(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】Li-含有出発物質から金属を回収する方法
(51)【国際特許分類】
C22B 23/00 20060101AFI20220616BHJP
C22B 47/00 20060101ALI20220616BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20220616BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20220616BHJP
C22B 3/06 20060101ALI20220616BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20220616BHJP
C22B 5/02 20060101ALI20220616BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
C22B23/00 102
C22B47/00
C22B7/00 C
C22B3/04
C22B3/06
C22B3/44 101Z
C22B5/02
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021561981
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 EP2020060890
(87)【国際公開番号】W WO2020212587
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーテル・フェルヘース
(72)【発明者】
【氏名】バルト・クラーセン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィレム・カレボー
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001BA22
4K001DA05
4K001DB02
4K001DB07
4K001DB22
4K001HA09
4K001JA01
4K001KA02
4K001KA06
5H031HH08
5H031RR02
(57)【要約】
本発明は、Li-含有出発物質からNi及びCo等の金属を回収する方法に関する。特に、この方法はNi及びCoを含む金属MをLi-含有出発物質から回収する方法であって、工程1:リチウムイオン電池又はそれらの派生製品を含む前記出発物質を準備する工程と; 工程2:(1)前記出発物質中に存在するLiの30%、及び(2)その後の酸性浸出工程で0.70未満のLi:M比を得るように決定される前記出発物質中に存在するLiのパーセンテージのうち、最大のものを超える量でLiを除去する工程と; 工程3:相対的な量の、Li-低減生成物及び鉱酸を使用してその後の浸出を行い、それによりNi-及びCo-保有溶液を得る工程と; 工程4:Ni、Co、及び場合によりMnを結晶化させる工程とを含む、方法に関する。薬剤の消費がより少なく、湿式精錬加工においてNi及び/又はCoの濃度がより高いことに起因して、本発明は電池材料製造に適した効率的で経済的な結晶の製造方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni及びCoを含む金属MをLi-含有出発物質から回収する方法であって、
工程1:リチウムイオン電池又はそれらの派生製品を含む前記出発物質を準備する工程と;
工程2:
- Li保有スラグ相及びLiフューム、並びに酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有相の1つ又は複数を生成させる、スラグ生成剤を使用した高温冶金精錬法;
- 少なくとも1つの水溶性Li-化合物を含有するNi-Co-保有残渣を生成させ、水溶液で洗浄することにより前記少なくとも1つのLi-化合物を除去し、それにより酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co保有残渣を得る、還元剤を使用した熱処理法;
- Liを前記出発物質から浸出させ、Ni及びCoは少なくとも部分的に不溶性である、水溶液又は酸性溶液を使用した湿式精錬浸出法、及び酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co保有残渣を得る、固液分離;
の1つ又は複数を使用することにより、(1)前記出発物質中に存在するLiの30%、及び(2)その後の酸性浸出工程で0.70以下のLi:M比を得るように決定される前記出発物質中に存在するLiのパーセンテージのうち、最大のものを超える量でLiを除去する工程と、
工程3:相対的な量の、工程2で得られるLi-低減Ni-Co-保有材料及び鉱酸を使用してその後の浸出を行い、それによりNi-及びCo-保有溶液を得る工程と;
工程4:Ni、Co、及び場合によりMnを結晶化させる工程と
を含む、方法。
【請求項2】
工程2の熱処理法が250℃を超える温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水溶液で洗浄することにより前記少なくとも1つの水溶性Li-化合物を除去する工程が、2.5以上のpHで行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程2の前記少なくとも1つの水溶性Li-化合物が、Li
2O、Li
2CO
3、LiHCO
3、LiCl、Li
2SO
4、LiF、LiOHの1つ又は複数を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
鉱酸が、HNO
3、H
2SO
4、及びHClの1つ又は複数である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程2の高温冶金精錬法のNi-Co-保有相が、10mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下の平均径を有する粒径分布まで粉砕される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程4が、Ni-及びCo-保有溶液の温度を低下させることにより、及び/又はNi-及びCo-保有溶液から水を除去することにより、及び/又は溶媒置換結晶化により行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程3からの Ni-及びCo-保有溶液がCu及び/又はFe及び/又はAlも含有し、方法が、工程3と工程4との間に精製工程を含み、Cu及び/又はFe及び/又はAlがNi-及びCo-保有溶液から除去される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程3からのNi-及びCo-保有溶液がMnも含有し、方法が、工程3と工程4との間にMn除去工程を含み、MnがNi-及びCo-保有溶液から除去される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程4の前に、Ni及び/又はCoを溶解した形態で又はNi-及びCo-保有溶液に可溶性である1つ若しくは複数の化合物として加えることにより、Ni-及びCo-保有溶液中のNi対Coの比を所望の値に調整する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程4の前に、Ni、Co、及びMnの1つ又は複数を溶解した形態で又はNi-及びCo-保有溶液中に可溶性である1つ若しくは複数の化合物として加えることにより、Ni-及びCo-保有溶液中のNi対Co対Mnの比を所望の値に調整する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
Ni-及びCo-保有溶液がg/lで表す場合にCoよりも多くのNiを含有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Ni-及びCo-保有溶液がg/lで表す場合にCo及びMnの合計よりも多くのNiを含有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程3と工程4との間に精製工程を含み、CoがNi-及びCo-保有溶液から選択的に除去され、Ni結晶を得るのに適したCo-低減Ni-保有溶液が得られる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
出発物質がNi、Co、Li、Al、F、並びにCu及びFeの1つ又は複数を含有し、工程2の高温冶金精錬法が融剤を使用した出発物質の還元精錬であり、Ni-Co-保有相がNi、Co、Cuの大部分及びFeの少なくとも一部を含む合金であり、合金はLi、Al、及びFが低減されている、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Ni及びCoを含む出発物質から金属を回収し、続いてリチウムイオン充電式電池に使用される電池前駆体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電池化学物質の1つは、金属リチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルト(NMC)を含有する正極粉末を含む。別の多用される化学物質は、リチウム、ニッケル、コバルト、及びアルミニウム(NCA)を含有する正極粉末を利用する。
【0003】
リチウムイオン電池のライフサイクルの間、環境規制及び環境の法律に従うようにリサイクルされる必要がある様々な廃材が生じる。既に電池の製造プロセスにおいて、品質規格を満たす難しさに起因して製造廃棄物が発生している。そのような材料は、正極粉末、電極箔、セパレーター箔から、完成した電池セル又はモジュールまで様々である。
【0004】
製造廃棄物に加えて、寿命に達した電池もリサイクルされる必要がある。これは、電気部品又は電子部品と共にあらゆる成分を含むリチウム電池を主に含むが、場合によりニッケル-カドミウム電池、ニッケル-金属-水素化物電池、及び亜鉛電池等の非リチウム電池も含む、更により複雑な廃棄物の流れをもたらす。これらの製造廃棄物及び寿命に達した電池の派生物も、機械的処理及び/又は熱による前処理の結果である粉末分又は黒い塊の形態でリサイクルに利用可能である。
