(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置の基板ハンドリングシステムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220825BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
H01L21/68 N
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577322
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2020063962
(87)【国際公開番号】W WO2020259930
(87)【国際公開日】2020-12-30
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ケルクホフ、マルクス、アドリアヌス
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197CD02
2H197CD06
2H197CD23
2H197CD29
2H197DC20
2H197GA01
2H197GA04
2H197GA05
2H197GA17
2H197HA03
5F131AA02
5F131BA11
5F131CA07
5F131CA70
5F131EA27
5F131EB02
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5F131EB81
5F131KA32
5F131KB02
5F131KB42
(57)【要約】
【解決手段】基板ハンドリングシステムは、本体面を有する本体と、本体面から間隔を空けて基板を支持するために本体面から突出する複数のバールと、を備える基板ホルダと、基板ホルダ上で基板をクランプおよび/またはクランプ解除するよう構成されるクランプ手段と、基板ホルダ上で基板を搭載および/または搭載解除するよう構成される搬送手段と、を備え、搬送手段は、基板ホルダへのクランプおよび/またはクランプ解除中に基板に物理的に接触するようさらに構成される。基板をクランプおよびクランプ解除する方法、コンピュータプログラム、コンピュータ可読媒体およびリソグラフィ装置も記載される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体面を有する本体と、前記本体面から間隔を空けて基板を支持するために前記本体面から突出する複数のバールと、を備える基板ホルダと、
前記基板ホルダ上で前記基板をクランプおよび/またはクランプ解除するよう構成されるクランプ手段と、
前記基板ホルダ上で前記基板を搭載および/または搭載解除するよう構成される搬送手段と、を備え、
前記搬送手段は、前記基板ホルダへの前記クランプおよび/またはクランプ解除中に前記基板に物理的に接触するようさらに構成される、基板ハンドリングシステム。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記クランプ解除中に前記基板を振動位置に位置付けるようさらに構成され、当該振動位置において前記基板は複数のバールから離れて配置され、または/および、
前記搬送手段は、力フィードバックセンサ手段を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記搬送手段は、前記力フィードバックセンサ手段が前記クランプ解除によって生じる力を検出するときに、前記基板を前記振動位置に位置付けるよう構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記搬送手段は、搬送手段制御装置を備え、
前記搬送手段は、前記搬送手段制御装置が前記クランプ解除によって生じる力を検出するときに、前記基板を振動位置に位置付けるよう構成され、または/および、
前記搬送手段は、複数のピンと、モータ手段とを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記モータ手段は、少なくとも100Hzの力フィードバック制御を提供するよう構成されるサーボアクチュエータを備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数のピンは、減衰材料で被覆され、好ましくは、前記減衰材料がポリエーテルエーテルケトンである、請求項4または5に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも一つのガスを少なくとも前記本体面に吐出するよう構成されるガスディスペンサ手段をさらに備え、好ましくは前記ガスが水素または窒素である、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記基板と前記複数のバールの接触を減衰させるための減衰手段をさらに備え、好ましくは、前記減衰手段がガスダンパおよび/または磁気ダンパであり、または/および、
前記搬送手段は、前記クランプ中の前記基板の振動の減少を検出し、前記搬送手段を前記基板から離すようさらに構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記力フィードバックセンサ手段は、前記振動の減少を検出するよう構成される、請求項2を引用する請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記搬送手段制御装置は、前記振動の減少を検出するよう構成される、請求項4を引用する請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
基板をクランプ解除する方法であって、
前記基板をクランプ解除し、前記クランプ解除中に搬送手段を前記基板に接触させることと、
前記クランプ解除中に、前記基板を前記搬送手段によって振動位置に移動させることと、を備え、
当該振動位置において、前記基板は複数のバールから離れている、方法。
【請求項12】
前記基板を前記振動位置に移動させる前に、前記基板の解放を検出することを備え、
前記検出は、力フィードバック測定を用いることによって、または、搬送手段制御装置によって実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記振動位置へ移動する速度は、10mm/s以上である、請求項11から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
基板をクランプする方法であって、前記基板をクランプすることと、前記クランプ中に搬送手段を前記基板に接触させることとを備える、方法。
【請求項15】
