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特表2022-540503アークチャンバ材料の混合物を用いるイオン注入システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(54)【発明の名称】アークチャンバ材料の混合物を用いるイオン注入システム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/08 20060101AFI20220908BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20220908BHJP
   H01J 27/08 20060101ALI20220908BHJP
   H05H 1/48 20060101ALI20220908BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01J37/08
H01J37/317 Z
H01J27/08
H05H1/48
H01L21/265 603A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502814
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 US2020038192
(87)【国際公開番号】W WO2021011143
(87)【国際公開日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】62/875,869
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】タン, イン
(72)【発明者】
【氏名】イェーデーヴ, シャラド エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ジョーゼフ アール.
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー, ジョセフ アール.
(72)【発明者】
【氏名】バイル, オレグ
【テーマコード(参考)】
2G084
5C101
【Fターム(参考)】
2G084AA08
2G084AA12
2G084BB23
2G084BB25
2G084BB27
2G084CC23
2G084CC33
2G084DD14
2G084FF04
2G084FF38
2G084HH09
2G084HH20
2G084HH35
2G084HH45
5C101AA25
5C101BB01
5C101DD03
5C101DD22
5C101DD31
5C101FF02
(57)【要約】
イオン種を生成するために使用される少なくとも1つのイオン化可能ガスを含むガスまたはガス混合物、および、2つ以上の異なるアークチャンバ材料を含むアークチャンバを含む、イオン注入のためのシステムおよび方法が説明される。システムを使用して、イオン種が、ライナーの組合せを伴うアークチャンバ内で生成され、1つまたは複数の所望のイオン種が、生成されたイオン種の中でより高いビーム電流を示し、イオン種の生成は、異なる材料の使用によって促進される。次に、基板への所望のイオン種の注入の改善が達成されることが可能である。さらに、システムは、システム動作中の金属堆積物の形成を最小化することができ、これにより、ソースライフを延ばし、システム性能の改善を推進する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に1つまたは複数のイオン種を注入するためのイオン注入システムであって、
少なくとも1つのイオン化可能ガスを含有するイオン化可能ガスまたはガス混合物を含むガス源と、
少なくとも第1のアークチャンバ材料および第2のアークチャンバ材料を含むアークチャンバであって、前記第1および第2のアークチャンバ材料が異なる、アークチャンバと
を備え、
前記アークチャンバが、内部プラズマ接面を有するアークチャンバ壁、および、1つもしくは複数のアークチャンバライナーのうちの少なくとも1つ、前記アークチャンバ内に配置されたスパッタリングターゲット、またはこれらの組合せを含み、前記第1および第2のアークチャンバ材料が、前記アークチャンバ壁、前記アークチャンバ内に配置された前記1つもしくは複数のアークチャンバライナー、前記アークチャンバ内に配置されたターゲット、またはこれらの組合せの中に存在する、
イオン注入システム。
【請求項2】
前記アークチャンバ壁が、前記第1のアークチャンバ材料を含み、前記第1のアークチャンバ材料が、タングステンを含み、前記第2のアークチャンバ材料が、ホウ素、窒化ホウ素、酸化ホウ素、ホウ化タングステン、または炭化ホウ素のいずれか1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第2のアークチャンバ材料が、前記アークチャンバ壁の一部または全ての上にコーティングされるか、これに表面グレーディングされる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のアークチャンバ材料を含む第1のライナー、および第2のアークチャンバ材料を含む第2のライナーを含み、前記第1のアークチャンバ材料がタングステンであり、前記第2のアークチャンバ材料が、ホウ素、窒化ホウ素、酸化ホウ素、ホウ化タングステン、または炭化ホウ素のうちの1つのいずれか1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ガス源が、BFガスおよび水素を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ガス源が、BFを含む第1のホウ素含有ガス、およびBガスまたはBガスを含む第2のホウ素含有ガスを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ガス源が、希釈ガスをさらに含み、前記希釈ガスが、水素、クリプトン、ネオン、ヘリウム、アルゴン、キセノン、またはキセノン/水素ガス混合物のいずれか1つであることが可能である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ガス源が、水素ガスまたはキセノン/水素ガス混合物のうちの1つをさらに含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記ガス源が、1つまたは複数のイオン化可能フッ化物含有ガスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記アークチャンバ壁が、タングステンを含み、前記第2のアークチャンバ材料が、アークチャンバライナーの少なくとも一部を形成し、グラファイトまたは炭化物含有化合物を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記アークチャンバ内に配置されたターゲットを備え、前記アークチャンバが、第1のアークチャンバ材料を含み、前記ターゲットが、前記第2のアークチャンバ材料を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記ターゲットが、前記イオン化可能ガスまたはそのイオンもしくはニュートラル断片のうちの少なくとも1つと反応するか、これによってスパッタされる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ガス源および/または少なくとも前記第1もしくは第2のアークチャンバ材料が、同位体濃縮された材料を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記ガス源が、同位体濃縮されたホウ素、または同位体濃縮されたゲルマニウムを含むイオン化可能ガスを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1または第2のアークチャンバ材料のうちの少なくとも1つが、同位体濃縮された材料である、請求項13または14に記載のシステム。
【請求項16】
請求項1に記載のイオン注入を使用して、基板に1つまたは複数のイオン種を注入するための方法であって、
ガス源に基づいて第1のアークチャンバ材料および第2のアークチャンバ材料のうちの少なくとも1つを選択することと、
所定の流量で前記ガス源をアークチャンバに注ぐことと、
所定のアーク電力およびソース磁場で前記ガス源からイオン種を生成することであって、前記イオン種が、基板注入のための所望のイオン種を含む、イオン種を生成することと、
前記基板に前記1つまたは複数のイオン種を注入するようにシステムを動作させることと
を含み、
前記流量、アーク電力、およびソース磁場が、同じ最適な動作条件で、第2のアークチャンバがない状態での前記イオン種のビーム電流に比べて、前記第2のアークチャンバ材料が使用されるときに、他のイオン種のいずれかより大きく増加されたビーム電流を、前記所望のイオン種に提供するように選ばれる、
方法。
【請求項17】
前記ガス源が、イオン化可能なホウ素含有ガスを含み、アークチャンバ壁が、前記第1のアークチャンバ材料を含み、前記第1のアークチャンバ材料が、タングステンを含み、前記第2のアークチャンバ材料が、ホウ素、窒化ホウ素、酸化ホウ素、ホウ化タングステン、または炭化ホウ素のいずれか1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のアークチャンバ材料を含む取外し可能なターゲットを前記アークチャンバ内に配置することをさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン化可能ガス源が、イオン化可能フッ化物含有ガス源であり、フッ化物イオン種が、フッ化物ガスから生成され、前記フッ化物イオン種が、基板注入のための所望のフッ化物イオン種を含み、前記流量、アーク電力、およびソース磁場が、同じ最適な動作条件で、第2のアークチャンバライナーがない状態での前記フッ化物イオン種の前記ビーム電流に比べて、前記第2のアークチャンバライナーが使用されるときに、他のフッ化物イオン種のいずれかより大きく増加されたビーム電流を、前記所望のフッ化物イオン種に提供するように選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のアークチャンバ材料が、タングステンを含み、前記第2のアークチャンバ材料が、グラファイトまたは炭化物含有化合物を含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月18日に出願の米国仮出願第62/875,869号の優先権および利益を主張し、これは本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、2つ以上の異なる材料の混合物を使用するアークチャンバを有するイオン注入システム、および、このシステムを使用したイオン注入のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン注入は、基板上での化学種のエネルギーイオンの衝突による、マイクロ電子デバイスウエハなどの基板への化学種の堆積を伴う。イオン注入種を生成するために、例えば、ハロゲン化物種または水酸化物種を含み得るガスがイオン化される。このイオン化は、イオンビームを生成するためのイオン源を使用して実行される。イオン源は、典型的には、ガスまたはガス混合物である。
