(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-08
(54)【発明の名称】UV処理された熱可塑性表面への熱硬化性複合表面処理フィルムの直接接着及び関連する複合構造
(51)【国際特許分類】
B32B 27/08 20060101AFI20220701BHJP
B32B 37/00 20060101ALI20220701BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B32B27/08
B32B37/00
B29C65/48
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566439
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 US2020070021
(87)【国際公開番号】W WO2020232463
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】チェイチアン、 シーナー
(72)【発明者】
【氏名】シェーラー、 カスパー
(72)【発明者】
【氏名】オカーン、 ルアイリ
(72)【発明者】
【氏名】リ、 リ
(72)【発明者】
【氏名】ハルバッシュ、 マイケル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】レンケル、 マーティン
(72)【発明者】
【氏名】アブ-シャナブ、 オマー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ディーガン、 ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル、 アンナ エスメラルダ
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AA13A
4F100AA15A
4F100AA25A
4F100AB01A
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4F100AB10A
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4F100AK57B
4F100AR00A
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4F211TD11
4F211TH24
4F211TN44
4F211TN85
(57)【要約】
【解決手段】
この開示は、エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルム及び他の熱硬化性表面処理フィルムを固体熱可塑性表面に直接接着する方法、並びにこれらの方法から誘導される又は誘導可能な構造に関する。いくつかの実施形態では、本開示はまた、熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された熱可塑性基材を含む複合構造に関する。ここで、直接結合は、熱可塑性基材の熱可塑性表面と熱硬化性表面処理フィルムの第1面との間の境界面を規定する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された熱可塑性基材を含む複合構造であって、
前記直接結合は、前記熱可塑性基材の熱可塑性表面と前記熱硬化性表面処理フィルムの第1面との間の境界面を規定し、
前記熱硬化性表面処理フィルムは、前記熱硬化性表面処理フィルムの第1面の反対側に第2面をさらに含む、複合材料。
【請求項2】
前記熱可塑性基材が、
(a)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意に前記カルボニル基は、ポリアクリルアミド(PARA)等のアミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンスルファイド(PPS);
(d)ポリフェニレンオキシド(PPO);又は
(e)ポリエーテルイミド(PEI)を含む、請求項1に記載の複合構造。
【請求項3】
前記熱可塑性基材が、十分な強度の化学線の照射時にその結合が少なくとも部分的な光分解開裂を受けやすい熱可塑性ポリマーを含み、前記化学線が、約10nm~約500nm又は約100nm~約450nmの範囲内、好ましくは約200nm~約350nmの範囲内の少なくとも1つの波長の放射線を包含する、請求項1に記載の複合構造。
【請求項4】
前記熱可塑性基材が、少なくとも1つの波長(任意で1つ、2つ、3つ又は4つの波長)で約0.1J/cm
2~約300J/cm
2の範囲内、好ましくは少なくとも1つの波長で約0.5J/cm
2~約250J/cm
2又は約1.5J/cm
2~約250J/cm
2の範囲内のエネルギーの化学線の照射時に、その結合が少なくとも部分的な光分解開裂を受けやすい熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の複合構造。
【請求項5】
前記熱硬化性表面処理フィルムが未硬化である、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項6】
前記熱硬化性表面処理フィルムが部分的に硬化されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項7】
前記熱硬化性表面処理フィルムがエポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項8】
前記熱硬化性表面処理フィルム自体が、熱硬化性樹脂内に含有される1つ又は複数の有機又は無機の繊維、布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む固体複合材料である、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項9】
前記熱硬化性表面処理フィルムが、前記熱硬化性表面処理フィルムの第2面上又はその下に配置された1つ又は複数の剥離可能な有機又は無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む固体複合材料である、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項10】
前記熱硬化性表面処理フィルムが、熱硬化性樹脂内に含有される1つ又は複数の有機又は無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む固体複合材料であり、前記熱硬化性表面処理フィルムが、落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途での使用に適した少なくとも1つの導電性材料をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項11】
前記エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムが、1つ又は複数の有機又は無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む固体複合材料であり、前記エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムが、熱硬化性樹脂に含有される衝撃改質剤としての使用に適した少なくとも1つの粒子状材料をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項12】
前記熱硬化性表面処理フィルムが、
(a)前記第2面上又はその下に配置された第1の剥離可能な布、織物、メッシュ、又は多孔質シート;
(b)落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途での使用に適した少なくとも1つの導電性材料;
(c)ナノ、マイクロ、及び/又はマクロ寸法の粉末、粒子、ビーズ、フレーク、ウィスカー、又は繊維を含む少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤、前記少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤は、例えば、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、ジルコニウム、又はアルミニウムの炭化物、窒化物又は酸化物、炭素、銅、ニッケル、Sn-Zn、又はステンレス鋼、又はアラミドを包含する、セラミック、ポリマー、ガラス、又はそれらの金属/半金属材料又は合金を含む;
(d)UV耐性ポリマー又はUV安定化添加剤;
の2つ以上を含む多機能固体複合材料である、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項13】
前記熱硬化性表面処理フィルムが、45°クロスハッチテープ試験のASTM D3359-09に従う少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを付けるのに十分な強度で、前記熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された前記熱可塑性基材に接着される、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項14】
直接結合された熱可塑性-熱硬化性複合材料を調製する方法であって:
(a)熱可塑性基材の表面に、前記熱可塑性基材の表面を活性化するのに十分な化学線を照射すること;
(b)前記活性化された熱可塑性基材表面に、熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムを接触させること;及び
(c)前記熱可塑性基材と前記熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムとの間に直接結合を形成するのに十分な時間及び条件下で、前記熱可塑性基材に対して前記熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムに、圧力、及び任意で熱を加えること;及び
を含む、方法。
【請求項15】
熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムを硬化し、それにより、熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された熱可塑性基材を含む複合構造を形成することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記熱可塑性基材が:
(a)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK);ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意に前記カルボニル基は、ポリアクリルアミド(PARA)等のアミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンスルファイド(PPS);
(d)ポリフェニレンオキシド(PPO);又は
(e)ポリエーテルイミド(PEI)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムが、エポキシベースの熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムであり、対応する熱硬化性表面処理フィルムが、エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムである、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記化学線が、約10nm~約450nmの範囲内、好ましくは約200nm~約350nmの範囲内の1つ又は複数の波長で、十分な強度で適用される、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記化学線が、少なくとも1つの波長で約0.1J/cm
