(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレート、環状カーボネートおよび水を含む剥離剤を用いる、少なくとも部分的に剥離したクレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/40 20060101AFI20220713BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C01B33/40
C09K3/00 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569230
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2020057722
(87)【国際公開番号】W WO2020233867
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】ミジアク,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,リガン
(72)【発明者】
【氏名】キンツェルマン,ハンス-ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】アムシュラー,ゾーニャ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,リナ
(72)【発明者】
【氏名】ブロイ,ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】エーデンハーター,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA80
4G073BB08
4G073BB29
4G073BB71
4G073CA06
4G073CM09
4G073CM10
4G073CM14
4G073CM15
4G073CM19
4G073CM20
4G073CM21
4G073FD01
4G073FD30
(57)【要約】
本発明は、少なくとも部分的に剥離したクレイを調製するための方法に関する。本発明は、さらに、そのような方法により得られる少なくとも部分的に剥離したクレイ、そのようなクレイを含む懸濁液、並びに、少なくとも部分的に剥離したクレイの使用、および、そのような少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液の使用に関する。さらに、本発明は、少なくとも部分的に剥離したクレイを含むポリマー組成物および/または少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液も対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に剥離したクレイを調製するための方法であって、以下:
(1)クレイを供給する工程;
(2)ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステル、環状カーボネートおよび水を含む剥離剤を供給する工程、ここで、水は、剥離剤の体積に基づいて10体積%以下の量で存在する;
(3)クレイと剥離剤を混合する工程;および
(4)少なくとも部分的に剥離したクレイを得る工程
を含む方法。
【請求項2】
クレイが、天然または合成の層状ケイ酸塩鉱物である、好ましくはスメクタイト、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、スティーブンサイト、バーミキュライト、カオリナイト、ハロイサイト、マガディアイト、フルオロヘクトライトおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、より好ましくはヘクトライトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルが下記:
【化1】
〔式中、
R
1は水素またはメチルであり、R
2~R
5はそれぞれ独立して、水素またはC
1-6アルキルであり、好ましくはそれぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり、
Lは、単結合または、場合によりヒドロキシ、チオール、エポキシ、ビニルまたは(メタ)アクリル酸エステル基で置換される、直鎖または分岐鎖C
1-12アルキレン、C
3-12環状アルキレン、フェニレン、C
1-12ポリオールの残基から選択されるw価の連結基であり、好ましくは単結合またはペンタエリスリトール残基であり、
xは1~5、好ましくは1~3であり、
yは1~5、好ましくは1~3であり、
wは2~6、好ましくは2~4であり、
aおよびbは、それぞれ独立して1~50、好ましくは1~30であり、
cおよびdは、それぞれ独立して0~50、好ましくは0~30であり、
ただし、Lが単結合の場合、xとyは1であり、Lがw価の連結基の場合、wはxとyとの合計である〕
で表される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルが、ポリ(アルキレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される、好ましくは、ポリ(エチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(エチレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルが、150~3,000、好ましくは200~2000の数平均分子量を有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
環状カーボネートが、下記:
【化2】
〔式中、
Aは(C(R
6R
7))
p、R
8XまたはZで表され、
pは2以上、好ましくは2または3、特に好ましくは2、R
6およびR
7は、それぞれ独立して水素原子、飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖若しくは環状、芳香族若しくはアリール脂肪族の、1~12個の炭素原子を有する任意に置換された炭化水素基、または1~12個の炭素原子と最大3個の酸素原子を有するエーテル基であり、
R
8は、2価の脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族若しくはエーテルを含む、任意に置換された1~20個の炭素原子を有する炭化水素基であり、Xは、ヒドロキシ、エポキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル基、または
Zは、不飽和重合性基であり、好ましくは、ビニル-、(メタ)アクリル-、マレイン酸-、フマル酸-、イタコン酸-またはクロトン酸-エステル基である〕
で表される化合物、その二量体;およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
環状カーボネートが、炭酸ビニレン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸グリセリン、5-エチル-5-(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、5-((アリルオキシ)メチル)-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキセピン-2-オンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
環状カーボネートが、50~1,000、好ましくは50~500の数平均分子量を有する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