前記搬送手段によって前記基板の振動の減少を検出することと、前記基板から前記搬送手段を離すこととをさらに備え、前記基板の振動の減少は、力フィードバック測定を用いることによって、または、搬送手段制御装置によって検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のシステムに、請求項11から請求項15のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させる命令を備えるコンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のコンピュータプログラムが記憶されるコンピュータ可読媒体。
【請求項18】
請求項1から10のいずれか一項に記載のシステムおよび/または請求項17に記載のコンピュータ可読媒体を備えるリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2019年6月28日に出願された欧州出願19183180.9号の利益を主張し、その全体が参照により本書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、リソグラフィ装置の基板ハンドリングシステムに関し、基板の搭載解除中および搭載中の基板ホルダの摩耗または侵食を減少させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを付与するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用できる。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)にあるパターンを、基板上に設けられる放射感受性材料(レジスト)の層に投影しうる。
【0004】
基板上にパターンを投影するため、リソグラフィ装置は電磁放射を使用しうる。この放射の波長は、基板上に形成できるフィーチャの最小サイズを決定する。4-20nmの範囲内、例えば6.7nmまたは13.5nmの波長を有する極端紫外(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置は、例えば、193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さなフィーチャを基板上に形成するために使用されうる。
【0005】
基板を支持するための複数のバールを有する基板ホルダは、リソグラフィ装置において一般的に使用される。基板は典型的に露光中において基板ホルダにクランプされる。クランプは、静電力または真空力を用いることによって実行されてもよい。基板の例は、ウェハであってもよい。パターニングデバイスといった他の基板も、当該クランプ技術を用いてサポート構造にクランプされることができる。
【0006】
いくつかのシステムにおいて、基板ホルダ上での基板のクランプおよびクランプ解除は、硬く、減衰されていないかもしれない。クランプ面は、基板がクランプおよび/またはクランプ解除される表面であってよい。クランププロセスは、クランプ中において低摩擦と高摩擦を必要とする。低摩擦は、オーバレイ問題の原因となりうる負荷応力および変形を最小限にするために必要である。高摩擦は、グリップ力を最大化し、基板ホルダのスキャン加速中にクランプ面に対して基板がずれないようにするために必要である。
【0007】
さらに、基板のクランプまたはクランプ解除中に、振動が生じて基板ホルダを摩耗または侵食させるかもしれない。より具体的には、複数のバールが摩耗または侵食されるかもしれない。この摩耗または侵食は、クランプ力の平坦性を減少させる。クランプ力が平坦でないと、フォーカス誤差の数およびウェハ上のパターニングされた層間のオーバレイが増加するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の一つは、基板ハンドリングシステムの構成要素の摩耗または侵食を減少させる、改善された基板ハンドリングシステムを提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的の一つは、露光中のフォーカス誤差の数を減少させ、パターニングされた層間のオーバレイを減少させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様において、基板ハンドリングシステムが提供される。このシステムは、本体面を有する本体と、本体面から間隔を空けて基板を支持するために本体面から突出する複数のバールとを備える基板ホルダと、基板ホルダ上で基板をクランプおよび/またはクランプ解除するよう構成されるクランプ手段と、基板ホルダ上で基板を搭載および/または搭載解除するよう構成される搬送手段と、を備え、搬送手段は、基板ホルダへのクランプおよび/またはクランプ解除中に基板に物理的に接触するようさらに構成される。
【0011】
搬送手段は、少なくとも、その上端が基板ホルダの上方に延びる延出位置と、その上端が基板ホルダの内部に格納される格納位置との間で移動可能であってもよい。格納位置または延出位置のいずれかは、搬送手段が基板に接触する位置に対して異なる位置である。分かりやすさのために、搬送手段のこの後者の位置は、接触位置と称されてもよい。
【0012】
したがって、搬送手段は、基板ホルダへのクランプおよび/またはクランプ解除中に接触位置に位置付けられるよう構成される。当該接触位置において、搬送手段は、ウェハに物理的に接触する。
【0013】
基板ホルダに基板を搭載する際、延出位置に配置される搬送手段にロボットが基板を搭載してもよい。基板は、複数のバールの上方に延びる搬送手段上で受け取られるため、ロボットは、搬送手段上に基板を残したまま引き抜くことができる。その後、基板を複数のバールの上に載せるために、搬送手段は格納位置に移動してもよい。当該格納位置において、搬送手段は基板に接触していない。
【0014】
搭載後、基板は、露光中の基板のずれを避けるために、クランプ手段によって基板ホルダにクランプされる。基板がクランプされる基板ホルダの表面はクランプ面である。露光が完了すると、基板は、基板ホルダからクランプ解除される。これは、クランプ手段が基板を解放することを意味する。最後に、基板は搬送手段によって基板ホルダから搭載解除される。具体的には、搬送手段は、延出位置まで移動してもよい。
【0015】
基板が基板ホルダにクランプまたはクランプ解除されるとき、基板は複数のバール上で振動するかもしれない。当該振動は、複数のバールを摩耗または侵食してクランプ面の平坦性を減少させるかもしれない。基板のクランプおよびクランプ解除は、基板の搭載および搭載解除とは異なるプロセスであることに留意されたい。したがって、クランプおよびクランプ解除プロセスは、基板の振動が停止するまで、または、基板の振動が大幅に減少するまで行われる。
【0016】
有利なことに、本発明のシステムは、クランプおよび/またはクランプ解除プロセス中に搬送手段を介して当該振動を減少させる。さらにクランプ中において、搬送手段が基板と接触しているため、搬送手段は重力に対抗するよう構成され、クランプ中の複数のバールにゼロの負荷力または垂直力を提供する。さらに本発明は、基板ホルダの摩耗または侵食を減少させる。基板ホルダは、リソグラフィ装置で使用されてもよい。
