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特表2022-530798低下したホルムアルデヒド放出を有するメラミンホルムアルデヒドフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-01
(54)【発明の名称】低下したホルムアルデヒド放出を有するメラミンホルムアルデヒドフォーム
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/28 20060101AFI20220624BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C08L61/28
C08K5/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021564366
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020061892
(87)【国際公開番号】W WO2020221800
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】19172375.8
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイセ,ゼバスティアン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】トモフィク,ツェリコ
(72)【発明者】
【氏名】バウムガルトル,ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】レンツ,ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】シュタインケ,トビアス ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ファトー,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】オテロ マルティネツ,イラン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CC181
4J002ET006
4J002FD206
(57)【要約】
メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維に、少なくとも1種のホルムアルデヒド捕捉剤の水溶液を含浸させることにより、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維のホルムアルデヒド放出を低下させる方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維に、少なくとも1種のホルムアルデヒド捕捉剤の水溶液を含浸させることにより、前記メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維のホルムアルデヒド放出を低下させる、方法。
【請求項2】
最初にメラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維を製造し、次に前記メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維の表面に少なくとも1種のホルムアルデヒド捕捉剤の水溶液を含浸させることにより、低いホルムアルデヒド放出を有するメラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維を製造する、方法。
【請求項3】
前記メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品は、メラミン/ホルムアルデヒドフォームから作られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ホルムアルデヒド捕捉剤を含有し、ポリウレタン、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー、又はそれらの混合物、プレポリマー又はモノマーを含まない、メラミン/ホルムアルデヒドフォームを含浸させるための、水溶液。
【請求項5】
前記溶液の総質量に基づいて、0.1~25質量%の前記ホルムアルデヒド捕捉剤を含有する、請求項4に記載の溶液。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の溶液を、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維、好ましくはメラミン/ホルムアルデヒドフォーム成形品に含浸させるために使用する方法。
【請求項7】
以下の工程:
a)メラミン/ホルムアルデヒドの初期縮合物からフォームを調製する工程と、
b)得られた前記フォームを250℃未満でアニールする工程と、
c)アニールしたフォーム物品にホルムアルデヒド捕捉剤の水溶液を含浸させる工程と、
d)含浸されたアニールしたフォームを乾燥させる工程と、
により得ることができる、好ましくはDIN EN 14184-1及びVDA 275に従って決定された0ppmのホルムアルデヒド放出を有する、メラミン/ホルムアルデヒドフォームの成形体。
