(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(54)【発明の名称】リチウム金属アノードの表面保護
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1395 20100101AFI20220620BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220620BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220620BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220620BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/66 A
H01M4/134
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562346
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2020024687
(87)【国際公開番号】W WO2020219201
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘール, スブラマニヤ ピー.
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017EE01
5H017EE04
5H017HH03
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AK16
5H029AL01
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ24
5H029DJ07
5H029EJ01
5H029EJ05
5H029EJ07
5H029HJ04
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA24
5H050CB12
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA09
5H050EA02
5H050EA12
5H050EA15
5H050GA24
5H050HA04
(57)【要約】
金属電極構造体、より具体的にはリチウム含有アノード、前述のリチウム含有電極を含む一次及び二次電気化学デバイスなどの高性能電気化学デバイスを形成するための方法及び装置。一実施形態では、方法は、集電体上にリチウム金属膜を形成することを含む。集電体は、銅及び/又はステンレス鋼を含む。方法は、リチウム金属膜上に保護膜スタックを形成することをさらに含み、リチウム金属膜上に第1の保護膜を形成することを含む。第1の保護膜は、ビスマスカルコゲニド膜、銅カルコゲニド膜、スズカルコゲニド膜、ガリウムカルコゲニド膜、ゲルマニウムカルコゲニド膜、インジウムカルコゲニド膜、銀カルコゲニド膜、誘電体膜、フッ化リチウム膜、又はそれらの組み合わせから選択される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上にリチウム金属膜を形成することであって、前記集電体は銅及び/又はステンレス鋼を含む、前記集電体上に前記リチウム金属膜を形成することと;
前記リチウム金属膜上に第1の保護膜を形成することを含む、前記リチウム金属膜上に保護膜スタックを形成することであって、
前記第1の保護膜は、ビスマスカルコゲニド膜、銅カルコゲニド膜、スズカルコゲニド膜、ガリウムカルコゲニド膜、ゲルマニウムカルコゲニド膜、インジウムカルコゲニド膜、銀カルコゲニド膜、誘電体膜、フッ化リチウム膜、又はそれらの組み合わせから選択される、前記保護膜スタックを形成することと
を含む方法。
【請求項2】
前記保護膜スタックを形成することが、前記第1の保護膜上に第2の保護膜を形成することをさらに含み、前記第2の保護膜は、フッ化リチウム(LiF)膜、金属膜、炭素含有膜、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘電体膜が、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)の酸化物、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ビスマスカルコゲニド膜及銅カルコゲニド膜が、CuS、Cu
2Se、Cu
2S、Cu
2Te、CuTe、Bi
2Te
3、Bi
2Se
3、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記金属膜が、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の保護膜が前記ビスマスカルコゲニド膜又は前記銅カルコゲニド膜であり、前記第2の保護膜がフッ化リチウムである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の保護膜が前記ビスマスカルコゲニド膜又は銅カルコゲニド膜であり、前記第2の保護膜が前記金属膜である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の保護膜が前記フッ化リチウム膜であり、前記第2の保護膜が前記炭素含有膜である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の保護膜が100ナノメートル以下の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記集電体上に前記リチウム金属膜を形成する前に、前記集電体をプラズマ処理又はコロナ放電プロセスに曝して、前記集電体の露出面から有機材料を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の保護膜を形成することが、スパッタリングプロセス、熱蒸発プロセス、電子ビーム蒸発プロセス、及び化学気相堆積(CVD)プロセスのうちの少なくとも1つを実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の保護膜を形成することが、スパッタリングプロセス、熱蒸発プロセス、電子ビーム蒸発プロセス、及び化学気相堆積(CVD)プロセスのうちの少なくとも1つを実行することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
銅及び/又はステンレス鋼を含む集電体と;
前記集電体上に形成されているリチウム金属膜と;
前記リチウム金属膜上に形成されている保護膜スタックであって、
前記リチウム金属膜上に形成されている、ビスマスカルコゲニド膜、銅カルコゲニド膜、スズカルコゲニド膜、ガリウムカルコゲニド膜、ゲルマニウムカルコゲニド膜、インジウムカルコゲニド膜、銀カルコゲニド膜、誘電体膜、フッ化リチウム膜、又はそれらの組み合わせから選択される第1の保護膜;及び
前記第1の保護膜上に形成されている、フッ化リチウム(LiF)膜、金属膜、炭素含有膜、又はそれらの組み合わせから選択される第2の保護膜
を含む前記保護膜スタックと
を含むアノード電極構造体。
【請求項14】
前記誘電体膜が、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)の酸化物、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載のアノード電極構造体。
【請求項15】
前記ビスマスカルコゲニド膜及前記銅カルコゲニド膜が、CuS、Cu
2Se、Cu
2S、Cu
2Te、CuTe、Bi
2Te
3、Bi
2Se
3、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載のアノード電極構造体。
【請求項16】
前記金属膜が、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載のアノード電極構造体。
【請求項17】
前記第1の保護膜が前記ビスマスカルコゲニド膜又は前記銅カルコゲニド膜であり、前記第2の保護膜がフッ化リチウムである、請求項13に記載のアノード電極構造体。
【請求項18】
前記第1の保護膜が前記ビスマスカルコゲニド膜又は前記銅カルコゲニド膜であり、前記第2の保護膜が前記金属膜である、請求項13に記載のアノード電極構造体。
【請求項19】
請求項14に記載のアノード電極構造体と;
カソード電極構造体と;
前記アノード電極構造体と前記カソード電極構造体との間に形成されている固体電解質膜と
を含むエネルギーストレージ装置。
【請求項20】
前記固体電解質膜が:LiPON、Li
7La
3Zr
2O
12の結晶相又はアモルファス相のドープされたバリアント、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、アルギロダイト組成物、リチウム-硫黄-リン材料、Li
2S-P
2S
5、Li
10GeP
2S
12、及びLi
3PS
4、リン酸リチウムガラス、(1-x)LiI-(x)Li
4SnS
4、xLiI-(1-x)Li
4SnS
4、硫化物と酸化物の混合電解質(結晶性LLZO、アモルファス(1-x)LiI-(x)Li
4SnS
4混合物、アモルファスxLi1-(1-x)Li
4SnS
4)、Li
3S(BF
4)
0.5Cl
0.5、Li
4Ti
5O
12、リチウムドープチタン酸ランタン(LATP)、Li
2+2xZn
1-xGeO
4、LiTi
2(PO
4)
3、LiHf
2(PO
4)
3、LiGe
2(PO
4)
3、及びそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数から構成されている、請求項19に記載のエネルギーストレージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載の実施は、一般に、金属電極、より具体的にはリチウム含有アノード、前述のリチウム含有電極を含む一次及び二次電気化学デバイスなどの高性能電気化学デバイス、並びにそれらを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
