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特表2022-540407診断回路を有する真空システム及びそのような真空システムの健全性をモニタする方法及びコンピュータプログラム
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  • 特表-診断回路を有する真空システム及びそのような真空システムの健全性をモニタする方法及びコンピュータプログラム 図1
  • 特表-診断回路を有する真空システム及びそのような真空システムの健全性をモニタする方法及びコンピュータプログラム 図2
  • 特表-診断回路を有する真空システム及びそのような真空システムの健全性をモニタする方法及びコンピュータプログラム 図3
  • 特表-診断回路を有する真空システム及びそのような真空システムの健全性をモニタする方法及びコンピュータプログラム 図4
  • 特表-診断回路を有する真空システム及びそのような真空システムの健全性をモニタする方法及びコンピュータプログラム 図5
  • 特表-診断回路を有する真空システム及びそのような真空システムの健全性をモニタする方法及びコンピュータプログラム 図6A
  • 特表-診断回路を有する真空システム及びそのような真空システムの健全性をモニタする方法及びコンピュータプログラム 図6B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】診断回路を有する真空システム及びそのような真空システムの健全性をモニタする方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20220908BHJP
   F04B 51/00 20060101ALI20220908BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220908BHJP
【FI】
F04D19/04 H
F04B51/00
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022500536
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-01-05
(86)【国際出願番号】 IB2020056366
(87)【国際公開番号】W WO2021005502
(87)【国際公開日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】1909762.5
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517316096
【氏名又は名称】エドワーズ バキューム リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン デリック
(72)【発明者】
【氏名】メルコート ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロングリー アンドリュー エリス
(72)【発明者】
【氏名】ノルドキスト ジョン ピーター
【テーマコード(参考)】
2G024
3H131
3H145
【Fターム(参考)】
2G024AD03
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA17
3H131AA03
3H131BA09
3H131BA11
3H131BA15
3H131BA16
3H131CA41
3H145FA03
3H145FA17
3H145FA23
3H145FA25
3H145FA28
(57)【要約】
少なくとも1つのクライオポンプと、クライオポンプの作動条件を感知するように各々が構成されてクライオポンプに関連付けられた複数のセンサと、センサからサンプリングされた信号を受信するように構成された診断回路とを含み、診断回路を備えた真空システム、そのような真空システムの健全性をモニタする方法及びコンピュータプログラム。診断回路は、クライオポンプの診断モデルを含み、診断モデルは、複数の再生及び修理期間にわたって作動する同じタイプの複数のクライオポンプの履歴データから導出され、かつ少なくとも一部のセンサからサンプリングされた信号の値を予め決められた時間内のポンプ故障の確率に関連付けるように構成される。診断回路は、サンプリングされた信号を診断モデルに適用し、かつモデルの出力から予め決められた時間内の少なくとも1つのクライオポンプ故障の確率を決定するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのクライオポンプと、
前記少なくとも1つのクライオポンプに関連付けられた複数のセンサであって、前記複数のセンサの各々が前記少なくとも1つのクライオポンプの作動条件を感知するように構成された、
前記複数のセンサの少なくとも一部からサンプリングされた信号を受信するように構成された診断回路であって、前記診断回路が、前記クライオポンプの診断モデルを含み、前記診断モデルが、複数の再生及び修理期間にわたって作動する同じタイプの複数のクライオポンプの履歴データから導出され、かつ、前記少なくとも一部のセンサから前記サンプリングされた信号の値を予め決められた時間内の前記ポンプの故障の確率に関連付けるように構成され、前記診断回路が、前記サンプリングされた信号を前記診断モデルに適用し、かつ前記モデルの出力から前記予め決められた時間内の前記少なくとも1つのクライオポンプの故障の前記確率を決定するように構成された診断回路と、
を含むことを特徴とする真空システム。
【請求項2】
前記複数の信号の少なくとも一部が、前記クライオポンプの第1の段の第1の温度、前記クライオポンプの第2の段の第2の温度、直近の再生からの時間、前記クライオポンプのモータの速度、加熱器回路への入力、及び前記クライオポンプが前記第1の温度まで冷却するための時間のうちの少なくとも一部を含むことを特徴とする請求項1に記載の真空システム。
【請求項3】
真空システムが、複数のクライオポンプを含み、
前記診断回路は、前記複数のクライオポンプの各々から信号を受信し、かつ前記クライオポンプ故障のうちの各々の確率を決定するように構成される、
ことを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の真空システム。
【請求項4】
前記診断回路は、前記少なくとも1つのクライオポンプ故障の確率が設定時間にわたって予め決められた閾値よりも上であることを検出するのに応答して前記ポンプを次の予定予防保守で交換すべきであることを示す警告を出力することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の真空システム。
【請求項5】
リモート診断システムから信号を受信するための入力と前記リモート診断システムに信号を出力するための出力とを含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の真空システム。