【0004】
イオン源で生成されると、イオンビームは、基板上で衝突させられる最終的なイオンビームを生み出すために、抽出、磁気フィルタリング、加速/減速、分析磁石処理、コリメーション、スキャニングおよび磁気補正によって処理される。
【0005】
イオン化すると、イオン化可能ガスは、典型的には、複数のイオン種を生成する。出発化合物(例えばガス)から導出された各イオン種は、別のイオン種とは異なる原子組成を有し、これらの原子組成、および基板の所望の変更に基づく、特定の種を注入したいという要望、特定の種を注入するのを回避したいという要望、または両方があり得る。それでも、イオン化の際に、および、注入のためのイオンビームを生成するために使用される条件下で、各イオン種は、基板への種の注入に影響を及ぼすことができるビーム電流を有する。
【0006】
イオン注入処理は、タングステンフッ化物を生成するために、タングステンアークチャンバとのフッ化物イオンの反応など、チャンバ材料とのガス種の反応によって、アークチャンバ内で追加のイオン種が生成されるとき、次第に複雑になる恐れもある。
【0007】
特に、イオン注入処理がより複雑になると、イオンビーム性能を改善するための、様々な難題が残る。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、イオン注入処理において基板にイオン種を注入するためのシステムおよび方法に関する。多くの態様で、本開示は、1つまたは複数のイオン化可能ガスとともに、異なるアークチャンバ材料の混合物を選択および使用することによって、ガスまたはガス混合物から生成されるイオン種の性能を変化させる、または改善するための方式を提供する。システムは、2つ以上の異なるアークチャンバ材料を伴うアークチャンバを含む。第1のアークチャンバ材料とは異なる第2の異なるアークチャンバ材料の存在は、イオン化可能ガスのイオン化の際の、1つまたは複数の所望のイオン種のためのビーム電流性能の向上を容易にする。これは、1つまたは複数の所望のイオン種の、より高いビーム電流を使用した、このイオン種の注入の改善を可能にする。これは、基板に導入されることが望ましくないイオン種が、より低いビーム電流を有することになるので、これらの種の堆積を最小化することもできる。
【0009】
アークチャンバの一部の構築のために使用される異なる材料の混合物は、チャンバ材料(例えばタングステン)とのガス(例えばフッ化物ガス)の反応から生じるなど、そうでなければシステム動作中に形成する不必要なアークチャンバ堆積物の形成を、最小化することもできる。したがって、アークチャンバ材料の反応によって生じる不必要な堆積物は最小化されることが可能であり、これにより、ソースライフを延ばし、改善されたシステム性能を推進する。
【0010】
1つの態様では、本開示は、基板にイオン種を注入するためのシステムを提供し、システムは、イオン化されるときに少なくとも1つのイオン種を形成可能なガスまたはガス混合物を含むガス源を含む。システムは、2つ以上の異なるアークチャンバ材料を含むアークチャンバを含み、第1のアークチャンバ材料は、第2のチャンバ材料とは異なる。アークチャンバは、内部プラズマ接面(interior-plasma facing surface)を有するアークチャンバ壁、および任意選択として、内部プラズマ接面の全てまたは一部に接触するように構成された1つまたは複数のアークチャンバライナーを含む。
【0011】
いくつかの態様では、より異なるアークチャンバ材料の2つは、タングステン、モリブデン、炭素、シリコン、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、フッ素、インジウム、窒素、酸素、ガリウム、ゲルマニウム、およびランタンを含むがこれらに限定されない1つまたは複数の原子を有する第1および第2のアークチャンバ材料を含む。第1および第2のアークチャンバ材料は、個々の化合物、金属間化合物、合金、合成物、固溶体(マトリックス「溶媒」金属によって形成された合金であり、マトリックス「溶媒」金属の結晶構造内に別の「溶質」元素が原子的に拡散しており、溶媒に対する溶質の定量が小範囲にわたって連続的である)、および固形材料の混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1または第2のアークチャンバ材料は、グラファイト含有材料、炭素含有材料、ホウ素含有、ゲルマニウム含有、アンチモン含有、タングステン含有、モリブデン含有、フッ素含有、窒素含有、酸素含有材料、セラミックス材料、または合金を含むことができる。例えば、第1または第2のアークチャンバ材料は、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、(酸化ホウ素)B、(酸化ゲルマニウム)GeO、炭化ケイ素(Sick)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(tungsten germanium)WGe、炭化カルシウム(CaC)、Al、(炭化マグネシウム)MgC、(フッ化アルミニウム)AlF、(フッ化ガリウム)GaF、(フッ化インジウム)InF、(窒化ガリウム)GaN、窒化アルミニウム(AlN)、(窒化インジウム)InN、酸化ランタンタングステン(tungsten lanthanum oxide)(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、(酸化インジウム)In、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)を含むことができる。第1または第2のアークチャンバ材料はまた、タングステン合金を含むことができる。例示的なタングステンベース合金はWB2-xであり、x=0.001~0.5である。
【0012】
1つの例示的な実施形態では、第1のアークチャンバ材料はタングステンであり、第2のアークチャンバ材料は、グラファイトまたは炭化物化合物の形の炭素を含む。
【0013】
別の例示的な実施形態では、第1のアークチャンバ材料はタングステンであり、第2のアークチャンバ材料は、元素ホウ素、ホウ化物化合物、またはホウ素含有合金の形のホウ素含有材料を含む。
【0014】
さらに、別の例示的な実施形態では、第1のアークチャンバ材料または第2のアークチャンバ材料は、同位体の天然存在度に関連して、1つまたは複数の同位体における、同位体濃縮された(isotopically enriched)材料から選択される。1つの例示的な実施形態では、第1または第2のアークチャンバ材料は、B-11同位体における、同位体濃縮されたホウ素を伴うホウ素含有材料である。別の例示的な実施形態では、第1または第2のアークチャンバ材料は、Ge-72同位体などの1つまたは複数のゲルマニウム同位体における、濃縮されたゲルマニウム含有材料である。
【0015】
これらの異なるアークチャンバ材料は、様々な配置でアークチャンバ内に存在可能である。第1または第2のアークチャンバ材料は、アークチャンバライナーまたはアークチャンバピースのうちの1つまたは複数の全てまたは一部の中に存在可能である。1つのタイプの配置では、第2のアークチャンバ材料は、アークチャンバ壁の一部または全ての上にコーティングされるか、これに表面グレーディングされ(surface graded)、アークチャンバ壁は、第1のアークチャンバ材料から作られる。別の配置では、アークチャンバは、1つまたは複数のアークチャンバライナーを有し、1つまたは複数のアークチャンバライナーは、第1または第2のアークチャンバ材料の少なくとも1つを含む。さらに別の実施形態では、第1または第2のアークチャンバ材料は、アークチャンバ内に配置された別々のピースまたはターゲットとして提供され得る。
【0016】
別の態様では、本開示は、基板に1つまたは複数のイオン種を注入するための方法を提供する。方法は、イオン化されるときに少なくとも1つのイオン種を生成可能なガスまたはガス混合物を含むガス源を有する、本明細書で説明されるようなシステムを提供することを含み、アークチャンバは、異なる少なくとも第1および第2のアークチャンバ材料を有する。本方法では、基板が注入チャンバ内に存在し、システムは、基板に1つまたは複数のイオン種を注入するように動作される。例示的なイオン化可能ガスは、シリコン含有ガス、ホウ素含有ガス、ゲルマニウム含有ガス、炭素含有ガス、リン含有ガス、ヒ素含有ガス、アンチモン含有ガス、タングステン含有ガス、窒素含有ガス、ガリウム含有ガス、インジウム含有ガス、スズ含有ガス、およびアルミニウム含有ガスを含むがこれらに限定されない。イオン化可能ガスは、少なくとも1つの他のガスと混合して、一緒に注がれる(co-flowed)、または提供されることが可能である。少なくとも1つの他のガスは、イオン化可能ガスと同じ種、および/または希釈ガスもしくはキャリアガスを含有する複合ガス(co-gas)を含むことができる。
【0017】
本方法では、イオン種を生成可能なガスまたはガス混合物が、所定の流量でアークチャンバに注がれることが可能である。アークチャンバ内に所定の電力および電圧を印加すると、イオン種をガスまたはガス混合物から生成することができ、種は、基板注入に望ましい1つまたは複数のイオン種を含む。システムの所望の動作条件を使用すると、イオン種のビーム電流は、第2のアークチャンバ材料の存在により、同じ動作条件で第2のアークチャンバ材料なく生成されたイオン種のビーム電流に比べて、他のイオン種のどれよりも大きく増加される。この方法を使用して、基板への注入のために、ビーム電流が最大のイオン種を選択することができる。
【0018】
実践の例示的モードでは、イオン化可能ガスまたはガス混合物は、所定の流量でアークチャンバに注がれる。例示的なガスは、CO、CO、CF、CH、C、BF、B、B、PH、PF、PF、AsH、AsF、AsF、GeF、GeH、Ge、SiF、Si、SiH、Si、Si、SbH、SbFを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガスまたはガス混合物は、例えば、同位体濃縮されたBF3ガス、または同位体濃縮されたGeF4ガスなどの、同位体濃縮されたガスを含むことができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、イオン化可能ガスは、BFおよび少なくとも1つの追加のガスを含むホウ素含有ガス混合物である。少なくとも1つの追加のガスは、複合種ガス(co-species gas)(例えば、B、B)および/または希釈ガス(例えば、H、Xe、Xe/H、N、Kr、Ar、He)を含むことができる。ガス混合物の具体例は、BF/H、BF/B、BF/B/H、BF/B、BF/B/H、BF/Xe+H、およびBF/B/Xe+Hを含むことができるが、これらに限定されない。BFガスは、濃縮されたBFガスであることが可能である。
【0019】
