(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(54)【発明の名称】温度調整システム
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220914BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 503
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022503551
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2020066871
(87)【国際公開番号】W WO2021013441
(87)【国際公開日】2021-01-28
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ナキボグル、ギュネス
(72)【発明者】
【氏名】ウォーターソン、ニコラス、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ メーレンドンク、レムコ
(72)【発明者】
【氏名】ブラスト、スティーブ、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス、ディルク、マルティヌス、ヘラルドゥス、ペトルス、ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】コッタパリ、シュラバン
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197CA10
2H197DA03
2H197DA09
2H197DB16
2H197DB19
2H197DC03
2H197DC04
2H197FB05
2H197HA03
2H197JA09
(57)【要約】
【解決手段】本開示は、リソグラフィ装置内の少なくとも一つの構成要素の温度を制御する温度調整システムに用いるためのパッシブな流れ誘起振動(FIV)低減システムである。このFIV低減システムは、システムを通る液体のための流路を提供する導管と;導管と流体連通する液体充填空洞であって、流体連通が導管の壁にある一以上の開口を介して提供される液体充填空洞と;実質的に雰囲気圧力にあるガスから液体充填空洞内の液体を分離するよう構成される膜であって、膜のコンプライアンスが導管を通って流れる液体中の少なくとも低周波FIVを低減させるよう構成される膜と;膜のガス側に配置され、膜の撓みの範囲を制限するよう構成されるエンドストップと、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内の少なくとも一つの構成要素の温度を制御する温度調整システムに用いるためのパッシブな流れ誘起振動(FIV)低減システムであって、
FIV低減システムを通る液体のための流路を提供する導管と、
前記導管と流体連通する液体充填空洞であって、前記流体連通が前記導管の壁にある一以上の開口を介して提供される液体充填空洞と、
実質的に雰囲気圧力にあるガスから前記液体充填空洞内の液体を分離するよう構成される膜であって、使用時に、前記膜のコンプライアンスが前記導管を通って流れる液体中の少なくとも低周波FIVを低減させるよう構成される膜と、
前記膜の前記ガス側に配置され、前記膜の撓みの範囲を制限するよう構成されるエンドストップと、を備えるFIV低減システム。
【請求項2】
前記FIV低減システムは、ガスチャンバをさらに備え、前記膜の前記ガス側のガスは、前記ガスチャンバによって構成される、請求項1に記載のFIV低減システム。
【請求項3】
前記エンドストップは、前記ガスチャンバの内側に配置される、請求項2に記載のFIV低減システム。
【請求項4】
前記ガスチャンバの前記膜とは反対側にある端部である前記ガスチャンバの側面は、前記エンドストップを備える、請求項2に記載のFIV低減システム。
【請求項5】
前記FIV低減システムは、第1膜と横並びで配置される一以上の追加の膜をさらに備え、各膜は、同じ液体充填空洞の膜である、請求項1から4のいずれか一項に記載のFIV低減システム。
【請求項6】
複数の膜のそれぞれは、実質的に同じコンプライアンスを有する、請求項5に記載のFIV低減システム。
【請求項7】
複数の膜のそれぞれは、異なるコンプライアンスを有する、請求項5に記載のFIV低減システム。
【請求項8】
前記エンドストップは、一以上の貫通開口を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のFIV低減システム。
【請求項9】
前記エンドストップの形状は、前記膜の変位プロファイルに合致する、請求項1から8のいずれか一項に記載のFIV低減システム。
【請求項10】
装置内の少なくとも一つの構成要素の温度を制御するよう構成される温度調整システムであって、前記温度調整システムは、
構成要素を通って流れる液体によって温度が調整されるよう構成される構成要素と、
請求項1から9のいずれか一項に記載の少なくとも一つのFIV低減システムと、を備える温度調整システム。
【請求項11】
前記構成要素は、投影光学系ボックスのためのセンサフレーム、レンズ、ミラーおよび基板ステージのいずれかである、請求項10に記載の温度調整システム。
【請求項12】
使用時に、各FIV低減システムの導管を通る液体の流れは、前記構成要素を通る液体の流れと直列である、請求項10または11に記載の温度調整システム。
【請求項13】
前記温度調整システムは、前記構成要素の入口側にある少なくとも一つのFIV低減システム、および/または、前記構成要素の出口側にある少なくとも一つのFIV低減システムを備える、請求項10から12のいずれか一項に記載の温度調整システム。
【請求項14】
前記温度調整システム内の液体のための流路を提供するよう構成される一以上のフレキシブル導管および/または一以上のリジッド導管をさらに備える、請求項10から13のいずれか一項に記載の温度調整システム。
【請求項15】
装置内の構成要素の温度を制御する温度調整システムの液体中の流れ誘起振動(FIV)を低減する方法であって、前記方法は、
液体充填空洞内の液体と、リソグラフィ装置の領域の雰囲気圧力に実質的にあるガスとの間に膜を設け、前記膜のコンプライアンスが前記液体中の少なくとも低周波FIVを低減させるようにすることを備え、
