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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】眼科装置及び断層画像生成装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/10 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021571487
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2020020945
(87)【国際公開番号】W WO2020241698
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2019102476
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(71)【出願人】
【識別番号】509012991
【氏名又は名称】オプトス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ゴーマン, アリステア
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA03
4C316AA09
4C316AB03
4C316AB12
4C316FC07
4C316FY01
4C316FY05
(57)【要約】
【課題】1つの装置で被検眼の後眼部と前眼部との断層画像を取得する。
【解決手段】眼科装置は、光源から射出された光を走査するための走査部材と、前記走査部材側から順に、第1レンズ群と、第2レンズ群とを備える対物レンズであって、前記第2レンズ群は正のパワーを有するレンズ群である対物レンズと、前記対物レンズの前記第2レンズ群と、前記走査部材との間の光路中に挿脱可能な光学素子と、を備え、前記光学素子が前記光路中に挿入されていない場合、前記対物レンズは第1観察光学系を構成し、前記走査部材により走査される光は被検眼の第1領域に集光され、前記光学素子が前記光路中に挿入された場合、前記対物レンズおよび前記光学素子は第2観察光学系を構成し、前記走査部材により走査される光は被検眼の前記第1領域とは異なる第2領域に集光される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出された光を走査するための走査部材と、
前記走査部材側から順に、第1レンズ群と、第2レンズ群とを備える対物レンズであって、前記第2レンズ群は正のパワーを有するレンズ群である対物レンズと、
前記対物レンズの前記第2レンズ群と、前記走査部材との間の光路中に挿脱可能な光学素子と、
を備え、
前記光学素子が前記光路中に挿入されていない場合、前記対物レンズは第1観察光学系を構成し、前記走査部材により走査される光は被検眼の第1領域に集光され、
前記光学素子が前記光路中に挿入された場合、前記対物レンズおよび前記光学素子は第2観察光学系を構成し、前記走査部材により走査される光は被検眼の前記第1領域とは異なる第2領域に集光される、眼科装置。
【請求項2】
前記対物レンズの第1レンズ群は正のパワーを有するレンズ群であり、
前記第1観察光学系はアフォーカル系の眼底観察光学系を構成し、前記第1領域は被検眼の後眼部であり、
前記第2観察光学系は前眼部観察光学系を構成し、前記第2領域は前記被検眼の前眼部である、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記光学素子は、前記第2レンズ群と前記第1レンズ群との間に、挿脱可能である、
請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記光学素子は、前記走査部材と前記第1レンズ群との間に挿脱可能である、
請求項1又は請求項2に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記光学素子は、正のパワーを有するレンズまたは負のパワーを有するレンズである、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記対物レンズの第1レンズ群は負のパワーを有するレンズ群であり、
前記第1観察光学系は前眼部観察光学系を構成し、前記第1領域は前記被検眼の前眼部であり、
前記第2観察光学系はアフォーカル系の眼底観察光学系を構成し、前記第2領域は被検眼の後眼部である、
請求項1に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記光学素子は正のパワーを有するレンズであり、前記第2レンズ群と前記第1レンズ群との間に、挿脱可能である、
請求項6に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記光源から射出された光の光軸方向の集光位置を調整するフォーカスレンズ
を更に備える請求項1から請求項7の何れか1項に記載の眼科装置。
【請求項9】
光干渉断層撮影(OCT:Optical Coherence Tomography)のための光を発生する光源と、
前記光源からの光を測定光と参照光とに分割させる分割部と、
前記測定光を走査するための走査部材と、
前記走査部材側から順に、第1レンズ群と、第2レンズ群とを備える対物レンズであって、前記第2レンズ群は正のパワーを有するレンズ群である対物レンズと、
前記対物レンズの前記第2レンズ群と、前記走査部材との間の光路中に挿脱可能な光学素子と、
被検眼からの戻り光と、前記参照光との合成により得られる干渉光を検出する干渉光検出器と、
前記干渉光検出器により検出された前記干渉光に基づいて、前記被検眼の断層画像を生成する画像生成部と、
を備え、
前記光学素子が前記光路中に挿入されていない場合、前記対物レンズは第1観察光学系を構成し、前記走査部材により走査される光は前記被検眼の第1領域に集光される、
前記光学素子が前記光路中に挿入された場合、前記対物レンズおよび前記光学素子は第2観察光学系を構成し、前記走査部材により走査される光は前記被検眼の第2領域に集光される、
光断層画像生成装置。
【請求項10】
走査型レーザ検眼鏡(SLO:Scanning Laser Ophthalmoscope)のためのレーザ光を発生するレーザ光源と、
前記被検眼の眼底で反射されたレーザ光を検出するレーザ光検出器と、
をさらに備え、
前記レーザ光は、前記対物レンズを経由して前記被検眼の眼底に照射される、