【請求項8】
ホルムアルデヒド捕捉剤の量は、乾燥した含浸された成形体に基づいて、0.025~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~2.5質量%である、請求項7に記載の成形体。
【請求項9】
工程a)において、前記フォームが、以下のステップ:
aa)100質量部の少なくとも1種のメラミン/ホルムアルデヒドの初期縮合物、2~4質量部の少なくとも1種の硬化剤、0.2~5質量部の界面活性剤又は界面活性剤混合物、0.1~5質量部の少なくとも1種の無機酸の塩又は有機カルボン酸の塩、1~40質量部の少なくとも1種の発泡剤、0~5質量部の少なくとも1種の染料及び/又は蛍光増白剤、0~20質量部の1種以上のさらなる添加剤、及び25~60質量部の水を含む水性混合物(M1)を製造するステップと、
ab)マイクロ波放射を用いて前記混合物M1)を加熱して発泡させるステップと、
ac)前記硬化剤及びマイクロ波放射を用いて、得られた前記フォームを架橋して、硬化させるステップと、
ad)マイクロ波放射を用いて、前記フォームを乾燥させるステップと
を含むプロセスにより調製される、請求項7又は8に記載の成形体。
【請求項10】
前記アニールしたフォームが、含浸前又は含浸後に、例えば前記アニールしたフォームの切断又は機械的な摩耗によって成形され、又は、
例えば、前記アニールしたフォームをプレスで成形して成形体を得、又は
例えば、所望の形状の鋳型で前記フォームを調製する、請求項7から9のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項11】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤が、C-H-酸性化合物、シッフ塩基、及びシッフ塩基であるC-H-酸性化合物の群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法、溶液、使用方法又は成形体。
【請求項12】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤が、アセトアセトアミド、及び好ましくは共有結合したアセトアセトアミド基を含有する化合物から選択される、請求項11に記載の方法、溶液、使用方法又は成形体。
【請求項13】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤が、アセトアセトアミド、エチレンジアミンビス-アセトアセトアミド、トリメチロールプロパントリアセトアセテート、マロン酸ビス-アミド、マロン酸ジヒドラジド、ジメチル1,3-アセトンジカルボキシレート、6-ヒドロキシウラシル、N-メチルアセトアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、2-シアノアセトアセトアミド、メチルシアノアセテート、2-シアノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド、メチル-2-(2-ヒドロキシエチルカルバモイル)エタノール、尿素、置換尿素、アルキル-又はアリール-置換メラミン、ウレイト、カルボキサミド、ジシアンジアミド、グアニジン、スルホリルアミド、スルホンアミド、脂肪族アミン又はグリコール、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11又は12に記載の方法、溶液、使用方法又は成形体。
【請求項14】
アセトアセトアミド、好ましくは共有結合したアセトアセトアミド基を含有する分子、及びそれらの混合物から選択されるホルムアルデヒド捕捉剤を含浸させた、メラミン/ホルムアルデヒドフォームの成形体。
【請求項15】
ホルムアルデヒド捕捉剤の量が、前記含浸されたメラミン/ホルムアルデヒドフォームに基づいて0.025~10質量%である、請求項14に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低下したホルムアルデヒド放出を有するメラミン/ホルムアルデヒドフォーム、これらのフォームの製造方法、及びこれらの方法に使用することができる溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
メラミン/ホルムアルデヒド樹脂をベースとする連続気泡の弾力性フォーム、及び熱風、蒸気又はマイクロ波放射によって、メラミン/ホルムアルデヒドの初期縮合物(precondensate)の発泡剤含有溶液又は分散液を加熱し、発泡及び架橋することによるその製造方法が、知られており、例えば、EP-A 17672及びEP-A 37470に記載されている。
【0003】
ホルムアルデヒド樹脂をベースとするフォームは、少量のホルムアルデヒドを放出する。ホルムアルデヒド放出は、温度及び湿度の上昇とともに増加する。したがって、WO 01/94436には、低いホルムアルデヒド放出を有するメラミン/ホルムアルデヒド縮合物をベースとするフォームの製造方法が記載されており、1:2を超えるメラミンとホルムアルデヒドとのモル比を有するMF初期縮合物が使用される。非常に低いホルムアルデヒド放出を達成するためには、フォームは、乾燥後に220℃でさらに30分間加熱する必要がある。しかしながら、加熱後に、フォームは硬化し、熱成形ができなくなってしまう。
