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特表2022-533450有機金属蒸気を吸着する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(54)【発明の名称】有機金属蒸気を吸着する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20220714BHJP
【FI】
B01D53/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569549
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(85)【翻訳文提出日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 US2020033841
(87)【国際公開番号】W WO2020242863
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】62/852,506
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アップルガース, チャールズ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ギプソン, ロッキー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】フォクト, サラ
(72)【発明者】
【氏名】クック, ジョシュア ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウニング, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ホルツナー, マルコ
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA20
4D012CB13
4D012CE02
4D012CE03
4D012CF04
4D012CF05
4D012CF10
4D012CG01
4D012CG02
4D012CG05
4D012CH01
4D012CK01
4D012CK09
(57)【要約】
有機金属蒸気および他の蒸気、粒状材料、またはその両方を含有するガス混合物から有機金属蒸気を除去するために、有機金属蒸気を固体吸着材料に吸着させるのに有用な方法、装置、およびシステムを記載する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属蒸気および非有機金属蒸気を含有するガス混合物からガス状有機金属蒸気を除去する方法であって、ガス混合物を固体吸着剤に通すことと、有機金属蒸気を固体吸着剤に吸着させることとを含む、方法。
【請求項2】
ガス混合物が、周囲流れ圧力で、摂氏0~50度の範囲の温度で固体吸着剤を通る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非有機金属蒸気が、ガス状アンモニア、ガス状水素、ガス状窒素、およびそれらの組合せのうちの1つまたは複数を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有機金属蒸気が、ガリウムを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
有機金属蒸気が、トリメチルガリウムである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
固体吸着剤が、炭素吸着剤、ゼオライト、シリカ、およびアルミナから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
固体吸着剤が、1グラム当たり100~1500平方メートルの範囲の表面積を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
固体吸着剤が、3~8オングストロームの範囲の平均細孔サイズを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
有機金属蒸気、粒子、および非有機金属蒸気を含有するガス混合物をろ過する方法であって、方法が、
ガス混合物を熱交換器に通すことによってガス混合物の温度を低下させて、冷ガス混合物を生成することによってことと;
冷ガス混合物を粒子フィルターに通して、粒子を除去することと;
冷ガス混合物を固体吸着剤に通して、有機金属蒸気を吸着剤に吸着させることと
を含む、方法。
【請求項10】
ガス混合物が、ガス状アンモニア、ガス状水素、ガス状窒素、およびそれらの組合せから選択される非有機金属蒸気を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ガス混合物が、摂氏50度超の温度を有する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ガス混合物の温度を摂氏0~40度の範囲の温度に低下させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ガス混合物の温度を低下させる工程が、熱ガス混合物を、冷却要素中を流れる冷却液を有する該冷却要素を含む熱交換器に通すことを含み、冷却液が、摂氏30度未満の入口温度を有する、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
熱交換器が、
本体入口、本体出口、および本体内容積部を含む中空熱交換器本体と;
熱交換器本体内容積部内に位置し、かつコイル入口、コイル出口、およびコイル入口とコイル出口との間の複数のコイルターンを含む中空コイル本体と
を含む向流コイル型熱交換器であり、
ガス混合物が、本体入口から中空熱交換器本体に入り、内容積部を通って中空コイルの外面を通過し、本体出口から中空熱交換器本体を出、
冷却液が、コイル入口から中空コイル本体に入り、中空熱交換器本体を通るガス混合物の流れの方向とは逆の方向に中空コイル本体を流れ、コイル出口から中空コイル本体を出る、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
熱交換器が、
熱交換器本体内容積部内に位置し、かつ第2のコイル入口、第2のコイル出口、および第2のコイル入口と第2のコイル出口との間の複数の第2のコイルターンを含む第2の中空コイル本体を含み:
