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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(54)【発明の名称】グリコフォームの精製
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/18 20060101AFI20220831BHJP
   C07K 14/005 20060101ALI20220831BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20220831BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20220831BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20220831BHJP
【FI】
C07K1/18
C07K14/005
C07K14/165
C07K16/00
G01N30/88 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500026
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(85)【翻訳文提出日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2020068439
(87)【国際公開番号】W WO2021001388
(87)【国際公開日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】19184130.3
(32)【優先日】2019-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20172272.5
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】スクダス,ロマス
(72)【発明者】
【氏名】ホルツグレーヴェ,アンニカ
(72)【発明者】
【氏名】シュトローベル,アリサ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA10
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA23
(57)【要約】
本発明は、アミノ酸ベースの末端基を有するイオン交換分離材料を用いたグリコフォーム(glycoforms)の分離および精製のための方法に関する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面にポリマー鎖が共有結合的に結合したベースマトリックスを含んでなる分離材料と、タンパク質グリコフォームを含む試料を接触させることによる、タンパク質グリコフォームのクロマトグラフ精製および/または分離のための方法であって、
ポリマー鎖が、末端基-N(Y)-R3を含む、ただし式中、
Yは、互いに独立してHまたはCHであり、および
R3は、-CHCOOMR4であり、
ただし式中、R4は、C1~C4アルキルまたはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、H、Na、K、またはNHである
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
a)分離材料と、タンパク質グリコフォームを含む試料を接触させること、ここで、それによって1以上のタンパク質グリコフォームが分離材料に結合する、
b)任意に、分離材料を洗浄すること、
c)結合したタンパク質グリコフォームが分離材料から溶出する条件下で溶出バッファーと分離材料を接触させること
のステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法がさらに、ステップa)における分離材料をフロースルーするタンパク質グリコフォームを回収することを包含することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
溶出バッファーが、ステップa)における分離材料と試料を接触させるために使用されるローディングバッファーよりも高いpHを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)において、ステップa)における分離材料と接触させられる試料が、5~60mS/cmの導電率を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
試料が、以下:
・マンノースに富んだタンパク質グリコフォーム
・末端マンノースタンパク質グリコフォーム
・フコシル化および非フコシル化タンパク質グリコフォーム
・グリコシル化および非グリコシル化タンパク質グリコフォーム
の1以上を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
試料が、グリコシル化抗体および/またはウイルスタンパク質グリコフォームを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ポリマー鎖が、モノマー単位により構築され、および、ポリマー鎖のモノマー単位は、直線状に連結し、および、各モノマー単位は、末端基-N(Y)-R3を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
YがHであり、およびR4がイソプロピルおよび/またはイソブチルであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分離材料のイオン密度が、10~1200μeq/gの間であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質グリコフォームが、2~7の間のpHで分離材料に結合し、任意には、pH値を9~11の間の値へ増大させられることによって洗浄されて溶出させられることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
試料が、10~1200μeq/gの間のイオン密度で分離材料に適用されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
分離材料のmlあたり10mg~100mgの間のタンパク質グリコフォームが結合することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
試料が、SARS-CoV-2タンパク質グリコフォームを含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸ベースの末端基を有するイオン交換分離材料を用いたグリコフォーム(glycoforms)の分離および精製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリカンは、糖タンパク質分子からの必須部分であり、その構造および機能を保証する。
最も一般的な糖タンパク質の1つは、Fc部分のCH2ドメインにおける保存されたアスパラギン297において2のN-連結型オリゴ糖を含有する免疫グロブリンである。グリカンの構造は、2のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、3のマンノースおよび2のGlcNAc残基から構成される。フコース(Fuc)、ガラクトース(Gal)などの追加の単糖類、N-アセチルノイラミン酸(NANA)またはN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)残基を包含するシアル酸も、また存在し得る。(図1.グリカン構造。)グリカン構造は、糖タンパク質と受容体とのアフィニティー結合における重要な役割を果たす。グリカン組成の変化は、糖タンパク質の配座変換を引き起こし、その特異的受容体結合に影響を与え、エフェクター機能の変化を結果としてもたらす可能性がある。そのうえ、いくつかのグリカン組成物は、防衛的な生物反応を開始し、例として、マンノース結合型レセプター(ManR)を抱えたエフェクターへ結合する末端マンノースがある。
【0003】
その一方、一般的に酵母、昆虫細胞および植物に由来する糖タンパク質において見いだされる、高末端マンノースグリカン含有糖タンパク質は、ヒトにおいて免疫原性が高い可能性がある(Durocher Y, Butler M. 2009. Expression systems for therapeutic glycoprotein production. Curr Opin Biotechnol 20: 700-707)。したがって、潜在的な免疫原性を回避するために生物医薬糖タンパク質中の高末端マンノースグリカンのレベルを制御することが極めて重要である。
【0004】
さらに、末端マンノースおよびハイブリッドグリカン構造は、モノクローナル抗体(mAb)CH2ドメインの配座安定性を低下させる。これは、かかる分子についてのより高いレベルの酵素分解または短い保管時間を引き起こし得る(Fang, J. Richardson J, Du Z, Zhang Z. Effect of Fc-Glycan Structure on the Conformational Stability of IgG Revealed by Hydrogen/Deuterium Exchange and Limited Proteolysis, Biochemistry 2016, 55, 860-868)。
【0005】
ハイブリッドグリコシル化バリアントは、しばしば、ゴルジ装置中で形成される。ハイブリッドグリコシル化バリアントは、低減されたかまたは変更されたグリコシル化を示し、換言すれば、望ましいグリコシル化パターンを有しない。ハイブリッド形態のいくつかの例は、G0バリアントにおいてN-アセチルグルコサミンを欠いている(例として、G0-N)バリアントまたはG1バリアントにおいてガラクトースを欠いている(例として、G1-N)バリアントを包含する(Costa AR, Rodrigues ME, Henriques M, Oliveira R, Azeredo J. Glycosylation: impact, control and improvement during therapeutic protein production, Crit Rev Biotechnol. 2013, 1-19)。両方の言及したハイブリッドバリアントは、末端マンノースを有し、それによって、血液中における寿命がより短くなる確率を増大させる(Goetze AM, Liu YD, Zhang Z, Shah B, Lee E, Bondarenko PV, Flynn GC. 2011. High mannose glycans on the Fc region of therapeutic IgG antibodies increase serum clearance in humans. Glycobiology 21: 949-959)。
【0006】
そのうえ、ガラクトースのより低いレベルは、補体依存性細胞傷害(CDC)活性を低減させ、糖タンパク質の活性に影響を与える。複数の研究は、G2-グリコフォームを含有するmAbとG0-グリコフォームを含有するmAbとの間では、活性が2分の1に低減する可能性があるということを示している(Raju TS. 2008. Terminal sugars of Fc glycans influence antibody effector functions of IgGs. Curr Opin Immunol 20: 471-478)。したがって、ハイブリッドグリコシル化バリアント、とくに末端マンノースを持つものまたはガラクトースを欠いたもの、の量を制御または低減する能力は、糖タンパク質の寿命および有効性を増大させるであろう。
【0007】
グリカン構造変化の最も明白な効果の1つは、フコースの存在または欠如によって見られる。フコースは、ゴルジ装置中でグリカン構造に付加される。mAbのコアグリカン構造中のフコースの存在は、そのFcγRIIIa受容体への結合を阻害し、それによって抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)活性を低下させるということが知られている。FcγRIIIa受容体への特異的な結合は50倍低下させられることがあり得、それによって、糖タンパク質の有効性に対して多大な影響を有する(Peipp et al, Antibody fucosylation differentially impacts cytotoxicity mediated by NK and PMN effector cells, BLOOD, 2008年9月15日, 第112巻, 第6号, 2390-2399)。
【0008】
グリコシル化が不在であることは、糖タンパク質と受容体との間の結合親和性を劇的に低減させるということもまたよく知られている。例えば、mAb上のグリコシル化の欠如は、FcγRI受容体への結合を劇的に低減させ、FcγRIIおよびFcγRIII受容体への結合を無くす(Liu L, Antibody Glycosylation and Its Impact on the Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Monoclonal Antibodies and FC-Fusion Proteins, Journal of Pharmaceutical Sciences 104: 1866-1884, 2015)。
【0009】
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、バイオシミラー薬物のためのグリコシル化の類似性を最も重大な要件の1つとして評定している(FDA, 2012. Guidance for industry quality considerations in demonstrating biosimilarity to a reference protein product)。そのうえ、グリコシル化の向上は、バイオベターの主な傾向の1つである。
【0010】
それらすべての理由のため、産業界においては、様々なグリカン種を制御、濃縮または分離して最良の薬物動態、有効性、半減期、および忍容性を実現可能にすることによりグリコシル化生物医薬分子の効率を向上させることに対する増大しているニーズがある。
【0011】
そのグリカンバリアントに基づく糖タンパク質分離のための現在の最新技術は、イオン交換クロマトグラフィーを使用して高マンノースグリコフォームを濃縮する分取クロマトグラフィーモードにおいて行うことができる(WO2014/100117)。残念ながら、与えられた例における高マンノース含有グリコフォームの濃縮は、凝集体の濃縮とオーバーラップし、これは、凝集体を含有しない糖タンパク質の分離もまた達成されるとしても、認識することを困難にする。そのうえ、他のグリカンバリアント分離または除去のためにこの技術を使用することができるという指示はない。