【0004】
US 2008/0197524 A1は、メラミン/ホルムアルデヒド初期縮合物、硬化剤及び発泡剤を含む混合物を加熱し、発泡及び架橋することによるフォームの製造方法を開示しており、ここで、加熱前に、尿素、置換尿素、アルキル-又はアリール-置換メラミン、ウレタン、カルボキサミド、ジシアンジアミド、グアニジン、スルフリルアミド、スルホンアミド、脂肪族アミン又はグリコールを、メラミン/ホルムアルデヒド初期縮合物に基づいて2~10質量%の量でホルムアルデヒド捕捉剤として添加する。
【0005】
US 7,714,031 B2では、メラミン/ホルムアルデヒド初期縮合物からフォームを製造する際に、0.5を超えるメラミン:ホルムアルデヒドのモル比を採用することにより、ホルムアルデヒド放出が低下することが示されている。
【0006】
WO 2018/024559 A1は、水性のアニオン的に安定化された脂肪族ポリウレタン分散液に、ヒドロキシスルホナト酢酸二ナトリウム、トリメチロールプロパントリアセトアセテート、及びマロン酸ジヒドラジドから選択されるホルムアルデヒド捕捉剤を含有する水性ポリマー分散液を開示している。このポリマー分散液は、基材のコーティング又は接着、又はフィルム又はホイルの調製、及び繊維又は皮革材料の含浸に使用される。
【0007】
一方、WO 2017/207687は、ホルムアルデヒド捕捉剤、例えばマロン酸ジヒドラジドの存在下で、ポリイソシアネートとイソシアネートに対して反応性のある基を有するポリマー化合物を反応させることによりポリウレタンを調製する方法を開示している。
【0008】
また、化学化合物、例えば1,2-エチレンビス-アセトアセトアミドも、難燃性組成物中のマイケルドナー(Michael donator)として使用されており、例えばWO 2015/197744 A1を参照されたい。
【0009】
公知のポリウレタンフォームにおけるホルムアルデヒド放出の低減は、必ずしも満足できるものではない。さらに、ホルムアルデヒド放出を調整するために、ポリウレタンフォームを形成しながら反応混合物の組成を変更することにより、ポリウレタンフォームにおける製造方法の変更が必要となる。これは、異なる種類のポリウレタンフォーム物品の製造を複雑にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP-A 17672
【特許文献2】EP-A 37470
【特許文献3】WO 01/94436
【特許文献4】US 2008/0197524 A1
【特許文献5】US 7,714,031 B2
【特許文献6】WO 2018/024559 A1
【特許文献7】WO 2017/207687
【特許文献8】WO 2015/197744 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、ポリウレタンフォーム及び同様のポリマー材料の成形品に低いホルムアルデヒド放出を付与する簡単な方法を提供することである。
【0012】
さらに、成形品、繊維又はホイルは、2019年に有効なバージョンのDIN EN 14184-1及びVDA 275による、ホルムアルデヒド放出が0ppmであることを示すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、この目的は、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維に、少なくとも1種のホルムアルデヒド捕捉剤の水溶液を含浸させることにより、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維のホルムアルデヒド放出を低下させる方法により、達成される。
【0014】
さらに、この目的は、最初にメラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維を製造し、次にメラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維の表面に少なくとも1種のホルムアルデヒド捕捉剤の水溶液を含浸させることにより、低いホルムアルデヒド放出を有するメラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維を製造する方法により、達成される。
【0015】
好ましくは、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品は、メラミン/ホルムアルデヒドフォームから作られる。
【0016】
さらに、この目的は、ホルムアルデヒド捕捉剤を含有し、ポリウレタン、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー、又はそれらの混合物、プレポリマー又はモノマーを含まない、メラミン/ホルムアルデヒドフォームを含浸させるための水溶液により、達成される。
【0017】
好ましくは、溶液は、溶液の総質量に基づいて、0.1~25質量%、より好ましくは1~25質量%のホルムアルデヒド捕捉剤を含有する。
【0018】
