(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(54)【発明の名称】CVDリアクタ用のガス導入部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20220907BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501030
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(85)【翻訳文提出日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2020069473
(87)【国際公開番号】W WO2021009019
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】102019119019.3
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502010251
【氏名又は名称】アイクストロン、エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】ショーン、オリバー
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030BA08
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4K030JA03
5F045AA04
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(57)【要約】
本発明は、中心10の周りに配置された複数のガス放出孔7、17を有する、CVDリアクタ1用のガス導入要素2のガス放出エリア、又は、ガス導入要素2用の遮蔽プレート14のガス放出エリアに関し、ガス放出孔7、17の中心点8’は、同一形状で幾何学的中心点9を具備する多角形のセル8の頂点8’に位置し、セル8の辺8”の位置及び長さは、交差する基準ライン13、13,13’、13”により規定され、基準ライン13、13’、13”は少なくとも2つのライン群に割り当てられ、かつ、各ライン群における基準ラインは直線状にかつ互いに平行にガス放出エリア全体に亘って延在している。本発明によれば、中心10が、辺の長さの3分の1±10%に等しい距離だけ頂点8’から離れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心(10)の周りに配置された複数のガス放出孔(7、17)を有する、CVDリアクタ(1)用のガス導入部材(2)のガス放出面(16)、又は、ガス導入部材(2)用の遮蔽プレート(14)のガス放出面(16)であって、前記ガス放出孔(7、17)の中心点(8’)が、同一形状で幾何学的中心点(9)を有する多角形のセル(8)の頂点(8’)に位置し、前記セル(8)の辺(8”)の位置及び長さは、交差する基準ライン(13、13’、13”)により規定され、前記基準ライン(13、13’、13”)は少なくとも2つのライン群に割り当てられており、かつ各ライン群における前記基準ラインは、前記ガス放出面全体に亘って直線状にかつ互いに平行に延在している、前記ガス放出面(16)において、
前記中心(10)が、前記辺の長さの3分の1±10%だけ前記頂点(8’)から離れて位置することを特徴とするガス放出面。
【請求項2】
前記セル(8)が、等しい長さの辺(8”)を有することを特徴とする請求項1に記載のガス放出面(16)。
【請求項3】
前記中心(10)が、一つのセル(8)の領域における中心点(9)から離れて位置することを特徴とする前出請求項の1つに記載のガス放出面(16)。
【請求項4】
前記セル(8)が、正多角形であり、かつ/又は、正三角形又は正方形であることを特徴とする前出請求項の1つに記載のガス放出面(16)。
【請求項5】
前記辺(8”)の長さが、7.07mm±10%であることを特徴とする前出請求項の1つに記載のガス放出面(16)。
【請求項6】
ガス分配器(6)と、ガス放出面(16)上に均一に分布したガス放出孔(7)を具備するガス放出プレート(15)とを備えたガス導入部材において、
請求項1~4のいずれかに記載のガス放出面(16)を有することを特徴とするガス導入部材。
【請求項7】
