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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(54)【発明の名称】安定化された石膏粒子
(51)【国際特許分類】
   C04B 11/00 20060101AFI20220810BHJP
   C04B 24/30 20060101ALI20220810BHJP
   C04B 28/14 20060101ALI20220810BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20220810BHJP
   C09K 23/52 20220101ALI20220810BHJP
【FI】
C04B11/00
C04B24/30 Z
C04B28/14
B28B1/30
C09K23/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573943
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2020065770
(87)【国際公開番号】W WO2020249499
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】19180306.3
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マイク シュレジンガー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ディーチュ
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ニーダーマイア
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ゲーリヒ
(72)【発明者】
【氏名】トアベン ゲット
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヘッセ
【テーマコード(参考)】
4G052
4G112
【Fターム(参考)】
4G052DB14
4G052DC06
4G112PB34
4G112PC03
(57)【要約】
本発明は、石膏物品の調製のための建築用化学組成物であって、微細な硫酸カルシウム及びポリアリールエーテルである分散剤を含む建築用化学組成物に関する。さらに、本発明は、前記建築用化学組成物を調製するための方法並びに前記建築用化学組成物を含む物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用化学組成物であって、
i)ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm未満のD(0.63)粒径を有する微細な硫酸カルシウム粒子、及び
ii)ポリアリールエーテルである分散剤
を含み、
前記微細な硫酸カルシウム粒子と前記分散剤との間の質量比が、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲である、建築用化学組成物。
【請求項2】
前記微細な硫酸カルシウム粒子が、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム二水和物、無水硫酸カルシウム又はそれらの混合物の形態で存在する、請求項1に記載の建築用化学組成物。
【請求項3】
前記ポリアリールエーテルが、
i)ポリエーテル側鎖を含む少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族構造単位、及び
ii)少なくとも1つのリン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位
を含む重縮合生成物である、請求項1又は2に記載の建築用化学組成物。
【請求項4】
ポリエーテル側鎖を含む前記少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族構造単位が、式(I)
【化1】
(式中、
Aは、同一であるか又は異なり、5~10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族又はヘテロ芳香族化合物によって表され;
Bは、同一であるか又は異なり、N、NH又はOによって表され;
B=Nである場合、n=2であり、B=NH又はOである場合、n=1であり;
及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、C5~C8-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHによって表され;
aは、同一であるか又は異なり、1~300の整数によって表され;
Xは、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、C5~C8-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHによって表される)
によって表され、
並びに
前記少なくとも1つのリン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位が、式(II)
【化2】
(式中、
Dは、同一であるか又は異なり、5~10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族又はヘテロ芳香族化合物によって表され;
Eは、同一であるか又は異なり、N、NH又はOによって表され;
E=Nである場合、m=2であり、E=NH又はOである場合、m=1であり;
及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、C5~C8-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHによって表され;
bは、同一であるか又は異なり、0~300の整数によって表される)
によって表される、請求項3に記載の建築用化学組成物。
【請求項5】
ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm未満のD(0.63)粒径を有する微細な硫酸カルシウム、及びポリアリールエーテルである分散剤を含む建築用化学組成物の調製のための方法であって、
aa)ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm以上のD(0.63)粒径を有する硫酸カルシウム粒子、水及びポリアリールエーテルである分散剤を含む懸濁液を提供する工程、及び
ab)工程aa)で得られた前記スラリーを湿式粉砕し、それによって前記建築用化学組成物を得る工程
を含み、
前記微細な硫酸カルシウム粒子と前記分散剤との間の質量比が、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲である、方法。
【請求項6】
前記硫酸カルシウム粒子が、硫酸カルシウム半水和物、硫酸カルシウム二水和物、無水硫酸カルシウム又はそれらの混合物の形態で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程aa)の前記懸濁液が、前記懸濁液の総質量を基準にして、
i)0.07~70.0質量%の石膏、
ii)0.01~10.0質量%の、ポリアリールエーテルである前記分散剤、及び
iii)100質量%までの残りの水
を含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
工程ab)に記載の前記湿式粉砕が、ボールミル、回転式粉砕機又は撹拌型ビーズミルにおいて行われる、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm未満のD(0.63)粒径を有する微細な硫酸カルシウム、及びポリアリールエーテルである分散剤を含む建築用化学組成物の調製のための方法であって、
ba)カルシウム源、水及びポリアリールエーテルである分散剤を含む液体Aを提供する工程、
bb)サルフェート源、水及び任意選択的にポリアリールエーテルである分散剤を含む液体Bを提供する工程、及び
bc)液体A及び液体Bを混合することによって微細な硫酸カルシウムを沈殿させ、それによって前記建築用化学組成物を得る工程
を含み、
前記微細な硫酸カルシウム粒子と前記分散剤との間の質量比が、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲である、方法。
【請求項10】
工程bc)に記載の前記沈殿が、連続式マイクロリアクター又はスプレー沈殿反応器において行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、工程ab)又はbc)で得られた前記建築用化学組成物を乾燥させ、それによって粉末形態の前記建築用化学組成物を得る工程ac)又はbd)をさらに含む、請求項5~8又は9~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリアリールエーテルが、請求項3又は4に記載の重縮合生成物である、請求項5~8又は9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
石膏ウォールボードを製造するための方法における請求項1~4のいずれか一項に記載の建築用化学組成物の使用であって、前記方法が、
ca)石膏、配合水及び任意選択的に発泡体を含む組成物を提供する工程、
cb)工程ca)で得られた前記組成物を、混合デバイス中に供給し、それによってスラリーを調製する工程、
cc)工程cb)で得られた前記スラリーを、第1の厚紙シートに適用する工程、及び
cd)前記スラリーを、第2の厚紙シートで被覆する工程
を含み、
ここで、
i)前記配合水及び前記発泡体の少なくとも一方が、前記建築用化学組成物を含有し、及び/又は
ii)前記第1の厚紙シート及び/又は前記第2の厚紙シートが、前記建築用化学組成物で被覆され、及び/又は
iii)前記建築用化学組成物が、前記混合デバイス中で又は前記混合デバイスの出口における供給弁を通して前記スラリーに加えられる、使用。
【請求項14】
ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm未満のD(0.63)粒径を有する微細な硫酸カルシウム粒子の調製のための湿式粉砕又は沈殿プロセスにおける分散剤としてのポリアリールエーテルの使用。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物を用いることによって作製される物品。
