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特表2022-531783ポリアミド組成物およびそれを含む管状またはパイプ多層構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-11
(54)【発明の名称】ポリアミド組成物およびそれを含む管状またはパイプ多層構造
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20220704BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220704BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20220704BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20220704BHJP
   F16L 7/00 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/26
C08K5/00
C08G69/26
F16L7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566190
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020062243
(87)【国際公開番号】W WO2020225176
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/844,803
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19177559.2
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】メイサミ,モハマッド
(72)【発明者】
【氏名】ハブラーケン,ガイスブレヒト ヤコブス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ハンリー,ステフェン
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB02
4J001EA06
4J001EB09
4J001EC08
4J001EE01F
4J001EE21F
4J001FA03
4J001FB03
4J001FC03
4J001GA12
4J001HA02
4J001JA04
4J001JA05
4J001JB21
4J001JB22
4J001JB23
4J002BB213
4J002BB233
4J002CL01X
4J002CL03X
4J002CL05W
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD110
4J002FD130
4J002FD170
4J002FD200
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
本発明は、ポリアミド組成物およびそれを含む管状またはパイプ多層構造に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド組成物であって、
(a)
(i)ε-カプロラクタムと、
(ii)ヘキサメチレンジアミンと、少なくとも9個の炭素原子を含む二酸との混合物と、を反応させることによって得られたポリアミドコポリマーであって、
(i)と(ii)との間の重量比が1.0:1.0~3.0:1.0である、ポリアミドコポリマーと、
(b)(a)とは異なる少なくとも1つのポリアミドと、
(c)少なくとも1つの衝撃改良剤と、
(d)添加剤と、を含む、ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記二酸が、9~40個の炭素原子を含む、請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
前記二酸が、36個の炭素原子を含む、請求項1または2に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
(i)と(ii)との前記重量比が、2.0:1.0~3.0:1.0である、請求項1~3の1項以上に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの衝撃改良剤が、(i)カルボン酸、その無水物、マレイミド、またはエポキシ化合物でグラフト化されたエチレンポリマーおよびコポリマー、および(ii)オレフィンまたはアクリル酸または無水物のターポリマーおよびアイオノマーから選択される、請求項1~4の1項以上に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
前記添加剤(d)が、可塑剤、酸化防止剤、安定剤、核剤、染料、顔料、難燃剤、潤滑剤、UV吸収剤、帯電防止剤、真菌剤、殺菌剤、およびIR吸収材料から選択される、請求項1~5の1項以上に記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
ポリアミドコポリマー(a)、ポリアミド(b)、衝撃改良剤(c)、および添加剤(d)を混合することによって、請求項1~6の1項以上に記載のポリアミド組成物を調製するためのプロセス。
【請求項8】
請求項1~6の1項以上に記載のポリアミド組成物または請求項7に記載のプロセスによって得られたポリアミド組成物を含む造形品。
【請求項9】
造形品のための、請求項1~6の1項以上に記載のポリアミド組成物または請求項7に記載のプロセスによって得られたポリアミド組成物の使用。
【請求項10】
前記造形品が、成形、押出成形、およびブロー成形によって得られる、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
最内層、中間層、および最外層を含む管状またはパイプ多層構造であって、前記最内層および前記最外層が、互いに独立して、
(a)
(i)ε-カプロラクタムと、
(ii)ヘキサメチレンジアミンと少なくとも9個の炭素原子を含む二酸との混合物と、を反応させることによって得られたポリアミドコポリマーであって、(i)と(ii)との間の重量比が1.0:1.0~3.0:1.0である、ポリアミドコポリマーとを含み、
前記中間層が、
(b)(a)とは異なる少なくとも1つのポリアミドを含み、
かつ
少なくとも1つの衝撃改良剤(c)および添加剤(d)が、前記最内層、前記中間層、および前記最外層のうちの少なくとも1つに存在する、管状またはパイプ多層構造。
【請求項12】
前記管状またはパイプ多層構造が、その各末端に開口部を有する、請求項11に記載の構造。
【請求項13】
23℃でISO527-1に従って測定された少なくとも90MPaの引張弾性率およびISO 180/Aに従って測定された少なくとも40kJ/mの23℃でのノッチ付きアイゾット衝撃抵抗を有する請求項11または12に記載の構造。
【請求項14】
200時間にわたってSAE J844に従ってZnCl溶液中で測定された応力亀裂抵抗の要件を満たすことができる、請求項11~13の1項以上に記載の構造。
【請求項15】
前記構造が、エアブレーキチューブ、空調管、および燃料管から選択される、請求項11~14の1項以上に記載の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド組成物およびそれを含む管状またはパイプ多層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
