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▶ メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】医薬調製物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20220907BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/00
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/02
A61K47/14
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500998
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2020069165
(87)【国際公開番号】W WO2021005077
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】19185500.6
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ショック コリンナ
(72)【発明者】
【氏名】リール マルクス
(72)【発明者】
【氏名】フーフ ゲロ
(72)【発明者】
【氏名】クレム マルクス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ワイガント マルクス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD26
4C076DD27
4C076DD38
4C076DD41C
4C076DD46C
4C076DD47C
4C076DD67
4C076EE31
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF33
4C076GG03
4C076GG12
4C076GG16
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA10
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの固形医薬調製物、その製作方法、及びその医学的使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子化3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩及び充填剤を含む固形調製物であって、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩は、前記固形調製物の総質量に基づき20~80%(質量/質量)で存在する、固形調製物。
【請求項2】
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、その硫酸塩、リン酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、一塩酸塩一水和物、又はマレイン酸塩、好ましくは一塩酸塩一水和物の形態で存在する、請求項1に記載の固形調製物。
【請求項3】
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、5μm~80μm、好ましくは5μm~50μm、より好ましくは5μm~25μmの範囲のd50値により特徴付けられる平均粒子サイズを有する、請求項1又は2に記載の固形調製物。
【請求項4】
前記充填剤は、糖、糖アルコール、又はリン酸二カルシウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の固形調製物。
【請求項5】
前記充填剤は糖アルコールであり、前記糖アルコールはソルビトール及び/又はマンニトール、好ましくはマンニトールである、請求項4に記載の固形調製物。
【請求項6】
結合剤を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の固形調製物。
【請求項7】
前記結合剤は、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、トウモロコシデンプンペーストなどのデンプンペースト、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、若しくは微結晶性セルロースなどのセルロース誘導体、好ましくは微結晶性セルロースである、請求項6に記載の固形調製物。
【請求項8】
前記固形製剤は、潤滑剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の固形調製物。
【請求項9】
前記潤滑剤は、ステアリルフマル酸ナトリウム、グリセロールと脂肪酸とのエステル、ステアリン酸、又はステアリン酸及び二価カチオンの薬学的に許容される塩、好ましくはステアリン酸マグネシウムである、請求項8に記載の固形調製物。
【請求項10】
50μm~1mm、好ましくは60μm~800μm、より好ましくは70~600μmの範囲のd50値により特徴付けられる平均粒子サイズを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の固形調製物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の固形調製物を含む医薬調製物。
【請求項12】
経口投与用の医薬調製物である、請求項11に記載の医薬調製物。
【請求項13】
即時放出調製物である、請求項11又は12に記載の医薬調製物。
【請求項14】
前記固形調製物及び任意で1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含むカプセルである、請求項11~13のいずれか一項に記載の医薬調製物。
【請求項15】
カプセルであり、前記カプセルに含まれるすべての材料の総質量に基づき、40~100%(質量/質量)の請求項1~10のいずれか一項に記載の固形調製物、並びに0~60%(質量/質量)の、好ましくは充填剤、流動促進剤、崩壊剤、及び潤滑剤から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項14に記載の医薬調製物。
【請求項16】
錠剤であり、前記固形調製物中に存在する前記薬学的に許容される賦形剤に加えて、任意で、充填剤、崩壊剤、流動促進剤、及び潤滑剤から選択される1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の医薬調製物。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか一項に記載の固形調製物及び任意で更なる賦形剤を含む錠剤であり、前記錠剤は、その総質量に基づき、
i)20~80%(質量/質量)の3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩、
ii)10~70%(質量/質量)の充填剤、
iii)0~20%(質量/質量)の結合剤、
iv)0~20%(質量/質量)の崩壊剤、
v)0~5%(質量/質量)の潤滑剤、
vi)0~7.5%(質量/質量)の流動促進剤、及び
vii)合計0~20%(質量/質量)の1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤
を含む、請求項16に記載の医薬調製物。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか一項に記載の固形調製物及び任意で更なる賦形剤を含む錠剤であり、前記錠剤は、その総質量に基づき、
i)30~70%(質量/質量)の3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩、
ii)20~60%(質量/質量)の充填剤、
iii)0~10%(質量/質量)の結合剤、
iv)0.25~10%(質量/質量)の崩壊剤、
v)0~4%(質量/質量)の潤滑剤、
vi)0~5%(質量/質量)の流動促進剤、及び
vii)合計0~10%(質量/質量)の1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤
を含む、請求項16又は17に記載の医薬調製物。
【請求項19】
i)35~60%(質量/質量)の3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩、
ii)40~60%(質量/質量)の充填剤、
iii)0~5%(質量/質量)の結合剤、
iv)0.5~5%(質量/質量)の崩壊剤、
v)0.25~3%(質量/質量)の潤滑剤、
vi)0~2%(質量/質量)の流動促進剤、及び
vii)合計0~10%(質量/質量)の1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤
を含む錠剤である、請求項16、17、又は18に記載の医薬調製物。
【請求項20】
前記充填剤はマンニトールであり、前記結合剤は微結晶性セルロースであり、前記崩壊剤は、クロスポビドン、カルボキシデンプングリコレート、カルボキシメチルセルロース、並びにそれらの塩及び誘導体から選択され、特にクロスカルメロースナトリウムであり、前記潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、グリセロール脂肪酸エステル、及びステアリルフマル酸ナトリウムから選択され、並びに/又は前記流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素及びその誘導体から選択される、請求項16~19のいずれか一項に記載の医薬調製物。
【請求項21】
請求項1~10のいずれか一項に記載の固形調製物を調製するための方法であって、乾式造粒することを含む方法。
【請求項22】
(a)3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩、及び充填剤、及び任意で1つ又は複数の更なる薬学的に許容される賦形剤を混合するステップ、
(b)ステップ(a)により調製された混合物を乾式造粒して前記固形調製物を形成するステップ、及び
(c)任意で粉砕を行うステップ
を含む、請求項21に記載の固形調製物を調製するための方法。
【請求項23】
乾式造粒はローラー圧縮である、請求項21又は22に記載の固形調製物を調製するための方法。
【請求項24】
錠剤であり、請求項1~10のいずれか一項に記載の固形調製物を含む医薬調製物を調製するための方法であって、
(a)請求項21、22、又は23に記載の方法を実施して、前記固形調製物を形成するステップ、
(b)前記固形調製物及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を混合するステップ、
(c)ステップ(b)で調製された混合物を錠剤化するステップ、及び
(d)任意で、ステップ(c)により調製された錠剤をフィルムコーティングするステップ
を含む方法。
【請求項25】
カプセルであり、請求項1~10のいずれか一項に記載の固形調製物を含む医薬調製物を調製するための方法であって、
(a)請求項21、22、又は23に記載の方法を実施して、前記固形調製物を形成するステップ、
(b)前記固形調製物及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を混合するステップ、及び
(c)ステップ(a)により調製された固形調製物又はステップ(b)により調製された混合物をカプセルに充填するステップ
を含む方法。
【請求項26】
任意で放射線療法と共に、がんの治療に使用するための、請求項11~20のいずれか一項に記載の医薬調製物。
【請求項27】
前記治療は化学療法を更に含む、請求項26に記載のがんの治療に使用するための医薬調製物。
【請求項28】
前記治療は免疫療法を更に含む、請求項26又は27に記載のがんの治療に使用するための医薬調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの固形医薬調製物(preparation)、並びにその製作方法、並びにその医学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、有用な薬理学的特性を有することが見出されている、ピリダゾン誘導体のファミリーの1つのメンバーとして、国際公開第2009/006959号パンフレットの実施例40に開示されている。国際公開第2009/007074号パンフレットには、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの特定の塩が開示されている。それは、c-Metチロシンキナーゼの酵素活性を阻害する強力なc-Met阻害剤である。c-Metは、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)阻害剤として公知のタンパク質をコードするプロトオンコジーンである。c-Metの阻害は、単独で、並びに化学療法、放射線療法、及び/又は免疫療法を含む他の治療と組み合わせて、がんの治療に有望な手法であることが証明されている。
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、水及び生物関連媒体への溶解度が非常に低い。詳細には、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、絶食時人工腸液(FaSSIF)への溶解度が43μg/mLであり、摂食時人工腸液(FeSSIF)への溶解度が319μg/mLである。そのような低溶解度にも関わらず、療法におけるその使用には、100mgを大きく上回るかなりの高用量が必要とされる。推定有効ヒト用量は約500mgであるため、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、用量/溶解度比が>10000であり、BCS IVとして分類することができる(Amidonら、1995年)。従って、経口投与用の医薬調製物は、所望の療法効果を達成するために必要な高用量を提供するために高い生物学的利用能を有していなければならない。そうでなければ、医薬調製物は、嚥下性に関する問題により経口投与に使用することができないほどサイズを増加させる必要があるだろう。
【0003】
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの微粒子化は、生物学的利用能を向上させるが、粘着性及び非常に不良な流動性、並びに第III相臨床研究への供給並びに市販供給を可能にするために必要であるため工業規模(例えば50.000~100.000錠剤/バッチ)で生産することができるロバストな製剤化の開発に有害である不利な圧縮特性のような他の効果を引き起こす。
加えて、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、不良な圧縮特性に関連することが公知である高弾性を呈する。実際、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、不良な圧縮可能性を有することが公知であるトウモロコシデンプンと同等の弾性を有する(Lean M.ら、Pharm Dev Technol、2015年;20巻(1号):12~21頁)。この引用文献には、様々な薬学的に使用される賦形剤の特性に関する分類及び様々な製造工程のためのそれらの使用が提案されている。トウモロコシデンプンの場合、高弾性回復特性のため乾式造粒技法ではリスクがより高く、そのためこの賦形剤はこの製造方法には好適ではないことが記載されている。
【0004】
更に、直接圧縮は、通常は薬物含有量が製剤の30%未満である有効薬物でのみ実施可能であることが当技術分野で公知である(Jivraj M.ら、PSTT 3巻、2号、2000年2月)。製剤は、約500mgの範囲の高用量の3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルを送達しなければならず、製剤のサイズはその嚥下が可能であるように制限されるため、30%を上回る薬物負荷が必要とされる。
工業規模で使用することができる湿式造粒技法を使用することによる、微粒子化3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの不利な圧縮特性を克服するための代替手法は失敗した。例えば、微粒子化3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルを流動床造粒に使用すると、流動床を適所に設置するや否やフィルターへと吹き込まれるため、そのような活性成分を含む医薬製剤を得ることができない。高剪断造粒による製造は、この製造技法を用いて開発された試作品が十分なin-vitro溶解結果を示さなかったため、成功しないことが証明された。
