(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(54)【発明の名称】測定対象物体の生成空間像を決定する方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/84 20120101AFI20220803BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20220803BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20220803BHJP
【FI】
G03F1/84
G03F1/24
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573375
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2020065279
(87)【国際公開番号】W WO2020249434
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】102019208552.0
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ディーツェル マルティン
(72)【発明者】
【氏名】カペッリ レンツォ
【テーマコード(参考)】
2G051
2H195
【Fターム(参考)】
2G051AA56
2G051AC04
2G051BA05
2G051BA10
2G051BB07
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB01
2G051CC09
2H195BA10
2H195BD04
2H195BD14
2H195BD17
2H195BD19
2H195BD20
2H195BD24
2H195CA11
2H195CA22
(57)【要約】
光学生成システムの照明および結像条件での照明および結像の結果として測定対象物体の生成空間像を決定するため、最初に、測定対象物体の測定空間像が取り込まれる(17)。これは、所定の測定照明設定を含む光学測定システムの照明および結像条件で実行される。測定空間像のデータがこの取り込み中に生成される。再構成アルゴリズムによって、取り込まれた測定空間像のデータから、測定対象物体の物体構造が再構成される(18)。再構成された物体構造のデータがこの再構成中に生成される。光学生成システムの照明および結像条件で再構成された物体構造のデータから、生成空間像がシミュレーションされる(19)。前記条件が測定照明設定と異なる生成照明設定を含む。これにより、光学生成システムの厳しい照明および結像条件下であっても、決定方法に用いられる光学測定システムを対象とする要件が緩和された決定方法が得られる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学生成システム(22、23)の照明および結像条件での照明および結像の結果として測定対象物体(12)の生成空間像(I(x,y))を決定する方法であって、
所定の測定照明設定(5)を含む、光学測定システム(9)の照明および結像条件で、前記測定対象物体(12)の測定空間像(I(x,y))を取り込むステップ(17)であり、前記測定空間像(I(x,y))のデータが、前記取り込むステップ(17)中に生成される、取り込むステップ(17)と、
再構成アルゴリズムによって、取り込まれた前記測定空間像(I(x,y,z))の前記データから、前記測定対象物体(12)の物体構造(13)を再構成するステップ(18)であり、再構成された物体構造(13)のデータ(T
Mask)が、前記再構成するステップ(18)中に生成される、再構成するステップ(18)と、
前記測定照明設定(5)と異なる生成照明設定(19a)を含む、前記光学生成システム(22、23)の照明および結像条件(T
POB、E
illu)で、前記再構成された物体構造(13)の前記データ(T
Mask)から、前記生成空間像(I(x,y))をシミュレーションするステップ(19)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記測定照明設定(5)が、設定絞り(7)によって予め規定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成照明設定(19a)が、照明瞳の楕円エッジ輪郭を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生成照明設定(19a)が、自由形状またはソースマスク最適化(SMO)照明設定であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記生成照明設定(19a)が、0より大きい最小照明強度と、最大照明強度と、の間の範囲で変動する照明瞳の照明領域上の照明強度を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記生成照明設定(19a)が、照明瞳内に多数の照明される個別領域(21)を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記照明される個別領域(21)がそれぞれ、同じ代表的直径を有することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記照明される個別領域(21)が、前記照明瞳上で不ぞろいに分布するようなやり方で配置されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記照明される個別領域(21)が、前記照明瞳上で変動する表面密度を有して分布するようなやり方で配置されることを特徴とする、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するための光学測定システム(9)を備えた計測システム(2)であって、
