(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】水素化反応用触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 31/06 20060101AFI20220714BHJP
C07C 5/08 20060101ALI20220714BHJP
C07C 5/03 20060101ALI20220714BHJP
C07C 5/09 20060101ALI20220714BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20220714BHJP
C07C 9/06 20060101ALI20220714BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220714BHJP
【FI】
B01J31/06 Z
C07C5/08
C07C5/03
C07C5/09
C07C11/04
C07C9/06
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548586
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 KR2020009187
(87)【国際公開番号】W WO2021066300
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0120801
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514291196
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スー、ミュンジ
(72)【発明者】
【氏名】コ、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ミンキー
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン、キョンリム
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BC16A
4G169BC17A
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC35A
4G169BC42A
4G169BC43A
4G169BC50A
4G169BC59A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE16A
4G169BE16B
4G169BE21A
4G169BE21B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169CB04
4G169DA05
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC11
4H006BA25
4H039CB10
(57)【要約】
本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒は、高分子支持体;及び上記高分子支持体に担持された触媒成分を含み、上記高分子支持体は、上記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子支持体;及び
前記高分子支持体に担持された触媒成分
を含み、
前記高分子支持体は、下記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含む、
水素化反応用触媒:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
前記化学式1及び2において、
R1~R4は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、
mは、0~4の整数である。
【請求項2】
前記化学式1は、下記化学式3~5、及び7~10のうちいずれか一つで表される、
請求項1に記載の水素化反応用触媒:
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
[化学式7]
【化6】
[化学式8]
【化7】
[化学式9]
【化8】
[化学式10]
【化9】
【請求項3】
前記化学式2は、下記化学式6、及び11~13のうちいずれか一つで表される、
請求項1または2に記載の水素化反応用触媒:
[化学式6]
【化10】
[化学式11]
【化11】
[化学式12]
【化12】
[化学式13]
【化13】
【請求項4】
前記触媒成分は、白金、パラジウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、金、銀、銅、チタン、ガリウム、セリウム、アルミニウム、亜鉛及びランタンのうち1種以上を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の水素化反応用触媒。
【請求項5】
前記水素化反応用触媒の総重量を基準に、前記触媒成分の含量は、0.01重量%~10重量%である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の水素化反応用触媒。
【請求項6】
前記水素化反応用触媒は、アルキンからアルケンへの水素化反応用触媒である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の水素化反応用触媒。
【請求項7】
