(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】コーティングされた電極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20220907BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220907BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220907BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021577851
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2020068192
(87)【国際公開番号】W WO2021001293
(87)【国際公開日】2021-01-07
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チェンチー
(72)【発明者】
【氏名】柏木 順次
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,スーハオ
(72)【発明者】
【氏名】中山 潤平
(72)【発明者】
【氏名】森田 大輔
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA01
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
部分的にコーティングされた電極活物質の製造方法であって、前記方法が、以下の工程:
(a)一般式Li1+xTM1-xO2(式中、TMは、Niと、任意にCo及びMnのうちの少なくとも1種と、任意にAl、Mg、Ba及びB、並びに、Ni、Co及びMn以外の遷移金属から選択される少なくとも1種の元素とのものであり、xは0~0.2の範囲であり、TMの遷移金属の少なくとも50モル%はNiである)による電極活物質を提供する工程と、
(b)前記電極活物質を水性媒体で処理する工程と、
(c)固液分離法によって、水を部分的に除去する工程と、
(d)残留物をMeの化合物で処理する工程てあって、Meが、アルミニウム、ホウ素、リン、アンチモン、マグネシウム、バナジウム及びテルルのうちの少なくとも1種から選択される、工程と、
(e)残留物を熱的に処理する工程と
を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)一般式Li
1+xTM
1-xO
2(式中、TMは、Niと、任意にCo及びMnのうちの少なくとも1種と、任意にAl、Mg、Ba及びB、並びに、Ni、Co及びMn以外の遷移金属から選択される少なくとも1種の元素とのものであり、xは-0.05~0.2の範囲であり、TMの遷移金属の少なくとも50モル%はNiである)による電極活物質を提供する工程と、
(b)前記電極活物質を水性媒体で処理する工程と、
(c)固液分離法によって、水を部分的に除去する工程と、
(d)残留物をMeの化合物で処理する工程てあって、Meが、アルミニウム、ホウ素、リン、アンチモン、バナジウム、モリブデン及びテルルのうちの少なくとも1種から選択される、工程と、
(e)残留物を熱的に処理する工程と
を含む、部分的にコーティングされた電極活物質を製造する方法。
【請求項2】
TMが、一般式(I)
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dM
d (I)
(式中、aは、0.6~0.99の範囲であり、
bは、0.01~0.2の範囲であり、
cは、0~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Nb、Mo、W及びZrのうちの少なくとも1つであり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)が、濾過によって、又は遠心分離機の助けを借りて行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
MがAlである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)における水性媒体が水である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)から、水分含有のフィルターケーキが得られる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)におけるMeの化合物が、水に分散される、Al
2O
3、Sb
2O
3、Li
2TeO
3、又は前述の少なくとも2種の組み合わせから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)におけるMeの化合物が、水に、又は水酸化リチウムの水溶液に溶解される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(e)が、300~700℃の範囲の最高温度でのか焼工程を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(e)が、40~250℃の範囲の最高温度での乾燥工程を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
TMが、Ni
0.6Co
0.2Mn
0.2、Ni
0.7Co
0.2Mn
0.1、Ni
0.8Co
0.1Mn
0.1、Ni
0.88Co
0.055Al
0.055、Ni
0.9Co
0.045Al
0.045及びNi
0.85Co
0.1Mn
0.05から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)において、水と電極活物質との質量比が1:5~1:20の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
一般式Li
1+x1TM
1-x1O
2による粒子状電極活物質であって、TMが、Niと、Coと、任意にMnと、任意にAl、Mg、Ba及びB、並びに、Ni、Co及びMn以外の遷移金属から選択される少なくとも1種の元素との組み合わせであり、x1は-0.05~0の範囲であり、前記粒子が一次粒子からの凝集体であり、TMの遷移金属の少なくとも60モル%がNiであり、Me’の酸化物とMe’の酸化リチウム種との組み合わせが一次粒子間に均一に分布しており、Me’が、アンチモン、モリブデン、バナジウム及びテルルから選択される、粒子状電極活物質。
【請求項14】
前記粒子の外表面が、テルルの酸化物とテルルの酸化リチウム種との組み合わせで均一にコーティングされ、コーティングが、EDXマッピングによって検出されるように均一である、請求項13に記載の粒子状電極活物質。
【請求項15】
TMが、一般式(I)
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dM
d (I)
(式中、aは、0.6~0.99の範囲であり、
bは、0.01~0.2の範囲であり、
cは、0~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Nb、Mo、W及びZrのうちの少なくとも1つであり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項13又は14に記載の粒子状電極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的にコーティングされた電極活物質の製造方法に関し、ここで、当該方法が、以下の工程:
(a)一般式Li1+xTM1-xO2(式中、TMは、Niと、任意にCo及びMnのうちの少なくとも1種と、任意にAl、Mg、Ba及びB、並びに、Ni、Co及びMn以外の遷移金属から選択される少なくとも1種の元素とのものであり、xは-0.05~0.2の範囲であり、TMの遷移金属の少なくとも50モル%はNiである)による電極活物質を提供する工程と、
(b)前記電極活物質を水性媒体で処理する工程と、
(c)固液分離法によって、水を部分的に除去する工程と、
(d)残留物をMeの化合物で処理する工程てあって、Meが、アルミニウム、ホウ素、リン、モリブデン、アンチモン、バナジウム及びテルルのうちの少なくとも1種から選択される、工程と、
(e)残留物を熱的に処理する工程と
を含む。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、エネルギーを貯蔵するための最新の装置である。携帯電話及びラップトップコンピュータなどの小型の装置からカーバッテリー及び他のE-モビリティ(e-mobility)用バッテリーまで、多くの応用分野が考えられてきた。電解質、電極材料及びセパレータなどの様々な電池の構成要素は、電池の性能に関して重要な役割を有する。カソード材料は特に注目されている。いくつかの材料、例えばリチウム鉄ホスフェート、リチウムコバルトオキシド、及びリチウムニッケルコバルトマンガンオキシドが提案されてきた。広範な研究調査が行われてきているが、これまでに見出された解決策は未だに改善の余地がある。
【0003】
現在、いわゆるNiの多い電極活物質、例えば、総TM含有量に対して、75モル%以上のNiを含有する電極活物質への特定の関心が観察される。
【0004】
リチウムイオン電池、特にNiの多い電極活物質の1つの問題は、電極活物質の表面での望ましくない反応に起因する。このような反応は、電解質又は溶媒又はその両方の分解であり得る。したがって、充電及び放電中のリチウム交換を妨げることなく、表面を保護することが試みられた。例は、例えばアルミニウムオキシド又はカルシウムオキシドで電極活物質をコーティングする試みである(例えば、US 8,993,051参照)。
【0005】
他の理論では、表面の遊離LiOH又はLi2CO3に望ましくない反応が割り当てられる。電極活物質を水で洗浄することにより、そのような遊離のLiOH又はLi2CO3を除去する試みがなされてきた(例えば、JP 4,789,066 B、JP 5,139,024 B、及びUS2015/0372300参照)。しかしながら、場合によっては、得られた電極活物質の特性が改善されないことが観察された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 8,993,051
【特許文献2】JP 4,789,066 B
【特許文献3】JP 5,139,024 B
【特許文献4】US2015/0372300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた電気化学特性を有するNiの多い電極活物質の製造方法を提供することであった。また、本発明の目的は、優れた電気化学特性を有するNiの多い電極活物質を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、以下に「本発明の方法」とも称される、冒頭で定義された方法が見出された。本発明の方法は、以下の工程:
(a)一般式Li1+xTM1-xO2(式中、TMは、Niと、任意にCo及びMnのうちの少なくとも1種と、任意にAl、Mg、Ba及びB、並びに、Ni、Co及びMn以外の遷移金属から選択される少なくとも1種の元素とのものであり、xは-0.05~0.2の範囲であり、TMの遷移金属の少なくとも50モル%はNiである)による電極活物質を提供する工程と、
(b)前記電極活物質を水性媒体で処理する工程と、
(c)固液分離法によって、水を部分的に除去する工程と、
(d)残留物をMeの化合物で処理する工程てあって、Meが、モリブデン、アンチモン、バナジウム及びテルルのうちの少なくとも1種から選択される、工程と、
(e)残留物を熱的に処理する工程と
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法は、(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)の5つの工程を含み、本発明の文脈においては、それぞれ工程(a)、工程(b)、工程(c)、工程(d)及び工程(e)とも称される。工程(b)及び(c)は、同時に、又は好ましくは連続的に開始されてもよい。工程(b)及び(c)は、同時に又は引き続いて行ってもよく、好ましくは、少なくとも部分的に重ねて又は同時に行ってもよい。工程(d)は、工程(c)の完了後に行われる。
【0010】
本発明の方法は、一般式Li1+xTM1-xO2(式中、TMは、Niと、任意にCo及びMnから選択される少なくとも1種の遷移金属と、任意にAl、Ba、B及びMgから選択される少なくとも1種の元素とを含み、TMの少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも75モル%がNiであり、xは-0.05~0.2の範囲である)による電極活物質から開始する。前記物質は、以下で出発物質とも称される。
【0011】
本発明の一実施態様において、出発物質は、3~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法(electroacoustic spectroscopy)によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0012】
本発明の一実施態様において、出発物質は、0.1~1.0m2/gの範囲の、以下で「BET表面積」とも称される比表面積(BET)を有する。BET表面積は、DIN ISO 9277:2010に従って、200℃で30分以上、及びこれを超えてサンプルをガス放出した後の窒素吸着によって決定することができる。
【0013】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される粒子状物質は、20~2,000ppmの範囲の、カールフィッシャー滴定によって決定された含水量を有し、20~1,200ppmが好ましい。
【0014】
本発明の一実施態様において、変数TMは、一般式(Ia)に対応する
(NiaCobMnc)1-dM1
d (I a)
(式中、a+b+c=1であり、
aは、0.75~0.95、好ましくは0.85~0.95の範囲であり、
bは、0.025~0.2、好ましくは0.025~0.1の範囲であり、
cは、0.025~0.2、好ましくは0.05~0.1の範囲であり、
dは、0~0.1、好ましくは0~0.04の範囲であり、
M1は、Al、Mg、W、Mo、Ti又はZrのうちの少なくとも1つ、好ましくはAl、Ti及びWのうちの少なくとも1つである)。
【0015】
本発明の一実施態様において、変数cはゼロであり、M1はAlであり、dは0.01~0.05の範囲である。
【0016】
本発明の他の実施態様において、変数TMは、一般式(Ib)に対応する
(Nia*Cob*Ale*)1-d*M2
d* (I b)
(式中、a*+b*+c*=1であり、
a*は、0.75~0.95、好ましくは0.88~0.95の範囲であり、
b*は、0.025~0.2、好ましくは0.025~0.1の範囲であり、
e*は、0.01~0.2、好ましくは0.015~0.04の範囲であり、
d*は、0~0.1、好ましくは0~0.02の範囲であり、
M2は、W、Mo、Ti又はZrのうちの少なくとも1つである)。
【0017】
変数xは-0.05~0.2の範囲である。
【0018】
本発明の一実施態様において、TMは一般式(Ia)に対応し、xは、-0.05~0.2、好ましくは0~0.1、さらにより好ましくは0.01~0.05の範囲である。