前記ガス放出面(16)が、ガス放出孔(7)の同一配列を具備して前記ガス放出プレート(15)上に配置された遮蔽プレート(14)により形成されていることを特徴とする請求項6に記載のガス導入部材。
【請求項8】
ハウジングと、ハウジング内に配置されたガス導入部材(2)と、前記ガス導入部材(2)のガス放出面(16)から離間して配置され回転軸(18)の周りで回転駆動可能であり処理される基板(5)を受容するためのサセプタ(3)とを備えたCVDリアクタ(1)において、
前出請求項の1つに記載のガス放出面を有することを特徴とするCVDリアクタ。
【請求項9】
前記ガス放出面(16)が、ガス放出孔(7)の同一配列を具備して前記ガス放出プレート(15)上に配置された遮蔽プレート(14)により形成されていることを特徴とする請求項8に記載のCVDリアクタ。
【請求項10】
ガス放出面(16)の中心(10)の周りに配置された複数のガス放出孔(7、17)を有する前記ガス放出面(16)を備えた、CVDリアクタ(1)用のガス導入部材(2)であって、前記ガス放出孔(7、17)の中心点(8’)が、同一形状で幾何学的中心点(9)を有する多角形のセル(8)の頂点に位置し、前記セル(8)の辺(8”)の位置は、交差する基準ライン(13、13’、13”)により規定され、前記基準ライン(13、13’、13”)は少なくとも2つのライン群に割り当てられており、かつ各ライン群における前記基準ラインは、前記ガス放出面全体に亘って直線状にかつ互いに平行に延在しており、前記中心(10)は、一つの前記セル(8)の領域における前記頂点(8’)からも、前記中心点(9)からも離れて位置する、前記ガス導入部材(2)において、
前記ガス放出面(15)のプロセスチャンバに向いた面上に配置された遮蔽プレート(14)を有し、前記遮蔽プレート(14)のガス放出孔(17)は、前記ガス導入部材(2)の前記ガス放出孔(7)と整列していることを特徴とするガス導入部材。
【請求項11】
中心(10)の周りに配置された複数のガス放出孔(7、17)を有する、CVDリアクタ(1)用のガス導入部材(2)のガス放出面、又は、ガス導入部材(2)用のガス放出面であって、一つの中央部のガス放出孔(7、17)の中心点(8’)が、前記中心(10)から第1の距離だけ離れて位置する、前記ガス放出面において、
前記第1の距離が、最大で前記ガス放出孔(7、17)の半径に対応し、かつ、前記中央部のガス放出孔(7、17)の中心点(8’)から前記中央部のガス放出孔(7、17)に最も近いガス放出孔(7、17)の中心点(8’)までの第2の距離が、2つのガス放出孔(7、17)の直径(D)の和よりも小さいこと、及び/又は、
前記ガス放出面(16)の前記中心(10)が、一つのセル(8)の領域における頂点(8’)から離れて位置すると共に中心点(9)からも離れて位置すること、及び/又は、
辺(8”)の長さが前記ガス放出孔(7、17)の直径の2倍よりも小さいこと、及び/又は、
前記ガス放出孔(7、17)が、4mm±10%の直径を有すること、及び/又は、
前記中心(10)が前記ガス放出孔(7、17)の縁に位置すること、及び/又は、
前記中心(10)が2mm±10%だけ前記頂点(8’)から離れて位置することを特徴とするガス放出面。
【請求項12】
前出請求項の1つに記載に記載のガス放出面であって、
前記中心(10)が頂点(8’)で交差する2本の基準ライン(13、13’、13”)の角二等分線(12)の方向に前記頂点(8’)から離れていること、及び/又は、
辺(8”)の長さが7.07mm±10%であること、及び/又は、
互いに同一形状のガス放出孔(7、17)が円形輪郭を有すること、及び/又は、
前記辺(8”)の長さが前記ガス放出孔(7、17)の直径の2倍よりも小さいこと、及び/又は、
前記ガス放出孔(7、17)が4mm±10%の直径を有すること、及び/又は、
前記中心(10)が前記ガス放出孔(7、17)の縁に位置すること、及び/又は、
前記中心(10)が2mm±10%だけ前記頂点(8’)から離れて位置することを特徴とするガス放出面。
【請求項13】
請求項9に記載のCVDリアクタ(1)の動作方法であって、
前記サセプタ(3)が、ハウジングに固定されたガス導入部材(2)に対して回転軸(18)の周りで回転させられ、前記ガス放出面(16)の中心(10)が、前記回転軸(18)上に位置しかつ一つの前記セルの領域における前記頂点(8’)から離れて位置すると共に前記中心点(9)からも離れて位置することを特徴とする方法。
【請求項14】