充電式電気化学ストレージシステムは、現在、日常生活の多くの分野でますます価値が高まっている。リチウムイオン(Li-ion)電池などの大容量の電気化学エネルギーストレージデバイスは、ポータブル電子機器、医療、輸送、グリッド接続された大規模エネルギー貯蔵、再生可能エネルギー貯蔵、及び無停電電源装置(UPS)を含む多くの用途で益々使用されている。従来の鉛/硫酸電池は、静電容量が不足していることが多く、これらの成長する用途には十分に循環できないことが多々ある。リチウムイオン電池とそれに続く全固体電池の両方が、増大する性能要求を満たすための最良の選択肢を提供すると考えられている。
【0003】
リチウムは、リチウムイオン電池と全固体電池の両方に優れたアノード材料を提供する。リチウムは、高電圧と理論容量を備えた軽量のアルカリ金属である。しかしながら、第1主族の重元素同族体と同様に、リチウムは様々な物質との強い反応性を特徴としている。リチウムは、水、アルコール、及び非プロトン性水素を含むその他の物質と激しく反応し、発火することが多々ある。リチウムは空気中で不安定で、酸素、窒素、二酸化炭素と反応する。リチウムは通常、不活性ガス雰囲気(アルゴンなどの希ガス)、及びリチウムの強い反応性は、他の処理操作も不活性ガス雰囲気で実行する必要性下で取り扱われる。その結果、リチウムは、処理、貯蔵、及び輸送に関していくつかの課題をもたらす。
【0004】
リチウム金属のための保護表面処理が開発された。リチウム金属の保護表面処理の1つの方法は、リチウム金属をワックス層、例えば、ポリエチレンワックスでコーティングすることを含む。しかしながら、通常、リチウム金属膜のその後の処理を妨げる大量のコーティング剤が施用される。
【0005】
保護表面処理の別の方法は、連続炭酸塩コーティング、ポリマーコーティング、例えば、ポリウレタン、PTFE、PVC、ポリスチレンなどを備えた安定化リチウム金属粉末(「SLMP」)を製造することを提案している。しかしながら、これらのポリマーコーティングは、電極材料をプレリチウム化するときに問題を引き起こす可能性がある。
【0006】
したがって、エネルギーストレージシステムのリチウム金属を堆積させ、また処理するための方法及びシステムが必要である。
【発明の概要】
【0007】
ここに記載の実施は、一般に、金属電極、より具体的にはリチウム含有アノード、前述のリチウム含有電極を含む一次及び二次電気化学デバイスなどの高性能電気化学デバイス、並びにそれらを製造するための方法に関する。一実装形態では、方法が提供される。該方法は、集電体上にリチウム金属膜を形成することを含む。集電体は、銅及び/又はステンレス鋼で構成される。該方法は、リチウム金属膜上に保護膜スタックを形成することをさらに含み、リチウム金属膜上に第1の保護膜を形成することを含む。第1の保護膜は、ビスマスカルコゲニド膜、銅カルコゲニド膜、スズカルコゲニド膜、ガリウムカルコゲニド膜、ゲルマニウムカルコゲニド膜、インジウムカルコゲニド膜、銀カルコゲニド膜、誘電体膜、フッ化リチウム膜、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0008】
別の実装形態では、アノード電極構造体が提供される。アノード電極構造体は、銅及び/又はステンレス鋼を含む集電体、集電体上に形成されたリチウム金属膜、及びリチウム金属膜上に形成された保護膜スタックを含む。保護膜スタックは、リチウム金属膜上に形成された第1の保護膜を含む。第1の保護膜は、ビスマスカルコゲニドフィルム、銅カルコゲニドフィルム、スズカルコゲニドフィルム、ガリウムカルコゲニドフィルム、ゲルマニウムカルコゲニドフィルム、インジウムカルコゲニドフィルム、銀カルコゲニドフィルム、誘電体フィルム、フッ化リチウムフィルム、又はそれらの組み合わせから選択される。保護膜スタックは、第1の保護膜上に形成された第2の保護膜ムをさらに含む。第2の保護膜は、フッ化リチウム(LiF)膜、金属膜、炭素含有膜、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0009】
本開示の上記の特徴を詳しく理解し得るように、上記で簡単に要約されている本実施形態のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得ることができ、一部の実施形態は、添付の図面に示されている。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実施形態も許容しうるため、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しており、従って、本開示の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ここに記載の1つ又は複数の実施に従って形成された電極構造体を組み込んだエネルギーストレージデバイスの1つの実施の概略断面図を示している。
【
図2】ここに記載の1つ又は複数の実施に従って形成された両面アノード電極構造体の1つの実施の断面図を示している。
【
図3】ここに記載の1つ又は複数の実施に従って形成された両面アノード電極構造体の1つの実施の断面図を示している。
【
図4】ここに記載の1つ又は複数の実施によるアノード電極構造体を形成するための方法の1つの実施を要約するプロセスフローチャートを示す。
【
図5】ここに記載の1つ又は複数の実施形態によるアノード電極構造を形成するための方法の1つの実施形態を要約するプロセスフローチャートを示す。
【
図6】ここに記載の1つ又は複数の実施によるアノード電極構造体を形成するための統合処理ツールの概略図を示している。
【0011】
理解が容易になるよう、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を指し示すために同一の符号を使用した。一実行形態の要素及び特徴は、更なる記載がなくとも、他の実行形態に有益に組み込まれ得ると想定される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の開示は、アノード電極、前述のアノード電極を含む高性能電気化学セル及び電池、並びにそれらを製造するための方法を説明する。本開示の様々な実施形態を完全に理解させるため、特定の詳細が以下の明細書の記載及び
図1~
図6提示される。多くの場合、電気化学セル及びバッテリに関連する周知の構造及びシステムを記述する他の詳細は、様々な実装の記述が無用に曖昧にならないように、以下の開示に記述されている。
【0013】
図面に示す詳細、寸法、角度、及び他の特徴の多くは、具体的な実施形態の単なる例示に過ぎない。従って、他の実施形態が、本開示の思想及び範囲から逸脱することなく、他の詳細、構成要素、寸法、角度、及び特徴を有することが可能である。加えて、以下に記載の詳細のうちの幾つかがなくとも、本開示のさらなる実施形態を実施することが可能である。
【0014】
ここに記載された実装形態は、TopMet(商標)、SMARTWEB(商標)、TOPBEAM(商標)などのリールツーリールコーティングシステムを参照して以下で説明される。これらすべては、カリフォルニア州サンタクララのApplied Materials,Inc.から入手可能である。堆積プロセス(例えば、物理的気相堆積(PVD)プロセス、化学気相堆積(CVD)プロセス、原子層堆積(ALD)プロセス)を実行することができる他のツールもまた、ここに記載の実施から利益を得るように適合させることができる。さらに、ここに記載の堆積プロセスを可能にする任意のシステムを有利に使用することができる。ここに記載されている装置の説明は例示的なものであり、ここに記載されている実施の範囲を制限するものとして理解又は解釈するべきではない。ここではリールツーリールプロセスとして説明されているが、ここに記載されている実施は、個々の基板上で実行することができることも理解されたい。いくつかの実施では、リールツーリールコーティングシステムを組み合わせてデバイススタックを形成することができる。
【0015】
ここに記載されているように、フレキシブルな基板は、とりわけ、膜、箔、ウェブ、プラスチック材料のストリップ、金属、紙、又は他の材料を含むと見なすことができる。通常、「ウェブ」、「箔」、「ストリップ」、「基板」などの用語は同義語として使用される。
【0016】
エネルギーストレージデバイス、例えば、リチウムイオン電池は、典型的には、正極(例えば、カソード)、及び液体電解質を備えたポリマー分離器によって分離された負極を含む。全固体電池はまた、典型的には、正極(例えば、カソード)及び負極(例えば、アノード)を含むが、ポリマー分離器及び液体電解質の両方をイオン伝導性材料で置換する。
【0017】
グラファイトアノードは現在の最先端技術であるが、業界はセルのエネルギー密度を高めるために、グラファイトベースのアノードからシリコンブレンドのグラファイトアノードに移行している。しかしながら、シリコンブレンドグラファイトアノードは、最初のサイクル中に発生する不可逆的な容量損失に悩まされる場合が多々ある。したがって、この最初のサイクルの容量損失を補充する方法が必要である。現在の電池は、グラファイトアノード、多孔質ポリマーセパレーター、及び液体電解質を使用している。液体電解質は通常、電極上での形成中にその場で固体電解質界面(SEI)を形成する添加剤を含む。SEIは、電池のサイクル寿命を決定するのに役立つ。最先端のグラファイトアノードベースの電池のエネルギー密度は、約650Wh/lに制限されている。シリコン粉末混合グラファイトアノードのエネルギー密度は、エネルギー密度を700Wh/l以上に高めるのに役立つ。シリコンアノードに関連するリチウムの最初のサイクルの不可逆的な容量損失を補償するための製造技術が必要である。したがって、リチウムイオン電池と全固体電池の両方を含む次世代電池でリチウムを使用する能力はますます重要になっている。しかしながら、リチウム技術には、乾燥した部屋の周囲でのリチウムの取り扱い、適切な表面保護技術、電池のサイクル中にリチウム金属デンドライトを抑制又は排除する必要性など、デバイス統合に関する重大な課題がある。電気化学デバイスの観点からは、表面の酸化を防ぐのに役立つだけでなく、デバイスの性能を向上させるのにも役立つインターフェース材料が望ましい。
【0018】
ここに記載の実施を使用して片面又は両面のいずれかが堆積されたリチウム金属は、下流のリールの巻き取り及び巻き戻し中に保護することができる。ここに記載されるような1つ又は複数の薄い保護膜の堆積には、いくつかの利点がある。いくつかの実施では、ここに記載の1つ又は複数の保護膜は、輸送、取り扱い、及び貯蔵のための適切な表面保護を提供し、デバイス統合中のリチウムの表面反応を回避する。いくつかの実施では、ここに記載の1つ又は複数の保護膜は、リチウムイオンと互換性があり、イオンが横切って移動するためのインピーダンスを低減する。いくつかの実施では、ここに記載の1つ又は複数の保護膜はイオン伝導性であり、したがって、形成されたエネルギーストレージデバイスに組み込むことができる。いくつかの実施では、ここに記載の1つ又は複数の保護膜は、特に高電流密度動作において、リチウムデンドライトを抑制又は排除するのにも役立ち得る。いくつかの実施では、ここに記載の保護膜の使用は、製造システムの複雑さを軽減し、現在の製造システムと互換性がある。