【請求項16】
前記物品が、石膏ウォールボード、不織布石膏ボード、石膏ベースのセルフレベリング下地、目地材、漆喰、鋳型、又はフロアスクリードから選択される、請求項15に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ベースの物品の調製のための建築用化学組成物であって、微細な硫酸カルシウム及びポリアリールエーテルである分散剤を含む建築用化学組成物に関する。さらに、本発明は、前記建築用化学組成物を調製するための方法並びに前記建築用化学組成物を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
粉砕石膏は、石膏ウォールボード製造において重要な役割を果たす。いわゆるボールミル凝結促進剤(BMA)が、石膏硬化反応を開始させ、最終的にそれを短縮するために、シーディング剤として添加される。凝結遅延剤と組み合わせて、BMAの添加は、より短い期間で、最終的な石膏ウォールボードのより高い機械的強度を得るために必須である。しかしながら、BMAの効果は、その粗く不均一な粒径のため、かなり制限される。機械的性能の向上をさらに含め、硬化時間を減少させるために、より小さい粒径が必要である。このような材料は、おそらく、石膏ウォールボードのより高い生産速度、使用される石膏の減少或いはより良好な機械的性能を有する石膏ウォールボードを可能にするであろう。
【0003】
粉砕に加えて考えられる代替法が、可溶性カルシウム及びサルフェート源から出発する沈殿によって与えられる。米国特許出願公開第2015114268号明細書は、水並びに酸基及びポリエーテル基を含有するポリマーの存在下で、水溶性カルシウム化合物を水溶性サルフェート化合物と反応させることによって、硫酸カルシウム二水和物を製造するための方法に関する。さらに開示されるのは、この方法によって製造可能な硫酸カルシウム二水和物、及び石膏ボードの製造のためのその使用である。可溶性カルシウム及びサルフェート源から出発する沈殿の欠点は、出発材料の比較的高いコスト及び複雑なプロセス制御であり、これは、最終生成物の全体的な高い製造コストにつながる。
【0004】
粉砕石膏の粒径を微細にするさらなる手法は、湿式粉砕プロセスにおけるポリマー分散剤の適用である。米国特許第7,861,955号明細書には、高い固形分で石膏の平均粒径を減少させるために、安定剤としてポリカルボキシレート分散剤を用いる石膏の湿式粉砕が開示されている。しかしながら、得られる石膏粒子の適用は、石膏形成の加速度を満たすことにつながらない。ポリカルボキシレート分散剤は、一般に、石膏形成に対して減速効果を及ぼすため、微細な石膏粒子凝結促進剤と逆の働きをする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、先行技術の上記の欠点を有さない、石膏含有組成物、特に石膏ボードのための凝結促進剤として好適な建築用化学組成物が、当該技術分野において必要とされている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、促進された石膏硬化反応によって特徴付けられる、石膏組成物用の凝結促進剤として好適な建築用化学組成物を提供することである。さらに、得られる石膏物品の機械的特性は、さらに向上されるべきである。したがって、本発明のさらなる目的は、より短い期間で、調製される石膏物品のより高い圧縮強度を得ることであり、これは、製造、輸送及び取り扱いのために重要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の及び他の目的は、本発明の主題によって解決される。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、建築用化学組成物であって、
i)小粒子についてのミー理論(粒子RI=1.531、分散剤RI=1.330;吸収=0.1;10~20%の吸光度(Obscuration))にしたがって、レーザー回折(Malvern Instruments製のMastersizer 2000)を用いて決定される10.0μm未満のD(0.63)粒径を有する微細な硫酸カルシウム粒子、及び
ii)ポリアリールエーテルである分散剤
を含み、
微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比が、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲である、建築用化学組成物が提供される。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、微細な硫酸カルシウム粒子は、硫酸カルシウム半水和物(鉱物名:バサニ石)、硫酸カルシウム二水和物(鉱物名:石膏)、無水硫酸カルシウム(鉱物名:無水石膏)又はそれらの混合物の形態で存在する。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、ポリアリールエーテルは、
i)ポリエーテル側鎖を含む少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族構造単位、及び
ii)少なくとも1つのリン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位
を含む重縮合生成物である。
【0011】
ポリエーテル側鎖を含む少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族構造単位が、式(I)
【化1】
(式中、
Aは、同一であるか又は異なり、5~10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族又はヘテロ芳香族化合物によって表され;
Bは、同一であるか又は異なり、N、NH又はOによって表され;
B=Nである場合、n=2であり、B=NH又はOである場合、n=1であり;
及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、C5~C8-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHによって表され;
aは、同一であるか又は異なり、1~300、好ましくは、10~60、より好ましくは、20~50の整数によって表され;
Xは、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、C5~C8-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHによって表される)
によって表されること、
並びに
少なくとも1つのリン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位が、式(II)
【化2】
(式中、
Dは、同一であるか又は異なり、5~10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族又はヘテロ芳香族化合物によって表され;
Eは、同一であるか又は異なり、N、NH又はOによって表され;
E=Nである場合、m=2であり、E=NH又はOである場合、m=1であり;
及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、C5~C8-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHによって表され;
bは、同一であるか又は異なり、0~300の整数によって表される)
によって表されることが特に好ましい。
【0012】
建築用化学組成物は、調製プロセス中に発生する発泡又は気泡の量を減少させるための消泡剤をさらに含み得る。水性ポリアリールエーテル分散剤含有系内で使用するのに好適な任意の消泡剤が使用され得る。使用され得る消泡剤の好適な例としては、限定はされないが、シリコーン消泡剤、鉱油/シリカ消泡剤、低表面張力添加剤及びそれらの混合物が挙げられる。使用され得るシリコーン消泡剤の例としては、限定はされないが、ポリシロキサン溶液及びポリシロキサンの非水性エマルションが挙げられる。消泡剤として使用され得るポリシロキサン溶液の例としては、限定はされないが、シクロヘキサノンポリシロキサン溶液、ジイソブチルケトンポリシロキサン溶液及びそれらの混合物が挙げられる。消泡剤として使用され得る非水性ポリシロキサンエマルションの例は、ポリシロキサンプロピレングリコールエマルションである。特定の実施形態において、消泡剤は、商標BYK(登録商標)-066N、BYK(登録商標)-070、BYK(登録商標)-077、BYK(登録商標)-A500でBYK Chemie GmbH(Wesel,Germany)から市販されているジイソブチルケトンポリシロキサン溶液である。消泡剤のさらなる好適な例は、灯油、流動パラフィン、動物油、植物油、ゴマ油、ヒマシ油、そのアルキレンオキシド付加物、オレイン酸、ステアリン酸及びそのアルキレンオキシド付加物、ジエチレングリコールラウレート、グリセロールモノリシノレエート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノラウレート、天然ワックス、直鎖状又は分枝鎖状脂肪アルコール及びそれらのアルコキシ化誘導体、オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアミド、アクリレートポリアミン、リン酸トリブチル、オクチルリン酸ナトリウム;ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸カルシウム、シリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルション、フルオロシリコーン油;及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物である。好ましい実施形態において、消泡剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物である。建築用化学組成物内で使用される消泡剤の量は、ポリアリールエーテル分散剤の約0.002~約10質量パーセントの範囲であり得る。
【0013】
本発明はさらに、ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm未満のD(0.63)粒径を有する微細な硫酸カルシウム、及びポリアリールエーテルである分散剤を含む建築用化学組成物の調製のための方法であって、