水が、剥離剤の体積に基づいて、0.1~10体積%、好ましくは0.5~5体積%の量で存在する、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルが、剥離剤の体積に基づいて30~90体積%、好ましくは50~85体積%の量で存在する、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
環状カーボネートが、剥離剤の体積に基づいて5~60体積%、好ましくは10~50体積%の量で存在する、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1~12のいずれかに記載の調製方法によって得られる、少なくとも部分的に剥離されたクレイ。
【請求項13】
請求項11に記載の少なくとも部分的に剥離したクレイおよび剥離剤を含む懸濁液。
【請求項14】
請求項12に記載の少なくとも部分的に剥離したクレイまたは請求項13に記載の少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液を含むポリマー組成物。
【請求項15】
ポリマー組成物が、コーティング組成物、シーラント組成物および接着剤組成物からなる群から選択される、請求項16に記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に剥離したフィロケイ酸塩、例えばクレイを調製する方法に関する。また、本発明は、そのような方法によって得られる少なくとも部分的に剥離したクレイ、およびそのようなクレイを含む懸濁液、並びに、そのような少なくとも部分的に剥離したクレイの使用、および、そのような少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液の使用に関する。さらに、本発明、少なくとも部分的に剥離したクレイおよび/または少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液を含むポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シーラント、コーティングおよび接着剤などのポリマー組成物において、各調製物の物理的特性を変えるためにフィラーが使用される。フィラーの典型的な分類は、ケイ酸塩などの鉱物化合物である。一般に、フィラー粒子のアスペクト比(種々の次元での粒子サイズの比率、特に最短直径に対する最長直径の比率、または、プレートレットタイプの粒子の場合は、しばしば「アスペクト比」といわれ、横方向の直径を厚みで割った値である)は、フィラーがポリマー組成物に与える特性を改善するための重要な要素であり、これは、ガスおよび/または流体に対するバリア機能、難燃性、並びに、ポリマー組成物の全般的な機械的および熱的特性を含み得る。
【0003】
鉱物分析とバリアとの相関関係に関するガスバリア性効果の効率は、粒子の平坦度(すなわち、アスペクト比)とともに急激に増加する。つまり、同じ鉱物分析では、アスペクト比が増すほどガスバリア性が良好になる。ガスバリア特性ならびにポリマーマトリックス内のクレイ粒子の全般的な分散性に関しては、数千の巨大なアスペクト比が有利である。積層したクレイ粒子のアスペクト比は、浸透圧膨潤によって最大化し得る。浸透圧的に膨潤したクレイ粒子/層は、互いに層剥離(delaminated)または剥離(exfoliated)され、これは積層における通常の形態とは異なる。
【0004】
浸透圧膨潤は水性懸濁液において生じ、例えば、リチウムカチオンの導入によって促進/増強され得、それにより、クレイ粒子表面の全般的な水和作用が改善される。クレイ鉱物の浸透圧膨潤は、比較的大きなアスペクト比の剥離したクレイ粒子をもたらす。
【0005】
浸透圧膨潤は、通常、特定の化学物質による処理のようないくつかの工程を必要とし、さらに、高剪断力への暴露(例えば、非常に高い頻度での攪拌)、または合成ヘクトライトの場合、水による初期処理を必要とする。次いで、合成ヘクトライトなどの剥離したクレイと水との混合物の他の水性または有機調製物への移行は、これまで表面改質を必要としていた。
【0006】
例えば、下記文献においては、初めに水により処理された剥離クレイは、次いで、表面改質を達成するために四級化アンモニウム類で処理された。
-D.Kunz,J.Schmid,P.Feicht,J.Erath,A.Fery,J.Breu;ACS Nano,7;No.5(2013)4275-4280;
-H.Kalo,M.W.Moeller,D.A.Kunz,J.Breu;Nanoscale,4(2012)5633-5639;
-M.Stoeter,D.A.Kunz,M.Schmid,D.Hirsemann,H.Kalo,B.Putz,J.Senker,J.Breu;J.Am.Chem.Soc.,29(2013)1280-1285;および
- WO2018/033551A1
【0007】
そのような表面改質処理はまた、溶媒との混合または遠心分離、ふるい分けなどのさらなる工程を含み、剥離したクレイを水性媒体から溶媒系の媒体へ移送させる必要がある。媒体を移した後でのみ、溶媒系媒体中の剥離したクレイを、溶媒系接着剤などの溶媒系ポリマー組成物に適用できる。例えば、溶媒系ポリウレタン接着剤組成物に使用されるフィラーにかなりの量の水が含まれている場合、イソシアネート成分は水と反応し、脆い塊を作り、表面への接着性を欠き、CO2生成に起因する泡の発生を示す。
【0008】
さらに、H.XiaおよびM.Song、Polym Int 55:229-235(2006)は、トリヒドロキシル分岐ポリエーテルポリオール中で直接混合することによってクレイ層を剥離することを開示する。しかしながら、この方法は、クレイと特定のポリエーテルポリオールとを比較的長い時間、より高い温度で混合することを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、様々な鉱物、特にフィロケイ酸塩などの積層クレイ鉱物、特にヘクトライトタイプの浸透圧膨潤/剥離のための代替剥離剤を提供することであり、これにより、非水性媒体中の前記改質鉱物の懸濁液の直接かつ容易な調製が可能となる。言い換えれば、ヘクトライトを水中で剥離し、次いで有機マトリックス(例えば、溶媒系の調製物)に移行する代わりに、ヘクトライトを有機媒体中で直接剥離できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これに関して、驚くべきことに、本発明者らは、ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステル、環状カーボネートおよび非常に少量の水を含む剥離剤の使用が、鉱物の少なくとも部分的な剥離または完全な剥離を可能にすることを見出した。得られた剥離クレイ/鉱物の懸濁液は、接着剤、シーラント、コーティング組成物の添加剤として直接使用でき、その後、向上したガスバリア性を示す。
【0012】
したがって、第1の態様において、本発明は、少なくとも部分的に剥離したクレイを調製するための方法であって、以下:
(1)クレイを供給する工程;
(2)ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステル、環状カーボネートおよび水を含む剥離剤を供給する工程、ここで、水は、剥離剤の体積に基づいて10体積%以下の量で存在する;
(3)クレイと剥離剤とを混合する工程;および
(4)少なくとも部分的に剥離したクレイを得る工程
を含む方法に関する。
【0013】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載の調製方法によって得られる少なくとも部分的に剥離したクレイに関する。
【0014】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるような、少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液に関する。
【0015】
さらに別の態様において、本発明はさらに、本明細書に記載されるような、少なくとも部分的に剥離したクレイの使用に関する。
【0016】
さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるような、少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液の使用に関する。
【0017】
最後に、本発明はまた、本明細書に記載の少なくとも部分的に剥離したクレイおよび/または本明細書に記載の少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液を含むポリマー組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1は、実施例4に基づくサンプルのSAXS(小角X線散乱)測定の結果を示す。
図2は、実施例3に基づくサンプルのSAXS(小角X線散乱)測定の結果を示す。
図3は、実施例5に基づくサンプルのSAXS(小角X線散乱)測定の結果を示す。
図4は、比較例4に基づくサンプルのSAXS(小角X線散乱)測定の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のさらに好ましい実施形態は、特許請求の範囲に記載されている。
【0020】
本明細書において、「a」、「an」および「少なくとも1つ」という用語は、「1つ以上」という用語と同じであり、交換可能に用いることができる。
【0021】
本明細書で使用される「1つ以上」は、少なくとも1つに関連し、1、2、3、4、5、6、7、8、9または9以上の参照種を含む。同様に、「少なくとも1つ」とは、1以上、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9以上を意味する。任意の成分に関して本明細書で使用される「少なくとも1つ」は、化学的に異なる分子の数、すなわち、参照される種の異なるタイプの数を指すが、分子の総数を指すものではない。
【0022】
本明細書でポリマーまたはその成分の分子量に言及する場合、この言及は、特に明記しない限り、数平均分子量Mnをいう。数平均分子量Mnは、末端基分析(DIN 53240に準拠したOH数)に基づき計算するか、THFを溶離液として使用するDIN 55672-1:2007-08に準拠したゲル浸透クロマトグラフィーによって決定できる。特に明記しない限り、全ての所定の分子量は、末端基分析によって決定されたものである。重量平均分子量Mwは、Mnについて説明したようなGPCによって決定できる。
【0023】
組成物または調製物に関して本明細書に示されるすべてのパーセンテージは、特に明記しない限り、それぞれの組成物または調製物の総重量に対する重量%に関する。
【0024】
本発明による少なくとも部分的に剥離したクレイを調製するための方法は、以下の工程を含む:
【0025】
第1工程では、クレイが供給される。本発明の文脈において、積層鉱物構造を特徴とする任意のクレイは、浸透圧膨潤し、本明細書に開示される方法で剥離され得る。様々な実施形態において、クレイは浸透圧的に膨潤可能なクレイである。様々な実施形態において、クレイは、天然または合成の層状ケイ酸塩鉱物である。例えば、クレイはフィロケイ酸塩であり得る。様々な実施形態において、クレイは、好ましくは、スメクタイト、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、スティーブンサイト、バーミキュライト、カオリナイト、ハロイサイト、マガディアイトおよびフルオロヘクトライトからなる群から選択される。クレイは、Ca2+、K+、Na+、Li+など、クレイの分子格子内に自然に生じる陽イオンを含み得る。そのようなクレイまたは無垢のクレイは、市場で広く入手可能な市販の製品である。あるいは、それらは、例えば、Stoeter,M.;Kunz,D.A.;Schmidt,M.;Hirsemann,D.;Kalo,H.;Putz,B.;Senker,J.;Breu,J.Nanoplatelets of Sodium Hectorite Showing Aspect Ratios of 20000およびSuperior Purity.Langmuir 2013,29,1280-1285に記載される方法により合成し得る。
【0026】
様々な実施形態において、本発明による方法の第1工程で供給されるクレイは、フィロケイ酸塩である。
【0027】
様々な実施形態において、本発明による方法の第1工程で供給されるクレイは、好ましくはヘクトライトである。
【0028】
第2工程では、少なくとも1つの剥離剤が供給される。本明細書で使用される「剥離剤」という用語は、ヘクトライトなどのクレイを浸透圧膨潤させる化合物の混合物をいい、クレイの厚さ1nmの層がマトリックス中に分散され、マイクロスケールで複合構造を形成する。それにより、クレイの浸透圧膨潤および剥離は、剥離剤の化学的特性に依存している。本発明の文脈において、クレイ改質剤の構造は、本明細書に開示される化合物を使用して少なくとも部分的に剥離したクレイが得られ得るように、意図的に選択される。
【0029】
本発明によれば、剥離剤は、ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステル、環状カーボネート、および非常に少量の水を含む。水、好ましくは脱塩水は、剥離剤の体積に基づき、10体積%以下、好ましくは0.5~10体積%、より好ましくは0.1~5体積%、さらにより好ましくは0.5~3体積%の量で存在する。したがって、本発明の文脈において、クレイの膨潤および剥離に関しても、クレイが含まれるマトリックスの特性、例えば極性および化学的性質に関しても、水は重要な役割を果たさない。本発明に記載の剥離剤は、架橋剤との反応を可能にするヒドロキシおよび/またはチオール基などの官能基を有することができ、硬化時に形成される高分子ネットワークに組み込まれる。
【0030】
驚くべきことに、本発明者らは、有機化合物と少量の水とのそのような組み合わせを使用することによって、クレイの優れた剥離が達成できることを見出した。
【0031】
ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルは、以下のように表すことができる。
【化1】
〔式中、
R
1は水素またはメチルであり、R
2~R
5はそれぞれ独立して、水素またはC
1-6アルキルであり、好ましくはそれぞれ独立して、水素、メチルまたはエチルであり、
Lは、単結合または、場合により反応性基、例えばヒドロキシ、チオール、エポキシ、ビニルまたは(メタ)アクリル酸エステル基で置換される、直鎖または分岐鎖C
1-12アルキレン、C
3-12環状アルキレン、フェニレン、C
1-12ポリオールの残基から選択されるw価の連結基であり、好ましくは単結合またはペンタエリスリトール残基であり、
xは1~5、好ましくは1~3であり、
yは1~5、好ましくは1~3であり、
wは2~6、好ましくは2~4であり、
aおよびbは、それぞれ独立して1~50、好ましくは1~30であり、
cおよびdは、それぞれ独立して0~50、好ましくは0~30であり、
ただし、Lが単結合の場合、xとyは1であり、Lがw価の連結基の場合、wはxとyとの合計である〕
【0032】
本発明によれば、ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルは、少なくとも1つの末端ヒドロキシ基、好ましくは1つまたは2つの末端ヒドロキシ基を含む。
【0033】
種々の実施形態において、ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルは、ポリ(アルキレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレート、およびそれらの組合せから選択され、好ましくは、ポリ(エチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(エチレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0034】
特定の実施形態において、ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルは、150~3,000、好ましくは200~2,000の数平均分子量を有する。