【0019】
図1は、ここに記載の実施に従って形成されたアノード電極構造体を組み込んだエネルギーストレージデバイス100の1つの実施の概略断面図を示している。エネルギーストレージデバイス100は、固体エネルギーストレージデバイス又はリチウムイオンベースのエネルギーストレージデバイスであり得る。エネルギーストレージデバイス100は、平面構造として示されているが、層のスタックを圧延することによって円筒に形成することもできる;さらに、他のセル構成(例えば、プリズムセル、ボタンセル、又は積み重ねられた電極セル)が形成され得る。エネルギーストレージデバイス100は、アノード電極構造体110と、間に固体電解質膜130が配置されたカソード電極構造体120とを含む。エネルギーストレージデバイ100がリチウムイオンエネルギーストレージデバイである実施形態では、固体電解質膜は、ポリマー分離器及び液体電解質で置換される。カソード電極構造体120は、カソード集電体140及びカソード膜150を含む。アノード電極構造体110は、アノード集電体160、アノード膜170、及び1つ又は複数の保護膜180を含む。1つ又は複数の保護フィルム180は、少なくとも1つ又は複数のフッ化リチウム(LiF)フィルム;誘電体又はセラミック膜(例えば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)の酸化物、あるいはそれらの組み合わせ);1つ又は複数の金属膜(例、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、銅膜、銀膜、金膜、あるいはそれらの組み合わせ);銅カルコゲニド膜(例:CuS、Cu
2Se、Cu
2S);ビスマスカルコゲニド膜(例:Bi
2Te
3、Bi
2Se
3);スズカルコゲニド膜(例、SnTe、SnSe、SnSe
2、SnS)、ガリウムカルコゲニド膜(例、GaS、Ga
2S
3、GaSe、Ga
2Se
3、GaTe)、ゲルマニウムカルコゲニド膜(GeTe、GeSe、GeS)、インジウムカルコゲニド膜(例:InS、In
6S
7、In
2S
3、InSe、InS
4Se
3、In
6Se
7、In
2Se
3、InTe、In
4Te
3、In
3Te4、In
7Te
10、In
2Te
3、In
2Te
5)、銀カルコゲニド膜(Ag
2Se、Ag
2S、Ag
2Te)、窒化ホウ素、硝酸リチウム、水素化リチウム、及びそれらの組み合わせ;及び炭素含有膜を含む。
【0020】
カソード電極構造体120は、カソード電流コレクタ140上に形成されたカソード膜150を備えたカソード電流コレクタ140を含む。カソード電極構造体120は、他の要素又は膜を含み得ることを理解されたい。
【0021】
カソード膜150及びアノード膜170それぞれの上の電流コレクタ140、160は、同一の電子伝導体であってもよく、又は異なった電子伝導体であってもよい。いくつかの実施では、集電体140、160のうちの少なくとも1つは、フレキシブル基板である。いくつかの実施では、フレキシブル基板は、CPP膜(すなわち、鋳造ポリプロピレン膜)、OPP膜(すなわち、配向ポリプロピレン膜)、又はPET膜(すなわち、配向ポリエチレンテレフタレート膜)である。あるいはまた、フレキシブル基板は、プレコート紙、ポリプロピレン(PP)膜、PEN膜、ポリラクターゼアセテート(PLA)膜、又はPVC膜であり得る。集電体140、160を構成し得る金属の例には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ステンレス鋼、クラッド材、それらの合金、及びそれらの組み合わせを含む。一実施では、電流コレクタ140、160のうちの少なくとも1つが穿孔される。一実施では、集電体140、160のうちの少なくとも1つは、金属材料でコーティングされたポリマー基板(例えば、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)を含む。一実施では、アノード集電体160は、銅でコーティングされたポリマー基板(例えば、PET膜)である。別の実施では、アノード集電体160は、ポリマー基板上の多層金属層である。多層金属層は、銅、クロム、ニッケルなどの組み合わせであり得る。一実施では、アノード集電体160は、銅ニッケルクラッド材料を含む多層構造である。一実施では、多層構造体は、ニッケル又はクロムの第1の層、第1の層上に形成された銅の第2の層、及び第2の層上に形成されたニッケル、クロム、又はその両方を含む第3の層を含む。一実施では、アノード集電体160はニッケル被覆銅である。さらに、電流コレクタは、任意のフォームファクタ(例えば、金属の箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものであってよい。
【0022】
概して、角柱状セルでは、タブは、集電体と同一の材料で形成されており、スタックの製造中に形成され得るか、又は後で付加され得る。いくつかの実施では、集電体はスタックを超えて拡張し、スタックを超えて拡張する集電体の部分はタブとして使用され得る。一実施では、カソード電流コレクタ140は、アルミニウムである。別の実施では、カソード集電体140は、ポリマー基板(例えば、PET膜)上に堆積されたアルミニウムを含む。一実施では、カソード集電体140は、50μm未満、より具体的には5μm、又はさらにより具体的には2μmの厚さを有する。一実施では、カソード集電体140は、約0.5μm~約20μm(例えば、約1μm~約10μm;約2μm~約8μm;又は約5μm~約10μm)の厚さを有する。一実装形態では、アノード電流コレクタ160は、銅である。一実施では、アノード集電体160はステンレス鋼である。一実施では、アノード集電体160は、50μm未満、より具体的には5μm、又はさらにより具体的には2μmの厚さを有する。一実施では、アノード集電体160は、約0.5μm~約20μm(例えば、約1μm~約10μm;約2μm~約8μm;約6μm~約12μm;又は約5μm~約10μm)の厚さを有する。
【0023】
カソード膜150又はカソードは、アノードと適合性のある任意の材料であってもよく、層間化合物、挿入化合物、又は電気化学的に活性なポリマーを含み得る。適切なインターカレーション材料には、例えば、リチウム含有金属酸化物、MoS2、FeS2、BiF3、Fe2OF4、MnO2、TiS2、NbSe3、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、V6O13及びV2O5が含まれる。適切なポリマーは、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、及びポリチオフェンを含む。カソード膜150又はカソードは、リチウムコバルト酸化物などの層状酸化物、リン酸鉄リチウムなどのカンラン石、又はリチウムマンガン酸化物などの尖晶石から作製され得る。例示的なリチウム含有酸化物は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)などの層状、又はLiNixCo1-2xMnO2、(式中、xは0又は0ではない数である。)、LiNiMnCoO2 (“NMC”))、LiNi0.5Mn1.5O4、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、LiMn2O4のような混合酸化物、及びドープされたリチウムに富む層状層状材料であり得る。例示的なリン酸塩は、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、及びその変種(LiFe(1-x)MgxPO4(式中、xは0又は0ではない数である。)など)、LiMoPO4、LiCoPO4、LiNiPO4、Li3V2(PO4)3、LiVOPO4、LiMP2O7、又はLiFe1.5P2O7であり得る。例示的なフルオロリン酸塩は、LiVPO4F、LiAlPO4F、Li5V(PO4)2F2、Li5Cr(PO4)2F2、Li2CoPO4F、又はLi2NiPO4Fであってよい。例示的なケイ酸塩は、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4、又はLi2VOSiO4であってよい。例示的な非リチウム化合物は、Na5V2(PO4)2F3であってよい。
【0024】
アノード電極構造体110は、アノード集電体160を含み、アノード膜170は、アノード集電体160上に形成される。アノード電極構造体110は、1つ又は複数の保護膜180を含み、これは、フッ化リチウム(LiF)膜の少なくとも1つ又は複数;誘電体又はセラミック膜(例えば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、又はそれらの組み合わせの酸化物);1つ又は複数の金属膜(例、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、銅膜、銀膜、金膜、又はそれらの組み合わせ);銅カルコゲニド膜(例:CuS、Cu2Se、Cu2S);ビスマスカルコゲニド膜(例えば、Bi2Te3、Bi2Se3);スズカルコゲニド膜(例、SnTe、SnSe、SnSe2、SnS)、ガリウムカルコゲニド膜(例、GaS、Ga2S3、GaSe、Ga2Se3、GaTe)、ゲルマニウムカルコゲニド膜(GeTe、GeSe、GeS)、インジウムカルコゲニド膜(例えば、InS、In6S7、In2S3、InSe、InS4Se3、In6Se7、In2Se3、InTe、In4Te3、In3Te4、In7Te10、In2Te3、In2Te5)、銀カルコゲニド膜(Ag2Se、Ag2S、Ag2Te)、窒化ホウ素、硝酸リチウム、水素化リチウム、及びそれらの組み合わせ;並びに炭素含有膜を含む。いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜は、イオン伝導性膜である。
【0025】