【請求項6】
前記センサのうちの少なくとも一部から収集されたデータを前記少なくとも1つのクライオポンプに対して実施された保守を示すデータと共に前記リモート診断システムに定期的に出力するように構成されることを特徴とする請求項5に記載の真空システム。
【請求項7】
前記保守の期間中に交換されたポンプの条件を示すデータを修理技術者から受信するための入力を含み、
前記交換されたポンプの前記条件を示す前記データを前記定期的に出力されるデータの一部として出力するように構成される、
ことを特徴とする請求項6に記載の真空システム。
【請求項8】
前記診断モデルに対する更新を定期的に受信するように構成された入力を含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の真空システム。
【請求項9】
前記診断モデルに対する前記更新を前記リモート診断システムから定期的に受信するように構成された入力を含むことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に従属する時の請求項8に記載の真空システム。
【請求項10】
少なくとも1つのクライオポンプを含む真空システムをモニタする方法であって、
前記少なくとも1つのクライオポンプの作動条件を示す複数の信号を前記クライオポンプに関連付けられたセンサからサンプリングする段階と、
前記信号の少なくとも一部を前記クライオポンプの診断モデルに入力する段階であって、前記診断モデルが、前記ポンプの再生、修理、及び故障のうちの少なくとも1つをその少なくとも一部が含む複数の期間にわたって作動する同じタイプの複数のクライオポンプの履歴データから導出され、前記診断モデルが、信号を前記ポンプ故障の確率に関連付ける前記入力する段階と、
前記モデルの出力から前記少なくとも1つのクライオポンプの故障の確率を決定する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
コンピュータによって実行された時に前記コンピュータを制御して請求項10に記載の方法を実施させるように作動可能である機械可読命令、
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項12】
あるタイプのクライオポンプに対する診断モデルを生成する方法であって、
再生、修理、及び故障のうちの少なくとも1つをその少なくとも一部が含む複数の期間にわたったサンプリングされた前記複数のクライオポンプの前記感知された作動条件を格納するデータベースから、前記タイプの複数のクライオポンプの作動条件を感知することから収集されたデータを機械学習アルゴリズムの中に入力し、ある一定の時間内の前記ポンプ故障の複数の確率を生成する段階と、
それぞれのポンプに対する前記確率を前記データベースから取り出された前記ポンプに対するポンプ故障タイミングと比較し、かつ決定された前記確率と前記ポンプ故障タイミングの差を縮小するように前記機械学習アルゴリズム内のパラメータを更新する段階と、
前記差が最小値又は予め決められた値のうちの一方に達するまで前記段階を繰り返す段階と、
前記アルゴリズム及び前記差を与えたパラメータから前記診断モデルを生成する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記データを前記機械学習アルゴリズムの中に入力する前に、前記信号は、異常データを除去するためにフィルタリングされることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記受信信号を前記機械学習アルゴリズムの中に入力する前に、前記信号は、前記クライオポンプの再生の前及び後の予め決められた時間にサンプリングされた信号を除去するためにフィルタリングされることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項12から請求項14のいずれか1項に従って生成された前記診断モデルを更新する方法であって、
同じタイプの複数のクライオポンプの作動条件を示す複数の信号を受信する段階と、
前記複数のクライオポンプに対するポンプ保守及び故障タイミングを受信する段階と、
前記受信データを前記データベースに追加し、かつ前記更新されたデータベースからのデータを用いて更新された診断モデルを生成するために請求項12から請求項14のいずれか1項の前記方法を実施する段階と、
前記更新された診断モデルを出力する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記ポンプが予め決められた時間内に故障すると考えられることを前記診断モデルが示すのに続いて交換されたポンプの条件を示すデータを受信する段階を更に含み、
前記データは、前記診断モデルの前記更新中に前記機械学習アルゴリズムに入力される、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
コンピュータによって実行された時に前記コンピュータを制御して請求項12から請求項16のいずれか1項による方法を実施させるように作動可能である機械可読命令、
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項17に従って前記コンピュータプログラムを実行するように構成されたコンピュータ、
を含むことを特徴とするリモート診断モジュール。
【請求項19】
請求項5から請求項7又は請求項9のいずれか1項に記載の真空システムと請求項18に記載の前記リモート診断モジュールとを含むシステムであって、
前記リモート診断モジュールは、前記真空システムによって出力された信号を受信し、前記受信信号を用いてクライオポンプ作動の前記データベースを更新し、かつ前記更新されたデータベースからのデータを前記機械学習アルゴリズムに入力することによって更新された診断モデルを生成するように構成される、
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、クライオポンプを閉じ込める真空システム及びそのようなポンプの故障時点を予測するための診断装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプは、ポンピングされることになるガスを凝縮又は捕集する原理に基づいて作動する。これは、クライオポンプは、捕集ガスを除去するために定期的に再生される必要があることを意味する。再生は、ポンプを真空システムから隔離する段階と、パージガスを導入しながらポンプを加温して捕集ガスを脱着又は昇華させる段階とを伴う。この段階は、ポンプを稼働から外すことになり、従って、エンドユーザは、計画された定期的な予防保守(PM)中に再生段階を予定しようと試みる。
【0003】
