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特表2022-540469高電流イオン注入装置及び高電流イオン注入装置を用いたイオンビーム制御方法
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  • 特表-高電流イオン注入装置及び高電流イオン注入装置を用いたイオンビーム制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】高電流イオン注入装置及び高電流イオン注入装置を用いたイオンビーム制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20220908BHJP
   H01J 37/248 20060101ALI20220908BHJP
   H01J 37/12 20060101ALI20220908BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20220908BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01J37/317 C
H01J37/248 B
H01J37/12
H01L21/265 603B
H01J37/147 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022501125
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 US2020039159
(87)【国際公開番号】W WO2021011156
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/874,192
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/542,731
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リハンスキー, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ションウー
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, フランク
(72)【発明者】
【氏名】クケッティ, アントネラ
(72)【発明者】
【氏名】ハーマンソン, エリック ディー.
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル, クリストファー
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101EE17
5C101EE22
5C101EE25
5C101EE65
5C101EE68
5C101FF02
(57)【要約】
本書は、静電レンズの作動範囲を拡大するためのアプローチを提供するものである。イオン注入システムの静電レンズは、イオン源からイオンビームを受けることができ、静電レンズは、イオンビームラインの一方の側に沿って配置された第1の複数の導電性ビーム光学素子と、イオンビームラインの第2の側に沿って配置された第2の複数の導電性ビーム光学素子とを含む。イオン注入システムは更に、静電レンズと接続し、第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子の少なくとも一方に電圧及び電流を供給するように動作可能な電源を含んでいてよく、電圧及び電流はイオンビームをビーム偏向角で偏向させ、イオンビームは静電レンズ内で加速されてから減速される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入システムであって、
イオンビームを受ける静電レンズであって、イオンビームラインの一方の側に沿って配置された第1の複数の導電性ビーム光学素子と、前記イオンビームラインの第2の側に沿って配置された第2の複数の導電性ビーム光学素子とを含む静電レンズと、
前記静電レンズと接続し、前記第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子の少なくとも一方に電圧及び電流を供給するように動作可能な電源であって、前記電圧及び電流は前記イオンビームをビーム偏向角で偏向させ、前記イオンビームは前記静電レンズ内で加速され、その後減速される、電源と
を備える、イオン注入システム。
【請求項2】
前記静電レンズとウエハとの間に位置決めされたプラズマフラッドガンを更に備え、前記プラズマフラッドガンと前記ウエハとは、前記イオンビームラインに対してある角度に配向している、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記ウエハは接地され、前記イオンビームラインに沿った質量分析装置及びコリメータは正電位にある、請求項2に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記正電位は、前記第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子の電位以上である、請求項3に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