アークチャンバ内に所定の電力および電圧を印加すると、1つまたは複数のイオンおよび1つまたは複数のイオン種を、イオン化可能ガスまたはガス混合物から生成することができる。例示的なイオン種は、Cイオン、Bイオン、Nイオン、Fイオン、Siイオン、Geイオン、Pイオン、Asイオン、Gaイオン、Sbイオン、Inイオン、Alイオン、Snなどのイオンを含む。CF 、CF 、CF、BF、BF 、SiF 、Si 、SiF、GeF 、GeF などの複数原子イオン種も生成することができる。
【0020】
2つの異なるアークチャンバライナー材料を有するアークチャンバでは、イオン種はそれぞれ、所望の動作条件を使用して生成されたビーム電流を有し、所望のイオン種は、同じ最適な動作条件を使用するが第2のアークチャンバ材料なく生成されたイオン種ビーム電流に対して測定されるような、最適化されたビーム電流を有する。つまり、所望のイオン種は、ただ1つの材料から成るアークチャンバに比べて、異なるアークチャンバ材料の混合物を使用すると、ビーム電流の著しい増加を示し、ここで、他の所望でないイオン種(例えば、非金属イオンまたはメタロイドイオンを有するイオン種)は、単一のライナーに比べて、ライナー混合物を使用すると、電流の何らかの著しい増加を示すことも、同じ電流を有することも、低減されたビーム電流を有することもない。同様にして、所望のイオン種のためのビーム電流が高くなると、基板への所望のイオン種の注入の改善を促進する一方で、他の所望でないイオン種の注入が最小化されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】チャンバ内でのドーパントソースガスのイオン化のために、ドーパントソースガスをアークチャンバに補給するためのガス補給ラインを伴うアークチャンバを含むイオン注入システムの概略図である。
図2】このようなシステムのアークチャンバ内のプラズマの生成を概略的に示す図1のイオン注入システムの断面を示す図である。
図3】イオン源装置を備えるイオン源アセンブリの断面における斜視図である。
図4】図示のイオン注入チャンバ内の基板のイオン注入ドーピングのために供給されるガスを入れる格納容器および分配容器を含むイオン注入処理システムの概略図である。
図5】異なるライナーを収める説明されるようなイオン源チャンバの上面図である。
図6】異なるライナーを収める説明されるようなイオン源チャンバの上面図である。
図7A】異なるライナーを収める説明されるようなイオン源チャンバの上面図である。第1のサイドライナー、第2のサイドライナー、および底部ライナーは、1つのピースになっている。
図7B】異なるライナーを収める説明されるようなイオン源チャンバの垂直断面図である。第1のサイドライナー、第2のサイドライナー、および底部ライナーは、1つのピースになっている。
図8】グラファイトおよびタングステンライナーに対する、より低いガス流量で、より高いFビームを生み出した、混合されたタングステン/グラファイトライナーの存在下でCFガスを使用した実験からのFビーム電流データを示す図である。
図9】グラファイトおよびタングステンライナーに対する、混合されたタングステン/グラファイトライナーを使用した、より高いFビーム、および、タングステンライナーに対して使用するときの、より低いWおよびWF ビームを伴う、CFガスを使用した実験からのイオン化された種を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の実施形態は、イオン注入のためのシステムおよび方法に関し、システムは、イオン注入のために使用され、少なくとも2つの異なるアークチャンバ材料を有する、アークチャンバを含む。本明細書で説明されるようなイオン注入方法のために、任意のタイプのイオン注入システムを使用することができる。アークチャンバは、内部プラズマ接面を伴うアークチャンバ壁を有する。任意選択として、アークチャンバの壁の内部プラズマ接面の全てまたは一部に接触するように構成された1つまたは複数のアークチャンバライナーがある。アークチャンバ内には、2つ以上の異なるアークチャンバ材料が、アークチャンバ壁内に、1つまたは複数の任意選択のアークチャンバライナー内に、または両方に存在する。システムはまた、イオン化されたときに少なくとも1つのイオン種を形成可能なガスまたはガス混合物を提供するガス源を含む。さらに、システムは、アークチャンバ内で生成された1つまたは複数のイオン種を基板に注入することができる注入チャンバを含むことができる。
【0023】
2つの異なるアークチャンバ材料を用いるシステムは、改善されたイオン注入を提供するために使用されることが可能であり、様々な態様では、イオン生成ガスまたはガス混合物が複数のイオン種を生成する方法のために使用することができる。システムは、所定の流量のイオン生成ガスまたはガス混合物、所定のアーク電力、および所定のソース磁界で動作されることが可能である。動作条件は、最適化されたビーム電流を複数のイオン種のうちの所望のイオン種に提供することができ、基板への注入のためのターゲットにされることが可能である。
【0024】
いくつかの配置では、アークチャンバは、内部プラズマ接面(すなわち、システムが使用中のときにプラズマに接触するアークチャンバの表面)を伴う壁を有する。内部接面は、アークチャンバの第1の側壁、第2の側壁、陰極側壁、陽極側壁、底部、および最上部によって示されることが可能である。第1の側壁、第2の側壁、陰極側壁、陽極側壁、底部、および/または最上部の内部プラズマ接面の全てまたは一部は、コーティング、表面グレーディング、またはアークチャンバライナーの形の第2の異なるアークチャンバ材料を含むことができる。アークチャンバの内部プラズマ接面は、全内部プラズマ接面エリアを提示することができ、アークチャンバ材料の量は、全内部プラズマ接面エリアの材料のパーセント量の観点で定義することができる。例えば、システムは、第2のアークチャンバ材料から形成されたアークチャンバライナーの少なくとも一部を含むことができ、アークチャンバライナーは、チャンバの全内部プラズマ接面エリアの特定のパーセンテージを覆う。別の例として、システムは、第2のアークチャンバ材料で表面グレーディングまたはコーティングされた1つのアークチャンバ壁の内部プラズマ接面の1つまたは複数の少なくとも一部を含むことができ、所望のパーセンテージの全内部プラズマ接面エリアが、第2のアークチャンバ材料でコーティングまたは表面グレーディングされる。
【0025】
アークチャンバは、より異なるアークチャンバ材料の2つを含む。これらの異なるアークチャンバ材料は、様々な配置でアークチャンバ内に存在可能である。第1または第2のアークチャンバ材料は、アークチャンバライナーまたはアークチャンバピースの1つまたは複数の全てまたは一部の中に存在可能である。1つの実施形態では、第2のアークチャンバ材料は、アークチャンバ壁の一部または全ての上にコーティングされるか、これに表面グレーディングされ、アークチャンバ壁は、第1のアークチャンバ材料から作られる。別の実施形態では、アークチャンバは、1つまたは複数のアークチャンバライナーを有し、1つまたは複数のアークチャンバライナーは、第2のアークチャンバ材料を含む。ライナーは、例えば、2つの対向する主要な表面およびその間の厚さを有する構造の平面ピースなど、平らであり得る。ライナーは、長方形の、曲線の(例えば、繰り返された)、角度のある、またはそうでなければ、形作られたものでよい。ライナーは取外し可能であることが可能であり、ライナーをイオン源チャンバの内部空間から挿入および除去可能であることを意味する。他のケースでは、ライナーは永久的、かつチャンバから取外し不能であることが可能である。さらに他の実施形態では、第1または第2のアークチャンバ材料は、アークチャンバ内にマウントされた、または、このためにライナーもしくはアークチャンバ壁内に形成された凹所で受けた、別々のピースまたはターゲットとして提供することができる。別々のピースは、アークチャンバ内に配置できるような、任意の適切な形状またはサイズのものであり得る。1つの実施形態では、別々のピースは第2のアークチャンバ材料を含み、アークチャンバ壁および/またはライナーは第1のアークチャンバ材料を含み、第1および第2のアークチャンバ材料は互いに異なる。実施形態では、別々のピースは消耗構造であり、イオン化可能ガスまたはガス混合物と反応する。1つの例では、別々のピースはスパッタリングターゲットである。
【0026】
例示的な実施形態では、少なくとも2つの異なる第1および第2のアークチャンバ材料のうちの1つは、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)といった材料の任意の1つまたは複数であることが可能である。いくつかのケースでは、アークチャンバは、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)から選択された、異なる少なくとも2つのアークチャンバ材料を伴う3つ以上の異なるアークチャンバ材料を含む。いくつかのケースでは、アークチャンバは、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)から選択された、異なる少なくとも3つのアークチャンバ材料を伴う4つ以上の異なるアークチャンバ材料を含む。いくつかのケースでは、アークチャンバは、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)から選択された、異なる少なくとも4つのアークチャンバ材料を伴う5つ以上の異なるアークチャンバ材料を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1、第2、第3、第4等のアークチャンバ材料のうちの少なくとも1つが、同位体の天然存在度に関連して、1つまたは複数の同位体における、同位体濃縮された材料から選択されることが可能である。1つの例示的な実施形態では、第1または第2のアークチャンバ材料は、B-11同位体における、同位体濃縮されたホウ素を伴うホウ素含有材料である。別の例示的な実施形態では、第1または第2のアークチャンバ材料は、Ge-72同位体などの、1つまたは複数のゲルマニウム同位体において濃縮されたゲルマニウム含有材料である。
【0028】
2つ以上の異なるアークチャンバ材料の結果として生じる混合物は、イオン注入のための1つまたは複数のイオンを含むガスまたはガス混合物のビーム電流およびソースライフを含むイオン注入性能を改善することができる。いくつかの実施形態では、2つ以上の異なるアークチャンバ材料の存在は、注入処理中に形成されるタングステンフッ化物の量を低減させることができる。
【0029】
いくつかの配置では、本開示のシステムは、タングステンから、または、タングステンと1つもしくは複数の材料の組合せとから作られた、第1のアークチャンバライナー、および、第1のアークチャンバライナーとは異なる材料から、または材料の組合せから作られた、第2のアークチャンバライナーを伴う、2つ以上のアークチャンバライナーを含むことができる。アークチャンバライナーは、例えば、2つの対向する主要な表面およびその間の厚さを有する構造の平面ピースなど、平らであることが可能である。ライナーは、長方形の、曲線の(例えば、繰り返された、U形状の)、角度のある、またはそうでなければ、形作られたものでよい。ライナーは取外し可能であることが可能であり、ライナーをイオン源チャンバの内部空間から挿入および除去可能であることを意味する。他のケースでは、ライナーは永久的、かつチャンバから取外し不能であることが可能である。実施形態では、アークチャンバは2つ以上の挿入可能なライナーを含み、挿入可能なライナーのうちの1つがタングステンから形成され、アークチャンバライナーが、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)などの材料から形成される。
