(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(54)【発明の名称】高温計を用いた基板温度の較正方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20220728BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220728BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20220728BHJP
G01J 5/00 20220101ALI20220728BHJP
G01J 5/80 20220101ALI20220728BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20220728BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20220728BHJP
【FI】
H01L21/66 T
H01L21/68 N
H01L21/265 T
G01J5/00 101C
G01J5/80
H01J37/20 E
H01J37/244
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569868
(86)(22)【出願日】2020-05-05
(85)【翻訳文提出日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 US2020031513
(87)【国際公開番号】W WO2020242733
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン, エリック ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アネラ, スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】リッシャー, ディー. ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】マクレーン, ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ポメロー, ブラッドリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】スン, ダーウェイ
【テーマコード(参考)】
2G066
4M106
5C101
5F131
【Fターム(参考)】
2G066AC01
2G066AC20
2G066BC15
2G066CA15
2G066CB01
4M106AA01
4M106CA02
4M106CA31
4M106DH02
4M106DH44
4M106DJ19
5C101FF02
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5F131KA55
5F131KA63
5F131KA72
5F131KB60
(57)【要約】
方法は、第1のチャンバ内で基板をプラテン温度に加熱することを含むことができ、加熱は、プラテン上で基板を加熱することと、接触温度測定法を用いて第1のチャンバ内のプラテン温度を測定することと、加熱後に、基板を第2のチャンバに移送することと、高温計電圧を時間の関数として測定するために、基板を第2のチャンバに移送した後に、光高温計を用いて電圧減衰を測定することとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のチャンバ内のプラテン上で基板を加熱することであって、前記プラテンはプラテン温度によって特徴付けられる、加熱することと、
接触温度測定法を用いて前記第1のチャンバ内の前記プラテン温度を測定することと、
前記加熱後に、前記基板を第2のチャンバに移送することと、
前記基板を前記第2のチャンバに移送した後に、高温計電圧を時間の関数として測定するために、光高温計を用いて電圧減衰を測定することと
を含む方法。
【請求項2】
前記プラテンはプロセスプラテンを備え、前記方法は更に、ゼロ時間を記録することを含み、前記ゼロ時間は、前記プロセスプラテンから前記第2のチャンバへの前記基板の移送が開始される移送インスタンスを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移送することは、前記移送インスタンスに続く第2のインスタンスで、前記基板を前記第2のチャンバ内の基板位置に配置することを含み、前記電圧減衰を測定することは、複数の電圧データを生成するために、複数のインスタンスで前記高温計電圧を測定することを含み、前記方法は更に、
電圧減衰曲線を生成するために、前記複数の電圧データに多項式関数をフィッティングすることと、
前記電圧減衰曲線を前記ゼロ時間まで外挿することと、
ゼロ時間における前記電圧減衰曲線と水平線との交点に対応する高温計電圧を決定することにより、ゼロ時間の高温計電圧を決定することと、
電圧-プラテン温度データ点を生成するために、前記ゼロ時間の高温計電圧を前記プラテン温度にマッピングすることと
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のチャンバは予熱ステーションを備え、前記方法は更に、
前記第1のチャンバ内で前記基板を加熱する前に、前記基板を前記予熱ステーションに配置することと、
前記基板を配置する前に、前記予熱ステーションを目標予熱温度に予熱することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のチャンバ内で前記基板を加熱することと、前記第1のチャンバ内の前記プラテン温度を測定することと、前記加熱後に前記基板を第2のチャンバに移送することと、前記基板の移送後に前記電圧減衰を測定することが、第1の較正サイクルを構成し、前記方法は更に、
少なくとも1つの追加の較正サイクルを実行することであって、前記第1の較正サイクルと前記少なくとも1つの追加の較正サイクルとの間で前記プラテン温度を上昇させる、少なくとも1つの追加の較正サイクルを実行すること
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記多項式関数をフィッティングすることと、前記電圧減衰曲線を前記ゼロ時間まで外挿することと、前記ゼロ時間の高温計電圧を決定することとが、第1の較正曲線サイクルを構成し、前記方法は更に、
少なくとも1つの追加の較正曲線サイクルを実行することであって、前記第1の較正曲線サイクルと前記少なくとも1つの追加の較正曲線サイクルとの間で前記プラテン温度を上昇させ、前記第1の較正サイクル及び前記少なくとも1つの追加の較正サイクルの各較正サイクルが、電圧-プラテン温度データ点を生成する、少なくとも1つの追加の較正曲線サイクルを実行することと、
前記第1の較正サイクル及び前記少なくとも1つの追加の較正サイクルに基づいて、複数の電圧-プラテン温度データ点を含む較正トレンドラインを生成することと