前出請求項の1つに記載の1又は複数の特徴的特徴を特徴とするガス放出面、ガス導入部材、CVDリアクタ、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心の周りに配置された複数のガス放出孔を有する、CVDリアクタ用のガス導入部材のガス放出面、又は、ガス導入部材用の遮蔽プレートのガス放出面に関し、ガス放出孔の中心点が、同一形状で幾何学的中心点を有する多角形のセルの頂点に位置し、それらのセルの辺は、交差する基準ラインにより規定され、それらの基準ラインは少なくとも2つのライン群に割り当てられており、かつ、各ライン群における基準ラインは、ガス放出面全体に亘って直線状にかつ互いに平行に延在している。
【0002】
本発明はさらに、そのようなガス放出面を有するガス導入部材、ガス導入部材のガス放出面上に固定された遮蔽プレート、及び、そのようなガス導入部材又はそのような遮蔽プレートを備えたCVDリアクタに関する。
【背景技術】
【0003】
CVDリアクタはガス導入部材を有し、それを用いてプロセスガスを、加熱可能なプロセスチャンバ内に供給することができる。プロセスチャンバ内には基板が配置され、基板はCVDリアクタ内で熱処理され、例えば基板表面上に層が堆積される。
【0004】
そのようなガス導入部材は、特許文献1~4に開示されている。特許文献1は、シャワーヘッド状に形成されたガス導入部材を記載している。ガス放出孔は、六角形上に配置されている。ガス放出孔の中心点は、正三角形の頂点に位置している。正三角形で形成されたセルの辺は、それぞれ基準ラインで形成されている。基準ラインは、ライン群で形成されている。各ライン群は、等間隔で互いに平行に延在する複数の基準ラインを含む。異なるライン群のそれらの基準ラインは、互いに120°傾斜している。
【0005】
特許文献4は、ガス放出孔の中心点が、フェルマー螺旋により形成された基準ラインの交点に位置するシャワーヘッドを記載している。
【0006】
特許文献5は、基板に向いた下面を備え、面上に規則正しく分布した複数の導入孔及び放出孔を有するガス導入部材を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2011 051 778号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1842 938号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2009 043 840号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2017/0167024号明細書
【特許文献5】国際公開第2019/ 199620号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなガス導入部材はCVDリアクタで使用されており、その場合、ガス導入部材又はガス放出面とサセプタとの間で相対的な回転が生じる。サセプタは、固定されたガス導入部材に対して回転軸の周りで回転する。この回転軸は中心を規定する。ガス導入部材は、円形のガス放出面を有することができる。そのような円形のガス放出面は、円形の中心を有し、ガス放出面を形成するガス放出プレートは中心を有する。円筒形のガス導入部材は、ガス放出面を形成する端面を有し、その端面は中心を有する。ガス放出孔は、そのような中心に対して規定された位置を有する。
【0009】
相対的回転中、各ガス放出孔は、サセプタの円環形状表面をいわば掃引するが、サセプタの中心点は、中心すなわち回転軸である。その中心が、中央部のガス放出孔の中心点に位置する場合、回転中にガス放出孔が全く移動してこない環状領域がこの円形領域の周りに残る。隣り合うガス放出孔の中心点を頂点とするセルの中心点と中心とが一致している場合にも、同様の状況が発生する。このような配置の場合も、中心の周りに位置する全ての円弧ラインが、少なくとも1つのガス放出孔を通過することが得られない。よって、ガス放出面の中央領域において例えば円形の「隙間」が存在し、それは、プロセスチャンバに対するプロセスガスの供給を減少させる可能性がある。
【0010】
本発明は、プロセス技術の観点から特にプロセスチャンバの中央領域におけるプロセスガスの供給性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、特許請求の範囲に規定された発明によって解決され、従属項は、下位の請求項に記載された発明の有利なさらなる発展を示すだけでなく、独立した解決手段も示す。
