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特表2022-539716粒子状材料、その製造のための方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(54)【発明の名称】粒子状材料、その製造のための方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20220906BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220906BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220906BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220906BHJP
   C01B 35/12 20060101ALI20220906BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01B35/12 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021576681
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2020066814
(87)【国際公開番号】W WO2020260102
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】19183347.4
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ベルグナー,ベンヤミン ヨハネス ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ゾンマー,ハイノ
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】トイフル,トビアス マクシミリアン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE08
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA19
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA22
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA18
(57)【要約】
Li1+xTM1-x
(式中、
xは、-0.02~+0.05の範囲であり、
TMは、少なくとも93モル%のニッケルと、
(A)少なくとも1つの元素M(Mは、Nb、Ta、Ti、Zr、W及びMoから選択される)、
(B)少なくとも1つの元素M(Mは、B、Al、Mg及びGaから選択される)とを含む)
で表される組成物の粒子状材料であって、
2~20μmの範囲の平均粒径(D50)を有する、粒子状材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li1+xTM1-x
(式中、
xは、-0.02~+0.05の範囲であり、
TMは、少なくとも93モル%のニッケルと、
(A)少なくとも1つの元素M(Mは、Nb、Ta、Ti、Zr、W及びMoから選択される)、
(B)少なくとも1つの元素M(Mは、B、Al、Mg及びGaから選択される)とを含む)
で表される組成物の粒子状材料であって、
2~20μmの範囲の平均粒径(D50)を有する、粒子状材料。
【請求項2】
TMが、一般式(I)
(Ni 1-d (I)
(式中、
は、Mn及びCoから選択され、
aは、0.95~0.995の範囲であり、
bは、0.002~0.04の範囲であり、
cは、0.002~0.02の範囲であり、そして
dは、0~0.02の範囲であり、
a+b+c=1である)
で表される金属の組み合わせである、請求項1に記載の粒子状材料。
【請求項3】
dが0である、請求項1又は2に記載の粒子状材料。
【請求項4】
がZr又はTiであり、そしてMがAlである、請求項1から3のいずれか1項に記載の粒子状材料。
【請求項5】
がTa又はNbであり、そしてMがAl又はBである、請求項1から3のいずれか1項に記載の粒子状材料。
【請求項6】
前記材料が、2回目の充電サイクルの0.2Cレートにおける4.1V~4.25Vの間で、微分容量プロット(dQ)/(dV)において、少なくとも25mVの積分ピーク幅2回目の充電IPW4.1V-4.25Vを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の粒子状材料。
【請求項7】
前記材料が金属酸化物でコーティングされている、請求項1から6のいずれか1項に記載の粒子状材料。
【請求項8】
b≦cである、請求項1から7のいずれか1項に記載の粒子状材料。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の粒子状材料を製造するための方法であって、以下の工程:
(a)粒子状の水酸化ニッケル、酸化(II)ニッケル又はオキシ水酸化ニッケルを提供する工程、
(b)前記酸化/水酸化ニッケル又はオキシ水酸化ニッケルを、M及びMの化合物の1種又は2種の溶液で処理する工程、
(c)場合により、工程(b)から前記溶媒(1種又は複数種)を除去する工程、
(d)リチウム源を添加する工程、
(e)工程(d)から得られた混合物を熱的に処理する工程
を含む方法。
【請求項10】
工程(e)が、650~750℃の範囲の最高温度で実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(c)が固液分離法によって実施される、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
Li1+xTM1-x
(式中、
xは、-0.02~+0.05の範囲であり、
TMは、少なくとも93モル%のニッケルと、
(A)少なくとも1つの元素M(Mは、Nb、Ta、Ti、Zr、W及びMoから選択される)、
(B)少なくとも1つの元素M(Mは、B、Al、Mg及びGaから選択される)とを含む)
で表される組成物の粒子状材料に関するものであり、
前記粒子状材料は、2~20μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。
【背景技術】
【0002】
リチウム化遷移金属酸化物は、現在、リチウムイオン電池の電極活物質として使用されている。充電密度、比エネルギーのような特性だけでなく、リチウムイオン電池の寿命又は適用性に悪影響を及ぼし得るサイクル寿命の短縮及び容量損失のような他の特性を改善するため、過去数年に広範な研究開発作業が行われてきた。製造方法を改善するためのさらなる努力がなされている。
【0003】
今日論じられている多くの電極活物質は、リチウム化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物(「NCM材料」)又はリチウム化ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物(「NCA材料」)のタイプのものである。
【0004】