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板に対して第1の基板タイプを記録することと、
プロセス基板を前記第2のチャンバ内にロードすることと、
光高温計によって記録された前記基板の実験的基板温度を用いて前記第2のチャンバ内で前記プロセス基板を目標温度に加熱すること
を更に含み、
前記実験的基板温度は、
前記プロセス基板からの放射によって前記高温計に発生する実験的電圧を出力することと、
前記実験的電圧を前記較正曲線上の対応する基板温度にマッピングすることと
によって決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
目標温度範囲について、前記基板が前記プラテン上に配置されているときのプラテン温度と基板温度との間のオフセットを決定することと、
前記較正曲線及び前記オフセットに基づいて、補正された較正曲線を生成することと
を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
プロセスチャンバ内で基板プラテンをプラテン温度に加熱するために、加熱信号を送信することと、
接触温度測定法によって前記プラテン温度を測定することと、
前記基板プラテンが前記プラテン温度にあるときに、基板を前記プロセスチャンバ内の前記基板プラテンに移送するための第1の移送信号を送信することと、
温度安定化間隔の後に、移送インスタンスにおいて、前記基板を前記プロセスチャンバから移送して、前記基板を予熱ステーション内の基板位置に配置するための第2の移送信号を送信することと、
前記基板が前記基板位置に配置されたときに前記基板を測定する光高温計から、時間の関数としての複数の電圧読取値を受信することと、
所定の時間間隔に対して、前記複数の電圧読取値を含む電圧減衰曲線を生成することと
を含む方法。
【請求項10】
ゼロ時間を記録することであって、前記ゼロ時間は、プロセスプラテンから前記予熱ステーションへの前記基板の移送が開始される移送インスタンスを表す、ゼロ時間を記録することと、
前記電圧減衰曲線を生成するために、前記複数の電圧読取値に多項式関数をフィッティングすることと、
前記電圧減衰曲線を前記ゼロ時間まで外挿することと、
前記ゼロ時間における前記電圧減衰曲線と水平線との交点に対応する高温計電圧を決定することにより、プロセス温度に対応するゼロ時間の高温計電圧データを決定することと
を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板プラテンを加熱するための前記加熱信号を送信することと、前記プラテン温度を測定することと、前記第1の移送信号を送信することと、前記第2の移送信号を送信することと、前記ゼロ時間の高温計電圧データを決定することとが、第1の較正サイクルを構成し、前記方法は更に、
少なくとも1つの追加の較正サイクルを実行することであって、前記第1の較正サイクルと前記少なくとも1つの追加の較正サイクルとの間で第1の温度を上昇させる、少なくとも1つの追加の較正サイクルを実行することと
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの追加の較正サイクルの各較正サイクルにおいて、追加のゼロ時間の高温計電圧データが生成され、前記方法は更に、前記第1の較正サイクル及び前記少なくとも1つの追加の較正サイクルに基づいて、複数の電圧-プラテン温度データ点を含む較正曲線を生成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基板に対して第1の基板タイプを記録することと、
プロセス基板を前記予熱ステーション内にロードすることと、
前記プロセス基板が前記第1の基板タイプに対応することを決定することと、
光高温計によって記録された前記基板の実験的基板温度を用いて前記予熱ステーション内で前記プロセス基板を目標温度に加熱すること
を更に含み、
前記実験的温度が、
前記プロセス基板からの放射によって前記光高温計に発生する実験的電圧を出力することと、
前記実験的電圧を前記較正曲線上の対応する基板温度にマッピングすることと
によって決定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
コンピュータ可読プログラムコードを記憶する非一過性のコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読プログラムコードは、
(a)プロセスチャンバ内で基板プラテンをプラテン温度に加熱するための加熱信号を送信し、
(b)接触温度測定法によって前記プラテン温度を記録するための記録信号を送信し、
(c)前記基板プラテンが前記プラテン温度にあるときに、基板をプロセスチャンバ内の前記基板プラテンに移送するための第1の移送信号を送信し、
(d)温度安定化間隔の後に、移送インスタンスにおいて、前記基板を前記プロセスチャンバから移送して、前記基板を予熱ステーション内の基板位置に配置するための第2の移送信号を送信し、
(e)前記基板が前記基板位置に配置されたときに前記基板を測定する光高温計から、時間の関数としての複数の電圧読取値を受信し、
(f)所定の時間間隔に対して、前記複数の電圧読取値を含む電圧減衰曲線を生成する
ようにプロセッサによって実行可能である、非一過性のコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記コンピュータ可読プログラムコードが、
(g)前記基板プラテンから前記予熱ステーションへの前記基板の移送が開始される移送インスタンスを表すゼロ時間を記録し、
(h)前記電圧減衰曲線を生成するために、前記複数の電圧読取値に多項式関数をフィッティングし、
(i)前記電圧減衰曲線を前記ゼロ時間まで外挿し、
(j)ゼロ時間における前記電圧減衰曲線と水平線との交点に対応する高温計電圧を決定することにより、プロセス温度に対応するゼロ時間の高温計電圧データを決定する、請求項14に記載の非一過性のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、2019年5月31日に出願された「高温計を用いた基板温度の較正方法(METHOD FOR CALIBRATION OF SUBSTRATE TEMPERATURE USING PYROMETER)」と題する米国仮特許出願第62/855,465号の優先権を主張するものであり、その内容を全て、参照により本明細書に援用する。
【0002】
[0002]本実施形態は、高温での基板処理に関し、より具体的には、正確な基板温度の測定と制御に関するものである。
【背景技術】
【0003】
[0003]基板を高温で処理する場合、処理の前に基板を予熱することはよくあることである。例えば、プロセスツールの第1のチャンバ(予熱チャンバ)又はステーションで基板を予熱し、その後、第2のチャンバ(プロセスチャンバ)又はステーションに移送して、イオン注入、化学気相堆積(CVD)、物理的気相堆積(PVD)、基板エッチング、又はその他の適切なプロセス等の所定の工程が実行され得る。
