(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(54)【発明の名称】多価不飽和非芳香族化合物の異性化
(51)【国際特許分類】
C07C 403/12 20060101AFI20220804BHJP
【FI】
C07C403/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021572308
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2020064871
(87)【国際公開番号】W WO2020245030
(87)【国際公開日】2020-12-10
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ジーゲル,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】チルシュヴィッツ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブレーグマン,ティル クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】プルベール,マリウス ソリン
(72)【発明者】
【氏名】ブーフベンダー,フロリアン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC14
4H006BA95
4H006BB11
4H006BB14
4H006BC40
4H006UC12
(57)【要約】
本発明は、非環式共役ポリエン及び脂環式共役ポリエンを含む多価不飽和非芳香族化合物を異性化する改善された方法に関する。特に、エネルギーの消費が可能な限り少なく、副生成物及び生成物混合物を最大限回避することによって、高収率で11-Eレチノイド化合物を生成する改善された安全な方法に関する。これは、式2~5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つ、又は式2~5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物、有機溶媒及び光増感剤を反応装置中に供給する工程と、得られた反応混合物を可視単色光で照射する工程であって、前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される、工程とによって達成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の全Eレチノイド化合物又は全Eレチノイド化合物の混合物
【化1】
(式中、Rは、CH
2-OH、CHO、CH
2-OR
2、COOH、COOR
3からなる基の群から選択され、
R
2は、(C=O)-アルキルであり、
R
3は、アルキルであり、
アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルからなる群から選択される)
を得るための方法であって、下記反応工程:
- 式2のレチノイド化合物
【化2】
又は式3のレチノイド化合物
【化3】
又は式4のレチノイド化合物
【化4】
又は式5のレチノイド化合物
【化5】
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも2つの混合物、
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物との混合物、
有機溶媒及び光増感剤を反応装置に供給する工程と、
- こうして得られた反応混合物を、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射する工程であって、前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される、工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が、501nm~550nmの範囲で放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単色光が、1kgの式1のレチノイド化合物を得るために前記ライティングデバイスによって消費される電気エネルギーが800Whを超えないように選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
RがCH
2-O-(C=O)-アルキルであり、アルキルがメチル及びエチルの群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
照射前の式1及び式2のレチノイド化合物の合計重量部が、反応混合物中に存在するレチノイド化合物の少なくとも80w%を占め、前記レチノイド化合物が、式1のレチノイド化合物、式2のレチノイド化合物、式3のレチノイド化合物、式4のレチノイド化合物、及び式5のレチノイド化合物の群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が、均一相を形成するように選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が、0.1~12w%の炭化水素、更に好ましくは1~12w%のヘプタン(10w%を含む)、最も好ましくは1~5w%のヘプタンを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記光増感剤が、フルオレセイン、エオシン、ローズベンガル、エリスロシン、コバルト-テトラフェニルポルフィリン、亜鉛-テトラフェニルポルフィリン、ローダミンB、バサクリルブリリアントレッド、ヨウ素からなる群の少なくとも1種の化合物から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ライティングデバイスが半導体材料を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ライティングデバイスが、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を含む、好ましくはそれからなる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応混合物の明確に区別できる部分のみが照射される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
光増感剤を追加した有機溶媒中の請求項1に記載のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つが、反応の経過中、特に照射の経過中及び/又は照射後、反応温度を低下させて-20℃~30℃の範囲の温度で照射される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
レチノイド化合物1~5のうちの少なくとも1つが、レチノイド化合物1~5のうちの少なくとも1つの全濃度が前記反応混合物に対して5~50w%の範囲になるように反応装置中に供給される、好ましくは、レチノールアセテートの異性体からなるレチノイド化合物1~5のうちの少なくとも1つが、レチノイド化合物1~5のうちの少なくとも1つの全濃度が前記反応混合物に対して5~50w%の範囲になるように反応容器中に入れられる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
サイドループ光反応器、連続流式光反応器又は水中光反応器中で実施される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非環式共役ポリエン及び脂環式共役ポリエンを含む多価不飽和非芳香族化合物を異性化する改善された方法に関する。特に、エネルギーの消費が可能な限り少なく、生じうる副生成物又は生成物混合物を最大限回避することによって、高収率で全E-レチノイド化合物を生成する改善された安全な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DE 25 48 883は、150Wキセノンガス放電ランプ又はキセノンアークランプによって、異なる立体配座のビタミンA化合物を全E-体に光異性化する方法を記載している(例1及び2を参照)。そのようなキセノンアークランプは、
図1に示すような発光スペクトル又は出力プロファイルをもたらす。大きなピーク又は山が240nmから1000nmまでのびているのが観察され、すなわち、広範囲の発光が240nm~400nmの範囲でも生じる。そのような発光(UV光)は、あらゆる種類の異性化を生じさせうるものであり、更なる照射による全E-レチノイド化合物(all-E retinoid compound; 全transレチノイド化合物(all-trans retinoid compound)と同義)への変換が困難な9Z-レチノイド(DE 25 48 883、5頁)のような望ましくない化合物さえも生じさせうる。全ての実施形態において、出発物質の組成に関係なく、異性体の混合物(例えば、60~90%の全-E、10~30%の9Z、及び5%の13Zレチノールアセテート)が得られる。これは、すなわち、過剰の全E-レチノイド化合物を既に含有している出発物質が、キセノンアークランプによる光照射により当該過剰な全Eを減少させるということである。更に、ほとんどがUV範囲中の前記高エネルギー照射は、ビタミンA等のポリエン化合物を不可逆的に無色化(bleach)又は破壊するのに適している。UV光の別の欠点は、二量体の形成及びソルボリシスである(DE 2 210 800、1欄66行目から2欄4行目までを参照)。
【0003】
DE 25 48 883は、照射が240nmから450nmの間で生じることを具体的に特許請求しているので、上記の不都合を容認している。この波長の光によって引き起こされるビタミンA化合物の損失を少なくとも部分的に防止すると考えられる光増感剤等の保護手段は、明確に除外されている(請求項1参照)。同様に、フィルタリング手段は、240nm未満の光の反応室内への透過の防止のみのために提案されている(7頁3段落を参照)。したがって、反応装置の内部を更に貫通する240nmから始まる高エネルギーUV光を、意図的にビタミンA化合物と相互作用させ、ビタミンA化合物を損なわせうる。