【0005】
成分がますます製品に加えられるにつれて、スクラップ材の化学的な複雑さは製造プロセスの終わりに向かって増していく。そのため、電池セル及びモジュールは、膨大な数の異なる元素、例えば正極ではNi、Co、Mn、Li、Fe、Al、V、P、F、C、Ti、及びMg、負極ではLi、Ti、Si、C、Al、及びCu、電解質ではLi、F、P、及び揮発性有機化合物、ケーシングではAl、Fe、Cu、Ni、Cr、並びにCl及びBrを含むプラスチックを含有する場合がある。
【0006】
使用済み電池の量は、現在進んでいる自動車産業の電化に主に起因して、今後10年間で毎年100,000トンを超えると予測される。電池リサイクルビジネスはそれにしたがって成長することになる。
【0007】
1つの従来の方法は、Liを含有する精製済み浸出溶液からCo及びNiを抽出する、溶媒抽出を使用する。別のそのような方法では、Co及びNiを析出により浸出溶液から分離し、やはりNi及びCoが低減されたLi含有の流れが得られる。金属抽出又は析出後の溶液中のLiは、典型的にはLi2CO3塩又はLi3PO4塩として溶液から除去される。Meshramら[Hydrometallurgy、150巻、192~208頁、2014年]は、使用済み電池の金属を回収する従来の方法の概要を記載している。これらの方法はNaOH等の塩基をNi及びCoに対する化学量論量を超えて消費するという欠点があり、Li濃縮物を得るためにリチウムに対する化学量論量のNa2CO3又はNa3PO4を消費する。
【0008】
別の方法が中国特許第108439438号で知られており、ここでは焼成済みのリチウム含有電池廃棄物を酸浸出させ、Li、Co、Ni、Mn、Al、Fe及びCuを含有する溶液を得て、ここから最初にCu、Fe、及びAlを除去し、その後Liを抽出剤を使用した抽出により除去し、続いてNi、Co、Mn混合硫酸塩を結晶化させる。そのような方法は中国特許第107768763号でも知られており、ここでは電池廃棄物を酸中で浸出させ、その後得られる溶液からCu、Fe、及びAlを析出により除去し、その後LiをLiFとして除去し、続いてNi、Co、Mn混合硫酸塩を結晶化させる。
【0009】
しかし、これらの既知の方法は、例えば溶解したLiの存在下でNiSO4の溶解性が大幅に低下するという欠点がある。このことは、リサイクル工場の反応器等の加工装置が所定の量において限られた量のNiしか保持できず、装置のNi生産能力を制限することを意味する。
【0010】
そのような既知の方法において、含有されるLiを溶解させるのに相当量の酸が消費される。これは典型的な電池廃棄物における酸の全消費量の33%に容易に達することがある。次いでLiを除去するのにさらなる薬剤が使用される。したがって、Liの溶解及び除去はさらなる塩の排出をもたらす。
【0011】
また、抽出工程は費用が高く、なぜなら通常は高価な抽出剤、並びにさらなる工程、例えば除去しようとする金属(1つ又は複数)を抽出剤に担持させる工程及び抽出剤を取り除く工程等を必要とするからである。
【0012】
したがって経済的及び環境上の理由から、これらの既知の方法で可能である濃度よりも高い浸出溶液中のNi濃度を実現しながら、好ましくはまた溶解における酸の消費がより少なく、浸出溶液からのLiの除去における薬剤の消費がより少ないか又は消費がなく、したがって塩の排出がより少ないことが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】中国特許第108439438号
【特許文献2】中国特許第107768763号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Meshramら、Hydrometallurgy、150巻、192~208頁、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって本発明の目的は、浸出溶液中のMのより高い濃度を実現できるという点で有利であり薬剤の消費を削減する、Liイオン電池又はそれらの派生製品を含有する出発物質から金属Mを回収する方法を提供することである(MはNi及びCo、及び場合によりMnを表す)。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、請求項1に記載の方法を提供することにより、特に少なくとも部分的にLiを出発物質から除去することにより、実現される。所定の体積においてより高いNiの濃度等のより高い金属濃度に達し、それをその後の加工工程の間維持するためには、Ni及びCoを浸出させる前に部分的又は完全にLiを除去することが必須である。それにより薬剤消費の削減だけでなく加工装置の向上した処理能力が実現される。
【0017】
したがって、本発明は、Ni及びCoを含む金属MをLi含有出発物質から回収する方法であって、
工程1:リチウムイオン電池又はそれらの派生製品を含む前記出発物質を準備する工程と;
工程2:
- Li-保有スラグ相及びLi-フューム、及び酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co保有相の1つ又は複数を生成させる、スラグ生成剤を使用した高温冶金精錬法;
- 少なくとも1つの水溶性Li-化合物を含有するNi-Co-保有残渣を生成させ、水溶液で洗浄することにより前記少なくとも1つのLi-化合物を選択的に除去し、それにより酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有残渣を得る、還元剤を使用した熱処理法;
- Liを前記出発物質から選択的に浸出させ、Ni及びCoは少なくとも部分的に不溶性である、水溶液又は酸性溶液を使用した湿式精錬浸出法、及び酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有残渣を得る、固液分離;
の1つ又は複数を使用することにより、(1)前記出発物質中に存在するLiの30%、及び(2)その後の酸性浸出工程で0.70以下のLi:M比を得るように決定される前記出発物質中に存在するLiのパーセンテージのうち、最大のものを超える量でLiを除去する工程と、
工程3:相対的な量の、工程2で得られるLi-低減Ni-Co-保有材料及び鉱酸を使用してその後の浸出を行い、それによりNi-及びCo-保有溶液を得る工程と;
工程4:Ni、Co、及び場合によりMnを結晶化させる工程と
を含む、方法に関する。
【0018】
工業的な装置において、プロセスの出発物質は「供給物」又は「冶金装入物」とも呼ばれることがあり、特に後者は精錬又は金属精製等の冶金プロセスについて語る場合に呼ばれる。
【0019】
派生製品としては、電池製品、黒い塊、電極箔、寿命に達した電池、又はモジュールの様々な段階からのあらゆる種類の製品スクラップを挙げることができる。リチウムイオン電池は、Liをその電荷キャリアとして使用する電池を意味し、例えば現在市販されている様々な電池のタイプだけではなく、限定はされないが固体電池等のこれからの新しい電池技術も挙げられる。
【0020】
Li:M比はLiのモル濃度対金属Mの全モル濃度であり、MはNi+Co+Mnの全モル濃度である。
【0021】
図1は、3種の異なる電池スクラップ:Al及びCuを含まない電池スクラップ(丸);Al及びCu含量が低い電池スクラップ(四角);Al及びCu含量が高い電池スクラップ(三角形)について、工程3で得られるLi:M比が工程2で得られる様々なLi除去率の関数としてどのように変化するかを示す。
【0022】
Li:M比を低下させると例えばNiの溶解性が増加する。Ni等の金属の溶解性はLiの存在下よりも溶解したLiの非存在下ではるかに高い。これはLiが存在する場合に硫酸イオン等の対応するアニオンの濃度が増加することに起因する。
図2は、Li
2SO
4及びNiSO
4を含有する溶液の場合において、Li:M比の関数としてのNiの溶解性を示す。これはNiSO
4及びLi
2SO
4のみを含有する溶液の場合においてLi:M比が増加するとNiの溶解性が減少することを裏付ける。
【0023】
金属硫酸塩と同様に、同じ考察が硝酸塩、塩化物、及びそれらの混合物等の他の無機金属塩に適用可能であり、それらの金属はNi、Co、Mn、Fe、Cu、Al、及びその他であってもよい。
【0024】
この方法の工程2は除去するLiの量に適用される2つの基準(1)及び(2)を規定し、次いでその2つの高い方が選択されることに注意する。基準(1)は原理上はすべての出発物質に有効であるが、基準(2)、すなわちその後の酸性浸出工程で0.70以下のLi:M比を得るためのLiの除去は、元の出発物質中で0.70を超えるLi:M比を有する出発物質について好ましい場合がある。
【0025】
0.70以下のLi:M比は、装置の製造能力を大幅に向上させるので(同じ体積を使用する従来の方法と比較して)、経済的理由で工業的な装置において適切と考えられる。0.70以下のLi:M比は、本発明のその後の浸出工程3において120g/L以上(硫酸塩マトリックス中)の金属濃度(Liを除く)に相当する。特に結晶化工程4において、高い金属濃度が有益である。
【0026】
別の実施形態において、基準(2)である工程2のLi:M比は0.50以下である。この方法では128g/L以上(硫酸塩マトリックス中)の金属濃度を有することが有利であり、これは0.50以下のLi:M比に相当する。プロセスの工程2においてLiを除去することにより、そのようなより低いLi:M比が浸出溶液において得られる。
【0027】
別の実施形態において、上記の方法の工程1及び工程2は以下の通りである:
リチウムイオン電池又はそれらの派生製品を含むLi-含有出発物質からNi及びCoを含む金属Mを回収する方法であって、
工程1:0.50を超えるLi:M比を有する前記出発物質を準備する工程と;
工程2:
- Li-保有スラグ相及びLi-フューム、及び酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有相の1つ又は複数を生成させる、スラグ生成剤を使用した高温冶金精錬法;