【0005】
従って、本発明の目的は、十分な生物学的利用能を提供することになり、薬物負荷量が高い3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの医薬剤形、及びその製造に好適な方法を提供することである。
経口溶液、自己マイクロ乳化薬物送達系(self-micro-emulsifying drug delivery system)SEDDS、又はSMEDDSなどの療法におけるその使用に必要な量の生物学的利用能3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルを提供する好適な医薬調製物を提供するための種々の試みは失敗した。SEDDS/SMEDDS又はエマルジョンは、試験された油への3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの溶解度が低いため(例えば、中性油への溶解度は<5mg/mL)、調製することができない。療法効果に必要な用量が比較的高く(およそ500mg)、自己乳化カプセル製剤(SEDDS又はSMEDDS)における最大用量が5mg以下であるため、患者は、目標用量を達成するために100個のカプセル剤を摂取しなければならないだろう。従って、この製剤経路は、実施可能ではないことが証明された。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、微粒子化3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩及び充填剤を含む固形調製物であって、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩は20~80質量%の量で存在する、固形調製物に関する。
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、下記のように図示される。
【化1】
【0007】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、明示的に示されているか否かに関わらず、例えば、整数、分数、及びパーセンテージを含む数値を指す。「約」という用語は、一般に、当業者であれば記載値と等価であるとみなすことになる(例えば、同じ機能又は結果を有する)数値の範囲(例えば、記載値の+/-1~3%)を指す。一部の場合では、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められている数値を含むことができる。
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」は、1つ又は複数を意味するものとする。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という単語と共に使用される場合、「a」又は「an」という単語は、1つ又は1つよりも多くを意味する。本明細書で使用される場合、「別の」とは、少なくとも第2の又はそれよりも多くを意味する。更に、状況により別様に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。
【0008】
本明細書で使用される場合、「%」又は「パーセント」は、本明細書に別様の指定がない限り、質量パーセント(%(質量/質量))を意味するものとする。
本発明は、上記固形調製物を含む医薬調製物、固形調製物を調製するための方法、及び医薬調製物を調製するための方法、並びに単独で又は放射線療法、化学療法、及び/若しくは免疫療法との組合せでのいずれかでのがんの治療における固形調製物、対応する医薬調製物の使用に関する。
「固形調製物」という用語は、本明細書で使用される場合、医薬品有効成分(API)及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む三次元固形医薬調製物を指す。好ましくは、固形調製物は、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル、及び例えば充填剤及び任意で1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤から選択される1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤の圧縮混合物である。圧縮混合物は、乾式造粒により得ることができ、好ましくは、不規則な又は規則的な形状を有していてもよい粒子の形態で存在する。固形調製物は、例えば、錠剤などの他の医薬調製物へと加工してもよいが、いかなる変更も加えることなく患者に直接投与することもできる。
充填剤の他に、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、及び潤滑剤などの1つ又は複数の更なる賦形剤が、固形調製物中に存在してもよい。
【0009】
「微粒子化」という用語は、本明細書で使用される場合、ミクロンサイズに低減されている粒子を指す。適切な実施形態によると、固形調製物中に存在する微粒子化3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、5μm~80μm、好ましくは5μm~50μm、より好ましくは5μm~25μmの範囲のd50値により特徴付けられる平均粒子サイズを有する。従って、本発明は、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルが、5μm~80μm、好ましくは5μm~50μm、より好ましくは5μm~25μmの範囲のd50値により特徴付けられる平均粒子サイズを有する、固形調製物にも関する。
【0010】
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルのd50値は、Malvern Mastersizer 2000でのレーザー回折で測定される(Hydro2000Sを使用する湿式法;マイクロ容積トレイ;試料量は100mg;撹拌器速度2200rpm;1分間の超音波処理;測定時間7.5秒;オブスキュレーションは10~15%)。本明細書で参照されるd50値は、分布が、その直径で上半分と下半分とに分割される、単位がマイクロメートルのサイズである。d50は、容積分布の中央値であり、多くの場合、Dv50(又はDv0.5)とも称される。
【0011】
固形調製物の粒子サイズは、ブラシ及びピンを使用して動的画像分析(Retsch CamSizer X2)で測定され、試料容積は少なくとも20mLであり、スリット幅は4.0mmであり、分散圧は30.0kPaであり、速度調整はしない。サイズは、対応する球体で規定され、試料形態は、角のある粒子として規定される。
【0012】
「充填剤」という用語は、本明細書で使用される場合、固形調製物の形成に必要な量の材料を提供することにより医薬調製物のバルクを増加させる作用剤である。また、錠剤充填剤及びカプセル充填剤などの充填剤は、固形調製物の調製において並びに固形医薬調製物の調製において、所望の流動特性及び圧縮特徴を作出する役目を果たす。本発明で使用可能な充填剤は、ソルビトール又はマンニトール、ダルシトール、キシリトール又はリビトールなどの糖アルコール、好ましくはソルビトール又はマンニトール、特に好ましくはマンニトール;グルコース、フルクトース、マンノース、ラクトース、サッカロース、又はマルトースなどの糖、好ましくはラクトース、サッカロース、又はマルトース、特に好ましくはラクトース;ジャガイモデンプン、米デンプン、トウモロコシデンプン、又はアルファ化デンプンなどのデンプンであってもよい。充填剤は、固形製剤(formulation)の総質量に基づき、20~80%(質量/質量)、好ましくは30~70%(質量/質量)、特に好ましくは40~65%(質量/質量)の割合で、本発明による固形調製物中に存在してもよい。
【0013】
充填剤の他に、固形調製物中には、結合剤、流動促進剤、崩壊剤、及び潤滑剤などの1つ又は複数の更なる賦形剤が存在してもよい。