環境応力亀裂(ESC)は、比較的低い引張応力および環境条件によって引き起こされる材料における亀裂の形成である。環境応力亀裂抵抗(ESCR)は、プラスチックの寿命を延ばすためにプラスチックにおいて必要とされる重要な特性である。これは、ポリマー、特に熱可塑性プラスチックにおける予期しない脆性破壊の最も一般的な原因の1つである。
【0003】
特に、液体流体、例えば、アルコールおよび液体燃料を輸送するための流体を運ぶチューブまたはパイプは、これらの流体に対する改善されたバリア特性、ならびに環境条件に対する可撓性および耐性の良好な特性を必要とする。
【0004】
ポリヘキサメチレンアジパミド(PA 66)またはポリカプロラクタム(PA 6)を含む組成物は、チューブまたはパイプの製造には好適ではないことが知られている。これは、これらのポリマーが塩化亜鉛(ZnCl)溶液などの食塩水に対して耐性を示さないためである。このような耐性は、自動車メーカーによって要求されており、エアブレーキチューブのためのSAE J844などの国際規格によって定義されている。簡単に言えば、この試験は、曲げ力を加えて、材料を、食塩水、特にZnClに浸漬したときの、材料のクラッキングまたは裂け(splitting)に対する耐性を判定することで構成されている。したがって、ZnCl溶液に浸漬され、機械的応力下に置かれたPA 66またはPA 6で作製されたパイプは、数分で裂け、さらには破裂する。
【0005】
この問題を克服するために、より多くの数の炭素原子、すなわち11または12個を有する単量体から得られたポリアミドを使用するための準備がなされてきた。これらのポリアミドは、ZnCl試験に対して改善された耐性を示すが、周囲温度での衝撃強度が制限されており、製造コストが高くなっている。
【0006】
ホットメルト接着剤のためのポリアミド組成物は、US2003/0232962(A1)に記載されている。本明細書に記載のポリアミド組成物は、二量体酸(例えば、少なくとも98重量%の二量体を含む二量体酸)と、カプロラクタムと、ヘキサメチレンジアミンと、セバシン酸と、任意選択の連鎖停止剤との反応生成物を含む。
【0007】
米国特許第5,256,460(A)号は、熱可塑性コポリマーと、グラフト化官能基を含むポリオレフィンとの混合物を含む熱可塑性組成物を記載している。その熱可塑性コポリマーは、ε-カプロラクタムと、少なくとも9個の炭素原子を含むアミノ酸単量体もしくはそれらのラクタムとの共重合によって、またはヘキサメチレンジアミンと少なくとも9個の炭素原子を含むジカルボン酸モノマーとの混合物の共重合によって、得た。
【0008】
米国特許第6,060,562(A)号は、熱可塑性ポリマーと、熱可塑性組成物のレジリエンスを改善する少なくとも1つの化合物とから作製されたマトリックスを含む別の熱可塑性組成物を記載している。そのマトリックスは、ε-カプロラクタムと、少なくとも9個の炭素原子を含むアミノ酸、少なくとも9個の炭素原子を含むアミノ酸に対応するラクタム、のうちの少なくとも1つとの、コポリマーを含む第1の熱可塑性樹脂の混合物と、または、ヘキサメチレンジアミンと、少なくとも9個の炭素原子を含む二酸との混合物であって、ε-カプロラクタムの重量%の、ヘキサメチレンジアミンと二酸との混合物の重量%に対する比が4~9である、混合物と;ならびに、9個未満の炭素原子を含む単量体のポリアミドもしくはコポリアミドを含む第2の熱可塑性樹脂であって、マトリックス中の第2の熱可塑性樹脂の含有量が、マトリックスの40~80重量%であり、全組成物の20重量%超である、第2の熱可塑性樹脂と、を含む混合物と、を含む。
【0009】
別の米国特許第8,153,215(B1)号は、2つの重ね合わせた層、すなわち、内層および外層を含む多層構造を開示している。内層は、熱可塑性ポリアミドと、衝撃に対する耐性を10~50%の重量比率で変更する薬剤とで構成されており、一方、外層は、ポリマーマトリックスとして、ε-カプロラクタムと、少なくとも9個の炭素原子を含有するアミノ酸または対応するラクタムから選択される単量体のうちの少なくとも1つとの共重合によって得られた熱可塑性コポリマーと、ヘキサメチレンジアミンと少なくとも9個の炭素原子を含む二酸との混合物であって、ε-カプロラクタムの、ヘキサメチレンジアミンおよび二酸および/もしくはアミノ酸に対する重量比が4~9である、混合物と、または、9個未満の炭素原子を含有するモノマーの重合によって得られた少なくとも当該熱可塑性ポリアミドもしくはコポリアミドの混合物と、から選択されるポリアミド組成物を含有する組成物に基づいている。
【0010】
上記にもかかわらず、既存のポリアミド組成物およびそれから得られたチューブまたはパイプは、SAE J844に従って、許容可能なZnCl耐性を提供することができない。多くの場合、SAE J844の要件を満たす際に、既存のチューブまたはパイプは、限定するものではないが曲げ弾性率、引張弾性率、および破断点伸びなどの機械的特性に関して妥協している。そのため、エアブレーキチューブ、空調管、気送管、および燃料管などの用途には好適ではない。さらに、既存の組成物は、それらの間の不十分な接着に起因して、多層管またはパイプ構造において層間剥離をももたらす。これにより、チューブまたはパイプ構造の寿命が短くなる。さらに、これらの組成物中に長鎖ポリアミドが存在すると、得られるチューブもしくはパイプの全体的なコストが増加するか、またはそれらが利用できないために供給の問題が生じる。
【0011】
したがって、ポリアミド組成物と、200時間、SAE J844に従ってZnCl溶液中で測定された応力亀裂抵抗の要件を満たすことができ、限定するものではないが曲げ弾性率、引張弾性率、および層間剥離のない破断点伸びなどの許容可能な機械的特性を有し、それによって安価なエアブレーキチューブ、空調管、気送管、燃料管を製造するのに好適なものとするポリアミド組成物を含む管状またはパイプ多層構造と、を提供することは、本請求項に係る発明の目的であった。
【発明の概要】
【0012】
驚くべきことに、上記の目的は、(i)ε-カプロラクタムと、(ii)ヘキサメチレンジアミンと、少なくとも9個の炭素原子を含む二酸との混合物と、を反応させることによって得られたポリアミドコポリマーを含むポリアミド組成物であって、(i)と(ii)との間の重量比が、以下に記載のように1.0:1.0~3.0:1.0である、ポリアミド組成物を提供することによって、達成されることを見出した。
【0013】
したがって、一態様では、本請求項に係る発明は:
(a)
(i)ε-カプロラクタムと、
(ii)ヘキサメチレンジアミンと、少なくとも9個の炭素原子を含む二酸との混合物と、を反応させることによって得られたポリアミドコポリマーであって、
(i)と(ii)との間の重量比が1.0:1.0~3.0:1.0である、ポリアミドコポリマーと、
(b)(a)とは異なる少なくとも1つのポリアミドと、
(c)少なくとも1つの衝撃改良剤と、
(d)添加剤と、を含む、ポリアミド組成物に関する。
【0014】
別の態様では、本請求項に係る発明は、ポリアミドコポリマー(a)、ポリアミド(b)、衝撃改良剤(c)、および添加剤(d)を混合することによって、上記のポリアミド組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0015】
なお別の態様では、本請求項に係る発明は、上記のポリアミド組成物を含む造形品に関する。
【0016】
さらに別の態様では、本請求項に係る発明は、造形品のための上記ポリアミド組成物の使用に関する。
【0017】
さらなる態様では、本請求項に係る発明は、最内層、中間層、および最外層を含む管状またはパイプ多層構造に関するものであり、最内層および最外層は、互いに独立して、
(a)
(i)ε-カプロラクタムと、
(ii)ヘキサメチレンジアミンと、少なくとも9個の炭素原子を含む二酸との混合物と、を反応させることによって得られたポリアミドコポリマーであって、
(i)と(ii)との間の重量比が1.0:1.0~3.0:1.0である、ポリアミドコポリマーを含み、