【0004】
図1中の出力プロファイルによれば、キセノンガス放電ランプ又はキセノンアークランプは、遠紫外光から赤外光までの全域にほぼわたる強力な発光を有するスペクトルを示す。実際、キセノンガス放電管又はキセノンガス放電ランプによって消費される大量のエネルギーは、熱の形態で放出され(約64%)、したがって、あまり環境に優しくない光源となってしまう。更に、キセノンガス放電によって光照射をもたらすために適用される多量の電気エネルギーは、cis-ビタミンA化合物の異性化に影響を与えない波長で消散される。キセノンアークランプ又はキセノンガス放電ランプから発する光スペクトルのほんの一部のみを活用することは、特に工業規模で使用される場合、貴重な電気エネルギーを多く浪費するだけでなく、過剰の熱、すなわち、該ランプから発する赤外線を放出するための高価な手段をも提供することを意味すると考えられる。
【0005】
キセノンガス放電ランプを使用することの更なる欠点は、その高い価格である。動作中、ランプの内部に高温、温度勾配及び高圧が生じるため、取り扱いは容易でなく、安全性も低い。このような動作条件は、接触時に重篤な火傷をもたらしやすく、又は動作中にランプが晒されうる機械的衝撃に起因する爆発により切傷を受けやすくする。その結果、そのようなランプは、特に訓練を受けたスタッフのみが使用可能であり、防護衣の使用を必要とする。ほとんどのキセノン放電ランプは、安全に動作させるために、冷却装置及び防爆ハウジングを要する。これは扱いにくく、高価である。
【0006】
文献DE 25 48 883の更なる別の欠点は、光異性化プロセスにおける塩基、すなわち、トリプロピルアミンの使用である。塩基を多価不飽和化合物と共に使用すると、特にこの公報に記載の光照射条件下で更なる反応につながりうる。この塩基は除去しなければならない。
【0007】
EP 0 742 204 A1は、三重結合を有するアセトニトリル7部及び塩化メチレン3部を含有する溶媒混合物中、8W HitachiランプF875/CWから出る400~700nmの波長で照射することによって11-cis、13-cisレチノイン酸を13-cisレチノイン酸に変換させる方法を開示している。全transレチノイン酸の形成は開示されていない。
【0008】
V. Raj Gopal et al. J. Photochem. Photobiol. A: Chem. 74 (1993), 81~84では、レチノール及びレチノールアセテート溶液は、半導体CdS、CdSeと共に懸濁され、450W中圧水銀ランプで照射される。NaNO
2-及びK
2CrO
7-CuSO
4をフィルタリング手段として使用し、500nm未満及び400nm未満の波長を除く。この配置は、有効な消光剤として作用する酸素に感受性である。光異性化プロセスは、レチノイド(13-cis及び9-cis)の三置換二重結合に選択的に限定される。全trans異性体の量は、時間と共に減少し(
図1、2参照)、13-cis異性体の形成が優先される。全transレチノイドの量を増加する方法は記載されていない。
【0009】
DE 22 10 800は、光増感剤の存在下で、ヨウ化タリウムをドープした高圧水銀灯によってビタミンA異性体の混合物を異性化することを教示している(特に例1を参照)。有害な短波光は、フィルタリング手段として作用するクロム酸カリウム溶液によって部分的に除かれる(例1参照)。しかしながら、前記クロム酸塩溶液は依然として、
図2で確認できるように290nm~360nmの間に強力な透過率を示す。これは、フィルタリング手段によって成功裏に除かれたのは290nm未満のUV光のみであり、290nm超のUV光部分はそのまま残り、サンプルが照射されることにより反応が起こることを意味する(下記の1の表Aに記載の、特に313、322、334、352及び366nmの波長で、TQ 150 Z2タイプのヨウ化タリウムをドープした高圧水銀灯によって発生する放射束を参照)。
【0010】
DE 22 10 800公報の例1に記載の条件下でヨウ化タリウムをドープした高圧水銀灯を用いた作業は、有害な高エネルギー光をある程度取り除き、DE 25 48 883より効率的に副反応を回避することを既に可能にしている。しかしながら、高圧水銀灯の使用には、依然として以下の欠点があり、工業プロセスを高価且つ複雑にし、高圧水銀灯が故障又は稼働休止になると高度に毒性の廃棄物を出す。
【0011】
1. 水銀灯は、Hgスペクトル中、多数の線に散在する光エネルギーを放出する。スペクトルは、約230~600nmに広がっている。タイプTQ 150 Z2のヨウ化タリウムをドープした高圧水銀灯の典型的なシグナルを、以下の表Aに示す:
【0012】
【表A】
しかしながら、これらの線のうち明確な数のエネルギーのみが化学反応を開始させるために使用でき、残りの光はある程度は使用されずに周囲に放出され、ある程度は全Eレチノイド化合物にとって有害なものとなる。しかしながら、前記の光は、装置を動作させるものにとって危険であり、したがって、前記装置は、意識的に且つ費用をかけて遮蔽又は包装されなければならない。
【0013】
2. 市販のドープ水銀灯(例えば、TQ 150 Z2)における光収率(光出力/入力電力(electric power input)は、光反応のために適用される放射束に基づいて5~10%の範囲しかない。90~95%の電力は熱に変換され、ランプの明るい面に放出され、高度な冷却システムが必須となる。電気エネルギーの損失は、かなり多い。
【0014】
3. 適切にドープされた水銀灯でも、依然として放出されるUV光(400nm未満)によるビタミンA化合物、特にレチノールエスエルの分解を防止するために光学フィルターを適用しなければならない。最先端の解決策は、上記に示した欠点を有するクロム酸カリウムフィルターである。クロム酸カリウムは、毒性であり、環境負荷があり、変異原性且つ発癌性の塩である。
【0015】
4. 11ZビタミンA化合物(例えば、レチノールエステル)の全EビタミンA化合物(例えば、レチノールエステル)への高圧水銀灯を介した異性化は、さまざまな他のZ異性体、例えば、9Zレチノールエステル、13Zレチノールエステル、及び9Z,11Zレチノールエステルの形成を伴い、これらの異性体は全て不要であり、結果として全Eレチノイド化合物の全収率を減少させる。
【0016】
5. 今まで、ほとんどの工業的光化学プロセスにおいて、5~60kW水銀灯が適用された。しかしながら、環境保護の理由により、また、ランプ製造者をこれ以上危険な作業条件に晒さないようにするために、国連水銀規制(水銀に関する水俣条約、EuP指令2005/32EG)が引き金となり、水銀灯の製造はすぐになくなる可能性がある。また、この理由により、ビタミンA化合物の異性化反応条件を改善する必要がある。
【0017】
従来技術の教示によれば、ビタミンAを異性化するための光は、常にUV光部分を含む。ビタミンA化合物の異性化を適切に実現するためには400nmまでのUV光が必須で、そのUV光がビタミンA化合物に与える有害な影響を許容しなければならない、という印象さえ受ける。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、前述の多様な欠点を克服し、非環式共役全Eポリエン及び脂環式共役全Eポリエンを含む全E多価不飽和非芳香族化合物、特に式1の全Eレチノイド化合物を得るための改善された方法を考案することである。前記方法は、可能な限り、非常に好ましい方法で、UV照射によって生じる多価不飽和化合物の損失を完全に回避すべきである。これは安価、迅速であり、全E多価不飽和非芳香族化合物、特に式1の全Eレチノイド化合物に対する高い選択性を提供し、その高収率を提供すべきである。精巧な冷却、遮蔽及び防爆手段が新規のプロセスによっては回避されるべきであり、安全且つ簡単なものであるべきである。溶液又は固体手段の両形態のフィルタリング手段は回避されるべきである。複雑な反応混合物及びその冗長な後処理は、最大限可能な程度まで減少されるべきである。また、従来技術と比較される本発明の方法の目的は、生成される全E多価不飽和非芳香族化合物、特に式1の全Eレチノイド化合物の量に対するエネルギーを節約することである。そのような全E多価不飽和体、特にそのような式1の全Eレチノイド化合物を得るために必要とされるエネルギーの量は、反応条件に対して調整可能であるべきである。本発明の方法の簡易なスケールアップ及びスケールダウンが、反応セットアップを大きく変更せずに可能なものとすべきである。
【0019】
本発明の目的は、式1の全Eレチノイド化合物又は全Eレチノイド化合物の混合物
【0020】
【化1】
[式中、Rは、CH
2-OH、CHO、CH
2-OR
2、COOH、COOR
3からなる基の群から選択され、
R
2は、(C=O)-アルキルであり、
R
3は、アルキルであり、
アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルからなる群から選択される]
を得るため方法であって、下記反応工程:
- 式2のレチノイド化合物
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【化5】
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも2つの混合物、
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物との混合物、
有機溶媒及び光増感剤を反応装置に供給する工程と、
こうして得られた反応混合物を、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイス(filter-free, electroluminescent lighting device)によって照射する工程であって、前記単色光のパワー(power)の少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される、工程と
を含む方法によって達成される。
【0025】