2~約300J/cm
2の範囲内、好ましくは少なくとも1つの波長で約0.5J/cm
2~約250J/cm
2又は約1.5J/cm
2~約250J/cm
2の範囲内のエネルギーで、1つ又は複数の波長で適用される、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記熱硬化性表面処理フィルムに加えられる圧力が、任意で1つ又は複数の高温、例えば160℃~180℃で、約30分間~約240分間の範囲内の時間で、0.4~1MPaである、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記直接結合された熱可塑性-熱硬化性複合材料が、前記熱可塑性基材と前記熱硬化性表面処理フィルムとの間に、ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験で少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを示す接着強度を示す、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項14~21のいずれか一項に記載の方法により調製される複合構造。
【請求項23】
請求項1~13のいずれか一項に記載の複合構造を含む航空機部品。
【請求項24】
請求項1~13のいずれか一項に記載の複合構造を含む自動車部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照:なし
【0002】
この開示は、エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルム及び他の熱硬化性表面処理フィルムを固体熱可塑性表面に直接接着する方法、並びにこれらの方法から誘導される又は誘導可能な構造に関する。
【背景技術】
【0003】
繊維強化ポリマーマトリックス複合材料は、過酷な環境に対する耐性があり、高い比強度又は高い強度対密度比を有し、軽量であるため、航空機部品、高性能自動車、ボートのハル、及び自転車のフレームで一般的に使用される高性能構造材料である。
【0004】
航空宇宙産業で使用される従来の複合構造には、典型的に、塗装前に複合構造に必要な性能特性を提供するための表面処理フィルムが包含される。エポキシベースのフィルム等の表面処理フィルムは、ポリマー複合材料の外面に適用されることが多く、航空宇宙用途に必要な表面品質を複合材料に提供する。例えば、表面処理フィルムをプリプレグと共硬化して、保護する実質的に多孔性のない表面を提供してよく、表面処理フィルムの抵抗率は下部の基材よりも低く、複合材料製造の労力、時間、及び費用を削減する。さらに、これらの表面処理フィルムは、例えば、落雷、静電放電、及び電磁放電に対するそれらの耐性を改善するように機能化されてよい。
【0005】
しかし、構造部品の製造中に、これらの表面処理フィルムをポリマーマトリックス複合材料の構造要素と共硬化又は他の方法で結合することが常に可能であるとは限らない。いくつかの構造要素は、硬化する複合材料で作成されていないので、これらの材料へのこうした結合は特に困難である。なぜなら、航空宇宙用途で使用される熱可塑性材料の融点は非常に高く、結合中に発生する混合プロセスが不可能であるためである。
【0006】
接着剤業界では、特定の高性能プラスチック等の特定の基材を接着するのが難しいことも知られている。PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、ポリアクリルアミド(PARA)又はポリエーテルイミド(PEI)等の熱可塑性プラスチックは、比強度又は強度対密度比が高いという点で魅力的な構造ポリマーであるが、結合特性が低いという特徴もある。少なくとも1つの理由は、結合するプラスチックの表面エネルギー特性が低いことであると考えられている。
【0007】
そのような低エネルギー表面への表面処理フィルムの結合を可能にするために、接着剤又は塗料を塗布する前に、表面を接着しやすくするために、化学的プライミング、こうした基材の結合用に特別に配合された化学的接着剤組成物の使用、物理的摩耗又は化学的粗面化、火炎処理、及び酸プラズマエッチングを包含するいくつかの戦略が開発されてきた。ただし、これらの各方法には、考慮する必要のある交換条件がある。
【0008】
酸エッチング又は化学活性化等の化学処理は、安全性及び廃棄物処理の懸念、プロセス制御、並びに費用のために、商業的使用の観点から制限的である。
【0009】
プラズマ技術には大規模な機器が必要である。資本費用とは別に、機器のサイズに問題があり、例えば限られたスペースで使用するために持ち運びするのが困難である。
【0010】
この方法を十分に制御し、廃棄物の摩耗した副産物の問題を扱うことが難しい場合があるため、物理的摩耗も様々な結果をもたし得る。
【0011】
プライマーは大きな効果を発揮するために使用できるが、後続する結合のために表面を活性化する別の方法が常に必要である。これは特に、プラスチックの結合が困難な傾向があり、典型的に、接着強度が他のプラスチックよりも低くなる傾向があるPEEK、PARA、PPS又はPEIに当てはまり、これは、一般にプライマーを使用する場合でも当てはまる。
【0012】
これらの問題に対して最先端の提案された解決策が存在するにもかかわらず、末端利用者がより多くの選択肢を利用できるように代替の解決策を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、熱可塑性基材に直接結合された熱硬化性表面処理フィルムを含む複合構造、これらの複合構造を作製するための方法、及びこれらの複合構造を含む物品に関する。
【0014】
特定の実施形態では、複合構造は、熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された熱可塑性基材を含む。ここで、直接結合は、熱可塑性基材の熱可塑性表面と熱硬化性表面処理フィルムの第1面との間の境界面を規定し、熱硬化性表面処理フィルムは、熱硬化性表面処理フィルムの第1面の反対側の第2面をさらに含む。
【0015】
熱可塑性基材の定義は、本明細書の他の場所に記載されている。必ずしもそのように制限されるわけではないが、特定のより具体的な実施形態では、熱可塑性基材は、以下を含む。
(a)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意に前記カルボニル基は、ポリアクリルアミド(PARA)等のアミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンスルファイド(PPS);
(d)ポリフェニレンオキシド(PPO);又は
(e)ポリエーテルイミド(PEI)
【0016】
追加で又は代わりに、熱可塑性基材は、十分な強度及び持続時間の化学線による照射時に少なくとも部分的な光分解開裂を受けやすいいくつかの化学結合を含む熱可塑性ポリマーを含む。これらの実施形態いくつかでは、化学線は、約10nm~約500nm又は約100nm~約450nmの範囲内、好ましくは約200nm~約350nmの範囲内の少なくとも1つの波長を有する放射線を包含する。
【0017】
追加で又は代わりに、熱可塑性基材は、少なくとも1つの波長で約0.1J/cm2~約300J/cm2の範囲内、好ましくは少なくとも1つの波長で約0.5J/cm2~約250J/cm2又は約1.5J/cm2~約250J/cm2の範囲内のエネルギーで、少なくとも1つの波長の化学線を照射すると少なくとも部分的な光分解開裂を受けやすい熱可塑性ポリマーを含む。
【0018】
熱可塑性基材に直接結合された熱硬化性表面処理フィルムを含む複合構造内で、熱硬化性表面処理フィルムは、未硬化であってよく(例えば、最初に調製されたとき)又は部分的に硬化されていてよい(例えば、いくつかの後処理後)。熱可塑性基材又は表面に接着された熱硬化性表面処理フィルムは、供給されたままの熱硬化性表面処理フィルムよりも高い硬化度を有する。
【0019】
好ましい実施形態では、熱硬化性表面処理フィルムはエポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムである。様々な種類のエポキシベースの表面処理フィルムがここに記載される。
【0020】
複合材料自体として、本明細書に開示されるように基材に使用又は接着される表面処理フィルムは、いくつかの実施形態において、ポリマー又はプレポリマーマトリックスに組み込まれる1つ以上の有機、無機、又は金属添加剤、例えば流動剤、レオロジー調整剤、密度調整剤、衝撃調整剤、防腐剤、顔料、着色剤等のような添加剤を含む。
【0021】
代わりに又は追加で、表面処理フィルムは、ナノ、マイクロ、及び/又はマクロ寸法の粉末、粒子、ビーズ、フレーク、ウィスカー、又は繊維を含む少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤を含んでよい。これらの形態は、特定の材料の材料及び機能に応じて異なる。
【0022】
代わりに又は追加で、表面処理フィルムは、熱硬化性樹脂又はポリマーに含有される1つ又は複数の有機又は無機繊維、布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含んでよい。これらの実施形態のいくつかでは、熱硬化性表面処理フィルムは、熱硬化性表面処理フィルムの第2面上又はその下に配置された1つ又は複数の剥離可能な有機又は無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む。
【0023】
代わりに又は追加で、表面処理フィルムは、落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途での使用に適した少なくとも1つの導電性材料を含んでよい。
【0024】
代わりに又は追加で、熱硬化性表面処理フィルムは、熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された熱可塑性基材に、ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験で、少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを付けるのに十分な強度で接着され、その条件は実施例により十分に記載されている。
【0025】
さらに他の実施形態は、直接結合された熱可塑性-熱硬化性複合構造を調製するそれらの方法を含む。これらの特定のものでは、方法は、
(a)熱可塑性基材の表面に、前記熱可塑性基材の表面を活性化するのに十分な化学線を照射すること;
(b)前記活性化された熱可塑性基材表面に、熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムを接触させること;及び
(c)前記熱可塑性基材と前記熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムとの間に直接結合を形成するのに十分な時間及び条件下で、前記熱可塑性基材に対して前記熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムに、圧力、及び任意で熱を加えることを含む。この方法は、熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムを硬化させ、それにより、熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された熱可塑性基材を含む複合構造を形成することをさらに含んでよい。
【0026】