【0012】
高マンノース含有グリコフォームのための代替的な技術は、レクチンを使用したアフィニティークロマトグラフィーである(US20020164328)。この技術はイオン交換クロマトグラフィーのようにより特異的ではあるものの、それは高マンノース含有グリカンに限られており、かつ、特定の結合条件が要求される。加えて、レクチンの浸出、この樹脂の再生および寿命は、経済的な高マンノース含有グリカンバリアントへのその適用を妨げる。
【0013】
他の分取グリカンバリアント分離法は、アニオン交換および逆相クロマトグラフィー技術の組み合わせ(US20100151584)またはアニオン交換クロマトグラフィーのみを使用すること(IN 01066ch2012)を包含する。残念ながら、先行技術には、糖タンパク質のグリコフォームを分離するための効率的かつ有効な技術への明らかなニーズに対応する、1よりも多いグリコフォームの分離を達成する技術はない。
【発明の概要】
【0014】
共有結合的に付着したロイシン残基または類似の残基を抱えたイオン交換材料は、>10mg 糖タンパク質/ml材料のキャパシティで効率的なグリカン種分離を実現可能にするグリコフォームの分離および濃縮のために使用できるということが見出されている。より好ましい態様において、キャパシティは10~80mg/mlの間である。そのうえ、この革新的なイオン交換材料は、高い導電率>10mS/cmにおいて使用することができ、より好ましい態様において、導電率は10~60mS/cmの間である。
【0015】
驚くべきことに、高マンノース含有バリアント、末端マンノース含有バリアント、フコース含有バリアントおよびグリコシル化非含有バリアントを包含するグリカンバリアントを分離および濃縮することが、溶媒pH勾配を使用して可能であった。そのうえ、この発見は、イオン的なおよび疎水性相互作用がグリカンバリアント分離の選択性に寄与した広範な操作の範囲(window of operation)を探索することを、我々に実現可能にした。加えて、この革新的なイオン交換材料の適用は、アフィニティークロマトグラフィーモードと比較して有意な経済的な利点を示して、より広範な選択性とアニオン交換モードと比較して向上したパフォーマンスを実現可能にした。
【0016】
本発明は、したがって、その表面にポリマー鎖が共有結合によってグラフトされたヒドロキシル基含有ベースマトリックスを含んでなる分離材料と、タンパク質グリコフォームを含む試料を接触させることによる、タンパク質グリコフォームのクロマトグラフ精製および/または分離に向けられ、
a)ベースマトリックスが、ヒドロキシル基を含有し、
b)ポリマー鎖が、ヒドロキシル基を介してベースマトリックスに共有結合し、
c)ポリマー鎖が、末端基-N(Y)-R3を含む、ただし式中、
Yは、互いに独立してHまたはCH3、好ましくはHであり、および
R3は、-CHCOOMR4であり、
ただし式中、R4は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、好ましくはイソプロピルおよびイソブチル、極めて好ましくはイソブチル、といったC1~C4アルキルであるか、またはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、互いに独立してH、Na、K、またはNH4+である
ことを特徴とする。
【0017】
好ましい態様において、本発明の方法は、
a)その表面にポリマー鎖が共有結合的に結合したヒドロキシル基含有ベースマトリックスを含んでなる分離材料と、タンパク質グリコフォームを含む試料を接触させること、ここで、それによって1以上のタンパク質グリコフォームが分離材料に結合する、
b)任意に、分離材料を洗浄すること、
c)結合したタンパク質グリコフォームが分離材料から溶出する条件下で溶出バッファーと分離材料を接触させること
のステップを含む。
好ましい態様において、ステップc)において、溶出バッファーはローディングバッファーよりも高いpHを有する。溶出バッファーは、ステップとして、または勾配として、適用されてもよい。
【0018】
好ましい態様において、ステップa)において、分離材料との試料の接触は、分離材料上に負荷される試料が5~60mS/cmの間の、好ましくは15~35mS/cmの間の導電率を有するように、増大した導電率の条件下で実行される。これは、典型的には、試料溶液に塩化ナトリウムのような塩を添加することによって達成される。
別の好ましい態様において、方法は、分離材料をフロースルーする(flow through)タンパク質グリコフォームを回収することを包含する。
【0019】
好ましい態様において、試料は、マンノースに富んだ(mannose rich)タンパク質グリコフォームを含む。
別の好ましい態様において、試料は、末端マンノースタンパク質グリコフォームを含む。
別の好ましい態様において、試料は、フコシル化および非フコシル化タンパク質グリコフォームを含む。
【0020】
別の好ましい態様において、試料は、グリコシル化および非グリコシル化タンパク質を含む。
別の好ましい態様において、試料は、抗体および/またはFc融合タンパク質および/またはウイルスタンパク質グリコフォームであって、単離されているかまたはウイルス上もしくはウイルスカプシド上にあるかのいずれかであるものを含む。
【0021】
好ましくは、ポリマーのモノマー単位は、直線状に連結し、および、各モノマー単位は、末端基-N(Y)-R3を含む。
好ましくは、分離材料のイオン密度は、10~1200μeq/gの間である。
好ましい態様において、YはHであり、およびR4はイソプロピルおよび/またはイソブチルである。
好ましい態様において、ヒドロキシル基含有ベースマトリックスは、脂肪族のヒドロキシル基を含む。
【0022】
好ましい態様において、ベースマトリックスは、グループa)およびb)からの少なくとも1の化合物の共重合によって形成されたコポリマーである、ここで
a)少なくとも1の、式Iで表される親水性置換されたアルキルビニルエーテル
【化1】
式中、R1、R2、R3は、相互に独立して、HまたはC1~C6アルキル、好ましくはHまたは-CH、とすることができ、
およびR4は、少なくとも1のヒドロキシル基を抱えたラジカルである、ならびに
b)少なくとも1の、式IIおよび/またはIIIおよび/またはIVに従った架橋剤、ここで、
【化2】
式中、Xは、2~5個のC原子、好ましくは2または3個のC原子を有する、二価のアルキルラジカルである、ここで、隣接せずかつNのすぐ近傍に位置づけられていない1以上のメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のH原子は、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい、ならびに、
【化3】
【化4】
式中、式IIIおよびIVにおけるY1およびY2は、相互に独立して、
C1~C10アルキルまたはシクロアルキルであり、ここで、1以上の非隣接のメチレン基またはNのすぐ近傍に位置づけられていないメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO2、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のH原子は、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよいか、
あるいは、C6~C18アリールであり、ここで、アリール系の中の1以上のHは、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい、および、
Aは、2~5個のC原子、好ましくは2または3個のC原子を有する、二価のアルキルラジカルである、ここで、1以上の非隣接のメチレン基またはNのすぐ近傍に位置づけられていないメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のHは、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH(C1~C8)アルキル、N(C1~C8)アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい。
【0023】
式IにおけるR4は、典型的には、少なくとも1のヒドロキシル基を抱えたアルキルラジカル、シクロ脂肪族ラジカルまたはアリールラジカルである。
極めて好ましい態様において、ベースマトリックスは、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,5-ペンタンジオールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルまたはシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルの群から選択される親水性置換されたアルキルビニルエーテルと架橋剤としてのジビニルエチレン尿素(1,3-ジビニルイミダゾリン-2-オン)との共重合により形成される。
【0024】
好ましい態様において、分離材料は、ヒドロキシル基含有ベースマトリックスを式V
【化5】
ただし式中、R1、R2およびYは、互いに独立してHまたはCH3、好ましくはHであり、
R3は、-CHCOOMRであり、
ただし式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、好ましくはイソプロピルおよびイソブチル、極めて好ましくはイソブチル、といったC1~C4アルキルであるか、またはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、H、Na、K、またはNHである、
に従うモノマーのセリウム(IV)触媒グラフト重合に供することにより調製可能である。
【0025】
このグラフト重合は、好ましくは、US5453186の9頁、例8に従い行われる。
【0026】
好ましい態様において、タンパク質グリコフォームは、2~7の間のpHで分離材料に結合し、任意には、pH値をアルカリ性pHまで、好ましくは9を上回る値、例として、9~11の間、好ましくは10前後まで増大させることによって洗浄されて溶出させられる。
好ましい態様において、試料は、10~1200μeq/gの間のイオン密度で分離材料に適用される。
好ましい態様において、分離材料のmlあたり10mg~100mgの間の糖タンパク質が結合する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、グリカン構造の概略図を示し、ここで、四角形はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を表し、完全に塗りつぶされた円 - マンノース、三角形 - フコース(Fuc)および塗りつぶしなしの円 - ガラクトース(Gal)である。
図2図2は、アクリロイルロイシンモノマーの重合によって構築された線状ポリマーで官能化された基材(点)を伴った本発明に従う分離材料の概略図を示す。
図3図3は、アクリロイルバリンモノマーの重合によって構築された線状ポリマーで官能化された基材(点)を伴った本発明に従う分離材料の概略図を示す。
【0028】
図4図4は、20mg/ml CV負荷および250mM NaClでの分離マトリックス上に結合した糖タンパク質の溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
図5図5は、20mg糖タンパク質/ml CV負荷および250mM NaClでの負荷された糖タンパク質(負荷)を包含する、分析した溶出画分(1A10~1E3)の定量面積(quantitative area)で表示されるLC-MS分析法を使用した試料画分特性評価の分析結果を示す。
図6図6は、20mg/ml CV負荷および250mM NaClでの分離材料上に結合した糖タンパク質の溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHシグナルトレースは破線である。
【0029】
図7図7は、20mg糖タンパク質/ml CV負荷および250mM NaClでの負荷された糖タンパク質(負荷)を包含する、分析した溶出画分(1A10~1E3)の定量面積で表示されるLC-MS分析法を使用した試料画分特性評価の分析結果を示す。
図8図8は、30mg/ml CV負荷および250mM NaClでの分離材料上に結合した糖タンパク質(例として、mAb05)の溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは青色の線である。
図9図9は、分析した溶出画分(1A4~4B2)の定量面積で表示されるLC-MS分析法を使用した試料画分特性評価の分析結果を示す。
【0030】
図10図10は、30mg/ml CV負荷および200mM NaClでの分離材料上に結合した糖タンパク質(例として、mAb05)の溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHは破線である。
図11図11は、1mg/ml CV負荷および150mM NaClでの分離材料上に結合した糖タンパク質(例として、Rituximab(登録商標))の溶出ピークを示す。部分的に脱グリコシル化したRituximab(登録商標)のUV吸着シグナルのトレースは実線であり、ネイティブなRituximab(登録商標)のUV吸着シグナルは点線であり、pHは破線である。
図12図12は、10mg/ml CV負荷および450mM NaClでの分離材料上に結合した糖タンパク質(例として、mAb05)の、フロースルーおよび溶出ピークを示す。UV吸着シグナルトレースは実線であり、pHは破線である。
【0031】
図13図13は、1mg/ml CV負荷および150mM NaClでの分離材料上に結合した糖タンパク質(例として、SARS-CoV-2のスパイクS1タンパク質)の溶出ピークを示す。糖タンパク質のUV吸着シグナルのトレースは実線であり、pHは破線である。
図14図14は、実線で表された1mg糖タンパク質/ml CV負荷および250mM NaClでの負荷された糖タンパク質(負荷)、および破線で表された糖タンパク質(例として、SARS-CoV-2のスパイクS1タンパク質)の溶出画分1C6を包含する、UVシグナルトレースで表示される、HIC分析法を使用した試料画分特性評価の分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を詳細に説明する前に、この発明は特定の組成またはプロセスステップに限定されるものではなく、かかるものは多様であり得るということが理解されるべきである。この明細書および添付の請求項に使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で明確に別様に指示されない限り、指示物の複数形を包含することが留意されなければならない。よって、例えば、「リガンド」を指すことは複数のリガンドを包含し、および、「抗体」を指すことは複数の抗体を包含する、等とする。