冷却液が、第2のコイル入口から第2の中空コイル本体に入り、中空熱交換器本体を通る熱ガス混合物の流れの方向とは逆の方向に第2の中空コイル本体を流れ、第2のコイル出口から第2の中空コイル本体を出る、請求項16に記載の方法。
【請求項16】
熱交換器を振動させて、有機金属材料が熱交換器の内面に集まるのを防ぐことをさらに含む、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
熱ガス混合物が、
15~40体積パーセントのガス状アンモニウム、
0~60体積パーセントのガス状水素、
0~70体積パーセントのガス状窒素、および
有機金属化合物
を含む、請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
有機金属化合物が、トリメチルガリウムである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ガス混合物が、アンモニアを含み:
冷ガス混合物から粒子を除去した後および冷ガス混合物から有機金属蒸気を除去した後、冷ガス混合物からアンモニアを回収することをさらに含む、請求項9から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
有機金属蒸気、粒子、および非有機金属蒸気を含有するガス混合物をろ過するシステムであって:ガス混合物の流れを熱交換器に通してガス混合物を冷却し、粒子フィルターに通してガス混合物から粒子を除去し、固体吸着剤に通してガス混合物から有機金属蒸気を除去することができるように配置されている、熱交換器、粒子フィルター、および固体吸着剤を含む、システム。
【請求項21】
熱交換器が、
本体入口、本体出口、および本体内容積部を含む中空熱交換器本体と、
熱交換器本体内容積部内に位置し、かつコイル入口、コイル出口、およびコイル入口とコイル出口との間の複数のコイルターンを含む中空コイル本体と
を含む向流コイル型熱交換器であり、
ガス混合物が、本体入口から中空熱交換器本体に入り、内容積部を通って中空コイルの外面を通過し、本体出口から中空熱交換器本体を出、
冷却液が、コイル入口から中空コイル本体に入り、中空熱交換器本体を通るガス混合物の流れの方向とは逆の方向に中空コイル本体を流れ、コイル出口から中空コイル本体を出る、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
熱交換器が、
熱交換器本体内容積部内に位置し、かつ第2のコイル入口、第2のコイル出口、および第2のコイル入口と第2のコイル出口との間の複数の第2のコイルターンを含む第2の中空コイル本体を含み、
冷却液が、第2のコイル入口から第2の中空コイル本体に入り、中空熱交換器本体を通るガス混合物の流れの方向とは逆の方向に第2の中空コイル本体を流れ、第2のコイル出口から第2の中空コイル本体を出る、請求項21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条の下で、2019年5月24日出願の米国仮特許出願第62/852,506号の利益を主張するものであり、その開示をすべての目的のためにその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、有機金属蒸気および他の蒸気、粒状材料、またはその両方を含有するガス混合物から有機金属蒸気を除去するために、有機金属蒸気を固体吸着材料に吸着させるのに有用な方法、装置、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
化学処理産業では、例えば、発光素子(LED)として機能する窒化物材料(例えば、窒化ガリウム)を調製するために、有機基に結合した金属原子を含有する有機金属化合物が原材料として使用される。有機金属化合物を化学プロセスで必要に応じて使用するために安全に保管および配送できることは、これらの化学材料を安全かつ確実に使用できるようにするための必須条件である。化学プロセスで使用するためにある種の有機金属化合物を保管および配送するシステムおよび方法は、米国特許第5,518,528号、同第5,704,965号、および同第6,132,492号、同第6,749,671号に記載されている。これらのプロセスの排出物中のガス状または粒状形態の未使用の有機金属類を隔離することも同様に必須である。排出物流からこれらの種を除去することは、規制要件の準拠に役立ち、プロセスガスの潜在的な再使用を可能にし、プロセスの継続的な稼働を実現する。
【発明の概要】
【0004】
有機金属化合物は、例えば、有機金属化学蒸気堆積法(MOCVD)による窒化ガリウム(GaN)の形成などの堆積プロセスを含めた様々な工業プロセスで使用される。窒化ガリウムを堆積させるための有用な原材料の例には、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、またはトリメチルアルミニウムなどの有機金属化合物と、一般的にはアンモニア(NH)である窒素源との組合せがある。堆積プロセスは、未反応の蒸気相有機金属化合物(例えば、トリメチルガリウム)と、ガス状窒素(N)、ガス状水素(H)、ガス状アンモニア(NH)、またはこれらの組合せなどの非有機金属材料とを一緒に含有するガス状排気流を生じる。さらに、有機金属マイクロ粒子ならびにそれに対応する金属酸化物および水酸化物(固有の水分および酸素との反応による)などの粒子が排出される。
【0005】
排気流の一部である有機金属粒子を、望ましくは、排気流のガス状成分から除去することができる。例えば、アンモニアなど、排気流のいくつかのガス状材料を、望ましくは、再使用のために処理する、すなわち、リサイクルすることができる。アンモニアを再使用するためには、有機金属粒子を排気流から除去して、アンモニアの純度を高レベルにする必要がある。これは、精製したアンモニアが非常に高レベルの純度を必要とする用途(例えば、半導体製造)で役立つために重要であるが、有機金属粒子がリサイクルプロセスおよびシステムでの処理を困難にする可能性があることからも重要である。有機金属粒子は、排気流のガス状成分を分離するために使用される機器を詰まらせる可能性がある。一例として、分離システムは、有機金属粒子が機械弁の表面に蓄積した場合、適切に閉じられない、かつ適切に密閉されない機械弁を含む可能性がある。別の懸念は、有機金属粒子が、排気流からガス状成分を分離または除去するのに使用されるフィルター(例えば、モレキュラーシーブ)の性能を乱す(例えば、詰まる)可能性があることである。