下記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含む高分子支持体を準備するステップ;及び
前記高分子支持体に触媒成分を担持させるステップ
を含む
水素化反応用触媒の製造方法:
[化学式1]
【化14】
[化学式2]
【化15】
前記化学式1及び2において、
R1~R4は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、
mは、0~4の整数である。
【請求項8】
前記化学式1は、下記化学式3~5、及び7~10のうちいずれか一つで表される、
請求項7に記載の水素化反応用触媒の製造方法:
[化学式3]
【化16】
[化学式4]
【化17】
[化学式5]
【化18】
[化学式7]
【化19】
[化学式8]
【化20】
[化学式9]
【化21】
[化学式10]
【化22】
【請求項9】
前記化学式2は、下記化学式6、及び11~13のうちいずれか一つで表される、
請求項7または8に記載の水素化反応用触媒の製造方法:
[化学式6]
【化23】
[化学式11]
【化24】
[化学式12]
【化25】
[化学式13]
【化26】
【請求項10】
前記触媒成分は、白金、パラジウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、金、銀、銅、チタン、ガリウム、セリウム、アルミニウム、亜鉛及びランタンのうち1種以上を含む、
請求項7から9のいずれか1項に記載の水素化反応用触媒の製造方法。
【請求項11】
前記水素化反応用触媒の総重量を基準に、前記触媒成分の含量は、0.01重量%~10重量%である、
請求項7から10のいずれか1項に記載の水素化反応用触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年9月30日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2019-0120801号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、水素化反応用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
精油及び石油化学工場では多量の炭化水素が生産され、これは、その後の工程段階や貯蔵期間の過程で問題を起こす多量の不飽和炭化水素を含んでいる。かかる不飽和炭化水素は、例えば、アセチレン、プロピン(propyne)、プロパジエン、ブタジエン、ビニルアセチレン、ブチン、フェニルアセチレン、スチレンなどを含む。
【0004】
例えば、アセチレンは、エチレン重合工程で触媒の活性を減少させ、重合体の品質を低下させるものと知られている。そのため、エチレンからポリエチレンを合成する工程で、エチレン原料に含有されているアセチレンの濃度は最低限に抑えなければならない。
【0005】
このような不所望の不飽和化合物は、主に選択的水素添加反応によって数PPM以下程度に除去する。このように不飽和化合物を選択的に水素化する反応で、所望の化合物への選択性を高め、反応活性を低下させるコーク形成を避けるのが非常に重要である。
【0006】
従来は、ニッケル硫酸塩、タングステン/ニッケル硫酸塩又は銅含有触媒が選択的水素添加反応に使用されていた。しかしながら、高い温度でも触媒活性が低くて、重合体形成を低下させる。また、アルミナやシリカに支持されたパラジウム(Pd)又はPd及び銀(Ag)含有触媒も、選択的水素添加工程に使用されるが、選択性が満足ではないか、活性が低い。
【0007】
したがって、当技術分野では、水素化反応の生成物の選択性に優れ、触媒活性に優れた水素化反応用触媒の開発が必要であるというのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、水素化反応用触媒及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の一実施態様は、
高分子支持体;及び
上記高分子支持体に担持された触媒成分を含み、
上記高分子支持体は、下記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含むものである、水素化反応用触媒を提供する:
【0010】
【0011】
【0012】
上記化学式1及び2において、
R1~R4は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、
mは、0~4の整数である。
【0013】
また、本願の別の実施態様は、
上記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含む高分子支持体を準備するステップ;及び
上記高分子支持体に触媒成分を担持させるステップ
を含む水素化反応用触媒の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本願の一実施態様によれば、上記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含む高分子支持体を水素化反応用触媒の支持体として適用することができる。
【0015】
また、本願の一実施態様によれば、上記高分子支持体を含む触媒は、水素化反応の反応温度の範囲で安定性に優れ、水素化反応で生成物の選択度を向上させることができるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本願の一実施態様として、高分子支持体に触媒成分を担持する方法を概略的に示す図である。
【
図2】本願の一実施態様として、合成例1及び2に係る高分子の交差分極-マジック角回転
13C核磁気共鳴(cross polarization magic-angle spinning