【0019】
本発明の一実施態様において、TMは一般式(Ib)に対応し、xは-0.05~0の範囲である。
【0020】
工程(a)で提供される電極活物質は一般に導電性炭素を含まない、すなわち、出発物質の導電性炭素含有量は、前記出発物質に対して、1質量%未満、好ましくは0.001~1.0質量%である。
【0021】
一部の元素は遍在する。本発明の文脈において、不純物としての微量の遍在する金属、例えばナトリウム、カルシウム、鉄又は亜鉛は、本発明の明細書において考慮されない。この文脈における微量は、出発物質の総金属含有量に対して、0.02モル%以下の量を意味する。
【0022】
工程(b)では、工程(a)で提供される前記電極活物質が水性媒体で、好ましくは水で処理される。前記水性媒体は、2~14、好ましくは少なくとも3.5、より好ましくは5~7の範囲のpH値を有する。pH値は、工程(b)の開始時に測定される。工程(b)の過程中で、pH値が少なくとも10、例えば11~13に上昇することが観察される。工程(b)の開始時にpH値が10~11の範囲にある実施態様において、pH値は11超~13に上昇する。工程(b)の開始時にpH値が3から10未満の範囲にある実施態様において、工程(b)の過程中で、pH値が11~13に上昇する。
【0023】
工程(b)で使用される水性媒体の硬度、特にカルシウムが少なくとも部分的に除去されることが好ましい。脱塩水の使用が好ましい。
【0024】
工程(b)の一実施態様において、工程(b)で使用される水性媒体は、アンモニア又は少なくとも1種の遷移金属塩、例えばニッケル塩又はコバルト塩をさらに含有してもよい。このような遷移金属塩は、好ましくは、電極活物質に有害ではない対イオンを有する。硫酸塩及び硝酸塩は使用可能である。塩化物は好ましくない。しかしながら、工程(a)で提供される電極活物質を、添加剤を含まない水で処理することが好ましい。
【0025】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、5~85℃の範囲の温度で行われ、10~60℃が好ましい。
【0026】
本発明の一実施態様において、工程(b)は常圧で行われる。しかしながら、高圧下で、例えば常圧より10ミリバール~10バール高い圧力で、又は吸引で、例えば常圧より50~250ミリバール低い圧力、好ましくは常圧より100~200ミリバール低い圧力で、工程(b)を行うことが好ましい。
【0027】
例えば、工程(b)は、例えば、フィルター装置の上方に位置するため、容易に排出することができる容器内で行われてもよい。そのような容器は出発物質で充填され、続いて水性媒体が導入されてもよい。他の実施態様において、そのような容器は水性媒体で充填され、続いて出発物質が導入される。他の実施態様において、出発物質と水性媒体は同時に導入される。
【0028】
本発明の一実施態様において、工程(b)における電極活物質と水性媒体の全体との体積比は、2:1~1:5、好ましくは2:1~1:2の範囲である。
【0029】
本発明の一実施態様において、工程(b)における水と電極活物質との質量比は、5:1~1:20、好ましくは1:5~1:20、さらにより好ましくは5:1~1:5の範囲である。
【0030】
工程(b)は、混合操作、例えば振とう、又は特に攪拌又は剪断によってサポートされる(以下を参照)。
【0031】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、1分~30分、好ましくは1分から5分未満の範囲の持続時間を有する。工程(b)において、水処理及び水除去が重ねて又は同時に行われる実施態様では、5分以上の持続時間が可能である。
【0032】
本発明の一実施態様において、工程(b)による処理及び工程(c)による水除去が連続して行われる。
【0033】
工程(b)に従って水性媒体で処理した後又はその間に、あらゆるタイプの濾過によって、例えばバンドフィルター又はフィルタープレスで、水を除去することができる。
【0034】
本発明の一実施態様において、工程(b)の開始から遅くとも3分後に、工程(c)が開始される。工程(c)は、例えば、固液分離によって、例えばデカンテーションによって、又は好ましくは濾過によって、処理された粒子状物質から水を除去することを含む。
【0035】
工程(c)の一実施態様において、工程(b)で得られたスラリーは、遠心分離機、例えばデカンター遠心分離機又はフィルター遠心分離機中に、又はフィルター装置、例えば吸引フィルターに、又は好ましくは工程(b)が行われる容器の真下に配置されたベルトフィルターに直接排出される。その後、濾過が開始する。
【0036】
本発明の特に好ましい実施態様において、工程(b)及び(c)は、攪拌機を備えたフィルター装置、例えば攪拌機を備えた圧力フィルター又は攪拌機を備えた吸引フィルターで行われる。工程(b)に従って出発物質と水性媒体を組み合わせた後最大3分後、又はその直後でさえ、水性媒体の除去は、濾過を開始することによって開始される。実験室規模では、工程(b)及び(c)はブフナー漏斗で行われ、工程(b)及び(c)は手動で攪拌することによってサポートされる。
【0037】
好ましい実施態様において、工程(b)は、フィルター装置、例えば、フィルター中のスラリー又はフィルターケーキの攪拌を可能にする攪拌フィルター装置で行われる。
【0038】
本発明の一実施態様において、工程(c)による水除去は、1分~1時間の範囲の持続時間を有する。
【0039】
本発明の一実施態様において、工程(b)、及び該当する場合に工程(c)における撹拌は、1分当たり1~50回転(「rpm」)の範囲の速度で行われ、5~20rpmが好ましい。
【0040】
本発明の一実施態様において、濾材は、セラミック、焼結ガラス、焼結金属、有機ポリマーフィルム、不織布、及び織物から選択することができる。
【0041】
本発明の一実施態様において、工程(b)及び(c)は、低減されたCO2含有量、例えば、0.01~500質量ppmの範囲の二酸化炭素含有量を有する雰囲気下で行われ、0.1~50質量ppmが好ましい。CO2含有量は、例えば赤外光を使用する光学的方法によって決定することができる。例えば赤外光に基づく光学的方法での検出限界未満の二酸化炭素含有量を有する雰囲気下で、工程(b)及び(c)を行うことがさらにより好ましい。
【0042】
工程(c)から、残留物が、好ましくは湿潤フィルターケーキの形態で得られる。フィルターケーキの水分含有量は、3~20質量%、好ましくは4~9質量%の範囲であってもよい。
【0043】
工程(d)では、工程(c)からの残留物をMeの化合物で処理し、Meが、アルミニウム、アンチモン、ホウ素、リン、モリブデン、バナジウム及びテルルのうちの少なくとも1種から選択される。前記化合物は、バルクで、又は水性製剤として添加されてもよい。水性製剤の例としては、溶液、スラリー及びコロイド溶液が挙げられる。Meがアルミニウム、アンチモン、ホウ素、リン、モリブデン、バナジウ、及びテルルから選択される前記Meの化合物は、以下で「Meの化合物」又は「Me化合物」とも称される。
【0044】
前記水性製剤は、2~14、好ましくは少なくとも3.5、より好ましくは5~11の範囲のpH値を有する。
【0045】
本発明の一実施態様において、工程(d)で使用される水性製剤のpH値は、塩基性Li化合物、特にLiOHの添加により制御される。
【0046】
pH値は、工程(d)の開始時に測定される。電極活物質、水及びMeの化合物の添加の順序に応じて、工程(d)の過程中で、pH値が少なくとも10、例えば11~13に上昇する可能性があることが観察される。工程(d)の開始時にpH値が10~11の範囲である実施態様において、それは11超~13に上昇する。工程(d)の開始時にpH値が3から10未満の範囲である実施態様において、それは11~13に上昇する。工程(d)で使用される前記水性製剤の水硬度、特にカルシウムが少なくとも部分的に除去されることが好ましい。脱塩水の使用が好ましい。