前記方法は、請求項1から9のいずれか一項に記載のFIV低減システムにより実行される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2019年7月19日に出願された欧州出願19187169.8号および2019年11月29日に出願された欧州出願19212462.6号の優先権の利益を主張し、これらの全体が参照により本書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、リソグラフィ装置用の温度調整システムに関する。より具体的には、本書に開示される技術は、温度調整システム内に流れ誘起振動低減システムを設けることに関する。流れ誘起振動低減システムは、温度調整システム内の流体誘起振動を低減する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上に、通常基板のターゲット部分に付与する装置である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に用いることができる。ICの製造において、パターニングデバイス(代わりにマスクまたはレチクルとも呼ばれる)は、ICの個々の層に形成されるべき回路パターンを生成するために使用されうる。このパターンは、基板(例えばシリコンウェハ)上の(例えばダイの一部、一つのダイまたはいくつかのダイを備える)ターゲット部分に転写されることができる。パターンの転写は、典型的に基板上に設けられる放射感受性材料(レジスト)の層への結像を介する。一般に、単一の基板は、連続的にパターニングされる隣接するターゲット部分のネットワークを含むであろう。既知のリソグラフィ装置は、ターゲット部分にパターン全体を一度に露光することにより各ターゲット部分が照射されるいわゆるステッパと、放射ビームを通じてパターンを所定の方向(「走査」方向)に走査しながらこの方向と平行または反平行に基板を同期走査して各ターゲット部が照射される、いわゆるスキャナとを含む。
【0004】
パターン印刷の限界の理論的推定値は、式(1)に示される解像度のレイリー基準によって与えることができる。
【数1】
ここで、λは使用される放射の波長であり、NAはパターンを印刷するために使用される投影システムの開口数であり、k
1はレイリー定数とも呼ばれるプロセス依存調整係数であり、CDは印刷されるフィーチャのフィーチャサイズ(または限界寸法)である。式(1)によれば、露光波長λを短くすること、開口数NAを大きくすること、またはk
1の値を小さくすることの三つの方法により、印刷可能な最小のフィーチャサイズの縮小を得ることができる。
【0005】
露光波長を短くし、したがって印刷可能な最小サイズを縮小するために、極端紫外(EUV)放射源を使用することが提案されている。EUV放射は、4-20nmの範囲内、例えば13-14nmの範囲内、例えば6.7nmまたは6.8nmといった4-10nmの範囲内の波長を有する電磁放射である。可能性のある放射源は、例えば、レーザ生成プラズマ源、放電プラズマ源、または電子貯蔵リングにより提供されるシンクロトロン放射に基づく放射源を含む。
【0006】
EUV放射は、プラズマを用いて生成されうる。EUV放射を生成するための放射システムは、プラズマを提供するために燃料を励起するためのレーザと、プラズマを収容するためのソースコレクタモジュールとを含んでもよい。プラズマは、例えば、適切な材料(例えばスズ)の液滴、またはXeガスやLi蒸気などの適切なガスや蒸気の流れといった燃料にレーザビームを向けることによって生成されうる。得られたプラズマは、出力放射(例えばEUV放射)を放出し、これは放射コレクタを用いて収集される。放射コレクタは、放射を受け取り、放射をビームに集束させる鏡面法線入射放射コレクタであってもよい。ソースコレクタモジュールは、プラズマを支持するための真空環境を提供するよう構成される包囲構造またはチャンバを含んでもよい。このような放射システムは、通常レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれる。
【0007】
リソグラフィ装置では、システムの全ての構成要素が適切な温度に維持されることを確実にするための温度調整システムを提供する必要がある。温度変化は、構成要素のサイズを変化させたり、性能システムに誤差を導入しうる他の影響を生じさせたりすることがある。リソグラフィ装置において、特に温度調節の不正確さに対して高い感度を有するEUVリソグラフィ装置において、温度調節システムの提供を改善する一般的な必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、装置(例えばリソグラフィ装置)内の少なくとも一つの構成要素の温度を制御する温度調整システムに用いるためのパッシブな流れ誘起振動(FIV)低減システムが提供される。FIV低減システムは、FIV低減システムを通る液体のための流路を提供する導管と;導管と流体連通する液体充填空洞であって、流体連通が導管の壁にある一以上の開口を介して提供される液体充填空洞と;実質的に雰囲気圧力にあるガスから液体充填空洞内の液体を分離するよう構成される膜であって、使用時に、膜のコンプライアンスが導管を通って流れる液体中の少なくとも低周波FIVを低減させるよう構成される膜と;膜のガス側に配置され、膜の撓みの範囲を制限するよう構成されるエンドストップと、を備える。
【0009】
好ましくは、液体中の低周波FIVは、30Hz以下の周波数を有するFIVである。
【0010】
好ましくは、使用時に、導管を通って流れる液体は、水である。
【0011】
好ましくは、使用時に、ガスは、空気、窒素、または四フッ化炭素である。
【0012】
好ましくは、FIV低減システムは、ガスチャンバをさらに備え、膜のガス側のガスは、ガスチャンバによって構成される。
【0013】
好ましくは、ガスチャンバ内のガスの体積は、少なくとも2mLであり、より好ましくは少なくとも100mLであり、さらに好ましくは少なくとも1000mLである。
【0014】
好ましくは、エンドストップは、ガスチャンバの内側に配置される。
【0015】
好ましくは、ガスチャンバの膜とは反対側にある端部であるガスチャンバの側面は、エンドストップを備える。
【0016】
好ましくは、FIV低減システムは、第1膜と横並びで配置される一以上の追加の膜をさらに備え、各膜は、同じ液体充填空洞の膜である。
【0017】
好ましくは、複数の膜のそれぞれは、実質的に同じコンプライアンスを有する。
【0018】
好ましくは、複数の膜のそれぞれは、異なるコンプライアンスを有する。
【0019】
好ましくは、エンドストップは、一以上の貫通開口を備える。
【0020】
好ましくは、エンドストップは、貫通開口を備えない。
【0021】
好ましくは、エンドストップは、膜の平面と実質的に平行な平板である。
【0022】
好ましくは、エンドストップの形状は、膜の変位プロファイルに合致する。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、装置(例えばリソグラフィ装置)内の少なくとも一つの構成要素の温度を制御するよう構成される温度調整システムが提供される。温度調整システムは、構成要素を通って流れる液体によって温度が調整されるよう構成される構成要素と、本発明の第1の態様に係る少なくとも一つのFIV低減システムと、を備える。
【0024】
好ましくは、構成要素は、投影光学系ボックスのためのセンサフレーム、レンズ、ミラーおよび基板ステージのいずれかである。
【0025】
好ましくは、使用時に、各FIV低減システムの導管を通る液体の流れは、構成要素を通る液体の流れと直列である。
