(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(54)【発明の名称】球状の熱可塑性ポリマー粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20220818BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20220818BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220818BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20220818BHJP
【FI】
C08J3/16 CER
C08J3/16 CEZ
B29C64/314
B29C64/153
B29C64/165
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576017
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2020066966
(87)【国際公開番号】W WO2020254498
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】バウダー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ミュールハイムス,ケルシュティン
(72)【発明者】
【氏名】フレーゼ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュタマー,アヒム
【テーマコード(参考)】
4F070
4F213
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AA53
4F070AA54
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4F070AC12
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4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL26
4F213WL96
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性ポリマー粒子であって、前記粒子が球形である熱可塑性ポリマー粒子を製造する方法に関し、該方法は、
(i) 溶融状態で少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを提供することと、
(ii) 少なくとも1つの界面活性物質の水溶液を提供することであって、前記少なくとも1つの界面活性物質の水溶液は100~300℃、好ましくは150~250℃の範囲の温度である、少なくとも1つの界面活性物質の水溶液を提供することと、
(iii) 分散した熱可塑性ポリマーを含む水溶液を得るために、(i)からの少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを(ii)からの界面活性物質の水溶液中に分散させることと、
(iv) 水溶液とその中に固体状態で懸濁している熱可塑性ポリマー粒子とを含み、前記粒子は球形である懸濁液を得るために、分散した熱可塑性ポリマーを含む(iii)で得られた水溶液を熱可塑性ポリマーの凝固点より低い温度まで冷却することと、
(v) (iv)で得られた懸濁液から、球形の熱可塑性ポリマー粒子を分離することと、
(vi) 任意で、(v)で分離された球形粒子を乾燥させることと、
を含み、
ここで、(v)で分離され、任意に(vi)で乾燥された球形粒子は、10μm超のd[4,3]値と20μm超のd90,3値を有する粒径分布を有する、方法。
本発明はさらに、この方法によって得られた、又は得られる球状の熱可塑性ポリマー粒子に関し、及び、
球状の熱可塑性ポリマー粒子自体に関し、該粒子は10μm超のd[4,3]値と20μm超のd90,3値を有する粒径分布を有している。
本発明はさらに、付加製造法のための、好ましくは10μm超のd[4,3]値、20μm超のd90,3値の粒径分布を有する球形の熱可塑性ポリマー粒子、好ましくは球形の熱可塑性ポリマー粒子を含む粉末形態での熱可塑性ポリマー粒子の使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー粒子であって前記粒子が球形である、熱可塑性ポリマー粒子を製造する方法であって、
(i) 溶融状態で少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを提供することと、
(ii) 少なくとも1つの界面活性物質の水溶液を提供することであって、前記少なくとも1つの界面活性物質の水溶液は100~300℃、好ましくは150~250℃の範囲の温度である、少なくとも1つの界面活性物質の水溶液を提供することと、
(iii) 分散した熱可塑性ポリマーを含む水溶液を得るために、(i)からの少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを(ii)からの界面活性物質の水溶液中に分散させることと、
(iv) 水溶液とその中に固体状態で懸濁している熱可塑性ポリマー粒子とを含み、前記粒子は球形である懸濁液を得るために、分散した熱可塑性ポリマーを含む(iii)で得られた水溶液を熱可塑性ポリマーの凝固点より低い温度まで冷却することと、
(v) (iv)で得られた懸濁液から、球形の熱可塑性ポリマー粒子を分離することと、
(vi) 任意で、(v)で分離された球形粒子を乾燥させることと、
を含み、
ここで、(v)で分離され、任意に(vi)で乾燥された球形粒子は、10μm超のd[4,3]値と20μm超のd
90,3値を有する粒径分布を有する、方法。
【請求項2】
前記工程(i)は、
(i.1) 少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを固体状態で提供することと、
