(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】シリコン単結晶をチョクラルスキー法によって引き上げる方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20220907BHJP
C30B 15/04 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C30B29/06 502J
C30B15/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500988
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2020067585
(87)【国際公開番号】W WO2021004784
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】102019210254.9
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンゲルベルガー,カール
(72)【発明者】
【氏名】ホイビーザー,バルター
(72)【発明者】
【氏名】スクロバネク,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB06
4G077BA04
4G077CF10
4G077EB01
4G077FG13
4G077HA12
4G077PA01
4G077PB05
(57)【要約】
20mΩcm以下の抵抗率を有するシリコン単結晶をチョクラルスキー法によって融液から引き上げる方法であって、
ネック部の第1のセクションの直径が、種結晶の直径と比較して、5mm以下のターゲット直径に対してネック部長さの1mm当たり0.3mm以上の比率でテーパ状になるような第1の引き上げ速度でネック部の第1のセクションを引き上げるステップと、
ネック部の第2のセクションの直径が5.5mmを超える値に増大することなしに、3分以上の期間にわたって0.2mm/分未満の第2の引き上げ速度でネック部の第2のセクションを引き上げるステップと、
2mm/分を超える第3の引き上げ速度でネック部の第3のセクションを引き上げるステップとを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20mΩcm以下の抵抗率を有するシリコン単結晶をチョクラルスキー法によって融液から引き上げる方法であって、
ネック部の第1のセクションの直径が、種結晶の直径と比較して、5mm以下のターゲット直径に対してネック部長さの1mm当たり0.3mm以上の比率でテーパ状になるような第1の引き上げ速度で前記ネック部の前記第1のセクションを引き上げるステップと、
前記ネック部の第2のセクションの直径が5.5mmを超える値に増大することなしに、3分以上の期間にわたって0.2mm/分未満の第2の引き上げ速度で前記ネック部の前記第2のセクションを引き上げるステップと、
2mm/分を超える第3の引き上げ速度で前記ネック部の第3のセクションを引き上げるステップとを備える、方法。
【請求項2】
前記融液を水平磁場にさらすステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抵抗率は、前記融液をドープするホウ素またはヒ素によって規定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記融液は、ゲルマニウムでさらにドープされる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記単結晶の円筒形セクションを引き上げて、前記円筒形セクションから単結晶シリコンの半導体ウェハを取り出すステップを備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、20mΩcm以下の抵抗率を有するシリコン単結晶をチョクラルスキー法によって融液から引き上げる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
先行技術/課題
チョクラルスキー法は、るつぼ内に収容された融液から単結晶を引き上げることを含む。この単結晶は、懸濁状態の融液から種結晶上に引き上げられる。一般的に言って、ネック部は、最初に種結晶の底部端部が結晶化するため、転位がネック部の端縁に移動し、そのようにして転位が除去される。
【0003】
US2003 0 209 186 A1は、ネック部をセクションに分けて引き上げる方法を勧めており、最初に1つのセクションを引き上げ速度R1で引き上げ、次いでさらなるセクションを少なくとも25%だけ低い引き上げ速度R2で引き上げ、最後にさらなるセクションを速度R1で引き上げ、これらのセクションの各々の直径は、少なくともおよそ5mmである。
【0004】
US5 800 612には、セクションに細分されて自動化されるネック部の形成を提供する方法が記載されている。
【0005】
ネック部の引き上げにもかかわらず転位が完全には除去されない事象の頻度は、高ドープシリコン単結晶が引き上げられる場合に増加することが知られており、これらは、比較的低い抵抗率を有する単結晶である。その理由は、それらが電気的に活性のドーパントを比較的高い濃度で含んでいるからである。それらの位置決めのために、このような転位は、中心転位とも呼ばれており、単結晶が引き上げられて初めて中心欠陥の形で認識されることが多い。
【0006】
この問題に対処するために、US2010 0 089 309 A1は、目的が1.5mΩcm以下の抵抗率を有するホウ素ドープ単結晶を引き上げることである場合に、ネック部を引き上げるときの引き上げ速度を2mm/分以下に制限することを提案している。
【0007】