【0030】
いくつかの実施形態では、システムは、タングステン含有材料から作られた第1のアークチャンバライナーと、本明細書で説明されるような、グラファイト、炭化物、またはセラミックスから作られたものなどの非タングステン含有材料から作られた第2のアークチャンバライナーとを含む。他の実施形態では、システムは、タングステン含有材料から作られた第1のアークチャンバライナーと、タングステン含有材料および非タングステン含有材料の混合物から作られた第2のアークチャンバライナーとを含む。例えば、第2のアークチャンバライナーは、タングステン含有材料から形成することができるが、グラファイト、炭化物、またはセラミックスで表面グレーディングまたはコーティングされる。
【0031】
例では、イオン注入システムの第2のライナーは、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)、あるいはこれらの組合せを含むこと、これらから成ること、またはこれらから本質的に成ることが可能である。実例の消耗構造は、グラファイト(C)、炭化ケイ素(SiC)、元素ホウ素(B)、炭化ホウ素(BC、B12)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)の、重量で少なくとも50、60、70、80、90、または95パーセントを含むことができる。本説明によれば、リストアップされた材料または材料の組合せ「から本質的に成る」と書かれた材料または構造は、リストアップされた材料または材料の組合せを収める材料または構造であり、任意の他の成分または材料の不十分な量より多くなく、したがって、グラファイト(C)、元素ホウ素(B)、炭化ケイ素(SiC)、またはこれらの組合せから本質的に成る構造は、少なくとも97、99、または99.5重量パーセントのグラファイト(C)、元素ホウ素(B)、炭化ケイ素(SiC)、またはこれらの組合せ、および3、1、または0.5以下の重量パーセントの任意の他の材料を含有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、アークチャンバは、炭化タングステン(WC、WC)から作られた第1のライナー、および炭化ケイ素(SiC)から作られた第2のライナーの2つ以上を含む。いくつかの実施形態では、アークチャンバは、炭化タングステン(WC、WC)から作られた第1のライナー、およびグラファイト(C)から作られた第2のライナーを含む。いくつかの実施形態では、アークチャンバは、炭化タングステン(WC、WC)から作られた第1のライナー、および炭化ホウ素(BC、B12)から作られた第2のライナーを含む。いくつかの実施形態では、アークチャンバは、炭化タングステン(WC、WC)から作られた第1のライナー、および炭化カルシウム(CaC)から作られた第2のライナーを含む。いくつかの実施形態では、アークチャンバは、炭化タングステン(WC、WC)から作られた第1のライナー、および炭化アルミニウム(Al)から作られた第2のライナーを含む。いくつかの実施形態では、アークチャンバは、炭化タングステン(WC、WC)から作られた第1のライナー、および炭化マグネシウム(MgC)から作られた第2のライナーを含む。
【0033】
製作のいくつかのモードでは、1つまたは複数の非タングステン材料が、アークチャンバ壁またはアークチャンバライナーの構造材料に融合される。例えば、アークチャンバ壁またはアークチャンバライナーは、本明細書で説明される特定の形式のいずれかを含む、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)などの、本明細書で説明される材料の任意の1つまたは複数で「表面グレーディングされる」(例えば、「注ぎ込まれる」)ことが可能である。表面グレーディングは、所望の非タングステン材料(グラファイト、炭化物等)を、アークチャンバ壁またはライナーの金属表面に適用し、次に、この表面を熱して、非タングステン材料をアークチャンバ壁またはライナーの金属に融合することによって、達成されることが可能である。非タングステン材料は、構造の表面に高密度で存在するようになり、保護バリアを提供することができる。表面グレーディングは、アークチャンバ壁またはアークチャンバライナーの表面(内部)の全てまたは一部を覆っていることが可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、アークチャンバ壁またはアークチャンバライナーは、微粒子の形のグラファイト含有材料、炭化物含有材料、またはセラミックスから、完全にまたは部分的に修正されるか、作られる。これらの材料の例示的な形式は、これらの材料の任意の2つ以上の組合せの、PLS(10ミクロングラファイト)、DFP(5ミクロングラファイト)、DFP3-2(高密度化されたグラファイト)、SCF(ハードグラファイト)、SCF-PYC(ピロカーボンコーティングを伴うハード5ミクロングラファイト)、SCF-IF(ピロカーボン浸透を伴うハード5ミクロングラファイト)、ZEE(ハード1ミクロングラファイト)、ZEE-PYC(ピロカーボンコーティングを伴うハード1ミクロングラファイト)、ZEE-IF(ピロカーボン浸透を伴うハード1ミクロングラファイト)、SUPERSiC、SUPERSiC-GS(SiC合成層を伴うグラファイト)であることが可能である。これらの材料のいずれかは、挿入可能なライナーを作るために使用されることが可能であり、これらの材料の任意の1つまたは複数が、グレーディングされないライナー、表面グレーディングされたライナー、または表面コーティングされたライナーを形成するために使用される。
【0035】
代替として、アークチャンバ壁またはライナーは、グレーディングされるのではなく、所望の非タングステン材料をアークチャンバ壁またはライナーの材料と関連付けるように別途修正されることが可能である。例えば、修正の別のモードでは、所望の非タングステン材料(グラファイト、炭化物等)が、アークチャンバ壁またはライナーの金属表面の全てまたは一部の上に表面コーティングされる。表面コーティングの際、非タングステン材料は、金属表面上にコーティングされた層を形成するが、金属に必ずしも融合されない。コーティングされた層は、熱を使用して非タングステン材料をコーティングすること、圧力を使用してコーティングすること、または、スパッタコーティングによるなど、様々な技法のうちの1つによって形成されることが可能である。コーティングされた層は、約1ナノメートルから約5ミリメートルまでの範囲の厚さなど、所望の厚さであることが可能である。表面コーティングは、アークチャンバ内壁の表面(内部)の全てまたは一部を覆っていることが可能である。
【0036】
本明細書で述べられるように、アークチャンバの異なる材料は、アークチャンバの内部プラズマ接面のエリアの割合の観点で説明することができる。アークチャンバの内部プラズマ接面のエリアの割合は、第2の異なるアークチャンバ材料を含むことができる。第2のアークチャンバ材料は、内表面の一部の上の、ライナー、コーティング、または表面グレーディングの形であることが可能である。アークチャンバの内部接面は、アークチャンバの第1の側壁、第2の側壁、陰極側壁、陽極側壁、底部、および最上部を含むことができる。これらの内部プラズマ接面の任意の1つまたは複数の全てまたは一部は、第2の異なるアークチャンバ材料を含むことができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、アークチャンバ壁は、全内部プラズマ接面エリアを有し、システムは、第2のアークチャンバ材料(例えば、炭化物、グラファイト等)を含む少なくとも1つのアークチャンバライナーを含み、少なくとも1つのアークチャンバライナーは、約1%から約99%までの範囲の壁の全内部プラズマ接面エリアの量を覆う。より具体的には、少なくとも1つのアークチャンバライナーは、全内部プラズマ接面エリアの約30%から約70%までの範囲の量を覆う。さらにより具体的には、少なくとも1つのアークチャンバライナーは、全内部プラズマ接面エリアの約40%から約60%までの範囲の量を覆う。
【0038】
いくつかの実施形態では、システムは、本明細書で説明されるように、タングステンなどの第1の材料から作られた第1のライナー、およびグラファイト、ホウ化、または炭化物などの第2の材料から作られた第2のライナーを伴う少なくとも2つのアークチャンバライナーを含み、第2のアークチャンバライナーは、全内部プラズマ接面エリアの約1%から約99%まで、約30%から約70%まで、または約40%から約60%までの範囲の壁の全内部プラズマ接面エリアの量を覆う。
【0039】
いくつかの実施形態では、アークチャンバ壁は全内部プラズマ接面エリアを有し、システムは、第2のアークチャンバ材料(例えば、炭化物、グラファイト等)でコーティングまたは表面グレーディングされた内部接壁の少なくとも一部を含み、全内部プラズマ接面エリアの約1%から約99%までの範囲の量が、第2のアークチャンバ材料でコーティングまたは表面グレーディングされる。より具体的には、全内部プラズマ接面エリアの約1%から約99%までの範囲の量が、第2のアークチャンバ材料でコーティングまたは表面グレーディングされる。さらにより具体的には、全内部プラズマ接面エリアの約1%から約99%までの範囲の量が、第2のアークチャンバ材料でコーティングまたは表面グレーディングされる。
【0040】
開示の、および本明細書で述べられるようなシステムでは、アークチャンバは、アークチャンバの第1の側壁、第2の側壁、陰極側壁、陽極側壁、底部、および最上部の内部接面を含む接面を含むことができる。1つまたは複数のアークチャンバライナーは、これらの内部表面の任意の1つまたは複数の任意の部分または全てを覆うように構成されることが可能である。実施形態では、システムは、アークチャンバの第1の側壁、第2の側壁、陰極側壁、陽極側壁、底部、または最上部のうちの1つの全てまたは一部を覆うように構成された第2のアークチャンバ材料(例えば、炭化物、グラファイト等)を含む1つのアークチャンバライナーを備える。実施形態では、システムは、アークチャンバの第1の側壁、第2の側壁、陰極側壁、陽極側壁、底部、および最上部のうちの2つの全てまたは一部を覆うように構成された第2のアークチャンバ材料(例えば、炭化物、グラファイト等)を含む2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのアークチャンバライナーを備える。
【0041】