(i.2) 前記溶融状態の少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを得るために、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを溶融することであって、前記溶融は、好ましくは、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを溶融温度Tmより高い温度に加熱することによって行われる、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを溶融することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融した熱可塑性ポリマーは、機械的力、超音波及び/又は高圧均質化の作用下で、(iii)の界面活性物質の水溶液中に分散され、分散された熱可塑性ポリマーを含む水溶液が得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(i.2)における溶融は、押出機又は押出手段によって行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(iii)における分散は、100~300℃の範囲の温度、好ましくは150~250℃の範囲の温度で行われる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(iv)における冷却は、20~100℃の範囲の温度、好ましくは30~70℃の範囲の温度で行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(v)又は(vi)で分離された球形粒子は、20μm超、好ましくは50μm超、さらに好ましくは70μm超のd[4,3]値、及び/又は、好ましくは及び、50μm超、好ましくは100μm超のd
90,3値を有する粒径分布を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(v)又は(vi)で分離された球形粒子は、20μm超、好ましくは30μm超、さらに好ましくは40μm超、さらに好ましくは50μm超のd
50,3値を有するが粒径分布を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエステルエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルアミド、ポリブタジエン-スチレン及びエチレン-酢酸ビニルからなる群から、さらに好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU);ポリアミド、ポリアミドコポリマー及びポリエステルからなる群から選択され、さらに好ましくは、少なくともTPUを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの界面活性物質は、ポリビニルアルコール、好ましくは任意に少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルアセテート、さらに好ましくは少なくとも40%の範囲まで、さらに好ましくは少なくとも60%の範囲まで加水分解されたポリビニルアセテートの群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの界面活性物質は、各場合において前記工程(ii)からの少なくとも1つの界面活性物質の水溶液の総質量に基づいて、0.1質量%~20質量%の範囲、好ましくは0.5質量%~10質量%の範囲、さらに好ましくは1質量%~5質量%の範囲の量で存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマー粒子の球形は、球及び楕円体を含む「球形」によって、球状形状で特徴付けられ、球が優先される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法によって、得られた又は得られ得る、球形の熱可塑性ポリマー粒子。
【請求項14】
粒子が、10μm超のd[4,3]値、20μm超のd
90,3値の粒径分布を有する、球形の熱可塑性ポリマー粒子。
【請求項15】
粉末床溶融、高速焼結及びマルチジェット融合の群から好ましくは選択される付加製造法のための、又は粉末コーティング法のための、又は粉末焼結(粉末スラッシュ又はスラッシュ成形)のための、好ましくは10μm超のd[4,3]値、20μm超のd
90,3値の粒径分布を有する球形の熱可塑性ポリマー粒子、好ましくは球形の熱可塑性ポリマー粒子を含む粉末形態での熱可塑性ポリマー粒子の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマーの粒子を製造する方法に関し、該粒子は球形であって、10μm超のd[4,3]値と20μm超のd90,3値を有する粒径分布を有する。本発明はさらに、この方法によって得られた又は得られ得る球形の熱可塑性ポリマーの粒子、及び球形の熱可塑性ポリマーの粒子自体に関し、該粒子は10μm超のd[4,3]値と20μm超のd90,3値を有する粒径分布を有する。本発明はさらに、付加製造法のための球形の熱可塑性ポリマー粒子、好ましくは粉末の形で、好ましくは10μm超のd[4,3]値と20μm超のd90,3値を有する粒径分布を有する熱可塑性ポリマー粒子の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性分散液中のポリマー粒子を製造する方法及び分散液の使用は、US8,604,101B2に記載されている。結果として得られる該分散液は、基板上に最大の均一性を有するポリマーコーティングを実現するために基板に塗布されることを意図としているために、非常に細かく分散した非常に小さな粒子、つまり粒子の質量平均直径が10μm未満である水性分散液に焦点を当てている。このような粒子の細かさは、第一に、非常に薄い層を塗布できるようにするために、第二に、沈殿に関して貯蔵安定性のある分散液を得るために必要とされる。全体として、粒子は基板へ最終的な塗布まで分散状態のままであり、これは、粒子が塗布前に分散液から分離されたり乾燥されたりしないことを意味する。
【0003】
