(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】極端紫外マスク検査システムの波面収差計量
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20220803BHJP
【FI】
G03F1/84
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571710
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 US2020035622
(87)【国際公開番号】W WO2020247322
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ズーシン ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】シ ルイ-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チャン
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA10
2H195BD02
2H195BD11
(57)【要約】
極端紫外(EUV)マスク検査システムの波面収差を計測する計量システムが開示される。そのテストマスクが、EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で形成された基板と、その基板上に形成された1個又は複数個のパターンとを有し、当該1個又は複数個のパターンが、共通平面内に位置しておりEUV照明を反射するよう構成されている反射部分と、基板の上又は上方にありEUV照明に関し実質的に反射率を有していない吸収部分とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外(EUV)マスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクであって、
EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で形成された基板と、
前記基板上に形成された1個又は複数個のパターンと、
を備え、前記1個又は複数個のパターンが、
EUV照明を吸収するよう構成された吸収部分と、
EUV照明を反射するよう構成された反射部分と、
を有し、それら反射部分及び吸収部分が前記基板の上又は上方にある共通平面内に位置するテストマスク。
【請求項2】
請求項1に記載のテストマスクであって、前記基板が二酸化シリコンで形成されているテストマスク。
【請求項3】
請求項1に記載のテストマスクであって、前記吸収部分が1個又は複数個のアブソーバを備えるテストマスク。
【請求項4】
請求項3に記載のテストマスクであって、更に、
前記1個又は複数個のアブソーバ上に配置された反射防止被覆を備え、その反射防止被覆が、EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で形成されているテストマスク。
【請求項5】
請求項3に記載のテストマスクであって、前記反射部分が、モリブデン及びシリコンからなる周期的反復二重層複数個で形成された1本又は複数本の多層ピラーを備え、それら周期的反復二重層の各層の厚みとそれら周期的反復二重層の周期とが、EUV照明を反射させるべく構成設定されているテストマスク。
【請求項6】
請求項5に記載のテストマスクであって、前記1本又は複数本の多層ピラーの厚みが前記1個又は複数個のアブソーバの厚みと等価なテストマスク。
【請求項7】
請求項5に記載のテストマスクであって、前記1本又は複数本の多層ピラーが前記1個又は複数個のアブソーバ内に埋め込まれているテストマスク。
【請求項8】
請求項4に記載のテストマスクであって、前記反射部分が、モリブデン及びシリコンからなる反復二重層複数個で形成された多重層を備えるテストマスク。
【請求項9】
請求項8に記載のテストマスクであって、前記吸収部分が、モリブデン及びシリコンからなる反復二重層複数個で形成された前記多重層に埋め込まれている複数個のアブソーバを備えるテストマスク。
【請求項10】
請求項3に記載のテストマスクであって、前記吸収部分が、前記基板の一部分又は複数部分が露わになるよう構成されており前記反射部分内にある1個又は複数個のピンホールを備えるテストマスク。
【請求項11】
請求項10に記載のテストマスクであって、前記反射部分が反射性素材の層を備えるテストマスク。
【請求項12】
請求項11に記載のテストマスクであって、前記反射部分が、パラジウム、プラチナ及び銀のうち少なくとも一つを含有しているテストマスク。
【請求項13】
請求項3に記載のテストマスクであって、前記反射部分が、反射性素材で形成された1本又は複数本のピラーを備えるテストマスク。
【請求項14】
請求項13に記載のテストマスクであって、前記吸収部分が、前記基板の一部分又は複数部分が露わになるよう構成された1個又は複数個のピンホールを備え、当該1個又は複数個のピンホールが、反射性素材で形成された前記1本又は複数本のピラーの狭間に配置されているテストマスク。
【請求項15】
請求項5に記載のテストマスクであって、更に、前記吸収部分及び前記反射部分のうち少なくとも一方の上に配置された1個又は複数個のキャップを備え、当該1個又は複数個のキャップが、本テストマスクの一部分又は複数部分の酸化を減らすのに適した素材で形成されているテストマスク。
【請求項16】
請求項15に記載のテストマスクであって、前記1個又は複数個のキャップがルテニウムで形成されているテストマスク。
【請求項17】
極端紫外(EUV)マスク検査システムであって、
EUV照明源と、
前記EUV照明源からのEUVビームをテストマスク上に差し向けるよう構成された1個又は複数個の照明光学系であり、そのテストマスクが、EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で形成された基板と、その基板上に形成された1個又は複数個のパターンでありEUV照明を吸収するよう構成された吸収部分並びにEUV照明を反射するよう構成された反射部分を備えていてそれら反射部分及び吸収部分が当該基板の上又は上方にある共通平面内に位置する1個又は複数個のパターンと、それら吸収部分及び反射部分のうち少なくとも一方の上に配置された1個又は複数個のキャップであり当該テストマスクの一部分又は複数部分の酸化を減らすのに適した素材で形成されている1個又は複数個のキャップと、を備えるものである1個又は複数個の照明光学系と、
1個又は複数個の検出器と、
前記テストマスクから反射されてきたEUV照明を集めそのEUV照明を前記1個又は複数個の検出器上に差し向けるよう構成されている1個又は複数個のEUV投射光学系と、
前記1個又は複数個の検出器に可通信結合された1個又は複数個のプロセッサを有する1個又は複数個のコントローラであり当該1個又は複数個のプロセッサがメモリ内に保持されている一組のプログラム命令を実行するよう構成されている1個又は複数個のコントローラと、
を備え、前記一組のプログラム命令が、前記1個又は複数個のプロセッサに、
前記テストマスクから反射されてきたEUV照明を示す、前記1個又は複数個の検出器からの1個又は複数個の信号を受け取らせ、且つ
前記テストマスクから反射されてきたEUV照明を示す、前記1個又は複数個の検出器からの前記1個又は複数個の信号に基づき、前記EUVビームの随所で一通り又は複数通りの波面収差を識別させるよう、