- 少なくとも1つの水溶性Li-化合物を含有するNi-Co-保有残渣を生成させ、水溶液で洗浄することにより前記少なくとも1つのLi-化合物を選択的に除去し、それにより酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有残渣を得る、還元剤を使用した熱処理法;
- Liを前記出発物質から選択的に浸出させ、Ni及びCoは少なくとも部分的に不溶性である、水溶液又は酸性溶液を使用した湿式精錬浸出法、及び酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有残渣を得る、固液分離;
の1つ又は複数を使用することにより、その後の酸性浸出工程で0.50以下のLi:M比を得るように決定される前記出発物質中に存在するLiのパーセンテージを除去する工程と、
を含む方法。
【0028】
しかし、この方法の工程2において更により多くのLiを除去することがより好ましく、なぜならこれはその後の浸出工程3においてLi:M比を更にいっそう低下させ有利な効果を増大させることになるためである。したがって、別の実施形態において、金属濃度は135g/L以上(硫酸塩マトリックス中)であり、これは0.30以下のLi:M比に相当し、より好ましくは139g/L以上(硫酸塩マトリックス中)であり、これは0.20以下のLi:M比に相当する。硫酸塩マトリックスについて記載されるような同様の有益な効果は、塩化物又は硝酸塩マトリックスにおいて見られる。
【0029】
Li:M比を0.50以下まで、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.20以下まで低下させることは本発明の結晶化工程4において有利であり、なぜなら純粋な結晶、すなわちLiで汚染されていない結晶を生成させることができるからである。より純粋なNi-及び/又はCo-結晶を得ることは、場合によりさらなるプロセス又は精製工程を回避しながら、例えば正極活性物質を製造するのに有利である。
【0030】
更に、浸出工程の前にLiを除去する場合、薬剤の消費が大幅に少なくなる。例えば、この方法の工程3における酸の消費は、出発物質中のLiのおよそ30%が工程2で除去される場合、既に5%少なくなる。
【0031】
別の実施形態において、工程2の熱処理法は250℃を超える温度で行われる。様々な還元剤を熱処理法において使用することができ、例えば限定はされないが、金属粉末、負極材料、硫黄、炭素、CO、CO2、CH4、H2S、SO2、NaHSO4、又はH2を使用できる。負極材料は還元剤として機能し得る。
【0032】
別の実施形態において、水溶液で洗浄することにより少なくとも1つの水溶性Li-化合物を選択的に除去する工程は、2.5以上のpHで行われる。選択的な除去とは、Ni及びCoに対して選択的であることを意味する。
【0033】
この方法の別の実施形態において、工程2の水溶性Li-化合物は、Li2O、Li2CO3、LiHCO3、LiCl、Li2SO4、LiF、LiOHの1つ又は複数を含む。Liに対するそれぞれの対イオンは、リサイクルプロセスで使用される、考えられる様々な種類の出発物質、又は添加される還元剤に由来する場合がある。
【0034】
この方法の別の実施形態において、工程2の高温冶金精錬法のNi-Co-保有相は、10mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下の平均径を有する粒径分布まで粉砕される。これは工程3の効率的で迅速な浸出において有利である。そのような平均粒径分布までの粉砕は、造粒、噴霧、又はミリング等の当業者に既知の標準的な方法により行われる。
【0035】
別の実施形態において、工程2は、特定のpH、温度、及び酸化還元電位の厳密な制御下で操作することによりリチウムを選択的に浸出させる、湿式精錬法を使用して行うことができる。選択的な溶解は、水によって行うことができ、これは選択的洗浄と呼ばれ、又は特定の浸出剤、例えば限定はされないがリン酸若しくはシュウ酸を添加して、又は限定はされないが過硫酸塩、オゾン、塩素等の酸化剤の存在下で行うことができる。他の水熱法は、通常の浸出条件を超える高温、例えば>80℃に電池スクラップをさらす、又は限定はされないが湿式粉砕法等の機械的エネルギーを使用してリチウムを遊離させて可溶性Li塩とする。
【0036】
好ましい実施形態において、鉱酸はHNO3、H2SO4、及びHClの1つ又は複数である。
【0037】
経済的理由により、この方法の工程3の後の、Liが低減されNi及びCoを保有する溶液は、出発物質中に存在していたNi及びCoの好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%以上を含有する。次いでNi及びCoの残り部分を含有する1つ又は複数の副生成物も得られ、これにさらなるリサイクルプロセスを施すことができる。
【0038】
工程3における浸出率は還元剤又は酸化剤を加えることにより最適化できる。工程3で使用できる還元剤は、限定はされないが、硫化物成分、硫黄、二酸化硫黄、亜硫酸塩成分、過酸化水素、金属化合物、水素である。工程3で使用できる酸化剤は、限定はされないが、過硫酸塩、酸素、過酸化水素、塩素、オゾンである。
【0039】
場合により、工程3は特定の条件、制御されたpH及び酸化還元電位のものとで、及び/又は特定の試薬を使用して行うことができ、それによりMn、Fe、Cu、Al等の不純物の溶解を最小限にする。これは浸出後のNi-及びCo-保有溶液中のNi及びCoの濃度を増加させるので、この工程の明らかな利点である。
【0040】
Cuの溶解を避けるためのそのような方法は、酸性溶液のAg/AgClに対する酸化還元電位を200mV未満に制御し酸性溶液のpHを4未満に維持することにより得られる。別のそのような方法において、Co及びNiは硫黄を含有する薬剤の存在下でCuから選択的に浸出し、これによりCo-及びNi-保有溶液並びにCuを含有する浸出残渣が得られる。
【0041】
別の実施形態において、この方法は工程3と工程4との間に精製工程を含み、工程3からの Ni-及びCo-保有溶液はCu及び/又はFe及び/又はAlも含有し、精製工程ではCu及び/又はFe及び/又はAlがNi-及びCo-保有溶液から除去される。不純物の1つ又は複数の除去は工程3の固液分離の前に行うことができる。
【0042】
Feの除去は、好ましくはO2又はH2O2を酸化剤として使用してFe3+化合物を析出させるように、溶液に酸化条件を与えることにより対処できる。
【0043】
Cu除去は、セメンテーション又はイオン交換等の当業者に既知の標準的な方法により行うことができる。
【0044】
Alも溶媒抽出又は加水分解等の当業者に既知の標準的な方法により除去できる。
【0045】
別の実施形態において、工程3からのNi-及びCo-保有溶液はMnも含有し、この方法は工程3と工程4との間にMn除去工程を含み、MnはNi-及びCo-保有溶液から除去される。Mnは例えば溶媒抽出又はMn4+化合物としての酸化析出によりそのようなNi-及びCo-保有溶液から除去できる。
【0046】
別の実施形態において、工程4は、Ni-及びCo-保有溶液の温度を低下させることにより、及び/又はNi-及びCo-保有溶液から水を除去することにより、及び/又は溶媒置換結晶化により、行われる。工程4における結晶化は、Ni-化合物及びCo-化合物の同時の共結晶化、Ni-化合物及びCo-化合物及びMn-化合物それぞれの同時の共結晶化を含むことに注意する。
【0047】
好ましくは、この方法はNi及び/又はCoをNi-及びCo-保有溶液から抽出する溶媒抽出又はイオン交換工程を含まない。これは、十分に純粋なCo-塩及び/又はNi-塩を得るために前記方法を具体的に適用することによりNi及び/又はCoをNi-及びCo-保有溶液から抽出する、従来使用される方法と対照的である。したがって、この方法の利点は、所望の元素であるNi及びCo、及び場合によりMnを溶液から抽出する、金属の大部分を抽出する方法と比較して、イオン交換固体又は溶媒抽出用の溶媒等の高価な化学物質、並びにそれらのストリッピング剤を必要としないことである。一方で、特定の金属をNi-及びCo-保有溶液から除去するために最終結晶化工程の前に精製工程を加えることは依然として常に可能である。例えば、純粋なニッケル結晶を製造することが目的である場合、結晶化の前にコバルトを除去することができる。
【0048】
さらなる利点として、結晶化工程である工程4は、工程3及び可能性のある精製工程の後の溶液中にまだ存在する微量の不純物のための精製工程を提供する。更に、結晶化は残留Liに向けた精製工程も提供する。低いLi:M比では、Liは好ましくはNi及び/又はCoの結晶化の間に液体溶液へ向かう。残留Liは工程2の間に除去されないLiであり、したがって工程3で得られるNi-及びCo-保有溶液中に存在する可能性がある。
【0049】
別の実施形態において、この方法の工程4の前に、Ni及び/又はCoを溶解した形態で又はNi-及びCo-保有溶液に可溶性である1つ若しくは複数の化合物として加えることにより、Ni-及びCo-保有溶液中のNi対Coの比を所望の値に調整する。このようにして、選択された特定の正極活性物質のための所望のNi対Coの比を既に有する結晶化生成物を作成でき、それらの材料の製造においてさらなるプロセス又は精製工程を避けられる可能性がある。
【0050】
別の実施形態において、この方法の工程4の前に、Ni、Co、及びMnの1つ又は複数を溶解した形態で又はNi-及びCo-保有溶液中に可溶性である1つ若しくは複数の化合物として加えることにより、Ni-及びCo-保有溶液中のNi対Co対Mnの比を所望の値に調整する。このようにして、選択された特定の正極活性物質のための所望のNi対Co対Mnの比を既に有する結晶化生成物を作成でき、それらの材料の製造においてさらなるプロセス又は精製工程を避けられる可能性がある。
【0051】
出発物質中のMnの存在は任意選択である。適切なMn-含有化学物質が低コストであり入手しやすいことを考慮すると、Mnを含まないNi-及びCo-保有溶液であっても、Mn源を後で加えて、Ni-Co-Mn含有電池用の活性物質の前駆体を調製するのに使用することができる。
【0052】
別の実施形態において、Ni-及びCo-保有溶液はg/lで表す場合にCoよりも多くのNiを含有する。
【0053】
別の実施形態において、Ni-及びCo-保有溶液はg/lで表す場合にCo及びMnの合計よりも多くのNiを含有する。
【0054】