中間層は、
(b)(a)とは異なる少なくとも1つのポリアミドを含み、
かつ
少なくとも1つの衝撃改良剤(c)および添加剤(d)は、最内層、中間層、および最外層のうちの少なくとも1つに存在する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の本組成物および配合物を説明する前に、そのような組成物および配合物が、当然ながら変化し得るため、本発明は、説明された特定の組成物および配合物に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される専門用語は、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定することを意図していない、ことも理解されたい。
【0019】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、および「構成される(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」、または「containing(含有する)」、「contains(含有する)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、列挙されていない部材、要素、または方法工程を排除しない。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、および「構成される(comprised of)」という用語は、「からなる(consisting of)」、「からなる(consists)」、および「(からなる(consists of)」という用語を含むことが理解されるであろう。
【0020】
さらに、説明および特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」、「第3の」、または「a」、「b」、「c」、「d」などの用語および同様のものは、類似の要素間で区別するために使用され、必ずしも連続的または時系列の順序を説明するものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で互換性があり、本明細書に記載される発明の実施形態は、本明細書に記載または例示される以外の順序で実施可能であることを理解されたい。方法または使用または分析の工程に関連する、「第1の」、「第2の」、「第3の」、または「(A)」、「(B)」、および「(C)」、もしくは「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「i」、「ii」などの用語の場合、工程間に時間または時間間隔の一貫性がなく、すなわち、工程は同時に実行され得るか、または本明細書の上もしくは下に記載されているように用途において別途記載のない限り、このような工程の間には、秒、分、時間、日、週、月、または年の時間間隔があり得る。
【0021】
以下の節では、本発明の様々な態様が、より詳細に定義される。そのように定義された各側面は、反対のことが明確に示されない限り、任意の他の態様または複数の態様と組み合わせられてもよい。特に、好ましいまたは有利であるとして示された任意の特徴は、好ましいまたは有利であるとして示された任意の他の特徴または複数の特徴と組み合わせられてもよい。
【0022】
本明細書全体を通して「一実施形態(one embodiment)」または「実施形態(an embodiment)」への参照は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性は、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。それゆえ、本明細書全体にわたる様々な場所での「ある実施形態」、または「一実施形態」という句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を参照するとは限らないが、その可能性もある。さらに、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者には明らかであるように、特定の特徴、構造、または特性は、任意の好適な方式で組み合わせられ得る。さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが、他の特徴は含まず、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者が理解するように、本発明の範囲内で、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲では、特許請求された実施形態のいずれかを、任意の組み合わせで使用することができる。
【0023】
さらに、仕様全体で定義されている範囲は、最終値も含み、すなわち、1~10の範囲は、1および10の両方が、範囲に含まれることを意味する。誤解を避けるために、出願人は、適用される法律に従って、任意の等価物の権利を有するものとする。
【0024】
さらに、説明全体を通して「ZnCl耐性」および「ESCR耐性」というフレーズは、200時間持続してSAE J844に従ってZnCl溶液中で測定された応力亀裂抵抗を指す。
【0025】
本発明の一態様は、
(a)
(i)ε-カプロラクタムと、
(ii)ヘキサメチレンジアミンと、少なくとも9個の炭素原子を含む二酸との混合物と、を反応させることによって得られたポリアミドコポリマーであって、
(i)と(ii)との間の重量比が1.0:1.0~3.0:1.0である、ポリアミドコポリマーと、
(b)(a)とは異なる少なくとも1つのポリアミドと、
(c)少なくとも1つの衝撃改良剤と、
(d)添加剤と、を含む、ポリアミド組成物に関する実施形態1である。
【0026】
実施形態1の本発明の組成物は、許容可能なZnCl耐性と、ならびに、限定するものではないが、曲げ弾性率、引張弾性率、および破断点伸びなどの機械的特性と、を示す。
【0027】
ポリアミドコポリマー(a)
一実施形態では、二酸は、実施形態1において、9~40個の炭素原子を含む。本文脈において、9~40個の炭素原子を含む二酸としては、7~38個の炭素原子および2つのカルボキシ基(-COOH基)を有する飽和または不飽和である脂肪族および/または芳香族化合物が挙げられる。したがって、9~40個の炭素原子を含む二酸は、分岐状または非分岐状または脂環式であり得る。例えば、二酸は、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、およびヘキサデカン二酸から選択することができる。
【0028】
別の実施形態では、二酸は、実施形態1において、32~40個の炭素原子を含む。本文脈では、32~40個の炭素原子を含む二酸はまた、「C32~C40二酸」または「C32~C40二酸」または「C32~C40二量体脂肪酸」と称することもできる。C32~C40二量体酸は当業者に知られており、通常は、不飽和脂肪酸の二量体化によって調製される。この二量体化は、例えば、粘土によって触媒することができる。C32~C40二量体酸を得るための好適な不飽和脂肪酸としては、例えば、不飽和C16脂肪酸、不飽和C18脂肪酸、および不飽和C20脂肪酸が挙げられる。
【0029】
さらに別の実施形態では、実施形態1の32~40個の炭素原子を含む二酸は、不飽和C16脂肪酸、不飽和C18脂肪酸、および不飽和C20脂肪酸からなる群から選択される不飽和脂肪酸から、特に好ましくは不飽和C18脂肪酸から調製される。
【0030】
一実施形態では、好適な不飽和C16脂肪酸は、パルミトレイン酸((9Z)-ヘキサデカ-9-エン酸)である。
【0031】