所定の照明設定(5)で試験対象の前記物体(12)を照明するための照明光学ユニットを備えた照明システム(4)を備え、
前記物体(12)の一部を測定平面(15)に結像するための結像光学ユニット(8)を備え、
前記測定平面(15)に配置された空間分解検知デバイス(16)を備えた、
計測システム(2)。
【請求項11】
前記測定照明設定(5)を予め規定するための可変設定絞り(7)を特徴とする、請求項10に記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ドイツ特許出願第10 2019 208 552.0号の内容を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、光学生成システムの照明および結像条件での照明および結像の結果として測定対象物体(object to be measured)の生成空間像(production aerial image)を決定する方法に関する。さらに、本発明は、この方法を実行するための光学測定システム(optical measurement system)を備えた計測システム(metrology system)に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許出願公開第2017/0131528号(対応文献:WO2016/0124425A2)および米国特許出願公開第2017/0132782号により、計測システムが知られている。WO2017/207297A1は、リソグラフィマスクの結像結果を予測する方法を開示している。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、光学生成システムの厳しい照明および結像条件下であっても、導入部において述べたような決定方法に用いられる光学測定システムを対象とする要件が緩和されるように、そのような決定方法を開発することである。
【0005】
この目的は、請求項1に規定の特徴を有する決定方法によって、本発明により達成される。
【0006】
本発明によれば、光学生成システムの厳しい照明および結像条件に対しても、生成照明設定と異なる測定照明設定が用いられる光学測定システムを使用して、生成空間像の決定を実行可能であることが認識されている。そして、測定照明設定は、光学測定システムにおいてより簡単に実現され、結果として光学測定システム全体を対象とする要件が緩和されるように構成可能である。特に、測定セットアップにおいて、たとえば製造が不可能または製造が困難な絞り構造を要することから実現が不可能または実現が困難な生成空間像をシミュレーションする(simulate:シミュレートする)ことができる。
【0007】
シミュレーション生成空間像すなわち決定方法の結果に基づいて、シミュレーション生成空間像が所定の空間像に対応するまで、測定対象物体の物体構造を最適化可能である。したがって、この決定方法は、像構造を生成する光学生成システムの照明および結像条件に対して最適化されるまで物体構造を最適化する反復プロセスの一部とすることができ、これが翻って、たとえば光学生成システムがマイクロまたはナノ構造の半導体部品の生成に使用される場合は、極めて高い分解能で対応して構造化された半導体部品の生成の起点となる。
【0008】
測定照明設定には、光学測定システムの所定の照明開口数(numerical illumination aperture)を含む。前記所定の照明開口(illumination aperture)は、照明瞳(illumination pupil)のエッジ輪郭(edge contour:端輪郭)によって予め規定される。
【0009】
この決定方法においては、技術論文“Method for Retrieval of the Three-Dimensional Object Potential by Inversion of Dynamical Electron Scattering” by Van den Broek et al., Phys.Rev.Lett 109, 245502 (2012)およびWO2017/207297A1により知られる物体構造の再構成方法を使用することができる。
【0010】
物体構造の最適化においては、一例として、物体欠陥を識別するとともに、任意選択として修復することができる。
【0011】
請求項2に記載の設定絞り(setting stop)によって測定照明設定を予め規定することが有効であることが分かっている。
【0012】
請求項3に記載の照明瞳の楕円エッジ輪郭を有する生成照明設定が厳しい生成照明設定の一例である。
【0013】
変更すべき箇所を変更した上で、同じことが請求項3に記載の自由形状またはSMO(Source Mask Optimization:ソースマスク最適化、光源マスク最適化)照明設定に当てはまる。このような自由形状照明設定は、標準化された照明設定「従来型(conventional)」、「環状(annular)」、「双極子(dipole)」、または「多極子(multipole)」のいずれによっても表し得ないが、むしろ、照明瞳内で照明光が衝突する瞳領域の配置の自由成形によって識別される。SMO法に関しては、技術論文“Source mask optimization methodology (SMO) and application to real full chip optical proximity corrections” by D. Zhang et al., Proceedings SPIE 8326, Optical Microlithography XXV, 83261V (13 March 2012)を参照とする。