正電位は、前記第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子を囲むチャンバ壁の電位よりも大きい、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
前記イオンビームは、0kVより大きいビーム電位で前記静電レンズに入射する、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項7】
前記第1の複数の導電性ビーム光学素子は接地されている、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項8】
前記電圧及び前記電流は、前記第2の複数の導電性ビーム光学素子にのみ供給される、請求項7に記載のイオン注入システム。
【請求項9】
前記第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子はいかなる抑制電極も有さない、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項10】
前記第1の複数の導電性ビーム光学素子は、前記第2の複数の導電性ビーム光学素子に対して非対称な構成に配置される、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項11】
チャンバ壁によって画定されたチャンバ内に延びる入口軸を有する入口トンネルと、
前記チャンバに接続され、出口軸を画定する出口トンネルであって、前記入口軸と前記出口軸は前記ビーム偏向角を画定し、それらの間の前記ビーム偏向角は少なくとも30度である、出口トンネルと
を更に備える、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項12】
レンズであって、
チャンバを画定するチャンバ壁と、
前記チャンバ内の第1の複数の電極及び第2の複数の電極であって、静電レンズはイオン源からイオンビームを受け、前記第1の複数の電極はイオンビームラインの一方の側に沿って配置され、前記第2の複数の電極は前記イオンビームラインの第2の側に沿って配置され、前記第1及び第2の複数の電極の少なくとも一方に電圧及び電流が供給されて、前記イオンビームをビーム偏向角で偏向させ、前記イオンビームは、前記イオンビームがチャンバを通過するときに加速されてから減速される、第1の複数の電極及び第2の複数の電極と
を備えるレンズ。
【請求項13】
ウエハは接地されており、前記イオンビームラインに沿った質量分析装置及びコリメータは正電位にあり、前記正電位は前記第1及び第2の複数の電極の電位以上である、請求項12に記載のレンズ。
【請求項14】
正電位は、前記チャンバ壁の電位よりも大きい、請求項12に記載のレンズ。
【請求項15】
前記イオンビームは、20kVから85kVのビーム電位で前記静電レンズに入射する、請求項12に記載のレンズ。
【請求項16】
前記第1の複数の電極は接地されている、請求項12に記載のレンズ。
【請求項17】
前記電圧及び前記電流は前記第2の複数の電極にのみ供給される、請求項16に記載のレンズ。
【請求項18】
前記第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子はいかなる抑制電極も有さず、前記第1の複数の導電性ビーム光学素子は前記第2の複数の導電性ビーム光学素子に対して非対称の構成に配置される、請求項12に記載のレンズ。
【請求項19】
チャンバ内に延びる入口軸を有する入口トンネルであって、前記チャンバはチャンバ壁によって画定される、入口トンネルと、
前記チャンバに接続され、出口軸を画定する出口トンネルであって、前記入口軸及び前記出口軸は前記ビーム偏向角を画定し、それらの間の前記ビーム偏向角は少なくとも30度である、出口トンネルと
を更に備える、請求項12に記載のレンズ。
【請求項20】
イオン注入システムであって、
イオンビームを受ける静電レンズであって、イオンビームラインの一方の側に沿って配置された第1の複数の導電性ビーム光学素子と、前記イオンビームラインの第2の側に沿って配置された第2の複数の導電性ビーム光学素子とを含む静電レンズと、
前記静電レンズと接続し、前記第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子の少なくとも一方に電圧及び電流を供給するように動作可能な電源であって、前記電圧及び電流は前記イオンビームをビーム偏向角で偏向させ、前記第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子の少なくとも一方への前記電圧及び電流は、前記イオンビームを前記静電レンズ内で加速させてから減速させる、電源と