13C nuclear magnetic resonance, CP/MAS
13C NMR)の分析結果を示す図である。
【
図3】本願の一実施態様として、合成例1及び2に係る高分子の示差走査熱量(differential scanning calorimetry, DSC)の分析スペクトルを示す図である。
【
図4】本願の一実施態様として、合成例1及び2に係る高分子の熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)の分析結果を示す図である。
【
図5】本願の一実施態様として、実施例1及び2に係る触媒の透過電子顕微鏡(transmission electron microscope, TEM)像を示す図である。
【
図6】本願の一実施態様として、実施例1及び2に係る触媒の熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)の分析結果を示す図である。
【
図7】本願の一実施態様として、実施例のアセチレンの転換率によるエチレンの選択性を示す図である。
【
図8】本願の一実施態様として、実施例のアセチレンの1/WHSVによる転換率を示す図である。
【
図9】本願の一実施態様として、合成例3及び4に係る高分子の熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)の分析結果を示す図である。
【
図10】本願の一実施態様として、合成例5及び6に係る高分子の熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0018】
本明細書において、ある部材が他の部材「上に」位置しているというとき、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた別の部材が存在する場合も含む。
【0019】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0020】
上述のように、従来は、水素化反応用触媒としてアルミナ支持体にPdを担持した触媒を使用するのが一般的であった。しかしながら、かかる触媒は、触媒の速い非活性化によって触媒の交換周期が早いという問題点があり、これによって工程コストが上昇し得るという問題点がある。また、従来は、水素化反応の生成物の選択度を向上させるために改質剤を投入していたが、これは工程コストが上昇するおそれがあり、追加の分離工程が必要であるという問題点がある。
【0021】
そこで、本願では、水素化反応の生成物の選択性に優れ、触媒活性に優れた水素化反応用触媒を開発しようとした。特に、本発明者らは、水素化反応用触媒に適用される支持体として高分子支持体を含む触媒を研究して、本願を完成するに至った。
【0022】
本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒は、高分子支持体;及び上記高分子支持体に担持された触媒成分を含み、上記高分子支持体は、下記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含む。
【0023】
【0024】
【0025】
上記化学式1及び2において、
R1~R4は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり
mは、0~4の整数である。
【0026】
本願の一実施態様において、化学式の「
【化5】
」は、繰り返し単位が連結される地点を意味する。
【0027】
本願の一実施態様において、上記化学式1は、下記化学式3~5、及び7~10のうちいずれか一つで表されることができる。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
本願の一実施態様において、上記化学式2は、下記化学式6、及び11~13のうちいずれか一つで表されることができる。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
本願の一実施態様において、上記化学式1及び2のアルキル基は、直鎖又は分枝鎖であってもよく、炭素数は、特に限定されないが、1~10であることが好ましい。上記アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルブチル基などがあるが、これにのみ限定されるものではない。
【0041】
本願の一実施態様において、上記化学式1及び2のアリール基の具体的な例としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本願の一実施態様において、上記化学式1及び2のR1~R4は、いずれも水素であってもよい。
【0043】
本願の一実施態様において、上記高分子支持体は、トリアジン環とベンゼン環とが中間連結基(-S-)で互いに結合された構造を有する。すなわち、上記化学式1及び2のトリアジン環に結合された3個の-S作用基は、それぞれベンゼン環と結合され、ベンゼン環に結合された1個又は2個の-S作用基は、それぞれトリアジン環と結合される構造を有する。
【0044】
本願の一実施態様において、上記高分子支持体は、架橋高分子(cross-linked polymer)から構成されるので、上記架橋高分子の分子量は特定されない。
【0045】