【0017】
基板は、ウェハまたはレチクルであってもよい。本発明は、基板ホルダ上に配置される反射型レチクルにも有用でありうる。当該実施形態において、基板ホルダは、マスクホルダのレチクルホルダであってもよい。
【0018】
一実施形態において、搬送手段は、基板ホルダへの基板のクランプおよび/またはクランプ解除によって生じる基板上の振動を検出するよう構成される。
【0019】
一実施形態において、搬送手段は、クランプ解除中に基板を振動位置に位置付けるようさらに構成され、当該振動位置において基板は複数のバールから離れて配置される。振動位置において、基板は、自由空間に存在してもよく、これは、基板が複数のバールに接触していないことを意味する。
【0020】
格納位置または延出位置または接触位置のいずれかは、振動位置または基板の振動の位置に対して異なる位置である。分かりやすさのため、延出位置が第1位置と称されてもよく、格納位置が第2位置と称されてもよく、接触位置が第3位置と称されてもよく、振動位置が第4位置と称されてもよい。
【0021】
この実施形態において、基板は、複数のバールから離れて振動する。これは、基板が自由空間において複数のバールと相互作用せずに振動することを意味し、これは有利なことに、当該複数のバールの摩耗または侵食を回避する。これは、クランプ面の平坦性の維持に役立つ。
【0022】
一実施形態において、基板は基板ホルダに静電的にクランプされる。この実施形態において、クランプ手段は、本体面と基板の間に静電力を提供する。静電力は、基板を基板ホルダにクランプする。静電力は、本体面に生じてもよく、より具体的には、本体面の複数のバールの間の空間に生じてもよい。
【0023】
一実施形態において、クランプ解除は、静電力クランプ発生装置を徐々に弱める間(ランプダウン中)に生じる。したがって、クランプ手段は、静電力クランプ発生装置である。当該ランプダウン中に、基板が本体から緩むと、内部応力と、減衰の欠如とに起因して振動を開始するかもしれない。したがって、ランプダウン中において、搬送手段は、基板に接触して振動を減少させるように構成される。さらにこの実施形態の当該ランプダウン中において、搬送手段は基板を連続的に押し上げるようにさらに構成される。静電力発生装置がオフになると、基板が解放され、搬送手段によって当該振動位置まで連続的に移動させられる。当該振動位置または第4位置において、基板は、振動などのクランプ解除の影響を受けたままであってもよい。
【0024】
一実施形態において、搬送手段は、力フィードバックセンサ手段を備える。ある別の実施形態において、搬送手段は、力フィードバックセンサ手段がクランプ解除によって生じる力を検出するときに、基板を振動位置に位置付けるように構成される。代替または追加の実施形態において、搬送手段は、搬送手段制御装置を備え、搬送手段は、搬送手段制御装置がクランプ解除によって生じる力を検出したときに、基板を振動位置に位置付けるように構成される。他の実施形態において、検出される力は基板の解放であってもよく、したがって、搬送手段は、力フィードバックセンサ手段および/または搬送手段制御装置を用いることにより、基板の解放を検出するように構成されてもよい。
【0025】
基板の振動は、力を搬送手段に機械的に伝達する。基板へのクランプ解除によって生じる力を検出することにより、上記実施形態は、基板が複数のバール上で振動する時間を有利に減少させ、したがって、当該実施形態は、複数のバールの摩耗または侵食を減少させる。
【0026】
一実施形態において、搬送手段は、クランプ中の基板の振動の減少を検出して、搬送手段を基板から離すように構成される。ある別の実施形態において、力フィードバックセンサ手段は、振動の減少を検出するよう構成される。ある異なる実施形態において、搬送手段制御装置は、振動の減少を検出するよう構成される。
【0027】
上記実施形態において、基板から搬送手段への力の減少が検出される。これは、搬送手段を正しい瞬間に基板から離すことを可能にし、基板を損傷させうる基板の表面における不要な応力を減少させる。
【0028】
一実施形態において、搬送手段は、複数のピンおよびモータ手段を備え、好ましくは、搬送手段は、少なくとも三つのピンを備える。ある別の実施形態において、モータ手段は、少なくとも100Hzの力フィードバック制御を提供するよう構成されるサーボアクチュエータを備える。追加の実施形態において、複数のピンは減衰材料で被覆され、好ましくは、減衰材料はポリエーテルエーテルケトン、すなわちPEEKである。ある実施形態において、システムは、少なくとも一つのガスを少なくとも本体面に吐出するよう構成されるガスディスペンサ手段をさらに備え、好ましくはガスは水素または窒素である。他の実施形態において、ガスディスペンサ手段は、クランプ面と基板の間の体積をガスで満たすよう構成される。ある別の実施形態において、システムは、基板と複数のバールの接触を減衰させるための減衰手段を備え、好ましくは、減衰手段は、ガスダンパおよび/または磁気ダンパを備えてもよい。
【0029】
上記実施形態は、基板が受ける振動を有利に減少させ、複数のバールの摩耗または侵食の減少を増大させる。ガスディスペンサ手段において使用されるガスに関しては、その洗浄特性のためにEUVリソグラフィ装置では水素が好ましい。窒素に関しては、不活性ガスであり、可燃性ではないため、深紫外(DUV)リソグラフィ装置において好ましい。
【0030】
本発明の第2の態様において、基板をクランプ解除する方法が提供される。この方法は、基板をクランプ解除し、クランプ解除中に搬送手段を基板に接触させることと、クランプ解除中に、基板を搬送手段によって振動位置に移動させることと、を備え、当該振動位置において基板は複数のバールから離れている。
【0031】
クランプ解除に起因する振動は、複数のバールと相互作用することなく自由空間で生じるため、複数のバールの摩耗または侵食が減少する。
【0032】
一実施形態において、方法は、基板を振動位置に移動させる前に、基板の解放を検出することをさらに備える。ある追加の実施形態において、検出は、力フィードバック測定を用いることによって、または、搬送手段制御装置によって実行される。搬送手段制御装置は、搬送手段に接続されてもよく、したがって、第1の発明の態様の実施形態にて説明された搬送手段制御装置と同じ機能を有してもよい。
【0033】
搬送手段がクランプ解除前に基板を振動位置まで移動させる場合、基板はその表面を損傷させるであろう応力を受けるかもしれない。有利なことに、上記実施形態は、基板を正しい瞬間に複数のバールから離し、基板の損傷を回避する。
【0034】
一実施形態において、振動位置へ移動する速度は、10mm/s以上である。有利なことに、この実施形態は、基板が複数のバール上で振動する時間を減少させ、それらの摩耗または侵食を減少させる。