驚くべきことに、特許請求の範囲で請求される範囲内の可視光をほぼ排他的に又は排他的に使用することによって、高収率の非環式共役全Eポリエン及び脂環式共役全Eポリエンを含む全E多価不飽和非芳香族化合物、特に式1の全Eレチノイド化合物が観察された。これは、UV光が個別のレチノイド化合物中のZ E異性化の実現に必須である(前記レチノイド化合物は、例えば、タンパク質のような任意の支持手段に結合されない)ことを想定する従来技術とは対照的である。前記の高収率は、高圧水銀灯と共に使用される電気エネルギーの半分を費やするだけでも得られる。前記の低い電気エネルギー消費量にもかかわらず、全E多価不飽和非芳香族化合物、特に式1の全Eレチノイド化合物に対する選択性は、従来技術の高圧水銀灯の使用と比較して高い。多価不飽和化合物の無色化(bleaching)又は損失(spoiling)は、出発物質にも生成物にも観察されなかった。照射直後の原料混合物は、従来技術の方法で得られたものと比較してかなり単純である。新規の本発明の方法は、酵素又は生化学反応工程を必要としない。本発明の方法を実現する個人らの皮膚及び視覚障害のリスクは、ほぼ完全に可視光を又は可視光のみを用いることで大幅に軽減され、一部の実施形態では、低いエネルギー衝撃で更に完全に回避される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の全Eレチノイド化合物は、式1の任意の化合物であり、Rは、CH2-OH、CHO、CH2-O-C(=O)-CH3、CH2-O-C(=O)-CH2-CH3、CH2-O-C(=O)-CH2-CH2-CH3、CH2-O-C(=O)-CH-(CH3)2、CH2-O-C(=O)-CH2-CH2-CH2-CH3、CH2-O-C(=O)-CH-(CH3)-CH2-CH3、CH2-O-C(=O)-CH2-CH(CH3)2、CH2-O-C(=O)-C(CH3)3、COOH、COOCH3、COO-CH2-CH3、COO-CH2-CH2-CH3、COO-CH-(CH3)2、COO-CH2-CH2-CH2-CH3、COO-CH-(CH3)-CH2-CH3、COO-CH2-CH(CH3)2、COO-C(CH3)3からなる群から選択され、すなわち、全Eレチノール、全Eレチナール、全Eレチニルアセテート、全Eレチニルプロピオネート、全Eレチニルブチレート、全Eレチニルイソブチレート、全Eレチニルペンタノエート、全Eレチニルsec-ペンタノエート、全Eレチニルイソペンタノエート、全Eレチニルtert-ペンタノエート、全Eレチノイン酸、全Eレチノイン酸メチルエステル、全Eレチノイン酸エチルエステル、全Eレチノイン酸プロピルエステル、全Eレチノイン酸イソプロピルエステル、全Eレチノイン酸ブチルエステル、全Eレチノイン酸2-ブチルエステル、全Eレチノイン酸sec-ブチルエステル、全Eレチノイン酸イソブチルエステル、全Eレチノイン酸tert-ブチルエステルである。
【0027】
式2、3、4及び5のcisレチノイド化合物は、式1の各化合物と同じ分子式及び同じ分子量を有する。しかしながら、それらの立体化学は、これらの式1のものとは異なる。レチノイド化合物2は11Z構造を有し、レチノイド化合物3は13Z構造を有し、レチノイド化合物4は9Z構造を有し、レチノイド化合物5は11,13Z構造を有する。
【0028】
本発明の一実施形態において、原料又は出発物質として式2、式3、式4又は式5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つが使用される。更なる実施形態では、式2、式3、式4又は式5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つを、原料又は出発物質としての式1の全Eレチノイド化合物と合わせて用いる。これは、すなわち、式2~5の明確なcis-異性体又はそれらの混合物のみを原料として使用するのではなく、式2~5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つに加えて式1の生成物を含む混合物も使用するということである。したがって本発明の方法は、純粋な原料、並びにとりわけ原料と式1の生成物とを含む混合物に使用されるように適合される。
【0029】
本発明の方法の重要な特徴は、前述のレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つ又は混合物を可溶化する有機溶媒である。そのような溶媒を使用せずに、光異性化が起こることも考えられるが、光異性化の終了時の後処理がより冗長になると考えられる。
【0030】
本発明による有機溶媒は、本発明の方法の反応経路を妨げない、すなわち、適用される光及び式1~5のレチノイド化合物と相互作用しない各溶媒である。特に、有機溶媒は、C1~C6アルコール、C5~C10炭化水素、式CxHmCln(式中、xは炭素原子の数を表し、mは水素原子の数を表し、nは塩素原子の数を表し、m+n=2x+2である)のC1~C4ハロゲン炭化水素、式CyHmCln(式中、yは炭素原子の数を表し、mは水素原子の数を表し、nは塩素原子の数を表し、m+n=2yである)のC2~C4炭化水素、式L1-COO-L2(式中、L1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルからなる群から選択され、L2は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチルからなる群から選択される)のカルボン酸エステル、式L2-O-L2(式中、L2は、先に定義されたとおりの意味を有する)のエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、式L3-(C=O)-L3(式中、L3は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル又はアミル、2-メチルブチルからなる群から選択される)のケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であると理解される。
【0031】
C1~C6アルコールの群は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-ブタン-1-オール又はイソペンタノール、tert-ペンタノール又は2-メチル-ブタン-2-オール、シクロヘキサノールからなる。
【0032】
C5~C10炭化水素は、水素原子のみに結合している、少なくとも5個の炭素原子、最大10個の炭素原子を有する炭化水素であると理解される。これらは、n-ペンタン、イソペンタン及び他の全てのペンタンの異性体、n-ヘキサン及び他の全てのヘキサンの異性体、n-ヘプタン及び他の全てのヘプタンの異性体、n-オクタン及び他の全てのオクタンの異性体、2-メチルペンタン、2,2,3-トリメチルペンタン又はイソオクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、石油エーテル、ホワイトスピリット、メチルシクロヘキサン、その全ての異性体のノナン、その全ての異性体のデカンの群から選択される。
【0033】
本発明の方法の重要な側面は、光増感剤の使用である。前記光増感剤は、460~580nmの放射線を少なくとも部分的に吸収し、それをレチノイド化合物2~5のcis-二重結合中の電子を励起することができるエネルギーに変換すると理解される。一旦励起されると、前記cis二重結合は解離してtrans又はE配向に再配置できる。従来技術では、前記異性化は、常に、400nm未満のUV光を、場合によっては可視光線、最終的には熱放射線と組み合わせた手段によって達成された。しかしながら、今日まで、レチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つを異性化して高収率で式1のレチノイド化合物を得るために、排他的に又は準排他的に可視光、特に以下に定義するような単色光を使用する方法も装置も提案されていない。
【0034】
本発明の方法において反応混合物という用語は、レチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つ、場合により式1のレチノイド化合物、規定の有機溶媒及び少なくとも1種の光増感剤を含むと理解される。
【0035】
本開示において理解される単色光は、そのパワーの少なくとも90%、その最大100%が、460nm~580nmの範囲で放出される全ての放射線である。所定の波長範囲外にある単色光の微量成分のパワーは、用いるフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイス、光増感剤及び有機溶媒の性質及び量に応じて合計で最大10%までである。しかしながら、単色光の実施形態の大部分は、460nm超~580nmの光部分を少量しか含有しない。一実施形態では、単色光は、前記単色光のパワーの少なくとも95%、当該パワーの最大100%は460nm~580nmの範囲で放出されるものであると理解される。更に別の実施形態では、単色光は、前記単色光のパワーの少なくとも98%、更に好ましくは少なくとも99%、且つ前記パワーの最大100が460nm~580nmの範囲で放出されることを意味する。単色光の量はパワーで表されるが、その理由は、そうすることによって特許請求の範囲で請求される波長範囲超又はそれ未満の許容される光の量を、ルーメンlm又はWh又はカンデラcdで別途定義することが促されないからである。前記量は、パワーで表されない場合、検討される波長の関数として変化する。更なる特定実施形態において、本開示内で理解される単色光は、そのパワーの少なくとも90%、その最大100%が460nm~580nmの範囲で放出され、その単峰性発光スペクトルが、発光極大の波長に対して+/-10~+/-30nmの半値幅を示す全ての放射線である。前記規定の半値幅は、高度に構造化された光照射シグナルをもたらし、結果として、改善された収率の式1のレチノイド化合物が得られる。
【0036】