一実施形態では、好適な不飽和C20脂肪酸は、ガドレイン酸((9Z)-エイコサ-9-エン酸)、エイコセン酸((11Z)-エイコサ-11-エン酸)、アラキドン酸((5Z、8Z、11Z、14Z)-エイコサ-5,8,11,14-テトラエン酸)、およびチムノドン酸((5Z、8Z、11Z、14Z、17Z)-エイコサ-5,8,11,14,17-ペンタエン酸)から選択される。
【0032】
別の実施形態では、二酸は、実施形態1において、36個の炭素原子を含む。特に、二酸は、実施形態1において、C36二量体酸を含む。C36二量体酸は、不飽和C18脂肪酸から出発して調製される。このような不飽和C18脂肪酸は、ペトロシラン酸((6Z)-オクタデセン酸)、オレイン酸((9Z)-オクタデク-9-エン酸)、エライジン酸((E)-オクタデク-9-エン酸)、バクセン酸((11E)-オクタデク-11-エン酸)、リノール酸((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸)、α-リノレン酸((9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエン酸)、γ-リノレン酸((6Z,9Z,12Z)-オクタデカ-6,9,12-トリエン酸)、カレンジン酸((8E,10E,12Z)-オクタデカ-8,10,12-トリエン酸)、プニン酸(9Z,11E,13Z-オクタデカ-9,11,13-トリエン酸)、α-エレオステア酸((9Z,11E,13E)-オクタデカ-9,11,13-トリエン酸)、およびβ-エレオステア酸((9E,11E,13E)-オクタデカ-9,11,13-トリエン酸)から選択される。
【0033】
一実施形態では、不飽和脂肪酸、三量体酸からの二酸の調製は、さらに形成することができ、未反応の不飽和脂肪酸の残留物も残り得る。三量体酸の形成は当業者に既知である。
【0034】
一実施形態では、不飽和C18脂肪酸は、ペトロシラン酸((6Z)-オクタデセン酸)、オレイン酸((9Z)-オクタデク-9-エン酸)、エライジン酸((E)-オクタデク-9-エン酸)、バクセン酸((11E)-オクタデク-11-エン酸)、およびリノール酸((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸)から選択される。
【0035】
別の実施形態では、実施形態1における二酸は、不飽和脂肪酸のオリゴマー化によって調製される混合物を指している。それらは、例えば、植物源からの不飽和脂肪酸の接触二量体化によって調製され、その場合、使用される出発材料は、特に不飽和C16~C20脂肪酸である。付加は、主にディールス・アルダー型であり、その結果は、二量体酸の調製のために使用される脂肪酸の二重結合の数および位置に従って、脂環式、線状脂肪族、分岐状脂肪族、およびまたカルボキシル基間にC-芳香族炭化水素基を有する主に二量体生成物の混合物である。メカニズムおよび/またはその後の水素化に応じて、脂肪族ラジカルは、飽和または不飽和であることができ、芳香族基の割合もまた変化し得る。その場合のカルボン酸基の間のラジカルは、例えば、32~40個の炭素原子を含む。二量体生成物が36個の炭素原子を有するように、調製のために18個の炭素原子を有する脂肪酸を使用することが好ましい。一実施形態では、二酸のカルボキシル基を接続するラジカルは、不飽和結合または芳香族ヒドロカルビルラジカルを有していない。
【0036】
一実施形態では、リノレン酸、リノール酸、および/またはオレイン酸から選択されるC18脂肪酸を使用して、実施形態1における二酸を調製する。
【0037】
一実施形態では、反応レジーム(reaction regime)に応じて、上記のオリゴマー化は、主に二量体分子だけでなく、三量体分子、ならびに単量体分子および他の副生成物を含む混合物を生じさせる。精製は、典型的には、蒸留手段によるものである。市販の二量体酸は、一般に、少なくとも80重量%の二量体分子、最大19重量%の三量体分子、および1重量%以下の単量体分子、ならびに他の副生成物を含む。
【0038】
一実施形態では、二量体酸は、少なくとも90重量%程度、好ましくは少なくとも95重量%程度、さらにより好ましくは少なくとも98重量%程度の二量体脂肪酸分子からなる。二量体酸中の単量体、二量体、および三量体分子、ならびに他の副生成物の割合は、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)によって決定することができる。ここで、二量体酸は、GC分析の前に、三フッ化ホウ素法(DIN EN ISO 5509を参照)を介して対応するメチルエステルに変換され、GCによって分析される。
【0039】
一実施形態では、実施形態1での二酸の調製は、不飽和脂肪酸のオリゴマー化を含む。このオリゴマー化は、主に、最大少なくとも80重量%程度、または90重量%程度、または95重量%、または98重量%程度の二量体生成物を生じさせる。したがって、オリゴマー化が、厳密に2つの脂肪酸分子を含む二量体生成物を圧倒的に生じさせるという事実は、いずれにしても一般的に使用されているオリゴマー化というこの名称を正当化するものである。
【0040】
別の実施形態では、二量体酸はまた、市販の製品として入手可能である。これらの例としては、OleonのRadiacid(登録商標)、CrodaのPripol(商標)、BASF SEのEmpol(登録商標)、およびArizona ChemicalのUnidyme(商標)が挙げられる。
【0041】
別の実施形態では、ポリアミドコポリマー(a)は、(i)ε-カプロラクタムを、(ii)ヘキサメチレンジアミンと、36個の炭素原子を含む二酸との混合物と反応させることによって得られ、(i)と(ii)との間の重量比は1:1~3:1である。
【0042】
一実施形態では、本明細書に記載の実施形態1における(i)と(ii)との間の重量比は、1.1:1.0~3.0:1.0、または1.2:1.0~3.0:1.0、または1.3:1.0~3.0:1.0、または1.4:1.0~3.0:1.0、または1.5:1.0~3.0:1.0である。他の実施形態では、当該重量比は、1.6:1.0~3.0:1.0、または1.7:1.0~3.0:1.0、または1.8:1.0~3.0:1.0、または1.9:1.0~3.0:1.0、または2.0:1.0~3.0:1.0である。別の実施形態では、当該重量比は、2.0:1.0~2.9:1.0、または2.0:1.0~2.8:1.0、または2.0:1.0~2.7:1.0、または2.0:1.0~2.6:1.0、または2.0:1.0~2.5:1.0である。別の実施形態では、当該重量比は、2.1:1.0~2.5:1.0、または2.2:1.0~2.5:1.0、または2.2:1.0~2.4:1.0である。なお別の実施形態では、当該重量比は、2.25:1.0~2.4:1.0、または2.25:1.0~2.35:1.0である。
【0043】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の実施形態1における(i)と(ii)との間の重量比は、2.3:1.0である。2.3:1.0の比は、本明細書に記載の実施形態1において30重量%の(ii)および70重量%の(i)に相当する。
【0044】
一実施形態では、実施形態1における(i)と(ii)との間の反応は、250℃~350℃の温度で実施される。当該反応は、当業者に知られている好適な混合手段で実施することができる。このようにして得られたポリアミドコポリマー(a)は、150~350mL/gの間の粘度数を有する。粘度数は、ISO 307に従って、25℃において96重量%の硫酸中のポリアミドコポリマー(a)の0.5重量%溶液から決定される。
【0045】
本明細書に記載のポリアミドコポリマー(a)の量は、本明細書に記載のポリアミド組成物の総重量に基づいて、40重量%~90重量%である。
【0046】
ポリアミド(b)
