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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-24
(54)【発明の名称】CD38抗体を使用する併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220817BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20220817BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20220817BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20220817BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K31/454
A61K31/573
A61K31/69
C07K16/30 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021573297
(86)(22)【出願日】2020-06-09
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 IB2020000443
(87)【国際公開番号】W WO2020250033
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】62/859,631
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100125081
【弁理士】
【氏名又は名称】小合 宗一
(72)【発明者】
【氏名】パルンボ、アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】アリクメッツ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】バーグ、デボラ
(72)【発明者】
【氏名】フェディク、エリック
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085EE03
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC22
4C086DA10
4C086DA43
4C086GA06
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
単離された抗CD38抗体を、多発性骨髄腫の治療のために、レナリドミドまたはポモリドミド(pomobdomide)、ならびにデキサメタゾン及び任意選択でボルテゾミブと併用して投与する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD38陽性血液癌を有する対象を治療する方法であって、治療有効量のa)抗CD38抗体またはその抗原結合断片、b)レナリドミド、及びc)コルチコステロイドを、前記CD38陽性血液癌を治療するのに十分な時間で前記対象へ投与することを含み、前記抗CD38抗体が、配列番号:3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号:5のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変重(VH)鎖領域;ならびに配列番号:6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変軽(VL)鎖領域を含む、方法。
【請求項2】
CD38陽性血液癌を有する対象を治療する方法であって、治療有効量のa)抗CD38抗体またはその抗原結合断片、b)ポマリドミド、及びc)コルチコステロイドを、前記CD38陽性血液癌を治療するのに十分な時間で前記対象へ投与することを含み、前記抗CD38抗体が、配列番号:3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号:5のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変重(VH)鎖領域;ならびに配列番号:6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変軽(VL)鎖領域を含む、方法。
【請求項3】
前記VH鎖領域が配列番号:9のアミノ酸配列を有し、前記VL鎖領域が配列番号:10のアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、配列番号:11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号:12の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗CD38抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗CD38抗体がIgG1アイソタイプである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、完全にヒトである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記CD38陽性血液癌が多発性骨髄腫である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記CD38陽性血液癌が、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)または未治療の多発性骨髄腫である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記CD38陽性血液癌が、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)であり、前記対象が、幹細胞移植が初期の治療法として計画されない患者である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記CD38陽性血液癌が、血液癌薬により以前に治療されていない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記CD38陽性血液癌が、多発性骨髄腫薬により以前に治療されていない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記対象が、難治性または再発多発性骨髄腫(RRMM)を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、2つの治療サイクルについて約300mgの用量で週1回、後続する4つの治療サイクルについて約300mgの用量で2週間に1回、及びその後の任意の治療サイクルについて約300mgの用量で4週間に1回投与され、1つの治療サイクルが28日間である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、皮下投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、ヒアルロニダーゼの非存在下において投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記レナリドミドが、最大8つの治療サイクルについて、約2.5~約25mgの用量で各々の治療サイクルのうちの21日間毎日投与され、前記1つの治療サイクルが28日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記レナリドミドが経口投与される、請求項1または17に記載の方法。
【請求項19】
前記ポマリドミドが、最大8つの治療サイクルについて、治療有効量で各々の治療サイクルのうちの21日間毎日投与され、前記1つの治療サイクルは28日間である、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記ポマリドミドが経口投与される、請求項1または19に記載の方法。
【請求項21】
前記コルチコステロイドがデキサメタゾンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項22】
前記デキサメタゾンが、1~8の治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、前記1つの治療サイクルが28日間である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記デキサメタゾンが、1~8の治療サイクルについて約40mgの用量で週1回投与され、前記1つの治療サイクルが28日間である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記デキサメタゾンが、経口投与または静脈内投与される、請求項21~23の請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
治療有効量のボルテゾミブを投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記ボルテゾミブが、1~8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~1.3mg/mの用量で週1回投与され、前記1つの治療サイクルは28日間である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ボルテゾミブが皮下投与される、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
a)前記抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)レノリドミド(lenolidomide)が、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;及びc)前記コルチコステロイドが、1~8の治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、前記1つの治療サイクルが28日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
a)前記抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)ポモリドミド(pomolidomide)が、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;及びc)前記コルチコステロイドが、1~8の治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、前記1つの治療サイクルが28日間である、請求項2に記載の方法。
【請求項30】
治療有効量のボルテゾミブを投与することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記ボルテゾミブが、1~8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~1.3mg/mの用量で週1回投与され、前記1つの治療サイクルは28日間である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ボルテゾミブが、各々の治療サイクルのうちの、1、8、及び15日目に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記デキサメタゾンが、各々の治療サイクルのうちの、1、8、15、及び22日目に投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、各々の投薬日にAB79投与の開始の1~3時間前にプレメディケーションを受け、前記プレメディケーションが解熱薬及び抗ヒスタミン薬を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記解熱物質が、アセトアミノフェンであり、約650~約1000mgの用量で経口投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗ヒスタミン物質が、ジフェンヒドラミンまたは同等物であり、約25mg~約50mgの用量で経口投与または静脈内投与される、請求項34または請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記プレメディケーションがモンテルカストまたは同等のロイコトリエン阻害物質をさらに含む、請求項34~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記モンテルカストまたは同等のロイコトリエン阻害物質が約10mgの用量で投与される、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年6月10日に出願された米国仮特許出願第62/859,631号の優先権を主張し、上記出願は参照することによってその全体が明確に援用される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含有し、参照することによってその全体が本明細書に援用される。2020年6月8日に生成された前記ASCIIコピーは101588-5012-WO_ST25.txtと命名され、18キロバイトのサイズである。
【0003】
本発明は、抗CD38抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、併用療法により多発性骨髄腫を治療するための方法を記載する。
【背景技術】
【0004】
多発性骨髄腫(MM)は骨髄中の形質細胞の稀で多くは治癒しない悪性疾患であり、高度に複雑で且つ多様な細胞遺伝学的及び分子的な異常性に起因してかなり高い罹病率及び死亡率を伴うものである。それは、すべてのがんのうちのおよそ1%及びすべての血液癌のうちのおよそ13%を占める。骨髄腫は65~74歳の人々の間で最も頻繁に診断され、中央値の年齢は69歳である。MMの患者の5年生存率はおよそ50%である。MMの臨床徴候は、悪性形質細胞クローンによる骨髄浸潤、高レベルの血中免疫グロブリン及び/または遊離軽鎖(FLC)、免疫抑制、ならびに末端器官の損傷から生じる。MMは、すなわち、高カルシウム血症(骨吸収からもたらされる)、腎臓機能障害(一般的には高カルシウム血症、腫瘍浸潤、または高尿酸血症に起因する)、貧血(骨髄の中への腫瘍浸潤及びサイトカインによる造血の抑制に起因する)、及び溶解性骨病変(悪性形質細胞によって産生された破骨細胞刺激因子に起因する)を特徴とする。症状は変動するが、骨痛、骨折、脱力感、倦怠感、出血、貧血、及び免疫不全から生じる感染が挙げられる。
【0005】
MMにおける予後は、診断の時の患者因子及び腫瘍変数の両方に依存する。患者関連因子としては、年齢、パフォーマンスステータス、及び腎機能が挙げられる。腫瘍変数としては、疾患ステージ、細胞遺伝学的異常、及び髄外疾患、そして軽鎖病及びIgA病が挙げられる。正常な老化過程は器官機能の加齢関連変化及び代謝の変化に関連し、それは、がん治療の忍容性の不良に寄与し、高齢者における転帰の不良を導き得る。さらに、暦年齢と生物学的年齢は対応しない可能性があり、したがって、フレイル、併存症、心理社会的機能、及び他の障害の存在は、MMの管理及び治療法の耐性を複雑にし得る。年齢及び併存症に起因して、MMの高齢患者は自家移植について通常不適格であり、したがって、この患者集団のための治療計画は標準的な化学療法剤のみからなる。幹細胞移植(SCT)は65歳未満の患者のための治療の重要な部分であるが、それは多くの利用可能な治療選択肢のうちの1つにすぎない。若干の患者はSCTの併存症を遅延させることを好み、したがって、この治療についての必要性そしてそのタイミングは、患者の状況に合わせて調整されなくてはならない。
【0006】
MMの治療は、骨髄腫細胞の分裂増殖の制約及び疾患症状の軽減に焦点を当てる。生物学の深い理解、治療戦略における改善、ならびにプロテアソーム阻害物質(例えばボルテゾミブ、イキサゾミブ、及びカルフィルゾミブ);免疫調節薬(例えばレナリドミド及びポマリドミド);及びモノクローナル抗体(例えばダラツムマブ及びエロツズマブ)等の薬剤の導入により、最近十年間でMM患者の転帰における改善があったが、疾患の経過は患者の間で極めて予測不能であり、可変的継続期間の無症状の寛解期間及び症状の有る頻繁な再発を特徴とする。最終的には、疾患症状の無い期間は短くなり、病気は利用可能な治療法に対して難治性になる。
【0007】
MMが進行するにつれて、感染への抵抗性低下、貧血、及び著しい骨破壊等の複合因子は、一様に予後を致命的にする。追加で、全生存期間(OS)の改善があったが、65歳未満の患者に比較して、65~74歳患者には利益は少なく、75歳以上の患者の利益は無かった。したがって、MMはほとんど不治の病のままであり、これらの患者のための新たな治療法の選択肢を開発する必要性及び緊急性が強調される。
【0008】
SCTが初期の治療法として計画されない新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)の患者において、標準的な治療選択肢としては、以下の薬剤(処方頻度は国ごとに変動する):ボルテゾミブ、レナリドミド、サリドマイド、シクロホスファミド、及びコルチコステロイドのうちの2~3を含有するレジメンが挙げられる(例えば米国特許第10,232,041号;同第9,944,711号;同第9,289,490号;同第9,040,050号;及び同第8,877,899号;ならびに米国特許公開第20180117150号;同第20190127479号;同第20180235986号;同第20180022823号;同第20170224817号;同第20170121417号;同第20170107295号;同第20170008966号;同第20160130362号;同第20160067205号;同第20150231235号;同第20140161819号;同第20130302318号;同第20130209355号;同第20100092489号;及び同第20100028346号;同第20090148449号を参照)。これらのレジメンは米国においてMMの治療に使用され、抗骨髄腫活性に良好な忍容性を示す。IMiDベースのレジメンであるレナリドミド-デキサメタゾン(Len-Dex)は、US Food and Drug Administration(FDA)によって承認される。三重の組み合わせ(ボルテゾミブ(Velcade)、レナリドミド、及びデキサメタゾン)は、無増悪生存期間(PFS)の改善に基づいて米国において使用される。二重または三重のレジメンを与えるべきかどうか含むNDMMの患者における具体的な治療法の選択は、多くの場合、前述の患者因子及び腫瘍因子(年齢、併存症、フレイル、薬物利用可能性、及び疾患の侵攻性の査定に基づく予後が挙げられるがこれらに限定されない)によって定められる。治療法への応答は一過性であり、患者のための、特に高齢者または新たに診断された患者及び併存症負荷の有る患者のための追加の治療法の選択肢についての継続的な探索を促す。
【0009】
CD38はMM細胞上で高発現され、他の造血細胞(リンパ性細胞及び骨髄性細胞等)においてより低レベルで発現される。骨髄腫細胞表面上の発現のこの高レベルは、適切な治療標的としてCD38を支持し、進行性の再発及び/または難治性多発性骨髄腫(RRMM)の患者のための単剤療法として2015年に最初の抗CD38薬(ダラツムマブ)の米国FDAの承認によって検証される。販売承認に後続して、進行度の低いRRMMの患者のために、そして幹細胞移植を受けることができないNDMMの患者のために、標準的な抗骨髄腫レジメンと組み合わせたダラツムマブの承認が続いた。最近、ボルテゾミブ、レナリドミド、及びデキサメタゾン(VRd)のレジメンに追加された全用量の静脈内(IV)のダラツムマブの安全性分析から、当該組み合わせが移植適格患者で忍容されることが実証された。単剤療法としてまたは併用でのダラツムマブの全用量は、以前のCD38指向性治療法を受けたことがない(naive to)患者において実証された活性が有り安全であることが示された。ダラツムマブ(単剤療法としてまたは標準的な抗骨髄腫レジメンと併用してのいずれかで)により報告された最も頻繁な有害反応(≧20%)は、注入に伴う反応(IRR)、好中球減少症、血小板減少症、疲労感、悪心、下痢、便秘、嘔吐、筋肉の痙攣、関節痛、背部疼痛、発熱、悪寒、めまい、不眠症、咳嗽、呼吸困難、末梢性浮腫、末梢性感覚ニューロパチー、及び上気道感染である。ダラツムマブは、すべての患者のおよそ半分において報告されたアナフィラキシー反応を含む、重症且つ重篤なIRRを引き起こし得る。加えて、ダラツムマブは赤血球(RBC)上のCD38に結合し、これは、最終のダラツムマブ注入後6か月間まで一貫して陽性の間接Coombs試験結果をもたらす作用メカニズムである。この結合は血清抗原をマスクし、したがって交差試験及び赤血球抗体スクリーニングを妨害し得る。
【0010】
モノクローナル抗体AB79はCD38へ高親和性で結合し、ダラツムマブとは異なる結合プロファイル及びユニークな薬力学的特徴を示す。予備的証拠から、AB79がダラツムマブよりも選択的あり、したがってより強力であり得ることが示唆される。健康な対象における第1相試験(試験AB79-101)において、AB79は、AB79の単回の0.06mg/kgのIV用量(0.1μg/mLの最高観察濃度(Cmax))を受けるすべての対象での末梢血及びナチュラルキラー(NK)細胞のレベルをベースラインから>90%低減させた(米国特許第8,362,211号;米国国際特許出願シリアル番号PCT/US2019/013547及びPCT/US2019/024431)。これとは対照的に、NK細胞の匹敵する枯渇は、最大24mg/kgの用量(>500μg/mLの平均Cmax)でRRMMの患者に投与されたIVダラツムマブにより達成されなかった。健康な対象において、SC送達されたAB79は、末梢血中の循環形質芽球のレベルも用量依存的方式で低減した。好中球、リンパ球、単球、RBC、及び血小板数はすべての用量のコホートについて正常な範囲内でとどまった。RRMM治験(試験AB79-1501)において、患者のコホートにわたって形質芽球の強力な低減が観察された。結果から、45mg~600mg(0.6mg~8mg/kgにほぼ同等)の用量のAB79のSCにより、末梢血形質芽球がベースラインから60%~95%低減することが示された。したがって、AB79は高レベルのCD38を発現する細胞を消失させることにより効率的であり得、それは、腫瘍細胞に対するより高い活性(例えば骨髄腫の患者の集団にわたって改善されたより深い奏効率)として現われ得るだろう。
【0011】
少量の薬物により所望される臨床応答を得ることができたので、AB79のSCのより高い効力についての追加の利益は、投与の利便性であろう。今日まで、他の抗CD38抗体(例えばダラツムマブ及びイサツキシマブ)は、IV注射として投与されなくてはならない。ダラツムマブのために承認された投与経路は、数時間にわたって与えられるIV注入であり、それは患者にとって好都合ではない。ダラツムマブの最初のIV注入は7~9時間(プレメディケーションのための時間を含む)かかり、後続する用量は1用量あたり4~6時間を要求し、注入反応があるならばより多くの時間が要求される。これに対処するために、皮下(SC)投与される、ヒトヒアルロニダーゼを含むダラツムマブの製剤を、臨床試験で調査中である。現在のところ臨床開発中であるダラツムマブのSC製剤は、15mLの組み換えヒトヒアルロニダーゼ酵素中の1800mgのダラツムマブからなり、この比較的大きな体積を格納するために皮下の空洞を生成することが要求され、シリンジを経由してこの製剤を投与するためにクリニックではおよそ3~5分間が要求される。ダラツムマブのSCによるIRRの全発生率は、IV投与によるものよりも低い(すべてのグレードで50%を超え、グレード3以上で9%ほどの発生率に比較して、報告された発生率は、すべてのグレードで16%、グレード3以上で8%であった)。注射部位反応(硬結、紅斑、変色、及び血腫からなる)も、患者の16.7%において報告された。グレード3及び4の治療下で発現した有害事象(TEAE)は、リンパ球減少症(20%)、ならびに血小板減少症、好中球減少症、及び高血圧(各々8%で)を含んでいた。顕著なことには、すべての患者はダラツムマブベースの治療法に応答するとは限らず、多くの患者が、最終的には、侵攻性及び高度に症候性の臨床徴候を特徴とする進行性疾患を発症する。
【0012】
これとは対照的に、最大600mgで投薬されたAB79のSCでは、IRRは観察されなかった。AB79は、ヒアルロニダーゼについての必要性無しに、300mg以下の用量で、1分未満続く継続期間でおよそ2mLの1回のSC注射として投与され得る。したがって、AB79による選択性の改善は、ダラツムマブのIVまたはSCにより報告されたものに比較して、改善された有効性及び忍容性の改善を導き、患者の利便性が向上し得る。
【0013】
骨髄腫の治療におけるAB79の初期の試験は有望に見えるが、他の治療法の不足及びMMの致命的な予後を考慮すると、より高い選択性、より高い効力、より少ない毒性、及び継続するための患者利便性の改善を備えて、すべての患者の臨床転帰を改善する新世代のCD-38の標的化療法を含む、新たな薬剤またはそれらの組み合わせについての必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0014】
複数の薬物の組み合わせはMMのフロントライン治療において重要であり、高い奏効率そしてPFS及びOSの延長を実証する。相乗的な非重複作用メカニズム(MOA)を提供する新たな薬物による利用可能なレジメンを促進することは、奏効率を改善して臨床的利益を改善し、次いでそれはPFS及びOSを改善し得る。新世代のCD38指向性薬剤は、疾患の進行を遅延させること、症状を救済すること、及びこの壊滅的で無慈悲な疾患に罹患した患者の生活の質(QOL)を促進することが要求される。
【0015】
CD38陽性血液癌を有する対象を治療する方法であって、抗CD38抗体またはその抗原結合断片を併用療法により投与することを含む前記方法が本明細書において提供される。
【0016】
一態様において、本発明は、CD38陽性血液癌を有する対象を治療する方法であって、治療有効量のa)抗CD38抗体、b)レナリドミド、及びc)コルチコステロイドを、CD38陽性血液癌を治療するのに十分な時間で対象へ投与することを含み、抗CD38抗体が、配列番号:3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号:5のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変重(VH)鎖領域;ならびに配列番号:6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変軽(VL)鎖領域を含む、前記方法を提供する。
【0017】
追加の態様において、本発明は、CD38陽性血液癌を有する対象を治療する方法であって、治療有効量のa)抗CD38抗体、b)ポマリドミド、及びc)コルチコステロイドを、CD38陽性血液癌を治療するのに十分な時間で対象へ投与することを含み、抗CD38抗体が、配列番号:3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号:4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号:5のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変重(VH)鎖領域;ならびに配列番号:6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号:7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号:8のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変軽(VL)鎖領域を含む、前記方法を提供する。
【0018】
さらなる態様において、本明細書において記載されるVH鎖領域は配列番号:9のアミノ酸配列を有し、本明細書において記載されるVL鎖領域は配列番号:10のアミノ酸配列を有する。
【0019】
追加の態様において、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号:12の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0020】
さらなる態様において、本明細書において記載される抗CD38抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプである。
【0021】
追加の態様において、本明細書において記載される抗CD38抗体は、IgG1アイソタイプである。
【0022】
さらなる態様において、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、完全にヒトである。
【0023】
追加の態様において、抗CD38抗体は、AB79である。
【0024】
さらなる態様において、本明細書において記載されるCD38陽性血液癌は、多発性骨髄腫である。
【0025】
追加の態様において、本明細書において記載されるCD38陽性血液癌は、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)または未治療の(naive)多発性骨髄腫である。
【0026】
さらなる態様において、本明細書において記載されるCD38陽性血液癌は、血液癌薬により以前に治療されていない。
【0027】
追加の態様において、本明細書において記載されるCD38陽性血液癌は、多発性骨髄腫薬により以前に治療されていない。
【0028】
さらなる態様において、本明細書において記載される対象は、難治性または再発多発性骨髄腫(RRMM)を有する。
【0029】
追加の態様において、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、2つの治療サイクルについて約300mgの用量で週1回、後続する4つの治療サイクルについて約300mgの用量で2週間に1回、及びその後は任意の治療サイクルについて約300mgの用量で4週間に1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0030】
さらなる態様において、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、皮下投与される。
【0031】
追加の態様において、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ヒアルロニダーゼの非存在下において投与される。
【0032】
さらなる態様において、本明細書において記載されるレナリドミドは、最大8つの治療サイクルについて、約2.5~約25mgの用量で各々の治療サイクルのうちの21日間毎日投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0033】
追加の態様において、本明細書において記載されるレナリドミドは、経口投与される。
【0034】
さらなる態様において、本明細書において記載されるポマリドミドは、最大8つの治療サイクルについて、治療有効量で各々の治療サイクルのうちの21日間毎日投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0035】
追加の態様において、本明細書において記載されるポマリドミドは、経口投与される。
【0036】
さらなる態様において、本明細書において記載されるコルチコステロイドは、デキサメタゾンである。
【0037】
追加の態様において、本明細書において記載されるデキサメタゾンは、1~8の治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0038】
さらなる態様において、本明細書において記載されるデキサメタゾンは、1~8の治療サイクルについて約40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0039】
追加の態様において、本明細書において記載されるデキサメタゾンは、経口投与または静脈内投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、各々の治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与される。
【0040】
さらなる態様において、本明細書において記載されるCD38陽性血液癌を有する対象を治療する方法は、治療有効量のボルテゾミブを投与することをさらに含む。
【0041】
追加の態様において、本明細書において記載されるボルテゾミブは、1~8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~1.3mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0042】
さらなる態様において、本明細書において記載されるボルテゾミブは、皮下投与される。
【0043】
追加の態様において、本発明は、本明細書において記載されるCD38陽性血液癌を有する対象を治療する方法であって、a)抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)レノリドミド(lenolidomide)が、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;c)コルチコステロイドが、1~8の治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルが28日間である、前記方法を提供する。
【0044】
さらなる態様において、本発明は、本明細書において記載されるCD38陽性血液癌を有する対象を治療する方法であって、a)抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)ポモリドミド(pomolidomide)が、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;c)コルチコステロイドが、1~8の治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルが28日間である、前記方法を提供する。
【0045】
追加の態様において、本発明は、本明細書において記載されるCD38陽性血液癌を有する対象を治療する方法であって、a)抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)レノリドミド(lenolidomide)が、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;c)コルチコステロイドが、1~8の治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルが28日間であり;治療有効量のボルテゾミブを投与することをさらに含む、前記方法を提供する。
【0046】
さらなる態様において、本明細書において記載されるボルテゾミブは、1~8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~1.3mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0047】
追加の態様において、本明細書において記載されるボルテゾミブは、各々の治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与される。
【0048】
さらなる態様において、本明細書において記載されるCD38陽性血液癌は、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)であり、対象は、幹細胞移植が初期の治療法として計画されない患者である。
【0049】
追加の態様において、本明細書において記載される対象は、各々の投薬日にAB79投与の開始の1~3時間前にプレメディケーションを受け、プレメディケーションは解熱物質及び抗ヒスタミン物質を含む。いくつかの実施形態において、解熱物質は、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、及びナプロキセンからなる群から選択される。
【0050】
さらなる態様において、本明細書において記載される解熱物質は、アセトアミノフェンであり、約650~1000mgの用量で経口投与される。いくつかの実施形態において、アセトアミノフェンは約650mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、アセトアミノフェンは約700mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、アセトアミノフェンは約750mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、アセトアミノフェンは約800mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、アセトアミノフェンは約850mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、アセトアミノフェンは約900mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、アセトアミノフェンは約950mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、アセトアミノフェンは約1000mgの用量で投与される。
【0051】
追加の態様において、本明細書において記載される抗ヒスタミン物質は、ジフェンヒドラミンまたは同等物であり、約25mg~50mgの用量で経口投与または静脈内投与される。いくつかの実施形態において、抗ヒスタミン物質は、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン(Chlor-Trimeton)、及びジフェンヒドラミンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、抗ヒスタミン物質は約25mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、抗ヒスタミン物質は約30mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、抗ヒスタミン物質は約35mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、抗ヒスタミン物質は約40mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、抗ヒスタミン物質は約45mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、抗ヒスタミン物質は約50mgの用量で投与される。
【0052】
さらなる態様において、本明細書において記載されるプレメディケーションは、モンテルカストまたは同等のロイコトリエン阻害物質をさらに含む。
【0053】
