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特表2022-532733特定の式のシランを含有する、ケラチン性繊維を処理するための剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-19
(54)【発明の名称】特定の式のシランを含有する、ケラチン性繊維を処理するための剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/58 20060101AFI20220711BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
A61K8/58
A61Q5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021568110
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2020055150
(87)【国際公開番号】W WO2020229004
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】102019207060.4
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】レヒナー,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】シェープゲンス,ユルゲン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB052
4C083AC852
4C083AC911
4C083AC912
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD282
4C083BB21
4C083BB24
4C083BB53
4C083CC36
4C083DD27
4C083EE26
(57)【要約】
本出願の主題は、以下を含有するケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物である:
(a)式(I):
の少なくとも1つのシラン、
(b)式(II):
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン、
(c)式(III):
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン、および
(d)式(IV):
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I):
【化1】
[式中、
R1、R1’、R1’’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表し、
R2は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の少なくとも1つのシラン、および
(b)式(II):
【化2】
[式中、
R3、R3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表し、
R4は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン、および
(c)式(III):
【化3】
[式中、
R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表し、
R6は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン、および
(d)式(IV):
【化4】
[式中、
R7は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン
を含有する、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物。
【請求項2】
式(Ia):
【化5】
[式中、
R1、R1’、R1’’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の少なくとも1つのシラン(a)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(Ib):
【化6】
[式中、
R1、R1’、R1’’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の少なくとも1つのシラン(a)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中で使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、
(a)0.3~12.0モル%、好ましくは0.6~10.0モル%、より好ましくは0.8~7.0モル%、最も好ましくは1.4~6.0モル%の総モル割合で、式(I)の1つ以上のシラン
を含む、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物中に組み込まれる全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、
(a)0.2~7.0モル%、好ましくは0.4~6.0モル%、より好ましくは0.5~5.0モル%、最も好ましくは1.0~4.0モル%の総モル割合で、式(Ia)の1つ以上のシラン
を含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中で使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、
(a)0.1~5.0モル%、好ましくは0.2~4.0モル%、より好ましくは0.3~2.0モル%、最も好ましくは0.4~2.0モル%の総モル割合で、式(Ib)の1つ以上のシラン
を含む、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
式(IIa):
【化7】
[式中、
R3、R3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン(b)を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
式(IIb):
【化8】
[R3、R3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン(b)を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中で使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、
12.5~42.0モル%、好ましくは14.5~38.0モル%、より好ましくは16.0~34.0モル%、非常に特に好ましくは19.5~30.0モル%の総モル含有量の式(II)の構造単位を有する1つ以上のシラン(b)
を含む、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中で使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、
12.0~30.0モル%、好ましくは14.0~28.0モル%、より好ましくは14.0~26.0モル%、最も好ましくは16.0~24.0モル%の総モル含有量を有する式(IIa)の構造単位の1つ以上のシラン(b)
を含む、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物中で使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、
0.5~12.0モル%、好ましくは1.5~10.0モル%、より好ましくは2.5~8.0モル%、非常に特に好ましくは3.5~6.0モル%の総モル含有量を有する式(Iib)の構造単位の1つ以上のシラン(b)
を含む、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
式(IIIa):
【化9】
[式中、
R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン(c)を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
式(IIIb):
【化10】
[式中、
R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン(c)を含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物中で使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、
22.0~60.0モル%、好ましくは26.0~56.0モル%、より好ましくは30.0~42.0モル%、最も好ましくは34.0~48.0モル%の総モル含有量の式(III)の構造単位を有する1つ以上のシラン(c)
を含む、請求項1~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物中で使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、
16.0~38.0モル%、好ましくは18.0~36.0モル%、より好ましくは20.0~34.0モル%、最も好ましくは22.0~32.0モル%の総モル含有量の式(IIIa)の構造単位を有する1つ以上のシラン(c)
を含む、請求項1~14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物中で使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、
6.0~22.0モル%、好ましくは8.0~20.0モル%、より好ましくは10.0~18.0モル%、最も好ましくは12.0~16.0モル%の総モル含有量の式(IIIb)の構造単位を有する1つ以上のシラン(c)
を含む、請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
式(IVa):
【化11】
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン(d)を含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
式(IVb):
【化12】
の少なくとも1つの構造単位を含む少なくとも1つのシラン(d)を含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物中で使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、
18.0~34.0モル%、好ましくは20.0~32.0モル%、より好ましくは22.0~30.0モル%、最も好ましくは23.0~28.0モル%の総モル含有量の式(IV)の構造単位を有する1つ以上のシラン(d)
を含む、請求項1~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物の総重量に基づいて、30.0~85.0重量%、好ましくは35.0~80.0重量%、より好ましくは40.0~75.0重量%、さらにより好ましくは45.0~70.0重量%、最も好ましくは50.0~65.0重量%の総量で1つ以上のシラン(a)~(d)を含む、請求項1~19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物の総重量に基づいて、0.01~9.0重量%、好ましくは0.1~7.0重量%、さらに好ましくは0.2~5.0重量%、最も好ましくは0.5~3.0重量%の水を含む、請求項1~20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
別々に製造された、
-化粧品組成物(A)を含有する第1パッケージユニット、および
-化粧品組成物(B)を含有する第2パッケージユニット
である、ケラチン性物質、特に人毛を染色するための多成分パッケージユニット(キット・オブ・パーツ)であって、ここで、
-該化粧品組成物(A)は、請求項1~21のいずれかに記載の組成物であり、
-該化粧品組成物(B)は、顔料および/または直接染料からなる群から選択される、少なくとも1種の着色化合物を含む、
多成分パッケージユニット。
【請求項23】
-化粧品組成物(C)を含む第3パッケージユニット、該化粧品組成物(C)は少なくとも1種の増粘性ポリマーを含む、
を含む、請求項22に記載のキット・オブ・パーツ。
【請求項24】
-化粧品組成物(D)を含む第4パッケージユニット、該化粧品組成物(D)は少なくとも1種の皮膜形成性ポリマーを含む、
を含む、請求項22~23のいずれかにキット・オブ・パーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は化粧料の分野にあり、式(I)の単量体シラン化合物(a)、式(II)の少なくとも1つの構造単位を有する単架橋型(singly crosslinked)シラン(b)、式(III)の少なくとも1つの構造単位を有する二架橋型(doubly crosslinked)シラン(c)、および式(IV)の少なくとも1つの構造単位を有する完全架橋型(fully crosslinked)シラン(d)の混合物を含む化粧品組成物に関する。
【0002】
本発明の第2の目的は、ケラチン性物質を染色するための多成分パッケージユニット(キット・オブ・パーツ)であって、2つのパッケージングユニット中に別々にパッケージングされた2つの化粧品組成物(A)および(B)を含み、組成物(A)は本発明の第1の主題の組成物であり、組成物(B)は、少なくとも1種の着色化合物を含む組成物である、キット・オブ・パーツである。
【背景技術】
【0003】
ケラチン繊維、特に毛髪の形状および色を変化させることは現代の化粧料の重要な領域である。毛髪の色を変えるために、専門家は、カラーリング要件に応じた種々の着色システムを知っている。酸化染料は通常、持続的な、しっかりとした染色のために使用され、良好な堅牢特性を有し、良好に白髪がカバーされる。かかる染料は通常、過酸化水素などの酸化剤の影響下で互いと染料そのものを形成する酸化染料前駆体、いわゆるデベロッパー成分とカプラー成分を含有している。酸化染料は非常に長持ちする染色結果を特徴とする。
【0004】
直接染料を使用する場合、既製の染料は着色料から毛髪繊維内へと拡散する。酸化的な毛染めと比べて、直接染料で得られる染色は色持ちが短く、すぐに洗い流される。直接染料での染色が毛髪上に残存する期間は、通常、洗髪5回~20回までである。
【0005】
着色顔料の使用は、毛髪および/または皮膚に対して短期間の色変化をもたらすことが知られている。着色顔料は一般的には不溶性のカラーリング物質であると理解されている。これは、小粒子の形態で染料配合物中に未溶解の状態で存在し、毛髪繊維および/または皮膚表面の外面に堆積されているにすぎない。したがって、これは通常、界面活性剤を含有する洗浄剤で数回洗い流すことによって、残存することなく除去できる。このタイプの種々の製品が、ヘアマスカラという名称で市場において入手可能である。
【0006】
ユーザが特に長持ちする染色を望む場合、これまでは酸化的染料の使用が唯一の選択肢であった。しかし、数多くの最適化の試みにもかかわらず、酸化的毛染めにおける不快なアンモニア臭やアミン臭は完全には回避することができない。また、酸化的染料の使用に依然として伴う毛髪へのダメージもユーザの毛髪に対してマイナス効果を有する。
【0007】