方法を参照すると、基材、表面処理フィルム、及びそれらの間の結合を活性化する方法の性質は、他の場所で説明されている複合構造と一致しており、ここではこれ以上繰り返さない。方法の他の態様(例えば、圧力及び熱処理)は、本明細書の他の場所でさらに説明されている。
【0027】
本開示のさらに別の態様は、開示された複合構造を含むそれらの物品を包含し、部品、又は航空機及び自動車等の陸上車両を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本出願は、添付の図面と併せて読むとさらに理解される。主題を説明するために、主題の例示的な実施形態が図面に示されている。しかしながら、現在開示されている主題は、開示されている特定の方法、装置、及びシステムに限定されない。さらに、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。図面は以下の通りである。
【0029】
【
図1】
図1は、本明細書に記載の接着試験のための45度のクロスハッチスクライブ及びテープの位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された熱可塑性基材を含む複合構造、並びにこれらの組成を製造及び使用する方法を包含する、物質の新しい組成に関する。
【0031】
本開示は、添付の図面及び実施例に関連して取られた以下の記載を参照することにより、より容易に理解されてよく、これらは全て、本開示の一部を形成する。本開示は、本明細書に記載又は示される特定の製品、方法、条件、又はパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を例としてのみ説明するためのものであり、クレームされた発明を限定することを意図するものではないことを理解されたい。同様に、特に明記しない限り、可能な機構若しくは作用機序又は改善の理由に関する説明は、例示のみを目的としており、本明細書の開示は、そのような提案された機構若しくは作用機序又は改善の理由の正誤によって制約されるべきではない。この文章全体を通して、記載は、組成物、並びに前記組成物を製造及び使用する方法に言及していることが認識されている。すなわち、本開示が、組成物、並びに組成物を製造及び使用する方法に関連する特徴又は実施形態を記載又はクレームする場合、そのような記載又はクレームは、これらの特徴又は実施形態をこれらの文脈のそれぞれにおける実施形態(すなわち、組成物、製造方法、及び使用方法)に拡張することを意図している。
【0032】
複合構造
本開示は、複合構造のそれらの実施形態を含み、複合構造は、熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された熱可塑性基材を含む。本明細書で使用されるとき、用語「直接結合」及びその文法上の変形は、熱可塑性基材の熱可塑性表面と熱硬化性表面処理フィルムの第1面との間の境界面を規定し、熱可塑性表面及び第1面は、好ましくは熱可塑性表面及び第1面から供給されていない材料なしで、熱可塑性表面と第1面との共通の境界を形成する表面で、互いに接着されている。同様に、用語「直接結合」は、結合が、熱可塑性基材のポリマー部分の活性化に由来するペンダント官能基が、熱硬化性表面処理フィルムの相補的結合部分に直接結合し、中間結合基が存在することによって(例えば、外部接着剤又は同様の組成物なしで)達成される機構を指してよい。
【0033】
熱硬化性表面処理フィルムは、熱硬化性表面処理フィルムの第1面の反対側の第2面をさらに含む。この第2面は、本明細書の他の場所に記載されているように、任意で機能化してよい。
【0034】
本明細書に記載されるように、熱可塑性基材と熱硬化性表面処理フィルムとの間の結合は、熱可塑性基材が熱硬化性表面処理フィルムに直接結合されるものとして説明される。同様に、この結合は、熱硬化性表面処理フィルムが熱可塑性基材に直接結合されている場合、又は熱硬化性表面処理フィルムと熱可塑性基材が直接結合されている場合として説明することができる。このような区別は単に意味論的なものであり、説明は全体を通して同等であると見なす必要がある。
【0035】
熱可塑性基材
本開示の文脈において、熱可塑性基材は、高分子化学の当業者によって一般的に理解される熱可塑性ポリマーを含むが、好ましい実施形態では、熱可塑性基材は、航空宇宙産業で典型的に使用される熱可塑性ポリマーを含む。
【0036】
この文脈においてさえ、熱可塑性基材の熱可塑性ポリマーは広く定義されているが、十分な強度の化学線による照射の際に光分解開裂を受けやすい結合を含むそれらの熱可塑性ポリマーが好ましいようである。このような結合としては、-O-、-S-、-C(O)-、-S(O)-、-S(O)2-、-C(O)O-、-C(O)-N-、又はそれらの組み合わせ等のヘテロ原子を含む結合が挙げられる。こうした熱可塑性ポリマーは、これらに限定されないが、独立の実施形態として、
(a)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意に前記カルボニル基は、ポリアクリルアミド(PARA)等のアミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンスルファイド(PPS);
(d)ポリフェニレンオキシド(PPO);又は
(e)ポリエーテルイミド(PEI)の1つ又は複数を包含する。
【0037】
これらの各ポリマーは、連結基に加えてペンダントを含んでよく、例えば、用語「ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)」は、(例えば、アルキル基による)置換及び非置換PEEKポリマーの両方を指す。
【0038】
本明細書の他の場所で説明されているように、熱可塑性基材また、一般に、複合材料であり得、熱可塑性ポリマーは、流動剤、レオロジー調整剤、密度調整剤、防腐剤、顔料、着色剤等の有機及び/又は無機添加剤をさらに含む。熱可塑性基材は、典型的には、ポリマーマトリックスに含有される繊維、メッシュ、布、又は多孔質シートを任意で含む構造的に強化された材料であり、好ましくは、隣接する層又は交互の層の繊維が互いに横方向に配向されるように、積層スタックに配置された配向繊維(例えば、炭素繊維)等を含有するポリマー複合材料の複数の層を含む繊維強化複合材料である。
【0039】
境界面が「熱可塑性基材の熱可塑性表面と熱硬化性表面処理フィルムの第1面」との間であると説明される場合、熱可塑性表面は、熱可塑性基材の熱可塑性ポリマーと同一であるか化学的に一致する。この点に関して、用語「化学的に一致する」は、表面の結合部位のいくつかが光分解活性化によって変化したとしても、基材のポリマービルディングブロックと表面のポリマービルディングブロックが実質的に同一であることを意味する。
【0040】
熱可塑性ポリマーが、十分な強度の化学線による照射時に光分解開裂を受けやすい結合を含むと記載されている場合、いくつかの実施形態では、その化学線は、約10nm~約500nm又は約100nm~約450nm、好ましくは約200nm~約350nmの範囲内の少なくとも1つの波長を有する放射線を包含する。追加の実施形態では、その化学線は、約100nm~125nm、125nm~150nm、150nm~175nm、175nm~200nm、200nm~225nm、225nm~250nm、250nm~275nm、275nm~300nm、300nm~325nm、325nm~350nm、350nm~375nm、375nm~400nm、400nm~425nm、425nm~450nm、475nm~500nm、又は、前述の範囲の任意の2つ以上で定義される範囲、例えば300nm~400nm若しくは275nm~325nmの1つ又は複数の波長を有する放射線を包含する。他の実施形態では、化学線は、UV-A(約315~400nm又は320~390nm)あるいはUV-B(280~315nm又は280~320nm)として特徴付けられる少なくとも1つの波長を有する光又は放射線が包含される。他の実施形態では、化学線は、UV-C(約100~280nm)、UV-V(395~445nm)、近紫外線(NUV;300~400nm)、中紫外線(MUV;200~300nm)、遠紫外線(FUV;122~200nm)、真空紫外線(VUV;10~200nm)、又は極紫外線(EUV;10~120nm)として特徴付けられる少なくとも1つの波長を有する光又は放射線を包含する。
【0041】
熱可塑性ポリマーが、十分な強度の化学線による照射時に光分解開裂を受けやすい結合を含むと記載されている場合、いくつかの実施形態では、これらのポリマーは、少なくとも1つの波長で約0.1J/cm2~約300J/cm2の範囲内のエネルギーで、好ましくは少なくとも1つの波長で、約0.5J/cm2~約250J/cm2又は約1.5J/cm2~約250J/cm2の範囲内で、少なくとも1つの波長の化学線によって活性化されるものを包含する。追加の実施形態は、活性化エネルギーが0.1~0.5J/cm2、0.5~1J/cm2、1~1.5J/cm2、1.5~2J/cm2、2~2.5J/cm2、2.5~3J/cm2、3~3.5J/cm2、3.5~4J/cm2、4~4.5J/cm2、4.5~5J/cm2、5~5.5J/cm2、5.5~6J/cm2、6~6.5J/cm2、6.5~7J/cm2、7~7.5J/cm2、7.5~8J/cm2、8~9J/cm2、9~10J/cm2、10~25J/cm2、25~50J/cm2、50~100J/cm2、100~150J/cm2、150~200J/cm2、200~250J/cm2、250~300J/cm2の1つ又は複数の範囲内であるものを包含する、あるいは、範囲は、上述の範囲の任意の2つ以上、例えば0.1~250J/cm2、又は0.5~100J/cm2により定義される。2つ、3つ、4つ、若しくはそれ以上の波長又は波長範囲による同時又は連続照射もまた、さらなる独立した実施形態と見なされる。
【0042】
熱硬化性表面処理フィルム
本開示の文脈において、熱硬化性表面処理フィルムは、高分子化学の当業者によって一般的に理解されているように、熱硬化性ポリマーを含むが、好ましい実施形態では、熱硬化性表面処理フィルムは、例えば、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、エポキシ、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ビニルエステル、又はそれらのコポリマー若しくは混合物を含む、航空宇宙産業でこの文脈で典型的に使用される(プレ)ポリマーシステムを包含する。
【0043】
機能/性能と作業性の両方の観点から、エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムが好ましいようである。この文脈において、特定の実施形態では、エポキシベースの表面処理フィルムは、ビスフェノールA、F、S、E、及びM樹脂のジグリシジルエーテル;エポキシノボラック;一価、二価、三価、及び多価フェノールのグリシジルエーテル;テトラフェノールエタンのグリシジルエーテル;ヒドロキシルフェニルメタンベースのエポキシ樹脂;ナフタレンベースのエポキシ樹脂;アミノ-フェノール樹脂のトリグリシジルエーテル;メチレンジアニリン樹脂のテトラグリシジルエーテル;脂肪族ポリオールのグリシジルエーテル;脂環式エポキシ樹脂;全てのエポキシタイプの変更されたグレード(ハロゲン、ケイ素、リンを含有する);ゴム(ブタジエン、ブタジエンアクリロニトリルコポリマー等)を使用した全てのエポキシタイプの強化グレード/付加物の1つ又は複数を包含するエポキシ樹脂を包含するが、これらに限定されない。本発明者らは、本発明の方法において、特に限定的ではないが、PEEK基材を用いて、ロックタイト(登録商標)EA9845エアロ、ロックタイト(登録商標)EA9845LC、ロックタイト(登録商標)EA9845P&P、ロックタイト(登録商標)EA9845LC P&P、及びロックタイト(登録商標)EA9837.1エポキシベースの複合材料表面処理フィルムで良好な結果を見たので、これらは好ましい実施形態と見なされる。他の独立した実施形態では、ロックタイトEA9837.1エアロ、ロックタイトEA9837.1BLKエアロ、ロックタイトEA9837.1LSエアロ、ロックタイトEA9845エアロ、ロックタイトEA9845LCエアロ、ロックタイトEA9845LAエアロ、ロックタイトEA9845P&Pエアロ、及びロックタイトEA9845LC P&P、並びにテンカーテTC235SF-1、エアログライド表面処理フィルム、サイテックからのサーフェースマスター905、並びにヘクセルからのリダックス641として指定されたエポキシベースの表面処理フィルムもこれらの用途で使用できる。