【0006】
本明細書において、ガス混合物から有機金属蒸気を除去するのに有用であり得る新規かつ進歩性のある方法、システム、および装置を開示する。ガス混合物は、窒化ガリウム材料を基板上に堆積させて、具体的にはLEDを形成するためのプロセスの排出物であり得る。あるいは、ガス混合物は、任意の他の堆積もしくは化学プロセスからの排出物であってもよく、または化学プロセスのための投入物もしくは原材料として役立ててもよい。
【0007】
一態様では、本明細書において、有機金属蒸気および非有機金属蒸気を含有するガス混合物から有機金属蒸気を除去する方法を開示する。この方法は、ガス混合物を固体吸着剤に通すことと、有機金属蒸気を固体吸着剤に吸着させることとを含む。
【0008】
別の一態様では、本明細書において、有機金属蒸気、粒子、および非有機金属蒸気を含有する熱ガス混合物をろ過する方法を開示する。この方法は、熱ガス混合物を熱交換器に通すことによって熱ガス混合物の温度を低下させて、冷ガス混合物を生成することと;冷ガス混合物を粒子フィルターに通して、粒子を除去することと;冷ガス混合物を固体吸着剤に通して、有機金属蒸気を吸着剤に吸着させることとを含む。
【0009】
さらに別の一態様では、本明細書において、有機金属蒸気、粒子、および非有機金属蒸気を含有する熱ガス混合物をろ過するシステムを開示する。このシステムは、熱ガス混合物の流れを、熱交換器に通して熱ガス混合物を冷却し、粒子フィルターに通し、かつ固体吸着剤に通すことができるように配置されている、熱交換器、粒子フィルター、および固体吸着剤を含む。
【0010】
本開示は、添付の図に関連する様々な例示的な実施形態の以下の説明を考慮すると、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】固体吸着剤を使用して、ガス混合物から有機金属蒸気を除去する、記載のフィルター装置および関連方法の一例を示す図である。
図2】固体吸着剤を使用して、ガス混合物から有機金属蒸気を除去することを含む、記載のシステムまたは一連の装置または方法工程の一例を示す図である。
図3】固体吸着剤を使用して、ガス混合物から有機金属蒸気を除去することを含む、記載のシステムまたは一連の装置または方法工程の一例を示す図である。
図4】記載のシステムまたは方法に有用であり得る熱交換器の一例を示す図である。
図5A】記載のシステムまたは方法に有用であり得る粒子フィルターの一例を示す図である。
図5B】記載のシステムまたは方法に有用であり得る粒子フィルターの一例を示す図である。
図6】記載のシステムまたは方法に有用であり得る有機金属蒸気除去フィルターおよび任意選択の粒子フィルターの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図はすべて、例示的で概略的なものであり、必ずしも縮尺どおりではない。
【0013】
以下は、ガス混合物から有機金属蒸気を除去するために、ガス混合物から有機金属蒸気を固体吸着剤に吸着させるのに有用な方法、システム、装置、および装置の組合せについての説明である。
【0014】
ガス混合物は、有機金属蒸気、有機金属化合物ではない追加の蒸気(非有機金属蒸気と呼ぶ)、および浮遊マイクロ粒子(マイクロ粒子、サブミクロン粒子、ナノ粒子などを含む)などの他の任意選択で存在する材料の組合せであり得る。ガス混合物は、有機金属蒸気をガス混合物の一部として、例えば、原材料としてまたは排出物として使用または生成することを含む任意の化学的もしくは物理的プロセスにおいて有用なものであるか、またはそのプロセスに由来するものであり得る。有機金属蒸気は、比較的少量、さらには極微量、例えば、ガス混合物の体積に対して10(体積)パーセント未満、または3、2、1、もしくは0.5パーセント未満で存在する可能性がある。有機金属蒸気を含有するある例示的なガス混合物はまた、ガス状(蒸気)形態のアンモニア、例えば、少なくとも15、20、30、または40(体積)パーセントなどのアンモニアを含む可能性がある。有機金属蒸気を除去するために本明細書の方法によって処理され得るある特定のガス混合物は、有機金属蒸気をアンモニア蒸気と組み合わせて含有する熱い排気流の形態である。ガス混合物はまた、例えば、水素、窒素、およびマイクロ粒子を含有していてもよく、冷却、ろ過(粒子を除去するため)、またはその両方によって予め処理された、加熱された排気ガスの流れに由来するガス混合物であってもよい。
【0015】
本明細書本文では、用語「蒸気」は、化学処理技術におけるこの用語の使用と一致するように使用され、ガス状態で分子形態で存在する化学材料を指し、例えば、有機金属蒸気は、分子形態でガス混合物中に存在する有機金属化合物である。
【0016】
有機金属蒸気は、1個または複数の有機部分(時には、「オルガニル基」とも呼ばれる)に結合(例えば、共有結合)した金属原子を含有する有機金属化合物であり得る、すなわち、有機金属化合物は、金属原子と有機部分との間に少なくとも1つの炭素-金属結合を含む。金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または遷移金属などの任意の金属であり得る。金属の例としては、アルミニウム、ガリウム、アンチモン、チタン、コバルト、タングステン、およびインジウムが挙げられる。有機部分は、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピルなど)、アリール、アルキルシリル、アルキルボリル、カルボニル、およびシアノなど、炭素-金属共有結合を形成することができる任意の有機基でよい。これらの基は、直鎖状、分岐状、または環状でもよく、炭素-炭素二重結合または芳香族環構造などの不飽和を含有していてもよく、任意選択で1個または複数のヘテロ原子または水素置換を含有していてもよい。
【0017】
有機金属蒸気としてガス混合物の一部であり、その有機金属蒸気がガス混合物から有機金属蒸気を除去するために固体吸着剤によって効果的に吸着され得るものである有機金属化合物の非限定的な例には、金属としてガリウム、アルミニウム、インジウムなどの遷移金属を有する有機金属化合物が挙げられる。金属は、1個または複数の有機残基と会合しており、その有機残基は、例えばアルキル基であり得る。1個より多い有機残基と会合する金属原子の場合、2個以上の有機残基が、同じでも異なっていてもよい。そのような有機金属化合物の具体例としては、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、およびトリメチルアルミニウム、およびトリメチルアンチモン((CHSb)が挙げられる。