一実施形態では、ポリアミド(b)は、ポリアミドコポリマー(a)とは異なる。他の実施形態では、実施形態1におけるポリアミド(b)は、90mL/g~350mL/gの粘度数を有する。本文脈では、粘度数は、ISO 307に従って、25℃において96重量%の硫酸中のポリアミド(b)の0.5重量%溶液から決定される。
【0047】
実施形態1における好適なポリアミド(b)は、例えば、7~13の環員を有するラクタムから誘導されるか、またはジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られる。ラクタムから誘導されるポリアミドの例としては、ポリカプロラクタム、ポリカプリロラクタム、および/またはポリラウロラクタムが挙げられる。
【0048】
他の実施形態において、好適なポリアミドとしては、ナイロン-6をもたらすアミノカプロニトリルなどであるがこれに限定されない、ω-アミノアルキルニトリルから得られるものがさらに挙げられる。加えて、ジニトリルは、ジアミンと反応し得る。例えば、アジポニトリルは、ヘキサメチレンジアミンと反応して、ナイロン-6,6が得られ得る。ニトリルの重合は、水の存在下で行われ、直接重合としても既知である。
【0049】
ジカルボン酸およびジアミンから得られるポリアミドが使用される場合、6~36個の炭素原子、または6~12個の炭素原子、または6~10個の炭素原子を有するジカルボキシルアルカン(脂肪族ジカルボン酸)が用いられ得る。芳香族ジカルボン酸も好適である。ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、またテレフタル酸および/またはイソフタル酸も挙げられる。
【0050】
好適なジアミンとしては、例えば、4~36個の炭素原子、または6~12個の炭素原子、特に6~8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、および芳香族ジアミン、例えば、m-キシリレンジアミン、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、および1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンが挙げられる。
【0051】
他の実施形態では、実施形態1におけるポリアミド(b)としては、ポリヘキサメチレンジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、およびポリカプロラクタム、およびまた、特に、カプロラクタム単位の割合が5重量%~95重量%を有するナイロン-6/6,6が挙げられる。
【0052】
以下の非網羅的なリストは、実施形態1における前述のポリアミド(b)を含む。
【表1】
【表2】
【0053】
一実施形態では、実施形態1におけるポリアミド(b)は、PA6、PA11、PA12、PA6.6、PA6.9、PA6.10、PA6.12、およびこれらの混合物から選択される。
【0054】
他の実施形態では、実施形態1におけるポリアミド(b)は、PA6、PA12、PA6.6、PA6.10、およびPA6.12から選択される。
【0055】
さらに他の実施形態では、実施形態1におけるポリアミド(b)は、PA12、PA6.6、PA6.10、およびPA6.12から選択される。
【0056】
別の実施形態では、実施形態1におけるポリアミド(b)は、本明細書に記載のポリアミドの混合物である。
【0057】
なお別の実施形態では、実施形態1におけるポリアミド(b)は、補強剤をさらに含む。好適な補強剤は、金属繊維、金属化無機繊維、金属化合成繊維、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、黒鉛繊維、炭素繊維、セラミック繊維、鉱物繊維、玄武岩繊維、無機繊維、アラミド繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、亜麻繊維、麻繊維、セルロース繊維、サイザル繊維、およびコイア繊維から選択される。
【0058】
本発明の目的のために、補強剤は、任意の形状およびサイズで得ることができる。さらに、補強剤には、好適な表面処理剤またはサイジングを施すことができる。例えば、補強剤には、カップリング剤、例えば、限定するものではないが、ウレタンカップリング剤およびエポキシカップリング剤を使用して表面処理を施すことができる。この目的のために、表面処理に好適な任意の技術を使用することができる。例えば、ディップコーティング、およびスプレーコーティングなどであるがこれらに限定されない任意の好適なコーティングプロセスが用いられ得る。
【0059】
一実施形態では、ウレタンカップリング剤は、少なくとも1つのウレタン基を含む。補強剤と共に使用するのに好適なウレタンカップリング剤は、当業者に既知であり、例えば、米国特許出願公開第2018/0282496号に記載されている。一実施形態では、ウレタンカップリング剤は、例えば、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(HMDI)またはイソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびポリエステル系ポリオール、またはポリエーテル系ポリオールなどであるがこれらに限定されないイソシアネートの反応生成物を含む。
【0060】
他の実施形態では、エポキシカップリング剤は、少なくとも1つのエポキシ基を含む。補強剤と共に使用するのに好適なエポキシカップリング剤は、当業者に既知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0247025号に記載されている。一実施形態では、エポキシカップリング剤は、脂肪族エポキシカップリング剤、芳香族エポキシカップリング剤、またはこれらの混合物から選択される。脂肪族カップリング剤の非限定的な例としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するポリエーテルポリエポキシ化合物、および/または分子内に2つ以上のエポキシ基を有するポリオールポリエポキシ化合物が挙げられる。芳香族カップリング剤として、ビスフェノールAエポキシ化合物またはビスフェノールFエポキシ化合物が使用され得る。
【0061】
本明細書に記載のこれらのカップリング剤の好適な量は、当業者に良く知られている。しかしながら、一実施形態では、カップリング剤は、100質量部の補強剤に対して、0.1質量部~10.0質量部の量で存在することができる。
【0062】
本明細書に記載の実施形態1におけるポリアミド(b)の量は、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、1.0重量%~50重量%である。一実施形態では、当該量は、1.0重量%~48重量%、または1.5重量%~48重量%、または1.5重量%~46重量%、または2.0重量%~46重量%、または2.0重量%~44重量%である。他の実施形態では、当該量は、2.5重量%~44重量%、または2.5重量%~42重量%、または3.0重量%~42重量%、または3.5重量%~42重量%、または4.0重量%~42重量%である。別の実施形態では、当該量は、4.0重量%~40重量%、または4.5重量%~40重量%、または5.0重量%~40重量%である。
【0063】
衝撃改良剤(c)
本発明で使用するための、ゴムまたはエラストマーポリマーともしばしば称される衝撃改良剤は、例えば、US2014/0323631(A1)およびUS2008/0070023(A1)に記載されている。衝撃改良剤(c)は、ポリアミドと反応することができる官能基を含む。極性官能基は、酸、無水物、アクリル、メタクリルまたはエポキシ官能基から選択される。実施形態1における好適な衝撃改良剤(c)は、(i)カルボン酸、その無水物、マレイミド、またはエポキシ化合物でグラフト化されたエチレンポリマーおよびコポリマー、ならびに(ii)オレフィンまたはアクリル酸または無水物ターポリマーおよびアイオノマーから選択される。