【0014】
本発明の固形調製物は、固形調製物の総質量に基づき20~80質量%の量の3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルを含む。好ましい実施形態によると、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、固形調製物の総質量に基づき、25~70質量%の量で、より好ましくは30~60質量%の量で、最も好ましくは35~55質量%の量で、固形調製物中に存在する。従って、本発明は、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルが、固形調製物の総質量に基づき、20~80質量%の量で、好ましくは25~70質量%の量で、より好ましくは30~60質量%の量で、最も好ましくは35~55質量%の量で存在する、固形調製物にも関する。
【0015】
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩の量又は質量又は質量パーセンテージに対するあらゆる参照は、本明細書に別様の指定がない限り、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの無水遊離形態を指すと理解されるものとする。
【0016】
固形調製物は、その遊離塩基の形態だけでなく、その薬学的に許容されるものの形態の3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルを含んでいてもよい。「薬学的に許容される」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に安全であり、無毒性であり、生物学的にも別の様式でも望ましくないものではない医薬組成物の調製に有用であることを指し、獣医学並びにヒト医薬使用に許容されることを含む。「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りに薬学的に許容され、親3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの所望の薬理学的活性を保有する、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの塩を指す。「薬学的に許容される塩」という用語は、それぞれの塩の水和物をすべて含む。適切な塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸などの無機酸と形成される酸付加塩;又は酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、及びトリメチル酢酸などの有機酸と形成される酸付加塩であってもよい。固形調製物中に存在してもよい3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの特に好適な薬学的に許容される塩は、硫酸塩、リン酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、一塩酸塩一水和物、又はマレイン酸塩、好ましくは一塩酸塩一水和物である。従って、本発明は、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルが、その硫酸塩、リン酸塩、メシル酸塩、ベシル酸塩、トシル酸塩、フマル酸塩、一塩酸塩一水和物、又はマレイン酸塩、好ましくは一塩酸塩一水和物の形態で存在する、固形医薬調製物にも関する。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によると、固形調製物は、充填剤として、糖、糖アルコール、又はリン酸二カルシウムを含む。特に好ましい実施形態によると、固形調製物中に存在する充填剤は糖アルコールであり、糖アルコールは、ソルビトール及び/又はマンニトール、好ましくはマンニトールである。
本発明の更に好ましい実施形態によると、固形調製物は結合剤を含む。従って、本発明は、結合剤を更に含む固形調製物にも関する。
「結合剤」という用語は、本明細書で使用される場合、固形調製物に対して凝集及び強度を提供する作用剤を指す。本発明で使用することができる結合剤は、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、トウモロコシデンプンペーストなどのデンプンペースト、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又は微結晶性セルロースなどのセルロース誘導体、好ましくは微結晶性セルロースである。従って、本発明は、同様に、結合剤が、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、トウモロコシデンプンペーストなどのデンプンペースト、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又は微結晶性セルロースなどのセルロース誘導体、好ましくは微結晶性セルロースである、固形医薬調製物に関する。結合剤は、固形製剤の総質量に基づき、0~20%(質量/質量)、好ましくは0~10%(質量/質量)、特に好ましくは0~5%(質量/質量)の割合で、本発明による固形調製物中に存在してもよい。
【0018】
固形調製物は、潤滑剤を更に含んでいてもよい。「潤滑剤」という用語は、本明細書で使用される場合、乾式造粒されるか、カプセルに充填されるか、又は錠剤へと圧縮される際に、成分が互いに粘着することを防止するために使用される不活性成分を指す。潤滑剤は、ローラー圧縮機のロール表面に粘着する粉末、及び錠剤化作業中の錠剤化材料とダイのポンチとの滑り摩擦を低減し、錠剤ポンチへの粘着を防止する。好適な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸のアルカリ土類金属塩、ステアリン酸などの脂肪酸、セチルアルコール若しくはステアリルアルコールなどの高級脂肪アルコール、ジパルミトステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ステアリン、若しくはジベヘン酸グリセリルなどの脂肪、ステアリルフマル酸ナトリウムなどのC16~C18アルキル置換二炭酸のアルカリ土類金属塩、水和ヒマシ油若しくは水和綿実油などの水和植物油、又はタルクなどのミネラルである。好ましい潤滑剤は、ステアリルフマル酸ナトリウム、グリセロールと脂肪酸とのエステル、ステアリン酸、又はステアリン酸及び二価カチオンの薬学的に許容される塩、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。潤滑剤は、固形製剤の総質量に基づき、0~5%(質量/質量)、好ましくは0.1~2%(質量/質量)、特に好ましくは0.3~1%(質量/質量)、最も好ましくは約0.5%(質量/質量)の割合で、本発明による固形調製物中に存在してもよい。
【0019】
固形調製物は、崩壊剤を更に含んでいてもよい。「崩壊剤」という用語は、本明細書で使用される場合、湿潤時に膨張及び溶解して、錠剤又は顆粒の崩壊を引き起こしてバラバラにし、活性医薬作用剤を放出する化合物を指す。また、崩壊剤は、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルが、水などの溶媒と接触することを確実にするように機能する。崩壊剤は、錠剤又は顆粒などを崩壊させる役目を果たし、従って、液体溶解媒体との接触時に固体剤形の溶解を促進する。好適な崩壊剤としては、クロスポビドン(架橋ポリビニルN-ピロリドン)、カルボキシメチルセルロース、並びにそれらの塩及び架橋誘導体などの誘導体、例えば、クロスカルメロースナトリウム(カルボキシメチルセルロースナトリウムの架橋ポリマー)、ナトリウムカルボキシメチルグリコレート、デンプングリコール酸ナトリウム、カラギナン、寒天、及びペクチンが挙げられる。クロスポビドン及びクロスカルメロースナトリウムが特に好ましい。崩壊剤は、固形製剤の総質量に基づき、0~10%(質量/質量)、好ましくは0.25~5%(質量/質量)、特に好ましくは0.5~3%(質量/質量)の割合で、本発明による医薬調製物中に存在する。
【0020】