本願の一実施態様によれば、上記高分子支持体に水素活性金属(水素分子との接触によって活性化された水素を形成することができる金属)を担持することにより、アルキン(alkyne)のアルケン(alkene)への水素化などのような選択的水素化反応において、従来のアルミナ又はシリカ支持体を用いた水素化触媒に比べて高い選択度を示すことができる。一例として、 アルキン(alkyne)のアルケン(alkene)への水素化反応において、従来のアルミナ又はシリカベースの金属担持触媒の場合には、アルキン(alkyne)とアルケン(alkene)がいずれも金属表面に容易に吸着するので、アルキン(alkyne)のアルケン(alkene)への水素化とアルケン(alkene)のアルカン(alkane)への水素化とが非選択的になされる。しかしながら、本願の一実施態様のように上記高分子支持体を用いる場合には、上記高分子支持体と活性金属の間の強い結合力によって、活性金属の表面が高分子で取り囲まれるようになる。よって、活性金属を基準に、アルキン(alkyne)のように活性金属と高分子支持体の間の結合力よりも相対的に強い結合力を示す反応物は、活性金属に吸着するが、アルケン(alkene)のように相対的に弱い結合力を示す反応物は、活性金属に吸着できなくなる反応特性を有する。かかる特性によって、高分子支持体に活性金属を担持した触媒は、アルキン(alkyne)の水素化反応性はそのまま維持しながら、アルケン(alkene)の水素化反応性は抑制して、アルキン(alkyne)の水素化反応でアルケン(alkene)への高い選択性を示すことができる。
【0046】
本願の一実施態様において、上記触媒成分は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、 金(Au)、 銀(Ag)、銅(Cu)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、セリウム(Ce)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)及びランタン(La)のうち1種以上を含むことができる。
【0047】
本願の一実施態様において、上記水素化反応用触媒の総重量を基準に、上記触媒成分の含量は、0.01重量%~10重量%であってもよく、0.05重量%~5重量%であってもよい。上記水素化反応用触媒の総重量を基準に、上記触媒成分の含量が、0.01重量% 未満の場合には、触媒の反応性が低下するおそれがあって、好ましくない。また、上記触媒成分の含量が10重量%を超過する場合には、上記高分子支持体に比べて相対的に多量の活性金属を含有するようになって、活性金属と高分子支持体との結合が容易でないおそれがあり、これによって水素化反応によるアルケン(alkene)の選択度が低くなって、重量増加による水素化反応の実益が少なくなるおそれがある。
【0048】
本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒の製造方法は、上記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含む高分子支持体を準備するステップ;及び上記高分子支持体に触媒成分を担持させるステップを含む。
【0049】
本願の一実施態様において、上記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含む高分子支持体は、トリアジン構造体を含んでいる単量体Aとベンゼン環にチオールを含む単量体Bとを縮合重合して合成することができる。一例として、上記単量体Aは、シアヌル酸クロリド(cyanuric chloride)又はトリアジン環を含有していながら芳香族求核置換(nucleophilic aromatic substitution)が可能な作用基を有する化合物が挙げられる。また、上記単量体Bは、1,4-ベンゼンジチオール(1,4-benzenedithiol)、1,3,5-ベンゼントリチオール(1,3,5-benzenetrithiol)などが挙げられるが、これにのみ限定されるのではない。
【0050】
また、上記高分子支持体の製造時に、単量体A及びBの縮合重合反応の結果として生成され得る酸を除去するために、塩基性物質が用いられることができ、上記塩基性物質は、DIPEA(N,N-diisopropylethylamine)、K2CO3などが用いられることができるが、これにのみ限定されるものではない。また、上記単量体A及びBの縮合重合反応に使用されることができる溶媒は、アセトニトリル(acetonitrile)、シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのような非プロトン性(aprotic)の溶媒が挙げられるが、これにのみ限定されるものではない。
【0051】
また、上記単量体A/単量体Bのモル比は、0.5~2であってもよく、上記塩基性物質の量は、生成される酸を十分に滴定できる分、入れることができる。
【0052】
本願の一実施態様において、上記高分子支持体の製造方法は、次のように単量体A及び単量体Bを有機溶媒にいずれも溶かし、塩基性物質を0~15℃で入れて、0.5時間~1時間、25℃~30℃で2時間~4時間、80℃~140℃で12時間~24時間撹拌しながら反応させる。その後、生成された高分子を濾別して、メタノール、エタノール、アセトンのような溶媒で洗浄した後、30℃~100℃で乾燥させることにより、上記高分子支持体を製造することができる。
【0053】
本願の一実施態様において、上記高分子支持体に触媒成分を担持する方法は、上記触媒成分の前駆体としての化合物を含有する水溶液又は有機溶液(担持液)を準備し、上記高分子支持体を担持液に浸してから乾燥した後、水素気体に還元させる過程を経て担持する浸漬法を用いるか、あらかじめ還元をした金属ナノ粒子とともに撹拌して合成することができる。上記触媒成分の前駆体は、 Pd(acac)2、Pd(NO3)2・4NH3、Pt(acac)2、Pt(NO3)2・4NH3のような有機金属化合物を用いることができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0054】