アノード膜170は、カソード膜150と互換性のある任意の材料であり得る。アノード膜170は、372mAh/g以上、好ましくは、700mAh/g以上、最も好ましくは1000mAh/g以上のエネルギー容量を有し得る。アノード膜170は、グラファイト、シリコン含有グラファイト、リチウム金属、リチウム金属箔又はリチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金)、あるいは、リチウム金属及び/又はリチウム合金と、カーボン(例えば、コークス、グラファイト)、ニッケル、銅、スズ、インジウム、ケイ素、これらの酸化物、又はこれらの組み合わせなどの材料との混合物から構成され得る。アノード膜170は、典型的に、リチウムを含む層間化合物又はリチウムを含む挿入化合物を含む。いくつかの実施では、アノード膜はリチウム金属膜である。アノード膜170がリチウム金属を含む幾つかの実装形態では、リチウム金属は、本明細書に記載された方法を使用して堆積され得る。
【0026】
一実施では、アノード膜170は、約10μm~約200μm(例えば、約1μm~約100μm;約10μm~約30μm;約20μm~約30μm;約30μm;約1μm~約20μm;又は約50μm~約100μm)の厚さを有する。
【0027】
いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180がアノード膜170上に形成される。1つ又は複数の保護膜180は、少なくとも1つ又は複数のフッ化リチウム(LiF)膜;誘電体又はセラミック膜(例えば、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、又はそれらの組み合わせの酸化物);1つ又は複数の金属膜(例、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、銅膜、銀膜、金膜、又はそれらの組み合わせ);銅カルコゲニド膜(例えば、CuS、Cu2Se、Cu2S);ビスマスカルコゲニド膜(例えば、Bi2Te3、Bi2Se3);スズカルコゲニド膜(例、SnTe、SnSe、SnSe2、SnS)、ガリウムカルコゲニド膜(例、GaS、Ga2S3、GaSe、Ga2Se3、GaTe)、ゲルマニウムカルコゲニド膜(GeTe、GeSe、GeS)、インジウムカルコゲニド膜(例えば、InS、In6S7、In2S3、InSe、InS4Se3、In6Se7、In2Se3、InTe、In4Te3、In3Te4、In7Te10、In2Te3、In2Te5)、銀カルコゲニド膜(Ag2Se、Ag2S、Ag2Te)、窒化ホウ素、硝酸リチウム、水素化リチウム、及びそれらの組み合わせ;並びに炭素含有膜を含む。いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜は、イオン伝導性膜である。いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180は、リチウムイオン及びリチウム原子のうちの少なくとも1つに対して透過性である。1つ又は複数の保護膜180は、アノード膜170の表面保護を提供し、これは、乾燥室でのアノード膜の取り扱いを可能にする。エネルギーストレージデバイス100が固体エネルギーストレージデバイスであるいくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180は、改善されたSEI層の形成に寄与し、したがって、デバイスの性能を改善する。1つ又は複数の保護膜180は、蒸発(例えば、熱又は電子ビーム)又はスパッタリング、原子層堆積(ALD)などの物理気相堆積(PVD)、原子層堆積(ALD)、スロットダイプロセス、ディップコーティング、平面フローメルトスピンプロセス、薄膜転写プロセス、グラビアコーティング、又は3次元リチウム印刷プロセスによって、アノード膜170上に直接堆積することができる。
【0028】
いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180は、フッ化リチウム(LiF)膜を含む。
【0029】
いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180は、1つ又は複数の誘電体膜を含む。いくつかの実施では、誘電体膜はセラミック膜である。いくつかの実施では、誘電体膜はイオン伝導性セラミック膜である。適切な誘電体膜には、酸化チタン(例えば、TiO2)、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3、AlOx、AlOxNy)、窒化ホウ素、オキシ水酸化アルミニウムAlO(OH)、酸化ニオブ(例えば、NbO、NbO2、Nb2O5)、タンタル酸化物(例えば、Ta2O5)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)、又はそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施では、誘電体膜は、バインダーを含まないセラミックコーティングである。いくつかの実施では、誘電体膜は多孔質酸化アルミニウム膜である。
【0030】
いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180は、1つ又は複数の金属膜を含む。適切な金属膜には、スズ膜、アンチモン膜、ビスマス膜、ガリウム膜、ゲルマニウム膜、銅、銀、金、又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。1つ又は複数の金属膜は、極薄の金属シード膜であり得る。
【0031】
いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180は、1つ又は複数の金属カルコゲニド膜を含む。適切なカルコゲニド膜には、銅カルコゲニド(例えば、CuS、Cu2Se、Cu2S)及びビスマスカルコゲニド(例えば、Bi2Te3、Bi2Se3)、スズカルコゲニド(例、SnTe、SnSe、SnSe2、SnS)、ガリウムカルコゲニド(例、GaS、Ga2S3、GaSe、Ga2Se3、GaTe)、ゲルマニウムカルコゲニド(GeTe、GeSe、GeS)、インジウムカルコゲニド(例えば、InS、In6S7、In2S3、InSe、InS4Se3、In6Se7、In2Se3、InTe、In4Te3、In3Te4、In7Te10、In2Te3、In2Te5)、銀カルコゲニド(Ag2Se、Ag2S、Ag2Te)、窒化ホウ素、硝酸リチウム、ホウ水素化リチウム、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180は、炭素含有膜を含む。適切な炭素含有膜には、アモルファスカーボン膜(例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC))、CVDダイヤモンド膜、グラファイト膜、及び酸化グラフェンが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180の各層は、1ナノメートル~3000ナノメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲、50ナノメートル~100ナノメートルの範囲、50ナノメートル~200ナノメートルの範囲、100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚さを有するコーティング又は個別の膜である。いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180の各層は、500ナノメートル以下(例えば、約1nm~約400nm;約25nm~約300nm;約50nm~約200nm;約100nm~約150nm;約10nm~約80nm;又は約30~約60ナノメートル)の厚さを有するコーティング又は個別の膜である。いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180の各層は、100ナノメートル以下(例えば、約5ナノメートル~約100ナノメートル;約5ナノメートル~約40ナノメートル;約10ナノメートル~約20ナノメートル;又は約50ナノメートル~約100ナノメートル)の厚さを有するコーティング又は個別の膜である。
【0034】
いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180のうちの少なくとも1つは多孔性である。いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180のうちの少なくとも1つは、ナノポアを有する。いくつかの実施では、1つ又は複数の保護膜180の少なくとも1つは、平均細孔サイズ又は直径が約10ナノメートル未満(例えば、約1ナノメートル~約10ナノメートル;約3ナノメートル~約5ナノメートル)になるようなサイズの複数のナノ細孔を有する。別の実施では、1つ又は複数の保護膜180の少なくとも1つは、約5ナノメートル未満の平均細孔サイズ又は直径を有するサイズの複数のナノ細孔を有する。一実施では、1つ又は複数の保護膜180の少なくとも1つは、約1ナノメートル~約20ナノメートル(例えば、約2ナノメートル~約15ナノメートル;又は約5ナノメートル~約10ナノメートル)の範囲の直径を有する複数のナノポアを有する。
【0035】
いくつかの実施では、固体電解質膜130は、リチウムイオン伝導性材料である。いくつかの実施では、リチウムイオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性セラミック又はリチウムイオン伝導性ガラスである。リチウムイオン伝導材料は、1つ又は複数のLiPON、Li7La3Zr2O12の結晶相又はアモルファス相のドープされた変種、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、アルギロダイト組成物(例えば、Li6PS5Br、Li6PS5Cl、Li7PS6、Li3SBF4、A3-2×0.005Ba0.005OCl(A=アルカリ金属)、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3、Li6PS5I、Li6PO5Cl)、リチウム-硫黄-リン材料、(Li0.7Na0.3)3BH4B12H12、Li2S-P2S5、Li10GeP2S12,及びLi3PS4、リン酸リチウムガラス、(1-x)LiI-(x)Li4SnS4、xLiI-(1-x)Li4SnS4、硫化物と酸化物の混合電解質(結晶性LLZO、アモルファス(1-x)LiI-(x)Li4SnS4混合物、アモルファスxLiI-(1-x)Li4SnS4)、Li3S(BF4)0.5Cl0.5、Li4Ti5O12,、リチウムドープチタン酸ランタン(LATP)、Li2+2xZn1-xGeO4、LiM2(PO4)3(式中、例えば、M=Ti、Ge、Hfである。)から構成され得る。一実施では、xは0と1との間である(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、及び0.9)。