異なる方法が、より大きな寸法の粒子、すなわち、10μmを超えるd[4,3]値を有する粒径分布を有する粒子の粉末の製造に使用されている。例えば、冷間研削(低温研削)又は他の沈殿処理などが挙げられる。しかし、これらの方法は、通常、完全な球状粒子(spherical particles)を生成しない。冷間研削の場合、粒子は例えば角状の破砕粒子であり、沈殿もまた、さらに球形から逸脱した粒子を生じさせる。可能な方法の概要は、例えば、J.Schmidtら(J.Schmidt,M.Sachs,S.Fanselow,M.Zhao,S.Romeis,D.Drummer,K.-E.W.Wirth,W.PeukertのChemical Engineering Science 156(2016)1~10)によって提供されている。球状粒子を有する粉末が非球状粒子を有する粉末よりも有利な点(同じ粒径分布を与えられた場合)は、流動性の向上である。このことは、例えば、付加製造法(ここでは、粉末床溶融、高速焼結、マルチジェット溶融の方法に明確に言及する必要がある)又は、粉末コーティング法(粉末焼結、粉末スラッシュ又はスラッシュ成形)でこのような粉末を使用する場合に有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、熱可塑性ポリマーの球状粒子を有する粉末が提供され得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、熱可塑性ポリマーの粒子を製造する方法によって達成され、前記粒子は球形であり、該方法は、
(i) 溶融状態で少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを提供することと、
(ii) 少なくとも1つの界面活性物質の水溶液を提供することであって、前記少なくとも1つの界面活性物質の水溶液は、100~300℃、好ましくは150~250℃の範囲の温度にある、少なくとも1つの界面活性物質の水溶液を提供することと、
(iii) 分散した熱可塑性ポリマーを含む水溶液を得るために、(i)からの少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを(ii)からの界面活性物質の水溶液中に分散させることと、
(iv) 水溶液とその中に固体状態で懸濁している熱可塑性ポリマー粒子とを含み、前記粒子は球形である懸濁液を得るために、分散した熱可塑性ポリマーを含む(iii)で得られた水溶液を熱可塑性ポリマーの凝固点より低い温度まで冷却することと、
(v) (iv)で得られた懸濁液から、球形の熱可塑性ポリマー粒子を分離することと、
(vi) 任意で、(v)で分離された球形粒子を乾燥させることと、
を含み、
ここで、(v)で分離され、任意に(vi)で乾燥された球形粒子は、10μm超のd[4,3]値と20μm超のd90,3値を有する粒径分布を有する。
【0006】
驚くべきことに、上述の方法によって得られた球状粒子は、上記のパラメータ範囲内であればその大きさに関係なく、球状形状をしており、表面の凹凸が見られないことが判明した。対応する粉末は、良好な流動性を有している。
【0007】
粒径分布は、Malvern Panalytical GmbH,71083 HerrenbergのMastersizer 3000レーザー回折分光計を用いて測定された。この測定方法は当業者に知られている。「d[4,3]値」という表現は、De Brockere直径d[4,3]と呼ばれるものによる平均粒径を表しており、得られた粒径は体積加重であり、つまり直径の大きい粒子ほど信号の重みが大きいことを意味している。「d90,3値」及び「d50,3値」は、粒子アセンブリの粒径分布を表し、ぞれぞれの場合でそれぞれ粒子の90体積%及び50体積%が報告された値よりも小さいサイズを有していることを表す。同じことが「d10,3値」にも適用され、各場合で粒子の10体積%が報告されているそれぞれの値よりも小さいサイズを有することを意味している。
【0008】
熱可塑性ポリマー粒子であって前記粒子が球形である、熱可塑性ポリマー粒子を製造する方法の好ましい実施形態では、工程(i)~(vi)、すなわち(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)は必須であり、すなわち本方法は(vi)の乾燥を本質的な方式で含むことを意味する。
【0009】
熱可塑性ポリマー粒子であって前記粒子が球形である、熱可塑性ポリマー粒子を製造する方法の一実施形態においては、(i)は:
(i.1) 少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを固体状態で提供することと、
(i.2) 溶融状態の少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを得るために、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを溶融することであって、前記溶融は、好ましくは、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーをガラス転移温度Tgより高い温度、さらに好ましくは溶融温度Tmより高い温度に加熱することによって行われる、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを溶融することと、
を含む。
【0010】
(i.2)の溶融は、好ましくは押出機又は押出手段によって行われる。
【0011】
工程(i)又は(i.2)における「溶融」という表現は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーの少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%、さらに好ましくは少なくとも95質量%、さらに好ましくは少なくとも99質量%が溶解されている、部分的に溶融された変異体をも含む。熱可塑性ポリマーの溶融及びさらなる処理の上限温度は、特定のポリマーに依存する。当業者であれば、問題のポリマーをパイプラインを介して分散機に搬送することができるように、そして分散装置のフローフィールドで所望の液滴の細かさにポリマーを粉砕することができるように、粘度が十分に低くなるよう選択しなければならないことを知っているであろう。一方で、モル質量/質量分布における望ましくない変動を避けるために、高すぎるレベルで選択してはならない。また、ポリマーの破壊が起こるほど高くてはならない。
【0012】
工程(iii)は、好ましくは工程(iii.1)と(iii.2):
(iii.1) (i)で得られた少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを、溶融状態で(ii)で提供された少なくとも1つの界面活性物質の水溶液に添加することと、