請求項9に記載の光断層画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置及び断層画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼底等の後眼部の断層画像を取得する光干渉断層撮影装置において、対物レンズと、被検眼との間にレンズアタッチメントを配置して、角膜等の前眼部の断層画像を取得することが知られている(特許文献1)。この光干渉断層撮影装置によれば、レンズアタッチメントを用いることで、1つの装置で被検眼の後眼部及び前眼部の各々の断層画像を取得することができる。
【0003】
上記従来の光干渉断層撮影装置では、レンズアタッチメントが被検眼と対物レンズとの間に配置されるため、後眼部観察から前眼部観察へ切替える場合、被検者と撮影装置とのアラインメントをその都度、再調整しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/106696号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の技術の第1態様の眼科装置は、光源から射出された光を走査するための走査部材と、前記走査部材側から順に、第1レンズ群と、第2レンズ群とを備える対物レンズであって、前記第2レンズ群は正のパワーを有するレンズ群である対物レンズと、前記対物レンズの前記第2レンズ群と、前記走査部材との間の光路中に挿脱可能な光学素子と、を備え、前記光学素子が前記光路中に挿入されていない場合、前記対物レンズは第1観察光学系を構成し、前記走査部材により走査される光は被検眼の第1領域に集光され、前記光学素子が前記光路中に挿入された場合、前記対物レンズおよび前記光学素子は第2観察光学系を構成し、前記走査部材により走査される光は被検眼の前記第1領域とは異なる第2領域に集光される。
【0006】
本開示の技術の第2態様の光断層画像生成装置は、光干渉断層撮影(OCT:Optical Coherence Tomography)のための光を発生する光源と、前記光源からの光を測定光と参照光とに分割させる分割部と、前記測定光を走査するための走査部材と、前記走査部材側から順に、第1レンズ群と、第2レンズ群とを備える対物レンズであって、前記第2レンズ群は正のパワーを有するレンズ群である対物レンズと、前記対物レンズの前記第2レンズ群と、前記走査部材との間の光路中に挿脱可能な光学素子と、被検眼からの戻り光と、前記参照光との合成により得られる干渉光を検出する干渉光検出器と、前記干渉光検出器により検出された前記干渉光に基づいて、前記被検眼の断層画像を生成する画像生成部と、を備え、前記光学素子が前記光路中に挿入されていない場合、前記対物レンズは第1観察光学系を構成し、前記走査部材により走査される光は前記被検眼の第1領域に集光される、前記光学素子が前記光路中に挿入された場合、前記対物レンズおよび前記光学素子は第2観察光学系を構成し、前記走査部材により走査される光は前記被検眼の第2領域に集光される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の眼科装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態の撮影光学系の概略構成図である。
図3】前眼部観察用の光学モジュールが正の第1レンズ群と正の第2レンズ群との間の光路中に挿入されていない場合の撮影光学系の走査部と被検眼との間の部分の概略構成図である。
図4】前眼部観察用の光学モジュールが正の第1レンズ群と正の第2レンズ群との間の光路中に挿入されている場合の撮影光学系の走査部と被検眼との間の部分の概略構成図である。
図5】第1実施形態の撮影光学系の基本構成を示す薄肉系の光学構成図であり、2つの正のパワーを有するレンズ群の間の光路中に負レンズが挿入されていない場合の構成図(上部)と、挿入されている場合の構成図(下部)である。
図6】第1実施形態の変形例の撮影光学系の基本構成を示す薄肉系光学構成図である。
図7】第2実施形態の撮影光学系の基本構成を示す薄肉系光学構成図である。
図8】第2実施形態の撮影光学系において光を被検眼の前眼部において、より集光させた様子を示す薄肉系の光学構成図である。
図9】第2実施形態の更なる変形例の撮影光学系の基本構成を示す薄肉系光学構成図である。
図10】第3実施形態の撮影光学系の基本構成を示す薄肉系の光学構成図であり、負の第1レンズ群と正の第2レンズ群とにより前眼部観察が可能となる状態を示す薄肉系光学構成図(上図)と、負の第1レンズ群と正の第2レンズ群との間の光路中に、正のパワーを有するレンズの切換レンズが挿入されて後眼部撮影が可能となる状態を示す薄肉系光学構成図(下図)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
[第1実施形態]
【0010】
以下、本発明の第1実施形態に係る眼科装置110について図面を参照して説明する。図1には、眼科装置110の概略構成が示されている。
【0011】
説明の便宜上、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope)を「SLO」と称する。また、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography)を「OCT」と称する。
【0012】
なお、眼科装置110が水平面に設置された場合の水平方向を「X方向」、水平面に対する垂直方向を「Y方向」、撮影光学系116Aの光軸方向を「Z方向」とする。このZ方向の光軸上に被検眼の瞳孔中心が位置するように装置が被検眼に対して配置される。そして、X方向、Y方向、およびZ方向は互いに垂直である。
【0013】
眼科装置110は、撮影装置14および制御装置16を含む。撮影装置14は、被検眼12の眼底12Aの画像を取得するSLOユニット18と、被検眼12の断層画像を取得するOCTユニット20とを備えている。以下、SLOユニット18により取得されたSLOデータに基づいて生成された眼底画像をSLO画像と称する。また、OCTユニット20により取得されたOCTデータに基づいて生成された断層画像をOCT画像と称する。なお、SLO画像は、二次元眼底画像と言及されることもある。また、OCT画像は、被検眼12の撮影部位に応じて、眼底断層画像、前眼部断層画像と言及されることもある。
眼科装置110は、本開示の技術の「光断層画像生成装置」の一例である。
【0014】
制御装置16は、CPU(Central Processing Unit(中央処理装置))16A、RAM(Random Access Memory)16B、ROM(Read-Only memory)16C、および入出力(I/O)ポート16Dを有するコンピュータを備えている。
【0015】
制御装置16は、I/Oポート16Dを介してCPU16Aに接続された入力/表示装置16Eを備えている。入力/表示装置16Eは、被検眼12の画像を表示したり、ユーザから各種指示を受け付けたりするグラフィックユーザインターフェースを有する。入力/表示装置16Eは、タッチパネル・ディスプレイを用いることができる。
【0016】