【0035】
さらに、本発明の第2の態様に係る方法の実施形態のいずれも、本発明の第1の態様の実施形態のいずれかに係る基板ハンドリングシステムを使用してもよい。
【0036】
本発明の第3の態様において、基板をクランプするための方法が提供される。この方法は、基板をクランプすることと、クランプ中に搬送手段を基板に接触させることとを備える。
【0037】
有利なことに、クランプ解除中に搬送手段を接触させることは、基板が受ける振動を減少させ、複数のバールの摩耗または侵食を減少させる。
【0038】
一実施形態において、この方法は、搬送手段による基板の振動の減少を検出することと、搬送手段を基板から離すこととをさらに備える。別の実施形態において、基板の振動の減少は、力フィードバック測定または搬送手段制御装置によって検出される。
【0039】
クランプ中に基板が受ける振動が減少すると、複数のバールの摩耗または侵食のリスクも減少する。上記の実施形態において、基板から搬送手段への力の減少が検出される。これは、搬送手段を正しい瞬間に基板から離すことを可能にし、基板を損傷させうる基板の表面における不要な応力を減少させる。
【0040】
さらに、本発明の第3の態様に係る方法の実施形態のいずれも、本発明の第1の態様の実施形態のいずれかに係る基板処理システムを使用してもよい。
【0041】
本発明の第4の態様において、本発明の第1の態様のいずれかの実施形態のシステムに、本発明の第2および第3の態様のいずれかの実施形態のいずれかの方法のステップを実行させるための命令を備えるコンピュータプログラムが提供される。本発明の第5の態様において、本発明の第4の態様に記載のコンピュータプログラムが記憶されるコンピュータ可読媒体が提供される。
【0042】
本発明の第6の態様において、本発明の第1の態様のいずれかの実施形態のシステム、および/または、本発明の第5の態様のコンピュータ可読媒体を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0043】
本発明のさらなる態様、特徴および利点、ならびに本発明の様々な実施形態の構造および動作を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。本発明は、本書に記載される特定の実施形態に限定されるものではないことに留意されたい。そのような実施形態は、例示を目的としてのみ本書に示される。追加の実施形態は、本書に含まれる教示に基づけば、関連する技術分野の当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の実施の形態は、以下の添付の概略的な図面を参照して、単なる例示として説明されるであろう。
【
図1】リソグラフィ装置および放射源を備えるリソグラフィシステムを示す図である。
【
図2】従来のリソグラフィ装置における基板ホルダおよび基板を示す断面図である。
【
図3】搭載中の搬送手段の作業動作を示す断面図である。
【
図4a】基板のクランプおよびクランプ解除に起因する
図2の基板ホルダの複数のバールの摩耗または侵食を示す断面図である。
【
図4b】基板のクランプおよびクランプ解除に起因する
図2の基板ホルダの複数のバールの摩耗または侵食を示す断面図である。
【
図5】本発明の基板ハンドリングシステムのクランプ中の作業動作を示す断面図である。
【
図6】本発明の基板ハンドリングシステムのクランプ解除中の作業動作を示す断面図である。
【
図7】本発明の基板ハンドリングシステムの別の実施形態を示す図である。
【
図8a】本発明の基板ハンドリングシステムの搬送手段の別の実施形態を示す図である。
【
図8b】本発明の基板ハンドリングシステムの搬送手段の別の実施形態を示す図である。
【
図9a】本発明のクランプおよびクランプ解除中の摩耗または侵食を減少させる方法をの示すフローチャートである。
【
図9b】本発明のクランプおよびクランプ解除中の摩耗または侵食を減少させる方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、放射源SOおよびリソグラフィ装置LAを備えるリソグラフィシステムを示す。放射源SOは、EUV放射ビームBを生成し、EUV放射ビームBをリソグラフィ装置LAに供給するよう構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えば、マスク)を支持するよう構成されるサポート構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するよう構成される基板ホルダWTとを備える。
【0046】
照明システムILは、EUV放射ビームBがパターニングデバイスMAに入射する前に、EUV放射ビームBを調整するよう構成される。そのために、照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11を含んでもよい。ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11は、所望の断面形状および所望の強度分布を有するEUV放射ビームBを一緒になって提供する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10およびファセット瞳ミラーデバイス11に加えてまたは代えて、他のミラーまたはデバイスを含んでもよい。
【0047】
このようにして調整された後、EUV放射ビームBは、パターニングデバイスMAと相互作用する。この相互作用の結果、パターンEUV放射ビームB’が生成される。投影システムPSは、パターンEUV放射ビームB’を基板W上に投影するよう構成される。そのために、投影システムPSは、基板ホルダWTによって保持される基板W上にパターンEUV放射ビームB’を投影するよう構成される複数のミラー13,14を備えてもよい。投影システムPSは、パターンEUV放射ビームB’に縮小係数を適用し、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さなフィーチャを有する像を形成してもよい。例えば、4または8の縮小係数が適用されてもよい。投影システムPSは、
図1において2枚のミラー13,14のみを有するように図示されるが、投影システムPSは、異なる数のミラー(例えば6枚または8枚のミラー)を含んでもよい。
【0048】
基板Wは、以前に形成されたパターンを含んでもよい。この場合、リソグラフィ装置LAは、パターンEUV放射ビームB’によって形成される像を、基板W上に以前に形成されたパターンと位置合わせする。
【0049】
相対的な真空、すなわち大気圧よりも十分に低い圧力で少ない量のガス(例えば水素)が放射源SO、照明システムIL、および/または、投影システムPSに提供されてもよい。
【0050】