他の実施形態では、システムは、2つ以上のアークチャンバライナーを含み、それぞれが、異なる材料から形成される。例えば、第1のアークチャンバライナーはタングステンから形成されることが可能であり、第2のアークチャンバライナーは、炭化物、グラファイトなどの非タングステン材料から形成されることが可能である。第1のアークチャンバライナーおよび第2のアークチャンバライナーは、アークチャンバの第1の側壁、第2の側壁、陰極側壁、陽極側壁、底部、および最上部の内部接面のうちの2つ以上の任意の部分または全てを覆うように構成されることが可能である。いくつかの実施形態では、システムは、本明細書で説明されるような内部接面のうちの1つの全てを覆うように構成された第1のアークチャンバライナー、および本明細書で説明されるような内部接面のうちの1つの全てを覆うように構成された第2のアークチャンバライナーを含む。さらに他の実施形態では、システムは、第1の材料(例えばタングステン)から作られたアークチャンバライナーの2つ以上、および異なる材料(例えば、炭化物、グラファイト等)から作られた1つのアークチャンバライナーを提供する。さらに他の実施形態では、システムは、第1の材料(例えばタングステン)から作られた1つのアークチャンバライナー、および異なる材料(例えば、炭化物、グラファイト等)から作られた2つ以上のアークチャンバライナーを提供する。さらに他の実施形態では、システムは、第1の材料(例えばタングステン)から作られた2つ以上のアークチャンバライナー、および異なる材料(例えば、炭化物、グラファイト等)から作られた2つ以上のアークチャンバライナーを提供する。
【0042】
さらに他の実施形態では、第2のアークチャンバ材料は、このためにアークチャンバ内にマウントされるか、ライナーまたはアークチャンバ壁内に形成された凹所で受けた、別々のピースまたはターゲットとして提供することができる。別々のピースは、アークチャンバ内に配置できるような、任意の適切な形状またはサイズでよい。1つの実施形態では、別々のピースは第2のアークチャンバ材料を含み、アークチャンバ壁および/またはライナーは第1のアークチャンバ材料を含み、第1および第2のアークチャンバ材料は互いに異なる。実施形態では、別々のピースは消耗構造であり、イオン化可能ガスもしくはガス混合物、または、アークチャンバプラズマ内でイオン化可能ガスもしくはガス混合物から生成されたイオンもしくはニュートラルと化学的に反応し、所望の種をプラズマにする。実施形態では、別々のピースは、所望の種をプラズマにすることが可能なスパッタターゲットである。別々のピースを形成するために使用される第2の材料は、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)の任意の1つであることが可能である。いくつかのケースでは、別々のピースまたはターゲットを形成するために使用される第2の材料の選択は、イオン注入システムによってイオン化されることになるガスまたはガス混合物に基づいて選択されることが可能である。ピースは別々であるので、所望のイオン注入用途に応じて、ピースは除去され、異なる材料と置き替えられ得る。また、消耗品の場合、消費されると、別々のピースは、新しい別々のピースと置き替えられることが可能である。
【0043】
使用中、イオン種を生成可能なガスまたはガス混合物は、少なくとも2つの異なるアークチャンバ材料を収めるアークチャンバに所定の流量で注がれることが可能である。ガスまたはガス混合物は、イオン注入処理中に基板に注入されることになる1つまたは複数の種を含むイオン化可能ガスまたはガス混合物である。アークチャンバ内に所定の電力および電圧を印加すると、イオン種がガスまたはガス混合物から生成されることが可能であり、種は、基板への注入のための1つまたは複数の所望のイオン種を含む。システムの最適化された動作条件を使用すると、所望のイオン種のビーム電流は、第2のアークチャンバ材料の存在により、同じ動作条件で第2のアークチャンバ材料なく生成されたイオン種のビーム電流に比べて、他のイオン種のどれよりも大きく増加される。この方法を使用して、基板への注入のために、ビーム電流が最大のイオン種を選択することができる。いくつかのケースでは、アークチャンバライナー、アークチャンバライナーを形成するアークチャンバの一部、または、アークチャンバ内に配置された別々のピースにバイアス電圧を適用することができる。
【0044】
少なくとも2つの異なるアークチャンバ材料と組み合わせたイオン化のためのガスは、シリコン含有ガス、ホウ素含有ガス、ゲルマニウム含有ガス、炭素含有ガス、リン含有ガス、ヒ素含有ガス、アンチモン含有ガス、タングステン含有ガス、窒素含有ガス、ガリウム含有ガス、インジウム含有ガス、アルミニウム含有ガス、フッ素含有ガス、スズ含有ガス、または水素含有ガスを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、ガスは、同位体の天然存在度に関連して、1つまたは複数の同位体における、同位体濃縮された濃縮ガスであることが可能である。例示的な濃縮ガスは、B-11同位体における、同位体濃縮されたホウ素を含む同位体濃縮されたホウ素含有ガス、および、Ge-72同位体などの1つまたは複数のゲルマニウム同位体において濃縮された、同位体濃縮されたゲルマニウム含有ガスを含む。イオン化可能ガスは、少なくとも1つの他のガスと混合して、一緒に注がれる、または提供されることが可能である。少なくとも1つの他のガスは、イオン化可能ガスと同じ種、および/または希釈ガスもしくはキャリアガスを含有する複合ガスを含むことができる。
【0045】
少なくとも2つの異なるチャンバ材料と組み合わせたイオン化のための特定のガスの例は、SiF、Si、Si、SiHF、SiH、SiHF、Si、SiF、SiHF、BF、B、B、BHF、BHF、GeF、Ge、GeH、GeHF、GeH、GeHF、PF、PF、PH、PHF、PHF、PH、PHF、AsHF、AsHF、AsH、AsF、AsF、AsH、SbF、WF、NF、N、NH、NHF、NHF、NHF、およびNF、CO、COF、CH、CF、C、ならびに、C2n+2-x、C2n-x、C2n-2-xといった一般式を有するガスを含むがこれらに限定されず、nは、1~3の範囲の整数であり、xは、0、1、または2である。少なくとも2つの異なるチャンバ材料と組み合わせたイオン化のための濃縮ガスの例は、同位体濃縮されたBFガス、および同位体濃縮されたGeFガスを含むがこれらに限定されない。
【0046】
ここで図面を参照すると、図1は、イオン注入システム10の概略図であり、チャンバ内でイオン生成ガス(例えばフッ化物ガス)をイオン化するために、イオン生成ガスをアークチャンバに補給するためのガス補給ライン14を伴うアークチャンバ12を含む。アークチャンバ12は、2つ以上のアークチャンバ材料を含み、材料またはライナーの少なくとも1つが、非タングステン材料から形成される。
【0047】
ここで図面を参照すると、図1は、イオン注入システム10の概略図であり、チャンバ内でフッ化物ガスなどのイオン形成ガスをイオン化するために、イオン形成ガスをアークチャンバに補給するためのガス補給ライン14を伴うアークチャンバ12を含む。アークチャンバ12は、したがって、本明細書で開示されるような、2つ以上の異なるアークチャンバ材料を含むイオン源チャンバを提供する。2つの異なるアークチャンバ材料の使用は、ビーム電流の改善、ソース電力の低減、より長いソースライフ、より低いガスフロー、および、チャンバ内の不必要な汚染物質の蓄積の低減、またはその任意の組合せなどの利益をもたらすことができる。
【0048】
図2は、このようなシステムのアークチャンバ12内のプラズマ16の生成を概略的に示す、図1のイオン注入システム10の断面である。ガス(例えばフッ化物ガス)は、イオン注入システムのための熱管理システムの使用に関して望ましくなり得るような、補給ラインの熱状態の質およびアークチャンバに入るガスを決定するために関係を監視する際に、ガス補給ライン14に固定された監視熱電対TC1およびTC2を有する、ガス補給ライン14への矢印Aで示された方向に注がれる。
【0049】
図3は、イオン源装置70、およびシステムの熱管理のための任意選択のヒートシンク装置50を備えるイオン源アセンブリの断面の斜視図である。この断面図は、ガス補給プラグ内のガス流路84、および、イオン源に関連付けられたガスブッシング内のガス流路86に接続するガス補給ライン72を示す。
【0050】
図3に示されたイオン源装置は、第1のアークチャンバ材料から作られたベースライナー80を含む。ベースライナー80は、その中に開口部82を含むことができる。図3に示されたイオン源装置はまた、第1のアークチャンバ材料とは異なる第2のアークチャンバ材料から作られたサイドライナー90を含む。1つの実施形態では、第1のアークチャンバ材料はタングステン含有材料であり、第2のアークチャンバ材料は非タングステン含有材料である。第1および第2のアークチャンバ材料は、本明細書で前に開示された材料から選択することができる。
【0051】
図4は、図示のイオン注入チャンバ301内の基板328のイオン注入のためのイオン種を生成するためのイオン源チャンバ内のイオン生成ガスとの、その場反応のために供給される反応性ガスを保持する格納兼分配容器302を含むイオン注入処理システム300の概略図である。格納兼分配容器302は、ガスを保持する内部容積を囲む容器壁304を備える。
【0052】
容器は、内部容積がガスだけを保持するように配置された従来のタイプのガスシリンダでよいか、または代替として、容器は、反応性ガスのための吸着親和力を有する吸着剤を収めてもよく、この容器から、相互反応性(co-reactant)ソースガスは、分配条件下での容器からの放電のために脱着可能である。
【0053】
格納兼分配容器302は、放電ライン312とのガス輸送路(gas flow communication)内に連結されたバルブヘッド308を含む。圧力センサ310は、質量流量コントローラ314とともにライン312内に配置される。他の監視兼検知構成要素がラインに連結され、アクチュエータ、フィードバック兼コンピュータ制御システム、サイクルタイマーなどの制御手段とインターフェースされ得る。
【0054】
イオン注入チャンバ301は、イオン化装置チャンバ内のイオン化条件下で、イオンビーム305を生み出す、分配されたイオン生成ガス(例えばフッ化物ガス)をライン312から受け取るイオン化装置316を収める。イオンビーム305は、必要なイオンを選択し、選択されなかったイオンを拒絶する、質量分析ユニット322を通過する。
【0055】
選択されたイオンは、加速電極アレイ324、次に偏向電極326を通過する。結果として集束されたイオンビームは、イオン注入製品としてドープされた(フッ化物ドープされた)基板を形成するために、心棒332にマウントされた回転ホルダ330上に配置された基板元素328に衝突される。
【0056】
イオン注入チャンバ301のそれぞれのセクションは、ポンプ320、342、および346によって、ライン318、340、および344を通じてそれぞれ空にされる。
【0057】
図5は、アークチャンバ壁102a、102b、102c、および102dを含むイオン源チャンバ100の内部の上面図である。チャンバ内の一方の端に陰極104があり、他方の端に陽極106がある。アークチャンバ壁は、側壁上のアークチャンバライナー110、112、114、および116、ならびにまた、底部側のアークチャンバライナー118で覆われる。底壁上には、ガス入力開口部108もある。実施形態では、アークチャンバライナー110、112、114、116、および/または118の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つは、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)などのタングステン材料または非タングステン材料から選択された異なる材料から作られることが可能である。実施形態では、非タングステンライナーの1つまたは複数は、ホウ化物、炭化物、またはグラファイト材料から作られる。