【0064】
カルボン酸、その無水物、マレイミド、またはエポキシ化合物でグラフト化されたエチレンポリマーおよびコポリマーでは、カルボン酸、またはその無水物は、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸のC~Cアルキルハーフエステル、および無水マレイン酸を含むこれらの無水物または誘導体から選択される。また、オレフィン系ゴムも、好適な衝撃改良剤(c)として使用することができる。
【0065】
一実施形態では、衝撃改良剤(c)は、カルボン酸またはその任意の無水物でグラフト化されたエチレンコポリマー、例えば、無水マレイン酸でグラフト化されたエチレンコポリマーである。他の実施形態では、衝撃改良剤(c)としては、無水マレイン酸グラフト化エチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)(無水マレイン酸が2.0重量%~6.0重量%)、無水マレイン酸でグラフト化されたエチレンプロピレン(無水マレイン酸が0.5重量%~6重量%)、無水マレイン酸グラフト化低密度ポリエチレン(無水マレイン酸が0.2重量%~6重量%)、および無水マレイン酸でグラフト化されたエチレンブチルアクリレート(無水マレイン酸が0.2重量%~6重量%)が挙げられる。
【0066】
オレフィンまたはアクリル酸または無水物ターポリマーおよびアイオノマー耐衝撃性改良剤は、(a)エチレン、ブチレン、プロピレン、およびこれらの組み合わせ、(b)、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの混合物から選択される2重量%~25重量%の酸、および(c)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸のC~Cアルキルハーフエステル、およびこれらのジカルボン酸単量体の混合物から選択される0.1重量%~15重量%のジカルボン酸モノマーを含むモノマーから誘導された鎖状単位が重合している。一実施形態では、ターポリマーは、エチレン/メタクリル酸/無水マレイン酸アイオノマー(無水マレイン酸が0.5重量%~12重量%)である。アイオノマーは、亜鉛、マグネシウム、マンガン、およびこれらの混合物から選択される金属イオンを単独で用いるか、またはナトリウムまたはリチウムイオンと組み合わせて用い、ターポリマー中のカルボン酸単位を中和することによって形成され得る。ターポリマーは、最大40重量%のC~Cアルキルアクリレート単量体単位をさらに含み得る。
【0067】
本明細書に記載の実施形態1における衝撃改良剤(c)は、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~15重量%の量で存在する。
【0068】
一実施形態では、実施形態1における衝撃改良剤(c)の量は、0.01重量%~15重量%、または0.1重量%~15重量%、1.0重量%~15重量%、2.0重量%~15重量%である。他の実施形態では、当該量は、2.0重量%~14重量%、3.0重量%~14重量%、または4.0重量%~14重量%、または5.0重量%~14重量%、5.0重量%~13重量%である。別の実施形態では、当該量は、6.0重量%~13重量%、または7.0重量%~13重量%、または8.0重量%~13重量%、または8.0重量%~12重量%、または9.0重量%~11重量%である。
【0069】
一実施形態では、実施形態1における衝撃改良剤(c)は、0℃未満、または-20℃未満のガラス転移温度を有する。
【0070】
添加剤(d)
実施形態1における好適な添加剤(d)は、可塑剤、酸化防止剤、安定剤、核剤、染料、顔料、難燃剤、潤滑剤、UV吸収剤、帯電防止剤、真菌剤、殺菌剤、IR吸収材料、界面活性剤、加水分解制御剤、硬化剤、および細胞調節剤から選択される。これらの添加剤(d)の混合物を使用して、実施形態1のポリアミド組成物を得ることもできる。
【0071】
一実施形態では、実施形態1における添加剤(d)は、可塑剤、酸化防止剤、安定剤、核剤、染料、顔料、難燃剤、潤滑剤、UV吸収剤、帯電防止剤、真菌剤、殺菌剤、およびIR吸収材料から選択される。
【0072】
これらの添加剤(d)は、従来技術でよく知られており、多くの用途で記載されてきた。さらに、これらの添加剤(d)の好適な量は、当業者によく知られている。一実施形態では、実施形態1における添加剤(d)の量は、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~10重量%である。
【0073】
他の実施形態では、実施形態1における添加剤(d)の量は、0.01重量%~15重量%、または0.1重量%~15重量%、1.0重量%~15重量%、2.0重量%~15重量%である。他の実施形態では、当該量は、2.0重量%~14重量%、3.0重量%~14重量%、または4.0重量%~14重量%、または5.0重量%~14重量%、5.0重量%~13重量%である。別の実施形態では、当該量は、6.0重量%~13重量%、または7.0重量%~13重量%、または8.0重量%~13重量%、または8.0重量%~12重量%、または9.0重量%~11重量%である。
【0074】
プロセス
本発明の別の態様は、本明細書に記載の実施形態1のポリアミド組成物を調製するためのプロセスに関する実施形態2である。
【0075】
一実施形態では、ポリアミドコポリマー(a)、ポリアミド(b)、衝撃改良剤(c)、および添加剤(d)の混合は、実施形態2で実施される。混合のために好適な技術は、当業者に良く知られている。例えば、本明細書に記載の実施形態1のポリアミド組成物は、一軸または二軸スクリュー押出機において溶融状態で混合することができる。他の実施形態では、実施形態2における配合成分(a)、(b)、(c)、および(d)は、任意の順序で混合することができる。
【0076】
造形品
本発明の別の態様は、本明細書に記載の、実施形態1のポリアミド組成物または実施形態2に従って得られたポリアミド組成物を含む造形品に関する実施形態3である。
【0077】
一実施形態では、実施形態3における造形品は、本明細書に記載のように、実施形態1のポリアミド組成物または実施形態2に従って得られたポリアミド組成物を造形することによって得ることができる。好適な造形技術としては、成形、押出成形、および押出ブロー成形などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
別の実施形態では、実施形態3における造形品は、例えば、エアブレーキ管、空調管、気送管、および燃料管であることができる。造形品のこれらの例は、あくまでも例示(indication)に過ぎないが、良好なZnCl耐性、低い燃料透過性、耐燃料性、高い機械的特性および可撓性特性を必要とするコンポーネントに対応している。
【0079】
使用
本発明の別の態様は、造形品のための、本明細書に記載した、実施形態1のポリアミド組成物または実施形態2に従って得られたポリアミド組成物の使用に関する実施形態4である。実施形態4における造形品は、本明細書に記載の実施形態3の造形品である。
【0080】
管状またはパイプ多層構造
本発明のさらに別の態様は、最内層、中間層、および最外層を含む管状またはパイプ多層構造に関する実施形態5であり、最内層および最外層は互いに独立してポリアミドコポリマー(a)を含み、中間層はポリアミド(b)を含む。衝撃改良剤(c)および添加剤(d)は、最内層、中間層、および最外層のうちの少なくとも1つに存在する。実施形態5における管状またはパイプ多層構造の層は、本明細書に記載のように、実施形態1の(a)、(b)、(c)、および(d)を含むポリアミド組成物からなる。
