(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】水性界面活性剤組成物及び固形石鹸
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20220706BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220706BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220706BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20220706BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220706BHJP
A61Q 9/02 20060101ALI20220706BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220706BHJP
C11D 1/28 20060101ALI20220706BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20220706BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20220706BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20220706BHJP
C09K 23/10 20220101ALI20220706BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/73
A61Q5/02
A61Q1/14
A61Q19/10
A61Q9/02
A61Q11/00
C11D1/28
C11D3/22
C11D17/08
C11D17/06
B01F17/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565876
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2020061606
(87)【国際公開番号】W WO2020225005
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/085840
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ザオ ティン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】グウ,ミン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ブルン,クラウディア
【テーマコード(参考)】
4C083
4D077
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AB352
4C083AC122
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC402
4C083AC692
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD392
4C083BB01
4C083CC21
4C083CC22
4C083CC23
4C083CC25
4C083CC38
4C083DD21
4C083DD23
4C083EE07
4D077AB10
4D077AB11
4D077AC07
4D077DC62X
4H003AB21
4H003AC05
4H003AC12
4H003AD04
4H003BA01
4H003BA12
4H003DA01
4H003DA02
4H003DA05
4H003EB05
4H003EB08
4H003EB41
4H003EB42
4H003ED02
4H003FA17
4H003FA28
(57)【要約】
界面活性剤組成物であって、一般式(I)の1種以上のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(A)R1CH(SO3M1)COOM2(I)、[式中、R1基は6~18個のC原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基を表し、M1及びM2基は互いに独立してH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]並びにデキストリン及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体からなる群から選択される1種以上のポリサッカライド(B)、好ましくは一般式(II)の1種以上のデキストリン(B)[式(II)中、nは3から200の整数である。]を含む、界面活性剤組成物が示唆される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤組成物であって、
一般式(I)の1種以上のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(A)
R
1CH(SO
3M
1)COOM
2 (I)
[式中、R
1基は、6~16個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、M
1及びM
2基は、互いに独立してH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]、
デキストリン及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体からなる群から選択される1種以上のポリサッカライド(B)
を含み、
ただし、以下の
前記界面活性剤組成物が、一般式(V)の1種以上のスルホン酸エステル(E)
R
2CH(SO
3M
7)COOR
3 (V)
[式中、R
2基は、6~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R
3基は、1~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R
3基は、論理上アルケニル基であってよく、又は3個超の炭素原子の場合でのみ分岐であってよく、M
7基は、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]を含む場合、前記化合物(A)は、前記化合物(A)及び(E)の合計に対して50重量%を超えて存在しなければならないという条件が当てはまる、界面活性剤組成物。
【請求項2】
一般式(I)の1種以上のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(A)
R
1CH(SO
3M
1)COOM
2 (I)
[式中、R
1基は、6~16個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、M
1及びM
2基は、互いに独立してH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]、
一般式(II)の1種以上のデキストリン(B)
【化1】
[式中、nは3から200の整数である]