また、制御装置16は、I/Oポート16Dに接続された画像処理装置17を備えている。画像処理装置17は、撮影装置14によって得られたデータに基づき被検眼12の画像を生成する。
画像処理装置17は、本開示の技術の「生成部」の一例である。
【0017】
上記のように、図1では、眼科装置110の制御装置16が入力/表示装置16Eを備えているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、眼科装置110の制御装置16は入力/表示装置16Eを備えず、眼科装置110とは物理的に独立した別個の入力/表示装置を備えるようにしてもよい。この場合、当該表示装置は、制御装置16のCPU16Aの制御下で動作する画像処理プロセッサユニットを備える。画像処理プロセッサユニットが、CPU16Aが出力指示した画像信号に基づいて、SLO画像等を表示するようにしてもよい。
【0018】
撮影装置14は、制御装置16の制御下で作動する。撮影装置14は、SLOユニット18、撮影光学系116A、およびOCTユニット20を含む。撮影光学系116Aは、CPU16Aの制御下で、撮影光学系駆動部116MによりX、Y、Z方向に移動される。撮影装置14と被検眼12とのアラインメント(位置合わせ)は、例えば、撮影装置14のみばかりではなく、眼科装置110全体をX、Y、Z方向に移動させることにより、行われてもよい。
【0019】
SLOシステムは、図1に示す制御装置16、SLOユニット18、および撮影光学系116Aによって実現される。
【0020】
SLOユニット18は、複数の光源を備えている。例えば、図1に示されるように、SLOユニット18は、B光(青色光)の光源40、G光(緑色光)の光源42、R光(赤色光)の光源44、およびIR光(赤外線(例えば、近赤外光))の光源46を備える。各光源40、42、44、46から出射された光は、各光学部材48、50、52、54、56を介して同一光路に指向される。光学部材48、56は、ミラーであり、光学部材50、52、54は、ビームスプリッタ―である。B光は、光学部材48、50、54を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。G光は、光学部材50、54を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。R光は、光学部材52、54を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。IR光は、光学部材56、52を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。なお、光源40、42、44、46としては、LED光源や、レーザ光源を用いることができる。なお、以下には、レーザ光源を用いた例を説明する。光学部材48、56として、全反射ミラーを用いることができる。また、光学部材50、52、54として、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等を用いることができる。
光源40、42、44、46は、本開示の技術の「レーザ光源」の一例である。
【0021】
SLOユニット18は、G光、R光、B光およびIR光をそれぞれ個別に発する発光モードや、それらすべてを同時にもしくは幾つかを同時に発する発光モードなど、各種発光モードを切り替え可能に構成されている。図1に示す例では、B光(青色光)の光源40、G光の光源42、R光の光源44、およびIR光の光源46の4つの光源を備えるが、本開示の技術は、これに限定されない。例えば、SLOユニット18は、更に、白色光の光源を更に備えていてもよい。この場合、上記各種発光モードに加えて、白色光のみを発する発光モード等を設定してもよい。
【0022】
SLOユニット18から撮影光学系116Aに入射されたレーザ光は、後述する走査部(120、142)によってX方向およびY方向に走査される。走査光は瞳孔27を経由して、被検眼12の後眼部(例えば、眼底12A)に照射される。眼底12Aにより反射された反射光は、撮影光学系116Aを経由してSLOユニット18へ入射される。
走査部(120、142)は、本開示の技術の「走査部材」の一例である。
【0023】
眼底12Aで反射された反射光は、SLOユニット18に設けられた光検出素子70、72、74、76で検出される。本実施形態では、複数の光源、すなわち、B光源40、G光源42、R光源44およびIR光源46に対応させて、SLOユニット18は、B光検出素子70、G光検出素子72、R光検出素子74およびIR光検出素子76を備える。B光検出素子70は、ビームスプリッタ64で反射されたB光を検出する。G光検出素子72は、ビームスプリッタ64を透過し、ビームスプリッタ58で反射されたG光を検出する。R光検出素子74は、ビームスプリッタ64、58を透過し、ビームスプリッタ60で反射されたR光を検出する。IR光検出素子76は、ビームスプリッタ64、58、60を透過し、ビームスプリッタ62で反射されたG光を検出する。光検出素子70、72、74、76として、例えば、APD(avalanche photodiode:アバランシェ・フォトダイオード)が挙げられる。
光検出素子70、72、74、76は、本開示の技術の「レーザ光検出器」の一例である。
【0024】
画像処理装置17は、CPU16Aの制御のもと、B光検出素子70、G光検出素子72、R光検出素子74、およびIR光検出素子76のそれぞれで検出された信号を用いて、各色に対応するSLO画像を生成する。各色に対応するSLO画像には、B光検出素子70で検出された信号を用いて生成されたB-SLO画像、G光検出素子72で検出された信号を用いて生成されたG-SLO画像、R光検出素子74で検出された信号を用いて生成されたR-SLO画像、及びIR光検出素子76で検出された信号を用いて生成されたIR-SLO画像である。また、B光源40、G光源42、R光源44が同時に発光する発光モードの場合、R光検出素子74、G光検出素子72、及びB光検出素子70で検出されたそれぞれの信号を用いて生成されたB-SLO画像、G-SLO画像およびR-SLO画像から、RGB-SLO画像を合成してもよい。また、G光源42、R光源44が同時に発光する発光モードの場合、R光検出素子74及びG光検出素子72で検出されたそれぞれの信号を用いて生成されたG-SLO画像およびR-SLO画像から、RG-SLO画像を合成してもよい。第1実施形態では、SLO画像としてRG-SLO画像が用いられるが、これに限定されず、他のSLO画像を用いることができる。
ビームスプリッタ58、60、62、64として、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等を用いることができる。
【0025】