aa)ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm以上のD(0.63)粒径を有する硫酸カルシウム粒子、水及びポリアリールエーテルである分散剤を含む懸濁液を提供する工程、及び
ab)工程aa)で得られた懸濁液を湿式粉砕し、それによって建築用化学組成物を得る工程
を含み、
微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比が、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲である、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、硫酸カルシウム粒子は、硫酸カルシウム半水和物(鉱物名:バサニ石)、硫酸カルシウム二水和物(鉱物名:石膏)、無水硫酸カルシウム(鉱物名:無水石膏)又はそれらの混合物の形態で存在する。
【0015】
硫酸カルシウム粒子が、硫酸カルシウム半水和物(鉱物名:バサニ石)、硫酸カルシウム二水和物(鉱物名:石膏)、又はそれらの混合物の形態で存在することが好ましい。
【0016】
ポリアリールエーテルが、上に定義される重縮合生成物であることが好ましい。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、工程aa)の懸濁液は、6.0~75.0質量%の範囲の固形分を有する。
【0018】
固形分は、加熱する前の試料の初期質量に対する、一定質量になるまで40℃で乾燥させた後の試料の残留質量の比率として定義される。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、工程aa)の懸濁液中の硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比は、1.0~200の範囲である。
【0020】
本発明のさらなる実施形態によれば、工程aa)の懸濁液は、懸濁液の総質量を基準にして、
i)5.0~70.0質量%の硫酸カルシウム粒子、
ii)0.01~10.0質量%の、ポリアリールエーテルである分散剤、及び
iii)100質量%までの残りの水
を含む。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、工程ab)に記載の湿式粉砕は、ボールミル、回転式粉砕機又は撹拌型ビーズミルにおいて行われる。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、本方法は、工程ab)で得られた建築用化学組成物を乾燥させ、それによって粉末形態の建築用化学組成物を得る工程ac)をさらに含む。
【0023】
本発明はさらに、ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm未満のD(0.63)粒径を有する微細な硫酸カルシウム、及びポリアリールエーテルである分散剤を含む建築用化学組成物の調製のための方法であって、
ba)カルシウム源、水及びポリアリールエーテルである分散剤を含む液体Aを提供する工程、
bb)サルフェート源、水及び任意選択的にポリアリールエーテルである分散剤を含む液体Bを提供する工程、及び
bc)液体A及び液体Bを混合することによって微細な硫酸カルシウムを沈殿させ、それによって建築用化学組成物を得る工程
を含み、
微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比が、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲である、方法に関する。
【0024】
液体A中のカルシウム源は、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、酸化カルシウム、スルファミン酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0025】
液体B中のサルフェート源は、硫酸アルミニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸又はそれらの混合物からなる群から選択され、挙げられたサルフェートの様々な水和物が含まれる。
【0026】
ポリアリールエーテルが、上に定義される重縮合生成物であることが好ましい。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、工程bc)に記載の沈殿は、連続式マイクロリアクター又はスプレー沈殿反応器において行われる。
【0028】
本発明の別の実施形態によれば、本方法は、工程bc)で得られた建築用化学組成物を乾燥させ、それによって粉末形態の建築用化学組成物を得る工程bd)をさらに含む。
【0029】
本発明はまた、上記の方法によって得られる建築用化学組成物にも関する。
【0030】
さらに、本発明は、石膏ウォールボードを製造するための方法における上記の建築用化学組成物の使用であって、前記方法が、
a)石膏、好ましくは、硫酸カルシウム半水和物(鉱物名:バサニ石)、配合水及び任意選択的に発泡体を含む組成物を提供する工程、
b)工程a)で得られた組成物を、混合デバイス中に供給し、それによってスラリーを調製する工程、
c)工程b)で得られたスラリーを、第1の厚紙シートに適用する工程、及び
d)スラリーを、第2の厚紙シートで被覆する工程
を含み、
ここで、
i)配合水及び発泡体の少なくとも一方が、本発明に係る建築用化学組成物を含有し、及び/又は
ii)第1の厚紙シート及び/又は第2の厚紙シートが、本発明に係る建築用化学組成物で被覆され、及び/又は
iii)本発明に係る建築用化学組成物が、混合デバイス中で又は混合デバイスの出口における供給弁を通してスラリーに加えられる、使用に関する。
【0031】
本発明はさらに、微細な硫酸カルシウムの調製のための湿式粉砕又は沈殿プロセスにおける分散剤としてのポリアリールエーテルの使用に関する。
【0032】
ポリアリールエーテルが、上記の重縮合生成物であることが特に好ましい。
【0033】
本発明はさらに、上記の建築用化学組成物を含む物品に関する。
【0034】
好ましくは、物品は、石膏ウォールボード又は不織布石膏ボードである。
【0035】
以下において、本発明は、より詳細に説明される。
【0036】
建築用化学組成物
本発明は、建築用化学組成物であって、
i)ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm未満のD(0.63)粒径を有する微細な硫酸カルシウム粒子、及び
ii)ポリアリールエーテルである分散剤
を含み、
微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比が、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲である、建築用化学組成物に関する。
【0037】
微細な硫酸カルシウム粒子が、硫酸カルシウム半水和物(鉱物名:バサニ石)、硫酸カルシウム二水和物(鉱物名:石膏)、無水硫酸カルシウム(鉱物名:無水石膏)又はそれらの混合物の形態で存在することが好ましい。
【0038】
本明細書において使用される際の「石膏」という用語は、化合物硫酸カルシウム二水和物(CaSO・2HO)及びこの化合物からなる岩石、並びに対応する建築材料、硫酸カルシウム半水和物(CaSO・0.5HO若しくはバサニ石)又は無水硫酸カルシウム(CaSO若しくは無水石膏)の両方に通称として使用される。特に示されない限り、本明細書において使用される際の「石膏」という用語は、その無水又は水和形態の化合物硫酸カルシウムに関連する。
【0039】
石膏(CaSO・2HO)は、地球の歴史において海が干上がったときに形成される大きい堆積物中に天然に存在する。さらに、石膏(CaSO・2HO)は、工業における様々の生成物又は副産物として得られ、プロセスの例は、二酸化硫黄が、炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムスラリーによって、石炭火力発電所の燃焼オフガスから取り除かれる煙道ガス脱硫である。
【0040】
120~130℃の温度に加熱されるとき、硫酸カルシウム二水和物は、結晶化のその水の一部を放出し、硫酸カルシウム半水和物(CaSO・0.5HO又はバサニ石)へと転化する。硫酸カルシウム半水和物が、水と混合される場合、硫酸カルシウム二水和物は、短時間内に改質される。
【0041】
硫酸カルシウム半水和物(バサニ石)は、モルタル、スクリード、鋳型、特に、石膏ボードの製造のための重要な建築材料である。技術的要件により、かなり異なる品質が、硫酸カルシウム結合剤に求められる。特に、処理寿命及び硬化が起こる時間に関して、結合剤は、数分間から数時間の期間にわたって様々に調整可能でなければならない。これらの要件を満たすために、硬化を調節する混合物の使用が必要である。
【0042】
本発明に係る建築用化学組成物のさらなる成分は、ポリアリールエーテルである分散剤である。
【0043】
本明細書において使用される際、「ポリアリールエーテル」という用語は、アリール部分及びエーテル部分を含むポリマー化合物に関連する。
【0044】
特に、本発明に係るポリアリールエーテルが、
i)1つ以上のポリエーテル側鎖を含む少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族構造単位、及び
ii)少なくとも1つのリン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位
を含む重縮合生成物であることが好ましい。
【0045】
好ましくは、1つ以上のポリエーテル側鎖を含む前記芳香族又はヘテロ芳香族構造単位は、1つ以上のポリアルキレングリコール側鎖、より好ましくは、1つ以上のポリエチレングリコール側鎖を含む。特に、1つ以上のポリエーテル側鎖、好ましくは、1つ以上のポリアルキレングリコール側鎖を含む芳香族又はヘテロ芳香族構造単位が、アルコキシ化、より好ましくは、エトキシ化ヒドロキシル官能化芳香族又はヘテロ芳香族化合物からなる群から選択されることが好ましい。例えば、前記ヒドロキシル官能化芳香族又はヘテロ芳香族化合物は、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、2-アルコキシフェノキシエタノール、4-アルコキシフェノキシエタノール、2-アルキルフェノキシエタノール、4-アルキルフェノキシエタノール又はそれらの混合物から選択される。1つ以上のポリエーテル側鎖、好ましくは、1つ以上のポリアルキレングリコール側鎖を含むさらなる好ましい芳香族又はヘテロ芳香族構造単位は、アルコキシ化、好ましくは、エトキシ化アミノ官能化芳香族又はヘテロ芳香族化合物、例えば、N,N-(ジヒドロキシエチル)アニリン、N-(ヒドロキシエチル)アニリン、(ジヒドロキシプロピル)アニリン、N-(ヒドロキシプロピル)アニリン又はそれらの混合物である。フェノキシエタノール及び/又はフェノキシプロパノールなどのアルコキシ化フェノール誘導体がさらにより好ましい。300~10000ダルトンの範囲の質量分子量Mを有するアルコキシ化、より好ましくは、エトキシ化フェノール誘導体、例えばポリエチレングリコールモノフェニルエーテルが特に好ましい。
