶中の軸方向の温度勾配は増加する。次いで、融液結晶界面は、結晶側に上方へ移り、界面付近の結晶中の軸方向の温度勾配の増大に適応し(accommodate)、ルツボ中の融液対流からの寄与は減少する。
【0050】
いくつかの具体例において、先端磁界は、単結晶シリコンインゴットの本体の成長中にシリコン融液に印加される。先端の場は
図7Bに示され、これは、
図5に示されるごとき、ルツボおよび成長しているインゴット上に置かれた先端磁界の描写である。先端磁界は、2つのコントロールパラメーター、すなわち、磁束密度および磁界形状を有する。先端磁界は、インゴットの軸付近の融液において垂直(軸)磁界とより深く組み合わせた融液の最も近い表面で水平(半径方向)磁界成分を印加する。先端磁界は、反対方向の一対のヘルムホルツコイル輸送(または、キャリング;carrying)電流を用いて生成される。結果として、2つの磁界の中間の位置にて、インゴット軸に沿って垂直に、磁界を相互に相殺して、ゼロにてまたはゼロ付近で垂直の磁界成分を作成する。例えば、先端磁束密度は、軸方向で典型的には、約0~約0.2テスラである。半径方向での磁束密度は、垂直方向での磁束密度より一般的に高い。例えば、先端磁束密度は、半径方向の位置に依存して、典型的には半径方向の位置での約0~約0.6T、例えば、約0.2~約0.5Tである。半径方向の先端磁界は、融液の流れを抑制して、それにより融液を安定化する。換言すれば、半径方向の先端磁界の印加は、結晶成長が生じる固体-液体の界面に隣接する位置にて、対流を誘導し、融液の残存部分にて対流を抑制して、それにより均一な酸素分布を実現するための有効な方法として機能する。熱の融液対流は、融液がない表面および融液ルツボ界面にて同時に先端磁界によって局所的でかつ独立してコントロールすることができる。これは、結晶回転速度に拘わりなく、磁束密度のみにより成長している結晶中の酸素濃度のコントロールを可能にする。軸方向または半径方向の磁界の存在下、酸素濃度のコントロールは、結晶回転速度のコントロールを介して達成される。先端磁界の印加は、約15PPMA以下、または約10PPMA以下のごとき印加された磁界なく成長されたインゴットより少ない酸素含量を含むインゴット上での成長を可能にし得る。格子間酸素はSEMI MF 1188-1105によって測定し得る。
【0051】
本発明方法は、完全シリコン用の産業仕様を満たすかまたは超える連続チョクラルスキー法によって単結晶シリコンインゴットの成長を可能にする。完全シリコン結晶の成長に寄与する因子は、完全シリコンを成長させるための臨界引上速度の決定、単結晶シリコンインゴットの本体の成長の実質的部分にわたる臨界速度での一定の引上速度の維持、および融液/固体界面の形状および高さを維持するための磁界の印加を含む。一旦、引上速度および磁界の構成が決定されれば、引上速度は、多結晶シリコンを連続的に加えることにより一定の割合で維持して、一定の融液ボリュームおよび融液高さレベルを維持し得る。したがって、インゴットを成長させる通常の方法とは異なり、引上速度はインゴットの成長の実質的部分にわたり一定である。本明細書に開示された方法によって可能にされたプロセスコントロールに徴して、本発明方法は、単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約70%にわたる、例えば、単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約80%にわたる、または単結晶シリコンインゴットの本体長さの少なくとも約90%さえにわたる完全シリコンを含む単結晶シリコンインゴットの成長を可能にする。
【0052】
本明細書に用いた用語「約(about)」、「実質的に」、「本質的に」および「およそ(approximately)」は、寸法、濃度、温度または他の物理的もしくは化学的性質または特性の範囲と組み合わせて用いられた場合には、例えば、丸め(rounding)、測定方法または他の統計的変化に起因する変化を含めた、特性または特徴の範囲の上限および/または下限に存在し得る変化をカバーすることを意味する。
【0053】
本開示またはその具体例の要素を導入する場合、用語「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」および「該」は、1つ以上の要素が存在することを意味するように意図される。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する」および「有する」は、包括的であり、列挙された要素以外にさらなる要素が存在し得ることを意味することが意図される。特別な配向(例えば、「頂部」、「底部」、「側」等)を示す用語の使用は、記載の便宜のためであり、記載された項目のいずれの特別な配向も必要としない。
【0054】
開示の範囲から逸脱することなく、前記の構成および方法において様々な変更をなすことができるので、前記明細書に含まれたおよび添付図面に示されたすべての事項は、例示として解釈され、限定する意味に解釈されるべきではないことが意図される。
【国際調査報告】