追加の態様において、本明細書において記載されるモンテルカストまたは同等のロイコトリエン阻害物質は、約5mg~15mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、モンテルカストまたは同等のロイコトリエン阻害物質は5mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、モンテルカストまたは同等のロイコトリエン阻害物質は10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、モンテルカストまたは同等のロイコトリエン阻害物質は15mgの用量で投与される。
【0054】
一態様において、本発明は、MMを治療する方法であって、治療有効量のAB79を、(a)レナリドミド及びデキサメタゾン、または(b)レナリドミド、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、MMを有する対象へ投与するステップを含む、前記方法を提供する。
【0055】
一態様において、本発明は、MMを治療する方法であって、治療有効量のAB79を、ポマリドミド及びデキサメタゾンと併用して、MMを有する対象へ投与するステップを含む、前記方法を提供する。
【0056】
一態様において、本発明は、MMを治療する方法であって、治療有効量のAB79を、(a)レナリドミド及びデキサメタゾン、または(b)レナリドミド、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、MMを有する対象へ皮下投与するステップを含む、前記方法を提供する。
【0057】
一態様において、本発明は、MMを治療する方法であって、治療有効量のAB79を、ポマリドミド及びデキサメタゾンと併用して、MMを有する対象へ皮下投与するステップを含む、前記方法を提供する。
【0058】
一態様において、抗CD38抗体は、ヒアルロニダーゼの非存在下において投与される。
【0059】
一実施形態において、CD38陽性血液癌は、多発性骨髄腫(MM)である。一実施形態において、CD38陽性血液癌は、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)または未治療の多発性骨髄腫である。一実施形態において、CD38陽性血液癌はNDMMであり、幹細胞移植は、CD38陽性血液癌を有する患者のための初期の治療法として計画されない。一実施形態において、CD38陽性血液癌は、難治性または再発多発性骨髄腫(RRMM)である。一実施形態において、CD38陽性血液癌は、血液癌薬により以前に治療されていない。一実施形態において、CD38陽性血液癌は、多発性骨髄腫薬により以前に治療されていない。
【0060】
一実施形態において、抗CD38抗体は、最初の2つの治療のサイクルについて約300mgの用量で週1回、後続する4つの治療サイクルについて約300mgの用量で2週間に1回、及びその後は任意の治療サイクルについて約300mgの用量で4週間に1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、抗CD38抗体は、皮下投与される。一実施形態において、抗CD38抗体は、AB79である。
【0061】
一実施形態において、レナリドミドは、最大8つの治療サイクルについて、約2.5~25mgの用量で各々の治療サイクルのうちの21日間毎日投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、レナリドミドは、最大8つの治療サイクルについて、約25mgの用量で各々の治療サイクルのうちの21日間毎日投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、レナリドミドは、経口投与される。
【0062】
一実施形態において、デキサメタゾンは、1~8の治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1つの治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、2つの治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、3つの治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、4つの治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、5つの治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、6つの治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、7つの治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルについて約20~40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、経口投与または静脈内投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルについて約20mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルについて約25mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルについて約30mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルについて約35mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルについて約40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルについて約20mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルについて約25mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルについて約30mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルについて約35mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルについて約40mgの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、経口投与または静脈内投与される。
【0063】
一実施形態において、本発明の方法は、治療有効量のボルテゾミブを投与することをさらに含む。一実施形態において、ボルテゾミブは、Velcade(登録商標)(Takeda)である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1~8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~1.3mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1~8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~1.3mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.8mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.9mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約1.0mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約1.1mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約1.2mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約1.3mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、皮下投与される。
【0064】
一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~0.9mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~1.0mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~1.1mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~1.2mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.7~1.3mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.8~1.0mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.8~1.1mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.8~1.2mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.8~1.3mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.9~1.1mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.9~1.2mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約0.9~1.3mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約1.0~1.2mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約1.0~1.3mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8の治療サイクルのうちの3週間について、約1.1~1.3mg/mの用量で週1回投与され、1つの治療サイクルは28日間である。いくつかの実施形態において、ボルテゾミブは、皮下投与される。
【0065】
一実施形態において、a)抗CD38抗体は、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)レノリドミド(lenolidomide)は、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;c)デキサメタゾンは、各々の1~8の治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1、2、3、4、5、6、7、または8つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、2つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、3つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、4つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、5つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、6つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、7つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0066】
一実施形態において、a)抗CD38抗体は、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)レノリドミド(lenolidomide)は、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;c)デキサメタゾンは、各々の1~8の治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、各々の1~8の治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1、2、3、4、5、6、7、または8つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、2つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、3つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、4つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、5つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、6つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、7つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、2つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、3つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、4つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、5つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、6つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、7つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、8つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、1つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、1つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、2つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、2つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、3つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、3つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、4つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、4つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、5つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、5つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、6つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、6つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、7つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、7つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、8つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、8つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0067】
一実施形態において、ポマリドミドは、最大8つの治療サイクルについて、治療有効量で各々の治療サイクルのうちの21日間毎日投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ポマリドミドは、経口投与される。
【0068】
一実施形態において、a)抗CD38抗体は、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)ポモリドミド(pomolidomide)は、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;c)コルチコステロイドは、1~8の治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、コルチコステロイドは、1つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、コルチコステロイドは、2つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、コルチコステロイドは、3つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、コルチコステロイドは、4つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、コルチコステロイドは、5つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、コルチコステロイドは、6つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、コルチコステロイドは、7つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、コルチコステロイドは、8つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0069】
一態様において、抗CD38抗体治療の投与は、グレード3または4の、貧血、溶血性貧血、好中球減少症、血小板減少症、疲労感、注入に伴う反応(IRR)、白血球減少症、及びリンパ球減少症からなる群から選択される、1つまたは複数の治療関連有害事象(TRAE)または治療下で発現した有害事象(TEAE)の60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の発生率をもたらす。TEAEは、原因に関係なく薬物の最終用量の約30日後までに観察または診断される有害事象である。TEAEは抗CD38抗体に関連しない疾患もしくは治療に関連する任意の根本原因を有し得るか、またはTEAEは特異的に抗CD38抗体に関連し得る。好適には、抗CD38抗体の投与は、グレード3または4の、貧血、溶血性貧血、血小板減少症、疲労感、注入に伴う反応(IRR)、白血球減少症、及びリンパ球減少症からなる群から選択される、1つまたは複数の治療下で発現した有害事象(TEAE)の30%未満の発生率をもたらし得る。
【0070】
一態様において、抗CD38抗体治療の投与は、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満のRBCの枯渇をもたらす。
【0071】
一態様において、抗CD38抗体治療の投与は、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の血小板の枯渇をもたらす。
【0072】
一態様において、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:9に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:10に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:9に少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:10に少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。好適には、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:9に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:10に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。好適には、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:9に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:10に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。好適には、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:9に少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:10に少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。好適には、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:9に少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:10に少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0073】
好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも80%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りは、配列番号:10に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも85%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りは、配列番号:10に少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも90%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りは、配列番号:10に少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも95%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りは、配列番号:10に少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも97%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りは、配列番号:10に少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも99%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りは、配列番号:10に少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0074】
一態様において、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:9のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換の有るそのバリアントを有し、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:10のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換の有るそのバリアントを有する。
【0075】
一態様において、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:9のアミノ酸配列を有し、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片は、配列番号:10のアミノ酸配列を有する。
【0076】
一態様において、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:11に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:12に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:11に少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:12に少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:11に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:12に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:11に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:12に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:11に少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:12に少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:11に少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:12に少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りは、配列番号:11に少なくとも80%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りは、配列番号:12に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りは、配列番号:11に少なくとも85%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りは、配列番号:12に少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りは、配列番号:11に少なくとも90%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りは、配列番号:12に少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りは、配列番号:11に少なくとも95%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りは、配列番号:12に少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りは、配列番号:11に少なくとも97%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りは、配列番号:12に少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りは、配列番号:11に少なくとも99%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りは、配列番号:12に少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0078】
一態様において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:11の重鎖アミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換の有るそのバリアント及び配列番号:12の軽鎖アミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換の有るそのバリアントを含む。
【0079】
一態様において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号:12の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0080】
一態様において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、完全にヒトである。別の態様において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化されている。別の態様において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、親和性成熟されている。
【0081】
一態様において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、溶血性貧血または血小板減少症を引き起こさない。
【0082】
一実施形態において、血液癌は、多発性骨髄腫(MM)である。一実施形態において、血液癌は、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)または未治療の多発性骨髄腫である。一実施形態において、血液癌は、再発または難治性多発性骨髄腫(RRMM)である。一実施形態において、本発明の方法は、MM、NDMM、もしくはRRMM、または患者が罹患している他のCD38関連障害の1つまたは複数の根本症状を有効に治療する。一実施形態において、血液癌はNDMMであり、幹細胞移植は、NDMMを有する患者のための初期の治療法として計画されない。
【0083】
一態様において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片の治療有効量は、約300ミリグラム(mg)の投薬量である。好適には、本発明は、300mgの単位投薬形態を提供する。
【0084】
一態様において、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:9に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:10に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:9に少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:10に少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:9に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:10に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:9に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:10に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:9に少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:10に少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:9に少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:10に少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る、単位投薬形態が提供される。
【0085】
好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りが、配列番号:9に少なくとも80%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りが、配列番号:10に少なくとも80%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りが、配列番号:9に少なくとも85%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りが、配列番号:10に少なくとも85%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りが、配列番号:9に少なくとも90%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りが、配列番号:10に少なくとも90%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りが、配列番号:9に少なくとも95%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りが、配列番号:10に少なくとも95%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りが、配列番号:9に少なくとも97%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りが、配列番号:10に少なくとも97%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体のVH鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りが、配列番号:9に少なくとも99%の配列同一性を有し、抗CD38抗体のVL鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、VL配列の残りが、配列番号:10に少なくとも99%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。
【0086】
一態様において、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:9のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換の有るそのバリアントを有し、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:10のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換の有るそのバリアントを有する、単位投薬形態が提供される。
【0087】
一態様において、抗CD38抗体のVH鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:9のアミノ酸配列を有し、抗CD38抗体のVL鎖領域またはその抗原結合断片が、配列番号:10のアミノ酸配列を有する、単位投薬形態が提供される。
【0088】
一態様において、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:11に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖が、配列番号:12に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:11に少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:12に少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:11に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:12に少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:11に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:12に少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:11に少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:12に少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:11に少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:12に少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、単位投薬形態が提供される。
【0089】
好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りが、配列番号:11に少なくとも80%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りが、配列番号:12に少なくとも80%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りが、配列番号:11に少なくとも85%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りが、配列番号:12に少なくとも85%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りが、配列番号:11に少なくとも90%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りが、配列番号:12に少なくとも90%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りが、配列番号:11に少なくとも95%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りが、配列番号:12に少なくとも95%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りが、配列番号:11に少なくとも97%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りが、配列番号:12に少なくとも97%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。好適には、抗CD38抗体の重鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖配列の残りが、配列番号:11に少なくとも99%の配列同一性を有し、抗CD38抗体の軽鎖またはその抗原結合断片が、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖配列の残りが、配列番号:12に少なくとも99%の配列同一性を有し得る、単位投薬形態が提供される。
【0090】
一態様において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、配列番号:11の重鎖アミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換の有るそのバリアント及び配列番号:12の軽鎖アミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換の有るそのバリアントを含む、単位投薬形態が提供される。