【0004】
[0004]多くの場合、予熱チャンバ(又は予熱ステーション)での基板の加熱には、プロセスチャンバでの加熱とは異なる加熱装置が含まれる。例えば、プロセスチャンバでは、プラテンを加熱し、伝導、対流、及び/又は放射の組み合わせを通して基板に熱を伝達する抵抗加熱、又は同様の加熱が用いられることがある。予熱チャンバは、ヒートランプ、又はその他の非接触法で加熱され得る。
【0005】
[0005]同様に、基板温度の測定も、異なるチャンバで異なる技法によって実行され得る。例えば、基板の温度測定は、熱電対(TC)を用いて、基板又はプラテンから熱電対に伝導する熱を直接測定する(TC接触法)等の接触法で行うことができる。このTC接触法では、基板又はウエハの表面とTCとの間に良好な熱伝導性が必要となる。高真空環境では、TCの表面とウエハとの間に微小な間隙があると、この熱伝導性が著しく低下する。この低下により、接触時にTCの温度とウエハの表面温度との間に大きなオフセットが生じる可能性がある。また、TCとウエハの温度とのオフセットは、接触圧力によって変化し得るため、TCの接触力を制御するシステムがより複雑にならざるを得なくなる可能性がある。
【0006】
[0006]熱伝導によるオフセットは、TCとウエハ表面との間にガス(N2等)を流すことで低減させることができる。注目すべきは、このガスの流れの利用は、ガスの流れを供給し制御するシステムの導入によって、システムの複雑さとコストを増加させることである。
【0007】
[0007]更に、ユーザがプロセスウエハの裏側をコーティングする厚さ又は材料を変更した場合、このTC接触オフセットに予期せぬ変化が生じ得る。これらのコーティングは顧客固有のものであり、基板の温度制御の設置を担当するツール(プロセス機器)メーカーには開示されていない可能性がある。そのため、メーカーは、基板の裏側コーティングの変更に関連する温度のオフセットを解決するために、顧客を支援することが困難な場合がある。
【0008】
[0008]更に、予熱チャンバ又はステーションを含むプロセスツールでは、プロセスプロトコルにより、基板を処理するために所望の又は目標の基板に近い温度に基板を加熱することが求められることがあり、この温度を本明細書では「プロセス温度」と称することがある。一方、プロセスチャンバ内の基板ホルダ又はプラテンの基板温度は、プロセス温度を確立するために熱電対等の測定ツールを使用して、プロセスチャンバ内のプロセス温度に設定され得る。特に、実際の基板温度は、基板が予熱チャンバとプロセスチャンバとの間で移送される間に変化し得る。更に、予熱段階で基板の温度を測定するために接触法を使用すると、基板に傷等の不要な損傷を与える可能性がある。例えば、ウエハにTCを機械的に押しつけるには、通常、モータ及び機構を追加する必要があり、これらの装置は予熱ステーションのコスト及び複雑さを増加させ得る。更に、較正時にTCをウエハ表面に押しつける工程は、ウエハ表面に微細な傷をつける可能性があり、その傷が較正後のプロセスウエハを汚染する粒子の原因となり得る。
【0009】
[0009]更に、TC自体の質量による結果の兼ね合いも考慮に入れる必要がある。重いTCは、より安定した正確な温度が得られるが、通常は応答が遅くなり、機械の全体的なスループットが低下し得る。軽いTCは、温度応答は速いが、ノイズが多く、安定した信号が得られないことがある。
【0010】
[00010]これら及び他の検討事項に関して、本開示が提供される。
【発明の概要】
【0011】
[00011]一実施形態では、方法は、第1のチャンバ内のプラテン上で基板を加熱することを含むことができ、プラテンはプラテン温度によって特徴付けられる。本方法は、接触温度測定法を用いて第1のチャンバ内のプラテン温度を測定することと、加熱後に、基板を第2のチャンバに移送することと、高温計電圧を時間の関数として測定するために、基板を第2のチャンバに移送した後に、光高温計を用いて電圧減衰を測定することとを含み得る。
【0012】
[00012]別の実施形態では、方法は、プロセスチャンバ内で基板プラテンをプラテン温度に加熱するために、加熱信号を送信することと、接触温度測定法によってプラテン温度を測定することと、基板プラテンがプラテン温度にあるときに、基板をプロセスチャンバ内の基板プラテンに移送するための第1の移送信号を送信することとを含み得る。本方法は、温度安定化間隔の後に、移送インスタンスにおいて、基板をプロセスチャンバから移送して、基板を予熱ステーション内の基板位置に配置するための第2の移送信号を送信することを含み得る。本方法は、基板が基板位置に配置されたときに基板を測定する光高温計から、時間の関数としての複数の電圧読取値を受信することと、所定の時間間隔に対して、複数の読取値を含む電圧減衰曲線を生成することも含み得る。
【0013】
[00013]更なる実施形態では、プロセスチャンバ内で基板プラテンをプラテン温度に加熱するための加熱信号を送信するために、プロセッサによって実行可能なコンピュータ可読プログラムコードを記憶する非一過性のコンピュータ可読記憶媒体が提供される。コンピュータ可読プログラムコードは、接触温度測定法によってプラテン温度を記録するための記録信号を送信し、基板プラテンがプラテン温度にあるときに、基板をプロセスチャンバ内の基板プラテンに移送するための第1の移送信号を送信するように、プロセッサによって実行可能であり得る。コンピュータ可読プログラムコードは、温度安定化間隔の後に、移送インスタンスにおいて、基板をプロセスチャンバから移送して、基板を予熱ステーション内の基板位置に配置するための第2の移送信号を送信するように、プロセッサによって実行可能であり得る。コンピュータ可読プログラムコードは、基板が基板位置に配置されたときに基板を測定する光高温計から、時間の関数としての複数の電圧読取値を受信し、所定の時間間隔において複数の読取値を含む電圧減衰曲線を生成するように、プロセッサによって実行可能であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施形態に係る高温計温度減衰較正(PTDC)法を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る高温計温度減衰較正(PTDC)法を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る高温計温度減衰較正(PTDC)法を示す図である。
【
図4】
図3の較正点に基づく、温度対高温計電圧の単純なトレンドラインを示すグラフである。
【
図5】高温計からのウエハの温度推定値と、TCウエハによって測定された実際の温度とを示す例示的な曲線を表すグラフである。
【
図6】ウエハの開始温度とプロセスプラテンとの間のオフセットがゼロであると仮定した初期較正トレンドライン(破線)に対する補正トレンドライン(実線)を示す例示的な電圧対温度の曲線である。
【
図7】本開示の実施形態に係るプロセスフローを示す図である。
【