【0036】
図2は、ここに記載の実施に従って形成されたアノード電極構造体200の1つの実施の断面図を示す。
図2では、アノード集電体160がスタックを超えて延在している必要はないが、アノード集電体160がスタックを超えて延在していることが示されており、スタックを超えて延在している部分はタブとして使用できることに留意されたい。アノード電極構造体200は、両面電極構造体として描かれているが、ここに記載されている実施は、片面電極構造体にも適用されることを理解するべきである。
【0037】
アノード電極構造体200は、アノード集電体160、アノード集電体160の反対側に形成されたアノード膜170a、170b(総称して170)を有する。一実施では、アノード膜170はリチウム金属膜である。一実施では、アノード膜170は、20マイクロメートル以下(例えば、約1マイクロメートル~約20マイクロメートル)の厚さを有する。第1の保護膜210a、210b(総称して210)は、アノード膜170a、170bのそれぞれ上に形成される。第1の保護膜210a、210b(総称して210)は、アノード膜170a、170bのそれぞれ上に形成される。いくつかの実施では、第1の保護膜210は、1ナノメートル~3000ナノメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲;50ナノメートル~100ナノメートルの範囲;50ナノメートル~200ナノメートルの範囲;100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚さを有する。いくつかの実施では、第1の保護膜210は、100ナノメートル以下(例えば、約5ナノメートル~100ナノメートル;約5ナノメートル~約40ナノメートル;約10ナノメートル~約20ナノメートル;又は約50ナノメートル~約100ナノメートル)の厚さを有する。いくつかの実施では、
図2に示されるように、第1の保護膜210は、アノード集電体160と接触するように延在しているアノード膜170の露出面(例えば、上面及び側壁)をコーティングする。
【0038】
第2の保護膜220a、220b(総称して220)は、第1の保護膜210のそれぞれに形成される。いくつかの実施では、第2の保護膜220は、リチウムイオン及びリチウム原子のうちの少なくとも1つに対して透過性である。一実施では、第2の保護膜220は、フッ化リチウム膜、金属膜、炭素含有膜、又はそれらの組み合わせを含む群から選択される。いくつかの実施では、第2の保護膜220は、1ナノメートル~3000ナノメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲;50ナノメートル~100ナノメートルの範囲;50ナノメートル~200ナノメートルの範囲;100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚さを有する。いくつかの実施では、第2の保護膜220は、100ナノメートル以下(例えば、約5ナノメートル~100ナノメートル;約5ナノメートル~約40ナノメートル;約10ナノメートル~約20ナノメートル;又は約50ナノメートル~約100ナノメートル)の厚さを有する。
【0039】
いくつかの実施では、第1の保護膜210は金属カルコゲニド膜であり、第2の保護膜220はフッ化リチウム膜である。いくつかの実施では、第1の保護膜210は誘電体膜であり、第2の保護膜220はフッ化リチウム膜である。いくつかの実施では、第1の保護膜210は金属カルコゲニド膜であり、第2の保護膜220は金属膜である。いくつかの実施では、第1の保護膜210は金属膜であり、第2の保護膜220はフッ化リチウム膜である。いくつかの実施では、第1の保護膜210はLiF膜であり、第2の保護膜220は、炭素又は酸化グラフェンである。
【0040】
図3は、ここに記載の実施に従って形成されたアノード電極構造体300の1つの実施の断面図を示す。
図3では、アノード集電体160がスタックを超えて延在している必要はないが、アノード集電体160がスタックを超えて延在していることが示されており、スタックを超えて延在している部分はタブとして使用できることに留意されたい。アノード電極構造300は、両面電極構造として描かれているが、本明細書に記載された実装形態は、片面電極構造にも適用されることを理解するべきである。
【0041】
アノード電極構造体300は、アノード集電体160、アノード集電体160の反対側に形成されたアノード膜170a、170b(まとめて170)を有する。一実施では、アノード膜170はリチウム金属膜である。一実施では、アノード膜170は、20マイクロメートル以下(例えば、約1マイクロメートル~約20マイクロメートル)の厚さを有する。アノード膜170a、170bのそれぞれに、炭素含有保護膜310a、310b(総称して310)が形成される。一実施では、炭素含有保護膜310は、アモルファス炭素膜(例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC))、CVDダイヤモンド膜、グラファイト膜、及び酸化グラフェンを含む群から選択される。いくつかの実装形態では、炭素保護膜310は、500ナノメートル以下(例えば、約1nm~約400nm;約25nm~約300nm;約50nm~約200nm;約100nm~約150nm;約10nm~約80nm;又は約30~約60ナノメートル)の厚さを有する。いくつかの実装では、炭素保護膜310は、100ナノメートル以下(例えば、約5ナノメートル~100ナノメートル;約5ナノメートル~約40ナノメートル;約10ナノメートル~約20ナノメートル;又は約50ナノメートル~約100ナノメートル)の厚さを有する。いくつかの実装では、
図3に示されるように、炭素含有保護膜310は、アノード集電体160と接触するように延在しているアノード膜170の露出面(例えば、上面及び側壁)をコーティングする。
【0042】
図4は、ここに記載の実施によるアノード電極構造体を形成するための方法400の1つの実施を要約するプロセスフローチャートを示す。アノード電極構造体は、
図2に示されるアノード電極構造体200であり得る。工程410では、基板が設けられる。一実施では、基板は、
図6に示されるように、材料650の連続シートである。一実装形態では、基板は、アノード電流コレクタ160である。基板を構成し得る金属の例には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ステンレス鋼、クラッド材料、それらの合金、及びそれらの組み合わせが含まれる。一実装形態では、基板は、銅材料である。一実施では、基板はステンレス鋼材料である。一実装形態では、基板は、穿孔されている。さらに、基板は、任意のフォームファクタ(例えば、金属の箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものであってよい。
【0043】
いくつかの実施では、基板は前処理プロセスに曝され、集電体の露出面から有機物を除去するためのプラズマ処理又はコロナ放電プロセスの少なくとも1つが含まれる。前処理プロセスは、基板上に膜を堆積する前に実行される。
【0044】
動作420で、リチウム金属膜が基板上に形成される。一実施では、リチウム金属膜はアノード膜170であり、基板はアノード集電体160である。一実施では、リチウム金属膜は、銅集電体上に形成される。いくつかの実施では、アノード膜が基板上に既に存在している場合、アルカリ金属膜がアノード膜上に形成される。アノード膜170が存在しない場合、アルカリ金属膜が基板上に直接形成され得る。リチウム金属の薄膜を堆積するための任意の適切なリチウム金属膜堆積プロセスを使用して、リチウム金属の薄膜を堆積することができる。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸発(例えば、熱蒸発又は電子ビーム)、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスなどのPVDプロセスによって行うことができる。アルカリ金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸発器、熱蒸発器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターンプリンティングシステムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含み得る。
【0045】
動作430において、第1の保護膜がリチウム金属膜上に形成される。
図2を参照すると、第1の保護膜は第1の保護膜210であり得、リチウム金属膜はアノード膜170であり得る。第1の保護膜210a、210b(総称して210)は、アノード膜170a、170bのそれぞれ上に形成される。いくつかの実施では、第1の保護膜210は、1ナノメートル~3000ナノメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲;50ナノメートル~100ナノメートルの範囲;50ナノメートル~200ナノメートルの範囲;100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚さを有する。いくつかの実施では、第1の保護膜210は、500ナノメートル以下(例えば、約1nm~約400nm;約25nm~約300nm;約50nm~約200nm;約100nm~約150nm;約10nm~約80nm;又は約30~約60ナノメートル)の厚さを有する。いくつかの実施では、第1の保護膜210は、100ナノメートル以下(例えば、約5ナノメートル~100ナノメートル;約10ナノメートル~約20ナノメートル;又は約50ナノメートル~約100ナノメートル)の厚さを有する。
【0046】