【0091】
一態様において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、配列番号:11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号:12の軽鎖アミノ酸配列を含む、単位投薬形態が提供される。
【0092】
一態様において、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、薬学的に許容される組成物の形態で投与される、単位投薬形態が提供される。好適には、薬学的に許容される組成物は、皮下投与に好適である。
【0093】
一態様において、単位投薬形態は、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、及びBurkittリンパ腫からなる群から選択される血液癌の治療における、抗体またはその抗原結合断片の皮下投与のために製剤化される。
【0094】
一態様において、血液癌は、多発性骨髄腫(MM)である。一実施形態において、血液癌は、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)または未治療の多発性骨髄腫である。一実施形態において、血液癌は、再発または難治性多発性骨髄腫(RRMM)である。
【0095】
一態様において、治療法における使用のためのヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片が提供され、抗体またはその抗原結合断片は投与後に有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさず、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、約300ミリグラムの投薬量で皮下投与される。好適には、投与後に有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさないヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、本明細書において定義される抗CD38抗体またはその抗原結合断片であり得る。
【0096】
一態様において、単離された抗体またはその抗原結合断片を含む単位投薬形態が提供され、それは投与後に有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさず、単位投薬形態は、約300ミリグラムの投薬量での抗体またはその抗原結合断片の皮下投与のために製剤化される。
【0097】
一態様において、治療法における使用のための本明細書において定義されるヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片が提供され、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は皮下投与のために製剤化される。好適には、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、皮下投与される。
【0098】
一態様において、CD38への結合が示される疾患の治療における使用のための本明細書において定義されるヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片が提供され、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は皮下投与のために製剤化される。好適には、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、皮下投与される。
【0099】
一態様において、投与される抗CD38抗体またはその抗原結合断片及びデキサメタゾンの投薬は、本明細書において記載される(a)レノリドミド(lenolidomide)、(b)レノリドミド(lenolidomide)及びボルテゾミブ、または(c)ポモリドミド(pomolidomide)と併用して、毎週の投薬である。一態様において、本明細書において記載される投与された抗CD38抗体またはその抗原結合断片の投薬は、隔週の投薬である。一態様において、本明細書において記載される投与された抗CD38抗体またはその抗原結合断片の投薬は、4週間に1回の投薬である。
【0100】
好適には、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、約300ミリグラムの抗体の投薬量で投与され得る。好適には、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、皮下投与のために製剤化され得る。好適には、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、約300ミリグラムの抗体の投薬量での皮下投与のために製剤化され得る。
【0101】
一態様において、血液癌の治療における使用のための本明細書において定義されるヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片が提供され、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は皮下投与のために製剤化され、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、約300ミリグラムの抗体の投薬量で投与される。好適には、ヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、皮下投与され得る。
【0102】
好適には、血液癌は、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、またはBurkittリンパ腫であり得る。
【0103】
一実施形態において、血液癌は、多発性骨髄腫(MM)である。一実施形態において、血液癌は、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)または未治療の多発性骨髄腫である。一実施形態において、血液癌は、再発または難治性多発性骨髄腫(RRMM)である。
【0104】
これら及び他の実施形態、特色、及び可能性のある利点は、以下の記載を参照して明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0105】
序論
活動性疾患の患者の血管中で、骨髄腫細胞よりもRBC上で約36倍多くCD38分子が発現される。したがって、例えば、CD38のオフターゲット発現は、未結合抗体が骨髄の中へ通過し、骨髄腫細胞上で発現されるCD38を飽和させることができる前に、飽和させる必要があり得る。このことは、なぜ、RBC及び血小板へ強く結合する当技術分野における他の抗CD38抗体(ダラツムマブ及びイサツキシマブ等)が有効性を達成するには、高用量の全身投与を要求するのかを説明し得る。
【0106】
AB79、ダラツムマブ、イサツキシマブ、及びMOR202は、主として抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)によって腫瘍を殺傷する抗CD38のIgG1抗体である。このメカニズムは、エフェクター細胞(NK細胞等)が、標的細胞上の抗体を結合し、集中した方式で細胞傷害因子(cytotoxic agent)を分泌して溶解性シナプスを形成することを要求する。血液中のこれらのエフェクター細胞の頻度は、RBC及び血小板よりも何桁も低い。例えば、血液中のRBC対NK細胞の比は20,000:1である。したがって、エフェクター細胞が主としてRBC及び血小板へ結合した抗CD38抗体によって結合されるので、ダラツムマブ、イサツキシマブ、及びMOR202についてのエフェクター活性は腫瘍からそらされ、腫瘍との溶解性シナプスの形成を防止し、それはADCCの低効率をもたらす。
【0107】
RBC及び血小板へ結合する抗CD38抗体による患者の治療は、生命を脅かす副作用をもたらし得る。例えば、ある試験において、MOR202による再発または難治性多発性骨髄腫の治療は、複数の重篤な治療関連有害事象またはTEAEをもたらした(例えばRaab et al.(2015)Blood 126:3035を参照)。任意のグレードで最も一般的なTEAEは、貧血(15名の患者、34%)、疲労感(14名の患者、32%)、注入に伴う反応(IRR)及び白血球減少症(各々13名の患者、30%)、リンパ球減少症及び悪心(各々11名の患者、25%)であった。グレード≧3のTEAEは28名の患者(64%)で報告され、最も一般的なものとしては、リンパ球減少症(8名の患者、18%)、白血球減少症(5名の患者、11%)、及び高血圧(4名の患者、9%)が含まれていた。IRRは主に最初の注入の間に生じ、すべては、1名の患者(グレード3)を除いてグレード1~2であった。感染は一般的には報告された(26名の患者、59%)が、大多数の事例において治療関連であるとは判断されなかった。MOR202は、IV注入を経由してのみで臨床的に使用されている。
【0108】
CD38を標的化する他のMorphosys抗体が公知である(例えばWO2006/125640を参照、それは4つのヒト抗体:MOR03077、MOR03079、MOR03080、及びMOR03100、ならびに2つのマウス抗体:OKT10及びIB4を開示する)。これらの先行技術抗体は、様々な理由のために、本発明に従う使用のための抗体(例えばAB79)より劣っている。MOR03080は、ヒトCD38及びカニクイザルCD38へ結合するが、ヒトCD38へは低い親和性である(Biacore K=27.5nm)。OKT10は、ヒトCD38及びカニクイザルCD38へ結合するが、ヒトCD38へは低い/中程度の親和性である(Biacore K=8.28nm)。MOR03079は、高い親和性でヒトCD38へ結合する(Biacore K=2.4nm)が、カニクイザルCD38へ結合しない。MOR03100及びMOR03077は、中程度または低い親和性でヒトCD38へ結合する(それぞれ、Biacore K=10nm及び56nm)。比較すると、本発明に従う使用のための抗体(例えばAB79)は、ヒト及びカニクイザルCD38へ結合し、ヒトCD38へは高親和性である(Biacore K=5.4nm)。さらに、先行技術抗体は、ADCCそしてCDCの活性が不十分である。
【0109】
より効率的なADCCの利点は、低体積の注射として抗CD38治療物質を送達する能力である。本発明に従う使用のための抗体(例えばAB79)が、100mg/mLの濃度で製剤化されるならば、80kgの骨髄腫患者のための有効用量は、<1.0mLの単回皮下注射として投与され得る。これとは対照的に、匹敵する形態でこの患者へと送達された有効用量のダラツムマブまたはイサツキシマブ(すなわち100mg/mL)は、それぞれ12.8mLまたは8~16mL投与することを要求するだろう。
【0110】
抗CD38の方法及び単位投薬量は、治療有効用量の抗CD38抗体またはその抗原結合断片を、(a)レノリドミド(lenolidomide)、(b)レノリドミド(lenolidomide)及びボルテゾミブ、または(c)ポモリドミド(pomolidomide)と併用して、皮下投与することを本明細書において提供し、それによって予想外の利益を提供し、高用量全身性抗CD38抗体療法の投与の副作用、不便、及び費用を防止する。
【0111】
本発明は、治療有効量の単離された抗CD38抗体またはその抗原結合断片をそれを必要とする患者へ皮下投与して、CD38への結合が示される疾患(血液癌を包含する)を治療するための方法及び単位投薬形態を提供する。いくつかの実施形態において、皮下投与のための抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:9(またはそれに少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、または99%の配列同一性)を備えた配列)を含む重鎖可変領域、及び配列番号:10(またはそれに少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、または99%の配列同一性を備えた配列)を含む軽鎖可変領域を含む。本明細書において提供される抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、皮下投与によって投与された場合に、治療的に有効であることが可能である。
【0112】
レナリドミド(LEN)は、多発性骨髄腫の治療のためにCelgeneによってRevlimidとして現在市販される。レナリドミドは腫瘍細胞へ細胞傷害性であり、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、腫瘍細胞上のCD38発現をアップレギュレートする。レナリドミドはサリドマイド類似体であり、したがって他のサリドマイド類似体(ポマリドミドまたはサリドマイドそれ自体等)は、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片と併用して使用される場合に、有効であり得ることが予想される。
【0113】
ポマリドミド(POM)は、米国においてCelgeneによってPomalystならびにEU及びロシアにおいてCelgeneによってImnovidとして現在市販される。
【0114】
デキサメタゾン(DEX)は、レナリドミド及びポマリドミドとの相乗作用を示してMM腫瘍増殖を阻害するコルチコステロイドである。デキサメタゾンは、抗炎症物質及び免疫抑制物質として含まれて多くの病態の治療において使用され、抗腫瘍治療の特定の副作用を打ち消すためにがん治療において使用される。
【0115】
ボルテゾミブ(元々はPS-341;Takeda OncologyによってVelcade(VEL);CytogenによってChemobort、及びCadila HealthcareによってBortecadとして市販)は、プロテアソーム阻害物質として作用するボロン酸ペプチド(peptide boronate)クラスの化学療法剤である。他の複数のクラスのプロテアソーム阻害物質が公知である。ボロン酸ペプチドは、再発多発性骨髄腫の治療のために米国において承認されている。別のボロン酸ペプチドはCEP-18770である。他のクラスのプロテアソーム阻害物質としては、ペプチドアルデヒド(例えばMG132)、ペプチドビニルスルホン、ペプチドエポキシケトン(例えばエポキソミシン、カルフィルゾミブ)、βラクトン阻害物質(例えばラクタシスチン、MLN 519、NPI-0052、サリノスポラミドA)、金属(例えばジスルフラム(disulfuram))及び特定の抗酸化物質であるカテキン-3-ガリウム酸塩(例えばエピガロカテキン-3-ガリウム酸塩)とのジチオカルバメート錯体を生成する化合物、ならびにサリノスポラミドAが挙げられる。別のプロテアソーム阻害物質(イキサゾミブ)は、少なくとも1つの前治療後の多発性骨髄腫の治療のために、レナリドミド及びデキサメタゾンと併用する使用について、2015年にFDAによって承認された。
【0116】
本明細書において別段定義されない限り、本発明と関連して使用される科学用語及び専門用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。当該用語の意味及び範囲は明らかであろう。しかしながら、任意の潜在的な曖昧さのある事象において、本明細書において提供される定義が任意の辞書または外部定義よりも優先される。さらに、別段文脈によって要求されない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。「または」という用語は、別段明記されない限り「及び/または」を包含する。さらに、「包含すること(including)」、「包含する(includes)」、または「包含される(included)」という用語の使用は、限定的ではない。「要素」及び「構成要素」等の用語は、別段具体的に明記されない限り、1つの単位を含む要素及び構成要素ならびに2つ以上のサブ単位を含む要素及び構成要素の両方を網羅する。
【0117】
概して、本明細書において記載される、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質及び核酸の化学及びハイブリダイゼーションと関連して使用される命名法及びそれらの技法は、当技術分野において周知であり、一般的に使用される。本発明の方法及び技法は、別段の指示のない限り、概して、当技術分野において周知の従来の方法に従って、ならびに本明細書を通して引用され論じられる様々な一般的且つより具体的な参照文献中で記載されるように、遂行される。酵素反応及び精製技法は、当技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書において記載されるように、製造者の仕様書に従って遂行される。本明細書において記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医用化学及び医薬品化学に関連して使用される命名法、ならびにそれらの実験室での手順及び技法は、当技術分野において周知であり一般に使用されるものである。標準的な技法は、化学合成、化学分析、医薬品調製、製剤化、送達、及び患者の治療のために使用される。
【0118】
すべての見出し及びセクションの名称は、明瞭性及び参照目的のためのみに使用され、多少なりとも限定的であると判断されるべきではない。例えば、当業者は、本明細書において記載される本発明の趣旨及び範囲に従って、必要に応じて、異なる見出し及びセクションからの本開示の様々な態様を組み合わせることが有用であることを認識するであろう。
【0119】
定義
選択した用語は、本発明がより容易に理解されるために以下で定義される。
【0120】
「ヒトCD38」及び「ヒトCD38抗原」という用語は、本明細書において定義される配列番号:1のアミノ酸配列、またはその機能的画分(エピトープ等)を指す(表1)。概して、CD38は、短い細胞質内テイル、膜貫通ドメイン、及び細胞外ドメインを保持する。「カニクイザルCD38」及び「カニクイザルCD38抗原」という用語は、配列番号:2のアミノ酸配列を指し、それはヒトCD38のアミノ酸配列に92%同一である(表1)。CD38についての同義語としては、サイクリックADPリボースヒドロラーゼ;サイクリックADPリボース-ヒドロラーゼ1;ADPリボシルシクラーゼ;ADP-リボシルシクラーゼ1;cADPrヒドロラーゼ1;CD38-rs1;I-19;NIM-R5抗原;2’-ホスホ-サイクリック-ADP-リボーストランスフェラーゼ;2’-ホスホ-ADP-リボシルシクラーゼ;2’-ホスホ-サイクリック-ADP-リボーストランスフェラーゼ;2’-ホスホ-ADP-リボシルシクラーゼ;T10が挙げられる。
【0121】
【表1】
【0122】
「治療有効量」及び「治療有効投薬量」という用語は、所望される治療結果を達成するのに必要な投薬量で及び期間で、障害または1つもしくは複数のその症状の重症度及び/または継続期間を低減または寛解するか;障害の進行を防止するか;障害の退行を引き起こすか;障害に付随する1つまたは複数の症状の再発、発症、開始、または進行を防止するか;あるいは、別の治療法(例えば予防剤または治療剤)の予防的または治療的な効果(複数可)を促進または改善するのに十分な治療法の量を指す。治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び重量、ならびに医薬品が個体において所望される応答を惹起する能力等の因子に従って変動し得る。抗体の治療有効量は、抗体または抗体部分の任意の毒性または損傷効果を治療的に有益な効果が上回るものである。腫瘍治療のための抗体の治療有効量は、疾患の進行を安定化する能力によって測定され得る。化合物ががんを阻害する能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系で評価され得る。「単位用量」または「投薬形態」という用語は、単回用量で患者へ投与される医薬物の量である。投薬形態は、使用のために市販される形態の医薬製剤であり、特定の外形(例えばカプセルシェル等)中での活性成分及び不活性構成要素(賦形剤)の特異的な混合により、特定の用量へと配分されている。
【0123】
「患者」及び「対象」という用語は、ヒト及び他の動物(特に哺乳動物)の両方を包含する。したがって、本明細書において開示される組成物、投薬量、及び方法は、ヒト及び獣医学分野の治療法の両方へ適用可能である。一実施形態において、患者は、哺乳動物、例えばヒトである。
【0124】
「CD38への結合が示される疾患」という用語は、CD38への結合パートナー(例えば本発明の抗CD38抗体)の結合が、予防的または治癒的な効果(疾患の1つまたは複数の症状の寛解を包含する)を提供する疾患を意味する。かかる結合は、CD38についての他の因子もしくは結合パートナーのブロッキング、CD38の中和、ADCC、CDC、補体活性化、または疾患が予防もしくは治療される他のいくつかのメカニズムをもたらし得る。CD38についての因子及び結合パートナーとしては、CD38への自己抗体(それは本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片によってブロックされる)が挙げられる。かかる結合は、細胞または細胞のサブセット(例えばMM細胞)によるCD38の発現の結果として示され、それによって、CD38の結合パートナーの対象への提供は、例えば溶血またはアポトーシスを経由してそれらの細胞の除去(例えば溶解)をもたらす。CD38のかかる発現は、正常な細胞に比べて、または非疾患状態もしくは疾患状態のいずれかの間の他の細胞型に比べて、例えば正常であるか、過剰発現されるか、不適切に発現されるか、またはCD38の活性化の帰結であり得る。
【0125】
「血液癌」という用語は、造血組織の悪性新生物を指し、白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫を網羅する。異常なCD38発現に付随する病態の非限定例としては、多発性骨髄腫;B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL);急性リンパ芽球性白血病;慢性骨髄性白血病;急性骨髄性白血病;慢性リンパ球性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(myelogenous leukemia)または慢性骨髄性白血病(myeloid leukemia)(CML);急性骨髄性白血病(myelogenous leukemia)または急性骨髄性白血病(myeloid leukemia)(AML);急性リンパ球性白血病(ALL);有毛細胞性白血病(HCL);骨髄異形成症候群(MDS);ならびにこれらの白血病及び他の血液病のすべてのサブタイプ及びステージ(例えばCMLの芽球期(BP)、慢性期(CP)、または加速期(AP))、が挙げられるがこれらに限定されず、これらは当業者への周知の、形態的、組織化学的、及び免疫学的な技法によって定義される。
【0126】
「単離された抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的に無い抗体またはその抗原結合断片を指す。例えば、CD38へ特異的に結合する単離された抗体は、CD38以外の抗原を特異的に結合する抗体が実質的に無い。しかしながら、ヒトCD38またはカニクイザルCD38のエピトープ、アイソフォーム、またはバリアントへ特異的に結合する単離された抗体は、例えば他の種からの他の関連する抗原(CD38種のホモログ等)への交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、他の細胞材料及び/または化学物質が実質的に無いか、あるいは、抗体が産生された系の他の構成要素(組み換え細胞等)から実質的に分離及び/または精製された抗体の均一な集団であり得る。
【0127】
「組み換え抗体」という用語は、組み換え手段によって調製されるか、発現されるか、生成されるか、または単離される抗体を指し、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子についての遺伝子導入動物もしくは染色体導入動物(例えばマウス)またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体;抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体;コンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体;及び他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを伴う任意の他の手段によって生成された抗体、またはインビトロで生成された抗体等である。
【0128】
「赤血球(red blood cell)」、「RBC」、及び「赤血球(erythrocyte)」という用語は、細胞及び組織へ酸素を運搬し、二酸化炭素を呼吸器系へ戻して運搬する、骨髄由来ヘモグロビン含有血液細胞を指す。RBCは、赤血球(red cell)、赤血球(red blood corpuscle)、赤血球(haematids)、及び赤血球系細胞とも称される。
【0129】
「ある期間にわたって」という用語は、任意の期間(例えば分、時間、日、月、または年)を指す。例えば、ある期間にわたっては、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも75分間、少なくとも90分間、少なくとも105分間、少なくとも120分間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも1か月、少なくとも1年、またはその間の任意の時間を指し得る。換言すれば、組成物からの抗体は、それが、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも75分間、少なくとも90分間、少なくとも105分間、少なくとも120分間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも1か月、少なくとも1年、またはその間の任意の時間の期間にわたって投与される個体によって吸収され得る。
【0130】
「治療サイクル」という用語は、薬物または薬物の組み合わせによる治療、続いて薬物のうちの1つまたは複数の休止期間(すなわち治療は無い)の期間を指す。典型的な治療サイクルは、28日間であるだろうが変動し得る。サイクルを規則的なスケジュールで複数回反復して、治療の全経過を構成することができる。治療の経過は4~8のサイクルであり得、患者の反応に依存して切り上げられるかまたは延長され得る。
【0131】
構成要素を「実質的に」含む組成物は、当該組成物が約80重量%超の構成要素を含有することを意味する。好適には、組成物は、約90重量%超の構成要素を含み得る。好適には、組成物は、約95重量%超の構成要素を含み得る。好適には、組成物は、約97重量%超の構成要素を含み得る。好適には、組成物は、約98重量%超の構成要素を含み得る。好適には、組成物は、約99重量%超の構成要素を含み得る。
【0132】
「約」という用語は、10%までの大きさのみのマイナーな変動の有る、数、度、体積、時間などにおける近傍の程度を指す。したがって、「約」という用語は、規定された値から±10%以下の変動、±5%以下の変動、±1%以下の変動、±0.5%以下の変動、または±0.1以下%の変動を網羅するように使用される。
【0133】
「薬学的に許容される担体」という用語は、本発明の化合物の哺乳動物への投与のために好適な、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを指す。担体としては、対象化合物を1つの器官または身体の部分から別の器官または身体の部分へ運搬または輸送することに関与する、液体もしくは固体の充填物質、希釈物質、賦形剤、溶媒、またはカプセル化材料が挙げられる。各々の担体は、製剤の他の成分と適合性があり且つ患者へ有害でないという意味で「許容され」なくてはならない。一実施形態において、薬学的に許容される担体は、静脈内投与に好適である。別の実施形態において、薬学的に許容される担体は、局所領域の注射に好適である。別の実施形態において、薬学的に許容される担体は、皮下投与に好適である。別の実施形態において、薬学的に許容される担体は、皮下注射に好適である。
【0134】
「医薬組成物」という用語は、対象への投与及び疾患の治療に好適な調製物を指す。本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、哺乳動物(例えばヒト)へ医薬品として投与される場合に、それらは、「そのまま」で、あるいは薬学的に許容される担体及び/または他の賦形剤と併用して抗CD38抗体またはその抗原結合断片を含有する医薬組成物として、投与され得る。医薬組成物は、特定の濃度、特定の量、または特定の体積で、特定の投薬量の抗CD38抗体またはその抗原結合断片を投与するための単位投薬形態の形態であり得る。抗CD38抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物は、単独で、あるいは予防剤、治療剤、及び/または薬学的に許容される担体と併用してのいずれかで、提供される。好適には、医薬組成物は、単独で、あるいは予防剤、治療剤、及び/または薬学的に許容される担体と併用してのいずれかで、本発明に従う単位投薬形態を含み得る。好適には、医薬組成物は、単独で、あるいは予防剤、治療剤、及び/または薬学的に許容される担体と併用してのいずれかで、本明細書において記載されるヒト抗CD38抗体またはその抗原結合断片を含み得る。
【0135】
「と併用して」は、混合物で、単一薬剤として同時に、または任意の順序で単一薬剤として連続して、2つ以上の治療物質が一緒に対象へ投与され得ることを意味する。各々の治療物質の投与モードは変動し、例えば三重併用療法において、1つの治療物質は皮下投与され、1つは経口投与され、1つは静脈内投与され得る。
【0136】
従来の抗体構造単位は、典型的には四量体を含む。各々の四量体は、典型的には、2つの同一ペアのポリペプチド鎖から構成され、各々のペアは、1つの「軽」鎖(典型的には約25kDaの分子量を有する)及び1つの「重」鎖(典型的には約50~70kDaの分子量を有する)を有する。ヒト軽鎖は、κ軽鎖及びλ軽鎖として分類される。重鎖はμ、δ、γ、α、またはεとして分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして抗体のアイソタイプを定義する。IgGは複数のサブクラスを有し、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4が挙げられるがこれらに限定されない。IgMはサブクラスを有し、IgM1及びIgM2が挙げられるがこれらに限定されない。したがって、「アイソタイプ」は、それらの定常領域の化学的特徴及び抗原性特徴によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちの任意のものを指す。既知のヒト免疫グロブリンアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM1、IgM2、IgD、及びIgEである。治療抗体は、アイソタイプ及び/またはサブクラスのハイブリッドも含み得る。
【0137】
各々の可変重鎖(VH)領域及び可変軽鎖(VL)領域(長さで約100~110のアミノ酸)は、以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4で、アミノ末端からカルボキシ末端へアレンジされた、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域及び4つのフレームワーク領域(FR)(長さで約15~30のアミノ酸)からなる。「可変」は、CDRが抗体の中でも配列で大規模に異なり、それによってユニークな抗原結合部位を決定するという事実を指す。
【0138】
超可変領域は、概して、軽鎖可変領域中のおよそのアミノ酸残基24~34(LCDR1;「L」は軽鎖を表わす)、50~56(LCDR2)、及び89~97(LCDR3)、ならびに重鎖可変領域中のおよそ31~35B(HCDR1;「H」は重鎖を表わす)、50~65(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)付近からのアミノ酸残基(Kabat et al.(1991)Sequences Of Proteins Of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD)、及び/または超可変ループを形成する残基(例えば軽鎖可変領域中の残基26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)、及び91~96(LCDR3)、ならびに重鎖可変領域中の26~32(HCDR1)、53~55(HCDR2)、及び96~101(HCDR3)(Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917)を網羅する。
【0139】
Kabatのナンバリングシステムは、概して、可変ドメイン中の残基(およそ、軽鎖可変領域の残基1~107及び重鎖可変領域の残基1~113)を参照する場合に、Fc領域について使用されるEUのナンバーシステムと共に、使用される(例えばKabat et al.(1991)Sequences Of Proteins Of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD)。
【0140】
「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」という用語は、別個の三次構造を有する免疫グロブリンの領域を指す。可変ドメインに加えて、各々の重鎖及び軽鎖は、定常ドメイン:定常重鎖(CH)ドメイン;定常軽鎖(CL)ドメイン、及びヒンジドメインを有する。IgG抗体のコンテキストにおいて、IgGアイソタイプは各々3つのCH領域を有する。各々のHC及びLCのカルボキシ末端部分は、主としてエフェクター機能のための役割を担う定常領域を定義する。したがって、IgGのコンテキストにおける「CH」ドメインは、以下の通りである。「CH1」は、KabatのEUインデックスに従って位置118~220を指す。「CH2」は、KabatのEUインデックスに従って位置237~340を指し、「CH3」は、KabatのEUインデックスに従って位置341~447を指す。
【0141】
「ヒンジ領域」という用語は、抗体の第1の定常ドメインと第2の定常ドメインとの間のアミノ酸を含む、柔軟なポリペプチドを指す。構造的に、IgG CH1ドメインはEU位置220で終了し、IgG CH2ドメインは残基EUの位置237で開始する。したがって、IgGについては、抗体ヒンジは、位置221(IgG1においてD221)~236(IgG1においてG236)を含むように本明細書において定義され、ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う。いくつかの実施形態において、例えばFc領域のコンテキストにおいて、下部ヒンジが含まれ、概して「下部ヒンジ」は位置226~230を指す。
【0142】
「Fc領域」という用語36は、第1の定常領域Igドメイン及びいくつかの事例においてヒンジの一部分を除外した、抗体の定常領域を含むポリペプチドを指す。したがって、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域Igドメイン、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域Igドメイン、ならびにこれらのドメインのN末端の柔軟なヒンジを指す。IgA及びIgMについては、FcはJ鎖を含み得る。IgGについては、Fcドメインは、IgドメインCγ2及びCγ3(Cγ2及びCγ3)、ならびにCγ1(Cγ1)とCγ2(Cγ2)との間の下部ヒンジ領域を含む。Fc領域の境界は変動し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、そのカルボキシル末端に残基C226またはP230(ナンバリングはKabatのEUインデックスに従う)を含むものと定義される。いくつかの実施形態において、より完全に以下に記載されるように、アミノ酸修飾は、例えば1つまたは複数のFcγR受容体またはFcRn受容体への結合を変更するために、Fc領域へ作製される。
【0143】
「ヒト化抗体」という用語は、抗原結合部位が非ヒト種からの抗体配列に由来し、フレームワーク及び定常領域はヒト抗体配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体はフレームワーク領域中で置換を含み得るので、フレームワークは、発現されるヒト抗体または生殖細胞系列遺伝子配列の正確なコピーでなくてもよい。ヒト化抗体を参照して「~に由来する」という用語は、問題になっているIgドメインが、それが参照する種からの抗体の配列に少なくとも80%同一であることを意味する。
【0144】
「ヒト抗体」という用語は、抗原結合部位(フレームワーク領域)及び定常領域の両方がヒト起源の配列に由来する抗体を参照し、例えば抗体の可変領域が、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子または再構成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られるならば、それらはヒト起源の配列「に由来する」。かかる系としては、ファージ上に提示されるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリー、及び遺伝子導入非ヒト動物(本明細書において記載されるヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するマウス等)が挙げられる。「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列または再構成された免疫グロブリン配列に比較した場合に、例えばフレームワークまたは抗原結合部位中の天然に存在する体細胞突然変異または意図的な置換の導入に起因して、アミノ酸差異を含有し得る。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子または再構成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされたアミノ酸配列に、アミノ酸配列で少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。
【0145】
CD38抗体
したがって、本発明は、皮下投与方法及び単位投薬形態での使用を見出すヒト及び霊長動物のCD38タンパク質を特異的に結合する、単離された抗CD38抗体及びその抗原結合断片を提供する。本発明において特に使用されるものは、ヒトCD38タンパク質及び霊長動物CD38タンパク質の両方、特にカニクイザル(cynomolgus monkey)(Macaca fascicularis、カニクイザル(Crab eating macaque)、また本明細書において「カニクイザル(cyno)」と称される)等の臨床試験において使用される霊長動物のものへ結合する抗体またはその抗原結合断片である。