図8】本開示の実施形態に係るコントローラを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[00020]本実施形態では、予熱段階でウエハの温度を測定するために、TC等の接触測定の代わりに高温計を採用し得る。基板を測定するために光高温計(又は単に「高温計」)等の非接触技法を使用することで、基板に傷をつける等の問題、及びその他の上述した問題を回避することができる。予熱チャンバ内の基板温度を測定するために非接触法を使用すると同時に、プロセスチャンバ内の基板温度を測定するために接触法を使用すると、原理的に測定の不確実性が生じる可能性があるが、本明細書に開示される実施形態は、前述の問題を回避するために高温計を温度に較正する新規のアプローチを提供する。
【0016】
[00021]本実施形態によれば、まず高温計の出力を較正するために、最初に、基板又はウエハに直接又は間接的に接触するTCが使用される。このアプローチは、予熱ステーションでTCを使用することを避け、代わりに、遠隔プロセスステーションのプラテンに埋め込まれたTCの間接的な温度測定を使用して、高温計の較正中に既知の温度のウエハを予熱ステーションに供給することから、新規性がある。通常の構成では、遠隔プロセスプラテンには、熱伝導を向上させるためにプラテン表面とウエハとの間にN2等の不活性ガスを供給するシステムがすでに配設されている場合があるため、埋め込まれたTCは実際のウエハ温度をより正確に推定することができる。したがって、本実施形態では、プロセスチャンバのプラテン内の既存のハードウェアを活用して、基板を予熱チャンバに供給することができ、この場合、プロセスチャンバに存在するハードウェアによって、予熱ステーションに供給される時点で基板の温度は周知のものであり、予熱ステーションにおけるTCの必要性はなくなる。
【0017】
[00022]簡単に言えば、高温計を使用してウエハの温度を測定する前に、既知の温度範囲で加熱されたウエハを使用して高温計の出力を較正する。本実施形態では採用していないある可能なアプローチでは、高温計の較正には、予熱ステーションに高温計を配設するとともに、TCを異なる温度のウエハに接続する手段を設ける必要があり、これにより、高温計の出力(例えば、0Vから10V)とTCの温度が同時に測定され得る。
【0018】
[00023]理想的には、高温計の較正時にウエハ温度を正確に測定する方法は、ウエハ表面にTCが埋め込まれている、又は恒久的に取り付けられているTCテストウエハを使用することである。とりわけ、高温計の較正にTCテストウエハを使用することには、以下の幾つかの不利点がある。A)所定のウエハセットのプロセスウエハは顧客が所有している場合があるため、異なる放射率を有する異なるウエハタイプを構成する処理対象のウエハセットごとに、顧客が別のTCテストウエハを提供する必要がある。このアプローチでは、時間とコストが大幅にかかりすぎる可能性がある。B)無線版のTCテストウエハは嵩張るため、ウエハハンドリングチャンバ内のウエハステーション間の狭い開口部を通過できない可能性がある。C)有線版のTCテストウエハはハーネスが付いているため、ハンドリングチャンバ内でのウエハの移動が制限される。D)嵩張る無線版と有線版はいずれも、較正前にウエハを高真空に戻すことができる前に、TCテストウエハを適所に置くために基板処理ツールを排気する必要がある。半導体ツール等の基板処理ツールの排気は、排気により、排気と「再高真空」による長期の機械休止時間と、真空サイクル中にかき混ぜられた粒子を清掃する手順が必要になるため、望ましくない。E)代替アプローチとして、高温計の較正中にTCをウエハに押しつける方法がある。このアプローチは、TCをテストウエハに埋め込むアプローチで生じる真空サイクルの休止時間及びウエハの動きの制限を回避し、異なる放射率を有する顧客の各ウエハタイプを較正するために使用することができる。しかし、このアプローチにも不利点がある。これらの不利点には、TCを使用した従来のウエハ温度測定技法の不利点を含む、前述の問題が含まれる。
【0019】
[00024]本開示の様々な実施形態では、予熱ステーションにTCテストウエハ又は温度プローブなしで、予熱ステーションの高温計を較正する高温計温度減衰較正(PTDC)法が提示される。基板処理ツールで高温(例:200℃から800℃)で処理されたウエハは、プロセスチャンバ又はプロセスステーション内のプロセスプラテンに供給される前に、予熱ステーションで予熱され得る。プロセスの再現性のために、予熱段階で基板温度を測定する必要があり得る。以下の実施形態では、較正時にTC(熱電対)をウエハに取り付ける又は押し付ける必要なく、未知の熱放射率を有する独自のプロセスウエハ等のプロセスウエハに対して予熱ステーションの高温計を較正するアプローチを詳述する。これらのアプローチは非侵襲的であるため、システムの較正を定期的に確認するために、全基板の製造中にこのアプローチを繰り返すことができる。
【0020】
[00025]概要としては、PTDC法を採用した本実施形態では、ウエハ(本明細書で使用する用語「ウエハ」は、別段の指示がない限り、概して「基板」という意味で使用し得る)に焦点を当てた高温計の信号減衰応答を測定する。信号減衰は、ウエハがローカルな予熱ステーションに位置し、遠隔ステーション又はプロセスチャンバから取り出された後にクールダウンしているときに測定され、このとき、ウエハは以前に周知の手段で加熱され、初期温度が周知の方法で測定されている。一例として、ウエハは、イオン注入装置の注入ステーション、あるいは専用のウエハ加熱チャンバにおいて測定されたウエハ温度に初期加熱され得、これらの場所のいずれかがプロセスチャンバとみなされ得る。本実施形態では、測定又は較正システムは、高温計のクールダウン減衰応答(ボルト)に曲線をフィッティングすることができ、除去前の安定した温度で注入ステーション又はプロセスチャンバに位置するときにこの高温計がウエハに直接向いていた場合に高温計が読み取っていたであろう電圧値を表す電圧レベルまで外挿することができる。この外挿により、予熱ステーションに高温計(電圧)-ウエハ温度(℃)の較正点が与えられる。その結果、所定の較正曲線サイクル内で、既知の開始温度とそれに続く減衰応答のそれぞれに対して、単一の較正点(Vから℃)が得られる。有利なことに、所望の温度範囲(例えば、350℃から600℃)にわたって十分な数の較正点が集められ、ポイント間のトレンドラインが計算された後に、処理システムは、予熱ステーションにおける高温計読取値からウエハ温度を決定することができる。
【0021】
[00026]注目すべき点は、較正時に使用する特定のウエハタイプの赤外線放射率によって、クールダウン減衰応答曲線が変化し得ることである。例えば、放射率の高いウエハ(カーボン)は、低い放射率を有する標準的なシリコンウエハよりもはるかに速くクールダウンする。その結果、カーボンウエハのクールダウンの減衰応答は、シリコンウエハの減衰応答よりも速くなる。上記を鑑み、本開示の実施形態によれば、著しく異なる赤外線放射率を有する各ウエハタイプは、その赤外線放射率を有するそのウエハタイプに対する特定の較正曲線を生成するための較正手順を受け得る。したがって、様々な実施形態において、システムは、その特定のウエハタイプに対する高温計の較正データ(高温計較正曲線等)を記憶するための非一過性のコンピュータ可読記憶媒体(複数可)を含むことができ、これにより、処理ツールは、その特定のウエハタイプが処理前の予熱ステーションに到着したときに、特定の高温計較正曲線を使用するように切り替えることができる。