【0033】
別様に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術および科学用語は、この発明が関連する技術分野における当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。以下の用語は、本明細書に記載のとおり、発明の目的のために定義される。
【0034】
本明細書に使用されるとき、用語「標的分子」は、試料中の、1以上の他の構成成分、例として不純物から、単離、分離または精製されることとなる、あらゆる分子、物質または化合物を指す。標的分子の例は、糖タンパク質であり、タンパク質グリコフォーム、または糖タンパク質のグリカン種とも呼ばれる。標的分子はまた、これもまた試料中に存在するものである、タンパク質グリコフォームから分離されるべき非グリコシル化タンパク質であるとすることもできる。生産および/または精製プロセスにおいて、標的分子は、典型的には液体中に存在する。液体は、水、バッファー、エタノールのような非水溶媒、またはそれらのあらゆる混合物であり得る。標的分子の傍ら、当該液体は、1以上の不純物を含み得る。
【0035】
液体はまた、試料とも呼ばれることがある。液体の組成は、生産および/または精製の間に、行われるプロセスステップに依存して変化し得る。クロマトグラフのステップの後、液体は、典型的には、クロマトグラフのステップにおいて使用された溶離液に起因してそれ以前とは違う溶媒を含む。典型的には、まさに最後の精製ステップの後でのみ、標的分子が最終剤形を調製するために乾燥され得る。
【0036】
糖タンパク質またはタンパク質グリコフォームは、グリコシル化されたタンパク質である。グリコシル化は、例えば、1以上のフコース、マンノース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン、シアル酸および/またはノイラミン酸を含んでなる、単糖、二糖、またはオリゴ糖鎖の形態とすることができる。例えば、抗体は、典型的には、複合型N-連結型オリゴ糖を有する。さらなる情報は、上記の導入において見出すことができる。一般的なグリカン構造についての一例は、抗体に見出されるとおりのN-グリコシド連結型糖鎖である。
【0037】
複合型N-グリコシド連結型糖鎖が、他のアスパラギン残基にもまた連結することができるとはいえ、「N-グリコシド連結型糖鎖」または「N-グリコシド連結型グリカン」は、典型的に、アスパラギン297(Kabatの番号に従う)に結合する。複合型N-グリコシド連結型糖鎖は、典型的に、二分岐複合糖鎖を有し、主に以下の構造を有する:
【化6】
ここで、+/-は、糖分子が存在し得るかまたは不在であり得るということを示し、数字は、糖分子間の連結の位置を示す。上記の構造において、アスパラギンに結合する糖鎖末端は還元末端(右)と呼ばれ、および反対側は非還元末端と呼ばれる。フコースは、大抵、還元末端のN-アセチルグルコサミン(「GIcNAc」)へ、典型的にはα1,6結合(GIcNAcの6位がフコースの1位に連結する)によって、結合する。「Gal」はガラクトースを指し、および「Man」はマンノースを指す。
【0038】
タンパク質グリコフォームの例は、異なるレベルのフコシル化を伴うタンパク質であり、例として、異なるレベルのコアのフコシル化、異なるレベルのシアル化、異なるレベルのガラクトシル化または異なるレベルのマンノシル化である。好ましくは、本発明の方法は、高マンノースタンパク質グリコフォームを分離または精製することに使用される。
【0039】
高マンノースタンパク質グリコフォームは、5以上の、典型的には5~9の、マンノース単位を持つグリカン残基を有する糖タンパク質である。高マンノースタンパク質についての一例は、5~9のマンノース単位を含むN-連結型オリゴ糖を有する抗体である。マンノースに富んだタンパク質についての別の一例は、HIV1のマンノースに富んだエンベロープ糖タンパク質または2019-nCoV(SARS-CoV-2)のスパイク(S1)タンパク質のようなウイルス糖タンパク質である。
【0040】
末端マンノースタンパク質グリコフォームは、コア構造中に3のマンノース単位を持つグリカン残基を有する糖タンパク質であって、分岐における一方のまたは両方のマンノース単位がN-アセチルグルコサミン(「GIcNAc」)に結合していないものである。いくつかの態様において、これは、G0-N糖タンパク質を指し得る。いくつかの態様において、これは、G1-N糖タンパク質を指し得る。いくつかの態様において、これは、ハイブリッドグリコフォームを指し得る。
【0041】
本発明に従う糖タンパク質またはタンパク質グリコフォームは、単離された糖タンパク質か、または、薬物、他のタンパク質、ウイルスもしくはウイルスカプシドといった他の部分に連結した糖タンパク質であるとすることができる。いくつかの態様において、タンパク質グリコフォームは、哺乳動物細胞中で、真菌細胞中で、昆虫細胞中でまたは植物細胞中で生産される。
【0042】
用語「抗体」は、抗原に特異的に結合する能力を有するタンパク質を指す。「抗体」または「IgG」は、分析物(抗原)に特異的に結合して認識する、免疫グロブリン遺伝子(単数)または免疫グロブリン遺伝子(複数)によって実質的にコードされるポリペプチド、またはそのフラグメントをさらに指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を包含する。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンとして分類され、ひいては、それぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを定義する。
【0043】
例示の免疫グロブリン(抗体)構造単位は、ポリペプチド鎖の2つのペア、各ペアは1の「軽」(約25kD)および1の「重」鎖(約50~70kD)を有し、当該鎖は、例えば鎖間ジスルフィド結合によって安定化している、から構成されている。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100~110以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、これらの軽鎖および重鎖をそれぞれ指す。
【0044】
抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよく、モノマーまたはポリマーの形態で存在してもよく、例えば、五量体の形態で存在するIgM抗体および/またはモノマー、ダイマーまたは多量体の形態で存在するIgA抗体である。抗体は、それらがリガンド特異的な結合ドメインを保持するか、またはそれを含むように改変される限り、多重特異性抗体(例として、二重特異性抗体)および抗体フラグメントもまた包含してもよい。
【0045】
用語「フラグメント」は、無傷のもしくは完全な抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む、抗体もしくは抗体鎖の一部もしくは部分を指す。フラグメントは、無傷のもしくは完全な抗体または抗体鎖の化学的または酵素的処理を介して得ることができる。フラグメントは、組換え手段によって得ることもできる。組換えで生産されるとき、フラグメントは、単独で発現しても、または融合タンパク質と呼ばれるより大きなタンパク質の部分として発現してもよい。例示のフラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fcおよび/またはFvフラグメントを包含する。例示の融合タンパク質は、Fc融合タンパク質を包含する。本発明に従うと、融合タンパク質もまた用語「抗体」によって網羅される。
【0046】
いくつかの態様において、抗体は、Fc領域含有タンパク質、例として免疫グロブリンである。いくつかの態様において、Fc領域含有タンパク質は、別のポリペプチドまたはそのフラグメントに融合された免疫グロブリンのFc領域を包含する組換えタンパク質である。
【0047】
例示のポリペプチドは、例として、レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを包含する成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-抗トリプシン;インスリンα鎖;インスリンβ鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォン・ヴィレブランド因子などの凝固因子;タンパク質Cなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;ウロキナーゼまたは組織種類プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)などのプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子-αおよび-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T- cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン、;ミュラー管阻害物質;リラキシンα鎖;リラキシンβ鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;例えばβ-ラクタマーゼなどの微生物タンパク質;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)(例としてCTLA-4);インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子(VEGF);ホルモンまたは成長因子の受容体;タンパク質AまたはD;リウマチ因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5、もしくはNT-6)、または、NGF-βなどの神経成長因子、などの神経栄養因子;血小板由来成長因子(PDGF);αFGFおよびβFGFなどの線維芽細胞成長因子;上皮成長因子(EGF);TGF-アルファ、およびTGF-βl、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、またはTGF-β5を包含するTGF-βなどのトランスフォ-ミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子-Iおよび-II(IGF-IおよびIGF-II);des(l-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD34、およびCD40などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、および-γなどのインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例としてM-CSF、GM-CSF、およびG-CSF;インターロイキン(IL)、例としてIL-I~IL-IO;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;例えばAIDSエンベロープの部分などのウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;CDl Ia、CDl Ib、CDl Ic、CD 18、ICAM、VLA-4およびVCAMなどのインテグリン;HER2、HER3またはHER4受容体などの腫瘍関連抗原;および上記に列記したあらゆるポリペプチドのフラグメントおよび/またはバリアントを包含する。
【0048】
加えて、本発明に従う抗体は、上記に列記したポリペプチドのいずれかに特異的に結合する、あらゆるタンパク質またはポリペプチド、フラグメントまたはそのバリアントである。
【0049】
本明細書で使用されるとき、かつ、別様に述べられない限り、用語「試料」は、標的分子を含有するあらゆる組成物または混合物を指す。試料は、生物学的なまたはその他の入手源に由来してもよい。生物学的な入手源は、動物またはヒトといった真核生物の入手源を包含する。好ましい試料は、哺乳動物に由来する血液または血漿試料である。試料は、標的分子とともに混合されて見出される希釈剤、バッファー、洗剤、および汚染種(contaminating species)等々もまた包含してもよい。試料は、「部分的に精製されて」(すなわち、濾過または遠心分離ステップなどの、1以上の精製ステップに供されていて)もよく、または標的分子を生産する生体から直接的に得てもよい。血漿試料は、血漿または血漿の部分を含むあらゆる試料である。
【0050】
用語「不純物」または「夾雑物」は、本明細書で使用されるとき、あらゆる外来のまたは好ましくない分子を指し、これは、1以上の外来のまたは好ましくない分子から分離される標的分子を含有する試料に存在し得る、DNA、RNA、1以上の宿主細胞タンパク質、核酸、エンドトキシン、脂質、合成起源の不純物および1以上の添加剤などの生物学的高分子を包含する。用語「不純物」または「夾雑物」はまた、本明細書で使用されるとき、患者においてアレルギー反応を引き起こす免疫グロブリンAならびに免疫グロブリンMといった、標的分子から分離される必要がある所定の免疫グロブリンにも適用できる。加えて、かかる不純物は、生産および/または精製プロセスのステップに使用されるあらゆる試薬を包含してもよい。
【0051】
用語「精製する」、「分離する」または「単離する」は、本明細書で交換可能に使用されるとき、標的分子と1以上の他の構成成分、例として不純物、とを含む組成物または試料からそれを分離することによって標的分子の純度を増大させることを指す。典型的には、組成物から少なくとも1の不純物を取り除く(完全にまたは部分的に)ことによって標的分子の純度が増大する。
【0052】
用語「クロマトグラフィー」は、混合物中に存在する他の分子から関心対象の分析物(例として標的分子)を分離するあらゆる種類の技術を指す。大抵、標的分子は、移動相の影響下で、または結合-溶出プロセスにおいて、混合物の個々の分子が固定(stationary)媒体もしくは分離材料を通って移動する速度の相違の結果として他の分子から分離される。クロマトグラフィー分離プロセスについての例は、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよび混合モードクロマトグラフィーである。
【0053】