【0026】
好ましくは、温度調整システムは、構成要素の入口側にある少なくとも一つのFIV低減システム、および/または、構成要素の出口側にある少なくとも一つのFIV低減システムを備える。
【0027】
好ましくは、温度調整システムは、温度調整システム内の液体のための流路を提供するよう構成される一以上のフレキシブル導管および/または一以上のリジッド導管をさらに備える。
【0028】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様に係る温度調整システムを備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0029】
本発明の第4の態様は、装置内の構成要素の温度を制御する温度調整システムの液体中の流れ誘起振動(FIV)を低減する方法である。この方法は、液体充填空洞内の液体と、リソグラフィ装置の領域の雰囲気圧力に実質的にあるガスとの間に膜を設け、膜のコンプライアンスが液体中の少なくとも低周波FIVを低減させるようにすることを備え、この方法は、本発明の第1の態様に係るFIV低減システムにより実行される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本書に含まれ、明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明を例示し、その記載とともに本発明の原理を説明し、当業者が本発明を実施可能とするのにさらに役立つであろう。
【0031】
【
図1】既知のリソグラフィ装置を概略的に示す図である。
【0032】
【
図2】既知のリソグラフィ装置の圧力ゾーンを概略的に示す図である。
【0033】
【
図3】温度調節システムの流体中で異なる条件下で測定される圧力変化を示す図である。
【0034】
【
図4】第1、第2および第3実施形態に係るFIV低減システムを示す図である。
【0035】
【
図5A】第1、第2および第3実施形態に係るシステムの異なる実施例の透過損失を示す図である。
【
図5B】第1、第2および第3実施形態に係るシステムの異なる実施例の透過損失を示す図である。
【0036】
【
図6A】第1、第2および第3実施形態に係るシステムの利点を実証する結果を示す図である。
【
図6B】第1、第2および第3実施形態に係るシステムの利点を実証する結果を示す図である。
【
図6C】第1、第2および第3実施形態に係るシステムの利点を実証する結果を示す図である。
【0037】
【
図7】第1、第2および第3実施形態に係るシステムの利点を実証する結果を示す図である。
【0038】
【
図8】第4実施形態に係るFIV低減システムを示す図である。
【0039】
【
図9】第4実施形態に係るシステムの異なる実施例の透過損失を示す図である。
【0040】
【
図10A】通常の動作圧力にある膜およびエンドストップを示す図である。
【
図10B】通常の限界を超えて動作圧力が増加したときのエンドストップの動作を示す図である。
【
図10A】ある実施形態に係るエンドストップの代替的な設計を示す図である。
【0041】
【
図11A】第4実施形態に係るシステムの利点を実証する結果を示す図である。
【
図11B】第4実施形態に係るシステムの利点を実証する結果を示す図である。
【0042】
【
図12】ある実施形態に係るシステムを示す図である。
【0043】
【
図13】ある実施形態に係る方法のフローチャートである。
【0044】
本発明の特徴および利点は、全体を通して同様の参照符号が対応する要素を識別する図面と併せて解釈される場合に、以下に記載される詳細な説明からより明らかになるであろう。図面において、同様の参照符号は一般に、同一の、機能的に類似の、および/または構造的に類似の要素を示す。要素が最初に現れる図面は、対応する参照符号の左端の数字によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書は、本発明の特徴を包含する一以上の実施形態を開示する。開示される実施形態は、本発明を例示するにすぎない。本発明の範囲は、開示される実施形態に限定されない。本発明は、本書に添付される請求項により定義される。
【0046】
説明される実施形態および明細書における「一実施形態」「ある実施形態」「ある実施例」「実施例」「例」などへの言及は、説明される実施形態が特定の特徴、構造または特性を含んでもよいが、全ての実施形態が特定の特徴、構造または特性を必ずしも含まなくてもよいことを示す。さらに、そのような文言は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造または特性がある実施形態に関連して説明される場合、明示的に説明されるか否かによらず、他の実施形態に関連してこのような特徴、構造または特性を達成することが当業者の知識の範囲内であることが理解されよう。
【0047】
本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実施できる。また本発明の実施形態は、一以上のプロセッサによって読み取られ実行されうる機械可読媒体に格納された命令として実装されてもよい。機械可読媒体は、機械(例えば、コンピューティングデバイス)によって読み取り可能な形態で情報を格納または送信するための任意の機構を含んでもよい。例えば、機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光学、音響または他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)等を含んでもよい。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定の動作を実行するものとして本明細書で説明されるかもしれない。しかしながら、そのような記述は単に便宜上のものであり、実際には、そのような動作は、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスから生じることを理解されたい。
【0048】
しかしながら、このような実施形態をより詳細に説明する前に、本発明の実施形態が実装されうる例示的な環境を示すことが有益である。
【0049】
図1は、ソースコレクタモジュールSOを含むリソグラフィ装置LAを模式的に示す。この装置は、放射ビームB(例えば、EUV放射)を調整するよう構成される照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスクまたはパターニングデバイス)MAを支持し、パターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成される第1位置決め装置PMに接続される支持構造(例えば、マスクテーブル)MTと、基板(例えば、レジストコートされたウェハ)Wを保持するように構成され、基板Wを正確に位置決めするよう構成される第2位置決め装置PWに接続された基板テーブル(例えば、ウエハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームPBに付与されるパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、一以上のダイを備える)上に投影するよう構成される投影システム(例えば、反射型投影システム)PSとを備える。