予定PM中では、再生それ自体(開始から完了までに4時間までかかる可能性がある)は、エンドユーザが全体システム準備で対処する計画された事象である。しかし、再生又は保守を予期せずに実行しなければならず、従って、予定PM外で発生する場合に、これは、真空システムに対する予定外のダウンタイムを表すものである。これは、エンドユーザに対して、特に、真空システムの容量、収率、及び/又は生産性に対して悪影響を有する可能性がある。
【0004】
予定外の再生は、クライオポンプがその予測通りに機能していないことを示す信号に応答してトリガされる場合がある。典型的には、これらの信号は、第1及び第2の段の温度(それぞれT1及びT2と呼ぶ)に基づいている。エンドユーザは、特にT2に対して制御限界値を設定し、統計処理制御(又は均等物)を用いて増大又は不安定傾向が真であるか否か及び措置を講じるか(又は否か)を決定する。問題は、その性能が劣化し始めているポンプを検出するのにT1及びT2だけに頼ると、予定外の再生又は更に悪いことに予定外のポンプの完全な交換及び予備品との交換のような措置を講じなければならなくなる前のリードタイムが不十分になることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプの将来の故障をより的確に予測し、それによって予定外の保守要件の発生を低減することができる診断システムを提供することが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、少なくとも1つのクライオポンプと、少なくとも1つのクライオポンプに関連付けられて少なくとも1つのクライオポンプの作動条件を感知するように各々が構成された複数のセンサと、複数のセンサの少なくとも一部からサンプリングされた信号を受信するように構成された診断回路であって、診断回路が、クライオポンプの診断モデルを含み、診断モデルが、複数の再生及び修理期間にわたって作動する同じタイプの複数のクライオポンプの履歴データから導出され、かつ少なくとも一部のセンサからのサンプリング信号の値を予め決められた時間内のポンプ故障の確率に関連付けるように構成され、診断回路が、サンプリング信号を診断モデルに適用し、かつモデルの出力から予め決められた時間内の少なくとも1つのクライオポンプ故障の確率を決定するように構成される上記診断回路とを含む真空システムを提供する。
【0007】
本発明者は、いくつかのセンサをクライオポンプに関連付けることによってポンプの作動を示す信号をサンプリングすることができることを認識した。これらの信号は、クライオポンプの現在の健全性、及びそれがどのように変化しているかの詳細な表示を与える。実施形態は、これらの情報を解析してポンプが故障する可能性がある時点を予測し、それに従って保守を予定する。ポンプから追加の信号を収集する段階は、ポンプの現在の健全性に関する追加の情報を与えることができるが、欠点は、信号が多いほどそれを修理技術者が実質的に解析し、そこから関連情報を導出することが困難になることである。本発明者は、感知信号のうちの多くが関連性を有することだけではなく、同じタイプの多くの機械からデータを収集した場合に様々な時点でサンプリングされた様々な信号の値とこれらの信号の値が故障確率と共にどのように経時変化するかとを正確に結び付けるモデルを構成することができることにも認識した。そのようなモデルは、多くの異なる信号を考慮し、故障を予測する有効な方式を与えることができた。更に、新しいデータを収集する時に、そのようなモデルは、最初のモデルを開発するのに使用されたものと同じ機械学習技術を用いて経時的に更新することができた。
【0008】
実際に、そのような診断ソリューションは、今日可能であるものよりも高度で正確なポンプ性能劣化の通知を提供し、それによって高コストの予定外ダウンタイムを招くのではなく、次の予定PMで措置を講じる機会をエンドユーザに与えることができると考えられる。
【0009】
このソリューションは、現在使用されているクライオポンプにわたって一般的に有利とすることができるが、次世代のクライオポンプシステムに対して、特に、クライオポンプの寿命がPM間隔と同じく短めであることが予測されるイオン注入の使用事例に対して特に有利とすることができる。
【0010】
ポンプの故障予測は、ポンプの性能が所与の閾値よりも低いと考えられるか、又はいずれかの保守又は時に再生が実施されなかった場合に作動が完全に停止すると考えられると評価される時点であることに注意しなければならない。従って、技術者がポンプを何らかの方法で交換又は修理することによって関与するための推定時点として故障予測を使用することができる。
【0011】
クライオポンプに関連付けられたセンサは、真空ポンプの現在の健全性を各々が示すクライオポンプのいくつかの作動条件、及びその値及び/又は値の経時変化をサンプリングしてポンプの潜在的な故障の表示を与えるように構成することができる。これらの信号の少なくとも一部を診断モデルの中に入力することにより、正確なポンプ故障確率を導出することができる。
【0012】
一部の実施形態では、真空システムは、複数のクライオポンプを含み、診断回路は、複数のクライオポンプの各々から信号を受信してクライオポンプの各々が故障する確率を決定するように構成される。
【0013】
真空システムは、1つのみのクライオポンプを閉じ込めることができるが、多くの場合に、半導体処理チャンバを排気するためのシステムのような真空システムの中には複数のクライオポンプが存在し、これらのクライオポンプの交換及び保守を予定することは、システムの生産性及び収率に対して重要である。従って、ポンプのいずれかの保守及び/又は交換を予定保守期間中に行うことができるようなクライオポンプの故障の正確な予測を提供することは有利である。
【0014】
一部の実施形態では、診断回路は、少なくとも1つのクライオポンプ故障の確率が予め決められた閾値を設定時間にわたって超えることを検出するのに応答してポンプを次の予定予防保守で交換しなければならないことを示す警告を出力する。
【0015】
上述のように、ポンプの故障の予測は、予定保守期間中にポンプを交換するか又は修理するのに使用することができる。実施形態では、システムは、どこでクライオポンプ故障の確率が設定時間にわたって予め決められた確率閾値よりも上に上昇するかを決定し、かつそれを次の予防保守期間にポンプを交換しなければならないことの表示として採用する。
【0016】
この点に関して、診断モデルは、予め決められた時間内のクライオポンプ故障の確率を決定するように設定され、この予め決められた時間は、予防保守間の期間又は一部の場合はそれよりも短い期間であるように選択される。この予め決められた時間が予防保守間の期間であるように選択される場合に、警告信号が受信された時に、ポンプが次の期間の前に故障することになる高い確率があるので、ポンプを次の予防保守期間に交換しなければならない。しかし、故障予測が、例えば、30日間の範囲の故障予測であり、保守予定が、例えば、イオン注入の事例では典型的な期間である45日間である場合に、この警告が作動期間の終了の近く、例えば、40日目に発生する場合に、ポンプは、次の予防保守予定まで持続することができる場合がある。
【0017】