【0044】
独立の実施形態には、熱可塑性表面に接着されたときに、熱硬化性表面処理フィルムがまだ未硬化であるか、部分的に硬化されているか、又は完全に硬化されているものが包含される。これらの各硬化段階は、処理のさまざまな段階で現れる可能性がある。
【0045】
典型的に、熱硬化性表面処理フィルムは、適用される場合、12.5~12,500ミクロン(0.5~500ミル)、好ましくは12.5~1250ミクロン(0.5~50ミル)の範囲内の総厚を有する。他の実施形態では、総厚は、12.5~25ミクロン、25~50ミクロン、50~75ミクロン、75~100ミクロン、100~125ミクロン、125~150ミクロン、150~175ミクロン、175~200ミクロン、200~250ミクロン、250~300ミクロン、300~400ミクロン、400~450ミクロン、450~500ミクロン、500~1000ミクロン、1000~1500ミクロン、1500~2000ミクロン、2000~2500ミクロン、2500~5000ミクロン、5000~7500ミクロン、7500~10,000ミクロン、10,000~12,500ミクロンの範囲、又はこれらの範囲の2つ以上の組み合わせ、例えば、25~500ミクロン、50~300ミクロン、又は約25~125ミクロンで表されてよい。
【0046】
他の実施形態では、熱硬化性表面処理フィルムは、0.005~0.15lb./ft2(psf)又は24g/m2~730g/m2の範囲内の面積質量を有することができる。代わりに又は追加で、この面積質量は、25~50g/m2、50~100g/m2、100~200g/m2、200~300g/m2、300~400g/m2、400~500g/m2、500~600g/m2、600~700g/m2、又は700~730g/m2の1つ又は複数の範囲により定義されてよい。航空機用途においては、好ましい範囲は、0.005~0.01psf(25~50g/m2)、0.005~0.02psf(25~100g/m2)、0.005~0.03psf(25~150g/m2)、0.005~0.04psf(25~200g/m2)、0.005~0.05psf(25~250g/m2)、又は0.005~0.06psf(25~300g/m2)、又はこれらの範囲の2つ以上のいくつかの組み合わせを包含する。
【0047】
熱可塑性基材の場合と同様に、熱硬化性表面処理フィルムも、熱硬化性ポリマー又はプレポリマーマトリックスに組み込まれる1つ又は複数の有機、無機、又は金属添加剤、例えば、流動剤、レオロジー調整剤、密度調整剤、防腐剤、顔料、着色剤等のような添加剤を含む複合材料である。ある実施形態では、これらの添加剤は、連続繊維若しくは細断繊維、ウィスカー、ナノ材料、粒子状鉱物、セラミック、衝撃改質剤、及び/又は充填若しくは中空カプセルを包含する。少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤は、ナノ、マイクロ、及び/若しくはマクロ寸法の粉末、粒子、ビーズ、フレーク、ウィスカー、又は繊維を含有してよく、少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤は、例えば、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、ジルコニウム、又はアルミニウムの炭化物、窒化物若しくは酸化物、炭素、銅、ニッケル、Sn-Zn、又はステンレス鋼、又はアラミドを包含する、セラミック、ポリマー、ガラス、又はそれらの金属/半金属材料又は合金、又はコーティングされたハイブリッド材料を含む。これらの充填剤は、表面処理フィルムの厚さ寸法全体に実質的に均一に分布させてよく、又はその第1面若しくは第2面の1つに集中させてよい。これらの粒子状充填剤は、本明細書に記載の機能性材料、例えば、セラミック、ポリマー、ガラス、又は金属/半金属材料又はそれらの合金のうちの1つ又は複数を含んでよい。
【0048】
代わりに又は追加で、こうした表面処理フィルムは、熱硬化性樹脂に含有される1つ又は複数の有機、無機、又は金属繊維、メッシュ、布、又は多孔質シートを含んでよい。
【0049】
このような繊維は、アルミナ、アラミド、ホウ素、炭素、ガラス、炭化ケイ素、又はそれらの混合物の連続繊維若しくは細断繊維又はウィスカーを包含する強化繊維として機能してよい。ガラス及び/又は炭素繊維が特に好ましい。
【0050】
1つ又は複数の有機又は無機繊維、布、織物、メッシュ、又は多孔質シートは、熱硬化性樹脂又は(プレ)ポリマーに含有されてよく、又は熱硬化性表面処理フィルムの第2面上又はその下に配置された1つ又は複数の剥離可能な有機又は無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含んでよい。こうした剥離可能な材料の使用は、熱硬化性表面処理フィルムの第1面の反対側の第2面からの、剥離可能な布、織物、メッシュ、又はシートの後続する除去を可能にし、後続の塗装に適した新しい表面を提供する。本開示の特定の実施形態では、複合構造は、そのような剥離可能な層が除去されたものであり、そのような塗装即応表面を露呈する。
【0051】
更なる実施形態では、複合構造は、この塗装即応表面に塗料又は他の充填若しくは未充填又はクリアコート仕上げが塗布された構造であり、すなわち、熱硬化性表面処理フィルムの第2面がそのように塗装又はコーティングされている。塗料が最終的な表面構成に適合する限り、塗料の選択は制限されない。好ましい塗料は、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリウレタン、又はそれらのコポリマー若しくは混合物を含むものである。露出した表面への塗料の結合は、選択した塗料の性質に応じて、物理的又は化学的、あるいはその両方であり得る。露出された表面は、剥離プロセスの結果として、本明細書に記載のプロセスがない場合よりも高濃度の反応性化学基が表面に付着することが予想される。結果として、露出面と塗料との間に生じる結合は、塗料との化学的相互作用の寄与が、プロセスがない場合よりも高くなり、それによってより一体的な結合が提供される可能性が高いと予想される。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「布」は、織られた又は織られていない材料を指す。用語「フィルム」は、その通常の意味と一致して、平らなポリマーセクションを意味する。布又はフィルムのサイズは、シート、テープ、又は連続ロールを包含するように変化してよい。フィルムは、多孔性、半透性、又は非多孔性であってよい。非多孔質の穴あきフィルムが好ましい。布とフィルムの両方は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(p-フェニレンサルファイド)(PPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、フッ素化若しくはペルフルオロ化ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン(登録商標))、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF又はテドラー(登録商標))等)、又はそれらの混合物若しくはコポリマーを含む材料を包含してよい。好ましい例示的な布は、ポリエステル、ポリアミド、炭素繊維、ガラス又は他の無機繊維又はケブラー(登録商標)を含んでよい。ポリエステル、ナイロン、又はそれらの混合物は、この目的の布又はフィルムに特に有用である。布又はフィルムのそれぞれは、接着性樹脂をラミネートすることによってコーティング又は含浸してよい。樹脂は、表面処理フィルム組成物の5~50重量%又は10~40重量%であってよい。布又はフィルムのポリマー表面は、任意でシリカ、シロキサン、酸化アルミニウム又は金属でコーティングされてよく、あるいはプラズマ又はシランで処理されてよい。
【0053】
布又はフィルムは、単層又は多層の布構造であってよい。布が織られている場合、織布は、しっかりと織られたモノフィラメント又はマルチフィラメントのトウを含む。最終的な塗装製品に望まれる仕上がりに適合する、滑らかな仕上がりを提供するために、しっかりと織られた高密度の織物が好ましい。したがって、好ましい織物としては、平織り、ハーネスサテン織り、クロウフットサテン織り、又はツイルが挙げられ、クロウフットサテン織りスタイルが最も好ましい。ポリマーフィルムは、究極に閉じた織物(ultimate closed weave)及びカレンダー化された布(calendared fabric)として想定されてよく、ポリマーフィルムは、高度にカレンダー化された閉じた織布(highly calendared, closed weave fabrics)よりも大幅に小さい表面粗さを提供する。
【0054】
織りの堅さは、1インチ当たりの縦糸端及び横糸端の観点から説明することができ、両方の用語は、織布の業者によって容易に理解される。本発明の布又はフィルムは、1インチ当たり少なくとも80の縦糸端、又は1インチ当たり少なくとも100、120、140若しくは160の縦糸端、並びに1インチ当たり少なくとも40の横糸端、又は1インチ当たり少なくとも60、80若しくは100の横糸端を独立して含有するものを含む。例えば、布又はフィルムが1インチ当たり少なくとも約80の縦糸端及び1インチ当たり少なくとも約40の横糸端を含有する場合、良好な結果が得られる。より好ましい実施形態は、1インチ当たり少なくとも120の縦糸端及び1インチ当たり少なくとも60の横糸端で織られた布の織物を包含する。こうした織物は、例えば、ノースカロライナ州グリーンズボロのプレシジョン・ファブリックス・グループから市販されており、「細かい表面の印象」を提供することを特徴とするものが最も好ましい。例示的な組成は、60004/56111ポリエステル、51789/52006ナイロン、及び2008/56115ナイロン材料を包含する。繊維又は糸の太さは、縦糸端/横糸端のパラメータを考慮して、布全体の厚さに適合して、最小限に開いた織物を提供するようなものである。
【0055】
代わりに又は追加で、熱硬化性表面処理フィルムは、第2の機能性材料の1つ又は複数のシートを含んでよく、その少なくとも一部は、多孔質織布又は不織布、エキスパンド金属箔又はポリマーフィルム、格子、メッシュ、スクリーン又はウェブの形態である。特定の好ましい実施形態では、追加の機能性材料のこれらの多孔質シートは、表面処理フィルムの中又は上に存在する。したがって、表面処理フィルムは、任意で、単機能性(例えば、導電性金属フィラメント若しくは繊維も含有する)又は多機能性であり得る。このような追加の材料は、落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途での使用に適した導電性材料を包含する。
【0056】