欧州特許第2168633B1号明細書では、顔料を用いた長持ちする髪の着色をもたらすための課題に対処している。この文書には、顔料、有機ケイ素化合物、疎水性ポリマーおよび溶剤の組み合わせを毛髪上で使用する際、洗髪に対して特に耐久性のある着色をもたらすことが可能であることが教示されている。
【0008】
欧州特許第2168633B1号明細書で使用されている有機ケイ素化合物は、アルコキシシランのクラスの反応性化合物である。これらのアルコキシシランは、水の存在下で高速で加水分解し、それぞれの場合で使用されるアルコキシシランおよび水の量に応じて、加水分解生成物および/または縮合生成物を形成する。この反応に使用される水の量が加水分解または縮合生成物の特性に及ぼす影響は、例えば国際公開第2013068979A2号パンフレットに記載されている。
【0009】
これらの加水分解または縮合生成物がケラチン性物質に塗布されると、ケラチン性物質を完全に包囲し、このようにしてケラチン性物質の特性に強く影響する、皮膜またはコーティングがケラチン性物質上に形成される。適用が可能な範囲には、ケラチン繊維の永続的なスタイリングまたは永続的な形状変更が含まれる。この方法では、ケラチン繊維を機械的に所望の形状に成形した後、上述のコーティングを形成することにより、この形状に固定する。別の特に好適な用途は、ケラチン物質の着色である。この用途では、コーティングまたは皮膜は、着色化合物、例えば顔料の存在下で生成される。顔料によって着色された皮膜は、ケラチン物質やケラチン繊維に残存し、驚くべき耐洗い流し性着色をもたらす。
【0010】
アルコキシシラン系の染色原理の大きな利点は、このクラスの化合物の高い反応性が非常に速いコーティングを可能にすることである。これは、わずか数分の非常に短い適用期間後に極めて良好な着色結果が達成され得ることを意味する。しかしながら、これらの利点に加えて、アルコキシシランの高い反応性にはいくつかの欠点もある。したがって、湿度および/または温度の変化等の製造および適用条件のわずかな変化でさえ、製品性能の急激な変動をもたらす可能性がある。最も重要なことに、本発明に至る研究は、アルコキシシランが、ケラチン処理組成物の製造および保管中に遭遇する条件に対して極めて感受性であることを示している。
【0011】
これらの製造条件がそれらの最適な値の範囲からわずかに逸脱するだけでも、製品性能の部分的または更には完全な損失につながる可能性がある。これに関連して、保管中の一般的な条件はまた、アルコキシシラン含有着色剤の染色性能に非常に強い影響を及ぼし得ることも見出された。
【0012】
水と接触すると、アルコキシシランは複雑な加水分解および縮合反応を受け、これは互いに平衡状態にある単量体化合物、二量体化合物、およびオリゴマー化合物の混合物をもたらし得る。アルコキシシランがいくつかの加水分解性アルコキシ基を含有する化合物である場合、各アルコキシシランはまた、いくつかの縮合反応を受ける場合がある。アルコキシシラン分子あたりの縮合の数に応じて、直鎖状縮合物の形成並びに架橋された三次元ネットワークの形成が可能である。
【0013】
これらの縮合で生じる3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシランの反応機構および反応平衡は、例えばJournal of Organometallic Chemistry 625(2001),208-216において研究されている。様々な技術的適用試験により、ケラチン処理剤の性能は、どの架橋度のオリゴマーがケラチン処理剤に使用されるかに大きく依存し得ることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第2168633B1号明細書
【特許文献2】国際公開第2013068979A2号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Journal of Organometallic Chemistry 625(2001),208-216
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本出願の課題は、最適な混合物および組成で、シランオリゴマーを含有するまたはシラン縮合物を含有する、ケラチン性物質の処理のための組成物を見出すことであった。目的は、最適な適用特性を有する組成物を得ることができるように、標的化された様式で剤を調製するために使用されるアルコキシシランを加水分解および縮合することであった。特に、この方法によって調製された剤は、改善された染色性能を有するはずであり、すなわち、染色プロセスで使用される場合、より高い色強度および改善された堅牢度特性、特に改善された洗濯堅牢度および改善された摩擦堅牢度を有する染色が得られるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、式(I)の単量体シラン(a)、式(II)および(II)の構造単位を有する二量体または直鎖状のシラン縮合物(b)および(c)、並びに式(IV)の構造単位を有する架橋シラン縮合物(d)の混合物を含有する組成物を、ケラチン性物質の処理に使用すれば、この課題を良好に解決できることがここで見出された。
【0018】
本発明の第1の目的は、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物であって、以下:
(a)少なくとも1つの式(I):
【化1】
[式中、
R1、R1’、R1’’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表し、
R2は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
のシラン、および
(b)少なくとも1つの式(II):
【化2】
[式中、
R3、R3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表し、
R4は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン、および
(c)少なくとも1つの式(III):
【化3】
[式中、
R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表し、
R6は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン、および
(d)少なくとも1つの式(IV):
【化4】
[式中、
R7は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン
を含む、化粧品組成物である。
【発明の効果】
【0019】
上記組成物を含有するヘアトリートメント組成物は、染色プロセスで使用されると、非常に良好な摩擦堅牢度および洗浄堅牢度を有する非常に強く均一な着色をもたらすことが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔ケラチン性物質を処理するための剤〕
ケラチン性物質として、毛髪、皮膚、爪(例えば、指の爪および/または足指の爪)が挙げられる。また、ウール、毛皮および羽毛もケラチン性物質の定義に含まれる。
【0021】
好ましくは、ケラチン性物質は、人毛、人間の皮膚ならびに人間の爪、特に指の爪および足指の爪であると理解されたい。ケラチン性物質は人毛であると理解されたい。
【0022】
ケラチン性物質を処理するための剤は、例えばケラチン性物質を着色するための剤、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を再成形もしくは成形するための剤、またはケラチン性物質をコンディショニングもしくはケアするための剤を意味すると理解される。本発明による化粧品組成物は、ケラチン性物質の着色、特に好ましくは人毛である、ケラチン性繊維の染色に特に良好な適性を示す。
【0023】
「着色剤」という用語は、本発明の文脈において、サーモクロミック染料およびフォトクロミック染料、顔料、雲母、直接染料および/または酸化染料などの着色化合物の使用によって引き起こされる、ケラチン物質の着色、毛髪の着色を示すために使用される。この着色方法において、該着色化合物は、ケラチン物質の表面上の特に均質で平滑な皮膜中に堆積されるか、またはケラチン繊維内に拡散する。皮膜は、有機ケイ素化合物のオリゴマー化または重合によって、ならびに着色付与化合物と有機ケイ素化合物と、場合により皮膜形成性親水性ポリマーなどの他の成分との相互作用によって、インサイチュで形成される。
【0024】
〔式(I)のシラン(a)〕
本発明による組成物の特徴的な特徴は、式(I):
【化5】
[式中、
R1、R1’、R1’’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表し、
R2は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の少なくとも1つのシラン(a)の、その含分である。
【0025】
式(I)のシランは単量体シランである。基R1、R1’およびR1’’の少なくとも1つがC~Cアルキル基を表す場合、これらの化合物はC~Cアルコキシシランと呼ぶこともできる。基R1、R1’およびR1’’が水素を表すシランは、シラノールと呼ぶこともできる。
【0026】
式(I)のC~Cアルコキシシランはそれぞれ、水の存在下で加水分解反応を受ける高反応性化合物である。この加水分解反応は発熱性であり、シラン(I)が水と出会うと開始する。反応生成物は、少なくとも対応する基R1、R1’および/またはが水素原子を表す対応するヒドロキシシランである。ヒドロキシシランは、代替的にシラノールと呼ばれ得る。
【0027】
有機C~Cアルコキシシランは、有機非ポリマー性ケイ素化合物である。
【0028】
有機シリコン化合物とも呼ばれる有機ケイ素化合物は、直接ケイ素-炭素結合(Si-C)を有するか、または炭素が酸素、窒素若しくは硫黄原子を介してケイ素原子に結合している化合物である。
【0029】
IUPAC規則によれば、シラン化合物という用語は、ケイ素骨格および水素に基づく。有機シランでは、水素原子は、(置換)アルキル基および/またはアルコキシ基等の有機基によって完全にまたは部分的に置き換えられる。本発明のC~Cアルコキシシランの特徴的な特徴は、少なくとも1つのC~Cアルコキシ基がケイ素原子に直接結合していることである。
【0030】
式(I)の化合物中の置換基R1、R1’、R1’’およびR2を例として以下に説明する:
~Cアルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチルおよびt-ブチル、n-ペンチルおよびn-ヘキシルの基である。プロピル、エチルおよびメチルが好ましいアルキル基である。
~Cアルキル基の例は、アルキル基に加えて、n-ヘキシル基およびn-オクチル基である。
アミノ-C~Cアルキル基に関するR2の例は、アミノメチル基、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、4-アミノブチル基、5-アミノペンチル基、6-アミノヘキシル基である。3-アミノプロピル基が特に好ましい。
【0031】
式(I)のシラン中のR1基は、水素原子またはC~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、基R1は、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0032】
式(I)のシランにおいて、基R2は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、基R2は、メチル基、エチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基および3-アミノプロピル基を表す。
【0033】
本発明による組成物が、以下からなる群から選択される少なくとも1つの式(I)のシラン(a)を含有する場合、特に良好な特性を有するケラチン処理剤を調製することができた:
・(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン
【化6】
・(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン
【化7】
・(3-アミノプロピル)シラントリオール
【化8】
・(2-アミノエチル)トリエトキシシラン
【化9】
・(2-アミノエチル)トリメトキシシラン
【化10】
・(2-アミノエチル)シラントリオール
【化11】
・メチルトリメトキシシラン
【化12】
・メチルトリエトキシシラン
【化13】
・メチルシラントリオール
【化14】
・エチルトリメトキシシラン
【化15】
・エチルトリエトキシシラン
【化16】
・エチルシラントリオール
【化17】
・n-プロピルトリメトキシシラン(プロピルトリメトキシシランとしても既知である)
【化18】
・n-プロピルトリエトキシシラン(プロピルトリエトキシシランとしても既知である)
【化19】
・N-プロピルシラントリオール(プロピルシラントリオールとしても既知である)
【化20】
・n-ヘキシルトリメトキシシラン(ヘキシルトリメトキシシランとしても既知である)
【化21】
・n-ヘキシルトリエトキシシラン(ヘキシルトリエトキシシランとしても既知である)
【化22】
・n-ヘキシルシラントリオール(ヘキシルシラントリオールとしても既知である)
【化23】
・n-オクチルトリメトキシシラン(オクチルトリメトキシシランとしても既知である)
【化24】
・n-オクチルトリエトキシシラン(オクチルトリエトキシシランとしても既知である)
【化25】
・n-オクチルシラントリオール(オクチルシラントリオールとしても既知である)
【化26】
・n-ドデシルトリメトキシシラン(ドデシルトリメトキシシランとしても既知である)および/または
【化27】
・n-ドデシルトリエトキシシラン(ドデシルトリエトキシシランとしても既知である)
【化28】
・n-ドデシルシラントリオール(ドデシルシラントリオールとしても既知である)
【化29】
【0034】
式(I)の非常に特殊なシランの存在は、良好な塗布特性を達成することに関して特に有利であることが証明されている。本発明による組成物を着色剤として使用するとき、組成物が少なくとも1つの式(Ia):
【化30】
[式中、
R1、R1’、R1’’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
のシラン(a)を含有した場合には、特に強く着色されたケラチン性物質を得ることができた。
【0035】
非常に特に好ましい実施形態では、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(Ia):
【化31】
[式中、
R1、R1’、R1’’は、互いに独立して、水素原子またはC1~C8アルキル基を表す]
のシラン(a)を含むことを特徴とする。
【0036】
R1、R1’、R1’’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、R1、R1’およびR1’’は、独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0037】
本発明による組成物を染色組成物に使用したとき、該組成物が少なくとも1つの式(Ib):
【化32】
[式中、
R1、R1’、R1’’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
のシラン(a)を含有した場合には、特に強く着色されたケラチン性物質を得ることができた。
【0038】
非常に特に好ましい実施形態に関連して、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(Ib):
【化33】
[式中、