【0022】
[00027]様々な実施形態では、特定のウエハタイプに対して記憶された較正曲線をロードした後に、処理システムは、所定の高温計読取値を使用してウエハを再現可能な温度に予熱することができる。この予熱温度は、最適なスループットとプロセス結果を得るために制御され得る。また、この方法は非侵襲的であり、実際のプロセスウエハ上で動作し得るため、このクールダウン減衰応答をフル生産中に定期的に測定し、較正がプロセス制御限界内にあることを確認することができる。本開示の幾つかの実施形態によれば、この定期的な「ヘルスチェック」により、高温計の電子機器、配線、光学的アライメント等に問題がある場合、システムを停止してオペレータに警告することができる。また、ある実施形態では、このヘルスチェックを各カセットの最初のウエハに使用して、対応する較正曲線がアクティブになったときに、ウエハに割り当てられたウエハタイプが正しい温度応答を有することを確認することができる。
【0023】
[00028]以下の図面とフロー図は、遠隔注入ステーションでウエハを処理するように設計されたイオン注入装置等の処理ツールの予熱チャンバに位置する高温計の高温計温度減衰較正(PTDC)法の例を示すものである。本実施形態の較正工程は、結果として生じるクールダウン減衰応答のために、予熱ステーション(安定した温かい温度)に供給する前に、プロセスチャンバ内のプロセスプラテン上の既知の安定した基板温度から開始することにより、ウエハを「逆」に循環させる。簡単に説明すると、本実施形態は、光高温計によって記録された基板の実験的基板温度を使用して、予熱チャンバ等のチャンバ内でプロセス基板(生産基板)を目標温度に正確に加熱することを容易にするために採用され得る。実験的基板温度は、プロセス基板からの放射によって光高温計に発生する実験的電圧を出力し、その実験的電圧を較正曲線上の対応する基板温度にマッピングすることで決定される。上記較正曲線の作成については、以下の実施形態で詳述する。
【0024】
[00029]
図1~3は共に、本開示の実施形態に係る高温計温度減衰較正(PTDC)法を示す図である。特に、PTDC法は、550℃に対する高温計較正点(ボルト)を得るために使用される。
図1では、ロードロック102、移送チャンバ104、予熱ステーション106、及びプロセスチャンバ又はプロセスステーション108を含む、システム100として示す処理システムが示されている。以下に更に詳述する幾つかの実施形態によれば、PTDC法の1又は複数の工程は、制御システム又はコントローラ110によって制御され得る。
【0025】
[00030]第1の工程(段階1)では、ウエハ(別途図示せず)が、プロセスステーション108等のプロセスチャンバ内のプロセスプラテン101として示す基板プラテン上等の遠隔加熱ステーション上に配置され、基板プラテンは550℃まで加熱されている。遠隔加熱ステーションにおけるウエハの加熱及びウエハ温度の測定は、プラテンの抵抗加熱又は誘導加熱、及びTC等の接触温度測定を用いた測定等、周知の技法に従って実行され得る。また、プラテンの表面とウエハの間に裏側ガスを流しながら、プラテンに埋め込まれたTCで加熱と温度測定を行ってもよい。このようにして、遠隔加熱ステーションの正確な装置と条件に応じて、ウエハはプロセスプラテン温度よりも約10℃から50℃低い等の平衡温度に達している。注目すべきは、この10から50℃のウエハ温度のオフセットは、主にステファン-ボルツマンの法則を用いた赤外線放射に依存し得ることである。開始プラテン温度とウエハ温度との間のこのオフセットに影響を与える他の要因には、ウエハ上に存在する裏側ガス圧力、基板プラテンに対するウエハのクランプ力、及びウエハタイプの放射率が含まれる。図示を簡単にするために、幾つかの実施形態では、このオフセットはゼロであると仮定し得る。他の実施形態(後述)によれば、全体の較正精度を向上させるために、このオフセットを考慮して追加の工程が実行され得る。
【0026】
[00031]ウエハを約550℃に温度安定化させた後、初期高温計読取値及びその後のクールダウン減衰応答を得るために、この550℃のウエハ(オフセットがないと仮定して)を予熱ステーション106に可能な限り迅速に移動させ、ウエハ位置103に配置する。550℃の温度安定化ウエハがプロセスプラテン101に位置するときと、予熱ステーション106にウエハを配置して初期測定を行うときとの間の経過時間、又は移送間隔は、約7.5秒であり得る。しかしながら、実施形態はこの文脈に限定されるものではなく、移送時間はより少ない数の秒数であってもよいし、より多くの秒数であってもよい。
【0027】
[00032]様々な実施形態では、基板を予熱ステーションに配置する前に、予熱ステーションの予熱が目標予熱温度まで行われ得、この目標予熱温度はある温度範囲に設定され得る。例えば、各較正点測定において、予熱ステーションの加熱ランプを「保温」値に設定して、周囲の壁が50℃から150℃の温度に熱的に安定するようにしてもよい。他の実施形態では、予熱ステーションが室温に配置され得る、又は150℃を上回るように加熱され得る。このように周囲の壁を加熱することで、高温計読取値に対する背景赤外線放射の影響が、各較正点で大きく異なることがないようにする。他の実施形態において、背景放射が高温計読取値に不要なアーチファクトを加える可能性があるところでは、較正中の背景赤外線放射を低減させるために、較正中に予熱ステーションを「冷たい」室温に保つことができる。
【0028】
[00033]この移送間隔(例えば、7.5秒)の間、高温計105は、予熱ステーション106のウエハ位置103に焦点を合わせていてよいが、ウエハがまだ予熱ステーション106に到着していないので、高温計105にはまだ読取値がない(例えば、高温計はゼロボルトに近い値を示し得る)。高温計読取値のこのギャップのために、クールダウン減衰曲線が、較正点を得るために、後でゼロ時間まで外挿され(後述)、ゼロ時間は、プロセスプラテン101から予熱ステーション106への加熱された基板の移送が開始されるときの移送インスタンスを表す。
【0029】
[00034]ウエハが予熱ステーション106内に移送されるとすぐに、すでに電源が入って動作している高温計105は、電圧の急激な上昇で表されるように、ウエハの温度を読み取り始める。特に、高温計105の高温計信号電圧は、
図2の曲線202(実線)の垂直又は急峻な部分によって示すように、初期値まで跳ね上がる。
【0030】
[00035]その後、高温計によって、ウエハの温度減衰応答が測定される。言い換えれば、ウエハが予熱ステーション106に留まると、ウエハは予熱ステーション106に配置されたばかりのときの初期温度から自然にクールダウンされる(時間=7.5秒(