【0035】
本発明におけるポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルは、市販されているか、当該技術分野で周知の方法によって調製できる。
【0036】
ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルの例は、360のMnを有するポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート、475のMnを有するポリ(プロピレングリコール)モノアクリレート、および375のMnを有するポリ(プロピレングリコール)モノアクリレートである(すべてSigma-Aldrich製)。
【0037】
本発明によれば、ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルは、剥離剤の体積に基づいて、30~90体積%、好ましくは50~85体積%の量で存在する。
【0038】
本発明に適する環状カーボネートは、以下の化合物、その二量体、およびそれらの組み合わせから選択される。
【化2】
【0039】
式(I)において、Aは、(C(R6R7))pによって表すことができ、ここで、pは2以上、好ましくは2または3、特に好ましくは2であり、R6およびR7は、それぞれ独立して水素原子、飽和若しくは不飽和の、直鎖若しくは分岐鎖若しくは環状、芳香族若しくはアリール脂肪族の、1~12個の炭素原子を有する任意に置換された炭化水素基、または、1~12個の炭素原子と最大3個の酸素原子を有するエーテル基である。Aは、R8Xによって表すことができ、ここで、R8は、1~20個の炭素原子を有する、二価脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族またはエーテルを含む任意に置換された炭化水素基であり、Xは、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基である。あるいは、Aは、Zによって表すことができ、ここで、Zは、不飽和重合性基であり、好ましくは、ビニル-、(メタ)アクリル-、マレイン酸-、フマル酸-、イタコン酸-またはクロトン酸-エステル基である。
【0040】
環状カーボネートは、50~1,000、好ましくは50~500の数平均分子量を有し得る。
【0041】
特定の実施形態において、環状カーボネートは、炭酸ビニレン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸グリセロール、5-エチル-5-(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、5-((アリルオキシ)メチル)-5-エチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキセピン-2-オンおよびそれらの組み合わせ、より好ましくは炭酸ビニレン、炭酸グリセロール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0042】
本発明におけるポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルは、市販されているか、または、当該技術分野で周知の方法によって調製できる。
【0043】
本発明によれば、環状カーボネートは、剥離剤の体積に基づいて、5~60体積%、好ましくは10~50体積%の量で存在する。
【0044】
一実施形態において、剥離剤は、30~90体積%、好ましくは50~85体積%のポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステル、5~60体積%、好ましくは10~50体積%の環状カーボネート、および0.1~10体積%、好ましくは0.5~5体積%の水を含む(パーセンテージは剥離剤の体積に基づく)。
【0045】
種々の実施形態において、剥離剤は、本発明の利点が損なわれない限り、剥離剤中に1つ以上の添加剤を任意に含む。そのような添加剤の例は、ケトン、ラクトン、ラクタム、ニトリル、ニトロ化合物、カルボキサミド、尿素化合物、スルホキシド、スルホン、エーテル、アルコール、第一級若しくは第二級アミン、カルボン酸、または、第一級若しくは第二級アミド類である。添加剤は、剥離剤の体積に基づき、0~10体積%、好ましくは0~5体積%の量で存在し得る。
【0046】
少なくとも部分的に剥離したクレイを得るために、本発明による方法の第3工程において、上記のクレイおよび上記の剥離剤を一緒に混合する。2つの成分は、クレイが剥離剤によって膨潤し、剥離剤中に剥離/分散するのに十分な時間にわたって、非水性懸濁液中で互いに混合される。種々の実施形態において、クレイと剥離剤との混合は、追加の穏やかな撹拌により行われる。種々の実施形態において、クレイと剥離剤との混合は、1~48時間、好ましくは4~24時間の期間にわたって行われる。
【0047】
本発明による方法の第3工程で供給されるクレイは、非水性懸濁液の形態で供給され、クレイは、剥離剤のマトリックス中で部分的または完全に剥離され得る。好ましくは、クレイは、少なくとも部分的に剥離したクレイである。本明細書で使用される「少なくとも部分的に剥離したクレイ」という用語は、一般に、鉱物層またはタクトイドが互いに完全にまたは部分的に分離しているクレイ(すなわち剥離剤分子のインターカレーション、およびそれにより生じるタクトイドの少なくとも部分的な剥離)をいう。
【0048】
クレイが部分的または完全に剥離され得る、本明細書に記載されるようなクレイの非水性懸濁液の調製方法は、当該技術分野で知られている。例えば、非水性クレイ懸濁液は、非水性クレイ混合物を、クレイを部分的および/または完全に剥離するための機械的混合などによる剪断力にかけることによって調製できる。これらの方法には、超音波処理、メガソニケーション、粉砕/破砕、高速混合、均質化などが含まれるが、これらに限定されない。このような高剪断法を本発明の方法で使用できるが、クレイは剥離剤と混合された後自発的であるため、これらの方法は剥離状態を達成するために必要とされない。例えばウルトラターラックススターラーまたは超音波処理の場合に発生するような高い剪断力および衝撃波は、鉱物プレートレットを貫通(穿刺の形成)または崩壊する可能性を有し、有害な影響を及ぼし得るため、本発明による方法にとって有益であり得る。本発明の種々の実施形態において、クレイは、剥離されたクレイ層および剥離されていないクレイ粒子の両方を含み得る。本発明の特定の実施形態では、非水性クレイ懸濁液の均質化は必要とされない。
【0049】
本発明の種々の実施形態において、方法の第3工程においてクレイおよび剥離剤は、20℃~60℃、好ましくは20℃~40℃、より好ましくは室温で混合される。
【0050】
本発明の種々の実施形態において、方法の第3工程においてクレイおよび剥離剤は、30分~6時間、好ましくは30分~4時間、より好ましくは1時間~2時間混合される。
【0051】
本発明の種々の実施形態において、第3工程で得られる少なくとも部分的に剥離したクレイは、実施例の項における小角X線散乱法で測定される、剥離したクレイ層と非剥離のクレイ粒子の合計に基づいて、50%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらにより好ましくは5%以下の非剥離クレイ粒子を含み、特に、非剥離クレイ粒子を含まない。
【0052】
様々な実施形態において、本発明による方法は、クレイを水で処理する工程、クレイの表面改質工程、および/または、クレイを別の溶媒系に移行する工程を含まない。したがって、本発明による方法は、クレイを粗製形態から容易に移行し、単一の移送工程において有機マトリックス中で部分的または完全に剥離する。
【0053】
さらなる態様において、本発明は、上記の調製方法によって得られる少なくとも部分的に剥離したクレイに関する。
【0054】