【0012】
本発明によれば、例えばガス放出面、ガス放出プレート、遮蔽プレート、ガス導入部材等の回転対称体の中心に対して、少なくとも中央部のガス放出孔の位置が規定される。
最初にかつ実質的に、同一形状のセルの頂点上にガス放出孔が配置される場合、例えば円形のガス放出面の中心点すなわちサセプタの回転軸である中心が、セルの頂点に対して離れて位置すると共にセルの領域の中心点に対しても離れて位置することが、提案される。
代替的形態において、しかしながら上述した技術的解決手段と組み合わせても実現可能であるが、本発明によれば、好ましくは同一形状の放出孔の一つが、中央部の放出孔を形成することが提案される。その場合、中心は、ガス放出孔の断面領域内に配置され、かつ好ましくは円形のガス放出孔の中心点から離れて位置する。その際、特に、中心がガス放出孔の縁にほぼ位置することによって、相対的回転中に中央部のガス放出孔が中心の周りを、ある程度回転するように設けることができる。さらに、中央部のガス放出孔からその最も近い位置にあるガス放出孔までの距離が、ガス放出孔の直径の2倍よりも小さいように設けることができる。隣り合う2つのガス放出孔の縁の間の距離は、ガス放出孔の、特に中央部のガス放出孔の直径よりも小さいことが有利である。
本発明によるガス放出孔の配置では、冒頭で述べた円形の「隙間」は全く形成されない。むしろ、ガス放出孔がそのようにガス放出面上に配置されることによって、特に、ガス放出面の中央部の領域において、中心の周りに描いた任意の円弧線が、少なくとも1つのガス放出孔と交差することになる。
ライン群に含まれる基準ラインは、それらの交点がガス放出孔の中心点の位置を規定するものであり、それらの基準ラインが、ガス放出面全体に亘って直線状にかつ互いに平行に延在することによって、多数の規則的な多角形を形成することができる。三角形又は四角形の多角形を形成でき、それらは好ましくは正多角形であることが好ましい。このように基準ラインの頂点により規定されかつその辺は基準ラインの断片であるセルは、幾何学的中心を有する。幾何学的中心は、セルの領域の重心でもよい。それらのセルは、一つの中央部のセルを含む。中心は、各頂点からもその領域の中心点からも離れている。セルは、等しい長さの辺を有することができる。
中心は、辺の長さのほぼ1/3±10%だけ頂点から離れて位置する。中心は、頂点で交差する2つの直線の角二等分線の方向に頂点から離間させることができる。さらに、辺の長さは、約7.07mm±10%とすることができる。ガス放出孔は、4mm±10%の直径を有することができる。中心は、頂点から2mm±10%だけ離れて位置することができる。
本発明によれば、ガス放出面上のガス放出孔の配置を、ガス導入部材のガス放出プレート上で実現することができる。ガス放出プレートは、冷却液が流れることができる空間、及び/又は、ガス放出孔を通ってプロセスチャンバに流入できるプロセスガスが供給される空間を区画している。
しかしながら、ガス放出孔の配置を、遮蔽プレート上で実現することもできる。このような遮蔽プレートは、ガス放出プレートに隣接してガス導入部材に取り付けられている。その場合、遮蔽プレートのガス放出孔は、ガス導入部材のガス放出プレートのガス放出孔と整列している。ガス放出プレートは、金属、ステンレス鋼、アルミニウム等から作製できる。遮蔽プレートは、セラミック材料、コーティングされたグラファイトから作製でき、又は金属からも作製できる。遮蔽プレートは、多孔質材料から作製できる。それは粗い表面を有することができる。
【0013】
本発明はさらに、金属製の耐ガス及び耐圧ハウジングを備えたCVDリアクタに関する。ハウジングの内部には、上述した特性を有しかつ特にシャワーヘッドの形状をもつガス導入部材がある。ガス放出面は、サセプタが回転駆動される回転軸の回転面内に延在している。サセプタの上面は、プロセスチャンバの床面を形成する。ガス導入部材のガス放出面は、プロセスチャンバの上面を形成する。サセプタの回転軸は、ガス導入部材の中心を規定し、その中心は、上述したように、中央部のガス放出孔の中心点から離れて配置されていると共に、ガス放出孔の配置における中央部のセルの中心点からも離れて配置されている。
ガス導入部材のガス放出プレートとサセプタとの間に、上述した特性を有する遮蔽プレートを配置することを提供できる。遮蔽プレートは、サセプタに向いたガス放出プレートの下面に接触して位置することができる。しかしながら、遮蔽プレートは、ガス放出プレートの下面から離間して位置することもできる。温度制御装置を設けることができる。温度制御装置によりサセプタを温度制御できる。温度制御装置は、加熱装置とすることができる。ガス導入部材は、同様に、ガス放出面を冷却し又は加熱するための温度制御装置を有することができる。