【0146】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、多数のアミノ酸残基でCD38と相互作用し、ヒト配列ナンバリングに基づいて、K121、F135、Q139、D141、M142、E239、W241、S274、C275、K276、F284、V288、K289、N290、P291、E292、D293、及びS294が挙げられる。好適には、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、多数のアミノ酸残基でCD38と相互作用し、ヒト配列ナンバリングに基づいて、配列番号:1のK121、F135、Q139、D141、M142、E239、W241、S274、C275、K276、F284、V288、K289、N290、P291、E292、D293、及びS294が挙げられ得る。好適には、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、多数のアミノ酸残基でCD38と相互作用し、配列番号:2のK121、F135、Q139、D141、M142、E239、W241、F274、C275、K276、F284、V288、K289、N290、P291、E292、D293、及びS294が挙げられる。これらの残基は、S274が実際はカニクイザル中のF274であるという例外を除いて、両方のヒト及びカニクイザルにおいて同一であることに注目されたい。これらの残基は、特異的抗原結合ペプチドのフットプリント内の免疫優性なエピトープ及び/または残基を表わし得る。
【0147】
いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:GFTFDDYG(配列番号:3;HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号:4;HCDR2 AB79)、及びARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号:5;HCDR3 AB79)、または最大3つのアミノ酸変化を有する配列のバリアントを含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:SSNIGDNY(配列番号:6;LCDR1 AB79)、RDS(配列番号:7;LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号:8;LCDR3 AB79)、または最大3つのアミノ酸変化を有する配列のバリアントを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:GFTFDDYG(配列番号:3;HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号:4;HCDR2 AB79)、ARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号:5;HCDR3 AB79)、または最大3つのアミノ酸変化を有する配列のバリアントを含む重鎖、ならびに以下のCDRアミノ酸配列:SSNIGDNY(配列番号:6;LCDR1 AB79)、RDS(配列番号:7;LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号:8;LCDR3 AB79)、または最大3つのアミノ酸変化を有する配列のバリアントを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:GFTFDDYG(配列番号:3;HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号:4;HCDR2 AB79)、及びARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号:5;HCDR3 AB79)を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:SSNIGDNY(配列番号:6;LCDR1 AB79)、RDS(配列番号:7;LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号:8;LCDR3 AB79)を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:GFTFDDYG(配列番号:3;HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号:4;HCDR2 AB79)、ARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号:5;HCDR3 AB79)を含む重鎖、ならびに以下のCDRアミノ酸配列:SSNIGDNY(配列番号:6;LCDR1 AB79)、RDS(配列番号:7;LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号:8;LCDR3 AB79)を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:9に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖を含む。好適には、VH鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:9に少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0148】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:9の可変重(VH)鎖アミノ酸配列を含む重鎖を含む。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSDISWNGGKTHYVDSVKGQFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSLFHDSSGFYFGHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLA(配列番号:9)。
【0149】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:10に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。好適には、VL鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:10に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、VL鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:10に少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VL鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:10に少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、VL鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:10に少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、VL鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:10に少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、VL鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、配列の残りは、配列番号:10に少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0150】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:10の可変軽(VL)鎖アミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGDNYVSWYQQLPGTAPKLLIYRDSQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCQSYDSSLSGSVFGGGTKLTVLGQPKANPTVTLFPPSSEEL(配列番号:10)。
【0151】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書において記載される配列番号:9のVH鎖アミノ酸配列またはそのバリアントを含む重鎖、及び本明細書において記載される配列番号:10のVL鎖アミノ酸配列またはそのバリアントを含む軽鎖を含む。
【0152】
当業者によって認識されるように、可変重鎖及び可変軽鎖は、ヒトIgG定常ドメイン配列(概してIgG1、IgG2、またはIgG4)へ連結され得る。
【0153】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:11に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む。好適には、重鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖の残りは、配列番号:11に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、重鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖の残りは、配列番号:11に少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、重鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖の残りは、配列番号:11に少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、重鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖の残りは、配列番号:11に少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、重鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖の残りは、配列番号:11に少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、重鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖の残りは、配列番号:11に少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:11の重鎖(HC)アミノ酸配列を含む。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSDISWNGGKTHYVDSVKGQFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSLFHDSSGFYFGHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:11)。
【0155】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:12に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む。好適には、軽鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖の残りは、配列番号:12に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、軽鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖の残りは、配列番号:12に少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、軽鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖の残りは、配列番号:12に少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、軽鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖の残りは、配列番号:12に少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、軽鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖の残りは、配列番号:12に少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、軽鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖の残りは、配列番号:12に少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:12の軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む。
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGDNYVSWYQQLPGTAPKLLIYRDSQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCQSYDSSLSGSVFGGGTKLTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号:12)。
【0157】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書において記載される配列番号:11のHCアミノ酸配列またはそのバリアント、及び本明細書において記載される配列番号:12のLCアミノ酸配列またはそのバリアントを含む。
【0158】
本発明は、ヒトCD38及びカニクイザルCD38の両方に結合する抗体またはその抗原結合断片を網羅し、ヒトナンバリングに基づいて、以下のアミノ酸残基:配列番号:1及び配列番号:2のK121、F135、Q139、D141、M142、E239、W241、S274、C275、K276、F284、V288、K289、N290、P291、E292、D293、及びS294のうちの少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%と相互作用する。好適には、抗体またはその抗原結合断片は、これらのアミノ酸残基のうちの少なくとも90%と相互作用し得る。好適には、抗体またはその抗原結合断片は、これらのアミノ酸残基のうちの少なくとも95%と相互作用し得る。好適には、抗体またはその抗原結合断片は、これらのアミノ酸残基のうちの少なくとも97%と相互作用し得る。好適には、抗体またはその抗原結合断片は、これらのアミノ酸残基のうちの少なくとも98%と相互作用し得る。好適には、抗体またはその抗原結合断片は、これらのアミノ酸残基のうちの少なくとも99%と相互作用し得る。好適には、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトナンバリングに基づいて、以下のアミノ酸:配列番号:1及び配列番号:2のK121、F135、Q139、D141、M142、E239、W241、S274、C275、K276、F284、V288、K289、N290、P291、E292、D293、及びS294のうちの少なくとも14(例えば少なくとも15または少なくとも16)と相互作用し得る。
【0159】
いくつかの実施形態において、抗体は全長である。本明細書における「全長抗体」によって、本明細書において概説されるような1つまたは複数の修飾を含む、可変領域及び定常領域を含む抗体の天然の生物学的形態を構成する構造が意味される。
【0160】
代替的に、抗体は様々な構造であり得、抗体断片、抗原結合断片、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(時には「抗体模倣物」と本明細書において称される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合(時には「抗体コンジュゲート」と称される)、及びそれぞれの各々の断片が挙げられるがこれらに限定されない。特異的抗体断片としては、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインからなるFab断片、(ii)VHドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一抗体のVL及びVHのドメインからなるFv断片;(iv)単一可変部からなるdAb断片(Ward et al.(1989)Nature 341:544-546)、(v)単離されたCDR領域、(vi)F(ab’)2断片(2つの連結されたFab断片を含む二価断片)、(vii)VHドメイン及びVLドメインが、2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成することを可能にするペプチドリンカーによって連結される、単一鎖Fv分子(scFv)(Bird et al.(1988)Science 242:423-426、Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883)、(viii)二重特異性単一鎖Fv(WO03/11161)、ならびに(ix)「ダイアボディ」または「トリアボディ」(遺伝子融合によって構築された多価断片または多重特異性断片)(Tomlinson et al.(2000)Methods Enzymol.326:461-479;WO94/13804;Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0161】
好適には、抗体は、Fab断片であり得る。好適には、抗体は、Fv断片であり得る。好適には、抗体は、Fd断片であり得る。好適には、抗体構造は、単離されたCDR領域であり得る。好適には、抗体は、F(ab’)2断片であり得る。好適には、抗体は、scFv断片であり得る。
【0162】
いくつかの実施形態において、抗体もしくはその抗体断片、またはその抗原結合断片は、投与の1日、2日、4日、8日、10日、15日、20日、25日、及び/または30日後に、有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0163】
「有意なレベルの細胞枯渇」という用語は、対象にとって有害な帰結を有するレベルの細胞枯渇に関し得る。
【0164】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、投与の1日後に、有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0165】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、投与の2日後に、有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0166】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、投与の4日後に、有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0167】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、投与の8日後に、有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0168】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、投与の10日後に、有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0169】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、投与の15日後に、有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0170】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、投与の20日後に、有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0171】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、投与の25日後に、有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0172】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、投与の30日後に、有意なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0173】
好適には、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片は、治療後に、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満のRBCの涸渇をもたらし得る。好適には、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片は、治療後に、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の血小板の涸渇をもたらし得る。
【0174】
抗体修飾
本発明は、バリアントの抗CD38抗体またはその抗原結合断片をさらに提供する。すなわち、本発明の抗体またはその抗原結合断片に行われる多数の修飾があり、CDR中のアミノ酸修飾(親和性成熟)、Fc領域中のアミノ酸修飾、糖鎖付加バリアント、他の型の共有結合修飾などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0175】
「バリアント」という用語は、親ポリペプチドのものとは異なるポリペプチドを意味する。アミノ酸バリアントとしては、アミノ酸の置換、挿入、及び欠失が挙げられ得る。概して、本明細書において記載されるように、タンパク質の機能が依然として存在する限り、バリアントは任意の数の修飾を含み得る。すなわち、AB79のCDRで生成されたアミノ酸バリアントの事例において、例えば、抗体もしくは抗原結合断片、またはその抗体バリアントは、依然としてヒトCD38及びカニクイザルCD38の両方へ特異的に結合するべきである。「バリアントFc領域」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸修飾により野生型または親のFc配列のものとは異なるFc配列を意味する。Fcバリアントは、Fcポリペプチドそれ自体、Fcバリアントポリペプチドを含む組成物、またはアミノ酸配列を指し得る。アミノ酸バリアントがFc領域で生成されるならば、例えばバリアント抗体は、抗体の特定の適用または適応症のために要求される機能を維持するべきである。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のアミノ酸置換(例えば1~10、1~5、1~4、1~3、及び1~2の置換)が利用され得る。好適な修飾は、例えば米国特許出版物第2004013210号;ならびに米国特許第6,086,875号;同第6,737,056号;同第7,317,091号;同第7,670,600号;同第8,084,582号;同第8,188,231号;同第8,367,805号;及び同8,937,158号(それらのすべては、それらの全体を参照することによって本明細書に明確に援用される)中で一般に概説されるように、ならびに特にFc受容体への結合を増加させる特異的アミノ酸置換について、1つまたは複数の位置で行われ得る。
【0176】
好適には、抗体バリアントまたはその抗原結合断片は、親配列の機能を維持し、すなわちバリアントまたは断片は、機能的バリアントまたは断片である。好適には、バリアント配列を含む抗体バリアントは、親抗体の機能を維持し、すなわちバリアント配列を含む抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCD38及び/またはカニクイザルCD38を結合することが可能である。好適には、バリアントまたは断片による治療は、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満のRBCの涸渇をもたらし得る。好適には、バリアントまたは断片による治療は、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の血小板の涸渇をもたらし得る。
【0177】
バリアントは類似性(すなわち類似する化学的な特性/機能を有するアミノ酸残基)に関して考慮され得、好ましくはバリアントは配列同一性に関して表現される。
【0178】
配列比較は、容易に利用可能な配列比較プログラムの補助によって、または通常は目視によって遂行され得る。これらの公的及び商業的に利用可能なコンピュータープログラムは、2つ以上の配列の間の配列同一性を計算することができる。
【0179】
野生型タンパク質または改変されたタンパク質のFc領域中で1~5の修飾、そして例えばFv領域中で1~5の修飾を有することが、所望され得る。バリアントポリペプチド配列は、好ましくは親配列(例えばAB79についての可変領域、定常領域、及び/または重鎖配列及び軽鎖配列)に、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を保持するだろう。好適には、バリアントは、親配列に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に少なくとも92%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に少なくとも98%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0180】
一実施形態において、配列同一性は、配列の全体にわたって決定される。一実施形態において、配列同一性は、本明細書において列挙された配列に比較して、候補配列の全体にわたって決定される。
【0181】
CD38活性の阻害及び副作用の低減
開示される抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、細胞増殖を阻害し得る。「増殖を阻害する」という用語は、抗CD38抗体と接触させた場合に、抗CD38抗体と接触させていない同じ細胞の増殖に比較して、細胞増殖における任意の測定可能な減少、例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、または100%までの細胞培養の増殖の阻害を指す。好適には、増殖の阻害は、少なくとも約70%であり得る。好適には、増殖の阻害は、少なくとも約80%であり得る。好適には、増殖の阻害は、少なくとも約90%であり得る。
【0182】
いくつかの実施形態において、開示される抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、活性化されたリンパ球及び形質細胞を枯渇させ得る。このコンテキストにおける「枯渇」という用語は、未治療対象に比較して、対象における活性化されたリンパ球及び/または形質細胞の血清レベルの測定可能な減少を意味する。概して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、または100%の枯渇が観察される。好適には、枯渇は、少なくとも50%であり得る。好適には、枯渇は、少なくとも60%であり得る。好適には、枯渇は、少なくとも70%であり得る。好適には、枯渇は、少なくとも80%であり得る。好適には、枯渇は、少なくとも90%であり得る。好適には、枯渇は、100%であり得る。実施例において以下に示されるように、本発明の抗体またはその抗原結合断片が示す1つの特定の利点は、投薬後のこれらの細胞の回復可能性である。すなわち、いくつかの治療について知られているように(例えば抗CD20抗体によるように)、細胞枯渇は長期間の間続き、望まれない副作用を引き起こし得る。本明細書において示されるように、活性化されたリンパ球及び/または形質細胞に対する効果は、回復可能である。
【0183】
本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、先行技術抗CD38抗体に比較して、低減した副作用を可能にする。いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片(例えばAB79)は、TEAEを誘導しない。いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片(例えばAB79)は、他の抗CD38抗体(MOR202等)に比較して、患者集団中のTEAEの発生率の低減を可能にする。TEAEは、典型的にはグレード1、2、3、4、及び5によって参照され、グレード1は最も低い重症度及びグレード5は最も高い重症度のTEAEである。腫瘍薬物のためのCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)基準についてのFDA及び他のガイドラインに基づいて(例えばhttps://evs.nci.nih.gov/ftp1/CTCAE/CTCAE_4.03_2010-06-14_QuickReference_5x7.pdf;そしてhttps://ctep.cancer.gov/protocoldevelopment/electronic_applications/ctc.htm;及びNilsson and Koke(2001)Drug Inform.J.35:1289-1299を参照)、以下は概して、かかるグレードがどのように決定されるかである。グレード1は軽症であり、症状が無いかまたは軽度の症状があり;臨床所見または診断所見のみ;介入は無いことが示される。グレード2は中等症であり、最小限、局所的、または非侵襲的な介入が示され;年齢相応の身の回り以外の日常生活動作(「ADL」)が制限される。グレード3は重症であるかまたは医学的に重要であるが、直ちに生命を脅かすものではなく、入院または入院の延長が示され;活動・動作不能である;身の回りの日常生活動作が制限される。グレード4は生命を脅かす予後であり、緊急の介入が示される。グレード5はAEに関連する死亡である。
【0184】
いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片(例えばAB79)は、他の抗CD38抗体(MOR202等)に比較して、患者集団中のTEAEのグレードの低減を可能にする。いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片(例えばAB79)は、他の抗CD38抗体(MOR202等)に比較して、TEAEのグレードのグレード5からグレード4への低減を可能にする。いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片(例えばAB79)は、他の抗CD38抗体(MOR202等)に比較して、TEAEのグレードのグレード4からグレード3への低減を可能にする。いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片(例えばAB79)は、他の抗CD38抗体(MOR202等)に比較して、TEAEのグレードのグレード3からグレード2への低減を可能にする。いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片(例えばAB79)は、他の抗CD38抗体(MOR202等)に比較して、TEAEのグレードのグレード2からグレード1への低減を可能にする。
【0185】
いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片(例えばAB79)は、貧血(溶血性貧血を包含する)、血小板減少症、疲労感、注入に伴う反応(IRR)、白血球減少症、リンパ球減少症、及び悪心からなる群から選択される、1つまたは複数のTEAEのグレードの低減を可能にする。いくつかの実施形態において、本発明に従う使用のための抗体またはその抗原結合断片(例えばAB79)は、貧血(溶血性貧血を包含する)、血小板減少症、疲労感、注入に伴う反応(IRR)、白血球減少症、リンパ球減少症、及び悪心からなる群から選択される、1つまたは複数のTEAEの出現の低減を可能にする。
【0186】
いくつかの実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満のRBCの涸渇をもたらす。いくつかの実施形態において、AB79抗体は、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満のRBCの涸渇をもたらす。いくつかの実施形態において、AB79抗体またはその抗原結合断片は、10%未満のRBCの枯渇をもたらす。
【0187】
いくつかの実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の血小板の涸渇をもたらす。いくつかの実施形態において、AB79抗体またはその抗原結合断片は、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の血小板の涸渇をもたらす。いくつかの実施形態において、AB79抗体またはその抗原結合断片は、10%未満の血小板の枯渇をもたらす。
【0188】
いくつかの実施形態において、診断検査は、貧血(溶血性貧血を包含する)の存在及び/またはグレードの決定のために使用される。貧血(溶血性貧血を包含する)のための診断検査としては、ヘモグロビンレベルを測定することが挙げられる。概して、ヘモグロビンレベルは、以下のように解釈される。(i)非常に軽度の貧血/貧血無し:≧12.0g/dL、(ii)軽症:10~12g/dL、(iii)中等症:8~10g/dL、(iv)重症:6~8g/dL、及び(v)非常に重症:≦6g/dL。貧血(溶血性貧血を包含する)のための他の診断検査としては、ハプトグロビンレベルを測定することが挙げられる。概して、ハプトグロビン値≦25mg/dLは、貧血(溶血性貧血を包含する)の存在を示す。他の診断検査としては、直接抗グロブリン試験(DAT)(直接Coombs試験とも称される)が挙げられ、それは、RBCが、免疫グロブリン、補体、または両方によりインビボでコーティングされたかどうかを決定するのに使用される。
【0189】
いくつかの実施形態において、診断検査は、血小板減少症の存在及び/またはグレードを決定するために使用される。概して、血小板減少症の診断検査は、1マイクロリットル(μL)血液あたりの血小板の数を測定することを含む。通常は、1μLの血液あたり150×10~450×10の血小板がある。概して、1μLの血液あたり<150×10の血小板がある場合に、血小板減少症と診断される。1μLの血液あたり70~150×10であるならば、概して軽症の血小板減少症と診断される。1μLあたり20~70×10であるならば、概して中等症の血小板減少症と診断される。1μLの血液あたり<20×10であるならば、概して重症の血小板減少症と診断される。
【0190】
疾患適応症
本発明の抗体、方法、及び投薬単位は、CD38関連疾患の治療または寛解を包含する、様々な適用における使用を見出す。本発明の治療抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、CD38陽性細胞に結合し、複数の作用メカニズム(CDC経路及びADCC経路の両方を包含する)を介してこれらの細胞の枯渇をもたらす。
【0191】
特定の病態がCD38を発現する細胞に付随し、特定の病態が、細胞の表面上のCD38の過剰発現、高密度発現、またはアップレギュレートされた発現に付随することは当技術分野において公知である。細胞集団がCD38を発現するかどうかは、診断適用のために概して以下に記載されるように、当技術分野において公知の方法(例えばCD38を特異的に結合する抗体によって標識される所与の集団中の細胞のパーセンテージのフローサイトメトリーによる決定、または免疫組織化学的アッセイ)によって決定され得る。例えば、CD38発現が細胞の約10~30%で検出される細胞の集団は、CD38についての弱い陽性を有していると見なされ、細胞の約30%を超えてCD38発現が検出される細胞の集団は、CD38についての確定された陽性と見なされ得る(Jackson et al.(1988)Clin.Exp.Immunol.72:351-356)が、他の基準は、細胞の集団がCD38を発現するかどうかを決定するのに使用され得る。細胞の表面上の発現の密度は、当技術分野において公知の方法(例えばCD38を特異的に結合する抗体を使用する、蛍光標識細胞の平均蛍光強度のフローサイトメトリーによる測定等)を使用して決定され得る。
【0192】
一態様において、本発明は、開示される抗体またはその抗原結合断片の薬学的有効量を、(a)レノリドミド(lenolidomide)、(b)レノリドミド(lenolidomide)及びボルテゾミブ、または(c)ポモリドミド(pomolidomide)と併用して、患者へ投与することを含む、CD38を発現する細胞の分裂増殖に付随する病態を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、病態はがんであり、特定の実施形態において、がんは血液癌である。いくつかの実施形態において、病態は、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、またはBurkittリンパ腫である。特定の実施形態において、病態は、多発性骨髄腫である。
【0193】
本発明のいくつかの実施形態において、血液癌は、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、及び急性リンパ球性白血病の群から選択される。本発明のいくつかの実施形態において、血液癌は、慢性リンパ球性白血病である。本発明のいくつかの実施形態において、血液癌は、慢性骨髄性白血病である。本発明のいくつかの実施形態において、血液癌は、急性骨髄性白血病である。本発明のいくつかの実施形態において、血液癌は、急性リンパ球性白血病である。
【0194】
いくつかの実施形態において、病態は、多発性骨髄腫である。
【0195】
多発性骨髄腫(MM)
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄中の形質細胞の新生物形成性の分裂増殖を特徴とするB細胞系譜の悪性疾患である。健康なボランティアにおける薬理学の知見により、MMにおけるさらなる調査が支援された(Fedyk et al.(2018)Blood 132:3249、その全体は参照することによって本明細書に援用される)。骨髄腫細胞の分裂増殖は、骨中の溶解性病変(穴)、赤血球数の減少、異常タンパク質の産生(腎臓、神経、及び他の器官に付随する損傷による)、免疫系機能の低減、及びカルシウム血液カルシウムレベルの上昇(高カルシウム血症)を包含する、様々な影響を引き起こす。現在のところ、治療選択肢としては化学療法が挙げられ、可能な場合に好ましくは自家幹細胞移植(ASCT)が付随する。これらの治療レジメンは中等度の奏効率を示す。しかしながら、全生存期間のわずかな変化のみが観察され、生存期間の中央値はおよそ3年である。したがって、多発性骨髄腫の治療についての満たされていない重要な医学的必要性がある。いくつかの実施形態において、開示される抗体またはその抗原結合断片を使用して、多発性骨髄腫を治療する方法が提供される。