リチウムイオン電池用の正極材料を作るための典型的な方法では、遷移金属を炭酸塩、酸化物として、又は好ましくは塩基性であってもなくてもよい水酸化物として共沈させることによって、最初に、いわゆる前駆体を形成する。次いでこの前駆体を、LiOH、LiO、又は特にLiCOなどであるがこれらに限定されないリチウム塩と混合し、高温でか焼(燃焼)する。リチウム塩(単数又は複数)は、水和物(単数又は複数)として、又は脱水された形態で使用することができる。前駆体のか焼、又は燃焼は、一般に熱的処理又は加熱処理とも呼ばれ、通常は600~1,000℃の範囲の温度で行われる。熱的処理の間、固相反応が起こり、そして電極活物質が形成される。前駆体として水酸化物又は炭酸塩が使用される場合、固相反応は水又は二酸化炭素の除去後に起こる。熱的処理は、オーブン又はキルンの加熱ゾーンで行われる。
【0005】
正極活物質の容量を向上させるために、できるだけ高いニッケル含有量を選択することが提案されている。しかしながら、LiNiOなどの材料では、短いサイクル寿命、顕著なガス発生、及びサイクル中の内部抵抗の強度な上昇が、商業用途にとって大きな課題をもたらすことが観察されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって冒頭に定義した粒子状材料が見出され、以下で本発明の材料又は本発明による材料としても定義する。本発明の材料を、以下でさらに詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の材料は、式Li1+xTM1-xによる組成物であり、式中、
xは、-0.02~+0.05の範囲であり、
TMは、少なくとも93モル%のニッケルと、
(A)少なくとも1つの元素M(Mは、Nb、Ta、Ti、Zr、W及びMoから選択される)、
(B)少なくとも1つの元素M(Mは、B、Al、Mg及びGaから選択される)とを含み、
前記粒子状材料は、2~20μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。
【0008】
これは、式Li1+xTM1-xに対応し、式中、TMは(Ni1-x1-x2 x1 x2)であり、x1>0であり、且つx2>0であり、且つx1+x2≦0.07である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、2回目の充電の0.2Cレートにおける4.1V~4.25Vの間での積分ピーク幅2回目の充電IPW4.1V-4.25Vの計算を示す。
図2図2は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、C-CAM.1を含有するコイン型ハーフセルの第2サイクルの微分容量プロット(dQ)/(dV)である。
図3図3は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、CAM.2を含有するコイン型ハーフセルの第2サイクルの微分容量プロット(dQ)/(dV)である。
図4図4は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、CAM.3を含有するコイン型ハーフセルの第2サイクルの微分容量プロット(dQ)/(dV)である。
図5図5は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、CAM.4を含有するコイン型ハーフセルの第2サイクルの微分容量プロット(dQ)/(dV)である。
図6図6は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、C-CAM.5を含有するコイン型ハーフセルの第2サイクルの微分容量プロット(dQ)/(dV)である。
図7図7は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、C-CAM.1を含有するコイン型ハーフセルの容量-サイクルプロットである。
図8図8は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、CAM.2を含有するコイン型ハーフセルの容量-サイクルプロットである。
図9図9は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、CAM.3を含有するコイン型ハーフセルの容量-サイクルプロットである。
図10図10は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、CAM.4を含有するコイン型ハーフセルの容量-サイクルプロットである。
図11図11は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、本発明の正極活物質C-CAM.5を含有するコイン型ハーフセルの容量-サイクルプロットである。
図12図12は、表1に列挙するサイクル手順を適用することによって得られた、比較例の正極活物質C-CAM.1及び本発明の正極活物質CAM.2、CAM.3、及びCAM.4を含有するコイン型ハーフセルの抵抗-サイクルプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の材料を以下でさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明の一実施形態では、本発明の材料は、球状の形状を有する粒子である球状粒子から構成される。球状粒子には、正確に球状であるものだけでなく、代表的なサンプルの少なくとも90%(数平均)の最大及び最小直径が10%以下異なる球状粒子も含まれるものとする。
【0012】
本発明の材料は、2~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば、光散乱又はLASER回折又は電気音響分光法によって決定することができる。粒子は、通常は、一次粒子からの凝集物で構成され、そして上記粒径は二次粒径を指す。
【0013】
本発明の一実施形態では、本発明の材料は、一次粒子の凝集体である二次粒子から構成される。好ましくは、本発明の材料は、一次粒子の凝集体である球状二次粒子から構成される。さらにより好ましくは、本発明の材料は、球状一次粒子又は板状(platelet)の凝集体である球状二次粒子から構成される。
【0014】
本発明の一実施形態では、本発明の材料の一次粒子は、1~2000nm、好ましくは10~1000nm、特に好ましくは50~500nmの範囲の平均直径を有する。平均一次粒径は、例えば、SEM又はTEMにより決定することができる。SEMは走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy)の略であり、TEMは透過型電子顕微鏡(transmission electron microscopy)の略であり、そしてXRDはX線回折の略である。
【0015】
本発明の一実施形態では、本発明の材料は、0.1~2.0m/gの範囲の比表面(BET)(以下、「BET表面」とも呼ばれる)を有する。BET表面は、DIN ISO9277:2010に準拠して、サンプルを200℃で30分間以上アウトガスさせた後の窒素吸着によって決定してよい。
【0016】
TMは、大部分が、例えば少なくとも93モル%、好ましくは少なくとも95モル%がニッケルである。99.5モル%の上限が好ましい。
【0017】
一部の金属は、ナトリウム、カルシウム又は亜鉛などの遍在する金属であるが、そのような微量は本発明の説明において考慮されない。本文脈における微量とは、合計金属含有量TMに対して、0.05モル%以下の量を意味する。
【0018】
TMは、一般式(I)
(Ni 1-d (I)
による金属の組み合わせであり、
式中、
は、Mn及びCoから選択され、
aは、0.95~0.995、好ましくは0.97~0.995、より好ましくは0.98~0.995の範囲であり、
bは、0.002~0.04の範囲であり、
cは、0.002~0.02の範囲であり、そして
dは、0~0.02の範囲であり、
そしてa+b+c=1である。好ましい実施形態では、b≦cである。