【0018】
有機金属化合物の例はまた、これらまたは他の有機金属化合物のいずれかの化学誘導体であり得る。有機金属化合物は、プロセス(例えば、堆積)中に存在する別のガス状化学物質、例えば、ガス状の窒素、酸素、水、または水素と反応して、誘導体である酸化物、塩、金属酸化物、水酸化物などを形成することができる。
【0019】
ガス混合物はまた、有機金属化合物ではない、すなわち、非有機金属蒸気である1つまたは複数の追加タイプの蒸気を含有することもある。これらは、反応物として存在する、または反応生成物として生成される上流プロセスのガスであり得る。例としては、窒素蒸気(N)、水素蒸気(H)、水蒸気(HO)、アンモニア(NH)、酸素(O)、二酸化炭素(CO)など、工業化学プロセスに存在する一般的な蒸気を挙げることができる。非有機金属蒸気の1つまたは複数は、例えば再使用のために、および廃棄の必要性を回避するために、後続の工程で望ましくは収集することができるタイプのものであり得る。そのような蒸気の一例は、アンモニアである。これらの場合、非有機金属蒸気は、好ましくは、ガス混合物が固体吸着剤と接触したときに固体吸着剤に吸着されない。
【0020】
ガス混合物はまた、蒸気の分子よりも大きい浮遊固体粒子などの非蒸気材料を含有することもある。例示的な粒子は、10ミクロンよりも大きくてよい。他の粒子は、10ミクロン未満の粒子サイズを有する「マイクロ粒子」と呼ばれる固体粒子であり得、これはまた、サブミクロンサイズの粒子、例えば、0.5ミクロン未満から約0.1ミクロンまでを含めた1ミクロン未満のサイズを有する粒子も含む。これらのタイプの粒子は、化学プロセスの反応物もしくは反応生成物の凝集、水分もしくは酸素の侵入、または化学プロセスもしくは化学プロセス環境の配送または制御に関与する機器もしくは他の固体材料に由来する可能性がある。ガス混合物に含有され得る粒子の例には、有機金属蒸気に関して本明細書に記載するような有機金属化合物、または金属含有水酸化物もしくは酸化物の副生成物からできている有機金属マイクロ粒子が挙げられる。
【0021】
有機金属蒸気の固体吸着剤への吸着中、ガス混合物および固体吸着剤は、それぞれ独立して、有機金属蒸気の吸着剤への効果的かつ効率的な吸着を可能にする温度でよい。温度は、吸着が過度に阻害されるような極端に高い温度にすべきではない。有用な温度範囲の非限定的な例は、摂氏0~50度であり得る。
【0022】
同様に、有機金属蒸気が固体吸着剤に多量に吸着することを可能にする、すなわち、ガス流中に存在する有機金属蒸気の多くまたは大部分の量を効率的に除去することを可能にする圧力で、ガス混合物を固体吸着剤に呈することができる。ガス混合物の有用な圧力は、例えば、排気流の一部としてまたは排気流に由来する、工業化学プロセスを通るまたは工業化学プロセスからのガス状流体の連続的な流れを効率的に移動させるために一般的または典型的である圧力、および非加圧、つまり、ほぼ周囲圧力条件であると考えられる圧力であり得る。その流れは、真空またはインペラ(例えば、ファン)によって生成されるような機械的な力によって運ばれるガス状流体の「強制」流れと考えられるが、圧縮機もしくは温度低下によって生成される圧力によって運ばれるまたはその圧力を受けることはない。このような非加圧または「周囲」圧力の工業用ガスフロープロセスに一般的に使用される圧力は、2気圧(ゲージ)未満、例えば、1.5または1.3気圧(ゲージ)未満であり得、本明細書では「周囲流れ圧力」と呼ぶ。
【0023】
ガス混合物を固体吸着剤と接触させるための処理条件は、連続的または半連続的にガス流から多量の有機金属蒸気を効率的に除去することに効果的である可能性がある。固体吸着剤およびプロセス条件は、結果的に、ガス混合物から多量の有機金属蒸気を効率的に除去することにつながる可能性がある。例えば、ガス流を固体吸着剤と接触させる際に(例えば、図1に示すようにガス流を固体吸着剤の床に通すことによって)ガス流から除去される有機金属蒸気の量は、ガス流中に元々存在している有機金属蒸気の少なくとも90、95、99、または少なくとも99.9もしくは99.99パーセントである可能性がある。
【0024】
固体吸着剤は、一般的に顆粒状、例えば、粒子形態で、多孔質であり、その粒子が有機金属化合物などの夾雑物を吸着するのに有効な材料からできている材料である。様々なタイプの固体吸着材料が既知であり、市販されている。いくつかの例としては、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、アルミナ、シリカ、ゼオライト、金属酸化物、塩、活性炭(天然および合成)、化学的にコーティングされた炭素、ならびに化学的にコーティングされたポリマーが挙げられ、これらはいずれも多孔質粒子の形態で提供することができる。これらまたは他のフィルター媒体のいずれも、例えば、1つまたは複数の一般的または特定のタイプの有機金属蒸気の吸着を向上させるために、フィルター媒体の吸着特性を向上させる化学処理、例えば、コーティングを含むことができる。
【0025】
有用な固体吸着剤の一例は、活性炭であり、これは、主に炭素原子で構成される複雑な構造を有する高多孔性吸着材料として一般に既知である。活性炭は、化学結合によって互いに連結され、不均一に積み重ねられて、炭素層間に隅、割れ目、亀裂、および隙間の非常に多孔質な構造が作られている、炭素原子の無秩序な層の剛直なマトリックス内に存在する細孔のネットワークを含む顆粒状粒子の形態であり得る。様々な違った種類の活性炭として、顆粒状活性炭、粉末状活性炭、および押出炭素が挙げられる。
【0026】
ゼオライトの1つのタイプは、
x/n[(AlO(SiO・nH
[式中、xおよびyは、y/xが1以上の整数であり、nは、陽イオンMの価数であり、zは、各単位セル内の水分子の数である。]
として表されるアルカリまたはアルカリ土類元素のマイクロ多孔性結晶性アルミノケイ酸塩として記載されることがある。
【0027】