さらに、この目的は、この溶液を、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム又は繊維、好ましくはメラミン/ホルムアルデヒド(ポリマー)フォーム又はそれから作られた成形品に含浸させるために使用する方法により、達成される。
【0019】
さらに、本発明によれば、この目的は、以下の工程:
a)メラミン/ホルムアルデヒドの初期縮合物からフォームを調製する工程と、
b)得られたフォームを250℃未満でアニールする工程と、
c)アニールしたフォームにホルムアルデヒド捕捉剤の水溶液を含浸させる工程と、
d)含浸されたアニールしたフォームを乾燥させる工程と、
により得ることができる、好ましくはDIN EN 14184-1及びVDA 275に従って決定された0ppmのホルムアルデヒド放出を有する、メラミン/ホルムアルデヒドフォームの成形体により、達成され、
ここで、アニールしたフォームが、含浸前又は含浸後に、例えばアニールしたフォームの切断又は機械的な摩耗によって成形することができ、又は、
例えば、アニールしたフォームをプレスで成形して成形体を得、又は
例えば、所望の形状の鋳型でフォームを調製する。
【0020】
さらに、この目的は、アセトアセトアミド、好ましくは共有結合したアセトアセトアミド基を含有する分子、及びそれらの混合物から選択されるホルムアルデヒド捕捉剤を含浸させたメラミン/ホルムアルデヒドフォームの成形体により、達成される。
【0021】
成形体において、ホルムアルデヒド捕捉剤の量は、好ましくは、含浸されたメラミン/ホルムアルデヒドフォームに基づいて0.025~10質量%である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
成形の例は、Basotect(登録商標)TG及びBasotect(登録商標)G+に見出すことができる。
【0023】
ホルムアルデヒド捕捉剤又はホルムアルデヒド捕捉剤溶液の量は、乾燥した含浸された成形体に基づいて、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0.025~50質量%、より好ましくは0.05~25質量%、最も好ましくは0.1~15質量%である。
【0024】
ホルムアルデヒド捕捉剤化合物の量は、成形体、好ましくはフォーム成形品に基づいて、好ましくは0.025~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%、最も好ましくは0.1~2.5質量%、例えば0.1~1質量%である。
【0025】
ホルムアルデヒド捕捉剤としては、成形品からのホルムアルデヒド放出を低減し、かつ水中で安定な溶液を形成することができる全ての好適なホルムアルデヒド捕捉剤を使用することができる。好ましくは、ホルムアルデヒド捕捉剤は、C-H-酸性化合物及びシッフ塩基、及びシッフ塩基であるC-H-酸性化合物の群から選択される。
【0026】
例えば、ホルムアルデヒド捕捉剤は、アセトアセトアミド、エチレンジアミンビス-アセトアセトアミド、トリメチロールプロパントリアセトアセテート、マロン酸ビス-アミド、マロン酸ジヒドラジド、ジメチル1,3-アセトンジカルボキシレート、6-ヒドロキシウラシル、N-メチルアセトアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、2-シアノアセトアセトアミド、メチルシアノアセテート、2-シアノ-N-(2-ヒドロキシエチル)アセトアミド、メチル-2-(2-ヒドロキシエチルカルバモイル)エタノール、尿素、置換尿素、アルキル-又はアリール-置換メラミン、ウレイト(ureates)、カルボキサミド、ジシアンジアミド、グアニジン、スルホリルアミド、スルホンアミド、脂肪族アミン又はグリコール、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0027】
好適なホルムアルデヒド捕捉剤は、WO 2017/207687、WO 2018/024559、WO 2015/197744、及びUS 2008/0197524 A1に開示されている。
好ましくは、ホルムアルデヒド捕捉剤は、アセトアセトアミド及びアセトアセトアミド基含有化合物から選択される。
【0028】
最も好ましくは、ホルムアルデヒド捕捉剤は、アセトアセトアミド、及び好ましくは共有結合したアセトアセトアミド基又は単位を含有する分子、例えばエチレンジアミンビス-アセトアセトアミド、N-メチルアセトアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、2-シアノアセトアセトアミドから選択される。最も好ましくは、アセトアセトアミド又はエチレンジアミンビス-アセトアセトアミドが使用される。これらの化合物は、C-H-酸性化合物及びシッフ塩基として作用するため、他の捕捉剤化合物と比較してより高いホルムアルデヒドに対する反応性を有する。
【0029】
ホルムアルデヒド捕捉剤は、それぞれの成形品の表面に含浸させることによって、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム、又は繊維に適用される。最も好ましくは、成形品は、水溶液を含浸させたメラミン/ホルムアルデヒドフォームである。内部表面積が大きいため、大量の水溶液をメラミン/ホルムアルデヒドフォーム又はメラミン/ホルムアルデヒドフォームで作られた発泡物品に含浸させることができる。