固形調製物は、流動促進剤を更に含んでいてもよい。「流動促進剤」という用語は、本明細書で使用される場合、粉末又は顆粒などの粒子の流動特徴を向上させる流動助剤として使用される不活性成分を指す。本発明では、カプセル化又は錠剤化などの更なる処理中の、固形調製物又は固形調製物を含む混合物の流動特徴。本発明に使用するための流動促進剤の非限定的な例としては、コロイド状二酸化ケイ素(Aerosil200、Cab-O-Sil)、タルク、炭酸マグネシウム、及びそれらの組合せが挙げられる。流動促進剤は、固形製剤の総質量に基づき、0~7.5%(質量/質量)、好ましくは0~5%(質量/質量)、特に好ましくは0~3%(質量/質量)の割合で、本発明による医薬調製物中に存在する。
【0021】
本発明の適切な実施形態によると、固形調製物は、50μm~1mm、好ましくは60μm~800μm、より好ましくは70~600μmの範囲のd50値により特徴付けられる平均粒子サイズを有する粒子の形態である。従って、本発明は、50μm~1mm、好ましくは60μm~800μm、より好ましくは70~600μmの範囲のd50値により特徴付けられる平均粒子サイズを有する固形調製物にも関する。
固形調製物を形成するために、乾式造粒を使用することができる。「乾式造粒」又は「乾式造粒する」という用語は、本明細書で使用される場合、具体的には、少なくとも圧縮ステップを含む造粒技法を指す。製薬業界では、2つの乾式造粒法、即ちスラグ圧縮及びローラー圧縮が主に使用され、両方とも固形調製物の調製に使用することができる。スラグによる乾式造粒は、典型的には、鋼製ダイ金型空間内に2つの鋼製ポンチを含む圧縮機械が使用される圧縮ステップを含む。顆粒は、金型空間内のポンチにより材料粒子に圧力をかけると形成され、典型的には、直径が約25mmであり厚さが約10~15mmであるが、スラグの具体的なサイズは、本発明の制限要因ではない。ローラー圧縮の使用による乾式造粒は、材料粒子が回転プレスロール間で圧縮されるローラー圧縮ステップ、及び圧縮された材料を顆粒へと粉砕するその後の粉砕ステップを含む。「乾式造粒」では、固形調製物を調製するために使用可能な方法は、典型的には、液体を使用せず、及び/又は乾燥ステップを必要としない。「顆粒」という用語自体は、必ずしも特定の形状を示唆するわけではない。というのは、顆粒の最終的な形状は、具体的な調製方法により制御されることになるためである。
【0022】
また、本発明は、本発明による固形調製物を含む医薬調製物を提供する。従って、本発明は、固形調製物を含む医薬調製物にも関する。固形調製物は、一切の改変を行うことなく医薬調製物として使用することができるが、例えば、錠剤などの他の医薬調製物へと加工することもでき、又はサシェ若しくはカプセルに充填することもできる。
好ましくは、医薬調製物は経口投与用である。従って、本発明は、経口投与用の医薬調製物である医薬調製物にも関する。
更により好ましくは、医薬調製物は即時放出調製物である。従って、本発明は、即時放出調製物である医薬調製物に更に関する。
例示的な実施形態では、医薬調製物、好ましくは錠剤は、20分又はそれよりも短時間、好ましくは15分又はそれよりも短時間、より好ましくは10分又はそれよりも短時間など、30分又はそれよりも短時間の崩壊時間により特徴付けられる。上記で参照されている崩壊時間は、USP-NF<701>(USP39-NF34 537頁;Pharmacopeial Forum:34巻(1)155頁)崩壊に準拠した崩壊装置で、37℃の0.01NHCl中で測定される。装置は、バスケット-ラックアセンブリ、1000mLの浸漬流体用低形成ビーカー、加熱用の恒温装置、及び浸漬流体内でバスケットを上下させるためのデバイスで構成される。バスケット-ラックアセンブリは、その軸に沿って垂直に移動し、6つの両端開口透明チューブで構成されており、チューブは、2枚のプレートにより垂直位置に保持されている。下部プレートの下面には、ステンレス鋼編みのワイヤークロスが取り付けられている。個々のモノグラフ(monograph)で指定されている場合、各チューブには円筒形ディスクが設けられている。ディスクは、好適な透明プラスチック材料で作られている。バスケットの6つのチューブの各々に1投薬量単位を置き、ディスクを追加する。指定の媒体を浸漬流体として使用し、37±2°に維持して装置を操作する。時間制限の終了時に又は事前に設定された間隔でバスケットを流体から持ち上げ、錠剤が完全に崩壊したか否かを観察する。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明による医薬調製物は、固形調製物及び任意で1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含むカプセルである。カプセル自体は、硬質ゼラチンカプセルなどの任意の薬学的に許容されるカプセルであってもよいが、好ましくは容易に溶解可能であるべきである。
例示的な実施形態では、医薬調製物は、カプセルに含まれる全ての材料の総質量、つまりカプセルの総質量からカプセルシェルの質量を引いたものに基づき、40~100%(質量/質量)、例えば少なくとも50%(質量/質量)、より好ましくは少なくとも70、80、90、95、又は99%(質量/質量)の本発明による固形調製物、及び0~60%(質量/質量)の、つまり混合物の残部質量(100%(質量/質量)との差)の、好ましくは、充填剤、潤滑剤、流動促進剤、崩壊剤、及び無機アルカリ金属塩から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤で構成される混合物を含むカプセルである。
【0024】
無機アルカリ金属塩、つまりアルカリ金属のイオン及び無機酸アニオンで構成される塩は、溶解促進に有用であることが比較的最近見出されており、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、及び重炭酸ナトリウムを含む。塩化ナトリウムが特に好ましい。
本発明の好ましい実施形態は、カプセルに含まれる全ての材料の総質量に基づき、40~100%(質量/質量)の固形調製物、並びに0~60%(質量/質量)の、好ましくは充填剤、流動促進剤、崩壊剤、及び潤滑剤から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含むカプセルである医薬調製物に関する。
例により示されることになるように、カプセル製剤は、カプセルに含まれる全ての材料の総質量に基づき、例えば、100、99.5、99、90、80、75、70、60、若しくは50%(質量/質量)の、又はこうした値の任意の組合せにより囲まれる任意の範囲の固形製剤を含んでいてもよい。残部(100%(質量/質量)との差)の充填剤は、上記に示されているように、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤により構成される。
【0025】
例示的な実施形態では、医薬調製物は、カプセルの総質量に基づき、
50~100%(質量/質量)の本発明による固形調製物、
0~20%(質量/質量)の崩壊剤、
0~50%(質量/質量)の充填剤、
0~5%(質量/質量)の潤滑剤、
0~5%(質量/質量)の流動促進剤、
0~20%(質量/質量)の無機アルカリ金属塩、及び
合計0~20%(質量/質量)の1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤
を含む充填剤を含むカプセルである。
上記の例示的な実施形態には、充填剤が、例えば、5~50%(質量/質量)の範囲、又は7.5~50%(質量/質量)の範囲、又は10~40%(質量/質量)の範囲で存在してもよい。
上記の例示的な実施形態には、好ましくは、無機アルカリ金属塩が存在し、例えば、2.5~20%(質量/質量)、又は5~17.5%(質量/質量)、又は少なくとも7.5%(質量/質量)、例えば約10又は15%(質量/質量)の量で含まれていてもよい。
より好ましい実施形態では、医薬調製物は錠剤であり、従って典型的には、固形調製物中に存在する薬学的に許容される賦形剤に加えて、少なくとも1つの更なる薬学的に許容される賦形剤を含む。少なくとも1つの追加の薬学的に許容される賦形剤は、好ましくは、充填剤、流動促進剤、崩壊剤、潤滑剤、無機アルカリ金属塩、又はそれらの組合せから選択される。従って、本発明は、錠剤であり、固形調製物中に存在する薬学的に許容される賦形剤に加えて、任意で、充填剤、崩壊剤、流動促進剤、及び潤滑剤から選択される1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬調製物にも関する。