R1、R1’、R1’’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]のシラン(a)を含むことを特徴とする。
【0039】
R1、R1’、R1’’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、R1、R1’およびR1’’は、独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0040】
少なくとも1つの式(Ia)のシランと並んで1つの式(Ib)のシランを含有する組成物で、最良の塗布特性が観察された。
【0041】
明らかに非常に特に好ましい実施形態では、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(Ia)のシラン(a)および少なくとも1つの式(Ib)のシラン:
【化34】
[式中、
式(Ia)中の基R1、R1’、R1’’は、式(Ib)中の基R1、R1’、R1’’とは無関係に選択することができ、互いに独立して水素原子またはC~Cアルキル基、特に好ましくは水素原子、メチル基、またはエチル基を表す]
を含むことを特徴とする。
【0042】
ケラチン性繊維を処理するための本発明による非常に特に好ましい組成物は、例えば、式(I)の1つ以上のC~Cアルコキシシランを水と混合することによって調製することができる。
【0043】
一実施形態では、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランをメチルトリメトキシシランおよび水と混合することによって得られる生成物を含む、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物が特に好ましい。
【0044】
一実施形態では、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランをエチルトリエトキシシランおよび水と混合することによって得られる生成物を含む、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物が非常に特に好ましい。
【0045】
一実施形態では、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランをメチルトリエトキシシランおよび水と混合することによって得られる生成物を含む、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物が非常に特に好ましい。
【0046】
一実施形態では、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランをプロピルトリエトキシシランおよび水と混合することによって得られる生成物を含む、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物が非常に特に好ましい。
【0047】
一実施形態では、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランをヘキシルトリエトキシシランおよび水と混合することによって得られる生成物を含む、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物が非常に特に好ましい。
【0048】
一実施形態では、(3-アミノプロピル)トリメトキシシランをヘキシルトリエトキシシランおよび水と混合することによって得られる生成物を含む、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物が非常に特に好ましい。
【0049】
一実施形態では、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランをオクチルトリエトキシシランおよび水と混合することによって得られる生成物を含む、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物が非常に特に好ましい。
【0050】
一実施形態では、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランをオクチルトリメトキシシランおよび水と混合することによって得られる生成物を含む、ケラチン性物質、特にケラチン性繊維を処理するための化粧品組成物が非常に特に好ましい。
【0051】
構造基のシランはそれぞれ加水分解中に水と反応し、その後の縮合中に互いに反応することができることから、組成物中で起こる反応は非常に複雑であり、単量体およびオリゴマーシラン縮合物の混合物が混合によって形成される。これらの混合物では、以下の反応が開始されると考えられる:
【0052】
式(I)のC~Cアルコキシシランの水による加水分解(例として3-アミノプロピルトリエトキシシランを使用する反応スキーム):
【化35】
【0053】
使用される水の量に応じて、加水分解反応はまた、使用されるC~Cアルコキシシランあたり数回起こり得る:
【化36】
または
【化37】
【0054】
式(I)のC~Cアルコキシシランの水による加水分解(一例としてメチルトリメトキシシランを使用する反応スキーム):
【化38】
【0055】
使用される水の量に応じて、加水分解反応はまた、使用されるC~Cアルコキシシランあたり数回起こり得る:
【化39】
または
【化40】
【0056】
式(I)のシランは、上記のC~Cアルコキシシランまたはそれらの加水分解生成物である。
【0057】
一定の割合のこれらのシラン(I)がそれらの単量体形態で組成物中に残存し、より大きな割合のシランが更に反応してオリゴマー縮合物を形成することが特に好ましいことが分かった。
【0058】
組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、0.3~12.0モル%、好ましくは0.6~10.0モル%、更に好ましくは0.8~7.0モル%、非常に特に好ましくは1.4~6.0モル%の総モル割合で1つ以上の式(I)のシラン(a)を含有する本発明による組成物を用いると、非常に特に良好で強い着色結果が得られた。
【0059】
更なる実施形態に関連して、組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、0.3~12.0モル%、好ましくは0.6~10.0モル%、より好ましくは0.8~7.0モル%、最も好ましくは1.4~6.0モル%の総モル割合の(a)1つ以上の式(I)のシランを含む組成物が、非常に特に好ましい。
【0060】
本発明による組成物が特定のモル比で式(Ia)のシランを含有する場合が更に特に好ましい。組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、0.2~7.0モル%、好ましくは0.4~6.0モル%、更に好ましくは0.5~5.0モル%、非常に特に好ましくは1.0~4.0モル%の総モル割合で(a)1つ以上の式(Ia)のシランを含有する本発明による組成物を用いると、非常に特に良好で強い着色結果が得られた。
【0061】
更なる実施形態に関連して、組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、0.2~7.0モル%、好ましくは0.4~6.0モル%、更に好ましくは0.5~5.0モル%、非常に特に好ましくは1.0~4.0モル%の総モル割合で(a)1つ以上の式(Ia)のシランを含む組成物が非常に特に好ましい。
【0062】
本発明による組成物が特定のモル比で式(Ib)のシランを含有する場合が更に特に好ましい。組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、0.1~5.0モル%、好ましくは0.2~4.0モル%、更に好ましくは0.3~2.0モル%、非常に特に好ましくは0.4~2.0モル%の総モル割合で(a)1つ以上の式(Ib)のシランを含有する本発明による組成物を用いると、非常に特に良好で強い着色結果が得られた。
【0063】
更なる実施形態に関連して、組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、0.1~5.0モル%、好ましくは0.2~4.0モル%、更に好ましくは0.3~2.0モル%、非常に特に好ましくは0.4~2.0モル%の総モル割合で(a)1つ以上の式(Ib)のシランを含む組成物が非常に特に好ましい。
【0064】
本発明による組成物に含有される式(I)のシラン(a)の量の決定は、特に好ましくは、定量的29ケイ素NMR分光法によって行われる。
シラン(b)、(c)および(d)の含有量も同様に決定することができる。測定には、例えば、以下の手順を用いることができる。
【0065】
〔定量29Si NMR分光法〕
-NMR試料管の使用
-装置:Agilent、600MHz
29Si-NMRスペクトルを、各組成物からクロロホルム中で記録した。測定を、製造日、7日後および14日後に行った。
-標準:TMS(テトラメチルシラン)
-緩和促進剤:クロム(III)アセチルアセトネート
緩和促進剤を使用することにより、個々のシグナルの積分は互いに比較可能となった。全ての積分の合計を100モル%に等しく設定した。
定量的決定のために、各個々のシグナルの面積を全ての積分の総和に関連させた。
スペクトルの測定を、Journal of Organometallic Chemistry 625(2001),208-216に記載の手順に従って行った。
【0066】
〔少なくとも1つの式(II)の構造単位を含むシラン(b)〕
本発明による組成物の更なる特徴的な性質は、少なくとも1つの式(II):
【化41】
[式中、
R3、R3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表し、
R4は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(b)の、その含分である。
【0067】
シラン(b)は、少なくとも1つの式(II)の構造単位を有する。式(II)の構造単位は、式(I)の単量体シランの更なる縮合によって得られる単純に架橋されたシランである。この縮合において、単量体シラン(すなわち、基R3およびR4を有する式(II)の構造サブユニット)は、水またはアルコールの除去を伴って少なくとも1つの他のシランと反応する。
【0068】
式(II)の構造単位では、R3、R3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、基R3およびR3’は、互いに独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0069】
式(II)の構造単位では、基R4は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、基R4は、メチル基、エチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基または3-アミノプロピル基を表す。
【0070】
ケイ素原子から始まり、アスタリスクでマークされている式(II)の構造単位中の結合は、このケイ素原子の更なる遊離結合価を表す、すなわち、このSi原子は、好ましくは更なる炭素または酸素原子に向かう3つの更なる結合を有する。
【0071】
したがって、式(II):
【化42】
の構造単位は、酸素原子を介した第2のケイ素原子への更なる結合を有する単架橋されたケイ素原子を含むという事実を特徴とする。
【0072】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの式(II)の構造単位を含み得るシラン(b)は、例えば、以下の反応によって形成することができる二量体化合物である:
【0073】
(3-アミノプロピル)トリエトキシシランとメチルトリメトキシシランの混合物を使用して示される可能な縮合反応:
【化43】
および/または
【化44】
および/または
【化45】
および/または
【化46】
および/または
【化47】
および/または
【化48】
および/または
【化49】
【0074】
少なくとも1つの式(II)の構造単位を有するシラン(b)が上記の二量体である場合、シラン(b)は(c)群および(d)群のシランと構造的に異なる。
【0075】
先に描かれる二量体シラン(b)の各々は、2つの式(II)の構造単位を含む。
【0076】
別の特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの式(II)の構造単位を含むシラン(b)はまた、式(II)の構造単位が直鎖オリゴマーの末端基を表す直鎖シランオリゴマーであってもよい。
【0077】
(3-アミノプロピル)トリエトキシシランとメチルトリメトキシシランの混合物を使用して示される可能な縮合反応:
【化50】
および/または
【化51】
および/または
【化52】
および/または
【化53】
および/または
【化54】
【0078】
先に描かれる三量体シラン(b)の各々は、2つの式(II)の構造単位を含む。
【0079】
少なくとも1つの式(II)の構造単位を含有する非常に特殊なシラン(b)の存在は、良好な塗布特性を達成する点で特に有利であることが示されている。本発明による組成物を着色剤として使用したとき、組成物が少なくとも1つの式(IIa):
【化55】
[式中、
R3、R3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(b)を含有した場合には、特に強く着色されたケラチン性物質を得ることができた。
【0080】
非常に特に好ましい実施形態に関連して、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(IIa):
【化56】
[式中、
R3、R3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(b)を含むことを特徴とする。
【0081】
基R3およびR3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、R3およびR3’は独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0082】
本発明による組成物を着色剤として使用したとき、組成物が少なくとも1つの式(IIb):
【化57】
[式中、
R3、R3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(b)を含有した場合にも、特に強く着色されたケラチン性物質を得ることができた。
【0083】
非常に特に好ましい実施形態に関連して、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(IIb):
【化58】
[式中、
R3、R3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(b)を含むことを特徴とする。
【0084】
R3およびR3’は、独立して、水素原子またはC~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、R3およびR3’は独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0085】
少なくとも1つの式(IIa)の構造単位を有する少なくとも1つのシラン(b)と少なくとも1つの式(IIb)の構造単位を有する少なくとも1つのシラン(b)の両方を含有する組成物において、最良の塗布特性が観察された。
【0086】
明らかに非常に特に好ましい実施形態では、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(Ia)のシラン(a)および少なくとも1つの式(Ib)のシラン:
【化59】
[式中、