【0030】
水溶液は、溶液の総質量に基づいて、一般に0.1~50質量%、好ましくは0.1~25質量%、より好ましくは0.5~25質量%、最も好ましくは1~20質量%のホルムアルデヒド捕捉剤を含有する。
【0031】
1種以上のホルムアルデヒド捕捉剤に加えて、水溶液は、界面活性剤又は湿潤剤などの補助剤、消泡剤、及びそれらの混合物を含有することができる。使用する場合、水溶液は、好ましくは最大20質量%、より好ましくは最大10質量%の、水及びホルムアルデヒド捕捉剤とは異なるさらなる成分を含有する。
【0032】
ホルムアルデヒド捕捉剤を含有する水溶液は、上記で引用した先行技術から知られている。しかしながら、これらの溶液は、ポリウレタン、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー、又はポリウレタン又はメラミン/ホルムアルデヒドポリマーの調製に使用されるプレポリマー又はモノマーを含有する。本発明によれば、典型的には既成の(prefabricated)ポリウレタンフォームは含浸されるので、水溶液はポリウレタン、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー、又はそれらの混合物、プレポリマー又はモノマーを含まない。好ましくは、水溶液は、アブレーションできる(ablative)難燃剤の添加剤、例えばWO 2015/197744の17頁~19頁に開示されているガス形成性又は水形成性の添加剤も含まない。例えば、水溶液は、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム水和物、水酸化マグネシウム及びホウ酸亜鉛を含まない。
【0033】
さらに、水溶液は、好ましくは、具体的にはWO 2015/197744に開示されているように、多官能のマイケルアクセプター(Michael acceptors)を含まない。
【0034】
さらに好ましくは、本発明による水溶液は硬化剤及び発泡剤を含まない。
メラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品、フィルム及び繊維は、メラミンホルムアルデヒド樹脂、又は好ましくはメラミンホルムアルデヒドフォームから調製することができる。それらは、例えば、US 2008/0197524 A1、US 7,714,034 B2及びUS 2015/0210814 A1に開示されているように、様々な方法によって調製することができる。
【0035】
好適なメラミン/ホルムアルデヒドフォーム及び発泡物品は、BASF SE社からBasotect(登録商標)として入手できる。この材料については、EP 0 074 593 A1、EP 0 017 671 A1、EP 0 017 672 A1、EP 0 37 470 A1をさらに参照することができる。
【0036】
また、US 7,714,031 B2のプロセスに従って、メラミン/ホルムアルデヒドフォームを調製することも可能である。このようにして、ホルムアルデヒド放出をさらに低減することができる。
【0037】
含浸は、すべての好適なプロセス、例えばホルムアルデヒド捕捉剤を含有する水溶液に成形品を含浸すること、成形品に水溶液を噴霧すること、又は他のプロセスにより行うことができる。「含浸」という用語は、その後の乾燥時にホルムアルデヒド捕捉剤が成形品上又は成形品内に保持されるように、溶液を成形品の表面に接触させることを意味する。
【0038】
本発明に従って得られる成形品、繊維又はフィルム、特にメラミン/ホルムアルデヒドフォームは、DIN EN 14184-1及びVDA 275による低いホルムアルデヒド放出を示す。好ましくは、放出を、0.0015mg/m未満、より好ましくは0.0010mg/m未満、特に0ppmまで低減することができる。さらに、好ましくは、AgBBスキーム(ドイツ建築製品健康関連評価委員会、AgBBの評価スキーム)に従った長期試験が満たされる。
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0039】
US 2015/0210814 A1の実施例2に従って、メラミン/ホルムアルデヒドフォーム(Basotect(登録商標))を調製した。このフォームは、8~10g/lの密度を有していた。メラミン/ホルムアルデヒドフォームから、フォームシートの形態の成形品を切り取った。
【0040】
1~25質量%のエチレンジアミン-N,N’-ビス(アセトアセトアミド)又はアセトアセトアミドを水に溶解することにより、含浸液を調製した。含浸活性量とは、乾燥したフォームに基づいて、水を含まない含浸活性を指す。
【0041】
メラミン/ホルムアルデヒドフォーム成形品(Basotect(登録商標))からのホルムアルデヒド(FA)放出について、以下の結果を得た。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
AgBB試験の結果:
【0045】
【表3】
【0046】
EA:エチレンジアミン-N,N’-ビス(アセトアセトアミド)、フォーム成形品に基づいて質量%で表示する量、
Basotect(登録商標)G+:含浸しないメラミン/ホルムアルデヒドフォーム成形品、