を備える、イオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、2019年7月15日に出願された係属中の米国仮特許出願第62/874,192号の非仮出願であり、本出願の内容を全て、参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
[0002]本開示は概して、半導体処理に関し、より具体的には、高電流イオン注入装置に関する。
【0003】
[0003]イオン注入システムは、イオン源と一連のビームライン構成要素とを含み得る。イオン源は、イオンが生成されるチャンバを備え得る。イオン源はまた、電源と、チャンバの近くに配置された引出し電極アセンブリとを含み得る。ビームライン構成要素は、例えば、質量分析装置、第1の加速又は減速ステージ、コリメータ、及び第2の加速又は減速ステージを含み得る。光ビームを操作するための一連の光学レンズと同様に、ビームライン構成要素は、イオン又はイオンビームをフィルタリング、集束、及び操作して、意図する種、形状、エネルギー、及び/又は他の品質を有するようにすることが可能である。イオンビームはビームライン構成要素を通過し、プラテン又はクランプに取り付けられた基板に向けられ得る。基板は、ロプラとも呼ばれる装置によって1又は複数の次元で移動(例えば、平行移動、回転、傾斜)させることができる。
【0004】
[0004]高電流で動作するイオン注入システムは、通常、ドリフトモード又はドリフト/減速モードで動作する。これらのモードでは、イオン源から引き出されたイオンビームは一定のエネルギーでビームラインに沿って輸送され、後の段階で最終的なエネルギーまで減速される可能性があり得る。しかし、この設計では、ビームラインの動作に一定の制約が生じる。例えば、質量分析用磁石は通常、ある最大質量エネルギー積を輸送するように設計されている。また、電気絶縁及び電源も特定の電圧を保持するように制限されている。
【0005】
[0005]そのため、高電流注入装置を従来の全ての利点と最大エネルギー拡張の両方で動作させることができるアプローチを開発することが有益である。
【発明の概要】
【0006】
[0006]あるアプローチでは、イオン注入システムは、イオンビームを受ける静電レンズを含んでいてよく、静電レンズは、イオンビームラインの一方の側に沿って配置された第1の複数の導電性ビーム光学素子と、イオンビームラインの第2の側に沿って配置された第2の複数の導電性ビーム光学素子とを含む。イオン注入システムは更に、静電レンズと接続し、第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子の少なくとも一方に電圧及び電流を供給するように動作可能な電源を含んでいてよく、電圧及び電流はイオンビームをビーム偏向角で偏向させ、イオンビームは静電レンズ内で加速され、その後減速される。
【0007】
[0007]別のアプローチでは、レンズは、チャンバを画定するチャンバ壁と、チャンバ内の第1の複数の電極及び第2の複数の電極とを含み得る。静電レンズは、イオン源からイオンビームを受けることができ、第1の複数の電極はイオンビームラインの一方の側に沿って配置され、第2の複数の電極はイオンビームラインの第2の側に沿って配置され、第1及び第2の複数の電極の少なくとも一方に電圧及び電流が供給されて、イオンビームをビーム偏向角で偏向させ、イオンビームは、イオンビームがチャンバを通過するときに加速されてから減速される。
【0008】
[0008]更に別のアプローチでは、イオン注入システムは、イオンビームを受ける静電レンズを含んでいてよく、静電レンズは、イオンビームラインの一方の側に沿って配置された第1の複数の導電性ビーム光学素子と、イオンビームラインの第2の側に沿って配置された第2の複数の導電性ビーム光学素子とを含む。イオン注入システムは更に、静電レンズと接続し、第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子の少なくとも一方に電圧及び電流を供給するように動作可能な電源を含んでいてよく、電圧及び電流はイオンビームをビーム偏向角で偏向させ、第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子の少なくとも一方への電圧及び電流は、イオンビームを静電レンズ内で加速させてから減速させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係るイオン注入システムを示す概略図である。
図2】本開示の実施形態に係る図1に示すイオン注入システムの静電フィルタの側面断面図である。
図3】本開示の実施形態に係る静電フィルタの側面断面図である。
図4】本開示の実施形態に係る静電フィルタの側面断面図である。
図5】本開示の実施形態に係る静電フィルタの側面断面図である。
【0010】