を含み、
ただし、以下の
前記界面活性剤組成物が、一般式(V)の1種以上のスルホン酸エステル(E)
R
2CH(SO
3M
7)COOR
3 (V)
[式中、R
2基は、6~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R
3基は、1~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R
3基は、論理上アルケニル基であってよく、又は3個超の炭素原子の場合でのみ分岐であってよく、M
7基は、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]を含む場合、前記化合物(A)は、前記化合物(A)及び(E)の合計に対して50重量%を超えて存在しなければならないという条件が当てはまる、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項3】
前記化合物(A)が、前記化合物(A)及び(E)の合計に対して60重量%を超え、好ましくは70重量%を超え、より好ましくは95重量%を超えて存在しなければならない、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)中の前記R1基が、10~16個のC原子を有する飽和直鎖アルキル基を表わし、前記化合物(A)に関して、R1基がデシル又はドデシル基である前記化合物(A)の割合が、前記化合物(A)の合計量に対して60重量%を超える、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
M1及びM2基がH(水素)及びNa(ナトリウム)基から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の重量に対して40重量%未満、好ましくは25重量%未満、最も好ましくは15重量%未満の、化合物(A)及び一般式(III)の(C)以外の陰イオン界面活性剤を含み、式(III)は、
R
4COOM
3 (III)
であり、式(III)において、R
4基は、7~19個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、好ましくは、R
4は、11~15個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキル基であり、前記化合物(C)に関して、R
4基がウンデシル又はトリデシル基である化合物(C)の割合が、前記化合物(C)の合計量に対して60重量%を超え、M
3基がH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
液体水性組成物であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
固体組成物であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物(A)が、液体水性組成物について前記組成物の合計重量に対して0.1~10重量パーセントの量で存在し、又は、前記化合物(A)が、固体組成物について前記組成物の重量に対して10~90重量パーセントの量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記化合物(B)が、液体水性組成物について前記組成物の合計重量に対して0.1~10重量パーセントの量で存在し、又は、前記化合物(B)は、固体組成物について前記組成物の重量に対して1~60重量パーセントの量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
化粧用品、清浄剤又はクリーナーのための、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
ヘアシャンプー、固体界面活性剤組成物、シャワー用ジェル、石鹸、合成洗剤、ペースト洗浄剤、固形洗浄剤、ローション洗浄剤、スクラブ製剤、泡浴用剤、油浴用剤、シャワー浴用剤、固形石鹸、ひげ剃り用泡剤、ひげ剃り用ローション、ひげ剃り用クリーム、練り歯磨き、口内洗浄液、ローション及びクリームの形態の化粧用品のための、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面活性剤組成物、殊にアルファ-スルホ脂肪酸二塩及びポリサッカライドを含有する、水性界面活性剤組成物及び固体界面活性剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
陰イオン界面活性剤は、最も広く普及した界面活性化合物のうちのいくつかであり、清浄剤及びクリーナーにおいて使用されることとは別に、化粧品の分野において種々の目的に使用される。特に化粧品に使用される通例の陰イオン界面活性剤は、アルキルエーテルスルファート(アルキルポリエーテルスルファート、脂肪族アルコールポリグリコールエーテルスルファート、要するにまた、エーテルスルファート)の塩である。それらは強力な発泡能力、高い洗浄力、水硬度及びグリースに対する低い敏感性を特徴とし、例えば、ヘアシャンプー、フォーム又はシャワー浴用剤だけでなく、手による食器用清浄剤などの化粧用品の製造のために広く使用される。
【0003】
多くの現在の用途のために、良好な界面活性効果とは別に、さらなる要件が、陰イオン界面活性剤に課せられる。高度の皮膚科学的な適合性が、特に化粧品において必要とされる。さらに、水中での十分な溶解度、化粧品に使用される可能な限り多くの活性成分及び助剤との良好な適合性、良好な発泡能力及び良好な濃縮性が一般に所望される。殊に、ヘアケア組成物については、皮膚科学的適合性及び使用の容易さは新しい開発の目的である。
【0004】
さらに、生物起源の供給源、及びとりわけ、また再生可能な原料から少なくとも部分的に製造することができる陰イオン界面活性剤に対する必要性がある。さらに、アルコキシ化基がなく、したがって、特にその製造のためのエチレンオキシドの使用を不要とする、界面活性剤に対する必要性もまたある。
【0005】
米国特許出願公開第2012/208898号は、ヘアケア製剤としてアルキルベタインと組み合わせてスルホン化脂肪酸エステルの塩及び/又はスルホン化脂肪酸の塩を含む水性パーソナルケア組成物を開示している。スルホン化脂肪酸エステルの塩は十分に許容される界面活性剤であるが、しかし、その良好な水中溶解度により、これらの界面活性剤を用いて固体界面活性剤組成物を形成することは困難である。
【0006】
本発明は、快適なすすぎ感、すすぎ後の皮膚の滑らかさ、柔らかさ、及び皮膚の低い乾燥性を提供する、皮膚浄化のための組成物を提供することを目的とした。殊に、ヘアトリートメントについては、べたつきがなく乾燥時間が長くないコンディショニング効果を達成することが別の目的であった。時間を節約できる使用(毛髪の迅速な乾燥効果)のためのヘアケア界面活性剤組成物の改善された乾燥性は、重要な目的である。
【0007】