すなわち、いくつかの実施形態では、これらの追加の機能性材料は、機能性材料の複数のシートとして存在してよく、又は単一のシートが複数の異なる機能を有する材料(いわゆるハイブリッド材料を包含する)を含んでよい。上記の剥離可能な多孔質シートは、1つの機能的能力(すなわち、剥離性)を提供するが、ここで使用される文脈において、用語「機能的」は、強度の向上、EMIシールド材料、及び最終的に接着される基材への静的及び落雷保護を提供するために、性能を改善するフィルムにいくつかの特性(例えば、衝撃安定性、寸法安定性、電気伝導率、及び熱伝達能力)を与えるシート材料の属性を指す。さらに、句「第2の機能性材料の少なくとも1つのシート」は、剥離不可能な機能性材料の1つ又は複数のシートであり得、剥離可能な布又はシートと区別される。すなわち、こうした第2の機能性材料は、(a)以下に説明するように、1つ又は複数の(剥離不可能な)機能性材料の1枚のシート;(b)同一の(剥離不可能な)機能性材料の2枚以上のシート;(c)異なる(剥離不可能な)材料の2枚以上のシート;又は(d)2つ以上の(剥離不可能な)機能性材料の2枚以上のシートを包含する実施形態を表す。
【0057】
さらに、第2の機能性材料の多孔質シートは、織布及びエクスパンドフィルムを含んでよいが、さらに、これらのシートは、剥離可能な多孔質シートに有用なものと同一又は類似の材料を包含する、連続又は細断された有機又は無機繊維の不織布、メッシュ、スクリーン、又はウェブも含んでよい。すなわち、1つ又は複数のフッ素化又はペルフルオロ化ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン(登録商標))、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF又はテドラー(登録商標))等)、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(p-フェニレンサルファイド)、ポリ塩化ビニル、又はそれらのコポリマー若しくは混合物も含んでよい。他の有用な有機材料には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、又はそれらのコポリマー若しくは混合物が、単独で、又はこの目的のために記載された他の材料のいずれかと混合して含有される。アラミド(例えば、ケブラー(登録商標)繊維)及びイミド繊維(例えば、カプトン(登録商標))もまた、この用途で魅力的である。第2の機能性材料は、硬化後及び最終使用時に多機能表面処理フィルムに残ることが意図されているため、これらのシートの物理的完全性又は織りの性質は、剥離可能な材料よりも重要ではない;すなわち、それらは剥離操作に耐える必要はない。
【0058】
機能性材料はまた、セラミック又はガラス繊維(例えば、酸化物、炭化物、窒化物、酸炭化物、酸窒化物、炭窒化物、又はアルミニウム、ホウ素、ケイ素及び/又はチタンを含む酸炭窒化物)、サーメット繊維、炭素、金属繊維(例えば、アルミニウム、銅、鉄、銀、スズ、亜鉛、又は混合物、合金)、あるいはこれらの材料を含むコーティングされたハイブリッドを含んでよい。例示的な材料には、アルミナ、アラミド、ホウ素、炭素、ガラス、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、コーティングされたハイブリッド又はそれらの混合物の繊維又はウィスカー、好ましくはガラス、炭素又は金属でコーティングされた繊維が包含される。本明細書で使用されるとき、用語「繊維」には、マクロ、ミクロ、又はナノ次元のものが包含され、ウィスカーとしても知られる細長い単結晶を通るワイヤーが包含される。いくつかの場合では、これらの材料は、例えば炭素コーティングされた金属、ガラス、又はポリマー;金属コーティングされたポリマー、炭素、又はガラス;ポリマーコーティングされたガラス、炭素、叉は金属等を包含する、様々な材料クラスの複合材料である。いくつかの場合では、機能性材料は導電性である。いくつかの実施形態では、機能性材料は、表面処理フィルムに磁気特性を付与する。
【0059】
このより一般的な説明内の特定の実施形態では、複合構造は、以下の2つ以上を含む多機能固体複合材料である接着された熱硬化性表面処理フィルムを含む。
(a)前記第2面上又はその下に配置された第1の剥離可能な布、織物、メッシュ、又は多孔質シート;
(b)落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途での使用に適した少なくとも1つの導電性材料;
(c)ナノ、マイクロ、及び/又はマクロ寸法の粉末、粒子、ビーズ、フレーク、ウィスカー、又は繊維を含む少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤、前記少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤は、例えば、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、ジルコニウム、又はアルミニウムの炭化物、窒化物又は酸化物、炭素、銅、ニッケル、Sn-Zn、又はステンレス鋼、又はアラミドを包含する、セラミック、ポリマー、ガラス、又はそれらの金属/半金属材料又は合金を含む;及び、任意で
(d)当技術分野で知られているUV耐性ポリマー又はUV安定化添加剤。
【0060】
複合構造の物理的特性
本明細書に開示される複合構造はまた、それらの物理的属性の1つ又は複数によって、例えば、熱可塑性及び熱硬化性材料の直接結合の強度によって特徴付けられてよい。
【0061】
ある実施形態では、熱硬化性表面処理フィルムは、ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験で少なくとも3B、4B又は5Bのスコアを付けるのに十分な強度で熱可塑性基材に接着される。その条件は、実施例でより完全に説明されている。
【0062】
作製方法
この時点まで、本開示は複合構造を説明してきたが、本開示はこれらの構造を作製する方法も包含する。代替の実施形態は、具体的に開示された複合構造に関して記載されたものとは異なる場合でも、以下の方法から誘導される又は誘導可能な構造を包含する。
【0063】
ここに記載されているように、本開示は、直接結合された熱可塑性-熱硬化性複合材料を調製する方法を包含する。前記方法は、
(a)熱可塑性基材の表面に、前記熱可塑性基材の表面を活性化するのに十分な化学線を照射すること;
(b)前記活性化された熱可塑性基材表面に、熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムを接触させること;及び
(c)前記熱可塑性基材と前記熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムとの間に直接結合を形成するのに十分な時間及び条件下で、前記熱可塑性基材に対して前記熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムに、圧力、及び任意で熱を加えること、を含む。
【0064】
ある実施形態では、これらの方法は、熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムを硬化させ、それにより、熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された熱可塑性基材を含む複合構造を形成することをさらに含む。
【0065】
これらの実施形態は、本明細書の他の場所に記載されている熱可塑性基材及び表面処理フィルムのいずれかを使用する方法を包含する。
【0066】
これらの実施形態はまた、本明細書の他の場所で説明されているように、化学線の使用を包含する。完全を期すために、これらは、化学線が、約10nm~約450nmの範囲、好ましくは約200nm~約350nmの範囲の1つ又は複数の波長で十分な強度で適用される場合を包含するものとしてここで部分的に繰り返される。適切なサブ範囲は、本明細書の他の場所で説明されている。同様に、化学線は、約0.1J/cm2~約300J/cm2の範囲内のエネルギーで少なくとも1つの波長で、好ましくは少なくとも1つの波長で約0.5J/cm2~約250J/cm2又は約1.5J/cm2~約250J/cm2の範囲内、又はここに記載されている追加の具体化された範囲の任意の1つ又は複数で、1つ又は複数の波長で適用されてよい。
【0067】
さらに、化学線は、約2~約600秒又は約10~約60秒の範囲内の時間、約2mW/cm2~約3000mW/cm2、約2mW/cm2~約2000mW/cm2、約300mW/cm2~約600mW/cm2の1つ又は複数の範囲内の割合で、又は好ましくは約40~500mW/cm2の範囲内の割合で適用されてよい。特定の他の実施形態では、化学線は、約2~約5mW/cm2、約5~約10mW/cm2、約10~約25mW/cm2、約25~約50mW/cm2、約50~約100mW/cm2、約100~約200mW/cm2、約200~約300mW/cm2、約300~約400mW/cm2、約400~約500mW/cm2、約500~約600mW/cm2、約600~約700mW/cm2、約700~約800mW/cm2、約800~約900mW/cm2、約900~約1000mW/cm2、約1000~約2000mW/cm2、約2000~約3000mW/cm2の1つ又は複数の範囲で記載される割合で、1つ又は複数の波長で適用されてよい。いくつかの実施形態では、範囲は約2~2000mW/cm2、又は好ましくは約40~500mW/cm2である。
【0068】
これらのエネルギーを送達するのに必要な時間は、基材の性質及びエネルギーが基材に送達される速度に依存する。連続的に移動する生産ライン、例えば、連続する基材が光源を通過してそれらを活性化する場合、より速い活性化が望ましい場合がある。曝露時間は、約0.1秒~約360分、例えば、約0.5秒~約180分、又は約0.5秒~約30分、又は約3秒~約19分、又は約240秒未満であってよい。スループットの観点から、曝露時間は約0.1秒~約360分であることが好ましい。
【0069】
追加で又は代わりに、化学線は、1つ又は複数の波長で、前述の割合の1つ又は複数で、約2~約5秒間、約5~約10秒間、約10~約20秒間、約20~約30秒間、約30~約40秒間、約40~約60秒間、約60~約80秒間、約80~約100秒間、約100~約200秒間、約200~約300秒間、約300~約400秒間、約400~約500秒間、約500~約600秒間又はさらに長く約20分間まで、約60分間まで、又は約360分間までの1つ又は複数の範囲で定義される時間、適用されてよい。
【0070】
個々の熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の結合対を調製するために必要なエネルギーは、結合される材料の性質と、こうした化学活性化に利用できる時間によって異なる。良好な結果が達成されており、以下の処理後に一般的に利用可能であると考えられている:
UV-A(320~390nm) - 200mW/cm2×30秒=6000mJ/cm2=6J/cm2
UV-B(280~320nm) - 306mW/cm2×30秒=9180mJ/cm2=9.2J/cm2
UV-C(100~260nm) - 70mW/cm2×30秒=2100mJ/cm2=2.1J/cm2
UV-V(395~445nm - 200mW/cm2×30秒=6J/cm2
【0071】
以下の範囲は、より一般的ではないにしても、少なくとも試験された材料に対して、個別に又は集合的に適切であることを示唆している:
UV-A(320~390nm) - 100~400mW/cm2×10~120秒=1~48J/cm2
UV-B(280~320nm) - 10~300mW/cm2×10~120秒=0.1~36J/cm2
UV-C(100~260nm) - 5~200mW/cm2×10~120秒=0.5~24J/cm2
UV-V(395~445nm) - 50~400mW/cm2×10~120秒=0.5~48J/cm2
【0072】
これらの範囲のそれぞれを独立して使用する照射は、独立した実施形態と見なされる。
【0073】
化学線が言及される本発明の全ての態様において、化学線は、結合される基材を照射するように意図的に及び/又は特別に配置された光源からのものである。いくつかの例では、光源は、基材から1メートル以内、例えば、基材から30cm以内にある。明確にするために、こうした光源からの化学線による照射は、自然光、オーバーヘッドライトからの光等の周囲光の使用を包含することを意図せず、いくつかの実施形態では特に除外する。