式(IIa)中の基R3、R3’は、式(IIb)中の基R3、R3’とは無関係に選択することができ、互いに独立して水素原子またはC~Cアルキル基、特に好ましくは水素原子、メチル基、またはエチル基を表す]
を含むことを特徴とする。
【0087】
組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、12.5~42.0モル%、好ましくは14.5~38.0モル%、更に好ましくは16.0~34.0モル%、非常に特に好ましくは19.5~30.0モル%の総モル割合の式(II)の構造単位を有する1つ以上のシラン(b)を含有する本発明による組成物を用いると、非常に特に良好で強い着色結果が得られた。
【0088】
更なる実施形態の範囲内では、組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、12.5~42.0モル%、好ましくは14.5~38.0モル%、更に好ましくは16.0~34.0モル%、非常に特に好ましくは19.5~30.0モル%の総モル含有量の式(II)の構造単位を有する1つ以上のシラン(b)を含むA組成物が極めて特に好ましい。
【0089】
本発明による組成物が特定のモル比で少なくとも1つの式(IIa)の構造単位を有するシランを含有する場合が更に特に好ましい。組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、12.0~30.0モル%、好ましくは14.0~28.0モル%、更に好ましくは14.0~26.0モル%、非常に特に好ましくは16.0~24.0モル%の総モル割合の式(IIa)の構造単位を有する1つ以上のシラン(b)を含有する本発明による組成物を用いると、非常に特に良好で強い着色結果が得られた。
【0090】
更なる実施形態の範囲内では、組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、12.0~30.0モル%、好ましくは14.0~28.0モル%、更に好ましくは14.0~26.0モル%、非常に特に好ましくは16.0~24.0モル%の総モル含有量の式(IIa)の構造単位を有する1つ以上のシラン(b)を含むA組成物が極めて特に好ましい。
【0091】
本発明による組成物が特定のモル比で少なくとも1つの式(IIb)の構造単位を有するシランを含有する場合が更に特に好ましい。組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、0.5~12.0モル%、好ましくは1.5~10.0モル%、更に好ましくは2.5~8.0モル%、非常に特に好ましくは3.5~6.0モル%の総モル含有量の式(IIb)の構造単位を有する1つ以上のシラン(b)を含有する本発明による組成物を用いると、非常に特に良好で強い着色結果が得られた。
【0092】
更なる実施形態の範囲内では、組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、0.5~12.0モル%、好ましくは1.5~10.0モル%、更に好ましくは2.5~8.0モル%、非常に特に好ましくは3.5~6.0モル%の総モル含有量の式(IIb)の構造単位を有する1つ以上のシラン(b)を含むA組成物が極めて特に好ましい。
【0093】
本発明による組成物に含有される式(II)の構造単位を有するシラン(b)のモル量は、上記のように、非常に好ましくは定量的29ケイ素NMR分光法によって決定される。
【0094】
〔少なくとも1つの式(III)の構造単位を含むシラン(c)〕
本発明による組成物の更なる特徴的な特徴は、少なくとも1つの式(III):
【化60】
[式中、
R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表し、
R6は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(c)の、その含分である。
【0095】
シラン(c)は、少なくとも1つの式(III)の構造単位を有する。式(III)の構造単位は、式(II)の二量体シランの更なる縮合によって得られる二架橋型シランである。この縮合において、二量体シランは、少なくとも1つの他のシランと反応し、水またはアルコールを分離する。
【0096】
式(III)で表される構造単位では、R5は水素原子またはC~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、基R5は、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0097】
式(III)の構造単位では、基R6は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、基R6は、メチル基、エチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基および3-アミノプロピル基を表す。
【0098】
2個の末端ケイ素原子から始まり、アスタリスクでマークされている式(III)の構造単位中の結合は、これらのケイ素原子の更なる遊離結合価を表す、すなわち、これらのSi原子は、好ましくは更なる炭素または酸素原子に向かう3つの更なる結合を有する。
【0099】
したがって、式(III):
【化61】
の構造単位は、2個の酸素原子を介した2個のケイ素原子への2つの更なる結合を有する二架橋型ケイ素原子を含むという事実を特徴とする。
【0100】
少なくとも1つの式(III)の構造単位を有するシラン(c)は、少なくとも三量体化合物であり、すなわち、シラン(c)は、少なくとも3つの単量体C~Cアルコキシシランの縮合によって得られた。
【0101】
特に好ましくは、シラン(c)は直鎖オリゴマーまたは環状オリゴマーであり、オリゴマーは、例えば、式(III)の3~20個の構造単位を含むことができる。
【0102】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの式(III)の構造単位を含み得るシラン(c)は、例えば、以下の反応によって形成することができる直鎖化合物である:
【0103】
(3-アミノプロピル)トリエトキシシランとメチルトリメトキシシランの混合物を使用して示される可能な縮合反応:
【0104】
直鎖三量体シラン縮合物では、式(III)の構造単位は、直鎖三量体の中間部を表す。以下の三量体のそれぞれは、式(III)の構造単位を含む。
【0105】
(3-アミノプロピル)トリエトキシシランとメチルトリメトキシシランの混合物を使用して示される三量体への可能な縮合反応:
【化62】
および/または
【化63】
および/または
【化64】
および/または
【化65】
および/または
【化66】
【0106】
4個のシラン単位を有する直鎖シラン縮合物の場合、式(III)の構造単位は、直鎖オリゴマーの中間部分を表す。4個のシラン単位を有する以下のシラン縮合物のそれぞれは、2個の式(III)の構造単位を含む。
【0107】
混合物(3-アミノプロピル)トリエトキシシランおよびメチルトリメトキシシランを使用して示される4個のシラン単位を有する可能なシラン縮合物。縮合反応は、既に記載した反応と同様に起こる-可能性のある生成物のみを例としてここに示す:
【化67】
および/または
【化68】
および/または
【化69】
および/または
【化70】
【0108】
更に好ましい実施形態では、少なくとも1つの式(III)の構造単位を含み得るシラン(c)は、環状オリゴマー化合物であってもよい。
【0109】
環状シラン縮合物は式(III)の構造単位からなり、それによって環の大きさが式(III)の構造単位の数を決定する。4個のシラン単位を有する以下のシラン縮合物のそれぞれは、4個の式(III)の構造単位を含む。
【0110】
混合物(3-アミノプロピル)トリエトキシシランおよびメチルトリメトキシシランに基づいて示される、4個のシラン単位を有する環状シラン縮合物に対する可能な縮合反応:
【化71】
および/または
【化72】
【0111】
少なくとも1つの式(III)の構造単位を含有する非常に特殊なシラン(c)の存在は、良好な塗布特性を達成する点で特に有利であることが示されている。本発明による組成物を着色剤として使用したとき、組成物が少なくとも1つの式(IIIa):
【化73】
[式中、
R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(c)を含有した場合には、特に強く着色されたケラチン性物質を得ることができた。
【0112】
非常に特に好ましい実施形態に関連して、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(IIIa):
【化74】
[式中、
R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(c)を含むことを特徴とする。
【0113】
基R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、R5は、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0114】
本発明による組成物を着色剤として使用したとき、組成物が少なくとも1つの式(IIIb):
【化75】
[式中、
R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(c)を含有した場合にも、特に強く着色されたケラチン性物質を得ることができた。
【0115】
非常に特に好ましい実施形態に関連して、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(IIb):
【化76】
[式中、
R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表す]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(b)を含むことを特徴とする。
【0116】
基R5は、水素原子またはC~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、R5は、水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0117】
少なくとも1つの式(IIIa)の構造単位を有する少なくとも1つのシラン(c)と、少なくとも1つの式(IIIb)の構造単位を有する少なくとも1つのシラン(c)の両方を含有する組成物について、最良の塗布特性が観察された。
【0118】
明らかに非常に特に好ましい実施形態では、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(IIIa)のシラン(a)および少なくとも1つの式(IIIb)のシラン:
【化77】
[式中、
式(IIIa)中の基R5は、式(IIIb)中の基R5とは無関係に選択することができ、独立して水素原子またはC~Cアルキル基、特に好ましくは水素原子、メチル基、またはエチル基を表す]
を含むことを特徴とする。
【0119】
組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、22.0~60.0モル%、好ましくは26.0~56.0モル%、更に好ましくは30.0~42.0モル%、非常に特に好ましくは34.0~48.0モル%の総モル割合の式(III)の構造単位を有する1つ以上のシラン(c)を含有する本発明による組成物を用いると、非常に特に良好で強い着色結果が得られた。
【0120】
更なる実施形態の範囲内では、組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、22.0~60.0モル%、好ましくは26.0~56.0モル%、更に好ましくは30.0~42.0モル%、非常に特に好ましくは34.0~48.0モル%の総モル含有量の式(III)の構造単位を有する1つ以上のシラン(c)を含むA組成物が極めて特に好ましい。
【0121】
本発明による組成物が特定のモル比で少なくとも1つの式(IIIa)の構造単位を有するシランを含有する場合が更に特に好ましい。組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、16.0~38.0モル%、好ましくは18.0~36.0モル%、更に好ましくは20.0~34.0モル%、非常に特に好ましくは22.0~32.0モル%の総モル割合の式(IIIa)の構造単位を有する1つ以上のシラン(c)を含有する本発明による組成物を用いると、非常に特に良好で強い着色結果が得られた。
【0122】
更なる実施形態の範囲内では、組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、16.0~38.0モル%、好ましくは18.0~36.0モル%、更に好ましくは20.0~34.0モル%、非常に特に好ましくは22.0~32.0モル%の総モル含有量の式(IIIa)の構造単位を有する1つ以上のシラン(c)を含むA組成物が極めて特に好ましい。
【0123】
本発明による組成物が特定のモル比で少なくとも1つの式(IIIb)の構造単位を有するシランを含有する場合が更に特に好ましい。組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、6.0~22.0モル%、好ましくは8.0~20.0モル%、更に好ましくは10.0~18.0モル%、非常に特に好ましくは12.0~16.0モル%の総モル割合の式(IIIb)の構造単位の1つ以上のシラン(c)を含有する本発明による組成物を用いると、非常に特に良好で強い着色結果が得られた。
【0124】
更なる実施形態の範囲内では、組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、6.0~22.0モル%、好ましくは8.0~20.0モル%、更に好ましくは10.0~18.0モル%、非常に特に好ましくは12.0~16.0モル%の総モル割合の式(IIIb)の構造単位の1つ以上のシラン(c)を含むA組成物が極めて特に好ましい。
【0125】
本発明による組成物に含有される式(III)の構造単位を有するシラン(c)のモル量は、上記のように、非常に好ましくは定量的29ケイ素NMR分光法によって決定される。
【0126】
〔少なくとも1つの式(IV)の構造単位を含むシラン(d)〕
本発明による組成物の更なる特徴的な特徴は、少なくとも1つの式(IV):
【化78】
[式中、
R7は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基である]
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(d)の、その含分である。
【0127】
シラン(d)は、少なくとも1つの式(IV)の構造単位を有する。式(IV)の構造単位は、例えば単量体C~Cアルコキシシランの完全な架橋によって得ることができる三架橋型シランである。
【0128】
換言すれば、式(IV)の構造単位は、任意に、事前の加水分解後に、式(I)のシランの3個のC1~C6アルコキシ基全てを更なるケイ素原子と縮合させ、水またはアルコールを除去することによって形成され、その結果、分岐した網状構造が形成される。基R7を担持する中心ケイ素原子は、このようにして3個の酸素原子を介して3個の他のケイ素原子に結合される。
【0129】
式(IV)の構造単位では、基R7は、C~Cアルキル基またはアミノ-C~Cアルキル基を表す。非常に好ましくは、基R7は、メチル基、エチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基および3-アミノプロピル基を表す。
【0130】