【0019】
は、Nb、Ta、Ti、Zr、W及びMoから選択され、そしてMは、B、Al、Mg及びGaから選択される。
【0020】
本発明の一実施形態では、MはZr又はTiであり、そしてMはAlである。
【0021】
本発明の一実施形態では、MはTa又はNbであり、そしてMはAl又はBである。
【0022】
本発明の一実施形態では、M及びMは、本発明の材料内に均質に分散している。これは、M及びMが、本発明の材料の粒子上にほぼ均質に分布していることを意味する。
【0023】
本発明の一実施形態では、M及びMの少なくとも1つは、本発明の材料の粒子の粒子境界に濃縮されている。
【0024】
本発明の特定の実施形態では、本発明の材料の二次粒子は、金属酸化物、好ましくは正極活物質として機能しない金属酸化物でコーティングされる。好適な金属酸化物の例は、LiBO、B、Al、Y、LiAlO、TiO、ZrO、LiZrO、Nb、LiNbO、Ta、LiTaOである。
【0025】
本発明の一実施形態では、本発明の材料は、0.2Cレートによる2回目の充電サイクルにおいて、4.1V~4.25Vの間の微分容量プロット(dQ)/(dV)の積分ピーク幅が、少なくとも25mVである。このような本発明の材料は、より狭いピーク幅を有する材料と比較して優れたサイクル安定性及び抵抗成長の低減を示すので、特に有用である。
【0026】
微分容量プロットは、典型的には、式1に従って容量Q対電圧Vを微分することによって計算される:
(dQ)/(dV)=(Q-Qt-1)/(V-Vt-1) (式1)
式中、V、Qは、時間tにおいて測定された電圧V及び容量Qであり、Vt-1及びQt-1は、前の時間t-1において測定された対応する電圧及び容量である。0.1~1Cの標準Cレートでは、データポイントは典型的には30秒~60秒ごとに、又は所定の電圧変化(例えば5mV)の後に測定される。データポイントは、適切なソフトウェアによってさらに補間及び平滑化して、(dQ)/(dV)プロットの品質を改善させることができる。
【0027】
2回目の充電の0.2Cレートにおける4.1V~4.25Vの間の微分容量(dQ)/(dV)の積分ピーク幅は、2回目の充電における4.1V~4.25Vの間の対応する(dQ)/(dV)プロットの積分Iを、2回目の充電における4.1V~4.25Vの間の対応する(dQ)/(dV)プロットの最大mで割ったものであり、図1に示し、そして式2で定義される。
【0028】
2回目の充電IPW4.1V-4.25V=I/m (式2)
【0029】
本発明の材料は、リチウムイオン電池の正極活物質として特に適している。それらは、良好なサイクル安定性と高いエネルギー密度とを組み合わせる。
【0030】
本発明の一実施形態では、本発明の正極活物質は、滴定によってLiCOとして決定し、そして前記本発明の材料に対して、0.001~1質量%の範囲のLiCOを含有する。
【0031】
本発明の別の態様は、本発明の材料を製造するための方法に関し、以下、本発明の方法又は(本)発明による方法とも呼ばれる。本発明の方法は、以下で工程(a)、工程(b)などとも呼ばれるいくつかの工程を含む。
【0032】
工程(a)~(e)は以下のように特徴付けられる:
(a)粒子状の水酸化ニッケル、酸化(II)ニッケル又はオキシ水酸化ニッケルを提供する工程、
(b)前記酸化/水酸化ニッケルを、M及びMの化合物の1種又は2種の溶液で処理する工程、
(c)場合により、工程(b)から溶媒(1種又は複数種)を除去する工程、
(d)リチウム源を添加する工程、
(e)工程(d)から得られた混合物を熱的に処理する工程。
【0033】
工程(a)~(e)を、以下でさらに詳細に説明する。
【0034】
工程(a)では、粒子状の水酸化ニッケル、酸化(II)ニッケル又はオキシ水酸化ニッケルが提供され、以下でまとめて酸化/水酸化ニッケルとも呼ぶ。本発明の文脈において、オキシ水酸化ニッケルという用語は、化学量論的なNiOOHに限定されず、酸化物及び水酸化物対イオンのみを有し、そして不純物の個々の最大含有量が、前記水酸化ニッケル、酸化(II)ニッケル又はオキシ水酸化ニッケルの合計金属含有量に対して2質量%の、Mn又はMgなどの金属である、ニッケルの任意の化合物に限定される。好ましくは、水酸化ニッケル、酸化(II)ニッケル又はオキシ水酸化ニッケルは、前記水酸化ニッケル、酸化(II)ニッケル又はオキシ水酸化ニッケルの合計金属含有量に対して、2質量%の最大合計不純物含有量を有する。
【0035】
工程(a)で提供される酸化/水酸化ニッケルは、2~20μm、好ましくは4~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば、光散乱又はLASER回折又は電気音響分光法によって決定することができる。粒子は、一次粒子からの凝集物から構成されていてよく、そして上記粒径は二次粒径を指す。
【0036】
好ましい酸化/水酸化ニッケルは、新たに沈殿した水酸化ニッケルである。
【0037】
本発明の一実施形態では、工程(a)で提供される酸化/水酸化ニッケルは、50~1,000ppm、好ましくは100~400ppmの範囲の残留水分含有量を有する。残留水分含有量は、カールフィッシャー滴定によって決定することができる。
【0038】
工程(b)において、前記酸化/水酸化ニッケルは、M及びMの1種又は2種の溶液を伴う。好適な溶媒は、M及びMの化合物の種類に依存する。
【0039】
の好適な化合物は、Ti、Zr、W、Ta及びNbのアルカノレート又はアセチルアセトネート、例えばTi、Zr、Nb、W及びTaのエトキシド、Ti及びZrのイソプロポキシド、Zr、Mo及び又はWのアセチルアセトネート、Taの混合アセチルアセトネート-エトキシドである。Mのアルカノレートは、対応するアルコールによく溶解する。Mの水溶性化合物の例は、例えば、限定するものではないが、メタタングステン酸アンモニウム(水和物)、オルトモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、ニオブ酸シュウ酸アンモニウム、炭酸ジルコニウム(IV)アンモニウム、そのものとしてであるか又は水和物としてである。
【0040】
の好適な化合物は、Al(SO、KAl(SO、及びAl(NO、Alのアルカノレート、例えば、限定するものではないが、Al(CO)、Al-トリス-イソプロポキシド、Mg(NO、Mg(SO、MgC、Mgのアルカノレート、例えば、限定するものではないが、Mg(CO)、NaBO、HBO、B、Bのアルカノレート、例えば、限定するものではないが、B-トリス-イソプロポキシド、Ga(NO、Ga(SO、Gaのアルカノレート、例えば、限定するものではないが、Ga(CHO)、Ga-トリスイソプロポキシド、又は少なくとも2種のカチオンの混合塩、例えばアルミニウムマグネシウムイソプロポキシドである。Al(SO、KAl(SO、Al(NO、Mg(NO、Mg(SO、MgC、NaBO,HBO、B、Ga(NO、及びGa(SOの好適な溶媒は、水である。Mのアルカノレートは、対応するアルコールによく溶解する。
【0041】
本発明の一実施形態では、M及びMの対イオンは、同じ又は類似しており、例えば2種の異なるアルカノレートイオンである。そのような実施形態では、前記酸化/水酸化ニッケルは、M及びMの両方を含有する1種の溶液で処理してよい。
【0042】
本発明の別の実施形態では、M及びMの対イオンは異なり、例えば、Mのアルコキシド及びAlのニトレートである。そのような実施形態では、前記酸化/水酸化ニッケルは、続いてMを含有する溶液及びMを含有する溶液で処理される。
【0043】
工程(b)の一実施形態では、工程(b)で使用される溶液は、0.001~60質量%のM又はMの化合物を含有する。工程(b)の別の実施形態では、工程(b)で使用される溶液が、合計で0.002~70質量%のM及びMの化合物を含有する。