いくつかの実施では、第1の保護膜210は、金属カルコゲニド膜である。いくつかの実施では、金属カルコゲニド膜は、ターゲットに結合されたRF電源を有するPVDプロセスを使用して堆積される。ターゲットは通常、金属カルコゲニド膜の材料で構成されている。例えば、1つの実施では、ターゲットは、テルル化ビスマス合金ターゲットである。一実施形態では、ビスマス-テルリド合金ターゲットは、約5原子%~約95原子%のビスマス、及び約5原子%~約95原子%のテルルを含む。プラズマは、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、窒素などの非反応性ガスから生成され得る。例えば、プラズマは、約30標準立方センチメートル(sccm)~約200sccm、例えば、約100sccm~約150sccmの範囲内の流量を有するアルゴンガスから生成され得る。RF電力は、約50Wから約4000W、例えば、約1000W~約3000W、例えば、約2000Wの範囲内の電力レベルでターゲットに印加され得る。堆積チャンバは、約0.1mTorr~約500mTorrに加圧され得る。堆積チャンバは、約0.1mTorr~約100mTorr、例えば、約10mTorr~約30mTorr、例えば25mTorrに加圧され得る。基板は電気的に「フローティング」であり、バイアスがない場合があり得る。一実施では、動作430の堆積プロセスは、約50℃~約400℃、例えば、約100℃~約200℃、例えば、約120℃の堆積温度で実行することができる。
【0047】
別の実施では、プラズマは、テルル化ビスマス合金ターゲットに結合されたDC電源を使用して生成され得る。基板は電気的に「フローティング」であり、バイアスがない場合があり得る。この実施において、プラズマは、約30標準立方センチメートル(sccm)~約200sccm、例えば、約100sccm~約150sccmの範囲内の流量を有するアルゴンガスから生成され得る。DC電力は、約50W~約5000W、約1000W~約3000W、例えば、約1000W~約2000W、例えば、約2000Wの範囲内の電力レベルでターゲットに印加することができる。堆積チャンバは、約0.1mTorr~約500mTorrまで加圧され得る。堆積チャンバは、約0.1mTorr~約500mTorrに加圧され得る。堆積チャンバは、約0.1mTorr~約100mTorr、例えば、約10mTorr~約30mTorr、例えば25mTorrに加圧され得る。基板は電気的に「フローティング」であり、バイアスがない場合があり得る。操作430の堆積プロセスは、約50℃~約400℃、例えば、約100℃~約200℃、例えば、約120℃の堆積温度で実施することができる。
【0048】
いくつかの実施では、第1の保護膜210は誘電体である。誘電体膜を堆積するための適切な方法には、蒸発若しくはスパッタリングなどのPVD、スロットダイプロセス、薄膜転写プロセス、化学気相堆積(CVD)プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
いくつかの実施では、第1の保護膜210は金属膜である。いくつかの実施では、金属膜は、銅膜、ビスマス膜、スズ膜、ガリウム膜、又はゲルマニウム膜である。いくつかの実施では、金属膜は極薄の金属膜である。金属の薄膜を堆積するための任意の適切な金属膜堆積プロセスを使用して、金属の薄膜を堆積することができる。金属の薄膜の堆積は、蒸発(例えば、熱若しくは電子ビーム)などのPVDプロセス、CVDプロセス、ロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによって行うことができる。金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸発器、熱蒸発器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビアプリンティングシステムなどの大面積パターンプリンティングシステムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含み得る。
【0050】
動作440において、第2の保護膜が第1の保護膜上に形成される。
図2を参照すると、第2の保護膜は第2の保護膜220であり得、第1の保護膜は第1の保護膜210であり得る。一実施では、第2の保護膜220は、フッ化リチウム膜、金属膜、炭素含有膜、又はそれらの組み合わせを含む群から選択される。いくつかの実施では、第2の保護膜220は、1ナノメートル~3000ナノメートルの範囲(例えば、10ナノメートル~600ナノメートルの範囲;50ナノメートル~100ナノメートルの範囲;50ナノメートル~200ナノメートルの範囲;100ナノメートル~150ナノメートルの範囲)の厚さを有する。いくつかの実施では、第2の保護膜220は、500ナノメートル以下(例えば、約1nm~約400nm;約25nm~約300nm;約50nm~約200nm;約100nm~約150nm;約10nm~約80nm;又は約30~約60ナノメートル)の厚さを有する。いくつかの実施では、第2の保護膜220は、100ナノメートル以下(例えば、約5ナノメートル~100ナノメートル;約10ナノメートル~約20ナノメートル;又は約50ナノメートル~約100ナノメートル)の厚さを有する。
【0051】
いくつかの実施では、第2の保護膜220はフッ化リチウム膜である。フッ化リチウム膜を堆積するための適切な方法には、蒸発若しくはスパッタリングなどのPVD、スロットダイプロセス、薄膜転写プロセス、化学蒸着(CVD)プロセス、又は3次元リチウム印刷プロセスが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施では、PVDはフッ化リチウム膜を堆積するための方法である。いくつかの実施では、フッ化リチウム膜は、熱蒸着プロセスを使用して堆積される。いくつかの実施では、フッ化リチウム膜は、電子ビーム蒸発プロセスを使用して堆積される。
【0052】
いくつかの実施では、第2の保護膜220は金属膜である。いくつかの実施では、金属膜は、銅膜、ビスマス膜、スズ膜、ガリウム膜、又はゲルマニウム膜である。いくつかの実施では、金属膜は極薄の金属膜である。金属の薄膜を堆積するための任意の適切な金属膜堆積プロセスを使用して、金属の薄膜を堆積することができる。金属の薄膜の堆積は、蒸発(例えば、熱若しくは電子ビーム)などのPVDプロセス、CVDプロセス、ロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによって行うことができる。金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸発器、熱蒸発器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビアプリンティングシステムなどの大面積パターンプリンティングシステムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含み得る。
【0053】
図5は、ここに記載の1つ又は複数の実施によるアノード電極構造体を形成するための方法500の1つの実施を要約するプロセスフローチャートを示す。アノード電極構造体は、
図3に示されるアノード電極構造体300であり得る。工程510では、基板が設けられる。一実施では、基板は、
図6に示されるように、材料650の連続シートである。一実装形態では、基板は、アノード電流コレクタ160である。基板を構成し得る金属の例には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、ステンレス鋼、クラッド材料、それらの合金、及びそれらの組み合わせが含まれる。一実装形態では、基板は、銅材料である。一実施では、基板はステンレス鋼である。一実施では、基板は、穿孔されている。さらに、基板は、任意のフォームファクタ(例えば、金属の箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものであってよい。
【0054】
いくつかの実施では、基板は前処理プロセスに曝され、集電体の露出面から有機物を除去するためのプラズマ処理又はコロナ放電プロセスの少なくとも1つが含まれる。前処理プロセスは、基板上に膜を堆積する前に実行される。
【0055】
動作520で、リチウム金属膜が基板上に形成される。一実施では、リチウム金属膜はアノード膜170であり、基板はアノード集電体160である。一実施では、リチウム金属膜は、銅集電体上に形成される。いくつかの実施では、アノード膜が基板上に既に存在している場合、アルカリ金属膜がアノード膜上に形成される。アノード膜170が存在しない場合、アルカリ金属膜が基板上に直接形成され得る。リチウム金属の薄膜を堆積するための任意の適切なリチウム金属膜堆積プロセスを使用して、リチウム金属の薄膜を堆積することができる。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸発などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによってなされ得る。リチウム金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸発器、熱蒸発器、又はスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターンプリンティングシステムを含む)、又はスロットダイ堆積システムを含み得る。
【0056】
動作530において、炭素含有保護膜がリチウム金属膜上に形成される。
図3を参照すると、第1の保護膜は第1の保護膜310であり得、リチウム金属膜はアノード膜170であり得る。一実施では、炭素含有保護膜310は、アモルファス炭素膜(例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC))、CVDダイヤモンド膜、グラファイト膜、及び酸化グラフェンを含む群から選択される。いくつかの実施では、炭素含有保護膜310は、500ナノメートル以下(例えば、約1nm~約400nm;約25nm~約300nm;約50nm~約200nm;約100nm~約150nm;約10nm~約80nm;又は約30~約60ナノメートル)の厚さを有する。一実施では、炭素含有保護膜310は、100ナノメートル以下(例えば、約5ナノメートル~100ナノメートル;約10ナノメートル~約20ナノメートル;又は約50ナノメートル~約100ナノメートル)の厚さを有する。
【0057】
任意の適切な炭素含有膜堆積プロセスを使用して、炭素含有保護膜を堆積することができる。炭素含有膜の堆積は、蒸発(例えば、熱若しくは電子ビーム)などのPVDプロセス、CVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによるものであり得る。炭素含有膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸発器、熱蒸発器若しくはスパッタリングシステムなどのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)又はスロットダイ堆積システム。を含み得る。