最大値(AgBB): AgBB試験で許容される最大値であり、AgBB試験は先行技術に基づいて行った、
TVOC:合計の揮発性有機化合物
TSVOC:合計の半揮発性有機化合物
【手続補正書】
【提出日】2020-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン/ホルムアルデヒドフォームから作られたメラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品にアセトアセトアミド、及び好ましくは共有結合したアセトアセトアミド基を含有する化合物から選択される少なくとも1種のホルムアルデヒド捕捉剤の水溶液を含浸させることにより、前記メラミン/ホルムアルデヒドフォームから作られたメラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品のホルムアルデヒド放出を低下させる、方法。
【請求項2】
最初にメラミン/ホルムアルデヒドポリマーのメラミン/ホルムアルデヒドフォームから作られた成形品を製造し、次に前記メラミン/ホルムアルデヒドフォームから作られたメラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品の表面に、アセトアセトアミド、及び好ましくは共有結合したアセトアセトアミド基を含有する化合物から選択される少なくとも1種のホルムアルデヒド捕捉剤の水溶液を含浸させることにより、低いホルムアルデヒド放出を有するメラミン/ホルムアルデヒドフォームから作られたメラミン/ホルムアルデヒドポリマー成形品を製造する、方法
【請求項3】
アセトアセトアミド、及び好ましくは共有結合したアセトアセトアミド基を含有する化合物から選択されるホルムアルデヒド捕捉剤を含有し、ポリウレタン、メラミン/ホルムアルデヒドポリマー、又はそれらの混合物、プレポリマー又はモノマーを含まない水溶液を、メラミン/ホルムアルデヒドフォーム成形品に含浸させるために使用する方法。
【請求項4】
前記水溶液が、前記溶液の総質量に基づいて、0.1~25質量%の前記ホルムアルデヒド捕捉剤を含有する、請求項に記載の使用方法
【請求項5】
以下の工程:
a)メラミン/ホルムアルデヒドの初期縮合物からフォームを調製する工程と、
b)得られた前記フォームを250℃未満でアニールする工程と、
c)アニールしたフォーム物品に、アセトアセトアミド、及び好ましくは共有結合したアセトアセトアミド基を含有する化合物から選択されるホルムアルデヒド捕捉剤の水溶液を含浸させる工程と
d)含浸されたアニールしたフォームを乾燥させる工程と、
により得ることができる、メラミン/ホルムアルデヒドフォームの成形体。
【請求項6】
ホルムアルデヒド捕捉剤の量は、前記乾燥した含浸された成形体に基づいて、0.025~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~2.5質量%である、請求項に記載の成形体。
【請求項7】
工程a)において、前記フォームが、以下のステップ:
aa)100質量部の少なくとも1種のメラミン/ホルムアルデヒドの初期縮合物、2~4質量部の少なくとも1種の硬化剤、0.2~5質量部の界面活性剤又は界面活性剤混合物、0.1~5質量部の少なくとも1種の無機酸の塩又は有機カルボン酸の塩、1~40質量部の少なくとも1種の発泡剤、0~5質量部の少なくとも1種の染料及び/又は蛍光増白剤、0~20質量部の1種以上のさらなる添加剤、及び25~60質量部の水を含む水性混合物(M1)を製造するステップと、
ab)マイクロ波放射を用いて前記混合物M1)を加熱して発泡させるステップと、
ac)前記硬化剤及びマイクロ波放射を用いて、得られた前記フォームを架橋して、硬化させるステップと、
ad)マイクロ波放射を用いて、前記フォームを乾燥させるステップと
を含むプロセスにより調製される、請求項5又は6に記載の成形体。
【請求項8】
前記アニールしたフォームが、含浸前又は含浸後に、例えば前記アニールしたフォームの切断又は機械的な摩耗によって成形され、又は、
例えば、前記アニールしたフォームをプレスで成形して成形体を得、又は
例えば、所望の形状の鋳型で前記フォームを調製する、請求項5から7のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項9】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤が、アセトアセトアミド、エチレンジアミンビス-アセトアセトアミド、N-メチルアセトアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、2-シアノアセトアセトアミド、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法、溶液、使用方法又は成形体。
【請求項10】
アセトアセトアミド、好ましくは共有結合したアセトアセトアミド基を含有する分子、及びそれらの混合物から選択されるホルムアルデヒド捕捉剤を含浸させた、メラミン/ホルムアルデヒドフォームの成形体。
【請求項11】
ホルムアルデヒド捕捉剤の量が、前記含浸されたメラミン/ホルムアルデヒドフォームに基づいて0.025~10質量%である、請求項10に記載の成形体。
【国際調査報告】