(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-05
(54)【発明の名称】ワイヤソーによる複数のスライス作業中に被加工物から複数のウェハをスライスして切り出す方法、および単結晶ケイ素の半導体ウェハ
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20220829BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20220829BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20220829BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20220829BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20220829BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220829BHJP
【FI】
B24B27/06 S
B24B27/06 E
B24B27/06 H
B24B27/06 R
B24B49/14
B24B55/02 Z
B28D5/04 C
B28D7/02
H01L21/304 611W
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021570416
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2020061893
(87)【国際公開番号】W WO2020239348
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】102019207719.6
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーチ,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ビースナー,ペーター
【テーマコード(参考)】
3C034
3C047
3C069
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034CA19
3C034CA30
3C034CB11
3C034DD20
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3C069AA01
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3C158CB10
5F057AA02
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5F057GA16
5F057GA27
5F057GB03
5F057GB40
(57)【要約】
本発明の主題は、ワイヤソーによる複数のスライス作業中に被加工物から複数のウェハをスライスして切り出す方法であり、ワイヤソーは、2つのワイヤガイドローラの間に張り渡されたソーイングワイヤの移動するワイヤセクションからなるワイヤウェブを含み、ワイヤガイドローラの各々は、固定軸受と可動軸受との間に装着される。本発明のもう1つの主題は、この方法によって得ることが可能な単結晶ケイ素の半導体ウェハである。この方法は、被加工物のうちの1つを、作業流体の存在下で、スライス作業のうちの各スライス作業中に、被加工物に研磨作用を及ぼす硬質物質が存在するワイヤウェブに対する送り方向に沿って送るステップと、スライス作業中の各ワイヤガイドローラの固定軸受の温度制御を、温度を切込深さの関数として定める温度プロファイルに従って実行するステップと、スライス作業の過程において、温度プロファイルを、一定温度の過程を有する第1の温度プロファイルから、第1の平均形状プロファイルと基準ウェハの形状プロファイルとの差に比例する第2の温度プロファイルに切り替える、第1の切替ステップとを含み、第1の平均形状プロファイルは、第1の温度プロファイルに従ってスライスして切り出されたウェハから決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤソーによる複数のスライス作業中に被加工物から複数のウェハをスライスして切り出す方法であって、前記ワイヤソーは、2つのワイヤガイドローラの間に張り渡されたソーイングワイヤの移動するワイヤセクションからなるワイヤウェブを含み、前記ワイヤガイドローラの各々は、固定軸受と可動軸受との間に装着され、前記方法は、
前記被加工物のうちの1つの被加工物を、作業流体の存在下で、前記スライス作業のうちの各スライス作業中に、前記被加工物に研磨作用を及ぼす硬質物質が存在する前記ワイヤウェブに対する送り方向に沿って送るステップと、
前記スライス作業中の各前記ワイヤガイドローラの前記固定軸受の温度制御を、温度を切込深さの関数として定める温度プロファイルに従って実行するステップと、
前記スライス作業の過程において、前記温度プロファイルを、一定温度の過程を有する第1の温度プロファイルから、第1の平均形状プロファイルと基準ウェハの形状プロファイルとの差に比例する第2の温度プロファイルに切り替える、第1の切替ステップとを含み、前記第1の平均形状プロファイルは、前記第1の温度プロファイルに従ってスライスして切り出されたウェハから決定される、方法。
【請求項2】
前記温度プロファイルをさらに他の温度プロファイルに切り替える、さらに他の切替ステップを含み、前記さらに他の温度プロファイルは、以前にスライスされたウェハのさらに他の平均形状プロファイルと前記基準ウェハの形状プロファイルとの差に比例し、前記以前にスライスされたウェハは、現在のスライス作業の直前の少なくとも1~5回のスライス作業から得られたウェハである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ワイヤソーの、または前記ソーイングワイヤの、または前記作業流体の、少なくとも1つの特徴の変化の後に行われる前記スライス作業のうちの第1のスライス作業中に前記第1の温度プロファイルを使用するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ウェハベースのウェハの選択に基づいて前記第1の平均形状プロファイルおよび前記さらに他の平均形状プロファイルを決定するステップを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
切削に関連するウェハの選択に基づいて前記さらに他の平均形状プロファイルを決定するステップを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ウェハベースおよび切削ベースのウェハの選択に基づいて前記さらに他の平均形状プロファイルを決定するステップを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ウェハの形状プロファイルの重み付け平均に基づいて前記第1の平均形状プロファイルおよび前記さらに他の平均形状プロファイルを決定するステップを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ソーイングワイヤは過共析パーライト鋼ワイヤである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ソーイングワイヤの直径は70μm~175μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ソーイングワイヤに、長手方向ワイヤ軸に沿って、前記長手方向ワイヤ軸に垂直な方向の複数の突起および窪みが設けられている、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記スライス作業中に、冷却潤滑剤を作業流体として前記ワイヤセクションに供給するステップを含み、前記硬質物質は、ダイヤモンドからなり、前記ソーイングワイヤの表面に電気めっき接合または合成樹脂接合または形状嵌め接合により固定されており、前記冷却潤滑剤は、前記被加工物に対して研磨作用を及ぼす物質を含まない、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