(iii.2) 分散した熱可塑性ポリマーを含む水溶液を得るために、(i)又は(iii.1)の少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを、(ii)又は(iii.2)の界面活性物質の水溶液に分散させることと、
を含む。
【0013】
工程(iii.1)及び(iii.2)は、連続的及び/又は同時に実行され、つまり、(i)で得られた溶融状態の少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを、(ii)で提供された少なくとも1つの界面活性物質の水溶液に、好ましくは連続的又は不連続的に、好ましくは連続的に添加することを意味し、(iii.2)での分散は連続的又は不連続的に、好ましくは連続的に行われる。有利なことに、これにより、溶融状態の少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを直接かつ分散操作での活性化された剪断力によって相反転させることなく分割し、それに対応して、界面活性物質の水溶液中の均一な分布を生じる。
【0014】
(iii)で得られた分散された熱可塑性ポリマーを含む水溶液は、界面活性物質の水溶液を連続相とし、熱可塑性ポリマーを分散相とする分散液の形態である。熱可塑性ポリマー粒子であって前記粒子が球形である、熱可塑性ポリマー粒子を製造する方法の一実施形態では、溶融した熱可塑性ポリマーが、機械的力、超音波及び/又は高圧均質化の作用下で、(iii)の界面活性物質の水溶液中に分散され、分散された熱可塑性ポリマーを含む水溶液を得る。界面活性物質の水溶液での溶融した熱可塑性ポリマーの分散は、当業者に知られている分散装置で行われることが好ましく、例えば、撹拌機、静的ミキサ、動的分散機、例えばロータステータ分散機、例えば歯付きホイール分散機、コロイドミル及び動的フローミキサ、ならびローター・ローター分散機などが挙げられる。さらに分散は、超音波又は高圧均質化の助けによって行われてもよい。
【0015】
熱可塑性ポリマー粒子であって前記粒子が球形である、熱可塑性ポリマー粒子を製造する方法の一実施形態では、(iii)での分散は、100~300℃の範囲の温度、好ましくは150~250℃の範囲の温度で行われる。
【0016】
熱可塑性ポリマー粒子であって前記粒子が球形である、熱可塑性ポリマー粒子を製造する方法の一実施形態では、(iv)での冷却は、20~100℃の範囲の温度、好ましくは30~70℃の範囲の温度で行われる。
【0017】
工程(v)の分離は、当業者に知られている方法で行うことができ、例えば、濾過もしくは遠心分離、又は濾過もしくは遠心分離の混合、又は連続したろ過と遠心分離、又は遠心分離とろ過などが挙げられる。
【0018】
熱可塑性ポリマー粒子を製造する本方法の一実施形態では、(v)又は(vi)で分離された球形の粒子は、20μm超、好ましくは50μm超、さらに好ましくは70μm超のd[4,3]値、及び/又は、好ましくは及び、50μm超、好ましくは100μm超のd90,3値を有する粒径分布を有する。好ましくは、(v)又は(vi)で分離された球形の粒子は、20μm超、好ましくは30μm超、さらに好ましくは40μm超、さらに好ましくは50μm超のd50,3値を有する粒径分布を有している。
【0019】
任意の乾燥後に得られる球状粒子を含む粉末の粒径分布の分類は、例えば、ふるい分け、ウィンドシフティング、又はこれら2つの方法の組み合わせによって行われることができる。さらに、(iv)の分離の前又は(v)のその後の任意の乾燥の前に、懸濁液中の粒径分布の絞り込みを行うこともでき、例えば、湿式のふるい分け又は重力もしくは遠心場での除去、又はこれら2つの方法の組み合わせによって行うことも可能である。
【0020】
熱可塑性ポリマーの粒子を製造する方法の一実施形態では、(v)で除去され、又は(vi)で乾燥された乾燥粒子であって、前記粒子は球形である乾燥粒子は、20以上から1000μmの範囲、好ましくは50以上から500μmの範囲、さらに好ましくは70以上から200μmの範囲のd[4,3]値、及び/又は、20以上から500μmの範囲、好ましくは30以上から300μmの範囲、さらに好ましくは40以上から400μmの範囲、さらに好ましくは50以上から100μmの範囲のd50,3値、及び/又は、50以上から500μmの範囲、好ましくは100以上から400μmの範囲、さらに好ましくは150以上から300μmの範囲d90,3値を有している。
【0021】
d10,3値は、好ましくは2~80μmの範囲、さらに好ましくは5~50μmの範囲、さらに好ましくは8~40μmの範囲の粒径分布を有する。
【0022】
分離後に任意で行う乾燥は、粒子形態及び粒径分布に影響を及ぼさない、当業者に知られた方法で行われる。乾燥されるのは(v)で分離された粒子であり、これらは乾燥材料を構成する。このような乾燥材料の乾燥に適した方法は、好ましくは、加熱、凍結乾燥、超臨界乾燥、マイクロ波乾燥、真空乾燥、吸着乾燥、凝縮乾燥、及び加熱ガスの使用の群から選択される。乾燥に使用される装置は、好ましくは、パドル乾燥機、ベルト乾燥機、及び(乾燥)吸引フィルタからなる群から選択される。
【0023】
熱可塑性ポリマーの粒子を製造する方法の一実施形態では、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエステルエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルアミド、ポリブタジエン-スチレン及びエチレン-酢酸ビニルからなる群から、さらに好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU);ポリアミド、ポリアミドコポリマー及びポリエステルからなる群から選択され、さらに好ましくは、少なくともTPUを含む。熱可塑性ポリマー、特にTPUの調製においては、さらなる化合物、例えば触媒、及び/又は慣用の助剤及び/又は添加剤が使用され得る。慣用的な助剤とは、例えば、充填剤、難燃剤、核剤、酸化安定剤、潤滑剤及び離型剤、染料、顔料、及び任意に、例えば、加水分解、光、熱又は変色に対する保護のための安定剤、無機充填剤及び/又は有機充填剤、補強剤及び可塑剤である。慣用的な助剤及び添加剤は、例えば「Kunststoffhandbuch」[Plastics Handbook](「Kunststoffhandbuch」;7、「ポリウレタン」[ポリウレタン]、Carl Hanser Verlag、第1版、1966年、103~113頁)に記載されている。