【0081】
本文脈において、「多層」という用語は、実施形態5における少なくとも3つの層の存在を指す。一実施形態では、管状またはパイプ多層構造は、3つを超える層、例えば、4、5、6、または7つの層を含むことができる。このような層は、中間層と称することができる。これらの中間層のいくつかは、最外層を形成するものと同一の組成物から有利に形成される。これらの層は、外部型中間層と称される。他の中間層は、最内層を形成するものと同一の組成物から形成される。このような層は、内部型中間層と称される。
【0082】
一実施形態では、内部型中間層および外部型中間層は、実施形態5における管状またはパイプ多層構造の横方向に交互に配置される。
【0083】
さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態5における管状またはパイプ多層構造は、本明細書に記載のように、実施形態1のポリアミド組成物以外の組成物から作製された中間層を含むことができる。
【0084】
本発明の別の態様は、最内層、中間層、および最外層からなる管状またはパイプ多層構造に関する実施形態6であり、最内層および最外層は互いに独立してポリアミドコポリマー(a)を含み、中間層はポリアミド(b)を含む。衝撃改良剤(c)および添加剤(d)は、最内層、中間層、および最外層のうちの少なくとも1つに存在する。実施形態5における管状またはパイプ多層構造の層は、本明細書に記載のように、実施形態1の(a)、(b)、(c)、および(d)を含むポリアミド組成物からなる。
【0085】
別の実施形態では、実施形態5または6における管状またはパイプ多層構造は、その各端部に開口部を有する。開口部の好適な直径は、これらの管状またはパイプ多層構造の特定の使用に依存し、したがって、当業者によく知られている。
【0086】
他の実施形態では、実施形態5または6における最内層は、中間層と直接接触している。別の言い方をすれば、本明細書に記載の最内層は、本明細書に記載の中間層と良好な接着性を有する。本文脈において、「良好な接着」とは、層において層間剥離がないことを意味している。
【0087】
さらに別の実施形態では、実施形態5または6における中間層は、最外層と直接接触している。別の言い方をすれば、中間層は、最内層と最外層の間にあり、両方の層と良好な接着性を有する。
【0088】
一実施形態では、実施形態5または6における最内層の厚さは、0.05mm~5.0mm、または0.05mm~4.5mm、または0.06mm~4.5mm、または0.06mm~4.0mm、または0.07mm~4.0mm、または0.07mm~3.5mmである。他の実施形態では、厚さは、0.08mm~3.5mm、または0.08mm~3.0mm、または0.1mm~3.0mm、または0.1mm~2.0mmである。他の実施形態では、厚さは、0.12mm~2.0mm、0.12mm~1.5mm、または0.15mm~2.0mm、または0.15mm~1.5mm、または0.15mm~1.0mmである。なお他の実施形態では、厚さは、0.2mm~1.0mm、または0.2mm~0.5mmである。
【0089】
他の実施形態では、実施形態5または6における中間層の厚さは、1mm~20mm、または2mm~20mm、または2mm~18mm、または5mm~18mm、または5mm~15mmである。他の実施形態では、当該厚さは、6mm~15mm、または6mm~13mm、または7mm~13mm、または7mm~12mm、または8mm~12mmである。
【0090】
別の実施形態では、実施形態5または6における最外層の厚さは、0.05mm~5.0mm、または0.05mm~4.5mm、または0.06mm~4.5mm、または0.06mm~4.0mm、または0.07mm~4.0mm、または0.07mm~3.5mmである。他の実施形態では、厚さは、0.08mm~3.5mm、または0.08mm~3.0mm、または0.1mm~3.0mm、または0.1mm~2.0mmである。他の実施形態では、厚さは、0.12mm~2.0mm、0.12mm~1.5mm、または0.15mm~2.0mm、または0.15mm~1.5mm、または0.15mm~1.0mmである。なお他の実施形態では、厚さは、0.2mm~1.0mm、または0.2mm~0.5mmである。
【0091】
さらに別の実施形態では、実施形態5または6における管状またはパイプ多層構造は、円筒形または非円筒形の形状を有する。これらの形状は、一般に、本明細書に記載のように、実施形態1のポリアミド組成物の共押出しなどの技術を使用することによって製造されるが、これらに限定されない。そのような技術の1つは、例えば、欧州特許第0 436 923(B2)号に記載されている。
【0092】
有利なことに、実施形態5または6における管状またはパイプ多層構造は、200時間にわたって許容可能なZnCl耐性を示し、限定するものではないが曲げ弾性率、引張弾性率、および層間剥離のない破断点伸びなどの許容可能な機械的特性を有する。
【0093】
一実施形態では、実施形態5または6における管状またはパイプ多層構造は、23℃でISO 527-1に従って測定された少なくとも90MPAの引張弾性率を有する。他の実施形態では、引張弾性率は、200MPA~1200MPa、または400MPA~1000MPa、または600MPA~900MPaである。
【0094】
別の実施形態では、実施形態5または6における管状またはパイプ多層構造は、ISO 180/Aに従って測定された少なくとも40kJ/mの23℃でのノッチ付きアイゾット衝撃抵抗を有する。
【0095】
上記の利点を考慮して、実施形態5または6における管状またはパイプ多層構造は、安価なエアブレーキチューブ、空調管、気送管、および燃料管を製造するのに好適である。
【0096】
本発明は、以下の実施形態、および対応する依存関係の参照およびリンクから生じる実施形態の組み合わせによって、より詳細に例示される。
I.
(a)
(i)ε-カプロラクタムと、
(ii)ヘキサメチレンジアミンと、少なくとも9個の炭素原子を含む二酸との混合物と、を反応させることによって得られたポリアミドコポリマーであって、
(i)と(ii)との間の重量比が1.0:1.0~3.0:1.0である、ポリアミドコポリマーと、
(b)(a)とは異なる少なくとも1つのポリアミドと、
(c)少なくとも1つの衝撃改良剤と、
(d)添加剤と、を含むポリアミド組成物。
II.ポリアミドコポリマー(a)の量が、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、40重量%~90重量%である、実施形態Iに記載のポリアミド組成物。
III.二酸が、9~40個の炭素原子を含む、実施形態IまたはIIに記載のポリアミド組成物。
IV.二酸が、36個の炭素原子を含む、実施形態I~IIIのうちの1つ以上に記載のポリアミド組成物。
V.(i)と(ii)との重量比が、2.0:1.0~3.0:1.0である、実施形態I~IVのうちの1つ以上によるポリアミド組成物。
VI.V.(i)と(ii)との重量比が、2.0:1.0~2.5:1.0である、実施形態I~Vのうちの1つ以上によるポリアミド組成物。
VII.ポリアミド(b)の量が、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、1.0重量%~50重量%である、実施形態I~VIの1つ以上によるポリアミド組成物。
VIII.ポリアミド(b)の量が、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、5.0重量%~40重量%である、実施形態I~VIIの1つ以上によるポリアミド組成物。