スライス作業中に、グリコールまたはオイル中の硬質物質のスラリーの形態の前記作業流体を前記ワイヤセクションに供給するステップを含み、前記硬質物質は炭化ケイ素からなる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ソーイングワイヤを、連続する一連の方向反転のペアを通じて移動させるステップを含み、方向反転の各ペアは、前記ソーイングワイヤの第1のワイヤ長手方向の第1の長さの第1の移動と、前記第1の移動に続く、前記ソーイングワイヤの第2のワイヤ長手方向の第2の長さの第2の移動とを含み、前記第2のワイヤ長手方向は前記第1のワイヤ長手方向の反対方向であり、前記第1の長さは前記第2の長さよりも大きい、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の長さの移動中、前記ソーイングワイヤは、第1のワイヤストックから、前記ワイヤウェブに、ワイヤ長手方向の第1の張力で供給され、前記第2の長さの移動中、前記ソーイングワイヤは、第2のワイヤストックから、前記ワイヤ長手方向の第2の張力で供給され、前記第2の張力は前記第1の張力よりも小さい、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記被加工物は半導体材料からなる、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記被加工物は直線角柱形状を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記被加工物は直線円柱形状を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
7μm以下の波状起伏指数Wav
redおよび300mmの直径を有する、または、4.5μm以下の波状起伏指数Wav
redおよび200mmの直径を有する、単結晶ケイ素の半導体ウェハ。
【請求項19】
3μm以下の波状起伏指数Wav
redおよび300mmの直径を有する、または、2μm以下の波状起伏指数Wav
redおよび200mmの直径を有する、請求項18に記載の半導体ウェハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、ワイヤソーによる複数のスライス作業中に被加工物から複数のウェハをスライスして切り出す方法であり、このワイヤソーは、2つのワイヤガイドローラの間に張り渡されたソーイングワイヤの移動するワイヤセクションからなるワイヤウェブを含み、ワイヤガイドローラの各々は、固定軸受と可動軸受との間に装着されている。
【0002】
本発明のもう1つの主題は、上記方法によって得られる単結晶ケイ素の半導体ウェハである。
【背景技術】
【0003】
先行技術
ある材料からなる薄く均質的なウェハが必要とされる用途は数多くある。均質性およびその表側と裏側との面平行性について特に厳しい要求を受けるウェハの一例は、マイクロエレクトロニクス部品の製造のための基板として使用される半導体材料のウェハである。被加工物から複数のウェハを同時にスライスして切り出すワイヤソーイングは、特に経済的なので、このようなウェハの製造には特に重要である。
【0004】
ワイヤソーイングの場合、ソーイングワイヤは、少なくとも2つのワイヤガイドローラの周りに、保持バーに接合された切削対象の被加工物に面している2つの隣り合うガイドローラの側でワイヤウェブが張り渡されるように、螺旋状に導かれており、このワイヤウェブは、互いに平行に延びるソーイングワイヤセクションからなる。ワイヤガイドローラは円柱形であり、これらの円柱のそれぞれの軸は互いに平行になるように配置され、ワイヤガイドローラの円柱面は耐摩耗性材料のカバーを有し、カバーには環状に閉じた溝が設けられ、この溝は、ワイヤガイドローラの軸に対して垂直な面に延在し、ソーイングワイヤを保持する。ワイヤガイドローラを、それぞれの円柱軸を中心として同一方向に回転させると、ワイヤウェブのワイヤセクションが被加工物に対して相対的に移動し、研磨剤が存在するワイヤウェブと被加工物とを接触させることで、ワイヤセクションは材料を除去する。被加工物の送りを続けると、ワイヤセクションは、被加工物に切溝を形成し、すべてが保持バーで停止するまで、被加工物に対して作業する。このとき、被加工物は、均質的な複数のウェハに切断されており、これらは、接着接合により、櫛の歯のように保持バーから垂下している。ワイヤソーおよびワイヤソーイングの方法は、たとえばDE102016211883A1またはDE102013219468A1から周知である。
【0005】
ワイヤソーイングは、ラップ切削または研磨切削で実現されてもよい。ラップ切削の場合、硬質物質のスラリーの形態の加工流体がワイヤの表面と被加工物との間に供給される。材料の除去は、ラップ切削の場合、ソーイングワイヤと硬質物質と被加工物という3者の相互作用によって実現される。研磨切削の場合、使用されるソーイングワイヤの表面に硬質物質がしっかりと組み込まれており、供給される加工流体自体には研磨物質は含まれておらず、加工流体は冷却潤滑剤として作用する。よって、研磨切削の場合の材料の除去は、硬質物質が接合されたソーイングワイヤと被加工物との2者の間の相互作用によって行われる。
【0006】
通常、ソーイングワイヤは、たとえば過共析パーライト鋼からなるピアノ線である。スラリーの硬質物質は、たとえばグリコールまたはオイルのような粘着性キャリア液中の、たとえば炭化ケイ素(SiC)からなる。接合された硬質物質は、たとえばダイヤモンドからなり、これは、ニッケル電気めっきもしくは合成樹脂接合により、またはロールインされることにより、ワイヤ表面に形状嵌めおよび圧力嵌めによって接合される。
【0007】
ラップ切削の場合、使用されるソーイングワイヤは平滑であるかまたは構造化されており、研磨切削の場合、平滑なソーイングワイヤのみが使用される。平滑なソーイングワイヤは、円柱形状を有し、その高さ(すなわちワイヤの長さ)が非常に大きい。構造化されたソーイングワイヤは、平滑なワイヤの長さ全体にわたってワイヤの長手方向に垂直な方向に複数の突起と窪みが設けられているワイヤである。ラップ切削用の平滑なソーイングワイヤの一例はWO13053622A1に記載され、ラップ切削用の構造化されたソーイングワイヤの一例はUS9610641B2に記載され、研磨切削用のダイヤモンドカバーを有する平滑なソーイングワイヤの一例はUS7926478B2に記載されている。
【0008】
従来のワイヤソーの場合、ワイヤガイドローラの各々は、その端面のうちの一方の近傍に、マシンのフレームにしっかりと接合され固定軸受と呼ばれる軸受を備え、反対側の端面の近傍に、ワイヤガイドローラの軸方向に移動可能であり可動軸受と呼ばれる軸受を備える。これは、予測できない変形につながる構造の機械的重層決定を防止するのに必要である。
【0009】