一部の実施形態では、真空ポンプシステムは、リモート診断システムから信号を受信するための入力と、リモート診断システムに信号を出力するための出力とを含む。
【0018】
真空システムと診断回路は独立したユニットとして使用することができるが、一部の実施形態では、真空システムは、リモートの、一部の場合はクラウドベースのシステムと連携して使用され、このシステムから信号を受信し、このシステムに信号を出力する。
【0019】
一部の実施形態では、真空システムは、センサの少なくとも一部から収集されたデータを少なくとも1つのクライオポンプに対して実施された保守を示すデータと共にクラウドベースの診断システムに定期的に出力するように構成される。
【0020】
リモート診断システムは、診断モデルの精度が絶えず改善され、かつポンプ作動に関連することを保証するように診断モデルを維持するのに使用することができる。従って、ポンプの作動及び故障を示すデータをシステムにアップロードし、モデルを改善するのに使用することができる。
【0021】
一部の実施形態では、真空システムは、保守期間中に交換されたポンプの条件を示すデータを修理技術者から受信するための入力を含み、交換ポンプの条件を示すデータは、定期的に出力されるデータの一部として出力されるように構成される。
【0022】
モデルを更に改善するために、修理技術者からの追加のデータをクラウドベースの診断システムにアップロードすることができる。この点に関して、ポンプ故障の予測に特に関連するデータは、ポンプを交換しなければならないことを示す確率の決定に応答してポンプが交換されたか否かだけではなく、その時点でのポンプの条件でもある。この追加情報がない場合に、ポンプが手遅れの状態で交換されるモデルの失敗としか考えられない危険性があり、従って、モデルは、所要の保守期間よりも短い保守期間を予測しがちになる。交換された時のポンプの条件を示す修理技術者からのデータを含めることにより、この追加情報を用いて、当前記時点でポンプを交換することが真に必要とされるか否かを決定し、例えば、ポンプが次の期間まで持続したであろうと決定された場合に、診断モデルを生成するのに使用されるデータベース内の保守期間を調節することができる。更に、一部の場合に、汚染のようなポンプ故障の理由を示すデータを診断モデルに出力することができ、それは、真空システムを全体的に改善するのに使用することができる。
【0023】
一部の実施形態では、真空システムは、診断モデルへの更新を定期的に受信するように構成された入力を含む。
【0024】
上述のように、診断モデルを絶えず更新することは、このモデルが改善されることで有利とすることができ、そのようなモデルを受信するための入力を有することにより、この更新が発生することを可能にする。
【0025】
一部の実施形態では、真空システムは、診断モデルへの更新をクラウドベースの診断システムから定期的に受信するように構成された入力を含む。
【0026】
モデルは、修理技術者が手動で更新することができるが、一部の場合はクラウドベースの診断システムから信号を直接受信することによって更新される。このようにして、クラウドベースの診断システムは、それが受信データからモデルを改善することができると決定した時にモデルを自動的に更新することができる。
【0027】
第2の態様は、少なくとも1つのクライオポンプを含む真空システムをモニタする方法を提供し、本方法は、少なくとも1つのクライオポンプの作動条件を示す複数の信号をクライオポンプに関連付けられたセンサからサンプリングする段階と、複数の期間にわたって作動する同じタイプの複数のクライオポンプの履歴データであって、その少なくとも一部が、ポンプの再生、修理、及び故障のうちの少なくとも1つを含む上記履歴データから導出された診断モデルに信号の少なくとも一部を入力する段階であって、診断モデルが、信号をポンプが故障する確率に関連付ける上記入力する段階と、モデルの出力から少なくとも1つのクライオポンプ故障の確率を決定する段階とを含む。
【0028】
第3の態様は、コンピュータによって実行された時に本発明の第2の態様による方法を実施するようにコンピュータを制御するように作動可能な機械可読命令を含むコンピュータプログラムを提供する。
【0029】
本発明の第4の態様は、あるタイプのクライオポンプに対する診断モデルを生成する方法を提供し、本方法は、このタイプの複数のクライオポンプの作動条件を感知する段階から収集されたデータを再生、修理、及び故障のうちの少なくとも1つを少なくとも一部が含む複数の期間にわたってサンプリングされた複数のクライオポンプの感知作動条件を格納するデータベースから機械学習アルゴリズムの中に入力し、予め決められた時間内にポンプが故障する複数の確率を生成する段階と、それぞれのポンプに関する確率をデータベースから取り出されたポンプに関するポンプ故障タイミングと比較し、決定された確率とポンプ故障タイミングとの差を縮小するように機械学習アルゴリズム内のパラメータを更新する段階と、差が最小値又は予め決められた値の一方に達するまでこれらの段階を繰り返す段階と、アルゴリズム及び差を与えたパラメータから診断モデルを生成する段階とを含む。
【0030】
実施形態の真空システムを診断するのに使用される診断モデルは、複数のポンプが作動している期間、再生されている期間、及びこれらのポンプの少なくとも一部が故障している期間を含む作動期間にわたって接続された複数のポンプの感知作動条件を含むデータベースへのアクセスを有する機械学習アルゴリズムを用いて生成することができる。機械学習アルゴリズムは、感知及びサンプリングされた作動条件からポンプの故障確率を生成するように構成され、次に、これらの確率は、データベースから得られた実際のポンプ故障タイミングと比較され、更に機械学習アルゴリズムは、これらの確率と実際のポンプ故障タイミングとが互いにより緊密に一致するまで更新される。実際の故障と比較された時に故障予測が予め決められた望ましい精度を与えると見なされる場所、又はこれらの値の間に最小の差しか見られなかった場所とすることができる適切な一致が見られた時に、上述のアルゴリズムから診断モデルが生成される。
【0031】
一部の実施形態では、データを機械学習アルゴリズムの中に入力する前に、異常データを除去するために、これらのデータはフィルタリングされる。この点に関して、感知信号は、それが正確ではなく、ポンプの真の作動条件を表さないような関連するノイズを有する場合があり、及び/又はポンプは、それを特に低いか又は高い温度で作動させ、それによってこのポンプからの信号が他のポンプ作動を表さないような障害を有する場合がある。
【0032】
一部の実施形態では、受信信号を機械学習アルゴリズムの中に入力する前に、信号は、クライオポンプの再生の前及び後の予め決められた時間にサンプリングされた信号を除去するようにフィルタリングされる。
【0033】
信号のフィルタリングは、異常値ではない場合があるがポンプの正常作動を表さないことが既知である信号を除去するために行うことができる。例えば、クライオポンプの再生の前及び後の予め決められた時間にサンプリングされた信号は、正常作動を表さない場合がある。