【0014】
ガス放出プレート及び/又は遮蔽プレートは、グラファイトから作製でき、又はSiCでコーティングされたもしくはTacでコーティングされたグラファイトから作製できる。しかしながら、ガス導入部材の表面は、ステンレス鋼製表面とすることが好ましい。したがって、ガス導入部材の壁及びガス放出プレートは、ステンレス鋼で作製することができる。遮蔽プレートのガス放出孔は、ガス放出プレートのガス放出孔と整列することができる。しかしながら、それらは離間して配置されることもできる。
【0015】
本発明はさらに、上述したCVDリアクタの動作方法に関する。その場合、サセプタが、中心を規定する回転軸の周りで回転駆動される。その中心は、中央部のセルの頂点から離れて位置すると共に、中央部のセルの領域の中心点からも離れて位置する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1の例示的実施形態のCVDリアクタの概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のラインII-IIにおけるガス導入部材2のガス放出面16の底面図である。
【
図5】
図5は、第2の例示的実施形態の、
図1と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
図1~
図5は、好ましくはMOCVDリアクタであるCVDリアクタの構造を概略的に示しており、その中では、III-V族基板又はIV族基板、例えばシリコン基板等をIII-V族層で被覆するコーティング工程が行われる。層は、例えば、ガリウムヒ化物層、ガリウムリン化物層、又はガリウム窒化物層とすることができる。このために、特にガス混合物であるプロセスガスが、シャワーヘッドとして形成されたガス導入部材2のガス分配器6にガス供給管19を通して供給される。ガス導入部材は、互いに分離され各々がその割り当てられたガス放出孔7を具備する複数のガス分配器6を備えることができる。例えばV族半導体の元素の水素化物又はIII族半導体の元素の有機金属化合物であるプロセスガスのガスが、これらのガス分配器6の各々に供給される。
【0018】
ガス分配器6の下方には、コーティングされたグラファイトプレートで形成されたサセプタ3がある。回転軸18が設けられ、その周りでサセプタ3を回転面内で回転駆動することができる。サセプタ3の下方には、サセプタ3をプロセス温度に加熱するための加熱装置4がある。CVDリアクタ1は、図示しないガス排出口に接続されたポンプにより排気することができる。
【0019】
ガス放出孔7を有するガス放出プレート15におけるサセプタ3に向いた下面が、ガス放出面16を形成する。これは
図2に示されている。
図3に示すガス放出面の拡大図では、ガス放出孔7の各々が円形の輪郭を有することを示している。例示的実施形態では、全てのガス放出孔7が同一の円形輪郭と約4mmの直径Dを有する。互いに最も近く位置する2つのガス放出孔7の縁は、ガス放出孔7の直径よりも小さい距離だけ互いに離れている。
【0020】
ガス放出孔7は、ガス放出面16上に六角形配置で均一に分布している。ガス放出孔7の配置の説明は、本開示において、基準ライン13、13’、13”を用いて行われる。基準ライン13、13’、13”の3つの群があり、各基準ライン13、13’、13”は互いに平行に延在し、等間隔である。互いに異なるライン群における基準ラインは、120°の角度で傾斜している。基準ライン13、13’、13”の全ての交点に、ガス放出孔7が配置されている。したがって、基準ライン13、13’、13”は、複数の同一形状のセル8を規定しており、各セルが正三角形の形状を有する。図示しない例示的実施形態では、2つのライン群が互いに90°をなす基準ラインを有することによって、セル8が正方形又は長方形の形状を有することができる。
【0021】
セル8の頂点8’は、例示的実施形態では、7.07mmの距離aで互いに離間している。ガス放出孔7は、頂点8’に一致する中心点と約4mmの直径Dを有する。