構成されているシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、前記基板が二酸化シリコンで形成されているシステム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムであって、前記吸収部分及び前記反射部分が前記基板上に配置されているシステム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、前記吸収部分が、EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で以て被覆された1個又は複数個のアブソーバを備えるシステム。
【請求項21】
請求項19に記載のシステムであって、前記反射部分が、モリブデン及びシリコンからなる周期的反復二重層複数個で形成された1本又は複数本の多層ピラーを備え、それら周期的反復二重層の各層の厚みとそれら周期的反復二重層の周期とが、EUV照明を反射させるべく構成設定されているシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムであって、前記1本又は複数本の多層ピラーの厚みが前記1個又は複数個のアブソーバの厚みと等価なシステム。
【請求項23】
請求項21に記載のシステムであって、前記1本又は複数本の多層ピラーが前記1個又は複数個のアブソーバ内に埋め込まれているシステム。
【請求項24】
請求項20に記載のシステムであって、前記反射部分が、モリブデン及びシリコンからなる反復二重層複数個で形成された多重層を備えるシステム。
【請求項25】
請求項24に記載のシステムであって、前記吸収部分が、モリブデン及びシリコンからなる反復二重層複数個で形成された前記多重層に埋め込まれた複数個のアブソーバを備えるシステム。
【請求項26】
請求項19に記載のシステムであって、前記吸収部分が、前記基板の一部分又は複数部分が露わになるよう構成されており前記反射部分内にある1個又は複数個のピンホールを備えるシステム。
【請求項27】
請求項26に記載のシステムであって、前記反射部分が反射性素材の層を備えるシステム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムであって、前記反射性素材が、パラジウム、プラチナ及び銀のうち少なくとも一つを含有しているシステム。
【請求項29】
請求項19に記載のシステムであって、前記反射部分が、反射性素材で形成された1本又は複数本のピラーを備えるシステム。
【請求項30】
請求項29に記載のシステムであって、前記吸収部分が、前記基板の一部分又は複数部分が露わになるよう構成された1個又は複数個のピンホールを備え、当該1個又は複数個のピンホールが、反射性素材で形成された前記1本又は複数本のピラーの狭間に配置されているシステム。
【請求項31】
請求項17に記載のシステムであって、前記1個又は複数個のプロセッサが、前記EUV照明源、1個又は複数個の照明光学系及び前記1個又は複数個のEUV投射光学系のうち少なくとも一つを調整するため、ひいては前記EUVビームにおける識別済の前記一通り又は複数通りの波面収差を補償するため、1個又は複数個の調整量を提供するよう構成されているシステム。
【請求項32】
極端紫外(EUV)マスク検査システムを用いる方法であって、
EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で形成された基板と、その基板上に形成された1個又は複数個のパターンでありEUV照明を吸収するよう構成された吸収部分並びにEUV照明を反射するよう構成された反射部分を備えていてそれら反射部分及び吸収部分が当該基板の上又は上方にある共通平面内に位置する1個又は複数個のパターンと、それら吸収部分及び反射部分のうち少なくとも一方の上に配置された1個又は複数個のキャップであり自テストマスクの一部分又は複数部分の酸化を減らすのに適した素材で形成されている1個又は複数個のキャップと、を備えるテストマスクを照明し、
反射ビームを検出し、
その反射ビームに基づき1枚又は複数枚の画像を生成し、
前記1枚又は複数枚の画像の随所にて一通り又は複数通りの波面収差を識別し、且つ
前記EUV検査システムの1個又は複数個の構成部材を調整するための1個又は複数個の調整量を提供する方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記基板が二酸化シリコンで形成されている方法。
【請求項34】
請求項32に記載の方法であって、前記吸収部分及び前記反射部分が前記基板上に配置されている方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記吸収部分が、EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で以て被覆された1個又は複数個のアブソーバを備える方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、前記反射部分が、モリブデン及びシリコンからなる周期的反復二重層複数個で形成された1本又は複数本の多層ピラーを備え、それら周期的反復二重層の各層の厚みとそれら周期的反復二重層の周期とが、EUV照明を反射させるべく構成設定されている方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、前記1本又は複数本の多層ピラーの厚みが前記1個又は複数個のアブソーバの厚みと等価な方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法であって、前記1本又は複数本の多層ピラーが前記1個又は複数個のアブソーバ内に埋め込まれている方法。
【請求項39】
請求項35に記載の方法であって、前記反射部分が、モリブデン及びシリコンからなる反復二重層複数個で形成された多重層を備える方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記吸収部分が、モリブデン及びシリコンからなる反復二重層複数個で形成された前記多重層に埋め込まれた複数個のアブソーバを備える方法。
【請求項41】
請求項34に記載の方法であって、前記吸収部分が、前記基板の一部分又は複数部分が露わになるよう構成されており前記反射部分内にある1個又は複数個のピンホールを備える方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、前記反射部分が反射性素材の層を備える方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、前記反射部分が、パラジウム、プラチナ及び銀のうち少なくとも一つを含有している方法。
【請求項44】
請求項34に記載の方法であって、前記反射部分が、反射性素材で形成された1本又は複数本のピラーを備える方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法であって、前記吸収部分が、前記基板の一部分又は複数部分が露わになるよう構成された1個又は複数個のピンホールを備え、当該1個又は複数個のピンホールが、反射性素材で形成された前記1本又は複数本のピラーの狭間に配置されている方法。
【請求項46】