【0074】
本明細書に記載の方法は、熱可塑性基材内に活性剤を組み込むことを必要としない。またこれらの方法は、化学エッチング(例えば、酸エッチング)若しくは物理的摩耗(例えば、サンド/グリットブラスト)又は他の処理(例えば、火炎処理;プラズマ処理;オゾン処理等)等の、表面に物理的な変化を生じさせて接着力を高めるような処理は必要としない。
【0075】
特に明記しない限り、熱可塑性基材の表面は、いくつかの実施形態では、照射は超周囲温度(例えば、20℃~25℃、25℃~30℃、30℃~40℃、40℃~50℃、又は50℃~60℃の1つ又は複数の範囲内)で行われるが、それ以外の場合は周囲温度及び条件で照射される。追加で又は代わりに、別の実施形態では、照射は、酸素の非存在下、真空状態、周囲空気、又は酸素が豊富な環境で行ってよい。
【0076】
照射は、熱可塑性基材の表面全体又はパターン化された部分のいずれかで行ってよい。例えば、化学線への表面の曝露は、後続する結合のために活性化される表面の領域と、後続する結合のために活性化されない表面の領域を作成するために選択的に適用される。化学線を透過して後続の結合領域のために活性化された表面の領域を作成する領域、及び化学線を遮断して後続の結合のために活性化されていない表面の領域を作成する領域を有するマスクを使用してよい。小さな領域又は大きな領域を、必要に応じて様々な機器(スポット放射線源から多数の放射線源まで)で処理できる。結合する領域のみが放射線にさらされる必要がある。パターン化又はまだら様式で行われる場合、表面処理フィルムは、実質的にこれらの活性化されたセクションにのみ接着するか、又は非活性化されたセクションよりも実質的に多く接着する。
【0077】
特定の理論の正しさに拘束されることを意図せずに、化学線照射がこれらのヘテロ原子結合の少なくともいくつかを破壊することによって熱可塑性表面を活性化し、それによって活性化ペンダント-OH、-SH、-C(O)H、-C(O)OH、又は-C(O)-NH部分を提供する可能性があり、表面処理フィルムに反応性基が存在すると、クロスポリマー結合を形成する。
【0078】
熱可塑性表面が活性化されると、熱硬化性表面処理フィルムに圧力と、任意で熱が加えられる。ある実施形態では、加えられる圧力は、約0.05MPa~1.2MPaの範囲内の1つ又は複数の圧力、若しくは0.05MPa~0.1MPa、0.1MPa~0.2MPa、0.2MPa~0.3MPa、0.3MPa~0.4MPa、0.4MPa~0.5MPa、0.5MPa~0.6MPa、0.6MPa~0.7MPa、0.7MPa~0.8MPa、0.8MPa~0.9MPa、0.9MPa~1.0MPa、1.0MPa~1.1MPa、1.1MPa~1.2MPaの1つ又は複数の範囲、又は前述の範囲の2つ以上の組み合わせ、例えば0.4MPa~0.8MPa、又は0.6MPa~0.7MPaである。圧力は、30分~60分、60分~90分、90分~120分、120分~180分、180分~240分又はそれ以上の範囲内の時間適用されてよい。特定の実施形態では、熱可塑性基材と熱硬化性表面処理フィルムの複合構造は、この圧力処理中に加熱される。他の実施形態では、外部からの熱は加えられないが、加えられる場合、構造の温度は150℃~160℃、160℃~170℃、170℃~180℃、180℃~190℃、190℃~200℃、例えば170℃~180℃の範囲内の1つ又は複数の温度に加熱される。独立の実施形態では、熱は、静的に、又は実施例に記載されているように上昇速度で、記載されている時間の一部又は全てに適用される。
【0079】
接着されると、熱可塑性基材と熱硬化性表面処理フィルムとの間の結合強度は、本明細書の他の場所で説明されている結合測定基準と一致している。
【0080】
これらの複合構造を組み込んだ物品
複合構造及びそれらを作製する方法に加えて、本開示は、これらの複合構造を含む全ての物品を企図する。複合構造はあらゆるサイズの物品に適しているが、大きな構造には特に魅力的である。企図される構造には、一次構造要素、二次構造要素、外部要素、内部要素、並びに商業用及び個人用航空機及び航空宇宙用途、自動車、ウォータークラフト(船舶を包含する)、鉄道車両及びタンカー、並びに貯蔵タンクのいずれかの1つ又は複数のうちの1つであってよい構造が包含される。
【0081】
すなわち、本明細書に記載の複合構造のいずれかを含む航空機部品は、本開示の範囲内であると見なされる。これらには、航空機の尾翼、翼、胴体、又はプロペラ、及び他の翼のある若しくは翼のない航空機又は宇宙船の対応する機構が包含されるが、これらに限定されない。
【0082】
さらに、本明細書に記載の任意の複合構造を含む、自動車、自転車、オートバイ、トラック、又はウォータークラフト等の陸上車両の構成要素もまた、本開示の範囲内であると見なされる。これらには、フード、フェンダー、バンパー、ハル、又はフレームが包含されるが、これらに限定されない。
【0083】
用語
本開示では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形の参照を含み、数値への参照は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、少なくともその値を包含する。したがって、例えば、「材料」への言及は、当業者に知られているそのような材料及びその同等物の少なくとも1つへの言及である。
【0084】
値が「約」という記述子を使用して近似値として表される場合、その値は別の実施形態を形成することが理解されよう。一般に、用語「約」の使用は、開示された主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化することができ、その機能に基づいて、それが使用される特定の文脈で解釈されるべき近似を示す。当業者は、これを日常の問題として解釈することができるであろう。いくつかの場合では、値に使用される有効数字の数が、単語「約」の範囲を決定する1つの非限定的な方法であってよい。他の場合には、一連の値で使用される漸次的変化を使用して、各値の「約」という用語で使用可能な意図された範囲を決定してよい。存在する場合、全ての範囲は包括的で組み合わせ可能である。つまり、範囲に示されている値への参照には、その範囲内の全ての値が包含される。
【0085】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されている本開示の特定の特徴もまた、単一の実施形態で組み合わせて提供されてよい。すなわち、明らかに互換性がないか、又は具体的に除外されない限り、個々の実施形態は、他の実施形態と組み合わせることができると見なされ、そのような組み合わせは別の実施形態である。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本開示の様々な特徴はまた、別個に又は任意のサブコンビネーションで提供されてよい。最後に、実施形態は、一連の工程の一部、又はより一般的な構造の一部として説明されてよいが、前記各工程は、他の工程と組み合わせることができる独立した実施形態と見なしてもよい。
【0086】
「含む」、「本質的に成る」、及び「から成る」という移行用語は、特許用語で一般的に受け入れられている意味でそれらを暗示することを意図している。つまり、(i)「包含する」、「含有する」又は「によって特徴付けられる」と同義である「含む」は、包括的又は自由形式であり、追加の、引用されていない要素又は方法ステップを除外するものではない。(ii)「から成る」は、クレームで指定されていない要素、工程、又は成分を除外する。(iii)「本質的に成る」は、クレームの範囲を、クレームされた発明の「基本的及び新規の特徴に実質的に影響を及ぼさない」特定の材料又は工程に限定する。「含む」(又はその同等物)という句に関して記載された実施形態はまた、実施形態として、「から成る」及び「本質的に成る」に関して独立して記載されるものを提供する。「本質的にから成る」という観点から提供されるこれらの実施形態の場合、基本的及び新規の特徴は、本明細書に記載の、又は特定の組成物若しくは方法ステップに関連する複合構造を提供するための方法又は組成物/システムの容易な操作性である。
【0087】
リストが提示されるとき、特に明記しない限り、そのリストの個々の要素、及びそのリストの全ての組み合わせは、別個の実施形態であることが理解されるべきである。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、C1-3と同様に、別個の実施形態としての「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」又は「A、B、又はC」の実施形態を包含するものとして解釈されるべきである。
【0088】
(メタ)アクリル若しくは[メタ]アクリル又は(プレ)ポリマー等の材料を説明するための丸括弧又は角括弧の使用は、丸括弧又は角括弧で囲まれた用語又は句の有無を暗示することを意図している。例えば、用語「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルの一方又は両方を指す。そして、用語「(プレ)ポリマー」は、ポリマー又はプレポリマーの一方又は両方を指す(後者は、有機成分の性質に応じて、モノマー又はオリゴマー、あるいは非架橋ポリマーさえも含む)。
【0089】
本明細書全体を通して、関連技術の当業者によって理解されるように、単語はそれらの通常の意味を与えられるべきである。しかしながら、誤解を避けるために、特定の用語の意味は具体的に定義又は明確化される。
【0090】
用語「化学線」は、熱可塑性組成物又は表面を活性化する入射化学線照射の能力を包含する、光化学反応を生成し得る電磁放射の波長を指す。本開示の様々な実施形態において、本明細書の他の場所に記載される特定の範囲に加えて、用語「化学線」はまた、UV-A(約315~400nm又は320~390nm)及びUV-B(280~315nm又は280~320nm)として特徴付けられる少なくとも1つの波長を有する光又は放射線を包含する。他の実施形態では、化学線は、UV-C(約100~280nm)、UV-V(395~445nm)、近紫外線(NUV;300~400nm)、中紫外線(MUV;200~300nm)、遠紫外線(FUV;122-200nm)、真空紫外線(VUV;10~200nm)、又は極紫外線(EUV;10~120nm)として特徴付けられる少なくとも1つの波長を有する光又は放射線を包含する。
【0091】
本開示の文脈において、用語「複合構造」は、熱可塑性基材と熱硬化性表面処理フィルムとの間の直接結合から生じる層状構造を指す。熱可塑性基材と熱硬化性表面処理フィルム自体の両方も、その用語(すなわち、添加剤、充填剤、繊維等を含むポリマー又はプレポリマーマトリックス)の真の意味での複合材料と見なしてもよいことを認識している。用語「複合材料」がこれらの文脈で全部として使用されている場合、これらは、本明細書では、複合熱可塑性基材又は複合表面処理フィルムのいずれかと呼ばれる。
【0092】
従来理解されているように、用語「硬化した」は、ポリマー鎖の架橋によってポリマー材料の強化又は硬化をもたらす化学プロセスを指す。これは、熱硬化性ポリマーの製造と強く関連している。硬化は、熱、放射線、電子ビーム、又は化学添加物の影響を受け得る。本明細書で使用されるとき、用語「部分的に硬化した」は、元のポリマー又はプレポリマー材料のそれと比較した、架橋の程度の任意の増加を指す。
【0093】
「任意の」又は「任意で」は、その後に記載する状況が発生しても発生しなくてもよいことを意味し、そのため、記載には、状況が発生する場合と発生しない場合が包含される。
【0094】
用語「方法」及び「プロセス」は、本開示内で交換可能であると見なされる。
【0095】