【0034】
第5の態様は、第4の態様に従って生成された診断モデルを更新する方法を提供し、本方法は、同じタイプの複数のクライオポンプの作動条件を示す更に別の複数の信号を受信する段階と、複数のクライオポンプに関するポンプの保守及び故障のタイミングを受信する段階と、受信データをデータベースに追加し、第4の態様の方法を実施して更新された診断モデルを生成する段階と、更新された診断モデルを出力する段階とを含む。
【0035】
診断モデルを生成し終えると、次に、この診断モデルは、上述のタイプのクライオポンプを診断して機を逸することなくこれらのポンプを交換することができるようにクライオポンプ故障を予測するのに使用されることになる。このモデルの使用は、クライオポンプの作動条件及び故障を示すデータのサンプリングを含み、従って、一部の場合に、これらのデータは、収集されて中央診断モデル生成手段にアップロードして戻され、モデルを定期的に更新するのに使用される。モデルは、機械学習アルゴリズムを用いて収集データから生成されるので、モデルを生成するのに最初に使用されたデータベース内に追加データを単純に含めることによって同じモデル生成法を用いてモデルを更新することができる。この点に関して、追加データは、最初のデータベースに追加することができ、又はデータベース内の古いデータのうちの一部に置き換わることができる。
【0036】
一部の実施形態では、本方法は、ポンプが予め決められた時間内に故障すると考えられることを診断モデルが示すのに続いて交換されたポンプの条件を示すデータであって、診断モデルの更新中に機械学習アルゴリズムの中に入力される上記データを受信する段階を更に含む。
【0037】
修理技術者が故障の後のポンプの条件を示すデータを入力する場合に、これらの情報は、モデルを改善するのに有利とすることができる。従って、これらの情報は、機械学習アルゴリズムに入力されるデータの中に含めることができる。この点に関して、機械学習アルゴリズムは、これらのデータを受信するように適応させることができ、又はポンプが故障したであろうとポンプの条件が予測する時点がポンプの交換時点と異なる場合に、故障時点をこの交換の時点からこの予測時点にデータベース内で修正することができる。
【0038】
第6の態様は、コンピュータによって実行された時に第4の態様又は第5の態様による方法を実施するようにコンピュータを制御するように作動可能な機械可読命令を含むコンピュータプログラムを提供する。
【0039】
第7の態様は、第6の態様に従ってコンピュータプログラムを実行するように構成されたコンピュータを含むリモート診断モジュールを提供する。
【0040】
第8の態様は、第1の態様による真空システムと第7の態様によるリモート診断モジュールとを含み、リモート診断モジュールが、真空システムによって出力された信号を受信し、クライオポンプ作動のデータベースを受信信号で更新し、更新されたデータベースからのデータを機械学習アルゴリズムに入力することによって更新された診断モジュールを生成するように構成されるシステムを提供する。
【0041】
更に別の具体的で好ましい態様を添付の独立請求項及び従属請求項に示している。従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴と必要に応じて特許請求の範囲に指定するもの以外との組合せで組み合わせることができる。
【0042】
装置特徴が機能を提供するように作動可能であると説明する場合に、この装置特徴は、その機能を提供する装置特徴又はその機能を提供するように適応又は構成された装置特徴を含むことは認められるであろう。
【0043】
ここで添付図面を参照して本発明の実施形態をより詳しく以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実施形態による真空システムを概略で例示する図である。
図2】診断モデルの生成を概略で例示する図である。
図3】機械学習アルゴリズムを概略で例示する図である。
図4】実施形態による診断モデルを生成する方法での段階を示す流れ図である。
図5】実施形態による真空ポンプの故障を予測する方法での段階を示す流れ図である。
図6A】ポンプの作動中に様々な感知パラメータがどのように変化するかを概略で例示する図である。
図6B】ポンプの作動中に様々な感知パラメータがどのように変化するかを概略で例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施形態をより詳細に議論する前に、最初に概要を提供する。
【0046】
実施形態は、クライオポンプの故障を予測し、それによってその必要な保守又は再生を予測することができるシステムを提供することを追求する。そのようなポンプは、定期的な再生/保守を必要とし、典型的には、45日から60日毎に処理チャンバのような真空システムから取り出して交換されるように予定される。保守に対する必要性を正確に十二分に予め予測することができる場合に、これらの保守は、予定保守期間と時間調整することができ、予定外の保守期間を低減するか又は更に排除することが可能である。
【0047】
実施形態は、クライオポンプに関連付けられたセンサからの入力を受信し、これらの入力をクライオポンプの作動をモデル化するモデルの中に入力し、かつ受信信号の値及び/又はその変化から将来の故障を予測する診断システムを提供する。モデルは、少なくとも一部の予定保守期間を含む期間にわたって作動する複数の同じタイプのクライオポンプに関連付けられたセンサから収集された履歴データの解析から生成される。モデルは、機械学習技術を用いてシステムによって診断中のクライオポンプからの新しい受信データを解析することによって定期的に更新することができる。
【0048】
このようにして、現在作動中のクライオポンプからの収集データを用いて絶えず改善する診断システムが生まれる。
【0049】
実施形態は、特定のツール上の又は複数のツールにわたるポンプのシステムに関する間近の指定間隔(望ましくはPM間隔よりも長い)の範囲の「故障」の定量的確率を与えるバッチ情報と実時間情報との組合せを提供する。これは、いつポンプが交換されるかに関する決定を行う上で使用することができる非常に貴重な指針をエンドユーザ又は顧客修理技術者に提供して予定外の再生を回避することができる。
【0050】
図1は、実施形態による真空システムを示している。この真空システム5内には、監督ノード20によって制御される3つのクライオポンプ10が存在する。監督ノード20は、真空ポンプの故障を予測するための診断モデルを含む論理部を含有する22として示す診断回路を含む。
【0051】
作動中に、真空ポンプ10に関連付けられたセンサ(図示せず)は、ポンプの作動条件を感知し、これらの作動条件を示す信号を監督ノード20に送る。監督ノード20内の診断回路22は、信号の少なくとも一部をサンプリングし、サンプリング信号を入力データとして診断モデルに入力する。これらの作動条件は、真空ポンプの第1の段の温度、真空ポンプの第2の段の温度、真空ポンプ段の各々において望ましい温度に到達するのに要した時間、真空ポンプモータの速度、及び真空ポンプ10の作動を具体的に示す他の変数を含むことができる。