請求項32に記載の方法であって、テストマスクを照明する際に、そのテストマスク上にEUV入射ビームを差し向ける方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示は総じて波面収差計量に関し、より具体的には、テストマスクが組み込まれている極端紫外(EUV)マスク検査システムの使用を通じた波面収差計量に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
本願では、「EUVマスク検査システムに係る波面収差計量」(WAVEFRONT ABERRATION METROLOGY FOR EUV MASK INSPECTION SYSTEMS)と題しDmitriy Zusin、Rui-fang Shi及びQiang Zhangを発明者とする2019年6月3日付米国仮特許出願第62/856719号に基づき、米国特許法第119条(e)の規定による利益を主張すると共に、参照によりその全容を本願に繰り入れるものとする。
【0003】
全般的に、ナノ回路及びその構成部材が欠陥に対しますます敏感になってきている。こうした欠陥はナノ回路の動作を損ねかねないし、そのナノ回路に悪影響しかねない。ナノ回路上の欠陥の検出は、通常、EUV検査システムを用い、ナノ回路製品のパターン群を含んでいるフォトマスクを照明することで実行される。しかしながら、EUV検査システムは光学機器アレイに依拠しているので、しばしば、それら光学機器にて波面収差を通じ像が歪み、それによりフォトマスクの像が損なわれて欠陥検出が妨げられることがある。
【0004】
EUV検査システムの光学機器により持ち込まれる波面収差を計測及び軽減する既存方法には、診断用テストマスクに依拠するものがある。しかしながら、既存の診断用テストマスクには、それらの製造され方の結果として、不調や望ましくない性能が生じやすい。例えば、テストマスクに備わる既存の診断用パターンによって、シャドウイングその他、不要な反射効果が像に持ち込まれることがある。加えて、既存の診断用テストパターンは、酸化の結果たる短命さに煩わされている。
【0005】
更に、EUV検査システムの光学機器により持ち込まれる波面収差を計測及び軽減する既存方法には、そのEUV検査システムとは別のシステム及び手順を用いた収差識別を伴うものがある。この種の方法では、EUV検査システム自体の内部で波面収差の定量及び軽減を行えないので、計量効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9,335,206号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、EUVマスク検査システムの波面収差のインサイチュー(その場)計測を行える改善型システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクが、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い開示される。ある実施形態に係るテストマスクは、EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で形成された基板を有する。また、ある実施形態に係るテストマスクは、その基板上に形成された1個又は複数個のパターンを有し、その1個又は複数個のパターンが、EUV照明を吸収するよう構成された吸収部分及びEUV照明を反射するよう構成された反射部分であって当該基板の上又は上方にある共通平面内に配置された反射部分及び吸収部分を備える。
【0009】
EUVマスク検査システムが、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い開示される。ある実施形態に係るシステムはEUV照明源を有する。また、ある実施形態に係るシステムは、そのEUV照明源からのEUVビームをテストマスク上に差し向けるよう構成された1個又は複数個の照明光学系を有し、そのテストマスクが、EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で形成された基板と、その基板上に形成された1個又は複数個のパターンでありEUV照明を吸収するよう構成された吸収部分並びにEUV照明を反射するよう構成された反射部分を備えていてそれら反射部分及び吸収部分が当該基板の上方にある共通平面内に位置する1個又は複数個のパターンと、それら吸収部分及び反射部分のうち少なくとも一方の上に配置された1個又は複数個のキャップでありそのテストマスクの一部分又は複数部分の酸化を減らすのに適した素材で形成されている1個又は複数個のキャップと、を備える。また、ある実施形態に係るシステムは1個又は複数個の検出器を有する。また、ある実施形態に係るシステムは、前記テストマスクから反射されてきたEUV照明を集めそのEUV照明を前記1個又は複数個の検出器上に差し向けるよう構成された、1個又は複数個のEUV投射光学系を有する。また、ある実施形態に係るシステムは、前記1個又は複数個の検出器に可通信結合された1個又は複数個のプロセッサが備わる1個又は複数個のコントローラを有し、メモリ内に保持されている一組のプログラム命令を実行するよう当該1個又は複数個のプロセッサが構成されていて、当該一組のプログラム命令が、当該1個又は複数個のプロセッサに、前記テストマスクから反射されてきたEUV照明を示す1個又は複数個の信号を前記1個又は複数個の検出器から受け取らせ、且つそのテストマスクから受け取ったEUV照明を示す当該1個又は複数個の検出器からの当該1個又は複数個の信号に基づきそのEUVビームの随所で一通り又は複数通りの波面収差を識別させるよう、構成されたものである。
【0010】
EUVマスク検査システムを用いる方法が、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い開示される。ある実施形態に係る方法では、EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で形成された基板と、その基板上に形成された1個又は複数個のパターンでありEUV照明を吸収するよう構成された吸収部分並びにEUV照明を反射するよう構成された反射部分を備えていてそれら反射部分及び吸収部分が当該基板の上方にある共通平面内に位置する1個又は複数個のパターンと、それら吸収部分及び反射部分のうち少なくとも一方の上に配置されており自テストマスクの一部分又は複数部分の酸化を減らすのに適した素材で形成されている1個又は複数個のキャップと、を備えるテストマスクを照明する。また、ある実施形態に係る方法では反射ビームを検出する。また、ある実施形態に係る方法では、その反射ビームに基づき1枚又は複数枚の画像を生成する。また、ある実施形態に係る方法では、前記1枚又は複数枚の画像の随所にて一通り又は複数通りの波面収差を識別する。また、ある実施形態に係る方法では、そのEUV検査システムの構成部材のうち1個又は複数個を調整すべく1個又は複数個の調整量を提供する。
【0011】
理解し得るように、前掲の概略記述及び後掲の詳細記述は共に専ら例示的且つ説明的なものであり、特許請求の範囲記載の発明を必ずしも限定するものではない。添付図面は、明細書に組み込まれその一部分を構成するものであり、本発明の諸実施形態を描出しており、また概略記述と相俟ち本発明の諸原理を説明する働きを有している。
【0012】
本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)であれば、以下の添付図面を参照することで本件開示の多数の長所をより良好に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの断面図である。
【