上記浸漬法で担持する場合には、触媒成分の前駆体としての化合物を高分子支持体の空隙体積分の水や有機溶媒に溶解させて準備して、この溶液に高分子支持体を浸漬させ、溶媒を全部蒸発させてから乾燥後、高分子が損傷しない温度(<250℃)内で水素を流しながら還元させることができる。また、あらかじめ還元をした金属ナノ粒子は、有機溶媒に分散させた後、その溶液に高分子支持体を入れて溶液の色が全部消えるまで撹拌及び超音波処理をした後、濾過後に乾燥させて得ることができる。
【0055】
本願の一実施態様として、高分子支持体に触媒成分を担持する方法を、下記
図1に概略的に示す。
【0056】
本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒の製造方法において、上記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含む高分子支持体、上記触媒成分などの具体的な内容は、上述した通りである。
【0057】
本願の一実施態様に係る触媒は、水素化反応に適用されることができる。例えば、上記触媒は、アルキン(alkyne)からアルケン(alkene)への水素化反応に適用されることができる。本願の一実施態様に係る触媒は、アセチレン(acetylene)だけでなく、三重結合を持つ炭化水素化合物に同様に適用されることができる。例えば、プロピン(propyne)、ブチン(butyne)、ペンチン(pentyne)、ヘキサイン(hexayne)、へプチン(heptyne)、オクチン(octyne) などを含む。また、三重結合以外の他の作用基や二重結合を含む化合物、例えば、フェニルアセチレンのようなベンゼン環を有する化合物、カルボニル基を有するアルキン化合物、アルコール基を有するアルキン化合物、アミン基を有するアルキン化合物などで、水素化分解反応は抑制し、アルキン基のみアルケン基への選択的水素化反応に適用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本願を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳細に説明する。ところが、本願に係る実施例は、種々の異なる形態に変形されることができ、本願の範囲が、以下に詳述する実施例に限定されるものとは解釈されない。本願の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本願をより完全に説明するために提供されるものである。
【0059】
<実施例>
【0060】
<合成例1> 上記化学式3で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
【0061】
シアヌル酸クロリド(Cyanuric chloride, Sigma Aldrich)2g、1,4-ジチオールベンゼン(1,4-dithiol benzene, TCI)2.4gを1,4-ジオキサン(1,4-dioxane、サムジョン)300mLに入れて撹拌し、溶液が完全に透明になると、DIPEA(TCI)10mLを追加して、15℃で1時間撹拌を進行した。その後、25℃で2時間、85℃で21時間撹拌した後に濾過して、エタノールで洗浄し、60℃のオーブンで十分乾燥した。上記製造された高分子は、「di-S-POL」と表す。
【0062】
<合成例2> 上記化学式6で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
【0063】
上記1,4-ジチオールベンゼン(1,4-dithiol benzene)の代わりに1,3,5-トリチオールベンゼン(1,3,5-trithiol benzene, TCI)2.08gを入れて合成したこと以外には、合成例1と同様に行った。上記製造された高分子は、「tri-S-POL」と表す。
【0064】
<合成例3> 上記化学式4で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
【0065】
上記1,4-ジチオールベンゼン(1,4-dithiol benzene)の代わりに1,3-ジチオールベンゼンを用いたこと以外には、合成例1と同様に行った。
【0066】
<合成例4> 上記化学式5で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
【0067】
上記1,4-ジチオールベンゼン(1,4-dithiol benzene)の代わりに1,2-ジチオールベンゼンを用いたこと以外には、合成例1と同様に行った。
【0068】
<合成例5> 上記化学式7で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
【0069】
上記1,4-ジチオールベンゼン(1,4-dithiol benzene)の代わりに4-メチル-1,2-ジチオールベンゼン2.6gを用いたこと以外には、合成例1と同様に行った。
【0070】
<合成例6> 上記化学式8で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
【0071】
上記1,4-ジチオールベンゼン(1,4-dithiol benzene)の代わりに4-tert-ブチル-1,2-ジチオールベンゼン3.3gを用いたこと以外には、合成例1と同様に行った。
【0072】
<実験例1> 合成した高分子支持体の構造及び特性の分析