「バッファー」は、その酸-塩基コンジュゲート構成成分の作用によりpHの変化に耐える溶液である。例えばバッファーの所望のpHに依存して用いることができる様々なバッファーは、Buffers. A Guide for the Preparation and Use of Buffers in Biological Systems, Gueffroy, D., ed. Calbiochem Corporation (1975)に記載されている。バッファーの非限定例は、MES、MOPS、MOPSO、Tris、HEPES、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、グリシンおよびアンモニウムバッファー、ならびにこれらの組み合わせを包含する。
【0054】
用語「分離材料」または「クロマトグラフィーマトリックス」は、本明細書で交換可能に使用され、分離プロセスにおいて、混合物に存在する他の分子から標的分子(例として、免疫グロブリンなどのFc領域含有タンパク質)を分離する、あらゆる種類の粒状吸着剤、樹脂、マトリックスまたは固相を指す。大抵、標的分子は、移動相の影響下で、または結合-溶出プロセスにおいて、混合物の個々の分子が分離材料を通って移動しおよび分離材料と相互作用する速度の相違の結果として他の分子から分離される。例として樹脂粒子、膜またはモノリシック吸着剤から構成される分離材料は、カラムまたはカートリッジ中に入れることができる。典型的には、分離材料は、基材としてのベースマトリックスおよび当該ベースマトリックスに付着した1以上のタイプのリガンドを含む。
【0055】
「リガンド」は、官能基であるかまたはこれを含むものであり、クロマトグラフィーベースマトリックスに付着し、マトリックスの結合特性を決定するかまたはこれに影響する。好ましくは、リガンドは、1以上、好ましくは複数の官能基を抱えたポリマー鎖である。最も好ましいものは、それらを構築するモノマー単位あたり少なくとも1の官能基を抱えたポリマー鎖で作られたリガンドである。
【0056】
「リガンド」の例は、イオン交換基、疎水性相互作用基、親水性相互作用基、チオ親和性相互作用基、金属アフィニティー基、アフィニティー基、バイオアフィニティー基、および混合モード基(先述の組み合わせ)を包含するが、これらに限定されない。本明細書で使用することのできる好ましいリガンドは、カルボン酸などの弱イオン交換基を包含するが、これらに限定されない。
【0057】
用語「イオン交換」および「イオン交換クロマトグラフィー」は、混合物中の標的分子(例として、Fc領域含有標的タンパク質)がイオン交換マトリックスに(共有結合的な付着によってなどで)連結した荷電した化合物と相互作用し、それによって標的分子が、混合物中の溶質不純物または夾雑物よりも多くまたは少なく荷電した化合物と非特異的に相互作用する、クロマトグラフプロセスを指す。混合物中の不純物は、イオン交換材料のカラムから標的分子よりも速くまたは遅く溶出するか、または標的分子に対して相対的に、樹脂に結合するか、もしくは樹脂から除かれる。
【0058】
「イオン交換クロマトグラフィー」は、具体的にいうと、カチオン交換、アニオン交換、および混合モードイオン交換クロマトグラフィーを包含する。イオン交換クロマトグラフィーは、標的分子(例えば、Fc領域含有標的タンパク質)に結合しこれに続いて溶出を行うことができるか、または不純物に主に結合することができる一方で標的分子がカラムを「フロースルーする」。好ましくは、イオン交換クロマトグラフィーのステップは、結合-溶出モードで行われる。
【0059】
句「イオン交換マトリックス」は、負に荷電している(すなわち、カチオン交換樹脂)か、または正に荷電している(すなわちアニオン交換樹脂)、クロマトグラフィー媒体または分離材料を指す。電荷は、マトリックスに1以上の荷電したリガンドを付着させることによって、例として共有結合的な連結によって、提供されてもよい。代替的に、または加えて、電荷はマトリックスの固有の特性であってもよい。
用語「カチオン交換マトリックス」は、本明細書では、負に荷電した例として、そこに付着したカルボン酸基などの1以上の負に荷電したリガンドを有する、分離材料を指すのに使用される。
【0060】
結合-溶出モードで分離カラムに「負荷(loading)」するとき、バッファーは、標的分子(例として、Fc領域含有標的タンパク質)と1以上の不純物とを含む試料または組成物をクロマトグラフィーカラム(例として、イオン交換カラム)上へ負荷するために使用される。バッファーは、標的分子が分離材料に結合する一方で理想的にはすべての不純物がカラムに結合せずカラムをフロースルーするような導電率および/またはpHを有する。
【0061】
標的分子を「フロースルー」させるために分離カラムに「負荷」するとき、バッファーは、標的分子(例として、Fc領域含有標的タンパク質)と1以上の不純物とを含む試料または組成物をクロマトグラフィーカラム(例として、イオン交換カラム)上へ負荷するために使用される。バッファーは、標的分子が分離材料に結合せずにカラムをフロースルーする一方で理想的にはすべての不純物がカラムに結合するような導電率および/またはpHを有する。
【0062】
標的分子を「結合-溶出(bing and elute)」させるために分離カラムに「負荷」するとき、バッファーは、標的分子(例として、Fc領域含有標的タンパク質)と1以上の不純物とを含む試料または組成物をクロマトグラフィーカラム(例として、イオン交換カラム)上へ負荷するために使用される。バッファーは、標的分子が分離材料に結合するような導電率および/またはpHを有する。1以上の不純物からの分離は、標的分子が1以上の不純物より前にまたは後に洗浄または溶出されるような導電率および/またはpHに続いて起こる。典型的には、分離材料上に試料が負荷されたバッファーは、ローディングバッファーまたは試料バッファーと呼ばれる。
【0063】
用語「平衡化」は、標的分子を負荷する前に分離材料を平衡化するためのバッファーの使用を指す。典型的には、ローディングバッファーが平衡化のために使用される。
「洗浄」または分離材料を「洗浄する」とは、分離材料を通してまたは分離材料上で、適切な液体、例としてバッファーを通過させることを意味する。典型的には、洗浄は、負荷後に、標的分子を溶出させる前に分離材料から弱く結合した夾雑物を取り除くために、および/または、非結合のもしくは弱く結合した標的分子を取り除くために使用される。
【0064】
この場合、典型的には、洗浄バッファーとローディングバッファーとは同じものである。ウイルス不活性化バッファーを使用する場合、それは、標的分子を溶出させる前に、所定の存在するウイルスを不活性化するために使用される。この場合、典型的には、ウイルス不活性化バッファーは、それが洗剤(単数)/洗剤(複数)を含有してもよいか、または異なる特性(pH/導電率/塩およびそれらの量)を有してもよいため、ローディングバッファーとは異なる。
【0065】
洗浄はまた、標的分子の溶出後に分離材料から夾雑物を取り除くためにも使用できる。これは、適切な液体、例えばバッファーを、標的分子の溶出後に分離材料を通してまたは分離材料上で通過させることによってなされる。この場合、典型的には、洗浄バッファーはローディングバッファーとは異なる。それは、洗剤(単数)/洗剤(複数)を含有してもよいか、または種々の特性(pH/導電率/塩およびそれらの量)を有してもよい。洗浄バッファーは、例えば酸性バッファーである。
【0066】
分離材料から分子(例として、免疫グロブリンGのような関心対象のポリペプチドまたは不純物)を「溶出」させることは、そこから分子を取り除くことを意味する。溶出は、フロースルーモードで直接、標的分子がローディングバッファーの前方側の溶媒で溶出されるとき、またはローディングバッファーとは異なるバッファーが分離材料上のリガンド部位の関心対象の分子と競合するように溶液条件を変更することによって、実行され得る。非限定例は、イオン交換材料の荷電部位に対してバッファーが分子と競合するようにイオン交換材料を取り囲むバッファーのイオン強度を変更することによってイオン交換材料から分子を溶出させることである。
【0067】
用語「平均粒径」またはd50は、累積粒子サイズ分布の50%での平均粒子サイズ分布値を意味する。粒子サイズは、レーザー回折によって、好ましくはMalvern ‘Master Sizerを用いて決定される。
用語「平均孔径」は、累積孔径分布の50%での平均孔径分布値を意味する。
用語「フロースルー(flow-through)プロセス」、「フロースルーモード」および「フロースルー操作」は、本明細書で交換可能に使用されるとき、試料中に1以上の不純物とともに含有される少なくとも1の標的分子(例として、Fc領域含有タンパク質または抗体)が、標的分子は大抵結合せずにローディングバッファーとともに分離材料から溶出する(すなわち、フロースルーする)、大抵1以上の不純物を結合させる分離材料を通って流れることが意図される分離技術を指す。
【0068】
用語「結合-溶出(bind and elute)モード」および「結合-溶出プロセス」は、本明細書で使用されるとき、試料中に含有される少なくとも1の標的分子(例として、Fc領域含有タンパク質)が、好適な分離材料(例として、イオン交換クロマトグラフィー媒体)に結合し、およびその後ローディングバッファーとは異なるバッファーで溶出される、分離技術を指す。
【0069】
用語「イオン密度」は、本明細書で使用されるとき、所与の分離材料の体積または質量の単位あたりのイオンの数、より具体的には、分離材料の単位体積または質量あたりの所与のタイプのイオン(例として、陽イオンまたは陰イオン)の数を指す。大抵、イオンの数は、所与の分離材料を滴定することで推定される。そのうえ、イオンの量は、分離材料に対する質量または単位体積あたりの当量(eq)で与えられる。
【0070】
用語「導電率」は、本明細書で使用されるとき、大半の材料の固有の特性であって、それがいかに強く電流に抵抗するかまたはこれを伝導させるかを定量化するものを指す。バッファーなどの水溶液において、電流は、荷電したイオンによって運ばれる。導電率は、荷電されたイオンの数、それらが抱える電荷の量およびそれらがいかに速く移動するかによって決定される。ひいては、大半の水溶液については、溶解している塩の濃度が高いほど、導電率が高い。温度を上げることは、イオンをより速く移動させることを実現可能にし、ひいては導電率を増大させる。典型的には、別様に指示されない限り、導電率は室温において定義されている。伝導度の基本単位はシーメンス(S)である。これは、液体の1cm立方体の対向する面の間で測定された、オームで表される抵抗の逆数として定義される。したがって、値は、S/cmにて推定される。
【0071】
本発明は、タンパク質グリコフォームを分離または濃縮する方法を提供する。これは、1以上のタンパク質グリコフォームが他のタンパク質グリコフォームからおよび/または試料中の他の不純物から分離されることができるということを意味する。好ましくは、少なくとも1のタンパク質グリコフォームが、少なくとも1の他のグリコフォームから分離され、例として、1の高マンノースグリコフォームが他のタンパク質グリコフォームから分離される。これは、ポリマー鎖が二重結合的に付着したベースマトリックスを含む、樹脂とも呼ばれる、所定の分離材料上のクロマトグラフ分離によってなされる。ポリマー鎖は、アミノ酸およびポリマー化可能な二重結合を含む、モノマーで作られる。
【0072】
本発明の方法によって、グリコフォームを分離、濃縮および/または精製することができ、効率的なグリカン種分離を実現可能にする。本発明の特定の側面において、それは、より疎水性でありより速いクリアランスを実証する高マンノースまたは末端マンノース分子を含有するグリカンバリアントを分離するのに有益である。そのうえ、かかるグリカンバリアントは、より高い毒性およびより低い糖タンパク質の有効性に寄与し得る。本発明の別の側面において、それは、フコースを保持する糖タンパク質を分離するのに有益であり、これは抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)活性のよりよい制御を保証する。本発明の他の側面において、それは、グリコシル化されていないがそれ以外の点では標的糖タンパク質と同一であるタンパク質を、除去するのに有益である。
【0073】
本発明の一態様において、精製された糖タンパク質は、高マンノースグリカンバリアントを含有しない。本発明の別の態様において、精製された糖タンパク質は、低いレベルの、末端マンノースを持つハイブリッドグリカンバリアントを含有する。本発明の別の態様において、精製された糖タンパク質は、低いレベルの、非フコシル化グリカンバリアントを含有する。本発明の別の態様において、精製された糖タンパク質は、低いレベルの、非グリコシル化タンパク質を含有する。
【0074】
本発明の分離材料は、テンタクル様(tentacle-like)構造が付着した、好ましくはグラフトされた基材を含む。
【0075】
基材は、ベースマトリックスともまた呼ばれ、グラフト重合反応に利用可能な反応基、とりわけOH基、好ましくは脂肪族のOH基を含有する。基材は、したがって、例えば、有機ポリマーからもまた調製することができる。
【0076】
このタイプの有機ポリマーは、アガロース、デキストラン、デンプン、セルロース等々などの多糖、または、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(アクリラート)、ポリ(メタクリラート)、親水性置換されたポリ(アルキルアリルエーテル)、親水性置換されたポリ(アルキルビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(スチレン)および対応するモノマーのコポリマーなどの合成ポリマー、とすることができる。これらの有機ポリマーは、好ましくは、架橋された親水性ネットワークの形態でもまた採用することができる。これは、スチレンおよびジビニルベンゼンから作られたポリマーもまた包含し、これは好ましくは、他の疎水性ポリマーのように、親水化された形態で採用することができる。
【0077】
代替的に、シリカ、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム等々、などの無機材料を、基材として採用してもよい。複合材料、すなわち、例えば、磁化可能な粒子または磁化可能なコアの共重合によってそれら自体が磁化することができる粒子を採用することも、同等に可能である。シェルすなわち少なくとも表面またはコーティングがOH基を有する、コア-シェル材料を使用することもまた可能である。
【0078】
しかしながら、本発明に従う材料は、好ましくはアルカリ性のクリーニングまたは再生に、例として、塩基性pHで、延長された使用期間にわたって耐えるべきであるため、加水分解に対して安定であるかまたは困難を伴わなければ加水分解できない親水性の基材の使用が優先される。
【0079】
ベースマトリックスは、不規則な形状のまたは球形の粒子からなり得、その粒子サイズは2~1000μmの間とすることができる。3~300μmの間の平均粒子サイズが優先され、最も好ましい態様において、平均粒子サイズは20~63μmの間である。