放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源、放電生成プラズマ(DPP)源、自由電子レーザ(FEL)またはEUV放射を生成可能な任意の他の放射源であってもよい。
【0051】
図2は、リソグラフィ装置LAの一部を形成する基板ホルダWTを示す。基板ホルダWTは、平面視において基板と同じ形状、例えば円形を有し、基板と実質的に同じサイズであり、例えば直径300mmまたは450mmである。基板ホルダWTは、本体面22を有する本体21と、本体面22から突出する複数のバール20とを備える。複数のバール20の間に配置される本体面22の少なくとも一つのセクション210は、基板Wをクランプおよび/またはクランプ解除するように構成されてもよい。ある実施形態において、バール20は、100μmから500μmの範囲、例えば約150μmの高さを有する。基板Wは、基板Wを平坦な状態で支持するための実質的に平坦な支持面に一致するバール20の遠位端面によって支持されることができる。例えば、本体21およびバール20は、シリコン母材中に炭化ケイ素(SiC)粒子を有するセラミック材料であるSiSiCで形成されてもよい。
【0052】
本体21には複数の貫通孔が形成される。貫通孔89は、搬送手段(
図2には不図示)が基板ホルダWTを通って突出して基板Wを受けることを可能にし、基板Wと基板ホルダWTの間の空間がクランプ負圧に接続されることによって排気されることを可能にする。他の構造を、例えば基板ホルダWTと基板Wの間のガスフローおよび/または熱伝導率を制御するために設けることができる。
【0053】
基板ホルダWTが複数のバール20に対する基板Wの真空クランプを実行するよう構成される一実施形態において、基板ホルダWTの外周部近傍にエッジシール85が設けられる。したがって、クランプ手段は、基板Wの周囲の領域に加わる圧力を変更することによって真空クランプを提供するよう構成される。基板Wは、基板Wの上方の空間202よりも空間201が低圧となるようにクランプ開口89をクランプ負圧に接続することによって、基板ホルダWTにクランプされる。このように、クランプ手段は、空間201および202の圧力を変更するように構成される。したがって、基板Wの上方の気圧は、基板Wを基板ホルダWTにしっかりと押さえる。
【0054】
したがって、クランプ力(この場合には真空力)は、本体面、より具体的には本体面の複数のバール20の間の空間201に発生しうる。セクション210は、クランプ力が実行されうる本体面の領域を表す。したがって、複数のバール20の間に位置する本体面22の少なくとも一つのセクション210は、基板をクランプおよび/またはクランプ解除するよう構成される。エッジシール85a,85bは、基板ホルダWTから上方に突出して基板ホルダWTと基板Wの隙間を最小化し、周囲から基板Wの直下の空間への空気の流入を最小化し、その結果、クランプ負圧にかかる負荷を減少させる。バール20は、エッジシール85a,85bの間の領域に設けることができる。
【0055】
エッジシール85は、基板ホルダWTの外側の周りにある一対の突出するエッジシールリッジ(峰)85a,85bである。エッジシールリッジ85a,85bは、バール20よりもわずかに、例えば約10μmだけ短い高さを有し、それらが基板Wに接触しないようにするが、基板Wと基板ホルダWTの間の空間へのガスの流入を減少させて真空クランプを改善するようにする。バール20は、エッジシールリッジ85a、85bの間の領域に設けることができ、
図2には何ら示されていないが、この領域に1列以上のバールを有することが可能である。基板ホルダWTは、例えば基板ホルダWTと基板Wの温度を制御するためのヒータおよびセンサといった電子部品を備えることもできる。
【0056】
開口81および82は、基板を基板ホルダWT上で搭載および搭載解除するように意図される搬送手段(
図2には不図示)を収容するよう構成される。
【0057】
真空クランプを提供する代わりとして、基板ホルダは、基板Wを複数のバール20に静電的にクランプするよう構成される。この場合、クランプ手段によって提供される電圧が本体面22に印加される。より具体的には、クランプ手段は、本体目の複数のバールの間の空間に静電力を与える。セクション210は、クランプ力が実行されうる本体面の領域を表す。したがって、複数のバール20の間に位置する本体面22の少なくとも一つのセクション210は、基板をクランプおよび/またはクランプ解除するよう構成される。このセクション210は、バールフリー領域210と名付けられてもよい。複数のバール20の間に位置する本体面22の少なくとも一つのセクション210またはバールフリー領域は、基板Wを静電的に引きつけてクランプする。したがって、複数のバール20の間に位置する本体面22の少なくとも一つのセクション210またはバールフリー領域は、基板を静電的にクランプおよび/またはクランプ解除するよう構成される。
図2の実施形態においてもこの静電クランプ方式を使用できる。
【0058】
複数のバールの間に位置する本体面の少なくとも一つのセクションは、複数のバールが本体面から突出していない本体面のセクションまたは領域として理解されてもよい。言い換えれば、複数のバールの間に位置する本体面の少なくとも一つのセクションは、複数のバールが存在しない本体面のセクションまたは領域である。
【0059】
図3は、基板Wが基板テーブルWT上にどのように搭載されるかを示す。搬送手段が延出位置または第1位置にあることも理解できる。搬送手段30によって基板Wを受け取った後、搬送手段30は、基板を複数のバール20上に配置するための格納位置または第2位置に移動されてもよい。
図4bにおいて、搬送手段は、格納位置または第2位置にあり、基板ホルダWTの内側に収納されている。次に、露光前に基板Wはクランプされ、露光後に基板Wは基板WTから搭載解除するためにクランプ解除される。
【0060】
特にクランプ解除中だけでなくクランプ中も、基板は高摩擦を受けて、複数のバール、より具体的には
図4bに示されるように基板の外側部分の下に位置するバールを摩耗させるかもしれない。硬く、減衰のないウェハクランプシステムのため、このウェハ形状の変化には、
図4aに示されるような複数のウェハ振動が伴い、基板Wの表面における変形の問題につながるかもしれない。これは、基板Wがウェハの場合、その層間のオーバレイの問題につながるであろう。
【0061】
図5および
図6において、
図4aおよび
図4bに示される摩耗を防ぐ、本発明の一実施形態に係る基板ハンドリングシステム100が示される。この実施形態において、基板Wはウェハであるが、この例は、この種の基板のための発明に限定されない。さらに、基板ハンドリングシステム100は、基板Wを静電的にクランプおよび/またはクランプ解除するよう構成される。
【0062】
図5および