図4は、ガス放出面16の幾何学的中心点となり得る中心10を示し、中心10は、使用中には回転軸18の中心と一致する。本発明によれば、中心10は、セル8の幾何学的中心点9にも、セル8の頂点8’にも位置していない。例示的実施形態では、中心10は、頂点8’に対して約2mm離れている。中心10は、ここでは、中央部のガス放出孔7.1の縁に位置する。中心10は、角二等分線9上、すなわち頂点8’と中心点9を通って延在する直線上にあってもよい。中心10は、セル8の中心点9と中央部のガス放出孔7.1との間に位置することができる。ガス放出プレート15の幾何学的中心点又はガス導入部材2の遮蔽プレートの中心でもあり得る中心10はまた、中央部のガス放出孔7.1の断面領域内の任意の別の位置に位置してもよいが、その断面領域の中心点には位置しない。
【0022】
2つのガス放出孔7.2及び7.3は、中央部のガス放出孔7.1から等距離に位置している。中央部のガス放出孔7.1の2つの縁の、隣り合うガス放出孔7.2又は7.3からの距離bは、直径Dよりも小さい。したがって、ガス放出孔7の領域は、中心10の周りの相対的回転中に、中心10と隣り合うガス放出孔7.2、7.3の縁との間の環状の空き領域よりもわずかに大きい円形領域上を掃引する。
【0023】
よって、サセプタ3のガス放出面16に対する相対的回転中に、少なくとも1つのガス放出孔7によって掃引されないような環状領域は無くなる。
【0024】
図5に示す例示的実施形態は、
図1に示した例示的実施形態とは、ガス放出プレート15におけるプロセスチャンバに向いた面上に遮蔽プレート14が配置されている点のみにおいて実質的に異なってる。遮蔽プレート14のガス放出孔17は、ガス放出孔7と整列している。ガス放出孔17の配置は、
図2、
図3、及び
図4に示したものと一致している。
【0025】
遮蔽プレート14は、ここでは、そのガス放出孔17が、ガス放出プレート15のガス放出孔7と整列するように配置されている。図示しない例示的実施形態では、遮蔽プレート14がガス放出プレート15から離間しているが、ガス放出孔17もまた、ガス放出孔7から離間して配置することができる。ただし、この場合、遮蔽プレート14の中央部のガス放出孔17は、上述した特徴を有するように設けられる。
【0026】
以上の説明は、本願が対象とする発明を全体として説明するためのものであり、少なくとも以下の特徴の組み合わせによって先行技術をさらに発展させるものであるが、これらの特徴の組み合わせのうち2つ、いくつか、又はすべてを組み合わせることもできる。
【0027】
CVDリアクタ1用のガス導入部材2の、又は、ガス導入部材2用の遮蔽プレート14のガス放出面16であって、中心10が、頂点8’から辺の長さの3分の1±10%だけ離れて位置していることを特徴とする。
【0028】
ガス放出面16であって、セル8が、等しい長さの辺8’を有することを特徴とする。
【0029】
ガス放出面16であって、中心10が、セル8の領域における中心点9から離れて位置していることを特徴とする。
【0030】
ガス放出面16であって、セル8が、規則的な多角形であり、かつ/又は、三角形又は四角形であることを特徴とする。
【0031】
ガス放出面16であって、辺8”の長さが7.07mm±10%であることを特徴とする。
【0032】
ガス導入部材であって、請求項1~4のいずれかに記載のガス放出面16を有することを特徴とする。
【0033】
ガス導入部材であって、ガス放出面16が、ガス放出孔7の同一配列を具備してガス放出プレート15上に配置された遮蔽プレート14から形成されていることを特徴とする。
【0034】
ハウジングを備えたCVDリアクタ1であって、前出請求項の1つに記載のガス放出面を有することを特徴とする。
【0035】
CVDリアクタであって、ガス放出面16が、ガス放出孔7の同一配列を具備してガス放出プレート15上に配置された遮蔽プレート14から形成されている。
【0036】
ガス放出面を有する、CVDリアクタ用のガス導入部材2であって、ガス放出プレート15におけるプロセスチャンバに向いた面上に配置された遮蔽プレート14を有し、遮蔽プレート14のガス放出孔17は、ガス導入部材2のガス放出孔7と整列していることを特徴とする。
【0037】
CVDリアクタ1用のガス導入部材2の、又は、ガス導入部材2用の遮蔽プレート14のガス放出面であって、第1の距離が、最大でガス放出孔7、17の半径に対応し、かつ、中央部のガス放出孔7、17の中心点8’から隣り合うガス放出孔7、17の中心点8’までの第2の距離が、2つのガス放出孔7、17の直径Dの和よりも小さいこと、及び/又は、ガス放出面16の中心10が、一つのセル8の領域の頂点8’から離れて位置すると共に中心点9からも離れて位置していること、及び/又は、辺8”の長さが、ガス放出孔7、17の直径の2倍よりも小さいこと、及び/又は、ガス放出孔7、17が、4mm±10%の直径を有すること、及び/又は、中心10が、ガス放出孔7、17の縁に位置すること、及び/又は、中心10が、頂点8’から2mm±10%離れて位置することを特徴とする。