【0058】
図6は、アークチャンバ壁202a、202b、202c、および202dを含む別のイオン源チャンバ200の内部の上面図である。チャンバ内の一方の端には陰極204があり、他方の端には陽極106がある。アークチャンバ壁は、側壁上のアークチャンバライナー210、212、214、および216、ならびにまた、底部側のアークチャンバライナー218、220、および222で覆われる。底壁上には、ガス入力開口部208もある。実施形態では、アークチャンバライナー210、212、214、216、218、220、および/または222の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つは、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)などのタングステン材料または非タングステン材料から選択された異なる材料から作られることが可能である。実施形態では、2つの異なる非タングステンライナーの1つまたは複数が炭化物から作られ、異なる非タングステンライナーの他の1つまたは複数が、グラファイト材料から作られる。
【0059】
図7Aは、イオン源チャンバ400の内部の上面図である。イオン源チャンバ400は、アークチャンバ壁402a、402b、402c、および402dを含む。チャンバ内の一方の端には陰極404があり、他方の端には陽極406がある。アークチャンバ壁402dおよび402cは、アークチャンバライナー414および416でそれぞれ覆われる。アークチャンバライナー418は、チャンバの側壁402aおよび402b、ならびに底部側を覆う非平面の1枚のライナーである。底部には、ガス入力開口部408aおよび408bもある。実施形態では、アークチャンバライナー414、416、および/または418の1つ、2つ、または3つ全てが、グラファイト(C)、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ホウ素(BN)、酸化ホウ素(B)、酸化ゲルマニウム(GeO)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、WC)、ホウ化タングステン(WB、WB、WB、WB)、炭化ホウ素(BC、B12)、ゲルマニウムタングステン(WGe)、炭化カルシウム(CaC)、炭化アルミニウム(Al)、炭化マグネシウム(MgC)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化ガリウム(GaF)、フッ化インジウム(InF)、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、酸化ランタンタングステン(WLa)、酸化ガリウム(Ga)、酸化インジウム(In)、酸化アンチモン(Sb)、または酸化アルミニウム(Al)などのタングステン材料または非タングステン材料から作られることが可能である。実施形態では、非タングステンライナーの1つまたは複数が、ホウ素、ホウ化物、炭化物、またはグラファイト材料から作られる。
【0060】
図7Bは、図7Aのイオン源チャンバ400の斜視断面図である。アークチャンバ壁402a、402b、および402cが示されている。イオン源チャンバ400は、最上部カバー420も含む。アークチャンバライナー418は、断面からわかるように「U形」であり、側壁402aおよび402b、ならびにまた、底部422の内部接面を覆う1枚のライナーである。非平面U形のアークチャンバライナーが図7Aおよび図7Bに示されているが、システムは、第1の側壁、第2の側壁、陰極側壁、陽極側壁、底部、および最上部から選択された2つ、3つ、4つ、または5つの表面など、アークチャンバの内部の2つ以上の隣接した表面を覆うことが可能な他の形状(例えば、「L形」、「V形」等)の他の1枚のアークチャンバライナーを含むことができる。
【0061】
本開示のシステムおよび方法は、1つまたは複数の所望のイオン種にイオン化可能なガスを提供するガス源を含むか、使用することができる。いくつかの実施形態では、ガス源は、SiF、Si、Si、SiHF、SiH、SiHF、Si、SiF、およびSiHFを含むがこれらに限定されない1つまたは複数のイオン化可能なシリコン含有ガスを含む。いくつかの実施形態では、ガス源は、BF、B、B、BHF、およびBHFを含むがこれらに限定されない1つまたは複数のイオン化可能なホウ素含有ガスを含む。いくつかの実施形態では、ガス源は、GeF、Ge、GeH、Ge、GeHF、GeH、およびGeHFを含むがこれらに限定されない1つまたは複数のイオン化可能なゲルマニウム含有ガスを含む。いくつかの実施形態では、ガス源は、PF、PF、PH、PHF、PHF、PHF、およびPを含むがこれらに限定されない1つまたは複数のイオン化可能なリン含有ガスを含む。いくつかの実施形態では、ガス源は、AsHF、AsHF、AsHF、AsF、AsF、およびAsHを含むがこれらに限定されない1つまたは複数のイオン化可能なヒ素含有ガスを含む。いくつかの実施形態では、ガス源は、SbHおよびSbFを含む1つまたは複数のイオン化可能なアンチモン含有ガスを含む。他の実施形態では、ガス源は、WFを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガス源は、NF、N、NH、NHF、NHF、およびNFを含むがこれらに限定されない1つまたは複数のイオン化可能な窒素含有ガスを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガス源は、CO、COF、CH、CF、C、および、C2n+2-x、C2n-x、C2n-2-xといった一般式を有するガスを含むがこれらに限定されない1つまたは複数のイオン化可能な炭素含有ガスを含むことができ、nは、1~3の範囲の整数であり、xは、0、1、または2である。さらに他の実施形態では、ガス源は、イオン化されるとき、Cイオン、Bイオン、Nイオン、Fイオン、Siイオン、Geイオン、Pイオン、Asイオン、Gaイオン、Sbイオン、Inイオン、Alイオン種を生成可能な、本明細書で開示されたものなどの、1つまたは複数のイオン化可能なフッ素含有ガスを含む。いくつかの実施形態では、ガス源は、He、Ne、Ar、Kr、Xe、およびNから成るグループから選択された1つまたは複数のイオン化可能な不活性ガスを含む。さらに、2つ以上の異なるイオン化可能ガスが使用される場合、これらは、注入チャンバに独立して注がれ得るか、混合としてチャンバに注がれることが可能である。
【0062】
好ましい実施形態では、ホウ素種のイオン注入のためのガス源は、BFガス、Bガス、またはBガス、あるいは、BFガス、Bガス、またはBガスを含む第1のホウ素含有ガス、BFガス、Bガス、またはBを含む第2のホウ素含有ガス、および/または、水素ガスなどの希釈ガス、希ガス(He、NE、Ar、Kr、Xe)、もしくは希ガスと水素ガスの混合(例えばXe/H)を含有するガス混合物を含むことができる。本明細書で説明されるようなガス源は、タングステンを含む第1のアークチャンバ材料と、元素ホウ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、酸化ホウ素、ホウ化タングステンなどのホウ素含有材料を含む第2のアークチャンバ材料とを含むアークチャンバに送り出される。第1および第2のアークチャンバ材料はそれぞれ、第1のライナー材料および第2のライナー材料であることが可能である。1つの実施形態では、第1のライナー材料はタングステンを含み、第2のライナーは窒化ホウ素を含む。別の実施形態では、第1のライナー材料はタングステンを含み、第2のライナー材料は炭化ホウ素を含む。さらに別の実施形態では、第1のライナー材料はタングステンを含み、第2のライナー材料はホウ化タングステンを含む。さらに別の実施形態では、第1のライナー材料はタングステンを含み、第2のライナー材料は酸化ホウ素を含む。さらに別の実施形態では、第1のライナー材料はタングステンを含み、第2のライナー材料は元素ホウ素を含む。
【0063】
1つの好ましい実施形態では、BFを含むイオン化可能ガス源は、第1のアークチャンバ材料がタングステンであり、第2のアークチャンバ材料が元素ホウ素、酸化ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、またはホウ化タングステンの1つであるアークチャンバに注がれることが可能である。第1のアークチャンバ材料は、第1のライナーの全てまたは一部を形成することができ、第2のアークチャンバ材料は、第2のライナーの全てまたは一部を形成することができる。いくつかのケースでは、イオン化可能ガス源は、BFおよび水素を含むガス混合物である。BFは、同位体濃縮されることが可能であるが、これは必須ではない。
【0064】
何らかの理論に縛られたくはないが、イオン化可能ガスは、アークチャンバプラズマ内でのさらなるイオン化のために、第2のライナー材料と化学反応し、第2のライナー材料からホウ素種を優先的に揮発させることができるBF 、BF、F、BF、BF、Fなどの反応性イオン種またはニュートラル種を生成するものと思われている。揮発したホウ素種は、プラズマ内でホウ素含有種の濃度を増加させ、BまたはBF などの所望のホウ素含有イオンのビーム電流を連続的に増加させる。さらに、ガス混合物は、化学反応またはスパッタリングを通じた第2のライナーからのホウ素種の揮発を促進することができる1つまたは複数のガスを含み得る。このようなガスの例は、化学反応を強化するためのF、NF、N、XeF、またはスパッタリングを強化するための希ガスである。さらに、ガス混合物は、所望のホウ素種の揮発を低減させるか、タングステンフッ化物などの不必要な種の揮発を強化する、不必要な効果を抑制することができる1つまたは複数のガスを含み得る。このようなガスの例は、タングステンの過度の揮発を包むことができる自由フッ素を結びつけることができるHまたは他の水素含有ガスを含む。
【0065】
別の実施形態では、CFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、CFおよび水素を含むガス混合物である。
【0066】
別の実施形態では、GeFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、GeFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、GeFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0067】
別の実施形態では、BFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、BFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、BFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0068】