陰イオン界面活性剤は、非常に多くの場合固体組成物において使用される界面活性剤である。以前、旧来の固形石鹸であった固体固形洗浄剤は、脂肪酸のアルカリ金属塩(古典的意味の石鹸)を含んでいたが、しかし、近年は、固形洗浄剤も界面活性剤から作られている。完全に合成清浄剤組成物からなる固形石鹸状のものは固形合成洗剤と呼ばれ、脂肪酸塩の界面活性剤との組み合わせはコンビバー(combibar)として販売された。脂肪酸の塩である旧来の石鹸は、水溶液中での加水分解により10.2~10.4のpHでアルカリの環境をもたらし、上皮、5.5~6.5の酸性pHを通常有する皮膚の正常な保護の損傷を引き起こす。これらの界面活性剤石鹸の永続使用によって本来の皮膚バリアを破壊すると、上皮のかゆみ、脱水及びひび割れに対する悪い皮膚耐性に結びつく。これらの不都合を克服するために、「再脂肪剤」、例えば天然油、鉱油、ペトロラタム、ステアリン酸又はラノリンから選択される油脂原料、又は「保湿クリーム」、例えば、グリセリン、尿素及びソルビトールは固形石鹸に組み込まれ、これらの再脂肪剤は、多くの場合べたつき感をもたらし、乾燥時間を延ばす。さらに、これらの添加剤の添加は、石鹸の不十分な発泡及び洗浄性という欠点を伴う。さらに、旧来の石鹸は、硬水との不相容性及びそれらのカルシウム塩の低い溶解度により、望ましくないスカム又はカードを形成する特性を有する。
【0008】
同じことは、コストを下げて、かつ十分な固さの提供によって固形剤の取り扱いを改善するために使用される石鹸の普通の充填剤に対して部分的に当てはまる。以前には、ケイ酸ナトリウム、タルク又はホウ砂が主成分として使用された。しかしながら、これらの充填剤は、殊に敏感肌に対してあまり認容されない。国際特許国際公開第92/07931号において、普通の陰イオン界面活性剤及びポリサッカライドの固形界面活性剤が開示されている。タルク、クレー、炭酸カルシウム及びデキストリンが可能な充填剤材料として列挙される。
【0009】
固形合成洗剤において使用される好ましい界面活性剤は、アシルイセチオン酸、脂肪族アルコールスルファート又はアルカンスルホナートのアルカリ金属塩であったが、今なお界面活性剤を含む固形石鹸中主に使用される界面活性剤である。
【0010】
米国特許第2,894,912号は、イセチオン酸エステルのアルカリ金属塩;混合脂肪酸;いわゆる発泡強化洗剤塩、例えば、アルキルアリールスルホナート;水;高級脂肪酸石鹸;及び高級脂肪酸からなる固形清浄剤を開示している。
【0011】
米国特許第4,100,097号は、イセチオン酸ナトリウムのヤシ油脂肪酸エステル、及び/又はラウリルスルホ酢酸ナトリウム、パラフィン、粉末デンプン、デキストリン、ヤシ油脂肪酸並びに水からなる固形合成清浄剤に関する。
【0012】
固形界面活性剤において合成清浄剤の必要量は、頻繁にマッシュ性及び不十分な固さ、べたつき、製作の困難さ、固形剤のひび割れ及び不十分な発泡性をもたらす。さらに、これらの界面活性剤の使用は目下環境上の理由で減少し、エチレンオキシド及びスルファートの不純物のない、再生可能な資源からの原料で作られる代替品は、ますます好まれるようになっている。
【0013】
国際特許出願国際公開第03/063819号、国際公開第06/062665号及び国際公開第07/133582号に関連するパテントファミリーは、C6~C22脂肪酸塩、多価アルコール、及びアルファ-スルホン化アルキルエステル及びスルホン化脂肪酸を含む陰イオン界面活性剤の混合物の組み合わせを開示している。これらの組成物は改善された加工性、及び改善された使用後の肌触りを示す。しかし、少なくとも40重量%の脂肪酸石鹸という多量は、なお脂肪酸塩の旧来の石鹸の不都合をもたらし、多量の旧来の石鹸を避けることが主な目的であった。
【0014】
上記から、人の皮膚に近似するpHを有し、いずれにせよ良好な取り扱い、発泡及び洗浄性を示す十分に認容できる清浄剤から構成される固体界面活性剤組成物に対する必要性が、なおあることは明らかである。固体界面活性剤組成物の加工は容易に可能なはずである。よって、良好な発泡性、界面活性剤の穏やかさ、水硬度との良好な適合性及び増加させた固さを有する固体界面活性剤を含有する組成物の形をしている陰イオン界面活性剤を提供することは別の目的であった。
【0015】
界面活性剤組成物を含むヘアトリートメントもまた、固体界面活性剤組成物の形態において同様に可能であるはずであり、これらは、市販の界面活性剤組成物、例えばココイルイセチオン酸ナトリウムを含む固形界面活性剤と比較して、すすぐ間に先進的な発泡挙動コンディショニング性及び改善された乾燥時間を示すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、液体水性界面活性剤組成物又は固体組成物である、十分に容認できる陰イオン界面活性剤を含有する改善された界面活性剤組成物を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、界面活性剤組成物であって、
・ 一般式(I)の1種以上のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(A)
R1CH(SO3M1)COOM2 (I)
[式中、R1基は、6~16個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、M1及びM2基は、互いに独立してH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]、
・ デキストリン及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体からなる群から選択される1種以上のポリサッカライド(B)を含み、
ただし、以下の
・ 前記界面活性剤組成物が、一般式(V)の1種以上のスルホン酸エステル(E)
R2CH(SO3M7)COOR3 (V)
[式中、R2基は、6~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R3基は、1~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R3基は、論理上アルケニル基であってよく、又は3個超の炭素原子の場合でのみ分岐であってよく、M7基は、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]を含む場合、前記化合物(A)は、前記化合物(A)及び(E)の合計に対して50重量%を超えて存在しなければならないという条件が当てはまる、界面活性剤組成物により解決された。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】抗マッシュ性能試験方法用の設備の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
界面活性剤組成物は優れた発泡能力、特に初期の発泡挙動を特徴とする。初期の発泡挙動は、いわゆるすすぎ流せる製品として非常に重要な役割を果たし、これらは、洗浄又は手入れの間に皮膚又は毛髪と接触するが、次には再び洗い流せる製品(例えば、シャワー用ジェル、シャワー製剤、シャンプー、液体石鹸など)を意味すると理解されるはずである。この分野では、できるだけ大きい泡体積が所望される。
【0020】
界面活性剤組成物は、さらに酸性及びアルカリ性pH領域の両方で加水分解安定性を有し、生態学的な理由でエチレンオキシド又はプロピレンオキシドの構成要素を避け、更に、皮膚及び粘膜認容性を改善するために、スルファート基を含む界面活性剤を含む構成分子を避ける。
【0021】
界面活性剤組成物は、またいかなる種類の目に見える変化(例えば曇り、相分離、変色など)を起こすことなく、また粘度変化又は化学組成の変化を起こすことなく、少なくとも8週を超える室温(23℃)での貯蔵安定性を有する。