図6の基板ハンドリングシステム100は、基板ホルダWTを備える。基板ホルダWTは、本体面22を有する本体21を備える。さらに、基板ホルダWTは、本体面22から間隔を空けて基板Wを支持するために本体面22から突出する複数のバール20を備える。複数のバール20の間に位置する本体面22の少なくとも一つのセクション210は、基板をクランプおよびクランプ解除するよう構成されてもよい。
【0063】
さらに、基板ハンドリングシステム100は、クランプ手段を備え、クランプ手段は、基板を基板ホルダWTにクランプおよび/またはクランプ解除するよう構成され、基板ハンドリングシステム100は、基板Wを基板ホルダWTに搭載および/または搭載解除するよう構成され、かつ、基板Wの振動を検出するよう構成される搬送手段30も備える。搬送手段30は、基板ホルダWTに対する静電的なクランプおよび/またはクランプ解除中に、基板Wに物理的に接触するよう構成される。
【0064】
図5に示されるように、搬送手段は、接触位置または第3位置に位置付けられる。この接触位置は、
図3および
図4bのそれぞれに示される従来の延出位置および格納位置とは異なる。
【0065】
有利なことに、本発明は、クランプおよび/またはクランプ解除中の基板Wの振動を減少させる。
図5の右側に示されるような静電クランプ中において、搬送手段30は、
図5の左側に示されるように基板Wとの物理的接触を維持して裏側を優しく押すように構成される。
【0066】
静電クランプ解除中、つまり
図6の右側に示されるようにクランプ電圧を徐々に低下させる間(ランプダウン中)、搬送手段30は、基板Wに接触して裏側を優しく押すように構成される。さらに、搬送手段30は、クランプ電圧のランプダウン中にも基板の振動を測定することによって基板の解放を検出し、その後に搬送手段30が基板Wを押し上げるように構成されるため、基板端部の振動は複数のバール20上ではなく自由空間において生じる。一実施形態において、基板の解放は、クランプ電圧が減少するときに開始する。
【0067】
より具体的には、搬送手段30は、クランプ解除中に基板Wを振動位置110または第4位置に位置づけるよう構成され、当該振動位置110において、基板は複数のバール20から離れて配置される。これは、
図6に示されるように、複数のバール20から自由な空間に基板が配置されていると言ってもよい。振動位置へ移動する速度は、10mm/s以上である。基板Wが全体的に解放されると、例えばクランプ電圧が0ボルトになると、搬送手段は、振動の減少が検出されるまで、および/または振動が停止するまで、つまり、クランプ解除が終了するまで、基板Wを振動位置に維持するよう構成される。
【0068】
図7は、本発明に係る基板ハンドリングシステム100の別の実施形態を示す。理解できるように、この実施形態は、説明を単純にするために
図5および
図6のシステムのいくつかの要素を備え、それらは再度説明されないであろう。
【0069】
図7の基板ハンドリングシステム100の搬送手段30は、三つのピン31と、三つの電気モータ40と、一つの力フィードバックセンサ50と、搬送手段制御装置またはモータ制御装置41とを備える。またこの実施形態において、電気モータ40は、力フィードバックセンサ50がクランプ解除によって生じる力または振動を検出するときに、基板Wをピン31を通じて振動位置110に位置づけるよう構成される。
【0070】
他の実施形態において、モータ制御装置41は、静電クランプ解除によって生じる力または振動を検出するよう構成され、電動モータ40に命令を送信して基板Wをピン31を通じて振動位置110に位置づけるよう構成される。
【0071】
さらに、ピンをPEEKなどの減衰材料から作ることによって、または、ピンの作動部分に電磁気的な減衰を導入することによって、または、少なくとも100Hzの力フィードバック制御を提供するよう構成されるサーボ動作によって、ピンに追加の減衰を導入することも提案される。代わりに、専用の減衰ピン、リングまたは他の形状や構造をこの目的のために使用できる。
【0072】
これらの実施形態は、複数のバール20の間に裏込めガスがある場合のいずれでも実施されてよい。そのために、
図7の実施形態において、基板処理システム100は、ガスディスペンサ60をさらに備える。ガスディスペンサ60は、少なくとも一つのガスを少なくとも本体面に吐出するよう構成される。言い換えれば、ガスディスペンサ60は、クランプ面と基板の間の体積70を水素61で満たすように構成される。有利なことに、裏込めガス61は、クランプ解除直後にいくらかの追加の減衰を与えるために有益でありうる。
【0073】
ある代替の実施形態において、搬送手段は、外部装置であってもよい。
図8aは、当該実施形態の俯瞰図を示す。搬送手段は、基板Wを基板ホルダWTに搭載および搭載解除するように構成されるグリップハンド81を有する外部ロボット80を備える。他の実施形態において、外部ロボットは、基板をピン31に搭載および搭載解除するよう構成される。ある追加の実施形態において、外部ロボット80は、基板を複数のバール20に搭載および搭載解除するよう構成される。
【0074】
また、
図8aの実施形態において、グリップハンド81が基板Wと同じ高さとなる位置が破線で示され、すなわち、それは基板と平行な平面に位置してもよいし、基板と同じ平面に位置してもよい。この実施形態において、外部ロボット80は、当該平面から基板Wを把持するよう構成される。またグリップハンド81は、物理的な接触によって、好ましくは少なくと一つの楔を用いて、または、静電力によって基板Wを把持してもよい。
【0075】
図8bの実施形態において、グリップハンド81は基板Wの上方に位置する。この実施形態において、外部ロボット80は、当該位置から基板Wを把持するように構成される。特にグリップハンド81は、物理的な接触によって、好ましくは少なくとも一つの楔を用いて、または、静電力によって基板Wを把持してもよい。
【0076】
搬送手段30が外部ロボット80を備える実施形態のいずれかにおいて、外部ロボット80は、
図5から
図7に示されるハンドリングシステムのいずれにおいても使用されてよい。特に
図8bに示されるように、外部ロボット80は、モータ制御装置41および力フィードバックセンサ50に接続されてもよい。モータ制御装置41はまた、クランプ解除によって生じる力または振動を検出するよう構成され、クランプ解除中に基板を振動位置110に位置づけるように外部ロボット80に命令を送信するよう構成される。前の実施形態と同様に、当該振動位置110において、基板は複数のバール20に対して離れて配置される。
【0077】
さらに、モータ制御装置41はまた、クランプによって生じる力または振動を検出するよう構成され、基板に接触して基板Wの振動を減少させるように外部ロボット80に命令を送信するよう構成される。有利なことに、外部ロボット80は、基板ホルダWTの主要な機能を過度に複雑化させることなく、より複雑なクランプ方式(例えば、異なる位置における経時的な差分力)の実行を可能にする。
【0078】
図5から