別の実施形態では、SiFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、SiFおよび水素を含むガス混合物である。
【0069】
別の実施形態では、CFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、CFおよび水素を含むガス混合物である。
【0070】
別の実施形態では、GeFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、GeFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、GeFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0071】
別の実施形態では、BFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、BFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、BFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0072】
別の実施形態では、SiFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、SiFおよび水素を含むガス混合物である。
【0073】
別の実施形態では、CFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がタングステンであり、第2のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第3のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、CFおよび水素を含むガス混合物である。
【0074】
別の実施形態では、GeFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がタングステンであり、第2のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第3のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、GeFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、GeFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0075】
別の実施形態では、BFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がタングステンであり、第2のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第3のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、BFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、BFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0076】
別の実施形態では、SiFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がタングステンであり、第2のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第3のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、SiFおよび水素を含むガス混合物である。
【0077】
別の実施形態では、CFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がタングステンであり、第2のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第3のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、CFおよび水素を含むガス混合物である。
【0078】
別の実施形態では、GeFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がタングステンであり、第2のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第3のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、GeFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、GeFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0079】
別の実施形態では、BFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がタングステンであり、第2のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第3のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、BFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、BFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0080】
別の実施形態では、SiFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がタングステンであり、第2のアークチャンバ材料がグラファイトであり、第3のアークチャンバ材料が炭化ケイ素であるアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、SiFおよび水素を含むガス混合物である。
【0081】
別の実施形態では、CFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料が炭化タングステンであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであり、第3のアークチャンバ材料がグラファイトまたは炭化ケイ素を含むアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、CFおよび水素を含むガス混合物である。
【0082】
別の実施形態では、GeFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料が炭化タングステンであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであり、第3のアークチャンバ材料がグラファイトまたは炭化ケイ素を含むアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、GeFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、GeFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0083】
別の実施形態では、BFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料が炭化タングステンであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであり、第3のアークチャンバ材料がグラファイトまたは炭化ケイ素を含むアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、BFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、BFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0084】
別の実施形態では、SiFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料が炭化タングステンであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであり、第3のアークチャンバ材料がグラファイトまたは炭化ケイ素を含むアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、SiFおよび水素を含むガス混合物である。
【0085】
別の実施形態では、CFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がホウ化タングステンであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであり、第3のアークチャンバ材料がグラファイトまたは炭化ケイ素を含むアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、CFおよび水素を含むガス混合物である。
【0086】
別の実施形態では、GeFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がホウ化タングステンであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであり、第3のアークチャンバ材料がグラファイトまたは炭化ケイ素を含むアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、GeFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、GeFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0087】
別の実施形態では、BFを含むイオン化可能ガスが、第1のアークチャンバ材料がホウ化タングステンであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであり、第3のアークチャンバ材料がグラファイトまたは炭化ケイ素を含むアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、BFおよび水素を含むガス混合物である。さらに、いくつかのケースでは、BFは、同位体濃縮されることが可能である。
【0088】
別の実施形態では、SiFを含むイオン化可能ガスは、第1のアークチャンバ材料がホウ化タングステンであり、第2のアークチャンバ材料がタングステンであり、第3のアークチャンバ材料がグラファイトまたは炭化ケイ素を含むアークチャンバに注がれることが可能である。いくつかのケースでは、イオン化可能ガスは、SiFおよび水素を含むガス混合物である。
【0089】