別の実施形態において、この方法は工程3と工程4との間に精製工程を含み、CoはNi-及びCo-保有溶液から選択的に除去され、Ni結晶を得るのに適したCo-低減Ni-保有溶液が得られる。
【0055】
この方法の別の実施形態において、出発物質はNi、Co、Li、Al、F、並びにCu及びFeの1つ又は複数を含有し、工程2の高温冶金精錬法は融剤を使用した出発物質の還元精錬であり、Ni-Co保有相はNi、Co、Cuの大部分及びFeの少なくとも一部を含む合金であり、合金はLi、Al、及びFが低減されている。
【0056】
大部分とは、出発物質中に存在していたNi、Co、及びCuの総量の少なくとも50%、好ましくは75%、より好ましくは90%以上を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】工程3で得られるLi:M比が工程2で得られる様々なLi除去率の関数としてどのように変化するかを示す図である。
【
図2】Li:M比の関数としてのNiの溶解性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図面及び以下の詳細な説明において、本発明の実施を可能にするように好ましい実施形態を詳細に説明する。これらの特定の好ましい実施形態を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらの好ましい実施形態に限定されないことを理解することになる。しかしそれとは反対に、以下の詳細な説明の考察から明らかとなるように、本発明は多くの代替物、修正物、及び等価物を含む。
本発明を以下の実施例において更に例証する。
【実施例1】
【0059】
寿命に達した電池を60リットルのアルミナるつぼ中でリサイクルする。寿命に達した電池は10wt%のAl、2wt%のFe、4wt%のMn、4wt%のCo、9wt%のCu、13wt%のNi、2.5wt%のLi、25wt%のCを含有する。残りは例えば水素、酸素、及びフッ素等の元素を含む。
【0060】
誘導炉を使用して出発スラグを1450℃の温度まで加熱する。この温度に達したら、寿命に達した電池及び融剤の混合物を2時間にわたって液体スラグへ徐々に加える。この時間の間、10kgの石灰石及び5kgの砂と共に50kgの電池を加える。記載のような寿命に達した電池、出発スラグ、及び融剤を含む出発物質について、Li:M比は1.53である。供給物を装入する間にO2を220L/hの速度で浴の上方へ吹きつけて電池中の金属Al及び炭素をいずれも燃焼させる。最後の添加を行ったら、浴を通してCOを300L/hの速度で1時間吹きつけて所望の還元度を得る。それにより、スラグ相及び合金相が形成される。試料をスラグから取り出し、冷却後に合金及び複数の相を分離させる。得られる相の組成はTable 1.1(表1)に示され、質量の残り部分はフュームである。この高温冶金精錬工程の間、Liの除去率は100%である。
【0061】
【0062】
精錬操作から生じる合金相の部分は不活性雰囲気下で再溶融されウォータージェット中で噴霧される。これにより0.2mmの平均粒径を有する粉末分が得られる。
【0063】
噴霧した粉末の600gを、3.2Lの水が入ったガラスビーカーへ加える。粉末を懸濁させるため及びビーカーの底に注入される酸素ガスの散布のために撹拌機を使用する。酸素は浸出の間に酸化剤として作用する。混合物を加熱し80℃で維持する。1.05Lの998g/L硫酸を供給して粉末を8時間かけて溶解させる。9時間後、浸出工程を完了させ、この段階で基本的にすべての金属が溶解する。ビーカーを冷却し、内容物をろ過する。得られる浸出ろ液の体積は4.05Lであり、ろ液は60g/LのNi、19g/LのCo、8.0g/LのMn、38g/LのCu、9.1g/LのFe、<0.1g/LのAlを含み、Li:M比が0である。
【0064】
次に、Ni粉末を用いたセメンテーションによりCuをこの溶液から選択的に除去する。これは、浸出溶液を別の加熱及び撹拌されたビーカーへゆっくりとポンプで注入しながら同時に184gの金属Ni粉末を同じビーカーへ加えることにより行われる。このプロセスの間、溶液中でNiがCuと交換される。ろ過後、Cu-Ni混合セメント、及び銅が除去された溶液が得られる。
【0065】
次の工程において、Feは水酸化物として析出させることにより除去される。これは、銅が除去された溶液を80℃まで再加熱することにより行われる。酸素ガスを撹拌されたビーカーへ注入し135gのNiCO3を3時間の間に加える。これらの条件下で、Fe(OH)3を析出させる。ろ過後、鉄リッチなケーキ及び3.9Lのろ液が得られる。ろ液は108g/LのNi、18g/LのCo、7.7g/LのMn、<0.01g/LのCu、<0.01g/LのFe、<0.1g/LのAlを含む。
【0066】
次いで、Ni-Co-Mn混合硫酸塩の最終的な結晶化の前に所望のNi対Co対Mnの比を得るように、Co、Mn、及びNiの濃度を補正する。この実施例では発明者らは6:2:2のNi:Co:Mnのモル比を目標とする。これは、撹拌されたビーカー中の溶液を80℃で再加熱し、323gの硫酸コバルト七水和物及び336gの硫酸マンガン一水和物結晶を加えることにより、実現される。また1.3Lの水をこの工程で加えて、80g/LのNi、27g/LのCo、26g/LのMn、<0.01g/LのCu、<0.01g/LのFe、<0.1g/LのAlを含むろ液を得る。
【0067】
45℃及び真空下で蒸発結晶化を行う。結晶化工程の最後に、ニッケル、コバルト、及びマンガンの混合硫酸塩結晶が得られる。結晶は16.1%のNi、4.6%のCo、3.5%のMn、<0.002%のCu、<0.002%のFe、<0.002%のAlを含む。残りは硫酸塩及び水和水から成る。
【実施例2】
【0068】
浸出の前にLiを除去するために、黒い塊と呼ばれる、機械的に前処理した正極箔製造廃棄物をまず還元剤Cの存在下で熱により前処理する。黒い塊は33%のNi、11%のCo、10%のMn、<0.1%のCu、<0.1%のFe、0.4%のAl、6.1%のLiを含有する。残りは例えば酸素、炭素、及びフッ素等の元素を含む。出発物質のLi:M比は0.94である。
【0069】
上記の組成を有する機械的に前処理した正極箔製造廃棄物である、300gの黒い塊を、15.6gの炭素及び244.8gのCaCl2・2H2Oと混合する。この混合物をトレーに入れ、炉をN2流で常にパージしながら、電気炉で700℃の温度まで加熱する。700℃の温度を6時間維持する。この時間にわたって、Ni、Mn、及びCoの酸化物が(部分的に)還元され、水溶性Li塩、すなわちLi2CO3及び/又はLiClが形成される。6時間後、混合物の入った炉を室温までN2雰囲気下で冷却する。
【0070】
生成した混合物の350gを、1Lの水が入ったガラスビーカーへ加える。粉末を懸濁させるために撹拌機を使用する。混合物を加熱し80℃で維持する。32mLの硫酸(970g/L)を3時間かけてゆっくりと供給してLiの溶解を最適化する。5時間後、ビーカーを冷却し、内容物をろ過する。熱分解及び洗浄の終了時に、Ni、Co、及びMnを含有する261gの濃縮物及び1.3LのLiろ液が得られる。この前処理操作の物質収支をTable 2.1(表2)に示す。Liの88%がこの工程の間に除去される。
【0071】
【0072】
その後、261gのNi、Mn、Co濃縮物を0.8Lの水が入ったガラスビーカーへ加える。粉末を懸濁させるために撹拌機を使用する。混合物を加熱し80℃に維持する。241mLの硫酸(998g/L)を3時間かけてゆっくりと供給して粉末を溶解させる。浸出の終了時、56mLの35%過酸化水素を還元剤として加える。全体として4時間後に、浸出工程を完了させ、この段階で基本的にすべての金属が溶解する。ビーカーを冷却し、内容物をろ過する。1.02Lの浸出ろ液が得られ、溶液は76g/LのNi、25g/LのCo、23g/LのMn、<0.01g/LのCu、<0.01g/LのFe、0.7g/LのAl、1.5g/LのLiを含有し、Li:M比が0.10である。
【0073】
次に、Alをこの溶液から選択的に除去するために、ろ液のpHを上昇させる。まず、浸出ろ液を加熱したガラスビーカーに入れ、80℃に維持する。均質な溶液を確保するために撹拌機を使用する。8.5gのCoCO3を浸出溶液へ加える。3時間後、Alを非常に低いレベルまで溶液から除去し、内容物をろ過する。精製した溶液は76g/LのNi、27g/LのCo、23g/LのMn、<0.05g/LのCu、<0.05g/LのFe、<0.05g/LのAl、1.5g/LのLiを含有する。
【0074】
60℃で蒸発結晶化を行う。その結果として、ニッケル、コバルト、及びマンガンの混合硫酸塩結晶が形成される。結晶は15.7%のNi、5.2%のCo、2.3%のMn、<0.002%のCu、<0.002%のFe、<0.002%のAl、<0.01%のLiを含有する。残りは硫酸塩及び水和水から成る。
【実施例3】
【0075】
200gのニッケル-コバルト-アルミニウム(NCA)正極の製造スクラップを処理する。製造スクラップは48%のNi、9%のCo、<0.1%のMn、2%のAl、7%のLiを含有する。残りは例えば酸素等の元素を含む。出発物質のLi:M比は1.04である。
【0076】
200gの正極の製造スクラップを1Lの水が入った2Lの反応器へ加える。この混合物を撹拌し加熱板上で80℃の温度まで加熱する。987g/Lの濃度を有する220mLの硫酸を6時間で加える。そのような条件では、Liが溶解するが、一方で三価のCo及びNiは溶解しない。6時間後、固液混合物をブフナーフィルタ上でろ過する。およそ1.1Lのろ液を回収する。この操作により、リチウムの大部分は浸出されろ液中に存在する。Ni及びCoがリッチである107gのLi-低減残渣が得られる。ろ液及び乾燥後の残渣の組成はTable3.1(表3)で見ることができる。選択的Li浸出工程においてLiの除去率は99%を超える。
【0077】
【0078】
Ni-Co濃縮物を0.4Lの水が入ったガラスビーカーへ加える。粉末を懸濁させるために撹拌機を使用する。混合物を加熱し80℃で維持する。130mlの濃硫酸(998g/L)をゆっくりと供給して粉末を溶解させる。浸出の間に77mLの35%過酸化水素を還元剤として加える。8時間後、浸出工程を完了させる。ビーカーを冷却し、内容物をろ過する。浸出溶液(550mL)は102g/LのNi、19g/LのCo、<0.05g/LのMn、3.8g/LのAl、0.2g/LのLiを含有し、Li:M比が0.01である。