固体吸着剤は、表面積によって特徴付けることができる。記載の方法で使用するための有用なまたは好ましい固体吸着材料は、1グラム当たり100~1500平方メートル(m/g)の範囲の表面積を有することができる。有用なまたは好ましい表面は、吸着剤のタイプに基づいて異なることがある。例えば、活性炭吸着剤の表面積は、好ましくは、1グラム当たり1000~1500、例えば、1200~1300平方メートルの範囲でよい。ゼオライト吸着剤の表面積は、1グラム当たり100~200平方メートルの範囲でよい。固体吸着剤の表面積は、BET窒素吸着技術などの既知の技術によって測定することができる。
【0028】
有用な吸着剤は、例えば、100、50、15、または10オングストローム未満、例えば、3~8オングストロームなど、150オングストローム未満の平均細孔サイズという、これもまた有用な細孔サイズおよび細孔体積の性質を有し得る。
【0029】
次に図1を参照して、有機金属蒸気を固体吸着剤に吸着させることによって、有機金属蒸気を含有するガス混合物流れからガス状有機金属蒸気を除去する方法の概略図を説明する。フィルター100は、本明細書に記載の固体吸着剤粒子、例えば、活性炭、ゼオライトなどの床102を含む。有機金属蒸気、非有機金属蒸気、および任意選択の粒子(例えば、マイクロ粒子、サブミクロン粒子など)を含有するガス混合物104は、上流の供給源またはプロセスから流れ出る。ガス混合物104は、ろ過されて化学プロセスに送られる原材料であってもよく、または上流の化学プロセスによって生成された排気物もしくは排出物であってもよい。ガス混合物104は、床102の上流側にあるフィルター100の入口に流れ込み、床102を通って流れ、次いで、床102の反対側(下流側)にあるフィルター100からろ過済みガス混合物110として出るが、これに含有されている有機金属蒸気の量は減少している。ガス混合物102および104の温度および圧力は、これらの流れが周囲流れ圧力の条件にあることを含めて、本明細書に記載されている通りである。
【0030】
ガス混合物104の流れの速度および体積(例えば、フラックス)ならびに流れの圧力は、ガス混合物104中に存在する有機金属蒸気の大部分、ほとんど、または実質上すべてをガス混合物から除去して、ろ過済みガス混合物110を生成することが可能になる時間の間、ガス混合物104を床102内に存在させるのに効果的である。例えば、ガス混合物110は、ガス混合物104中に元々含有されていた有機金属蒸気の総量の1、0.1、または0.01(体積または質量)パーセント未満を含有している可能性がある。ガス流104中に存在する他の蒸気(水素、窒素、アンモニアなどの非有機金属蒸気)は、床102を実質上通過し、床102の固体吸着剤粒子に吸着されず、ガス混合物110中に含有されている蒸気としてフィルター100を出る;例えば、非有機金属蒸気の少なくとも95、99、または99.5(体積または質量)パーセントが床102を通過する可能性がある。
【0031】
図2は、ガス混合物の温度を低下させること、ガス混合物から有機金属蒸気を除去すること、およびガス混合物から粒子を除去すること(必ずしも特定の順序である必要はない)によって、ガス混合物(例えば、熱ガス混合物または「排気」流)を処理するのに有用な多段システムおよび方法の一具体例を示す。
【0032】
図示のように、プロセス202は、ガス混合物200を生成する工業プロセスである。プロセス202は、いずれの商業プロセスでもよく、本明細書本文の特定の実施形態では、発光素子(LED)を製造するプロセスであり得る。このタイプのプロセスは、アンモニアをはじめとする、非常に大量の高純度ガスを必要とすることが既知である。このプロセスの重要かつ高コストの特徴は、有機金属化学蒸気堆積法(MOCVD)で行うことができる、エピタキシャル堆積による活性な半導体層の成長である。MOCVDの工程では、トリメチルガリウムなどの揮発性有機金属前駆体から、さらにアンモニアなどの窒素源と組み合わせて、窒化インジウムガリウム(InGaN)などの金属窒化物化合物を作製する。多層LED構造は、典型的にはサファイアである基板上に堆積される。
【0033】
このタイプのLED製造プロセスを行うには、非常に高純度の原材料が必要である。これらの原材料の1つはアンモニアであるが、残念なことに、MOCVDプロセスでは効率的に使用されておらず、プロセスによって生成される排気流中にかなりの量が存在している。その排気流は、かなりの量のアンモニア、トリメチルガリウム前駆体またはその化学誘導体などの金属含有前駆体(有機金属蒸気)、水素(H)および窒素(N)などの非有機金属蒸気、ならびに場合により有機金属粒子などの固体粒子を含有する熱ガス混合物である。LED構造の金属窒化物化合物を生成するための有機金属化学蒸気堆積工程から排気ガスとして生成されるこのタイプのガス混合物の例は、以下のようなアンモニア蒸気、水素蒸気、および窒素蒸気の量を有する可能性がある:15~40体積パーセントのアンモニア蒸気、0~60体積パーセントの水素蒸気、および0~70体積パーセントの窒素蒸気;例えば、15~35体積パーセントのアンモニア蒸気、5~50体積パーセントの水素蒸気、および5~60体積パーセントの窒素蒸気。
【0034】
ガス混合物はまた、ある量の有機金属蒸気(例えば、トリメチルガリウムまたはその誘導体)およびある量の固体粒子(例えば、マイクロ粒子、サブミクロン粒子など)を含有する。排気物は、高温でMOCVDプロセスから流れ出るが、その温度は、反応器(堆積チャンバー)からの距離、および排気物を冷却工程で処理して温度を下げたかどうかなどの要因に依存する。反応器から出る排気物の温度は、反応器の温度に近い可能性があり、それは摂氏500度の高さになることがある。反応器から出た後、その温度は低下してもよいし、または冷却工程で低下させてもよいが、本明細書本文のシステムまたは装置(例えば、熱交換器)によって最初に処理したときには、少なくとも摂氏50、60、70、または80度の高温、および周囲流れ圧力のままである可能性がある。
【0035】
望ましくは、コストおよび廃棄物を削減するために、このタイプの熱い排気物に含有されているアンモニアを収集かつ再使用することはできるが、まず、有機金属蒸気および任意の粒子デブリも実質上除去しなければならない。したがって、ガス混合物から有機金属蒸気を除去する本明細書本文の方法の有用な適用の一例として、記載の方法を使用して、参照したタイプの熱い排気ガス混合物から有機金属蒸気を除去することができる。
【0036】