【0058】
図6は、ここに記載の実施によるアノード電極構造体を形成するためのフレキシブル基板コーティング装置600の概略図を示す。フレキシブル基板コーティング装置600は、ここに記載の実施に従ってリチウムアノードデバイスを製造するように適合された、Applied Materialsによって製造されたSMARTEVEB(登録商標)であってよい。典型的な実施によれば、フレキシブル基板コーティング装置600は、リチウムアノードを製造するために、特にリチウムアノード用のSEI膜スタックのために使用することができる。フレキシブル基板コーティング装置600は、送り出しモジュール602、処理モジュール604、及び巻き上げモジュール606を含むロールツーロールシステムとして構成される。いくつかの実施では、処理モジュール604は、順番に配置された複数の処理モジュール又はチャンバ610、620、630、及び640を備え、それぞれが、材料650の連続シート又は材料のウェブに対して1つの処理操作を実行するように構成されている。一実施では、
図6に示されるように、処理チャンバ610~640は、コーティングドラム655の周りに放射状に配置される。放射状以外の配置が考えられる。例えば、別の実施では、処理チャンバは、線形構成で配置され得る。
【0059】
一実施では、処理チャンバ610~640は、スタンドアローンのモジュラー処理チャンバであり、各モジュラー処理チャンバは、他のモジュラー処理チャンバから構造的に分離されている。したがって、独立型のモジュール式処理チャンバは、それぞれ互いに影響を及ぼすことなく、配置、再配置、交換、又は維持することができる。4つの処理チャンバ610~640が示されているが、任意の数の処理チャンバがフレキシブル基板コーティング装置600に含まれ得ることを理解されたい。
【0060】
処理チャンバ610~640は、本開示の実施による、フレキシブル基板コーティング装置600がリチウムアノードデバイスを堆積することを可能にする任意の適切な構造、構成、配置、及び/又は構成要素を含み得る。例えば、これらに限定されないが、処理チャンバは、コーティング源、電源、個々の圧力制御、堆積制御システム、及び温度制御を含む適切な堆積システムを含み得る。典型的な実施によれば、チャンバは個別のガス供給を備えている。チャンバは通常、良好なガス分離を提供するために互いに分離される。ここに記載の実施によるフレキシブル基板コーティング装置600は、堆積チャンバの数に限定されない。例えば、これらに限定されないが、フレキシブル基板コーティング装置600は、3つ、6つ、又は12の処理チャンバを含み得る。
【0061】
処理チャンバ610~640は、典型的には、1つ又は複数の堆積ユニット612、622、632、及び642を含む。一般に、ここに記載の1つ又は複数の堆積ユニットは、CVDソース、PECVDソース、及びPVD源から選択することができる。1つ又は複数の堆積ユニットは、蒸発源(熱蒸発若しくは電子ビーム)、マグネトロンスパッタ源、DCスパッタ源、ACスパッタ源、パルススパッタ源、無線周波数(RF)スパッタリングなどのスパッタ源を含むことができ、あるいは、中周波数(MF)スパッタリングを提供することができる。例えば、5kHz~100kHzの範囲、例えば、30kHz~50kHzの周波数のMFスパッタリングが提供され得る。1つ又は複数の堆積ユニットは、蒸発源を含むことができる。一実施では、蒸発源は、熱蒸発源又は電子ビーム蒸発である。一実施では、蒸発源はリチウム(Li)源である。さらに、蒸発源はまた、2つ以上の金属の合金であり得る。堆積される材料(例えば、フッ化リチウム)は、るつぼ内に設けられ得る。例えば、アルミニウムは、熱蒸発技術によって、あるいは電子ビーム蒸発技術によって蒸発され得る。
【0062】
いくつかの実施では、フレキシブル基板コーティング装置600の処理チャンバ610~640のいずれかは、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタリングによる堆積を実行するように構成され得る。ここで使用される場合「マグネトロンスパッタリング」は、磁石アセンブリ、すなわち、磁場を発生させることができるユニットを使用して行われるスパッタリングを指す。典型的には、そのような磁石アセンブリは永久磁石を含む。この永久磁石は、回転可能なターゲット表面の下方に発生する発生磁場の内部に自由電子が捕捉されるように、典型的に、回転可能なターゲットの内部に配置されるか又は平面ターゲットに連結される。そのような磁石アセンブリはまた、平面カソードに結合して配置され得る。
【0063】
マグネトロンスパッタリングは、TwinMag(商標)カソードアセンブリなどであるがこれに限定されない二重マグネトロンカソードによっても実現することができる。いくつかの実施では、処理チャンバ内のカソードは交換可能であり得る。したがって、特定の製造プロセスのために装置を最適化することを容易にする装置のモジュラー設計が提供される。いくつかの実施では、スパッタリング堆積用のチャンバ内のカソードの数は、フレキシブル基板コーティング装置600の最適な生産性を最適化するために選択される。
【0064】
いくつかの実施では、処理チャンバ610~640の1つ又はいくつかは、マグネトロンアセンブリなしでスパッタリングを実行するように構成され得る。いくつかの実施では、チャンバの1つ又はいくつかは、化学気相堆積、原子レーザー堆積、又はパルスレーザー堆積などであるがこれらに限定されない他の方法によって堆積を実行するように構成され得る。いくつかの実装形態では、1つ又はいくつかのチャンバは、プラズマ酸化又はプラズマ窒化プロセスなどのプラズマ処理プロセスを実行するように構成され得る。
【0065】
いくつかの実施では、処理チャンバ610~640は、材料650の連続シートの両面を処理するように構成される。フレキシブル基板コーティング装置600は、水平に配向された材料650の連続シートを処理するように構成されるが、フレキシブル基板コーティング装置600は、異なる配向に配置された基板を処理するように構成され得、例えば、材料650の連続シートは、垂直に配向され得る。いくつかの実施では、材料650の連続シートは、フレキシブル導電性基板である。いくつかの実施では、材料650の連続シートは、その上に形成された1つ又は複数の層を備えた導電性基板を含む。いくつかの実施では、導電性基板は銅基板である。
【0066】
いくつかの実施では、フレキシブル基板コーティング装置600は、移送機構652を備える。移送機構652は、材料650の連続シートを処理チャンバ610~640の処理領域を通して移動させることができる任意の移送機構を含み得る。移送機構ム652は、共通の輸送アーキテクチャを含み得る。共通の輸送アーキテクチャは、巻き上げモジュール606に配置された共通の巻き取りリール654、処理モジュール604に配置されたコーティングドラム655、及び送り出しモジュール602に配置された供給リール656を備えたリールツーリールシステムを含み得る。巻き取りリール654、コーティングドラム655、及び供給リール656は、個別に加熱することができる。巻き取りリール654、コーティングドラム655、及び供給リール656は、各リール内に配置された内部熱源又は外部熱源を使用して個別に加熱することができる。一般的な輸送アーキテクチャは、巻き取りリール654、コーティングドラム655、及び供給リール656の間に配置された1つ又は複数の補助移送リール653a、653b(総称して653)をさらに含み得る。フレキシブル基板コーティング装置600は、単一の処理領域を有するものとして示されているが、いくつかの実施では、個々の処理チャンバ610~640ごとに別個の又は個別の処理領域を有することが有利であり得る。分離した処理領域、モジュール、又はチャンバを有する実装形態では、共通搬送アーキテクチャは、各チャンバ又は処理領域が、個別の、巻取りリール及び送りリール、並びに巻取りリールと送りリールとの間に位置付けされた1つ又は複数の任意選択的な中間移送リールを有するリールツーリールシステムであってもよい。
【0067】
フレキシブル基板コーティング装置600は、材料650の連続シートを異なる処理チャンバ610~640を通して移動させるための供給リール656及び巻き取りリール654を含み得る。一実施では、第1の処理チャンバ610及び第2の処理チャンバ620はそれぞれ、リチウム金属膜の一部を堆積するように構成される。第3の処理チャンバ630は、カルコゲニド膜を堆積するように構成される。第4の処理チャンバ640は、カルコゲニド膜上にフッ化リチウム膜を堆積するように構成される。別の実施では、第1の処理チャンバ610及び第2の処理チャンバ620はそれぞれ、リチウム金属膜の一部を堆積するように構成される。第3の処理チャンバ630は、誘電体膜を堆積するように構成される。第4の処理チャンバ640は、誘電体膜上にフッ化リチウム膜を堆積するように構成される。さらに別の実施では、第1の処理チャンバ610及び第2の処理チャンバ620はそれぞれ、リチウム金属膜の一部を堆積するように構成される。第3の処理チャンバ630は、カルコゲニド膜を堆積するように構成される。第4の処理チャンバ640は、カルコゲニド膜上に金属膜を堆積するように構成される。さらに別の実施では、第1の処理チャンバ610及び第2の処理チャンバ620はそれぞれ、リチウム金属膜の一部を堆積するように構成される。第3の処理チャンバ630は、リチウム金属膜上に金属膜を堆積するように構成される。第4の処理チャンバ640は、金属膜上にフッ化リチウム膜を堆積するように構成される。
【0068】
一実施では、処理チャンバ610~620は、材料650の連続シート上にリチウム金属の薄膜を堆積するように構成される。リチウム金属の薄膜を堆積する任意の適切なリチウム堆積処理は、リチウム金属の薄膜の堆積に用いられ得る。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸発(例えば、熱蒸発若しくは電子ビーム)などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、積層プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによって行うことができる。リチウム金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、熱蒸発器、電子ビーム蒸発器などのPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムなどの大面積パターン印刷システムを含む)、積層システム、又はスロットダイ堆積システムを含み得る。