【0044】
本発明の一実施形態では、工程(b)は、5~85℃、好ましくは10~60℃の範囲の温度で行われる。
【0045】
本発明の一実施形態では、工程(b)は常圧で行われる。しかし、工程(b)を高圧下、例えば常圧より10ミリバール~10バール高い圧力で、又は吸引で、例えば常圧より50~250ミリバール低い圧力、好ましくは常圧より100~200ミリバール低い圧力で実施することが好ましい。
【0046】
工程(b)は、例えば、濾過装置の上方に位置しているので容易に排出が可能である容器内で、実施してよい。そのような容器に、工程(a)からの酸化/水酸化ニッケルを入れ、続いてM及び/又はMの化合物の溶液を導入することができる。別の実施形態では、そのような容器に、M及び/又はMの化合物の溶液を入れ、続いて工程(a)からの酸化/水酸化ニッケルを導入する。別の実施形態では、工程(a)からの酸化/水酸化ニッケル及びM及び/又はMの化合物の溶液を同時に導入する。
【0047】
本発明の一実施形態では、工程(a)からの酸化/水酸化ニッケル/オキシ水酸化物と、工程(b)におけるM及び/又はMの化合物の合計溶液の体積比は、10:1~1:5、好ましくは10:1~1:1、さらにより好ましくは10:1~5:1の範囲である。
【0048】
及び/又はMの溶液による酸化/水酸化ニッケルの処理は、1分~3時間、好ましくは5分~1時間、さらにより好ましくは5~30分の期間にわたって行ってよい。
【0049】
工程(b)は、混合操作、例えば振盪によって、又は特に撹拌若しくは剪断によって支持してよい(以下を参照)。
【0050】
本発明の一実施形態では、工程(b)及び(c)が組み合わされる:本発明の一実施形態では、工程(b)は、工程(a)からの前記酸化/水酸化ニッケルを、Mを含有する溶液中でスラリー化し、続いて固液分離法又は蒸発によって溶媒を除去し、工程(c-1)、次いでMを含有する溶液中で残渣を再スラリー化し、固液分離法又は蒸発によってそれぞれの溶媒を除去し、工程(c-2)、そして50~450℃の範囲の最高温度で乾燥させることによって、実施する。
【0051】
本発明の別の実施形態では、工程(b)は、Mを含有する溶液中で工程(a)からの前記酸化/水酸化ニッケルをスラリー化し、続いて固液分離法又は蒸発によって溶媒を除去し、工程(c-1)、次いでMを含有する溶液中で残渣を再スラリー化し、固液分離法又は蒸発によってそれぞれの溶媒を除去し、工程(c-2)、そして50~450℃の範囲の最高温度で乾燥させることによって、実施する。
【0052】
任意の工程(c)では、溶媒(1種又は複数種)を除去する。溶媒の除去の好適な実施形態は、固液分離法、例えばデカント、及び、例えばバンドフィルタ又はフィルタプレスでの濾過である。
【0053】
工程(c)の一実施形態では、工程(b)で得られたスラリーは、遠心分離機、例えばデカンタ遠心分離機又はフィルタ遠心分離機に、又は濾過装置、例えば吸引フィルタ上に、又は工程(b)が実施される容器の好ましくは真下に位置するベルトフィルタに、直接排出される。その後、濾過を開始する。
【0054】
本発明の特に好ましい実施形態では、工程(b)及び(c)は、撹拌器付き濾過装置、例えば撹拌器付き圧力フィルタ又は撹拌器付き吸引フィルタで実施される。工程(b)に従って出発物質とM及びMの溶液(単数又は複数)とを合わせた最大でも3分後、又はその直後に、濾過を開始することによって溶媒の除去を開始する。実験室規模では、工程(b)及び(c)はブフナー漏斗上で実施してよく、そして工程(b)及び(c)は手動撹拌によって支持してよい。
【0055】
好ましい実施形態では、工程(b)は、濾過装置、例えば濾過器中のスラリー又は濾過ケーキの撹拌を可能にする撹拌濾過装置で実施される。濾過、例えば加圧濾過又は吸引濾過の開始により、工程(b)の開始から最大で3分後に、工程(c)が開始される。
【0056】
本発明の一実施形態では、工程(c)による溶媒除去は、1分~1時間の範囲の持続時間を有する。
【0057】
本発明の一実施形態では、工程(b)、及び該当する場合(c)の撹拌は、毎分1~50回転(「rpm」)、好ましくは5~20rpmの範囲の速度で実施する。
【0058】
本発明の一実施形態では、濾過材は、セラミック、焼結ガラス、焼結金属、有機ポリマーフィルム、不織布、及び布地から選択してよい。
【0059】
本発明の一実施形態では、工程(b)及び(c)は、CO及び/又は水分含有量が減少した雰囲気下、例えば、0.01~500質量ppmの範囲、好ましくは0.1~50質量ppmの範囲の二酸化炭素及び/又は水分含有量で行われる。CO及び/又は水分含有量は、例えば、赤外光を使用する光学的方法によって決定してよい。工程(b)及び(c)を、二酸化炭素及び/又は水分含有量が、例えば赤外線に基づく光学的方法による検出限界未満である雰囲気下で行うことがさらにより好ましい。
【0060】
本発明の一実施形態では、工程(c)は、好ましくは減圧下で、溶媒を蒸発させることによって実施される。そのような実施形態は、溶媒(1種又は複数種)が有機溶媒、例えばエタノール又はイソプロパノールである場合に好ましい。
【0061】
本発明の一実施形態では、M及びMの溶液で処理した湿潤酸化/水酸化ニッケルの溶媒を除去せず、そして湿潤酸化/水酸化ニッケルをリチウム源と直接混合して、工程(d)、リチウムの理想的な分配を可能にする。この選択肢は、工程(b)の溶媒として水のみが使用される場合に、特に興味深い。
【0062】
本発明の一実施形態では、工程(b)及び(c)は、CO含有量が減少した雰囲気下、例えば、0.01~500質量ppm、好ましくは0.1~50質量ppmの範囲の二酸化炭素含有量で行われる。CO含有量は、例えば、赤外光を用いた光学的方法によって決定してよい。工程(b)及び(c)を、二酸化炭素含有量が検出限界未満である雰囲気下で、例えば赤外線ベースの光学的方法を用いて実施することがさらにより好ましい。
【0063】
本発明の一実施形態では、工程(c)は、好ましくは減圧下で溶媒を蒸発させることによって実施される。そのような実施形態は、溶媒(1種又は複数種)が有機溶媒、例えばエタノール又はイソプロパノールである場合に好ましい。
【0064】
粉末状の残留物は、工程(c)が実施される実施形態において、工程(c)から得られる。
【0065】
工程(d)において、リチウム源が添加される。
【0066】
リチウム源の例は、LiO、LiOH及びLiCOであり、それぞれ水を含まないか、又は該当する場合は水和物、例えばLiOH・HOである。好ましい例はリチウムヒドロキシドである。
【0067】
リチウム源及び粉末状の残留物の量は、LiとTMのモル比が(1+x)~1であり、xが0.98~1.05の範囲にあるように選択される。
【0068】
前記リチウム源は、例えば3~10μm、好ましくは5~9μmの範囲の平均直径(D50)を有する粒子形態であることが好ましい。
【0069】
工程(d)を実施するための好適な装置の例は、高剪断ミキサー、タンブラーミキサー、プラウシェアミキサー及び自由落下ミキサーである。
【0070】
本発明の一実施形態では、工程(d)は、周囲温度~200℃、好ましくは20~50℃の範囲の温度で実施される。
【0071】
混合物が得られる。
【0072】
工程(e)は、前記混合物を熱的処理に供することを含む。工程(e)の例は、600~800℃、好ましくは650~750℃の範囲の温度での加熱処理である。「熱的に処理する」及び「加熱処理」という用語は、本発明の文脈において互換的に使用される。
【0073】
本発明の一実施形態では、工程(d)から得られた混合物を、0.1~10℃/分の加熱速度で600~800℃に加熱する。