【0046】
上に概説されるように、本発明に係る、重縮合生成物であるポリアリールエーテルは、少なくとも1つのリン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位をさらに含む。したがって、理論に制約されるものではないが、ポリアリールエーテルは、前記リン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位の存在に基づいていくらかの酸性を有する。リン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位は、当該技術分野において公知の方法にしたがって、対応するアルコールを、ポリリン酸及び/又は五酸化リンでリン酸化することによって得ることができる。
【0047】
好ましくは、リン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位は、少なくとも1つのリン酸エステル基を含むアルコキシ化、好ましくは、エトキシ化ヒドロキシル官能化芳香族又はヘテロ芳香族化合物、例えば、フェノキシエタノールホスフェート及び/又はポリ(エチレングリコール)モノフェニルエーテルホスフェート及び/又は少なくとも1つのリン酸エステル基を含むアルコキシ化、好ましくは、エトキシ化アミノ官能化芳香族又はヘテロ芳香族化合物、例えば、N,N-(ジヒドロキシエチル)アニリンジホスフェート、N,N-(ジヒドロキシエチル)アニリンホスフェート、N-(ヒドロキシプロピル)アニリンホスフェート、N,N-(ジヒドロキシエチル)アニリンホスフェート、N-(ヒドロキシプロピル)アニリンホスフェート又はそれらの混合物の群から選択される。少なくとも1つのリン酸エステル基を含むアルコキシ化、より好ましくは、エトキシ化フェノール誘導体、例えば、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテルホスフェートがさらにより好ましい。
【0048】
さらに、本発明に係る、縮合生成物であるポリアリールエーテルが、4000~150000ダルトン、より好ましくは、10000~100000ダルトン、さらにより好ましくは、15000~75000ダルトンの範囲の質量分子量Mを有することが好ましい。質量分子量Mは、サイズ排除クロマトグラフィー(カラム組合せ:Shodex(日本)製のOH-Pak SB-G、OH-Pak SB 804及びOH-Pak SB 802.5 HQ;溶離剤:80体積%のHCONHの水溶液(0.05mol/L)及び20体積%のアセトニトリル;注入量100μL、スループット速度(throughput rate)0.5mL/分)によって決定される。質量分子量Mを決定するための校正のために、直鎖状ポリ(エチレンオキシド)-及びポリエチレングリコール標準を使用した。
【0049】
ポリエーテル側鎖を含む少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族構造単位が、式(I)
【化3】
(式中、
Aは、同一であるか又は異なり、5~10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族又はヘテロ芳香族化合物によって表され;
Bは、同一であるか又は異なり、N、NH又はOによって表され;
B=Nである場合、n=2であり、B=NH又はOである場合、n=1であり;
及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、C5~C8-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHによって表され;
aは、同一であるか又は異なり、1~300の整数によって表され;
Xは、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、C5~C8-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHによって表される)
によって表されること、
並びに
少なくとも1つのリン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位が、式(II)
【化4】
(式中、
Dは、同一であるか又は異なり、5~10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族又はヘテロ芳香族化合物によって表され;
Eは、同一であるか又は異なり、N、NH又はOによって表され;
E=Nである場合、m=2であり、E=NH又はOである場合、m=1であり;
及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、C5~C8-シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHによって表され;
bは、同一であるか又は異なり、0~300の整数によって表される)
によって表されることが特に好ましい。
【0050】
より好ましくは、ポリエーテル側鎖を含む少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族構造単位は、上に定義される式(I)(式中、
Aは、同一であるか又は異なり、5~10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族化合物によって表され;
Bは、Oによって表され;
n=1であり;
及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C5-アルキル基又はHによって表され;
aは、同一であるか又は異なり、1~300の整数によって表され;
Xは、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、アリール基、又はHによって表される)
によって表され、
並びに
少なくとも1つのリン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位は、上に定義される式(II)(式中、
Dは、同一であるか又は異なり、5~10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族化合物によって表され;
Eは、Oによって表され;
m=1であり;
及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、分枝鎖状若しくは直鎖状C1~C10-アルキル基、アリール基、又はHによって表され;
bは、同一であるか又は異なり、0~300の整数によって表される)
によって表される。
【0051】
さらにより好ましくは、ポリエーテル側鎖を含む少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族構造単位は、上に定義される式(I)(式中、
Aは、同一であるか又は異なり、5~10個のC原子を有する非置換の芳香族化合物によって表され;
Bは、Oによって表され;
n=1であり;
及びRが、互いに独立して、メチル又はHによって表され;
aは、同一であるか又は異なり、1~300の整数によって表され;
Xは、Hによって表される)
によって表され、
並びに
少なくとも1つのリン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位は、上に定義される式(II)(式中、
Dは、同一であるか又は異なり、5~10個のC原子を有する非置換の芳香族化合物によって表され;
Eは、Oによって表され;
m=1であり;
及びRは、互いに独立して、メチル又はHによって表され;
bは、同一であるか又は異なり、0~300の整数によって表される)
によって表される。
【0052】
さらにより好ましくは、ポリエーテル側鎖を含む少なくとも1つの芳香族又はヘテロ芳香族構造単位は、上に定義される式(I)(式中、
Aは、フェニルによって表され;
Bは、Oによって表され;
n=1であり;
及びRは、Hによって表され;
aは、同一であるか又は異なり、1~300の整数によって表され;
Xは、Hによって表される)
によって表され、
並びに
少なくとも1つのリン酸化芳香族又はヘテロ芳香族構造単位は、上に定義される式(II)(式中、
Dは、フェニルによって表され;
Eは、Oによって表され;
m=1であり;
及びRは、Hによって表され;
bは、同一であるか又は異なり、0~300の整数によって表される)
によって表される。
【0053】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリアリールエーテルは、式(III)
【化5】
(式中、
Yは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、上記の式(I)又は(II)によって表され、
及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、H、メチル、COOH又は5~10個のC原子を有する置換若しくは非置換の芳香族若しくはヘテロ芳香族化合物によって表される)
によって表されるさらなる構造単位を含む。
【0054】
より好ましくは、前記さらなる構造単位は、上記の式(III)(式中、
Yは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、上記の式(I)又は(II)によって表され、
及びRは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、H、メチル又はフェニルによって表される)
によって表される。
【0055】
さらにより好ましくは、前記さらなる構造単位は、上記の式(III)(式中、
Yは、互いに独立して、同一であるか又は異なり、上記の式(I)又は(II)によって表され、
及びRは、Hによって表される)
によって表される。