【0196】
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)及びくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)及びくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)は、骨髄中の単クローン性の形質細胞の分裂増殖及び末端器官の損傷が存在しないことを特徴とする無症候性の前悪性疾患である。
【0197】
くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)は、形質細胞の無症候性増殖障害であり、症候性または活動性の多発性骨髄腫に進行するリスクが高い(Kyle et al.(2007)N.Engl.J.Med.356(25):2582-2590)。SMMを定義する国際合意基準は2003年に採用され、患者のMタンパク質レベルが>30g/L及び/または骨髄クローン性形質細胞が>10%であることを要求する(Internat.Myeloma Working Group(2003)Br.J.Haematol.121:749-757)。患者は、器官または関連する組織の機能障害(骨の病巣または症状等)を有してはならない。最近の研究から、SMMの2つのサブセット:i)進行性疾患の患者及びii)非進行性疾患の患者が同定されている(Internat.Myeloma Working Group(2003)Br.J.Haematol.121:749-757)。
【0198】
SMMは、末端器官の損傷が存在しないので、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)に似ている(Kyle et al.(2007)N.Engl.J.Med.356(25):2582-2590)。しかしながら臨床的には、SMMは、20年で活動性多発性骨髄腫またはアミロイドーシスに進行する可能性がはるかに高い(SMMについて78%の確率対MGUSについて21%の確率)(Kyle et al.(2007)N.Engl.J.Med.356(25):2582-2590)。
【0199】
MGUSを定義する国際合意基準は、患者のMタンパク質レベルが<30g/L、骨髄形質細胞が<10%であること、及び器官または関連する組織の機能障害(骨の病巣または症状を包含する)が存在しないことを要求する(Internat.Myeloma Working Group(2003)Br.J.Haematol.121:749-757)。
【0200】
全身性軽鎖アミロイドーシス
アミロイドーシスは、異なる型のタンパク質が細胞外不溶性線維として凝集するタンパク質ミスフォールディング病のファミリーを指す。これらは、複雑な多系統疾患である。一般的な型の全身性アミロイドーシスは、全身性軽鎖(AL)アミロイドーシスである(Gertz et al.(2004)Am.Soc.Hematol.2004:257-82)。多発性骨髄腫と同様に、ALアミロイドーシスは、形質細胞新生物である。ALアミロイドーシスは、過剰な単クローン性免疫グロブリンの遊離軽鎖を産生する骨髄中の小さいクローン性形質細胞集団によって引き起こされる、高齢成人の稀で進行性の致死性疾患である。一旦循環にすると、これらの病理学的な軽鎖は、内臓において線維材料として誤って折りたたまれ凝集し堆積する。アミロイド線維の堆積物は、クローン性形質細胞によって分泌された同じ遊離軽鎖タンパク質である(Cohen and Comenzo(2010)Am.J.Hematol.2010:287-94;Merlini and Bellotti(2003)New England J.Med.349(6):583-96;Murray et al.(2010)Blood(ASH Annual Meeting Abstracts)116(21):abstr 1909)。末端器官の損傷及び最終的には死亡が、このアミロイド線維沈着の結果として引き起こされる。クローン性形質細胞を抑制する治療法は、循環している毒性の遊離軽鎖を産生する製造所の除去によって、ALアミロイドーシス疾患を寛解し、それは次いで、器官機能及び生存期間を改善し得る。全身性ALアミロイドーシスについて規制認可を受けた治療は無い。使用される薬剤は、多発性骨髄腫の治療に使用されるものである。したがって、ALアミロイドーシスの患者の治療についての重要な満たされていない医学的必要性があり、形質細胞上のCD38を標的化することは意義のある治療戦略である。
【0201】
いくつかの実施形態における特定の使用は、自己免疫疾患(身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、全身性軽鎖アミロイドーシス、及び移植片対宿主病が挙げられるがこれらに限定されない)が挙げられるがこれに限定されない、多数の疾患の診断及び/または治療における使用のための本抗体またはその抗原結合断片の使用である。一態様において、疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)である。一態様において、疾患は、関節リウマチ(RA)である。一態様において、疾患は、炎症性腸疾患(IBD)である。一態様において、疾患は、潰瘍性大腸炎である。一態様において、疾患は、移植片対宿主病である。一態様において、疾患は、全身性軽鎖アミロイドーシスである。
【0202】
したがって例えば、形質細胞が高含有量の患者(高レベルの形質細胞を示すSLE患者、そしてCD20ベースの治療法に無応答性であることが示されたRA患者等)が、治療され得る。
【0203】
インビボ投与のための抗体組成物
本発明に従って使用される抗体またはその抗原結合断片の製剤は、所望される純度を有する抗体またはその抗原結合断片を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化物質(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition(1980)Osol,A.Ed.)と、混合するによって、貯蔵のための凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製される。
【0204】
本明細書における製剤は、治療されている特定の適応症のために必要に応じて2つ以上の活性化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性の有るものも含有し得る。例えば、抗体またはその抗原結合断片に他の特異性を提供することは所望され得る。代替的にまたは加えて、組成物は、細胞毒性剤、サイトカイン、増殖阻害剤、及び/または小分子アンタゴニストを含み得る。かかる分子は、好適には意図される目的のために有効な量で併用で存在する。
【0205】
皮下投与
本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)は、治療的に有効な十分な投薬量で投与され得、それによって皮下投与が可能になる。皮下投与は最小の侵襲性投与モードであり、短期間及び長期間の治療方のために使用され得る、最も多用性がありしたがって所望される投与モードと判断される。いくつかの実施形態において、皮下投与は、注射によって遂行され得る。いくつかの実施形態において、複数の注射またはデバイスが必要な場合に、注射またはデバイスの部位はローテーションされ得る。
【0206】
したがって、特に製剤は、患者の全生涯の間(例えば早ければ小児の生後1年目に開始して)規則的に服用されなくてはならないので、皮下製剤は患者にとって自己投与することがはるかに容易である。さらに、皮下送達の容易性及びスピードにより、患者遵守の増加及び必要な場合の医薬物へのより迅速な接近が可能になる。したがって、本明細書において提供される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の皮下製剤は、先行技術を上回るかなり高い利益を提供し、ある特定の満たされていない必要性を解決する。
【0207】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、皮下経路を経由する公知の方法に従って対象に投与される。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、皮下注射によって投与され得る。具体的な実施形態において、皮下製剤は、反復注射または連続注射のために、患者の同じ部位の中へ皮下注射される(例えば上腕、大腿部の前面、腹部の下部分、または背面上部へ投与される)。他の実施形態において、皮下製剤は、患者の異なる部位またはローテーション部位の中へ皮下注射される。製剤の単回投与または複数回投与が用いられ得る。
【0208】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載される皮下単位投薬形態は、がんの治療のために使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される皮下単位投薬形態は、血液癌の治療のために使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載される皮下単位投薬形態は、多発性骨髄腫の治療のために使用され得る。
【0209】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、先行技術抗体に比較して、生体利用能を増加させた。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能は、ヒトRBCへ結合する先行技術抗体に比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%以上増加する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能は、ヒトRBCへ結合する先行技術抗体に比較して、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、または300%以上である。好適には、生物学的利用能は50%増加し得る。好適には、生物学的利用能は60%増加し得る。好適には、生物学的利用能は70%増加し得る。好適には、生物学的利用能は80%増加し得る。好適には、生物学的利用能は90%増加し得る。
【0210】
いくつかの実施形態において、生物学的利用能の増加は、皮下投与を可能にする。
【0211】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、NK細胞、B細胞、及び/またはT細胞の枯渇を導く。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、B細胞またはT細胞の枯渇に比較して、NK細胞の枯渇の増加を可能にする。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、B細胞に比較して、NK細胞の枯渇の増加、そしてT細胞に比較して、NK細胞の枯渇の増加を可能にする。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、B細胞に比較して、NK細胞の枯渇の増加、そしてT細胞に比較して、B細胞の枯渇の増加を可能にする。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、B細胞に比較して、NK細胞の枯渇の増加、及びT細胞に比較して、B細胞の枯渇の増加を可能にする。好適には、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、CD38細胞に比較して、CD38細胞の枯渇の増加を可能にし得る。
【0212】
ある特定の実施形態において、皮下投与後の本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも50%~少なくとも80%の間である。ある特定の実施形態において、皮下投与後の本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも60%~少なくとも80%の間である。ある特定の実施形態において、皮下投与後の本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも50%~70%の間である。ある特定の実施形態において、皮下投与後の本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも55%~65%の間である。ある特定の実施形態において、皮下投与後の本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも55%~70%の間である。
【0213】
ある特定の実施形態において、皮下投与後の本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、または少なくとも85%である。好適には、生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも50%であり得る。好適には、生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも60%であり得る。好適には、生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも70%であり得る。好適には、生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも80%であり得る。好適には、生物学的利用能は、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも90%であり得る。
【0214】
いくつかの実施形態において、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能が、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、50%~80%である方法を提供する。
【0215】
いくつかの実施形態において、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能が、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも50%である方法を提供する。
【0216】
いくつかの実施形態において、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能が、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも55%である方法を提供する。
【0217】
いくつかの実施形態において、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能が、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも60%である方法を提供する。
【0218】
いくつかの実施形態において、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能が、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも65%である方法を提供する。
【0219】
いくつかの実施形態において、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能が、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも70%である方法を提供する。
【0220】
いくつかの実施形態において、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能が、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも75%である方法を提供する。
【0221】
いくつかの実施形態において、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体またはその抗原結合断片の生物学的利用能が、同じ用量について正規化された静脈内投与に比較して、少なくとも80%である方法を提供する。
【0222】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片を含み、抗CD38抗体が10%未満のRBCの枯渇をもたらす、単位投薬形態を提供する。
【0223】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片を含み、抗CD38抗体が10%未満の血小板の枯渇をもたらす、単位投薬形態を提供する。
【0224】
ある特定の実施形態において、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、単回ボーラス注射で皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、毎月皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、2週間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、毎週皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、週2回皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、毎日皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、12時間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、8時間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、6時間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、4時間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、2時間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態において、本明細書において記載された抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、毎時間皮下に投与される。
【0225】
いくつかの実施形態において、治療用抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、単位投薬形態の一部分として製剤化される。いくつかの実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:GFTFDDYG(配列番号:3;HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号:4;HCDR2 AB79)、及びARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号:5;HCDR3 AB79)、または最大3つのアミノ酸変化を有する配列のバリアントを含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:SSNIGDNY(配列番号:6;LCDR1 AB79)、RDS(配列番号:7;LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号:8;LCDR3 AB79)、または最大3つのアミノ酸変化を有する配列のバリアントを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:GFTFDDYG(配列番号:3;HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号:4;HCDR2 AB79)、ARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号:5;HCDR3 AB79)、または最大3つのアミノ酸変化を有する配列のバリアントを含む重鎖、ならびに以下のCDRアミノ酸配列:SSNIGDNY(配列番号:6;LCDR1 AB79)、RDS(配列番号:7;LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号:8;LCDR3 AB79)、または最大3つのアミノ酸変化を有する配列のバリアントを含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:GFTFDDYG(配列番号:3;HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号:4;HCDR2 AB79)、及びARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号:5;HCDR3 AB79)を含む重鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:SSNIGDNY(配列番号:6;LCDR1 AB79)、RDS(配列番号:7;LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号:8;LCDR3 AB79)を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、以下のCDRアミノ酸配列:GFTFDDYG(配列番号:3;HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号:4;HCDR2 AB79)、ARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号:5;HCDR3 AB79)を含む重鎖、ならびに以下のCDRアミノ酸配列:SSNIGDNY(配列番号:6;LCDR1 AB79)、RDS(配列番号:7;LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号:8;LCDR3 AB79)を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:9に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖を含む。好適には、重鎖は、以下のCDRアミノ酸配列:GFTFDDYG(配列番号:3;HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号:4;HCDR2 AB79)、及びARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号:5;HCDR3 AB79)を含み、重鎖の残りは、配列番号:9に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:9の可変重(VH)鎖アミノ酸配列を含む重鎖を含む。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSDISWNGGKTHYVDSVKGQFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSLFHDSSGFYFGHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLA(配列番号:9)。
【0226】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:10に少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。好適には、軽鎖は、以下のCDR配列:SSNIGDNY(配列番号:6;LCDR1 AB79)、RDS(配列番号:7;LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号:8;LCDR3 AB79)を含み、軽鎖の残りは、配列番号:10に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:10の可変軽(VL)鎖アミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGDNYVSWYQQLPGTAPKLLIYRDSQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCQSYDSSLSGSVFGGGTKLTVLGQPKANPTVTLFPPSSEEL(配列番号:10)。
【0227】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書において記載される配列番号:9のVH領域アミノ酸配列またはそのバリアントを含む重鎖、及び本明細書において記載される配列番号:10のVL領域アミノ酸配列またはそのバリアントを含む軽鎖を含む。
【0228】
当業者によって認識されるように、可変重鎖及び可変軽鎖は、ヒトIgG定常ドメイン配列(概してIgG1、IgG2、またはIgG4)へ連結され得る。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:11に少なくとも80%の配列同一性の有るアミノ酸配列を有する重鎖(HC)を含む。好適には、重鎖は、配列番号:3、配列番号:4、及び配列番号:5によって定義されるCDR配列を含み、重鎖の残りは、配列番号:11に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:11の重鎖(HC)アミノ酸配列を含む。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSDISWNGGKTHYVDSVKGQFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSLFHDSSGFYFGHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:11)。
【0229】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:12に少なくとも80%の配列同一性の有るアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)を含む。好適には、軽鎖は、配列番号:6、配列番号:7、及び配列番号:8によって定義されるCDR配列を含み、軽鎖の残りは、配列番号:12に少なくとも80%の配列同一性を有し得る。いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号:12の軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む。
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGDNYVSWYQQLPGTAPKLLIYRDSQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCQSYDSSLSGSVFGGGTKLTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号:12)。
【0230】
いくつかの実施形態において、抗体またはその抗原結合断片は、本明細書において記載される配列番号:11のHCアミノ酸配列またはそのバリアント、及び本明細書において記載される配列番号:12のLCアミノ酸配列またはそのバリアントを含む。
【0231】
いくつかの実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片を含む製剤は、単位投薬形態である。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約45mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約45mg~約300mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約135mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約135mg~約300mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約600mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約1200mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約45mg~約1,200mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約135mg~約1,200mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約300mg~約600mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約600mg~約1,200mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約600mg~約1,200mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約45mg~約135mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約45mg~約600mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約135mg~約600mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。
【0232】
いくつかの実施形態において、投薬量は、キログラム体重あたりのmgにおけるものである。いくつかの実施形態において、投薬量は、毎日の投薬量である。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約300mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。いくつかの実施形態において、単位投薬形態は、約600mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。
【0233】
いくつかの実施形態において、本明細書において提供される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の単位投薬形態は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、担体、及び/または希釈物質をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、本発明に従って単位投薬形態を含む医薬組成物として提供される。好適には、医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、担体、及び/または希釈物質をさらに含み得る。
【0234】
投薬レジメンは、最適の所望の応答(例えば治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスが投与され得るか、複数の分割用量が経時的に投与され得るか、または、用量は治療状況の要件によって指示されるように比例して低減もしくは増加され得る。組成物は、投与の容易性及び投薬量の均一性のために投薬単位形態で製剤化され得る。本明細書において使用される投薬単位形態は、いくつかの実施形態において、治療される対象のための一体型投薬として適した物理的に不連続の単位を指し、各々の単位は、要求される医薬用担体と共同して所望される治療効果を産生するように計算された、既定量の活性化合物を含有し得る。
【0235】
本発明の投薬単位形態のための規格は、(a)活性化合物のユニークな特徴及び達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体の治療のためのかかる活性化合物の調合についての当技術分野における固有の限定によって定められ、それらに直接依存する。
【0236】
本発明において使用される抗CD38抗体またはその抗原結合断片のための効率的な投薬量及び投薬量レジメンは、治療される疾患または病態の型及び重症度に依存し、当業者によって決定され得る。
【0237】
一実施形態において、治療抗体またはその抗原結合断片は、100mg/mlの濃度で製剤化される。いくつかの実施形態において、1.75mL、2.0mL、2.25mL、または2.5mLの体積が、大腿部、腹部、または腕中に注射される。いくつかの実施形態において、1.75mL、2.0mL、2.25mL、または2.5mL体積が、大腿部または腹部中に注射される。いくつかの実施形態において、2.25mL体積が、大腿部または腹部中に注射される。いくつかの実施形態において、用量は、4、6、8、または10時間の期間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、用量は、8時間の期間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、2、4、6、または8回の用量が投与される。いくつかの実施形態において、2回の用量が投与される。いくつかの実施形態において、4回の用量が投与される。いくつかの実施形態において、6回の用量が投与される。いくつかの実施形態において、8回の用量が投与される。いくつかの実施形態において、用量は、2時間毎に投与される。
【0238】
さらなる実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、2~12週間の間週1回投与される。好適には、抗体またはその抗原結合断片は、3~10週間等の間週1回投与され得る。好適には、抗体またはその抗原結合断片は、4~8週間等の間週1回投与され得る。好適には、抗体またはその抗原結合断片は、5~7週間等の間週1回投与され得る。
【0239】
一実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、時間にわたって変化する頻度で皮下投与される。好適には、抗体またはその抗原結合断片は、8週間の間週1回、次いで16週間の間2週間に1回、及び次いでその後は28日間の治療サイクルで許容できない毒性が観察されるまでまたは他の理由に起因して対象が脱落するまで4週間に1回、投与され得る。
【0240】
一実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、例えば6か月以上等の期間の間週に1回維持療法によって投与される。
【0241】
一実施形態において、本開示は、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片を含み、抗CD38抗体が10%未満のRBCの枯渇をもたらす、単位投薬形態を提供する。
【0242】
一実施形態において、本開示は、抗CD38抗体もしくはその抗原結合断片、本明細書において記載される(a)レノリドミド(lenolidomide)、(b)レノリドミド(lenolidomide)及びボルテゾミブ、または(c)ポモリドミド(pomolidomide)を含み、抗CD38抗体またはその抗原結合断片が、(a)レノリドミド(lenolidomide)、(b)レノリドミド(lenolidomide)及びボルテゾミブ、または(c)ポモリドミド(pomolidomide)と併用して10%未満の血小板の枯渇をもたらす、単位投薬形態を提供する。
【0243】
一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、1~8の28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、1つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、2つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、3つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、4つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、5つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、6つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、7つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、8つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。
【0244】
一実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)レノリドミド(lenolidomide)は、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;c)デキサメタゾンは、各々の1~8の治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、1つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、2つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、3つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、4つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、5つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、6つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、7つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。
【0245】
一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、1~8の28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、1つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、2つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、3つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、4つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、5つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、6つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、7つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、レノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと併用して、8つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。