特に、ワイヤウェブと被加工物とが最初に接触した瞬間に、言い換えるとソーの係合時に、機械的負荷および熱負荷が急激に変化する。ワイヤウェブと被加工物との相対的な配置が変化し、ワイヤガイドローラの軸方向におけるこの変化の成分は、切溝、および隣接するウェハの表側および裏側によって形成されるその側面が、ワイヤガイドローラ軸に対して垂直なその面から逸れてウェハが波打つことを、意味する。波打ったウェハは、要求が厳しい用途には適さない。
【0010】
ワイヤソーイングで得られるウェハの主面の面平行性を改善することを目的とする方法が知られている。
【0011】
US5377568が開示する方法では、可動軸受の端面に平行でありかつその近傍にある、ワイヤガイドローラの外部に位置する基準面の、マシンのフレームを基準とする相対的な位置を測定し、ワイヤガイドローラの内部の温度制御により、ワイヤガイドローラの長さにおける熱の増大または減少を生じさせ、これを、測定した基準面の位置変化が再び補償されるまで行う。ワイヤウェブのワイヤセクションの位置は、ワイヤガイドローラが軸方向に伸長すると変位し、これは、最も好ましくは固定軸受からの距離に比例する。しかしながら、実際、ワイヤガイドローラの昇温は不均一である。なぜなら、これは外側から(不均一に)昇温され内側から冷却されるが、ワイヤガイドローラ内の熱の径方向の伝達は、ローラの構造に起因して、とりわけ冷却ラビリンス自体の結果として、すべての軸方向位置について同一ではなく、そのため、ワイヤガイドローラのその軸に沿う伸長は不均一であるからである。
【0012】
JP2003145406A2が開示する方法では、渦電流センサがワイヤガイドローラの外部の点の位置を測定し、この位置の測定に応じて、ワイヤガイドローラ内部の温度を制御する冷却水の温度を変化させる。この方法は、熱負荷または機械的負荷の変化の結果として生じるワイヤウェブに対する被加工物の配置の変化を不適切に捕捉するに過ぎない。
【0013】
KR101340199B1は、各々が中空シャフト上に回転可能に取り付けられたワイヤガイドローラを使用するワイヤソーイングの方法を開示しており、中空シャフトは、複数のセクションにおいて異なる温度で加熱または冷却することができ、したがって、セクションごとに軸方向に伸縮させることができる。その結果、少なくとも数セクタ分は、ワイヤガイドローラの長さが軸方向に非線形的に(不均一に)変化する。しかしながら、この方法は、熱負荷または機械的負荷の変化の結果として生じる被加工物およびワイヤウェブの配置の変化を不適切に考慮しているに過ぎない。
【0014】
US2012/0240915A1は、ワイヤガイドローラを使用するワイヤソーイングの方法を開示しており、この方法では、ローラ内部と、ワイヤガイドローラを回転可能に支持するワイヤガイドローラの軸受のうちの一方とが、冷却流体によって互いに独立して温度制御される。しかしながら、この方法は、ワイヤソーの構造的要素の熱的および機械的な変形が一定ではなく再現性もないことを考慮しておらず、時間に依存する破壊変数の影響をさらに受けることも考慮されていない。
【0015】
最後に、WO2013/079683A1は、ワイヤソーイング方法を開示しており、ワイヤガイドローラ軸受の異なる温度に対して生じるウェハのすべての形状を最初に測定し、これらの形状の各々を、それぞれの対応する軸受温度とともに保存した後に、続く切削において、軸受温度を、所望の目標形状に最もよく合致する保存した形状の選択に対応するように、選択する。この方法は、ワイヤソーの熱応答の程度および挙動が、ドリフトに応じて切削ごとに変化すること、または、経時的に変動する破壊変数がノイズとして作用することを考慮していない。同様に、ワイヤソーイング中に生じる機械的負荷の変化も考慮していない。
【0016】
特に半導体材料のウェハは、ワイヤソーイング後に他の機械加工工程に供されることが多い。このような機械加工工程は、表側および裏側の研削(連続してまたは両側同時に行われる)、表側および裏側のラップ加工(両側同時に行われる)、半導体ウェハのエッチング、ならびに表側および裏側の研磨(通常は、連続または同時両面粗研磨として、および片面精密研磨として行われる)を含み得る。片面または連続両面機械加工方法の共通する特徴は、半導体ウェハの片側が把持装置において真空チャックにより保持され、反対側が機械加工されることである。
【0017】
半導体ウェハの厚さは、典型的にはその直径と比較して小さい。そのため、半導体ウェハは、把持されると、ウェハ変形力(たとえば機械加工ツールが課す負荷、および与えられた真空に起因する張力)と復元変形力(ウェハの張り)とが釣り合うように弾性変形する。保持されている半導体ウェハの側面は、把持装置に適合する。機械加工された側から材料を除去し把持装置から半導体ウェハを取り外した後、機械加工によって薄くなった半導体ウェハは弛緩して元の形状に戻る。言い換えると、下流の機械加工工程は、一般的に、表側と裏側との面平行度を改善しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、熱負荷または機械的負荷の変化の結果ワイヤウェブに対する被加工物の配置が変化することをより適切に考慮し、波状起伏が小さいウェハをもたらす方法を提供することで、上記課題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の詳細な説明
この目的は、ワイヤソーによる複数のスライス作業中に被加工物から複数のウェハをスライスして切り出す方法によって達成され、ワイヤソーは、2つのワイヤガイドローラの間に張り渡されたソーイングワイヤの移動するワイヤセクションからなるワイヤウェブを含み、ワイヤガイドローラの各々は、固定軸受と可動軸受との間に装着され、この方法は、
被加工物のうちの1つの被加工物を、冷却潤滑剤の存在下で、スライス作業のうちの各スライス作業中に、被加工物に研磨作用を及ぼす硬質物質が存在するワイヤウェブに対する送り方向に沿って送るステップと、
スライス作業中の各ワイヤガイドローラの固定軸受の温度制御を、温度を切込深さの関数として定める温度プロファイルに従って実行するステップと、
スライス作業の過程において、温度プロファイルを、一定温度の過程を有する第1の温度プロファイルから、第1の平均形状プロファイルと基準ウェハの形状プロファイルとの差に比例する第2の温度プロファイルに切り替える、第1の切替ステップとを含み、第1の平均形状プロファイルは、第1の温度プロファイルに従ってスライスして切り出されたウェハから決定される。
【0020】
本発明の方法により被加工物からスライスされたウェハは、固定軸受の熱膨張の結果生じるワイヤガイドローラの軸方向の移動の影響を事実上受けない。結果として、このようなウェハの基準ウェハからの形状の誤差は最小になる。
【0021】
固定軸受の温度は、たとえば、1つ以上のペルティエ冷却素子による抵抗加熱によって制御してもよい。しかしながら、特に好ましくは、固定軸受の温度制御は、スライス作業中に各ワイヤガイドローラの固定軸受を通して流体を送ることによって実現され、スライス作業のうちの各スライス作業の上記流体の温度は、流体の温度を切込深さの関数として定める温度プロファイルに従う。その他の実施形態を表す本発明のさらに他の説明は、本発明のこの好ましい実施形態に向けられたものである。
【0022】
好ましくは、上記温度プロファイルは、さらに他の温度プロファイルにさらに切り替えられる。上記さらに他の温度プロファイルは、以前にスライスされたウェハのさらに他の平均形状プロファイルと、基準ウェハの形状プロファイルとの差に比例し、上記以前にスライスされたウェハは、現在のスライス作業の直前の少なくとも1~5回のスライス作業から得られたウェハである。
【0023】