【0047】
Meの化合物のうち、Meの無機化合物が好ましい。
【0048】
Meの無機化合物のうち、塩化物などの水溶性ハロゲン化物も使用可能であるが、酸化物、水酸化物、硫酸塩、及びリチウム化酸化物が好ましい。
【0049】
前記Meの無機化合物は、水に容易に溶解してもよい。この文脈における「水溶性」とは、25℃で、溶解度が1リットルの水あたり少なくとも10gのそれぞれの金属であることを意味する。
【0050】
他の実施態様において、前記Meの無機化合物は、水不溶性である。この文脈における「水不溶性」とは、25℃で、溶解度が1リットルの水あたり0.1g未満のアルミニウム化合物であることを意味する。例としては、例えば、Al2O3、Al(OH)3、AlOOH、Al2O3・aqが挙げられ、AlOOH及びAl2O3が好ましい。
【0051】
前記Meの水不溶性化合物は、水中に分散又はスラリー化されていてもよい。本発明の文脈において、AlOOHは、必ずしも等モル量の酸化物及び水酸化物を持つとは限らず、Al(O)(OH)とも称されることがある。
【0052】
本発明の一実施態様において、Meの化合物は、アルミニウムの化合物、特にアルミニウムの無機化合物である。工程(d)で使用されるアルミニウムの無機化合物、特にAl2O3及びAl(O)(OH)は、純物質(Siを含む金属の合計に対して、≧99.9モル%のAl)であるか、又は酸化物、例えばLa2O3、Ce2O3、チタニア又はジルコニアで、例えば0.1~5モル%の量でドープされてもよい。
【0053】
本発明の一実施態様において、前記Meの水不溶性化合物は、水に分散され、X線回折によって決定された平均粒径(D50)が200nm~5μm、好ましくは2~5μmの範囲である。
【0054】
本発明の一実施態様において、前記Meの化合物は、コロイド製剤(「コロイド溶液」)として提供される。コロイド溶液としてAlOOHが使用されることが好ましく、X線回折図において検出される反射の半値全幅(「FWMH」)から決定されたその平均粒径は、5~10nmの範囲であることが好ましい。コロイド溶液中のこのような粒子は、20~200nm、好ましくは20~50nmの範囲の平均粒径を有する凝集体を形成してもよい。このようなコロイド溶液は、好ましくは、5~6の範囲のpH値を有する。乾燥粉末としては、最大15μmの平均粒径を有する凝集体を形成することができる。
【0055】
アンチモンの化合物の例としては、Sb(+III)の化合物及びSb(+V)の化合物が挙げられる。Sb(+III)の化合物の例としては、Sb(OH)3、Sb2O3・aq、Sb2(SO4)3、SbOOH、LiSbO2及びSb2O3が挙げられる。Sb(+V)の化合物の例としては、Sb2O5、LiSb3O8、LiSbO3、Li3SbO4、Li5SbO5、Li7SbO6、Sb2O4、(Sb(III)Sb(V)O4)、及びSb(+V)のオキシ水酸化物、例えばSbO(OH)3、Sb2O4(OH)2、Sb2O3(OH)4、Sb3O6OH、Sb3O7OH(これらに限定していない)が挙げられる。
【0056】
ホウ素の化合物の例としては、ホウ酸、B2O3、Li3BO3、LiBO2、及びリチウムのポリボレート、例えばLi2B4O7(これに限定していない)が挙げられる。バナジウムの化合物の例としては、V2O5及びLiVO3が挙げられる。モリブデンの化合物の例としては、MoO3及びLi2MoO4が挙げられる。
【0057】
リンの化合物の例としては、「P2O5」(P4O10)、LiPO3、Li3PO4、及び好ましくはリン酸水素リチウム、例えばLiH2PO4、Li2HPO4、及び混合物、例えばLi1.5H1.5PO4及びLi1.16H1.84PO4が挙げられる。
【0058】
Teの化合物の例としては、TeO2、TeO3及びLi2TeO3が挙げられる。
【0059】
本発明の一実施態様において、前記Meの水不溶性化合物は、水中に分散され、走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定された平均粒径(D50)が200nm~10μm、好ましくは2~5μmの範囲である。
【0060】
一実施態様において、Meの化合物はバルクで添加される。
【0061】
好ましい実施態様において、前記Meの化合物は、水溶性であり、水溶液、特にLiOHをさらに含有する水溶液で添加される。
【0062】
一実施態様において、Meの化合物の量は、TMに対して、0.01~3.0モル%の範囲であり、0.1~1.0モル%が好ましい。
【0063】
工程(d)の一実施態様において、工程(d)におけるMeの化合物は、水に分散される、Al2O3、Sb2O3、Li2TeO3、SnO2、SnO、又は前述の少なくとも2種の組み合わせから選択される。
【0064】
工程(d)における処理は、Meの化合物を工程(c)の水分含有残留物に添加し、得られた混合物を相互作用させることによって行うことができる。このような相互作用は、攪拌によって促進されてもよい。
【0065】
本発明の一実施態様において、工程(d)は、5~85℃の範囲の温度で行われ、10~60℃が好ましい。室温が特に好ましい。
【0066】
本発明の一実施態様において、工程(d)は、常圧で行われる。しかしながら、高圧下で、例えば常圧より10ミリバール~10バール高い圧力で、又は吸引で、例えば常圧より50~250ミリバール低い圧力、好ましくは常圧より100~200ミリバール低い圧力で、工程(d)を行うことが好ましい。
【0067】
本発明の一実施態様において、工程(d)は、攪拌機を備えたフィルター装置、例えば攪拌機を備えた圧力フィルター又は攪拌機を備えた吸引フィルターで行われる。
【0068】
工程(c)の残留物をMeの化合物で処理する時間は、2~30分の範囲であってもよい。
【0069】
本発明の一実施態様において、工程(b)~(d)は、同一の容器で、例えば、攪拌機を備えたフィルター装置、例えば攪拌機を備えた圧力フィルター又は攪拌機を備えた吸引フィルターで行われる。
【0070】
本発明の方法は、後続の工程(e)を含む:
(e)工程(d)から得られた物質を熱処理する工程。
【0071】
工程(e)は、任意のタイプのオーブン、例えばローラーハースキルン、プッシャーキルン、ロータリーキルン、振り子キルン、又は実験室規模の試験の場合にマッフルオーブンで行うことができる。
【0072】
工程(e)による熱処理の温度は、300~900℃、好ましくは300~700℃、さらにより好ましくは550~650℃の範囲であってもよい。
【0073】
350~700℃の温度は、工程(e)の最高温度に相当する。
【0074】
工程(d)から得られた物質を工程(e)に直接供することが可能である。しかしながら、温度を段階的に上げること、又は温度を徐々に上げること、又は工程(d)の後に得られた物質を最初に40~80℃の範囲の温度で乾燥させてから工程(e)に供すること、又は固液分離法、例えば濾過により水を除去することが好ましい。
【0075】
前記段階的な上昇又は徐々の上昇は、常圧又は減圧、例えば1~500ミリバールの圧力下で行うことができる。
【0076】
その最高温度での工程(e)は常圧下で行われる。
【0077】
本発明の一実施態様において、工程(e)は、酸素含有雰囲気、例えば、空気、酸素富化空気又は純酸素の下で行われる。
【0078】
工程(e)の前に100~250℃の範囲の温度で乾燥させる実施態様において、このような乾燥は、10分~5時間の持続時間で行われる。
【0079】