【0050】
照明システムILは、放射を方向付け、整形し、または制御するために、屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電型または他の形式の光学素子といった様々な形式の光学素子、または、これらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0051】
サポート構造MTは、パターニングデバイスMAの向き、リソグラフィ装置LAの設計、および、例えばパターニングデバイスMAを真空環境で保持するか否かといった他の条件に応じた態様でパターニングデバイスMAを受け取り、保持するための部分を備える。サポート構造MTは、パターニングデバイスMAを保持するために、機械式、真空式、静電式、または他のクランプ技術を用いることができる。サポート構造MTは、フレームまたはテーブルであってもよく、例えば、これらは必要に応じて固定されてもよいし、移動可能であってもよい。サポート構造MTは、パターニングデバイスMAが例えば投影システムPSに対して所望の位置にあることを確実にしてもよい。
【0052】
「パターニングデバイスMA」の用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するといった目的のために、放射ビームの断面にパターンを付与するために用いることのできる任意のデバイスを指すものと広く解釈されるべきである。放射ビームに付与されるパターンは、集積回路といったターゲット部分に生成されているデバイスの特定の機能層に対応してもよい。
【0053】
パターニングデバイスMAは、透過型であってもよいし、反射型であってもよい。パターニングデバイスMAの例は、マスク、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDパネルを含む。マスクは、リソグラフィにおいて周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、さらに様々なハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例は、マトリックス状に配列される小型のミラーを採用し、各ミラーは入射する放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されることができる。傾斜されるミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームPBにパターンを付与する。
【0054】
「投影システムPS」の用語は、照明システムILと同様、用いられる露光放射または真空の使用といった他の要素について適切となるよう、屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電型または他の種類の光学要素といった様々な種類の光学要素を含んでもよい。EUV放射では、他のガスが放射を吸収しすぎるため、真空環境を用いることが望ましいかもしれない。したがって、真空容器および真空ポンプの助けを借りて、ビーム経路の全体に真空環境が提供されてもよい。
【0055】
図示されるように、装置は、反射型である(つまり、イルミネータILおよび投影システムPSにおいて反射型マスクおよび反射型光学系を採用する)。
【0056】
リソグラフィ装置LAは、二つ(デュアルステージ)またはそれより多い基板テーブル(および/または二以上のマスクテーブル)WTを有する形式であってもよい。このような「マルチステージ」の機械において、追加のテーブルを並行して用いてもよく、または、準備工程を一以上のテーブルで実行する間、一以上の他のテーブルが露光に用いられてもよい。
【0057】
図1を参照すると、イルミネータILは、EUV源SOからEUV放射ビームを受け取る。EUV放射を生成する方法は、EUV範囲に一以上の輝線を有する、キセノン、リチウムまたは錫などの少なくとも一つの化学元素を有する材料をプラズマ状態に変換することを含むが、必ずしもこれらに限られない。レーザ生成プラズマ(「LPP」)としばしば呼ばれるそのような方法の一つにおいて、必要なプラズマは、必要な輝線を放出する元素を有する材料の液滴といった燃料にレーザビームを照射することによって生成できる。EUV源SOは、燃料を励起するレーザビームを提供するための、
図1に示されないレーザを含むEUV放射源の一部であってもよい。得られたプラズマは、出力放射、例えばEUV放射を放出し、これはEUV源に配置された放射コレクタを用いて収集される。
【0058】
レーザーおよびEUV源は、例えば、燃料励起用のレーザビームを提供するためにCO2レーザが用いられる場合、別体であってもよい。このような場合、放射ビームPBは、例えば、適切な方向付けミラーおよび/またはビームエキスパンダを備えるビームデリバリシステムの助けを借りて、レーザからEUV源に渡される。レーザおよび燃料供給装置は、EUV放射源を構成するとみなされてもよい。
【0059】
イルミネータILは、放射ビームPBの角度強度分布を調整するためのアジャスタを備えてもよい。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側径範囲および/または内側径範囲(通常、それぞれσ-アウタおよびσ-インナと呼ばれる)を調整できる。さらにイルミネータILは、ファセットフィールドおよび瞳ミラーデバイスといった様々な他の構成要素を備えてもよい。イルミネータILは、ビーム断面において所望の均一性および強度分布を有する放射ビームPBを調整するために用いられてもよい。
【0060】
放射ビームPBは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射し、パターニングデバイスMAによってパターン化される。パターニングデバイスMAは、干渉計IF1などの第1位置決め装置と、マスクアライメントマークM1,M2とを用いて位置決めされてもよい。パターニングデバイス(例えばマスク)MAで反射された後、パターン放射ビームPBは、ビームPBを基板Wのターゲット部分Cにフォーカスさせる投影システムPSを通過する。干渉計IF2および基板アライメントマークP1,P2といった第2位置決め装置PWの助けを借りて(例えば干渉計デバイス、リニアエンコーダまたは静電容量センサを用いて)、基板テーブルWTを、例えば放射ビームPBの経路上に異なるターゲット部分Cが位置するように正確に移動させることができる。
【0061】
図示される装置は、以下のモードの少なくとも一つで用いることができる。