【0014】
請求項5に記載の照明強度が変動する生成照明設定が厳しい生成照明設定の別の例である。最小照明強度は、最大照明強度の1%あるいは10%より大きくすることができる。最小照明強度は、最大照明強度の50%より小さくすることができる。
【0015】
請求項6に記載の生成照明設定が光学生成システムにおいて有効であることが分かっている。照明瞳内の照明される個別領域は、相互に分離して配置可能である。
【0016】
このような生成照明設定を設定絞りによって予め規定するのは、事実上または一切不可能である。この種の設定絞りは、そもそも生成可能であったとしても、その生成コストが非常に高くなってしまうためである。
【0017】
請求項7~9に記載の個別領域構成または個別領域配置が生成照明設定を予め規定する場合に有効であることが同様に分かっている。個別領域は、円形の境界を有し得るが、これは必須ではない。
【0018】
請求項10に記載の計測システムの利点は、本発明に係る収束方法を参照して上記説明済みの利点に対応する。
【0019】
この計測システムは、たとえば30nm未満、特に10nm未満も可能な極めて高い構造分解能で半導体部品を生成する投影露光に供されるリソグラフィマスクを測定可能である。
【0020】
請求項11に記載の計測システムは、柔軟に使用可能である。この計測システムは、変更マウント(changing mount)によって自動化されたやり方で相互に交換可能な複数の可変設定絞りを備え得る。
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な一実施形態をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】リソグラフィマスクの形態の測定対象物体の空間像を決定する計測システムであって、照明システム、結像光学ユニット、および空間分解検知デバイスを備えた、計測システムを模式的に示した図である。
【
図2】光学生成システムの照明および結像条件での照明および結像の結果として測定対象物体の空間像を決定する
図1に記載の計測システムの使用方法の一連の主な方法ステップを示した図である。
【
図3】
図1に記載の計測システムの結像光学ユニットによるリソグラフィマスクの結像をより詳細に、なお模式的に示した図である。
【
図4】決定された生成空間像、すなわち特に、測定対象物体を結像する(image)光学生成システムに関するデータ、再構成された物体構造のデータ、および
図1に記載の計測システムの測定照明設定と異なる生成照明設定による光学生成システムの照明条件に関するデータに影響する入力変数を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、計測システム2におけるEUV照明光または結像光1の光路を示した子午断面に対応する断面図である。照明光1は、EUV光源3によって生成される。
【0024】
位置関係の表示を容易化するため、以下、xyz直交座標系を使用する。
図1において、x軸は、紙面と垂直に突き出す方向に延びている。y軸は、
図1の右方に延びている。z軸は、
図1の上方に延びている。
【0025】
光源3としては、レーザプラズマ源(レーザ生成プラズマ(LPP))または放電源(放電生成プラズマ(DPP))が可能である。原理上は、シンクロトロンベースの光源(たとえば、自由電子レーザ(FEL))も使用可能である。照明光1の使用波長としては、5nm~30nmの範囲が可能である。原理上、投影露光装置2の一変形例の場合は、その他何らかの使用光波長(たとえば、193nmの使用波長)の光源を使用することも可能である。
【0026】
光源3も属する計測システム2の照明システムの照明光学ユニット(より具体的詳細には示さず)においては、照明の特定の照明設定5すなわち特定の照明角度分布が与えられるように、照明光1が調節されている。前記照明設定5は、照明システム4の照明光学ユニットの照明瞳における照明光1の特定の強度分布に対応する。
【0027】
図1においては、ウェブを備え、略四分円として成形された合計4つの照明極(illumination pole)6を有する環状照明設定として紙面に存在するように照明設定5の一例を模式的に示している。照明設定5が存在する照明瞳は実際のところ、
図1の紙面および照明瞳を通る照明光1の伝搬方向と垂直に配置されている。
【0028】
照明瞳において、照明極6の場所ではいずれの場合も所定の照明強度が存在し、それ以外の場所では照明強度が存在しない。照明設定5は、照明極6の場所で照明光1を透過させ、照明極6の周囲で照明光を遮断する設定絞り7により予め規定可能である。このような設定絞り7の一例は、形状が照明極6の形状に厳密に対応する通過開口を有する金属シートである。設定絞りは、計測システム2の照明光学ユニットの瞳面(pupil plane)に配置されている。
【0029】
図1に示す変更ホルダー7aによって、各測定照明設定を変更する交換設定絞りへと設定絞り7を交換可能である。
【0030】
図示の四極子照明設定5の代わりに、これに対応して異なる形状および/または分布の通過開口の併用により、たとえば実際にすべての照明角度が物体照明に使用される従来の照明設定(特に、照明対象物体に対する垂直もしくは平均入射に近い照明角度を除く)、全体として小さな照明角度すなわちそれ自体がひいては省略可能となる垂直もしくは平均入射に近い照明角度での環状照明設定、または個々の照明極がそれぞれ「リーフレット」の外形すなわち両凸レンズ素子を通る断面(section:セクション)に略対応するエッジ輪郭を有し得る双極子照明設定等、計測システム2において他の照明設定を予め規定することも可能である。