OCTシステムは、図1に示す制御装置16、OCTユニット20、および撮影光学系116Aによって実現される三次元画像取得装置である。OCTユニット20は、光源20A、センサ(検出素子)20B、第1の光カプラ20C、参照光学系20D、コリメートレンズ20E、および第2の光カプラ20Fを含む。
第1の光カプラ20Cは、本開示の技術の「分割部」の一例である。センサ(検出素子)20Bは、本開示の技術の「干渉光検出器」の一例である。
【0026】
光源20Aは、光干渉断層撮影のための光を発生する。光源20Aとしては、例えば、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode;SLD)を用いることができる。光源20Aは、広いスペクトル幅をもつ広帯域光源の低干渉性の光を発生する。光源20Aから射出された光は、第1の光カプラ20Cで分割される。分割された一方の光は、測定光として、コリメートレンズ20Eで平行光にされた後、撮影光学系116Aに入射される。測定光は、後述する走査部(148、142)によってX方向およびY方向に走査される。走査光は、被検眼の前眼部や、瞳孔27を経由して後眼部に照射される。前眼部又は後眼部で反射された測定光は、撮影光学系116Aを経由してOCTユニット20へ入射され、コリメートレンズ20Eおよび第1の光カプラ20Cを介して、第2の光カプラ20Fに入射する。なお、本実施形態では、光源20AとしてSLDを用いるSD-OCTが例示されているが、これに限定されず、SLDに替えて波長掃引光源を用いるSS-OCTが採用されてもよい。
【0027】
光源20Aから射出され、第1の光カプラ20Cで分岐された他方の光は、参照光として、参照光学系20Dへ入射され、参照光学系20Dを経由して、第2の光カプラ20Fに入射する。
【0028】
被検眼12で反射および散乱された測定光(戻り光)と、参照光とは、第2の光カプラ20Fで合成されて干渉光が生成される。干渉光はセンサ20Bで検出される。画像処理装置17は、センサ20Bからの検出信号(OCTデータ)に基づいて、被検眼12の断層画像を生成する。
【0029】
第1実施形態では、OCTシステムは、被検眼12の前眼部又は後眼部の断層画像を生成する。
【0030】
被検眼12の前眼部は、前眼セグメントとして、例えば、角膜、虹彩、隅角、水晶体、毛様体、および硝子体の一部を含む部分である。被検眼12の後眼部は、後眼セグメントとして、例えば、硝子体の残りの一部、網膜、脈絡膜、及び強膜を含む部分である。なお、前眼部に属する硝子体は、硝子体の内、水晶体の最も眼球中心に近い点を通るX-Y平面を境界として、角膜側の部分であり、後眼部に属する硝子体は、硝子体の内、前眼部に属する硝子体以外の部分である。
OCTシステムは、被検眼12の前眼部が撮影対象部位である場合、例えば、角膜の断層画像を生成する。また、被検眼12の後眼部が撮影対象部位である場合、OCTシステムは、例えば、網膜の断層画像を生成する。
【0031】
後眼部及び前眼部のそれぞれは、本開示の技術の「第1領域」及び「第2領域」の一例である。
【0032】
図2には、撮影光学系116Aの概略構成が示されている。撮影光学系116Aは、被検眼12側から順に配置された対物レンズ130、ビームスプリッタ178、水平走査部142、リレーレンズ装置140、ビームスプリッタ147、垂直走査部120、148、フォーカス調整装置150、及びコリメータレンズ156を備えている。
ビームスプリッタ178、147として、例えば、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等を用いることができる。
【0033】
水平走査部142は、リレーレンズ装置140を介して入射したSLOのレーザ光およびOCTの測定光を水平方向に走査する光学スキャナである。本実施形態では、水平走査部142は、SLO光学系およびOCT光学系とで共用されているが、この限りでない。SLO光学系およびOCT光学系のそれぞれに水平走査部を設けてもよい。
【0034】
コリメータレンズ156は、OCTユニット20から出射した光が進むファイバの端部158から出射される測定光を平行光にする。
【0035】
フォーカス調整装置150は、複数のレンズ152、154を備える。被検眼12における撮影部位に応じて、複数のレンズ152、154それぞれを、適宜光軸方向に移動させることにより、被検眼12における測定光のフォーカス位置を調整する。なお、図示しないが、フォーカス検出装置を備える場合には、焦点検出の状態に応じてフォーカス調整装置にてレンズ152、154を駆動して、自動的に焦点合わせをおこなうようにして、オートフォーカス装置を実現することが可能である。
【0036】
垂直走査部148は、フォーカス調整装置150を介して入射した測定光を垂直方向に走査する光学スキャナである。
【0037】
垂直走査部120は、SLOユニット18から入射したレーザ光を垂直方向に走査する光学スキャナである。
【0038】
リレーレンズ装置140は、複数の正のパワーを有するレンズ144、146を備える。複数のレンズ144、146により、垂直走査部148、120の位置と水平走査部142の位置とが共役になるように、リレーレンズ装置140が構成されている。より具体的には、両走査部の角度走査の中心位置が共役になるように、リレーレンズ装置140が構成されている。
【0039】
ビームスプリッタ147は、リレーレンズ装置140と垂直走査部148との間に、配置されている。ビームスプリッタ147は、SLO光学系とOCT光学系とを合成する光学部材であって、SLOユニット18から出射されたSLO光をリレーレンズ装置140に向けて反射するとともに、OCTユニット20から出射された測定光をリレーレンズ装置140に向けて透過する。OCTユニット20から出射された測定光は、垂直走査部148および水平走査部142によって二次元走査される。また、SLOユニット18から出射された光は、SLO光学系を構成する垂直走査部120および水平走査部142により二次元走査される。二次元走査されたOCT測定光およびSLOレーザ光はそれぞれ、共通光学系を構成する対物レンズ130を介して被検眼12へ入射される。被検眼12で反射されたSLOレーザ光は、対物レンズ130、水平走査部142、リレーレンズ装置140、ビームスプリッタ147および垂直走査部120を経由して、SLOユニット18に入射される。また、被検眼12を経由したOCT測定光は、対物レンズ130、水平走査部142、リレーレンズ装置140、ビームスプリッタ147、垂直走査部148、フォーカス調整装置150、およびコリメータレンズ156を経由して、OCTユニット20へ入射される。
【0040】