1.ステップモードでは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTが実質的に静止状態とされる間、放射ビームPBに付与されるパターン全体がターゲット部分Cに1回で投影される(つまり、単一静的露光)。基板テーブルWTはその後、Xおよび/またはY方向にシフトされ、異なるターゲット部分Cを露光できる。
2.スキャンモードでは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTが同期してスキャンされる間、放射ビームPBに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される(つまり、単一動的露光)。サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性および像反転特性によって決定されてもよい。
3.別のモードでは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTがプログラマブルパターニングデバイスを保持して実質的に静止状態を維持し、基板テーブルWTが移動またはスキャンされる間、放射ビームに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される。このモードでは、一般にパルス放射源が用いられ、基板テーブルWTの各移動の後にまたはスキャン中の連続放射パルスの間に必要に応じてプログラマブルパターニングデバイスが更新される。この動作モードは、上述のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に適用できる。
【0062】
図2は、既知の装置を模式的に示す。
図3から
図5は、この装置の部分をより詳細に示す。
図2の装置は、投影システムPSとともに照明システムILを収容する第1チャンバ101を含む。照明システムILは、放射源SOから受け取った放射ビームを調整するよう構成され、投影システムPSは、パターン放射ビームPBを基板Wのターゲット部分に投影するよう構成される。第1チャンバ101は、パターニングデバイスMAを支持するよう構成されるパターニングデバイスサポートも収容し、パターニングデバイスMAは、放射ビームの断面にパターンを付与してパターン放射ビームを形成することが可能である。第2チャンバ102は、分かりやすさのために基板Wのみが示されるウェハステージを収容する。
【0063】
図2は、装置が四つの異なる真空環境VE1~VE4にどのように分割されるかを示す。第1チャンバ101は、分かりやすさのためにパターニングデバイスMAのみが示されるパターニングデバイスステージを包囲する第1真空環境VE1を区画する。第1チャンバ101は、別の二つの真空環境VE2およびVE3を区画するセパレータ構造103も含み、VE2は照明システムILを収容し、VE3は投影システムPSを収容する。真空環境VE2およびVE3は、さらに分割されることができる。セパレータ構造103は、照明システムILからパターニングデバイスMAに投影ビームPBを通すため、および、パターニングデバイスMAから投影システムPSにパターン放射ビームを通すためのアパチャ104を有するスリーブ105を含む。スリーブ105はまた、ガス流を下方に(つまり、パターニングデバイスから離れるように)向かわせ、EUV放射強度の乱れを防ぐためにガス流を均一に維持するよう機能する。場合によっては、スリーブは、パターニングデバイスMAに向かってテーパ(先細りに)なってもよい。第2チャンバ102は、ウェハステージがある(分かりやすさのために基板Wのみが示される)真空環境VE4を区画する。真空環境VE1およびVE2は、対応する真空容器および真空ポンプVP1およびVP2によって形成および維持される。真空ポンプVP1およびVP2は、複数の真空ポンプであることもできる。
【0064】
図2に示されるように、真空ポンプVP1は、真空環境VE1を真空環境VE2およびVE3よりも低い圧力に維持する。クリーンガス(例えば、水素、ヘリウム、窒素、酸素またはアルゴン)は、ガスインジェクタ(不図示)を用いて真空環境VE2およびVE3に注入される。このような真空ポンプVP1,VP2は、当業者に知られており、様々な態様で装置に接続されてもよい。
【0065】
セパレータ構造103は、様々な態様で構成されることができ、例えば、パターニングデバイスMAに向かって延びるスリーブ105を含んでもよく、そのスリーブ105の端部においてパターニングデバイスMAに向かって延びる投影ビームアパチャ104が設けられてもよい。アパチャ104を支えるスリーブ105は、テーパ(先細り)になる断面を有してもよい。
【0066】
リソグラフィ装置において、システムの温度の影響を受ける構成要素を適切な温度に維持することを確実にするための温度調整システムを提供する必要がある。温度変化は、構成要素のサイズの変化といった影響に起因して、システムの性能に誤差を導入する可能性がある。温度調整は、特にEUVリソグラフィ装置において重要である。EUVリソグラフィ装置では高い精度が必要とされるため、その構成要素の一部は、許容される温度変化に対して特に厳しい許容範囲を有する。
【0067】
温度調整システムは、通常チャネルまたはプレートであってもよい熱交換器を備え、熱交換器は、伝導によって構成要素を直接的に冷却または加熱する。熱交換器は、それ自体が熱交換器を通って流れる流体によって温度制御されてもよい。各熱交換器は、熱交換器に流体を供給する少なくとも一つの導管と、熱交換器からの流体の戻り経路を提供する少なくとも一つの導管とを有することが知られている。温度調整システムは、熱交換器に流体を通すための一以上のポンプを備える。熱交換器への流体の供給は、各熱交換器の温度を、システムの温度制御対象の構成要素を必要な温度に維持するための適切な温度に維持する。各熱交換器に供給される流体は、通常、水などの液体である。
【0068】
リソグラフィ装置の構成要素の温度を制御するために温度調整システムを使用するときに経験する課題は、流体の流れが構成要素を振動させるかもしれず、振動が構成要素の性能を低下させるかもしれないことである。
【0069】
振動の潜在的な原因は、FIVと呼ばれる流れ励起振動(flow induced vibration)である。FIVは、流体の流れにおける圧力変動によって生じる動的な力に起因して導入される振動である。乱流分離流は高レベルの圧力変動を発生させ、その中でも特に音圧変動は流体媒体を通じてシステムの遠くまで伝搬することができる。FIVの潜在的な原因は、冷却が必要とされる振動に敏感な構成要素に至るまでの温度調整システムの全体にわたる流体流路の設計に関連する。構成要素におけるFIVの他の潜在的な原因は、キャビネット(ポンプを含む)、ベースフレームのマニホールド(多岐管)、および、他の構成要素に向けて流れる流体を搬送し、同じマニホールドを介して並列接続される他の流路の一以上によって生じるかもしれない。
【0070】