【0022】
発明の界面活性剤組成物は水性界面活性剤組成物であり、これは液体水性界面活性剤組成物又は固体組成物である。
【0023】
固体組成物中の水の量は、1%~20wt%、好ましくは5~15wt%、より好ましくは7~15wt%である。液体水性組成物中の水の量は、水性組成物に対して30wt%を超え、好ましくは40wt%を超え、より好ましくは50wt%を超える。
【0024】
低い皮膚認容性により、パーソナルケア及び家庭用品中の陰イオン界面活性剤の量を低減することが目的である。本発明の界面活性剤組成物は、組成物の重量に対して40重量%未満、好ましくは25重量%未満、最も好ましくは15重量%未満の、化合物(A)及び(C)以外の陰イオン界面活性剤を含むべきである。非常に多くの場合、他の陰イオン界面活性剤は、脂肪酸のアルカリ塩である旧来の石鹸である。固体組成物の場合には、脂肪酸は主として飽和C12~C22脂肪酸、殊にステアリン酸である。長鎖脂肪酸、殊にステアリン酸の塩を含む組成物は、水硬度との不相容性、不十分な発泡性、スカム又はカードを形成する特性及びアルカリのpH値から帰結する低い皮膚認容性のために、扱うことが困難である。そのため、本発明の組成物は、組成物の重量に対して30重量%未満、好ましくは20重量%未満、最も好ましくは10重量%未満のステアリン酸の脂肪酸塩を含むべきである。
【0025】
好ましくは、本発明は、界面活性剤組成物であって、
・ 一般式(I)の1種以上のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(A)
R1CH(SO3M1)COOM2 (I)
[式中、R1基は、6~16個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、M1及びM2基は、互いに独立してH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]、
・ 一般式(II)の1種以上のデキストリン(B)
【0026】
【化1】
[式中、平均重合度nは3から200、好ましくは5から100、最も好ましくは10から40の整数である]を含み、
ただし、以下の
・ 前記水性界面活性剤組成物が、一般式(V)の1種以上のスルホン酸エステル(E)
R
3CH(SO
3M
5)COOR
4 (V)
[式中、R
3基は、6~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R
4基は、1~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R
4基は、論理上アルケニル基であってよく、又は3個超の炭素原子の場合でのみ分岐であってよく、M
5基はLi、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]を含む場合、前記化合物(A)は、前記化合物(A)及び(E)の合計に対して50重量%を超え、好ましくは60重量%を超え、より好ましくは70重量%を超え、最も好ましくは95重量%を超えて存在しなければならないという条件が当てはまる、界面活性剤組成物を提供する。
【0027】
良好な発泡性質を有する陰イオン界面活性剤を含む固体組成物は、毛髪をトリートメントするのに適し、シャンプー用ヘアケア組成物として好ましくするために抗マッシュ性能及びより速い乾燥性能において特性を改善するべきであった。驚いたことに、アルファ-スルホ脂肪酸二塩並びにデキストリン及びその誘導体、デンプン及びその誘導体及びセルロース及びその誘導体からなる群から選択される1種以上のポリサッカライドを含む固体組成物は、改善された抗マッシュ性能を示し、ヘアトリートメントの後に迅速な乾燥性能を有する。
【0028】
本発明による「毛髪をトリートメントするのに適している組成物」とは、毛髪を浄化するのに適している任意の組成物であってよく、毛髪のコンディショニング用組成物(コンディショナー)であってよく、毛髪をトリートメントするためのマスクであってよい。固体界面活性剤組成物は組み合わせ固形剤又は固形合成洗剤でありえる。
【0029】
好ましくは、本発明は、固体界面活性剤組成物であって、
・ 一般式(I)の1種以上のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(A)
R1CH(SO3M1)COOM2 (I)
[式中、R1基は、6~16個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、M1及びM2基は、互いに独立してH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]、
・ デキストリン及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体からなる群から選択される1種以上のポリサッカライド(B)を含み、
ただし、以下の
・ 前記界面活性剤組成物が、一般式(V)の1種以上のスルホン酸エステル(E)
R2CH(SO3M7)COOR3 (V)
[式中、R2基は、6~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R3基は、1~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R3基は、論理上アルケニル基であってよく、又は3個超の炭素原子の場合でのみ分岐であってよく、M7基は、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]を含む場合、前記化合物(A)は、前記化合物(A)及び(E)の合計に対して50重量%を超え、好ましくは60重量%を超え、より好ましくは70重量%を超え、最も好ましくは95重量%を超えて存在しなければならないという条件が当てはまる、固体界面活性剤組成物を提供する。
【0030】
より好ましくは、本発明は、固体界面活性剤組成物であって、
・ 一般式(I)の1種以上のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(A)
R1CH(SO3M1)COOM2 (I)
[式中、R1基は、6~16個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、M1及びM2基は、互いに独立してH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]、
・ 一般式(II)の1種以上のデキストリン(B)
【0031】
【化2】
[式中、平均重合度nは3から200、好ましくは5から100、最も好ましくは10から40の整数である]を含み、
ただし、以下の
・ 前記界面活性剤組成物が、一般式(V)の1種以上のスルホン酸エステル(E)
R
3CH(SO
3M
5)COOR
4 (V)
[式中、R
3基は、6~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R
4基は、1~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、R
4基は、論理上アルケニル基であってよく、又は3個超の炭素原子の場合でのみ分岐であってよく、M