本開示中のフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスは、入れたり切ったりすることのみで意図的に選択された時間の間、動作することができ、フィルタリング手段を含まない、光を放出する任意のエレクトロルミネセントデバイスである。フィルタリング手段は、ライティングデバイス上に適用される層、化合物又は製品であってもよい。フィルタリング手段は、ライティングデバイスの周囲を循環、移送(pumped)又は浮遊する溶媒中に浸漬又は可溶化され、明確に区別される範囲内の光を吸収するが、前記吸収光から出るエネルギーをレチノイド化合物1~5の1つに伝達しないように適合された化合物でもありうる。エレクトロルミネセントライティングデバイスは、ガスイオン化のようなあらゆる種類の化学的に誘発される光照射によって又は加熱手段によって動作させることを必要としない。フィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスは、好ましくは可視光の形態で電磁放射線を放出させて、電子不足材料中の孔又はギャップを補う電子から出る光(光子)をもたらすと理解される。前記フィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスは、発光電気化学セル、エレクトロルミネセントワイヤ、磁場誘起エレクトロルミネセントポリマー、発光ダイオード、有機発光ダイオード、ポリマー発光ダイオード、アクティブマトリックス式有機発光ダイオード(AMOLED)、特に無機発光体をベースとするエレクトロルミネセントフィルム、半導体レーザー、ダイオードレーザー、化学レーザー、色素レーザー、自由電子レーザー、ガスダイナミックレーザー、ガスレーザー、イオンレーザー、レーザーフラッシュライト、金属蒸気レーザー、モノリニア光学式量子井戸レーザー、ルビーレーザー、固体レーザーの群から選択される。好ましくは、前記フィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスは、発光電気化学セル、エレクトロルミネセントワイヤ、磁場誘起エレクトロルミセントポリマー、発光ダイオード、有機発光ダイオード、ポリマー発光ダイオード、アクティブマトリックス式有機発光ダイオード(AMOLED)、特に無機発光体をベースとするエレクトロルミネセントフィルムの群から選択される。
【0037】
本発明の方法の更に精巧な実施形態では、前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が501nm~550nmの範囲で放出される。このある程度狭い波長範囲での作用は、非環式共役全Eポリエン及び脂環式共役全Eポリエン、特に式1の全Eレチノイド化合物を含む全E多価不飽和非芳香族化合物への良好な変換率及びその高収率をもたらすが、より狭い波長スペクトルにより、消費されるパワー及びエネルギーは少ない。例えば、望ましくない化合物への異性化などの副反応が、この波長範囲で、更に抑制される、又は好ましくは完全に回避される。フィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイス内の波長範囲を狭めることは、前記デバイス中の別個の電子部品を選択的に制御することによって達成される。
【0038】
本発明の方法の別の重要な特徴は、反応混合物中に導入するエネルギーの量を注意深く制御することである。これは、1kgの式1のレチノイド化合物を得るためのライティングデバイスが消費する電気エネルギーが800Whを超えないように単色光を選択することによって達成される。これを行うとき、反応混合物中の化合物の損失は大幅に低減され、好ましくは完全に回避さえする。式1のレチノイド化合物の望ましくない異性体の形成も同様である。これは、特に望ましくないレチノイド化合物4の形成を逆転させることが難しくなるほど、本発明の方法の進行が長くなるため重要である。特定の反応時間の後は、もはや、反応の経過中に形成されるレチノイド化合物3及び4を除去する状況にはない。言い換えると、レチノイド化合物3及び4(反応混合物中に存在する場合)の量が、本発明の方法の開始時点で既に減少し、その新規の形成が起こらないものとするように、反応条件を選択する必要がある。これに関して考慮すべき一パラメーターは、反応混合物に投入されるエネルギーの量である。
【0039】
このエネルギーの制御は、あらゆる種類の水銀灯又はキセノンアークランプ、各キセノンガス放電ランプを使用するとき、ほとんど可能ではないか、おおよそでしか可能ではない。これらのランプは、異なるエネルギーの多数のピークを示す広範な発光スペクトルを有する。更に、そのようなランプは、それらの使用時間と共にピークの全体的な強度が変化する。エネルギー供給は使用時間と共に減少し、それを定期的に決定又は推定して、供給されるエネルギーの量を調整しなければならない。これは煩雑で、時間を浪費し、経済的な工業プロセスには適さない。
【0040】
本発明の方法は、非環式共役全Eポリエン及び脂環式共役全Eポリエンを含む全E多価不飽和非芳香族化合物において選択される残基Rに応じて、さまざまな収率で全E多価不飽和化合物を生成する。特に、これはレチノイド化合物1~5にあてはまる。残基RがCH2-O-(C=O)-アルキルであり、アルキルがメチル及びエチルの群から選択されるとき、明確によく構造化された又は結晶化された形態の高収率の式1の全Eレチノイド化合物が得られる。分離が困難である複雑な反応混合物は生じない。これは、少なくとも部分的に、Rが前述したとおりである各全Eレチノイドエステル又は全transレチノイドエステルと比較した、Rが前述のとおりである各cisレチノイドエステル2~5の明確に区別できる溶解度及び沈殿又は結晶化能力に起因する可能性がある。さまざまな溶媒又は溶媒混合物中の、RがCH2-O-(C-O)-CH3又はCH2-O-(C-O)-CH2-CH3である全Eレチノイドエステルは、沈殿する傾向があるが、それらに対応する式2~5のcis-異性体はその傾向がない。
【0041】
以前に、式3及び4のレチノイド化合物を対応する式1の全Eレチノイド化合物に異性化することは実現可能であるが難しいことは既に述べられている。恐らく、これは、非環式共役cisポリエン及び脂環式共役cisポリエンを含むcis多価不飽和非芳香族化合物(これらのcis-多価不飽和化合物は少なくとも1つのcis-二重結合を有す)にも該当する。本発明の方法の拡張版は、この問題に対処し、照射前の式1及び式2のレチノイド化合物の合計の重量部が、反応混合物中に存在するレチノイド化合物の少なくとも80w%を占め、前記レチノイド化合物が、式1のレチノイド化合物、式2のレチノイド化合物、式3のレチノイド化合物、式4のレチノイド化合物、及び式5のレチノイド化合物の群から選択されると定義されている。好ましくは、照射前の式1及び式2のレチノイド化合物の合計の重量部は、反応混合物中に存在するレチノイド化合物の少なくとも82w%、より好ましくは少なくとも85w%、更に好ましくは少なくとも90w%、最も好ましくは少なくとも92w%を占め、前記レチノイド化合物は、式1のレチノイド化合物、式2のレチノイド化合物、式3のレチノイド化合物、式4のレチノイド化合物、及び式5のレチノイド化合物の群から選択される。上記に示した量のレチノイド化合物1~5の混合物を使用する場合、本発明の方法は、むしろ単純である。分離が難しい複雑な混合物は、多量の望ましくない式4のレチノイド化合物と同様に回避される。式1のレチノイド化合物の結晶化は、溶媒の選択で即座に生じ、それ以外の方法では困難である。
【0042】
本発明の方法を迅速にし、それによって費用節約し、複雑な反応混合物に必須の手の込んだ後処理を回避することの別の主題は、適当な有機溶媒中で作業することである。適当な有機溶媒は、例えば前記溶媒中での異なる溶解度又は再分配挙動を参照して、一方で式1の全Eレチノイド化合物と、他方で式2~5のレチノイド化合物及び光増感剤とを少なくとも部分的に区別する能力を有するべきである。そのような目的は、有機溶媒が、C1~C6アルコールの群の少なくとも1つの代表例から、好ましくはメタノール及びエタノール又はこれらの混合物から選択される、本発明の更なる実施形態によって達成される。そのようなC1~C6アルコール、特にメタノール及びエタノールは、それぞれ、式2~5のレチノイド化合物をより容易に溶解し、式1のレチノイド化合物をほとんど~全く溶解しない。C1~C6-アルコールという用語は、本開示において上記に示すとおりの意味を有する。
【0043】
前述の実施形態は、高度に複雑な反応混合物を回避するが、一般により長い反応時間を要し、それによってレチノイド化合物2~5の形成のリスクが増す。また、これは、結晶化の代わりに、式1のレチノイド化合物のオイルアウトにも少なくとも部分的につながりうる。オイルアウト化合物1は、式2~5のオイルアウト化合物のうちの少なくとも1つと部分的に会合(associated)しうる。これは、本発明の方法の更なる拡張において、有機溶媒としてC1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物を使用する場合に回避される。C1~C6-アルコール及びC5~C10炭化水素は、上記で示したとおりの意味を有する。C1~C6-アルコールそれ自体は、ある程度多かれ少なかれ明確な程度まで水を含有する。これは、アルコールと水との間に相間(interphases)、すなわち実際には正確ではない分離をもたらすことができ、反応混合物の種々の成分の再分配に影響を与える。初めからC1~C6-アルコールにC5~C10炭化水素を追加すると、アルコール相がより疎水性になり、したがって式1の全Eレチノイド化合物が、レチノイド化合物2~5及び/又は光増感剤からより良好に分離することにつながる。この方策によってレチノイド化合物1~5のオイルアウトを低減することができ、化合物1の単離が迅速且つ簡易になる。
【0044】
C1~C6-アルコール及びC5~C10炭化水素は、等量で混合すると2つの別個の相が得られる。この状態で、本発明の方法は、反応混合物を激しく撹拌すると成功裏に実現することができる。この実施形態は、単純に撹拌手段を停止することによって、反応混合物の異なる種類の化合物を、それらの全体的な極性に応じて、分離することができる利点を有する。しかしながら、この利点は、式1の全Eレチノイド化合物の結晶化をより洗練されたものにし、その理由は、反応混合物を撹拌する間、反応混合物の全化合物は連続的に混合され、一旦撹拌が停止すれば、それぞれの極性に応じて各相に分布するためである。高濃度の反応混合物を扱う場合、式1のレチノイド化合物の結晶化の代わりに、大幅に低減されたが非常に少量のオイルアウトが生じうる。これは、反応混合物からの化合物1の単離を更に簡易なものにする。
【0045】