【0069】
一実施では、第3の処理チャンバ630は、リチウム金属膜上にカルコゲニド膜を堆積するように構成される。カルコゲニド膜は、ここに記載のPVDスパッタリング技術を使用して堆積させることができる。一実施では、第4の処理チャンバ640は、カルコゲニド膜上にフッ化リチウム膜を形成するように構成される。リチウム金属の薄膜を堆積する任意の適切なリチウム堆積処理は、リチウム金属の薄膜の堆積に用いられ得る。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸発などのPVDプロセス、スロットダイプロセス、転写プロセス、積層プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによって行うことができる。一実施では、第4の処理チャンバ640は、材料650の連続シート上にフッ化リチウム膜を堆積するように構成された蒸発チャンバ又はPVDチャンバである。一実施では、蒸発チャンバは、るつぼに配置することができる蒸発源を含むことが示される処理領域を有し、これは、例えば、真空環境における熱蒸発器又は電子ビーム蒸発器(低温)であり得る。
【0070】
動作中、材料650の連続シートは、矢印608によって示される基板移動方向によって示されるように、供給リール656から送り出される。材料650の連続シートは、1つ又は複数の補助移送リール653a、653bを介して案内され得る。材料650の連続シートが、例えば、フレキシブル基板の配向を微調整することによって、フレキシブル基板の適切な走行を制御しなければならない1つ又は複数の基板ガイド制御ユニット(図示せず)によって案内されることも可能である。
【0071】
供給リール656から送り出して、補助移送リール653aの上を走行した後、次に、材料650の連続シートは、コーティングドラム655に設けられ、堆積ユニット612、622、632、及び642の位置に対応する堆積領域を通って移動される。作動中、被覆ドラム655は、フレキシブル基板が矢印608の方向に移動するように、軸651周囲を回転する。
【0072】
実施:
項目1 集電体上にリチウム金属膜を形成することであって、集電体は銅及び/又はステンレス鋼;及びリチウム金属膜上に第1の保護膜を形成することを含む、集電体上にリチウム金属膜を形成することと;リチウム金属膜上に保護膜スタックを形成することであって、リチウム金属膜上に第1の保護膜を形成することを含む、リチウム金属膜上に保護膜スタックを形成することとを含み、第1の保護膜は、ビスマスカルコゲニド膜、銅カルコゲニド膜、スズカルコゲニド膜、ガリウムカルコゲニド膜、ゲルマニウムカルコゲニド膜、インジウムカルコゲニド膜、銀カルコゲニド膜、誘電体膜、フッ化リチウム膜、又はそれらの組み合わせから選択される、方法。
【0073】
項目2 保護膜スタックを形成することが、第1の保護膜、フッ化リチウム(LiF)膜、金属膜、炭素含有膜、又はそれらの組み合わせから選択される第2の保護膜上に第2の保護膜を形成することをさらに含む、項目1に記載の方法。
【0074】
項目3 誘電体膜が、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)の酸化物、又はそれらの組み合わせから選択される、項目1又は2に記載の方法。
【0075】
項目4 ビスマスカルコゲニド膜及び銅カルコゲニド膜が、CuS、Cu2Se、Cu2S、Cu2Te、CuTe、Bi2Te3、Bi2Se3、又はそれらの組み合わせから選択される、項目1から3のいずれかに記載の方法。
【0076】
項目5 金属膜がスズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、又はそれらの組み合わせから選択される、項目2から4のいずれかに記載の方法。
【0077】
項目6 第1の保護膜がビスマスカルコゲニド膜又は銅カルコゲニド膜であり、第2の保護膜がフッ化リチウムである、項目1から5のいずれかに記載の方法。
【0078】
項目7 第1の保護膜がビスマスカルコゲニド膜又は銅カルコゲニド膜であり、第2の保護膜が金属膜である、項目1から6のいずれかに記載の方法。
【0079】
項目8 第1の保護膜がフッ化リチウム膜であり、第2の保護膜が炭素含有膜である、項目2から7のいずれかに記載の方法。
【0080】
項目9 第1の保護膜が100ナノメートル以下の厚さを有する、項目1から8のいずれかに記載の方法。
【0081】
項目10 集電体上にリチウム金属膜を形成する前に、集電体をプラズマ処理又はコロナ放電プロセスに曝して、集電体の露出面から有機材料を除去することをさらに含む、項目1から9のいずれかに記載の方法。
【0082】
項目11 第1の保護膜を形成することが、スパッタリングプロセス、熱蒸発プロセス、電子ビーム蒸発プロセス、及び化学気相堆積(CVD)プロセスのうちの少なくとも1つを実行することを含む、項項1から10のいずれかに記載の方法。
【0083】
項目12 第2の保護膜を形成することが、スパッタリングプロセス、熱蒸発プロセス、電子ビーム蒸発プロセス、及び化学気相堆積(CVD)プロセスのうちの少なくとも1つを実行することを含む、項目2から11のいずれに記載の方法。
【0084】
項目13 第2の保護膜が100ナノメートル以下の厚さを有する、項目2から12のいずれかに記載の方法。
【0085】
項目14 銅及び/又はステンレス鋼を含む集電体と;集電体上に形成されたリチウム金属膜と;リチウム金属膜上に形成された保護膜スタックであって、ビスマスカルコゲニド膜、銅カルコゲニド膜、スズカルコゲニド膜、ガリウムカルコゲニド膜、ゲルマニウムカルコゲニド膜、インジウムカルコゲニド膜、銀カルコゲニド膜、誘電体膜、フッ化リチウム膜、又はそれらの組み合わせから選択される第1の保護膜;及び第1の保護膜上に形成される第2の保護膜、フッ化リチウム(LiF)膜、金属膜、炭素含有膜、又はそれらの組み合わせから選択される第2の保護膜を含む、保護膜スタックと、を含むアノード電極構造体。
【0086】
項目15 誘電体膜が、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)の酸化物、又はそれらの組み合わせから選択される、項目14に記載のアノード電極構造体。
【0087】
項目16 ビスマスカルコゲニド膜及び銅カルコゲニド膜が、CuS、Cu2Se、Cu2S、Cu2Te、CuTe、Bi2Te3、Bi2Se3、又はそれらの組み合わせから選択される、項目14又は15に記載のアノード電極構造体。
【0088】
項目17 金属膜がスズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、又はそれらの組み合わせから選択される、項目14から16のいずれかのアノード電極構造体。
【0089】
項目18 第1の保護膜がビスマスカルコゲニド膜又は銅カルコゲニド膜であり、第2の保護膜がフッ化リチウムである、項目14から17のいずれかのアノード電極構造体。
【0090】
項目19 第1の保護膜がビスマスカルコゲニド膜又は銅カルコゲニド膜であり、第2の保護膜が金属膜である、項目14から18のいずれかのアノード電極構造体。
【0091】
項目20 第1の保護膜がフッ化リチウム膜であり、第2の保護膜が炭素含有膜である、項目14から19のいずれかのアノード電極構造体。
【0092】
項目21 第1の保護膜が100ナノメートル以下の厚さを有する、項目14から20のいずれかのアノード電極構造体。
【0093】
項目22 第2の保護膜が100ナノメートル以下の厚さを有する、項目14から21のいずれかのアノード電極構造体。
【0094】
項目23 項目14から22のいずれかのアノード電極構造体と;カソード電極構造体と;アノード電極構造とカソード電極構造の間に形成された固体電解質膜とを含むエネルギーストレージデバイス。
【0095】
項目24 固体電解質膜が:LiPON、Li7La3Zr2O12の結晶相又はアモルファス相のドープされたバリアント、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、アルギロダイト組成物、リチウム-硫黄-リン材料、Li2S-P2S5、Li10GeP2S12、及びLi3PS4、リン酸リチウムガラス、(1-x)LiI-(x)Li4SnS4、xLiI-(1-x)Li4SnS4、硫化物と酸化物の混合電解質(結晶性LLZO、アモルファス(1-x)LiI-(x)Li4SnS4混合物、アモルファスxLiI-(1-x)Li4SnS4)、Li3S(BF4)0.5Cl0.5、Li4Ti5O12、リチウムドープチタン酸ランタン(LATP)、Li2+2xZn1-xGeO4、LiTi2(PO4)3、LiHf2(PO4)3、LiGe2(PO4)3,及びそれらの組み合わせの1つ又は複数から構成される、項目23に記載のエネルギーストレージデバイス。
【0096】
要約すると、本開示の利点のいくつかは、現在利用可能な処理システムへのリチウム金属堆積の効率的な統合を含む。現在、リチウム金属の堆積は、乾燥室又はアルゴンガス雰囲気で行われている。リチウム金属は揮発性であるため、後続の処理操作はアルゴンガス雰囲気で実行される。アルゴンガス雰囲気でのその後の処理操作の実行には、現在の製造ツールの改造が含まれる。後続の処理の前にリチウム金属を保護膜でコーティングすることにより、後続の処理を真空下又は大気中で実施できることが発明者等によって見出された。保護膜により、不活性ガス雰囲気で追加の処理操作を実行する必要がなくなり、ツールの複雑さが軽減される。保護膜はまた、リチウム金属膜が形成された負極の輸送、貯蔵、又はその両方を可能にする。さらに、保護膜がイオン伝導膜である実施では、イオン伝導膜を最終的な電池構造に組み込むことができ、電池形成プロセスの複雑さを軽減する。これにより、ツールの複雑さが軽減され、続いて、所有コストが削減される。
【0097】
本開示の要素又はその例示的な態様又は実施を紹介する場合、冠詞の「a」、「an」、「the」及び「前記」は、1つ又は複数の要素が存在することを意味することを意図している。
【0098】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という語は、包括的であることが意図されており、列挙された要素以外にも更なる要素があり得ることを意味する。
【0099】
上記は本開示の実施に関するものであるが、本開示の他の及びさらなる実施は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【国際調査報告】