【0246】
一実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)レノリドミド(lenolidomide)は、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;c)デキサメタゾンは、各々の1~8の治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、各々の1~8の治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、1、2、3、4、5、6、7、または8つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、1つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、2つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、3つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、4つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、5つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、6つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、7つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1、2、3、4、5、6、7、または8つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、1つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、2つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、3つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、4つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、5つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、6つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、7つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、ボルテゾミブは、8つの治療サイクルの各々のうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、1つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、1つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、2つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、2つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、3つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、3つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、4つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、4つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、5つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、5つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、6つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、6つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、7つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、7つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。一実施形態において、c)デキサメタゾンは、8つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与され;d)ボルテゾミブは、8つの治療サイクルのうちの1、8、及び15日目に投与され、1つの治療サイクルは28日間である。
【0247】
一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ポモリドミド(pomolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、1~8の28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ポモリドミド(pomolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、1つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ポモリドミド(pomolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、2つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ポモリドミド(pomolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、3つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ポモリドミド(pomolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、4つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ポモリドミド(pomolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、5つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ポモリドミド(pomolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、6つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ポモリドミド(pomolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、7つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、ポモリドミド(pomolidomide)及びデキサメタゾンと併用して、8つの28日間の治療サイクルの経過にわたって投与される。
【0248】
一実施形態において、抗CD38抗体またはその抗原結合断片は、最初の2つの治療のサイクルのうちの1、8、15、及び22日目に、後続する4つの治療サイクルのうちの1及び15日目、ならびに任意の追加の治療サイクルのうちの1日目に投与され;b)ポモリドミド(pomolidomide)は、各々の治療サイクルのうちの1~21日目に投与され;c)デキサメタゾンは、各々の1~8の治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、1つの治療サイクルのうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、2つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、3つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、4つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、5つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、6つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、7つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。一実施形態において、デキサメタゾンは、8つの治療サイクルの各々のうちの1、8、15、及び22日目に投与される。
【0249】
治療形式
本発明の方法において、治療法は、疾患または病態に関して正の治療応答を提供するために使用される。「正の治療応答」という用語は、疾患もしくは条件の改善、及び/または疾患もしくは病態に付随する症状の改善を指す。例えば、正の治療応答は、疾患における以下の改善:(1)新生物形成の細胞の数の低減;(2)新生物形成の細胞死の増加;(3)新生物形成の細胞生存の阻害;(5)腫瘍増殖の阻害(すなわちある程度までの減速、好ましくは中断);(6)患者生存率の増加;及び(7)疾患または病態に付随する1つまたは複数の症状からのいくつかの救済、のうちの1つまたは複数を指すだろう。
【0250】
任意の所与の疾患または病態における正の治療応答は、その疾患または病態へ特異的な標準化された応答基準によって決定され得る。腫瘍応答は、スクリーニング技法(磁気共鳴画像(MRI)スキャン、x線学的画像化、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、骨スキャン画像化、内視鏡検査、及び腫瘍生検サンプリング(骨髄吸引(BMA)及び循環中の腫瘍細胞のカウントを含む)等)を使用して、腫瘍形態(すなわち全体的な腫瘍量、腫瘍サイズ、及び同種のもの)の変化について査定され得る。
【0251】
これらの正の治療応答に加えて、治療法を受けている対象は、疾患に付随する症状の改善の有益な効果を経験し得る。B細胞腫瘍について、対象は、いわゆるB症状(例えば寝汗、発熱、重量喪失、及び/または蕁麻疹)の減少を経験し得る。前悪性病態については、抗CD38の治療抗体による治療法は、関連する悪性病態の発症(例えば意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)に罹患する対象における多発性骨髄腫の発症)をブロックし得る、及び/またはその前の時間を延長し得る。
【0252】
疾患の改善は、完全奏効として特徴づけられ得る。「完全奏効」という用語は、臨床的に検出可能な疾患が非存在であり、任意の以前に異常であった放射線学的研究、骨髄液及び脳脊髄液(CSF)、または骨髄腫の事例において異常な単クローン性タンパク質が正常化したことを指す。
【0253】
かかる奏効は、本発明の方法に従う治療に続いて、少なくとも4~8週間、または少なくとも6~8週間の間持続し得る。代替的に、疾患の改善は、部分奏効であるとして分類され得る。「部分奏効」という用語は、新たな病巣の非存在下において、すべての測定可能な腫瘍量(すなわち対象中に存在する悪性細胞の数、腫瘍塊の測定した容積、または異常な単クローン性タンパク質の量)が少なくとも約50%減少し、それが4~8週間、または6~8週間の間持続し得ることを指し得る。
【0254】
本発明に従う治療は、使用される医薬品の「治療有効量」を含む。
【0255】
「治療有効量」及び「治療有効投薬量」という用語は、所望される治療結果を達成するのに必要な投薬量で及び期間で、障害または1つもしくは複数のその症状の重症度及び/または継続期間を低減または寛解するか;障害の進行を防止するか;障害の退行を引き起こすか;障害に付随する1つまたは複数の症状の再発、発症、開始、または進行を防止するか;あるいは、別の治療法(例えば予防剤または治療剤)の予防的または治療的な効果(複数可)を促進または改善するのに十分な治療法の量を指す。治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び重量、ならびに医薬品が個体において所望される応答を惹起する能力等の因子に従って変動し得る。治療有効量は、抗体または抗体部分の任意の毒性または損傷効果を治療的に有益な効果が上回るものでもある。腫瘍治療のための抗体の「治療有効量」は、疾患の進行を安定化する能力によって測定され得る。化合物ががんを阻害する能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系で評価され得る。
【0256】
代替的に、組成物のこの特性は、化合物が細胞増殖を阻害する能力またはアポトーシスを誘導する能力を、当業者に公知のインビトロのアッセイによって調査することによって評価され得る。治療化合物の治療有効量は、腫瘍サイズを減少させるか、またはそうでなければ対象の症状を寛解し得る。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重症度、及び選択される特定の組成物または投与経路等のかかる因子に基づいて、かかる量を決定することが可能であろう。
【0257】
抗CD38抗体キット
本発明の他の態様において、血液癌に付随する疾患または病態の治療のためのキットを提供する。一実施形態において、キットは、(a)レノリドミド(lenolidomide)、(b)レノリドミド(lenolidomide)及びボルテゾミブ、または(c)ポモリドミド(pomolidomide)と併用して、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)の用量を含む。いくつかの実施形態において、本明細書において提供されるキットは、本明細書において提供される液体または凍結乾燥製剤の1または複数回の用量を含有し得る。キットが、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)の凍結乾燥製剤を含む場合に、概して、キットは、液体製剤の再構成に好適な液体(例えば滅菌水または薬学的に許容されるバッファー)も含有するだろう。いくつかの実施形態において、キットは、ヘルスケア専門家による皮下投与のためまたは家庭使用のためのシリンジ中にプレパッケージされた、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の製剤を含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、好適な投薬形態での経口投与、静脈内投与、または皮下投与のためのレノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンを含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、好適な投薬形態での経口投与、静脈内投与、または皮下投与のためのレノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブを含み得る。一実施形態において、レノリドミド(lenolidomide)は、経口投薬形態である。ある特定の実施形態において、デキサメタゾンは、経口投薬形態または静脈内投薬形態である。一実施形態において、ボルテゾミブは、皮下投薬形態である。
【0258】
ある特定の実施形態において、キットは、単独投与、または(a)レノリドミド(lenolidomide)、(b)レノリドミド(lenolidomide)及びボルテゾミブ、もしくは(c)ポモリドミド(pomolidomide)と併用した本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)の用量のためのものであろう。他の実施形態において、キットは、皮下投与のための本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)の複数用量を含有し得る。一実施形態において、キットは、ヘルスケア専門家による皮下投与のためまたは家庭使用のためのシリンジ中にプレパッケージされた、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の製剤を含み得る。
【0259】
ある特定の実施形態において、キットは、単独投与、またはレノリドミド(lenolidomide)及びデキサメタゾンと一緒の本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)の用量のためのものであろう。他の実施形態において、キットは、皮下投与のための本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)、そして経口投与のためのレノリドミド(lenolidomide)及び経口投与または静脈内投与のためのデキサメタゾンの複数用量を含有し得る。一実施形態において、キットは、ヘルスケア専門家による皮下投与のためまたは家庭使用のためのシリンジ中にプレパッケージされた、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の製剤を含み得る。
【0260】
ある特定の実施形態において、キットは、単独投与、またはレノリドミド(lenolidomide)、デキサメタゾン、及びボルテゾミブと一緒の本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)の用量のためのものであろう。他の実施形態において、キットは、皮下投与のための本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)、そして経口投与のためのレノリドミド(lenolidomide)、経口投与または静脈内投与のためのデキサメタゾン、及び皮下投与のためのボルテゾミブの複数用量を含有し得る。一実施形態において、キットは、ヘルスケア専門家による皮下投与のためまたは家庭使用のためのシリンジ中にプレパッケージされた、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の製剤を含み得る。一実施形態において、キットは、ヘルスケア専門家による皮下投与のためまたは家庭使用のためのシリンジ中にプレパッケージされた、本明細書において記載されるボルテゾミブを含み得る。
【0261】
ある特定の実施形態において、キットは、単独投与、またはポモリドミド(pomolidomide)及びデキサメタゾンと一緒の本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)の用量のためのものであろう。他の実施形態において、キットは、皮下投与のための本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片(AB79等)、そして経口投与のためのポモリドミド(pomolidomide)及び経口投与または静脈内投与のためのデキサメタゾンの複数用量を含有し得る。一実施形態において、キットは、ヘルスケア専門家による皮下投与のためまたは家庭使用のためのシリンジ中にプレパッケージされた、本明細書において記載される抗CD38抗体またはその抗原結合断片の製剤を含み得る。
【0262】
製造品
他の実施形態において、上で記載される障害の治療のために有用な材料を含有する製造品が提供される。製造品は、容器及びラベルを含む。好適な容器としては、例えばボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が挙げられる。容器は、様々な材料(ガラスまたはプラスチック等)から形成され得る。容器は、病態を治療するために有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば容器は、皮下注射針によって穿刺可能な栓を有する静注液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の活性剤は、抗体である。容器上の、またはそれに付随するラベルは、組成物が、選択される病態を治療するために使用されることを示す。製造品は、薬学的に許容されるバッファー(リン酸緩衝生理食塩水、Ringer液、またはデキストロース溶液等)を含む第2の容器をさらに含み得る。製造品は、他のバッファー、希釈物質、フィルター、針、シリンジ、及び使用指示をともなうパッケージ添付文書を含む、商業的及びユーザーの観点から所望される他の材料をさらに含み得る。
【実施例
【0263】
実施例1:以前の抗CD38抗体AB79の臨床試験の要約
表2は、抗CD38抗体AB79についてのこれまでの臨床試験の要約を提供する。
【0264】
【表2】
【0265】
ヒト初回投与(FIH)試験において、第1相、二重盲検、プラセボ対照、用量漸増試験(AB79-101)が74名の健康な対象で遂行され、AB79は、重篤有害事象(SAE)が無く、予想された薬力学的効果が有り、安全であることが示された。AB79のIVは、単回の0.06mg/kgの静脈内用量(0.1μg/mLのCmax)を受けるすべての対象での末梢血NK細胞のレベルをベースラインレベルから>90%低減させた。SC投与されたAB79は、用量依存的方式で末梢血中の形質芽球のレベルも低下させた。強力で便利な第二世代の抗CD38モノクローナル抗体として、AB79のSCは、多発性骨髄腫(MM)の治療のための治療法の開発を保証した。
【0266】
AB79-1501試験は、再発及び難治性多発性骨髄腫(RRMM)の患者における、第1b/2a相、多施設、非盲検、用量漸増、単一群試験であり、当該患者は、少なくともプロテアソーム阻害物質(PI)、免疫調節薬(IMiD)、アルキル化剤、及びステロイドにより以前に治療されていた。試験登録のための資格を有する患者は、少なくとも1つのPI及び少なくとも1つのIMiDに対して難治性または不忍容であり、これらの治療法のうちの1つがPI及びIMiDの併用を含んでいたならば、3つ以上の前治療または2つ以上の前治療のいずれかを受けていた。試験の第1b相の用量漸増部分において、抗CD38剤に以前に接触していた患者は適格であるが、この基準は要求されない。試験の第2a相拡大部分において、患者は、以前の治療の間の任意の時間で少なくとも1つの抗CD38モノクローナル治療法に対しても難治性であった。試験は、RRMMの患者(ダラツムマブに対して難治性の患者を含む)における、皮下投与されたAB79単剤療法の安全性及び忍容性を評価し、第2相の推奨用量(RP2D)を決定し、RRMMに対するその単剤活性の予備的査定を提供するようにデザインされた。安全性、忍容性、薬物動態学(PK)、薬力学、及び疾患応答等のパラメーターを査定した。
【0267】
臨床安全性データは、単回用量を受けた患者から、及び複数サイクルにおける複数回用量続いて治療なしの期間を受ける患者からのものを含む。AB79の作動機序(MOA)及び皮下(SC)投与経路に基づいて、潜在的な有害事象(AE)としては、全身性反応(例えばサイトカイン放出症候群(CRS)及び過敏性反応)、血液学的影響(例えば血小板、リンパ球、好中球、及びRBCのカウントの低減)、感染(例えば免疫抑制に続発する細菌感染及び/またはウイルス感染)、及び注射部位反応(すなわち紅斑または圧痛)が挙げられた。
【0268】
結果
AB79-1501試験(RRMMのための単独のAB79)
データカットオフの時点で、19(19)名の患者が、RRMMの患者において実施中の試験の用量漸増部分で治療され、少なくとも1つのサイクルを完了した。第1のコホート(45mg)中で4名の患者;第2のコホート(135mg)中で3名の患者;第3のコホート(300mg)中で6名の患者;及び第4のコホート(600mg)中で6名の患者であった。この日時での集団中の、因果関係には関係ない最も一般的なTEAE(患者の≧10%)は、疲労感及び上気道感染(各々27%)、不眠症(22%)、下痢及び悪心(各々17%)、頭痛及び貧血(各々15%)、好中球減少症、腹部膨満、背部疼痛、及び高血圧(各々12%)、咳嗽及び肺炎(各々10%)である。全身性反応はなかった。注射部位反応は稀であった(<0.25%)。全体で大多数のAE(55%)はグレード1または2であった。単剤療法コホートにおいて、DLTは報告されず、MTDは同定されていない。RP2Dは、AB79単剤療法では600mgであると決定した。1つの薬物関連SAE(MedDRA PT:憩室炎)が、憩室炎の既往歴の有る患者において報告された。2名の患者で試験中止を導くAEがあり、両方はAB79に関連しないことが報告された。データカットオフの時点で、少なくともAB79のサイクル1を受けた抗CD38未治療の患者におけるRP2Dで予備的客観的奏効率(ORR)は、36%であり、臨床的有用率(わずかな奏効以上として定義される)は73%及び疾患制御率(安定的な疾患以上として定義される)は91%であった。奏効の継続期間は推定可能ではない。
【0269】
AB79-2001試験(SLEの治療のための単独のAB79)
AB79-2001は、中等症から重症のSLEの患者における二重盲検、プラセボ対照第1b相試験である。臨床データカットオフの時点で、合計で15名の患者が、AB79またはプラセボを少なくとも1用量受けた。この試験については、データはまだ盲検化されている。新たな安全性についての懸念は同定されなかった。プラセボまたはAB79へ無作為化されるかどうかは関係なく、試験薬中止を導くグレード3以上のTEAEまたはAEを有する患者はいなかった。
【0270】
実施例2:新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)の患者であって、幹細胞移植が初期治療法として計画されない患者の治療のための、バックボーンレジメンと併用したAB79の安全性を調査する、非盲検、多施設、第1b相試験(AB79-1002)
本試験の主要目的は、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)による患者へ、バックボーン治療レジメンと併用して投与した場合に、AB79の第2相の推奨用量(RP2D)を決定することである。副次目的は、全奏効率(ORR)を決定すること、及び有害事象(AE)の発生率の査定によって安全性を評価することである。
【0271】
これは、幹細胞移植(SCT)が初期の治療法として計画されない、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)の成人患者における、2つの標準的なバックボーンレジメン(レナリドミド+デキサメタゾン[LenDex]、またはボルテゾミブ[Velcade]+レナリドミド及びデキサメタゾン[VRd])のうちの1つへ追加された場合の、AB79の安全性、有効性、忍容性、及び薬物動態学(PK)を評価する、第1b相、多施設、非盲検試験である。バックボーンレジメン(LenDex及びVRd)についての用量及びスケジュールは、製品ラベルまたは標準的な医療行為に従って与えられる。疾患進行(PD)または許容できない毒性が起こるまで、治療サイクルは28日間である。治療は以下にリストされる他の理由のために中止され得る。AB79は治験依頼者によって供給される。ボルテゾミブ、デキサメタゾン、及びレナリドミドは、商業的供給源から供給される標準治療剤である。SCTが初期の治療法として計画されないNDMMのおよそ18名の成人患者を、試験の各々の群に登録する(全体でおよそ36名の患者)。
【0272】
患者参加は、スクリーニング相、治療相、及びフォローアップ相を含む。スクリーニング相は、サイクル1の1日目のおよそ28日前までである。患者が疾患進行もしくは許容できない毒性を経験するまで、または任意の他の中止基準を満たすまで、治療相はサイクル1の1日目から続く。一旦患者が試験治療を中止し、治療終了(EOT)来院を完了すれば、試験のフォローアップ相は開始し、試験終了または患者が全生存期間(OS)フォローアップを完了するまで、試験フォローアップは継続する。
【0273】
患者を一旦試験へと登録したならば、非無作為化方式で治療レジメンへ割り当てる。最初に、6名の患者をバックボーン治療レジメンと併用してAB79により治療する。6名の患者に1つのサイクルの治療レジメンを与えた後に、用量制限毒性(DLT)査定を行う。第1のサイクル後に、(1)患者がDLTを経験していないならば、(2)疾患進行の徴候を示していないならば、及び(3)治験担当医師の見解において、バックボーンレジメンへ追加された追加のAB79から利益を得ることが継続するならば、患者は追加の治療のサイクルを受け得る。所与の治療レジメンにおいて6名の患者を2及び3つの治療サイクルについてそれぞれ治療した後に、追加の安全性の精査を遂行する。サイクル1からの安全性データが、初期のコホート中のすべての6名の患者のための利用可能な場合に、重要な安全性データを治験依頼チームによって精査及び評価する。次いで、追加の12名の患者を登録する。
【0274】
6名の患者のうちの2名でDLTが報告され、より保守的な用量またはスケジュールのいずれかが評価されるべきことが必要であることが決定されるならば、治験依頼者は、試験目的を満たすために追加の患者を登録してもよい。例えば、治験依頼者は、安全性をモニターするためにより保守的な用量またはスケジュールで6名の患者を登録し、後続して安全性及び抗骨髄腫活性を確認するために追加の12名の患者まで登録することができるだろう。
【0275】
患者は、AB79の最終用量の30日後まで、または後続する代替の抗がん療法の開始まで、フォローを受けて、任意の遅延した治療関連AEの検出を可能にする(EOT来院)。PDの前に試験薬を中止する患者については、疾患評価が引き続き遂行される。PDを文書化した後に、後続する抗がん治療及び治療への応答を記録し、生存状況を取得する。患者が死亡したならば、日付及び死因を収集し文書化する。フォローアップは試験終了まで継続する。
【0276】
試験に登録されたすべての患者が2年間の治療法を完了する機会を得た後に、臨床試験報告についての分析を遂行する。試験は、36か月(登録、治療、及びフォローアップの期間を含む)続くようにデザインされる。
【0277】
試験デザイン
300mgのAB79を、8週間の間週1回(8用量)、16週間の間2週間に1回(8用量)、及びその後はPDまで4週間に1回皮下投与する(バックボーン治療法と併用して)。バックボーン療法(LenDexまたはVRd)を、製品ラベル/地域機関での実践に従って投薬する。VRdは、ボルテゾミブを週1回×3週間、LenDexを標準の28日間のサイクルで与えるものである。治療スケジュールを、表3中で示す。AB79の第1の用量から、PD後の30日まで、または治験実施計画書に規定された治療中止基準が満たされるまで、患者を評価する。
【0278】
【表3】


【0279】
SCのためのAB79製剤の強度は、1mL中の100mgのAB79(100mg/mL)である。患者がプレメディケーション治療を受けた後に、AB79用量を、1注射あたりおよそ2mLの最大体積(すなわち200mg/2mL)までのSC注射としてシリンジにより投与する。注射部位は、腹部、大腿部、腕、及び上部臀部領域を使用してローテーションする。
【0280】
レナリドミド-デキサメタゾンレジメン(LenDex)
レナリドミドを、製品ラベルに従って21日間の間25mgで毎日経口投与する。デキサメタゾンを、製品ラベルに従って、静脈内(IV)または経口で、40mgで週1回、または患者が>75歳ならば20mgで週1回投与する。デキサメタゾンは、少なくともサイクル1についてのプレメディケーションとしてAB79投薬の前に服用され、全身性IRRがないならば、デキサメタゾン投薬のタイミングは、標準的な医学的判断によって調整され得る。デキサメタゾンを、サイクル8の後に、デキサメタゾンに付随する忍容性及び医師の医学的判断によって投薬する。1つの治療サイクルは、疾患進行または許容できない毒性があるまで、製品ラベルに従って、28日間である。レナリドミド及びデキサメタゾンは、商業的供給源から得られる。
【0281】
ボルテゾミブ-レナリドミド-デキサメタゾンレジメン(VRd)
ボルテゾミブを、製品ラベルに従って、最大8つのサイクルについて、1.3mg/mで週1回(1、8、及び15日目)SC投与する。レナリドミドを、製品ラベルに従って21日間の間25mgで毎日経口投与する。デキサメタゾンを、製品ラベルに従って、静脈内または経口で、40mgで週1回、または患者が>75歳ならば20mgで週1回投与する。デキサメタゾンは、少なくともサイクル1についてのプレメディケーションとしてAB79投薬の前に服用され、全身性IRRがないならば、デキサメタゾン投薬のタイミングは、標準的な医学的判断によって調整され得る。デキサメタゾンを、サイクル8の後に、デキサメタゾンに付随する忍容性及び医師の医学的判断によって投薬する。1つの治療サイクルは、疾患進行または許容できない毒性があるまで、製品ラベルに従って、28日間である(ボルテゾミブについては最大8つのサイクルであることに注意)。ボルテゾミブ、レナリドミド、及びデキサメタゾンは、商業的供給源から得られる。
【0282】
投薬前医薬物
各々の注射の前に、患者は、AB79注射のおよそ1~3時間前に各々の投薬日に以下のプレメディケーション:経口のアセトアミノフェン(650~1000mg)及び経口またはIVのジフェンヒドラミン(25~50mg、または同等量)を受ける。COPDの既往歴のある任意の患者は、10mgのモンテルカスト(または同等のロイコトリエン阻害物質)によるプレメディケーションを受けることができる。注入後医薬物(短時間作用性及び長時間作用性の気管支拡張薬ならびに吸入コルチコステロイド等)を、投与することができる。最初の4回の注射後に、患者が主要な注入反応を経験しなければ、これらの追加の吸入される注入後医薬物を中止することができる。最初の4回の注射後に、患者が主要な注入反応を経験しなければ、治験担当医師は投薬前及び投与後の医薬物を低減させることができる。
【0283】
投与後の医薬物
コルチコステロイドクリームを注射部位(複数可)へ局所的に適用し、氷をおよそ10~15分間局所的に適用する。患者は、注射後に臨床的に示されるような遅延した注射に伴う反応の予防のために低用量メチルプレドニゾロン(<20mg)を受けることができる。
【0284】
組入れのための主な基準
各々の患者は、試験に登録されるには、以下のすべての組入れ基準を満たさなければならない。(1)治験担当医師に従う治療を要求する、International Myeloma Working Group(IMWG)基準によって定義されるこれまでに未治療のMMである;(2)患者は、治験担当医師に従うVRdまたはLen Dexバックボーン抗骨髄腫療法のいずれかについての適切な候補である;(3)患者は、以下のもの:(a)血清のMタンパク質≧1g/dL(≧10g/L);(b)尿のMタンパク質≧200mg/24時間;及び(c)血清遊離軽鎖(FLC)アッセイ:血清FLC比が異常ならば、関与するFLCレベル≧10mg/dL(≧100mg/L)、のうちの少なくとも1つによって定義される測定可能な疾患を有する;(4)初期の治療法としてSCTを受けることが期待されない、18歳を超える成人の男性または女性の患者である。臨床的に指示されれば、幹細胞採取及び動員のレジメンは許容されるが、臨床医/被指名者によって最初に確認されなければならない。幹細胞動員及び採取は、機関の臨床業務に従って第4の治療サイクル後の任意の時間で生じ得る;(5)患者は、以下の臨床検査基準:(a)ヘモグロビン>7.5g/dL;(b)絶対好中球数(ANC)≧1000/mm(患者が適格基準を満たすことを助ける果粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または他の増殖因子は許可されない);(c)血小板数≧75,000/mm(患者が適格基準を満たすことを助ける血小板輸血は許可されない);(d)総ビリルビン≦正常値の上限(ULN)の1.5倍(Gilbert症候群を除く:直接ビリルビン≦ULNの2倍);(e)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦ULNの3倍;(f)クレアチニンクリアランス(計算されたクレアチニンクリアランスによる)≧50mL/分、を満たす;(6)患者は、避妊または禁欲を実践する;(7)レナリドミドを受ける患者について:治験担当医師によって指示されるように、標準的な臨床業務による同時の予防的血液凝固阻止を行うことが可能でなくてはならない;(8)期待寿命は、>3か月である;(9)Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータススコアは、≦2である;(10)自発的に書かれた書面による十分な説明に基づく同意は、将来の医療に不利益を与えずに任意の時間で同意が撤回され得るという理解で、標準的な医療の一部分ではない任意の試験関連手順の遂行の前に、提供されなくてはならない;(11)多発性骨髄腫のための標準的な医学的手順、試験来院スケジュール、及び他の治験実施計画書の要求事項を進んで厳守し且つそれが可能である患者。
【0285】
評価及び分析のための主な基準:
主要評価項目は、Medical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRA)によるサイクル1におけるDLTの患者の数に基づく、AB79及びバックボーンレジメンの併用の推奨用量である。副次評価項目は、(a)IMWG基準に基づいた治験担当医師の査定に基づく、各々のレジメンについてのORR(部分奏効(PR)以上の奏効);(b)MedDRA System Organ Class and Preferred TermによるAEの発生率(グレード3以上事象、重篤有害事象(SAE)、AB79中止を導くAE、及び試験中の死亡をもたらすAEが含まれる)である。
【0286】
統計的考察:
有害事象は、治療群ごとに及び全体として要約される。カテゴリー変数(ORR等)は治療群ごとに及び全体として集計される。事象までの時間変数(DOR、PFS及びOS等)はKaplan-Meier生存曲線を使用して分析され、Kaplan-Meier中央値(推定可能ならば)が提供される。PKパラメーターは、必要に応じて要約される。
【0287】
サンプルサイズ正当化:
サンプルサイズは正式な仮説検定に基づいて決定されないが、その代りにDLT及び安全性の転帰の評価に基づく。それゆえ、AB79の各々のレジメン及び治験実施計画書に規定されたバックボーン治療法を、DLTの決定及び安全性について個別に評価する。最初に、6名のDLT評価可能な患者を、追加の患者が登録される前に、安全性及びDLTについて評価する。コホートを追加の患者の登録によって拡大して、安全性、PK、薬力学、または疾患応答のより包括的な査定を得て、RP2Dの選択をさらに説明することができる。一旦RP2Dを決定したならば、追加の12名の患者(AB79及びバックボーン治療法の各々のレジメンについて合計でおよそ18名の患者)まで、登録する。統計的検出力の前向き計算は行われていないが、表4は、18名の患者のコホートサイズで観察されたORRに基づく、観察された奏効率の範囲についての80%信頼区間の幅を示す。
【0288】
【表4】
【0289】
DLTの定義