5基はLi、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]を含む場合、前記化合物(A)は、前記化合物(A)及び(E)の合計に対して50重量%を超え、好ましくは60重量%を超え、より好ましくは70重量%を超え、最も好ましくは95重量%を超えて存在しなければならないという条件が当てはまる、固体界面活性剤組成物を提供する。
【0032】
固体組成物中の水の量は、組成物の重量に対して1%~20wt%、好ましくは5~15wt%、より好ましくは7~15wt%である。好ましくは、固体組成物は、組成物の重量に対して30重量%未満、好ましくは20重量%未満、最も好ましくは10重量%未満のステアリン酸の脂肪酸塩を含む。
【0033】
化合物(A)
本発明の文脈内で、化合物(A)はアルファ-スルホ脂肪酸二塩と称され、本発明による水性及び固体の界面活性剤組成物には必須である。それらは前述の式(I)
R1CH(SO3M1)COOM2 (I)
[式中、R1基は、6~16個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、M1及びM2基は互いに独立してH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]を有する。本発明の特に好ましいアルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモノイソプロパノールアミンである。
【0034】
本発明の文脈においては、「アルファ-スルホ脂肪酸二塩」と命名される化合物(A)は、式(I)[式中、M1及びM2基は互いに独立してH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択され、したがって二塩及び/又はモノ塩及び/又はプロトン化された酸を包含する]によって定義される。
【0035】
一実施形態において、R1基がアルケニル基である、界面活性剤組成物中の化合物(A)の分率は、化合物(A)の合計量に対して3重量%以下であるという条件が当てはまる。
【0036】
好ましい実施形態において、式(I)中のR1基は、10~16個の炭素原子を有する飽和、直鎖基を意味し、この場合、化合物(A)に関して、R1基がデシル及び/又はドデシル基である化合物(A)の分率は、化合物(A)の合計量に対して70重量%を超え、好ましくは80重量%を超え、より好ましくは90重量%を超え、特に好ましくは95重量%を超える。
【0037】
好ましくは、式(I)中のM1及びM2基はNaである。
【0038】
液体水性組成物は、通常、組成物の重量に対して0.1~10重量%を超えるアルファ-スルホ脂肪酸二塩(A)、好ましくは1~8%を超え、より好ましくは3~6重量%のアルファ-スルホ脂肪酸二塩を含む。
【0039】
固体組成物は、通常、組成物の重量に対して10~90重量%のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(A)、好ましくは20~70%、より好ましくは30~50重量%のアルファ-スルホ脂肪酸二塩を含む。
【0040】
化合物(A)は、当業者に適切と知られているあらゆる方法によって調製することができる。ここでの特に好ましい調製法は対応するカルボン酸の硫酸化である。ここで、対応するカルボン酸及び特に対応する脂肪酸は、ガス状の三酸化硫黄と反応させ、好ましくは、三酸化硫黄は、SO3と脂肪酸のモル比が1.0:1~1.1:1の範囲になるような量で使用される。この方法で得られた粗生成物は、酸性のスルホン化生成物であり、次には、部分的に又は完全に中和され、水性NaOHを用いて中和を完結することが好ましい。所望の場合、また、精製工程及び/又は脱色(生成物の所望の淡色に調節するため)を着手することは可能である。
【0041】
特に好ましい実施形態において、化合物(A)は工業等級の形態で使用される。これは、対応するカルボン酸、特に天然脂肪酸が、ガス状三酸化硫黄を用いてスルホン化され、その結果、得られた酸性スルホン化生成物の部分的又は完全な中和の後に、化合物(A)、(C)及び(D)の混合物がもたらされることを意味する。反応パラメーター(特にカルボン酸及び三酸化硫黄のモル比、及びまた反応温度)の対応する調節によって、化合物(A)、(C)及び(D)の比を制御することは可能である。化合物(C)及び(D)は、「好ましい実施形態」という章に記載される。
【0042】
本発明の文脈内では、以下の組成物を有するアルファ-スルホ脂肪酸二塩の工業等級の混合物が好ましい:この混合物中の、成分(A)、(C)及び(D)の合計が100重量%であることを条件として
・ (A)の含有率は、60~100重量%の範囲、好ましくは70~85重量%の範囲にあり、
・ (C)の含有率は、0~20重量%の範囲、好ましくは5~15重量%の範囲にあり、
・ (D)の含有率は、0~20重量%範囲、好ましくは10~15重量%の範囲にある。
【0043】
化合物(B)
水性界面活性剤組成物中の化合物(B)の機能は、液体及び固体の組成物としてのそのコンディショニング及びヘアケアの効果、並びに固体組成物を充填及び形成するその性質に基づく。
【0044】
液体水性組成物は、通常、組成物の重量に対して0.1~10重量%のポリサッカライド、好ましくは0.2~5%、より好ましくは1~3重量%のポリサッカライドを含む。
【0045】
固体組成物は、通常、組成物の重量に対して1~60重量%のポリサッカライド、好ましくは5~50%、より好ましくは15~40重量%のポリサッカライドを含む。
【0046】
固体界面活性剤組成物については、化合物Bは充填剤である。充填剤の機能は、陰イオン界面活性剤の発泡性能を損なわずにコストを削減しつつ、固体形態での界面活性剤の使用を可能にすること、組成物を強化すること、組成物の摩耗率、固さ及び感覚的な感触を高めることである。
【0047】
固体界面活性剤組成物としての好ましい充填剤は、ポリサッカライド粉末、例えばデキストリン及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体である。
【0048】
化合物(B)は、本発明の文脈において、ポリサッカライドと称され、デキストリン及びその誘導体、デンプン及びその誘導体、セルロース及びその誘導体からなる群から選択され、これらの少なくとも1つは本発明による界面活性剤組成物に必須である。
【0049】
デンプン及びその誘導体
デンプン
結合剤/充填剤成分は、未処理のデンプン、又は、修飾、粉末化、加水分解されたデンプン又は誘導体であってもよい。固体組成物において、これは約5%から約20重量%までの範囲の量で、好ましくは約7%~約12重量%の範囲の量で存在するべきである。
【0050】
食糧生産及び化粧品において使用されるデンプン誘導体、例えば酸化デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロトピル化リン酸架橋デンプンは、同様に可能な充填剤及び結合剤である。
【0051】
未処理の形態で、又は好ましくは消化された、すなわち部分的に加水分解された形態で使用されてもよい無置換のバレイショ、コムギ及び/又はコーンデンプンを使用することは特に好ましい。
【0052】
セルロース及びその誘導体
食品産業及び化粧用品において、セルロースエーテルは、多くの場合、増稠剤として使用され、この機能の他に、それらは充填剤及び結合剤としても同様に使用される。