3個の末端ケイ素原子から始まり、アスタリスクでマークされている式(IV)の構造単位中の結合は、これらのケイ素原子の更なる遊離結合価を表す、すなわち、これらのSi原子はそれぞれ、好ましくは更なる炭素または酸素原子に向かう3つの更なる結合を有する。
【0131】
したがって、式(IV):
【化79】
の構造単位は、3個の酸素原子を介して3個のケイ素原子への3つの更なる結合を有する三架橋型ケイ素原子を含むという事実を特徴とする。
【0132】
少なくとも1つの式(IV)の構造単位を有するシラン(d)は、少なくとも4個のSi原子を有するオリゴマーであり、すなわち、シラン(d)は、少なくとも4個の単量体C~Cアルコキシシランの縮合によって得られた。
【0133】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの式(IV)の構造単位を含み得るシラン(d)は、例えば、後続の反応によって形成することができる架橋オリゴマー化合物である:
【0134】
(3-アミノプロピル)トリエトキシシランとメチルトリメトキシシランの混合物から出発する可能性のある縮合反応は、例えば、以下のシラン(d)をもたらすことができる:
【化80】
および/または
【化81】
および/または
【化82】
【0135】
(3-アミノプロピル)トリエトキシシランとメチルトリメトキシシランの混合物から出発する可能性のある縮合反応は、例えば、以下のシラン(d)をもたらすことができる:
【0136】
上記の反応と同様に、4個を超えるシラン単位を有する高級オリゴマーへの縮合も可能である。
【0137】
少なくとも1つの式(IV)の構造単位を含有する非常に特殊なシラン(d)の存在は、良好な塗布特性を達成する点で特に有利であることが示されている。本発明による組成物を着色剤として使用したとき、組成物が少なくとも1つの式(IVa):
【化83】
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(d)を含有した場合には、特に強く着色されたケラチン性物質を得ることができた。
【0138】
非常に特に好ましい実施形態に関連して、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(IVa):
【化84】
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(d)を含むことを特徴とする:
【0139】
本発明による組成物を着色剤として使用したとき、組成物が少なくとも1つの式(IVb):
【化85】
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(c)を含有した場合にも、特に強く着色されたケラチン性物質を得ることができた。
【0140】
非常に特に好ましい実施形態に関連して、本発明による組成物は、少なくとも1つの式(IVb):
【化86】
の構造単位を含む少なくとも1つのシラン(d)を含有することを特徴とする。
【0141】
組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、18.0~34.0モル%、好ましくは20.0~32.0モル%、更に好ましくは22.0~30.0モル%、非常に特に好ましくは23.0~28.0モル%の総モル割合の式(IV)の構造単位の1つ以上のシラン(d)を含有する本発明による組成物を用いると、非常に特に良好で強い着色結果が得られた。
【0142】
更なる実施形態の範囲内では、組成物に使用される全ケイ素化合物の総モル量に基づいて、18.0~34.0モル%、好ましくは20.0~32.0モル%、更に好ましくは22.0~30.0モル%、非常に特に好ましくは23.0~28.0モル%の総モル含有量の式(IV)の構造単位を有する1つ以上のシラン(d)を含むA組成物が極めて特に好ましい。
【0143】
本発明による組成物に含有される式(III)の構造単位を有するシラン(c)のモル量は、上記のように、非常に好ましくは定量的29ケイ素NMR分光法によって決定される。
【0144】
〔シラン(a)、(b)、(c)および(d)を含有する組成物の調製〕
本発明による組成物は、単量体またはオリゴマーシラン(a)、(b)、(c)および(d)の混合物を含有する。
【0145】
これらの組成物の調製は、例えば、式(I)の単量体C~Cアルコキシシラン(a)を水と反応させることによって可能であり、選択された量のC~Cアルコキシシランおよび水は、シラン(a)、(b)、(c)および(d)が形成される割合の共決定因子である。
【0146】
有機C~Cアルコキシシランと水との反応を、種々の方法で行うことができる。1つの可能性は、反応容器または反応器内で所望の量の水を調製し、次いでC~Cアルコキシシラン(複数可)(a1)および(a2)を添加することである。別の実施形態では、適切な量の式(I)のC~Cアルコキシシランを最初に反応容器または反応器に導入し、次いで所望の量の水を添加する。
【0147】
水を、連続的に、部分的に、または総量として直接添加することができる。必要な温度制御を確実にするために、反応混合物は好ましくは冷却され、および/または添加される水の量および速度が調整される。所望の温度範囲を維持するために、必要量の水を式(I)のシランの混合物に連続的に滴下することが特に適切であることが分かった。使用されるシランの量に応じて、添加および反応は、2分~72時間の期間にわたって起こり得る。
【0148】
式(I)のC~Cアルコキシシランの高い反応性のため、加水分解されたまたは縮合されたシランの複合混合物は、それらが水と反応すると形成される。これらの混合物の正確な組成は、主に、(a)、(b)、(c)および(d9の混合物をもたらす反応においてそれぞれ式(I)のシラン(a)および水が使用されるモル量によって決定される。
【0149】
前述したように、本発明に至る研究は、本発明による組成物をケラチン性物質に塗布した場合、C~Cアルコキシシラン(a)、(b)、(c)および(d)が、好ましいものとしておよび最も好ましいものとして前述した互いに対するモル比で組成物中に存在する場合に、安定した耐性のあるコーティングを生成することができることを示した。
【0150】
さらに、シラン(a)~(d)の混合物は、本発明による組成物中に特定の範囲の量で存在することが非常に好ましい。組成物が、その総重量に基づいて、30.0~85.0重量%、好ましくは35.0~80.0重量%、より好ましくは40.0~75.0重量%、更により好ましくは45.0~70.0重量%、最も好ましくは50.0~65.0重量%の総量で1つ以上のシラン(a)~(d)を含有する場合、特に良好な結果が得られた。
【0151】
更なる実施形態に関連して、組成物の総重量に基づいて、30.0~85.0重量%、好ましくは35.0~80.0重量%、より好ましくは40.0~75.0重量%、更により好ましくは45.0~70.0重量%、非常に特に好ましくは50.0~65.0重量%の総量で1つ以上のシラン(a)~(d)を含有する本発明による組成物が極めて特に好ましい。
【0152】
式(I)の有機C~Cアルコキシシランと水との混合物の調製は、例えば、反応容器または反応器、好ましくは二重壁反応器、外部熱交換器を備えた反応器、管状反応器、薄膜蒸発器を備えた反応器、流下膜蒸発器を備えた反応器および/またはコンデンサが取り付けられた反応器内で行うことができる。
【0153】
より少量の調製物に非常に適した反応容器は、例えば、1リットル、3リットルまたは5リットルの容量を有する化学反応に一般的に使用されるガラスフラスコ、例えば、粉砕ジョイントを有する3リットルの一ツ口または多口フラスコである。
【0154】
反応器は、特定の反応を起こし、規定の条件下で制御することを可能にするように特別に設計および製造された限定された空間(入れ物、容器)である。
【0155】
より大きなアプローチでは、金属製の反応器で反応を行うことが有利であることが判明している。典型的な反応器は、例えば、10リットル、20リットル、または50リットルの容量を備えてもよい。生産現場用のより大きな反応器はまた、100リットル、500リットル、または1000リットルの充填量を含むことができる。
【0156】
二重壁反応器は、2つの反応器シェルまたは反応器壁を有し、2つの壁の間の領域を調整流体(tempering fluid)が循環する。これにより、温度を必要な値に特に良好に調整することができる。
【0157】
反応器、特に拡大された熱交換面を有する二重壁反応器の使用も特に適していることが証明されており、それによって熱交換を、内部設備を介して、または外部熱交換器を使用して行うことができる。
【0158】
〔組成物中のC~Cアルコールの含有量〕
前述のように、式(I)の反応性C~Cアルコキシシランを水と混合すると、ケイ素原子上に直接位置するC~Cアルコキシ基が加水分解され、対応するC~Cアルコールが放出される加水分解反応を開始する。
【0159】
加水分解中に形成される部分的または完全に加水分解されたシランはまた、種々の加水分解度のこれらのシランが互いに縮合する後続の反応を受けることができる反応性化合物である。
【0160】
先に示した反応スキームから分かるように、縮合反応は、C~Cアルコール(例えば、エタノールおよび/またはメタノール)または水のいずれかを順次放出し、C~Cアルコール/水の量は、上記反応の平衡が縮合物側にある程度に応じて放出される。
【0161】
次に、縮合反応の程度は、最初に添加される水の量によって部分的に決定される。好ましくは、水の量は、縮合が部分縮合であるような量であり、「部分縮合」または「部分縮合」は、この文脈において、提示されたシランの縮合可能な基の全てが互いに反応するわけではないことを意味し、その結果、得られた有機ケイ素化合物は、1分子あたり平均して少なくとも1個の加水分解性/縮合可能な基を依然として有する。
【0162】
縮合反応で放出されるC~Cアルコールおよび水の量は、様々な分離方法(例えば、蒸留)によって反応混合物から除去することができる。
【0163】
本発明による組成物をケラチン性物質に塗布する場合、安定した、密着した、均一なコーティングの生成は、所望の適用特性を達成するための基本的な前提条件である。特に着色剤化合物を適切に耐性のあるコーティングに組み込むことができる場合、強力で持続性の着色を得ることができる。この目的のためには、本発明による組成物中のC~Cアルコールの含有量を可能な限り低く保つことが不可欠であることが分かった。
【0164】
このため、本発明による組成物は、0.001~10.0重量%の総量で1つ以上のC~Cアルコールを含有する必要がある。
【0165】
本発明の目的のため、C~Cアルコールは、1~6個の炭素原子を含む1つ以上のヒドロキシ基を有するアルコールである。これらのアルコールは、直鎖または分枝鎖、飽和または一価若しくは多価不飽和であり得る。C~Cモノアルコールとは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノールおよび3-ヘキサノールからなる群からのアルコールを意味する。2個のヒドロキシル基を有するC~Cアルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオールおよび1,3-プロパンジオールが挙げられる。例えば、3つのヒドロキシル基を有するC~Cアルコールはグリセロールである。
【0166】
~Cアルコールの総含有量が10.0重量%である調製物では、ケラチン性物質に塗布した場合、十分に高い着色強度を有する染色を得ることができた。
【0167】
しかしながら、組成物の総重量に基づくC~Cアルコールの総含有量を、0.01~9.0重量%、好ましくは0.1~8.0重量%、より好ましくは0.5~7.0重量%、最も好ましくは0.5~4.0重量%の総量に制限することができた場合、更に良好な結果が得られた。
【0168】
更なる実施形態では、組成物の総重量に基づいて、0.01~9.0重量%、好ましくは0.1~8.0重量%、より好ましくは0.5~7.0重量%、最も好ましくは0.5~5.0重量%の総量の1つ以上のC~Cアルコールを含む組成物が非常に特に好ましい。
【0169】
本発明による組成物中のC~Cアルコールの含有量の決定は、様々な分析方法によって行うことができる。1つの可能性は、GC-MSによる測定である。質量分析カップリングを伴うガスクロマトグラフィーは、ガスクロマトグラフ(GC)と質量分析計(MS)との連結である。全体的な手順または機器の連結は、略してGC-MS、GC/MSまたはGCMSとも呼ばれる。
【0170】
~Cアルコールの含有量を決定するために、組成物の試料をガスクロマトグラフィーによって、例えば非極性カラムでの二重の決定で分析することができる。割り当てられた成分の同定は、ライブラリ比較スペクトル(例えば、NISTまたはWiley)を用いた質量分析によって行うことができる。平均値は、二重決定の各々から形成される。定量は、例えば、内部標準較正(例えば、メチルイソブチルケトン)によって行うことができる。
【0171】
既に記載したように、メトキシシランまたはエトキシシラン基を担持する式(I)のC~Cアルコキシシランが、本発明による方法において非常に好ましく使用される。これらは、メタノールおよびエタノールがそれぞれ加水分解および縮合の間に放出され、それらの沸点のために真空蒸留によって反応混合物から容易に除去することができるという利点を有する。
【0172】
更なる実施形態では、組成物の総重量に基づいて、0.01~9.0重量%、好ましくは0.1~8.0重量%、より好ましくは0.5~7.0重量%、非常に特に好ましくは0.5~4.0重量%のエタノールを含む組成物が非常に特に好ましい。
【0173】
上記のC~Cアルコールの最大量との適合は、例えば、反応混合物からC~Cアルコールを除去することによって達成され得る。蒸留によってC~Cアルコールを除去する特に好ましい方法。
【0174】
〔調製物中の含水量〕
先に示した反応スキームが示すように、含水量が高すぎると、反応平衡をシラン縮合物の側から単量体シランの側に戻すこともできる。この理論に限定されるものではないが、この文脈では、とりわけ、十分に高い量のオリゴマーシラン縮合物の存在が、ケラチン性物質上に均一で耐性のあるコーティングを達成するために不可欠であると仮定され、これもまた、十分に高い強度で染色結果を生成するための基本的な前提条件である。
【0175】
このため、本発明による組成物中の含水量を0.001~10.0重量%の値の水に制限することが本発明にとって不可欠である。
含水量が10.0重量%の調製物を用いると、ケラチン性物質に塗布した場合、十分に高い色強度を有する着色を得ることができた。
【0176】
しかしながら、組成物が、組成物の総重量に基づいて、0.01~9.0重量%、好ましくは0.1~7.0重量%、更に好ましくは0.2~5.0重量%、最も好ましくは0.5~3.0重量%の水を含有する場合、更に良好な結果が得られた。
【0177】
更なる実施形態では、組成物の総重量に基づいて、0.01~9.0重量%、好ましくは0.1~7.0重量%、より好ましくは0.2~5.0重量%、非常に特に好ましくは0.5~3.0重量%の水を含む組成物が非常に特に好ましい。
【0178】
本発明による組成物中の含水量の決定を、様々な既知の分析方法によって行うことができる。1つの可能性は、GC-MSによる測定である。質量分析カップリングを伴うガスクロマトグラフィーは、ガスクロマトグラフ(GC)と質量分析計(MS)との連結である。全体的な手順または機器の連結は、GC-MS、GC/MSまたはGCMSとも略記される。別の可能性は、滴定、例えばカール・フィッシャー滴定によって含水量を決定することである。
【0179】
別の可能性は、定量的1H-NMRスペクトルによる、定量的NMRスペクトルによる水の含有量の決定である。
【0180】
〔組成物中の他の原料〕
任意に、本発明の組成物は1種以上のさらなる化粧品原料を含有してもよい。
【0181】