再び図2を参照すると、ガス混合物200は、発光素子(LED)を製造するプロセスでもあり得るプロセス202から連続的に流れ出る、説明したような熱い排気ガスでもよい。ガス混合物200は、アンモニア蒸気、水素蒸気、窒素蒸気、有機金属蒸気、およびある量の固体粒子(例えば、マイクロ粒子、サブミクロン粒子など)を含有している可能性がある。ガス混合物200は、高温で、周囲圧力またはその近く、例えば周囲流れ圧力でプロセス202を出る。温度は、プロセス202の間、摂氏500度と高くなる可能性があるが、ガス混合物200の温度を、熱交換器210に到達する前に、例えば、摂氏200度未満または摂氏100度未満(例えば、摂氏50、60、70、または80~100度の範囲の温度など)に低下させてもよい。
【0037】
プロセス202を出た後、ガス混合物200は、熱交換器210、粒子除去フィルター214、および有機金属蒸気除去フィルター218の少なくとも3つの段階のそれぞれを通る。これらの工程の各々を通る図示の順序は、第1の段階として熱交換器210、次いで、第2の段階として粒子除去フィルター214、次いで、第3の段階として有機金属蒸気除去フィルター218を通る。しかし、これらの工程は、必要に応じて異なる順序で実行することができ、これらの3工程のいずれかの前、後、または間に実行する1つまたは複数の追加工程(または段階)を含めて実行することもできる。例えば、上流の粒子除去フィルター214によって除去された粒子よりも小さいサイズの粒子を除去することができる第2の粒子除去フィルターを、任意選択で、蒸気除去フィルター218の前または後に(例えば、蒸気除去フィルター218の後の第4の段階として)含めて、前の段階による処理の後にガス混合物にまだ残っている任意の粒子(例えば、ミクロンスケールまたはサブミクロンスケールの粒子)を除去することができる。
【0038】
示すように、ガス混合物は、例えば、0~60、例えば、摂氏0~40度の範囲の温度を有する冷ガス混合物212として熱交換器210を出る。冷ガス混合物212は、粒子除去フィルター214に入り、粒子レベルが低下したろ過済みガス流216として出る。粒子が減少した冷ガス混合物は、有機金属蒸気除去フィルター218(図1および図6を参照)に入り、含有されている有機金属蒸気の量が減少したガス流として出る。
【0039】
ガス混合物220は、任意選択で、ミクロンサイズまたはサブミクロンサイズの粒子、例えば、6、5、4、または3ミクロン未満の粒子サイズを有する粒子を除去するために、別の粒子フィルター、例えば、第4の段階としての精密ろ過工程を使用することによってさらに処理することができる。追加の精密ろ過工程の有無にかかわらず、ガス混合物220は、次に、プロセス230によって示す任意の所望の方法で処理することができる。一例として、ガス混合物220は、ガス混合物からアンモニアを分離するためにプロセス230によって処理することができる。
【0040】
図3は、図2のシステム200などのシステムの有用な装置の具体例を示す。システム300は、熱交換器400、粒子除去フィルター500、および有機金属蒸気除去フィルター600をこの順序で含む。示すように、ガス混合物402、例えば、摂氏60度超の温度を有する排気ガスは、熱交換器400に入り、この熱交換器を通り、例えば、0~60、例えば、摂氏0~40度の範囲の温度を有する冷ガス混合物498として熱交換器を出る。冷ガス混合物498は、冷ガス混合物から固体粒子のかなりの割合を除去する粒子除去フィルター500に入る。ガス混合物は、固体粒子のレベルが低下したろ過済みガス流598として粒子除去フィルター500を出る。粒子が減少したガス混合物は、有機金属蒸気除去フィルター600(例えば、図6を参照)に入り、入ってくるガス混合物402と比較して、粒子および有機金属蒸気のレベルが低下し、かつ温度が低下したガス流698として出る。
【0041】
また、図3には、発振器または「バイブレータ」410を示しており、これは、熱交換器400と固体支持体(例えば、壁)との間に取り付けられ、振動して、熱交換器400に連続的な振動またはバイブレーション運動を起こさせる。振動の性質、例えば、振動を構成する運動の周波数および距離は、熱交換器400の内面における粒子の蓄積を防ぐのに効果的であり得る。
【0042】
図4は、有用な熱交換器400の一例をより詳細に示している。図示のように、熱交換器400は、熱交換器本体404、本体入口420、本体出口422、および本体内容積部424を含む向流コイル型熱交換器である。さらに、中空コイル本体426は、熱交換器本体内容積部424内に位置し、コイル入口430、コイル出口432、およびコイル入口とコイル出口との間の複数のコイルターンを含む。第2の中空コイル本体428もまた、熱交換器本体内容積部424内に位置し、第2のコイル入口440および第2のコイル出口442に接続されている。
【0043】
冷却液450は、コイル入口から中空コイル本体に入り、熱交換器本体を通る熱ガス混合物の流れの方向とは逆の方向に中空コイル本体を流れ、コイル出口から中空コイル本体を出る。熱ガス混合物402は、第1の温度で本体入口から熱交換器本体に入り、内容積部を通って中空コイルの外面を通過し、低下した温度で本体出口から熱交換器本体を出る。
【0044】
図5Aは、粒子除去フィルター500の一例を示す。図示のように、フィルター500は、フィルター500の内部506においてガス混合物498をサイクロン流(円形矢印で示す)で循環させることによって、入ってくるガス混合物498から粒子を除去するサイクロン式フィルターである。ガス混合物498は、入口502を通ってフィルター500に入り、円錐形フィルター内部506を通り、かなりの量の粒子が除去されたガス混合物598として出口504を通って出る。円錐形内部506で循環するガス混合物に含有されている粒子は、例えば重力によって下向きに粒子トラップ510に引き寄せられ、そこで粒子はフィルター500を出て、ガス混合物から除去され得る。循環しているガス混合物は、円方向に上向きに流れ、出口504を通って出るが、これに含有されている粒子の量は減少している。
【0045】
別の実施形態では、サイクロン式フィルターの代わりに、フィルター500は、図示したサイクロン式フィルターと一緒に、またはそれに代わるものとして含めることができるインパクション段階、炭素繊維収集段階、蛇行経路(例えば、複雑に入り組んだ)段階、および繊維媒体段階のうちの1つまたは複数を含む多段フィルターでもよい。図5Bは、ガス混合物498用の入口518、およびろ過済みガス混合物598用の出口516を含むフィルター500の一例を示す。入口と出口との間に複数のろ過段階がある。第1の段階は、フィルター底部に炭素繊維層522を含むインパクション段階520である。ガス混合物498は下に流れ、炭素繊維層522に接触(衝突)し、そこで粒子は炭素繊維層に捕捉され、閉じ込められる可能性がある。