【0079】
次いで浸出溶液をガラスビーカー中で80℃まで加熱する。温度に達したら、16.4gのNiCO3及び2.7gのCoCO3を加える。均質な溶液を確保するために撹拌機を使用する。それによりNi及びCoが溶解し、一方でAlは溶液から選択的に析出し除去される。精製したろ液は112g/LのNi、21g/LのCo、<0.05g/LのMn、<0.05g/LのAl、0.2g/LのLiを含有する。
【0080】
次いで、Ni-Co混合硫酸塩結晶の最終的な結晶化の前に所望のN対Co比を得るように、Ni-濃度及びCo-濃度を補正する。この場合発明者らは6:2のNi:Coのモル比を目標とする。これは、撹拌されたビーカー中の溶液を80℃で再加熱し、45gの硫酸コバルト七水和物結晶を加えることにより、実現される。また100mLの水をこの工程で加えて96g/LのNi、32g/LのCo、<0.05g/LのMn、<0.05g/LのAl、0.2g/LのLiを含有するろ液を得る。
【0081】
20℃で蒸発結晶化を行う。その結果として、ニッケル及びコバルトの混合硫酸塩結晶が形成される。結晶は17.6%のNi、5.8%のCo、<0.001%のMn、<0.001%のAl、0.001%のLiを含有する。NiSO4・6H2O及びCoSO4・7H2Oの混合物が形成され、残りが硫酸塩及び水和水を含むと仮定される。Ni対Coの重量比は3.03であり、所望のモル比が裏付けられる。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Ni及びCoを含む出発物質から金属を回収し、続いてリチウムイオン充電式電池に使用される電池前駆体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な電池化学物質の1つは、金属リチウム、ニッケル、マンガン、及びコバルト(NMC)を含有する正極粉末を含む。別の多用される化学物質は、リチウム、ニッケル、コバルト、及びアルミニウム(NCA)を含有する正極粉末を利用する。
【0003】
リチウムイオン電池のライフサイクルの間、環境規制及び環境の法律に従うようにリサイクルされる必要がある様々な廃材が生じる。既に電池の製造プロセスにおいて、品質規格を満たす難しさに起因して製造廃棄物が発生している。そのような材料は、正極粉末、電極箔、セパレーター箔から、完成した電池セル又はモジュールまで様々である。
【0004】
製造廃棄物に加えて、寿命に達した電池もリサイクルされる必要がある。これは、電気部品又は電子部品と共にあらゆる成分を含むリチウム電池を主に含むが、場合によりニッケル-カドミウム電池、ニッケル-金属-水素化物電池、及び亜鉛電池等の非リチウム電池も含む、更により複雑な廃棄物の流れをもたらす。これらの製造廃棄物及び寿命に達した電池の派生物も、機械的処理及び/又は熱による前処理の結果である粉末分又は黒い塊の形態でリサイクルに利用可能である。
【0005】
成分がますます製品に加えられるにつれて、スクラップ材の化学的な複雑さは製造プロセスの終わりに向かって増していく。そのため、電池セル及びモジュールは、膨大な数の異なる元素、例えば正極ではNi、Co、Mn、Li、Fe、Al、V、P、F、C、Ti、及びMg、負極ではLi、Ti、Si、C、Al、及びCu、電解質ではLi、F、P、及び揮発性有機化合物、ケーシングではAl、Fe、Cu、Ni、Cr、並びにCl及びBrを含むプラスチックを含有する場合がある。
【0006】
使用済み電池の量は、現在進んでいる自動車産業の電化に主に起因して、今後10年間で毎年100,000トンを超えると予測される。電池リサイクルビジネスはそれにしたがって成長することになる。
【0007】
1つの従来の方法は、Liを含有する精製済み浸出溶液からCo及びNiを抽出する、溶媒抽出を使用する。別のそのような方法では、Co及びNiを析出により浸出溶液から分離し、やはりNi及びCoが低減されたLi含有の流れが得られる。金属抽出又は析出後の溶液中のLiは、典型的にはLi2CO3塩又はLi3PO4塩として、例えばリチウムとの化学量論量のNa
2
CO
3
又はNa
3
PO
4
により、溶液から除去される。
Meshramら[Hydrometallurgy、150巻、192~208頁、2014年]は、Ni及びCoの湿式精錬の間にNi及びCoが浸出溶液から溶媒抽出により抽出される方法を記載している。中国特許第107666022A号は、LiがNi及びCoの湿式精錬の前に回収され、Ni、Co、及びMnが加水分解を行うことにより溶液から抽出される方法を記載している。中国特許第109244580号はまた、塩基を消費し、金属を水酸化物として析出させることを記載している。これらの方法はNaOH等の塩基をNi及びCoに対する化学量論量を超えて消費するという欠点がある。
【0008】
別の方法が中国特許第108439438号で知られており、ここでは焼成済みのリチウム含有電池廃棄物を酸浸出させ、Li、Co、Ni、Mn、Al、Fe及びCuを含有する溶液を得て、ここから最初にCu、Fe、及びAlを除去し、その後Liを抽出剤を使用した抽出により除去し、続いてNi、Co、Mn混合硫酸塩を結晶化させる。そのような方法は中国特許第107768763号でも知られており、ここでは電池廃棄物を酸中で浸出させ、その後得られる溶液からCu、Fe、及びAlを析出により除去し、その後LiをLiFとして除去し、続いてNi、Co、Mn混合硫酸塩を結晶化させる。
【0009】
しかし、これらの既知の方法は、例えば溶解したLiの存在下でNiSO4の溶解性が大幅に低下するという欠点がある。このことは、リサイクル工場の反応器等の加工装置が所定の量において限られた量のNiしか保持できず、装置のNi生産能力を制限することを意味する。
【0010】
そのような既知の方法において、含有されるLiを溶解させるのに相当量の酸が消費される。これは典型的な電池廃棄物における酸の全消費量の33%に容易に達することがある。次いでLiを除去するのにさらなる薬剤が使用される。したがって、Liの溶解及び除去はさらなる塩の排出をもたらす。
【0011】
また、抽出工程は費用が高く、なぜなら通常は高価な抽出剤、並びにさらなる工程、例えば除去しようとする金属(1つ又は複数)を抽出剤に担持させる工程及び抽出剤を取り除く工程等を必要とするからである。
【0012】
したがって経済的及び環境上の理由から、これらの既知の方法で可能である濃度よりも高い浸出溶液中のNi濃度を実現しながら、好ましくはまた溶解における酸の消費がより少なく、浸出溶液からのLiの除去における薬剤の消費がより少ないか又は消費がなく、したがって塩の排出がより少ないことが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】中国特許第107666022A号
【特許文献2】中国特許第109244580号
【特許文献3】中国特許第108439438号
【特許文献4】中国特許第107768763号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Meshramら、Hydrometallurgy、150巻、192~208頁、2014年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって本発明の目的は、浸出溶液中のMのより高い濃度を実現できるという点で有利であり薬剤の消費を削減する、Liイオン電池又はそれらの派生製品を含有する出発物質から金属Mを回収する方法を提供することである(MはNi及びCo、及び場合によりMnを表す)。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、請求項1に記載の方法を提供することにより、特に少なくとも部分的にLiを出発物質から除去することにより、実現される。所定の体積においてより高いNiの濃度等のより高い金属濃度に達し、それをその後の加工工程の間維持するためには、Ni及びCoを浸出させる前に部分的又は完全にLiを除去することが必須である。それにより薬剤消費の削減だけでなく加工装置の向上した処理能力が実現される。
【0017】
したがって、本発明は、Ni及びCoを含む金属MをLi含有出発物質から回収する方法であって、
工程1:リチウムイオン電池又はそれらの派生製品を含む前記出発物質を準備する工程と;
工程2:
- Li-保有スラグ相及びLi-フューム、及び酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co保有相の1つ又は複数を生成させる、スラグ生成剤を使用した高温冶金精錬法;
- 少なくとも1つの水溶性Li-化合物を含有するNi-Co-保有残渣を生成させ、水溶液で洗浄することにより前記少なくとも1つのLi-化合物を選択的に除去し、それにより酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有残渣を得る、還元剤を使用した熱処理法;
- Liを前記出発物質から選択的に浸出させ、Ni及びCoは少なくとも部分的に不溶性である、水溶液又は酸性溶液を使用した湿式精錬浸出法、及び酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有残渣を得る、固液分離;
の1つ又は複数を使用することにより、(1)前記出発物質中に存在するLiの30%、及び(2)その後の酸性浸出工程で0.70以下のLi:M比を得るように決定される前記出発物質中に存在するLiのパーセンテージのうち、最大のものを超える量でLiを除去する工程と、
工程3:相対的な量の、工程2で得られるLi-低減Ni-Co-保有材料及び鉱酸を使用してその後の浸出を行い、それによりNi-及びCo-保有溶液を得る工程と;
工程4:Ni-及びCo-保有溶液の温度を低下させることにより、及び/又はNi-及びCo-保有溶液から水を除去することにより、及び/又は溶媒置換結晶化により行われる、Ni、Co、及び場合によりMnを結晶化させる工程と
を含む、方法に関する。
【0018】
工業的な装置において、プロセスの出発物質は「供給物」又は「冶金装入物」とも呼ばれることがあり、特に後者は精錬又は金属精製等の冶金プロセスについて語る場合に呼ばれる。
【0019】