【0026】
例示的な実施形態では、医薬調製物は、固形調製物及び任意で更なる賦形剤を含む錠剤であり、錠剤は、その総質量に基づき、
i)20~80%(質量/質量)の3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩、
ii)10~70%(質量/質量)の充填剤、
iii)0~20%(質量/質量)の結合剤、
iv)0~20%(質量/質量)の崩壊剤、
v)0~5%(質量/質量)の潤滑剤、
vi)0~7.5%(質量/質量)の流動促進剤、及び
vii)合計0~20%(質量/質量)の1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤としては、保存剤、抗酸化剤、甘味料、香味料、色素、界面活性剤、及びウィッキング剤から選択される1つ又は複数を挙げることができる。
多くの賦形剤は、医薬剤形の他の成分に応じて、1つよりも多くの機能を発揮することができる。明瞭性のため、特に質量パーセントを算出する場合、本発明による医薬調製物に使用される各々の薬学的に許容される賦形剤は、好ましくは1つの機能性にのみ関連付けられ、つまり崩壊剤又は潤滑剤のいずれかである。
【0027】
別の例示的な実施形態では、医薬調製物は、固形調製物及び任意で更なる賦形剤を含む錠剤であり、錠剤は、その総質量に基づき、
i)30~70%(質量/質量)の3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩、
ii)20~60%(質量/質量)の充填剤、
iii)0~10%(質量/質量)の結合剤、
iv)0.25~10%(質量/質量)の崩壊剤、
v)0~4%(質量/質量)の潤滑剤、
vi)0~5%(質量/質量)の流動促進剤、及び
vii)合計0~10%(質量/質量)の1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
【0028】
更なる例示的な実施形態では、医薬調製物は、固形調製物及び任意で更なる賦形剤を含む錠剤であり、錠剤は、その総質量に基づき、
i)35~60%(質量/質量)の3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩、
ii)40~60%(質量/質量)の充填剤、
iii)0~5%(質量/質量)の結合剤、
iv)0.5~5%(質量/質量)の崩壊剤、
v)0.25~3%(質量/質量)の潤滑剤、
vi)0~2%(質量/質量)の流動促進剤、及び
vii)合計0~10%(質量/質量)の1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤
を含む。
【0029】
好ましくは、こうした実施形態では、充填剤はマンニトール又はラクトースであり、結合剤は微結晶性セルロースであり、崩壊剤は、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロース、並びにそれらの塩及び誘導体から選択され、特にクロスカルメロースナトリウムであり、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、及びステアリルフマル酸ナトリウムから選択され、並びに/又は流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素及びその誘導体から選択される。特に好ましい実施形態では、充填剤はマンニトールであり、結合剤は微結晶性セルロースであり、崩壊剤はクロスポビドンであり、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムであり、流動促進剤はコロイド状二酸化ケイ素である。
【0030】
好ましくは、1つ又は複数の追加の薬学的に許容される賦形剤の合計は、0~10%(質量/質量)、0~7.5%(質量/質量)、0~5%(質量/質量)、0~2.5%(質量/質量)、又は0~1%(質量/質量)、例えば0%(質量/質量)である。
無論、味及び/若しくは外観を向上させるために、並びに/又は湿気などの外部影響から錠剤を保護するために、錠剤をコーティングしてもよい。いかなるコーティングも、上記に列挙されているような、錠剤を構成する薬学的活性成分及び薬物物質の合計100%(質量/質量)には含めないものとする。フィルムコーティングの場合、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリレート、ポリエチレングリコール、及びゼインを含む修飾セルロースなどの巨大分子物質を使用することができる。コーティングの厚さは、好ましくは200μm未満である。
また、本発明は、固形調製物を調製するための方法であって、スラグ圧縮及びローラー圧縮、好ましくはローラー圧縮などの乾式造粒を行うことを含む方法を提供する。従って、本発明は、固形調製物を調製するための方法、乾式造粒するための、好ましくはローラー圧縮を行うための方法にも関する。
【0031】
「ローラー圧縮」又は「ローラー圧縮する」という用語は、粉末又は粒子が2つの逆回転ロール間に押し込まれ、固形圧縮物又はリボンへとプレスされるプロセスを指す。ローラー圧縮は、当業者に公知の任意の好適なローラー圧縮機を用いて実施することができる。好適なローラー圧縮機としては、例えば、Fitzpatrick Company,USA社のFitzpatrick(登録商標)Chilsonator IR220ローラー圧縮機が挙げられる。プロセスパラメータ、特に圧延力は、当業者のありふれた一般知識に基づき日常的実験作業により容易に達成することができる。好適な圧延力は、例えば、2~16kN/cmの範囲、より好ましくは4~12kN/cmの範囲、最も好ましくは4~8kN/cmの範囲であってもよい。
【0032】
例示的な実施形態では、この方法は、
(a)3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩、及び充填剤、及び任意で1つ又は複数の更なる薬学的に許容される賦形剤を混合するステップ、
(b)ステップ(a)により調製された混合物を乾式造粒して固形調製物を形成するステップ、及び
(c)任意で粉砕を行うステップ
を含む。
ステップ(a)で使用される好ましい薬学的に許容される賦形剤は、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、及び流動促進剤から選択される。好ましい実施形態によると、この方法で使用される乾式造粒はローラー圧縮である。
【0033】
調製された固形調製物は、錠剤又はカプセルなどの医薬調製物の調製に使用することができる。固形調製物を含む錠剤である医薬調製物を調製するための例示的な方法は、
(a)上記に記載の方法を実施して、固形調製物を形成するステップ、
(b)固形調製物及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を混合するステップ、
(c)ステップ(b)で調製された混合物を錠剤化(tableting)するステップ、及び
(d)任意で、ステップ(c)により調製された錠剤をフィルムコーティングするステップ
を含む。
【0034】
錠剤化、それに対応する錠剤への圧縮は、一般的に使用される偏心プレス又は回転プレスを用いて実施することができる。
固形調製物を含むカプセルである医薬調製物を調製するための例示的な方法は、
(a)上記方法を実施して、固形調製物を形成するステップ、
(b)任意で、固形調製物及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を混合し、任意で、好ましくはローラー圧縮により得られる混合物を造粒するステップ
(c)ステップ(b)により調製された混合物又は顆粒、又はステップ(a)により調製された固形調製物をカプセルに充填するステップ
を含む。
上記の緒言セクションに示されているように、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、がんの治療に応用が見出されるc-Metチロシンキナーゼ阻害剤として有用な特性を呈することが見出されている。この物質は、現在、臨床治験で調査中である。
【0035】