【0053】
適切なセルロース誘導体は、例えば、セルロースエーテルである。セルロースエーテルは、セルロースのヒドロキシル基の水素原子の、アルキル基及び/又はアリールアルキル基による置換によって製作され、これらアルキル及び/又はアリールアルキル基を、非イオン、陰イオン、陽イオン又は非イオンの基によってさらに置換することができる。アルキル基は典型的には直鎖又は分岐のC1~C8アルキル基である。好ましいアルキル基はC1~C4アルキル基であり、例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルである。アルキル基は、例えばフェニル基などの芳香族基によって置換されてアリールアルキル基を形成してもよい。好ましいアリールアルキル基の1つはベンジルである。アルキル又はアリールアルキル基は、例えばヒドロキシル、カルボキシル又はカルボキシラト基によって官能基が置換されてもよい。カルボキシラト基が存在する場合、対応する対イオンも同様に存在し、例としてはアルカリ金属イオン、例えばナトリウム若しくはカリウム又はアンモニウムイオンである。また、複数の種類のアルキル、アリールアルキル又は官能基が置換されたアルキル基を含む、混合セルロースエーテルを使用することも可能である。
【0054】
好ましい親水性ポリマーセルロース誘導体は、メチル-、エチル-、プロピル-、カルボキシメチル-、ヒドロキシエチル-、ヒドロキシプロピル-、ヒドロキシプロピルメチル-、エチルメチルセルロース-、メチルヒドロキシエチル-、メチルヒドロキシブチル-、エチルヒドロキシエチル-及び/又はカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースである。カルボキシメチルセルロースの中でも、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、架橋したナトリウムカルボキシメチルセルロース又は酵素で加水分解されたカルボキシメチルセルロースである。
【0055】
デキストリン及びその誘導体
デキストリン及びその誘導体は、デキストリン、マルトデキストリン及びシクロデキストリンを含む。本発明の文脈において、最も好ましい化合物(B)はデキストリンである。それらは前述の式(II)を有する
【0056】
【化3】
[式中、平均重合度nは、3から200、好ましくは5から100、最も好ましくは10から40の整数である]。
【0057】
デキストリンは、α-(1→4)結合によって連結したD-グルコース単位を形成するデンプンの、α-(1→6)グリコシド結合から始まる加水分解によって入手可能な低分子量炭水化物の群である。
【0058】
好ましくは、それらは、100%を有するデキストロース(グルコース)に対して1から30%、好ましくは1から13%のデキストロース当量を有する。デキストロース当量(DE)は、糖製品中に存在する還元糖の量の指標であり、デキストロースに対して乾燥量基準で百分率として表現される。デキストロース当量は、デンプン糖についての平均重合度(DP)の指標を与え、それは分子量と反比例する。重合度(DP)は加水分解の程度の指標であり、加水分解されていないデンプンは0のDEを有するが、グルコースは100のDE値を有する。
【0059】
これらのポリサッカライドは、アミラーゼなどの酵素を使用して、又は酸性条件下で乾燥、加熱すること(熱分解又は焙焼)によって、デンプンから製造される。デキストリンの工業的生産は、一般にバレイショデンプンの酸性加水分解によって遂行される。
【0060】
仕上がったデキストリンは、純白から茶色の様々な色の非常に細かい粉である。それらの分子量及び色に応じて、3つの主要なタイプのデキストリンが区別される:白色デキストリン、カナリア色又は黄色のデキストリン、及びブリティッシュ(Britisch)ガム。ブリティッシュガムは、約20の平均重合度を有する最も高分子量、及び強力な接着性を有するデキストリンであり、黄色デキストリンは分子量が最低であり、白色デキストリンは他のタイプの間の分子量を有する。それらは、多くの場合食品製品に接する接着剤及びコーティングにおいて使用される。
【0061】
好ましいデキストリンではないが、マルトデキストリンも同様に、組成物中にポリサッカライド及びデキストリンの誘導体として含むことができる。それらはα-(1→4)結合グルコースのみから構成され、10~20の平均重合度及び3~20%、好ましくは10~20%のデキストロース当量を有する。
【0062】
シクロデキストリンは、公知のシクロデキストリン、例えば、6~12のグルコースモノマーを含有する無置換シクロデキストリン、殊にアルファ-、ベータ-及びガンマ-シクロデキストリン、及び/又はそれらの誘導体、及び/又はそれらの混合物のいずれであってもよい。アルファ-、ベータ-及びガンマ-シクロデキストリンは、6、7及び8個のグルコースモノマー単位をそれぞれ含み、ドーナツ形環に配置されている。本発明における使用に適しているシクロデキストリン誘導体の例は、異なる置換度のメチルベータ-シクロデキストリン、ヒドロキシ-エチルベータ-シクロデキストリン及びヒドロキシプロピルベータ-シクロデキストリンを含む。水溶性のシクロデキストリン誘導体は好ましいシクロデキストリン誘導体である。好ましくは、少なくともシクロデキストリンの大部分は、アルファ-、ベータ-及び/又はガンマ-シクロデキストリン、より好ましくはアルファ-及びベータ-シクロデキストリンである。本発明で使用される殊に好ましいシクロデキストリンはベータ-シクロデキストリンである。また、シクロデキストリンの混合物を使用することも好ましい。
【0063】
本発明において、デキストリンの量は、水性界面活性剤組成物の改善された乾燥効果、コンディショニング効果に貢献するが、陰イオン界面活性剤の発泡性能、及び固体界面活性剤組成物の加工性を損なわない。
【0064】
液体水性組成物は、通常、組成物の重量に対して0.1~10重量%のデキストリン、好ましくは0.2~5重量%、より好ましくは1~3重量%のデキストリンを含む。毛髪浄化のために使用される場合、毛髪送風乾燥速度を改善し、それがデキストロース当量を応じて液体水性組成物の粘度の構築を改善することができることを示す。
【0065】
固体組成物は通常、組成物の重量に対して1~60重量%のデキストリン、好ましくは5~50重量%、より好ましくは15~40重量%、最も好ましくは25から35重量%のデキストリンを含む。デキストリンは、アルファ-スルホ脂肪酸二塩を含む固体組成物の加工を可能にし、固体の成形を可能にする。ヘアケア組成物においてこれらの固体組成物を使用することによって毛髪送風乾燥速度を改善しつつ、良好なコンディショニング効果が達成される。
【0066】
さらなる添加剤
固体界面活性剤及び液体水性組成物は、さらなる添加剤、例えば皮膚保湿クリーム、例えば乳酸ナトリウム、グリセリン、ピロリドンカルボン酸;pH調節剤(regulans)、錯化剤;色素;漂白剤;香料;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどの塩;抗酸化剤、抗菌剤及び防腐剤又は安定剤を含んでいてもよい。
【0067】
界面活性剤組成物は好ましくはpH調節剤を含み、最も好ましいものは、組成物の重量に対して1~10wt%、好ましくは1~6wt%の量で添加されるクエン酸である。良好な皮膚認容性の達成のために、水中の組成物の10wt%溶液のpHは、4~7、好ましくは4.5~6.0の値を有する。