【0056】
ポリアリールエーテル中の構造単位(I)、(II)及び(III)の間のモル比(III):[(I)+(II)]は、好ましくは、1:0.5~2.0の範囲、より好ましくは、1:0.9~2.0の範囲である。ポリアリールエーテル中の構造単位(I)と(II)との間のモル比(I):(II)は、好ましくは、1:10~10:1の範囲、より好ましくは、1:5~3:1の範囲である。
【0057】
本発明に係る湿式粉砕プロセスに好適なポリアリールエーテルは、当該技術分野において公知の方法によって得ることができる。例えば、前記ポリアリールエーテルの調製方法が、国際公開第2010/040611A1号パンフレットに記載されている。
【0058】
好ましくは、本発明に係る建築用化学組成物中の微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比は、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲、より好ましくは、60.0:40.0~99.0対1.0の範囲、さらにより好ましくは、50.0:50.0~99.0:1.0の範囲、さらにより好ましくは、80.0:20.0~98.0対2.0の範囲、例えば、85.0:15.0~99.9:0.1の範囲である。微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比が、85.0:15.0~99.9:0.1の範囲であることが特に好ましい。
【0059】
さらに、本発明に係る建築用化学組成物が、液体建築用化学組成物、より好ましくは、水性建築用化学組成物であることが好ましい。
【0060】
したがって、建築用化学組成物のさらなる成分は、水である。
【0061】
したがって、建築用化学組成物が、建築用化学組成物の総質量を基準にして、
i)0.07~70.0質量%、より好ましくは、5.0~60.0質量%、さらにより好ましくは、10.0~60.0質量%、さらにより好ましくは、15.0~45質量%、さらにより好ましくは、20.0~35.0質量%の微細な硫酸カルシウム粒子、
ii)0.07~70.0質量%、より好ましくは、0.1~40.0質量%、さらにより好ましくは、0.1~5.0質量%、さらにより好ましくは、0.5~3.0質量%の、ポリアリールエーテルである分散剤、及び
iii)100質量%までの残りの水
を含むことが好ましい。
【0062】
上記のポリアリールエーテルのほか、建築用化学組成物は、ポリアリールエーテル以外のさらなる分散剤を含み得る。好ましくは、工程aa)、ba)又はbb)に記載のスラリーは、ポリアリールエーテル以外の少なくとも1つの分散剤を含む。このような分散剤の非限定的な例は、カチオン性ポリマー、ポリアミン、ポリアミド、スルホン酸を含有する重縮合物、ケトン樹脂又はそれらの混合物である。
【0063】
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、建築用化学組成物は、カチオン性ポリマー、ポリアミン、ポリアミド、スルホン酸を含有する重縮合物、ケトン樹脂、又はそれらの混合物からなる群から選択される分散剤をさらに含む。
【0064】
本明細書において使用される際、「カチオン性ポリマー」という用語は、主鎖中の又は側鎖としてのカチオン性基を有するポリマーに関連する。
【0065】
好適なカチオン性ポリマーの非限定的な例は、3~97mol%の式(IV)のカチオン性構造単位
【化6】
(式中、
は、出現するごとに、同じか又は異なり、水素及び/又はメチルを表し、
は、出現するごとに、同じか又は異なり、好ましくは、
【化7】
からなる群から選択される、第四級アミン、ピリジニウム又はピラゾールカチオンを含有し、
式中、
、R10及びR11は、出現するごとに、同じか又は異なり、それぞれ独立して、水素、1~20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素部分、5~8個の炭素原子を有する脂環式炭化水素部分、6~14個の炭素原子を有するアリール及び/又はポリエチレングリコール(PEG)部分を表し、
lは、出現するごとに、同じか又は異なり、0~2の整数を表し、
mは、出現するごとに、同じか又は異なり、0又は1を表し、
nは、出現するごとに、同じか又は異なり、1~10の整数を表し、
Yは、出現するごとに、同じか又は異なり、基が存在しないことを表すか、酸素、NH及び/又はNRを表し、
Vは、出現するごとに、同じか又は異なり、
【化8】
を表し、
式中、
xは、出現するごとに、同じか又は異なり、0~6の整数を表し、
Xは、出現するごとに、同じか又は異なり、ハロゲン原子、C1~4-アルキルサルフェート、C1~4-アルキルスルホネート、C6~14-(alk)アリールスルホネート並びに/又はサルフェート、ジサルフェート、ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート及び/若しくはポリホスフェートから選択される多価アニオンの1価の同等物を表す)
を含むカチオン性コポリマーである。
【0066】
前記カチオン性ポリマーの例が、米国特許出願公開第2016/0369024号明細書に記載されている。
【0067】
本明細書において使用される際、「ポリアミン」という用語は、主鎖中にアミン部分を含有するポリマーに関連する。好ましくは、前記ポリアミンは、非置換であるか又は1つ以上のアルキル又はヒドロキシル基で置換されるポリアルキレンアミンである。ポリアミンが、式(V)の化合物
【化9】
(式中、
xは、出現するごとに、0~4、より好ましくは、0~2、さらにより好ましくは、0であり、
yは、出現するごとに、1、2又は3であり、
12は、出現するごとに、H又はCH、より好ましくは、Hであり、
13は、出現するごとに、水素、ヒドロキシル又はヒドロキシルで任意選択的に置換される直鎖状若しくは分枝鎖状C~C-アルキルである)
であることが特に好ましい。
【0068】
本明細書において使用される際、「スルホン酸を含有する重縮合物」という用語は、重縮合によって得られるスルホン酸基を含有するポリマー分散剤を指す。好適なスルホン酸を含有する重縮合物の非限定的な例は、β-ナフタレンスルホネート-ホルムアルデヒド縮合物(BNS)、スルホン酸化メラミン-ホルムアルデヒド縮合物又はアセトン-ホルムアルデヒド縮合物である。
【0069】
本明細書において使用される際、「ケトン樹脂」という用語は、モノマーが少なくともケトン(I)及びホルムアルデヒド(II)を含むモノマーベースの縮合生成物に関連する。好ましくは、前記縮合生成物は、ホスホノ、サルファイト、スルフィノ、スルファミド、スルホキシ、スルホアルキルオキシ、スルフィノアルキルオキシ、ホスホノオキシ及び/又はそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1つの部分(III)をさらに含み、ここで、アルキルは、任意の分枝鎖状又は非分枝鎖状C1~C10-アルキルから選択され得る。一般に、モノマー比率(I)/(II)/(III)は、1/2~3/0.33~1である。
【0070】
前記ケトン樹脂が、モノマーとして、シクロヘキサノン及び/又はアセトン、ホルムアルデヒド及びサルファイト、より好ましくは、シクロヘキサノン、ホルムアルデヒド及びサルファイトから調製されることが特に好ましい。
【0071】
好ましくは、ケトン樹脂は、10000~40000g/mol、より好ましくは、15000~25000g/molの分子量を有する。
【0072】
好適なケトン樹脂は、例えば、米国特許出願公開第2016/0229748号明細書に記載されている。
【0073】
好ましくは、本発明に係る建築用化学組成物は、建築用化学組成物の総質量を基準にして、0.01~10.0質量%、より好ましくは、0.1~6.0質量%、さらにより好ましくは、1.0~3.0質量%の、ポリアリールエーテル以外の少なくとも1つの分散剤を含む。
【0074】
建築用化学組成物は、安定剤をさらに含み得る。
【0075】
本明細書において使用される際、「安定剤」という用語は、液体建築用化学組成物の貯蔵寿命を増加させる添加剤に関連する。安定剤の非限定的な例は、オリゴ糖及び多糖、好ましくは、デンプンエーテル、ウェランガム、ジウタンガム、キサンタン、キトサン、グアー誘導体又はそれらの混合物である。
【0076】
好ましくは、建築用化学組成物は、スラリーの総質量を基準にして、0.01~8.0質量%、より好ましくは、0.1~5.0質量%、さらにより好ましくは、0.2~2.0質量%の安定剤を含む。
【0077】
さらに、建築用化学組成物は、添加剤の存在によって変性され得る。一般に、石膏スラリーは、流動特性又は硬化プロセスに影響を与える添加剤を含有する。例えば、スラリーは、セルロースエーテル、消石灰、鉱物添加剤、低密度の凝集体、繊維、凝結促進剤、増粘剤、凝結遅延剤、空気連行剤、発泡剤、膨張剤、充填剤、ポリアクリレート、分散剤、超吸収剤(superabsorber)及び安定剤からなる群から選択される1つ以上の添加剤を含み得る。
【0078】
したがって、建築用化学組成物が、建築用化学組成物の総質量を基準にして、
i)0.07~70.0質量%、より好ましくは、15.0~60.0質量%、さらにより好ましくは、20.0~45質量%の石膏、
ii)0.01~10.0質量%、より好ましくは、0.1~5.0質量%、さらにより好ましくは、0.5~3.0質量%の、ポリアリールエーテルである分散剤、
iii)任意選択的に、0.01~9.0質量%、より好ましくは、0.1~6.0質量%、さらにより好ましくは、1.0~3.0質量%の、ポリアリールエーテル以外の少なくとも1つの分散剤、
iv)任意選択的に、0.01~7.0質量%、より好ましくは、0.1~5.0質量%、さらにより好ましくは、0.2~2.0質量%の安定剤、
v)任意選択的に、4.0質量%以下、より好ましくは、0.01~3.0質量%、さらにより好ましくは、0.1~2.0質量%の添加剤、及び
vi)100質量%までの残りの水
を含む、より好ましくは、それらからなることが好ましい。
【0079】
好ましくは、建築用化学組成物は、凝結遅延剤及び/又は凝結促進剤を含み得る。
【0080】
本明細書において使用される際、「凝結遅延剤」という用語は、硫酸カルシウム二水和物(石膏)の形成時に硫酸カルシウム半水和物(バサニ石)又は無水硫酸カルシウム(無水石膏)の水和を遅らせる添加剤に関連する。凝結遅延剤の非限定的な例は、フルーツ酸(例えば酒石酸、クエン酸)及びその塩、グルコネート、タンパク質加水分解物、アミノ酸の重縮合物、ホスフェート、ホスホネート、錯化剤、ヒドロキシカルボン酸、サッカリド、有機ホスフェート及びそれらの混合物である。