【0024】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、当業者に知られている。一実施形態では、TPUは、以下の成分:
- 少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの化合物(C1)と、
- 少なくとも1つのイソシアネート(I1)と、
- 少なくとも1つのジオール(D1)と、
に基づいている。
【0025】
少なくとも1つのジオール(D1)と少なくとも1つのイソシアネート(I1)のモル比は、典型的には、1:3~3:1の範囲である。少なくとも1つのジオール(D1)と少なくとも1つのイソシアネート(I1)のモル比は、好ましくは1:1~1:2の範囲であり、好ましくは1:1.2~1:1.8の範囲、さらに好ましくは1:1.4~1:1.6の範囲である。
【0026】
少なくとも1つの化合物(C1)は、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する任意の化合物であり得る。イソシアネート反応性基は、好ましくはヒドロキシ基又はアミノ基である。少なくとも1つの化合物(C1)は、TPUの特性を変更するために添加されることができる。少なくとも1つのジオール(D1)と少なくとも1つのイソシアネート(I1)の混合物を有する熱可塑性ポリウレタンを与えることができる限り、任意の化合物を使用することができる。例えば、少なくとも1つの化合物(C1)は、ポリオール、又は代わりにポリオール以外の少なくとも2つのヒドロキシ基又は少なくとも2つのアミノ基を有するポリマー、例えば、シリコンを含む疎水性ポリマー又はオリゴマーであってよい。好ましい実施形態では、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの化合物(C1)は、ポリオールである。ポリオールは、当業者に知られており、例えば、「Kunststoffhandbuch,7,ポリウレタン」、Carl Hanser Verlag,3rd edition 1993,section 3.1に記載されている。優先的に使用されるポリオールは、イソシアネートに対して反応性のある水素原子を有するポリマー化合物である。ここでは、すべての適切なポリマー、例えばポリエーテルポリオールもしくはポリエステルポリオール又はこれらの2つ以上の混合物、好ましくはポリエーテルジオールもしくはポリエステルジオール、又はこれらの2つ以上の混合物を使用することが可能である。好適なポリエーテルジオールは、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、エチレンオキシド(EO)もしくはプロピレンオキシド(PO)、又はこれらの混合物に基づくポリエーテルジオール、例えば、ブロックコポリマーなどのコポリマーである。さらに、任意の適切なポリエステルジオールを使用することができ、ここでのポリエステルジオールにはポリカーボネイトジオールも含まれる。少なくとも1つのポリエステルジオールを使用することが好ましい。
【0027】
少なくとも1つのイソシアネート(I1)は、好ましくは少なくとも1つのポリイソシアネート(I1)である。使用され得るポリイソシアネート(I1)は、脂肪族、環状脂肪族、芳香脂肪族及び/又は芳香族ポリイソシアネートであり、好ましくはジイソシアネートである。例としては、以下の芳香族ジイソシアネート:トルエン2,4-ジイソシアネート、トルエン2,4-及び2,6-ジイソシアネートの混合物、ジフェニルメタン4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン2,4’-及び4,4’-ジイソシアネートの混合物、ウレタン変性液状ジフェニルメタン4,4’-及び/又は2,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトジフェニルエタン、モノマーメタンジフェニルジイソシアネートと他のメタンジフェニルジイソシアネートの高多環同族体の混合物(ポリメリックMDI)、ナフチレン1,2及び1,5-ジイソシアネート、を含む。脂肪族ジイソシアネートは、慣用の脂肪族及び/又環状脂肪族ジイソシアネートであり、例えば、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)である。好ましい実施形態では、イソシアネート(I1)は、少なくともヘキサメチレン1,6-ジイソシアネートを含む。
【0028】
ポリイソシアネートは、純粋な形態で、又は、組成物の形態で、例えばイソシアネートプレポリマーとして使用されることができる。さらに、ポリイソシアネートと少なくとも1つの溶媒とを含む混合物が使用されることができ、適切な溶媒は当業者に知られている。ポリイソシアネートプレポリマーは、上述のポリイソシアネートを過剰で、例えば30~100℃の範囲の温度で、好ましくは80℃超で、ポリオールと反応させてプレポリマーを得ることによって得ることができる。プレポリマーの調製には、ポリイソシアネートと、例えばアジピン酸から生じるポリエステルに基づく市販のポリオール、又は例えばテトラヒドロフラン、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドから生じるポリエーテルに基づく市販のポリオールを使用することが好ましい。ポリオールは当業者に知られており、例えば「Kunststoffhandbuch,7,ポリウレタン」,Carl Hanser Verlag,3rd edition 1993,section 3.1に記載されている。優先的に使用されるポリオールは、イソシアネートに対して反応性のある水素原子を有するポリマー化合物である。特に好ましいポリオールは、ポリエーテルポリオールである。ポリイソシアネートプレポリマーの調製においては、慣用の鎖延長剤又は架橋剤を任意にポリオールに添加することができる。好ましい鎖延長剤は、エタンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール及びモノエチレングリコールであり、さらに好ましくは少なくともブタン-1,4-ジオール又はモノエチレングリコールである。この場合、有機ポリイソシアネートとポリオール及び鎖延長剤との比率は、イソシアネートプレポリマーが2質量%~30質量%の範囲、より好ましくは6質量%~28質量%の範囲、より好ましくは10質量%~24質量%の範囲のNCO含量を有するように選択されるのが好ましい。