一般的に言えば、EUVリソグラフィ装置の真空部内の温度調整システムの一部を通る流体経路の設計は、例えば、小半径の曲がりを設けたり、実質的な流路断面積の変化を避けたりすることにより、流体流路の設計がFIVの実質的な原因には通常ならない程度に、実質的に最適化されている。しかしながら、FIVの他の原因によって、構成要素におけるFIVが性能仕様の外側になってしまうことがある。
【0071】
温度調整が特に重要となるEUVリソグラフィ装置の構成要素は、投影光学系ボックス(ここでPOBと呼ぶ)のセンサフレームである。したがって、温度調整システムは、上述したような熱交換器を流れる流体によってPOBのセンサフレームの温度を制御することが好ましい。しかしながら、EUVリソグラフィ装置では、POBのセンサフレームにおける振動レベルの許容される許容範囲は非常に小さい。この振動のバジェット(限界量)は、他の種類のリソグラフィ装置における対応する構成要素よりも何倍も小さいかもしれない。
【0072】
FIVは、低周波振動成分と高周波振動成分を備える。低周波振動成分は、30Hz以下の周波数を有するものと定義されてもよい。高周波成分は、30Hzより大きい周波数を有してもよい。高周波成分は、例えば(高周波を適切に減衰させるために適した長さの)フレキシブル導管の使用によって実質的に減衰されうるため、通常、問題とされる振動の原因にはならない。しかしながら、低周波振動成分は実質的に減衰することなく流体の全体にわたって伝播しうるため、問題とされる振動の原因になりうる。低周波振動は、構成要素が振動源から遠く離れている場合や、かなり長いフレキシブル導管を使用する場合であっても、構成要素において経験されうる。
【0073】
図3は、温度調節システムの流体中で異なる条件下で測定される圧力変化を示す。温度調整システムは、SUPと呼ばれる供給経路にあるバルブと、RETと呼ばれる戻り経路にあるバルブとを有する。温度調整システム内の流体は水である。SUPおよびRETの双方のバルブが開である場合、流体はシステムの導管および熱交換器を通って流れ、圧力変動はFIVおよび流路を通る流体の流れの双方によって生じることができる。SUPおよびRETのバルブの一方のみを開とし、他方のバルブを閉とする場合、流路を通る流体の流れはない。したがって、測定される圧力変動は、流路を流れる流体の流れによってではなく、FIVによって生じうる。SUPおよびRETの双方のバルブが閉である場合、システムを通る流体の流れはなく、システムは FIVの原因から実質的に切り離される。
【0074】
図3は、SUPおよびRETの双方のバルブが開、SUPバルブが開でRETバルブが閉、SUPバルブが閉でRETバルブが開、および、SUPバルブが閉でRETバルブが閉の四つの異なる条件下で温度調節システムの流体中で測定される圧力変化を示す。
【0075】
図3の結果は、双方のバルブを閉とする場合に圧力レベルが明らかに最も低いため、温度調整システムの使用によって生じる顕著な振動があることを示す。
【0076】
この結果は、一方のバルブのみを閉じて流路を通って流れる流体の流れの影響を除去した場合であっても、FIV振動の量がそれほど変化しないことを示す。したがって、FIV振動の力の大きさは、システムを通って流れる流体の量に実質的に依存しない。
【0077】
この結果は、FIV振動の力の大きさが低周波数で最も大きいことも示す。FIV振動の力の大きさは、約10Hzを超える周波数で顕著に減少し始める。
【0078】
図3に示されるような熱調整システムによって生じる低周波FIVの力の大きさは、一以上の温度制御対象の構成要素の最大許容仕様を実質的に超える振動を発生させるかもしれない。これは、POBのセンサフレームやEUVリソグラフィ装置のウェハ(つまり基板)ステージメトロフレーム(WSMF)といった多くの振動に敏感な構成要素の既知の実施例において特に問題となる。
【0079】
本実施形態は、熱調整システムにおけるFIVの大きさ、特に低周波FIVの大きさを低減するシステムを提供することにより上記課題を解決する。
【0080】
図4は、第1、第2および第3実施形態に係るFIV低減システムと呼ばれうるシステムを示す。
図4は、熱調整システムの導管401を示す。液体である流体は、導管401を通って移動する。導管401は、温度制御対象の構成要素への液体の供給経路、または、温度制御対象の構成要素からの液体の戻り経路のいずれかにあってよい。
【0081】
システムは、ガスを備えるガスチャンバ402を備えてもよい。ガスチャンバ402は、ガス供給およびガス戻り経路を有してもよい。ガス供給経路およびガス戻り経路を通るガスの流れを自動的に制御してガスチャンバ402内のガス圧力を自動的に制御するガス圧力制御システム404が設けられてもよい。ガス圧力制御システム404は、ガス圧力制御装置405と、ガス圧力調整装置406とを備えてもよい。ガス圧力制御システム404は、制御信号407によって制御されてもよい。
【0082】
第1、第2および第3の実施形態において、導管401内の液体は水であってもよいし、温度調節システムで使用するための他の任意の適切な液体であってもよい。ガスチャンバ402内のガスは、空気、実質的に純粋な窒素または四フッ化炭素といった任意の適切なガスであってもよい。
【0083】
界面領域403は、導管401の壁の少なくとも一部に設けられる。界面領域403は、ガスチャンバ402と導管401内の液体との間の界面を提供する。第2および第3実施形態によれば、界面領域403にわたって膜が設けられてもよく、膜がガスチャンバ402内のガスを導管401内の液体から物理的に分離してもよい。しかしながら、第1実施形態によれば、ガスチャンバ402内のガスは、代わりに、導管401内の液体と直接接触してもよい。
【0084】
ガスチャンバ402と導管401内の液体との間の界面は、T字路であってもよい。代わりに、特に膜が界面領域403にわたって設けられる場合、ガスチャンバ402は、導管401を周方向に取り囲んでもよい。
【0085】
界面領域403は、導管401の壁にコンプライアンス領域を提供する。界面領域403のコンプライアンス(追従性)は、ガスチャンバ402内のガスの圧力に依存し、膜が存在する場合には膜の柔軟性にも依存する。界面領域403のコンプライアンスは、ガスチャンバ402内のガスの圧力を制御することにより制御可能である。
【0086】
第1、第2および第3実施形態に係るシステム内に界面領域403を設けることは、液体中のFIVを低減させる。界面領域403のコンプライアンスは、FIVを吸収および/または反射することにより液体中のFIVを低減させる。
【0087】
ガスチャンバ402内のガスは、導管401内の液体よりも実質的に圧縮されやすい。ガスによるFIVの低減は、ガスの液圧剛性(hydraulic stiffness)に依存する。
【0088】
Vがガスの体積であり、P
0がガスの絶対圧であるとき、ガス体積の液圧剛性は、以下の式で表すことができる。
【数2】
ここで、等温過程の場合にγ=1であり、断熱過程の場合にγ=κであり、κは断熱指数である。
【0089】