しかしながら、驚くべきことに、更に開発された本発明の実施形態において、C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が、均一な相を形成するように選択される場合に、高収率且つ短い反応時間で式1の全Eレチノイド化合物の更により良好な結晶化パターンが観察された。均一な相とは、2種の溶媒が、2つの別々の存在として特定できないような方法で互いに混じり合うことを意味する。すなわち、有機溶媒中のC5~C10炭化水素の量は微量であり、特定の閾値を超えることは許されない。式1の全Eレチノイド化合物のオイルアウトは観察されなかった。代わりに、照射中に結晶化が起こり、溶解した式1の全Eレチノイド化合物の量は減少し、照射プロセスから形成されることで新たな溶解した式1の全Eレチノイド化合物が生じる。前記の新たな式1の全Eレチノイド化合物はまた、一旦、溶液中で飽和になると、結晶化などが生じる。この特徴は、式1の全Eレチノイド化合物の急速な形成を強力に促進する。
【0046】
更なる試験で、C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が、0.1~12w%の炭化水素、更に好ましくは1~12w%(10w%を含む)のヘプタン、最も好ましくは1~5w%のヘプタンを含む場合、式1の全Eレチノイド化合物の高度に均一な結晶の適時に最適化された結晶化が得られることが示された。相間の形成及び式1の全Eレチノイド化合物の部分的なオイルアウトは観察されなかった。適時の結晶化により、長時間の反応時間を回避することができ、したがって、望ましくない式4のレチノイド化合物の形成を完全に防止することができる。
【0047】
本発明の有益な特徴の一つは、本発明の方法においてはUV照射を回避することである。本発明の方法の光化学反応のための放射線として可視光のみを使用したときでさえ、少なくとも1種の特定の光増感剤を使用した場合、反応速度の顕著な増加が起こることが観察された。したがって本発明の更なる実施形態は、フルオレセイン、エオシン、ローズベンガル、エリスロシン、コバルト-テトラフェニルポルフィリン、亜鉛-テトラフェニルポルフィリン、ローダミンB、バサクリルブリリアントレッド(basacryl brilliant red)、ヨウ素からなる群の少なくとも1種の化合物から選択される本発明の光増感剤を開示する。
【0048】
本発明の方法の更に重要な実施形態は、半導体材料を含むフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスを開示する。前記半導体材料は、本発明の幾つかの目的を満たす。これは、UV範囲外の選択された波長又は波長範囲の放射線を提供する。したがって非環式共役全Eポリエン及び脂環式共役全Eポリエンを含む多価不飽和非芳香族化合物、特に式1~5のレチノイド化合物の損失を大幅に低減することができ、好ましくは完全に回避することさえできる。したがって、所望の波長範囲内にない危険な又は有害な光の遮蔽又はフィルタリングを必要としない。同様に、半導体を含むライティングデバイスは爆発する傾向も、大量の熱を放出する傾向もないため、精巧な冷却又は爆発の防護を必要としない。半導体材料は、一般に、同等の少量の電気エネルギーのみを消費し、その光を引き出す能力は、電流及び電圧を調整することによって又は用いる半導体材料の量を変化させることによって容易に制御又は調整できる。反応混合物を、半導体材料から放出される光に曝露させる時間は、単にエレクトロルミネセントライティングデバイスの前記材料を通過する電流のスイッチを入れたり切ったりすることによって容易に且つ繰り返し制御することができる。前記手順は、キセノンアークランプ又は高圧水銀灯では不可能であるが、その理由は、それらのスイッチを入れるには時間を要し、スイッチの切り替えを繰り返すと劇的に寿命を減らすためである。光化学に無関係の放射線の発生に費やされるエネルギー量はかなり低減されるが、その理由は、半導体材料の発光スペクトルが、好ましくは本発明の異性化プロセスを引き起こすために必要な放射線に適合された規定のバンド幅のみを有するためである。前記半導体材料は、シリコン、ダイアモンド、ゲルマニウム、α-スズ、α-硫黄、セレン、テルル、BN、BP、Bas、B12As2、AlN、AlP、AlAs、AlGaN、AlGaP、AlxGa1-xAs、AlGaAsN、AlGaAsP、AlGaInP、AlxIn1-xAs、AlInAsP、AlSb、AlxIn1-xSb、GaN、GaAsN、GaP、GaAs、GaAsP、GaAsSb、GaAsSbN、GaAsSbN、GaInAsSbP、GaMnAs、GaSb、GaSe、InAlAsN、InN、InP、InAs、InAsSb、InAsSbP、InGaN、InxGa1-xP、InxGa1-xAs、InGaAsN、InGaAsP、InGaAsSb、InGaSb、InMnAs、InSb、TlBr、CdSe、CdS、Cd3P2、Cd3As2、Cd3Sb2、CdTe、CdMnTe、CdZnTe、ZnO、ZnSe、ZnS、ZnTe、Zn3P2、ZnSiP2、Zn3As2、Zn3Sb2、TiO2、SrTiO3、BaTiO3、VO2、LiNbO3、CrBr3、MoS2、FeO、FeS2、NiO、Cu2O、CuO、CuCl、Cu2S、CulnSe2、Cu(In,Ga)Se2、Cu2ZnSnS4、Cu1.18Zn0.40Sb1.90S7.2、Cu2SnS3、Ag2S、AgGaS2、Si1-xGex、Si1-xGex、Si1-xSnx、PbI2、PbSe、PbS、PbTe、PbMnTe、Pb1-xSnxTe、SnO2、SnS、SnS2、SnTe、PbSnTe、Pb1-xSnxTe、Tl2SnTe5、Tl2GeTe5、As2S3、As4S4、Bi2O3、Bi2O3、Bi2S3、Bi2Te3、BiI3からなる群の少なくとも1種の化合物から選択される。好ましくは、半導体材料は、InGaN(窒化インジウムガリウム)/GaN(窒化ガリウム)、GaP(ガリウムリン)、AlGaInP(リン化アルミニウムガリウムインジウム)、AlGaP(リン化アルミニウムガリウム)、ZnO(酸化亜鉛)からなる群から選択される。
【0049】
本発明の方法の更に特定の実施形態において、フィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスは、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を含み、好ましくはそれからなる。発光ダイオードは、製造が安価であり、特有の発光スペクトルを生成し、出す廃熱は少量からほぼ皆無であり、本発明の方法において非常に万能に用いることができる光源となる。反応混合物に適用される照明エネルギーは、単純に、規定のエネルギー入力に必要とされるだけの数の発光ダイオードを直列に接続することによって容易に調整可能である。反応混合物へのエネルギー入力の調整の更なるオプションは、発光ダイオードによって可能である。前記発光ダイオードに適用される電流及び/又は電圧を変化させることにより、ダイオードの輝度、すなわち反応混合物に入る光束、したがってエネルギーを変化させる。反応混合物へのエネルギー入力を調整する更に別の方法は、照射時間を制御することである。発光ダイオードは、水銀灯又はキセノンアークランプ、すなわち、キセノン放電ランプに比べて、かなり長い運転又は耐用寿命を有し、よって、発光ダイオードは、運転中に蓄積する性能損失に悩まされないため、前記発光ダイオードは、本発明の方法を実行するための費用を大幅に抑える。
【0050】
本発明の方法の好ましい実施形態において、ライティングデバイスは、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を含み、好ましくはそれからなり、前記発光ダイオードは、電界発光材料として、Si(シリコン)、SiO2、SiC、水素化非晶質シリコン、Ge、ヒ素、セレン及びテルルの混合物、AlBGaN、AlN、AlGaN、AlGaN/AlN、AlGaP、AlGaAs、AlGaAsP、AlInGaP、AlGaInP、GaN、GaAs、GaP、GaAsP、GaInN、GaInP、InN、InP、InGaN、InGaN/AlGaN、ZnO、ZnS(Mnでドープされた)、ZnS(Cuでドープされた)、ZnSeからなる群の少なくとも1種の化合物から選択される化合物を含む。
【0051】
可視スペクトルの中間の波長に適合された更に別の実施形態において、ライティングデバイスは、少なくとも1つの発光ダイオード(LED)を含み、好ましくはそれからなり、前記発光ダイオードは、電界発光材料として、AlGaP、AlGaAsP、AlGaInP、GaN、GaP、GaInP、InGaN、ZnOからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む。前記電界発光材料は、可視スペクトルの中間で強力な発光を示し、すなわち、青緑~緑から黄色までの光を放出する。この光のエネルギーは、式1の全Eレチノイド化合物を得るのに依然として十分である。
【0052】
本発明の方法の多くの実施形態では、照射前の反応混合物は、均一相、過飽和均一相の形態、又はエマルション若しくは過飽和エマルションの形態である。本開示中で過飽和とは、化合物が、その溶解度積に近い程度に又は既にそれを超えている(コロイド溶液)が、まだ沈殿が生じていない程度に、溶媒又は溶媒混合物中に希釈されていることを意味する。照射中、式1のレチノイド化合物の量は、式1のレチノイド化合物が結晶の形態で沈殿し始める点まで増加する。一方では前記結晶の形成が望ましい。しかしながら、これらの結晶と共に、一部の母液も反応混合物からいくらか分離され、もはや均一的に照射することができない。本発明の方法の一実施形態において、これを回避するために、反応混合物の明確に区別できる部分(distinct portion)のみを照射する。この操作によって、反応混合物の一部は照射前のままで残り、一方で、別の部分は、結晶を析出させて懸濁液に変わる。
【0053】