派生製品としては、電池製品、黒い塊、電極箔、寿命に達した電池、又はモジュールの様々な段階からのあらゆる種類の製品スクラップを挙げることができる。リチウムイオン電池は、Liをその電荷キャリアとして使用する電池を意味し、例えば現在市販されている様々な電池のタイプだけではなく、限定はされないが固体電池等のこれからの新しい電池技術も挙げられる。
【0020】
Li:M比はLiのモル濃度対金属Mの全モル濃度であり、MはNi+Co+Mnの全モル濃度である。
【0021】
図1は、3種の異なる電池スクラップ:Al及びCuを含まない電池スクラップ(丸);Al及びCu含量が低い電池スクラップ(四角);Al及びCu含量が高い電池スクラップ(三角形)について、工程3で得られるLi:M比が工程2で得られる様々なLi除去率の関数としてどのように変化するかを示す。
【0022】
Li:M比を低下させると例えばNiの溶解性が増加する。Ni等の金属の溶解性はLiの存在下よりも溶解したLiの非存在下ではるかに高い。これはLiが存在する場合に硫酸イオン等の対応するアニオンの濃度が増加することに起因する。
図2は、Li
2SO
4及びNiSO
4を含有する溶液の場合において、Li:M比の関数としてのNiの溶解性を示す。これはNiSO
4及びLi
2SO
4のみを含有する溶液の場合においてLi:M比が増加するとNiの溶解性が減少することを裏付ける。
【0023】
金属硫酸塩と同様に、同じ考察が硝酸塩、塩化物、及びそれらの混合物等の他の無機金属塩に適用可能であり、それらの金属はNi、Co、Mn、Fe、Cu、Al、及びその他であってもよい。
【0024】
この方法の工程2は除去するLiの量に適用される2つの基準(1)及び(2)を規定し、次いでその2つの高い方が選択されることに注意する。基準(1)は原理上はすべての出発物質に有効であるが、基準(2)、すなわちその後の酸性浸出工程で0.70以下のLi:M比を得るためのLiの除去は、元の出発物質中で0.70を超えるLi:M比を有する出発物質について好ましい場合がある。
【0025】
0.70以下のLi:M比は、装置の製造能力を大幅に向上させるので(同じ体積を使用する従来の方法と比較して)、経済的理由で工業的な装置において適切と考えられる。0.70以下のLi:M比は、本発明のその後の浸出工程3において120g/L以上(硫酸塩マトリックス中)の金属濃度(Liを除く)に相当する。特に結晶化工程4において、高い金属濃度が有益である。
【0026】
別の実施形態において、基準(2)である工程2のLi:M比は0.50以下である。この方法では128g/L以上(硫酸塩マトリックス中)の金属濃度を有することが有利であり、これは0.50以下のLi:M比に相当する。プロセスの工程2においてLiを除去することにより、そのようなより低いLi:M比が浸出溶液において得られる。
【0027】
別の実施形態において、上記の方法の工程1及び工程2は以下の通りである:
リチウムイオン電池又はそれらの派生製品を含むLi-含有出発物質からNi及びCoを含む金属Mを回収する方法であって、
工程1:0.50を超えるLi:M比を有する前記出発物質を準備する工程と;
工程2:
- Li-保有スラグ相及びLi-フューム、及び酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有相の1つ又は複数を生成させる、スラグ生成剤を使用した高温冶金精錬法;
- 少なくとも1つの水溶性Li-化合物を含有するNi-Co-保有残渣を生成させ、水溶液で洗浄することにより前記少なくとも1つのLi-化合物を選択的に除去し、それにより酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有残渣を得る、還元剤を使用した熱処理法;
- Liを前記出発物質から選択的に浸出させ、Ni及びCoは少なくとも部分的に不溶性である、水溶液又は酸性溶液を使用した湿式精錬浸出法、及び酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有残渣を得る、固液分離;
の1つ又は複数を使用することにより、その後の酸性浸出工程で0.50以下のLi:M比を得るように決定される前記出発物質中に存在するLiのパーセンテージを除去する工程と、
を含む方法。
【0028】
しかし、この方法の工程2において更により多くのLiを除去することがより好ましく、なぜならこれはその後の浸出工程3においてLi:M比を更にいっそう低下させ有利な効果を増大させることになるためである。したがって、別の実施形態において、金属濃度は135g/L以上(硫酸塩マトリックス中)であり、これは0.30以下のLi:M比に相当し、より好ましくは139g/L以上(硫酸塩マトリックス中)であり、これは0.20以下のLi:M比に相当する。硫酸塩マトリックスについて記載されるような同様の有益な効果は、塩化物又は硝酸塩マトリックスにおいて見られる。
【0029】
Li:M比を0.50以下まで、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.20以下まで低下させることは本発明の結晶化工程4において有利であり、なぜなら純粋な結晶、すなわちLiで汚染されていない結晶を生成させることができるからである。より純粋なNi-及び/又はCo-結晶を得ることは、場合によりさらなるプロセス又は精製工程を回避しながら、例えば正極活性物質を製造するのに有利である。
【0030】
更に、浸出工程の前にLiを除去する場合、薬剤の消費が大幅に少なくなる。例えば、この方法の工程3における酸の消費は、出発物質中のLiのおよそ30%が工程2で除去される場合、既に5%少なくなる。
【0031】
別の実施形態において、工程2の熱処理法は250℃を超える温度で行われる。様々な還元剤を熱処理法において使用することができ、例えば限定はされないが、金属粉末、負極材料、硫黄、炭素、CO、CO2、CH4、H2S、SO2、NaHSO4、又はH2を使用できる。負極材料は還元剤として機能し得る。
【0032】
別の実施形態において、水溶液で洗浄することにより少なくとも1つの水溶性Li-化合物を選択的に除去する工程は、2.5以上のpHで行われる。選択的な除去とは、Ni及びCoに対して選択的であることを意味する。
【0033】
この方法の別の実施形態において、工程2の水溶性Li-化合物は、Li2O、Li2CO3、LiHCO3、LiCl、Li2SO4、LiF、LiOHの1つ又は複数を含む。Liに対するそれぞれの対イオンは、リサイクルプロセスで使用される、考えられる様々な種類の出発物質、又は添加される還元剤に由来する場合がある。
【0034】
この方法の別の実施形態において、工程2の高温冶金精錬法のNi-Co-保有相は、10mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下の平均径を有する粒径分布まで粉砕される。これは工程3の効率的で迅速な浸出において有利である。そのような平均粒径分布までの粉砕は、造粒、噴霧、又はミリング等の当業者に既知の標準的な方法により行われる。
【0035】
別の実施形態において、工程2は、特定のpH、温度、及び酸化還元電位の厳密な制御下で操作することによりリチウムを選択的に浸出させる、湿式精錬法を使用して行うことができる。選択的な溶解は、水によって行うことができ、これは選択的洗浄と呼ばれ、又は特定の浸出剤、例えば限定はされないがリン酸若しくはシュウ酸を添加して、又は限定はされないが過硫酸塩、オゾン、塩素等の酸化剤の存在下で行うことができる。他の水熱法は、通常の浸出条件を超える高温、例えば>80℃に電池スクラップをさらす、又は限定はされないが湿式粉砕法等の機械的エネルギーを使用してリチウムを遊離させて可溶性Li塩とする。
【0036】
好ましい実施形態において、鉱酸はHNO3、H2SO4、及びHClの1つ又は複数である。
【0037】
経済的理由により、この方法の工程3の後の、Liが低減されNi及びCoを保有する溶液は、出発物質中に存在していたNi及びCoの好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも90%以上を含有する。次いでNi及びCoの残り部分を含有する1つ又は複数の副生成物も得られ、これにさらなるリサイクルプロセスを施すことができる。
【0038】
工程3における浸出率は還元剤又は酸化剤を加えることにより最適化できる。工程3で使用できる還元剤は、限定はされないが、硫化物成分、硫黄、二酸化硫黄、亜硫酸塩成分、過酸化水素、金属化合物、水素である。工程3で使用できる酸化剤は、限定はされないが、過硫酸塩、酸素、過酸化水素、塩素、オゾンである。
【0039】
場合により、工程3は特定の条件、制御されたpH及び酸化還元電位のものとで、及び/又は特定の試薬を使用して行うことができ、それによりMn、Fe、Cu、Al等の不純物の溶解を最小限にする。これは浸出後のNi-及びCo-保有溶液中のNi及びCoの濃度を増加させるので、この工程の明らかな利点である。
【0040】
Cuの溶解を避けるためのそのような方法は、酸性溶液のAg/AgClに対する酸化還元電位を200mV未満に制御し酸性溶液のpHを4未満に維持することにより得られる。別のそのような方法において、Co及びNiは硫黄を含有する薬剤の存在下でCuから選択的に浸出し、これによりCo-及びNi-保有溶液並びにCuを含有する浸出残渣が得られる。
【0041】
別の実施形態において、この方法は工程3と工程4との間に精製工程を含み、工程3からの Ni-及びCo-保有溶液はCu及び/又はFe及び/又はAlも含有し、精製工程ではCu及び/又はFe及び/又はAlがNi-及びCo-保有溶液から除去される。不純物の1つ又は複数の除去は工程3の固液分離の前に行うことができる。
【0042】
Feの除去は、好ましくはO2又はH2O2を酸化剤として使用してFe3+化合物を析出させるように、溶液に酸化条件を与えることにより対処できる。
【0043】
Cu除去は、セメンテーション又はイオン交換等の当業者に既知の標準的な方法により行うことができる。
【0044】
Alも溶媒抽出又は加水分解等の当業者に既知の標準的な方法により除去できる。
【0045】
別の実施形態において、工程3からのNi-及びCo-保有溶液はMnも含有し、この方法は工程3と工程4との間にMn除去工程を含み、MnはNi-及びCo-保有溶液から除去される。Mnは例えば溶媒抽出又はMn4+化合物としての酸化析出によりそのようなNi-及びCo-保有溶液から除去できる。