さらに別の態様では、本発明はさらに、本明細書に記載されるような、少なくとも部分的に剥離したクレイおよび剥離剤を含む懸濁液に関する。
【0055】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つの溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、ブタノン、酢酸エチルおよびアセトニトリルからなる群から、好ましくはエタノール、アセトン、ブタノンおよび酢酸エチルからなる群から選択される。特定の他の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、アセトニトリル、アセトン、ブタノン、エタノール、ジオキサンおよび酢酸エチルからなる群から選択される。種々の他の実施形態において、少なくとも1つの溶媒は、アセトン、ブタノン、エタノール、ジオキサンおよび酢酸エチルからなる群から選択される。
【0056】
本発明はさらに、本明細書に記載されるような、少なくとも部分的に剥離したクレイの使用に関する。
【0057】
種々の実施形態において、本明細書に記載されるような少なくとも部分的に剥離したクレイは、ポリマー組成物の調製のために使用される。
【0058】
本明細書に記載の方法におけるクレイの剥離は、剥離したクレイ粒子を1つの移送工程でポリマーマトリックスに移送することを可能にする。ポリマーマトリックス中の少なくとも部分的に剥離したクレイのより大きな剥離は、一般に、機械的特性(例えば、引張弾性率、破壊弾性率)、熱特性(例えば、熱伝導率)、および隔離特性(例えば、ガスバリア特性)などのより強化された特性をもたらす。このため、本発明による少なくとも部分的に剥離したクレイは、様々な応用分野のための技術的に有利で優れたポリマー組成物の調製において非常に有用である。
【0059】
さらに、本発明に従って少なくとも部分的に剥離したクレイは、その後、直接または他の調製物の改質のために使用し得る。例えば、クレイは一種のマスターバッチ調製物として生じる可能性があり、ガスバリア性能などの特性を調整するために他の調製物に追加できる。
【0060】
特定の実施形態によれば、ポリマー組成物は、コーティング組成物、シーラント組成物、および接着剤組成物からなる群から選択される。
【0061】
様々な実施形態において、少なくとも部分的に剥離したクレイ粒子のポリマーマトリックスへの移行は、本発明による少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液の供給を含み、それにより、少なくとも部分的に剥離したクレイを含む前記懸濁液は、高分子マトリックスへ移行される。
【0062】
したがって、本発明はさらに、本明細書に記載されるような、少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液の使用に関する。
【0063】
様々な実施形態において、本明細書に記載されるような少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液は、ポリマー組成物の調製のために使用される。特定の実施形態によれば、ポリマー組成物は、コーティング組成物、シーラント組成物および接着剤組成物からなる群から選択される。
【0064】
さらに、本発明は、本明細書に記載の少なくとも部分的に剥離したクレイを含むポリマー組成物および/または本明細書に記載の少なくとも部分的に剥離したクレイを含む懸濁液を対象とする。
【0065】
特定の実施形態によれば、ポリマー組成物は、コーティング組成物、シーラント組成物および接着剤組成物からなる群から選択される。
【0066】
種々の他の実施形態において、少なくとも部分的に剥離したクレイは、ポリマー組成物の固形分の総重量に基づき、0.1~25質量%、好ましくは1~10質量%の量で存在する。
【0067】
好ましい実施形態において、本明細書に記載の少なくとも部分的に剥離したクレイまたは少なくとも部分的に剥離したクレイの懸濁液を、接着剤組成物、特にポリウレタン接着剤組成物の添加剤成分として使用できる。本明細書に記載の少なくとも部分的に剥離したクレイは、1成分(1-c)または2成分(2-c)ポリウレタン接着剤組成物の添加剤成分として使用できる。特に好ましいポリウレタン(PU)接着剤組成物は、2-c接着剤組成物であり得る。これらの2-cポリウレタン接着剤組成物は、一般に、成分(a)および成分(b)を含み、成分(a)は樹脂成分であり、成分(b)は、硬化剤または架橋剤成分である。
【0068】
分離された形式では、2つのコンポーネント(a)と(b)は保存安定性である。
【0069】
特定の実施形態において、樹脂成分(a)は、少なくとも1つのポリオールおよび/または少なくとも1つのNCO反応性プレポリマーを含み、硬化剤成分(b)は、少なくとも1つのポリイソシアネートを含む。しかしながら、特定の他の実施形態において、樹脂成分(a)は、少なくとも1つのNCO末端プレポリマーを含み、硬化剤成分(b)は、少なくとも1つのポリオールおよび/または少なくとも2つのNCO反応性基を有する他の化合物を含む。一般的に、後者が好ましい。
【0070】
このような系において、本発明による少なくとも部分的に剥離したクレイは、硬化剤成分または樹脂成分に含まれ得る。好ましい実施形態では、少なくとも部分的に剥離したクレイは、硬化剤成分に含まれ得る。
【0071】
調製物の安定性を確保するために、貯蔵中に他の化合物の反応性基と反応しないという条件で、各成分にさらなる添加剤を組み込むことができる。
【0072】
本発明による好ましい実施形態では、樹脂成分(a)は、少なくとも1つのNCO末端プレポリマーを含む。
【0073】
適切なNCO末端プレポリマーは、少なくとも1つのポリオールまたは少なくとも1つのポリオール混合物を少なくとも1つのポリイソシアネートと反応させることによって調製でき、ここで、少なくとも1つのポリイソシアネートはモル過剰で使用される。
【0074】
NCO末端プレポリマーの調製に用いられる少なくとも1つのポリオールは、広範囲の市販製品、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、オレオケミカルポリオール、脂肪族、脂環式または芳香族ポリオール、OH基含有ポリマー、または、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリアクリレートのようなオリゴマー化合物、またはそれらの混合物から選択できる。
【0075】
適切なポリオールの1つの群はポリエステルポリオールであり、これは、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を過剰の二官能または三官能アルコールと縮合させることによって調製できる。カルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式、あるいはそれらの混合物であってよい。適切な酸の例は、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3-ジメチルグルタル酸、ヘキサヒドロフタル酸などの脂肪族系酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族系酸、マレイン酸、フマル酸、二量体脂肪酸などの不飽和酸、クエン酸およびトリメリット酸などのトリカルボン酸である。適切な二官能または三官能アルコールの例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセロールまたはトリメチロールプロパン、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-ジカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2,4-トリオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコールおよびポリブチレングリコール、ならびにグリセロール、トリメチロールプロパン、またはこれらの混合物などの低分子量アルコールが挙げられる。