ベースマトリックスは、特に、非多孔性または好ましくは多孔性粒子の形態であり得る。平均孔径は、2~300nmの間とすることができる。5~200nmの間の孔径が優先され、最も好ましい平均孔径は40~110nmの間である。
【0080】
ベースマトリックスは、同等にまた、膜、繊維、中空繊維、コーティングまたはモノリシック成形物の形態であってもよい。モノリシック成形物は、好ましくは、多孔性の三次元体、例えば円筒形の形態である。
【0081】
好ましい態様において、ベースマトリックスは、グループa)およびb)からの少なくとも1の化合物の共重合によって形成されたコポリマーである、ここで
a)少なくとも1の、式Iで表される親水性置換されたアルキルビニルエーテル
【化7】
式中、R1、R2、R3は、相互に独立して、HまたはC1~C6アルキル、好ましくはHまたは-CH3、とすることができ、
およびR4は、少なくとも1のヒドロキシル基を抱えたラジカルである、ならびに
b)少なくとも1の、式IIおよび/またはIIIおよび/またはIVに従った架橋剤、ここで、
【化8】
式中、Xは、2~5個のC原子、好ましくは2または3個のC原子を有する、二価のアルキルラジカルである、ここで、隣接せずかつNのすぐ近傍に位置づけられていない1以上のメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のH原子は、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい、ならびに、
【化9】
【化10】
式中、式IIIおよびIVにおけるY1およびY2は、相互に独立して、
C1~C10アルキルまたはシクロアルキルであり、ここで、1以上の非隣接のメチレン基またはNのすぐ近傍に位置づけられていないメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO2、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のH原子は、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよいか、
あるいは、C6~C18アリールであり、ここで、アリール系の中の1以上のHは、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、NH-(C1~C8)-アルキル、N-(C1~C8)-アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい、および、
Aは、2~5個のC原子、好ましくは2または3個のC原子を有する、二価のアルキルラジカルである、ここで、1以上の非隣接のメチレン基またはNのすぐ近傍に位置づけられていないメチレン基は、O、C=O、S、S=O、SO、NH、NOHまたはNによって置き換えられてもよく、および、メチレン基の1以上のHは、相互に独立して、ヒドロキシル基、C1~C6-アルキル、ハロゲン、NH、C5~C10-アリール、NH(C1~C8)アルキル、N(C1~C8)アルキル2、C1~C6-アルコキシまたはC1~C6-アルキル-OHで置換されてもよい。
【0082】
式IにおけるR4は、典型的には、少なくとも1のヒドロキシル基を抱えたアルキルラジカル、シクロ脂肪族ラジカルまたはアリールラジカルである。
【0083】
極めて好ましい態様において、ベースマトリックスは、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル、1,5-ペンタンジオールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルまたはシクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルの群から選択して採用される親水性置換されたアルキルビニルエーテルと架橋剤としてのジビニルエチレン尿素(1,3-ジビニルイミダゾリン-2-オン)との共重合により形成される。
好適な市販のビニルエーテルベースの基材の例は、Eshmuno(登録商標), Merck KGaA, Germanyである。
【0084】
分離材料が生成されるように基材の表面へ線状ポリマー鎖が共有結合的に結合されるところ、
a)基材は、好ましくは脂肪族のヒドロキシル基を含有し、
b)ポリマーは、支持材へ共有結合的に結合し、
c)ポリマーは、アミノ酸残基を含有し、
d)ポリマーのモノマー単位は、直線状に連結する。
【0085】
基材および二重結合的に付着した線状ポリマー鎖を含む実際の分離材料は、様々なやり方で調製することができる。「grafting onto」法の場合、ポリマー鎖はまずモノマーから形成しされなければならず、および第2ステップで表面に結合させられる。「grafting from」法の場合、ポリマー化反応は表面上で開始され、および、グラフトポリマーは個々のモノマーから直接構築される。基材の表面への結合を可能にする他の重合方法もまた採用することができる。
【0086】
「grafting from」法が優先され、および、分離で除かなければならない非共有結合的に結合されたポリマーなどの副産物がわずかのみ形成される変法が特に優先される。例えば原子移動フリーラジカル重合(ATRP)の方法などの、制御されたフリーラジカル重合を伴うプロセスは、特に興味深いものと見受けられる。ここでは、開始基が、第1のステップにおいて所望の密度で支持体表面に共有結合される。開始基は、例えば、2-ブロモ-2-メチルプロピオン酸エステルにおけるとおりの、エステル官能基を介して結合されたハロゲン化物である。グラフト重合は、第2のステップにおいて銅(I)塩の存在下で実施される。
【0087】
本発明において使用される分離材料の生産のために好適な極めて好ましいワンステップグラフト重合反応は、基材を活性化させることを要することなく、ヒドロキシル含有基材上でセリウム(IV)によって開始することができる。
【0088】
このセリウム(IV)で開始されるグラフティングは、好ましくは、EP0337144またはUS5,453,186に従って実施される。生産される鎖は、モノマー単位を介して基材に連結される。これを目的に、本発明に従う基材は、モノマーの溶液中に、好ましくは水溶液中に懸濁される。ポリマー材料のグラフティング・オンは、酸素の排除を伴う慣用のレドックス重合の過程でできる。採用されるポリマー化触媒はセリウム(IV)イオンであり、それはこの触媒が基材の表面上にフリーラジカル部位を形成し、そこからモノマーの重合が開始するからである。この反応は、通常、希薄鉱酸中において実施される。このグラフト重合を実施するために、酸は、大抵、1~0.00001mol/l、好ましくは0.1~0.001mol/lの範囲内の濃度の水溶液において採用される。希硝酸の使用が特に極めて優先され、0.1~0.001mol/lの濃度において採用される。
【0089】
本発明に従う分離用材料の調製のために、モノマーは、通常、基材に対して過剰量で添加される。典型的には、堆積したポリマー材料のリットルあたり0.05~100molの総モノマーが採用され、好ましくは0.05~25mol/lが採用される。
【0090】
セリウム塩が関与する終止反応によって、重合は終了する。この理由のため、(平均)鎖長は、基材、開始剤およびモノマーの濃度比に影響され得る。さらに、均一のモノマーか、または異なるモノマーの混合物をも採用することができ;後者の場合には、グラフトコポリマーが形成される。
【0091】
本発明において使用される分離材料の調製のために好都合に使用されるモノマーは、式V
【化11】
に従うものであり、
ただし式中、R、RおよびYは、互いに独立してHまたはCH、好ましくはHである。
は、-CHCOOMRであり、
【化12】
ただし式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、好ましくはイソプロピルおよびイソブチル、極めて好ましくはイソブチル、といったC1~C4アルキルであるか、またはC1~C4ペルフルオロアルキルであり、
および、Mは、H、Na、K、またはNH である。
【0092】
ペルフルオロアルキルは、アルキル残基のすべてのH原子がF原子で置換されているということを意味する。
例示の好ましい式Vの構造は、Va
【化13】
ただし式中、R、RおよびYは、Hであり、
は、-CHCOOMRであり、
ただし式中、Rは、イソプロピルであり、
および、Mは、Hである、
ならびに式Vb
【化14】
ただし式中、R、RおよびYは、Hであり、
は、-CHCOOMRであり、
ただし式中、Rは、イソブチルであり、
および、Mは、Hである、
である。
【0093】
かかるモノマーはまた、アクリロイルバリン(式Va)、アクリロイルロイシン(式Vb)、アクリロイルアラニン、アクリロイルノルロイシン、メタクリロイルバリン、メタクリロイルロイシン、メタクリロイルアラニン、メタクリロイルノルロイシン、ジメタクリロイルバリン、ジメタクリロイルロイシン、ジメタクリロイルアラニン、ジメタクリロイルノルロイシン、としても記載できるところ、アクリロイルバリンおよびアクリロイルロイシンが好ましく、アクリロイルロイシンがとくに好ましい。
【0094】
本発明の方法において使用される分離材料は、好ましくは、式Vに従うモノマーから構築された基材上にグラフトされたテンタクル様の線状ポリマー構造のみを含有する。好ましくは、それらは、式Vに従う1のタイプのモノマーのみにより構築された線状ポリマーを含有する。
【0095】
しかし、線状ポリマーは、式Vに従う2以上の異なるモノマーの共重合によって線状ポリマーが構築されるということもまた可能である。線状ポリマーは、式Vに従う1以上の異なるモノマー、および1以上のその他の重合可能なモノマー(他のアクリルアミド、メタクリラート、アクリラート、官能化(例として、イオン基、親水基または疎水基で)されたメタクリラート等々、といったもの)の共重合によって構築されるということもまた可能である。
【0096】
本発明に従う分離材料の例示的な構造が、図2および3に示されている。図2は、クリロイルロイシンモノマーの重合によって構築された線状ポリマーで官能化された基材(点)を示す。加えて、明確化のために、各ポリマー単位のカルボキシアルキル末端基が示されている。図3は、アクリロイルバリンモノマーの重合によって構築された線状ポリマーで官能化された基材(点)を示す。加えて、明確化のために、各ポリマー単位のカルボキシアルキル末端基が示されている。
【0097】
好ましい態様において、本発明の方法において使用される分離材料は、10~1200μeq/gの範囲にわたる各種様々な量のイオン密度帯のイオン交換材料であり、ここで、より好ましい態様において、イオン密度帯は400~900μeq/gの間である。
好ましい態様において、イオン交換材料は、イオン交換官能基および疎水性官能基を含有することができ、ここで、より好ましい態様においては、ポリマー鎖中に構築されている1のモノマーの単位(monomeric unit)から結果として生じた単一の表面機能的単位(surface functional unit)の上に両方の官能基があり、ここで、最も好ましい態様において、官能基はアミノ酸残基の一部である。
【0098】
典型的には、上に記載の分離材料を含むクロマトグラフィーカラムが、本発明に従う方法において使用される。クロマトグラフィーカラムは、当業者に知られている。それらは、典型的には、分離材料で満たされた円筒形のチューブもしくはカートリッジ、ならびにフィルターおよび/またはチューブもしくはカートリッジ中に分離材料を固定するための手段、およびチューブの内外への溶媒送達のための接続を含む。クロマトグラフィーカラムのサイズは、アプリケーション、例として、分析または分取、に依存して様々である。クロマトグラフィーカラムはまた、膜含有カートリッジ(membrane containing cartridge)とすることもできる。
【0099】
本発明の方法において使用される材料はまた、分離エフェクター(separation effectors)を提供された基材としても記載できる。それらは、1以上の標的構成成分の選択的、部分的に選択的または非選択的な結合もしくは吸着のために、試料液の外への分離を狙いとして、あるいは、1以上の二次的な構成成分の選択的、部分的に選択的または非選択的な結合もしくは吸着のために、マトリックスの外への二次的な構成成分の分離、天然源からの生体高分子の単離、濃縮および/または枯渇、組換え的な入手源からの生体高分子の単離、濃縮および/または枯渇、タンパク質またはポリペプチドの単離、濃縮および/または枯渇、モノクローナルおよびポリクローナル抗体の単離、濃縮および/または枯渇、ウイルスの単離、濃縮および/または枯渇、宿主細胞タンパク質の単離、濃縮および/または枯渇、あるいは糖タンパク質の単離、濃縮および/または枯渇を狙いとして、使用することができる。好ましい標的分子は、糖タンパク質である。
【0100】
標的分子は、試料からの1以上の他の物質から分離され、ここで、標的分子を含む試料は液体中に溶解させられ、これが本発明に従う材料と接触させられる。接触時間は、大抵、30秒~24時間の範囲内である。それは、本発明に従う分離材料を含有するクロマトグラフィーカラムを通して液体を通過させることによって液体クロマトグラフィーの原理に従って働くのに有利である。液体は、単にその重力を通じて、またはポンプの手段によってこれを通って送り出されることで、カラムを通り抜けることができる。
【0101】
代替の方法は、バッチクロマトグラフィーであり、そこでは標的分子または生体高分子が分離材料に結合することができるようになるために必要な長さの時間だけ、攪拌もしくは振とうによって液体と混合される。同じように、分離させる液体を、例えば、分離材料を含む懸濁液中へと導入することによって、クロマトグラフ流動床の原理に従って働くことが可能であり、ここで、分離材料は、その高い密度および/または磁性コアのために所望の分離に好適となるように選択される。
【0102】
クロマトグラフプロセスが結合-溶出モードで稼働させられる場合、標的分子は、分離材料に結合する。分離材料は、その後洗浄バッファーで洗浄されることができ、これは、好ましくは、標的分子が分離材料と中で接触させられる液体と同じイオン強度および同じpHを有する。洗浄バッファーは、分離材料に結合しないすべての物質を取り除く。標的分子を脱離させることなしに、他の好適なバッファーでのさらなる洗浄ステップがこれに続いてもよい。結合した標的分子の脱離は、溶離液におけるイオン強度を変えることによっておよび/または溶離液におけるpHを変えることによっておよび/または溶媒を変えることによって実施される。標的分子は、よって、溶離液中で精製および濃縮された形態で得られる。標的分子は、大抵、70%~99%の、好ましくは85%~99%、特に好ましくは90%~99%の純度を、脱離後に有する。
【0103】
1種よりも多い標的分子を分離または精製するために上記の結合-溶出プロセスを使用することもまた可能であり、そうすると、標的分子のグループが分離材料へ結合し、および上記のとおり1以上の不純物から分離される。