図8bの実施形態のいずれにおいても、ピン31またはグリップハンド81を有する外部ロボット80のいずれかである搬送手段30は、クランプ中に基板Wをゼロの垂直荷重力に保つように構成される。
【0079】
図9aは、基板Wをクランプ解除する方法300のフローチャートを示す。方法300は、
図9aの右側部分に表されるように電気的なクランプ解除の間に実行される。方法300は、基板Wを電気的にクランプ解除301することと、当該クランプ解除中に基板Wに搬送手段30を接触301させることとを備える。これは、クランプ電圧を徐々に低下させる間(ランプダウン中)に搬送手段30を基板Wに接触させることを意味する。さらに、基板Wの解放は、力フィードバック測定を用いることによって、または搬送手段制御装置40によって検出302される。クランプ解除中にそれが解放されると、つまり、クランプ電圧が0Vに近いがまだクランプされていると、基板Wは、搬送手段30によって基板の振動位置110に移動303させられ、当該振動位置110において基板Wは複数のバール20から離れる。
【0080】
図9bは、基板Wのクランプを減少させる方法400のフローチャートを示す。方法400は、
図9bの右側部分に表されるように、電気的なクランプ中に実行される。方法400は、基板Wを電気的にクランプすると同時にクランプ中に搬送手段30を基板Wに接触させるステップ401を備える。これは、クランプ電圧を増加させる間(ランプアップ中)に、搬送手段を基板Wに接触させることを意味する。さらに、振動の減少は、力フィードバック計測を用いることによって、または搬送手段制御装置40によって検出402される。クランプ中にそれが検出されると、つまり、クランプ電圧が最適なクランプ電圧に近づくと、搬送手段30は基板Wから離れること403となる。
【0081】
この文章では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用について特定の言及がなされるかもしれないが、本書に記載されるたリソグラフィ装置は、他の用途を有してもよいことが理解されよう。可能性のある他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造を含む。
【0082】
この文章では、リソグラフィ装置の文脈で本発明の実施形態への具体的な言及がなされたかもしれないが、本発明の実施形態は、他の装置で使用されてもよい。本発明の実施の形態は、マスク検査装置、計測装置、または、ウェハ(または他の基板)もしくはマスク(または他のパターニングデバイス)といった対象物を測定または処理する任意の装置の一部を形成してもよい。これらの装置は、一般にリソグラフィツールと称されてもよい。このようなリソグラフィツールは、真空条件または大気(非真空)条件を使用してもよい。
【0083】
上記では、光リソグラフィの文脈で本発明の実施の形態の使用への具体的な言及がなされたかもしれないが、文脈が許せば、本発明は光リソグラフィに限定されず、例えばインプリントリソグラフィなどの他の用途で使用されてもよいことが理解されよう。
【0084】
文脈が許す限り、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装されてもよい。また、本発明の実施形態は、1以上のプロセッサによって読み取られ実行されうる機械可読媒体に格納された命令として実装されてもよい。機械可読媒体は、機械(例えば、コンピューティングデバイス)によって読み取り可能な形態で情報を格納または送信するための任意の機構を含んでもよい。例えば、機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光学、音響または他の形態の伝播信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)、およびその他を含んでもよい。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本書で説明されることがある。しかしながら、そのような記述は単に便宜上のものであり、そのような動作は、実際には、コンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスがファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行することから生じ、そうすることでアクチュエータまたは他のデバイスに物理世界との相互作用を生じさせうることが理解されよう。
【0085】
本発明の特定の実施の形態が上記で説明された一方、本発明は、説明とは異なる他の態様で実施されてもよいことが理解されよう。上記説明は、限定ではなく、例示を目的としている。したがって、当業者であれば、以下に記載される特許請求の範囲から逸脱することなく、説明された本発明に変更を加えてもよいことが明らかであろう。本発明のその他の態様は、以下の番号が付された項として提示される。
(項1)本体面を有する本体と、前記本体面から間隔を空けて基板を支持するために前記本体面から突出する複数のバールと、を備える基板ホルダと、
前記基板ホルダ上で前記基板をクランプおよび/またはクランプ解除するよう構成されるクランプ手段と、
前記基板ホルダ上で前記基板を搭載および/または搭載解除するよう構成される搬送手段と、を備え、
前記搬送手段は、前記基板ホルダへの前記クランプおよび/またはクランプ解除中に前記基板に物理的に接触するようさらに構成される、基板ハンドリングシステム。
(項2)前記搬送手段は、前記クランプ解除中に前記基板を振動位置に位置付けるようさらに構成され、当該振動位置において前記基板は複数のバールから離れて配置される、項1に記載のシステム。
(項3)前記搬送手段は、力フィードバックセンサ手段を備える、項1または項2に記載のシステム。
(項4)前記搬送手段は、前記力フィードバックセンサ手段が前記クランプ解除によって生じる力を検出するときに、前記基板を前記振動位置に位置付けるよう構成される、項3に記載のシステム。
(項5)前記搬送手段は、搬送手段制御装置を備え、
前記搬送手段は、前記搬送手段制御装置が前記クランプ解除によって生じる力を検出するときに、前記基板を振動位置に位置付けるよう構成される、項1から項4のいずれか一項に記載のシステム。
(項6)前記搬送手段は、複数のピンと、モータ手段とを備える、項1から項5のいずれか一項に記載のシステム。
(項7)前記モータ手段は、少なくとも100Hzの力フィードバック制御を提供するよう構成されるサーボアクチュエータを備える、項6に記載のシステム。
(項8)前記複数のピンは、減衰材料で被覆され、好ましくは、前記減衰材料がポリエーテルエーテルケトンである、項6または項7に記載のシステム。
(項9)少なくとも一つのガスを少なくとも前記本体面に吐出するよう構成されるガスディスペンサ手段をさらに備え、好ましくは前記ガスが水素または窒素である、項1から項8のいずれか一項に記載のシステム。