【0074】
本発明の一実施形態では、600~800℃、好ましくは650~750℃の所望の温度に達する前に温度を上昇させる。例えば、最初に工程(d)から得られた混合物を350~550℃の温度に加熱し、そして次いで10分~4時間の時間一定に保持し、それから650℃~800℃まで上昇させ、次いで650~800℃で10分~10時間保持する。
【0075】
本発明の一実施形態では、工程(e)は、ローラハースキルン、プッシャーキルン若しくはロータリーキルン、又はこれらの少なくとも2種の組み合わせで実施される。ロータリーキルンは、そこで製造された材料の非常に良好な均質化という利点を有する。ローラーハースキルン及びプッシャーキルンでは、異なる工程に対する異なる反応条件を、極めて容易に設定することができる。実験室規模の試験では、箱型及び管状炉及び分割管炉も実現可能である。
【0076】
本発明の一実施形態では、工程(e)は、酸素含有雰囲気中で、例えば窒素-空気混合物中で、希ガス-酸素混合物中で、空気中で、酸素中で、又は酸素富化空気中で実施される。好ましい実施形態では、工程(d)の雰囲気は、空気、酸素及び酸素富化空気から選択される。酸素富化空気は、例えば、空気と酸素との体積50:50の混合であってよい。他の選択肢は、空気と酸素との体積1:2の混合物、空気と酸素との体積1:3の混合物、空気と酸素との体積2:1の混合物、及び空気と酸素との体積3:1の混合物である。
【0077】
本発明の一実施形態では、工程(e)は、ガス、例えば空気、酸素及び酸素富化空気の流れの下で実施される。このようなガスの流れは、強制ガス流と定義されることがある。そのようなガス流は、一般式Li1+xTM1-xによる0.5~15m/h・kg材料の範囲の特定の流量を有することができる。体積は、通常の条件下:298ケルビン及び1気圧で決定される。前記ガスの流れは、水及び二酸化炭素などのガス状開裂生成物の除去に有用である。
【0078】
本発明の方法は、工程(e)に続いて650~800℃の範囲の温度での追加のか焼工程など(これに限定されない)のさらなる工程を含んでよい。
【0079】
本発明の一実施形態では、工程(e)は、1時間~30時間の範囲の持続時間を有する。10~24時間が好ましい。600℃を超える温度での時間をカウントし、加熱及び保持するが、本文脈では冷却時間は無視する。
【0080】
リチウムイオン電池の正極活物質として極めて好適な材料が得られる。
【0081】
本発明の一実施形態では、本発明の材料を水で処理し、続いてそれを乾燥させることが可能である。別の実施形態では、本発明の材料の粒子を、例えば、酸化物又は水酸化物と、例えば水酸化アルミニウム又はアルミナと、又はホウ酸と混合し、続いて150~400℃で熱的処理することによって、少なくとも部分的にコーティングすることが可能である。本発明の別の実施形態では、本発明の材料の粒子を、原子層堆積法によって、例えばトリメチルアルミニウムと水分とを交互に処理(単回又は複数回)することによって、少なくとも部分的にコーティングすることが可能である。
【0082】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つの本発明の材料を含む電極である。これらは、リチウムイオン電池に特に有用である。本発明による少なくとも1つの電極を含むリチウムイオン電池は、非常に良好な放電及びサイクル挙動を示し、そして良好な安全挙動を示す。
【0083】
本発明の一実施形態では、本発明のカソードは、
(A)上述のような、少なくとも1つの本発明の材料、
(B)導電状態の炭素、及び
(C)バインダー、
(D)集電体と
を含む。
【0084】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のカソードは、
(A)80~98質量%の本発明の材料、
(B)1~17質量%の炭素、
(C)1~10質量%のバインダー材料
を含み、パーセンテージは、(A)、(B)及び(C)の総計に対するものである。
【0085】
本発明によるカソードは、導電性改質において、簡略化して炭素(B)とも呼ばれる、炭素を含有し。炭素(B)は、煤、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン及びグラファイトから選択することができる。炭素(B)は、本発明による電極材料の調製中にそのまま添加することができる。
【0086】
本発明による電極は、さらなる成分を含むことができる。それらは、集電体(D)、例えば、限定するものではないが、アルミニウム箔を含むことができる。それらは、以下でバインダー(C)とも呼ばれるバインダー材料(C)をさらに含む。集電体(D)については、ここではこれ以上説明しない。
【0087】
好適なバインダー(C)は、好ましくは有機(コ)ポリマーから選択される。好適な(コ)ポリマー、すなわちホモポリマー又はコポリマーは、例えば、アニオン、触媒又はフリーラジカル(共)重合によって、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、及びエチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル及び1,3-ブタジエンから選択される少なくとも2種のコモノマーのコポリマーから得ることができる(コ)ポリマーから選択することができる。ポリプロピレンも好適である。ポリイソプレン及びポリアクリレートもさらに好適である。ポリアクリロニトリルが特に好ましい。
【0088】
本発明の文脈において、ポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルホモポリマーだけでなく、アクリロニトリルと1,3-ブタジエン又はスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーが好ましい。
【0089】
本発明の文脈において、ポリエチレンは、ホモポリエチレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合エチレンを含むエチレンと、最大で50モル%までの少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えば、α-オレフィン、例えばプロピレン、ブチレン(1-ブテン)、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ペンテン、及びイソブテン、ビニル芳香族、例えばスチレン、及び(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリル酸のC~C10-アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びマレイン酸、無水マレイン酸及び無水イタコン酸とのコポリマーも意味すると理解される。ポリエチレンは、HDPE又はLDPEであってよい。
【0090】
本発明の文脈において、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合プロピレン及び最大で50モル%までの少なくとも1種のさらなるコモノマー、例えばエチレン及びα-オレフィン、例えばブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン及び1-ペンテンを含むプロピレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリプロピレンは、好ましくはアイソタクチックの、又は本質的にアイソタクチックのポリプロピレンである。
【0091】