【0104】
しかしながら、クロマトグラフプロセスがフロースルーモードで稼働させられる場合であれば、標的分子または異なるタイプの標的分子のグループは液体中に残り、しかし他の付随する物質が分離材料へ結合する。標的分子は、次いで、通過した流れ(through-flow)の中のカラム溶離液を集めることによって直接得られる。当業者が特定の生体高分子を分離用材料に結合させるためにいかにして条件、特にpHおよび導電率を適応させなければならないか、あるいは、標的分子を結合させない精製のタスクにとってそれが有利であるか否かは、当業者の知るところである。
【0105】
本発明は、好ましくは、糖タンパク質の分離および精製のための上に記載の分離材料の使用、ならびに、分離材料を、1以上の糖タンパク質を含む試料と、好ましくは酸性条件下で、接触させることを含む、液体クロマトグラフィーによる糖タンパク質の分離および/または精製のための方法に向けられる。
【0106】
予想外なことに、我々は、本発明に従うイオン交換材料が、>10mg糖タンパク質/ml材料のキャパシティで効率的なグリカン種分離を実現可能にするグリコフォームの分離または濃縮のために使用できるということを見出しており、より好ましい態様において、キャパシティは10~80mg/mlの間である。そのうえ、この革新的なイオン交換材料は、高い導電率>5mS/cmにおいて使用することができ、より好ましい態様において、導電率は5~60mS/cmの間である。
【0107】
驚くべきことに、高マンノース含有バリアント、末端マンノース含有バリアント、フコース含有バリアントおよびグリコシル化非含有バリアントを包含するグリカンバリアントを分離および濃縮することが、好ましくは4~7から9を上回るpHまでのpH変化を使用して、好ましくは9~11の間のpHまで、最も好ましくはpH10まででの勾配またはステップモードにて可能であった。加えて、この分離材料の適用は、アフィニティークロマトグラフィーモードと比較して有意な経済的な利点を示し、および、アニオン交換モードと比較してより広い選択性および向上したパフォーマンスを実現可能にした。
【0108】
さらに、適用は、異なるグリカンバリアント種の分離に限られず、グリコシル化非含有バリアントを、グリコシル化されたものから、取り除くためにも使用することができる。
【0109】
加えて、この材料の適用は、結合-溶出アプリケーションに限られず、フロースルーモードにおいても使用することができ、pH<6および/または高い導電率(>20mS/cm)を有するバッファーを使用したイオン交換材料上へのより高マンノース含有種またはより高い末端マンノース含有のグリカンバリアントの吸着を結果的にもたらす。さらに、驚くべきことに、第一義的に材料に共有結合的に付着したアミノ酸からなるものであるこのイオン交換材料のみが、グリカン種に対する必要な選択性を有し、より好ましい態様において、これらのアミノ酸はバリンまたはロイシン(それらの組み合わせおよび誘導体を包含する)であり、最も好ましいものはロイシンである。
【0110】
さらに、本発明は、再生することができ、および、広範な操作帯(operation window)、例として、pH3~10;導電率5~60mS/cm、において適用可能である、クロマトグラフィーベースの糖タンパク質精製ステップを提供する。
好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、グリカン種を分離するための結合-溶出モードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用される。
【0111】
好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、グリカン種を分離するための結合-溶出モードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用され、ここで、操作帯(operation window)のスパンはpH2~10の間であり、より好ましい態様においてpHは4~7の間である。
好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、グリカン種を分離するための結合-溶出モードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用され、ここで、結合した構成成分を回収するために溶媒pH溶出が使用される。
【0112】
好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、グリカン種を分離するための結合-溶出モードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用され、ここで、結合帯(binding window)のスパンは、10mg糖タンパク質/ml材料~100mg糖タンパク質/ml材料の間であり、より好ましい態様において結合帯のスパンは20mg糖タンパク質/ml材料~80mg糖タンパク質/ml材料の間である。
【0113】
好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、グリカン種を分離するための結合-溶出モードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用され、ここで、導電率帯のスパンは5~60mS/cmの間であり、より好ましい態様において導電率範囲は15~35mS/cmの間である。
【0114】
別の好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、グリカン種を分離するフロースルーモードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用され、ここで、低マンノース含有種は、フロースルー中にあり、より高マンノース含有種は、分離材料に結合する。
【0115】
別の好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、グリカン種を分離するフロースルーモードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用され、ここで、非ハイブリッド種は、フロースルー中にあり、ハイブリッド(例として、末端マンノース含有)種は、分離材料に結合する。
【0116】
別の好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、グリカン種を分離するフロースルーモードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用され、ここで、低フコシル化種は、フロースルー中にあり、高フコシル化含有種は、分離材料に結合する。
【0117】
別の好ましい態様において本発明の方法は、
a)本発明において使用されるイオン交換材料を含むクロマトグラフィーカラムへ、グリコフォームの少なくとも1つが高マンノースグリコフォームであるタンパク質グリコフォームの混合物を含む試料を適用すること、
b)フロースルー中に少なくとも1の高マンノースグリコフォームを分離および溶出させること、
c)分離材料から結合したグリコフォームを溶出させること、ここで、それによって溶出するグリコフォームでは高マンノースグリコフォームが低減する、を含む。
【0118】
別の好ましい態様において本発明の方法は、
a)本発明において使用されるイオン交換材料を含むクロマトグラフィーカラムへ、グリコフォームの少なくとも1つが高マンノースグリコフォームであるタンパク質グリコフォームの混合物を含む試料を適用すること、ここで、少なくとも1の高マンノースグリコフォームが、また典型的には他のタンパク質グリコフォームも、分離材料へ結合する、
b)溶出バッファーと分離材料を接触させること、ここで、それによって高マンノースグリコフォームとは異なる1以上のグリコフォームが溶出し、一方で少なくとも1の高マンノースグリコフォームが分離材料に結合したままとなる、
c)任意に、典型的には第1の溶出バッファーとは異なるものである第2の溶出バッファーと分離材料を接触させ、およびこれにより少なくとも1の高マンノースグリコフォームを溶出させること、を含む。
【0119】
この態様において、ステップb)において得られる溶出液では、ステップa)において適用された試料と比較して高マンノースグリコフォームが低減し、および、ステップc)において得られる溶出液では濃縮される。上記のとおりのフロースルーまたは結合溶出において分離されるマンノースグリコフォームは、好ましくは、異なるマンノシル化の程度を有する抗体であるか、または、異なるマンノシル化の程度のタンパク質を抱えるウイルスおよび/もしくはウイルスカプシドである。
【0120】
別の好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、糖タンパク質形態を含むウイルスおよび/またはウイルス粒子を、他のタイプの糖タンパク質を含むかまたは糖タンパク質を含まないウイルスおよび/またはウイルス粒子から分離するためのフロースルーにおけるかまたは結合溶出モードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用される。好ましくは、分離は、グリカン構造中に存在するマンノースの異なる量に基づいて起こる。
【0121】
別の好ましい態様において本発明の方法は、
a)本発明において使用されるイオン交換材料を含むクロマトグラフィーカラムへ、グリコフォームの少なくとも1つが末端マンノースグリコフォームであるタンパク質グリコフォームの混合物を含む試料を適用すること、ここで、少なくとも1の末端マンノースグリコフォームが、また典型的には他のタンパク質グリコフォームも、分離材料へ結合する、
b)溶出バッファーと分離材料を接触させること、ここで、それによって末端マンノースグリコフォームとは異なる1以上のグリコフォームが溶出し、一方で少なくとも1の末端マンノースグリコフォームが分離材料に結合したままとなる、
c)任意に、典型的には第1の溶出バッファーとは異なるものである第2の溶出バッファーと分離材料を接触させ、およびこれにより少なくとも1の末端マンノースグリコフォームを溶出させること、を含む。
【0122】
この態様において、ステップb)において得られる溶出液では、ステップa)において適用された試料と比較して末端マンノースグリコフォームが低減し、および、ステップc)において得られる溶出液では濃縮される。上記のとおりのフロースルーまたは結合溶出において分離される末端マンノースグリコフォームは、好ましくは、異なるマンノシル化の程度を有する抗体であるか、または、異なるマンノシル化の程度のタンパク質を抱えるウイルスおよび/もしくはウイルスカプシドである。
【0123】
別の好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、糖タンパク質形態を含むウイルスおよび/またはウイルス粒子を、他のタイプの糖タンパク質を含むかまたは糖タンパク質を含まないウイルスおよび/またはウイルス粒子から分離するためのフロースルーにおけるかまたは結合溶出モードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用される。好ましくは、分離は、グリカン構造中に存在する末端マンノースの異なる量に基づいて起こる。
【0124】
別の好ましい態様において本発明の方法は、
a)本発明において使用される分離材料を含むクロマトグラフィーカラムへ、グリコフォームの少なくとも1つがフコースを持っているグリコフォームであるタンパク質グリコフォームの混合物を含む試料を適用すること、ここで、少なくとも1の、フコースを持っているグリコフォームが、また典型的には他のタンパク質グリコフォームも、分離材料へ結合する、
b)溶出バッファーと分離材料を接触させること、ここで、それによって、フコースを持っていないグリコフォームとは異なる1以上のグリコフォームが溶出し、一方で少なくとも1の、フコースを持っているグリコフォームが、分離材料に結合したままとなる、
c)任意に、典型的には第1の溶出バッファーとは異なるものである第2の溶出バッファーと分離材料を接触させ、およびこれにより、少なくとも1の、フコースを持っていないグリコフォームを溶出させること、を含む。
【0125】
この態様において、ステップb)において得られる溶出液では、ステップa)において適用された試料と比較してフコースを持っていないグリコフォームが低減し、および、ステップc)において得られる溶出液では濃縮される。上記のとおりのフロースルーまたは結合溶出において分離される、フコースを持っているグリコフォームは、好ましくは、異なるフコシル化の程度を有する抗体であるか、または、異なるフコシル化の程度のタンパク質を抱えるウイルスおよび/もしくはウイルスカプシドである。
【0126】
別の好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、糖タンパク質形態を含むウイルスおよび/またはウイルス粒子を、他のタイプの糖タンパク質を含むかまたは糖タンパク質を含まないウイルスおよび/またはウイルス粒子から分離するためのフロースルーにおけるかまたは結合溶出モードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用される。好ましくは、分離は、グリカン構造中に存在するフコースの異なる量に基づいて起こる。
【0127】
別の好ましい態様において本発明の方法は、
a)グリカンを持つおよびグリカンなしのタンパク質の混合物を含む試料を適用すること、ここで、グリカンを持つタンパク質の少なくとも1つ、タンパク質グリコフォームが、本発明において使用される分離材料を含むクロマトグラフィーカラムへ結合する、
b)溶出バッファーと分離材料を接触させること、ここで、それによって少なくとも1の、グリカンを持つタンパク質が溶出し、一方で、少なくとも1の、グリカンなしのものが、分離材料に結合したままとなる、
c)任意に、典型的には第1の溶出バッファーとは異なるものである第2の溶出バッファーと分離材料を接触させ、およびこれにより、少なくとも1の、グリカンなしのものを溶出させること、を含む。
【0128】
この態様において、ステップb)において得られる溶出液では、ステップa)において適用された試料と比較して、グリコフォームを持っているタンパク質が濃縮され、および、ステップc)において得られる溶出液では低減する。上記のとおりのフロースルーまたは結合溶出において分離されるグリコフォームは、好ましくは、異なるグリコシル化の程度を有する抗体であるか、または、異なるグリコシル化の程度のタンパク質を抱えるウイルスおよび/もしくはウイルスカプシドである。
【0129】