NCI CTCAE(バージョン4.03、2010年6月14日発効;US Department of Health and Human Services、2010年)に従って、毒性を評価する。DLTを、サイクル1の終了時で評価する。DLT評価期間の間に起こる毒性のみを、DLTを定義する目的のために、及び後続するコホート拡大または用量修飾決定のために使用する。DLTはAB79関連毒性に基づく。治験実施計画書に規定された要求事項(例えば抗ウイルス剤予防処置)の非遵守が≧グレード3の毒性をもたらすならば、これらの毒性はDLTとして適格ではない。明らかに外部の原因に起因するTEAEは、DLTとして定義されないだろう。DLTは、少なくともおそらくAB79に関すると治験担当医師によって見なされる以下の事象のうちの任意のものとして定義される。(1)基礎疾患に明らかに関連しない血液毒性であって、以下の通り定義されるもの:(a)連続する7日間を超えて続くグレード4の血小板減少症(血小板数<25,000/mm)、または有意な出血(臨床的に有意な出血は100mLの失血量または赤血球輸血の必要性として定義される)をともなう≧グレード3の低い血小板数;(b)血小板数<10,000/mm;(c)連続する7日間を超えて続くグレード4の好中球減少症(ANC<500細胞/mm)、(d)感染及び/または発熱(発熱は、単回の温度>38.5℃または>1時間の持続的温度>38℃として定義される)をともなうグレード3の好中球減少症(ANC<1000細胞/mm);ならびに(e)グレード≧3の溶血(明らかに外部の原因に起因する事象(例えば直接Coombs試験が陰性)を除く)、がDLT定義中に含まれる;(2)基礎疾患に明らかに関連しないグレード3以上の非血液学的毒性であって、以下を除くもの:(a)対症療法(例えば抗ヒスタミン物質、非ステロイド性抗炎症薬、麻薬、IV液)へ応答する、グレード3の症状の再発のない、グレード3の注射に伴う(全身性)反応(IAR);(b)AB79の最終投与後に<7日間の間続くグレード3の疲労感または無力症;(c)制吐治療へ応答するグレード3の悪心またはグレード3の嘔吐。最適な制吐予防処置は、標準用量で及び標準日程に従って与えられた5ヒドロキシトリプタミン3型アンタゴニスト(5-HT3)を用いる制吐レジメンとして定義される;(d)下痢止めの治療へ応答するグレード3の下痢;ならびに(e)7日間以内にグレード≦1またはベースラインへ治癒する、ALTまたはASTの孤発性のグレード3以上の上昇、である。
【0290】
サイクル2の開始前に次に予定されるAB79注射の>2週間の遅延をもたらす治療関連毒性からの不完全な回復は、DLTと判断される。薬物関連AEに起因して、バックボーンレジメンにおいて個別の薬剤の計画された用量のうちの少なくとも80%を与えることが不可能であることは、コホート拡大決定前の可能性のあるDLTとして、すべての利用可能な安全性データにより評価される。
【0291】
用量漸増ルール
最初に、6名の患者をバックボーン治療レジメン:LenDexまたはVRdと併用したAB79の初回用量で治療する。DLTの決定及び安全性査定は、バックボーン治療をともなう所与のAB79レジメンを受ける6名のDLTの評価可能な患者が1つの完全なサイクルを完了した後に、行われるだろう。安全性データがコホート中の6名のすべての患者について利用可能な場合に、重要な安全性データを追加の患者を登録する前に精査及び評価する。DLTが治療レジメン中の1名以下患者において観察されるならば、少なくとも12名の追加の患者をその治療レジメンに登録してAB79用量の安全性を検証する。DLTが6名の患者のうちの2名以上で観察されるならば、AB79の用量を治験依頼者によって決定された用量及び/またはスケジュールで漸減させ、6名の追加の患者をしてから、12名の追加の患者へ拡大する。より保守的な用量スケジュールを、全体的なより低い用量を提供する手段として実装することもできる。各々のAB79のレジメン+バックボーンレジメンを、DLTの決定及び安全性について個別に評価する。
【0292】
DLT以外の理由でサイクル1におけるAB79のすべての用量を受けていない患者を、コホート内で交代する。AB79のすべての用量を受けるが、予期しない状況で毒性の回復が有効でなく、サイクル1の安全性を完全に評価することができない患者は、コホート内で交代するべきである。DLTを経験している患者は、交代するべきでない。
【0293】
すべての患者について、所与のバックボーンレジメンにおける6名の患者を2つ及び3つの治療サイクルについてそれぞれ治療した後に、追加の実施中の安全性の精査を遂行する。中間用量またはRRMM試験で評価され安全であると認められるものまでの用量の評価、代替の投薬スケジュール(投与間隔)、及び既存の用量レベルの拡大は、かかる措置が、患者安全性のために、またはAB79の用量関連の毒性、曝露、もしくは薬力学の良好な理解のために必要とされるならば、治験依頼者と治験担当医師との間の考察に続いて、すべて許容可能である。
【0294】
安全性及び疾患の査定
安全性評価は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCI CTCAE)、バージョン4.03に従って、TEAEをモニタリングすることを含む。臨床的に有意であるとして治験担当医師によって判断された、臨床検査パラメーター(標準的な血液学及び化学)、バイタルサイン、心電図(ECG)モニタリング、及びEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータスの変化を、AEとしてソース文書及び電子症例報告(eCRF)の両方で記録する。DLT評価期間の間に起こる毒性を、DLTを定義する目的のために、及び後続するコホート拡大または用量修飾決定のために使用する。DLTはAB79関連毒性に基づく。
【0295】
腫瘍応答及び疾患進行の有効性査定を、IMWG基準に従って遂行する。有効性評価は、血清及び尿中の骨髄腫タンパクの測定を含む。骨髄検査、骨調査、溶解性及び/または髄外形質細胞腫を評価するコンピューター断層撮影(CT)または磁気共鳴画像(MRI)、ならびにアルブミンについて補正した血清カルシウムを、患者のベースライン疾患状態に基づいて、必要に応じて評価する。
【0296】
PK、薬力学、及び免疫原性の査定
PK、薬力学、及び免疫原性(抗薬物抗体(ADA)を含む)検査のための血液サンプルを、ある特定のタイムポイントで収集する。
【0297】
主要評価項目
主要評価項目は、サイクル1におけるMedical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRA)による用量制限毒性(DLT)の患者の数に基づいた、AB79及びバックボーンレジメンの併用の推奨用量である。
【0298】
副次評価項目
副次評価項目は、(a)IMWG基準に基づいた治験担当医師の査定に基づく、各々のレジメンについてのORR(少なくとも部分奏効[PR]の奏効);及び(b)MedDRA System Organ Class and Preferred TermによるAEの発生率(グレード3以上事象、重篤有害事象(SAE)、AB79中止を導くAE、及び試験中の死亡をもたらすAEが含まれる)である。
【0299】
探索的評価項目
探索的評価項目は、(1)1年PFSの推定値(第1の用量の日付から1年での、進行または死亡が無い患者のKaplan-Meier推定値として定義される);(2)奏効の継続期間(第1の奏効の報告の日付から第1のPDの報告の日付までの時間として定義される);(3)奏効までの時間(第1の用量の日付から奏効(PR以上)の第1の報告の日付までの時間として定義される);(4)1年生存期間の推定値(治療の第1の用量の日付の1年後の患者残存確率として定義される);(5)OS(治療の第1の用量の日付から死亡の日付までの時間として定義される);(6)疑わしいVGPR以上の査定で得られた骨髄吸引物(BMA)サンプル内の微小残存病変の決定(次世代フローサイトメトリーを使用して);(7)バックボーン治療レジメンと併用したAB79のPK。PKパラメーターとしては、Cmax、最高血漿中濃度に到達した時の投与後の時間(Tmax)、及び曲線下面積(AUC)が挙げられるがこれらに限定されない;(8)治療法の前、その間、及びその終了時のBMA及び末梢血中のMM細胞及び他の免疫細胞上のCD38発現変化;(9)治療法の前、その間、及びその終了でのBMA及び末梢血中の免疫細胞の存在及び変化の薬力学的分析;(10)奏効及び/または抵抗性の予測が可能なバイオマーカー(サイトカイン/ケモカイン中の変化が挙げられるがこれらに限定されない)の探検の評価;(11)ベースライン査定と各々のベースライン後査定との間の全体的健康状況(全体的健康スケール、機能、ならびにEORTC QLQ-C30及びEORTC QLQ-MY20の症状によって測定されるような)の変化の比較;ならびに(12)抗AB79抗体出現率及び特徴である。
【0300】
標準的なバックボーン薬剤の用量修飾についての基準
ボルテゾミブ及びレナリドミドを受ける患者は、処方情報に従ってそれぞれの薬物を修飾することができる。表5は、VRd及びLenDexのバックボーンレジメンに沿う用量低減ステップを示す。これらの薬剤のうちの1つに起因するAEを経験する患者は、処方情報中で示されるように、1用量レベルずつ低減するべきである。これらの薬剤のうちの1つの用量低減が毒性に起因して要求される場合に、用量の再漸増は認可されない。
【0301】
【表5】
【0302】
デキサメタゾン治療の修飾(両方の群)
デキサメタゾンに起因するAEを経験する患者は、標準的な医学的判断に従ってデキサメタゾンの用量を低減することができる。用量低減が毒性に起因して要求される場合に、用量の再漸増は認可されない。
【0303】
表6~9は、標準治療の臨床検査及び研究検査のリストを提供する。
【0304】
【表6】
【0305】
【表7】
【0306】
【表8】
【0307】
クレアチニンクリアランスの推定のために、以下のCockcroft-Gaultの式:推定クレアチニンクリアランス=[(140-年齢)×体重](kg)/72×血清クレアチニン(mg/dL)]を用いる。女性患者については、上記の式の結果に0.85を掛ける。
【0308】
疾患の査定
患者を、IMWG基準に従って疾患奏効について査定する。
【0309】
【表9】
【0310】
疾患査定のための臨床検査評価
International Staging Systemに従う疾患ステージの決定のために、血清β2-ミクログロブリン及びアルブミンを測定するためのスクリーニングの際に、血液サンプルを収集する。疾患査定のための臨床検査評価、血清タンパク質電気泳動(SPEP)、尿タンパク質電気泳動(UPEP)のための24時間蓄尿、血清FLC、血清及び尿の免疫固定検査、ならびに全免疫グロブリンレベルを得る。患者が、尿に制限された測定可能なMタンパク質を有するならば、Mタンパク質構成要素の定量は、UPEPのみによって決定することができる。SPEPによって測定可能な患者は、スクリーニング及びEOT時の24時間蓄尿のみを有し、PR、VGPR、CR、またはPDを文書化する。免疫固定を行って、CRを確認する。
【0311】
干渉試験
AB79はダラツムマブに類似してモノクローナルIgGκ抗体であるので、SPEP及び血清免疫固定は、抗CD38モノクローナル抗体に起因して陽性であり得る。したがって、SPEP値が2回の連続した疾患評価で≦0.2g/dLに到達する場合は常にCRが疑われ、干渉試験についての必要性が引き起こされる。現在のところ、干渉試験結果が陽性であるならば、その時アッセイは、内在性タンパク質について陽性であると判断され、したがって依然として疾患は存在する。干渉試験の結果が陰性であるならば、そのときアッセイは、内在性タンパク質について陰性であると判断され、したがって、残存するタンパク質はおそらくCD38モノクローナル抗体である。CRの可能性について確認骨髄吸引物(BMA)評価を遂行できるが、まだ行われない。
【0312】
IgM、IgG、及びIgAについての血液サンプルを、スクリーニング時及び試験を通してある特定のタイムポイントで得る。IgD及びIgEの定量をスクリーニング時のみに行う。IgDまたはIgEのMMが報告された稀な患者については、その抗体のための定量的検査をIgG及びIgAと同じタイムポイントでフォローする。
【0313】
骨髄生検及び/または骨髄吸引物
形態学、臨床的なステージング、及び細胞遺伝学の評価のためのBMA及び/または生検の結果(8週間の試験参加内で行われた骨髄から)は、スクリーニング時に利用可能でなくてはならず、そうでないならば、BMA及び/または生検はスクリーニング時に得られる。以前に査定されていなければ、BMAを、少なくとも以下の細胞遺伝学的異常:染色体欠失17[del(17)]、染色体転座4:14[t(4:14)]、及び染色体転座14:16[t(14:16)]について遂行する。BMAがスクリーニングの間に行われるならば、ベースラインCD38発現、受容体占有のベースライン、薬力学的測定、及び免疫プロファイリングについて、サンプルを検査する。
【0314】
CRを達成したことが疑われる患者は、任意の時間でBMAを収集して、IMWG基準に従ってCRを文書化する。疑わしいCR(sCR)は、免疫固定の結果とは無関係に定義される。SPEP(重鎖患者について)またはUPEP(軽鎖患者について)中のMタンパク質測定が、検出限界以下または定量化不可能になる場合に、BMAを遂行する。BMAサンプルを、CR及び微小残存病変の分析のために評価する。免疫組織化学または免疫蛍光法によってκ/λ比の決定を遂行して、sCRを査定しなくてはならない。
【0315】
細胞遺伝学/蛍光in situハイブリダイゼーション
del(17)、t(4:14)、及びt(14:16)のハイリスクの異常について歴史的に報告された細胞遺伝学の結果を有していない患者は、スクリーニング時のBMAサンプルについて細胞遺伝学的評価を遂行する。歴史的に報告されている細胞遺伝学が利用可能ならば、ここで言及される最小限の細胞遺伝学的マーカーについての結果が利用可能である限り、スクリーニング時のBMAサンプルは要求されない。蛍光in situハイブリダイゼーションまたは従来の細胞遺伝学(核型)を使用する細胞遺伝学的評価は認められる。しかしながら、少なくとも、細胞遺伝学的マーカーは、del(17)、t(4:14)、及びt(14:16)の3つのハイリスクの異常を含まなくてはならない。追加の異常[ampl 1q、del(13)、またはdel(1p)]も試験することができる。
【0316】
疾患の放射線学的査定
溶解性の髄外疾患を評価する画像化を、少なくともスクリーニング時及びEOT来院時に遂行する。画像化法(例えば骨調査、CT、MRI、陽電子放射断層撮影-コンピューター断層撮影[PET-CT])の選択は、治験担当医師の裁量である。しかしながら、すべての治療相及びフォローアップスキャンは、スクリーニング時に使用した同じ画像化法を使用して、一貫した疾患査定を容易にするべきである。画像化検査をスクリーニング時に行う(試験薬の第1の用量の8週間内)。軟組織の髄外疾患が報告されるならば、反復した画像化を要求に応じて遂行して、IMWG基準に従って奏効または進行を文書化するべきである。
【0317】
バイオマーカー、薬力学、及びPKサンプル
表10は、試験のために収集される患者サンプルのリストを提供する。
【0318】
【表10】
【0319】
AB79の濃度の測定のための血清サンプルを複数のタイムポイントで収集する。サンプリングスキームの変化がAB79のPKプロファイルをより良好に特徴づけるのに必要であると判断されるならば、サンプルの全数ではなく、サンプルのタイミングを、新たなPKデータに基づいて試験の間に改変することができる。
【0320】
複数のバイオマーカーを査定して、安全性、PK、及び可能性であるならば有効性との相関性のために検査する。これらのバイオマーカーは、AB79への奏効または有害反応のより高い確率を有する患者を同定するのに使用される。もし要求されるならば、または要求される場合に、バイオマーカーサンプル分析を遂行する。新たな技法が開発され続けているので、バイオマーカー分析のために推奨される方法は予想することができない。
【0321】
BMAサンプルを、微小残存病変の査定のために、及び骨髄中に存在する腫瘍及び免疫細胞をプロファイリングするために収集する。BMAサンプルを、フローサイトメトリーによってCD38発現を分析し免疫細胞の変化をモニタリングするためにも治療の間及びその終了時に収集する。
【0322】
例えばサイトカイン/ケモカインレベルのための血清サンプルを、AB79への奏効または有害反応の経験のより高い確率を有する患者の同定を支援するために、治療の前、その間、及びその終了時に収集する。
【0323】
血液サンプルを、フローサイトメトリーによってCD38発現を分析し免疫細胞の変化をモニタリングするために治療の前、その間、及びその終了時に収集する。血液サンプルを、免疫細胞をプロファイリングするためにも治療の前、その間、及びその終了時に収集し、フローサイトメトリーまたはマスサイトメトリーによって免疫細胞の存在及び変化について分析した。ADAの査定のための血液サンプルを、様々なタイムポイントで収集する。サンプルを、試験薬が投薬日に投与される前に、及び任意選択で、過敏症または他のIRRと一致すると治験担当医師によって判断されたAEを経験する対象の予定外の来院時に、収集しなくてはならない。ADAが陽性で検出されるならば、サンプルはさらに特徴づけられ得る。
【0324】
試験薬による治療の中止及び患者の交代
以下の基準:対象による脱落;妊娠;AE/SAE;PD;不十分な治療応答;造血系SCTの開始;治験実施計画書の逸脱;治験依頼者により終了された試験;フォローアップの喪失;及び医師の決定、のうちの任意のものを満たす患者については、試験治療法を恒久的に中止する。一旦試験治療法が中止されたならば、EOT来院のための概説された試験手順をすべて完了する。
【0325】
全治療経過を完了する前に、PD以外の理由で何名かの患者が試験治療法を中止し得ることに注目されたい。これらの患者は、PDが起こるまで、PFSフォローアップ査定のために試験中に残るだろう。患者がフォローアップへの同意を撤回しない限り、PFS及び/またはOSのフォローアップ査定を引き続き遂行するだろう。
【0326】
試験終結時で(試験の完了または他の理由にかかわらず)試験治療法に残っている患者は、市販薬供給(利用可能且つ払い戻し可能な場合)を介して、または別の延長試験またはロールオーバー試験における継続的な治療を介してのいずれかで、AB79への継続的なアクセスが提供される。
【0327】
試験からの患者の脱落
患者は、以下の理由:死亡;治験依頼者により終了された試験;対象による脱落;及びフォローアップの喪失、のうちの任意のもののために試験から脱落する。
【0328】
有害事象
治療前事象の定義
治療前事象は、試験に参加するために十分な説明に基づく同意に署名したが任意の試験医薬物の投与の前の患者または対象における任意の好ましくない医療上の出来事であり、それは、試験参加との因果関係を必ずしも有する必要はない。
【0329】
有害事象(AE)の定義
AEは、医薬製品を投与された患者または対象における任意の好ましくない医療上の出来事を意味し、好ましくない医療上の出来事は、この治療との因果関係を必ずしも有する必要はない。したがって、AEは、それが医薬製品に関連しても関連しなくても、医薬(研究)製品の使用に一時的に付随する、任意の不利で意図しない徴候(異常な臨床検査所見を含む)、症状、または疾患であり得る。これは、試験薬の投与以降の重症度または頻度の増加を有する、任意の新たに起こる事象または以前の病態を含む。異常な臨床検査値は、その値が、治療における中止もしくは遅延、用量修飾、治療介入を導かないか、または治験担当医師によってベースラインからの臨床的に有意な変化と判断されない限り、AEとして査定されないだろう。
【0330】
重篤有害事象(SAE)の定義
SAEは、任意の用量で、(1)死亡をもたらす;(2)生命を脅かす(患者が事象の時に死亡のリスクがあったAEを指す。それは、もし仮により重症ならば死亡を引き起こしたかもしれないという事象は指さない);(3)入院患者の入院または既存の入院の延長を要求する;(4)持続性または有意な障害(通常の生活機能を遂行する人の能力の実質的な混乱として定義される)または無能力をもたらす;(5)先天性異常/出産時欠損である;(6)医学的に重要な事象である、任意の好ましくない医療上の出来事を意味する。死亡をもたらさないAEは、直ちに生命を脅かすかまたは入院を要求するが、それが患者に危害を及ぼし得るか、上でリストされた転帰のうちの1つを防止するために医学的もしくは外科的な介入を要求するか、または、感染性病原体の医薬製造品を経由する伝達の疑いに関与する場合に、重篤であると判断され得る。かかる医学的事象の例としては、緊急処置室または家庭で集中治療を要求するアレルギー性気管支痙攣、入院患者の入院をもたらさない血液疾患もしくは痙攣、または薬物依存性もしくは薬物乱用の発症が挙げられる。病原性または非病原性である、任意の生物体、ウイルス、または感染性粒子(例えば伝達性海綿状脳症を伝達するプリオンタンパク質)は、感染性病原体と判断される。
【0331】
任意の臨床検査異常を含む各々のAEについての程度を、NCI CTCAE(バージョン4.03、2010年6月14日発効)を使用して決定する。重篤なという用語及び重症のという用語は同意語ではないので、程度が重症である(グレード3または4)と判断されるSAEとAEとの間の明瞭化が行われるべきである。重症のという一般的な用語は、具体的な事象の程度(重症度)を記載するのにしばしば使用されるが、事象はそれ自体比較的マイナーな医学的意義であり得る(グレード3の頭痛等)。これは重篤と同じではなく、重篤は上で記載される患者/事象の転帰または活動基準に基づき、患者の人生または機能する能力を脅かす事象に通常付随する。重症のAE(グレード3または4)は、必ずしも重篤であると判断される必要はない。例えば、1000/mm~2000/mm未満の白血球数は、グレード3(重症)と判断されるが、重篤であると判断されなくてもよい。重篤度(程度ではない)は規制報告義務の定義のためのガイドとして供される。
【0332】
AEのモニタリング及び観察の期間
AE(非重篤及び重篤なものの両方)を、試験を通して以下の通りモニタリングする。(1)AEを、十分な説明に基づく同意の署名から試験薬の最終用量の投与後30日間を通して報告する。EOT時に実施中のAEを、AEが解消される(ベースラインに戻る)か、AEが患者の安定的もしくは慢性的な病態または併発性の病気(複数可)に起因することが明瞭に決定されるか、第二選択代替療法を開始するか、あるいはPDの出現の6か月後である、のうちのいずれか早い方までモニタリングする;(2)SAEを、十分な説明に基づく同意の署名から試験薬の最終用量の投与後30日間を通して報告する。この期間後には、Takeda薬剤(AB79及びVelcade)に関連するSAEのみを、Takeda Global Pharmacovigilance部門または被指名者へ報告しなくてはならない。SAEを、SAEが解消されるか、あるいは患者の安定的もしくは慢性的な病態または併発性の病気(複数可)のためであることが明瞭に決定されるまで、モニタリングする。加えて、レナリドミドによる新たな原発性悪性腫瘍のリスクの増加があるので、新たな原発性悪性度のすべての症例を、治験依頼者による試験の終結、または試験治療レジメン内の薬物のうちの任意のものの最終用量後最低3年間、のうちのいずれか早い方まで、試験治療レジメンの第1の用量時から死亡(フォローアップ期間を含む)までを通して、試験治療レジメンへの因果関係に関係なく報告する。
【0333】
PK分析
PKパラメーターを、ノンコンパートメント分析法を使用して推定する。パラメーターを、PK分析セット中に含まれる個別の患者についてAB79の濃度-時間データを使用して計算する。計算されたPKパラメーターとしては、Cmax、tmax、及びAUClastが挙げられるだろうがこれらに限定されない。
【0334】
PKパラメーターを、記述的統計を使用して要約する。個別のAB79濃度-時間データ及び個別のPKパラメーターをリスト中に提示し、用量コホートによる要約統計を使用して集計する。個別及び平均の濃度-時間プロファイルを、用量コホートによりプロットする。この試験において収集したPKデータは、AB79の将来の集団PK分析にも寄与し得る。これらの集団PK分析は、他のAB79臨床試験において収集したデータを含み得る。集団PK分析についての分析プランは別々に定義され、これらの分析の結果は別々に報告される。同様に、この試験において収集した、時間を一致させたPK及び三重ECGデータは、心拍度数(QTc)分析について補正した将来の濃度QT間隔に寄与し得る。これらの分析は、他のAB79臨床試験において収集したデータを含み得る。濃度-QTc分析についての分析プランは別々に定義され、結果は別々に報告される。
【0335】
薬力学的分析
AB79の臨床開発の間に、複数のバイオマーカーは、安全性との、及び可能であるならば有効性との、それらの相関性について検査して査定される。研究されるマーカーは、薬物それ自体または治療される疾患のいずれかに結びつけられるマーカーである。腫瘍量の変化(すなわち免疫細胞の変化または可溶性バイオマーカーの変化)を指摘するマーカーを、記述的統計を使用して要約する。個別のデータをリストする。該当する場合は、要約を、各々の試験相について及び用量ごとに別々に提供する。
【0336】
PK/薬力学的分析
AB79の用量及びAB79の血清曝露vs複数のバイオマーカー(CD38発現レベル及び免疫細胞の変化等)の間の潜在的関係性を評価する試みを行う。これらの分析は本質的に探索的であり、すべての結果は本質的に記述的である。
【0337】
免疫原性分析
AB79免疫原性状況(ADA陰性、一過性、及び持続的陽性、及びADA力価)を、該当する場合は記述的統計を使用して(SAPに基づく)、分析及び要約する。PKに対する免疫原性の効果、安全性及び有効性を探索する。免疫原性分析は、ベースライン査定及び少なくとも1つのベースライン後免疫原性査定をした患者から利用可能なデータに基づく。
【0338】
QOL分析
QOLを、EORTC 30項目のQLQ-C30検査によって、及びMMの患者のQOLに対処するように特異的にデザインしたEORTC QLQ-MY20(20項目査定)によって査定する(http://groups.eortc.be/qol/questionnaires、2019年3月19日にアクセス)。EORTC QLC-C30から構築した主なスケールは、全体的な健康状況/QOL、身体機能、日常役割機能、情緒機能、認知機能、及び社会生活機能である。追加の9つのスケール:疲労感、悪心及び嘔吐、疼痛、呼吸困難、不眠症、食欲不振、便秘、下痢、ならびに財政難が、派生し得る。両方の調査を、サイクル1の1日目の前に、次いで1年目に3か月毎に、及びその後PDまで6か月毎に実施する。
【0339】
サイクル1、1日目のQOL測定値をベースラインとして使用する。分析を、要約スコアに対して、そして、サブスケール及び個別の症状に対して遂行する。ベースラインと各々のベースライン後査定との間の変化は、全体的に記載される。QOL評価項目は、全体的な健康状況及び残りのEORTC QLQ-C30及びEORTC QLQ-MY20サブスケール及び個別の項目スコアである。スコアの変化を、累積度数分布図を使用して提示する。
【0340】
安全性分析
安全性を、AEの頻度、AEの重症度及び型によって、ならびに患者のバイタルサイン、体重、及び安全性分析セットを使用する臨床検査の結果におけるベースラインからの変化によって、評価する。試験薬への曝露及び中止の理由を集計する。試験の第1の用量の投与後から試験薬の最終用量後30日間までを通して起こるTEAEを集計する。
【0341】
AEをMedDRAに従って集計し、以下のカテゴリー:(1)TEAE;(2)薬物関連TEAE;(3)グレード3以上のTEAE;(4)グレード3以上の薬物関連TEAE;(5)最も一般的に報告されるTEAE(すなわちすべての患者のうちの≧10%で報告されるもの);(6)SAE(関連するもの及び関係性には関係ないもの);(7)試験薬修飾及び中止を導くTEAE、が含まれるだろう。
【0342】
結果
AB79-1002試験、(a)レナリドミド及びデキサメタゾン(LenDex)、ならびに(b)レナリドミド、デキサメタゾン、及びボルテゾミブ(VRd)と併用したAB79
AB79-1002は、新たに診断された多発性骨髄腫(NDMM)の患者であって、幹細胞移植が初期治療法として計画されない患者の治療のための、バックボーンレジメン((a)レナリドミド及びデキサメタゾン、または(b)レナリドミド、デキサメタゾン、及びボルテゾミブ)と併用した、AB79の安全性及び忍容性を調査する非盲検で多施設第1b相試験である。試験登録の資格を有する患者は、以前に治療されていないNDMMを有し、幹細胞移植は第一選択治療法として計画されない。第2相の推奨用量(RP2D)を決定し、NDMMに対するAB79併用の予備的査定を提供するように、試験をデザインした。安全性、忍容性、薬物動態学(PK)、薬力学(PD)、及び疾患応答等のパラメーターを査定した。10名の患者を登録した。この実施中の試験において、臨床安全性データは、バックボーンレジメンの標準用量と併用して、300または600mgの用量で、少なくとも1用量、または複数回の用量に曝露される場合には複数サイクルではないならば少なくとも1サイクルを受けた患者からのものを含む。併用パートナーのAB79用量には関係なく、集団中の因果関係には関係ない、最も一般的なTEAES(≧2患者における)は、この日付の時点で、リンパ球数の減少(5名の患者)、下痢(3名の患者)、ならびに腹痛、悪寒、味覚障害、疲労感、筋肉痙攣、悪心、好中球減少症、末梢性浮腫、及び副鼻腔炎(各々2名の患者)である。DLTは報告されなかった。薬物関連重篤AE、任意の薬物中止をもたらしたAE、または試験中の死亡はなかった。この併用試験におけるTEAEは、併用レジメンにおける個別の薬剤の報告された安全性プロファイルと一致し、概して単一薬剤AB79(試験AB79-1501)ならびにVRD及びRDのバックボーンレジメンによる臨床経験に基づいて予想された。
【0343】
データカットオフの時点で、集団についての予備的客観的奏効率(ORR)(両方のバックボーンレジメンを含む)は、100%であり、深い奏効(厳格なCR及びVGPR)及び持続的奏効(1~11のサイクルからのデータカットオフ曝露範囲で)を包含する。現時点では、1名の患者に対する客観的奏効の決定が保留されている。
【0344】
実施例3:再発または難治性多発性骨髄腫(RRMM)の患者における、単一薬剤として皮下投与されたAB79、そしてポマリドミド及びデキサメタゾンとの併用の安全性及び忍容性、有効性、薬物動態学、及び免疫原性を調査する、第1/2a相非盲検、用量漸増試験(AB79-1501)
これは、RRMMの患者における、AB79単剤療法の安全性、忍容性、有効性、PK、及び免疫原性を決定するように、MMに対する活性の予備的査定を提供するようにデザインされた、多施設、用量漸増、非盲検、単一群、第1/2a相試験である。この試験は、実施例1中に記載されていたRRMMの第1/2a相試験への改正案であり、(a)第1相試験に登録された患者の数の増加を可能にし;(b)少なくとも2つの前治療を受けており、試験参加の前の最終治療法へ難治性であるRRMMの患者における、ポマリドミド及びデキサメタゾン(PomDex)のバックボーンレジメンと併用したAB79を評価するために患者のコホートを追加するものである。PomDexはこの患者集団のために承認され、抗CD38モノクローナル抗体(特に皮下(SC)投与されるもの)のPomDexへの追加は、患者に有益且つ便利であり得る。
【0345】
したがって、この試験の第1相部分の主要目的は、RRMMの患者における、(a)AB79単剤療法及び(b)PomDexのバックボーンレジメンと併用したAB79の安全性及び忍容性を決定することである。この試験の第2a相部分の主要目的は、RRMMの患者における、AB79単剤療法の臨床的な活性の予備的評価を提供することである。
【0346】
試験の第1相部分の副次目的は、(a)単一薬剤として、及びPomDexのバックボーンレジメンに追加した場合に、AB79の可能性のある最大忍容用量/第2相の推奨用量(MTD/RP2D)を調査することである。試験の第2a相部分の副次目的は、(a)MTD/RP2Dで安全性をさらに評価すること;(b)事象までの時間測定値の予備的評価を提供すること;(c)AB79の免疫原性をさらに評価すること;及び(d)AB79のPKをさらに特徴づけることである。
【0347】
この試験の探索的目的は、臨床的有効性及び安全パラメーターとの相関性を検査することが可能なバイオマーカーを探索することであり、当該検査は、(a)免疫細胞上のAB79の薬力学的プロファイル(CD38占有率を含む)を特徴づけること;(b)治療法の前及びその間のMM細胞及び他の免疫細胞上でのCD38発現を決定すること;(c)ベースライン時に及び治療の間の異なる時間間隔でCD38+免疫細胞を含む骨髄吸引物(BMA)及び全血液細胞を免疫表現型分析すること;ならびに(d)ベースライン時に及び治療の間の異なる時間間隔で薬力学的バイオマーカー(B細胞受容体(BCR)及びT細胞受容体(TCR)クローン性、サイトカイン、ケモカイン、及び補体タンパク質が挙げられるがこれらに限定されない)を同定すること、を包含するがこれらに限定されない。
【0348】
試験の第1相部分は、用量制限毒性(DLT)について単一薬剤AB79の投与を評価して、第2a相におけるさらなる査定のためにMTDまたはRP2Dを決定する。MTD未満の推奨用量を、試験の第1相部分からの安全性、PK、PD(例えばCD38占有率)、及び臨床データの精査に基づいて同定する。AB79の安全性及び忍容性を、TEAE、用量修飾、治療中止、バイタルサイン、身体検査、血清化学及び血液学、尿検査、ECG、ならびに併用医薬物を記録及び分析することによって査定する。第1相において、AB79のおよそ6用量を、1コホートあたり3~6名の患者の漸増(ascending)コホート中で評価する。コホートを追加の患者の登録によって拡大して、試験の第2a相部分に登録する前にRP2Dの選択をさらに説明することができる。この試験の第2a相部分において、グレード4以上の非血液学的毒性を、最初の10名の登録された患者から開始して、次いでその後は10名の患者毎にモニタリングする。追加で、患者のコホートは、少なくとも2つの前治療を受けており、試験参加の前の最終治療法へ難治性であるRRMMの患者における、ポマリドミド及びデキサメタゾン(PomDex)のバックボーンレジメンと併用したAB79を受ける。
【0349】
およそ100名の患者を試験に登録する(第1相においておよそ55名の患者及び第2a相において45名の患者)。治療の最大の継続期間は、単剤療法を受ける患者について12か月及び併用コホートの患者についておよそ18か月であると予想される。しかしながら、臨床利益の有る患者(治験担当医師に従って、及び治験依頼者の試験責任医師により承諾して)は、治験依頼者の試験責任医師の明示的な承認により治療を継続することができる。
【0350】
第1相におけるAB79注射を、以下の通り:45mg、135mg、300mg、600mg、1200mg、及び1800mg漸増させる。患者がプレメディケーション治療を受けた後に、用量を、1注射あたり2mL中で最大200mgのAB79までのSC注射としてシリンジにより投与する。複数のSC注射が全処方用量(すなわち300mg用量以上)を投与するのに必要な用量レベルのために、サイクル1の1日目用量を、全予定用量が投与されるまで、各々のSC注射を30分間隔で与えることによって投与する。サイクル1の1日目の後のすべての薬物投与日に、患者がIRを有していなかったならば、SC注射を待機期間なしで同時に与える。第1相のために、AB79の各々の用量を、8週間の間週1回(8用量)、次いで16週間の間2週間に1回(8用量)、及び次いでPDまたは許容できない毒性が起こるまで4週間に1回として、各々の28日間の治療サイクルで皮下投与する。患者は、PD、許容できない毒性、または他の理由に起因する脱落までAB79による実施中の治療を受ける。第1相併用コホートのみにおいて、PomDexをパッケージ指示書に従って投与する。表3を参照されたい。
【0351】
第2a相については、DLTの非存在下において、利用可能な安全性、有効性、PK、及び試験の第1相部分からのPD情報の精査に基づいて、用量を選択する。プレメディケーションは第1相及び第2a相において義務付けられる。
【0352】
試験は、確認コホート及び併用コホートを提供する。各々のコホートに、300mgのAB79の用量を、サイクル1及び2の間に8週間の間週1回(8用量)、サイクル3~6の間に16週間の間1週おき(8用量)、及び次いで後続するサイクルでPDまで4週間に1回皮下投与する。少なくとも各々のサブグループ中の6名の患者を、治療法の1つのサイクルを受けた後に、次いで実施中のものに基づいて、安全性及び利用可能な有効性、PK、ならびに薬力学を精査する。さらにこのコホートにおいて、RRMM疾患を有し、抗CD38剤を受けたことがないおよそ12名の患者を登録する。併用コホートは、ポマリドミド及びデキサメタゾン(PomDex)も受け、製品ラベル(Pomalyst USPI)に従って与えられた。デキサメタゾンを、1、8、15、及び22日目に40mg/日でIV投与または経口投与するか、または75歳を超える患者については、1、8、15、及び22日目に20mg/日で与える(Pomalyst USPI、セクション14.1)。併用コホートにおいて、6名までの患者を最初に登録し、サイクル1における安全性を審査する。6名のうちの0名または6名のうちの1名の患者でDLTが発生するならば、追加の12名の患者[以前に抗CD38剤を受けたことがない6名の患者、及び以前に抗CD38剤に接触したことがある6名の患者]を、総数で18名の患者で、AB79の初回用量で試験する。6名の患者のうちの2名でDLTが発生するならば、6名の患者の追加のコホートを漸減用量で試験する。中間的またはより保守的な用量スケジュールも、全体的なより低い用量を提供する手段として実装することができる。ポマリドミドのより低い用量も利用可能な安全性データに基づいて判断される。6名のうちの0名または6名のうちの1名の患者で改訂された用量でのAB79関連DLTが発生するならば、12名までの患者(抗CD38未治療または曝露に関して上記の適格性のある)の追加のコホートを、この用量レベル(換言すれば、初回用量よりも低い用量、中間的なもの、または初回用量よりも保守的)または保守的な用量スケジュールで試験し、総数18名の患者をより低い用量/保守的な用量スケジュールで試験する。6名の患者のうちの2名でより低い用量でのDLTが発生するならば、このコホートをさらなる評価のために停止する。
【0353】
第1相用量確認コホート中の患者は、少なくともPI、IMiD、及びステロイドにより以前に治療されているRRMMの成人患者からなる。患者は、難治性疾患を有するかまたは少なくとも1つのPI及び少なくとも1つのIMiDに不忍容であり、患者は、これらの治療法のうちの1つがPI及びIMiDの併用を含んでいたならば、3つ以上の前治療を受けるかまたは2つ以上の前治療を受けるかのいずれかであるべきである。以前に自己由来幹細胞移植をした患者は、アルキル化剤に追加で曝露されるだろうが、以前に自己由来幹細胞移植をしていない患者は標準的な実践に従ってアルキル化剤に曝露されないかもしれない。6名までの患者が抗CD38剤に対して難治性であり、このコホート中のおよそ12名の患者は抗CD38未治療である。
【0354】
第1相併用コホート中の患者は、レナリドミド及びプロテアソーム阻害物質を含む少なくとも2つの前治療を受け、最終治療法の完了に際してまたはその60日以内にPDを示した、RRMMの成人患者からなる。登録された最初の6名の患者は、以前に抗CD38抗体を受けたことがないか、または以前にそれに曝露され得る。一旦安全性データを精査したならば、RP2D/MTDで登録された以下の患者は、以前に抗CD38モノクローナル抗体を受けたことがない(およそ6名の患者)か、または以前に抗CD38モノクローナル抗体に曝露された(およそ6名の患者)患者である。