本発明の組成物において任意に使用可能な化粧品原料は、該組成物にさらなる有益な特性を付与するための任意の適当な原料であり得る。例えば、溶媒、増粘または皮膜形成性ポリマー、非イオン性、カチオン性、アニオン性または双性イオン/両性の界面活性剤からなる群の界面活性化合物、顔料、直接染料、酸化染料前駆体からなる群の着色化合物、C~C30脂肪アルコールの群から選ばれる脂肪成分、炭化水素化合物、脂肪酸エステル、pH調整剤の群に属する酸および塩基、香料、防腐剤、植物抽出物およびタンパク質加水分解物である。
【0182】
このような他の物質の選択は、専門家により、剤の所望の特性に応じて行われる。他の任意の成分およびこれらの成分の使用量に関しては、その専門家に知られた関連マニュアルに明示されている。
【0183】
これに関して、ケラチン処理剤の安定性、特に貯蔵安定性をさらに改善する化粧品原料を、本発明の組成物において使用することが特に好ましいことが分かった。これに関して、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、および/または、デカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択される1種以上の化粧品原料を添加することが、該組成物の安定性向上に関して特に有利であることが示された。
【0184】
別の非常に特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、以下を含むことを特徴とする:
・ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよび/またはデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択される、1種以上の化粧品原料。
【0185】
ヘキサメチルジシロキサンは、CAS番号107-46-0を有し、例えばSigma-Aldrichから市販されている。
【化87】
【0186】
オクタメチルトリシロキサンは、CAS番号107-51-7を有し、例えばSigma-Aldrichから市販されている。
【化88】
【0187】
デカメチルテトラシロキサンは、CAS番号141-62-8を有し、例えばSigma-Aldrichから市販されている。
【化89】
【0188】
ヘキサメチルシクロトリシロキサンは、CAS番号541-05-9を有する。
オクタメチルシクロテトラシロキサンは、CAS番号556-67-2を有する。
デカメチルシクロペンタシロキサンは、CAS番号541-02-6を有する。
【0189】
特に高い貯蔵安定性を有する組成物を得るために、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択される化粧品原料の添加が、非常に好ましいことがわかった。
【0190】
さらなる実施形態において、非常に特に好ましくは、本発明のデバイスは、
・ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択される、1種以上の化粧品原料
を含有する組成物である。
【0191】
明示的に、ヘキサメチルジシロキサンの使用は、該原料を含む組成物が特に安定であることが分かったため、特に好ましい。好ましくは、本発明の組成物は、10.0~50.0重量%、好ましくは15.0~45.0重量%、より好ましくは20.0~40.0重量%、さらにより好ましくは25.0~35.0重量%、最も好ましくは31.0~34.0重量%のヘキサメチルジシロキサンを含有する。
【0192】
さらなる実施形態において、非常に特に好ましくは、本発明のデバイスは、
・組成物の総重量に基づいて、10.0~50.0重量%、好ましくは15.0~45.0重量%、さらに好ましくは20.0~40.0重量%、よりさらに好ましくは25.0~35.0重量%、最も好ましくは31.0~34.0重量%のヘキサメチルジシロキサンを含有する組成物である。
【0193】
〔調製物のpH値〕
さらなる実験において、本発明の組成物のpH値が、縮合反応に影響を及ぼし得ることが分かっている。特にアルカリ性のpH値は、オリゴマー段階で縮合を停止することが分かった。反応混合物が酸性であるほど、縮合がより早く進行すると思われ、縮合中に形成されるシラン縮合物の分子量はより高くなる。このため、該組成物は、7.0~12.0、好ましくは7.5~11.5、より好ましくは8.5~11.0、最も好ましくは9.0~11.0のpHを有することが好ましい。
【0194】
組成物の含水量は、10.0重量%以下であり、さらに低く設定することが好ましい。特に、非常に低い含水量を有する組成物の場合、先行技術から既知の通常の方法(組合せ電極を介したガラス電極によるまたはpH指示薬紙を介したpH値測定)を用いたpH値の測定は困難であることが判明し得る。このため、本発明によるpH値は、調製物を1:1の重量比で蒸留水と混合または蒸留水で希釈した後に得られるものである。
【0195】
したがって、対応するpHは、例えば本発明による組成物50gを蒸留水50gと混合した後に測定される。
【0196】
さらなる特に好ましい一実施形態において、本発明の組成物は、
1:1の重量比で蒸留水によって希釈した後に、7.0~12.0、好ましくは7.5~11.5、より好ましくは8.5~11.0、最も好ましくは9.0~11.0のpHを有することを特徴とする組成物である。
【0197】
このアルカリ性pHを調整するために、反応混合物にアルカリ化剤および/または酸性化剤を添加することが必要な場合がある。本発明の解釈上のpH値は、22℃の温度で測定されるpH値である。
【0198】
例えば、アンモニア、アルカノールアミンおよび/または塩基性アミノ酸をアルカリ化剤として使用することができる。
【0199】
アルカノールアミンは、少なくとも1個のヒドロキシル基を有するC~Cアルキルペアレントを有する第1級アミンから選択され得る。好ましいアルカノールアミンは、2-アミノエタン-1-オール(モノエタノールアミン)、3-アミノプロパン-1-オール、4-アミノブタン-1-オール、5-アミノペンタン-1-オール、1-アミノプロパン-2-オール、1-アミノブタン-2-オール、1-アミノペンタン-2-オール、1-アミノペンタン-3-オール、1-アミノペンタン-4-オール、3-アミノ-2-メチルプロパン-1-オール、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール、3-アミノプロパン-1,2-ジオール、2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジオールによって形成される群から選択される。
【0200】
本発明の解釈上、アミノ酸は、その構造内に少なくとも1つのプロトン化性アミノ基と少なくとも1つの-COOHまたは1つの-SOH基を含む有機化合物である。好ましいアミノ酸はアミノカルボン酸、特にα-(アルファ)-アミノカルボン酸およびω-アミノカルボン酸であり、このとき、α-アミノカルボン酸が特に好ましい。
【0201】
本発明によれば、塩基性アミノ酸は、7.0より大きい等電点pIを有するアミノ酸である。
【0202】
塩基性α-アミノカルボン酸は少なくとも1個の不斉炭素原子を含む。本発明との関連において、考えられ得る両方のエナンチオマーが具体的な化合物として、またはその混合物、特にラセミ体として等しく使用できる。しかし、天然状態で好ましい異性体形態、通常、L体を使用することが特に好都合である。
【0203】
塩基性アミノ酸は好ましくは、アルギニン、リシン、オルニチンおよびヒスチジン、特に好ましくはアルギニンおよびリシンによって形成される群から選択される。したがって、別の特に好ましい実施形態において、本発明による剤は、アルカリ化剤がアルギニン、リジン、オルニチンおよび/またはヒスチジンの群からの塩基性アミノ酸であることを特徴とする。
【0204】
さらに、無機アルカリ化剤も使用することができる。本発明に従って使用可能な無機アルカリ化剤は好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムによって形成される群から選択される。
【0205】
特に好ましいアルカリ化剤はアンモニア、2-アミノエタン-1-オール(モノエタノールアミン)、3-アミノプロパン-1-オール、4-アミノブタン-1-オール、5-アミノペンタン-1-オール、1-アミノプロパン-2-オール、1-アミノブタン-2-オール、1-アミノペンタン-2-オール、1-アミノペンタン-3-オール、1-アミノペンタン-4-オール、3-アミノ-2-メチルプロパン-1-オール、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール、3-アミノプロパン-1,2-ジオール、2-アミノ-2-メチルプロパン-1,3-ジオール、アルギニン、リシン、オルニチン、ヒスチジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムである。
【0206】
上記のアルカリ化剤の他に、専門家は、pH値の微調整のための一般的な酸性化剤に精通している。本発明によれば、好ましい酸性化剤は、クエン酸、酢酸、リンゴ酸または酒石酸などのプレジャー酸、ならびに希釈鉱酸である。
【0207】
〔多成分パッケージユニット(キット・オブ・パーツ)〕
上記に記載した組成物は、シランブレンドの貯蔵安定形態(すなわち、シランブレンド)であり、これは、好ましくは特に低い含水量を有する。
【0208】
ケラチン性物質を処理するための方法、ケラチン性繊維を処理するための方法において使用するために、使用者は、貯蔵安定なブレンドを即時使用可能な剤に変換せねばならない。該即時使用可能な剤は通常、より高い含水量を有する。
【0209】
この目的のために、使用者は、先に記載した低水分組成物(すなわちシラン縮合物のブレンド)と、1つ以上の他の組成物とを、使用直前に混合してよい。使用者の利便性を向上するために、全ての必要とされる組成物を、多成分パッケージユニット(キット・オブ・パーツ)の形態でユーザーに提供することができる。
【0210】
明示的に、該組成物は染色プロセスにおいて、特に良好な適性を示す。
【0211】
本発明の組成物を染色プロセスに適用する際、1種以上の着色化合物を使用してもよい。着色付与化合物は、例えば、別個に調製された化粧品組成物(B)中に含有されていてよい。
【0212】
本発明の第2の主題は、ケラチン性物質、特に人毛を染色するための多成分パッケージユニット(キット・オブ・パーツ)であり、これは、別個の以下:
・化粧品組成物(A)を含有する第1パッケージユニット、および
・化粧品組成物(B)を含有する第2パッケージユニット
を含み、ここで、
・化粧品組成物(A)は、本発明の第1の主題の説明において詳細に開示した組成物であり、
・化粧品組成物(B)は、顔料および/または直接染料からなる群から選択される、少なくとも1種の着色化合物。
【0213】
1種以上の着色剤化合物は、好ましくは顔料、直接染料、酸化染料、フォトクロミック染料およびサーモクロミック染料から、特に好ましくは顔料および/または直接染料から選択され得る。
【0214】
本発明の意味の範囲に含まれる顔料は、25℃において0.5g/L未満、好ましくは0.1g/L未満、なおより好ましくは0.05g/L未満の水への溶解度を有する着色化合物である。水への溶解度は、例えば下記の方法によって測定できる:0.5gの顔料をビーカー内に量り入れる。撹拌子を添加する。次いで、1リットルの蒸留水を添加する。この混合物を、磁気撹拌機で撹拌しながら25℃まで1時間加熱する。この期間後、顔料の未溶解成分が混合物中にまだ見られる場合、顔料の溶解度は0.5g/L未満である。おそらく微細に分散した顔料の強度が高いために、顔料-水の混合物を視認的に評価できない場合、混合物を濾過する。ある割合の未溶解顔料が濾紙上に残存している場合、顔料の溶解度は0.5g/L未満である。
【0215】
適当な着色顔料は無機および/または有機起源のものであり得る。
【0216】
好ましい一実施形態において、本発明による剤は、(b)無機および/または有機顔料の群からの少なくとも1種の着色化合物を含有することを特徴とする。
【0217】
好ましい着色顔料は合成または天然の無機顔料から選択される。天然起源の無機着色顔料は、例えば、胡粉、黄土、琥珀、緑土、赤土(burnt Terra di Siena)またはグラファイトから作製できる。さらに、黒色顔料、例えば黒色酸化鉄、有色顔料、例えばウルトラマリンまたは赤色酸化鉄ならびに蛍光またはリン光顔料が無機着色顔料として使用できる。
【0218】
特に適当であるのは、有色の金属酸化物、水酸化物および酸化物の水和物、混相顔料、含硫シリケート、シリケート、金属硫化物、金属シアン化物錯体、金属硫酸塩、クロメートおよび/またはモリブデートである。好ましい着色顔料は黒色酸化鉄(CI77499)、黄色酸化鉄(CI77492)、赤褐色酸化鉄(CI77491)、マンガンバイオレット(CI77742)、ウルトラマリン(スルホケイ酸アルミニウムナトリウム、CI77007、ピグメントブルー29)、酸化クロム水和物(CI77289)、アイアンブルー(フェロシアン化第二鉄、CI77510)および/またはカーマイン(コチニール)である。
【0219】
有色真珠光沢顔料も、本発明による顔料の群からの特に好ましい顔料である。これらは通常、雲母および/または雲母ベースであり、1種以上の金属酸化物でコーティングできる。雲母は層状ケイ酸塩に属する。このようなケイ酸塩のうち最も重要な代表例はマスコバイト、フロゴパイト、パラゴナイト、黒雲母、鱗雲母および真珠雲母である。金属酸化物との組合せでの真珠光沢顔料を作製するためには、雲母、主にマスコバイトまたはフロゴパイトを金属酸化物でコーティングする。
【0220】
天然雲母の代替として1種以上の金属酸化物でコーティングした合成雲母もまた真珠光沢顔料として使用できる。とりわけ好ましい真珠光沢顔料は、天然または合成雲母ベースのものであり、上記の金属酸化物のうちの1種以上でコーティングされる。それぞれの顔料の色彩は、金属酸化物の層の厚さを変えることにより変更することができる。
【0221】
さらなる好ましい一実施形態において、本発明の剤は、有色の金属酸化物、金属水酸化物、金属酸化物水和物、シリケート、金属硫化物、金属シアン化物錯体、金属硫酸塩、ブロンズ顔料の群から選択される、および/または、少なくとも1種の金属酸化物および/もしくは金属酸塩化物でコーティングされた雲母もしくは雲母系の着色化合物から選択される、顔料の群から選ばれる、(b)少なくとも1種の着色化合物を含むことを特徴とする。
【0222】
さらなる好ましい一実施形態において、本発明の組成物は、二酸化チタン(CI77891)、黒色酸化鉄(CI77499)、黄色酸化鉄(CI77492)、赤色および/または褐色酸化鉄(CI77491、CI77499)、マンガンバイオレット(CI77742)、ウルトラマリン(スルホケイ酸アルミニウムナトリウム、CI77007、ピグメントブルー29)、酸化クロム水和物(CI77289)、酸化クロム(CI77288)および/またはアイアンブルー(フェロシアン化第二鉄、CI77510)からなる群から選択される1種以上の金属酸化物と反応させた、雲母または雲母系ベース顔料から選択される(b)少なくとも1種の着色化合物を含むことを特徴とする。
【0223】
特に適当な着色顔料の例は、商品名Rona(登録商標)、Colorona(登録商標)、Xirona(登録商標)、Dichrona(登録商標)およびTimiron(登録商標)でMerckから、Ariabel(登録商標)およびUnipure(登録商標)でSensientから、Prestige(登録商標)でEckart Cosmetic Colorsから、およびSunshine(登録商標)でSunstarから市販されているものである。
【0224】
商品名Colorona(登録商標)を有する特に好ましい着色顔料は、例えば以下である:
Colorona Copper,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)
Colorona Passion Orange,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)、アルミナ
Colorona Patina Silver,Merck,雲母,CI77499(酸化鉄)、CI77891(二酸化チタン)
Colorona RY,Merck,CI77891(二酸化チタン)、雲母,CI75470(CARMINE)
Colorona Oriental Beige,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、CI77491(酸化鉄)
Colorona Dark Blue,Merck,雲母、二酸化チタン、フェロシアン化第二鉄
Colorona Chameleon,Merck,CI77491(酸化鉄)、雲母
Colorona Aborigine Amber,Merck,雲母,CI77499(酸化鉄)、CI77891(二酸化チタン)
Colorona Blackstar Blue,Merck,CI77499(酸化鉄)、雲母
Colorona Patagonian Purple,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)、CI77891(二酸化チタン)、CI77510(フェロシアン化第二鉄)
Colorona Red Brown,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)、CI77891(二酸化チタン)
Colorona Russet,Merck,CI77491(二酸化チタン)、雲母,CI77891(酸化鉄)
Colorona Imperial Red,Merck,雲母、二酸化チタン(CI77891)、D&C RED NO.30(CI73360)
Colorona Majestic Green,Merck,CI77891(二酸化チタン)、雲母,CI77288
(酸化クロムグリーン)
Colorona Light Blue,Merck,雲母、二酸化チタン(CI77891)、フェロシアン化第二鉄(CI77510)
Colorona Red Gold,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、CI77491(酸化鉄)
Colorona Gold Plus MP 25,Merck,雲母、二酸化チタン(CI77891)、酸化鉄(CI77491)
Colorona Carmine Red,Merck,雲母、二酸化チタン、カーマイン
Colorona Blackstar Green,Merck,雲母,CI77499(酸化鉄)
Colorona Bordeaux,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)
Colorona Bronze,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)
Colorona Bronze Fine,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)
Colorona Fine Gold MP 20,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、CI77491(酸化鉄)
Colorona Sienna Fine,Merck,CI77491(酸化鉄)、雲母
Colorona Sienna,Merck,雲母,CI77491(酸化鉄)
Colorona Precious Gold,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、シリカ、CI77491(酸化鉄)、酸化スズ
Colorona Sun Gold Sparkle MP 29,Merck,雲母、二酸化チタン、酸化鉄、雲母,CI77891、CI77491(EU)
Colorona Mica Black,Merck,CI77499(酸化鉄)、雲母,CI77891(二酸化チタン)
Colorona Bright Gold,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、CI77491(酸化鉄)
Colorona Blackstar Gold,Merck,雲母,CI77499(酸化鉄)。
【0225】
商品名Xirona(登録商標)を有する他の特に好ましい着色顔料は、例えば以下である:
Xirona Golden Sky,Merck,シリカ、CI77891(二酸化チタン)、酸化スズ
Xirona Caribbean Blue,Merck,雲母,CI77891(二酸化チタン)、シリカ、酸化スズ
Xirona Kiwi Rose,Merck,シリカ、CI77891(二酸化チタン)、酸化スズ
Xirona Magic Mauve,Merck,シリカ、CI77891(二酸化チタン)、酸化スズ。
【0226】
また、商品名Unipure(登録商標)を有する特に好ましい着色顔料は、例えば以下である:
Unipure Red LC 381 EM,Sensient CI77491(酸化鉄)、シリカ
Unipure Black LC 989 EM,Sensient,CI77499(酸化鉄)、シリカ
Unipure Yellow LC 182 EM,Sensient,CI77492(酸化鉄)、シリカ。
【0227】
さらなる実施形態において、本発明の方法は、(b)有機顔料の群から選択される1種以上の着色化合物も含み得る。
【0228】
本発明による有機顔料は、相応して不溶性の有機系の染料またはカラーラッカーであり、例えば、ニトロソ、ニトロ-アゾ、キサンテン、アントラキノン、イソインドリノン、イソインドリン、キナクリドン、ペリノン、ペリレン、ジケト-ピロロピロール(pyrrolopyorrole)、インジゴ、チオインジゴ(thioindido)、ジオキサジンおよび/またはトリアリールメタン化合物の群から選択され得る。
【0229】
特に適当な有機顔料の例は、カーマイン、キナクリドン、フタロシアニン、ソルガム、カラーインデックス番号CI42090、CI69800、CI69825、CI73000、CI74100、CI74160を有する青色顔料、カラーインデックス番号CI11680、CI11710、CI15985、CI19140、CI20040、CI21100、CI21108、CI47000、CI47005を有する黄色顔料、カラーインデックス番号CI61565、CI61570、CI74260を有する緑色顔料、カラーインデックス番号CI11725、CI15510、CI45370、CI71105を有する橙色顔料、カラーインデックス番号CI12085、CI12120、CI12370、CI12420、CI12490、CI14700、CI15525、CI15580、CI15620、CI15630、CI15800、CI15850、CI15865、CI15880、CI17200、CI26100、CI45380、CI45410、CI58000、CI73360、CI73915および/またはCI75470を有する赤色顔料である。
【0230】
別の特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、以下からなる群から選択される有機顔料の群から選ばれる、少なくとも1種の着色化合物を含むことを特徴とする:カーマイン、キナクリドン、フタロシアニン、ソルガム、カラーインデックス番号CI42090、CI69800、CI69825、CI73000、CI74100、CI74160を有する青色顔料、カラーインデックス番号CI11680、CI11710、CI15985、CI19140、CI20040、CI21100、CI21108、CI47000、CI47005を有する黄色顔料、カラーインデックス番号CI61565、CI61570、CI74260を有する緑色顔料、カラーインデックス番号CI11725、CI15510、CI45370、CI71105を有する橙色顔料、カラーインデックス番号CI12085、CI12120、CI12370、CI12420、CI12490、CI14700、CI15525、CI15580、CI15620、CI15630、CI15800、CI15850、CI15865、CI15880、CI17200、CI26100、CI45380、CI45410、CI58000、CI73360、CI73915および/またはCI75470を有する赤色顔料。
【0231】
有機顔料は、有色ペイントであってもよい。本発明の意味において、有色ラッカーという用語は吸着された染料層を含む粒子を意味すると理解されたく、この粒子と染料の単位は上述の条件下で不溶性である。粒子は、例えば、無機基材であることができ、これはアルミニウム、シリカ、ホウケイ酸カルシウム、ホウケイ酸アルミニウムカルシウムであることができ、またはアルミニウムであることさえできる。
【0232】
例えば、アリザリン着色ワニスを使用できる。
【0233】
その優れた光および温度に対する耐性のため、本発明の方法における顔料の使用が特に好ましい。また、使用される顔料が、ある特定の粒子サイズを有する場合が好ましい。この粒子サイズは、一方において、形成されたポリマー皮膜中における顔料の一様な分布をもたらし、他方において、化粧料製品の塗布後の髪または肌のざらざら感を回避する。したがって、本発明によれば、該少なくとも1種の顔料が、1.0~50μm、好ましくは5.0~45μm、好ましくは10~40μm、14~30μmの平均粒子サイズD50を有する場合が好都合である。平均粒子サイズD50は、例えば動的光散乱(DLS)を用いて測定できる。
【0234】
1種または複数種の顔料は、それぞれの場合において、本発明による組成物の総重量に基づいて0.001~20重量%、0.05~5重量%の量で使用され得る。
【0235】
本発明による組成物は、着色剤化合物として、1種以上の直接染料も含み得る。直接作用染料は、毛髪に直接塗り、色形成のための酸化的方法を必要としない染料である。直接染料は通常、ニトロフェニレンジアミン、ニトロアミノフェノール、アゾ染料、アントラキノン類、トリアリールメタン染料またはインドフェノールである。
【0236】
本発明の意味の範囲に含まれる直接染料は、25℃において0.5g/Lより高い水への溶解度(760mmHg)を有し、したがって顔料とみなされるものではない。好ましくは、本発明の意味における直接染料は、25℃において1.0g/Lより高い水への溶解度(760mmHg)を有する。特に、本発明の意味における直接染料は、25℃において1.5g/Lより高い水への溶解度(760mmHg)を有する。
【0237】
直接染料は、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料および非イオン性直接染料に分けることができる。
【0238】
さらなる好ましい一実施形態において、本発明の剤は、着色化合物として、(b)少なくとも1種のアニオン性直接染料、カチオン性直接染料および/または非イオン性直接染料を含有することを特徴とする。
【0239】
さらなる好ましい一実施形態において、本発明の剤は、(b)少なくとも1種のアニオン性直接染料、カチオン性直接染料および/または非イオン性直接染料を含有することを特徴とする。
【0240】
適当なカチオン性直接染料として、ベーシックブルー7、ベーシックブルー26、ベーシックバイオレット2およびベーシックバイオレット14、ベーシックイエロー57、ベーシックレッド76、ベーシックブルー16、ベーシックブルー347(カチオンブルー347/ダイスター)、HCブルーNo.16、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ベーシックイエロー57、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド51、ベーシックレッド76が挙げられる。
【0241】
非イオン性直接染料として、非イオン性のニトロ染料およびキノン染料ならびに中性アゾ染料が使用できる。好適な非イオン性直接染料は、国際指定表示(designation)または商品名HCイエロー2、HCイエロー4、HCイエロー5、HCイエロー6、HCイエロー12、HCオレンジ1、ディスパースオレンジ3、HCレッド1、HCレッド3、HCレッド10、HCレッド11、HCレッド13、HCレッドBN、HCブルー2、HCブルー11、HCブルー12、ディスパースブルー3、HCバイオレット1、ディスパースバイオレット1、ディスパースバイオレット4、ディスパースブラック9で示される既知化合物のもの、ならびに1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゼン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、1,4-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-アミノ-2-ニトロベンゼン、3-ニトロ-4-(2-ヒドロキシエチル)-アミノフェノール2-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-4,6-ジニトロフェノール、4-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-3-ニトロ-1-メチルベンゼン、1-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチル)-アミノ-5-クロロ-2-ニトロベンゼン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、1-(2’-ウレイドエチル)アミノ-4-ニトロベンゼン、2-[(4-アミノ-2-ニトロフェニル)アミノ]安息香酸、6-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロキノキサリン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、ピクラミン酸およびその塩、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、4-エチルアミノ-3-ニトロ安息香酸ならびに2-クロロ-6-エチルアミノ-4-ニトロフェノールである。
【0242】
アニオン性直接染料は酸性染料とも称される。酸性染料は、少なくとも1つのカルボン酸基(-COOH)および/または1つのスルホン酸基(-SOH)を有する直接染料である。pH値に応じて、カルボン酸基またはスルホン酸基のプロトン化形態(-COOH、-SOH)は、その脱プロトン化形態(-COO、-SO で存在)と平衡状態になる。pHの低下にともなって、プロトン化形態の割合は増大する。直接染料がその塩の形態で使用される場合、カルボン酸基またはスルホン酸基は脱プロトン化形態で存在し、対応する化学量論当量のカチオンで中和され、電気的中性が維持される。本発明の酸性染料は、そのナトリウム塩および/またはそのカリウム塩の形態で使用することもできる。
【0243】
本発明の意味の範囲に含まれる酸性染料は、25℃で(760mmHg)の水中で、0.5g/Lを超える溶解度を有するものであり、したがって顔料とみなされるものではない。好ましくは、本発明の意味の範囲に含まれる酸性染料は、25℃で(760mmHg)の水中で1.0g/Lを超える溶解度を有する。
【0244】
酸性染料のアルカリ土類塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)またはアルミニウム塩は、多くの場合、対応するアルカリ塩より低い溶解度を有する。これらの塩の溶解度が0.5g/L(25℃,760mmHg)未満である場合は直接染料の定義に含まれない。