本発明の一実施態様において、工程(e)は、低減されたCO2含有量、例えば、0.01~500質量ppmの範囲の二酸化炭素含有量を有する雰囲気下で行われ、0.1~50質量ppmが好ましい。CO2含有量は、例えば赤外光を使用する光学的方法によって決定することができる。例えば赤外光に基づく光学的方法での検出限界未満の二酸化炭素含有量を有する雰囲気下で、工程(e)を行うことがさらにより好ましい。
【0080】
本発明の一実施態様において、工程(e)は、1~10時間、好ましくは90分間~6時間の範囲の持続時間を有する。
【0081】
本発明の一実施態様において、電極活物質のリチウム含有量は、1~5質量%、好ましくは2~4質量%還元される。前記還元は主に、いわゆる残留リチウムに影響を及ぼす。
【0082】
本発明の方法を行うことにより、優れた電気化学特性を有する電極活物質が得られる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、余分なMeの化合物は、電極活物質の表面に堆積したリチウム化合物の除去につながると仮定する。
【0083】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、電極活物質の表面は、Meの化合物を添加しない洗浄方法よりも、本発明の方法による悪影響が少ないと仮定する。
【0084】
本発明のさらなる態様は、以下で本発明の電極活物質とも称される電極活物質に関する。本発明の電極活物質は、粒子状であり、一般式Li1+x1TM1-x1O2(式中、TMは、Niと、Coと、任意にMnと、任意にAl、Mg、Ba及びB、並びに、Ni、Co及びMn以外の遷移金属から選択される少なくとも1種の元素との組み合わせであり、xは-0.05~0の範囲である)を有し、ここで、前記粒子が一次粒子からの凝集体であり、TMの遷移金属の少なくとも60モル%はNiであり、Me’の酸化物(Me’が、アンチモン、モリブデン、バナジウム及びテルルから選択される)と、Me’の酸化リチウム種との組み合わせが、一次粒子間に均一に分布している。
【0085】
本発明の好ましい実施態様において、Me’はAl又はSb又はTeであり、Teが特に好ましい。
【0086】
本発明の一実施態様において、LiSbO2又はLi2TeO3などのMe’のリチウム化酸化物はアモルファスである。
【0087】
本発明の一実施態様において、前記粒子の外表面は、アンチモンの酸化物とアンチモンの酸化リチウム種との組み合わせで均一にコーティングされ、コーティングは、EDXマッピング(「エネルギー分散型X線マッピング」)によって検出されるように均一である。
【0088】
このようなコーティングは均一である。すなわち、TEMでは、Me’の酸化物及びMe’の酸化リチウム種が一次粒子及び二次粒子の表面に均一に分布しているように見える。
【0089】
本発明の一実施態様において、変数TMは、一般式(Ia)に対応する
(NiaCobMnc)1-dM1
d (I a)
(式中、a+b+c=1であり、
aは、0.75~0.95、好ましくは0.85~0.95の範囲であり、
bは、0.025~0.2、好ましくは0.025~0.1の範囲であり、
cは、0.025~0.2、好ましくは0.05~0.1の範囲であり、
dは、0~0.1、好ましくは0~0.04の範囲であり、
M1は、Al、Mg、W、Mo、Ti又はZrの少なくとも1つ、好ましくはAl、Ti及びWの少なくとも1つである)。
【0090】
本発明の一実施態様において、変数cはゼロであり、M1はAlあり、dは0.01~0.05の範囲である。
【0091】
本発明の他の実施態様において、変数TMは、一般式(Ib)に対応する
(Nia*Cob*Ale*)1-d*M2
d* (I b)
(式中、a*+b*+c*=1であり、
a*は、0.75~0.95、好ましくは0.88~0.95の範囲であり、
b*は、0.025~0.2、好ましくは0.025~0.1の範囲であり、
e*は、0.01~0.2、好ましくは0.015~0.04の範囲であり、
d*は、0~0.1、好ましくは0~0.02の範囲であり、
M2は、W、Mo、Ti又はZrの少なくとも1つである)。
【0092】
変数x1は-0.05~0.15の範囲である。
【0093】
本発明の一実施態様において、TMは一般式(Ia)に対応し、xは0~0.2、好ましくは0~0.1、さらにより好ましくは0.01~0.05の範囲である。
【0094】
本発明の一実施態様において、TMは一般式(Ib)に対応し、xは-0.05~0の範囲である。
【0095】
本発明の一実施態様において、本発明の電極活物質は、3~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0096】
本発明の一実施態様において、本発明の電極活物質は、0.1~2.0m2/gの範囲の、DIN-ISO 9277:2003-05に従って決定された表面積(BET)を有する。
【0097】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1種の本発明による電極活物質を含む電極に関する。それらは、リチウムイオン電池に特に有用である。少なくとも1つの本発明による電極を含むリチウムイオン電池は良好な放電挙動を示す。少なくとも1種の本発明による電極活物質を含む電極は、以下で本発明のカソード又は本発明によるカソードとも称される。
【0098】
本発明によるカソードは、さらなる構成要素を含むことができる。それらは、集電器、例えばアルミホイル(これに限定していない)を含むことができる。それらは、導電性炭素及びバインダーをさらに含むことができる。
【0099】
好適なバインダーは、好ましくは、有機(コ)ポリマーから選択される。好適な(コ)ポリマー、すなわち、ホモポリマー又はコポリマーは、例えば、アニオン(共)重合、触媒(共)重合又はフリーラジカル(共)重合により得ることができる(コ)ポリマーから、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、並びに、エチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル及び1,3-ブタジエンから選択された少なくとも2種のコモノマーのコポリマーから選択することができる。ポリプロピレンも適する。ポリイソプレン及びポリアクリレートはさらに適している。ポリアクリロニトリルが特に好ましい。
【0100】
本発明の文脈において、ポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルホモポリマーだけでなく、アクリロニトリルと1,3-ブタジエン又はスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーが好ましい。
【0101】
本発明の文脈において、ポリエチレンは、ホモポリエチレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたエチレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばα-オレフィン、例えばプロピレン、ブチレン(1-ブテン)、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ペンテン、及びまたイソブテン、ビニル芳香族のもの、例えばスチレン、及びまた(メタ)アクリル酸、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、(メタ)アクリル酸のC1~C10-アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルメタアクリレート、2-エチルヘキシルメタアクリレート、及びまたマレイン酸、無水マレイン酸及び無水イタコン酸を含むエチレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリエチレンはHDPE又はLDPEであり得る。
【0102】