水平走査部142及び垂直走査部120、148としては、例えば、レゾナントスキャナ、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、回転ミラー、ダボプリズム、ダブルダボプリズム、ローテーションプリズム、MEMSミラースキャナー、音響光学素子(AOM)等が好適に用いられる。本実施形態では、垂直走査部148としてガルバノミラーが用いられ、また、垂直走査部120としてポリゴンミラーが用いられている。なお、ポリゴンミラーや、ガルバノミラーなどの光学スキャナに替えて、MEMSミラースキャナーなどの二次元光学スキャナを用いる場合には、入射光をその反射素子で二次元的に角度走査することが可能であるため、リレーレンズ装置140を無くしてもよい。
【0041】
対物レンズ130は、水平走査部142側から順に、第1レンズ群134と第2レンズ群132とを備え、少なくとも第2レンズ群132は全体として正のパワーを有する正レンズ群である。第1実施形態では、第1レンズ群134も全体として正のパワーを有する正レンズ群である。第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々は、少なくとも1つの正レンズを備える。第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々が複数のレンズを備える場合、第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々は全体として正のパワーを有すれば、負レンズを含んでいてもよい。
【0042】
対物レンズ130を構成する第1レンズ群134と第2レンズ群132とは、対物レンズにおけるレンズ面間の光軸上での最大空気間隔によって隔てられている。なお、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の位置に、パワーを有しないガラス板があったとしても、当該ガラス板は、第1レンズ群134及び第2レンズ群132の何れかに属するレンズとしては考慮されず、第1レンズ群134と第2レンズ群132とは、最大空気間隔によって隔てられるとされる。
【0043】
撮影光学系116Aは、対物レンズ130の光路中に挿脱可能な光学モジュールとして、前眼部観察用の光学モジュール136と、光学モジュール136の挿脱状態を検出するセンサ130Sとを備えている。第1実施形態では、後に詳述する通り、光学モジュール136が対物レンズ130の光路中に配置されない場合、観察光学系として、後眼部観察光学系300(図3も参照)が構成され、眼科装置110はそれにより被検眼12の後眼部の画像を取得する。一方、光学モジュール136が対物レンズ130の光路中に挿入された場合、観察光学系として、前眼部観察光学系400(図4も参照)が構成され、眼科装置110はそれにより被検眼12の前眼部の画像を取得する。第1実施形態では、後に詳述する通り、光学モジュール136は、オペレータ(例えば、眼科医)によりマニュアルまたは自動で観察光学系の光路に挿脱される。光学モジュール136は、図示しないレール上を移動し、あるいは、ターレットの回転移動により、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の光路中に挿入され、または光路中から抜去される。前眼部観察用の光学モジュール136の挿脱状態を検知するセンサ130Sは、光学モジュール136が撮影光学系に挿入されたこと、または、そこから取り外されたこと、のいずれかを検出するセンサであってもよいし、両方を検出できるセンサであってもよい。
後眼部観察光学系300は、本開示の技術の「第1観察光学系」及び「眼底観察光学系」の一例である。前眼部観察光学系400は、本開示の技術の「第2観察光学系」及び「前眼部観察光学系」の一例である。
【0044】
以下、本実施形態において、前眼部観察用の光学モジュール136が撮影光学系の光路中に配置されていない状態で被検眼12を観察する場合を、後眼部観察モード(第1モード)と称する。また、光学モジュール136が撮影光学系の光路中に配置された状態で被検眼12を観察する場合を、前眼部観察モード(第2モード)と称する。
【0045】
撮影光学系116Aは、図2に示されるように、前眼部観察用の光学モジュール136と異なる光学モジュール138をさらに備える。光学モジュール138は、主に、後眼部観察モードで使用されるため、以下、後眼部観察用の光学モジュール138と称する。後眼部観察用の光学モジュール138は、図示しない固視灯、カメラ、及び照明装置を備える光学モジュール本体138Hおよびビームスプリッタ178を備えている。ビームスプリッタ178は、対物レンズ130と水平走査部142との間、より具体的には、第1レンズ群134と水平走査部142との間の光路中に配置される。
【0046】
次に、図3及び図4を参照して、後眼部観察モードおよび前眼部観察モードにおける各々の撮影光学系116Aの構成を説明する。図3は、後眼部観察モードにおける後眼部観察光学系300を示している。前眼部観察用の光学モジュール136は、対物レンズ130の光路から抜去されている。図4は、前眼部観察モードにおける前眼部観察光学系400を示している。前眼部観察用の光学モジュール136は、対物レンズ130の光路、具体的には水平走査部142側の第1レンズ群134と被検眼側の第2レンズ群132との間の光路中に挿入されている。後眼部観察光学系300(図3)において、水平走査部142に代表される走査面から供給される平行光束の3つの角度の平行光束が、2つの正レンズ群(第1レンズ群134及び第2レンズ群132)を通して被検眼12の眼底12Aで集光される光線の様子が示されている。また、前眼部観察光学系400(図4)において、水平走査部142から共有される同じく3つの角度の平行光束が2つの正レンズ群(第1レンズ群134及び第2レンズ群132)と、その間に挿入された光学素子(詳細には後述する負レンズ162)とにより、被検眼12の角膜に集光される光線が示されている。
【0047】
後眼部観察光学系300では、図3及び図2に示されるように、垂直走査部120、148及び水平走査部142は、被検眼12の瞳孔位置Ppに共役となるように、配置されている。SLO光学系において、垂直走査部120および水平走査部142により走査されるSLOレーザ光は、対物レンズ130を経由して、被検眼12の瞳孔位置Ppを中心として2次元的に角度走査される。その結果、SLOレーザ光の集光点が、眼底12Aにおいて2次元走査される。また、OCT光学系においても同様に、垂直走査部148および水平走査部142により走査される測定光は、対物レンズ130を経由して、被検眼12の瞳孔位置Ppを中心として二次元的に角度走査される。その結果、測定光の集光点が、眼底12Aにおいて二次元走査される。後眼部観察光学系300を用いて画像取得する後眼部観察モードでは、SLOユニット18により眼底二次元画像が、OCTユニット20により眼底断層画像がそれぞれ取得される。後述するように、OCTユニット20による眼底断層画像の取得期間、SLOユニット18は眼底二次元画像を継続して逐次取得する。