【0046】
工程4における結晶化は、Ni-化合物及びCo-化合物の同時の共結晶化、Ni-化合物及びCo-化合物及びMn-化合物それぞれの同時の共結晶化を含むことに注意する。
【0047】
好ましくは、この方法はNi及び/又はCoをNi-及びCo-保有溶液から抽出する溶媒抽出又はイオン交換工程を含まない。これは、十分に純粋なCo-塩及び/又はNi-塩を得るために前記方法を具体的に適用することによりNi及び/又はCoをNi-及びCo-保有溶液から抽出する、従来使用される方法と対照的である。したがって、この方法の利点は、所望の元素であるNi及びCo、及び場合によりMnを溶液から抽出する、金属の大部分を抽出する方法と比較して、イオン交換固体又は溶媒抽出用の溶媒等の高価な化学物質、並びにそれらのストリッピング剤を必要としないことである。一方で、特定の金属をNi-及びCo-保有溶液から除去するために最終結晶化工程の前に精製工程を加えることは依然として常に可能である。例えば、純粋なニッケル結晶を製造することが目的である場合、結晶化の前にコバルトを除去することができる。
【0048】
さらなる利点として、結晶化工程である工程4は、工程3及び可能性のある精製工程の後の溶液中にまだ存在する微量の不純物のための精製工程を提供する。更に、結晶化は残留Liに向けた精製工程も提供する。低いLi:M比では、Liは好ましくはNi及び/又はCoの結晶化の間に液体溶液へ向かう。残留Liは工程2の間に除去されないLiであり、したがって工程3で得られるNi-及びCo-保有溶液中に存在する可能性がある。
【0049】
別の実施形態において、この方法の工程4の前に、Ni及び/又はCoを溶解した形態で又はNi-及びCo-保有溶液に可溶性である1つ若しくは複数の化合物として加えることにより、Ni-及びCo-保有溶液中のNi対Coの比を所望の値に調整する。このようにして、選択された特定の正極活性物質のための所望のNi対Coの比を既に有する結晶化生成物を作成でき、それらの材料の製造においてさらなるプロセス又は精製工程を避けられる可能性がある。
【0050】
別の実施形態において、この方法の工程4の前に、Ni、Co、及びMnの1つ又は複数を溶解した形態で又はNi-及びCo-保有溶液中に可溶性である1つ若しくは複数の化合物として加えることにより、Ni-及びCo-保有溶液中のNi対Co対Mnの比を所望の値に調整する。このようにして、選択された特定の正極活性物質のための所望のNi対Co対Mnの比を既に有する結晶化生成物を作成でき、それらの材料の製造においてさらなるプロセス又は精製工程を避けられる可能性がある。
【0051】
出発物質中のMnの存在は任意選択である。適切なMn-含有化学物質が低コストであり入手しやすいことを考慮すると、Mnを含まないNi-及びCo-保有溶液であっても、Mn源を後で加えて、Ni-Co-Mn含有電池用の活性物質の前駆体を調製するのに使用することができる。
【0052】
別の実施形態において、Ni-及びCo-保有溶液はg/lで表す場合にCoよりも多くのNiを含有する。
【0053】
別の実施形態において、Ni-及びCo-保有溶液はg/lで表す場合にCo及びMnの合計よりも多くのNiを含有する。
【0054】
別の実施形態において、この方法は工程3と工程4との間に精製工程を含み、CoはNi-及びCo-保有溶液から選択的に除去され、Ni結晶を得るのに適したCo-低減Ni-保有溶液が得られる。
【0055】
この方法の別の実施形態において、出発物質はNi、Co、Li、Al、F、並びにCu及びFeの1つ又は複数を含有し、工程2の高温冶金精錬法は融剤を使用した出発物質の還元精錬であり、Ni-Co保有相はNi、Co、Cuの大部分及びFeの少なくとも一部を含む合金であり、合金はLi、Al、及びFが低減されている。
【0056】
大部分とは、出発物質中に存在していたNi、Co、及びCuの総量の少なくとも50%、好ましくは75%、より好ましくは90%以上を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】工程3で得られるLi:M比が工程2で得られる様々なLi除去率の関数としてどのように変化するかを示す図である。
【
図2】Li:M比の関数としてのNiの溶解性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図面及び以下の詳細な説明において、本発明の実施を可能にするように好ましい実施形態を詳細に説明する。これらの特定の好ましい実施形態を参照して本発明を説明するが、本発明はこれらの好ましい実施形態に限定されないことを理解することになる。しかしそれとは反対に、以下の詳細な説明の考察から明らかとなるように、本発明は多くの代替物、修正物、及び等価物を含む。
本発明を以下の実施例において更に例証する。
【実施例1】
【0059】
寿命に達した電池を60リットルのアルミナるつぼ中でリサイクルする。寿命に達した電池は10wt%のAl、2wt%のFe、4wt%のMn、4wt%のCo、9wt%のCu、13wt%のNi、2.5wt%のLi、25wt%のCを含有する。残りは例えば水素、酸素、及びフッ素等の元素を含む。
【0060】
誘導炉を使用して出発スラグを1450℃の温度まで加熱する。この温度に達したら、寿命に達した電池及び融剤の混合物を2時間にわたって液体スラグへ徐々に加える。この時間の間、10kgの石灰石及び5kgの砂と共に50kgの電池を加える。記載のような寿命に達した電池、出発スラグ、及び融剤を含む出発物質について、Li:M比は1.53である。供給物を装入する間にO2を220L/hの速度で浴の上方へ吹きつけて電池中の金属Al及び炭素をいずれも燃焼させる。最後の添加を行ったら、浴を通してCOを300L/hの速度で1時間吹きつけて所望の還元度を得る。それにより、スラグ相及び合金相が形成される。試料をスラグから取り出し、冷却後に合金及び複数の相を分離させる。得られる相の組成はTable 1.1(表1)に示され、質量の残り部分はフュームである。この高温冶金精錬工程の間、Liの除去率は100%である。
【0061】
【0062】
精錬操作から生じる合金相の部分は不活性雰囲気下で再溶融されウォータージェット中で噴霧される。これにより0.2mmの平均粒径を有する粉末分が得られる。
【0063】
噴霧した粉末の600gを、3.2Lの水が入ったガラスビーカーへ加える。粉末を懸濁させるため及びビーカーの底に注入される酸素ガスの散布のために撹拌機を使用する。酸素は浸出の間に酸化剤として作用する。混合物を加熱し80℃で維持する。1.05Lの998g/L硫酸を供給して粉末を8時間かけて溶解させる。9時間後、浸出工程を完了させ、この段階で基本的にすべての金属が溶解する。ビーカーを冷却し、内容物をろ過する。得られる浸出ろ液の体積は4.05Lであり、ろ液は60g/LのNi、19g/LのCo、8.0g/LのMn、38g/LのCu、9.1g/LのFe、<0.1g/LのAlを含み、Li:M比が0である。
【0064】
次に、Ni粉末を用いたセメンテーションによりCuをこの溶液から選択的に除去する。これは、浸出溶液を別の加熱及び撹拌されたビーカーへゆっくりとポンプで注入しながら同時に184gの金属Ni粉末を同じビーカーへ加えることにより行われる。このプロセスの間、溶液中でNiがCuと交換される。ろ過後、Cu-Ni混合セメント、及び銅が除去された溶液が得られる。
【0065】
次の工程において、Feは水酸化物として析出させることにより除去される。これは、銅が除去された溶液を80℃まで再加熱することにより行われる。酸素ガスを撹拌されたビーカーへ注入し135gのNiCO3を3時間の間に加える。これらの条件下で、Fe(OH)3を析出させる。ろ過後、鉄リッチなケーキ及び3.9Lのろ液が得られる。ろ液は108g/LのNi、18g/LのCo、7.7g/LのMn、<0.01g/LのCu、<0.01g/LのFe、<0.1g/LのAlを含む。
【0066】
次いで、Ni-Co-Mn混合硫酸塩の最終的な結晶化の前に所望のNi対Co対Mnの比を得るように、Co、Mn、及びNiの濃度を補正する。この実施例では発明者らは6:2:2のNi:Co:Mnのモル比を目標とする。これは、撹拌されたビーカー中の溶液を80℃で再加熱し、323gの硫酸コバルト七水和物及び336gの硫酸マンガン一水和物結晶を加えることにより、実現される。また1.3Lの水をこの工程で加えて、80g/LのNi、27g/LのCo、26g/LのMn、<0.01g/LのCu、<0.01g/LのFe、<0.1g/LのAlを含むろ液を得る。
【0067】
45℃及び真空下で蒸発結晶化を行う。結晶化工程の最後に、ニッケル、コバルト、及びマンガンの混合硫酸塩結晶が得られる。結晶は16.1%のNi、4.6%のCo、3.5%のMn、<0.002%のCu、<0.002%のFe、<0.002%のAlを含む。残りは硫酸塩及び水和水から成る。
【実施例2】
【0068】
浸出の前にLiを除去するために、黒い塊と呼ばれる、機械的に前処理した正極箔製造廃棄物をまず還元剤Cの存在下で熱により前処理する。黒い塊は33%のNi、11%のCo、10%のMn、<0.1%のCu、<0.1%のFe、0.4%のAl、6.1%のLiを含有する。残りは例えば酸素、炭素、及びフッ素等の元素を含む。出発物質のLi:M比は0.94である。
【0069】
上記の組成を有する機械的に前処理した正極箔製造廃棄物である、300gの黒い塊を、15.6gの炭素及び244.8gのCaCl2・2H2Oと混合する。この混合物をトレーに入れ、炉をN2流で常にパージしながら、電気炉で700℃の温度まで加熱する。700℃の温度を6時間維持する。この時間にわたって、Ni、Mn、及びCoの酸化物が(部分的に)還元され、水溶性Li塩、すなわちLi2CO3及び/又はLiClが形成される。6時間後、混合物の入った炉を室温までN2雰囲気下で冷却する。
【0070】
生成した混合物の350gを、1Lの水が入ったガラスビーカーへ加える。粉末を懸濁させるために撹拌機を使用する。混合物を加熱し80℃で維持する。32mLの硫酸(970g/L)を3時間かけてゆっくりと供給してLiの溶解を最適化する。5時間後、ビーカーを冷却し、内容物をろ過する。熱分解及び洗浄の終了時に、Ni、Co、及びMnを含有する261gの濃縮物及び1.3LのLiろ液が得られる。この前処理操作の物質収支をTable 2.1(表2)に示す。Liの88%がこの工程の間に除去される。