【0029】
鎖延長剤として機能する使用されるジオール(D1)は、一般的に任意のジオールでよい。ジオール(D1)は、0.05kg/mol~0.499kg/molの範囲のモル質量を有す脂肪族、芳香脂肪族、芳香族、及び/又は環状脂肪族化合物、好ましくは二官能性化合物、例えば、アルキレン部分に2~10個の炭素原子を有するジアミン及び/又はアルカンジオール、3~8個の炭素原子を有するジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-、及び/又はデカアルキレングリコール、特にエチレン1,2-グリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオールなど、及び好ましくは対応するオリゴ及び/又はポリプロピレングリコール、例えばジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール及びネオペンチルグリコール、からなる群から選択されるのが好ましく、及びこれらの混合物を使用することも可能である。ジオールは、好ましくは一級ヒドロキシル基のみを有する。
【0030】
界面活性剤
(ii)で提供される水溶液は、少なくとも1つの界面活性物質を含む。界面活性物質は、カチオン性、アニオン性又は中性である。使用される界面活性物質は、当業者に知られている物質である。例えば、米国特許第8,604,101B2は、第7欄(58行目)から第13欄(64行目)に対応する界面活性物質を記載している。したがって、本発明の文脈における界面活性物質は、2000g/mol超、好ましくは2200~106g/molの範囲の数平均分子量を有するポリマー界面活性物質;2000g/molまでの、好ましくは1500g/molまでの数平均分子量を有する低分子量界面活性物質;及びこれらの界面活性物質の2つ以上の混合物からなる群から選択される。低分子量界面活性物質は、乳化剤とも呼ばれている。ポリマー界面活性物質は、同様に保護コロイド、特にUS8,604,101B2に記載されているような水溶性ポリマーを含む。米国特許第8,604,101B2の第7欄(58行目)から第13欄(64行目)に開示されている界面活性物質は、参照により本出願の開示に組み込まれる。
【0031】
熱可塑性ポリマー粒子であって前記粒子が球形である、熱可塑性ポリマー粒子を製造するための方法の好ましい実施形態では、少なくとも1つの界面活性物質は、ポリビニルアルコール、好ましくは任意に少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルアセテート、さらに好ましくは少なくとも40%の範囲、さらに好ましくは少なくとも60%の範囲まで加水分解されたポリビニルアセテートの群から選択され、さらに好ましくは、少なくともPoval40-80Eを含む。Poval40-80Eは、加水分解レベルが78~81%の範囲にあり、粘度が37~45mPas(DIN 53015/JIS K 6726に従って、20℃の4%溶液)、不揮発留分97.5+/-2.5、pH5~7のポリビニルアセテートである。
【0032】
熱可塑性ポリマー粒子であって前記粒子が球形である、熱可塑性ポリマー粒子を製造するための方法の一実施形態では、少なくとも1つの界面活性物質は、各場合において(ii)からの少なくとも1つの界面活性物質の水溶液の総質量に基づいて、0.1質量%~20質量%の範囲、好ましくは0.5質量%~10質量%の範囲、さらに好ましくは1質量%~5質量%の範囲の量で存在する。
【0033】
熱可塑性ポリマー粒子の球形(spherical form)は、球及び楕円体を含む「球(spherical)」を有する球状形状(spherical shape)によって特徴付けられ、球が優先される。
【0034】
本発明はさらに、上述の方法によって得られた又は得られ得る、球形の熱可塑性ポリマー粒子に関する。
【0035】
本発明は同様に、10μm超のd[4,3]値、20μm超のd90,3値の粒径分布を有する球形の熱可塑性ポリマーの粒子にも関する。これらの粒子の詳細は、方法に関して最初に既に開示されたものに対応している。例えば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエステルエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルアミド、ポリブタジエン-スチレン及びエチレン-酢酸ビニルからなる群から選択され、さらに好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU);ポリアミド、ポリアミドコポリマー、及びポリエステルからなる群から選択され、さらに好ましくは、少なくともTPUが存在している。熱可塑性ポリマー、特にTPUの調製では、方法について既に述べたように、例えば触媒などのさらなる化合物、例えば、及び/又は慣用の助剤及び/又は添加剤が使用され得る。慣用的な助剤は、例えば、充填剤、難燃剤、核剤、酸化安定剤、潤滑剤及び離型剤、染料、顔料、及び任意に、例えば、加水分解、光、熱又は変色に対する保護のための安定剤、無機充填剤及び/又は有機充填剤、補強剤及び可塑剤である。
【0036】
方法についてすでに上述したように、熱可塑性ポリウレタン(TPU)は当業者に知られている。一実施形態では、TPUは、以下の成分:少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの化合物(C1);少なくとも1つのイソシアネート(I1);少なくとも1つのジオール(D1)に基づいており、これらの成分の詳細については、方法に関するセクションの説明を参照されたい。
【0037】
本発明は同様に、好ましくは粉末床溶融、高速焼結及びマルチジェット融合の群から選択される付加製造法のための、又は粉末コーティング法のための、又は粉末焼結(粉末スラッシュ又はスラッシュ成形)のための、好ましくは10μm超のd[4,3]値、20μm超のd90,3値の粒径分布を有する球形の熱可塑性ポリマー粒子、好ましくは球形の熱可塑性ポリマー粒子を含む粉末形態での熱可塑性ポリマー粒子の使用方法に関する。
【0038】