上記第1の平均形状プロファイルの決定および上記さらに他の平均形状プロファイルの決定は、ウェハベースのウェハの選択に基づいて行われてもよい。ウェハベースの選択の場合、スライス作業の特定のウェハが、平均することにより各平均形状プロファイルを決定するために採用され、他のウェハは除外される。たとえば、平均を求めるために考慮される唯一のウェハは、被加工物における特定の位置にある、たとえば被加工物の長さに沿って15番目~25番目ごとのウェハのみである。ウェハベースの選択のもう1つの可能性として、スライス作業のすべてのウェハの平均形状プロファイルからの誤差が最大および最小である形状プロファイルを有するウェハを除外することが挙げられる。代替の可能性として、スライス作業のすべてのウェハの平均形状プロファイルからの誤差が1~2シグマを超える形状プロファイルを有するウェハを、平均から除外することが、挙げられる。
【0024】
上記さらに他の平均形状プロファイルの決定は、代わりに切削ベースのウェハの選択に基づいて行われてもよい。切削ベースの選択の場合、少なくとも1回のスライス作業のすべてのウェハが、平均することによりさらに他の平均形状プロファイルを決定するために採用され、少なくとも1回の他のスライス作業のすべてのウェハがこの決定から除外される。
【0025】
加えて、上記さらに他の平均形状プロファイルの決定は、ウェハベースおよび切削ベースの選択に基づいて行われてもよい。この場合、以前のスライス作業のうちの少なくとも1つを選択し、以前のスライス作業のうちの少なくとも1つを除外し、同時に、選択したスライス作業の特定のウェハをその都度選択し、他のウェハをその都度除外し、このようにして選択したウェハのすべてを平均を求めるために採用する。
【0026】
本発明の理解に有効な定義ならびに本発明をもたらした考察および観察を、本明細書の以下のセクションで論じる。
【0027】
ウェハの表面は、表側と、裏側と、縁とで構成される。ウェハの中心は、その重心である。
【0028】
ウェハの「回帰面」は、表側および裏側のすべての点からの間隔の合計が最小になる面である。
【0029】
ウェハの「中央エリア」は、回帰面に対して鏡面対称位置にある、一方が表側にあり他方が裏側にある点のペアを結ぶすべての線の中心点の総計である。
【0030】
ウェハは、これらの線の長さが表側および裏側の位置とともに変化する場合、「エリアベースの厚さ欠陥」を有する。
【0031】
ウェハは、中央エリアが回帰面からずれている場合、「エリアベースの形状欠陥」を有する。
【0032】
「基準ウェハ」は、エリアベースの厚さ欠陥がなくかつエリアベースの形状欠陥がないウェハである。選択される基準ウェハは、対応する、たとえば凸状または楔形のウェハがワイヤソーイングによるインゴット分割の所望の目的である場合、表側および裏側の位置全体において特定の厚さの推移または特定の形状の推移を有するウェハであってもよい。凸状のウェハは、たとえば、後にブレース層を表側に設け(たとえばエピタキシャル層)または裏側に設け(たとえば保護酸化物)た結果として形状が変化した場合に凸状がその変化を相殺するのであれば、好都合である。
【0033】
「送り方向」は、被加工物をワイヤウェブに向けて送る方向である。
ウェハの「エリアベースの厚さプロファイル」は、回帰面上の位置の関数としてのウェハの厚さを意味する。
【0034】
ウェハの「中心線」は、ウェハの中心を通って送り方向に延びる、中央エリア内の線である。
【0035】
ウェハの「厚さプロファイル」は、中心線上の位置の関数としてのウェハの厚さである。
【0036】
「切込深さ」は、中心線上の位置であり、スライス作業中の送り方向における切溝の大きさである。
【0037】
ウェハの「形状プロファイル」は、基準ウェハの中心線の経路を基準とする中心線の経路である。中心線の経路は、切込深さに沿う測定点で求められる。
【0038】
「平均形状プロファイル」は、複数のウェハの形状プロファイルを平均することで得られる形状プロファイルであり、各形状プロファイルが平均のために等しく重み付けされる(算術平均)、または、特定のウェハの形状プロファイルに、被加工物におけるその位置を考慮して特定の重み付けがなされる(重み付け平均)。
【0039】
「形状誤差」は、形状プロファイルの、目標形状プロファイルからの誤差、たとえば基準ウェハの形状プロファイル等からの誤差を意味する。
【0040】
「温度プロファイル」は、切込深さの関数としての流体の温度の推移であり、この流体は、スライス作業中の固定軸受の温度制御のためにワイヤウェブの各ガイドローラの固定軸受を通して送られる。必要に応じて、固定軸受の温度制御は固定軸受の拡大または収縮を生じさせ、その軸方向成分が、可動軸受を変位させるとともに、対応するワイヤガイドローラの軸方向位置も、ワイヤガイドローラの回転軸に沿って変位させる。そのようにしてこのワイヤガイドローラの移動が形状の誤差の増大を相殺する。
【0041】
任意のウェハの形状は常に、厚さプロファイルと形状プロファイルとの組み合わせによって説明することができる。TTV(総厚さ変動(total thickness variation)、GBIR)は、エリアベースの厚さプロファイルの最大値と最小値との差を特定する特徴である。ワープ(warp)は、形状の誤差を説明する特徴であり、ウェハの表側の方向およびウェハの裏側の方向における回帰エリアと中央エリアとの間の最大距離の合計を特定する。バウ(bow)は、さらに他のこのような特徴であり、ウェハの中心における回帰面と中央エリアとの間の距離を特定する。形状の誤差を説明するさらに他の変数は、波状起伏(waviness)である。これは、波状起伏指数Wavredとして定量化されてもよく、形状プロファイルから導き出された波状起伏プロファイルに基づいて求められる。予め定められた長さの測定ウィンドウ内で、特徴的な波長として、形状プロファイルの測定点と回帰面との間の距離の最大値が求められる。測定ウィンドウの始点を、切込深さに沿って形状プロファイルの測定点から測定点まで移動させ、最大距離の決定を測定ウィンドウの各位置ごとに繰り返す。このようにして、最大値の合計量を決定し、対応するそれぞれの測定ウィンドウの位置に対してプロットし、波状起伏のプロファイルを、特徴的な波長、波状起伏プロファイルに関連する切込深さの関数として生成する。波状起伏指数Wavredは、低減された線形波状起伏の尺度であり、切削の最初と最後で特定された長さの領域の値を無視して、波状起伏プロファイルの最大値を特定する。原則として、特徴的な波長および無視される領域の長さは自由に選択することができる。特徴的な波長は、好ましくは2mm~50mmであり、無視される領域の指定された長さは、好ましくは各々が5mm~25mmである。以下で説明する本発明の半導体ウェハに関しては、基礎として、特徴的な波長として10mm、および、無視される各領域の長さとして20mmが使用される。
【0042】
上記観察は、ケイ素からなる直線円柱形状のインゴットを直径300mmのウェハにするラップ切削に関する。しかしながら、これらの観察は、形状が異なる被加工物に対しても研磨切削に対しても等しく当てはまる。直線円柱形状の表面は、その円形ベースエリア(第1の端面)と、ベースエリアと合同であるそのトップエリア(第1の端面の反対側の第2の端面)と、その円柱面(インゴットの軸から最大の距離におけるインゴット上の点の総計)とを含む。直線円柱形は、ベースエリアおよびトップエリアに対して垂直でありその中心点を通るインゴット軸を有する。ベースエリアとトップエリアとの間のこのインゴット軸に沿う距離を、円柱高さと呼ぶ。
【0043】