【0031】
照明システム4は、結像光学ユニットまたは投影光学ユニット8と併せて、計測システム2の光学測定システム9を構成する。
【0032】
照明設定5がそれぞれ設定された状態で、照明光1は、計測システム2の物体平面(object plane)11の物体視野(object field)10を照明する。物体平面11における反射性物体(reflective object)として、レチクルとも称するリソグラフィマスク12が配置されている。物体平面11は、xy平面と平行に延びている。
【0033】
計測システム2の投影光学ユニット8を通る結像光1のガイドをより具体的詳細に示した
図3においては、
図3の紙面と垂直に延びた線構造として、投影光学ユニット8に対向する結像対象物体の物体構造13を示している。
【0034】
図1に模式的に示すように、照明光1は、リソグラフィマスク12により反射され、入射瞳面における結像光学ユニット8の入射瞳に入る。このように使用する結像光学ユニット8の入射瞳は、円形あるいは楕円形の境界を有し得る。
【0035】
結像光学ユニット8において、照明光または結像光1は、入射瞳面と出射瞳面との間で伝搬する。結像光学ユニット8の円形の出射瞳は、出射瞳面に存在する。
【0036】
結像光学ユニット8は、計測システム2の像平面(image plane)15における像視野(image field)14へと物体視野10を結像する。投影光学ユニット8による結像時の結像拡大倍率は、500より大きい。結像拡大倍率は、投影光学ユニット8の実施形態に応じて、100より大きくすることも可能であり、200より大きくすることも可能であり、250より大きくすることも可能であり、300より大きくすることも可能であり、400より大きくすることも可能であり、また、500よりはるかに大きくすることも可能である。投影光学ユニット8の結像倍率は、通常は2000未満である。
【0037】
投影光学ユニット8は、物体12の一部(section:セクション)を像平面15へと結像するのに役立つ。
【0038】
像平面15には、計測システム2の空間分解検知デバイス(spatially resolving detection device)16が配置されている。これには、CCDカメラを含んでいてもよい。
【0039】
光学測定システム9を有する計測システム2は、EUV投影露光装置(図示せず)の光学生成システムの照明および結像条件での照明および結像の結果として測定対象物体12の空間像を決定する方法の実行に用いられる。したがって、生成投影露光装置の光学生成システムにより生成される物体12の空間像は、計測システム2によりシミュレーションまたはエミュレーション可能である。
【0040】
以下、
図2および
図4によって、この方法の主要なステップを説明する。
【0041】
取り込み(capturing)ステップ17において、計測システム2は、光学測定システム9の照明および結像条件で測定対象物体12の測定空間像I(x,y)を取り込む。この場合、測定空間像は、所定の測定照明設定(たとえば、照明設定5)で取り込まれる。測定空間像の強度データI(x,y)がこの取り込み中に生成される。
【0042】
この決定方法の後続の再構成ステップ18では、再構成アルゴリズムによって、取り込まれた測定空間像のデータI(x,y)から、測定対象物体12の伝達関数TMask(x,y)の形態の物体構造13を再構成する。再構成された物体構造(reconstructed object structure)13のデータがこの再構成ステップ18中に生成される。このような取り込み測定空間像データからの物体構造再構成アルゴリズムは、技術論文“Method for Retrieval of the Three-Dimensional Object Potential by Inversion of Dynamical Electron Scattering” by Van den Broek et al., Phys.Rev.Lett 109, 245502 (2012)に記載されている。また、この再構成アルゴリズムは、リソグラフィマスクにも適用可能である。これに関しては、WO2017/207297A1を参照とする。
【0043】
この決定方法の後続のシミュレーションステップ19においては、光学生成システムの照明および結像条件での再構成された物体構造13のデータT
Maskから、生成空間像すなわち生成投影露光装置の光学生成システムにより得られた空間像の電界E
I(x,y)がシミュレーションされる。光学生成システムの前記照明および結像条件には、測定照明システム5と異なる生成照明設定19a(
図4参照)を含む。
【0044】
一例として
図4に示す生成照明設定19aは、円形のエッジ輪郭20を有する。あるいは、円形状から逸脱したエッジ輪郭(たとえば、楕円エッジ輪郭)を有する生成照明設定を使用可能である。
【0045】
図4に示す生成照明設定19aは、自由形状照明設定である。このような自由形状照明設定は、標準化された照明設定「従来型」、「環状」、「双極子」、または「多極子」のいずれによっても表し得ない。自由形状生成照明設定19aは、生成照明瞳のエッジ輪郭20内に多数の(a multiplicity of)照明される個別領域21を有する。個別領域21は、エッジ輪郭内の照明瞳を完全に網羅する点格子の格子点を選択して配置されている。
【0046】
照明される個別領域21はそれぞれ、同じ代表的直径(typical diameter:典型的直径)を有する。個別領域21の代表的直径としては、瞳領域全体の0.5%~10%の範囲が可能である。