本発明は、以下の実施形態及び対応する従属の参照及び他の参照により明らかである実施形態の組み合わせによりさらに例示される。特に、実施形態の範囲が言及されるあらゆる場合において、例えば「実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法」という表現の文脈においては、この範囲の各実施形態は、当業者に明確に開示されているとみなされると理解される、すなわち、この表現は、「実施形態1、2、3及び4のいずれか1つに記載の方法」と同義であると考えられるべきである。続く実施形態は、保護範囲を決定する一連の請求項ではなく、本発明の一般的かつ好ましい態様に向けられた説明の好適に構成された部分を構成するものであることを指摘しておく。
【0039】
実施形態1. 熱可塑性ポリマー粒子であって前記粒子が球形である、熱可塑性ポリマー粒子を製造する方法であって、
(i) 溶融状態で少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを提供することと、
(ii) 少なくとも1つの界面活性物質の水溶液を提供することであって、前記少なくとも1つの界面活性物質の水溶液は100~300℃、好ましくは150~250℃の範囲の温度である、少なくとも1つの界面活性物質の水溶液を提供することと、
(iii) 分散した熱可塑性ポリマーを含む水溶液を得るために、(i)からの少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを(ii)からの界面活性物質の水溶液中に分散させることと、
(iv) 水溶液とその中に固体状態で懸濁している熱可塑性ポリマー粒子とを含み、前記粒子は球形である懸濁液を得るために、分散した熱可塑性ポリマーを含む(iii)で得られた水溶液を熱可塑性ポリマーの凝固点より低い温度まで冷却することと、
(v) (iv)で得られた懸濁液から、球形の熱可塑性ポリマー粒子を分離することと、
(vi) 任意で、(v)で分離された球形粒子を乾燥させることと、
を含み、
ここで、(v)で分離され、任意に(vi)で乾燥された球形粒子は、10μm超のd[4,3]値と20μm超のd90,3値を有する粒径分布を有する、方法。
【0040】
実施形態2. (i)は、
(i.1) 少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを固体状態で提供することと、
(i.2) 溶融状態の少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを得るために、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを溶融することであって、前記溶融は、好ましくは、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーをガラス転移温度Tgより高い温度、さらに好ましくは溶融温度Tmより高い温度に加熱することによって行われる、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを溶融することと、
を含む、実施形態1による方法。
【0041】
実施形態3. 前記溶融した熱可塑性ポリマーは、機械的力、超音波及び/又は高圧均質化の作用下で、(iii)の界面活性物質の水溶液中に分散され、分散された熱可塑性ポリマーを含む水溶液が得られる、実施形態1又は2による方法。
【0042】
実施形態4. (i.2)における溶融は、押出機又は押出手段によって行われる、実施形態1~3のいずれか1つによる方法。
【0043】
実施形態5. (iii)における分散は、100~300℃の範囲の温度、好ましくは150~250℃の範囲の温度で行われる、実施形態1~4のいずれか1つによる方法。
【0044】
実施形態6. (iv)における冷却は、20~100℃の範囲の温度、好ましくは30~70℃の範囲の温度で行われる、実施形態1~5のいずれか1つによる方法。
【0045】
実施形態7. (v)又は(vi)で分離された球形粒子は、20μm超、好ましくは50μm超、さらに好ましくは70μm超のd[4,3]値、及び/又は、好ましくは及び、50μm超、好ましくは100μm超のd90,3値を有する粒径分布を有する、実施形態1~6のいずれか1つによる方法。
【0046】
実施形態8. (v)又は(vi)で分離された球形粒子は、20μm超、好ましくは30μm超、さらに好ましくは40μm超、さらに好ましくは50μm超のd50,3値を有するが粒径分布を有する、実施形態1~7のいずれか1つによる方法。
【0047】
実施形態9. 前記少なくとも1つの熱可塑性ポリマーは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリエステルエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルアミド、ポリブタジエン-スチレン及びエチレン-酢酸ビニルからなる群から、さらに好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU);ポリアミド、ポリアミドコポリマー及びポリエステルからなる群から選択され、さらに好ましくは、少なくともTPUを含む、実施形態1~8のいずれか1つによる方法。
【0048】
実施形態10. 前記少なくとも1つの界面活性物質は、ポリビニルアルコール、好ましくは任意に少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルアセテート、さらに好ましくは少なくとも40%の範囲まで、さらに好ましくは少なくとも60%の範囲まで加水分解されたポリビニルアセテートの群から選択され、さらに好ましくは、少なくともPoval40-80Eを含む、実施形態1~9のいずれか1つによる方法。
【0049】
実施形態11. 前記少なくとも1つの界面活性物質は、各場合において(ii)からの少なくとも1つの界面活性物質の水溶液の総質量に基づいて、0.1質量%~20質量%の範囲、好ましくは0.5質量%~10質量%の範囲、さらに好ましくは1質量%~5質量%の範囲の量で存在する、実施形態1から10のいずれか1つによる方法。
【0050】
実施形態12. 前記熱可塑性ポリマー粒子の球形は、球及び楕円体を含む「球状」によって、球状の形状で特徴付けられ、球が優先される、実施形態1~11のいずれか1つによる方法。
【0051】
実施形態13. 実施形態1~12のいずれか1つによる方法によって、得られた又は得られ得る、球形の熱可塑性ポリマー粒子。