【0081】
本明細書において使用される際、「凝結促進剤」という用語は、硫酸カルシウム二水和物(石膏)の形成時に硫酸カルシウム半水和物(バサニ石)又は無水硫酸カルシウム(無水石膏)の水和を加速させる添加剤に関連する。凝結促進剤の非限定的な例は、KSO並びに微粉砕された二水和物である。
【0082】
方法
上に概説されるように、本発明に係る方法は、
aa)ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm以上のD(0.63)粒径を有する硫酸カルシウム粒子、水及びポリアリールエーテルである分散剤を含む懸濁液を提供する工程、及び
ab)工程aa)で得られた懸濁液を湿式粉砕し、それによって建築用化学組成物を得る工程
を含み、
微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比が、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲である。
【0083】
本発明の方法の工程aa)によれば、石膏、水及びポリアリールエーテルである分散剤を含む懸濁液が提供される。
【0084】
石膏という用語に関して、上に示される定義が参照される。本発明によれば、天然石膏又は合成石膏のいずれかが使用される。天然石膏は、それを意図される用途に有用なものにするために物理的又は化学的処理を必要としない。
【0085】
ポリアリールエーテルという用語に関して、上に示される定義が同様に参照される。ポリアリールエーテルが、上記の重縮合生成物であることが好ましい。
【0086】
好ましくは、石膏の初期粒径、すなわち、湿式粉砕工程ab)前の粒径は、ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて測定されるD(0.63)にしたがって決定される、10.0~250.0μmの範囲、より好ましくは、15.0~200.0μm、さらにより好ましくは、20.0~150.0μmの範囲である。
【0087】
本発明の好ましい実施形態によれば、工程aa)の懸濁液は、6.0~75.0質量%、より好ましくは、20.0~65.0質量%の範囲、さらにより好ましくは、30.0~60.0質量%の範囲、例えば35.0~50.0質量%の範囲の固形分を有する。
【0088】
本発明の方法の工程aa)に記載の懸濁液のさらなる成分は、水である。
【0089】
したがって、工程aa)に記載の懸濁液が、懸濁液の総質量を基準にして、
i)0.07~70.0質量%、より好ましくは、5.0~60.0質量%、さらにより好ましくは、10.0~60.0質量%、さらにより好ましくは、15.0~45質量%、さらにより好ましくは、20.0~35.0質量%の微細な硫酸カルシウム粒子、
ii)0.07~70.0質量%、より好ましくは、0.1~40.0質量%、さらにより好ましくは、0.1~5.0質量%、さらにより好ましくは、0.5~3.0質量%の、ポリアリールエーテルである分散剤、及び
iii)100質量%までの残りの水
を含むことが好ましい。
【0090】
さらに、工程aa)に記載の懸濁液は、上述されるように、カチオン性ポリマー、ポリアミン、ポリアミド、スルホン酸を含有する重縮合物、ケトン樹脂、又はそれらの混合物からなる群から選択される、ポリアリールエーテル以外の分散剤を含み得る。
【0091】
工程aa)に記載の懸濁液は、上記の安定剤及び/又はさらなる添加剤も含み得る。
【0092】
したがって、工程aa)に記載の懸濁液が、懸濁液の総質量を基準にして、
i)0.07~70.0質量%、より好ましくは、15.0~60.0質量%、さらにより好ましくは、20.0~45質量%の石膏、
ii)0.01~10.0質量%、より好ましくは、0.1~5.0質量%、さらにより好ましくは、0.5~3.0質量%の、ポリアリールエーテルである分散剤、
iii)任意選択的に、0.01~9.0質量%、より好ましくは、0.1~6.0質量%、さらにより好ましくは、1.0~3.0質量%の、ポリアリールエーテル以外の少なくとも1つの分散剤、
iv)任意選択的に、0.01~7.0質量%、より好ましくは、0.1~5.0質量%、さらにより好ましくは、0.2~2.0質量%の安定剤、
v)任意選択的に、4.0質量%以下、より好ましくは、0.01~3.0質量%、さらにより好ましくは、0.1~2.0質量%の添加剤、及び
vi)100質量%までの残りの水
を含む、より好ましくは、それらからなることが好ましい。
【0093】
本発明の方法の工程ab)によれば、工程aa)で得られたスラリーは、微細な硫酸カルシウム粒子を得るために、湿式粉砕プロセスに曝される。
【0094】
工程aa)に記載の懸濁液は、任意の公知の粉砕又は破砕装置によって粉砕される。好適な粉砕デバイスの非限定的な例としては、ボールミル、回転式粉砕機、撹拌型ビーズミル又は任意の水性粉砕装置が挙げられる。
【0095】
特に、湿式粉砕は、撹拌型ビーズミルにおいて行われ得る。撹拌型ビーズミルは、粉砕チャンバ中に配置される粉砕媒体並びに固定子及び回転子を含む粉砕チャンバを含む。好ましくは、撹拌型ビーズミルは、粉砕された材料を粉砕チャンバに供給し、及びそれから排出するための、粉砕原料入口開口部及び粉砕原料出口開口部、並びに粉砕原料が出口開口部を通して粉砕チャンバから排出される前に、粉砕媒体粒子を粉砕原料と分けるために、出口開口部の上流で粉砕チャンバに配置された粉砕媒体分離デバイスを含む。
【0096】
粉砕チャンバにおける機械的粉砕性能を向上させるために、粉砕チャンバ中に突出するピンが、好ましくは、回転子及び/又は固定子に存在する。運転中、一方、粉砕性能への直接の寄与は、粉砕される材料とピンとの間の衝撃によって与えられる。他方、粉砕性能へのさらなる寄与は、ピンと、粉砕される材料に組み込まれる粉砕媒体粒子との間の衝撃、及び粉砕される材料と粉砕媒体粒子との間の次に生じる衝撃によって、間接的に起こる。最後に、粉砕される材料に作用するせん断力及び伸縮力も、懸濁された粉砕される材料の破砕に寄与する。
【0097】
好ましくは、微細な硫酸カルシウム粒子の最終的な粒径、すなわち、湿式粉砕プロセス後の粒径は、小粒子についてのミー理論(粒子RI=1.531、分散剤RI=1.330;吸収=0.1;10~20%の吸光度)にしたがってレーザー回折(Malvern Instruments製のMastersizer 2000)を用いて測定されるD(0.63)にしたがって決定される、10.0μm未満、より好ましくは、5.0μm未満、さらにより好ましくは、0.1~2.0μmの範囲である。
【0098】
本発明の別の実施形態によれば、ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される10.0μm未満のD(0.63)粒径を有する微細な硫酸カルシウム、及びポリアリールエーテルである分散剤を含む建築用化学組成物の調製のための方法であって、
ba)カルシウム源、水及び任意選択的にポリアリールエーテルである分散剤を含む液体Aを提供する工程と、
bb)サルフェート源、水及び任意選択的にポリアリールエーテルである分散剤を含む液体Bを提供する工程、及び
bc)液体A及び液体Bを混合することによって微細な硫酸カルシウムを沈殿させ、それによって建築用化学組成物を得る工程
を含み、
微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比が、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲である、方法。
【0099】
ポリアリールエーテルである分散剤は、液体A、液体B又は液体A及びBの両方の中に存在する。
【0100】
液体A中のカルシウム源は、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、酸化カルシウム、スルファミン酸カルシウム、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水和物、無水硫酸カルシウム、チオシアン酸カルシウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0101】
液体B中のサルフェート源は、硫酸アルミニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸又はそれらの混合物からなる群から選択され、挙げられたサルフェートの様々な水和物が含まれる。
【0102】
ポリアリールエーテルが、上記の重縮合生成物であることが好ましい。
【0103】
好ましくは、工程bc)に記載の沈殿は、連続式マイクロリアクター又はスプレー沈殿反応器において行われる。
【0104】
特に、微細な硫酸カルシウムは、マイクロジェットリアクター(MJR)プロセスによって、工程bc)にしたがって沈殿され得る。好適なプロセスは、独国特許第102004038029号明細書によって記載されている。特に、ポンプ、好ましくは、高圧ポンプによって、2つの液体媒体を反応器チャンバ中に噴射することによって沈殿が行われる、欧州特許第1165224号明細書に記載されているマイクロジェットリアクターが好ましい。反応器チャンバは、好ましくは、反応器ハウジングに囲まれる。2つの液体媒体は、好ましくは、共通の衝突地点に噴射され、各媒体は、1つのノズルを通して噴射される。反応器チャンバの開口部を通して、ガス、蒸発する液体、冷却液体又は冷却ガスが、好ましくは、反応器内部、特に、液体ジェットの衝突地点のガス雰囲気を維持し、得られる生成物を冷却するために導入される。さらに、ガスはまた、混合領域を安定させるため、及び詰まりを避けるために有益である。得られる生成物及び過剰なガスが、好ましくは、ガス入口側で陽圧によって、又は生成物及びガス排出側で陰圧によって、さらなる開口部を介して反応器ハウジングから除去される。
【0105】
マイクロジェットリアクター(MJR)のノズルは、それらの直径に関して特に制限されない。例えば、ノズルは、独立して、50μm~1mm、例えば50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm 450μm、500μm、550μm、600μm、700μm、800μm、900μm、又は1000μmの範囲の直径を有し得る。好ましくは、ノズルは、300μmの直径、すなわち、300μm(液体A)及び300μm(液体B)の直径を有する。ポリアリールエーテルは、液体A及び/又は液体B中に存在し得る。好ましくは、ポリアリールエーテルは、液体A中に存在する。
【0106】