本発明の文脈において、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたプロピレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばエチレン、及びα-オレフィン、例えばブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン及び1-ペンテンを含むプロピレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリプロピレンは、好ましくはイソタクチックポリプロピレン又は本質的にイソタクチックポリプロピレンである。
【0103】
本発明の文脈において、ポリスチレンは、スチレンのホモポリマーだけでなく、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC1~C10-アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジフェニルエチレン及びα-メチルスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。
【0104】
別の好ましいバインダーは、ポリブタジエンである。
【0105】
他の好適なバインダーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミド及びポリビニルアルコールから選択される。
【0106】
本発明の一実施態様において、バインダーは、50,000g/molから、1,000,000g/molまで、好ましくは500,000g/molまでの範囲の平均分子量MWを有する(コ)ポリマーから選択される。
【0107】
バインダーは、架橋された又は架橋されていない(コ)ポリマーであり得る。
【0108】
本発明の特に好ましい実施態様において、バインダーは、ハロゲン化(コ)ポリマー、特にフッ素化(コ)ポリマーから選択される。ハロゲン化又はフッ素化(コ)ポリマーは、1個の分子当たり少なくとも1個のハロゲン原子又は少なくとも1個のフッ素原子、より好ましくは1個の分子当たり少なくとも2個のハロゲン原子又は少なくとも2個のフッ素原子を有する少なくとも1つの(共)重合された(コ)モノマーを含む(コ)ポリマーを意味すると理解される。例としては、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、ビニリデンフルオリド-テトラフルオロエチレンコポリマー、ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、及びエチレン-クロロフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。
【0109】
好適なバインダーは、特に、ポリビニルアルコール及びハロゲン化(コ)ポリマー、例えばポリビニルクロリド又はポリビニリデンクロリド、特にフッ素化(コ)ポリマー、例えばポリビニルフルオリド及び特にポリビニリデンフルオリド及びポリテトラフルオロエチレンである。
【0110】
本発明のカソードは、電極活物質に対して、1~15質量%のバインダー(単数又は複数)を含んでもよい。他の実施態様において、本発明のカソードは、0.1質量%から1質量%未満のバインダー(単数又は複数)を含んでもよい。
【0111】
本発明のさらなる態様は、本発明の電極活物質、カーボン及びバインダーを含む少なくとも1つのカソード、少なくとも1つのアノード、及び少なくとも1つの電解質を含有する電池である。
【0112】
本発明のカソードの実施態様は、すでに上記で詳細に記載されている。
【0113】
前記アノードは、少なくとも1種のアノード活物質、例えばカーボン(グラファイト)、TiO2、酸化リチウムチタン、シリコン又はスズを含有してもよい。前記アノードは、集電器、例えば銅ホイルなどの金属ホイルをさらに含有してもよい。
【0114】
前記電解質は、少なくとも1種の非水性溶媒、少なくとも1種の電解質塩、及び任意に添加剤を含んでもよい。
【0115】
電解質のための非水性溶媒は、室温で液体又は固体であり得、好ましくは、ポリマー、環状又は非環状エーテル、環状及び非環状アセタール、及び環状又は非環状有機カーボネートから選択される。
【0116】
好適なポリマーの例は、特に、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリ-C1~C4-アルキレングリコール、及び特にポリエチレングリコールである。ここでは、ポリエチレングリコールは、20モル%以下の1種以上のC1~C4-アルキレングリコールを含むことができる。ポリアルキレングリコールは、好ましくは、2個のメチル又はエチル末端キャップを有するポリアルキレングリコールである。
【0117】
好適なポリアルキレングリコール、特に好適なポリエチレングリコールの分子量MWは、少なくとも400g/molであり得る。
【0118】
好適なポリアルキレングリコール、特に好適なポリエチレングリコールの分子量MWは、最大5000000g/mol、好ましくは最大2000000g/molであり得る。
【0119】
好適な非環状エーテルの例は、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンであり、1,2-ジメトキシエタンが好ましい。
【0120】
好適な環状エーテルの例は、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンである。
【0121】
好適な非環状アセタールの例は、例えば、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン及び1,1-ジエトキシエタンである。
【0122】
好適な環状アセタールの例は、1,3-ジオキサン、及び特に1,3-ジオキソランである。
【0123】
好適な非環状有機カーボネートの例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。
【0124】
好適な環状有機カーボネートの例は、一般式(II)及び(III)、
【0125】
【0126】
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なることができ、水素及びC1~C4-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルから選択され、好ましくは、R2及びR3の両方ともがtert-ブチルであることはない)
による化合物である。
【0127】
特に好ましい実施態様において、R1はメチルであり、R2及びR3はそれぞれ水素であるか、又はR1、R2及びR3はそれぞれ水素である。
【0128】
別の好ましい環状有機カーボネートは、式(IV)のビニレンカーボネートである。
【0129】
【0130】
好ましくは、溶媒又は複数の溶媒は、水を含まない状態で、すなわち、例えば、カールフィッシャー滴定によって決定することができる1ppm~0.1質量%の範囲の含水量で使用される。
【0131】
電解質(C)は、少なくとも1種の電解質塩をさらに含む。好適な電解質塩は、特にリチウム塩である。好適なリチウム塩の例は、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC(CnF2n+1SO2)3、リチウムイミド、例えばLiN(CnF2n+1SO2)2(式中、nは1~20の範囲の整数である)、LiN(SO2F)2、Li2SiF6、LiSbF6、LiAlCl4、及び一般式(CnF2n+1SO2)tYLiの塩である
(式中、Yが酸素及び硫黄から選択される場合、t=1であり、
Yが窒素及びリンから選択される場合、t=2であり、
Yが炭素及びケイ素から選択される場合、t=3である)。