図1B】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの断面図である。
【
図1C】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの断面図である。
【
図1D】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの断面図である。
【
図1E】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの断面図である。
【
図2】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係るEUVマスク検査システムの概略ブロック図である。
【
図3】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクの一部分又は複数部分における反射率と、そのテストマスクに差し向けられた入射光ビームの角度と、の関係を描いた描図である。
【
図4A】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンのある実施形態に関し、撮像瞳内強度コントラストを描いた描図である。
【
図4B】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの他の実施形態に関し、撮像瞳内強度コントラストを描いた描図である。
【
図4C】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの他の実施形態に関し、撮像瞳内強度コントラストを描いた描図である。
【
図4D】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの他の実施形態に関し、撮像瞳内強度コントラストを描いた描図である。
【
図4E】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの他の実施形態に関し、撮像瞳内強度コントラストを描いた描図である。
【
図4F】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの他の実施形態に関し、撮像瞳内強度コントラストを描いた描図である。
【
図4G】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの他の実施形態に関し、撮像瞳内強度コントラストを描いた描図である。
【
図4H】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、EUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターンの様々な実施形態に関し、撮像瞳内強度コントラストを描いた描図である。
【
図5】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、テストマスクを媒介にしてEUV検査システム内で波面収差を識別する方法を描いたプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に描かれている被開示主題を詳細に参照する。ある種の実施形態及びその具体的特徴との関連で本件開示を具体的に図示及び記述してある。本願中で説明されている諸実施形態は限定ではなく例証であると把握されるべきである。いわゆる当業者には直ちに察せられるべきことに、本件開示の神髄及び技術的範囲から離隔することなく形態及び細部に様々な改変及び修正を施すことができる。
【0015】
本件開示の諸実施形態は、その検査システムの性能が改善されるよう構成された1枚又は複数枚のテストマスクが組み込まれているEUVマスク検査システムを用いる、波面収差計量システム及び方法を指向している。
【0016】
EUVマスク検査では、通常、EUVフォトマスクの1個又は複数個の欠陥の検出を、EUV照明(例.EUV波長例えば13.5nmを有する輻射)の使用を通じ行うことが必要となる。EUVフォトマスクの欠陥によって一通り又は複数通りの不要な逸脱が生じ、そのフォトマスクで以て印刷されたチップの歩留まり及び性能に影響することがあるからである。EUV検査システムには、通常、EUVフォトマスクから差し向けられてきた1本又は複数本のEUV入射ビームをもとにそのEUVフォトマスクの像を形成するため、1個又は複数個の反射素子(例.鏡)が実装される。EUV検査システムに備わるこの1個又は複数個の反射素子によって、撮像瞳にて波面に収差が持ち込まれることがある。そうした収差によって、そのEUVフォトマスクの撮像及び検査が害され又は損なわれることがある。
【0017】
本テストマスクはパターン100を備えるものであり、EUVマスク検査システムにおける波面収差を計測するための診断用フォトマスクとして、構成することができる。例えば、本テストマスクを、EUVフォトマスクの検査手段たるEUVマスク検査システムにて用いることができる。本テストマスクはパターン100を有しており、本願開示の諸機能を実行しうるようそのパターン100を構成することができる。本テストマスクを、EUV照明を反射させるよう、ひいてはその光学システムの撮像瞳が実質的且つ均一にフィルされるよう、構成することができる。その撮像瞳のフィルの均一性及び強度に基づき、そのEUVマスク検査システムにて、同システムの一通り又は複数通りの波面収差を計測すること、並びに同システムに備わる1個又は複数個の部材についての1個又は複数個の調整量を決定することができる。EUVマスク検査システムの一通り又は複数通りの波面収差の計測システム及び方法が、「EUVマスク検査システムの光学系の波面収差計量」(WAVE FRONT ABERRATION METROLOGY OF OPTICS OF EUV MASK INSPECTION SYSTEM)と題し2016年5月10日付で発行された特許文献1に概述されているので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0018】
本テストマスクは、EUV輻射で以て自テストマスクが照明されたときに、自テストマスクの反射部分ではEUV輻射を反射させ、且つ自テストマスクの吸収部分ではEUV輻射を吸収するよう、構成することができる。例えば、その反射部分からEUVマスク検査システムの撮像瞳の方へとEUV輻射を反射させること、並びにその吸収部分にてEUV光を吸収することができる。その反射EUV光と、本テストマスクの吸収部分に相当するであろう反射EUV光欠落とに基づき、そのテストマスクの像を生成するよう、EUVマスク検査システムを構成することができる。その際に、それら反射部分及び吸収部分間に高いコントラストが現れるよう、またそのコントラストがEUVマスク検査システムにて検出されうるよう、本テストマスクを構成することができる。
【0019】
図1A~
図1Eには、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りEUVマスク検査システムの波面収差を計測するためのテストマスクに備わるパターン100の断面外観が描かれている。その全体が示されてはいないものの、本テストマスクは、EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で形成された基板102を有するものと、することができる。例えば二酸化シリコン(SiO