従って、本発明は、がんの治療に使用するための、上記に記載の通りの固形調製物、それに対応する医薬調製物を提供する。
任意で、がんの治療は、放射線療法を更に含む。従って、本発明は、任意で放射線療法と共にがんの治療に使用するための本発明の医薬調製物にも関する。好適な放射線療法治療は、国際公開第2012/028233号パンフレットに記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
任意で、放射線療法の代わりに又は加えて、がんの治療は、化学療法を含んでいてもよい。従って、本発明は、がんの治療に使用するための医薬調製物であって、治療は、化学療法を更に含む、医薬調製物にも関する。
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルと組み合わせて、化学療法に使用することができる好適な薬学的活性成分としては、一例を挙げれば、シスプラチン及びエトポシド又はそれらの組合せが挙げられる。
【0036】
任意で、放射線療法及び/又は化学療法の代わりに又は加えて、がんの治療は、免疫療法を含んでいてもよい。従って、本発明は、がんの治療に使用するための医薬調製物であって、治療は、免疫療法を更に含む、医薬調製物にも関する。
従って、本発明は、それを必要とする患者のがんを治療するための方法であって、任意で放射線療法、化学療法、又は免疫療法、又はそれらの任意の組合せと組み合わせて、本発明による医薬調製物を患者に投与することを含む方法も提供する。例示的な実施形態では、本発明は、結腸、肺、頭頸部、膵臓、及びそれらの組織学的サブタイプから選択される、それを必要とする患者のがんを治療するための方法であって、本発明による固形調製物又は医薬調製物中の3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル又はその薬学的に許容される塩を、エトポシド及びプラチンから選択される少なくとも1つの追加の療法剤と組み合わせて、患者に投与するステップを含む方法を提供する。
以下において、本発明は、その例示的な実施形態を参照することにより説明されることになるが、それらは、本発明を限定するものとはみなされないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】製剤試作品(白色三角:実施例A;黒色丸:実施例B;黒色三角:実施例C;白色丸:実施例D)の溶解曲線を示す図である。これらは全て3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルを含む。溶解条件は以下の通りである:5mmol/L塩化ナトリウム及び0.1%Tween80を有するpH=4.5の900mL酢酸緩衝液、パドル装置を37℃にて75rpmで使用。
図2】溶解媒体である酢酸緩衝液pH4.5+3mmol/NaCl+0.1%Tweenにおける実施例12~19の溶解曲線を示す図である。これらは、良好な溶解を示している。実施例12:黒色円;実施例13:白色丸;実施例14:黒色三角;実施例15:白色三角;実施例16:黒色四角;実施例17:白色四角;黒色ひし形:実施例18;白色ひし形:実施例19。
図3】弾性特性に関する、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル(黒色点)とコーンスターチ(白色点)との比較を示す図である。
図4】異なる薬学的に使用される充填剤を有する3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの比較を示す図である。黒色三角:リン酸二カルシウム、白色丸:マンニトール、白色三角:ラクトース、黒色点:3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル。
【実施例
【0038】
予備製剤化例
湿式造粒技法を評価する例
実施例A)
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル(30.99%)、ラクトース(32.39%)、微結晶性セルロース101型(23.00%)、ポビドン25(3.76%)、クロスポビドン(3.76%)を含む実施例A(図1の白色三角)を、高剪断造粒法により製造した。その後、得られた顆粒を1.0mmふるいでふるいにかけ、続いてクロスポビドン(2.35%)、ポビドン25(1.41%)、ステアリン酸マグネシウム(0.94%)、タルカム(0.94%)、及び二酸化ケイ素(0.47%)と混合し、シングルポンチプレスで、破砕抵抗力がおよそ125Nであり、崩壊時間が<10分であり、総質量がおよそ645mgである錠剤へと加工した。
【0039】
実施例B)
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル(77.29%)及びデンプン1500(19.32%)を含む実施例B(図1の黒色丸)は、高剪断造粒法により製造された。その後、得られた顆粒を1.0mmふるいでふるいにかけ、続いてカルボキシメチルデンプンナトリウム(1.93%)、ステアリン酸マグネシウム(0.97%)、及び二酸化ケイ素(0.48%)と混合し、シングルポンチプレスで、破砕抵抗力がおよそ144Nであり、崩壊時間が<8分であり、総質量がおよそ259mgである錠剤へと加工した。
【0040】
実施例C)
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル(26.50%)、ラクトース(4.41%)、ヒプロメロース(1.11%)、及びリン酸カルシウム二水和物(53.01%)を含む実施例C(図1の黒色三角)は、当業者であれば選択することになる流動床造粒法により製造された。その後、得られた顆粒を0.8mmふるいでふるいにかけ、続いてアルファ化デンプン(9.89%)、ステアリン酸マグネシウム(0.99%)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(2.47%)、及び二酸化ケイ素(0.49%)と混合し、シングルポンチプレスで錠剤へと加工した。その後、錠剤を、ポリビニルアルコールに基づく市販の事前調合フィルムコーティング混合物を使用してコーティングし、コーティングは、製剤全体の1.13%で存在した。得られた錠剤は、破砕抵抗力がおよそ159Nであり、崩壊時間が<6分であり、総質量がおよそ755mgであった。
【0041】
実施例D)
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル(26.66%)、ラクトース(4.44%)、ヒプロメロース(1.11%)、及びリン酸カルシウム無水物(53.31%)を含む実施例D(図1の白色丸)は、当業者であれば選択することになる流動床造粒法により製造された。
その後、得られた顆粒を0.8mmふるいでふるいにかけ、続いてデンプン1500(9.89%)、ステアリン酸マグネシウム(0.99%)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(1.98%)、及び二酸化ケイ素(0.49%)と混合し、シングルポンチプレスで錠剤へと加工し、およそ741.8mgの錠剤コアにした。
その後、錠剤を、ポリビニルアルコールに基づく市販の事前調合フィルムコーティング混合物を使用してコーティングし、コーティングは、製剤全体の1.13%で存在した。得られた錠剤は、破砕抵抗力がおよそ159Nであり、崩壊時間が<6分であり、総質量がおよそ750mgであった。
図1から理解することができるように、高剪断造粒により調製される顆粒で製造される錠剤(実施例A及びB)は、良好なin vitro放出特性を示さない。更に、流動床造粒により調製される顆粒で製造される錠剤(実施例C及びD)は、高剪断造粒試作品(実施例A及びB)よりも良好なin vitro放出特性を示すが、達成可能な最大薬物負荷には制限がある。
【0042】
材料特性ヤング率を評価する例
材料剛性の指標としてヤング率を評価し(ヤング率が高いほど、物質はより硬性である)、その測定は、多孔度と補完関係である固体分率に依存して行われた(つまり、固体分率=1-多孔度)。これにより、固体分率が1である場合は多孔度がないこと、つまり固相に空気が閉じ込められていないことを示す。薬学的に関連する固体分率は、通常0.75~0.85の範囲である。多孔度は、窒素比重びん法により決定された。