【0068】
好ましい実施形態
一実施形態において、本発明による界面活性剤組成物は、化合物(A)及び(B)の他にさらに、一般式(III)の1種以上の化合物(C)を含む。
R4COOM3 (III)
【0069】
式(III)において、R4基は、7~19個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル又はアルケニル基であり、好ましくは、R4は、11~15個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキル基であり、化合物(C)に関して、R4基がウンデシル又はトリデシル基である化合物(C)の割合は、化合物(C)の合計量に対して60重量%を超え、M3基はH、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される。特に好ましいアルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモノイソプロパノールアミンである。
【0070】
一実施形態において、本発明による界面活性剤組成物は、化合物(A)、(B)に加えて、さらに一般式(IV)の1種以上の硫酸(D)の無機塩を含む
(M4)2SO4 (IV)
[式中、M4はLi、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]。
【0071】
化合物(A)のM1及びM2基、化合物(C)のM3基、及び化合物(D)のM4基はアルカノールアミンであってもよい。これに関係してモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモノイソプロパノールアミンが特に好ましい。
【0072】
好ましい実施形態において、本発明による界面活性剤組成物は化合物(A)、(B)、(C)及び(D)を含む。ここで、化合物(A)のM1及びM2がH(水素)基及びNa(ナトリウム)基から選択される場合、特に好ましい。
【0073】
一実施形態において、本発明による界面活性剤組成物は、化合物(A)、(B)に加えて、さらに式(VI)の1種以上の化合物(F)を含む
R5CH2-CO-CHR6(SO3M6) (VI)
[式中、R5及びR6基は、互いに独立して6~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル基を意味し、M6基は、H、Li、Na、K、Ca/2、Mg/2、アンモニウム及びアルカノールアミン基から選択される]。特に好ましいアルカノールアミンは、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモノイソプロパノールアミンである。
【0074】
組成物の使用
本発明のさらなる主題は、化粧用品並びに洗浄及び浄化の製品としての前述の組成物の使用である。
【0075】
スキンケアとしてのすすぎ型及び残留型組成物を含む化粧用品に関して、殊にヘアシャンプー、固体界面活性剤組成物、シャワー用ジェル、石鹸、合成洗剤、ペースト洗浄剤、固形洗浄剤、ローション洗浄剤、スクラブ製剤、泡浴用剤、油浴用剤、シャワー浴用剤、固形石鹸、ひげ剃り用泡剤、ひげ剃り用ローション、ひげ剃り用クリーム、ローション及びクリーム、並びに歯のケア製品(例えば練り歯磨き、口内洗浄液など)の形で存在するものが特に好ましい。好ましい化粧用品は、ヘアケア組成物、例えばシャンプーであり、化粧用の洗浄、及びヘアケア組成物としての使用のための固形合成洗剤として固体界面活性剤組成物が殊に好ましい。
【0076】
特に、低pH剤は、硬い表面の洗浄用、例えば浴用、及びトイレクリーナー、例えばリムブロックなど、並びに衛生施設で使用される洗浄及び/又は香料ジェルが好ましい。
【0077】
固体界面活性剤組成物
固体界面活性剤組成物は、それらの製作工程及び意図した使用に応じて、様々な形態、例えば棒、ヌードル、ビーズ、顆粒、パッド、針、板又は錠剤に適切である。
【0078】
本発明による特に都合のよい皮膚の感触及びクリーム状の泡立ちを有する好ましい固体界面活性剤組成物は、
固体界面活性剤組成物の重量に対して(wt%はそれぞれの化合物の活性物質である)
30~70wt%のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(化合物A)、
10~50wt%のデキストリン(化合物B)、
5~20wt%の水を含む。
【0079】
より好ましくは、本発明による固体界面活性剤組成物は、
固体界面活性剤組成物の重量に対して
30~50wt%のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(化合物A)、
20~40wt%のデキストリン(化合物B)、
10~15wt%の水を含む。
【0080】
最も好ましくは、本発明による固体界面活性剤組成物は、
固体界面活性剤組成物の重量に対して
35~45wt%のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(化合物A)、
23~35wt%のデキストリン(化合物B)、
7~15wt%の水を含む。
【0081】
とりわけ、本発明による最も好ましい固体界面活性剤組成物は、
固体界面活性剤組成物の重量に対して
40~44wt%のアルファ-スルホ脂肪酸二塩(化合物A)、
26~30wt%のデキストリン(化合物B)、
7~15wt%の水を含む。
【0082】
アルファ-スルホ脂肪酸二塩、デキストリン及び水を含む固体界面活性剤組成物は、好ましくはpH調節剤を含み、最も好ましいものは、組成物の重量に対して1~10wt%、好ましくは1~6wt%の量で添加されるクエン酸である。好ましくは、水中の組成物の10wt%溶液のpHは、4~7、好ましくは4.5~6.0の値を有する。
【0083】
組成物は、さらなる添加剤、例えば皮膚保湿剤、例えば乳酸ナトリウム、グリセリン、ピロリドンカルボン酸;pH調節剤、錯化剤;色素;漂白剤;香料;塩、例えば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム;抗酸化剤、抗菌剤及び防腐剤又は安定剤を含んでもよい。
【0084】
固形固体界面活性剤の製作工程は、脂肪酸石鹸を使用する、旧来の石鹸製造と類似点がある。原料は混合され、練り混ぜ、摩砕、押出、輸送又は用途に適している形態へ切断及び固形にプレスすることにより加工することができる。
【0085】
[実施例]
1. 使用した原料:
アルファ-スルホ脂肪酸二塩(A):
Texapon SFA粉末(BASF SE):天然のC12/14脂肪酸に基づいた工業等級のアルファ-スルホ脂肪酸二塩;組成:79重量%の2-スルホラウリン酸ジナトリウム、8重量%のラウリン酸ナトリウム、11.8重量%の硫酸ナトリウム、100重量%までの残量の水。ここでの用語「ラウリン酸」は、基礎をなす天然の脂肪酸の混合物のC12/14重量比が70:30であることを意味する。
【0086】
Texapon SFAペースト(BASF SE):天然のC12/14脂肪酸に基づいた工業等級のアルファ-スルホ脂肪酸二塩;組成:32.5重量%の2-スルホラウリン酸ジナトリウム、4.3重量%のラウリン酸ナトリウム、4.9重量%の硫酸ナトリウム、100重量%までの残量の水。ここでの用語「ラウリン酸」は、基礎をなす天然の脂肪酸の混合物のC12/14重量比が70:30であることを意味する。