【0355】
投薬前医薬物:第1相用量漸増及び用量確認コホート
患者は、各々の投薬日にAB79投与の開始の1~3時間前に以下のプレメディケーションを受ける。デキサメタゾン:初回注射について約20mgのIV用量。経口デキサメタゾン(約20mg)または同等の長時間作用性コルチコステロイドを、後続する注射の前に使用することができる。解熱物質:経口アセトアミノフェン(650~1000mg);抗ヒスタミン物質:経口またはIVのジフェンヒドラミン(25~50mg、または同等物);モンテルカスト10mg(または同等のロイコトリエン阻害物質)。COPDの既往歴のある患者に、注入後医薬物(短時間作用性及び長時間作用性の気管支拡張薬ならびに吸入コルチコステロイド等)を処方することができる。最初の4回の注入後に、患者が主要なIRを経験しなければ、これらの追加の吸入される注入後医薬物を中止することができる。
【0356】
投薬前医薬物:第1相併用コホートのみ(AB79-PomDex)
患者は、各々の投薬日にAB79投与の開始の1~3時間前に以下のプレメディケーションを受けるだろう。解熱物質:経口アセトアミノフェン(650~1000mg);抗ヒスタミン物質:経口またはIVのジフェンヒドラミン(25~50mg、または同等物);モンテルカスト10mg(または同等のロイコトリエン阻害物質)。COPDの既往歴のある患者に、注入後医薬物(短時間作用性及び長時間作用性の気管支拡張薬ならびに吸入コルチコステロイド等)を処方することができる。最初の4回の注入後に、患者が主要なIRを経験しなければ、これらの追加の吸入される注入後医薬物を中止することができる。
【0357】
投与後の医薬物
コルチコステロイドクリームを注射部位(複数可)へ局所的に適用し、氷をおよそ10~15分間局所的に適用する。患者は、注射後に臨床的に示されるような遅延した注射に伴う反応の予防のために低用量メチルプレドニゾロン(<20mg)を受けることができる。
【0358】
組入れのための主な基準
組入れのための主な基準は以下のものを含む。年齢が18歳以上の≦2のECOGパフォーマンスステータスの男性及び女性の患者であり、治験担当医師によって決定される追加療法を要求する。患者は、AB79の第1の用量の前に規定された最小間隔内で以下の治療/手順の最終的な用量:抗体療法(抗CD38を含む)について180日間;自家移植について90日間;化学療法、放射線療法、及び主要な外科手術について14日間;ならびにコルチコステロイド療法について7日間(毎日10mgのプレドニゾンの全身等価量まで可能)を、受けなくてはならない。患者は以下の臨床検査の値:絶対好中球数≧1.0×10/L;血小板≧75,000/mm(≧75×10/L);ヘモグロビン≧7.5g/dL;クレアチニンクリアランス≧30mL/分(Cockcroft-Gaultの式);総ビリルビン≦正常範囲の上限(ULN)の1.5倍;及びアラニンアミノトランスフェラーゼ/アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ≦2.5×ULNによって決定されるように、適切な器官機能を有していなければならない。患者は、IMWG基準に従って文書化されたRRMMを有していなければならず、以下の:血清Mタンパク質≧0.5g/dL(≧5g/L)及び尿Mタンパク質≧200mg/24時間のうちの1つとして定義される測定可能な疾患がある。血清タンパク質電気泳動または尿タンパク質電気泳動において測定可能なMタンパク質の無い患者は、血清FLC比が異常であるならば、関与するFLCレベル≧10mg/dL(≧100mg/L)の血清遊離軽鎖(FLC)アッセイ結果を有していなければならない。患者は、IMWG基準によって定義されるRRMMのエビデンスを有していなければならない。漸増コホート及び確認コホート中の患者については、プロテアソーム阻害物質(PI)、免疫調節薬(IMiD)、及びステロイドを含む骨髄腫療法を、以前に受け;少なくとも1つのPI及び少なくとも1つのIMiDに対して難治性または不忍容であり;≧3レジメンの前治療を受けたか、またはそれらの前治療のうちの1つがPI及びIMiDの併用を含んでいたならば、少なくとも2レジメンの前治療を受けるかのいずれかであり;第1相において、単一薬剤としてまたは併用で抗CD38剤への以前の曝露は可能であるが、漸増コホート中の患者については要求されない。併用コホートのみの患者は、≧2の抗骨髄腫前療法による前治療を受け;再発疾患または再発及び難治性疾患のいずれかを有し;最終抗骨髄腫療法の完了に際してまたはその60日以内に進行し;患者は、抗CD38モノクローナル抗体を受けたことがないか、または以前にそれに曝露されるのいずれかであり得るが;治療の間の任意の時間で少なくとも1つの抗CD38mAb療法に対して難治性の患者のコホート、及び以前に抗CD38 mAbを受けたことがない患者のコホートがある。試験の第2a相部分において、RRMMの患者の最大2つのコホート:治療の間の任意の時間で少なくとも1つの抗CD38のmAb療法に対して難治性のコホート、及び以前に抗CD38 mAbを受けたことがないコホートを登録することができる。
【0359】
主要評価項目及び副次評価項目:
第2a相において、およそ48名の追加の患者(抗CD38未治療のRRMMの24名までの患者、及び抗CD38療法へ難治性のRRMMの24名までの患者)を治療して、RRMMの患者の2つの拡大コホート中のORRの予備的予測を提供する。試験の第2a相は、MTD/RP2Dでの安全性プロファイルのより着実な予測も提供するだろう。
【0360】
統計的検出力の前向き計算は行われていないが、以下の表は、24名の患者のコホートサイズで観察されたORRに基づく、観察された奏効率の範囲についての80%CIの幅を示す。
【0361】
【表11】
【0362】
DLTの定義
NCI CTCAE(バージョン4.03、2010年6月14日発効)に従って、毒性を評価する。DLTは、明らかに外部の原因に起因する事象を除いて、関係性には関係なく、以下の事象のうちの任意のものとして定義される。明らかに外部の原因に起因する事象を除く、グレード4の臨床検査の異常;明らかに外部の原因に起因し且つ第1のサイクルの間に起こっている事象を除く、NCI CTCAEのグレード≧3の非血液学的TEAE(抗催吐性物質により後続して管理することができるグレード3の悪心/嘔吐を除いたもの(適切な医学的介入有りまたは無しで48時間を超えて持続するグレード3の悪心または嘔吐);3日間未満(およそ72時間)続くグレード3の疲労感;7日間以内にグレード≦1またはベースラインへ治癒する、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのグレード3の上昇;対症療法(例えば抗ヒスタミン物質、非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAID)、麻薬、IV液)へ応答する、グレード3の症状の再発のない、グレード3のIR);明らかに外部の原因に起因し且つ第1のサイクルの間に起こっている事象を除く、NCI CTCAEのグレード≧4の血液学的TEAE(グレード≧3の溶血を除く、明らかに外部の原因に起因する事象(例えば直接Coombs試験が陰性)を除く;>100ccの失血量または輸血の必要性として定義される臨床的に意味のある出血をともなうグレード≧3の低い血小板数);サイクル2の開始前に次に予定される注射の>2週間の遅延をもたらす治療関連毒性からの不完全な回復。
【0363】
用量漸増の目的のために、サイクル2の1日目の投与の前に起こるDLTは、上の基準を満たす事象である。後のサイクルにおいて起こるDLT定義を満たすTEAEは、RP2DとしてのMTDの適合性を決定する。
【0364】
治験依頼者がより低い用量コホート中での後続する治療を承認しない限り、DLTを経験する患者は試験治療から脱落し、かかる患者は、漸増決定のためのそのより低い用量コホート中の患者としてカウントされないだろう。
【0365】
第1相において、DLT以外の理由の査定で、28日(±2)の治療ウィンドウまたは29日目(すなわちサイクル2、1日目)内でAB79の4つの全用量を受けない患者は、交代する。DLTを経験する患者は交代しない。
【0366】
3+3用量漸増スキーマを使用して、用量漸増決定及びMTD/RP2D推定を説明する。最初に、3名の患者を開始用量レベルで登録する。3名の患者のコホート中の患者の誰も28日間のサイクルの間にDLTを示さないならば、そのとき用量は、3名の患者の次のコホートについて漸増させることができる。3名の患者のコホート中の1名の患者がDLTを示すならば、そのときこのコホートを合計で6名の患者へ拡大する。6名の患者のうちの≦1がDLTを経験するならば、漸増を次のより高い用量レベルへ継続し、そこに3名の患者を登録する。2名以上の患者(3名のうちの2名以上または6名のうちの2名以上)がDLTを経験するならば、投薬を次のより低い用量レベルへ漸減し、3名の患者がその用量レベルで治療されていれたならば、そこに3名の追加の患者を登録する。6名の患者が、6名のうちの1名以下のDLTのより低いレベルで登録されているならば、投薬を停止し、この用量レベルをMTDと判断することができる。MTDは、DLTの患者が1名以下の6名の患者のコホートでの最高用量として定義される。
【0367】
すべてのコホートについての治療は、28日間のサイクルの長さを使用する。開始する治療の新たなサイクルについては、患者は、以下の基準を満たさなければならない。(a)絶対好中球数は≧1000/mmでなくてはならない;血小板数は≧75,000/mmでなくてはならない;(c)治療法を再開するには、AB79による治療に関連すると判断された毒性は、グレード≦1もしくはベースラインへ、または医師によって許容されると判断されるレベルへ治癒しなくてはならない。患者が再治療のための上で引用される基準を満たさないならば、次の治療サイクルの開始を1週間遅らせる。その週の終了時に、患者を再評価して、再治療のための基準が満たされたかどうかを決定する。28日間よりも長い後続のサイクルの遅延が薬物関連AEに起因してあるならば、治験担当医師によって査定された臨床利益がない限り、治験依頼者の医療モニターによる合意により、患者は治療から脱落することができる。ならびに(d)同じサイクル内のAB79注射については、治療を保留する決定は、臨床データ及び分析データに基づき、ならびに患者が同じサイクル中の以前の注射により経験した毒性にも基づき、治験担当医師の裁量へ委ねられる。治験担当医師は、患者が次の注射の時に回復している急性毒性(IRのような)と、明確な回復途上にない場合に別の注射に際して悪化し得る亜急性毒性(例えば好中球減少症)とを区別するべきである。スケジュール日に用量を投与することができないならば、治験担当医師の裁量で、48時間以内に患者を精査することができる。この48時間のウィンドウ中のサイクル内でAB79を投与することができないならば、当該用量を抜かし、患者に次の投与を予定する。
【0368】
AB79に起因するAEを経験する患者は、同じ用量による試験治療を継続することができるか、AB79治療を保留することができるか、または試験を恒久的に中止することができる。治療関連AEまたは治療関連の可能性のあるAEの理由で試験薬を保留する患者は、AEの性質及び重症度、ならびにそれが最初の出来事または再発性であるかどうかに依存して、同じ用量レベルでまたは低減させた用量でAEの治癒後に試験薬治療を再開することができる。
【0369】
安全性及び疾患の査定
この試験の第2a相部分において、グレード4以上の非血液学的毒性を、最初の10名の登録された患者から開始して、次いで10名の患者毎にモニタリングする。≧4/10及び≧6/20の停止限界に到達するならば、試験への集積を保留して調査を可能にする。研究チームによる考慮後に、集積を再開することができるかどうかに関する決定を下す。境界は、臨床試験における転帰をモニタリングするためにBayes法に基づく。停止ルールが満たされるならば、二項分布の毒性率についてのパラメーターが0.4及び1.6の事前ベータ分布により、真の毒性率が18%を超える確率が80%である。
【0370】
主要評価項目
第1相のために重要な順序での主要評価項目としては、全体的な及び用量レベル毎のTEAEの患者の数;各々の用量レベルでのDLTの患者;グレード≧3のTEAEの患者;SAEの患者;TEAEの理由で中止になる患者;及び用量修飾の患者(遅延、中断、用量低減)が挙げられる。
【0371】
第2a相についての主要評価項目は、IMWG Uniform Response Criteriaによって定義されるように、試験の間に部分奏効(PR)以上を達成した患者の比率として定義されるORRである。
【0372】
第1相についての主要評価項目は、単一薬剤として及びPomDexのバックボーンレジメンに追加した場合の、安全性転帰及び有効性転帰の両方に基づくRP2D;単一薬剤として及びPomDexのバックボーンレジメンに追加された場合の、以下のPKパラメーターについて要約した統計(実測最高濃度(Cmax);Cmaxが最初に起こる時間(tmax);時間0から最終定量化可能濃度の時間までの濃度-時間曲線下面積(AUClast));MMの患者について査定された、単一薬剤として及びPomDexと併用したAB79の抗腫瘍活性の予備的評価(IMWG Uniform Response Criteriaによって定義されるように、試験の間にPR(50%の腫瘍低減)以上を達成した)患者の比率として定義される、ORRを測定することによって);25%の腫瘍低減として定義される最小奏効(MR)を達成した患者(血清FLCによって測定可能な疾患の患者を含む)の比率;ならびに抗AB79抗体の出現率及び特徴、である。
【0373】
第2a相についての主要評価項目は、DLT様の頻度及びAB79による延長治療の経過にわたって起こる他のTEAE(用量修飾、治療中止、及びバイタルサインについての情報を含む);以下のPKパラメーター:Cmax、tmax、及びAUClastについて要約した統計;抗AB79抗体の出現率及び特徴;25%の腫瘍低減として定義されるMRを達成した患者の比率の評価;奏効の継続期間(DOR)(第1の奏効の報告の日付から第1のPDの報告の日付までの時間として定義される);PFS(第1の用量の日付から、PD(IMWG基準によって定義される)の最も早い日付または任意の原因に起因する死亡の日付までの時間として定義される);OS(第1の用量の日付から任意の原因に起因する死亡の日付までの時間として定義される);奏効までの時間(第1の用量の日付から奏効(PR以上)の第1の報告の日付までの時間として定義される)、である。
【0374】
試験の第1相及び2a部分の探索的評価項目は、臨床的有効性及び安全パラメーターとの相関性を検査することが可能なバイオマーカーを探索することであり、治療法の前及びその間のMM細胞及び他の免疫細胞上でのCD38発現;免疫細胞上のAB79の薬力学的プロファイル(CD38占有率を含む);ベースライン時に及び治療の間の異なる時間間隔でのCD38+免疫細胞を含むBMA及び/または全血液細胞の免疫表現型分析;ならびにベースライン時に及び治療の間の異なる時間間隔での薬力学的バイオマーカー(BCR及びTCRクローン性、サイトカイン、ケモカイン、及び補体タンパク質が挙げられるがこれらに限定されない)、を検査することを包含するがこれらに限定されない。
【0375】
PK、薬力学的、及びバイオマーカーの査定のための一次検体収集
血液サンプルを、AB79の血清濃度の測定及びバイオマーカーの査定のために様々なタイムポイントでの静脈穿刺または留置カテーテルを経由して収集する(BMAを例外として)。
【0376】
PKの測定
AB79の濃度の測定のための血清サンプルを複数のタイムポイントで収集する。サンプリングスキームの変化がAB79のPKプロファイルをより良好に特徴づけるのに必要であると判断されるならば、サンプルの全数ではなく、サンプルのタイミングを、新たなPKデータに基づいて試験の間に改変することができる。
【0377】
バイオマーカー及び薬力学的測定
複数のバイオマーカーを査定して、安全性、PK、及び可能性であるならば有効性との相関性のために検査する。これらのバイオマーカーは、AB79への奏効または有害反応のより高い確率を有する患者を同定するのに使用される。研究されるマーカーは、薬物それ自体または治療される疾患のいずれかに結びつけられるマーカーである。免疫系活性化のマーカーを、記述的統計を使用して要約する。
【0378】
薬力学的及びCD38占有率の測定
BMAサンプルを、サイクル2、4、7、及び13の開始時に、スクリーニング時のMM細胞の表面上でCD38発現を分析するために収集する。BMA中のMM細胞上のCD38占有率の査定を、治療の間に行う。サイクル2、4、7、及び13の開始時に収集するBMAサンプルを、MM細胞上のCD38占有率の分析のためにも使用する。占有率の査定を一元的に遂行する。これらのサンプルからの残存する細胞を分子的な特徴づけのために使用し、有効性に対するFcγ受容体多型の影響、及びAB79の安全性、及びAB79の結合エピトープの遺伝子型決定が挙げられるがこれらに限定されない。
【0379】
CD38占有率の査定は、循環中のCD38発現サロゲート細胞(例えばPB、NK細胞、及び単球)の表面上のAB79によるCD38の占有率の程度を測定する。
【0380】
フローサイトメトリーのための血液サンプルを、すべてのサイクルの1日目に、及びフォローアップ来院時に採血する。これらの血液サンプルを、フローサイトメトリーによって免疫細胞(Bリンパ球及びTリンパ球、単球、ならびにNK細胞等)の存在及び変化について分析する。血液サンプルを、サイクル1及び2における投薬前及び第1の注射の24時間後に、次いで各々のその後の指示された来院時の投薬前に収集する。これらのサンプルからの残存する細胞を分子的な特徴づけのために使用するが、該特徴づけは、有効性に対するFcγ受容体多型の影響、及びAB79の安全性、及びAB79の結合エピトープの遺伝子型決定を含むがこれらに限定されないだろう。
【0381】
ADAの査定
抗AB79免疫原性の査定のための血清サンプルを、様々なタイムポイントで収集する。血液サンプルを、AB79の投与前に(すなわち1日目に投薬する前に;ベースライン値)、次いで後続して各々の指定した来院時のAB79投薬の前に(ベースライン後値)、及び過敏症/IRと一致していると治験担当医師によって判断されたTEAEを経験する任意の患者の来院時に、収集する。サンプルを、ADA力価について最初にスクリーニングする。サンプルがADA陽性として検出されるならば、中和活性について査定され得る。
【0382】
直接Coombs試験及び間接Coombs試験
直接Coombs試験及び間接Coombs試験のための血清サンプルを、様々なタイムポイントで収集する。
【0383】
試験治療の完了(個別患者について)
患者は、PD、許容できない毒性、同意の撤回、死亡、または治験依頼者による試験の終結を経験するまで、AB79を受ける。患者は、試験薬の最終用量の30日後に、または後続の代替の抗がん療法の開始前に、フォローアップ来院をして、任意の遅延したAEの検出の可能にする。PD以外の理由での試験治療を中止した患者は、EOTから、PDが起こる、死亡、後続の抗がん療法の開始、試験終結、または試験治療の中止の12か月後、のうちのいずれか早く起こる方まで、4週毎にPFSフォローアップを継続する。死亡、フォローアップの喪失、同意の撤回、または試験終結まで、OSについて12週毎に患者をフォローアップする。試験の継続期間はおよそ42か月(3.5年)である。
【0384】
試験薬による治療の中止及び患者の交代
以下の基準:患者が、AE、または参加の継続が患者の最善の利益でない治験担当医師に示す他の医学的病態を経験すること;患者による脱落;及び女性患者で妊娠が確認されること、のうちの任意のものを満たす患者については、試験薬を恒久的に中止する。試験薬による治療は、以下の理由:AE/SAE;治験実施計画書の逸脱;PD;症状悪化;不十分な治療応答;治験依頼者により終了された試験;フォローアップの喪失;または他のもの、のうちの任意のもののためにも中止され得る。
【0385】
全治療経過を完了する前に、PD以外の理由で何名かの患者が試験薬を中止し得る。これらの患者は、PDが起こるまで、治療後のPFS査定のために試験中に残るだろう。
【0386】
有害事象
治療前事象の定義
治療前事象は、試験に参加するために十分な説明に基づく同意に署名したが任意の試験医薬物の投与の前の患者または対象における任意の好ましくない医療上の出来事であり、それは、試験参加との因果関係を必ずしも有する必要はない。
【0387】
有害事象(AE)の定義
AEは、医薬製品を投与された患者または対象における任意の好ましくない医療上の出来事を意味し、好ましくない医療上の出来事は、この治療との因果関係を必ずしも有する必要はない。したがって、AEは、それが医薬製品に関連しても関連しなくても、医薬(研究)製品の使用に一時的に付随する、任意の不利で意図しない徴候(異常な臨床検査所見を含む)、症状、または疾患であり得る。これは、試験薬の投与以降の重症度または頻度の増加を有する、任意の新たに起こる事象、または以前の病態を含む。異常な臨床検査値は、その値が、治療における中止もしくは遅延、用量修飾、治療介入を導かないか、または治験担当医師によってベースラインからの臨床的に有意な変化と判断されない限り、AEとして査定されないだろう。
【0388】
重篤有害事象(SAE)の定義
SAEは、任意の用量で、(a)死亡をもたらす;(b)生命を脅かす(患者が事象の時に死亡のリスクがあったAEを指す。それは、もし仮により重症ならば死亡を引き起こしたかもしれないという事象は指さない);(c)入院患者の入院または既存の入院の延長を要求する;(d)持続性または有意な障害(通常の生活機能を遂行する人の能力の実質的な混乱として定義される)または無能力をもたらす;(e)先天性異常/出産時欠損である;または(f)医学的に重要な事象である、任意の好ましくない医療上の出来事を意味する。(f)は死亡をもたらさないAEを指し、それは、直ちに生命を脅かすかまたは入院を要求するが、それが適切な医学的判断に基づいて、患者に危害を及ぼし得るか、上でリストされた転帰のうちの1つを防止する医学的もしくは外科的な介入を要求するか、または、感染性病原体の医薬製造品を経由する伝達の疑いに関与する場合に、重篤であると判断され得る。かかる医学的事象の例としては、緊急処置室または家庭で集中治療を要求するアレルギー性気管支痙攣、入院患者の入院をもたらさない血液疾患もしくは痙攣、または薬物依存性もしくは薬物乱用の発症が挙げられる。病原性または非病原性である、任意の生物体、ウイルス、または感染性粒子(例えば伝達性海綿状脳症を伝達するプリオンタンパク質)は、感染性病原体と判断される。
【0389】
この試験において、任意の臨床検査異常を含む各々のAEについての程度を、NCI CTCAE(バージョン4.03、2010年6月14日発効)を使用して決定する。重篤なという用語及び重症のという用語は同意語ではないので、程度が重症である(グレード3または4)と判断されるSAEとAEとの間の明瞭化が行われる。重症のという一般的な用語は、具体的な事象の程度(重症度)を記載するのにしばしば使用されるが、事象はそれ自体比較的マイナーな医学的意義であり得る(グレード3の頭痛等)。これは重篤と同じではなく、重篤は上で記載される患者/事象の転帰または活動基準に基づき、患者の人生または機能する能力を脅かす事象に通常付随する。重症のAE(グレード3または4)は、必ずしも重篤であると判断される必要はない。例えば、1000/mm~<2000/mmの白血球数は、グレード3(重症)と判断されるが、重篤であると判断されなくてもよい。重篤度(程度ではない)は規制報告義務の定義のためのガイドとして供される。
【0390】
潜在的リスク
AB79の作動機序に基づいて、潜在的なAEとしては、注入または注射部位の反応(IR)、サイトカイン放出症候群(CRS)、血液学的影響、及び感染が挙げられ得る。
【0391】
IRは潜在的に用量制限的AEであり、血液系悪性腫瘍の治療を目標とした生物学的薬剤のIV投与にしばしば付随する。IRは、これらの治療法のSC注射に付随する頻度は低くなる。抗体媒介性の「真の」臨床過敏性反応は、反復曝露後に起こる。過敏症の症状は、軽症の皮膚発疹から、より重症の反応、喘鳴、低血圧、不十分な灌流、呼吸停止、及びまれに死亡までの範囲である。非アナフィラキシー性の臨床的過敏症が最初の1時間以内に起こるが、遅延した応答が報告されていた。生命を脅かす可能性のある病態であるアナフィラキシーの症状は、腫脹、血管浮腫、気管支痙攣、呼吸困難、及びショックの範囲である。
【0392】
CRSは、抗炎症薬及び抗腫瘍療法において使用されるモノクローナル抗体の使用にしばしば付随する重要なIRを表わす。CRSは、治療法の初期に起こり、免疫系の高レベルの活性化ならびにサイトカイン放出の増加をもたらすことができるT細胞の関与及び分裂増殖に起因して、多くの場合薬物の最初の注入後に起こり得る。CRSの特徴は発熱である。CRSは、発疹、蕁麻疹、頭痛、悪寒、疲労感、悪心、及び/または嘔吐も示す。重症のサイトカイン放出症候群(SCRS)は、重症の呼吸困難を特徴とし、多くの場合気管支痙攣及び低酸素症に加えて、発熱、悪寒、硬直、蕁麻疹、及び血管浮腫が付随する。この症候群は、腫瘍崩壊症候群のいくつかの特色(高尿酸血症、高カリウム血症、低カルシウム血症、リン酸塩過剰血症、急性腎不全、及び乳酸デヒドロゲナーゼの上昇等)が付随し、急性呼吸不全及び死亡が付随し得る。急性呼吸不全は、胸部X線で見ることができる間質性肺浸潤または間質性肺浮腫等の事象が付随し得る。当該症候群は、第1の注入の開始の1~2時間以内に頻繁に現われる。肺機能不全の既往歴のある患者または肺腫瘍浸潤の者は、転帰不良のリスクが高く、よく注意して治療される。SCRSを発症する患者は、投薬を直ちに中断するべきであり、積極的対症治療を受けるべきである。
【0393】
血液学的影響としては、血小板、リンパ球、及びRBCの低減が挙げられ得る。
【0394】
免疫抑制に続発する細菌感染及び/またはウイルス感染(例えば鼻咽腔炎または上気道感染等)が、観察され得る。
【0395】
PK分析
PKパラメーターを、ノンコンパートメント分析法を使用して推定する。パラメーターを、PK分析セット中に含まれる個別の患者についてAB79の濃度-時間データを使用して計算する。計算されたPKパラメーターとしては、Cmax、tmax、及びAUClastが挙げられるだろうがこれらに限定されない(データによって認められるように)。PKパラメーターを、記述的統計を使用して要約する。個別のAB79濃度-時間データ及び個別のPKパラメーターをリスト中に提示し、用量コホートによる要約統計を使用して集計する。個別及び平均の濃度-時間プロファイルを、用量コホートによりプロットする。この試験において収集したPKデータは、AB79の将来の集団PK分析にも寄与し得る。これらの集団PK分析は、他のAB79臨床試験において収集したデータを含み得る。集団PK分析についての分析プランは別々に定義され、これらの分析の結果は別々に報告される。同様に、この試験において収集した、時間を一致させたPK及び三重ECGデータは、心拍度数(QTc)分析について補正した将来の濃度QT間隔に寄与し得る。これらの分析は、他のAB79臨床試験において収集したデータを含み得る。濃度-QTc分析についての分析プランは別々に定義され、結果は別々に報告される。
【0396】
バイオマーカーの測定
血清サンプルを収集して、循環バイオマーカー変化(サイトカイン、ケモカイン、及び補体タンパク質が挙げられるがこれらに限定されないバイオマーカー)を治療に際してモニタリングする。これらのバイオマーカーは、AB79への奏効または有害反応の経験のより高い確率を有する患者を同定するのに使用され得る。もし要求されるならば、または要求される場合に、バイオマーカーサンプル分析を遂行する。新たな技法が開発され続けているので、バイオマーカー分析のために推奨される方法及び臨床検査は予想することができない。
【0397】
循環バイオマーカーの査定のための血清サンプルを試験来院時に収集する。血液サンプルを以下の通り収集する。
・サイクル1の1日目:投薬前及び第1の注射のおよそ24時間後。
・サイクル1の8、15、及び22日目:投薬前。
・サイクル2の1日目:投薬前及び第1の注射のおよそ24時間後。
・サイクル2の8、15、及び22日目:投薬前。
・サイクル3の1日目及び各々の後続のサイクルの1日目:投薬前。
・EOT来院。
【0398】
免疫原性分析
AB79免疫原性は、ADAが陽性の患者(一過性及び持続性)の比率、出現率、及び特徴(例えばADAの力価、一過性、及び持続性;ならびに中和活性の可能性)、ならびに中和ADAが陽性の第2a相中の患者の比率の決定によって、免疫原性分析セットを使用して分析される。NABも患者において査定する。分析は、ベースライン査定及び少なくとも1つのベースライン後免疫原性査定をした患者から利用可能なデータに基づく。可能であるならば、PKプロファイル、薬物有効性、及び臨床的安全性に対する抗AB79抗体の影響を評価する。
【0399】
有効性分析
MMについてのAB79の予備的有効性を、IMWG Uniform Response Criteriaによって定義されるように、ORR(試験の間にPR以上を達成した患者の比率として定義される)、ならびにsCR、CR、VGPR、及びPRの構成の測定によって評価する。MRも分析するだろう。加えて、AB79の有効性を、DOR、PFS、及び1年OSの測定によって、患者で査定する。TTRも測定するだろう。
【0400】
IMWG基準
MMのIMWG定義:クローン性骨髄形質細胞≧10%、または生検で証明される骨形質細胞腫もしくは髄外形質細胞腫(クローン性は、フローサイトメトリー、免疫組織化学、または免疫蛍光法でのκλ軽鎖制限を示すことによって確立される。骨髄形質細胞パーセンテージは、好ましくはコア生検試料から推定されるべきである;吸引物とコア生検との間で相違する事例において、最高値を使用する)及び以下の骨髄腫を定義する事象のうちの任意の1つまたは複数があるもの。(a)根本にある形質細胞増殖性障害に特異的に帰着することができる末端器官損傷のエビデンス;(b)高カルシウム血症:正常範囲の上限値よりも>0.25mmol/L(>1mg/dL)高いか、または>2.75mmol/L(>11mg/dL)である血清カルシウム;(c)腎不全:1分間あたり<40mLのクレアチニンクリアランスまたは>177μmol/L(>2mg/dL)の血清クレアチニン;貧血:正常値の下限より>20g/L下のヘモグロビン値、またはヘモグロビン値<100g/L;(d)骨病変:骨格放射線撮影、CT、またはPET CTでの1つまたは複数の骨溶解性病変(骨髄に10%未満のクローン性形質細胞があるならば、最小限の骨髄が関与する孤立性形質細胞腫と区別するために、1を超える骨病変が要求される);(e)以下の悪性度のバイオマーカーのうちの任意の1つまたは複数:(i)クローン性骨髄形質細胞パーセンテージ≧60%;(ii)腫瘍性(involved)血清遊離軽鎖:非腫瘍性(uninvolved)血清遊離軽鎖の比§(FLC)≧100;(iii)MRI研究での>1の局所性病変(これらの値はserum Freelite assay(Binding Site Group、Birmingham、UK)に基づく。腫瘍性FLCは≧100mg/Lでなくてはならない。各々の局所性病変は5mm以上のサイズでなくてはならない)。表12を参照されたい。
【0401】
【表12-1】
【0402】
【表12-2】
【0403】
PDは、以下のうちの任意のものの低い奏効値から≧25%の増加として定義される。(a)血清Mタンパク質(絶対増加は≧0.5g/dLでなくてはならない);開始のM構成要素が≧5g/dLであるならば、血清M構成要素の増加≧1g/dLは、再発を定義するのに十分である、及び/または(b)尿のMタンパク質(絶対増加は≧200mg/24時間でなくてはならない)、及び/または(c)測定可能な血清及び尿のMタンパク質レベルの無い患者のみ:腫瘍性FLCレベルと非腫瘍性FLCレベルとの間の差(絶対増加は>10mg/dLでなくてはならない);(d)測定可能な血清及び尿のMタンパク質レベルの無い、及びFLCレベルによる測定可能な疾患の無い患者においてのみ、骨髄形質細胞パーセンテージ(絶対パーセンテージは≧10%でなくてはならない)。代替的に、PDは、以下のうちの任意のものの低い奏効値から≧25%の増加として定義される。(a)新たな骨病変もしくは軟組織形質細胞腫の明確な発症、または既存の骨病変もしくは軟組織形質細胞腫のサイズの明確な増加、あるいは(b)もっぱら形質細胞増殖性障害に帰着させることができる高カルシウム血症(補正血清カルシウム>11.5mg/dL)の発症。
【0404】
PDをコードするためのIMWG基準の明確化:PDについての骨髄基準は、Mタンパク質及びFLCレベルによる測定可能な疾患の無い患者のみに使用されるべきである。「25%の増加」は、Mタンパク質、FLC、及び骨髄結果を指し、骨病変、軟組織形質細胞腫、または高カルシウム血症を指さず、「最低奏効値」は確認値である必要が無い。
【0405】
パフォーマンスステータスについてのECOGスケールを表13中で提供する。
【0406】
【表13】
【0407】
臨床化学、血液学、及び尿検査
血液サンプル分析のための臨床化学及び血液パラメーターならびに尿サンプル分析のためのパラメーターを、表中で以下に示す。
【0408】
AB79単剤療法を受けるコホート中の患者について、表14及び15中で示される以下の試験を遂行する。
【0409】
【表14】
【0410】
【表15】
【0411】
クレアチニンクリアランスの推定のために、以下のCockcroft-Gaultの式:推定クレアチニンクリアランス=[(140-年齢)×体重](kg)/72×血清クレアチニン(mg/dL)]を用いる。女性患者については、上記の式の結果に0.85を掛ける。
【0412】
第1相の併用コホート(AB79-PomDex)コホート中の患者のみについて、表16、17、及び18中で示される以下の試験を遂行する。
【0413】
【表16】
【0414】
【表17】
【0415】
【表18】
【0416】
試験前の予後リスク査定
血液サンプルを、スクリーニング時の血清β2ミクログロブリンのために収集して、患者の疾患状態を査定する。
【0417】
疾患奏効の査定
患者を、IMWG基準に従って疾患奏効について査定する。加えて、血清遊離軽鎖によって測定可能な骨髄腫を有する患者で、MRは、腫瘍性FLCレベルと非腫瘍性FLCレベルとの間の差の25以上で49%以下の低減として定義される。
【0418】
第1相の併用コホート(AB79-PomDex)中の患者について、表19中で示される以下の査定を遂行する。
【0419】
【表19】
【0420】
コンピューター断層撮影/磁気共鳴画像
スキャンを、少なくともスクリーニング時、及びEOT来院時に遂行する。すべての治療相及びフォローアップスキャンは、スクリーニング時に使用した同じ画像化法を使用するべきである。
【0421】
報告された髄外疾患の患者について、全身X線、陽電子放出断層撮影-コンピューター断層撮影(PET-CT)スキャン、コンピューター断層撮影(CT)スキャン(低線量CTを包含する)、または磁気共鳴画像(MRI)スキャンを遂行する。スクリーニングスキャンをAB79の第1の用量の21日前までに遂行することができる。しかしながら、患者に、試験薬の計画された第1の用量から5週間以内に適切な画像検査を遂行するならば、その画像をベースラインとして使用することができ、スクリーニングの一部として反復する必要は無い。疾患が報告されるならば、次いで、PET-CTスキャン、CTスキャン、またはMRIスキャンの反復を要求に応じて遂行して、奏効またはPDを報告する。
【0422】
追加の調査(X線、CT、またはMRI)も、例えば骨痛の事例において、治験担当医師の裁量で遂行することができる。
【0423】
Ig(IgM、IgG、及びIgA)の定量のための血液サンプルを、スクリーニングのための来院時、すべてのサイクルの1日目の投薬前、及びすべての来院時に得る。
【0424】
投薬前の血液及び24時間尿のサンプルを、スクリーニングのための来院時、すべてのサイクルの1日目、及びすべての来院時に得る。
【0425】
血清サンプルを、血清FLCアッセイ(κ鎖及びλ鎖の定量ならびに比を包含する)のために、すべてのサイクルの1日目の投薬前、及びすべての来院時に得る。
【0426】
血清及び尿のサンプルを、スクリーニングのための来院時、CRを確認するためにすべてのサイクルの1日目の投薬前、及びすべての奏効評価の来院時に、血清及び尿の免疫固定検査のために得る。
【0427】
BMAを、スクリーニング期間の間に、ならびにサイクル2、4、7、及びサイクル13の指定された試験来院の開始時に採取する。BMAを疾患査定のためにスクリーニング時に得る(標準的BMAが同意5週間前以内に採取されたならば、そのBMAをベースラインとして使用することができ、細胞遺伝学的評価が利用可能でない場合を除き、スクリーニングの一部として反復する必要はない)。BMAは、CRを査定するため、または必要に応じて疑わしいPDを調査するために、いつでも得られるだろう。
【0428】
del(17)、t(4:14)、及びt(14:16)のハイリスクの異常について歴史的に報告された細胞遺伝学の結果を有していない患者は、スクリーニング時のBMAサンプルについて細胞遺伝学的評価を遂行するだろう。細胞遺伝学的評価は、蛍光in situハイブリダイゼーションまたは従来の細胞遺伝学(核型)を使用して遂行され得る。少なくとも、細胞遺伝学的マーカーは、del(17)、t(4:14)、及びt(14:16)の3つのハイリスクの異常を含まなくてはならない。追加の異常(ampl 1q、del13、またはdel1p)も試験することができる。細胞遺伝学は、局所的な基準に従って局所的に分析される。
【0429】
結果:
AB79-1501試験、AB79単独、またはポマリドミド及びデキサメタゾンと併用(PomDex)
データカットオフの時点で、5名の患者がAB79+PomDexの併用により治療されていた。この日付の時点で、因果関係には関係なく最も一般的なTEAE(≧2患者で)は、好中球減少症及び咳嗽(各々2名の患者)である。全身性反応はなかったか、注射部位反応は稀であった。AB79+PomDexコホート中で、1つのDLT(好中球減少症)があり、MTDの評価は実施中である。試験薬中止を導く薬物関連SAEもしくはAEまたは試験中の死亡は、併用で報告されなかった。
【0430】
AB79は、若干の患者の疾患負荷の少なくとも50%の低減、及び他の患者の疾患負荷の25%~49%の低減として定義された最小奏効によって証明されるような、抗腫瘍活性の初期徴候を示した。データカットオフの時点で、予備的客観的奏効率(ORR)は40%であり、100%の臨床的有用率(小奏効以上として定義される)であった。奏効の継続期間は推定可能ではない。
【0431】
参照による援用
本出願を通して引用され得るすべての引用された参照物(参照文献、特許、特許出願、及びウェブサイトを包含する)の内容は、その中で引用される参照物と同様に、あたかも各々の個別の参照物が、任意の目的のために参照することによってその全体が援用されることが具体的且つ個別に指示されたかのように、それと同程度に、任意の目的のために参照することによってそれらの全体が明確に本明細書に援用される。
【0432】
均等物
本開示は、その趣旨または本質的特徴から逸脱せずに、他の具体的な形態で実施され得る。したがって、前述の実施形態は、本開示を限定するものではなく、すべての点で例証と見なされるべきである。よって、本開示の範囲は、前述の記載によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、したがって特許請求の範囲の均等性の意味及び範囲内に入るすべての変化が本明細書中に包含されることが意図される。当業者に明らかな本発明の実行のための修飾は、添付の請求項の範囲内であることが意図される。
【配列表】
2022537134000001.app
【国際調査報告】