【0052】
実施形態14. 粒子が、10μm超のd[4,3]値、20μm超のd90,3値の粒径分布を有する、球形の熱可塑性ポリマー粒子。
【0053】
実施形態15. 粉末床溶融、高速焼結及びマルチジェット融合の群から好ましくは選択される付加製造法のための、又は粉末コーティング法のための、又は粉末焼結(粉末スラッシュ又はスラッシュ成形)のための、好ましくは10μm超のd[4,3]値、20μm超のd90,3値の粒径分布を有する球形の熱可塑性ポリマー粒子、好ましくは球形の熱可塑性ポリマー粒子を含む粉末形態での熱可塑性ポリマー粒子の使用方法。
【0054】
以下の実施例は、本発明の説明に役立つが、本発明の主題に対して決して制限するものではない。
【実施例】
【0055】
1.化学物質
【0056】
【0057】
2.参考例1:熱可塑性ポリマーの球状粒子の製造
乳化される熱可塑性ポリマーは、室温(23℃)で固体であるペレット状の材料の形態で、差動計量スクリューによって押出機(Collin E16T押出機)に連続的に計量され、Tg超、好ましくはTm超の温度で溶融した。溶融した熱可塑性ポリマーは、押出機を用いて分散装置に連続的に搬送された。同時に、水中に少なくとも1つの界面活性物質(乳化剤)を含む連続相を、熱交換器を介してポンプを用いて分散装置に連続的に計量した。熱交換器では、乳化剤水溶液を150℃~250℃の範囲の温度に加熱した。
【0058】
分散装置では、ポリマー溶融物を、150~250℃の範囲の温度、好ましくは170~220℃の範囲の温度で、分散相として連続相に乳化させ、少なくとも1つの界面活性物質によって溶液中での凝集に対して安定化された熱可塑性ポリマーの小さな溶融液滴を得た。分散装置の下流で、熱可塑性ポリマーの液滴が存在するエマルジョンを、冷却装置を用いて、熱可塑性ポリマーの凝固点Tg未満の温度に冷却し、熱可塑性ポリマーの液滴を凝固させた。このようにして得られたのが、連続相中に微細に分散した球形の熱可塑性ポリマー粒子を有する懸濁液であった。
【0059】
3.実施例1:球状のTPU粒子の製造
ポリマー1を参考例1の方法に従って220℃の温度で溶融し、さらに参考例1の方法に従って処理した:界面活性物質1を2.7質量%の濃度で使用し、その結果、連続相は以下の組成であった:
- 2.7%質量の乳化剤1
- 0.1%質量の消泡剤1
- 97.2質量%のDM水
熱交換器では、乳化剤水溶液を約170℃の領域の温度に加熱した。
【0060】
使用した分散装置は、INDAG社(Borsfleet,Germany)のDLM/S-007ダイナミックフローミキサーであった。分散装置では、ポリマー溶融物を、分散装置内の以下の条件で、170~220℃の範囲の温度で分散相として連続相で乳化した:
分散装置の速度:211rpm
連続相温度(乳化剤水溶液):180°C
連続相流量:4kg/h
溶融物供給温度:220°C
ポリマー1溶融物の流量:0.4kg/h
冷却装置の下流側の懸濁液温度:70°C
懸濁液中の分散した熱可塑性ポリマーの粒径分布を、Malvern Mastersizer 3000レーザー回折分光計を用いて測定した。累積体積分布及び加重平均d[4,3]の90、50及び10%流量での粒径は以下の通りであった:
d90,3=155μm
d50,3=56μm
d10,3=11μm
d[4,3]=74μm
【0061】
粒径分布及び累積体積分布を、
図1でグラフの形で示す。
図2は、走査型電子顕微鏡を用いて作成した球状TPU粒子の画像を示す。
図2から明らかなように、特に、得られた球状粒子は、どのような大きさのものであっても、球状形状をしており、表面に凹凸が見られないことがわかる。
【0062】
4.実施例2:カーボンブラック添加を有する球状TPU粒子の製造
62質量%のポリマー1と38質量%のカーボンブラックからなる溶融物を、97.27質量%の脱塩水、2.7質量%の界面活性物質1、及び0.03質量%の消泡剤1からなる水性連続相に分散させた後、冷却した。
【0063】
使用した分散装置は、INDAG社(Borsfleet,Germany)のDLM/S-007ダイナミックフローミキサーであった。ポリマー溶融物を、225℃の温度で分散装置に供給し、以下の条件で、分散装置内の連続相に分散させた:
分散装置の速度:356rpm
連続相温度:180°C
連続相の流量:4kg/h
溶融物供給温度:225°C
ポリマー溶融物の流量:0.4kg/h
冷却装置の下流側の懸濁液温度:70°C
冷却後に得られた懸濁液を、400μmの正方形メッシュサイズのふるいにかけ、次いで70℃の温度で減圧下乾燥させた。
【0064】
懸濁液中の分散した熱可塑性ポリマーの粒径分布を、Malvern Mastersizer 3000レーザー回折分光計を用いて測定した。累積体積分布及び加重平均d[4,3]の90、50及び10%流量での粒径は以下の通りであった:
d90,3=262μm
d50,3=83μm
d10,3=32μm
d[4,3]=118μm
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】実施例1に従って製造された球状TPU粒子の密度分布及び累積体積分布を示す図である。
【
図2】実施例1に従って製造された球状TPU粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【
図3】実施例2に従って製造された球状TPU粒子の密度分布及び累積体積分布を示す図である。
【
図4】実施例2に従って製造された球状のTPU粒子の光学顕微鏡写真を示す図である。 引用文献
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【非特許文献】
【0067】
【非特許文献1】- J.Schmidt、M.Sachs、S.Fanselow、M.Zhao、S.Romeis、D.Drummer、K.-E.W.Peukert,Chemical Engineering Science 156(2016),1~10
【非特許文献2】- 「Kunststoffhandbuch,7,ポリウレタン」,Carl Hanser Verlag,3rd edition 1993,section 3.1
【非特許文献3】- 「Kunststoffhandbuch」;7,「ポリウレタン」,Carl Hanser Verlag,1st edition 1966,第103~113頁
【国際調査報告】