【0087】
デキストリン:Haiyan Liuhe Pharmaceutical Industry Co. LTD, Sanlian Village, Yucheng Town, Haiyan Countyから。薬用等級デキストリン、メッシュの大きさ:120メッシュ、還元糖<0.20g。
Dehyton PK45(BASF SE):乾燥残留物44~46.0wt%、INCI:コカミドプロピルベタイン;
Eumulgin EO33(BASF SE):ポリエチレングリコール6000ジステアラート、INCI:PEG-150ジステアラート
Plantacare 818 UP (BASF SE):C8~C16脂肪族アルコールグリコシド;INCI:ココヤシグルコシド
Ucare JR-400 (Dow Chemical):INCI:ポリクオタニウム-10;
【0088】
2. 固形固体界面活性剤の製造
固形固体界面活性剤の調製は以下の工程を含む:
第1の工程:ヌードルの形の固体界面活性剤組成物の製造:
1. 脱イオン水にクエン酸を溶かした。
2. 3~5分間30RPMで鋤刃式撹拌機(L20, Loedige Process Technology, Gebruder Lodige Maschinenbau, Paderborn, Germany)でまずTexapon SFA粉末及びポリサッカライド粉末を混合した。粉塵爆発を避けるために混合機中の保護ガスとして不活性ガス(例えば窒素ガス)を使用した。
3. 次いで、20~30分間30RPMで加圧ノズルを用いて供給することにより、混合機へクエン酸溶液を添加した。次いで、混合機を50~100RPMで20~30分間作動して含湿ペーストを形成した。混合後のペースト(水中の10wt%溶液)のpHは、5~6であった。
4. さらに20~30分間15~30RPMでMix-Muller(LG, Simpson Technologies, Euskirchen Germany)でペーストを混合し、そして次に、
5. 3~10RPMの押出速度で3mmのダイを用いて押出機(LSRE 75 R, Sela Maschinen GmbH, Harbke, Germany)で押し出してSFAヌードルを生成した。
【0089】
第2の工程:固体界面活性剤ヌードルからの固形剤の製造:
6. ヌードルに形成した塊を、3本ローラー粉砕ミル(Weber & Seelander, Harbke, Germany)で2度粉砕して固体界面活性剤板を得た。
7. 固体界面活性剤板は、固形石鹸用の押出機(Weber & Seelander, Sela-Maschinen GmbH, Harbke, Germany)に充填し、プレスして、固形固体界面活性剤を得た。
【0090】
3. 抗マッシュ性能試験方法
22℃±2℃の脱イオン水250mlで満たした250mlのビーカーへ固形石鹸を投入した(
図1:抗マッシュ性能試験方法用の設備)。固形剤は約4cmを水へ浸した。粥状の表面(A=a*b)の計算のために底面の長さ(a)及び幅(b)を測定した。
【0091】
2時間の浸漬後、水から固形剤を取り出し、注意深く振盪して水の余剰をすべて払い落とし、秤量した(W1)。
【0092】
次いで、プラスチックスクレーパーを用いて注意深くこすることによりマッシュを除去し、こすった固形剤をティッシュペーパーで拭き、終夜乾燥しtermal重量(termal weight)(W2)を求めた。
【0093】
マッシュ性能を計算した:
マッシュパーセント%=(W2-W0)/W0
* W0=浸漬前の固形剤の重量
* W2=2時間浸漬、マッシュ除去及び終夜乾燥後の固形剤の重量
【0094】
ヘアケア用途については、重要な性能のうちの1つは発泡であるが、しかし、マッシュ性は追加の重要な性質である。抗マッシュ値が低すぎると、固形剤は硬すぎ、毛髪に適用することが困難になる。抗マッシュ値が高すぎると、固形剤は軟らかすぎ、水に溶解し易くなる。固形固体界面活性剤の最も良好なマッシュ百分率値としての範囲は、5%~40%、好ましくは15%~25%であった。
【0095】
4. 発泡試験
ブラシがけ発泡法
1. 家庭用自動粉砕機に固形石鹸を摩砕して20um~3000umの摩砕粉末の粒度を達成する。
2. 50mlのメスシリンダーに0.15gの粉石鹸及び14.85gの水を添加し、均質分散のために1分間穏やかに振盪する。
円筒に試験管ブラシを入れ、円筒内部で30回転鉛直にブラシをかけて泡を立てる。
3. 円筒からブラシを取り除き、泡高を読みとる。
【0096】
5. 乾燥速度試験
毛髪送風乾燥試験のプロトコル
1. 毛髪繊維の前処理
IHIPからの標準毛髪繊維(中国人の毛髪、15cm/2g)を上方部で束ね接着する。毛髪繊維を洗浄し漂白した。
2. 毛髪の秤量。
3. 1L/分の水流速、38℃で1分間毛髪をすすぎ、広い側で一度櫛を入れた。次いで、中指と人指し指を用いて過剰水を3回除去する。含湿毛髪を秤量する。(乾燥毛髪重量の初期の水分75%増加を維持する)。
4. 特殊なトレーに毛髪繊維を置き、ある量の製品で処理し、各面に30秒間均一にブラシをかけ、次いで、3分の総時間、インキュベートする。
5. 洗い流しプロセスとして、1L/分の水流速、38℃で1分間毛髪を再びすすぎ、中指と人指し指を用いて過剰水を3回除去する。生成物とともに含湿毛髪を秤量する。(乾燥毛髪重量の初期の水分75%増加を維持する)。
残留型製品については、工程5を飛ばし、直接工程6に進む。
6. 送風乾燥機に毛髪を移し、増加分が<0.05gになるまで送風乾燥する。
7. 送風乾燥の1、3及び5分後に広い側で毛髪繊維に櫛をかける。
8. 毛髪重量を毎分記録する。
【0097】
6. 固体界面活性剤組成物を用いる実施例
固体固形石鹸用の異なる充填剤を比較するためにマッシュ傾向及び固形剤の発泡性を調査した。
【0098】
毛髪のシャンプーのためにこれらの固形石鹸を使用して、毛髪洗浄の後の乾燥性能を試験した。
【0099】
固体固形石鹸用の標準充填剤としてのデキストリンに対する比較としてステアリン酸を使用した。
【0100】
【0101】
【0102】
7. パネル式試験
11人の訓練された志願者(9人の中国人女性、2人の中国人男性)の審査員団は、市販の固形固体界面活性剤(Olaz Bar:INCI:ステアリン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、パラフィン、水、ココグリセリルエーテルスルホン酸ナトリウム、グリセリン、ステアリン酸ナトリウム、タルク、ステアリン酸、ヤシ脂肪酸ナトリウム、ココナッツ酸(ココナッツ由来)、イセチオン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、二酸化チタン、クエン酸、香料、PEG-90M)及び本発明による固体界面活性剤組成物(試料:表3のS10)を試験した。11人の参加者すべてに対して、対照製品の1つの固形剤及び発明の製品の1つの固形剤を使用した。泡立ち試験については、参加者が固形石鹸を泡立たせ、泡立ちの性質を記載し、次いですすぎ流した。皮膚試験については、参加者は20秒間前腕へ濡れた固形石鹸をこすりつけ、すすぎ乾燥した。22℃の温度及び50%の相対湿度で空調室において試験を行なう。結果は
図2に記載する。(パネル式試験の結果)。
【0103】
【0104】
【国際調査報告】