図2の線201)で表される)。幾つかの実施形態では、高温計の温度減衰応答(曲線203参照)を記録できるように、続いてウエハを予熱ステーション106に30秒から数分間維持する。図示したように、曲線203は実際には電圧減衰応答であり、ウエハ温度が低下するにつれて高温計電圧が時間とともに減衰することを表している。
【0031】
[00036]幾つかの実施形態によれば、高温計電圧減衰信号(曲線203)に最小二乗法による多項式曲線近似等の曲線近似を適用して、曲線203を移送間隔0から7.5秒(線201)(高温計読取値がなかったところ)にわたって外挿し(曲線204)、曲線204(破線)で示すように、時間=0の移送インスタンス(点205)まで戻すことができるようにしている。
【0032】
[00037]その結果、曲線204(破線)が生成され、T=0秒の垂直線と曲線204との交点からY軸に水平線(206)を延長することで、ウエハの移送インスタンスに対応するT=0秒の高温計電圧外挿値(点205)が決定される。
【0033】
[00038]幾つかの実施形態では、T=0秒に対応する移送インスタンス(点205)において、プロセスステーション108内の基板に供給される裏側ガス(BSG)がオフにされ、続いて基板ホルダから基板がクランプ解除される(この時間は、ウエハがクールダウンし始めるときである)。
図2の例に示すように、この一連の工程は、550℃のプロセスステーション108のプロセスプラテン101上にウエハが位置していたときに測定された場合にウエハの高温計読取値が約8ボルトとなるような高温計較正データ点の生成をもたらし得る。
【0034】
[00039]特に、プロセスチャンバ内のプラテン温度の測定、加熱後の予熱チャンバへの基板の移送、基板移送後の電圧減衰の測定が、較正サイクルを構成すると考えられる。更に、多項式関数の近似等の曲線近似、ゼロ時間に対する電圧減衰曲線の外挿、及びゼロ時間の高温計電圧の決定の組み合わせが、較正曲線サイクルを構成すると考えられ得る。以下に詳述するように、サイクルを繰り返して、所定の高温計読取値に基づいて所定の基板の基板温度を決定するのに有用なトレンドラインが生成することができる。
【0035】
[00040]
図3は、この同じ方法を用いて、異なる基板温度でより多くの較正点を得る方法を示す図である。例えば、301で指定された一連の工程で表される、プロセス温度(正確に測定されたプロセスプラテン温度を意味する)500℃のプロセスステーション内のプロセスプラテン上で開始したウエハについて、高温計の減衰曲線が計算される。302で指定された一連の工程で表される、450℃のプロセスプラテン上で開始したウエハについて、高温計の減衰曲線が計算される。303で指定された一連の工程で表される、400℃のプロセスプラテン上で開始したウエハについて、高温計の減衰曲線が計算される。304で指定された一連の工程で表される、350℃のプロセスプラテン上で開始したウエハについて、高温計の減衰曲線が計算される。いずれの場合も、基本的なシナリオは、所定のプロセス温度でのプロセスプラテンからの移送であり、移送間隔(線201)は7.5秒である。移送プロセスが開始されてから7.5秒後の所定の基板温度に特徴的な高温計電圧読取値(曲線202)の最初の跳ね上がりに続いて、基板がクールダウンするにつれて電圧対時間の減衰が起こる。
【0036】
[00041]
図4は、T=0秒の高温計値を横切る水平線に対応するY軸の切片から取得した電圧-プラテン温度データ点に基づく、基板温度対高温計電圧のトレンドライン401又は較正曲線を示すグラフである。また、T=0秒の高温計電圧値は、実線で示す
図3の高温計電圧測定曲線のそれぞれから外挿された外挿曲線(破線の曲線)とT=0秒の垂直線との交点を表している。
図4に示すように、高温計電圧の直線的な増加は、基板温度の上昇に対して起こる。システム100は、関数温度としての高温計電圧値のセットを使用して、所定の高温計電圧読取値に基づいて予熱ステーション106内のウエハ温度を推定し得る。この較正ルーチンは、著しく異なる放射率(温度減衰曲線)を有する各ウエハタイプに対して繰り返され得る。次に、システム100が新たなウエハタイプを処理しようとするときに、新たなウエハタイプに対応する、対応するトレンドライン、トレンドライン401又は較正曲線が、制御システム110によってシステム100にロードされ得る。次いで、システム100は、高温計105からのリアルタイムの高温計電圧読取値に基づいて、予熱ステーション106における、基板温度の正確な制御又は基板温度の読取値が得られるように、予熱ステーション106における出力及び/又は制御を調整し得る。
【0037】
[00042]
図5は、高温計から取得したウエハ温度推定値と、TCウエハで測定した実際の温度とを示す例示的な曲線を示すグラフである。
図5のグラフは、高温計からのウエハ温度推定値と、TCウエハによって測定された実際の温度とを示している。高温計読取値(実線の曲線502)は、ウエハが平衡状態に達したときに、ウエハの温度がプラテン温度501と同じであると仮定している。このオフセットゼロの初期仮定は不正確である可能性がある。平衡後、ウエハの温度は、一般に、プラテン温度よりも約10℃から50℃低い。破線507は、この例では、プラテンが500℃のときに、実際のウエハ温度(TCウエハ)がプラテン温度よりも約15℃低いことを示している。次に、ウエハがプラテンから取り外されてクールダウンした後に、温度が下がるにつれてウエハ(シリコンウエハ)が高温計電圧を発生させる原因である赤外線(IR)放射に対してますます透明になっていくため、高温計読取値(実線の曲線502)は実際のウエハ温度(破線503)よりも速い速度で減衰する。クールダウン中にウエハのIR放射に対する透明度が増すと、高温計がウエハを「見通す」ようになり、予熱チャンバの背景温度を拾うようになる。この背景放射はウエハ自体よりも温度が低いため、高温計の較正(実線)は、ウエハが実際(破線)よりも温度が低くなっていると考える。
【0038】
[00043]しかし、クールダウン間隔の最初の30秒ほど(灰色のボックス504で表される)において2つの曲線(電圧、温度)が緊密に近似している限り、較正ルーチンには、T=0(点505)まで外挿するのに適した正確な高温計電圧対時間トレンドを測定するのに十分な時間があり、ウエハがクールダウンし始める前のプラテン温度に対応する電圧を推定することができる。
【0039】
[00044]
図6は、初期較正トレンドライン602(破線)に対して作成された補正(実線)トレンドライン601を示す例示的な電圧対温度曲線を示し、初期較正ライン(破線)は、ウエハの開始温度とプロセスプラテンとの間のオフセットをゼロと仮定している。
図6では、ウエハの開始温度とプロセスプラテンとの間のオフセットをゼロと仮定して、初期較正トレンドラインに対して作成された補正(実線)を示している。
【0040】