反応混合物の明確に区別できる部分のみの照射は、2つの方法で実現することができる。一実施形態において、反応混合物の一区分のみ、すなわち上部、下部、左部又は右部が、フィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスからの単色光に曝露されるように、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスを配置することによって、反応混合物の明確に区別できる部分のみを照射する。特に多量の反応混合物に適合された実施形態において、反応混合物をサーキット(circuit)中に導き、前記サーキットの一つの区域のみをフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスからの単色光に曝露することによって、反応混合物の明確に区別できる部分のみを照射する。サーキットは、反応混合物が循環するパイプ、管、及び/又は容器の任意の配置であると理解される。
【0054】
全Eレチノイド化合物又は式1の全Eレチノイド化合物の混合物を得るための本発明の方法の別の実施形態において、式2~5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つ、又は式1の化合物と混合した式2~5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つ、有機溶媒及び光増感剤を反応装置に供給し、こうして得られた反応混合物を、-20℃~30℃の範囲の温度で、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射し、ここで前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される。所定の低温又は中程度の温度は、式1~5のレチノイド化合物の分解又は損失を減少又は防止する。
【0055】
式1の全Eレチノイド化合物又は全Eレチノイド化合物の混合物を得るための本発明の方法における式1~5のレチノイド化合物の分解又は損失は、式2~5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つ又は式1の化合物と混合した式2~5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つ、有機溶媒、光増感剤を反応装置に供給し、こうして得られた反応混合物を、-10℃~20℃の範囲の温度で、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射し、ここで前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される条件で、更に低減することができる。
【0056】
化学反応中の温度の上昇は、反応速度を加速し、その結果として、一定時間に形成される生成物の量も増える。しかしながら、これは、本発明の方法では観察できなかった。対照的に、反応速度及び生成物の収率は、本発明の方法の経過中、温度の低下と共に増加した。供給中及び/又は照射中及び/又は照射後の反応温度の低下は、生成物の形成を加速させることが観察された。したがって、非常に高い生成物の収率の実現を目標とする本発明の方法の実施形態は、光増感剤を追加した有機溶媒中の式1~5のレチノイド化合物の少なくとも1つが、反応の経過中、特に照射の経過中及び/又は照射後、反応温度を低下させて-20℃~30℃の範囲の温度で照射されるように決定する。
【0057】
本発明の方法に関連する場合、反応という用語は、少なくとも供給工程及び照射工程を含むと理解される。前述の実施形態において、これは、供給工程、照射工程、及び照射工程に続くインキュベーション工程を含む。インキュベーション工程は、照射後の、反応混合物が照射されずに維持されるか又は照射されずに冷却される期間であると理解される。
【0058】
低い反応温度、例えば10℃未満という条件で、これは、反応混合物をより粘性にする傾向があり、したがって反応混合物の良好な混合を妨げる。これを満たし、対処するために、更なる一実施形態では、式1の全Eレチノイド化合物又は全Eレチノイド化合物の混合物
【0059】
【化6】
(式中、Rは、CH
2-OH、CHO、CH
2-OR
2、COOH、COOR
3からなる基の群から選択され、
R
2は、(C=O)-アルキルであり、
R
3は、アルキルであり、
アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルからなる群から選択される)
を得るための本発明の方法であって、下記反応工程:
- 式2のレチノイド化合物
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【化10】
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも2つの混合物、
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物との混合物、
有機溶媒及び光増感剤を反応装置に供給する工程と、
- こうして得られた反応混合物を、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射する工程であって、前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される、工程と
を含む方法は、反応工程のうちの少なくとも1つが圧力下で実現されることを規定する。
【0064】
式1の全Eレチノイド化合物又は全Eレチノイド化合物の混合物
【0065】
【化11】
(式中、Rは、CH
2-OH、CHO、CH
2-OR
2、COOH、COOR
3からなる基の群から選択され、
R
2は、(C=O)-アルキルであり、
R
3は、アルキルであり、
アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルからなる群から選択される)
を得るための方法であって、下記反応工程:
- 式2のレチノイド化合物
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【化15】
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも2つの混合物、
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物との混合物、
有機溶媒及び光増感剤を反応装置に供給する工程と、
- こうして得られた反応混合物を、
反応の経過中、特に照射の経過中及び/又は照射後に反応温度を低下させて-20℃~30℃の範囲の温度で、
単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射する工程であって、前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される、工程と
を含み、反応工程のうちの少なくとも1つが圧力下で実現される、方法によって短い反応時間で高収率も得られる。
【0070】
本開示において理解される圧力とは、周囲圧力から100barまでの範囲の値を意味する(周囲圧力とは、圧力の増減に適した装置を適用することなく、気候及び高度条件に応じて、平均で1barを意味する)。
【0071】
更なる拡張版における前述の2つの実施形態それぞれは、周囲圧力から100barまでの範囲の圧力を含む(周囲圧力とは、圧力の増減に適した任意の装置を適用することなく、気候及び高度条件に応じて、平均で1barを意味する)。
【0072】
他方で、高温下で粘度は低下する傾向がある。更に、例えば過飽和反応混合物を得るために、本発明の方法の経過中に有機溶媒の量を変えることが望ましいことがある。
【0073】
この必要性は、式1の全Eレチノイド化合物又は全Eレチノイド化合物の混合物
【0074】
【化16】
(式中、Rは、CH
2-OH、CHO、CH
2-OR
2、COOH、COOR
3からなる基の群から選択され、
R
2は、(C=O)-アルキルであり、
R
3は、アルキルであり、
アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルからなる群から選択される)
を得るための本発明の方法であって、下記反応工程:
- 式2のレチノイド化合物
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【化20】
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも2つの混合物、
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物との混合物、
有機溶媒及び光増感剤を反応装置に供給する工程と、
- こうして得られた反応混合物を、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射する工程であって、
前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される、工程と
を含み、反応工程のうちの少なくとも1つが真空下で実現される、方法の更なる一実施形態において対処される。
【0079】
この前述の実施形態は、更に改善することができ、以下のように、この追加の特徴を取り入れる場合、より高い収率が得られる。
【0080】
式1の全Eレチノイド化合物又は全Eレチノイド化合物の混合物
【0081】
【化21】
(式中、Rは、CH
2-OH、CHO、CH
2-OR
2、COOH、COOR
3からなる基の群から選択され、
R
2は、(C=O)-アルキルであり、
R
3は、アルキルであり、
アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルからなる群から選択される)
を得るための方法であって、下記反応工程:
- 式2のレチノイド化合物
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【化25】
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも2つの混合物、
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物との混合物、
有機溶媒及び光増感剤を反応装置に供給する工程と、
- こうして得られた反応混合物を、
反応の経過中、特に照射の経過中及び/又は照射後に反応温度を低下させて-20℃~30℃の範囲の温度で、
単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射する工程であって、前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される、工程と