用語「光分解」、「光分解の」等は、UV光の使用による熱可塑性表面の制御された活性化を指し、その間に特定の化学結合、典型的にはヘテロ原子を含む化学結合が切断され、それによって表面を未処理の表面よりも化学的に活性にする官能基が生成する。これらのより化学的に活性な官能基は、表面処理フィルムの硬化中に熱硬化性表面処理フィルムと結合することができるか、又は結合する。
【0096】
本明細書で使用されるとき、用語「樹脂」は、硬化時に固体材料に変換される液体、典型的には粘性又は高粘度の材料の従来の意味を有する。
【0097】
用語「表面処理フィルム」は、航空宇宙工学の分野でよく知られている、固体形態の複合材料を指し、典型的に、面積重量が0.150ポンド/平方フィート未満であり、総厚が25~12,500ミクロン(1~500ミル)の範囲内である。これらは典型的に、航空機の基材表面に適用され、航空宇宙用途に必要な表面品質を提供する。ある実施形態では、表面処理フィルムへの言及は、ポリマー又はプレポリマーマトリックスに組み込まれる1つ又は複数の有機、無機、又は金属添加剤、例えば、流動剤、レオロジー調整剤、密度調整剤、防腐剤、顔料、着色剤等の添加剤中のそのような複合材料を意味する。他の実施形態では、表面処理フィルムは、追加で又は代わりに熱硬化性樹脂に含有される1つ又は複数の有機、無機、又は金属繊維、メッシュ、布、又は多孔質シートを含んでよい。エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムでは、熱硬化性樹脂はエポキシベースの樹脂を含む。表面処理フィルムは、任意で、単機能(例えば、導電性金属フィラメント若しくは繊維を含有する)又は多機能(以前の用途のように)であり得る。
【0098】
本明細書で使用されるとき、用語「熱可塑性」は、特定の高温でしなやか又は成形可能になり、冷却すると固化するプラスチックポリマー材料である。航空宇宙用途で使用されるような、本開示内で考慮される熱可塑性プラスチックは、典型的に高温でそのような変質を受ける。この標識に包含される特定の種類の材料は、本明細書の他の場所に開示されており、これらに限定されないが、(メタ)アクリル、アクリロニトリル(アクリロニトリルブタジエンスチレンを包含する)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリアミド、ポリアミドイミド(PAI、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、ポリ乳酸(ポリラクチド)、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン(アセタールとしても知られている)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン、ポリヒドロキシアルカノエートポリイミド、ポリケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、及びポリフッ化ビニリデンのポリマーを包含する。
【0099】
用語「熱硬化性(thermosetting)」又は「熱硬化可能な(thermosettable)」は、本明細書では、従来の意味で使用され、硬化中に架橋ネットワークによって不可逆的に硬化する(すなわち、「熱硬化性(thermoset)」)ポリマー若しくはプレポリマー又は樹脂を指す。架橋(メタ)アクリル、(メタ)アクリルアミド、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、エポキシ、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ビニルエステル、フェノール、アミノ及びフラン樹脂、又はそれらのコポリマー若しくは混合物は、これらの種類の材料の非限定的な例である。
【0100】
業界の慣例として、「熱硬化性(thermoset)」又は「熱硬化性(thermoset(ting))」という用語のいずれかを、硬化の程度に関係なく、ポリマー又は表面処理フィルムの性質を説明するために広く使用してよい。用語「熱硬化性(thermoset(ting))」は、部分的又は完全に硬化した(熱硬化性(thermoset))材料と、未硬化又は硬化度の低い(熱硬化性(thermosetting)又は熱硬化可能な(thermosettable))材料の両方を包含する。明らかに、硬化の程度はあらゆる材料のスペクトルであるが、当業者は、それらの使用の文脈においてこれらの用語の意味を区別することができるであろう。
【0101】
「熱硬化性(thermosetting)又は熱硬化可能な(thermosettable)表面処理フィルム」あるいは「熱硬化性(thermoset(ting))フィルム」は、それぞれ引用されたポリマー又はプレポリマーを含む、固体複合材料である。こうした表面処理フィルムは、ポリマー及び/又はプレポリマー並びにポリマー又はプレポリマーマトリックスに包含される1つ又は複数の有機、無機、又は金属添加剤、例えば、流動剤、レオロジー調整剤、密度調整剤、防腐剤、顔料、着色剤等のような添加剤を含む。これらの表面処理フィルムはまた、任意で、ポリマー又はプレポリマーマトリックスの1つの表面内又はその上に含有される1つ以上の有機、無機、若しくは金属繊維、メッシュ、布、又は多孔質シートを含んでよい。エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムでは、熱硬化性樹脂はエポキシベースの樹脂を含む。表面処理フィルムは、任意で、単機能性(例えば、導電性金属フィラメント若しくは繊維を含有する)又は多機能性(本明細書の他の場所で説明されるように)であり得る。用語「熱硬化性(thermosetting)又は熱硬化可能な(thermosettable)表面処理フィルム」及び「熱硬化性(thermoset)表面処理フィルム」は、硬化の程度が異なる表面処理フィルム組成物を指すことを理解されたい。明確にするために、これらの用語は、それらが発生する文脈で考慮されるべきである。
【0102】
以下の実施形態のリストは、前の説明と置換したり交換したりするのではなく、補足することを意図している。
【0103】
実施形態1
熱硬化性表面処理フィルムに直接結合する熱可塑性基材を含む複合構造であって;
前記直接結合は、前記熱可塑性基材の熱可塑性表面と前記熱硬化性表面処理フィルムの第1面との間の境界面を規定し、前記熱硬化性表面処理フィルムは、前記熱硬化性表面処理フィルムの第1面の反対側に第2面をさらに含む。
【0104】
特に指定しない限り、熱可塑性表面は熱可塑性基材と同一であるか化学的に一致し、「化学的に一致する」という用語は、表面の結合部位の一部が光分解活性化によって変化した場合でも、基材と表面のポリマービルディングブロックが同一であるであることを意味する。
【0105】
実施形態2
前記熱可塑性基材が、
(a)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意に前記カルボニル基は、ポリアクリルアミド(PARA)等のアミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンスルファイド(PPS);
(d)ポリフェニレンオキシド(PPO);又は
(e)ポリエーテルイミド(PEI)を含む、実施形態1の複合構造。
【0106】
実施形態3
前記熱可塑性基材が、十分な強度の化学線の照射時にその結合が少なくとも部分的な光分解開裂を受けやすい熱可塑性ポリマーを含み、前記化学線が、約10nm~約500nm又は約100nm~約450nmの範囲内、好ましくは約200nm~約350nmの範囲内の少なくとも1つの波長の放射線を包含する、実施形態1又は2の複合構造。この実施形態の追加の態様は、本明細書の他の場所で説明されるこれらの範囲のサブ範囲を包含する。
【0107】
実施形態4
前記熱可塑性基材が、少なくとも1つの波長(任意で1つ、2つ、3つ又は4つの波長)で約0.1J/cm2~約300J/cm2の範囲内、好ましくは少なくとも1つの波長で約0.5J/cm2~約250J/cm2又は約1.5J/cm2~約250J/cm2の範囲内のエネルギーの化学線の照射時にその結合が少なくとも部分的な光分解開裂を受けやすい熱可塑性ポリマーを含む、実施形態1~3のいずれか1つの複合構造。この実施形態の追加の態様は、本明細書の他の場所で説明されるこれらの範囲のサブ範囲を包含する。
【0108】
実施形態5
前記熱硬化性表面処理フィルムが、熱可塑性表面のパターン化された部分に直接結合している、実施形態1~4のいずれか1つの複合構造。
【0109】
実施形態6
前記熱硬化性表面処理フィルムが未硬化である、実施形態1~5のいずれか1つの複合構造。
【0110】
実施形態7
前記熱硬化性表面処理フィルムが部分的に硬化されている、実施形態1~6のいずれか1つの複合構造。
【0111】
実施形態8
前記熱硬化性表面処理フィルムがエポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムである、実施形態1~7のいずれか1つの複合構造。
【0112】
実施形態9
前記熱硬化性表面処理フィルムはそれ自体が、熱硬化性樹脂内に含有される1つ又は複数の有機若しくは無機繊維、布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む固体複合材料である、実施形態1~8のいずれか1つの複合構造。
【0113】
実施形態10
前記熱硬化性表面処理フィルムが、前記熱硬化性表面処理フィルムの第2面上又はその下に配置された1つ又は複数の剥離可能な有機又は無機の布、織物、メッシュ又は多孔質シートを含む固体複合材料である、実施形態1~9のいずれか1つの複合構造。
【0114】
実施形態11
前記熱硬化性表面処理フィルムが、熱硬化性樹脂内に含有される1つ又は複数の有機又は無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む固体複合材料であり、前記熱硬化性表面処理フィルムが、落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途での使用に適した少なくとも1つの導電性材料をさらに含む、実施形態1~10のいずれか1つの複合構造。
【0115】
実施形態12
前記エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムが、1つ又は複数の有機又は無機の布、織物、メッシュ、又は多孔質シートを含む固体複合材料であり、前記エポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムが、熱硬化性樹脂に含有される衝撃改質剤としての使用に適した少なくとも1つの粒子状材料をさらに含む、実施形態1~11のいずれか1つの複合構造。
【0116】
実施形態13
前記熱硬化性表面処理フィルムが、
(a)前記第2面上又はその下に配置された第1の剥離可能な布、織物、メッシュ、又は多孔質シート;
(b)落雷保護、電流散逸、EMIシールド、又は熱伝達用途での使用に適した少なくとも1つの導電性材料;
(c)ナノ、マイクロ、及び/又はマクロ寸法の粉末、粒子、ビーズ、フレーク、ウィスカー、又は繊維を含む少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤、前記少なくとも1つの粒子状充填剤又は添加剤は、例えば、アルミニウム、ホウ素、ケイ素、スズ、ジルコニウム、又はアルミニウムの炭化物、窒化物又は酸化物、炭素、銅、ニッケル、Sn-Zn、又はステンレス鋼、又はアラミドを包含する、セラミック、ポリマー、ガラス、又はそれらの金属/半金属材料又は合金を含む;
(d)UV耐性ポリマー又はUV安定化添加剤;
の2つ以上を含む多機能固体複合材料である、実施形態1~12のいずれか1つの複合構造。
【0117】
実施形態14
熱硬化性表面処理フィルムは、0.150ポンド/平方フィート未満の面積重量を有する、実施形態1~13のいずれか1つの複合構造。
【0118】
実施形態15