【0052】
一部の実施形態では、真空ポンプは、冷凍機の第1の段に両方共に結合された第1の段アレイ及び放射線シールドと冷凍機の第2の段に結合された第2の段アレイとを有する2段クライオポンプである。そのようなクライオポンプは、第1の段アレイ及び第2の段アレイに関して、これらの温度をモニタするための温度センサを有する。クライオポンプの再生中に、クライオポンプは、凝縮ガスが解放されるように加熱される。この手順中にこれらのアレイを加熱するための電気加熱器回路を含むことができる加熱器が存在する。診断システムへの入力は、これらのアレイに関する温度センサの温度読取値と、加熱器回路に供給される電流のような加熱器への入力と、モータの速度とを含むことができる。
【0053】
これらの信号の少なくとも一部は、これらの信号の変化及び値からポンプの各々に関する故障確率を予測する診断モデルに入力される。この点に関して、この実施形態では、診断モデルは、予め決められた期間内でポンプのうちの1つの故障確率をいつ予測するかを決定する。この予め決められた期間は、例えば、45日とすることができ、この期間は、予定保守間の時間とすることができる。これに代えて、予め決められた期間は、モデルに依存して予定保守間の時間よりも短くすることができる。確率が予め決められた値、この例では50%よりも大きくなく、予め決められた時間長、この場合は6日間にわたってこの値を上回ったままに留まる場合に、一般的には次の予定保守において対応するポンプを交換しなければならないことを示す警告信号が生成される。閾値及び設定時間は予め決定されず、ポンプの使用パターン及び故障パターンに基づいて変更及び最適化することができることに注意しなければならない。
【0054】
故障予測に対する期間が例えば30日間であり、保守期間がこの期間よりも長く、例えば、45日間であり、この信号が作動期間の終了に向けてトリガされる場合に、この警告信号は、ポンプを交換しなければならないが、次の保守期間まではそうしなくてよいことを示すことができる。
【0055】
ポンプの交換に続いて、一部の実施形態では、修理技術者は、交換されたポンプの健全性を検査し、このポンプの条件及び時に実際の故障の前の予測寿命を示す情報を監督ノード20に入力することになる。この点に関して、このポンプは、過度に早く交換されていた場合があり、この情報は、モデルを最適化する時に有利である場合がある。導出することができる場合にポンプの故障の原因に関する情報を入力することができる。
【0056】
従って、監督ノード20内で診断モデル22を使用することにより、将来のいずれかの予め決められた時点でのポンプの故障の正確な予測を決定することができ、次に、ポンプを至急交換することができるように全体の真空システムを停止することを必要とするのではなく、ポンプを予定保守中に交換することができる。
【0057】
この実施形態では、リモートシステム又はクラウドベースのシステム30への接続も存在する。リモートシステム30内には、データをデータストレージ34又は診断モデル33に送るストリーミングデータ管理ツール32が存在し、診断モデル33は、ログパーサー33aと、データストレージ33bと、機械学習エンジン35とを含む。リモートシステム30内では、いくつかのデータ演算が発生し、これらは、システム内の各ポンプに関するストリーミングデータの管理及び解析、データレイク34のような構造での長期格納、故障確率を迅速に出力するための非常に専有的な機械学習アルゴリズム35による処理を含むがこれらに限定されない。これらの出力は、ホスト25(例えば、ツール制御システム及び/又は工場処理データ管理システム)、修理技術者、又はエンドユーザに様々な形態及びモバイルデバイスを含む様々なプラットフォームで送ることができる。
【0058】
上述の演算は、それらがクラウド内で実施される多くの実施形態ではローカルサーバ上で実施することができるが、クラウドは、機械学習モデル及び/又はソフトウエアを必要に応じて多くの場合に更新する機能に関して際立った利点をもたらし、同時に、作動するためのフレームである拡張可能で廉価な標準アーキテクチャ(例えば、Amazon Web Services、IBM Watson、又は均等物)を提供する。
【0059】
リモートシステム又はクラウドベースのシステムは、同じタイプの多くのポンプの作動からのデータをデータベース又はデータレイク34に格納するように構成される。これらのデータは、温度、モータ速度、加熱器入力、再生パラメータ、使用年数等であるがこれらに限定されない。リモートシステム又はクラウドベースのシステム30は、これらのデータを用いて診断モデルを生成及び更新するための論理部33を含む。クラウドベースの論理部33は、同じタイプの複数のポンプの作動条件を示すデータを含むデータレイク34にこれらのポンプが再生され、修理され、交換される時点を含む予め決められた時間中にアクセスする。
【0060】
論理部33は、これらのデータから診断モデルを生成することができる。診断モデルを生成するのに、論理部33は、データレイク34をサンプリングし、それを収集されたポンプの作動条件を示すデータに基づいて複数のポンプの故障確率を予測する機械学習アルゴリズム35に入力する。論理部33は、データを受信するためのログパーサー33aと、データストア33bと、機械学習エンジン35とを含む。この予測は、ポンプの格納された実際の故障率と比較され、確率及び故障率が望ましい程度に一致するまでモデルのパラメータが変えられる。この時点で、モデルは十分に正確であると考えられ、監督ノード20内の診断回路22での使用に向けて送られる。
【0061】
作動中に、監督ノード20は、ポンプに関連付けられたセンサからのその作動条件、並びに再生及び故障を検出する収集データを交換された時のポンプの条件に関して修理技術者が入力した情報と共に定期的に送信することができ、これらのデータをデータレイク34に追加することができる。この処理は、ストリーミングデータ管理回路32によって制御される。これに代えて及び/又はこれに加えて、データは、モデルの精度が予め決められた程度を下回ったことを修理技術者が気付くのに応答して手動又はストリーミング管理回路32のいずれかによってアップロードすることができる。
【0062】
リモート論理部33は、要求に基づいて追加データを用いて機械学習アルゴリズム35を再度作動させて更新された改善されたモデルを生成し、それを監督ノード20に定期的にアップロードしてそれまで格納されていたモデルを置換することができる。このようにして、モデルは、絶えず改善され、更新された条件に適応することになる。
【0063】
一部の実施形態では新しい収集データはデータレイク34に単純に追加されるが、他の実施形態ではデータのうちの一部に置き換わることができる。置換されたデータは、最も古いデータとして選択することができ、及び/又はそれは、対応する型のポンプの特徴を最も示さないものとして選択することができる。
【0064】