【0046】
次の段階は、「複雑に入り組んだ」または「蛇行経路」段階524であり、ガス混合物の流れの進路を変えるバッフルまたは他の物理的構造を使用して作製され、ガス混合物が蛇行経路を通って流れるときにガス混合物中に存在する粒子の少なくとも一部がさらに進行するのを捕捉、制限、または抑制するのに効果的である。
【0047】
1つまたは複数の追加のフィルター段階526、528、および530は、繊維状材料に粒子を保持させながら、ガス混合物の流れを段階に通過させるのに有効な1つまたは複数の繊維状フィルター材料を含むことができる。繊維状フィルター材料は、好ましくは不純物が繊維状フィルター材料から繊維状フィルター材料を通るガス混合物に脱ガス(ガス放出)されることなく、フィルター段階を通るガス混合物の良好な流れと共に良好なろ過をもたらすように選択され得る。繊維状フィルター材料は、任意の有用な材料でよく、ステンレス鋼ウール、炭素ウール、セラミックウールなどを含めた様々な種類が一般に既知である。
【0048】
有用なフィルター500(例えば、サイクロン式フィルター、多段フィルター、または別のタイプの粒子フィルター)は、30、20、および10ミクロン未満の粒子サイズ(直径換算)を有するマイクロ粒子、例えば、約5または6ミクロンもの小さいサイズまで除去するのに効果的であり得る。
【0049】
図6は、記載の多段システムの第3および第4の段階の一例を示しており、第3の段階の例は有機金属蒸気除去フィルター600の一例であり、第4の段階の例は第2の粒子除去フィルター700である。図示のように、有機金属蒸気除去フィルター600および第2の粒子除去フィルター700は、単一構造のフィルター600に含まれるが、その代わりに、これらの2段階のろ過が、ガス混合物が2つの別々のフィルターの両方に個々に流れることを可能にする2つの異なるフィルター構造に別々に含まれることもある。
【0050】
図示のように、フィルター600は、入口602と、出口604と、固体吸着剤が入っている第1のフィルター床608および第2の粒子除去フィルターが入っている第2の床700を含む内容積部とを含む。ガス混合物598は、入口602を通ってフィルター600に入り、第1の床608およびその中に入っている固体吸着剤を通過して、ガス流から有機金属蒸気を固体吸着剤に吸着させ、ガス流から除去する。次に、ガス混合物は、第2の床700および第2の床に入っている粒子フィルターを通過して、ガス流からミクロンサイズまたはサブミクロンサイズの粒子を除去する。
【0051】
有用な第2の粒子フィルター700は、前の粒子フィルター、例えば、図5に示すようなサイクロン式フィルターによって除去された粒子のサイズよりも小さい粒子サイズ(直径換算)を有するマイクロ粒子を除去するのに効果的であり得る。例えば、第2の粒子フィルター700は、ミクロンサイズまたはサブミクロンサイズの粒子、例えば、6、5、4、3、1、0.5、または0.1ミクロン未満の粒子サイズを有する粒子を除去するために、精密ろ過が可能なものとすることができる。
【0052】
試料ポート620は、分析試験のために、床608を通って流れるガス混合物の試料を取り出して、有機金属化合物の存在および量などを測定することを可能にする。
【0053】
第1の態様では、有機金属蒸気および非有機金属蒸気を含有するガス混合物からガス状有機金属蒸気を除去する方法は、ガス混合物を固体吸着剤に通すことと、有機金属蒸気を固体吸着剤に吸着させることとを含む。
【0054】
第1の態様に係る第2の態様は、ガス混合物が、周囲流れ圧力で、摂氏0~50度の範囲の温度で固体吸着剤を通るものである。
【0055】
先行するいずれかの態様に係る第3の態様は、非有機金属蒸気が、ガス状アンモニア、ガス状水素、ガス状窒素、およびそれらの組合せのうちの1つまたは複数を含むものである。
【0056】
先行するいずれかの態様に係る第4の態様は、有機金属蒸気がガリウムを含むものである。
【0057】
先行するいずれかの態様に係る第5の態様は、有機金属蒸気がトリメチルガリウムであるものである。
【0058】
先行するいずれかの態様に係る第6の態様は、固体吸着剤が、炭素吸着剤、ゼオライト、シリカ、およびアルミナから選択されるものである。
【0059】
先行するいずれかの態様に係る第7の態様は、固体吸着剤が、1グラム当たり100~1500平方メートルの範囲の表面積を有するものである。
【0060】
先行するいずれかの態様に係る第8の態様は、固体吸着剤が、3~8オングストロームの範囲の平均細孔サイズを有するものである。
【0061】
第9の態様では、有機金属蒸気、粒子、および非有機金属蒸気を含有するガス混合物をろ過する方法は、ガス混合物を熱交換器に通すことによってガス混合物の温度を低下させて、冷ガス混合物を生成することと;冷ガス混合物を粒子フィルターに通して、粒子を除去することと;冷ガス混合物を固体吸着剤に通して、有機金属蒸気を吸着剤に吸着させることとを含む。
【0062】
第9の態様に係る第10の態様は、ガス混合物が、ガス状アンモニア、ガス状水素、ガス状窒素、およびそれらの組合せから選択される非有機金属蒸気を含むものである。
【0063】
第9または第10の態様に係る第11の態様は、ガス混合物が、摂氏50度超の温度を有するものである。
【0064】
第11の態様に係る第12の態様は、ガス混合物の温度を摂氏0~40度の範囲の温度に低下させることをさらに含む。
【0065】
第9から第12の態様のいずれかに係る第13の態様は、ガス混合物の温度を低下させる工程は、熱ガス混合物を、冷却要素中を流れる冷却液を有する冷却要素を含む熱交換器に通すことを含み、冷却液は、摂氏30度未満の入口温度を有するものである。
【0066】
第9から第13の態様のいずれかに係る第14の態様は、熱交換器が、本体入口、本体出口、および本体内容積部を含む中空熱交換器本体と;熱交換器本体内容積部内に位置し、かつコイル入口、コイル出口、およびコイル入口とコイル出口との間の複数のコイルターンを含む中空コイル本体とを含む向流コイル型熱交換器であり、ガス混合物が、本体入口から中空熱交換器本体に入り、内容積部を通って中空コイルの外面を通過し、本体出口から中空熱交換器本体を出、冷却液が、コイル入口から中空コイル本体に入り、中空熱交換器本体を通るガス混合物の流れの方向とは逆の方向に中空コイル本体を流れ、コイル出口から中空コイル本体を出るものである。