(項10)前記基板と前記複数のバールの接触を減衰させるための減衰手段をさらに備え、好ましくは、前記減衰手段がガスダンパおよび/または磁気ダンパである、項1から項9のいずれか一項に記載のシステム。
(項11)前記搬送手段は、前記クランプ中の前記基板の振動の減少を検出し、前記搬送手段を前記基板から離すようさらに構成される、項1から項10のいずれか一項に記載のシステム。
(項12)前記力フィードバックセンサ手段は、前記振動の減少を検出するよう構成される、項3および項11に記載のシステム。
(項13)前記搬送手段制御装置は、前記振動の減少を検出するよう構成される、項5および項11に記載のシステム。
(項14)基板をクランプ解除する方法であって、
前記基板をクランプ解除し、前記クランプ解除中に搬送手段を前記基板に接触させることと、
前記クランプ解除中に、前記基板を前記搬送手段によって振動位置に移動させることと、を備え、
当該振動位置において、前記基板は複数のバールから離れている、方法。
(項15)前記基板を前記振動位置に移動させる前に、前記基板の解放を検出することを備える、項14に記載の方法。
(項16)前記検出は、力フィードバック測定を用いることによって、または、搬送手段制御装置によって実行される、項15に記載の方法。
(項17)前記振動位置へ移動する速度は、10mm/s以上である、項14から項16のいずれか一項に記載の方法。
(項18)基板をクランプする方法であって、前記基板をクランプすることと、前記クランプ中に搬送手段を前記基板に接触させることとを備える、方法。
(項19)前記搬送手段によって前記基板の振動の減少を検出することと、
前記基板から前記搬送手段を離すこととをさらに備える、項18に記載の方法。
(項20)前記基板の振動の減少は、力フィードバック測定を用いることによって、または、搬送手段制御装置によって検出される、項18または項19に記載の方法。
(項21)項1から項13のいずれか一項に記載のシステムに、項14から項20のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させる命令を備えるコンピュータプログラム。
(項22)項21に記載のコンピュータプログラムが記憶されるコンピュータ可読媒体。
(項23)項1から13のいずれか一項に記載のシステムおよび/または項22に記載のコンピュータ可読媒体を備えるリソグラフィ装置。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体面を有する本体と、前記本体面から間隔を空けて基板を支持するために前記本体面から突出する複数のバールと、を備える基板ホルダと、
前記基板ホルダ上で前記基板をクランプおよび/またはクランプ解除するよう構成されるクランプ手段と、
前記基板ホルダ上で前記基板を搭載および/または搭載解除するよう構成される搬送手段と、を備え、
前記搬送手段は、前記基板ホルダへの前記クランプおよび/またはクランプ解除中に前記基板に物理的に接触するようさらに構成される、基板ハンドリングシステム。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記クランプ解除中に前記基板を振動位置に位置付けるようさらに構成され、当該振動位置において前記基板は複数のバールから離れて配置され、または/および、
前記搬送手段は、力フィードバックセンサ手段を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記搬送手段は、前記力フィードバックセンサ手段が前記クランプ解除によって生じる力を検出するときに、前記基板を前記振動位置に位置付けるよう構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記搬送手段は、搬送手段制御装置を備え、
前記搬送手段は、前記搬送手段制御装置が前記クランプ解除によって生じる力を検出するときに、前記基板を振動位置に位置付けるよう構成され、または/および、
前記搬送手段は、複数のピンと、モータ手段とを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記モータ手段は、少なくとも100Hzの力フィードバック制御を提供するよう構成されるサーボアクチュエータを備える、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数のピンは、減衰材料で被覆され、好ましくは、前記減衰材料がポリエーテルエーテルケトンである、請求項4または5に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも一つのガスを少なくとも前記本体面に吐出するよう構成されるガスディスペンサ手段をさらに備え、好ましくは前記ガスが水素または窒素である、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記基板と前記複数のバールの接触を減衰させるための減衰手段をさらに備え、好ましくは、前記減衰手段がガスダンパおよび/または磁気ダンパであり、または/および、
前記搬送手段は、前記クランプ中の前記基板の振動の減少を検出し、前記搬送手段を前記基板から離すようさらに構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記力フィードバックセンサ手段は、前記振動の減少を検出するよう構成される、請求項2を引用する請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記搬送手段制御装置は、前記振動の減少を検出するよう構成される、請求項4を引用する請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
基板をクランプ解除する方法であって、
前記基板をクランプ解除し、前記クランプ解除中に搬送手段を前記基板に接触させることと、
前記クランプ解除中に、前記基板を前記搬送手段によって振動位置に移動させることと、を備え、
当該振動位置において、前記基板は複数のバールから離れている、方法。
【請求項12】
前記基板を前記振動位置に移動させる前に、前記基板の解放を検出することを備え、
前記検出は、力フィードバック測定を用いることによって、または、搬送手段制御装置によって実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記振動位置へ移動する速度は、10mm/s以上である、請求項11から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
基板をクランプする方法であって、前記基板をクランプすることと、前記クランプ中に搬送手段を前記基板に接触させることとを備える、方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載のシステムを備えるリソグラフィ装置。
【国際調査報告】