【0038】
ガス放出面であって、中心10が頂点8’で交差する2つの基準ライン13、13’、13”の角二等分線12の方向に頂点8’から離れていること、及び/又は、辺8”の長さが7.07mm±10%であること、及び/又は、互いに同一形状のガス放出孔7、17が円形輪郭を有すること、及び/又は、辺8”の長さがガス放出孔7、17の直径の2倍よりも小さいこと、及び/又は、ガス放出孔7、17が4mm±10%の直径を有すること、及び/又は、中心10がガス放出孔7、17の縁に位置すること、及び/又は、中心10が頂点8’から2mm±10%離れて位置することを特徴とする。
【0039】
CVDリアクタ1の動作方法であって、サセプタ3が、ハウジングに固定されたガス導入部材2に対して回転軸18の周りで回転させられ、ガス放出面16の中心10が回転軸18上に位置し、かつ、一つのセルの領域における頂点8’から離れて位置すると共に中心点9からも離れて位置することを特徴とする。
【0040】
しかしながら、ガス放出孔7、17の直径が、2mmより小さくもでき、例えば直径1.65mmとすることができる。そのような構成の場合、隣り合う2つのガス放出孔の間の距離を7.07mmとすることができる。ガス放出面の中心に最も近いガス放出孔の中心点は、中心から2.3mm離れていることができる。
【0041】
開示された全ての特徴は、(それ自体のために、また互いに組み合わされて)本発明に不可欠である。ここでの出願の開示は、関連する/追加された優先権書類(先の出願の写し)の開示内容をその内容全体に含み、それはこれらの書類の特徴を本願の請求項に組み込む目的でもある。従属請求項は、特にこれらの請求項に基づいて分割出願を行うために、引用される請求項の特徴がなくても、先行技術の独立した発明性のあるさらなる発展を特徴とする。各請求項で特定された発明は、前述の説明で特定された、特に参照符号が付与された、及び/又は符号の説明で特定された、1つ以上の機能を追加で有することができる。本発明はまた、特に、それらがそれぞれの使用目的に明らかに不要であるか、または技術的に同じ効果を有する他の手段で置き換えることができる限り、前述の説明で述べた特徴の個々のものが実装されない設計形態に関する。
【符号の説明】
【0042】
1 CVDリアクタ
2 ガス導入部材
3 サセプタ
4 温度制御装置
5 基板
6 ガス分配器
7 ガス放出孔
8 セル
8’ 頂点
8” 辺
9 中心点
10 中心
11 多角形領域
12 角二等分線
13 直線
14 遮蔽プレート
15 ガス放出プレート
16 ガス放出面
17 ガス放出孔
18 回転軸
19 ガス供給管
【手続補正書】
【提出日】2022-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心(10)の周りに配置された複数のガス放出孔(7、17)を有する、CVDリアクタ(1)用のガス導入部材(2)のガス放出面(16)、又は、ガス導入部材(2)用の遮蔽プレート(14)のガス放出面(16)であって、前記ガス放出孔(7、17)の中心点(8’)が、同一形状で幾何学的中心点(9)を有する多角形のセル(8)の頂点(8’)に位置し、前記セル(8)の辺(8”)の位置及び長さは、交差する基準ライン(13、13’、13”)により規定され、前記基準ライン(13、13’、13”)は少なくとも2つのライン群に割り当てられており、かつ各ライン群における前記基準ラインは、前記ガス放出面全体に亘って直線状にかつ互いに平行に延在している、前記ガス放出面(16)において、
前記中心(10)が、前記辺の長さの3分の1±10%だけ前記頂点(8’)から離れて位置することを特徴とするガス放出面。
【請求項2】
前記セル(8)が、等しい長さの辺(8”)を有することを特徴とする請求項1に記載のガス放出面(16)。
【請求項3】
前記中心(10)が、一つのセル(8)の領域における中心点(9)から離れて位置することを特徴とする
請求項1又は2に記載のガス放出面(16)。
【請求項4】
前記セル(8)が、正多角形であり、かつ/又は、正三角形又は正方形であることを特徴とする