熱硬化性表面処理フィルムは、25~12,500ミクロン(1~500ミル)の範囲内の総厚を有する、実施形態1~14のいずれか1つの複合構造。この実施形態の追加の態様は、本明細書の他の場所で説明されるこれらの範囲のサブ範囲を包含する。
【0119】
実施形態16
前記熱硬化性表面処理フィルムが、ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験(条件は、実施例でより完全に説明されている)で少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを付けるのに十分な強度で、前記熱硬化性表面処理フィルム直接結合された前記熱可塑性基材に接着される、実施形態1~15のいずれか1つの複合構造。
【0120】
実施形態17
直接結合された熱可塑性-熱硬化性複合材料を調製する方法であって:
(a)熱可塑性基材の表面に、前記熱可塑性基材の表面を活性化するのに十分な化学線を照射すること;
(b)前記活性化された熱可塑性基材表面に、熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムを接触させること;及び
(c)前記熱可塑性基材と前記熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムとの間に直接結合を形成するのに十分な時間及び条件下で、前記熱可塑性基材に対して前記熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムに、圧力、及び任意で熱を加えることを含む、方法。
【0121】
この実施形態の特定の独立した態様において、照射は、本明細書の他の場所に記載されているように、周囲又は超周囲の温度及び条件で、酸素の非存在下、真空条件下、周囲空気中、又は酸素が豊富な環境で行われる。
【0122】
実施形態18
熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムを硬化させ、それにより、熱硬化性表面処理フィルムに直接結合された熱可塑性基材を含む複合構造を形成することをさらに含む、実施形態17に記載の方法。
【0123】
実施形態19
前記熱可塑性基材が:
(a)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK);ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリアリールエーテルケトン;
(b)カルボニル基に直接結合したフェニル基を含有するポリマー、任意に前記カルボニル基は、ポリアクリルアミド(PARA)等のアミド基の一部である;
(c)ポリフェニレンスルファイド(PPS);
(d)ポリフェニレンオキシド(PPO);又は
(e)ポリエーテルイミド(PEI)を含む、実施形態17又は18に記載の方法。
【0124】
実施形態20
前記熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムが、エポキシベースの熱硬化性又は熱硬化可能な表面処理フィルムであり、対応する熱硬化性表面処理フィルムがエポキシベースの熱硬化性表面処理フィルムである、実施形態17~19のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
実施形態21
前記化学線が、約10nm~約450nmの範囲内、好ましくは約200nm~約350nmの範囲内の1つ又は複数の波長で、十分な強度で適用される、実施形態17~20のいずれか1つに記載の方法。この実施形態の追加の態様は、本明細書の他の場所で説明されるこれらの範囲のサブ範囲を包含する。
【0126】
実施形態22
前記化学線が、少なくとも1つの波長で約0.1J/cm2~約300J/cm2の範囲内、好ましくは少なくとも1つの波長で約0.5J/cm2~約250J/cm2又は約1.5J/cm2~約250J/cm2の範囲内のエネルギーで、1つ又は複数の波長で適用される、実施形態17~21のいずれか1つに記載の方法。この実施形態の追加の態様は、この実施形態の追加の態様は、本明細書で説明されるこれらの範囲のサブ範囲を包含する。同様に、この実施形態の追加の態様は、本明細書の他の場所で説明及び記載されている化学線の適用の速度及び時間を包含する。
【0127】
実施形態23
前記熱硬化性表面処理フィルムに加えられる圧力が、1つ又は複数の高温、例えば160℃~180℃で、約30分間~約240分間の範囲内の時間で、0.4~1MPaである、実施形態17~22のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態24
前記直接結合された熱可塑性-熱硬化性複合材料が、前記熱可塑性基材と前記熱硬化性表面処理フィルムとの間に接着強度を示し、ASTM D3359-09に従う45°クロスハッチテープ試験で少なくとも3B、4B、又は5Bのスコアを示す、実施形態17~23のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態25
実施形態17~24のいずれか1つに記載の方法により調製される複合構造。
【0130】
実施形態26
実施形態1~16のいずれか1つの複合構造を含む航空機部品。この実施形態の特定の態様では、航空機部品は、航空機の尾翼、翼、胴体、又はプロペラを含む。
【0131】
実施形態27
実施形態1~16のいずれか1つの複合構造を含む、自動車、自転車、オートバイ、トラック、又はウォータークラフト等の陸上車両の部品又は部分。この実施形態の特定の態様では、部品は、ボンネット、フェンダー、バンパー、ハル、又はフレームを含む。
【実施例】
【0132】
標準的な使用条件
標準的な条件下で、イソプロパノールワイプを使用して熱可塑性基材の表面を洗浄し、ほこりを除去した。洗浄後、そのように示されている場合は、熱可塑性基材の表面に、水銀D型電球(鉄ドープ)を取り付けたUVALOC1000光源を使用して、所定の時間とエネルギーでUV光を照射した。その後、表面処理フィルムを熱可塑性表面上に重ね、このアセンブリを次の手順に従って標準の真空バッグ/オートクレーブプロセスで統合した。
(1)アルミコールプレートをアセトンで拭き取り洗浄した後、プレートの端以外に離型剤を塗布した。
(2)プレートの縁を真空パテで裏打ちした。
(3)最初に、片面粘着性(OST)表面処理フィルムをその粘着性側から熱可塑性基材上に配置して試験片を作成し、部品/試験片を事前に配置した。その後、フィルム材料(ナイロンフィルム)、試験片、穴あきテフロンフィルム、及びブリーザークロスの配列を使用して、試験片をコールプレートの縁の内側に配置した。
(4)真空ラインベントをプレートに配置し、アセンブリ全体をナイロンフィルムで覆った。ナイロンフィルムをパテに押し込み、密封した。真空引きし封止の品質を試験した。
(5)袋に入れたプレート全体をオートクレーブ内に置いた。
(6)試験片を以下の条件下で硬化した。温度177℃、傾斜速度1.7℃/分、圧力0.31MPa、時間120分。
【0133】
この統合後、アセンブリを取り外し、目視検査し、接着性を試験した。
【0134】
標準試験条件
クロスハッチ試験法で接着性能を評価した。試験を以下のように行った。
(1)
図1のように切削工具で試験片をスクライブした。
図1では、コーティング(表面処理フィルム)を通して基材まで切断した。切削工具は、鋭利なかみそりの刃、メス、又はナイフであることができる。この試験では、2セットの平行スクライブ間の角度が45±5度であり、平行スクライブが約3.05mm離れている、45度のクロスハッチスクライブを作成した。
(2)
図1に示すようにマスキングテープ(3Mテープ番号250)を貼り付けた。テープ自体のロールを使用して、テープをしっかりと押し付けた。
(3)パネルにテープを貼り付けてから1分後、テープを1回の急激な動きで取り外し、パネルに対して垂直に引っ張った。
(4)試験領域を、ASTM D3359-09に従って視覚的に検査し、評価した。クロスハッチ評価の範囲は0Bから5Bであり、0Bは最悪の状態であり、除去された領域の割合が65%超過である。評価の分類を表1にまとめる。
【0135】
【0136】
材料:
熱可塑性基材:これらの実施例で使用された熱可塑性基材は、熱可塑性粉末織布のいくつかの層から作成された熱可塑性統合ラミネート(TPCL)であった。粉末織布は、高靭性炭素繊維(テナックス-E HTA40 E13 3K 200tex)とPEEKマトリックス(42重量%)で構成されていた。布は、面積重量285g/m2、パネル総厚1.5mmの5ハーネスパターンを有していた。
【0137】
表面処理フィルム:これらの実施例で使用された表面処理フィルムは、デュアルケアオプション(120~177℃)エポキシベースの複合表面処理フィルムであり、非オートクレーブ条件(0.07MPaの低真空圧の真空バッグ)又はオートクレーブ(0.31MPaのより高い圧力)で硬化可能であった。表面処理フィルムは不織布(ポリエステル又はカーボン)を含有し、総面積重量146g/m2を有した。
【0138】
落雷表面処理フィルム:このフィルムもまた、デュアルケアオプション(120~177℃)エポキシベースの複合表面処理フィルムであり、非オートクレーブ条件(0.07MPaの低真空圧の真空バッグ)又はオートクレーブ(0.31MPaのより高い圧力)で硬化可能であった。落雷フィルムには、(ポリエステル/カーボン不織布に加えて)エキスパンド銅箔がさらに含有されていた。エポキシ樹脂の面積重量は122g/m2であり、銅箔の面積重量は70g/m2であった。
【0139】
剥離及びペイント表面処理フィルム:このフィルムもまた、デュアルケアオプション(120~177℃)エポキシベースの複合表面処理フィルムであり、ポリエステル/カーボン不織布なしで、非オートクレーブ条件(0.07MPaの低真空圧の真空バッグ)又はオートクレーブ(0.31MPaのより高い圧力)で硬化可能であった。このフィルムは、平織りパターン及び面積重量59g/m2を有するナイロンピールプライ布を含有した。硬化してピールプライを剥離した後のフィルムの最終面積重量は約78g/m2であった。
【0140】
剥離及びペイント落雷フィルム:このフィルムもまた、デュアルケアオプション(120~177℃)エポキシベースの複合表面処理フィルムであり、ポリエステル/カーボン不織布なしで、非オートクレーブ条件(0.07MPaの低真空圧の真空バッグ)又はオートクレーブ(0.31MPaのより高い圧力)で硬化可能であった。このフィルムは、ナイロンピールプライ布に加えて、エキスパンド銅箔が含有されていた。銅箔の面積重量は70g/m2であり、硬化後のフィルムの最終面積重量は約148g/m2であった。
【0141】
比較例1~4:UV光前処理なし
熱可塑性基材は、表面をイソプロパノールワイプで拭いてほこりを除去することだけで処理された(つまり、UV光は照射されなかった)。それぞれの表面処理フィルムをPEEK表面上に重ね、上記のように硬化した。これらの比較例で使用される表面処理フィルムを表2に示す。いずれの場合も、得られた表面処理フィルムの目視検査は、滑らかで均一な表面を示した。いずれの場合も、ハッチング評価では0Bの評価が得られた。
【0142】
【0143】
実施例1~4:UV光処理を使用
熱可塑性炭素強化基材テナックス-ETPCL PEEK-HTA40上に表面処理フィルムを重ねる前に、水銀D型電球(鉄ドープ)を取り付けたUVALOC 1000光源を使用して基材にUV光を30秒間照射したことを除いて、比較例の条件を繰り返した。様々なフィルムの前処理強度を表3にまとめる。
【0144】
【0145】
いずれの場合も、クロスハッチ試験法による結合強度の評価は4Bスコアであり、良好な接着性を示している。表2を参照のこと。
【0146】
当業者が理解するように、これらの教示を考慮して、本開示の多くの修正及び変更が可能であり、そのようなもの全てが本明細書で企図される。本明細書で引用された全ての参考文献は、少なくとも提示された文脈でのそれらの教示のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】