したがって、ガス体積の液圧剛性は、ガス体積を増加させることによって減少させることができる。
【0090】
本実施形態は、ガスチャンバ402内のガスと導管401内の液体との間の界面領域403に膜を用いる場合(第2および第3実施形態)と、膜がないためにガスと液体との間の界面領域403にて直接接触がある場合(第1実施形態)の両方を含む。
【0091】
膜が存在する場合、膜の剛性は、達成できる液圧剛性の全体的な減少を制限する。したがって、本実施形態は、非常に柔軟な膜を使用することが好ましい。膜の柔軟性は、膜のサイズの増加および/または膜の厚さの減少によって増加させてもよい。膜のサイズは、界面領域403のサイズの増加によって、例えば、導管401の長さに沿って延びる範囲および/または導管401の外周の周りに延びる範囲の増加によって増加させてもよい。
【0092】
透過損失(TL)は、消音器(マフラー)に入射する音響パワー(W
i)と、透過する音響パワー(W
t)との間の比として定義できる。透過損失は、以下のように定義できる。
【数3】
【0093】
図5Aおよび
図5Bは、第1、第2および第3実施形態に係るシステムの実施例の透過損失がガスチャンバ402内のガスの体積および膜の存在の双方にどのように依存するかを示す。大きな透過損失は、液体中の圧力変動が抑制され、したがって、液体中のFIVが低減されることを示す。
【0094】
図5Aは、ガスチャンバ402と導管401内の液体の間に膜が設けられる場合の透過損失を周波数の関数として示す。測定は、ガス体積が0.002L、0.005L、0.01L、0.5L、1L、5Lおよび10Lとなる場合に実施された。
【0095】
図5Bは、ガスチャンバ402と導管401内の液体との間に膜がない場合の透過損失を周波数の関数として示す。測定は、ガス体積が0.002L、0.005L、0.01L、0.5L、1L、5Lおよび10Lとなる場合に実施された。
【0096】
図5Aおよび
図5Bの双方において、液体は水であり、ガスは空気である。ガスの絶対圧はP
0=4.5baraである。
図5Aに用いた膜の剛性は、1Hzにおいて2.8×10
9Pa/m
3である。
【0097】
図5Aは、膜が用いられる場合、ガス体積を約0.5L以上に増やすと、低周波性能が大幅に向上することを示す。これは、膜の剛性が達成できる液圧剛性の減少を制限するためである。
【0098】
図5Bは、膜が用いられないためにガスが液体と直接接触する場合に、ガス体積の増加が性能を向上させることを示す。特に、テストしたガス体積の全てについて、ガス体積が増加するにつれて低周波性能が常に増加する。
【0099】
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、本実施形態に係るシステムの利点を実証する別の結果である。測定は、実験室のテストセットアップから得た。膜はない。ガスは空気であり、液体は水である。ガス圧力は、約5Baraである。熱調整システムのポンプを通る液体の総流量は、約125L/分である。この総流量の一部のみが振動が測定される構成要素を通過し、構成要素を通る流体の流れは約7.71L/分である。
【0100】
図6A、
図6Bおよび
図6CにおいてPPL開として示されるバルブシステムの第1構成において、ガスと液体の間が直接接触する。
図6A、
図6Bおよび
図6CにおいてPPL閉として示されるバルブシステムの第2構成において、ガスは液体から切り離されている。したがって、バルブシステムの第1構成と第2構成の比較は、第1実施形態に係るシステムの実施例(膜が存在しない場合)と、本実施形態に係るFIV低減システムを備えない既知の技術との比較である。
【0101】
図6Aにおいてガスチャンバ402の体積は2mLであり、
図6Bにおいてガスチャンバ402の体積は100mLであり、
図6Cにおいてガスチャンバ402の体積は1000mLである。
【0102】
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、第1、第2および第3実施形態に係るシステムによって、FIV、特に低周波FIVの大きさを実質的に低減できることを明確に実証する。
【0103】
図7は、第1実施形態に係るシステムをEUV装置のPOBの実際のセンサフレームに使用した場合の測定結果を示す。膜はなく、ガスチャンバ402の体積は1000mLであった。
図7に示される構成は、バルブシステムも有する。PPL開として示されるバルブシステムの第1構成では、ガスと液体が直接接触する。PPL閉として示されるバルブシステムの第2構成では、ガスが液体から切り離されている。SFr入口は、センサフレームの入口にあるセンサであり、SFr中央は、センサフレーム内のセンサであり、SFr出口は、センサフレームの出口にあるセンサである。熱調整システムのポンプを通る流量は約123L/分であり、センサフレームを通る流量は約7.54L/分である。
【0104】
図7に示される結果は、第1、第2および第3実施形態に係るシステムによって、低周波FIVの大きさを力の大きさで2-3桁まで低減できることを実証する。
【0105】
膜を使用しない場合にFIVの抑制が向上するが、膜の使用は、ガスチャンバ402内のガスと導管401内の液体が直接接触する場合に発生しうる潜在的な問題を防止する。このような潜在的な問題は、以下を含んでもよい。
-液体中のガスの吸収がガス体積の圧力を低下させる。
-液体がガスで飽和状態となり、液体が過飽和となるときに気泡が発生する。気泡は、液体用のパイプシステム内にエアポケットを形成しうる。
-システムのオン時やシャットダウン時に液体のパイプシステムへのガスの侵入を防ぐことが困難となりうる。
【0106】
上述の潜在的な問題が解決されるかもしれないし、起こらないかもしれないため、膜のないシステムの実施例は依然として好ましいかもしれない。例えば、空気の代わりに窒素ガスを使用することにより、液体に溶解しうるガスの量が低減されてもよい。
【0107】
第3実施形態に係るシステムは、ガス圧力制御システム404を含んでもよい。ガス圧力制御システム404は、ガスチャンバ402内のガス圧力を自動制御するためのガス圧力制御装置405、ガス圧力調整装置406、センサおよび他の構成要素を備えてもよい。ガス圧力制御システム404は、制御信号407に依存してガス圧力を制御してもよい。
【0108】
ガス圧力制御システム404の使用は、ガスチャンバ402の体積を増加させることに代えてまたは加えて、低周波FIVの抑制を増加させる方法を提供する。
【0109】
ガスチャンバ402内のガスのコンプライアンスは、ガス圧力に依存する。ガス圧力制御システム404は、システムの導管401を通って流れる液体の圧力に依存してガス圧力を制御するよう構成されてもよい。ガス圧力制御システム404は、主に液体中の低周波FIVを低減するようガス圧力が制御されるように、液体の圧力変化に対して比較的遅い応答を有するように構成されてもよい。高周波FIVは、ガス体積によって、および/または、流体の流路内でのフレキシブル導管の使用によって抑制されるであろう。したがって、低周波数および高周波数の両方のFIVの効果的な抑制が達成される。