一番目に、ウェハの厚さプロファイルおよび形状プロファイルは、互いに近接しているインゴット軸上の位置においては、わずかに異なるだけであることが、観察された。インゴット軸上のさらに離隔した位置において、厚さプロファイルは実際同様であるが、このようなウェハの形状プロファイルは大きく異なる。結果として、適用された場合に被加工物のすべてのウェハの形状を実質的に平坦にすることが可能な温度プロファイルは存在しない。したがって、スライス作業中の切込深さによって決まる、ワイヤウェブからの被加工物の変位により、ほぼ平坦な形状のウェハを得ることが、唯一可能であろう。
【0044】
二番目に、インゴット軸上の同一位置における、連続するスライス作業により得られたウェハの形状プロファイルは、通常は互いにわずかに異なるだけであるが、同一位置における、複数回のスライス作業を間に挟んだスライス作業により得られたウェハの形状プロファイルは、互いに大きく異なっていることが、観察された。したがって、適用されて維持された場合に、同一のインゴット位置のウェハであって連続するスライス作業から得られたウェハの形状が、複数回のスライス作業にわたって変化しないようにする、温度プロファイルは、存在し得ない。代わりに、複数回のスライス作業にわたってほぼ平坦な形状を有するウェハを得ることを可能にするには、温度プロファイルをスライス作業ごとにわずかに変える必要があるであろう。
【0045】
三番目に、連続するスライス作業によって得られた同一位置のウェハの形状プロファイルの変化は、一定の予測可能な成分と一定ではない自然発生的な成分とに分けられることが、観察された。その結果、事前に計算された温度プロファイルは、上記変化の一定の予測可能な成分しか考慮することができないことになり、形状の変化は、温度プロファイルを適用しても、スライス作業ごとにその種類および程度が変動し予測できないことがわかるであろう。
【0046】
四番目に、特に切削挿入時の、すなわち被加工物とワイヤウェブとの最初の接触時の、被加工物とワイヤウェブとの相対的配置は、スライス作業全体でも、熱および機械的負荷の大きな変化に晒されることが、観察された。具体的には、ソーイングワイヤを被加工物に挿入した際に、数kWの熱出力が、被加工物、ワイヤガイドローラ、およびその軸受に伝達されること、ならびに、ワイヤガイドローラが、スライス作業中に、軸横断方向において10kNの範囲の力の機械的負荷の変化に晒されることが、見出された。
【0047】
五番目に、機械的負荷の変化は、ワイヤガイドローラをマシンのフレームに接続する軸受における摩擦の増大につながることが、観察された。一方では、軸方向負荷の増大に起因して回転体の転がり摩擦が増大し、他方では、無負荷状態のワイヤガイドローラの軸に対する軸受ブッシュの軸の傾きの結果、摩擦が増大する。この傾きは、マシンのフレームに接続され軸受ブッシュが嵌入されるスリーブ内の軸受ブッシュの屈曲を生じさせる。この屈曲作用が、軸受ブッシュ/スリーブの移行部における加熱につながる。
【0048】
結果として、軸受温度の変化、および、それに関連する軸受の拡大、特に軸方向における、ワイヤガイドローラの軸方向位置の位置ずれにつながる拡大を、利用することにより、軸受スリーブの外周の近傍に作用する冷却手段によって加熱とそれに関連する軸方向位置の変化を所望のレベルに低減する必要がある。
【0049】
六番目に、軸受の摩擦または変形が増大する結果としての、ワイヤソーのワイヤガイドローラの固定軸受の加熱は(屈曲作用の結果としての加熱は)、マシンのフレームに対するワイヤガイドローラの軸方向位置の変位につながることが、観察された。
【0050】
七番目に、ワイヤソーイングは、特に送り方向において顕著である波状起伏を有するウェハを生み出すこと、および、ワイヤソーイングに続く機械加工工程を通しておよそ10mmの範囲の横方向波長を有するこのような波長起伏を減じることは事実上不可能であることが、観察された。よって、この点に関し、完全に機械加工されたウェハの波状起伏は、ワイヤソーイング自体によって本質的に決まったものである。
【0051】
これらの観察を背景にして、ワイヤソーによる複数のスライス作業の過程で、ワイヤウェブのそれぞれのワイヤガイドローラの固定軸受を通して送られる流体の温度を定める温度プロファイルが異なるという点で異なる一連のスライス作業を提供することが、提案される。この一連のスライス作業は、好都合には、ソーイングシステムにおける変化の後に、言い換えると、ワイヤソーの、またはソーイングワイヤの、または冷却潤滑剤の、少なくとも1つの特徴の変化の後に、開始される。ソーイングシステムにおける変化は、たとえば、ワイヤガイドローラの切替が行われたときに、または、ワイヤソーに機械的調整が行われたときに、生じる。初期切削と呼ばれる、一連の作業における第1のスライス作業は、好ましくは1~5回のスライス作業からなる。これらのスライス作業は、被加工物内へのワイヤセクションの係合中の一定の温度過程を定める第1の温度プロファイルに従って実行される。
【0052】
初期切削のすべてのウェハから、または、初期切削のウェハのウェハベースの選択のウェハから、形状プロファイルが求められる。第1の平均形状プロファイルは、任意で重み付けされてもよい平均により、形状プロファイルから求められる。次に、第1の平均形状プロファイルは、基準ウェハの形状プロファイルと、基準ウェハの形状プロファイルを第1の平均プロファイルから減算することにより、比較される。結果として見出された形状誤差は、第1の温度プロファイルに従って次のスライス作業が実施される場合に次のスライス作業のウェハが平均して有すると予測可能な形状誤差に、ほぼ対応する。
【0053】
したがって、見出されたこの形状誤差は、予測可能な形状誤差を相殺するための補正の大きさの基準の役割を果たす。そのため、初期切削に続くスライス作業は、第1の温度プロファイルを用いて実行されるのではなく、発見された形状誤差に比例する第2の温度プロファイルを用いて実行される。たとえば、発見された形状誤差が、第1の温度プロファイルを維持した場合は定められた切込深さに中心線があるウェハがワイヤガイドローラの軸方向において平均して一定量オフセットされることを、示唆する場合、第2の温度プロファイルが、対応する切込深さにおいて、熱膨張により対応するワイヤガイドローラを反対方向に同じ量だけ変位させる固定軸受をもたらす流体の温度を、提供する。そうでなければ、この形状誤差は、第2の温度プロファイルに従う各固定軸受の温度制御によって相殺されると予想される。したがって、初期切削に続く、一連の作業におけるスライス作業は、第2の温度プロファイルに従って実行され、よって、温度プロファイルは初めて切り替えられる。一連の作業における第2のスライス作業の数は、温度プロファイルにおけるさらに他の切替がないとすると、好ましくは1~15回のスライス作業である。しかしながら、原則的に、温度プロファイルにおける第1の切替に続くすべてのスライス作業は、第2の温度プロファイルを用いて、少なくともソーイングシステムにおける変更まで、実行される。
【0054】
しかしながら、特に好ましくは、初期切削に続く、第2の温度プロファイルを用いて実行されるスライス作業の数は、1~5回のスライス作業に限定され、少なくともソーイングシステムにおける変更の開始までの、その他すべてのスライス作業は、さらに他の温度プロファイルを用いて実行される。このさらに他の温度プロファイルは、さらに他のスライス作業の各々の前に、新たに決定される。
【0055】