[0014]図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを描写することを意図していない。図面は、本開示の例示的な実施形態を描写することを意図しており、したがって、範囲を限定するものとはみなされない。図面において、同様の番号付けは、同様の要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0015]本開示に係るイオン注入システム、静電フィルタ又はレンズ、及び方法を、本開示の実施形態を示す添付図面を参照しながら、以下により詳細に説明する。イオン注入システム、静電フィルタ、及び方法は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈するべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、当業者にシステム及び方法の範囲を詳細に伝えるように提供される。
【0012】
[0016]先行技術で認識された前述の欠陥に鑑みて、本明細書で提供されるのは、高電流注入装置の作動を、従来の全ての利点と、中間エネルギー注入装置の作動領域の一部をカバーする最大エネルギー拡張との両方で可能にする、イオン注入システム、静電フィルタ、及び方法である。イオン注入システムの例示的な静電レンズは、ビームライン構成要素からイオンビームを受けることができ、静電レンズは、イオンビームラインの一方の側に沿って配置された第1の複数の導電性ビーム光学素子と、イオンビームラインの第2の側に沿って配置された第2の複数の導電性ビーム光学素子とを含む。イオン注入システムは、静電レンズと接続し、第1及び第2の複数の導電性ビーム光学素子の少なくとも一方に電圧及び電流を供給するように動作可能な電源を更に含んでいてよく、電圧及び電流はイオンビームをビーム偏向角で偏向させ、イオンビームは、イオンビームが静電レンズを通過するときに加速されてから減速される。
【0013】
[0017]ここで、本開示に係る例示的なシステムを示す図1を参照する。イオン注入システム(以下、「システム」)10は、他の構成要素のうち、イオンビーム18を生成するためのイオン源14、イオン注入システム、及び一連のビームライン構成要素16を含むプロセスチャンバを表す。イオン源14は、ガス24の流れを受け入れ、その中でイオンを生成するためのチャンバを備え得る。イオン源14はまた、電源と、チャンバ近傍に配置された引出し電極アセンブリとを備え得る。ビームライン構成要素16は、例えば、質量分析装置34、第1の加速又は減速ステージ36、コリメータ38、及び静電フィルタ(EF)40を含んでいてよく、これらは、加速及び減速ステージに対応するものであり得る。図示していないが、ビームライン構成要素16は、EF40の下流にプラズマフラッドガン(PFG)を更に含み得る。
【0014】
[0018]例示的な実施形態では、ビームライン構成要素16は、イオン又はイオンビーム18をフィルタリング、集束、及び操作して、所望の種、形状、エネルギー、及び他の品質を有するようにすることができる。イオンビーム18はビームライン構成要素16を通過し、処理チャンバ46内のプラテン又はクランプに取り付けられた基板の方へ向けられ得る。理解されるように、基板は、1又は複数の次元で移動(例えば、平行移動、回転、傾斜)させることができる。
【0015】
[0019]図示したように、イオン源14のチャンバと共に動作可能な1又は複数の供給源28があってよい。幾つかの実施形態では、供給源28から提供される材料は、原料物質及び/又は追加材料を含み得る。原料物質は、イオンの形態で基板に導入されるドーパント種を含み得る。一方、追加材料は、イオン源14のチャンバの原料物質の濃度を希釈するために、原料物質と共にイオン源14のイオン源チャンバに導入される希釈剤を含み得る。また、追加材料は、ビームライン構成要素16の1又は複数を洗浄するために、イオン源14のチャンバに導入され、システム10内で輸送される洗浄剤(例えば、エッチャントガス)も含み得る。
【0016】
[0020]様々な実施形態では、異なる種が原料物質及び/又は追加材料として使用され得る。原料物質及び/又は追加材料の例は、ホウ素(B)、炭素(C)、酸素(O)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ヒ素(As)、シリコン(Si)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、窒素(N)、水素(H)、フッ素(F)、及び塩素(Cl)を含む原子又は分子種を含み得る。当業者であれば、上記に挙げた種は非限定的であり、他の原子種又は分子種も使用され得ることを認識するであろう。用途に応じて、種は、ドーパント又は追加材料として使用され得る。特に、ある用途でドーパントとして使用される1つの種が、別の用途で追加材料として使用されてもよく、又はその逆も可能である。
【0017】