【0076】
適切なポリエステルポリオールの他の群は、ポリカプロラクトンとも呼ばれるε-カプロラクトン、またはヒドロキシカルボン酸、例えばω-ヒドロキシカプロラクトンに基づく。このようなポリオールは、少なくとも2つのOH基、好ましくは末端OH基またはテトラヒドロフラン(THF)のポリマーを含む。
【0077】
本発明において有用であるポリエステルポリオールの別の群は、いわゆる油脂化学ポリオールである。そのようなポリエステルポリオールは、例えば、少なくとも一部がオレフィン的に不飽和の脂肪酸と、1~12のアルコールを有する1つ以上のアルコールとを含む脂肪混合物のエポキシ化トリグリセリドの完全な開環後、トリグリセリド誘導体の部分的なエステル交換によりアルキル基に1~12個の炭素原子を有するアルキルエステルポリオールを与えることによって調製できる。天然物に基づくそのような好適なポリオールの他の群は、ダイマージオール、ならびにヒマシ油およびそれらの誘導体である。
【0078】
ポリオールの他の群はポリアセタールである。ポリアセタールは、グリコール、例えば、ジエチレングリコール若しくはヘキサンジオールまたはそれらの混合物をホルムアルデヒドと反応させることによって得られる化合物であると理解される。本発明の目的に適したポリアセタールは、環状アセタールを重合することによっても得ることができる。ポリオールの他の群はポリカーボネートである。ポリカーボネートは、例えば、プロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール若しくはヘキサン-1,6-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール若しくはテトラエチレングリコールなどのジオールまたはそれらの2以上の混合物を、炭酸ジアリール、例えば炭酸ジフェニルまたはホスゲンと反応させることによって得ることができる。
【0079】
また、ポリ-bd(登録商標)の商品名で知られているヒドロキシ官能性ポリブタジエンも本発明での使用に適している。
【0080】
ポリカーボネートポリオールは、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール若しくは1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール若しくはテトラエチレングリコールなどのジオールまたはそれらの混合物を、炭酸ジアリール、例えば、炭酸ジフェニルまたはホスゲンと反応させることによって調製できる。
【0081】
他の適切なポリオール成分は、ポリエーテルポリオールであり、これは、低分子量多価アルコールとアルキレンオキシドとの反応生成物である。アルキレンオキシドは、好ましくは2~4個の炭素原子を含む。該当するタイプの適切な反応生成物は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパンと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド若しくはブチレンオキシドまたはそれらの2以上の混合物との反応生成物である。グリセロール、トリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール若しくは糖アルコールなどの多価アルコールまたはそれらの2以上の混合物と、ポリエーテルポリオールを形成するために言及したアルキレンオキシドとの反応生成物も適切である。そのようなポリエーテルポリオールは、組成物として、ホモポリマーとして、またはランダムコポリマー若しくはブロックコポリマーとして、異なる分子量で入手可能である。ポリエーテルポリオールの他の群は、テトラヒドロフランの重合によって調製できるポリテトラメチレングリコールである。
【0082】
また、500g/モル(数平均分子量Mn)未満の低分子量のポリエーテルグリコールも適切である。
【0083】
低分子量ポリオールの他の例としては、低分子量ジオールおよびトリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-若しくは1,4-ブタンジオール、1,5-ペタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオールのようなC2~C20ジオール、二量体脂肪酸アルコールまたは高級同族体ジオールまたはそれらの異性体が挙げられる。さらに、グリセロール、トリメチロールエタン(TME)、ペンタエリスライトおよび/またはトリメチロールプロパン(TMP)、またはペンタエリスライト、TMP若しくはTMEのオリゴマー、またはジグリセロール、トリグリセロールまたは糖アルコールのような高官能性アルコールのような3つ以上の官能基を有するポリオールを使用できる。
【0084】
組成物は、ヒドロキシ官能化ポリマーであるポリオール、例えば、ヒドロキシ官能化シロキサンをさらに含み得る。使用し得る例示的なシロキサンは、特に液体形態のヒドロキシ官能化ポリジメチルシロキサンであり、例えば、約2,200g/molの数平均分子量Mnを有するTegomer(登録商標)H-Si2311(Evonik、ドイツ)の名称で市販されているものである。適切なポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリオールは、例えば、US 6794445 B2に記載されている。それらは、使用されるポリオールの総重量に基づいて最大60重量%の量で使用でき、通常、例えば-150℃~-100℃の範囲の低いTg値を有する。
【0085】
NCO末端プレポリマーの合成に使用されるポリオールの数平均分子量Mnは、好ましくは、320~20,000g/mol、特に330~4500g/molの範囲内である。名目上の官能価は2~4.5の範囲であり得る。好ましくは、PUプレポリマーは、ポリエーテル/ポリエステル骨格を有する。
【0086】
樹脂成分(a)の調製のために、1つ以上の前述のポリオールを少なくとも1つのポリイソシアネートと反応させて、NCO末端プレポリマーを形成できる。少なくとも1つのポリイソシアネートは、反応混合物中に存在するすべてのポリオールのヒドロキシル基に対してモル過剰で使用される。特定の実施形態において、NCO反応性ポリウレタンプレポリマーのNCO:OH比は、必ずしもではないが、好ましくは1:1~1.8:1、好ましくは1:1~1.6:1、特に1.05:1~1.5:1である。
【0087】
NCO末端プレポリマーの調製に使用するのに適したポリイソシアネートは当該技術分野で知られており、2つまたは3つのNCO基を含むモノマーイソシアネートを含み得る。例えば、それらは、周知の脂肪族、脂環式または芳香族モノマージイソシアネートを含む。好ましくは、イソシアネートは、160g/mol~500g/molの分子量で選択され、例えば、芳香族ポリイソシアネート、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)などのジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の異性体;
1,3-フェニレンジイソシアナート、1,4-フェニレンジイソシアナートなどのフェニレンジイソシアナートの異性体;
ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、2,4-TDIおよび2,6-TDIなどのトルエンジイソシアネート(TDI)の異性体;
m-およびp-テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、m-およびp-キシレンジイソシアネート(XDI)、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート(TODI)、トルエンジイソシアネート、ナフタレン、ジおよびテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、およびそれらの組み合わせである。
【0088】
エチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、ダイマー脂肪酸ジイソシアネート、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,6-ジイソシアネート-2,2,4-トリメチルヘキサン、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサン-1,6-ジイソシアネート(HDI)、テトラメトキシブタン-1,4-ジイソシアネート、1,12-ジイソシアネート-ドデカン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサン若しくは1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2 、4-ジイソシアネート-シクロヘキサン、1-イソシアネートメチル-3-イソシアネート-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、水素化または部分的に水素化されたMDI([H]12MDI(水素化)若しくは[H]6MDI(部分的水素化))、またはHDIの三量体、または二量体若しくは三量体のトルエン-ジイソシアネートなどの脂肪族および脂環式イソシアネート、およびそれらの組み合わせも使用できる。
【0089】
アロファネート、カルボジイミド、イソシアヌレートなどの少なくとも部分的にオリゴマーのジイソシアネート、ジイソシアネートからの、例えばHDI、MDI、IPDIまたは他のイソシアネートからのビウレット縮合生成物を含むことも可能である。ポリマーMDIも使用できる。脂肪族または芳香族イソシアネートの混合物を使用できる。より好ましくは、芳香族ジイソシアネートを使用し得る。
【0090】
特定の実施形態において、樹脂成分(a)の少なくとも1つのNCO末端プレポリマーは、1,500~100,000、好ましくは2,000~50,000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する。通常、得られるプレポリマーのNCO含量は5~20重量%であり、名目上の平均官能価は2~3である。
【0091】
適切なNCO末端プレポリマーの例は、EP-A951493、EP-A1341832、EP-A150444、EP-A1456265およびWO2005/097861に開示されている。
【0092】
さらに、本発明による接着剤組成物は、硬化剤成分(b)を含む。適切な硬化剤成分は当該技術分野で既知である。NCO末端プレポリマー系の樹脂成分の場合、典型的には、ポリオール化合物が硬化剤成分に使用される。本発明の好ましい実施形態によれば、硬化剤成分(b)は、少なくとも1つのポリオールを含む。ポリオールは、上記のプレポリマーに関連して開示されたものから選択し得る。
【0093】
一般に、上記はNCO末端プレポリマーを参照して開示されているが、プレポリマー合成において記載された反応物のモル比を変えることにより、OH末端プレポリマーを生成できることが理解される。したがって、そのような実施形態では、上記と同じ化合物を使用できる。さらに別の実施形態では、上記で開示されたポリオールは、それ自体で、または樹脂成分としてOH末端プレポリマーと組み合わせて使用でし得る。その場合、硬化剤は、両方の場合において、ポリイソシアネートを含むであろう。
【0094】
さらに、本発明による接着剤は、他の助材を含んでいてもよく、これらは、好ましくは完全にまたは部分的に樹脂成分と混合される。助剤は、接着剤の特性、例えば粘度、濡れ挙動、安定性、反応速度または貯蔵寿命を所望の方向に変更するために一般に少量添加される物質である。特定の特性を改善するためのそのような添加剤は、例えば、消泡剤、湿潤剤、またはステアリン酸塩などの界面活性剤、シリコーン油、およびエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドと脂肪アルコールとの付加生成物;立体障害フェノール、チオエーテル、置換ベンゾトリアゾール、またはHALS型などのUV安定抗酸化剤;追加の接着促進剤、例えば、ヒドロキシ官能基、(メタ)アクリロキシ官能基、アミノ官能基またはエポキシ官能基のような加水分解性基を含むシラン(メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシ基を含む)と難燃剤である。
【0095】
架橋に関する接着剤の反応性を高めるために、場合により、接着剤は触媒を含んでいてよい。本発明に従って使用し得る適当な触媒は、特に、有機金属および/またはアミン触媒である。例としては、チタン酸テトラブチルまたはチタン酸テトラプロピルのようなチタン酸塩、ジブチルスズジラウレート(DBTL)、ジブチルスズジアセテート、スズオクトエート、ジブチルスズオキシド、Zr-アセチルアセトナート、Ti-アセチルアセトナート、Fe-アセチルアセトナートなどのキレート化金属、トリエチレンテトラミン、トリエチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザビシクロ-[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)、シクロヘキシルアミン、2-エチル-4-メチルイミダゾールのようなアミノ化合物が挙げられる。触媒は、好ましくは硬化剤成分に組み込まれる。
【0096】
添加剤の他の群は、粘着付与樹脂である。樹脂は、合成樹脂または天然樹脂としてさまざまな組成と種類で知られている。そのような樹脂の例は、アビエチン酸、アビエチン酸エステル、テルペン樹脂、テルペン/フェノール樹脂、ポリ-α-メチルスチレンまたは脂肪族、芳香族若しくは芳香族/脂肪族炭化水素樹脂またはクマロン/インデン樹脂である。
【0097】
必要に応じて、接着剤は顔料またはフィラーを含み得る。このような添加剤を、接着剤の特定の特性を変更するために使用できる。例えば、Ti、Zr、Al、Fe、Mg、Ca、BaまたはZnの酸化物、ケイ酸塩、硫酸塩、リン酸塩または炭酸塩、例えば、天然粉砕チョーク、沈殿チョーク、バライト、タルカム、マイカ、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸亜鉛または二酸化ケイ素である。水吸収性粉末、例えばゼオライトもフィラーとして存在し得る。フィラーは、例えば1~200μm、特に最大50μmのサイズに細かく分割された形態で存在するべきであるが、それらはナノスケールの顔料でもあり得る。
【0098】
組成物は、二酸化ケイ素をさらに含み得る。例としては、処理済みシリカ、沈降シリカ、未処理シリカ、特に焼成シリカまたはヒュームドシリカが有用である。
【0099】
組成物は、複数のカルボン酸基および/またはヒドロキシル基を含む追加のポリマーをさらに含み得る。この化合物はイソシアネートと反応し得るため、通常、硬化剤成分(b)に含まれる。そのような成分は、例えば、ポリカルボン酸ポリヒドロキシ酸アミド、ポリカルボン酸アミド、および修飾ポリヒドロキシ尿素から選択できる。このようなポリマーは、物理的チキソトロピー剤として知られており、市販されている。それらは、例えば、米国特許第6,420,466またはEP1048681に開示されている。
【0100】
原則として、種々の添加剤と助剤を各成分に含めることができる。しかしながら、成分(a)または(b)の他の化合物と反応しないそのような添加剤を選択することが有用である。特定の実施形態では、触媒は成分(b)に添加される。
【0101】
樹脂成分(a)および硬化剤成分(b)の両方を調製するための方法は、当該技術分野で知られている。2つの成分は、使用するまで別々に保存される。使用するために、樹脂および硬化剤成分は、それ自体既知の方法において一緒に混合される。樹脂成分(a)と硬化剤成分(b)を混合した後、接着剤組成物に存在するイソシアネート基と接着剤組成物に存在するOH基との比は、一般に当量の範囲であり、表面に存在する水分に対してわずかに過剰なイソシアネート基を供給するために便利である。NCO/OH比は、0.90:1~1.5:1、特に1.0:1~1.3:1にすべきである。