【0048】
前眼部観察光学系400では、図4に示されるように、前眼部観察用の光学モジュール136が、対物レンズ130の光路中、具体的には、対物レンズ130を構成する正屈折力の第1レンズ群134と正屈折力の第2レンズ群132との間の光路中に挿入されている。光学モジュール136は、その内部にレンズ等の光学素子を有する。本実施形態では、光学素子は、切換レンズとしての負のパワーを有するレンズ162である。レンズ162が対物レンズ130の光軸上に配置されると、レンズ162は、後眼部観察光学系300を前眼部観察光学系400へ切り換えるための切換えレンズとして作用する。以下では、レンズ162を、負レンズ162と称したり切換レンズ162と称したりする。負レンズ162が対物レンズ130の光路に挿入された場合、水平走査部142の走査位置と被検眼12の瞳孔位置Ppとは共役にならず、水平走査部142の走査位置からの平行光は前眼部に集光される。負レンズ162を通過する光束の径は、第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々を通過する光束径よりも小さい。よって、負レンズ162の有効径は対物レンズ130を構成するレンズ群の有効径に比べて小さい。負レンズ162は、第1レンズ群134および第2レンズ群132に比べて小型である。そのため、光学モジュール136を小型に構成できる。なお、光学素子としては、負レンズ162に限定されず、負レンズ162に代えて、例えば、フレネルレンズ、DОE(Diffractive Optical Element)等の光学部材が用いられてもよい。
また、図3及び図4に示す通り、前眼部観察用の光学モジュール136には、前眼部観察時に使用されるアイ・トラッキングモジュール160とダイクロイックミラー161とが内蔵されている。SLOユニットにより逐次取得される複数のSLO画像は、前眼部観察用の光学モジュール136に内蔵されたアイ・トラッキングモジュール160にて、OCT撮影時のアイ・トラッキング用の画像として利用される。
アイ・トラッキングモジュール160は更に、図示しない固視灯、カメラ、及び照明装置を備えている。
【0049】
次に、後眼部観察モードおよび前眼部観察モードにおける光学的構成について説明する。図5の上図には、後眼部観察モード(第1モード)における後眼部観察光学系の概要を示している。前眼部観察用の光学モジュール136は、対物レンズ130の光路に挿入されていない。一方、図5の下図には、前眼部観察モード(第2モード)における前眼部観察光学系の概要を示している。負の切換レンズ162を内蔵する光学モジュール136は、対物レンズ130の光路に挿入されている。なお、前眼部観察光学系の概略図において、説明の簡便のため、光学モジュール136として切換レンズ162のみが示されている。
【0050】
後眼部観察光学系(図5上図)について説明する。後眼部観察光学系(図5上図)において、対物レンズ130を構成する複数のレンズ群、すなわち、正の第1レンズ群134と正の第2レンズ群132とは、アフォーカル系を形成し、水平走査部142での走査中心(図中Ps)は、被検眼12の瞳孔位置Ppと共役になる。ここで、第1レンズ群134と第2レンズ群132のそれぞれの焦点距離を、f1、f2とすると、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の距離(群間隔)dは、
d=f1+f2
である。
倍率βは、
β=-f2/f1
である。
【0051】
第1実施形態の後眼部観察モード(第1モード)では、水平走査部142の走査位置Psは、被検眼12の瞳孔位置Ppと共役になっている。水平走査部142の走査位置Psからの平行光は被検眼12の瞳孔位置Ppを所定の角度でほぼ平行光として通過し、被検眼12によって眼底12Aに集光される。OCTユニット20から出射された測定光の、眼底12Aでの集光位置は、垂直走査部120の走査位置及び水平走査部142の走査位置(Ps)での走査角度に依存して決定される。これにより、眼底12Aの撮影や観察において、所望の走査位置や走査範囲を設定できる。
【0052】
次に、前眼部観察光学系(図5下図)について説明する。この観察光学系では、前眼部観察用の光学モジュール136の切換レンズ162が対物レンズ130の光路に挿入されている。
【0053】
前眼部観察モード(第2モード)では、負レンズである切換レンズ162が、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間に挿入される。前眼部観察モード(第2モード)では、水平走査部142の走査位置Psと被検眼12の瞳孔位置Ppとは共役になっておらず、水平走査部142の走査位置Psからの平行光は前眼部に集光される。OCTユニット20から出射された測定光の、前眼部での集光位置は、走査部の位置(Ps)での走査角度に依存して決定される。これにより、前眼部観察が可能となる。
【0054】
ここで、前眼部観察モード(第2モード)における切換レンズ162の配置について説明する。切換レンズ162の焦点距離をf3、第1レンズ群134と切換レンズ162との間の距離をx、走査位置Psから平行光が第1レンズ群134に入射した場合の切換レンズ162の物体距離をS3、像距離をS3’とする。なお、図中の像位置P3’は、走査位置Psから平行光が第1レンズ群134に入射した場合の切換レンズ162による走査位置Psの像位置、すなわち切換レンズによる走査位置Psの共役位置であり、像位置P3’は被検眼12の瞳孔位置Ppと共役になっている。切換レンズ162についての結像式より、
【数1】


である。
S3=f1-x
より、
【数2】



が得られる。
【0055】
次に、第2レンズ群132についても同様に、走査位置Psから平行光が第1レンズ群134に入射した場合の第2レンズ群132の物体距離をS2、像距離をS2’とすると、第2レンズ群132についての結像式より、
【数3】


である。なお、S2’は、実質的には第2レンズ群132と被検眼12との距離、いわゆる作動距離WD(Working Distance(ワーキングディスタンス))である。また、図5から理解されるように、
S2=S3’+d-x
であり、これより、
【数4】


が得られる。
【0056】
上記(1)式を(2)式に代入すると、
【数5】


が得られる。
上記(3)式をxについて整理すると以下の式を得る。
【数6】

【0057】
この(4)式により、切換レンズ162の焦点距離f3を決めるとその位置xの値が求められる。
【0058】
なお、2つの正の第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の光を平行光とする場合には、f2=S2’となるため、上記(3)式より、
x=f1+f3・・・(5)
の簡潔な関係式(5)となる。
【0059】