【0067】
第14の態様に係る第15の態様は、熱交換器が、熱交換器本体内容積部内に位置し、かつ第2のコイル入口、第2のコイル出口、および第2のコイル入口と第2のコイル出口との間の複数の第2のコイルターンを含む第2の中空コイル本体を含み、冷却液が、第2のコイル入口から第2の中空コイル本体に入り、中空熱交換器本体を通る熱ガス混合物の流れの方向とは逆の方向に第2の中空コイル本体を流れ、第2のコイル出口から第2の中空コイル本体を出るものである。
【0068】
第9から第15の態様のいずれかに係る第16の態様は、熱交換器を振動させて、有機金属材料が熱交換器の内面に集まるのを防ぐことをさらに含む。
【0069】
第9から第16の態様のいずれかに係る第17の態様は、熱ガス混合物が、15~40体積パーセントのガス状アンモニウム、0~60体積パーセントのガス状水素、0~70体積パーセントのガス状窒素、および有機金属化合物を含むものである。
【0070】
第17の態様に係る第18の態様は、有機金属化合物がトリメチルガリウムであるものである。
【0071】
第9から第18の態様のいずれかに係る第19の態様は、ガス混合物が、アンモニアを含み、方法が、冷ガス混合物から粒子を除去した後および冷ガス混合物から有機金属蒸気を除去した後、冷ガス混合物からアンモニアを回収することをさらに含むものである。
【0072】
第20の態様では、有機金属蒸気、粒子、および非有機金属蒸気を含有するガス混合物をろ過するシステムは、ガス混合物の流れを熱交換器に通してガス混合物を冷却し、粒子フィルターに通してガス混合物から粒子を除去し、固体吸着剤に通してガス混合物から有機金属蒸気を除去することができるように配置されている、熱交換器、粒子フィルター、および固体吸着剤を含む。
【0073】
第20の態様に係る第21の態様は、熱交換器が、本体入口、本体出口、および本体内容積部を含む中空熱交換器本体と;熱交換器本体内容積部内に位置し、かつコイル入口、コイル出口、およびコイル入口とコイル出口との間の複数のコイルターンを含む中空コイル本体とを含む向流コイル型熱交換器であり、ガス混合物が、本体入口から中空熱交換器本体に入り、内容積部を通って中空コイルの外面を通過し、本体出口から中空熱交換器本体を出、冷却液が、コイル入口から中空コイル本体に入り、中空熱交換器本体を通るガス混合物の流れの方向とは逆の方向に中空コイル本体を流れ、コイル出口から中空コイル本体を出るものである。
【0074】
第21の態様に係る第22の態様は、熱交換器が、熱交換器本体内容積部内に位置し、かつ第2のコイル入口、第2のコイル出口、および第2のコイル入口と第2のコイル出口との間の複数の第2のコイルターンを含む第2の中空コイル本体を含み、冷却液が、第2のコイル入口から第2の中空コイル本体に入り、中空熱交換器本体を通るガス混合物の流れの方向とは逆の方向に第2の中空コイル本体を流れ、第2のコイル出口から第2の中空コイル本体を出るものである。
【0075】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者なら、さらに他の実施形態が、本明細書に添付する特許請求の範囲内で作製および使用され得ることを容易に認識するであろう。本文書によって網羅される開示の多くの利点は、前述の説明に記載されている。しかし、本開示は、多くの点で例示にすぎないことを理解されたい。開示の範囲を超えることなく、細部、特に、形状、サイズ、および部品の配置に関して変更することができる。もちろん、開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を表す文言で定義される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属蒸気および非有機金属蒸気を含むガス混合物からガス状有機金属蒸気を除去する方法であって、方法が、ガス混合物を固体吸着剤に通すことと、有機金属蒸気を固体吸着剤に吸着させることとを含む、方法。
【請求項2】
非有機金属蒸気が、ガス状アンモニア、ガス状水素、ガス状窒素、およびそれらの組合せのうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機金属蒸気が、トリメチルガリウムである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
固体吸着剤が、炭素吸着剤、ゼオライト、シリカ、およびアルミナから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
有機金属蒸気、粒子、および非有機金属蒸気を含むガス混合物をろ過する方法であって、
ガス混合物を熱交換器に通すことによってガス混合物の温度を低下させて、冷ガス混合物を生成することと
冷ガス混合物を粒子フィルターに通して、粒子を実質上除去することと、
粒子が実質上除去された冷ガス混合物を固体吸着剤に通して、有機金属蒸気を固体吸着剤に吸着させることと
を含む、方法。
【請求項6】
非有機金属蒸気が、ガス状アンモニア、ガス状水素、ガス状窒素、およびそれらの組合せから選択される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
ガス混合物の温度を低下させる工程が、熱ガス混合物を、冷却要素中を流れる冷却液を有する該冷却要素を含む熱交換器に通すことを含み、冷却液が、摂氏30度未満の入口温度を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
熱交換器を振動させて、有機金属材料が熱交換器の内面に集まるのを防ぐことをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ス混合物が、
15~40体積パーセントのガス状アンモニウム、
0~60体積パーセントのガス状水素、
0~70体積パーセントのガス状窒素、および
有機金属蒸気
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
有機金属蒸気、粒子、および非有機金属蒸気を含むガス混合物をろ過するシステムであって、システムが、
熱交換器、
粒子フィルター、および
固体吸着剤
を含み、
システムが、ガス混合物の流れを熱交換器に通してガス混合物を冷却し、粒子フィルターに通してガス混合物から粒子を除去し、固体吸着剤に通してガス混合物から有機金属蒸気を除去することができるように配置された、システム。
【国際調査報告】