本発明の文脈において、ポリスチレンは、スチレンのホモポリマーだけでなく、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC~C10-アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジフェニルエチレン及びα-メチルスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。
【0092】
別の好ましいバインダー(C)はポリブタジエンである。
【0093】
他の好適なバインダー(C)は、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミド及びポリビニルアルコールから選択される。
【0094】
本発明の一実施形態では、バインダー(C)は、50,000~1,000,000g/モル、好ましくは500,000g/モルまでの範囲の平均分子量Mを有する(コ)ポリマーから選択される。
【0095】
バインダー(C)は、架橋又は非架橋(コ)ポリマーであってよい。
【0096】
本発明の特に好ましい実施形態では、バインダー(C)は、ハロゲン化(コ)ポリマー、特にフッ素化(コ)ポリマーから選択される。ハロゲン化又はフッ素化(コ)ポリマーは、分子あたり少なくとも1個のハロゲン原子又は少なくとも1個のフッ素原子、より好ましくは分子あたり少なくとも2個のハロゲン原子又は少なくとも2個のフッ素原子を有する少なくとも1種の(共)重合(コ)モノマーを含む(コ)ポリマーを意味すると理解される。例として、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレンコポリマー、パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー及びエチレン-クロロフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。
【0097】
好適なバインダー(C)は、特にポリビニルアルコール及びハロゲン化(コ)ポリマー、例えばポリ塩化ビニル又はポリ塩化ビニリデン、特にフッ素化(コ)ポリマー、例えばポリフッ化ビニル、特にポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレンである。
【0098】
本発明の電極は、成分(a)、成分(b)及び炭素(c)の総計に対して、3~10質量%のバインダー(単数又は複数)(d)を含んでよい。
【0099】
本発明のさらなる態様は、
(A)本発明の正極活物質(A)、炭素(B)、及びバインダー(C)を含む少なくとも1つのカソード、
(B)少なくとも1つのアノード、及び
(C)少なくとも1つの電解質
を含有する電池である。
【0100】
以上、カソード(1)の実施形態について詳細に説明してきた。
【0101】
アノード(2)は、炭素(グラファイト)、TiO、リチウムチタン酸化物、ケイ素又はスズなどの少なくとも1種のアノード活物質を含有してよい。アノード(2)は、集電体、例えば銅箔などの金属箔をさらに含有してよい。
【0102】
電解質(3)は、少なくとも1種の非水性溶媒、少なくとも1種の電解質塩、及び場合により添加剤を含んでよい。
【0103】
電解質(3)のための非水溶媒は、室温で液体又は固体であってよく、好ましくは、ポリマー、環状又は非環状エーテル、環状及び非環状アセタール及び環状又は非環状有機カーボネートの中から選択される。
【0104】
好適なポリマーの例として、特に、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリ-C~C-アルキレングリコール、及び特にポリエチレングリコールが挙げられる。ポリエチレングリコールは、ここで、最大で20モル%までの1種以上のC~C-アルキレングリコールを含むことができる。ポリアルキレングリコールは、好ましくは、2種のメチル又はエチル末端キャップを有するポリアルキレングリコールである。
【0105】
好適なポリアルキレングリコール、及び特に好適なポリエチレングリコールの分子量Mは、少なくとも400g/モルであってよい。
【0106】
好適なポリアルキレングリコール、及び特に好適なポリエチレングリコールの分子量Mは、最大で5,000,000g/モル、好ましくは最大で2,000,000g/モルであってよい。
【0107】
好適な非環式エーテルの例は、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンであり、1,2-ジメトキシエタンが好ましい。
【0108】
好適な環状エーテルの例は、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンである。
【0109】
好適な非環式アセタールの例は、例えば、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン及び1,1-ジエトキシエタンである。
【0110】
好適な環状アセタールの例は、1,3-ジオキサン、特に1,3-ジオキソランである。
【0111】
好適な非環式有機カーボネートの例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。
【0112】
好適な環状有機カーボネートの例は、一般式(II)及び(III)
【化1】
(式中、R、R及びRは同一又は異なることが可能であり、水素及びC~C-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルの中から選択され、R及びRは、好ましくは両方ともがtert-ブチルではない)
の化合物である。
【0113】
特に好ましい実施形態では、Rはメチルであり、そしてR及びRはそれぞれ水素であるか、又はR、R及びRはそれぞれ水素である。
【0114】
別の好ましい環状有機カーボネートは、式(IV)のビニレンカーボネートである。
【0115】
【化2】
【0116】
溶媒(1種又は複数種)は、好ましくは、水を含まない状態で、すなわち、例えばカールフィッシャー滴定によって決定することができる1質量ppm~0.1質量%の範囲の含水量で使用される。
【0117】
電解質(3)は、少なくとも1つの電解質塩をさらに含む。好適な電解質塩は、特に、リチウム塩である。好適なリチウム塩の例は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiC(C2n+1SO、LiN(C2n+1SOなどのリチウムイミド(式中、nは1~20の範囲の整数である)、LiN(SOF)、LiSiF、LiSbF、LiAlCl及び一般式(C2n+1SOYLiの塩であり、式中、mは以下のように定義される:
Yが、酸素及び硫黄の中から選択される場合、t=1であり、
Yが、窒素及びリンの中から選択される場合、t=2であり、そして
Yが、炭素及びケイ素の中から選択される場合、t=3である。
【0118】
好ましい電解質塩は、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiPF、LiBF、LiClOの中から選択され、LiPF及びLiN(CFSOが特に好ましい。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、電解質(3)は少なくとも1種の難燃剤を含有する。有用な難燃剤は、トリアルキルホスフェート(前記アルキルは異なる又は同一である)、トリアリールホスフェート、アルキルジアルキルホスホネート及びハロゲン化トリアルキルホスフェートから選択してよい。好ましいのは、トリ-C~C-アルキルホスフェート(前記C~C-アルキルは異なる又は同一である)、トリベンジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、C~C-アルキルジ-C~C-アルキルホスホネート、及びフッ素化トリ-C~C-アルキルホスフェートである。