近似的には、この関係式(5)で第1レンズ群134と第2レンズ群132との間に切換レンズ162を配置して構成することが可能である。この関係式(5)は、2つの正の第1レンズ群134と第2レンズ群132が完全なアフォーカル系であり、しかも両群間の光が完全な平行光の場合ではあるが、原理的な構成といえる。実用解としては、2つのレンズ群の間をほぼ平行系としつつ、後眼部観察モード(第1モード)と前眼部観察モード(第2モード)とにおいて共に好適な収差構造とするために適宜の収差計算により各レンズの形状、厚さや屈折率などを適宜に選択することはいうまでもない。
【0060】
第1実施形態では、図5に示した通り、後眼部観察モード(第1モード)であっても、前眼部観察モード(第2モード)であっても、第2レンズ群132と被検眼12との間の距離(作動距離WD)は変わらない。よって、各観察モードの変更に応じて、被検眼12と撮影光学系116Aとのアラインメントを再調整する必要がないため、被検者に移動を強いる必要がない。前眼部撮影と後眼部撮影との切替えをスムーズかつ迅速に行うことが可能であるため、一連の撮影にかかる時間を短縮できる。加えて、切換レンズ162は小型であるため、切換レンズ162の挿脱機構は簡単かつ小型に実現できる。
【0061】
以上説明した第1実施形態にかかる眼科装置110は、前眼部観察用の光学モジュール136を使用して、1つの眼科装置で、被検眼12の後眼部および前眼部の両方の三次元画像データを取得する装置を提供することができる。
【0062】
また、第1実施形態にかかる眼科装置110は、前眼部観察用の光学モジュール136を、対物レンズ130を構成する第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の光路に挿脱することによって、後眼部観察光学系と前眼部観察光学系とを切換え可能にするので、対物レンズ130(特に第2レンズ群132)と被検眼12との間の作動距離WDは、それぞれの光学系(300、400)で変わらない。これにより、被検眼12と撮影光学系116Aとのアライメントをやり直す必要が無いため、後眼部観察モードと、前眼部観察モードとの切換えがスムーズに行われる。
【0063】
また、第1実施形態にかかる眼科装置110では、前眼部観察用の光学モジュール136の光学素子は、対物レンズ130(第1レンズ群134及び第2レンズ群132)の有効径よりも小さな有効径の小型レンズでよいため、光学モジュール136を小型化することできる。よって、後眼部観察用光学系と前眼部観察光学系との切り換えが簡単である。
【0064】
以上より、第1実施形態では、眼科装置110の利便性を向上させることができる。
【0065】
次に、第1実施形態の変形例を説明する。
【0066】
第1実施形態では、負レンズの切換レンズ162を備えているが、本開示の技術はこれらに限定されない。切換レンズ162を、正のパワーを有するレンズ(正レンズ)としてもよい。図6には、正レンズである切換レンズ162を備えた撮影光学系116Bの主要部である対物レンズの概略光学構成が示されている。この場合、水平走査部142の走査位置Psと共役な位置Pcは、図6に示すように、第2レンズ群132側に位置する。図6は前眼部を撮影する状態となる前眼部観察モードにおける前眼部撮影光学系の光学構成であり、前述の図5の下図に対応する。この構成において、後眼部を撮影する状態となる後眼部観察モード(第1モード)の光学構成は図5の上図(後眼部観察光学系300)に対応している。図6では、レンズ群を図5と同様に薄肉系として示し、水平走査部142の走査位置Psからの3つの角度の平行光束が、被検眼の前眼部に集光される様子の概要が示されている。
【0067】
第1実施形態では、オペレータは、マニュアルで、前眼部用の光学モジュール136を、撮影光学系116Aの光路から離脱させたり光路に挿入したりしているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、前眼部用の光学モジュール136を自動的に、光路から離脱させたり光路に挿入したりする機構を備える。そして、図示しない後眼部断層画像生成ボタンがオンされた場合、又は、前眼部断層画像生成ボタンがオンされた場合、CPU16Aは、当該機構を制御して、前眼部観察用の光学モジュール136を自動的に、光路から離脱させ、又は、光路に挿入させる、ようにしてもよい。
【0068】
第1実施形態では、被検眼12から順に、対物レンズ130、水平走査部142およびリレーレンズ装置140を、SLO用光学系およびOCT用光学系で共用される共通光学系としているが、本開示の技術はこれに限定されない。SLO用光学系およびOCT用光学系とで水平走査部142を共用する構成に替えて、それぞれの光学系に、水平走査部および垂直走査部を設けても良い。
【0069】
[第2実施形態]
【0070】
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態の構成は、第1実施形態と略同様であるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、主として異なる部分を説明する。
【0071】
図7には、第2実施形態の撮影光学系116Cの主要部である対物レンズの概略光学構成が示されている。撮影光学系116Cは、第1実施形態の撮影光学系116Aとは、次の点で異なる。
【0072】
撮影光学系116Cに挿入される切換レンズ162は、対物レンズ130を構成する第1レンズ群134と第2レンズ群132との間ではなく、第1レンズ群134と水平走査部142との間に挿脱可能に配置されている。図7に示す通り、切換レンズ162は正のパワーを有するレンズであり、前眼部観察モードにおける前眼部観察光学系の構成を示している。水平走査部142の走査位置Psと共役な位置Pcは、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間に位置する。
【0073】
眼底撮影用の後眼部観察モードにおける後眼部観察光学系は、図5の上図と同様である。図7の構成においても、切換レンズ162の挿入によって、水平走査部142からの平行光束の走査光は、被検眼12の前眼部近傍に集光することができる。ただし、被検眼の前眼部に完全に集光させるためには、フォーカス装置、例えば図2に示したフォーカス調整装置150を制御して、図8に示すように、走査部に入射する光束を適宜集光光に変換することによって、被検眼12の前眼部の必要な位置に適宜集光することが可能である。
【0074】