別の好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、糖タンパク質形態を含むウイルスおよび/またはウイルス粒子を、他のタイプの糖タンパク質を含むかまたは糖タンパク質を含まないウイルスおよび/またはウイルス粒子から分離するためのフロースルーにおけるかまたは結合溶出モードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用される。好ましくは、分離は、グリカン構造中に存在するグリコシル化の異なる量に基づいて起こる。
【0130】
別の好ましい態様において、本発明において使用されるイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中へと組み込まれて、グリカン種を分離するフロースルーモードにおける糖タンパク質精製プロセスのために使用され、ここで、グリコシル化を含有するタンパク質は、フロースルー中にあり、グリコシル化を含有しないタンパク質は、分離材料に結合する。
【0131】
好ましい態様において、イオン交換材料は、1~200μmの範囲にわたる様々な粒子サイズにすることができるところ、より好ましい態様において、平均粒子サイズは、20~63μmの間である。
好ましい態様において、本発明に従うイオン交換材料は、4~1500nmの範囲にわたる様々な孔径を有するものとできるところ、より好ましい態様において、平均孔径は、10~120nmの間であり、および最も好ましい態様において、平均孔径は、40~110nmの間である。
【0132】
本発明の方法は、非常に柔軟である。ふさわしいクロマトグラフィーモード(結合-溶出またはフロースルー)を適用することができ、ならびに条件は上述した広範囲において様々であり得る。加えて、標的分子もまた様々なものとすることができる。上で論じたとおり、いずれの場合においても、試料は少なくとも1のタンパク質グリコフォームを含む。しかし、標的分子は、タンパク質グリコフォーム、異なるタンパク質グリコフォームの群、または非グリコシル化タンパク質のいずれかであるとすることができる。
【0133】
典型的には、本発明の方法において、少なくとも1のタンパク質グリコフォームが分離材料へ結合するが、しかしこのタンパク質グリコフォームが標的分子である必要は必ずしもない。それが標的分子であってもよいが、しかし標的分子はまた、別のタンパク質グリコフォームまたは非グリコシル化タンパク質であってそれもまた分離材料へ結合するかもしくはフロースルー中にあるというもの、とすることもできる。本発明のプロセスは異なるタンパク質グリコフォームの、ならびにグリコシル化および非グリコシル化タンパク質の分離を可能にするので、標的分子は、必要に応じてこれを定義することができる。
【0134】
本発明は、以下の図および例によってさらに解説されるが、しかしながら、それらに制限されない。
上記および下記ならびに2019年7月7日に出願された対応EP特許出願第19184130.3号で引用された、すべての出願、特許、および刊行物の全開示は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【実施例
【0135】

以下の例は、本発明の実用的な応用を表す。
【0136】
1.分離材料の合成
プロセスからのグラフティングのために使用するモノマーの調製のために、アミノ酸、例として、バリン、ロイシンまたはアラニンが、VE水中に溶解され、および、pHが、NaOH(32%)を添加することによって13を上回るpHまで調整される。0~5℃の間の温度にてアクリル酸塩化物またはアクリル酸といったアクリル化合物が加えられ、および混合物は1時間攪拌される。
バリンおよびロイシンについての、アクリル酸クロリドとの反応スキームが、図2および図3に示されている。
【0137】
次いで、硝酸を添加することによって、pHが約2.2まで調整される。その後で、OH含有基材、例として、Eshmuno(登録商標)粒子が添加される。
重合は、硝酸セリウム(IV)を添加することによって始まる。反応は、30~50℃で4時間実行される。
重合反応の後、非反応の構成成分および開始剤が、室温または上昇した温度にて酸性の、塩基性のおよび溶媒の混合物を使用した大規模な洗浄(extensive washing)によって取り除かれる。
【0138】
2.Rituximab(登録商標)と高マンノースグリカン形態分離
例1に従って調製したとおりのイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、市販の薬物Rituximab(登録商標)の高マンノース含有種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.75のpHを有するローディングバッファー溶液と250mM NaClでプレ平衡化した。バッファー溶液は、4.5のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、Rituximab(登録商標)試料を、4.8mg/ml濃度に至るまで希釈した。
【0139】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して20mg Rituximab(登録商標)負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、150cm/hのバッファー速度で行った。20mg/ml Rituximab(登録商標)を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.75のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと250mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのRituximab(登録商標)溶出が達成されたということを示す。試料溶出液を分画し、得られた画分を、グリカン種同定のためのLC-MS法を使用したラインにつき評価した(図4)。
【0140】
集められた画分のLC-MS分析法を使用した分析的評価が、図5に表示されており、代表的な1B9および1C7画分によってさらに特徴づけられている主な糖タンパク質溶出ピークが、全く高マンノースバリアントを含有しなかったということを示す。大半の高マンノースグリカンバリアントは、より高いpHで溶出しており、これは代表的な1D10および1E3画分画分によりさらに特徴付けられている(図5)。
【0141】
図4に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用しながら、高マンノース含有グリカン種の分離/濃縮が可能である。主な糖タンパク質含有画分(例として、1B9および1C7)中において、高マンノースバリアントは検出されなかった。すべての高マンノース含有バリアントは、分離画分(例として、1D10)中に溶出した。
【0142】
3.Erbitux(登録商標)と200mM~600mM硫酸ナトリウムの範囲内の広い適用帯(application window)における高マンノースグリカン形態分離
例1に従って調製したとおりのイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、市販の薬物Erbitux(登録商標)の高マンノース含有種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.5のpHを有するローディングバッファー溶液と250mM NaClでプレ平衡化した。バッファー溶液は、4.5のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの塩の組み合わせを含有した。
【0143】
準備したクロマトグラフカラム上に、プレ精製済み(pre-purified)Erbitux(登録商標)試料を、1ml樹脂に対して5mgのプレ精製済みErbitux(登録商標)負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、150cm/hのバッファー速度で行った。5mg/mlのプレ精製済みErbitux(登録商標)を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.5のバッファー溶液および各種の量のNaSOで洗浄した。NaSOの量は、200~600mMの間で変動させた。カラムは、次いで、8.5のpHを有するバッファーおよび対応するNaSOの量での勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのErbitux(登録商標)溶出が達成されたということを示す。
【0144】
表1においては、メインピーク、および、対応するpHにおける高マンノース含有ピーク溶出最大値が表示されている。
【表1】
【0145】
表1は、メインピーク、および、対応するpHにおける高マンノース含有ピーク溶出最大値を示す。
【0146】
表1に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用しながら、高マンノース含有グリカン種の分離/濃縮が、広い範囲の導電率において可能である。高マンノース含有バリアントを伴う画分は、調査した全範囲全体にわたって、高マンノースを含有しないグリカン種と比較するとより高いpH値で溶出した。
【0147】
4.Rituximab(登録商標)とハイブリッドグリカン形態分離
例1に従って調製したとおりのイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、市販の薬物Rituximab(登録商標)のハイブリッドグリカン種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.75のpHを有するローディングバッファー溶液と250mM NaClでプレ平衡化した。バッファー溶液は、4.75のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、Rituximab(登録商標)試料を、4.8mg/ml濃度に至るまで希釈した。
【0148】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して20mg Rituximab(登録商標)負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、150cm/hのバッファー速度で行った。20mg/ml Rituximab(登録商標)を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.75のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと250mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのRituximab(登録商標)溶出が達成されたということを示す。試料溶出液を分画し、得られた画分を、グリカン種同定のためのLC-MS法を使用したラインにつき評価した(図7)。
【0149】
集められた画分のLC-MS分析法を使用した分析的評価が、図7に表示されており、代表的な1B9および1C7画分によってさらに特徴づけられている主な糖タンパク質溶出ピークが、全くハイブリッドグリカンバリアント(例として、末端マンノースを含有するもの)を含有しなかったということを示す。大半のハイブリッドグリカンバリアントは、より高いpHで溶出しており、これは代表的な1D10および1E3画分画分によりさらに特徴付けられている(図7)。
【0150】
図6および図7に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用しながら、ハイブリッドグリカン種の分離/濃縮が可能である。主な糖タンパク質含有画分(例として、1B9および1C7)中において、ハイブリッドグリカンバリアントは検出されなかった。すべてのハイブリッドグリカンバリアントは、分離画分(例として、1D10および1E3)中に溶出した。
【0151】
5.mAb05とハイブリッドグリカン形態分離
例1に従って調製したとおりのイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、mAb05のハイブリッドグリカン種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.75のpHを有するローディングバッファー溶液と250mM NaClでプレ平衡化した。バッファー溶液は、4.75のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、mAb05試料を、5mg/ml濃度に至るまで希釈した。
【0152】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して30mg mAb05負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、150cm/hのバッファー速度で行った。30mg/ml mAb05を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.75のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと250mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのmAb05溶出が達成されたということを示す。試料溶出液を分画し、得られた画分を、グリカン種同定のためのLC-MS法を使用したラインにつき評価した(図9)。
【0153】
集められた画分のLC-MS分析法を使用した分析的評価が、図9に表示されており、第1の溶出画分1A4~2A4が、全くハイブリッドグリカンバリアント(例として、末端マンノース含有G0F-NおよびG1F-N)を含有しなかったということを示す。大半のハイブリッドグリカンバリアントは、より高いpHで溶出しており、これは代表的な3B5~4B2画分によりさらに特徴付けられている(図9)。ハイブリッド形態に加えて、マンノース5含有グリカンバリアントもまた同様により高いpHで溶出させられていた。
【0154】
図8に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用しながら、ハイブリッドグリカン種の分離/濃縮が可能である。主な糖タンパク質含有画分(例として、1A4~2A4)中において、ハイブリッドグリカンバリアントは検出されなかった。すべてのハイブリッドグリカンバリアントは、より高いpH値で溶出した(例として、3B5~4B2)。
【0155】
そのうえ、得られた画分を、分析的サイズ排除クロマトグラフィーを使用して特性評価し、およびフラグメント化または凝集のレベルをモニターした。結果は、使用された試料中または得られた画分中において1%よりも少ない凝集体の存在を示す(表2)。
【表2】
【0156】