US2004 0 089 225 A1では、目的が、シリコン単結晶から切り出された半導体ウェハの上にエピタキシャル層を堆積させる際のミスフィット転位から生じる問題を防止するために、比較的高い濃度のホウ素とさらにはゲルマニウムとを含むシリコン単結晶を引き上げることである場合に、単結晶におけるゲルマニウムの濃度を特定の範囲内でホウ素の濃度に関連付けるべきであるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特定の制約にさらされることなく、上記の事象の頻度のさらなる低減を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、20mΩcm以下の抵抗率を有するシリコン単結晶をチョクラルスキー法によって融液から引き上げる方法によって実現され、上記方法は、
ネック部の第1のセクションの直径が、種結晶の直径と比較して、5mm以下のターゲット直径に対してネック部長さの1mm当たり0.3mm以上の比率でテーパ状になるような第1の引き上げ速度で上記ネック部の上記第1のセクションを引き上げるステップと、
上記ネック部の第2のセクションの直径が5.5mmを超える値に増大することなしに、3分以上の期間にわたって0.2mm/分未満の第2の引き上げ速度でネック部の上記第2のセクションを引き上げるステップと、
2mm/分を超える第3の引き上げ速度で上記ネック部の第3のセクションを引き上げるステップとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る動作条件の、ネック部の長さPにわたる代表図である。
【
図2】テストシリーズにおける、以前の条件から逸脱する動作条件の、ネック部の長さPにわたる代表図である。
【
図3】テストシリーズにおける、以前の条件から逸脱する動作条件の、ネック部の長さPにわたる代表図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に従って、ネック部の直径は、種結晶の直径から第2のセクションのターゲット直径まで比較的急速にテーパ状になる。この目的のために、ネック部の第1のセクションは、ネック部の直径がネック部長さの1mm当たり0.3mm以上の比率でテーパ状になるような引き上げ速度で引き上げられる。
【0012】
種結晶は、円形断面、正方形断面または長方形断面を有する。直径は好ましくは10~30mmであり、正方形断面または長方形断面の場合には直径とは最長端縁の長さのことである。
【0013】
さらに、ネック部の第1のセクションの引き上げ後に、引き上げ速度を一時的に大きく下げなければならず、同時に、ネック部の直径が結果として実質的に大きくならないように準備しなければならない。5.5mm以下までの直径の拡大は、まだ実質的な拡大ではないとみなされ得る。引き上げ速度の大幅な低下のために直径が実質的に大きくなることを防止するために、融液を加熱するための火力を好ましくは増加させる。大幅に低下した引き上げ速度でのネック部の第2のセクションの引き上げは、3分以上の期間にわたって、好ましくは5分以上50分以下の期間にわたって、維持される。この期間中、ネック部の第2のセクションが引き上げられる引き上げ速度は、0.2mm/分未満である。ネック部の第2のセクションの引き上げ中の引き上げ速度の値は、好ましくは0.01mm/分~0.2mm/分未満の範囲内である。
【0014】
ネック部の引き上げの制御は、好ましくはモニタリング機能も含み、このモニタリング機能は、許容可能であると考えられるネック部の第2のセクションの直径を超えた場合に引き上げ動作を自動的に中断させる。
【0015】
ネック部の第2のセクションの引き上げ後に、引き上げ速度は、2mm/分を超える値に上げられ、ネック部の第3のセクションが引き上げられる。ネック部の第3のセクションは、好ましくは4mm以上7mm以下の直径を有し、好ましくは100mm以上300mm以下の長さを有する。対応して、融液を加熱するための火力も好ましくは適合される。
【0016】
シリコン単結晶のさらなる引き上げは、従来の方法で、具体的には単結晶の円錐形セクション、円筒形セクションおよび終端円錐形部の引き上げで、続けられる。単結晶の円筒形セクション上で、単結晶シリコン半導体ウェハが切り出されて処理される。
【0017】
融液は、好ましくは、少なくとも単結晶のネック部、初期円錐部および円筒形セクションの引き上げ中に、水平磁場にさらされる。
【0018】
上記の方法は、少なくとも200mmの直径を有する、より特定的には少なくとも300mmの直径を有する単結晶シリコン半導体ウェハの製造に特に適している。
【0019】
本発明の効果は、ネック部引き上げ段階中にさまざまな条件下でテストシリーズの中の40mmの直径を有する高ホウ素ドープ単結晶シリコンの小さなテスト結晶を引き上げることによってテストされた。1インチ(およそ25.4mm)の直径および1.8mmの厚みを有するテストウェハが単結晶の各々から切り出されて、SIRD(走査赤外脱分極)によって格子歪みが調べられた。手順が本発明に従っている場合、中心欠陥の検出、したがって転位を有する単結晶を引き上げる確率の低下が1%を下回る。
【0020】
添付の3つの図面、すなわち
図1、
図2および
図3は、本発明に係る動作条件の、ネック部の長さPにわたる代表図(
図1)、および、テストシリーズにおける、以前の条件から逸脱する動作条件の、ネック部の長さPにわたる代表図(
図2および
図3)を提供する。これらの図面は、引き上げ速度v、ネック部の直径d、および融液の温度Tに関する情報を含んでいる。それぞれのテストウェハは、本発明に係る動作条件が利用された場合にのみ中心欠陥がなかった。
【0021】
図2に係る動作条件の場合、直径のテーパリング比率は、ネック部の第1のセクションの引き上げ中は所期の比率を下回っていた。
【0022】
図3に係る動作条件の場合、直径は、ネック部の第2のセクションの引き上げ中は、5.5mmという依然として許容可能であると考えられる直径を超えていた。
【国際調査報告】