【0073】
上記合成例1及び2で製造した高分子支持体di-S-POL、tri-S-POLの構造を確認するために、CP/MAS
13C NMR分析を実施し、その結果を下記
図2に示す。上記
図2の結果のように、上記合成例1及び2で製造された高分子は、それぞれ化学式3及び6と同じ構造で存在するものと把握された。
【0074】
上記高分子支持体の物性分析のために、示差走査熱量(differential scanning calorimetry, DSC)分析を実施し、その結果を
図3に示す。上記
図3の結果のように、上記合成例1及び2で製造された高分子は、予想する構造のように架橋結合(cross-linking)されていて、Tm、Tcに該当するピークが現われないことを確認した。
【0075】
上記高分子支持体の熱的安定性を確認するために、合成した高分子を水素雰囲気で熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)を実施し、その結果を
図4、
図9及び
図10に示す。より具体的に、
図4、
図9及び
図10は、熱重量分析装置を用いて反応条件での高分子支持体の温度による重さの変化を示すものであって、水素条件で温度の増加による高分子の重さの変化を示したスペクトルである。下記
図4、
図9及び
図10の結果のように、上記合成例1~6で製造された高分子は、水素条件で約450℃まで安定していることを確認した。
【0076】
<実施例1> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
【0077】
1)パラジウムクラスターの合成
【0078】
アルゴン雰囲気で15mlのオレイルアミン(oleylamine)と75mgのPd(acac)2とを混合して、60℃で1時間撹拌した。その後、300mgのボランtert-ブチルアミン複合体(borane tert-butylamine complex)と3mlのオレイルアミン(oleylamine)との混合物を上記混合物に入れた後、90℃に加熱して1時間撹拌した。その後、上記混合物に30mlのエタノールを入れた後、遠心分離を通じてパラジウムクラスターを得、得られたパラジウムクラスターを20mlのヘキサンに分散してパラジウム-ヘキサン溶液として保管した。
【0079】
2)高分子支持体にパラジウムクラスターの担持
【0080】
上記合成例1で製造された高分子支持体3gをそれぞれヘキサン50mLに分散させ、上記合成された0.1重量%に該当する量の還元されたパラジウムナノ粒子を別にヘキサン 50mLに分散させた。上記パラジウムナノ粒子溶液を、撹拌している上記高分子支持体溶液の方にゆっくり入れた後、30分間撹拌させ、溶液の色が完全に透明になるまでソニケーターを用いて分散させた。その後、濾過をしてからエタノールで洗浄して、常温で乾燥した。
【0081】
<実施例2> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
【0082】
上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに合成例2で製造された高分子支持体を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0083】
<実施例3> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
【0084】
上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに合成例3で製造された高分子支持体を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0085】
<実施例4> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
【0086】
上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに合成例4で製造された高分子支持体を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0087】
<実施例5> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
【0088】
上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに合成例5で製造された高分子支持体を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0089】
<実施例6> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
【0090】
上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに合成例6で製造された高分子支持体を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0091】
<比較例1> パラジウムを担持したシリカ支持体触媒の合成
【0092】
実施例1において、上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに常用シリカ(Aldrich, 236772)を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。上記製造された触媒は、「Pd/SiO2」と表す。
【0093】
<実験例2> 金属を担持した高分子支持体触媒の構造及び特性の分析