【0047】
照明される個別領域21は、円形の境界を有し得る。照明される個別領域21は、エッジ輪郭20内の照明瞳上で(照明瞳にわたって)不ぞろいに(irregularly:不規則に)分布するようなやり方で配置されている。照明される個別領域21は、エッジ輪郭20内の照明瞳上で(照明瞳にわたって)変動する表面密度(surface density)を有して分布するようなやり方で配置されている。
【0048】
照明設定19aの場合は、照明個別領域がすべて、同じ照明強度で照明される。別の生成照明設定の場合は、0より大きい最小照明強度と、最大照明強度と、の間の範囲において、照明瞳の照明領域(illuminated region:照明される領域)上で(照明領域にわたって)照明強度が特に連続して変動し得る。
【0049】
一方で生成照明設定19aに対応する生成照明設定の場合、この照明強度の変動は、異なる個別領域21が異なる照明強度で照明されることにより実現され得る。この場合、個別領域21のうちの特定の個別領域が最大照明強度で照明され、他の個別領域21がそれより低い照明強度(たとえば、最大照明強度の90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%)で照明され得る。この場合、異なる個別領域21は、異なる段階の照明強度で照明され得る。あるいは、照明強度の連続的な変動が可能である。段階的な照明強度の使用により、2段階、3段階、4段階、5段階、6段階、7段階、8段階、9段階、10段階、あるいはそれ以上の段階を使用可能である。
【0050】
生成空間像I(x,y)のシミュレーションは、生成投影露光装置の投影光学ユニット22の結像条件に関するデータの影響も受ける。計測システム2の測定投影光学ユニット8と全体的に大きく異なる生成投影光学ユニット22については、
図4の左端に模式的に示している。あるいは、生成投影光学ユニットに対応する測定投影光学ユニットを使用することも可能である。
【0051】
生成投影光学ユニット22の像側開口数としては、0.3~0.9の範囲(たとえば、0.33、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7)が可能である。生成投影光学ユニット22が物体構造13を生成投影露光装置の像視野26へと縮小して結像するように、生成投影光学ユニット22の結像倍率としては、1未満が可能である。この縮小は、たとえば4倍が可能であるため、結像倍率は0.25となる。0.1~0.5の範囲の他の結像倍率も可能である。
【0052】
生成照明設定19aのほか、シミュレーションステップ19は、生成投影露光装置の光学生成システムのさらに別の照明条件、特に、生成投影露光装置の照明システム23の装置機能の影響を受ける。前記装置機能は、EUV光源のデータおよび生成投影露光装置の照明投影光学ユニットのデータの影響も受ける。このようなデータは、たとえば照明の均一性に関するデータ、すなわち、照明される物体視野上の実際の照明強度が所望の照明強度にどの程度対応するかの基準を表すデータである。これらのデータには、光源3の光子雑音に関するデータをさらに含み得る。
【0053】
さらに、シミュレーションステップ19は、測定対象物体の被膜および/または物体が生成システムによって結像される基板の特定の別の特性の影響も受け得る。対応する光学データとしては、吸収層および/または多層の吸収係数が考えられる。
【0054】
図4は、生成空間像Iのシミュレーションに影響を及ぼす入力変数を明らかにする。これらには、生成投影光学ユニット22の伝達関数T
POB、再構成ステップ18において決定される物体構造13の伝達関数T
Mask、および生成照明設定19aを含む生成照明システム23の照明条件E
illu(u,v)を含む。この場合、u、vは、周波数領域の座標である。
図4のボックス27によって、シミュレーションを模式的に示す。
【0055】
さらに、(
図4の参照記号28によって模式的に特定される)決定方法は、システム固有の効果、すなわち、システムの調整時およびシステムの校正時における当該決定方法の準備中に測定される収差、均一性データ、および光子雑音に関するデータの影響も受け得るが、これらは、測定空間像I(x,y)のデータおよび任意選択として計算に付随するデータから推定される。このシステム固有の効果を含むステップについては、
図4の24に示している。全体として、測定対象物体12の決定空間像I=Σ|E
I
2|は、以下の式により、生成投影光学ユニット22を備えた光学投影システムの照明および結像条件での照明および結像の結果として生じる。
【数1】
【0056】
この場合、FTはフーリエ変換を表し、FT-1は逆フーリエ変換を表す。uおよびvはそれぞれ、周波数領域における生成照明設定19aおよび生成投影システム23の瞳座標を表す。
【0057】
この決定方法は、たとえば比較的低コストで生成可能な設定絞り7により実現可能な測定照明設定5によって、照明設定19aのように、はるかにより複雑な生成照明設定の空間像決定(
図4の参照記号29によって模式的に特定される)を実行可能とする。このようにして、計測システム2の設定絞り7に関する設計要件が抑えられる。
【0058】
測定空間像Iは、3つの次元で取り込まれる。このため、
図1に模式的に示す物体変位デバイス12aによって物体12をz方向に段階的に変位させることにより、この物体平面11から像平面15へのz方向変位の結像伝達に基づいて、像平面15の周りの領域でz方向段階z
iに対して複数の2D空間像(x,y,z
i)が生成されるようにする。その後、複数の2D空間像から3D測定空間像(I(x,y,z))が生じる。像平面15は、測定平面とも称する。
【国際調査報告】