2)で基板102を形成することができる。パターン100内に、基板102の上又は上方にある共通平面内に位置する吸収部分104及び反射部分106を、設けることができる。吸収部分104は、EUV照明を吸収するよう構成すればよい。例えば、EUV照明を吸収するよう構成された一種類又は複数種類の素材で、吸収部分104を形成することができる。反射部分106は、EUV照明を反射させるよう構成すればよい。例えば、約60%~70%或いはそれ以上の指標にてEUV照明を反射させるよう構成された一種類又は複数種類の素材で、反射部分106を形成することができる。
【0020】
図1Aに描かれている実施形態によれば、EUV照明を吸収するよう構成された1個又は複数個のアブソーバ110を、吸収部分104内に設けることができる。例えば、EUV照明を吸収するよう構成されている素材で、当該1個又は複数個のアブソーバ110を形成することができる。当該1個又は複数個のアブソーバ110からの入射EUVビームの反射を低減するよう構成された反射防止被覆112を、当該1個又は複数個のアブソーバ110に設けることもできる。EUV照明に関し実質的に反射率を有していない素材で、その反射防止被覆112を形成することができる。例えば、TaNO等の遷移金属ニトリド化合物で実質的に反射防止被覆112を形成することができる。反射防止被覆112と併せた当該1個又は複数個のアブソーバ110の高さが反射部分106の高さに対し均等になるよう、その反射防止被覆112を構成することもできる。実施形態によっては、基板102が露わになるよう構成された1個又は複数個のピンホールを、吸収部分104内に設けることもできる。
【0021】
実施形態によっては、EUV照明を反射させるよう構成された周期的反復二重層116が複数個備わる1本又は複数本の多層ピラー(柱状部)114を、反射部分106内に設けることもできる。例えば、EUVマスク検査システムの撮像瞳の方への反射が最大化される要領でEUV照明が反射されるように、周期的反復二重層116それぞれの厚みとそれら周期的反復二重層116の反復周期とを選択しうるよう、それら複数個の周期的反復二重層116を構成することができる。周期的反復二重層116それぞれの厚みは、約7.0nm~約7.5nmとすることができる。当該1本又は複数本の多層ピラー114は、約5個~約15個の周期的反復二重層116を有するものと、することができる。
【0022】
前記複数個の周期的反復二重層116は、これに限られるものではないがモリブデン及びシリコンを初め、一種類又は複数種類のEUV照明反射素材からなる交番層群で、形成することができる。多層ピラー114の一部分又は複数部分の(例.湿気、酸素暴露等々による)酸化可能性を低減させるよう構成されている何らかの素材で形成された1個又は複数個のキャップ128を、前記1本又は複数本の多層ピラー114に設けることもできる。例えばルテニウムで1個又は複数個のキャップ128を形成することができる。当該1個又は複数個のキャップ128と併せた当該1本又は複数本の多層ピラー114の高さが、前記1個又は複数個のアブソーバ110の高さに対し均等になるよう、当該1個又は複数個のキャップ128を構成することもできる。
【0023】
EUV照明の吸収を最小化させつつEUV照明の反射を最大化させるよう構成された1個又は複数個のブラッグリフレクタを、前記1本又は複数本の多層ピラー114に設けることもできる。そうした1本又は複数本の多層ピラー114によれば、周期的反復二重層116を構成する諸層間の界面の働きで、EUV照明の反射を容易に実現することができる。例えば、モリブデン単層をシリコン単層と併せ配置して1個の周期的反復二重層116を形成することができる。ある具体例によれば、周期的反復二重層116入りパターン100込みのテストマスクに差し向けられた入射EUV照明ビームが、モリブデン及びシリコンそれぞれの屈折率に応じて反射されるため、それら二種類の単層間の屈折率差が大きいほど、大きなEUV照明反射率を提供することができる。それら屈折率がそれら周期的反復二重層116の厚み及び周期により変動しうるので、周期的反復二重層116は、使用される光学的構成の違い(例.併用されるEUV検査システムの撮像瞳パラメタ例えば数値開口の違い)を踏まえ構成するのがよい。
【0024】
吸収部分104の1個又は複数個のピンホール内に1本又は複数本の多層ピラー114が配置されるよう、パターン100を形成することもできる。例えば、EUV照明を吸収するよう構成されている素材を基板102上に堆積させることで1個又は複数個のアブソーバ110を形成し、基板102が露わになる1個又は複数個のピンホールをその基板上堆積によりその素材中に生成し、更にその1個又は複数個のピンホール内に1本又は複数本の多層ピラー114を埋め込むことができる。こうした構成の吸収部分104では、環境中の酸化剤に対する1本又は複数本の多層ピラー114の一部分又は複数部分の露出を減らすことで、当該1本又は複数本の多層ピラー114の一部分又は複数部分の酸化の低減を、容易に実現することができる。これに代わる実施形態に従い、1本又は複数本の多層ピラー114を基板102上に堆積させ、その後にその多層ピラー114の上方から吸収部分104を堆積させ、そして余分な吸収部分104を例えばエッチングを通じ除去して1個又は複数個のアブソーバ110を形成することで、パターン100を形成してもよい。
【0025】
また、
図1Bに描かれている実施形態によれば、前記1本又は複数本の多層ピラー114のアレイ内に前記1個又は複数個のアブソーバ110が配置されるよう、パターン100を形成することができる。例えば、1本又は複数本の多層ピラー114を基板102上にアレイをなし堆積させ、その基板102上にあり当該1本又は複数本の多層ピラー114に挟まれているところに、1個又は複数個のアブソーバ110を隙間堆積させればよい。これに代わる実施形態に従い、1本又は複数本の多層ピラー114を基板102上に堆積させ、その後にその多層ピラー114の上方から吸収部分104を堆積させ、そして余分な吸収部分104を例えばエッチングを通じ除去して1個又は複数個のアブソーバ110を形成することで、パターン100を形成してもよい。
【0026】
また、
図1Cに描かれている実施形態によれば、反射部分106内の1個又は複数個のピンホール120を、吸収部分104に含めることができる。例えば、1本又は複数本の多層ピラー114に挟まれていて基板102が露わになるよう構成されている1個又は複数個の開口を、1個又は複数個のピンホール120に設けることができる。その際には、EUV照明を吸収するよう基板102を構成すればよい。
【0027】
また、
図1D及び
図1Eに描かれている実施形態によれば、1本又は複数本の反射性素材124製ピラーを反射部分106に設けることができる。例えば、これに限られるものではないがパラジウム、プラチナ及び銀を初めEUV照明反射素材で形成されている1本又は複数本の反射性素材124製ピラーを、反射部分106に設けることができる。反射性素材124のピラーは、EUV輻射に関し約0.5%以上の反射率を呈する素材で形成することができる。反射性素材124は、その反射性素材により反射された輻射を吸収部分104に比し高コントラストなものとすることが可能な反射率を有する素材で、形成することができる。反射性素材124製ピラーの厚みは、反射率の所望量に従い変化させることができる。ある具体例によれば、反射性素材124製ピラーの厚みを100nm超とすることができる。吸収部分104を、反射部分内にある1個又は複数個のピンホール120を備え、基板102が露わになるようそのピンホール120が構成されたものと、することができる。
【0028】