このさらに他のスライス作業のうちの現在の各スライス作業の直前の1~5回のスライス作業のすべてのウェハから、または、これらのウェハのウェハベースの選択のウェハから、またはこれらのウェハの切削ベースの選択のウェハから、またはこれらのウェハのウェハベースおよび切削ベースの選択のウェハから、形状プロファイルが求められる。さらに他の平均形状プロファイルが、形状プロファイルから、任意で重み付けされてもよい平均により、現在のスライス作業の前に、求められる。このさらに他の平均形状プロファイルは、次に、基準ウェハの形状プロファイルと、基準ウェハの形状プロファイルを上記さらに他の平均形状プロファイルから減算することにより、比較される。発見された形状誤差に基づいて、発見された形状誤差に比例する、さらに他の温度プロファイルが求められる。現在のスライス作業は、このさらに他の温度プロファイルを用いて実行される。後続の各スライス作業ごとに、さらに他の温度プロファイルが同様に求められる。言い換えると、初期切削に続く1~5回のスライス作業の後に、温度プロファイルが、さらに他のスライス作業ごとに切り替えられる。
【0056】
本発明の方法によって製造され、必要に応じて後続の機械加工ステップ後に研磨された表側および裏側を有する半導体ウェハは、特に低い波状起伏によって区別される。
【0057】
したがって、本発明のさらに他の主題は、単結晶ケイ素の半導体ウェハであって、その直径が300mmの場合は波状起伏指数Wavredが7μm以下、好ましくは3μm以下であり、その直径が200mmの場合は波状起伏指数Wavredが4.5μm以下、好ましくは2μm以下である、半導体ウェハである。Wavredを求めるための特徴的な波長は10mmであり、切削の開始(切削係合)の時点および切削の終了(切削係合解除)の時点における無視される領域の長さは各々20mmである。本発明の半導体ウェハは、ソーイングされた状態において、すなわち研磨されていない状態において、クレームされている範囲の波状起伏指数Wavredを既に有している。
【0058】
基本的に、本発明の方法は、被加工物を構成する材料に左右されない。しかしながら、この方法は、特に半導体材料のウェハのスライスに適しており、好ましくは単結晶ケイ素のウェハをスライスするために使用される。これに対応して、被加工物は、少なくとも200mmの、好ましくは少なくとも300mmの直径を有する直線円柱形状を有するのが好ましい。しかしながら、立方形または直線角柱等の他の形状も意図されている。この方法はまた、ワイヤソーのワイヤガイドローラの数に左右されない。その間にワイヤウェブを貼り渡す2つのワイヤガイドローラに加えて、さらに他の1つ以上のワイヤガイドローラが設けられてもよい。
【0059】
スライス作業中のウェハのスライスは、研磨切削により、被加工物に対して研磨作用を及ぼす物質を含まない冷却潤滑剤をワイヤセクションに供給して行われる、または、ラップ切削により、硬質物質のスラリーからなる冷却潤滑剤をワイヤセクションに供給して行われる。研磨切削の場合、硬質物質は、好ましくはダイヤモンドからなり、ソーイングワイヤの表面に、電気めっき接合により、または合成樹脂を用いた接合により、または形状嵌め接合により、固定されている。ラップ切削の場合、硬質物質は、好ましくは炭化ケイ素からなり、好ましくはグリコールまたはオイルでスラリー化されている。ソーイングワイヤは、好ましくは70μm~175μmの直径を有し、好ましくは過共析パーライト鋼からなる。さらに、ソーイングワイヤには、その長手方向軸に沿って、長手方向軸に垂直な方向の複数の突起および窪みが設けられてもよい。
【0060】
さらに、スライス作業中に、ソーイングワイヤを、連続する一連の方向反転のペアを通じて移動させることが好ましく、各方向反転ペアは、ソーイングワイヤを第1のワイヤ長手方向に第1の長さだけ移動させる第1の移動と、これに続く、ソーイングワイヤを第2のワイヤ長手方向に第2の長さだけ移動させる第2の移動とを含み、第2のワイヤ長手方向は第1のワイヤ長手方向と反対方向であり、第1の長さは第2の長さよりも大きい。
【0061】
好ましくは、第1の長さの移動の際、ソーイングワイヤは第1のワイヤストックからワイヤウェブに、ワイヤ長手方向の第1の張力で供給され、第2の長さの移動の際、ソーイングワイヤは第2のワイヤストックからワイヤ長手方向の第2の張力で供給され、第2の張力は第1の張力よりも小さい。
【0062】
以下、本発明の詳細を図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図2】ワイヤガイドローラおよびその装着の断面図を示す。
【
図3】本発明に従って製造されたものではないウェハの形状プロファイルおよび波状起伏プロファイル(上側の図)、ならびに本発明のものではないスライス作業中に使用された温度プロファイル(下側の図)を示す図である。
【
図4】本発明に従って製造されたウェハの形状プロファイルおよび波状起伏プロファイル(上側の図)、ならびに本発明により実現されるスライス作業中に使用された温度プロファイル(下側の図)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明の実施例の詳細な説明
図1は、ワイヤソーの典型的な特徴を示す。これらの特徴は、ソーイングワイヤ3のワイヤセクションからなるワイヤウェブ2を支持する少なくとも2つのガイドローラ1を含む。ウェハをスライスするには、被加工物4をワイヤウェブ2に当てて矢印で示される送り方向に送る。
【0065】
図2に示されるように、ワイヤガイドローラ1は、固定軸受5と可動軸受6との間に装着されている。固定軸受5および可動軸受6は、マシンのフレーム7上で支持されている。ワイヤガイドローラ1は、ソーイングワイヤ3が通される溝が設けられたカバー8を保持している。固定軸受5は、固定軸受5の温度制御のために流体を流すチャネル9を含む。この流体の温度を上昇させた場合、固定軸受5の熱膨張が、ワイヤガイドローラ1の、可動軸受6の方向における軸方向変位を生じさせ、可動軸受6は、両矢印11で示される、マシンフレーム7に対するワイヤガイドローラの軸の方向に移動する。この流体の温度を低下させた場合、逆方向にワイヤガイドローラ1および可動軸受6の変位が生じる。本発明に従うと、この流体の温度は、温度プロファイルにより、切込深さの関数として定められ、温度プロファイルは、複数のスライス作業の過程において少なくとも一度変更される。熱交換器およびポンプとやり取りする制御ユニット10は、特定の切込深さに達したときに固定軸受5を通る流体が対応する温度プロファイルが要求する温度を有することを、保証する。
【0066】
発明の例および比較例
以下、本発明を、発明ではない比較例(
図3)および発明の例(
図4)を用いて説明する。
【0067】
図3は、上半分において、ワイヤラップ切削によりスライスされた直径300mmの単結晶ケイ素の半導体ウェハの、切込深さ(D.O.C:depth of cut)に対する形状プロファイル12を示す。この切削作業は、直径175μmのスチールワイヤを用い、ジプロピレングリコールのキャリア流体でスラリー化された平均粒径約13μmの炭化ケイ素(SiC)(FEPA F-500)を用いて、約13時間にわたって行われた。この切削作業中、固定軸受の冷却温度は、極めて平坦な半導体ウェハを得るために理想的なものとして前の切削作業から決定された値で一定に保たれた。
図3の下側の図は、ワイヤウェブを保持する2つのワイヤガイドローラの、左側の固定軸受の冷却水温度(TL=temperature left(左側温度)、実線)の、切込深さの関数としての温度プロファイル14と、対応する、右側の固定軸受の冷却水温度(TR=temperature right(右側温度)、破線)の温度プロファイル15とを示す。
【0068】