【0245】
酸性染料の必須の特徴はアニオン電荷形成能であり、このとき、これを担うカルボン酸基またはスルホン酸基は通常、異なる発色団系に連結される。好適な発色団系は、例えば、ニトロフェニレンジアミン、ニトロアミノフェノール、アゾ染料、アントラキノン染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、ローダミン染料、オキサジン染料および/またはインドフェノール染料の構造に見出すことができる。
【0246】
例えば、以下の群からの1つまたは複数の化合物を特によく適する酸性染料として選択することができる:アシッドイエロー1(D&Cイエロー7、シトロニンA、Ext.D&CイエローNo.7、日本の黄色403号、CI10316、COLIPA番号 B001)、アシッドイエロー3(COLIPA番号:C54、D&CイエローNo.10、キノリンイエロー、E104、食用黄色13号)、アシッドイエロー9(CI13015)、アシッドイエロー17(CI18965)、アシッドイエロー23(COLIPA番号 C29、Covacap Jaune W 1100(LCW)、Sicovitタートラジン 85 E 102(BASF)、タートラジン、食用黄色4号、日本の黄色4号、FD&CイエローNo.5)、アシッドイエロー36(CI13065)、アシッドイエロー121(CI18690)、アシッドオレンジ6(CI14270)、アシッドオレンジ7(2-ナフトールオレンジ、オレンジII、CI15510、D&Cオレンジ4、COLIPA番号C015)、アシッドオレンジ10(C.I.16230;オレンジGナトリウム塩)、アシッドオレンジ11(CI45370)、アシッドオレンジ15(CI50120)、アシッドオレンジ20(CI14600)、アシッドオレンジ24(ブラウン1;CI20170;KATSU201;ナトリウム塩でないもの;ブラウンNo.201;レゾルシンブラウン;アシッドオレンジ24;日本の褐色201号;D&CブラウンNo.1)、アシッドレッド14(C.I.14720)、アシッドレッド18(E124、赤色18号;CI16255)、アシッドレッド27(E123、CI16185、C-Rot 46、リアルレッド D、FD&CレッドNo.2、食用赤色9号、ナフトールレッドS)、アシッドレッド33(赤色33号、フクシャレッド、D&Cレッド33、CI17200)、アシッドレッド35(CI C.I.18065)、アシッドレッド51(CI45430、パイロジンB、テトラヨードフルオレセイン、エオシンJ、Iodeosin)、アシッドレッド52(CI45100、食用赤色106号、ソーラーローダミンB、アシッドローダミンB、赤色106号ポンタシル(Pontacyl)ブリリアントピンク)、アシッドレッド73(CI27290)、アシッドレッド87(エオシン、CI45380)、アシッドレッド92(COLIPA番号 C53、CI45410)、アシッドレッド95(CI45425、エリトトシン(Erythtosine),SimacidエリスロシンY)、アシッドレッド184(CI15685)、アシッドレッド195、アシッドバイオレット43(Jarocolバイオレット43、Ext.D&CバイオレットNo.2、C.I.60730、COLIPA番号 C063)、アシッドバイオレット49(CI42640)、アシッドバイオレット50(CI50325)、アシッドブルー1(パテントブルー、CI42045)、アシッドブルー3(パテントブルーV、CI42051)、アシッドブルー7(CI42080)、アシッドブルー104(CI42735)、アシッドブルー9(E133、パテントブルーAE、アミドブルーAE、エリオグラウシンA、CI42090、C.I.食用青色2号)、アシッドブルー62(CI62045)、アシッドブルー74(E132、CI73015)、アシッドブルー80(CI61585)、アシッドグリーン3(CI42085、食用緑色1号)、アシッドグリーン5(CI42095)、アシッドグリーン9(C.I.42100)、アシッドグリーン22(C.I.42170)、アシッドグリーン25(CI61570、日本の緑色201号、D&CグリーンNo.5)、アシッドグリーン50(ブリリアントアシッドグリーンBS、C.I. 44090、アシッドブリリアントグリーンBS、E142)、アシッドブラック1(ブラックNo.401、ナフタレンブラック10B、アミドブラック10B、CI20 470、COLIPA番号 B15)、アシッドブラック52(CI15711)、食用黄色8号(CI14270)、食用青色5号、D&Cイエロー8、D&Cグリーン5、D&Cオレンジ10、D&Cオレンジ11、D&Cレッド21、D&Cレッド27、D&Cレッド33、D&Cバイオレット2および/またはD&Cブラウン1。
【0247】
例えば、アニオン直接染料の水への溶解度は以下のようにして測定できる。0.1gのアニオン直接染料をビーカー内に入れる。攪拌子を添加する。次いで100mlの水を添加する。この混合物を磁気攪拌機で撹拌しながら25℃まで加熱する。これを60分間撹拌する。次いで、この水性混合物を目視評価する。まだ未溶解残渣がある場合、水の量を、例えば10mlずつ増やす。使用した量の染料が完全に溶解するまで水を添加する。染料-水混合物が染料の高負荷のため視認評価できない場合、混合物を濾過する。ある割合の未溶解染料が濾紙上に残存している場合、水の量をより多くして溶解度試験を繰り返す。0.1gのアニオン直接染料が25℃において100mlの水に溶解する場合、染料の溶解度は1.0g/Lである。
【0248】
アシッドイエロー1は8-ヒドロキシ-5,7-ジニトロ-2-ナフタレンスルホン酸二ナトリウム塩と称され、水への溶解度は少なくとも40g/L(25℃)である。
【0249】
アシッドイエロー3は2-(2-キノリル)-1H-インデン-1,3(2H)-ジオンのモノスルホン酸のナトリウム塩とジスルホン酸のナトリウム塩の混合物であり、水への溶解度は20g/L(25℃)である。
【0250】
アシッドイエロー9は8-ヒドロキシ-5,7-ジニトロ-2-ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩であり、その水への溶解度は40g/L(25℃)より高い。
【0251】
アシッドイエロー23は4,5-ジヒドロ-5-オキソ-1-(4-スルホフェニル)-4-((4-スルホフェニル)アゾ)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸の三ナトリウム塩であり、25℃で水に非常に溶けやすい。
【0252】
アシッドオレンジ7は4-[(2-ヒドロキシ-1-ナフチル)アゾ]ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩である。その水への溶解度は7g/L(25℃)より高い。
【0253】
アシッドレッド18は7-ヒドロキシ-8-[(E)-(4-スルホナト-1-ナフチル)-ジアゼニル)]-1,3-ナフタレンジスルホン酸三ナトリウム塩であり、水への溶解度は非常に高く20重量%より高い。
【0254】
アシッドレッド33は5-アミノ-4-ヒドロキシ-3-(フェニルアゾ)-ナフタレン-2,7-ジスルホン酸二ナトリウム塩であり、その水への溶解度は2.5g/L(25℃)である。
【0255】
アシッドレッド92は3,4,5,6-テトラクロロ-2-(1,4,5,8-テトラブロモ-6-ヒドロキシ-3-オキソキサンテン-9-イル)安息香酸の二ナトリウム塩であり、その水への溶解度は10g/L(25℃)より高いと示されている。
【0256】
アシッドブルー9は2-({4-[N-エチル(3-スルホナトベンジル]アミノ]フェニル}{4-[(N-エチル(3-スルホナトベンジル)イミノ]-2,5-シクロヘキサジエン-1-イリデン}メチル)-ベンゼンスルホン酸二ナトリウム塩であり、水への溶解度は20重量%(25℃)より高い。
【0257】
サーモクロミック染料も使用できる。サーモクロミズムは、温度に応じて可逆的または非可逆的にその色を変化させる材料の特性である。これは、強度および/または波長の最大値の両方を変えることによって行うことができる。
【0258】
最後に、フォトクロミック染料を使用することも可能である。フォトクロミズムは、光、特にUV光の照射に応じて可逆的または非可逆的に色を変化させる材料の特性を含む。これは、強度および/または波長の最大値の両方を変えることによって行うことができる。
【0259】
化粧品組成物(B)は、化粧品組成物(B)の総重量に基づいて、0.01~10.0重量%、好ましくは0.1~8.0重量%、より好ましくは0.2~6.0重量%、最も好ましくは0.5~4.5重量%の総量で1種以上の顔料を含有してよい。
【0260】
化粧品組成物(B)は、化粧品組成物(B)の総重量に基づいて、0.01~10.0重量%、好ましくは0.1~8.0重量%、より好ましくは0.2~6.0重量%、最も好ましくは0.5~4.5重量%の総量で1種以上の直接染料を含有してよい。
【0261】
調製物(A)および(B)に加えて、本発明の多成分パッケージユニット(キット・オブ・パーツ)は、さらなる別々に調製された1つ以上の調製物、例えば少なくとも1種の増粘性ポリマーを含有する化粧品組成物(C)、および/または、少なくとも1種の皮膜形成性ポリマーを含有する化粧品組成物(D)を含有してもよい。
【0262】
さらなる実施形態に関して、以下:
・化粧品組成物(C)を含む第3のパッケージユニット、該化粧品組成物(C)は少なくとも1種の増粘性ポリマーを含む
を含む多成分パッケージユニット(キット・オブ・パーツ)は非常に特に好ましい。
【0263】
増粘性ポリマーとして、例えば以下を使用することができる:
・ビニルピロリドン/ビニルエステルコポリマー、例えばLuviskol(登録商標)(BASF)、Luviskol(登録商標)VA 64およびLuviskol(登録商標)VA 73の商品名で販売されているもの、各ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーも、好ましい非イオン性ポリマーである。
・セルロースエーテル、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロース、例えば、Culminal(登録商標)およびBenecel(登録商標)(AQUALON)、ならびにNatrosol(登録商標)グレード(Hercules)の名称で市販されているもの。
・澱粉およびその誘導体、特に澱粉エーテル、例えばStructure(登録商標)XL(National Starch)、多官能耐塩性澱粉;
・ポリビニルピロリドン、例えばLuviskol(登録商標)(BASF)の商品名で市販されているもの。
【0264】
さらなる実施形態に関して、以下:
・化粧品組成物(D)を含む第4のパッケージユニット、該化粧品組成物(D)は少なくとも1種の皮膜形成性ポリマーを含む
を含む多成分パッケージユニット(キット・オブ・パーツ)は非常に特に好ましい。
【0265】
皮膜形成性ポリマーとしては、以下からなる群から選択される少なくとも1種のアニオン性ポリマーである:アクリル酸のコポリマー、メタクリル酸のコポリマー、アクリル酸エステルのホモポリマーまたはコポリマー、メタクリル酸エステルのホモポリマーまたはコポリマー、アクリル酸アミドのホモポリマーまたはコポリマー、メタクリル酸アミドのホモポリマーまたはコポリマー、ビニルピロリドンのコポリマー、ビニルアルコールのコポリマー、酢酸ビニルのコポリマー、エチレンのホモポリマーまたはコポリマー、プロピレンのホモポリマーまたはコポリマー、スチレンの、ポリウレタンの、ポリエステルの、および/またはポリアミドの、ホモポリマーまたはコポリマー。
【0266】
本発明の多成分パッケージユニットのさらなる好ましい実施形態に関して、本発明の組成物について述べたことが、必要に応じて修正を加えて同様に当てはまる。
【実施例
【0267】
〔1.シランブレンド(組成物(A))の調製〕
加熱/冷却可能な外部シェルを有し、容量10リットルの反応装置に、メチルトリメトキシシラン4.67kg(34.283mol)を充填した。次いで、撹拌しながら、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン1.33kg(6.008mol)を添加した。この混合物を30℃で撹拌した。続いて、蒸留水670ml(37.18mol)を激しく撹拌しながら滴加し、この間、反応混合物の温度を外部冷却下で30℃に維持した。水の添加の完了後、撹拌をさらに10分間続けた。
【0268】
3-(トリエトキシシリル)プロピルアミン モル質量=221.37g/mol
メチルトリメトキシシラン モル質量=136.22g/mol
使用したケイ素化合物の総モル量=34.283mol+6.008mol
=40.291mol
【0269】
次いで、180mbarの真空を加え、反応混合物を65℃の温度まで加熱した。反応混合物が65℃の温度に達したら、反応混合物を190分間にわたって蒸留した。蒸留留去された全ての物質を、冷却した受け器に集めた。次いで、反応混合物を室温まで冷却した。
【0270】
それぞれの場合において、100mlのシランブレンドを容量100mlのシール付きスクリューキャップ蓋を有するボトルに充填した。充填後、該ボトルをしっかり密封した。含水量は2.0重量%未満であった。
【0271】
製造直後、サンプルを採取し、NMR分光法により試験した(0日目)。
【0272】
次いで、該ボトルを50℃で14日間貯蔵した。7日間および14日間の貯蔵期間後、再びサンプルを採取し、NMR分光法により試験した。
【0273】
〔2.29Si NMR分光法スペクトル〕
溶媒:クロロホルム
装置:Agilent、600MHz
標準:TMS(テトラメチルシラン)
緩和促進剤:クロム(III)アセチルアセトネート
緩和促進剤を用いることにより、個々のシグナルの積分を互いに比較できるようになる。全ての積算の合計は100モル%であった。
【0274】
定量的測定のために、個々のシグナルの積分面積は全ての積分の合計に関連していた。
【0275】
単量体化合物(式(I)の化合物)、単架橋型化合物(式(II)の構造単位を有するシラン)、および、二架橋型化合物(式(III)の構造単位を有するシラン)の範囲において、それぞれの式(a)および(b)の化合物についてのシグナルを、個々に検出することができた(すなわち、式(IIa)および(IIb)の構造単位を有するシランを個々に定量化することができた)。三架橋型の範囲において、シランを個々に検出することはもはや不可能であった(すなわち、式(IVa)および(IVb)のシラン間の分離はもはや見えなかった)。
【0276】
【表1】
【0277】
〔3.着色〕
以下の製剤を調製した(特記しない限り、全てのデータは重量%):
【0278】
【表2】
【0279】
【表3】
【表4】
【0280】
〔5.適用〕
染色試験のために、保存しなかった(A-0)、7日間保存した(A-7)、および14日間保存した(A-14)シランブレンド(すなわち組成物(A))を使用した。
【0281】
即時使用可能な組成物を、1.5gの組成物(A)、20.0gの組成物(B)、および1.5gの組成物(C)をそれぞれ混合することにより調製した。組成物(A)、(B)および(C)を1分間振盪し、次いで、この即時使用可能な調製物を毛髪ストランド(Kerling、ユーロナチュラルヘアホワイト)に染色した。
【0282】
振盪が完了してから3分後、即時使用可能な組成物を1度に1つのストランドに塗布し、1分間作用させた後、洗い流した。
【0283】
続いて、組成物(D)を各毛髪ストランドに塗布し、1分間作用させたあと、水ですすいだ。
【0284】
染色されたストランドをそれぞれ乾燥させ、昼光ランプ下で視覚的に比較した:
【表5】
【国際調査報告】