を含み、反応工程のうちの少なくとも1つが真空下で実現される、方法。
【0086】
本明細書において開示される真空とは、50mbarから最大で周囲圧力までの範囲を意味する(周囲圧力とは、上記のとおり、平均で1barを意味する)。
【0087】
更なる拡張版における前述の最後の2つの実施形態のそれぞれは、真空を50mbarから1barまでの範囲と規定する。
【0088】
1)全E多価不飽和非芳香族化合物、特に式1の全Eレチノイド化合物の高い選択性及び高い収率をもたらす安価且つ迅速なプロセスを提供することと、2)複雑な反応混合物及びその冗長な後処理を回避又は減らすことと、の目的に貢献するために、また、3)反応のセットアップに広範な変更をせずに、本発明の方法の容易な規模の拡大縮小を確実にするために、本発明の更なる実施形態は、以下を決定する:レチノイド化合物1~5のうちの少なくとも1つを、レチノイド化合物1~5のうちの少なくとも1つの全濃度が、反応混合物に対して5~50w%の範囲になるように、反応装置に供給する。好ましくは、レチノールアセテートの異性体からなるレチノイド化合物1~5の少なくとも1つを、レチノイド化合物1~5のうちの少なくとも1つの全濃度が、反応混合物に対して5~50w%の範囲になるように、反応容器に入れる。「レチノイド化合物1~5のうちの少なくとも1つ」という用語は、レチノイド化合物1~5のうちの1つ、又はレチノイド化合物1~5から選択される2つの化合物の順列(例えば、1と4; 2と3)、又はレチノイド化合物1~5から選択される3つの化合物の順列(例えば、1と2と4; 3と4と5)、又はレチノイド化合物1~5から選択される4つの化合物の順列、又は全ての5つのレチノイド化合物1~5をそれぞれを含むと理解される。先に開示した範囲のレチノイド化合物の濃度、特に好ましくはレチノールアセテートの濃度を使用するとき、反応混合物は均一なままである。高濃度の反応混合物の場合にありうるような、照射前の複雑な反応混合物の沈殿又は形成は起こらない。5w%未満のレチノイド化合物1~5を含有する反応混合物は、大量の有機溶媒を操作することを意味すると思われ、したがって加工処理費が顕著に増すことになる。
【0089】
更に別の実施形態は、本発明の方法が、サイドループ光反応器(side-loop photoreactor)、連続流式光反応器(continuous flow-photoreactor)又は水中光反応器(submersible photoreactor)中で実現されることを規定している。
【0090】
サイドループ光反応器は、反応サーキット(reaction circuit)の一部に導入される又は反応サーキットの一部に取り付けられる反応器である。反応サーキットは、反応混合物が循環する装置又はマウンティング(mounting)である。サイドループ光反応器は、既存の反応容器又は反応プラントに容易に取り付けることができる又は組み込むことができる。反応混合物は、運転中、この反応容器又は反応プラントからサイドループ光反応器を通って循環する。これを行うことにより、反応混合物の一部のみが、規定の時間の間、フィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイス(サイドループ光反応器中に位置する)から出る放射線と接触する。前記一部は、その後、反応プラント又は反応容器に入り、再度、サイドループ光反応器を通って移動する。反応混合物と前記ライティングデバイスからの放射線とのこの間欠接触により、反応経過が促進され、同時に、損なわれた又は望ましくない式2~4のレチノイド化合物の量が更に低減される。
【0091】
連続流式光反応器を用いた場合、反応混合物は、エレクトロルミネセントライティングデバイスを一回だけ通る。このタイプの反応器は、レチノイド化合物で高度に充填された反応混合物を使用する場合、又はエレクトロルミネセントライティングデバイスから送られるパワーが800Wh若しくはその近く(近くとは、500Wh超を意味する)である場合に好都合である。
【0092】
圧力下又は真空下で作用させることが望まれる場合、水中光反応器が特に有用であり、光反応器が完全に反応混合物中に浸漬されるときに容易に実現する。
【0093】
本開示における「こうして得られた反応混合物を、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射する工程であって、前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される」工程は、光異性化工程とも呼ばれる。
【0094】
一実施形態における光異性化工程の後に、式1の全Eレチノイド化合物の結晶化が、特にRがCH2-O-(C=O)-アルキルであり、アルキルがメチル及びエチルの群から選択される式1の全Eレチノイド化合物の結晶化が続く。前記後続結晶化工程は、例えば、一定量の有機溶媒の蒸発によって引き起こされる。
【0095】
更なる実施形態において、光異性化工程及び式1の全Eレチノイド化合物の結晶化、特にRがCH2-O-(C=O)-アルキルであり、アルキルがメチル及びエチルの群から選択される式1の全Eレチノイド化合物の結晶化は、同時に実行することが可能である。前記実施形態は好ましい。照射前の反応混合物が過飽和溶液/分散体であるとき、及び/又はC1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10-炭化水素との混合物が、均一相を形成するように選択されるとき、前記実施形態が実施される。前記の好ましい実施期待において、式1の全Eレチノイド化合物又は全Eレチノイド化合物の混合物を得るための反応条件は、以下のとおりである:式2、3、4若しくは5のレチノイド化合物、又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも2つの混合物、又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物との混合物、有機溶媒及び光増感剤を反応装置に(好ましくは分散形態で)供給し、こうして得られた反応混合物を15℃で、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射し、ここで前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出され、その後、反応混合物を-10℃から-15℃の範囲の温度に冷却し、濾過し、フィルターケークを洗浄する。
【0096】
この実施形態は、請求項の語で表されるとき、下記のとおりである:式1の全Eレチノイド化合物又は全Eレチノイド化合物の混合物
【0097】
【化26】
(式中、Rは、CH
2-OH、CHO、CH
2-OR
2、COOH、COOR
3からなる基の群から選択され、
R
2は、(C=O)-アルキルであり、
R
3は、アルキルであり、
アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルからなる群から選択される)
を得るための方法であって、下記反応工程:
- 式2のレチノイド化合物
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【化30】
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも2つの混合物、
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物との混合物、
有機溶媒及び光増感剤を反応装置に供給する工程と、
- こうして得られた反応混合物を、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射する工程でであって、前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される、工程と
を含み、
有機溶媒が、C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物であり、前記C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が、均一相を形成するように選択され、及び/又は
照射前の反応混合物が、過飽和溶液/エマルションである、方法。
【0102】
上記の実施形態で言及した反応工程「式1~5の少なくとも1つのレチノイド化合物、有機溶媒及び光増感剤を供給する」、「こうして得られた反応混合物を照射する」、及び結果として起こる「式1の全Eレチノイド化合物の結晶化」は、回分反応器中で実施することができ、その中で、照射源は、好ましくは、反応混合物中に浸漬されるか又は反応混合物が循環する反応器のサイドループ中に置かれる。或いは、反応工程は、例えば直列型反応容器中で半連続的に、又は例えばフロー(flow)反応器中で連続的に実施することができる。
【0103】
更に精巧な実施形態は、本発明の方法の反応速度及び/又は収率を更に高めることを可能にする。前記実施形態は、式1の全Eレチノイド化合物又は全Eレチノイド化合物の混合物
【0104】
【化31】
(式中、Rは、CH
2-OH、CHO、CH
2-OR
2、COOH、COOR
3からなる基の群から選択され、
R
2は、(C=O)-アルキルであり、
R
3は、アルキルであり、
アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチルからなる群から選択される)
を得るための方法であって、下記反応工程:
- 式2のレチノイド化合物
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【化35】
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも2つの混合物、
又はレチノイド化合物2~5のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物との混合物、
有機溶媒及び光増感剤を反応装置に供給する工程と、