【0102】
本発明のポリウレタン接着剤は、適用温度で液体である。本発明のポリウレタン接着剤は、室温で液体であることが好ましい。様々な実施形態において、本発明による接着剤組成物は、DIN ISO2555(ブルックフィールド粘度計RVT、スピンドル番号4、25℃;5rpm)に従って測定される、40℃の温度で500~100,000mPas、特に1,000~20,000mPasの粘度を有する。本明細書に記載される接着剤は、1つ以上の溶剤を含んでもよく、無溶剤であってもよい。当業者に既知の適切な溶媒、特に、エステル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、アルカン、アルケンおよび芳香族炭化水素である。適当な溶媒の具体例は、塩化メチレン、トリクロロエチレン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン、酢酸メトキシブチル、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジクロロベンゼン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、酢酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチル、2-エチルヘキシルアセテート、グリコールジアセテート、ヘプタン、ヘキサン、イソブチルアセテート、イソオクタン、イソプロピルアセテート、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランまたはテトラクロロエチレン、または上記溶媒の2以上の混合物である。好ましい実施形態において、本発明のポリウレタン接着剤組成物は、溶媒を含まない。
【0103】
接着剤は、限定されないが、スプレー、ペインティング、ディップコーティング、スピンコーティング、印刷などを含むすべての既知の技術によって基材に塗布できる。
【0104】
したがって、本発明の別の実施形態は、本発明によるポリウレタン接着剤組成物の使用方法である。種々の実施形態において、そのような方法は、接着剤組成物を基材表面に塗布する工程を含み、そのための接着剤は、上述したポリウレタン接着剤組成物である。本発明による方法において、接着剤の2つの成分(a)および(b)は、塗布の直前に混合される。続いて、接着剤組成物が基材表面に塗布される。
【0105】
方法に関して本明細書に開示されるすべての実施形態は、開示される分散液、組成物、および使用に同様に適用可能であり、逆もまた同様であると理解される。
【0106】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供される。これらの例は説明のみを目的としているため、本発明はそれに限定されると見なされるべきではない。
【実施例】
【0107】
材料:
・炭酸ビニレンはSigma-Aldrichから入手できる。
・炭酸グリセロールはHuntsmanから入手できる。
・Jeffamine M-600は、Huntsmanから入手可能な以下の構造を有するポリエーテルアミンの商品名である。
【化3】
・JeffamineM-2070は、Huntsmanから入手可能なポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドに基づくポリエーテルアミンの商品名である。
・PPG-トリオールは、Voranol CP450の商品名のもとDowから入手可能なプロポキシル化グリセロールである。
・PEG-MAは、Sigma-Aldrichから入手可能なMnが360であるポリ(エチレングリコール)モノメタクリレートである。
・PPG-Aは、Sigma-Aldrichから入手可能なMnが475であるポリ(プロピレングリコール)モノアクリレートである。
・PPG-MAは、Sigma-Aldrichから入手可能なMnが375であるポリ(プロピレングリコール)モノアクリレートである。
・PETTEGE-DAは、下記構造を有するペンタエリスリトールテトラキス(テトラエチレングリコールエーテル)ジアクリレートである。
【化4】
【0108】
PETTEGE-DAは以下の手順で調製した。500mlの3つ口フラスコで、Sigma-Aldrichから入手可能なペンタエリスリトールエトキシレート15/4(EO/OH)を79.7g(0.1mol)秤量した後、真空乾燥し、乾燥窒素で曝気した。Sigma-Aldrichから入手可能なジクロロメタン200mlと、21.3g(0.21mol)のトリエチルアミンとを加え、混合物を撹拌し、氷浴中で0℃まで冷却した。Sigma-Aldrichから入手可能な18.1g(0.2mol)の塩化アクリロイルを滴下し、混合物を0℃で30分間、室温で30分間撹拌した。次に、沈殿物を濾過および洗浄により得た。最終製品の分子量は約973である。収率は41.1%である。
【0109】
表1の処方に従って、種々の剥離剤を調製した。2質量%の未処理のヘクトライトを、室温で2時間、各剥離剤と混合した。さらなる均質化は適用しなかった。次に、以下の基準に従って、浸透圧膨潤および剥離の状態についてサンプルを視覚的に観察した。
1.粗ヘクトライトの塊の崩壊が観察された場合
2.大幅な粘度上昇が見られた場合
3.光の干渉によるパーレセンス効果が観察された場合、および
4.均一な懸濁液が観察された場合。
【0110】
目視試験においては、すべての状態が観察された場合にのみ、サンプルを「合格」または「P」と評価した。基準のいずれかが観察されなかった場合、サンプルを「失敗」または「F」として評価した。試験結果を表1に示す。
【0111】
表1の試験結果において、本発明の全ての実施例(実施例1~実施例9)が、優れた浸透圧膨潤およびヘクトライトの完全またはほぼ完全な剥離を示したことは明らかである。
しかしながら、ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステル、環状カーボネートおよび/または水を含まない剥離剤を使用した比較例(CEx)1、6、7および9、ポリ(アルキレンオキシド)(メタ)アクリレートの部分エステルの代わりにポリエーテルアミンまたはポリエーテルポリオールを含む剥離剤を使用したCEx2~5、大量の水を含む剥離剤を使用したCEx.8では、不十分な剥離性能が観察された。
【0112】
また、クレイ懸濁液をSAXS(小角X線散乱)によってさらに試験した。測定は、デンマークのSAXSLAB製の試験機「Double Ganesha AIR」を使用して実施した。試験においてX線は、マイクロフォーカスビームを生成する、回転銅アノード(MicoMax 007HF、リガク株式会社、日本)によって生成された。位置感知検出器(PILATUS 300K、Dectris)を種々の位置で用いて、散乱ベクトルq=0.001-1Å-1の範囲をカバーした。測定の前に、各クレイ懸濁液を1mmのガラスキャピラリー(Hilgenberg、コード4007610)に充填した。円形に平均化されたデータは、入射ビーム、サンプルの厚さ、および測定時間に対して正規化された。
【0113】
これにより、フィロケイ酸塩のプレートレットの層間距離を決定できた。実施例4、3および5の各試験結果を示す
図1~
図3のそれぞれにおいて、未処理のヘクトライト(非剥離)の、または1.8nmのヘクトライトの凝集したプレートレットの初期層距離を表す(点線を参照)ピークは、完全にまたはほぼ完全に消えた。サンプルが剥離されていない場合、1.8nmに顕著なピークが見られる(点線を参照)、典型的な例(CEx.4)を
図4に示した。
【0114】
さらに、本発明の実施例による剥離したヘクトライト懸濁液は、ヒドロキシ基を有し、有意な量の水を含まない有機マトリックスを含む。そのようなヘクトライト懸濁液がポリウレタンベースの接着剤調製物に使用される場合、そのような調製物は優れた接着性およびガスバリア特性を達成できた。これは、フレキシブル包装に使用されるラミネート接着剤の場合に特に重要である。
【0115】
【国際調査報告】