[00045]このオフセットは、赤外線放射のステファン-ボルツマンの法則から得られる式を用いて計算され得る。このオフセットは、注入プラテン上のTCを搭載したテストウエハを用いて、異なる温度(0℃から800℃)、異なる裏側ガス圧、及びクランプ力で経験的に測定し、特徴づけることもできる。標準的なピュアシリコンメカニカルウエハに対するこのオフセットの特徴づけは、異なる放射率を有するウエハに対して、これらのウエハタイプが同じ条件下で著しく異なるオフセットを示す場合に、繰り返し行われ得る。様々な実施形態では、このオフセットの測定は、処理されている実際の基板のプロセス条件下でインシトゥで繰り返されることはない。なぜなら、そのようなアプローチには特別なTCが搭載されたウエハが必要となるためである。したがって、オフセット手順の使用の基礎となる仮定は、このオフセット(各条件について)が時間の経過とともに比較的安定しているということである。
【0041】
[00046]また、
図6は、オフセットトレンドラインを適用した後の補正された温度603も示している。これらは、予熱ステーション内の高温計電圧から温度への変換に使用するための値である。このように、
図6の結果となる前述のアプローチは、高温計電圧読取値に基づいて、予熱ステーション106内のウエハ温度を予測する較正曲線を生成する。
図6に示すように、所定の高温計電圧読取値、例えば、8Vの場合、補正ありで予測される基板温度は、補正なしよりも低くなる。
【0042】
[00047]つまり、オフセットを補正した場合、高温計電圧8Vは、補正していない高い基板温度550℃ではなく、低い基板温度(例えば535℃)に対応することになる。
【0043】
[00048]注目すべきは、
図6が、ある特定の赤外線放射率を持つ1つの特定のウエハタイプの較正トレンドラインを示していることである。この同じ方法を繰り返して、顧客が使用しようとしている放射率が著しく異なる各ウエハタイプに対する較正を得ることができる。本開示の実施形態によれば、このウエハタイプ(又は較正曲線自体)をレシピに入力すれば、予熱中のウエハ温度を予測するために高温計が使用される前に、どの較正曲線を適用するかをシステム100が知ることができる。
【0044】
[00049]注目すべきは、高温計が通常、特定のウエハ(ターゲット)の赤外線放射率を予期するようにプログラムされていることである。高温計の放射率プログラムの変更は、高温計の内部較正を異なる出力電圧範囲に切り替える。本実施形態の方法では、クールダウン中に高温計電圧減衰を測定するだけなので、高温計の予期放射率のプログラムは、全てのウエハタイプに対して同じ値を設定し得る。この点を考慮することは、高温計のデフォルトの放射率プログラムを選択し、変更しないようにすべきであることを意味する。例えば、一般的な未処理のシリコンメカニカルウエハの放射率は0.7がデフォルトとして選択される。高温計の放射率プログラム及び定数を維持することで、プロセスの再現性における潜在的な変動が1つ排除される。
【0045】
[00050]
図1~6で示す手順の結果、高温計の較正がウエハタイプごとに既知であるため、実際の生産ウエハの処理中に、処理対象のウエハを予熱ステーションで一定の温度に予熱し、プロセス制御を向上させることができる。追加の実施形態では、上述の較正手順を再利用して、高温計システム及び基板プロセスプラテンの定期的なヘルスチェックを行い、さまざまな問題を検出することも可能である。幾つかの非限定的な実施形態では、これらの問題には、a)高温計が間違った放射率のデフォルトに設定されているかを決定すること、b)高温計に光学的又は機械的なミスアライメントがあること、c)デブリやプロセス膜が増えて高温計のウィンドウが曇っていること等が含まれる。また、d)ウエハを処理するために使用されるレシピで、ウエハが間違ったウエハタイプとして識別される、e)BSGラインの障害により、基板処理プラテンの裏側ガス(BSG)の減少がプロセスステーションに存在する、f)プラテンの反り又は静電クランプの劣化により、プロセスプラテンのクランプ力の減少が存在する問題も含まれ得る。
【0046】
[00051]
図7は、本開示の実施形態に係るプロセスフロー700、特に、フロー図で上述した工程を詳細に提示する図である。プロセスフロー700は、一連の工程を含み、そのうちの幾つかの工程は、図示したように、繰り返され得る。ブロック702において、較正が所望される最低目標プロセス温度等のプロセスプラテンの温度が確立される。プロセスプラテンは、イオン注入装置の注入ステーション等の処理ツールのプロセスチャンバ又はプロセスステーション、又は基板が加熱される他のいずれかの処理ツール内にあり得る。プロセスプラテンの温度は、例えば、最低目標温度まで上昇させることができる。
【0047】
[00052]ブロック704において、ウエハを予熱するための予熱ステーションが予熱される。一例として、非限定的な実施形態では、内壁等の予熱ステーションの構成要素を50℃から150℃の範囲の温度に予熱するために、加熱ランプが使用され得る。特定の実施形態では、予熱ステーションは室温でもよく、あるいは150℃より高温であってもよい。
【0048】
[00053]他の実施形態では、較正中に、予熱ステーションの内壁は室温近くに維持され得る。
【0049】
[00054]ブロック706において、プロセスプラテン温度が目標温度で安定するように、また、予熱ステーション温度が予熱温度で安定するように、プロセスプラテン及び予熱ステーションは所定の間隔の間、一定の条件下に保持され得る。
【0050】
[00055]ブロック708において、所定のウエハが予熱ステーションに移送される。所定のウエハは、同じウエハタイプの生産ウエハを較正するために使用される特定のウエハタイプを表し得る。
【0051】
[00056]ブロック710において、オープンループ制御モードで、所定のウエハが予熱ステーション内で予熱される。このオープンループ制御モードは、プロセスプラテンの温度に基づいて、特定のランプ電力で、特定時間の間ウエハを予熱するための、単純な時間ベースのルックアップテーブルであり得る。半導体ウエハが加熱されると、半導体ウエハは熱膨張を起こす。すでに高いT0較正温度のプロセスプラテン上に室温のウエハが直接ロードされると、熱膨張は全てプロセスプラテン上で起こる。このような状況では、直接接触してウエハを加熱するように配置されたプロセスプラテンにクランプされている間、熱膨張時にウエハの裏側からの粒子によりプラテン表面が削られてしまう。そこで、この熱膨張時の粒子による削れを避けるために、非接触ランプでウエハを加熱する予熱ステーションで、ウエハの熱膨張のほとんどが起こるようにすることができる。高温計の較正が完了していないため、この予熱されたウエハの正確な温度は不明である。しかし、ウエハが特定電力のランプで加熱されていた時間から、ウエハのだいたいの温度範囲が推定され得る。このオープンループ制御モードでは、プロセスプラテン温度に基づいて、ある特定量のランプ電力をある特定時間ウエハに供給するように配置されたルックアップテーブルを用いて、ウエハを単純に予熱する。要約すると、この手順では、プロセスプラテンにウエハが供給される前に非接触ランプでウエハの熱膨張のほとんどが起こるため、直接熱接触で正確なT0温度に安定させることができる。
【0052】