【0132】
好ましい電解質塩は、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiPF6、LiBF4、LiClO4から選択され、LiPF6及びLiN(CF3SO2)2が特に好ましい。
【0133】
本発明の実施態様において、本発明による電池は、それによって電極が機械的に分離される1つ以上のセパレータを含む。好適なセパレータは、金属リチウムに対して反応しないポリマーフィルム、特に多孔性ポリマーフィルムである。セパレータのための特に好適な材料は、ポリオレフィン、特にフィルム形成の多孔性ポリエチレン及びフィルム形成の多孔性ポリプロピレンである。
【0134】
ポリオレフィン、特にポリエチレン又はポリプロピレンから構成されるセパレータは、35~45%の範囲の多孔率を有することができる。好適な細孔径は、例えば30~500nmの範囲である。
【0135】
本発明の他の実施態様において、セパレータは、無機粒子で充填したPET不織布から選択することができる。このようなセパレータは40~55%の範囲の多孔率を有し得る。好適な細孔径は、例えば80~750nmの範囲である。
【0136】
本発明による電池は、任意の形状、例えば、立方体、又は円筒形ディスク又は円筒形缶の形状を有することができるハウジングをさらに含む。一変形態様において、ポーチとして構成された金属ホイルをハウジングとして使用する。
【0137】
本発明による電池は、例えば低温(0℃以下、例えば-10℃以下でさえ)での良好な放電挙動、非常に良好な放電及びサイクル挙動を示す。
【0138】
本発明による電池は、互いに組み合わされている、例えば直列に接続するか、又は並列に接続することができる2つ以上の電気化学セルを含むことができる。直列接続が好ましい。本発明による電池において、少なくとも1つの電気化学セルは少なくとも1つの本発明によるカソードを含有する。好ましくは、本発明による電気化学セルにおいて、電気化学セルの大部分は本発明によるカソードを含有する。さらにより好ましくは、本発明による電池において、すべての電気化学セルは本発明によるカソードを含有する。
【0139】
本発明はさらに、本発明による電池を機器、特にモバイル機器に使用する方法を提供する。モバイル機器の例は、車両、例えば自動車、自転車、航空機、又は水上乗り物、例えばボート又は船である。モバイル機器の他の例は、手動で動くもの、例えばコンピューター、特にラップトップ、電話、又は例えば建築部門における電動手工具、特にドリル、バッテリー式ドライバー又はバッテリー式ステープラーである。
【0140】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0141】
総説:N-メチル-2-ピロリドン:NMP。
【0142】
I.カソード活物質の合成
I.1 前駆体TM-OH.1の合成
脱イオン水及び1kgの水あたり49gの硫酸アンモニウムで、撹拌タンク反応器を充填した。溶液を55℃に加熱し、水酸化ナトリウム水溶液を添加することによりpH値を12に調整した。
【0143】
硫酸遷移金属水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を1.8の流量比で同時に供給し、総流量を8時間の滞留時間とすることにより、共沈反応を開始させた。遷移金属溶液は、Ni、Co及びMnを8.5:1.0:0.5のモル比及び1.65mol/kgの合計の遷移金属濃度で含有した。水酸化ナトリウム水溶液は、6の質量比での25質量%の水酸化ナトリウム溶液及び25質量%のアンモニア溶液であった。水酸化ナトリウム水溶液を別に供給することにより、pH値を12に維持した。すべての供給の始動から始めて、母液を継続的に取り出した。33時間後、すべての供給流を停止した。得られた懸濁液を濾過し、蒸留水で洗浄し、空気中120℃で乾燥させ、ふるいにかけることにより、混合遷移金属(TM)オキシ水酸化物前駆体を得た。
【0144】
I.2 TM-OH.1のカソード活物質への変換
I.2.1 比較用のカソード活物質C-CAM.1の製造、工程(a.1)
C-CAM.1(比較):I.1に従って得られた混合遷移金属オキシ水酸化物前駆体をAl2O3(平均粒径が6nm)と混合して、Ni+Co+Mn+Alに対して0.3モル%のAlの濃度、及び1.06のLi/(TM+Al)モル比を得た。混合物を760℃に加熱し、60体積%の酸素と40体積%の窒素との混合物の強制流中に10時間保持した。室温に冷却した後、粉末を解凝集し、32μmのメッシュでふるいにかけて、電極活物質C-CAM 1を得た。
【0145】
Malvern InstrumentsからのMastersize 3000機でレーザー回折の技術を使用して決定されたD50は9.0μmであった。Al含有量は、ICP分析によって決定し、780ppmに対応した。250℃で決定した残留水分は300ppmであった。
【0146】
I.2.2 水の存在下でのLi2TeO3による処理
工程(b.1):フラスコに67mlの脱イオン水を入れた。100gの量のC-CAM.1を添加した。得られたスラリーを室温で5分間攪拌した。
【0147】
工程(c.1):次に、フィルタープレスによる濾過によって、水を除去した。
【0148】
工程(d.1):4.5gの量のLi2TeO3aqをフィルターケーキに添加した。Te/(TM+Te)のモル比は0.003であった。Li2TeO3aqを含むフィルターケーキをプラスチックバッグに入れ、室温で5分間スクランブルした。
【0149】
工程(e.1):得られたフィルターケーキを超乾燥空気中、70℃で2時間、次いで120℃で10時間乾燥させ、その後、酸素雰囲気中700℃で1時間熱処理した。
【0150】
その後、得られた粉末を45μmのふるいでふるい分けることにより、本発明のカソード活物質CAM.2を得た。
【0151】
Meの化合物の種類及び量を変更することにより、それに応じて、さらなる本発明のカソード活物質を作製した。その結果を表1にまとめた。
【0152】
II.カソード活物質のテスト
II.1 電極の製造、一般的な手順
II.1.1 カソードの製造
正極:PVDFバインダー(Solef(登録商標)5130)をNMP(Merck)中に溶解して、7.5質量%の溶液を製造した。電極の調製では、バインダー溶液(3質量%)、グラファイト(SFG6L、2質量%)及びカーボンブラック(Super C65、1質量%)をNMP中に懸濁させた。自転公転攪拌機(ARE-250、Thinky Corp.;日本)を使用して混合した後、本発明のCAM.1~CAM.7のいずれか、又は比較用のカソード活物質(94質量%)を添加し、懸濁液を再度混合して、塊のないスラリーを得た。スラリーの固形分を65%に調整した。KTF-Sロールツーロールコーター(Mathis AG)を使用して、スラリーをAlホイル上にコーティングした。使用前に、すべての電極をカレンダ加工した。カソード材料の厚さは70μmであり、15mg/cm2に対応した。バッテリーを組み立てる前に、すべての電極を105℃で7時間乾燥させた。
【0153】
II.1.2:ポーチセルアノードの製造
グラファイト及びカーボンブラックを十分に混合した。CMC(カルボキシメチルセルロース)水溶液及びSBR(スチレンブタジエンゴム)水溶液をバインダーとして使用した。炭素(グラファイトとカーボンブラックの混合物):CMC:SBRの質量比が96:0.5:2:1.5である、電極活物質をバインダー溶液と混合し、十分な量の水を添加して、電極の調製に適したスラリーを調製した。このようにして得られたスラリーを、ロールコーターを使用することにより銅ホイル(厚さ=10μm)上にコーティングし、室温下で乾燥させた。単層ポーチセルテストでは、銅ホイル上の電極サンプルの増量は、10mg cm-2に固定した。
【0154】
II.2:電解質の製造