次に、第2実施形態の変形例を説明する。第2実施形態では、正のパワーを有するレンズの切換レンズ162を備えているが、本開示の技術はこれらに限定されない。切換レンズ162を、負レンズとしてもよい。図9は、切換レンズ162として、負のパワーを有するレンズを備えた撮影光学系116Dの例を示している。図9は、切換レンズ162として負のパワーを有するレンズが、水平走査部142の走査位置Psと対物レンズ130の第1レンズ群134との間に挿入された前眼部を撮影する状態の前眼部観察モード(第2モード)の構成における光線の様子を示している。図示の通り、水平走査部142の中心から入射する平行光束は切換レンズ162、正のパワーを有する第1レンズ群134及び正のパワーを有する第2レンズ群132により、被検眼12の前眼部としての角膜上に集光する。この前眼部観察モード(第2モード)においては、負のパワーを有するレンズである切換レンズ162による水平走査部142の位置Psの虚像Pv が、水平走査部142の走査位置Psと負の切換レンズ162との間に形成される。そして、負のパワーを有するレンズ162、第1レンズ群134及び第2レンズ群132の合成光学系により、水平走査部142の走査位置Psと共役な位置Pcは被検眼12の内部に形成されているが、これに限られない。図9に示した前眼部観察モード(第2モード)の構成において切換レンズ162を抜去すれば、図5の上部の図に示した構成と同じく後願部観察モード(第1モード)となることは、言うまでもない。
【0075】
[第3実施形態]
【0076】
次に、第3実施形態を説明する。第3実施形態の構成は、第1実施形態を示した第5図に対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略し、主として異なる部分を説明する。
【0077】
まず、第1実施形態から第2実施形態の変形例では、対物レンズ130が2つの正のパワーを有するレンズ群によって構成されていたが、本開示の技術はこれらに限定されず、水平走査部142側、すなわち走査位置Ps側の第1レンズ群134は、負のパワーを有するレンズ群としてもよい。
【0078】
第3実施形態の撮影光学系116Eは、図10に示すように、第1実施形態の撮影光学系116Aにおける正のパワーを有する第1レンズ群134に代えて、負のパワーを有する第1レンズ群134Nを備えている。図10の上図には、前眼部撮影のための前眼部観察モードにおける前眼部観察光学系の構成を、また、同図の下図には、切換レンズの挿入により、後眼部撮影のための後眼部観察モードにおける後眼部観察光学系の構成を、いずれも薄肉系として示している。
まず、図10の上図に示す構成においては、負のパワーを有する第1レンズ群134Nと正のパワーを有する第2レンズ群132との2群構成の対物レンズにより、水平走査部142の走査位置Psからの平行光束が被検眼12の瞳孔位置Ppに集光される。この状態では切換レンズ162は光路から離脱した状態である。一方、図10の下図には、後眼部観察モードにおける後眼部観察光学系の構成において、正のパワーを有する切換レンズ162が対物レンズの負のパワーを有する第1レンズ群134Nと正のパワーを有する第2レンズ群132との間の光路中に挿入された状態が示されている。この状態では、負のパワーを有する第1レンズ群134Nと正のパワーを有する切換レンズ162と正のパワーを有する第2レンズ群132との合成系によって、水平走査部142の走査位置Psから供給される平行光束が、被検眼の瞳孔位置Ppにおいて平行光束となり、全体としてアフォーカル系が構成される。そして、水平走査部142の走査位置Psと被検眼12の瞳孔位置Ppとが共役に構成され、走査部による光束の角度走査に応じて被検眼12の瞳孔位置Ppにおいて平行光束が角度走査され、眼底において集光光が走査される。なお、図10の下図でも、光学モジュール136のうち切換レンズ162のみが示されている。ここで、眼底と共役な位置が破線Crで示されており、挿入された正のパワーを有するレンズ162と正のパワーを有する第2レンズ群132との間に、被検眼眼底との共役位置が形成される。
この第3実施形態の撮影光学系では、光学モジュール136が挿入されていない図10の上図の状態において前眼部の撮影が可能であり、光学モジュール136が挿入された図10の下図の状態において後眼部の撮影が可能となる。従って、この場合の光学モジュール136は、後眼部用の切換モジュールである。
【0079】
以上説明した第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2の実施形態の変形例、及び第3の実施形態でも、第2の実施形態のようにフォーカス調整を行うようにしてもよい。更に、各例において、フォーカス調整は、前述の通りオートフォーカス化することが可能である。また、フォーカス調整は、対物レンズの第2レンズ群132よりも光源側の光学系、例えば、対物レンズの第1レンズ群134、切換レンズ162、レンズ144、146の少なくとも1つを移動させるようにしてもよい。以上の実施形態によれば、被検眼12の位置を後眼部の断層画像の生成時からずらさずに、前眼部の断層画像の生成をすることができ、また逆に、前眼部の断層画像を生成する時から後願部の断層画像の生成に切換える際にも被検眼の位置を全く変える必要がないという大きな利点は前述した通りである。
【0080】
[更なる変形例]
以上説明した各例では更に、パワーが異なる複数の切換レンズ等の光学素子を用意しておき、予め取得した前眼部(例えば、角膜)の形状に応じて、複数の光学素子の中から、角膜の形状等に応じて、角膜位置により集光できる光学素子に切り換えるようにしてもよい。
【0081】
以上説明した各例では更に、前眼部(例えば、角膜)の形状に応じて、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間か、水平走査部142と第1レンズ群134との間かの、切換レンズ等の光学素子を挿入する位置を切り替えるのみならず、パワーが異なる複数の切換レンズ等の光学素子の中から、異なる屈折力の光学素子を選択し、適宜切り替えた位置に挿入することが可能である。
【0082】
以上説明した各例では更に、後眼部観察モード(第1モード)でも前眼部観察モード(第2モード)でも1つの検出器で干渉光を検出しているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、検出能力の異なる2つの検出器を備え、後眼部観察モード(第1モード)では、2つの検出器の一方の検出器により、前眼部観察モード(第2モード)では、2つの検出器の他方の検出器により、干渉光を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
110 眼科装置
17 画像処理装置
20C 第1の光カプラ
40、42、44、46 光源
70、72、74、76 光検出素子
20B センサ
132 第1レンズ群
134 第2レンズ群
142 水平走査部
148 垂直走査部
162 切換レンズ
300 後眼部観察光学系
400 前眼部観察光学系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】