請求項1~3のいずれかに記載のガス放出面(16)。
【請求項5】
前記辺(8”)の長さが、7.07mm±10%であることを特徴とする
請求項1~4のいずれかに記載のガス放出面(16)。
【請求項6】
前記中心(10)が頂点(8’)で交差する2本の基準ライン(13、13’、13”)の角二等分線(12)の方向に前記頂点(8’)から離れていることを特徴とする
請求項1~5のいずれかに記載のガス放出面(16)。
【請求項7】
互いに同一形状のガス放出孔(7、17)が円形輪郭を有することを特徴とする
請求項1~6のいずれかに記載のガス放出面(16)。
【請求項8】
前記辺(8”)の長さが前記ガス放出孔(7、17)の直径の2倍よりも小さいことを特徴とする
請求項1~7のいずれかに記載のガス放出面(16)。
【請求項9】
前記ガス放出孔(7、17)が4mm±10%の直径を有すること、及び、
前記中心(10)が前記ガス放出孔(7、17)の縁に位置することを特徴とする
請求項1~8のいずれかに記載のガス放出面(16)。
【請求項10】
前記中心(10)が2mm±10%だけ前記頂点(8’)から離れて位置することを特徴とする
請求項1~9のいずれかに記載のガス放出面(16)。
【請求項11】
ガス分配器(6)と、ガス放出面(16)上に均一に分布したガス放出孔(7)を具備するガス放出プレート(15)とを備えたガス導入部材において、
請求項1~
10のいずれかに記載のガス放出面(16)を有することを特徴とするガス導入部材。
【請求項12】
前記ガス放出面(16)が、ガス放出孔(7)の同一配列を具備して前記ガス放出プレート(15)上に配置された遮蔽プレート(14)により形成されていることを特徴とする請求項
11に記載のガス導入部材。
【請求項13】
ハウジングと、ハウジング内に配置されたガス導入部材(2)と、前記ガス導入部材(2)のガス放出面(16)から離間して配置され回転軸(18)の周りで回転駆動可能であり処理される基板(5)を受容するためのサセプタ(3)とを備えたCVDリアクタ(1)において、
請求項
1~10のいずれかに記載のガス放出面
(16)を有することを特徴とするCVDリアクタ。
【請求項14】
前記ガス放出面(16)が、ガス放出孔(7)の同一配列を具備して前記ガス放出プレート(15)上に配置された遮蔽プレート(14)により形成されていることを特徴とする請求項
13に記載のCVDリアクタ。
【請求項15】
請求項
13に記載のCVDリアクタ(1)の動作方法であって、
前記サセプタ(3)が、ハウジングに固定されたガス導入部材(2)に対して回転軸(18)の周りで回転させられ、前記ガス放出面(16)の中心(10)が、前記回転軸(18)上に位置しかつ一つの前記セルの領域における前記頂点(8’)から離れて位置すると共に前記中心点(9)からも離れて位置することを特徴とする方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
セル8の頂点8’は、例示的実施形態では、7.07mmの距離aで互いに離間している。ガス放出孔7は、頂点8’に一致する中心点と約4mmの直径Dを有する。
図4は、ガス放出面16の幾何学的中心点となり得る中心10を示し、中心10は、使用中には回転軸18の中心と一致する。本発明によれば、中心10は、セル8の幾何学的中心点9にも、セル8の頂点8’にも位置していない。例示的実施形態では、中心10は、頂点8’に対して約2mm離れている。中心10は、ここでは、中央部のガス放出孔7.1の縁に位置する。中心10は、角二等分線
12上、すなわち頂点8’と中心点9を通って延在する直線上にあってもよい。中心10は、セル8の中心点9と中央部のガス放出孔7.1との間に位置することができる。ガス放出プレート15の幾何学的中心点又はガス導入部材2の遮蔽プレートの中心でもあり得る中心10はまた、中央部のガス放出孔7.1の断面積内の任意の別の位置に位置してもよいが、その断面積の中心点には位置しない。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
2つのガス放出孔7.2及び7.3は、中央部のガス放出孔7.1から等距離に位置している。中央部のガス放出孔7.1の2つの縁の、隣り合うガス放出孔7.2又は7.3からの距離bは、直径Dよりも小さい。したがって、ガス放出孔7.1の領域は、中心10の周りの相対的回転中に、中心10と隣り合うガス放出孔7.2、7.3の縁との間の環状の空き領域よりもわずかに大きい円形領域上を掃引する。
【国際調査報告】