【0071】
【0072】
その後、261gのNi、Mn、Co濃縮物を0.8Lの水が入ったガラスビーカーへ加える。粉末を懸濁させるために撹拌機を使用する。混合物を加熱し80℃に維持する。241mLの硫酸(998g/L)を3時間かけてゆっくりと供給して粉末を溶解させる。浸出の終了時、56mLの35%過酸化水素を還元剤として加える。全体として4時間後に、浸出工程を完了させ、この段階で基本的にすべての金属が溶解する。ビーカーを冷却し、内容物をろ過する。1.02Lの浸出ろ液が得られ、溶液は76g/LのNi、25g/LのCo、23g/LのMn、<0.01g/LのCu、<0.01g/LのFe、0.7g/LのAl、1.5g/LのLiを含有し、Li:M比が0.10である。
【0073】
次に、Alをこの溶液から選択的に除去するために、ろ液のpHを上昇させる。まず、浸出ろ液を加熱したガラスビーカーに入れ、80℃に維持する。均質な溶液を確保するために撹拌機を使用する。8.5gのCoCO3を浸出溶液へ加える。3時間後、Alを非常に低いレベルまで溶液から除去し、内容物をろ過する。精製した溶液は76g/LのNi、27g/LのCo、23g/LのMn、<0.05g/LのCu、<0.05g/LのFe、<0.05g/LのAl、1.5g/LのLiを含有する。
【0074】
60℃で蒸発結晶化を行う。その結果として、ニッケル、コバルト、及びマンガンの混合硫酸塩結晶が形成される。結晶は15.7%のNi、5.2%のCo、2.3%のMn、<0.002%のCu、<0.002%のFe、<0.002%のAl、<0.01%のLiを含有する。残りは硫酸塩及び水和水から成る。
【実施例3】
【0075】
200gのニッケル-コバルト-アルミニウム(NCA)正極の製造スクラップを処理する。製造スクラップは48%のNi、9%のCo、<0.1%のMn、2%のAl、7%のLiを含有する。残りは例えば酸素等の元素を含む。出発物質のLi:M比は1.04である。
【0076】
200gの正極の製造スクラップを1Lの水が入った2Lの反応器へ加える。この混合物を撹拌し加熱板上で80℃の温度まで加熱する。987g/Lの濃度を有する220mLの硫酸を6時間で加える。そのような条件では、Liが溶解するが、一方で三価のCo及びNiは溶解しない。6時間後、固液混合物をブフナーフィルタ上でろ過する。およそ1.1Lのろ液を回収する。この操作により、リチウムの大部分は浸出されろ液中に存在する。Ni及びCoがリッチである107gのLi-低減残渣が得られる。ろ液及び乾燥後の残渣の組成はTable3.1(表3)で見ることができる。選択的Li浸出工程においてLiの除去率は99%を超える。
【0077】
【0078】
Ni-Co濃縮物を0.4Lの水が入ったガラスビーカーへ加える。粉末を懸濁させるために撹拌機を使用する。混合物を加熱し80℃で維持する。130mlの濃硫酸(998g/L)をゆっくりと供給して粉末を溶解させる。浸出の間に77mLの35%過酸化水素を還元剤として加える。8時間後、浸出工程を完了させる。ビーカーを冷却し、内容物をろ過する。浸出溶液(550mL)は102g/LのNi、19g/LのCo、<0.05g/LのMn、3.8g/LのAl、0.2g/LのLiを含有し、Li:M比が0.01である。
【0079】
次いで浸出溶液をガラスビーカー中で80℃まで加熱する。温度に達したら、16.4gのNiCO3及び2.7gのCoCO3を加える。均質な溶液を確保するために撹拌機を使用する。それによりNi及びCoが溶解し、一方でAlは溶液から選択的に析出し除去される。精製したろ液は112g/LのNi、21g/LのCo、<0.05g/LのMn、<0.05g/LのAl、0.2g/LのLiを含有する。
【0080】
次いで、Ni-Co混合硫酸塩結晶の最終的な結晶化の前に所望のN対Co比を得るように、Ni-濃度及びCo-濃度を補正する。この場合発明者らは6:2のNi:Coのモル比を目標とする。これは、撹拌されたビーカー中の溶液を80℃で再加熱し、45gの硫酸コバルト七水和物結晶を加えることにより、実現される。また100mLの水をこの工程で加えて96g/LのNi、32g/LのCo、<0.05g/LのMn、<0.05g/LのAl、0.2g/LのLiを含有するろ液を得る。
【0081】
20℃で蒸発結晶化を行う。その結果として、ニッケル及びコバルトの混合硫酸塩結晶が形成される。結晶は17.6%のNi、5.8%のCo、<0.001%のMn、<0.001%のAl、0.001%のLiを含有する。NiSO4・6H2O及びCoSO4・7H2Oの混合物が形成され、残りが硫酸塩及び水和水を含むと仮定される。Ni対Coの重量比は3.03であり、所望のモル比が裏付けられる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni及びCoを含む金属MをLi-含有出発物質から回収する方法であって、
工程1:リチウムイオン電池又はそれらの派生製品を含む前記出発物質を準備する工程と;
工程2:
- Li-保有スラグ相及びLi-フューム、並びに酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有相の1つ又は複数を生成させる、スラグ生成剤を使用した高温冶金精錬法;
- 少なくとも1つの水溶性Li化合物を含有するNi-Co-保有残渣を生成させ、水溶液で洗浄することにより前記少なくとも1つのLi-化合物を除去し、それにより酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有残渣を得る、還元剤を使用した熱処理法;
- Liを前記出発物質から浸出させ、Ni及びCoは少なくとも部分的に不溶性である、水溶液又は酸性溶液を使用した湿式精錬浸出法、及び酸浸出されやすいLi-低減Ni-Co-保有残渣を得る、固液分離;
の1つ又は複数を使用することにより、(1)前記出発物質中に存在するLiの30%、及び(2)その後の酸性浸出工程で0.70以下のLi:M比を得るように決定される前記出発物質中に存在するLiのパーセンテージのうち、最大のものを超える量でLiを除去する工程と、
工程3:相対的な量の、工程2で得られるLi-低減Ni-Co-保有材料及び鉱酸を使用してその後の浸出を行い、それによりNi-及びCo-保有溶液を得る工程と;
工程4:Ni-及びCo-保有溶液の温度を低下させることにより、及び/又はNi-及びCo-保有溶液から水を除去することにより、及び/又は溶媒置換結晶化により行われる、Ni、Co、及び場合によりMnを結晶化させる工程と
を含む、方法。
【請求項2】
工程2の熱処理法が250℃を超える温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水溶液で洗浄することにより前記少なくとも1つの水溶性Li-化合物を除去する工程が、2.5以上のpHで行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程2の前記少なくとも1つの水溶性Li-化合物が、Li
2O、Li
2CO
3、LiHCO
3、LiCl、Li
2SO
4、LiF、LiOHの1つ又は複数を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
鉱酸が、HNO
3、H
2SO
4、及びHClの1つ又は複数である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程2の高温冶金精錬法のNi-Co-保有相が、10mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下の平均径を有する粒径分布まで粉砕される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程3からのNi-及びCo-保有溶液がCu及び/又はFe及び/又はAlも含有し、方法が、工程3と工程4との間に精製工程を含み、Cu及び/又はFe及び/又はAlがNi-及びCo-保有溶液から除去される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程3からのNi-及びCo-保有溶液がMnも含有し、方法が、工程3と工程4との間にMn除去工程を含み、MnがNi-及びCo-保有溶液から除去される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程4の前に、Ni及び/又はCoを溶解した形態で又はNi-及びCo-保有溶液に可溶性である1つ若しくは複数の化合物として加えることにより、Ni-及びCo-保有溶液中のNi対Coの比を所望の値に調整する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程4の前に、Ni、Co、及びMnの1つ又は複数を溶解した形態で又はNi-及びCo-保有溶液中に可溶性である1つ若しくは複数の化合物として加えることにより、Ni-及びCo-保有溶液中のNi対Co対Mnの比を所望の値に調整する、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
Ni-及びCo-保有溶液がg/lで表す場合にCoよりも多くのNiを含有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
Ni-及びCo-保有溶液がg/lで表す場合にCo及びMnの合計よりも多くのNiを含有する、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程3と工程4との間に精製工程を含み、CoがNi-及びCo-保有溶液から選択的に除去され、Ni結晶を得るのに適したCo-低減Ni-保有溶液が得られる、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
出発物質がNi、Co、Li、Al、F、並びにCu及びFeの1つ又は複数を含有し、工程2の高温冶金精錬法が融剤を使用した出発物質の還元精錬であり、Ni-Co-保有相がNi、Co、Cuの大部分及びFeの少なくとも一部を含む合金であり、合金はLi、Al、及びFが低減されている、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】