表2は、分析した溶出画分(1B4~1F12)の得られた画分について面積でおよびフラグメント化または凝集した種について%で表示された分析的サイズ排除クロマトグラフィーの結果を示す。全ての画分は純度>99%であった。
【0157】
6.mAb05とフコシル化、非フコシル化形態分離
例1に従って調製したとおりのイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、mAb05のフコシル化および非フコシル化グリカン種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.75のpHを有するローディングバッファー溶液と200mM NaClでプレ平衡化した。バッファー溶液は、4.75のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、mAb05試料を、5mg/ml濃度に至るまで希釈した。
【0158】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して30mg mAb05負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、150cm/hのバッファー速度で行った。30mg/ml mAb05を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.75のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと200mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのmAb05溶出が達成されたということを示す(図10)。フロースルーおよび試料溶出液を分画し、得られた画分を、グリカン種同定のためにLC-MS法を使用したラインにつき評価した(表3)。
【0159】
集められた画分のLC-MS分析法を使用した分析的評価が、表3に表示されており、負荷された糖タンパク質よりも、(G0FおよびG1F)と比較して、第1の溶出画分1B4~1D5が、より少ない非フコシル化形態(G0およびG1)を含有していたということを示す。より多い量のフコシル化グリカンバリアント(G0FおよびG1F)は、より高いpH値で溶出しており、これは代表的な1E4および1F12画分によりさらに特徴付けられている(表3)。加えて、マンノース5含有グリカンバリアントもまた同様により高いpHで溶出させられていた。
【0160】
【表3】
【0161】
表3は、分析した溶出画分(1B4~1F12)の定量面積で表示されるLC-MS分析法を使用した試料画分特性評価の分析結果を示す。
【0162】
図10および表3に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用しながら、非フコシル化グリカン種の分離/濃縮が可能である。主な糖タンパク質含有画分(例として、1B4~1D5)中において、より少ないフコシル化グリカンバリアントが検出された。より多くのフコシル化バリアントは、より高いpH値で溶出した(例として、1E4~1F12)。
【0163】
7.ネイティブおよび脱グリコシル化Rituximab(登録商標)の分離
例1に従って調製したとおりのイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、グリコシル化および非グリコシル化Rituximab(登録商標)を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.75のpHを有するローディングバッファー溶液と150mM NaClでプレ平衡化した。バッファー溶液は、4.75のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、ネイティブおよび脱グリコシル化Rituximab(登録商標)試料を、4mg/ml濃度に至るまで希釈した。
【0164】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して1mg Rituximab(登録商標)負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、150cm/hのバッファー速度で行った。1mg/ml Rituximab(登録商標)を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.75のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと150mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのRituximab(登録商標)溶出が達成されたということを示す。
【0165】
試料を調製するために、Rituximab(登録商標)は、エンドグリコシダーゼ消化物(Endoglycosydase digest)を使用して部分的に脱グリコシル化させた。
部分的に脱グリコシル化したおよびネイティブのRituximab(登録商標)は、両方を2つの異なるアプリケーションにおいて負荷させ、および保持時間(retention time)を比較した(図11)。
【0166】
線形pH勾配におけるネイティブな糖タンパク質(例として、Rituximab(登録商標))の溶出プロフィールは、ネイティブなグリコシル化されたタンパク質についてより低い溶出pHを示す。糖タンパク質の脱グリコシル化した部分は、勾配のより高いpHで溶出する。
【0167】
図11に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用しながら、脱グリコシル化およびネイティブの糖タンパク質の分離/濃縮が可能である。
【0168】
8.mAb05とフロースルーモードにおける高マンノースグリカン形態分離
例1に従って調製したとおりのイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、フロースルーモードにおいてmAb05の高マンノースグリカン種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.75のpHを有するローディングバッファー溶液と400mM NaClでプレ平衡化した。バッファー溶液は、4.75のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、mAb05試料を、4.8mg/ml濃度に至るまで希釈した。
【0169】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して10mg mAb05負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、150cm/hのバッファー速度で行った。10mg/ml mAb05を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.75のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと400mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからの高マンノースmAb05グリコバリアント溶出が達成されたということを示す。それに対して一方で、マンノースを含有しないグリコバリアントは、カラム上に結合せず、フロースルー中にある。フロースルーおよび試料溶出液を分画し、得られた画分を、グリカン種同定のためにLC-MS法を使用して評価した(表4)。
【0170】
【表4】
【0171】
表4は、集められた画分のLC-MS分析法を使用した分析的評価を示す。フロースルー画分1F8は、<1%のマンノース含有グリコバリアントを含有していた、ということを示す。大半のマンノース含有グリコバリアントは、より高いpHで溶出しており、これは代表的な1H9画分によりさらに特徴付けられている(表4)。
【0172】
図12に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用しながら、フロースルー中での低マンノース含有グリカン種の分離/濃縮が可能である。結合した画分(例として、1H9)において、高マンノースグリカンバリアントが検出された。高マンノースグリカンバリアントは、より高いpH値で溶出した(例として、1H9)。
【0173】
9.結合-溶出モードにおけるSARS-CoV-2のスパイクS1タンパク質の分離
例1に従って調製したとおりのイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、SARS-CoV-2のスパイクS1タンパク質を結合させるその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、4.75のpHを有するローディングバッファー溶液と250mM NaClでプレ平衡化した。バッファー溶液は、4.75のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、S1タンパク質試料を、0.6mg/ml濃度に至るまで再構成(reconstitute)した。
【0174】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対して1mg S1タンパク質負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、150cm/hのバッファー速度で行った。1mg/ml S1タンパク質を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH4.75のバッファー溶液で洗浄し、および次いで10.5のpHを有するバッファーと250mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからのS1タンパク質溶出が達成されたということを示す。試料溶出液を分画し、得られた画分を、タンパク質同定のための分析的HIC法を使用したラインにつき評価した(図13)。
【0175】
集められた画分の分析的HIC法を使用した分析的評価が、図14に表示されており、代表的な1C6画分によりさらに特徴付けられている主な溶出ピーク(破線)は、S1タンパク質のみ(実線)を含有していた、ということを示す。(図14
【0176】
図13に示されているとおり、線形pH勾配溶離を使用しながら、SARS-CoV-2スパイクS1タンパク質の分離/濃縮が可能である。溶出ピークは、S1タンパク質のみを含有する。
【0177】
10.mAb03とフロースルーモードにおける高マンノースグリカン形態分離
例1に従って調製したとおりのイオン交換材料(例として、20~63μmの間の平均粒子サイズ、40~110nmの間の平均孔径および400~900μeq/gの間のイオン密度のもの)を、フロースルーモードにおいてmAb03の高マンノースグリカン種を分離するその能力について評価した。イオン交換材料を、0.8~1.2の間の非対称性および>3000プレート/mを伴う5×100mm寸法のクロマトグラフカラムに充填した。イオン交換材料を充填した後、得られたクロマトグラフカラムを30分間1M NAOH溶液で洗浄し、ならびに、5.12のpHを有するローディングバッファー溶液と250mM NaClでプレ平衡化した。バッファー溶液は、5.12のpHを得るために、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの塩の組み合わせを含有した。同溶液を使用して、mAb03試料を、5.0mg/ml濃度に至るまで希釈した。
【0178】
準備したクロマトグラフカラム上に、この溶液を、1ml樹脂に対してmAb03負荷に到達するに至るまで負荷させた。これらのステップおよびそれに続くステップは、150cm/hのバッファー速度で行った。100mg/ml mAb03を負荷させた後、クロマトグラフカラムをpH5.12のバッファー溶液で洗浄し、および次いで8.5のpHを有するバッファーと250mM NaClでの勾配溶離を使用して溶出させた。この溶出バッファーは、リン酸二水素ナトリウム、TRIS、およびグリシンなどの異なる塩を使用して調製した。導電率およびpH値が、実験セットアップの間トレースされており、それは勾配溶離の間pH変化に起因してカラムからの高マンノースmAb03グリコバリアント溶出が達成されたということを示す。それに対して一方で、マンノースを持たないグリコバリアントは、カラム上に結合せず、フロースルー中にある。フロースルーを分画し、得られた画分を、高マンノース種の定量につき評価した(表5)。
【0179】
【表5】
【0180】
表5は、所定のmAb03ブレークスルー(break through)後の集められた画分の累計(commulative)高マンノース種量の分析的評価を示す。高マンノース種の始めの濃度は7.68%であった。これにより、66.2mgのフロースルーされたmAb03試料は、<1%の高マンノース含有グリコバリアントを含有する、ということが示された。
【0181】
11.Gammanorm(登録商標)静的結合能
グラフティングに使用したヘキサフルオロバリンから調製した材料を使用して、Gammanorm(登録商標)の静的結合能を測定した。ヘキサフルオロバリンをVE水中に溶解し、および、pHを、NaOH(32%)を添加することによって13を上回るpHまで調整した。0~5℃の間の温度にてアクリル酸塩化物またはアクリル酸といったアクリル化合物を添加し、および混合物を1時間攪拌した。次いで、硝酸を添加することによって、pHを約2.2まで調整そした。その後で、OH含有基材、例として、Eshmuno(登録商標)粒子を添加した。重合は、硝酸セリウム(IV)を添加することによって始めた。反応は、30~50℃にて4時間実行した。
かかる材料の正確な量を、pH5.0での5mg/ml Gammanormおよび様々な量のNaClを含有する溶液中に浸した。4時間のインキュベーション後、材料を取り除き、および、溶液中の残存するGammanorm(登録商標)量を測定し、これにより、結合したGammanorm(登録商標)の量を推定した。
【0182】
測定された静的結合能は、以下のとおりであった:
0mM NaClにて - 64.5mg Gammanorm(登録商標)/mlヘキサフルオロバリングラフト材料; 30mM NaClにて - 50.9mg Gammanorm(登録商標)/mlヘキサフルオロバリングラフト材料; 75mM NaClにて - 50mg Gammanorm(登録商標)/mlヘキサフルオロバリングラフト材料が結合した。
図1
図2
図3
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図5
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図9
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図14
【国際調査報告】