[0021]例示的な実施形態では、原料物質及び/又は追加材料は、気体又は蒸気の形態でイオン源14のイオン源チャンバに供給される。原料物質及び/又は追加材料が非気体又は非蒸気の形態である場合、材料を気体又は蒸気の形態に変換するために、気化器(図示せず)が供給源28の近くに設けられ得る。原料物質及び/又は追加材料がシステム10に供給される量及び速度を制御するために、流量コントローラ30が設けられ得る。
【0018】
[0022]EF40は、イオンビーム18の偏向、加速、減速、及び集束を独立して制御するように構成され得る。一実施形態では、EF40は、垂直静電エネルギーフィルタ(VEEF)である。以下により詳細に説明するように、EPM40は、イオンビーム18の上方に配置された一組の上部電極と、イオンビーム18の下方に配置された一組の下部電極とを備える電極構成を含み得る。一組の上部電極及び一組の下部電極は、静止し、固定位置を有していてよい。イオンビーム18の偏向、加速、減速、及び/又は集束を独立して制御するために、一組の上部電極と一組の下部電極との間の電位差を、中央イオンビーム軌道に沿った各点におけるイオンビーム18のエネルギーを反映するように中央イオンビーム軌道に沿って変化させることもできる。
【0019】
[0023]非限定的であるが、イオン源14は、発電装置、プラズマ励起装置、プラズマチャンバ、及びプラズマ自体を含み得る。プラズマ源は、誘導結合プラズマ(ICP)源、トロイダル結合プラズマ源(TCP)、容量結合プラズマ(CCP)源、ヘリコン源、電子サイクロトロン共鳴(ECR)源、間接加熱カソード(IHC)源、グロー放電源、電子ビーム生成イオン源、又は当業者に知られている他のプラズマ源であってよい。
【0020】
[0024]イオン源14は、基板を処理するためのイオンビーム18を生成し得る。様々な実施形態では、イオンビーム(断面)は、当技術分野で周知のように、スポットビーム又はリボンビーム等の、目標とする形状を有し得る。図示したデカルト座標系では、イオンビーム18の伝播方向は、Z軸に平行として表され得るが、イオンビーム18によるイオンの実際の軌道は異なる場合がある。基板を処理するために、イオンビーム18は、イオン源14とウエハとの間に電圧(電位)差を確立することによって、目標エネルギーを獲得するように加速され得る。例えば、イオン源14は、目標電圧(VT)、例えば、+120kVに結合され得、VTは電圧供給装置によって供給され、ウエハの処理中にイオンのための目標イオンエネルギーを生成するように設計されている。
【0021】
[0025]より具体的には、イオン源14は+120kVの電位にバイアスされ、質量分析装置34、第1の加速又は減速ステージ36、及びコリメータ38等のビームライン構成要素16は+60kVにバイアスされ得る。電位は、EF40を横切って+60kVから0kVまで減少する。より具体的には、幾つかの実施形態では、電位は、まず、EF40内で+60kVから約-20kVまで減少し、EF40を出るときに0kVまで増加し得る。最後に、この例では、ウエハは0V電位であってよい。実証されたように、質量分析装置34におけるイオンビーム18のエネルギー等のビーム輸送限界は、従来のビームラインの動作と比較して、変化せず、システム10の異なる部分にわたる全ての電位低下もまた変化しないままである。更に、すべての電源も変化しないままである。しかしながら、作動領域は、従来の60kVビームから潜在的に120kVビームに増加する。
【0022】
[0026]次に、図2を参照しながら、例示的な実施形態に係るEF40をより詳細に説明する。図示したように、EF40は、チャンバハウジング52によって画定されたEFチャンバ50を含む。EF40は更に、EFチャンバ50の圧力を調整するために、1又は複数の真空ポンプ(図示せず)と共に作動し得る。EF40は、イオンビーム(図示せず)がそこを通過してウエハ35に到達することを可能にする開口部37を有するPFG32によって一方の端部に沿って境界が設けられていてよい。図示したように、PFG32はEF40とウエハ35との間にあり、PFG32及びウエハ35は、イオンビームライン/軌道72に対して角度βで配向している。非限定的であるが、角度βは、5から30゜であってよい。EFチャンバ50内の複数の導電性ビーム光学素子70A~70Nの配置に起因し、PFG32及びウエハ35に対するEF40の配向に起因して、EF40は「湾曲」又は非対称と見なされる。
【0023】
[0027]図示したように、EF40は、イオンビームライン/軌道72に沿って配置された複数のグラファイト電極棒であり得る1又は複数の導電性ビーム光学素子70A~70Nを含み得る。本実施形態では、導電性ビーム光学素子70A~70Nは、イオンビームライン/軌道72に対して非対称な構成で配置される。非限定的であるが、複数の導電性ビーム光学素子70A~70Nは、一組の入口電極、一組の出口電極、及び一組以上の抑制/集束電極を含み得る。図示したように、電極対の各組は、イオンビーム(例えば、リボンビーム)がそこを通過することを可能にする空間/開口部を提供する。
【0024】