【0094】
実施例1及び2の高分子支持体に担持された活性金属の状態を確認するために、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope, TEM)分析を実施し、その結果を下記
図5に示す。上記
図5の結果のように、Pd/di-S-POL、Pd/tri-S-POLのサンプルは、いずれも約4nmのパラジウム金属粒子が均一に分散して存在するものと把握された。
【0095】
実施例1及び2の高分子支持体触媒の熱的安定性を確認するために、パラジウムを担持した高分子触媒を水素雰囲気で熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)を実施し、その結果を
図6に示す。より具体的に、
図6は、熱重量分析装置を用いて反応条件での触媒の温度による重さの変化を示したものであって、水素条件で温度の増加によるパラジウムを担持した高分子支持体触媒の重さの変化を示したスペクトルである。下記
図6の結果のように、上記合成例1及び2で製造された高分子は、水素条件で約250℃まで安定していることを確認した。
【0096】
<実験例3> 担持触媒を用いたアセチレンの選択的水素化反応
【0097】
上記実施例及び比較例で製造された担持触媒の活性は、下記の方法で確認した。
【0098】
アセチレンの水素化反応は、0.6kPaのアセチレン、49.3kPaのエチレン、0.9kPaの水素、窒素ベースの気体を供給して、1気圧、60℃、0.021~1.25gC2H2 gcat
-1h-1の重量空間速度(weight hourly space velocity, WHSV)の条件で行われた。
【0099】
上記水素化反応での生成物の成分を分析するために、ガスクロマトグラフィーを使用して分析した。反応物(アセチレン)の転換率と生成物(エチレン、エタンなど)の選択度は、下記数式1及び2によって計算された。
【0100】
[数式1]
転換率(%)=(反応したアセチレンのモル数)/(供給されたアセチレンのモル数) ×100
【0101】
[数式2]
選択度(%)=(生成された生成物のモル数)/(反応したアセチレンのモル数)×100
【0102】
上記実施例1及び2で製造した触媒を使用したアセチレン水素化反応の結果を、下記表1、
図7及び
図8に示す。より具体的に、下記
図7は、アセチレン転換率によるエチレンの選択性を示す図であり、
図8は、アセチレンの1/WHSVによる転換率を示す図である。
【0103】
本願で適用した分析装置及び分析条件は、以下の通りである。
【0104】
1)交差分極-マジック角回転13C核磁気共鳴(cross polarization magic-angle spinning 13C nuclear magnetic resonance, CP/MAS 13C NMR)
使用装備:Avance III HD(400 MHz)with wide bore 9.4 T magnet(Bruker)
分析方法:Larmor frequency of 100.66 MHz, repetition delay time of 3 seconds. Chemical shifts were reported in ppm relative to tetramethyl silane(0 ppm)
【0105】
2)示差走査熱量(differential scanning calorimetry, DSC)
使用装備:DSC131 evo(Setaram)
分析方法:アルミナパンにサンプルを載置した後、313Kから593Kまで5K/minの速度で温度を調節しながら測定
【0106】
3)透過電子顕微鏡(transmission electron microscope, TEM)
使用装備:JEM-2100F(JEOL)at 200 kV
【0107】
4)熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)
使用装備:TGA N-1000(Scinco)
分析方法:323Kから1,025Kまで5K/minの速度で昇温しながら測定
【0108】
5)ガスクロマトグラフィー(gas chromatography, GC)
使用装備:YL6500(Youngin)
分析方法:on-line GC, equipped with FID(flame ionized detector、水素炎イオン化検出器)、GS-GasPro(Agilent)columnを利用
【0109】
【0110】
上記結果のように、本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒である実施例1の触媒(Pd/di-S-POL)、実施例2の触媒(Pd-tri-S-POL)及び実施例3~6の触媒は、高い転換率でも高いエチレン選択度を示し、同一の空間速度で比較例1の触媒(Pd/SiO2)に比べてエチレン選択度に優れることを確認することができる。
【0111】
上記化学式3~8のうちいずれか一つで表される繰り返し単位を含む高分子支持体を用いた実験結果から、化学式1又は2で表される繰り返し単位に、その作用原理が類似した他のアルキル基、アリール基などの作用基が追加で結合される場合にも、類似した効果を得ることができる。
【0112】
したがって、本願の一実施態様によれば、上記化学式1又は2で表される繰り返し単位を含む高分子支持体を水素化反応用触媒の支持体として適用することができる。
【0113】
また、本願の一実施態様によれば、上記高分子支持体を含む触媒は、水素化反応の反応温度の範囲で安定性に優れ、水素化反応で生成物の選択度を向上させることができるという特徴がある。
【国際調査報告】