本件開示に記載されている諸実施形態は、ピラー構造及びピンホールで以て記述されているが、注記されることに他の形状も想定されている。例えば、前記1本又は複数本の多層ピラー114を、これに限られるものではないが立方体、卵形等を初め、本願にて想定されている諸目的に相応しい何れの形状を有するものともすることができる。同様に、ピンホール120を、これに限られるものではないが正方形、卵形等を初めとする何れの形状の孔ともすることができる。
【0029】
実施形態によっては、反射部分104が単一部材(例.1本の多層ピラー114又は1本の反射性素材122製ピラー)で構成される。別の実施形態にあっては、反射部分104が複数部材(例.複数本の多層ピラー114又は複数本の反射性素材122製ピラー)で構成される。
【0030】
実施形態によっては、吸収部分106が単一部材(例.1個のアブソーバ110又は1個のピンホール120)で構成される。別の実施形態にあっては、吸収部分106が複数部材(例.複数個のアブソーバ110又は複数個のピンホール120)で構成される。
【0031】
図2には、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係るEUVマスク検査システム200が描かれている。EUVマスク検査システム200は、EUV照明源202、テストマスク201を照明する1個又は複数個の照明光学系204、1個又は複数個の投射光学系210、1個又は複数個の検出器208並びに1個又は複数個のコントローラ212を有するものと、することができる。
【0032】
EUV照明源202には、本件開示により想定されている諸目的に適し本件技術分野で既知なあらゆる照明源が包含されうる。EUV照明源202の例としては準連続波レーザがあろう。EUV照明源202により、高いパルス反復速度、低雑音性、高いパワー、安定性及び信頼性を提供することができる。
【0033】
EUV照明源202は、1個又は複数個の照明光学系204を介しテストマスク201上にEUV入射ビーム206を差し向けるよう、構成することができる。例えば、EUV照明源202により1個又は複数個の照明光学系204上へとEUV入射ビーム206を差し向けるようにすると共に、そのEUV入射ビーム206をテストマスク201上に集束させるよう当該1個又は複数個の照明光学系204を構成すればよい。
【0034】
照明光学系204内には、EUV入射ビーム206をテストマスク201上へと精密位置決めするのに適し本件技術分野で既知な、あらゆるEUVコンパチブル光学系を設けることができる。例えば、EUV輻射を反射させるよう構成された1個又は複数個の鏡を、照明光学系204内に設けることができる。照明光学系204は、これに限られるものではないが直交角及び斜め角を初め、何れの好適角にてテストマスク201にEUV入射ビーム206を差し向けるようにも、構成することができる。
【0035】
テストマスク201上に集束されると、そのEUV入射ビーム206は反射ビーム207として反射及び/又は散乱されることとなろう。その反射ビーム207を、1個又は複数個の投射光学系210を介し1個又は複数個の検出器208により集めることができる。例えば、当該1個又は複数個の投射光学系210により反射ビーム207を集め、その反射ビーム207を当該1個又は複数個の検出器208の一部分又は複数部分上に集束させることができる。当該1個又は複数個の検出器208には、本件開示により想定されている諸目的に適し本件技術分野で既知なあらゆる検出器が包含されうる。例えば、当該1個又は複数個の検出器208にはあらゆるCCD型カメラが包含されうる。
【0036】
前記1個又は複数個の投射光学系210内には、反射ビーム207を前記1個又は複数個の検出器208上へと投射するのに適し本件技術分野で既知なあらゆるEUVコンパチブル光学系を設けることができる。例えば、当該1個又は複数個の投射光学系内に、EUV輻射を反射するよう構成された1個又は複数個の鏡を設けることができる。
【0037】
コントローラ212は、1個又は複数個のプロセッサ及びメモリを有するものとすることができる。当該1個又は複数個のプロセッサを前記1個又は複数個の検出器208に可通信結合させることができる。当該1個又は複数個のプロセッサは、本件開示の1個又は複数個のステップを当該1個又は複数個のプロセッサに実行させるよう構成されていてメモリ内に保持されている一組のプログラム命令を実行するよう、構成する。EUVマスク検査システム200の構成部材同士は、一通り又は複数通りの有線接続(例.銅線、光ファイバケーブル、半田付け接続等)又は無線接続(例.RF結合、IR結合、データ網通信等)を介し可通信結合させることができる。コントローラ212をユーザインタフェースに可通信結合させることができる。
【0038】
反射ビーム207が前記1個又は複数個の検出器208の一部分又は複数部分上に集束されたのを受け、前記1個又は複数個のコントローラ212にてその反射ビーム207に基づく画像を生成することができる。例えば、その1個又は複数個のコントローラ212に備わる1個又は複数個のプロセッサによって、その反射ビーム207の強度、位相、波面及び/又はその他の特性を、分析することができる。その反射ビーム207の一通り又は複数通りの特性に対応する検出信号へと反射ビーム207の検出光を変換するよう、当該1個又は複数個のプロセッサを構成することができる。例えば、そのテストマスク201の位置又は部分の違いに対応し異なる強度値を呈する画像を生成するよう、当該1個又は複数個のプロセッサを構成することができる。
【0039】
その反射ビーム207に基づき、EUVマスク検査システム200の一通り又は複数通りの波面収差を計測するよう、前記1個又は複数個のコントローラ212を構成することができる。例えば、その反射ビーム207の一通り又は複数通りの特性に対応する1個又は複数個の検出信号と、使用している特定のテストマスク201に基づく期待信号とを、その1個又は複数個のコントローラ212にて比較することができる。特定のテストマスク201に基づくその期待信号が、EUVマスク検査システム200のメモリ内に格納されるのでもよいし、ユーザ入力を通じもたらされるのでもよい。EUVマスク検査システム200により計測された一通り又は複数通りの波面収差に基づき、当該1個又は複数個のコントローラ212にて、そのEUVマスク検査システム200の1個又は複数個の部材を調整するための1個又は複数個の調整量を、決定することができる。例えば、当該1個又は複数個のコントローラ212にて、前記1個又は複数個の照明光学系204及び/又は前記1個又は複数個の投射光学系210の位置につき、1個又は複数個の調整量を決定することができる。
【0040】
前記1個又は複数個のコントローラ212に備わる1個又は複数個のプロセッサを、メモリ内に保持されているプログラム命令を実行するよう構成することができる。その際に、当該1個又は複数個のコントローラ212に備わる1個又は複数個のプロセッサにて、本件開示の随所に記載されている様々な処理ステップのうち何れを実行するようにしてもよい。そのメモリ内には、EUVマスク検査システム200の各種部材により用いられる各種データを格納することができる。例えば、そのメモリ内に、EUVマスク検査システム200により生成された波面収差データ等を格納することができる。
【0041】