下側の図の格子の2つの水平線の間隔は1℃である。したがって、実際、温度は極めて一定に保たれ、目標/実際の誤差は0.1℃未満であった。しかしながら、この比較例において半導体ウェハについて得られた形状プロファイル12(S=shape(形状)(プロファイル)、実線)は、極めて非平坦状であった。具体的には、この半導体ウェハは、切削係合領域20において、言い換えると切込深さの最初の10%以内において、切削係合波と呼ぶ著しい変形を示し、切削係合解除領域21において、言い換えると切込深さの最後のおよそ10%以内において、切削係合解除波と呼ぶ著しい変形を示した。形状プロファイル12から導き出された、切込深さに沿って移動する測定ウィンドウ内の半導体ウェハの変形の差の総量を示す、波状起伏プロファイル13(W=waviness(波状起伏)、破線)は、切削係合領域20および切削係合解除領域21における著しいゆがみを示す。
【0069】
図4は、上側の図において、本発明の方法によりスライスされた半導体ウェハの形状プロファイル16および導き出されたその波状起伏プロファイル17を示し、下側の図において、ワイヤウェブを保持するワイヤガイドローラの左側および右側の固定軸受の温度プロファイル18および19を示す。
図4に従う特性を有する半導体ウェハを製造するために、最初に、
図3の下側半分の図に従う一定の温度プロファイルを用いて5回のスライス作業を実行し、その結果各スライス作業から得られた半導体ウェハの形状プロファイルを、インゴットの端面の各々に隣接する半導体ウェハの形状プロファイルは無視して抜き取り検査ベースで(インゴットの最初から最後まで15の半導体ウェハおきに)平均し(ウェハベースの選択)、次に、各スライス作業の、得られたウェハベースの平均形状プロファイルを、5回のスライス作業分について平均した(切削ベースの選択)。
【0070】
こうして得られたウェハベースおよび切削ベースの平均形状プロファイルを、予め実験により求めた、固定軸受の温度変化(単位:℃)当たりの形状プロファイルの変化(単位:μm)の感度を示す、マシン固有の定数(単位:℃/μm)で乗算することにより、切込深さに依存する固定軸受温度制御の第1の非一定温度プロファイルを与え、このプロファイルを用いてさらに他のスライス作業を実行した。この作業は、一定の温度プロファイルを使用する最初の5回のスライス作業のウェハベースおよび切削ベースの平均形状プロファイルよりも既に一層より平坦であるウェハベースの平均形状プロファイルを有する半導体ウェハを作り出した。このスライス作業のための制御変数は、すなわち第1の非一定温度プロファイルは、一定の温度プロファイルに対する回帰によって得られたので、この温度プロファイルの適用を、回帰フィードバック制御と呼ぶ場合もある。
【0071】
その形状プロファイルが
図4の上側の図に示される半導体ウェハを作り出したスライス作業は、最後に、先行するスライス作業のウェハベースの平均形状プロファイルの、基準ウェハの形状プロファイルからのずれから計算した温度プロファイルを用いて行われた。このさらに他の温度プロファイルは、
図4の下側の図に示されている。切込深さの最初の10%以内の切削係合領域22において、温度プロファイルは著しく上昇する温度を示し、切込深さの最後の約10%以内の切削係合解除領域23において、温度プロファイルは著しく下降する温度を示し、その結果、
図3の上側の図と一致する、切削係合領域20の切削係合波および切削係合解除領域21における切削係合解除波は、観察されない。
【0072】
制御変数、すなわち上記さらに他の温度プロファイルと、先行するスライス作業の温度プロファイルとの違いは、この先行するスライス作業の前のスライス作業のウェハベースの平均形状プロファイルと、先行するスライス作業のウェハベースの平均形状プロファイルとの差(増分)に対応する変化のみであるので、上記さらに他の温度プロファイルの適用を増分フィードバック制御と呼ぶこともできる。
【0073】
温度プロファイルの計算に使用されるマシン固有の定数は、固定軸受の温度を1℃上昇または低下させたときに形状プロファイルが何マイクロメートル変化するかを示し、冷却効率によって決まる、すなわち、たとえば、供給温度、冷却水を供給する熱交換器の冷却性能、および冷却水の流量のスループット(断面)によって、決まる。これらの変数のすべてが、変動の影響を受けかつ各ワイヤソーに固有であるとすると、マシン固有の定数は実質的に不正確に決定することしかできない。
【0074】
マシン固有の定数の符号は、半導体ウェハの両面のうちのどちらを表側としどちらを裏側とするかによって決まる。この例では、半導体材料のインゴットは常に、シード端(2つの端面を有するインゴットの場合、その位置がインゴットの製造中単結晶シード結晶により近い端面)が、ワイヤガイドローラの固定軸受の方向を向き、第2の端面が可動軸受の方向を向くようにされ、半導体ウェハの表側は、シード端の方向を向く面として特定され、半導体ウェハの裏側は、シード端の反対側の方向を向く面として特定された。
図3および
図4の記載に従うと、半導体ウェハの表側は上向き、その裏側は下向きである。この配置の場合、平均形状プロファイルの温度プロファイルへの変換の符号は負である。ワイヤソーにおけるインゴットの向きが逆である場合、マシン固有の定数は正であろう。
【0075】
そうすると、特に本発明に係る増分調節の具体的な有効性は、マシン固有の定数が正確にわかっている必要がないことであり、その理由は、増分調節の基本的な特性が、選択された比例係数すなわちマシン固有の定数が過剰に大きくないとすると、目標値(基準ウェハの形状)に向かって収束するという特性であることにある。マシン固有の定数が過剰に大きい場合、この調節は変動し所望の収束を実現しないことになる。したがって、定数を推定値としたとしても、この推定値の大きさがむしろ過剰に小さいと想定されるのであれば、数回のスライス作業の過程で得られた半導体ウェハは、常に極めて平坦な形状プロファイルを有する。
【0076】
そのため、さまざまなワイヤソーに対し、特に、マシン固有の定数として同一の推定値を想定することが可能であり、この定数は、好ましくは0.2~5μm/℃の範囲の大きさを有する。上述のように、マシン固有の定数の符号は、ワイヤソーに設置されるインゴットを基準とした半導体ウェハの表側と裏側の向きの方向の決定によって定められる。そうすると、実際の定数が異なるワイヤソー間の違いは、収束率のみに現れるものであって、半導体ウェハの実現可能な面平行度には現れない。また、それらの残余の凹凸は、スライス作業ごとに生じる各スライス作業の予測不能な変動(ノイズ変数)によってのみ決まる。
【0077】
波状起伏指数Wav
redは、ウェハの形状プロファイルに基づいて、以下で説明するやり方で、一例として
図3の形状プロファイル12および
図4の形状プロファイル16を用いて求められる。切込深さ(D.O.C.)の方向に10mmの特徴的波長を有する測定ウィンドウ内のこのような形状プロファイルから、測定ウィンドウ内の形状プロファイルの最大値と最小値との差の大きさを求める。測定ウィンドウの始点の位置を、形状プロファイルの各測定点までのビットごとの切込深さに沿って定め、差の大きさをこれらの位置のうちの各位置ごとに求める。このようにして得られた差の大きさを、測定ウィンドウの始点の位置が各切込深さを示すものとした上で、切込深さの関数としてプロットする。したがって、たとえば
図3の曲線13および
図4の曲線17で示される波状起伏プロファイルが得られる。波状起伏指数Wav
redは、波状起伏プロファイルの、切削開始時および終了時の双方における長さ20mm以内における差の大きさの値は無視し、残りの差の大きさの値から、最大値を波状起伏指数Wav
redと定めることにより、求められる。
【0078】
したがって、
図3の形状プロファイル12の形状Sに基づくと、本発明に従い製造されたものではない半導体ウェハの、波状起伏プロファイル13の波状起伏Wの最大値24に対応する、波状起伏指数Wav
redは、格子座標間隔が4μmであることを考慮すると、約12μmである。
【0079】
図4の形状プロファイル16に基づくと、本発明に従い製造された半導体ウェハの、波状起伏プロファイル17の波状起伏Wの最大値に対応する、波状起伏指数Wav