IX.少なくとも1つの衝撃改良剤が、(i)カルボン酸、その無水物、マレイミド、またはエポキシ化合物でグラフト化されたエチレンポリマーおよびコポリマー、および(ii)オレフィンまたはアクリル酸または無水物のターポリマーおよびアイオノマーから選択される、実施形態I~VIIIの1つ以上によるポリアミド組成物。
X.衝撃改良剤(c)の量が、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~15重量%である、実施形態I~IXの1つ以上によるポリアミド組成物。
XI.衝撃改良剤(c)の量が、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、7重量%~13重量%である、実施形態I~Xの1つ以上によるポリアミド組成物。
XII.添加剤(d)が、可塑剤、酸化防止剤、安定剤、核剤、染料、顔料、難燃剤、潤滑剤、UV吸収剤、帯電防止剤、真菌剤、殺菌剤、およびIR吸収材料から選択される、実施形態I~XIの1つ以上によるポリアミド組成物。
XIII.添加剤(d)の量が、ポリアミド組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~15重量%である、実施形態I~XIIの1つ以上によるポリアミド組成物。
XIV.ポリアミドコポリマー(a)、ポリアミド(b)、衝撃改良剤(c)、および添加剤(d)を混合することによって、実施形態I~XIIIの1つ以上によるポリアミド組成物を調製するためのプロセス。
XV.実施形態I~XIIIの1つ以上によるポリアミド組成物または実施形態14によるプロセスによって得られたポリアミド組成物を含む造形品。
XVI.造形品のための、実施形態I~XIIIの1つ以上によるポリアミド組成物または実施形態XIVによるプロセスによって得られたポリアミド組成物の使用。
XVII.造形品が、成形、押出成形、およびブロー成形によって得られる、実施形態XVIによる使用。
XVIII.最内層、中間層、および最外層を含む管状またはパイプ多層構造であって、当該最内層および当該最外層は、互いに独立して、
(a)
(i)ε-カプロラクタムと、
(ii)ヘキサメチレンジアミンと、少なくとも9個の炭素原子を含む二酸との混合物と、を反応させることによって得られたポリアミドコポリマーであって、(i)と(ii)との間の重量比が1.0:1.0~3.0:1.0である、ポリアミドコポリマーを含み、
当該中間層は、
(b)(a)とは異なる少なくとも1つのポリアミドを含み、
かつ
少なくとも1つの衝撃改良剤(c)および添加剤(d)が、当該最内層、当該中間層、および当該最外層のうちの少なくとも1つに存在する、管状またはパイプ多層構造。
XIX.当該管状またはパイプ多層構造が、その各末端に開口部を有する、実施形態XVIIIに記載の構造。
XX.当該最内層が、当該中間層と直接接触している、実施形態XVIIIまたはXVIXに記載の構造。
XXI.当該中間層が、当該最外層と直接接触している、実施形態XVIII~XXの1つ以上による構造。
XXII.(i)と(ii)との重量比が、2.0:1.0~3.0:1.0である、実施形態XVIII~XXIの1つ以上による構造。
XXIII.(i)と(ii)との重量比が、2.0:1.0~2.5:1.0である、実施形態XVIII~XXIIの1つ以上による構造。
XXIV.当該最内層の厚さが、0.05mm~5.0mmである、実施形態XVIII~XXIIIの1つ以上による構造。
XXV.当該中間層の厚さが、1mm~20mmである、実施形態XVIII~XXIVの1つ以上による構造。
XXVI.当該最外層の厚さが、0.05mm~5.0mmである、実施形態XVIII~XXVの1つ以上による構造。
XXVII.23℃でISO 527-1に従って測定された少なくとも90MPaの引張弾性率およびISO 180/Aに従って測定された少なくとも40kJ/mの23℃でのノッチ付きアイゾット衝撃抵抗を有する実施形態XVIII~XXVIの1つ以上による構造。
XXVIII.200時間にわたってSAE J844に従ってZnCl溶液中で測定された応力亀裂抵抗の要件を満たすことができる、実施形態XVIII~XXVIIの1つ以上による構造。
XXIX.当該構造が、エアブレーキチューブ、空調管、および燃料管から選択される、実施形態XVIII~XXVIIIの1つ以上に記載の構造。
【実施例
【0097】
本請求項に係る発明は、以下のような非限定的な実施例によって例示される。
【表3】
【表4】
【0098】
ZnCl耐性
ZnCl溶液における応力亀裂抵抗は、1963年6月に発行され、1990年6月12日に改訂された国際規格SAE J844に記載されている手順を使用して測定した。この試験は、試験される組成物を用いて、特定の曲率半径で押出された内径6mmおよび外径8mmのチューブを得、そのようにして湾曲されたチューブを50重量%のZnClを含む冷溶液中に24℃で200時間浸漬することからなる。当該チューブを溶液から取り出したときに、その外面に亀裂が観察されなかった場合、当該チューブは試験に合格したと見なした。
【0099】
ポリアミドコポリマー(PC)((i):(ii)の比2.3:1)
PA 6とPA 6.36とのコポリアミドを、次の方法によって調製した:
932kgのε-カプロラクタム、Crodaからの323.2kgの水素化C36二量体酸、77.84kgの85重量%ヘキサメチレンジアミン水溶液、および153kgの水を、1930Lのタンクにおいて混合し、窒素でブランケットした。タンクの外温を290℃に加熱し、混合物をこの温度で11時間撹拌した。最初の7時間で混合物を高圧で撹拌し、次の4時間、減圧下で撹拌し、その間に形成された水を蒸留除去した。得られたコポリアミドをタンクから排出し、押出し、ペレット化した。得られたコポリアミドのペレットを水によって95℃で4~6時間抽出し、次いで、窒素流中で90℃~140℃で10時間乾燥させた。得られたコポリアミドは、粘度数が259mL/g、ガラス転移温度が38℃、溶融温度が188℃であった。コポリアミドの総重量に基づいて、コポリアミド中のポリアミド6.36の割合は、30重量%であり、密度は1.076g/mLであった。
【表5】
【0100】
多層パイプ構造の一般的な合成
チューブ押出プロセスには、一軸スクリュー押出機を使用した。多層チューブの場合、2つ以上の押出機を組み合わせて、各層のポリマーを多層チューブダイに供給した。次いで、押出されたチューブは、ダイを出た後、冷却浴に引き込んだ。浴によってチューブは凝固し、寸法制御を達成することができた。凝固したら、切断機を使用してチューブを望ましい長さに切断した。
【0101】
いくつかの3層パイプ構造が得られ、それらの機械的特性について試験した。その結果は以下の表2に要約してある。
【表6】
【0102】
上記から明らかなように、本発明による多層パイプ構造は、いかなるZnCl耐性ももたらさない(200時間)。実際、ポリアミド(b)の量が少ない組成物、すなわちIE 1は、IE 2およびIE 3のそれと同様の特性を示す。さらに、本発明の組成物のいずれにおいても層間剥離は観察されない。
【0103】
米国特許第6,060,562(A)号と同様のポリアミドコポリマー(比較)を上記のように調製したが、(i):(ii)の比は4.0:1.0(CE 1)および9.0:1.0(CE 2)である。上記のようにCE 1およびCE 2についてZnCl耐性(200時間)を試験した。その結果は以下の表3に要約してある。
【表7】
【0104】
上記から明らかのように、IE 1を使用して得られた3層パイプ構造は、200時間のZnCl耐性があったが、CE 1およびCE 2を使用して得られたものは試験に不合格であった。したがって、本発明の組成物は、上で示したように、ZnCl耐性(200時間)であって、許容可能な機械的特性を有する安価なエアブレーキチューブ、空調管、気送管、および燃料管を得るために使用することができると考えられる。
【国際調査報告】