前記1個又は複数個のコントローラ212に備わる1個又は複数個のプロセッサには、本件技術分野で既知なあらゆる処理素子が包含されうる。その意味で、当該1個又は複数個のプロセッサには、アルゴリズム及び/又は命令を実行するよう構成されたあらゆるマイクロプロセッサ型デバイスが包含されうる。ある実施形態によれば、当該1個又は複数個のプロセッサを、デスクトップコンピュータ、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、イメージコンピュータ、並列プロセッサ、或いはプログラムを実行するよう構成された他の何らかのコンピュータシステム(例.ネットワーク接続されたコンピュータ)で構成することができ、またそのプログラムを、本件開示の随所に記載の如くEUVマスク検査システム200を動作させるよう構成することができる。注記されることに、語「プロセッサ」は、非一時的記憶媒体から得たプログラム命令を実行する処理素子を1個又は複数個有するデバイス全てが包括されるよう、広義に定義することができる。
【0042】
前記メモリには、前記1個又は複数個のコントローラ212に備わる1個又は複数個の連携先プロセッサにより実行可能なプログラム命令を格納するのに適し本件技術分野で既知な、あらゆる格納媒体が包含されうる。例えばそのメモリに非一時的記憶媒体が包含されうる。また例えば、そのメモリに、これに限られないがリードオンリメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気又は光学記憶デバイス(例.ディスク)、磁気テープ、固体ドライブ等が包含されうる。注記されることに、メモリを当該1個又は複数個のプロセッサと共に共通コントローラハウジング内に収容してもよい。ある実施形態によれば、そのメモリを、当該1個又は複数個のコントローラ212に備わる1個又は複数個のプロセッサの物理的な居所に対しリモートに所在させることができる。例えば、当該1個又は複数個のコントローラ212に備わる1個又は複数個のプロセッサが、ネットワーク(例.インタネット、イントラネット等)を介しアクセス可能なリモートメモリ(例.サーバ)に、アクセスするようにしてもよい。従って、上掲の記述は、本発明に対する限定事項としてではなく、単なる例証として解されるべきである。
【0043】
加えて、前記1個又は複数個のコントローラ212及びそれと連携するあらゆる部材(例.プロセッサ、メモリ等)が、共通ハウジング内又は複数個のハウジング内に収容された1個又は複数個のコントローラを有していてもよい。更に、当該1個又は複数個のコントローラ212を、EUVマスク検査システム200の何れの構成部材と一体化させても、及び/又は、その構成部材の機能を実行するものとしてもよい。
【0044】
前記1個又は複数個のコントローラ212にて、これに限られるものではないが、波面収差データを標本フィーチャの指定属性群に関連付けるモデル受領、生成又は適用を初め、本願開示の何個の処理又は分析ステップを実行してもよいのであり、これには多数のアルゴリズムが関わりうる。例えば、これに限られるものではないが幾何エンジン、プロセスモデル化エンジン又はその組合せを初め、本件技術分野で既知な何れの技術を用い波面収差を求めてもよい。
【0045】
前記1個又は複数個のコントローラ212にて、更に、これに限られるものではないがライブラリ、高速次数低減モデル、回帰、機械学習アルゴリズム例えばニューラルネットワーク、サポートベクタマシン(SVM)、次元縮小アルゴリズム(例.主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、局所線形埋込(LLE)等)、データのスパース表現(例.フーリエ又はウェーブレット変換、カルマンフィルタ、同種又は異種ツール間マッチングを促進するアルゴリズム等)を初め、本件技術分野で既知な何らかのデータ当て嵌め及び最適化技術を用い、その収集データをモデルに適用することで、EUVマスク検査システム200からの収集データを分析してもよい。
【0046】
実施形態によっては、前記1個又は複数個のコントローラ212にて、EUVマスク検査システム200にて生じた生データが、モデル化、最適化及び/又は当て嵌めを含まないアルゴリズムを用い分析される。ここに注記されることに、そのコントローラにより実行される情報処理アルゴリズムは、必須ではないが、並列化、分散情報処理、負荷バランシング、マルチサービスサポート、情報処理ハードウェアの設計及び具体化、或いは動的負荷最適化の使用を通じ、波面収差計量アプリケーション向けに誂えることができる。更に、様々な実現形態のアルゴリズムを、必須ではないが、前記1個又は複数個のコントローラ212により(例.ファームウェア、ソフトウェア又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等を媒介にして)実行することができる。
【0047】
図3は、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い、パターン100の一部分又は複数部分における無偏向光の反射率と、そのテストマスク201に差し向けられたEUV入射ビーム206の角度と、の関係を描いた描図である。EUVマスク検査システム200は、その入射角が約6°~17°となるよう構成することができる。注記されることに、テストマスク201の反射部分106における反射率は、これに限られるものではないが、その反射部分106の構成(例.使用素材、前記複数個の周期的反復二重層116の厚み及び周期、主光線角等々)を初め、一通り又は複数通りの要因に由来しうる。
【0048】
図4A~
図4Gは、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い投射光学系210の撮像瞳402の強度コントラストを描いた描図である。注記されることに、描図たる
図4A~
図4GにはEUVマスク検査システム200の具体的実施形態表現が描かれているが、EUVマスク検査システム200はそれらにて開示されている諸実施形態に限定されない。描図たる
図4A~
図4Eに描かれているのはEUVマスク検査システム200の投射光学系210の撮像瞳402における強度コントラストであり、またそのEUVマスク検査システム200が8個の周期的反復二重層116を有し、それら周期的反復二重層116の周期が約7.2nmであり、1個又は複数個のキャップ128が実質的にルテニウムで形成されていて約2.5nmの厚みを有するものであり、且つ照明主光線角が8.2°、照明コヒーレンスパラメタがσ=0.7であり、数値開口が約0.16に等しいとされている。
【0049】
図4Aには、複数個の周期的反復二重層116を有する多層ピラー114のアレイがその反射部分106内にあるパターン100を有するEUVマスク検査システム200について、前記1個又は複数個の投射光学系210の撮像瞳402のフィルの強度コントラストが描かれている。その1本又は複数本の多層ピラー114に、当該1本又は複数本の多層ピラー114の壁上に堆積されており且つ当該1本又は複数本の多層ピラー114の酸化を防ぐよう構成されている保護素材層が、設けられていてもよい。
【0050】
図4Bには、複数個の周期的反復二重層116を有する多層ピラー114のアレイがその吸収部分104内にあり、その多層ピラーが吸収部分104のピンホールのアレイ内に配置されているパターン100を有するEUVマスク検査システム200について、その投射光学系210の撮像瞳402のフィルの強度コントラストが描かれている。ある具体例によれば、吸収部分104内のピンホールアレイにより望ましくない反射効果(例.シャドウイング)がEUVマスク検査システム200に持ち込まれ、その望ましくない反射効果により撮像瞳402のフィルの均一性が低下することがある。
【0051】