これに代えて及び/又はこれに加えて、論理部33は、データを学習アルゴリズム35に入力する前にフィルタリングすることができ、この処理中に受信データ内のいずれの異常値も除去することができる。この点に関して、ポンプの作動条件は、再生の直前又は直後のようなある一定の時点ではポンプの通常作動の特徴を示さない場合があり、従って、そのようなデータは、機械学習アルゴリズム35に追加されるデータからフィルタ除去することができる。
【0065】
図2は、様々なポンプから収集されたデータから診断モデル又は予測モデル155がどのように形成されるかを示している。モデルを構成するために機械学習アルゴリズムの中に入力されるデータは、特定のポンプに関するデータであり、かつポンプの製造番号、ポンプの部品番号、ポンプのモデル、ポンプが取り出されて交換された/取り外されたか否か、ポンプが設置されて稼働した日付/時間、直近のポンプデータが記録された日付/時間、ポンプに関する持続時間、設置時のポンプの初期時間、ポンプが設置された工場、ポンプが設置されたツールの名称、ツールの製造業者、ツールのタイプ及びツールステーション名、ポンプが修理調整されたとして印されているか否かを含むことができる初期ポンプデータ100を含む。
【0066】
これに加えて、ポンプの作動を示す初期ポンプログ110が機械学習アルゴリズムの中に入力され、この初期ポンプログ110は、直近の10日間、30日間、60日間の第1の段の温度の加重平均、直近の10日間、30日間、60日間の第2の段の温度の加重平均、直近の10日間、30日間、60日間のRPMの加重平均、第1の段の温度の最高値、第2の段の温度の最高値、RPMの最高値を含むことができる。
【0067】
初期ポンプ製造検査120も入力することができ、この製造検査120は、ポンプの合格/不合格計数値及び合格の集計統計値を含むことができる。再生データ130も入力することができ、この再生データ130は、ポンプの再生段階、第1の段の温度、第2の段の温度、モータステータス、パージバルブステータス、ラフバルブステータス、加熱器1ステータス、加熱器2ステータス、加熱器1パーセントオン、加熱器2パーセントオン、モータRPM、ポンプの持続時間、最後の高速再生からの時間、最後の完全再生からの時間、実時間記録の日付、再生するのに要した時間、再生が開始したポンプ時間、再生が開始した日付/時間、再生が終了した日付/時間、再生の終了時の第1の段の温度、再生の終了時の第2の段の温度、再生に対するベース圧力設定、再生に対する増大率限界設定、実施された増大率サイクル回数、ポンプが荒仕上げ条件になるのに要した時間、ポンプが冷却するのに要した時間、直近の完全再生とポンプが再生し始めた時点の間の時間、直近の10日間、30日間、60日間の第1の段の温度の加重平均、直近の10日間、30日間、60日間の第2の段の温度の加重平均、直近の10日間、30日間、60日間のRPMの加重平均、第1の段の温度の最高値、第2の段の温度の最高値、RPMの最大値を含むことができる。これらの再生データは、欠損データに関して検査され、一部の場合は集計再生データ131を生成するための標準再生値にすることができる。
【0068】
機械学習技術を用いて最初の診断モデルを構成するための処理の開始時に、上記で概説したようなポンプデータは、いくつかの異なる情報ソースから収集される。これらのデータは、ポンプに関連付けられたセンサから収集された作動時ポンプデータを含み、更に300時間よりも長く作動したポンプに関するデータを含む。製造時にポンプに対して行われた検査からのデータ及びポンプの再生中に収集されたデータと同様に、データが経時的にどのように変化するかを示すポンプログも収集される。次に、これらのデータは、不要な属性、異常値、及びデータが適切ではない又は必要とされないと見なされる条件、又は一般的にポンプの作動の特徴を示すものではないと考えられる条件を除去するようにフィルタリングされ、フィルタリングされたデータから集計ポンプデータ101、集計ポンプログ111、集計製造検査121、及び集計再生データ131が与えられる。
【0069】
次に、これらのデータは、未交換ポンプに関する直近2ヶ月間のデータ及び直前(前2時間)及び再生直後(後4時間)のデータを除去するように処理される。
【0070】
次に、収集データは、この例では300個の交換されたポンプ及び100個の未交換ポンプからのデータを含むトレーニングデータ140と、39個の交換されたポンプ及び9個の未交換ポンプからのデータを含む予測データ150とに分割される。これらのデータは、予測モデル155の生成に使用される。
【0071】
トレーニングデータ140は、特徴の生成では機械学習アルゴリズムを定めるのに及びモデルを用いてデータをトレーニングするのに使用される。予測データ150は、機械学習アルゴリズムを適用するのに使用される。
【0072】
これらの処理から予測モデル155が生成される。
【0073】
要約すると、収集トレーニングデータ140は、機械学習アルゴリズムの中に入力され、かつセンサから収集されたデータからポンプの故障を予測するための診断モデルを生成するためのトレーニングデータとして使用される。トレーニングデータ140から生成された値と実際のデータとを比較することによってモデルが構成され、これら2つが整合していると見なされた時に、このモデルは、真空システムでの使用に向けて出力される。
【0074】
使用することができる多くの異なるタイプの機械学習アルゴリズムが存在する。実際に、トレーニングデータ140は、いくつかの異なるモデルに入力することができ、最も正確な予測を有する診断モデルを与えるものが選択される。この点に関して、この処理は反復処理であり、モデルの精度は、予測故障率とデータの実際の故障率とを比較することによって決定することができる。上述のように、ポンプの予測された故障は、ポンプが何らかの修理を必要とする故障であり、従って、実際の「故障」は、ポンプの作動が所要限界の範囲外にある実際の「状況」に関連する場合があり、又はそれは、単純にポンプが機能することができるように交換する時点である場合がある。
【0075】
図3は、上述のデータと併用された場合に特に良好な結果が得られる診断モデルを生成することが見出された1つの機械学習アルゴリズムの例を示している。このアルゴリズムは、この場合は数百本のツリーを有する複数のフォレストが使用され、各ツリーが予測を行い、各フォレストが確率を見つけるランダムフォレスト簡略化機械学習アルゴリズムである。次に、複数のフォレストからの最低故障確率が決定され、この最低故障確率は、確率が0.5に達した又はそれを超えた時にトリガされるように選択される警告を生成するのに使用される。そのような確率が6日間連続して続いた場合に、次の予防保守時点での交換が勧められる。
【0076】
従って、インスタンス200から始まり、ランダムフォレスト技術を用いてツリー1 201、ツリー2 202、...、ツリーn 20nに到達する。これらのツリーから、異なるクラス205a、205b、205nが導出され、多数決209によって最終クラス210に到達する。