好ましくは、液体Aは、原料1の総質量を基準にして、0.1~60.0質量%のカルシウム源、より好ましくは、1.0~50.0質量%、さらにより好ましくは、2.0~40.0質量%及び0.0001~20.0質量%のポリアリールエーテル、より好ましくは、0.001~15.0質量%、さらにより好ましくは、0.01~10.0質量%を含有する。
【0107】
さらに、液体Bは、原料2の総質量を基準にして、0.1~60.0質量%のサルフェート源、より好ましくは、1.0~50.0質量%、さらにより好ましくは、2.0~40.0質量%及び任意選択的に、0.0001~20.0質量%のポリアリールエーテル、より好ましくは、0.001~15.0質量%、さらにより好ましくは、0.01~10.0質量%を含有することが好ましい。
【0108】
液体A及び/又は液体Bの流量が、100mL/分~800mL/分の範囲、好ましくは、200mL/分~650mL/分の範囲、より好ましくは、250mL/分~550mL/分の範囲、さらにより好ましくは、280mL/分~500mL/分の範囲であることが好ましい。
【0109】
さらに、液体A及び/又は液体Bは、10~350バールの範囲、好ましくは、20~150バールの範囲、より好ましくは、30~120バールの範囲、さらにより好ましくは、40~100バールの範囲、例えば80バールの上流圧力を有することが好ましい。
【0110】
本発明に係る懸濁液はまた、微粉化プロセスによって沈殿され得る。例えば、好適な微粉化プロセスは、欧州特許第0065193号明細書に記載されている。
【0111】
微粉化プロセスにおいて、硫酸カルシウム、ポリアリールエーテルである分散剤及び溶媒を含む組成物が、第1の混合チャンバ中で調製される。その後、前記組成物は、さらなる溶媒の添加によって、第2の混合チャンバ中で沈殿される。
【0112】
好ましい実施形態によれば、選択された溶媒中の石膏の懸濁液が、最初に、第1の槽に導入される。第2の槽が、好ましくは、混合された石膏を含まない溶媒を含む。ポリアリールエーテルは、第1の槽及び/又は第2の槽中に存在し得る。懸濁液及び溶媒は、第1の混合チャンバに供給される。それが混合チャンバに入る前に、石膏懸濁液及び/又は溶媒は、熱交換器によって所望の温度にされ得る。第1の混合チャンバ中での乱流混合の結果として、石膏の溶解が起こり、得られた溶液が、好ましくは、1秒未満の短い滞留時間の後、第2の混合チャンバに入り、ここで、石膏は、溶媒の混合物によって、コロイド状に分散した形態で沈殿される。
【0113】
或いは、本発明に係る懸濁液は、クロスフローノズルプロセスによって沈殿され得る。クロスフローノズルプロセスにおいて、石膏の懸濁液及び溶媒を含有する第1の流れが、混合チャンバ中に供給されると同時に、好ましくは、第1の流れに垂直に配置される第2の流れが、混合チャンバ中に供給され、前記第2の流れは、溶媒を含む。ポリアリールエーテルである分散剤は、第1の流れ及び/又は第2の流れ中に存在し得る。
【0114】
さらに、本発明に係る懸濁液は、集中的な混合/スプレー沈殿技術(HTE)によって沈殿され得る。前記技術は、当該技術分野において周知である。
【0115】
本発明はさらに、微細な硫酸カルシウムの調製のための湿式粉砕又は沈殿プロセスにおける分散剤としてのポリアリールエーテルの使用に関する。
【0116】
好ましくは、前記ポリアリールエーテルは、上記の重縮合生成物である。
【0117】
さらに、本発明に係る建築用化学組成物が、ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される、500.0μm未満、好ましくは、<200μm、より好ましくは、<100μmのD(0.63)粒径を有する粉末粒子を有する粉末であることが好ましい。
【0118】
本発明に係る微細な硫酸カルシウム粒子は、乾燥後に、粉末粒子に埋め込まれる。
【0119】
粉末は、プロセス工程ab)又はbc)で得られた本発明に係る建築用化学組成物を含有する懸濁液の乾燥によって、工程ac)又はbd)において生成される。
【0120】
したがって、粉末は、
i)ミー理論にしたがってレーザー回折を用いて決定される、10.0μm未満のD(0.63)粒径を有する微細な硫酸カルシウム粒子、及び
ii)ポリアリールエーテルである分散剤
を含む、本発明に係る組成物であって、
微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比が、0.1:99.9~99.9:0.1の範囲である、組成物である。
【0121】
好ましくは、粉末中の微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比は、60.0:40.0~99.0~1.0の範囲、より好ましくは、50.0:50.0~99.0:1.0の範囲、さらにより好ましくは、80.0:20.0~98.0~2.0の範囲、例えば、85.0:15.0~99.9:0.1の範囲である。微細な硫酸カルシウム粒子と分散剤との間の質量比が、85.0:15.0~99.9:0.1の範囲であることが特に好ましい。
【0122】
前の段落に加えて又はその代わりに、粉末が、粉末の総質量を基準にして、
i)0.1~99.9質量%、より好ましくは、50.0~99.0質量%、さらにより好ましくは、80.0~99.0質量%、例えば、85.0~99.0質量%の微細な硫酸カルシウム粒子、及び
ii)0.1~99.9質量%、より好ましくは、1.0~50.0質量%、さらにより好ましくは、1.0~20.0質量%、例えば、1.0~15.0質量%の、ポリアリールエーテルである分散剤
を含むことが好ましい。
【0123】
さらに、粉末は、ポリアリールエーテル以外のさらなる分散剤、安定剤及び流動特性又は硬化プロセスに影響を与える添加剤などの添加剤も含み得る。前記添加剤に関して、上に示される定義が参照される。
【0124】
したがって、粉末は、好ましくは、粉末の総質量を基準にして、
i)70.0~99.9質量%、より好ましくは、75.0~99.0質量%、さらにより好ましくは、80.0~99.0質量%、例えば、85.0~99.0質量%の微細な硫酸カルシウム粒子、
ii)0.1~20.0質量%、より好ましくは、1.0~18.0質量%、さらにより好ましくは、1.0~15.0質量%、例えば、1.0~12.0質量%の、ポリアリールエーテルである分散剤
iii)任意選択的に、0.01~6.0質量%、より好ましくは、0.1~3.0質量%、さらにより好ましくは、1.0~1.0質量%の、ポリアリールエーテル以外の少なくとも1つの分散剤、
iv)任意選択的に、0.01~3.0質量%、より好ましくは、0.1~2.0質量%、さらにより好ましくは、0.2~1.0質量%の安定剤、及び
v)任意選択的に、1.0質量%以下、より好ましくは、0.01~2.0質量%、さらにより好ましくは、0.1~1.0質量%の添加剤
を含む、より好ましくは、それらからなる。
【0125】
本発明の乾燥された凝結促進剤が、デンプン、界面活性剤及び/又は糖の存在下でドライミリングプロセスによって生成される従来技術の石膏ベースの凝結促進剤より高い貯蔵安定性を示したことはさらに意外なことであった。ドライミリングされた石膏ベースの凝結促進剤の凝結促進特性は、特に、高湿度での貯蔵後に、著しく悪化する。これは、本発明の乾燥された凝結促進剤には当てはまらない。したがって、粉末を含む乾燥モルタルも、非常に良好な貯蔵安定性を有する。好ましい乾燥モルタル混合物は、結合剤成分として硫酸カルシウムを含有しており、例えば、漆喰、目地材、目地モルタル詰め、スクリード又はセルフレベリング下地として適用される。
【0126】
本発明はまた、上記の建築用化学組成物を含む物品にも関する。
【0127】
好ましくは、物品は、石膏ウォールボード、不織布石膏ボード、スタッコ、モルタル漆喰、機械対応型(machine compliant)漆喰、漆喰石膏、接着石膏、目地石膏(joints gypsum)、石膏ベースの充填剤、スクリード石膏、仕上げ用漆喰及び大理石漆喰からなる群から選択される。
【0128】
物品が石膏ウォールボードであることが特に好ましい。
【0129】
したがって、本発明はまた、石膏ウォールボードを製造するための方法における上記の建築用化学組成物の使用にも関する。石膏ウォールボードを調製するための方法は、当該技術分野において周知であり、一般に、発泡石膏スラリーの調製を含み、この発泡石膏スラリーは、その後、厚紙シートに適用される。
【0130】
したがって、本方法が、
ca)石膏、配合水及び任意選択的に発泡体を含む組成物を提供する工程、
cb)工程ca)で得られた組成物を、混合デバイス中に供給し、それによってスラリーを調製する工程、
cc)工程cb)で得られたスラリーを、第1の厚紙シートに適用する工程、及び
cd)スラリーを、第2の厚紙シートで被覆する工程
を含むことが好ましい。
【0131】
建築用化学組成物は、工程ca)、cb)、cc)及び/又はcd)中にスラリーに加えられ得る。特に、工程ca)に記載の組成物に加えられる配合水及び/又は発泡体は、建築用化学組成物を含有し得る。建築用化学組成物はまた、工程cc)及びcd)の前に、第1及び/又は第2の厚紙シートに適用され得る。
【0132】
それに加えて又はその代わりに、建築用化学組成物は、工程cb)中に混合デバイス中のスラリーに直接加えられるか、及び/又は混合デバイスの出口の供給弁を介して加えられ得る。
【0133】
したがって、配合水、発泡体の少なくとも一方が、建築用化学組成物を含有し、及び/又は建築用化学組成物は、混合デバイス中で又は混合デバイスの出口における供給弁を通してスラリーに加えられる。
【0134】
前の段落に加えて又はその代わりに、第1の厚紙シート及び/又は第2の厚紙シートは、建築用化学組成物で被覆される。
【0135】
建築用化学組成物を添加するための好適な方法は、例えば、米国特許出願公開第2015114268A号明細書、国際公開第06115497A1号パンフレット、米国特許出願公開第2006244182A号明細書及び米国特許出願公開第2006244183A号明細書に記載されている。
【0136】
さらに、本発明はまた、乾燥モルタルを含む石膏、不織布石膏ボード、スタッコ、モルタル漆喰、機械対応型漆喰、漆喰石膏、接着石膏、目地石膏、石膏ベースの充填剤、スクリード石膏、仕上げ用漆喰及び大理石漆喰を製造するための方法における、上記の建築用化学組成物の使用にも関する。
【0137】
好ましい実施形態において、建築用化学組成物は、製造された物品の圧縮強度を高めるのに使用される。
【0138】
製造された物品の圧縮強度は、強度増進の調査のためのDIN 196-1にしたがって、10分、30分、60分後に、好ましくは、硫酸カルシウムベースの物品が一定質量(mass consistency)になった後に高められる。