【0120】
好ましい実施形態では、電解質(3)は、トリメチルホスフェート、CH-P(O)(OCH、トリフェニルホスフェート、及びトリス-(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェートから選択される少なくとも1種の難燃剤を含む。
【0121】
電解質(3)は、電解質の合計量に基づいて、1~10質量%の難燃剤を含有してよい。
【0122】
本発明の一実施形態では、本発明による電池は、電極を機械的に分離する1つ以上のセパレータ(4)を含む。好適なセパレータ(4)は、金属リチウムに対して非反応性であるポリマーフィルム、特に多孔質ポリマーフィルムである。セパレータ(4)に特に適した材料は、ポリオレフィン、特にフィルム形成多孔質ポリエチレン及びフィルム形成多孔質ポリプロピレンである。
【0123】
ポリオレフィン、特にポリエチレン又はポリプロピレンから構成されるセパレータ(4)は、35~45%の範囲の多孔度を有することができる。好適な孔径は、例えば、30~500nmの範囲である。
【0124】
本発明の別の実施形態では、セパレータ(4)は、無機粒子で充填されたPET不織布の中から選択することができる。そのようなセパレータは、40~55%の範囲の多孔度を有することができる。好適な孔径は、例えば、80~750nmの範囲である。
【0125】
本発明による電池は、任意の形状、例えば直方体又は円筒形ディスクの形状を有することができるハウジングをさらに含むことができる。1つの変形例では、パウチとして構成された金属箔がハウジングとして使用される。
【0126】
本発明による電池は、特に高温(45℃以上、例えば最高で60℃まで)で、特に容量損失に関して非常に良好な放電及びサイクル挙動を提供する。
【0127】
本発明による電池は、互いに組み合わされた、例えば直列に接続又は並列に接続することができる、2つ以上の電気化学セルを含むことができる。直列接続が好ましい。本発明による電池では、電気化学セルの少なくとも1つは、本発明による電極を少なくとも1つ含有する。好ましくは、本発明による電気化学セルでは、電気化学セルの大部分が本発明による電極を含有する。さらにより好ましくは、本発明による電池では、全ての電気化学セルが本発明による電極を含有する。
【0128】
本発明はさらに、機器、特に移動機器における本発明による電池の使用を提供する。移動機器の例は、乗り物、例えば自動車、自転車、航空機、又はボート若しくは船などの水上乗り物である。モバイル機器の他の例は、手動で動くもの、例えばコンピュータ、特にラップトップ、電話又は、例えば建築部門の電動ハンドツール、特にドリル、電池駆動スクリュードライバ又は電池駆動ステープラである。
【実施例
【0129】
本発明を実施例によってさらに説明する。
【0130】
平均粒径(D50)は、動的光散乱(「DLS」)によって決定した。特に明記しない限り、パーセンテージは質量%である。
【0131】
工程(a.1):硫酸ニッケル水溶液(1.65モル/kg溶液)と25質量%のNaOH水溶液を合わせ、錯化剤としてアンモニアを使用して、球状のNi(OH)前駆体を得た。pH値は12.6に設定した。新たに沈殿したNi(OH)を水で洗浄し、ふるい分けして、120℃で12時間乾燥させた。続いて、新たに沈殿させたNi(OH)をアルミナるつぼに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/時間)の炉内で、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度を用いて500℃で3時間乾燥させて、前駆体p-CAM.1を得た。p-CAM.1はD50が6μmのNiOであった。
【0132】
比較例の正極活物質C-CAM.1の製造:
脱水した前駆体p-CAM.1をLiOH・HOとLi:Niのモル比1.01:1で混合し、アルミナるつぼに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/時間)3℃/分の加熱速度を用いて、350℃で4時間及び700℃で6時間加熱した。得られた材料を10℃/分の冷却速度で周囲温度まで冷却し、続いて30μmのメッシュサイズを使用してふるい分けし、D50が6μmの比較例材料C-CAM.1を得た。
【0133】
本発明の材料CAM.2の製造:
工程(b.1.2):100gの前駆体p-CAM.1をビーカーに入れた。0.98gのAl(NO九水和物及び0.32gのホウ酸HBOを35mlの脱イオン水に溶解した。得られた溶液を、前駆体が液体に浸されるまで、滴下漏斗を介して周囲温度で5分間にわたって滴下し、ビーカーに加えた。前駆体p-CAM.1の上に目に見える液膜は形成されなかった。得られたスラリーをビーカー中で30分間にわたり撹拌した。Al、B及びNiの個々の量は、0.991:0.002のモルNi:Al比及び0.991:0.004のモルNi:B比を確保するように設定した。
【0134】
工程(c.1.2):続いて、混合物を真空下120℃で6時間加熱して水を除去し、p-CAM.2.1を得た。
【0135】
工程(b.2.2):工程(c.1.2)から得られたp-CAM.2.1をビーカーに入れた。1.24gのニオブ(V)エトキシドを28mlの乾燥エタノールに溶解した。得られた溶液を、前駆体が液体に浸されるまで、滴下漏斗を介して周囲温度で5分間にわたって滴下し、ビーカーに加えた。前駆体p-CAM.2.1の上に目に見える液膜は形成されなかった。得られたスラリーをビーカー中で30分間にわたり撹拌した。工程(b.2.2)を窒素雰囲気下で実施した。Nb及びNiの個々の量は、0.991:0.003のモルNi:Nb比を確保するように設定した。
【0136】
工程(c.2.2):続いて、スラリーを真空下120℃で6時間加熱してエタノールを除去し、p-CAM.2.2を得た。
【0137】
工程(d.1.2)及び(e.1.2):前駆体p-CAM.2.2を、LiOH・HOと、Li:(Ni+Nb+B+Al)のモル比1.01:1で混合し、アルミナるつぼに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/時間)、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度を用いて、350℃で4時間及び700℃で6時間加熱した。その後、そのようにして得られた材料を、30μmのメッシュサイズを使用してふるい分けし、本発明の正極活物質CAM.2を得た。
【0138】
D50:6μm。
【0139】
本発明の材料CAM.3の製造:
工程(b.1.3):100gの前駆体p-CAM.1をビーカーに入れた。1.80gのGa(NOニトレート及び0.52gのヘプタモリブデン酸アンモニウム、(NHMo24を、35mlの脱イオン水に溶解した。得られた溶液を、前駆体が液体に浸されるまで、滴下漏斗を介して周囲温度で5分間にわたって滴下し、ビーカーに加えた。前駆体p-CAM.1の上に目に見える液膜は形成されなかった。得られたスラリーをビーカー中で30分間にわたり撹拌した。Ga、Mo及びNiの個々の量は、0.991:0.002のモルNi:Mo比及び0.991:0.004のモルNi:Ga比を確保するように設定した。
【0140】
工程(c.1.3):続いて、スラリーを真空下120℃で6時間加熱して水を除去し、p-CAM.3.1を得た。
【0141】