【0077】
図4は、実施形態の診断モデルを生成又は更新する方法での段階を示す流れ図を示している。最初に、段階S10では、複数のポンプの作動条件を示すデータが機械学習アルゴリズムに入力される。これらのデータは、図1のデータレイク34のようなデータベースからのデータとすることができる。段階S20では、機械学習アルゴリズムからポンプの各々の故障確率が導出され、段階S30においてこれらのポンプに関する再生データ及び/又は修理データを含む実際の故障と比較される。この点に関して、ポンプは、予測通りに故障しない可能性があるが、故障することを回避するために修理又は再生される場合があり、従って、これらのデータが使用される。次に、予測確率の精度が決定される。
【0078】
次に、段階S40では、重み係数を含むことができるパラメータ及び/又はモデルの実際のアルゴリズムが変更され、段階S50で更新された故障確率が決定される。次に、生成された確率と実際の故障を比較することにより、更新された確率の精度が決定され、D5でこの確率がそれまでの尺度よりも正確であると決定された場合(「イエス」)には、S40でパラメータは同じ方向に変更され、再計算が実施される。更新された尺度の精度の方が低かった場合に(D5での「ノー」)、段階S70でそれまでの値を用いて診断モデルが生成される。このフローは、複雑な手順の極度に単純化した概略のものであり、理解されるように、パラメータを変化させる段階は、各々がパラメータ及び/又は実施される計算の部分集合を含むいくつかの段階で行うことができ、及び/又はこれらの変動は、最初に大まかな段階で行い、大まかな段階から最小値が見つかった時に、次に、細かな段階で行うことができる。いずれの場合にも、本方法は反復的であり、改善がもはや感じられない時又は望ましい精度に達した時に、これらのパラメータから診断モデルを生成することができる。
【0079】
図5は、実施形態によるポンプの故障を予測する方法を示す流れ図である。本方法は、段階S100でポンプの作動条件を示す信号をポンプに関連付けられたセンサからサンプリングする段階を含む。段階S110で信号が診断モデルに入力され、段階S120でこのモデルからポンプ故障確率が決定され、D15でこの確率が予め決められた値を上回っており、かつ実際にこの値を予め決められた時間にわたって上回ったままに留まっているか否かが決定され、そうである場合に(「イエス」)、段階S130でポンプを修理しなければならない又は交換しなければならないことを示す警告が出力される。確率が閾値を上回っていない場合に、警告は出力されない。
【0080】
図6は、単一ポンプの例に対するこの手法の値を示している。いくつかのモニタ値の変動、すなわち、ポンプの第1の段の温度であるT1、ポンプの第2の段の温度であるT2、ポンプモータ300の速度、再生サイクルの終了時のT1の値T1end及び再生サイクルの終了時のT2の値T2end、所要温度まで冷却するための時間310の変動が示されており、これらの値から、実施形態の診断モデルを用いて故障確率330が検出される。この確率は、その動向を追ってモニタすることができ、予め決められた閾値を超えた時に、ポンプを交換するための警告/警報を生成することができる。
【0081】
図6Aでは、赤色区域の始まりは、ポンプが故障する可能性があることが予測され、交換すべき場所を示しており、この場合は、ポンプは交換されず、図6Aは、これらの値がその後にどのように変化するかを示している。図6Bは、ポンプが故障する可能性がある時点でポンプが交換される別の実施形態を示している。
【0082】
実施形態は、経時的にポンプ性能をモニタし、ポンプに修理を提供する従来の修理提供と連携して使用することができる。従来の修理提供では、データがポンプから収集される。これらのデータは、温度、モータ速度、ビータ入力、再生パラメータ、使用年数などを含むことができるがこれらに限定されない。これらのデータは、埋め込みシステムによって収集されて解釈される。データ要約がパッケージ化され、予め決められた期間毎に電子メールで送信される。データは、未処理形態で閲覧するか又はグラフのセットとして視覚的に閲覧するかのいずれかを行うことができる。修理技術者は、後者を用いてT1、T2、及びrpmを単位とするポンプ速度のような主な制御パラメータの傾向を識別する。次に、修理技術者は、この情報をこの機器の予備知識と組み合わせて、それを用いてエンドユーザのポンプ群をポンプの交換又は他の補正措置を提案することに関して管理する。言い換えれば、そのようなシステムは、ポンプ性能への洞察を与えるが、傾向及びパターンを認識することができる経験豊かな修理技術者による能動的な関与を必要とする。
【0083】
本提案のソリューションは、同じ基本データに基づいて構成されるが、特定のポンプがいずれかの固定間隔(例えば、30日間、45日間、60日間)で故障する可能性を算定するために最先端の非常に専有的な機械学習アルゴリズムを使用する。これらのアルゴリズムは、1又は2以上の機械学習(ML)方法(ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、主成分分析などを含むがこれらに限定されない)を利用する。MLアルゴリズムは、過去の交換事象が明確に識別されたこのデータベースに対して構築及び「トレーニング」され、次に、データベースの別の部分集合に対して検証される。
【0084】
この手法の主な利点は、以下を含む:
・予測がポンプ作動の他の局面を表す「特徴」又は変換変数に依存するので、T1、T2、及びポンプ速度のような通常のインジケータに予測が反映されると考えられる時点のはるか前に性能劣化を予測するポンプの性能劣化を予測する機能。
・エンドユーザによるポンプの時期尚早の交換に至る可能性があるT1及びT2に対する厳しい制御限界への(多くの場合に間違った)依存を回避する又は少なくとも低減すること。
・モデル予測の精度及び/又はリードタイムを改善することができる追加のセンサ又は診断情報を組み込むためのプラットフォームを生成すること。
・確率関数を用いてポンプを先見的に交換することに関する指針を与え、エンドユーザが指針に従う場合に予定外のダウンタイムの排除(原理的に)又は少なくとも低減を可能にすることができること。
【0085】
本明細書で添付図面を参照して本発明の例示的実施形態を詳細に開示したが、本発明は、厳密な実施形態に限定されないこと、及び当業者は特許請求の範囲及びその均等物によって定められる本発明の範囲から逸脱することなくこれらの実施形態に様々な変形及び修正を加えることができることは理解される。
【0086】
参照符号
5 真空システム
10 クライオポンプ
20 監督ノード
22 診断回路
25 ホスト
30 リモート又はクラウドベースのシステム
32 データストリーミング管理回路
33 診断モデル生成論理部
33a ログパーサー
33b データストレージ
34 データレイク
35 機械学習アルゴリズム
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
【国際調査報告】