EL塩基1の総質量に基づいて、12.7質量%のLiPF6、26.2質量%のエチレンカーボネート(EC)、及び61.1質量%のエチルメチルカーボネート(EMC)を含有する塩基電解質組成物(EL塩基1)を調製した。この塩基電解質製剤に2質量%のビニレンカーボネート(VC)を添加した(EL塩基2)。
【0155】
II.3 テストセルの製造
II.3.1 コイン型ハーフセル
III.1.1で記載されているように調製したカソードと、動作電極及び対極としてのリチウム金属とを含むコイン型ハーフセル(直径20mm、厚さ3.2mm)をそれぞれ組み立て、Arを充填したグローブボックス中に密封した。さらに、カソード、アノード、及びセパレータをカソード//セパレータ//Liホイルの順に重ね合わせて、ハーフコインセルを製造した。その後、0.15mLの上記(III.2)に記載されているEL塩基1をこのコインセル中に導入した。
【0156】
II.3.2 ポーチセル
III.1.1に記載されているように調製したアノードと、III.1.2によるグラファイト電極とを含む単層ポーチセル(70mA・h)を組み立て、Arを充填したグローブボックス中に密封した。カソード、アノード、及びセパレータをカソード//セパレータ//アノードの順に重ね合わせて、複数層のポーチセルを製造した。その後、0.8mLの電解質EL塩基2をラミネートポーチセル中に導入した。
【0157】
III.セル性能の評価
コインハーフセルの性能の評価
製造したコイン型電池を使用して、セル性能を評価した。電池の性能については、セルの初期容量及び反応抵抗を測定した。
【0158】
以下のように初期性能及びサイクルを測定した:II.3.1によるコインハーフセルを、室温で4.3V~2.8Vの範囲の電圧でテストした。初期サイクルでは、初期リチウム化をCC-CVモードで行い、すなわち、0.01Cに達するまで0.1Cの定電流(CC)を適用した。10分の休止時間の後、0.1C~2.8Vの定電流で還元リチウム化を行った。サイクリングでは、電流密度は0.1Cであった。結果を表2にまとめている。
【0159】
以下の方法でセル反応抵抗を算出した:
初期性能評価後のコインセルを4.3Vまで再充電し、ポテンシオスタット及び周波数応答アナライザーシステム(Solartron CellTest System 1470E)を使用して、ACインピーダンス法により抵抗を測定した。EISスペクトルから、オーム抵抗及び相対抵抗に分けることができる。結果を表1にまとめている。[%]相対抵抗は、100%としてのC-CAM.1をベースとするセルの抵抗に基づくものである。
【0160】
【0161】
w.r.t.:に対して
CAM.20:pHが7であった。
【0162】
【手続補正書】
【提出日】2020-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)一般式Li
1+xTM
1-xO
2(式中、TMは、Niと、任意にCo及びMnのうちの少なくとも1種と、任意にAl、Mg、Ba及びB、並びに、Ni、Co及びMn以外の遷移金属から選択される少なくとも1種の元素とのものであり、xは-0.05~0.2の範囲であり、TMの遷移金属の少なくとも50モル%はNiである)による電極活物質を提供する工程と、
(b)前記電極活物質を水性媒体で処理する工程と、
(c)固液分離法によって、水を部分的に除去する工程と、
(d)残留物をMeの化合物で処理する工程てあって、Meが、アルミニウム、ホウ素、リン、アンチモン、バナジウム、モリブデン及びテルルのうちの少なくとも1種から選択される、工程と、
(e)残留物を熱的に処理する工程と
を含む、部分的にコーティングされた電極活物質を製造する方法。
【請求項2】
TMが、一般式(I)
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dM
d (I)
(式中、aは、0.6~0.99の範囲であり、
bは、0.01~0.2の範囲であり、
cは、0~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Nb、Mo、W及びZrのうちの少なくとも1つであり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
MがAlである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)が、濾過によって、又は遠心分離機の助けを借りて行われる、請求項
1から3のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項5】
工程(b)における水性媒体が水である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)から、水分含有のフィルターケーキが得られる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)におけるMeの化合物が、水に分散される、Al
2O
3、Sb
2O
3、Li
2TeO
3、又は前述の少なくとも2種の組み合わせから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)におけるMeの化合物が、水に、又は水酸化リチウムの水溶液に溶解される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(e)が、300~700℃の範囲の最高温度でのか焼工程を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(e)が、40~250℃の範囲の最高温度での乾燥工程を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
TMが、Ni
0.6Co
0.2Mn
0.2、Ni
0.7Co
0.2Mn
0.1、Ni
0.8Co
0.1Mn
0.1、Ni
0.88Co
0.055Al
0.055、Ni
0.9Co
0.045Al
0.045及びNi
0.85Co
0.1Mn
0.05から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)において、水と電極活物質との質量比が1:5~1:20の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
一般式Li
1+x1TM
1-x1O
2による粒子状電極活物質であって、TMが、Niと、Coと、任意にMnと、任意にAl、Mg、Ba及びB、並びに、Ni、Co及びMn以外の遷移金属から選択される少なくとも1種の元素との組み合わせであり、x1は-0.05~
0.15の範囲であり、前記粒子が一次粒子からの凝集体であり、TMの遷移金属の少なくとも60モル%がNiであり、Me’の酸化物とMe’の酸化リチウム種との組み合わせが一次粒子間に均一に分布しており、Me’が、アンチモン、モリブデン、バナジウム及びテルルから選択される、粒子状電極活物質。
【請求項14】
前記粒子の外表面が、テルルの酸化物とテルルの酸化リチウム種との組み合わせで均一にコーティングされ、コーティングが、EDXマッピングによって検出されるように均一である、請求項13に記載の粒子状電極活物質。
【請求項15】
TMが、一般式(I)
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dM
d (I)
(式中、aは、0.6~0.99の範囲であり、
bは、0.01~0.2の範囲であり、
cは、0~0.2の範囲であり、
dは、0~0.1の範囲であり、
Mは、Al、Mg、Ti、Nb、Mo、W及びZrのうちの少なくとも1つであり、
a+b+c=1である)
による金属の組み合わせである、請求項13又は14に記載の粒子状電極活物質。
【国際調査報告】