工程(b.2.3):工程(c.1.3)から得られたp-CAM.3.1をビーカーに入れた。1.60gのタンタル(V)エトキシドを28mlの乾燥エタノールに溶解した。得られた溶液を、前駆体が液体に浸されるまで、滴下漏斗を介して周囲温度で5分間にわたって滴下し、ビーカーに加えた。前駆体p-CAM.3.1の上に目に見える液膜は形成されなかった。得られたスラリーをビーカー中で30分間にわたり撹拌した。工程(b.2.3)を窒素雰囲気下で実施した。Ta及びNiの個々の量は、0.991:0.003のモルNi:Ta比を確保するように設定した。
【0142】
工程(c.2.3):続いて、スラリーを真空下120℃で6時間加熱してエタノールを除去し、含浸p-CAM.3.2を得た。
【0143】
工程(d.3)及び(e.3):前駆体p-CAM.3.2を、LiOH・HOと、Li:(Ni+Ta+Ga+Mo)のモル比1.01:1で混合し、アルミナるつぼに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/時間)、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度を用いて、350℃で4時間及び700℃で6時間加熱した。その後、そのようにして得られた材料を、30μmのメッシュサイズを使用してふるい分けし、6μmのD50を有する本発明のCAM.3を得た。
【0144】
本発明の材料CAM.4の製造:
工程(b.1.4)及び工程(c.1.4):0.68gの硝酸マグネシウム及び3.22gの炭酸ジルコニウム(IV)アンモニウムを100mlの脱イオン水に溶解した。溶液を滴下漏斗に入れ、前駆体が液体に浸されるまで、ただし前駆体p-CAM.1の上に目に見える液膜が形成される前にビーカーに入れた前駆体p-CAM.1の量100gに、周囲温度で5分間にわたって滴下して加えた。この手順中、前駆体p-CAM.1をビーカー中で30分間にわたり撹拌した。続いて、スラリーを真空下120℃で6時間加熱することによって水を除去した。前駆体が再び液体に完全に浸されるまで、ただし目に見える液膜が形成される前に、マグネシウム及びジルコニウムの残留溶液を上記と同様の条件下で乾燥pCAMに加えた。その後、混合物を再び真空下120℃で6時間加熱することによって水を除去した。ジルコニウム及びマグネシウムのすべての溶液が消費されるまで、この手順を繰り返した。120℃で6時間の最終乾燥後、p-CAM.4.1を得た。MgとZrとNiの各量は、Ni:Mgのモル比0.991:0.002、及びNi:Zrのモル比0.991:0.004を確保するように設定した。
【0145】
工程(b.2.4):工程(c.1.4)から得られたp-CAM.4.1をビーカーに入れた。1.12gのチタン(IV)-イソプロポキシドを28mlの乾燥エタノールに溶解した。得られた溶液を、前駆体が液体に浸されるまで、滴下漏斗を介して周囲温度で5分間にわたって滴下し、ビーカーに加えた。前駆体p-CAM.4.1の上に目に見える液膜は形成されなかった。得られたスラリーをビーカー中で30分間にわたり撹拌した。工程(b.2.4)を窒素雰囲気下で完全に実施した。Ti及びNiの個々の量は、0.991:0.003のモルNi:Ti比を確保するように設定した。
【0146】
工程(c.2.4):続いて、混合物を真空下120℃で6時間加熱することによってエタノールを除去し、含浸p-CAM.4.2を得た。
【0147】
工程(d.4)及び(e.4):前駆体p-CAM.4.2を、LiOH・HOと、Li:(Ni+Mg+Ti+Zr)のモル比1.01:1で混合し、アルミナるつぼに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/時間)、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度を用いて、350℃で4時間及び700℃で6時間加熱した。その後、そのようにして得られた材料を、30μmのメッシュサイズを使用してふるい分けし、6μmのD50を有する本発明のCAM.4を得た。
【0148】
比較例の正極活物質C-CAM.5の製造:
工程C-(b.1.5):100gの前駆体p-CAM.1をビーカーに入れた。6.54gの硝酸コバルト(II)を35mlの脱イオン水に溶解した。得られた溶液を、前駆体が液体に浸されるまで、滴下漏斗を介して周囲温度で5分間にわたって滴下し、ビーカーに加えた。前駆体の上に目に見える液膜は形成されなかった。得られたスラリーをビーカー中で30分間にわたり撹拌した。CoとNiの各量は、Ni:Coのモル比0.98:0.02を確保するように設定した。
【0149】
工程C-(c.1.5):続いて、混合物を真空下120℃で6時間加熱して水を除去し、比較例の前駆体p-CAM.5を得た。
【0150】
工程C-(d.1.5)及び(e.1.5):比較例の前駆体C-p-CAM.5を、LiOH・HOと、Li:(Ni+Co)のモル比1.01:1で混合し、アルミナるつぼに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/時間)、3℃/分の加熱速度及び10℃/分の冷却速度を用いて、350℃で4時間及び700℃で6時間加熱した。その後、そのようにして得られた材料を、30μmのメッシュサイズを使用してふるい分けし、6μmのD50を有する比較例の正極活物質C-CAM.5を得た。
【0151】
電極の製造:電極は、94%のCAM、3%のカーボンブラック(Super C65)及び3%のバインダー(ポリフッ化ビニリデン、Solef5130)を含有していた。スラリーをN-メチル-2-ピロリドン中で混合し、ドクターブレードによってアルミニウム箔上にキャストした。電極を真空中105℃で6時間乾燥させた後、円形電極を打ち抜き、秤量し、真空下120℃で12時間乾燥させた後、Ar充填グローブボックスに入れた。
【0152】
ハーフセル電気化学測定:コイン型の電気化学セルをアルゴン充填グローブボックス内で組み立てた。直径14mmの正(装填量8.0±0.5mg cm-2)電極を、ガラス繊維セパレータ(Whatman GF/D)によって厚さ0.58のLi箔から分離した。質量で3:7のエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)中の95μlの量の1M LiPFを電解質として使用した。特定の放電工程で初期放電容量の70%に達するまで以下のCレートを適用することによって、室温で3.1V~4.3Vの間のMaccor4000電池サイクラーで、セルを定電流サイクルした:
【0153】
【表1】
【0154】
列挙したCレートで充電した後、第1の充電工程を除くすべての充電工程は、1時間の定電圧工程(CV)によって、又は電流が0.02Cに達するまでに終了した。
【0155】
サイクル中、1分毎又は少なくとも5mVの電圧変化が生じた後にデータポイントを収集した。材料ごとに4つの電気化学セルを組み立て、4つのセルを平均することによって、対応するサイクルプロファイル、容量及び抵抗を得た。
【0156】
抵抗測定(25℃で25サイクルごとに実施)の間、セルを0.2Cで充電して、以前の放電容量に対して50%の充電状態にした。セルを平衡化するために、30分間の開回路工程が続いた。最後に、2.5Cの放電電流を30秒間印加して抵抗を測定した。電流パルスの終了時に、セルを再び開回路で30分間平衡状態にし、さらに0.2Cで3.0Vまで放電した。
【0157】
抵抗を計算するために、2.5Cパルス電流を印加する前の電圧、V0s、及び2.5Cパルス電流の30秒後の電圧、V30s、並びに2.5C電流値(Aのj)を取得した。抵抗は、式3(V:電圧、j:2.5Cパルス電流)により計算した。
【0158】
R=(V0s-V30s)/j (式3)
【0159】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】