【0139】
本発明の範囲及び目的は、以下の実施例に基づいてよりよく理解され、実施例は、本発明の特定の実施形態を例示することが意図され、限定的なものではない。
【実施例
【0140】
使用される材料
本発明の組成物IE1において使用されるポリアリールエーテル(PAE)は、国際公開第2015/091461A1号パンフレットの比較例7である。
【0141】
比較例の組成物CE1において使用されるポリカルボキシレートは、BASF製の商品Melflux PCE 239 Lである。
【0142】
比較例の組成物CE2において使用されるポリカルボキシレートは、BASF製の商品Melflux PCE 1493 Lである。
【0143】
様々な組成物において使用されるポリ-ナフタレンスルホネート(PNS)は、Bozzetto製の商品Flube CA 40である。
【0144】
β-半水和物は、40μmの平均粒径を有するGessi Roccastrada製の商品Gesso Alabastrinoである。
【0145】
天然無水石膏は、35μmの平均粒径を有するCasea製の商品Micro Bである。
【0146】
二水和物は、50μmの平均粒径を有するCasea製の商品CS-Dihydratである。
【0147】
Plast Retard Lは、Sicit 2000製の商品である。
【0148】
スラリーの調製
対照例1
対照として、いずれの凝結促進剤も含有しないブランク石膏スラリーを、300gのβ-半水和物を用いて生成した。0.665の水対結合剤(w/g)比に対応して必要とされ、非処理の石膏スラリーに基づいて決定される水の量を、混合槽(DIN EN 196-1に準拠するミキサー)に充填し、次に、β-半水和物を、水中に注意深く振りかける。さらに、表1に示される量のPlast Retard Lを、配合水に加える。スラリーを、285rpmで30秒間撹拌した。0.665の水対結合剤(w/g)比を、対照例1のために21.0cmの流量を達成するように調整した。
【0149】
比較例CE1及びCE2
液体凝結促進剤の調製
液体凝結促進剤の調製のために、15質量%の二水和物、83質量%の水及び2.0質量%のPCEの組成物を、0.4~0.6mmの直径及び85%の湿潤領域の酸化ジルコニウムボールを用いたNetzsch Labstar LS 01における湿式粉砕に供した。湿式粉砕を、合計で240分間にわたって行った。
【0150】
適用試験
スラリーを、300gのβ-半水和物を用いて生成した。0.665の水対結合剤(w/g)比に対応して必要とされ、非処理の石膏スラリーに基づいて決定される水の量を、混合槽(DIN EN 196-1に準拠するミキサー)に充填し、次に、β-半水和物を、水中に注意深く振りかける。Plast Retard Lを、表1に示される量で配合水に加えた。混合中、液体凝結促進剤を、噴射によって添加した。スラリーを、285rpmで30秒間撹拌した。
【0151】
比較例CE3
液体凝結促進剤の調製
液体凝結促進剤の調製のために、15質量%の二水和物及び83質量%の水の組成物を、0.4~0.6mmの直径及び85%の湿潤領域の酸化ジルコニウムボールを用いたNetzsch Labstar LS 01における湿式粉砕に供した。湿式粉砕を、合計で240分間にわたって行った。
【0152】
適用試験
スラリーを、300gのβ-半水和物を用いて生成した。0.665の水対結合剤(w/g)比に対応して必要とされ、非処理の石膏スラリーに基づいて決定される水の量を、混合槽(DIN EN 196-1に準拠するミキサー)に充填し、次に、β-半水和物を、水中に注意深く振りかける。Plast Retard Lを、表1に示される量で配合水に加えた。混合中、液体凝結促進剤を、噴射によって添加した。スラリーを、285rpmで30秒間撹拌した。
【0153】
比較例CE4
乾燥凝結促進剤の調製
比較のために、表1に示される量で5μmの粒径を有する二水和物を、合計で4分間にわたってボールミルにおいて5%のアルキルベンゼンスルホン酸、アミン塩とともに二水和物の乾式粉砕に供することによって、乾燥凝結促進剤を調製した。
【0154】
適用試験
スラリーを、250gのβ-半水和物及び0.05g(0.02% bws)の乾燥凝結促進剤を用いて生成した。0.685の水対結合剤(w/g)比に対応して必要とされ、非処理の石膏スラリーに基づいて決定される水の量を、混合槽(DIN EN 196-1に準拠するミキサー)に充填し、次に、乾燥凝結促進剤を含むβ-半水和物を、水中に注意深く振りかける。Plast Retard Lを、表1に示される量で配合水に加えた。スラリーを、285rpmで30秒間撹拌した。0.665の水対結合剤(w/g)比を、比較例CE4のために21.0cmの流量を達成するように調整した。
【0155】
本発明の実施例IE1、IE2及びIE3
液体凝結促進剤の調製
液体凝結促進剤の調製のために、表1に示される量の二水和物、水及びPAEの組成物を、0.4~0.6mmの直径及び85%の湿潤領域の酸化ジルコニウムボールを用いたNetzsch Labstar LS 01における湿式粉砕に供した。湿式粉砕を、合計で240分間にわたって行った。
【0156】
適用試験
本発明のスラリーを、300gのβ-半水和物を用いて生成した。0.665の水対結合剤(w/g)比に対応して必要とされ、非処理の石膏スラリーに基づいて決定される水の量を、混合槽(DIN EN 196-1に準拠するミキサー)に充填し、次に、β-半水和物を、水中に注意深く振りかける。Plast Retard Lを、表1に示される量で配合水に加えた。混合中、それぞれの液体凝結促進剤を、噴射によって添加した。スラリーを、285rpmで30秒間撹拌した。
【0157】
本発明の実施例IE4
液体凝結促進剤の調製
液体凝結促進剤の調製のために、表1に示される量の半水和物、水及びPAEの組成物を、0.4~0.6mmの直径及び85%の湿潤領域の酸化ジルコニウムボールを用いたNetzsch Labstar LS 01における湿式粉砕に供した。湿式粉砕を、合計で240分間にわたって行った。
【0158】
適用試験
スラリーを、250gのβ-半水和物を用いて生成した。0.685の水対結合剤(w/g)比に対応して必要とされ、非処理の石膏スラリーに基づいて決定される水の量を、混合槽(DIN EN 196-1に準拠するミキサー)に充填し、次に、β-半水和物を、水中に注意深く振りかける。Plast Retard Lを、表1に示される量で配合水に加えた。混合中、液体凝結促進剤を、噴射によって添加した。スラリーを、285rpmで30秒間撹拌した。
【0159】
本発明の実施例IE5
液体凝結促進剤の調製
液体凝結促進剤の調製のために、表1に示される量の天然無水石膏、水及びPAEの組成物を、0.4~0.6mmの直径及び85%の湿潤領域の酸化ジルコニウムボールを用いたNetzsch Labstar LS 01における湿式粉砕に供した。湿式粉砕を、合計で240分間にわたって行った。
【0160】
適用試験
スラリーを、250gの天然無水石膏を用いて生成した。0.685の水対結合剤(w/g)比に対応して必要とされ、非処理の石膏スラリーに基づいて決定される水の量を、混合槽(DIN EN 196-1に準拠するミキサー)に充填し、次に、β-半水和物を、水中に注意深く振りかける。Plast Retard Lを、表1に示される量で配合水に加えた。混合中、液体凝結促進剤を、噴射によって添加した。スラリーを、285rpmで30秒間撹拌した。
【0161】
液体凝結促進剤の組成物が、表1に要約される。表2は、液体凝結促進剤を含む適用例の組成物及び特性を含む。
【0162】
粒径
粒径を、小粒子についてのミー理論(粒子RI=1.531、分散剤RI=1.330;吸収=0.1;10~20%の吸光度)にしたがってレーザー回折(Malvern Instruments製のMastersizer 2000)を用いて決定した。
【0163】
結果が、表2に要約される。
【0164】
スランプ試験
流量を、60秒の時間後に決定した。粉末成分を液体に加えた後、スタッコは、15秒間にわたって浸漬する必要があった。次に、スラリーを、Hobartミキサーを用いて30秒間混合した。45秒の合計時間の後、ASTMリングに、スタッコスラリーを上端まで充填し、60秒後に持ち上げた。最後に、パテの直径を、2つの垂直軸上でキャリパー定規により測定した。
【0165】
硬化時間
初期硬化を、いわゆるナイフカット法(DIN EN 13279-2に類似する)により決定した。
【0166】
結果が、表2に要約される。
【0167】
表2から推測され得るように、液体凝結促進剤のための分散剤としてPAEを含有する本発明の組成物の硬化時間は、液体凝結促進剤のための分散剤を含有しない対照例の硬化時間より有意に短い。分散剤としてPCEを含有する比較例CE1及びCE2と比較して、同じ量のPAEを含有する実施例IE1及びIE2の硬化時間もより短い。本発明の分散剤の効果はまた、石膏成分としての半水和物(IE4)及び天然無水石膏(IE5)についても示される。比較例CE4は、硬化時間及び、ひいては、本発明の湿式粉砕プロセスから得られる微細な硫酸カルシウムの粒径が、乾式粉砕方法によって得られる微細な硫酸カルシウムのものより優れていることを示す。
【0168】
【表1】
【0169】
【表2】
【0170】
機械的特性
上記のスラリーから製造される石膏物品の曲げ強度及び圧縮強度を決定するために、試験片を以下のように作製した:
0.02%及び0.01%のシード添加量(seed dosage)で作製される前記試験片の質量及び密度が、表3及び4に要約される。
【0171】
試験片(4×4×16cm3のプリズム)を、強度増進の調査のためにDIN 196-1にしたがって作製した。曲げ強度及び圧縮強度を試験する前に、全ての試料を、以下の方法で一定質量になるまで乾燥させた。石膏スラリーの硬化の後、全ての試験片を、1日、20℃/65%の相対湿度で貯蔵した。その後、全ての試料を、型から取り出し、次に、一定質量になるまで40℃で乾燥させた。乾燥密度を、秤量によって、体積基準で計算した(256cm3)。表3及び4は、曲げ強度及び圧縮強度の様々な測定値並びにその平均値の結果を含む。
【0172】
【表3】
【0173】
【表4】
【0174】
表3によれば、分散剤の存在下で調製された組成物の曲げ強度及び圧縮強度は、ブランク対照と比較して向上される。PAEを含有する得られる石膏物品の圧縮強度は、PCEを含有する組成物と比較して向上される。したがって、本発明の湿式粉砕プロセスにしたがって、PCEの代わりにPAEを適用することは、得られる石膏物品の圧縮強度に有益な効果を与える。
【国際調査報告】