- こうして得られた反応混合物を、単色光を放出するフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスによって照射する工程であって、前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出される、工程と、
- 照射前又は照射中に、反応混合物を、化合物1の少なくとも1種の種晶と共に供給する工程と
を含む方法である。
【0109】
上記の更に精巧な実施形態は、使用する有機溶媒が、C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物である場合、更に改善される。
【0110】
この更に精巧な実施形態の更なる別の進展が、使用する有機溶媒がC1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物である場合及び前記C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が均一相を形成するように選択される場合に達成される。
【0111】
使用する有機溶媒がC1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物であり、前記C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が均一相を形成するように選択され、前記C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が、C1~C6-アルコールとしてのメタノール又はエタノール及び0.1~12w%の炭化水素を含む場合、この更に精巧な実施形態により、短い反応時間で非常に高い収率が得られる。
【0112】
使用する有機溶媒がC1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物であり、前記C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が均一相を形成するように選択され、前記C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が、C1~C6-アルコールとしてのメタノール及び0.1~12w%の炭化水素を含む場合、この更に精巧な実施形態により、短い反応時間で更に改善された収率が得られる。
【0113】
使用する有機溶媒がC1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物であり、前記C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が均一相を形成するように選択され、前記C1~C6-アルコールの群の少なくとも1つの代表例と少なくとも1種のC5~C10炭化水素との混合物が、C1~C6-アルコールとしてのメタノール及び1~12w%のヘプタン(10w%を含む)、最も好ましくは1~5w%のヘプタンを含む場合、この更に精巧な実施形態により、短い反応時間で非常に高い収率は更に改善される。
【0114】
本発明の更に別の実施形態は、多価不飽和化合物を異性化する、特に多価不飽和非芳香族化合物を異性化する前述の実施形態のいずれか1つに開示される本発明の方法の使用である。
【0115】
ここで、本発明及びその有利な特徴を、実施例を含み、図面を参照する具体的記載で更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図3】使用したライティングデバイス中の発光ダイオードの発光スペクトル
【0117】
本発明の方法の幾つかの有利な特徴は、以下のとおりである:
【0118】
1. 式1の全Eレチノイド化合物、すなわち全Eレチノールアセテートの収率は、従来の高圧水銀灯をクロメートフィルターと組み合わせて用いた実験と比較して、発光ダイオード(LED)を使用したときにより高い。
【0119】
2. 同じ量の式1の全Eレチノイド化合物、特に製造された全Eレチノールアセテートについての電気エネルギーがかなり節約される。
【0120】
3. 選択性が顕著に高くなる。反応の経過中、本発明のフィルター非搭載エレクトロルミネセントライティングデバイスを用いて形成される式2~5のレチノイド化合物、特に11,13Z-レチノールアセテート、9Z-レチノールアセテート、及び13Z-レチノールアセテートの量が、高圧水銀灯に比べてかなり減少する。
【0121】
図3は、本発明の方法の実施形態である、実施例の中で使用されるタイプの発光ダイオード(LED)の発光スペクトルを開示している。放出された光の90%以上は、460nm~580nmの範囲の波長を有する。反応混合物に届くパワー(μW/nm)は、入射光の角度及び/若しくは距離、すなわち、発光ダイオードと反応混合物との間の角度/距離を変化させることによって、又は発光ダイオードに印加した電圧/電流を調整することによって、又は時間を調整することによって、更に狭められるように適合され、反応はエレクトロルミネセントライティングデバイスからの光に曝露される。更なる実施形態において、使用する発光ダイオード(LED)の数によってパワーが調整される又は狭められる。発光ダイオード1つ当たりの電力消費は2.8Wである。これらの調節手段の一部又は全部を組み合わせることもできる。
【実施例】
【0122】
[実施例1~3及び比較例C4]
単色光を放出するエレクトロルミネセントライティングデバイスとしてのLEDランプ(前記LEDランプは、下記の表1に指定した数の発光ダイオード(LED)を含む)又は高圧水銀灯TQ 150 Z2を有するサイドループ光反応器が装備された2.5L反応容器中に、1.049gの粗ビタミンA(941gの11,13Z-,9Z-,13Z-,11Z-及び全Eレチノールアセテート異性体を含む)、1.159gのメタノール、52gのヘプタン並びに72mgのエリスロシンを入れる。15℃で、反応混合物をサイドループ光反応器にポンプで送り込み、4時間照射する。試料を頻繁に取り、定量HPLCに供した。照射後、形成された懸濁液を-10℃まで冷却し、濾過する。フィルターケークを500mlのメタノールで洗浄し、窒素流中で乾燥する。装置をアセトンで濯ぎ、残留生成物を集める。フィルターケーク、母液及びアセトンリンスを定量HPLCに供する。反応の経過中に形成された全Eレチノールアセテートの量の合計を、フィルターケーク、母液及びアセトンリンスの重量(それぞれ、HPLC w%により決定される全Eレチノイド量を有する)に基づいて算出する。収率を、反応に供するレチノールアセテート異性体の総量に基づいて算出する。
【0123】
表1:全Eレチノールアセテートの総量並びに実施例1~3及び比較例C4で得られる収率。全ての実験は、同じ出発物質及び同じ光反応器を用いて実施した。
【0124】
【0125】
表1から、2つの点が注目されうる。実施例1~3のそれぞれの発光ダイオード(LED)で作用させたときの収率は、高圧水銀灯を使用する比較例C4より高い。全Eレチノールアセテートの最高収率は、使用する発光ダイオード(LED)の量が最大のときに得ることができる。しかしながら、発光ダイオードの量を減らしても(実施例3を参照)、収率の増加をもたらすことができる。
【0126】
[実施例1~3及び比較例C4(エネルギー消費)]
表2は、実施例1~3及び比較例C4の全Eレチノールアセテート1kgを生成するために費やす電気エネルギーを開示している。発光ダイオード(LED)1つ当たりの電力消費は2.8Wになり、水銀灯TQ 150 Z2では150Wになる。
【0127】
【0128】
用いた電気エネルギー(Wh)の量を以下のとおりに算出する:発光ダイオードの数×発光ダイオード1つ当たりのパワー×曝露時間。例えば、実施例1に関しては、これは48×2.8W×4h=537.6Whである。表2の6列目の前記電気エネルギー量は、生成した1kgの全Eレチノールアセテートに関連する。
【0129】
表2中、高圧水銀灯は、1kgの全Eレチノールアセテートを製造するために、使用する発光ダイオード(LED)より多くの電気エネルギーを要することが観察される。発光ダイオード(LED)による電気エネルギーの消費は、使用するLEDの数に伴って増加する。
【0130】
[実施例1~3及び比較例C4(望ましくないレチノールアセテートの異性体の形成)]
表3は、照射前の並びに実施例1~3及び比較例C4の反応の経過中に形成された反応混合物中の望ましくないレチノールアセテートの11,13Z,9Z,13Z異性体の濃度を開示している。更に、実施例1~3及び比較例C4における照射前の及び4時間の照射後に形成された反応混合物中に存在するレチノールアセテートのZ-異性体の合計の濃度を開示している。
【0131】
【0132】
表3から、望ましくない、いわゆる、レチノールアセテートのZ-異性体の量が照射前に最も多いことを確認できる。これは、照射の経過中に減少し、高圧水銀灯を使用する場合は常に最大である。24個のLED(実施例3)、36個のLED(実施例2)及び48個のLED(実施例1)を用いた場合、望ましくない異性体の量は常に、高圧水銀灯で得られたものより少ない。得られる望ましくない異性体の量は、3~4時間の間、48個のLEDを使用するとき(実施例1を参照)に最も少ない。
【0133】
本開示から、非環式共役ポリエン及び脂環式共役ポリエンを含む多価不飽和非芳香族化合物を異性化するための改善されたプロセスについて学べる。特にこれは、エネルギーの消費が可能な限り少なくすること、そして生じうる副生成物又は生成物混合物を最大限回避することによって、高収率で全Eレチノイド化合物を形成するための改善された安全なプロセスである。これは、式2~5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つ、又は式2~5のレチノイド化合物のうちの少なくとも1つと式1のレチノイド化合物、有機溶媒及び光増感剤を反応装置に供給し、こうして得られた反応混合物を可視単色光で照射し、ここで前記単色光のパワーの少なくとも90%且つ前記パワーの最大100%が460nm~580nmの範囲で放出されることによって達成される。反応混合物が有機溶媒を含み、少なくとも2種の溶媒の混合物であり、使用されるエレクトロルミネセントライティングデバイスが半導体材料であるとき、良好な結果が得られる。多価不飽和化合物を異性化するため、特に多価不飽和非芳香族化合物を異性化するために本発明の方法を用いることは、本発明の別の重要な主題である。
【国際調査報告】