[0028]例示的な実施形態では、導電性ビーム光学素子70A~70Nは、互いに電気的に結合された導電性片の対を含む。あるいは、導電性ビーム光学素子70A~70Nは、イオンビームがそこを通過するための開孔をそれぞれ含む一連のユニット構造であってよい。図示した実施形態では、そこを通過するイオンビームを偏向させるために、各電極対の上部及び下部が(例えば、別々の導電性片において)異なる電位を有し得る。導電性ビーム光学素子70A~70Nを(例えば、5組の抑制/集束電極を有する)7個の対として示したが、異なる数の素子(又は電極)が利用され得る。例えば、導電性ビーム光学素子70A~70Nの構成は、3から10組の電極の範囲を利用し得る。
【0025】
[0029]幾つかの実施形態では、イオンビームライン72に沿って電極を通過するイオンビームは、ホウ素又は他の元素を含み得る。イオンビームの静電集束は、複数の細い電極(例えば、抑制/集束電極)を用いて、イオンビームライン72に沿った電位のグレーディングを制御することによって達成され得る。図示した導電性ビーム光学素子70A~70Nの構成では、イオンビームは、PFG32及びウエハ35に向かって移動する際に加速され、約15°偏向され得る。
【0026】
[0030]幾つかの実施形態では、電源76(例えば、DC電源)は、電圧及び電流をEF40に供給する。電圧/電流は、EFチャンバ50内にプラズマを生成するために、導電性ビーム光学素子70A~70Nに供給され得る。様々な実施形態では、電源76によって供給される電圧及び電流は、一定であり得る、又は変化し得る。一実施形態では、導電性ビーム光学素子70A~70Nは、0.1keVから100keVの一連の直流電位に保持される。導電性ビーム光学素子70A~70Nは、導電性ビーム光学素子70A~70Nの各々の均一な及び/又は独立した動作を可能にするために、並列(例えば、個別)又は直列で電気的に駆動され得る。
【0027】
[0031]従来の注入装置の動作をより高いエネルギーに拡張することに加えて、EF40によって提供される湾曲した最終加速は、更なる利点を有する。例えば、EF40に入る前にイオンビームライン/軌道72に沿って発生した粒子53は、ウエハ35に伝播することができない。粒子53が中性である場合、粒子53は、EF40の湾曲によってフィルタリングされる。粒子53が負に帯電している場合、粒子53は、EFチャンバ50内の静電場によってイオンビームライン/軌道72に偏向して戻されることになる。一方、粒子53が正に帯電している場合、粒子53は、イオンビームライン/軌道72の下方のそれらの導電性ビーム光学素子に曲げ落とされることになる。実証されたように、正に帯電した粒子53は、PFG32の開口部37を通って出ることはない。その代わりに、正に帯電した粒子53は、PFG32の前面55に衝突することがある。更に、EF40の導電性ビーム光学素子70A~70Nの1又は複数で発生した正又は負に帯電した粒子57は、ウエハ35に到達することはない。その代わりに、粒子57は、一般に、チャンバハウジング52の内部、PFG32の前面55、及びPFG32の出口37を画定する側壁59の一部に衝突することがある。
【0028】
[0032]図3は、EF40におけるイオンビーム18を示す図である。この実施形態では、全ての上部導電性ビーム光学素子、例えば70A、70C、70E、70G、70I、70K、及び70Mが接地されていてよく(0kV)、全ての底部導電性ビーム光学素子70B、70D、70F、70H、70J、70L、及び70Nが電力供給され得る。様々な実施形態では、導電性ビーム光学素子70Aは、端子電位であり得る、又は接地され得る。非限定的であるが、イオンビーム18はリン(P+)80kVビームであってよく、導電性ビーム光学素子70Aは+30kVの電位を有していてよく、導電性ビーム光学素子70H、70J、及び70Lは-40kVの電位を有していてよい。
【0029】
[0033]幾つかの実施形態では、EF40は、減速レンズに典型的に必要とされるいかなる抑制電極も含まなくてよい。これは、イオンビーム18が、導電性ビーム光学素子70A~N及びチャンバ壁52のいずれかと比較してより正の電位にあるため、可能である。全ての上部導電性ビーム光学素子、例えば70A、70C、70E、70G、70I、70K、及び70Mを接地電位に保つことは、極めて低い静電気応力を可能にし、グリッチングを除去又は低減する。
【0030】
[0034]使用中、イオンビーム18は、EF40に入るとき、最初は+60kVであってよい。しかしながら、様々な他の実施形態では、イオンビームは、最初、+20kVから85kVであってよい。この段階において、イオンビーム18は、例えば、イオンビームが導電性ビーム光学素子70A~70Dを通過する際に、EF40を通って加速する。導電性ビーム光学素子70C~70Fにおいて、イオンビーム18は、約+10kVであってよく、導電性ビーム光学素子70G~70Jにおいて、イオンビームは、約-20kVであってよい。イオンビーム18が導電性ビーム光学素子70K~70Nを通過すると、イオンビーム18は、PFG32に向かって減速する。イオンビーム18及びPFG32は、イオンビームがEF40を出るとき、0kVであってよい。