ヤング率を決定するための測定は、超音波支援測定ポンチを有する市販の計装シングルポンチプレス(Romaco Kilian StylOneシステム)で実施された。この目的のため、ニート物質を上部ポンチと下部ポンチとの間で圧縮し、材料を高密度化した。高密度化の度合いに依存する試料の超音波速度を記録し、特定の物質のヤング率の算出に使用した。
この調査では、以下のニート材料が選択された。
【表1】
【0043】
図3から理解することができるように、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル(黒色点)は、弾性が高く、好ましくない圧縮特性を有することが公知な物質であるコーンスターチ(白色点)と同様の特性を示す。更に、図4は、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルは、広く使用されている薬学的充填剤(リン酸二カルシウム、マンニトール、及びラクトース)と比較して、明らかにより低いヤング率を有する。
【0044】
製剤化例
実施例E
例示的な固形調製物製剤
50値を上記に記載の通りに記録した。D50値は70~530μmの範囲である。
かさ密度を、DIN53468に準拠し100mLビーカーを使用して決定した。
【0045】
実施例1
成分を秤り取り(バッチサイズは103.2kg)、1.0mmふるいでふるいにかけた。市販のビンブレンダー(例えば、Servolift)で、ステアリン酸マグネシウムを除く全ての成分を15分間12rpmで混合することにより配合物を生産した。その後、ステアリン酸マグネシウムを添加し、混合物全体を5分間12rpmで再び混合した。その後、混合物を、固形調製物を製造するためにローラー圧縮機に移した。ローラー圧縮機(Gerteis Macropactor)を、以下の設定で運転した:圧縮力12kN/cm、ギャップ幅2.5mm、ロール速度3.0rpm。得られた顆粒を0.8mmふるいでふるいにかけた。
実施例2
成分を秤り取り(バッチサイズは2.4kg)、ステアリン酸マグネシウムを除き1.0mmふるいでふるいにかけた。市販のTurbula T50Aブレンダーで、ステアリン酸マグネシウムを除く全ての成分を15分間混合することにより配合物を生産した。ステアリン酸マグネシウムを0.5mmのふるいにかけ、その後混合物に添加し、次いでそれを5分間再び混合した。その後、混合物を、固形調製物を製造するためにローラー圧縮機に移した。ローラー圧縮機(Alexanderwerk WP120P)を、以下の設定で運転した:圧縮力4.0kN/cm、ギャップ幅1.0mm、ロール速度4.0rpm。得られた顆粒を1.0mmふるいでふるいにかけた。
実施例3~8
成分を秤り取り(バッチサイズは1.0kg)、1.0mmふるいでふるいにかけた。市販のServoliftビンブレンダーで、全ての成分を15分間12rpmで混合することにより配合物を生産した。その後、混合物を、固形調製物を製造するためにローラー圧縮機に移した。ローラー圧縮機(Gerteis Macropactor)を、以下の設定で運転した:圧縮力3.0kN/cm、ギャップ幅3.0mm、ロール速度3.0rpm。得られた顆粒を1.0mmふるいでふるいにかけた。
【0046】
実施例9
成分を秤り取り(バッチサイズは33.2kg)、1.0mmふるいでふるいにかけた。市販のServoliftビンブレンダーにて全ての成分を15分間12rpmで混合することにより配合物を生産した。その後、混合物を、固形調製物を製造するためにローラー圧縮機に移した。ローラー圧縮機(Gerteis Macropactor)を、以下の設定で運転した:圧縮力4.5kN/cm、ギャップ幅3.0mm、ロール速度3.0rpm。得られた顆粒を0.8mmふるいでふるいにかけた。
【表2】





【0047】
例示的な錠剤製剤
崩壊性及び脆砕性試験は、欧州薬局方第9.8版セクション2.9.1(崩壊)及びセクション2.9.7(未コーティング錠剤の脆砕性)に記載されている。
実施例10
実施例1の固形調製物を、クロスポビドンと15分間混合した。その後、ステアリン酸マグネシウムを添加し、混合物全体を5分間12rpmで再び混合した。混合物全体を、18.8×9.2mmのポンチ、1.6kNの予圧縮力、及び20000単位/時間の錠剤化速度にて17.1kNの主圧縮力を使用して、回転式錠剤プレスで錠剤化した。
実施例11
実施例2の固形調製物を、成分と10分間混合した。混合物全体を、18×8mmのポンチ、及び1860単位/時間の錠剤化速度にて12kNの圧縮力を使用して、シングルポンチプレスで錠剤化した。崩壊時間及び脆砕性の値は、100Nの破砕に対する耐性についてである。
実施例12
実施例3の固形調製物を、全ての成分と15分間12rpmで混合した。混合物全体を、19×9mmのポンチ、及び1500単位/時間の錠剤化速度にて15kNの圧縮力を使用して、シングルポンチプレスで錠剤化した。崩壊時間及び脆砕性の値は、150Nの破砕に対する耐性についてである。
【0048】
実施例13
実施例4の固形調製物を、全ての成分と15分間12rpmで混合した。混合物全体を、19×9mmのポンチ、及び2460単位/時間の錠剤化速度にて21kNの圧縮力を使用して、シングルポンチプレスで錠剤化した。崩壊時間及び脆砕性の値は、110Nの破砕に対する耐性についてである。
実施例14
実施例5の固形調製物を、全ての成分と15分間12rpmで混合した。混合物全体を、19×9mmのポンチ、及び2520単位/時間の錠剤化速度にて17kNの圧縮力を使用して、シングルポンチプレスで錠剤化した。崩壊時間及び脆砕性の値は、160Nの破砕に対する耐性についてである。
実施例15
実施例6の固形調製物を、全ての成分と15分間12rpmで混合した。混合物全体を、19×9mmのポンチ、及び2460単位/時間の錠剤化速度にて17kNの圧縮力を使用して、シングルポンチプレスで錠剤化した。崩壊時間及び脆砕性の値は、150Nの破砕に対する耐性についてである。
【0049】
実施例16
実施例7の固形調製物を、全ての成分と15分間12rpmで混合した。混合物全体を、19×9mmのポンチ、及び2460単位/時間の錠剤化速度にて17kNの圧縮力を使用して、シングルポンチプレスで錠剤化した。崩壊時間及び脆砕性の値は、110Nの破砕に対する耐性についてである。
実施例17
実施例8の固形調製物を、全ての成分と15分間12rpmで混合した。混合物全体を、19×9mmのポンチ、及び2460単位/時間の錠剤化速度にて17kNの圧縮力を使用して、シングルポンチプレスで錠剤化した。崩壊時間及び脆砕性の値は、150Nの破砕に対する耐性についてである。
実施例18
実施例6の固形調製物を、全ての成分と15分間12rpmで混合した。混合物全体を、19×9mmのポンチ、及び2460単位/時間の錠剤化速度にて15kNの圧縮力を使用して、シングルポンチプレスで錠剤化した。崩壊時間及び脆砕性の値は、165Nの破砕に対する耐性についてである。
実施例19
実施例8の固形調製物を、全ての成分と15分間12rpmで混合した。混合物全体を、19×9mmのポンチ、及び2460単位/時間の錠剤化速度にて15kNの圧縮力を使用して、シングルポンチプレスで錠剤化した。崩壊時間及び脆砕性の値は、170Nの破砕に対する耐性についてである。
実施例20
実施例7の固形調製物を、全ての成分と15分間12rpmで混合した。混合物全体を、19×9mmのポンチ、及び2460単位/時間の錠剤化速度にて17kNの圧縮力を使用して、シングルポンチプレスで錠剤化した。崩壊時間及び脆砕性の値は、150Nの破砕に対する耐性についてである。
【0050】
実施例21
実施例9の固形調製物を、全ての成分と15分間12rpmで混合した。混合物全体を、18×9mmのポンチ、5.0kNの予圧縮力、及び30000単位/時間の錠剤化速度にて13.0kNの主圧縮力を使用して、回転式錠剤プレスで錠剤化した。
【表3】


【0051】
例示的なカプセル製剤
崩壊試験は、欧州薬局方第9.8版セクション2.9.1(崩壊)に記載されている。
実施例22:例示的なカプセル製剤
実施例1~9の異なる固形調製物を含むHPMCカプセルを、そのような調製物を下記に示されている通りの更なる賦形剤と混合し、そのような混合物をカプセルシェルに充填することにより調製した。カプセル製剤の崩壊は9分未満である。
【表4】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】