本明細書で説明されるものなどの2つ以上の異なる材料を使用するアークチャンバの存在下では、所定のガス流量でのイオン種の注入のための利益がある。例えば、2つの異なる材料を伴うアークチャンバを使用すると、異なるアークチャンバ材料の混合物が使用されないとき、そうでなければ、低い方のビーム電流を特定のイオン種に提供するガス流量で、特定のイオン種のためのかなり高い方の電流が達成されることが可能である。アークチャンバ材料の混合物を使用して、高い方のイオン種ビーム電流が達成されることが可能なので、これにより、ユーザは、実践の特定のモードでイオン化可能ガスの流量を低減させることができ、これは、今度は、全体的な試薬消費量の低減、より少ない機器メンテナンス、および注入機器の耐用期間の増加など、様々な処理の利益を提供することができる。
【0090】
また、異なるアークチャンバ材料の混合物の使用は、イオン種生成ガスのイオン化する際に生成された特定のイオン種に、より高いビーム電流を提供することができる。これは、異なるアークチャンバ材料の混合物が使用されないとき、より高いビーム電流を有する特定の種に対して観察されるビーム電流に比べて、より低いビーム電流を有する他のイオン種の注入を最小化しつつ、より高いビーム電流を有する特定のイオン種の注入に有益である可能性がある。したがって、本開示は、基板に所望のイオンを選択的に堆積させるための方法を提供し、この方法は、製品の性質および性能を最終的に改善することができる。
【0091】
さらに、異なるアークチャンバ材料の混合物の使用は、堆積処理中に生成される望ましくないイオン種の量を少なくすることができる。タングステン含有材料を部分的に使用してアーク注入チャンバが形成される場合、ガス源のイオン化が、W++、WF ++、W、およびWF (x=1、2、3、4、5、6)などのイオン種の生成を引き起こす可能性がある。グラファイトまたは炭化物ライナーなどのチャンバ内の非タングステン材料の使用は、非タングステンライナーを使用しないシステムに比べて、堆積処理中に生成されるW++、WF ++、W、およびWF (x=1、2、3、4、5、6)のイオン種の量を減少させることができる。これらのタングステンイオン種は、注入チャンバ内に不必要に堆積される可能性があるので、低減は、堆積処理を改善し、注入機器のメンテナンスを減少させ、機器の全般的な寿命を延ばすことができる。
【0092】
イオン注入のためのシステムの動作は、チャンバへのイオン生成ガスのフローの観点で説明されることが可能である。処理中、イオン生成ガスは、所望の流量および様式で注入チャンバに注がれる。イオン生成ガスの流量は、一定の流量で維持されるか、任意選択として、堆積処理中に変動させることが可能である。実践のいくつかのモードでは、イオン生成ガス(例えばフッ化物ガス)のフローは、10sccm以下の量でチャンバに注がれ、実施形態では、イオン生成ガスは、0.1sccmから6sccmまでの範囲で、または、0.3sccmから4sccmまでの範囲の量で注がれる。
【0093】
イオン注入のためのシステムの動作は、アーク電力およびアーク電圧の観点で説明されることが可能である。実践のいくつかのモードでは、システムは、約5Wから約2000Wまでの範囲のアーク電力を提供するように動作されるか、実践のいくつかのモードでは、アーク電力は、約90Wから約1500Wまでの範囲である。これらの範囲の1つのアーク電力を達成するために、システムは、アーク電力が、約20Vから約200Vまでの範囲のアーク電圧で生成されるか、より具体的には、約30Vから約150Vの範囲、または約40Vから約130Vまでの範囲のアーク電圧で生成されるように、動作されることが可能である。
【0094】
イオン注入のためのシステムの動作はまた、イオン注入チャンバへの、イオン化可能な化合物を含有するガス源の流量の観点で説明されることが可能である。いくつかの実施形態では、イオン化可能ガスは、10sccm以下の量でチャンバに注がれ、実施形態では、フッ化物化合物は、0.1sccmから6sccmまでの範囲の量で注がれる。
【0095】
2つ以上のガスがチャンバに注がれる場合、ガスは個別に注がれることが可能である。代替として、ガスは混合して注がれることが可能である。例えば、フッ化物、水素含有、酸素含有および/または不活性ガスの任意の2つ以上が、ガスシリンダパッケージ内で事前に混合されることが可能である。さらに他の実施形態では、2つ以上のガスが混合され、その後別のガスがチャンバに個別に注がれる。
【実施例1】
【0096】
フッ化物ガス(CF)が、タングステンライナーを有するイオン化チャンバ、ならびに、グラファイトおよびタングステンライナーを有するイオン化チャンバに注がれた。システムは、110Vのアーク電圧、および30mAのソースビームで動作された。Fイオンビーム電流は、様々なガスCF流量で測定され、グラファイトライナーまたはタングステンライナーを有するイオン化チャンバ内のFイオンビーム電流と比較された。テストされた各流量では、グラファイトおよびタングステンライナーを伴うシステムは、タングステンライナーを伴うシステムに比べて、Fビーム電流が高くなり、グラファイトライナーを伴うシステムに比べて、Fビーム電流が同じか高くなった。結果は図8に示されている。
【実施例2】
【0097】
実施例1で説明された処理から生じた様々なイオン化された種のビームスペクトルが決定された。結果は、CFのイオン化された種から生成されたビームスペクトルから、グラファイトおよびタングステンライナーが使用されたとき、グラファイトライナーまたはタングステンライナー上で、より高いFイオンビームが観察されたことを示す。それでも、CF(C、CF、CF 、およびCF )から導出された他の種は、グラファイトおよびタングステンライナーが一緒に使用される、またはタングステンライナーが単独で使用されるのとは対照的に、唯一のライナーとしてグラファイトライナーが使用されたとき、より高いビーム電流を有していた。したがって、グラファイトおよびタングステンライナーを一緒に使用することによって、Fイオンビーム生成の選択的な改善を可能にし、これは、炭素含有イオン種の注入を最小化しつつFの注入を改善する。さらに、タングステンライナーが単独で使用されるのに比べて、グラファイトおよびタングステンライナーが使用されたときに、より低いWおよびWF ビームが観察された。図9参照。
【0098】
したがって、本開示のいくつかの例証的な実施形態を説明すると、当業者は、さらに他の実施形態が、本明細書に添付された特許請求の範囲内で行われ、使用され得ることを容易に認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に1つまたは複数のイオン種を注入するためのシステムであって、
1つまたは複数のイオン種にイオン化可能な化合物を含むガス源と、
2つ以上の異なるアークチャンバ材料を含むアークチャンバと
を備え、
前記アークチャンバが、内部プラズマ接面を有するアークチャンバ壁、および任意選択的に、前記内部プラズマ接面の全てまたは一部に接触するように構成された1つまたは複数のアークチャンバライナーを備え
前記2つ以上の異なるアークチャンバ材料が、前記アークチャンバ壁内、1つもしくは複数の任意選択のアークチャンバライナー内、またはその両方に存在する
システム。
【請求項2】
前記2つ以上の異なるアークチャンバ材料が、タングステン、モリブデン、炭素、シリコン、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、フッ素、インジウム、窒素、酸素、ガリウム、ゲルマニウム、およびランタンから成るグループから選択された1つまたは複数の原子を含む第1および第2のアークチャンバ材料を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記2つ以上の異なるアークチャンバ材料が、グラファイト(C)、炭化ケイ素(SiC)、炭化タングステン(WC、W C)、ホウ化タングステン(WB、W B、WB 、WB )、炭化ホウ素(B C、B 12 )、炭化カルシウム(CaC )、炭化アルミニウム(Al )、炭化マグネシウム(Mg C)、フッ化アルミニウム(AlF )、フッ化ガリウム(GaF )、フッ化インジウム(InF )、窒化ホウ素(BN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ランタンタングステン(WLa )、酸化ガリウム(Ga )、または酸化アルミニウム(Al )を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
記アークチャンバ材料が、前記アークチャンバ壁の一部または全ての上にコーティングされるか、これに表面グレーディングされる、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記アークチャンバライナーが、C、SiC、WC、W C、WB、W B、WB 、WB 、B C、B 12 、CaC 、Al 、Mg C、AlF 、GaF 、InF 、BN、GaN、AlN、WLa 、Ga 、またはAl を含むか、これらから本質的に成る、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
1つもしくは複数のアークチャンバライナーが、前記第2のアークチャンバ材料を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
2つ以上のアークチャンバライナーを備え、その一方が、前記第2のアークチャンバ材料を含み、その他方が、前記第1のアークチャンバ材料を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
基板に1つまたは複数のイオン種を注入するためのシステムであって、
1つまたは複数のイオン種にイオン化可能な化合物を含むガス源と、
2つ以上の異なるアークチャンバ材料を含むアークチャンバと
を備え、
前記アークチャンバが、内部プラズマ接面を有するアークチャンバ壁、および任意選択として、前記内部プラズマ接面の全てまたは一部に接触するように構成された1つまたは複数のアークチャンバライナーを備え、
前記2つ以上の異なるアークチャンバ材料が、前記アークチャンバ壁内、1つもしくは複数の任意選択のアークチャンバライナー内、またはその両方に存在する、
システム。
【請求項9】
前記アークチャンバの内部プラズマ接面を有する前記アークチャンバ壁が、
第1の側壁、第2の側壁、陰極側壁、対陰極側壁、底部、および最上部を含み、前記第1の側壁、第2の側壁、陰極側壁、対陰極側壁、底部、および/または最上部の全てまたは一部が、コーティング、表面グレーディング、またはアークチャンバライナーの形態の第2のチャンバ材料を含み、
前記システムが、任意選択として、前記第1の側壁、前記第2の側壁、前記陰極側壁、前記対陰極側壁、前記底部、および前記最上部から選択された2つ以上の隣接した表面を覆う非平面のアークチャンバライナーを備える、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ガス源が、AsH 、PH 、GeH 、B 、およびH Seから成るグループから選択された1つもしくは複数のイオン化可能な水酸化物ガス、HF、HCl、HBr、およびHIから成るグループから選択された1つもしくは複数のイオン化可能なハロゲンガス、He、Ne、Ar、Kr、Xe、およびN から成るグループから選択された1つもしくは複数のイオン化可能な不活性ガス、または、1つもしくは複数のイオン化可能なフッ化物ガス、あるいはこれらの組合せを含む、請求項8または9に記載のシステム。
【国際調査報告】