[00057]ブロック712において、予熱されたウエハが予熱ステーションからプロセスチャンバ内のプロセスプラテンに移送される。注目すべきは、プロセスプラテンが、予熱されたウエハがプロセスプラテンに移送された時点で、目標温度を有していることである。
【0053】
[00058]ブロック714において、温度安定化プロセスが実行され、このプロセスは、基板又は基板プラテンに裏側ガスを提供することを含んでいてよく、安定化プロセスは最大で数分を必要とする場合がある。裏側ガスは、適宜に、ウエハとプロセスプラテンに埋め込まれたTCとの間の改善された熱結合を提供し得る。
【0054】
[00059]ブロック716において、ウエハ冷却遮断バルブが閉じられ、遮断バルブが閉じた時間(インスタンス)が記録又は記憶される。
【0055】
[00060]ブロック718において、加熱されたウエハは、予熱ステーションのウエハ位置に配置される等、プロセスプラテンから予熱ステーションに移送される。ウエハ位置は、プロセスウエハが予熱ステーションで加熱されるときに配置されるのと同じ位置に対応し得る。
【0056】
[00061]ブロック720において、高温計読取値が、有効な読取値が最初に測定される数秒以上のある時間間隔にわたって、例えば幾つかの非限定的な実施形態においては最大60秒の継続時間で記録される。有効な読取値は、加熱されたウエハが高温計の視野に入ったときに記録され、高温計は、加熱されたウエハがプロセスステーションから予熱ステーション内に移送される前にオンにされ、ウエハの位置に向けられる。このように、有効な読取値は、時間の関数として高温計電圧を表す曲線を生成するのに十分な複数の読取値として記録され得る。
【0057】
[00062]ブロック722において、有効な高温計電圧読取値のセットに曲線近似プロセスが適用される。一例として、二次多項式を有効な高温計読取値にフィッティングすることができる。この多項式は、例えば、所望の温度間隔の電圧対時間を表す曲線を生成し得る。
【0058】
[00063]ブロック724において、多項式を使用してt=0における高温計電圧が推定される。例えば、多項式曲線は、実際の電圧対時間データをt=0まで外挿するために使用することができ、これにより、ウエハ移送プロセスが開始されたときの高温計電圧読取値が決定され得る。ウエハ移送プロセスの開始インスタンスは、幾つかの実施形態では、ウエハ冷却遮断バルブが閉じられた時に対応し得る。
【0059】
[00064]決定ブロック726において、プロセスプラテンに適用されたばかりの目標温度が、較正されるべき最も高温のプロセスプラテン温度であるか否かの決定が行われる。そうである場合、フローはブロック730に進み、電圧から温度への変換を提供するグラフ又はデータ構造が計算される。例えば、Y軸はプラテン温度を表し、X軸は高温計電圧を表し得る。
【0060】
[00065]決定ブロック726において、対応する高温計電圧を生成するために使用される現在のプロセスプラテン温度が、較正されるべき最も高温のプロセスプラテン温度を表さない場合、フローはブロック728に進み、プロセスプラテン温度が増加される。プロセスプラテン温度は、幾つかの実施形態では、50度増分、25度増分、10度増分等の規則的な温度増分で増加させることができる。実用的な実装態様においては、25度の増分で十分な場合がある。
【0061】
[00066]その後、フローはブロック704に戻る。
【0062】
[00067]様々な実施形態では、本明細書に開示された工程の少なくとも幾つかは、自動化することができる。例えば、コントローラ110は、前述の工程の任意の組み合わせを自動化するための様々な構成要素を含み得る。
図8は、本開示の様々な実施形態に係る、コントローラ110の実装態様の概略を示している。コントローラ110は、メモリ802等のストレージデバイスを含み得る。幾つかの非限定的な実施形態では、コントローラ110は、コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、又は他の電子デバイスに実装され得る。コントローラ110は、プロセスステーション108、予熱ステーション106、及び高温計105を含む様々な他の構成要素と接合するためのインターフェース806を含み得る。コントローラ110は、メモリ802と連携して以下に詳述するような様々な工程を実行する回路を含むプロセッサ808を含み得る。本開示の実施形態によれば、メモリ802は、
図7に概説したような工程の自動制御を実行するための構成要素を含み得る。一例として、メモリ802は、
図7の工程の少なくとも一部を実行するために、プロセッサ808上で実行するための、較正ルーチン804を含み得る。例えば、新たな基板タイプが較正される場合、較正ルーチンは、
図7に概説したような工程の全て又は一部を実行し得る。
【0063】
[00068]また、メモリ802は、複数の基板タイプエントリを含むデータベース810も含み得る。基板タイプエントリは、基板の物理的特性を識別することができ、前述の実施形態で詳述したように、その基板タイプに対して決定された対応する較正曲線を含み得る。このように、オペレータは、コントローラ110を使用して、生産基板の加熱を制御するためのパラメータをロードし、生産基板の基板タイプを入力することにより、コントローラに、予熱ステーションで記録された高温計電圧を基板温度にマッピングするための適切な較正曲線を自動的に取得させることができる。その後、記録された高温計電圧に基づいて正確な基板温度を生成するために、プロセスステーションのプロセスプラテン内にロードする前に、基板の予熱を実行し得る。
【0064】
[00069]要約すると、本アプローチは、生産前に高温計を較正するためにウエハに接触する熱電対を必要とせずに、半導体ツールの予熱ステーションでウエハ温度を測定するための非接触高温計の利点を提供するものである。処理前にウエハを極端な温度まで加熱するように配置された半導体処理機器は、室温からの初期加熱中に信頼性の高い方法でウエハの温度を測定する必要がある。本実施形態では特に、予熱段階で信頼性の高いウエハの温度測定を行うことで、顧客が最適なスループットとプロセス結果を得るために一貫した予熱温度を指定できるという利点が得られる。また、本実施形態では、非接触で基板温度を容易に決定できるという別の利点が得られる。高温計の較正は非接触の方法で実行され、いかなるTCもプロセスウエハに触れる必要がないため、裏側の粒子発生やウエハへの損傷を懸念することがない。更に、本実施形態では、TCが搭載されたウエハ又はTCの接触を必要としないため、本明細書に開示されているのと同様のアプローチにより、フル生産の中断を最小限に抑えて較正をチェックする、又はシステムのヘルスチェックを実行することができる。更なる利点は、本実施形態を展開して、処理前に、特定のロットのウエハに間違ったウエハ放射率タイプが割り当てられたことを検出できることである。
【0065】
[00070]前述の説明は、本実施形態を例示し、説明するために提供される。しかし、上述の説明は、本書に添付された特許請求の範囲に記載された実施形態の範囲を限定するものと見なすべきではない。
【国際調査報告】