図4Cには、複数個の周期的反復二重層116を有する多層ピラー114とキャップ128とがその反射部分106内にあるパターン100を有するEUVマスク検査システム200について、その投射光学系210の撮像瞳402のフィルの強度コントラストが描かれている。パターン100は、反射防止被覆112を有する複数個のアブソーバ110をも有しそれら複数個のアブソーバ110の内側に多層ピラー114が配置されたものとしてある。
【0052】
図4Dには、複数個の周期的反復二重層116を有する複数本の多層ピラー114とキャップ128とがその反射部分106内にあるパターン100を有するEUVマスク検査システム200について、その投射光学系210の撮像瞳402のフィルの強度コントラストが描かれている。パターン100は、反射防止被覆112を有するアブソーバ110をも有し複数本の多層ピラー114の内側にアブソーバ110が配置されたものとしてある。
【0053】
図4Eには、複数個の周期的反復二重層116を有する複数本の多層ピラー114とキャップ128とがその反射部分106内にあるパターン100を有するEUVマスク検査システム200について、その投射光学系210の撮像瞳402のフィルの強度コントラストが描かれている。吸収部分104は、それら複数個の周期的反復二重層116の狭間にピンホール120が配置されたものとしてある。
【0054】
図4Fには、反射性素材124からなる複数本のピラーがその反射部分106内にあるパターン100を有するEUVマスク検査システム200について、その投射光学系210の撮像瞳402のフィルの強度コントラストが描かれている。吸収部分106は、反射性素材124からなる複数本のピラーの狭間にピンホール120が配置されたものとしてある。
【0055】
図4Gには、反射性素材124からなる複数本のピラーがその反射部分106内にあるパターン100を有するEUVマスク検査システム200について、その投射光学系210の撮像瞳402のフィルの強度コントラストが描かれている。吸収部分104は、反射性素材124からなる複数本のピラーの狭間に複数個のピンホール120が配置されたものとしてある。
【0056】
図4Hは、本件開示の
図4A~
図4Gに記載されているテストマスク201に対応するパターン100を有するEUVマスク検査システム200について、その投射光学系210の撮像瞳402のフィルの座標平面上における様々な強度を描いた描図であり、撮像瞳のy軸沿い座標位置はPy
(Img)=0である。
【0057】
図5は、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従いEUV検査システムを用いる方法500の諸サブステップを描いたプロセスフロー図である。
【0058】
実施形態に係る方法500は、テストマスクを照明するステップ502を有している。例えば、照明源202から前記1個又は複数個の照明光学系204を介しそのテストマスク201上へと、EUV入射ビーム206を差し向ければよい。
【0059】
また、実施形態に係る方法500は、そのテストマスク201から反射されてきたビームを検出するステップ504を有している。例えば、前記1個又は複数個の検出器208にて、前記1個又は複数個の投射光学系210を介し、そのテストマスク201からの反射ビーム207を受光すればよい。
【0060】
また、実施形態に係る方法500は、その反射ビームに基づき1枚又は複数枚の画像を生成するステップ506を有している。例えば、前記1個又は複数個のコントローラ212に備わる1個又は複数個のプロセッサにて、その反射ビーム207の強度、位相若しくは波面及び/又はその他の特性を分析すればよい。反射ビーム207の検出光を、その反射ビーム207の一通り又は複数通りの特性に対応する検出信号へと変換するよう、当該1個又は複数個のプロセッサを構成してもよい。例えば、テストマスク201の位置又は部分の違いに対応し異なる強度値を呈する画像を生成するよう、当該1個又は複数個のプロセッサを構成してもよい。
【0061】
また、実施形態に係る方法500は、一通り又は複数通りの波面収差を識別するステップ508を有している。例えば、前記1個又は複数個のコントローラ212にて、反射ビーム207に基づき生成された画像を、用いられている特定のテストマスク201に基づく期待画像と比較することで、一通り又は複数通りの波面収差を識別すればよい。特定のテストマスク201に基づく期待画像が、EUVマスク検査システム200のメモリ内に格納されるのでもよいし、ユーザ入力を介しもたらされるのでもよい。
【0062】
また、実施形態に係る方法500は、そのシステムの1個又は複数個の構成部材を調整するため1個又は複数個の調整量を提供するステップ510を有している。例えば、前記1個又は複数個のコントローラ212にて、前記1個又は複数個の照明光学系204及び/又は前記1個又は複数個の投射光学系210の位置につき、1個又は複数個の調整量を決定すればよい。当該1個又は複数個の調整量による、EUVマスク検査システム200の1個又は複数個の構成部材の調整は、そのEUVマスク検査システム200により自動実行されるのでも、然るべく構成された1個又は複数個のコントローラ212によりそうした調整量の決定をユーザにアラートしユーザに実行させるのでもよい。EUVマスク検査システム200の1個又は複数個の構成部材を当該1個又は複数個の調整量により調整することで、識別済の一通り又は複数通りの波面収差を補償することができる。例えば、EUVマスク検査システム200の1個又は複数個の構成部材を当該1個又は複数個の調整量により調整することで、収差により引き起こされた所望波面からの逸脱を低減若しくは解消すること、及び/又は、前記一通り又は複数通りの識別済波面収差の影響の軽減をもたらすことができる。
【0063】
本願記載の主題は、ときに、他部材内に組み込まれ又は他部材に接続・連結された様々な部材を以て描出されている。理解し得るように、それら描写されているアーキテクチャは単なる例示であり、実のところは、他の多くのアーキテクチャを実施し同じ機能を実現することが可能である。概念的には、どのような部材配置であれ同じ機能が実現されるなら、その部材配置は、実質的に「連携」することでその所望機能を実現しているのである。従って、本願中の何れの二部材であれ、ある特定の機能を実現すべく組み合わされているものは、その所望機能が実現されるよう互いに「連携」していると見なせるのであり、アーキテクチャや介在部材の如何は問われない。同様に、何れの二部材であれそのように連携しているものはその所望機能を実現すべく互いに「接続・連結され」又は「結合され」ているとも見ることができ、また何れの二部材であれそのように連携させうるものはその所望機能を実現すべく互いに「結合可能」であるとも見ることができる。結合可能、の具体例としては、これに限られないが、物理的に相互作用可能な及び/又は物理的に相互作用する諸部材、及び/又は無線的に相互作用可能な及び/又は無線的に相互作用する諸部材、及び/又は論理的に相互作用可能な及び/又は論理的に相互作用する諸部材がある。
【0064】
本件開示及びそれに付随する長所の多くについては上掲の記述により理解し得るであろうし、開示されている主題から離隔することなく或いはその主要な長所全てを損なうことなく諸部材の形態、構成及び配置に様々な改変を施せることも明らかであろう。述べられている形態は単なる説明用のものであり、後掲の特許請求の範囲の意図はそうした改変を包括、包含することにある。更に、理解し得るように、本発明を定義しているのは別項の特許請求の範囲である。
【国際調査報告】