redは、格子座標間隔が4μmであることを考慮すると、約3μmである。
【0080】
実例として挙げた実施形態の上記説明は例示のためであるとみなされねばならない。よって、本開示は、第1に、当業者が本発明および関連する利点を理解できるようにし、第2に、当業者の理解の範囲内で、記載されている構造および方法の明らかな変形および変化形をも包含する。したがって、このような変形および変化形のすべてならびにその均等物も請求項の保護範囲によってカバーされるものとする。
【符号の説明】
【0081】
使用される参照番号のリスト
1 ワイヤガイドローラ
2 ワイヤウェブ
3 ソーイングワイヤ
4 被加工物
5 固定軸受
6 可動軸受
7 マシンのフレーム
8 カバー
9 チャネル
10 制御ユニット
11 可動軸受の移動方向
12 形状プロファイル
13 波状起伏プロファイル
14 温度プロファイル
15 温度プロファイル
16 形状プロファイル
17 波状起伏プロファイル
18 温度プロファイル
19 温度プロファイル
20 切削係合領域
21 切削係合解除領域
22 切削係合領域
23 切削係合解除領域
24 13の内側サブ領域における最大値
【手続補正書】
【提出日】2020-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤソーによる複数のスライス作業中に被加工物から複数のウェハをスライスして切り出す方法であって、前記ワイヤソーは、2つのワイヤガイドローラ
(1)の間に張り渡されたソーイングワイヤ
(3)の移動するワイヤセクションからなるワイヤウェブ
(2)を含み、前記ワイヤガイドローラ
(1)の各々は、固定軸受
(5)と可動軸受
(6)との間に装着され、前記方法は、
前記被加工物
(4)のうちの1つの被加工物を、作業流体の存在下で、前記スライス作業のうちの各スライス作業中に、前記被加工物
(4)に研磨作用を及ぼす硬質物質が存在する前記ワイヤウェブ
(2)に対する送り方向に沿って送るステップと、
前記スライス作業中の各前記ワイヤガイドローラ
(1)の前記固定軸受
(5)の温度制御を、温度を切込深さの関数として定める温度プロファイルに従って実行するステップと、
前記スライス作業の過程において、前記温度プロファイルを、一定温度の過程を有する第1の温度プロファイルから、第1の平均形状プロファイルと基準ウェハの形状プロファイルとの差に比例する第2の温度プロファイルに切り替える、第1の切替ステップとを含み、前記第1の平均形状プロファイルは、前記第1の温度プロファイルに従ってスライスして切り出されたウェハから決定され
、前記方法はさらに、
前記温度プロファイルをさらに他の温度プロファイルに切り替える、さらに他の切替ステップを含み、前記さらに他の温度プロファイルは、以前にスライスされたウェハのさらに他の平均形状プロファイルと前記基準ウェハの形状プロファイルとの差に比例し、前記以前にスライスされたウェハは、現在のスライス作業の直前の少なくとも1~5回のスライス作業から得られたウェハであり、前記さらに他の平均形状プロファイルは、切削に関連するウェハの選択に基づいて決定される、方法。
【請求項2】
前記ワイヤソーの、または前記ソーイングワイヤ
(1)の、または前記作業流体の、少なくとも1つの特徴の変化の後に行われる前記スライス作業のうちの第1のスライス作業中に前記第1の温度プロファイルを使用するステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
ウェハベースおよび切削ベースのウェハの選択に基づいて前記さらに他の平均形状プロファイルを決定するステップを含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
ウェハの形状プロファイルの重み付け平均に基づいて前記第1の平均形状プロファイルおよび前記さらに他の平均形状プロファイルを決定するステップを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ソーイングワイヤ
(3)は過共析パーライト鋼ワイヤである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ソーイングワイヤ
(3)の直径は70μm~175μmである、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ソーイングワイヤ
(3)に、長手方向ワイヤ軸に沿って、前記長手方向ワイヤ軸に垂直な方向の複数の突起および窪みが設けられている、請求項
5または
6に記載の方法。
【請求項8】
前記スライス作業中に、冷却潤滑剤を作業流体として前記ワイヤセクションに供給するステップを含み、前記硬質物質は、ダイヤモンドからなり、前記ソーイングワイヤ
(3)の表面に電気めっき接合または合成樹脂接合または形状嵌め接合により固定されており、前記冷却潤滑剤は、前記被加工物
(4)に対して研磨作用を及ぼす物質を含まない、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
スライス作業中に、グリコールまたはオイル中の硬質物質のスラリーの形態の前記作業流体を前記ワイヤセクションに供給するステップを含み、前記硬質物質は炭化ケイ素からなる、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ソーイングワイヤ
(3)を、連続する一連の方向反転のペアを通じて移動させるステップを含み、方向反転の各ペアは、前記ソーイングワイヤ
(3)の第1のワイヤ長手方向の第1の長さの第1の移動と、前記第1の移動に続く、前記ソーイングワイヤ
(3)の第2のワイヤ長手方向の第2の長さの第2の移動とを含み、前記第2のワイヤ長手方向は前記第1のワイヤ長手方向の反対方向であり、前記第1の長さは前記第2の長さよりも大きい、請求項1~
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の長さの移動中、前記ソーイングワイヤ
(3)は、第1のワイヤストックから、前記ワイヤウェブ
(2)に、ワイヤ長手方向の第1の張力で供給され、前記第2の長さの移動中、前記ソーイングワイヤは、第2のワイヤストックから、前記ワイヤ長手方向の第2の張力で供給され、前記第2の張力は前記第1の張力よりも小さい、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記被加工物
(4)は半導体材料からなる、請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記被加工物
(4)は直線角柱形状を有する、請求項1~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記被加工物
(4)は直線円柱形状を有する、請求項1~
12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
7μm以下の波状起伏指数Wav
redおよび300mmの直径を有する、または、4.5μm以下の波状起伏指数Wav
redおよび200mmの直径を有する、単結晶ケイ素の半導体ウェハ
であって、前記波状起伏指数Wav
red
を求めるために、各々について、10mmの特徴波長と、切削の最初および切削の最後における20mmの無視される領域とが使用される、半導体ウェハ。
【請求項16】
3μm以下の波状起伏指数Wav
redおよび300mmの直径を有する、または、2μm以下の波状起伏指数Wav
redおよび200mmの直径を有する、請求項
15に記載の半導体ウェハ。
【国際調査報告】