【0031】
[0035]幾つかの実施形態では、図4のEF40Aで示すように、底部導電性ビーム光学素子70B、70D、70F、及び70Hが、ウエハ35からのスパッタ材料の見通し線67堆積から遮蔽され、底部導電性ビーム光学素子70B、70D、70F、及び70Hはより清浄に保たれ得る。非限定的であるが、見通し線67は、PFG32のブロック特徴87と同様に、導電性ビーム光学素子70Fによって画定され得る。このような構成は、底部導電性ビーム光学素子70B、70D、70F、及び70Hで潜在的に発生し得る粒子の発生源を排除する、又は少なくとも低減し、上部導電性ビーム光学素子70A、70C、70E、70Gに対する材料剥離のトリガ機構を排除する、又は少なくとも低減し得る。
【0032】
[0036]図5に示すように、本明細書に記載の静電フィルタの湾曲した加速/減速設計により、電極及び/又は任意の動力面のいずれも汚染されない、イオン注入装置の高エネルギー作動も可能になる。例えば、EF40Bは、チャンバ壁52によって画定されるEFチャンバ50内に延びる入口軸79を有する入口トンネル77によって特徴付けられる高屈曲角レンズであってよい。EF40Bは、EFチャンバ40Bに接続され、出口軸83を画定する出口トンネル82を更に含み得る。図示したように、入口軸79及び出口軸82は、幾つかの実施形態では少なくとも30度であり得るビーム偏向角ρを画定し得る。
【0033】
[0037]複数の電極70A~70Dは、例えば、イオンビーム18の平均的な伝播方向、又はイオンビーム18の中心線軌道の位置を表すビーム経路を画定し得る。工程では、イオンビームがおおよそ入口軸79及び出口軸82に沿うビーム経路をたどるようにイオンビームを加速、偏向、及び集束させるため、決められた一連の電圧が、異なる電極70A~70Dに印加され得る。このため、1つの電極、例えば電極70Bが、イオンビーム18の第1の側、すなわちイオンビーム18の左側及び下方に配置される。他の電極、例えば少なくとも3つの電極が、イオンビーム18の第2の側、すなわちビーム経路の上方及び右側に配置され得る。図5によって表されるように、幾つかの実施形態では、非対称な構成で、電極70Bのみがビーム経路の第1の側に配置され、少なくとも3つの電極、すなわち70A、70C、及び70Dが第2の側に配置され得る。しかしながら、本明細書の実施形態は、この文脈に限定されない。
【0034】
[0038]本明細書では、便宜上及び明確化のために、「上部」「底部」「上方」「下方」「垂直」「水平」「横」「縦」等の用語を用いて、図に示す半導体製造装置の構成要素の形状及び配向に対する、これらの構成要素及びその構成部品の相対的配置及び配向について説明する。また、用語には、具体的に言及された語句、その派生語、及び類似の輸入語句が含まれるものとする。
【0035】
[0039]本明細書で使用する、単数形で記載され、単語「a」又は「an」が前に付いている要素又は工程は、複数の要素又は工程も含む可能性があると理解される。更に、本開示の「一実施形態」への言及は、言及された特徴を組み込んだ追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されるべきではない。
【0036】
[0040]本開示の実施形態に従って、電圧(電位)に関して本明細書で使用される用語「より正」又は「より負」、「より大」又は「より小」は、2つの異なる実体の相対電圧を指す場合がある。したがって、例えば、0Vは-5kVよりも「大きい」又は「より正」であり、一方、+10kVは、0Vよりも「大きい」又は「より正」である。更に、-10kVは、-5kVよりも「より負」である。用語「より正」又は「より負」は、相対電圧を指すこともある。例えば、0kVは、+5kVよりも負であり、+10kVは、+5kVより正であると言える。
【0037】
[0041]以上のことから、本明細書に開示される実施形態によって、少なくとも以下の利点が達成される。本実施形態は、フィルタ電極で発生した負に帯電した粒子が基板に衝突する能力を排除することによって、静電フィルタからの基板の直接的な汚染が低減されるという第1の利点を提供する。更に、本実施形態によって提供される別の利点は、静電フィルタの電極に基板から再スパッタされた材料が蓄積し、電極からのその後のスパッタリング又は剥離に起因して追加の汚染源となることによる間接的な基板汚染が排除されることである。
【0038】
[0042]本明細書では、本開示の特定の実施形態について説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、当技術分野で可能な限りの広い範囲であり、本明細書もそのように読み取ることができる。したがって、上記の説明は、限定的であると解釈すべきではない。当業者であれば、本明細書に添付された特許請求の範囲及び主旨内で他の修正例を想定するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】