【0110】
ガス圧力制御システム404は、ガスチャンバ402内の平均ガス圧力を実質的に一定に維持するように構成されてもよい。したがって、ガス圧力制御システム404は、ガスが液体に溶解することなどに起因したガスの任意の損失を補償するであろう。
【0111】
ガス圧力制御システム404の使用はまた、比較的硬い膜が使用される場合に低周波FIVの良好な抑制が達成されることを可能にする。
【0112】
ガス圧力制御システムを含む第3実施形態について説明したようなアクティブシステムは、パッシブシステムと比較して、システムの複雑性とコストを増加させる。パッシブシステムは、アクティブシステムよりも小さく、設置および運用が容易かもしれない。
【0113】
FIV低減システムの第4実施形態によれば、FIV低減システムはパッシブシステムであり、導管からの液体を備える液体充填空洞(液体で満たされた空洞)801は、導管401とガスチャンバ402の間に設けられてもよい。
【0114】
第4実施形態に係るFIV低減システムは、
図8に示される。
図8は、導管401と、導管401を通って流れる流体(液体である)とを示す。導管401は、温度制御対象の構成要素への液体の供給経路上にあってもよいし、温度制御対象の構成要素からの液体の戻り経路上にあってもよい。
【0115】
液体充填空洞801内の液体は、導管401内の液体と同じである。一以上の開口803は、液体充填空洞801と導管401との間の導管401の壁に設けられる。各開口803は、例えばネック(首状の狭路)であってもよい。一以上の開口803は、導管401の壁の少なくとも一部に沿って延びる。一以上の開口803は、例えば、導管401の長手軸に平行または直交するスロット形状であってもよいし、円形の孔であってもよい。一以上の開口803は、単一の大きな開口ではなく、複数の小さな開口の列として構成されてもよい。
【0116】
一以上の開口803は、液体充填空洞801内の液体と接触する膜804の断面積よりも実質的に小さい合計断面積を有してもよい。開口803の合計断面積と膜804の断面積の比は、例えば、1:4~1:1000の間であってもよい。比率を増加させることは、FIV低減システムによるFIV低減の効果を増加させうる。
【0117】
一以上の開口803のそれぞれは、液体充填空洞801と導管401を接続する短い管であってもよいし、導管401の壁に設けられ、液体充填空洞801に直接的に導かれる孔であってもよい。
【0118】
一以上の開口803のそれぞれは、開口803の下流側の縁(つまり、流体速度の支配的な方向とは反対方向に面する開口803の縁)および/または液体充填空洞801の下流側の面(つまり、流体速度の支配的な方向とは反対方向に面する液体充填空洞801の内面)における液体のよどみに起因する導管401内の流体中の新たな振動の導入を制限する態様で構成されてもよい。これは、開口のサイズを制限することによって行うことができ、このような狭い開口は、全体としてより滑らかな導管401を得るために好ましいかもしれない。
【0119】
液体充填空洞801と導管401の間の界面は、T字路であってもよい。代わりに、液体充填空洞801は、導管401を周方向に取り囲んでもよい。
【0120】
膜804(第2および第3実施形態における膜と実質的に同じであってもよい)は、液体充填空洞801とガスの間に設けられる。ガスは、リソグラフィ装置の領域の雰囲気圧力と実質的に同じであってもよい。膜804は、液体充填空洞801内の液体をガスから分離する。
【0121】
膜804は、FIVの吸収および/または反射により、導管401内の液体中のFIVを低減させるコンプライアンス(追従)領域を提供する。コンプライアンス領域のコンプライアンス(追従性)は、ガスが雰囲気圧力にあるため、ガスの圧力ではなく、実質的に膜804の剛性のみに依存する。
【0122】
膜の剛性は、導管401内の液体中の低周波FIVを低減するよう構成されてもよい。
【0123】
膜804は、薄い板であってもよく、ここで薄いとは、導管401内の液体中の低周波FIVを減衰させるのに十分となる程度に膜804の剛性が低くなる任意の厚さのことをいう。例えば、薄い膜は、0.1mmから10mmの範囲内の厚さを有してもよい。
【0124】
膜804は、ステンレス鋼やアルミニウムなどの金属といった任意の適切な材料で構成されてもよい。膜は、代わりにポリマーであってもよい。
【0125】
低周波数にて、縁が固定された円形の膜および均一な圧力負荷を仮定すると、膜804の剛性は以下のように近似できる。
【数4】
ここで、rは膜804の半径であり、D
rは以下で定義される膜804の曲げ剛性である。
【数5】
ここで、Eは膜804のヤング率であり、tは膜804の厚さであり、νは膜804のポアソン比である。
【0126】
膜804の剛性は、達成できる全体的な液圧コンプライアンスを制限する。したがって、本実施形態は、低い剛性を有する膜804を用いることが好ましい。膜804の剛性は、膜804のサイズを大きくすることによって、膜804の厚さを小さくすることによって、および/または、膜804の材料の選択によって、低減することができる。膜804のサイズは、膜804に接触する液体充填空洞801の少なくとも一部のサイズを増加させることによって増加させてもよい。例えば、液体充填空洞801が導管401の長さに沿って延びる範囲、または、導管401の外周の周りに延びる範囲を増加させてもよい。
【0127】
第4実施形態において、導管401内の液体および液体充填空洞801内の液体は、水であってもよいし、温度調整システムに用いる任意の他の適切な液体であってもよい。ガスは、空気、実質的に純粋な窒素または四フッ化炭素といった任意の適切なガスであってもよい。
【0128】
第4実施形態に係るシステムは、膜804と接触しているガスを包囲するガスチャンバ402を備えてもよい。ガスチャンバ402は、膜804のガス側に配置され、液体充填空洞801および膜804と実質的に等しい断面積を有してもよい。ガスチャンバ402の側面は、液体充填空洞801の側面と実質的に一列に整列する。ガスチャンバ402内のガスは、リソグラフィ装置の領域の雰囲気圧力に実質的にあってもよい。
【0129】
ガスチャンバ402内のガスの体積は、ガス体積の液圧剛性が膜804の剛性を越えて優勢となることがないように十分に大きくてもよい。本実施形態は、ガスチャンバ402が設けられていない場合も含む。この実施形態では、ガスは収容されず、実効ガス体積が実質的に無限であると考えることができる。
【0130】
第4実施形態に係るシステムの総液圧剛性は、以下で与えられる。
【数6】
ここで、C
HS_LIQUIDは液体充填空洞801内の液体の液圧剛性であり、以下で近似される。
【数7】
ここで、B
LIQUIDは液体充填空洞801内の液体の体積弾性率であり、V
LIQUIDは液体充填空洞801の体積である。
【0131】
ガスチャンバ402内のガスを導管401内の液体から物理的に分離する界面領域403にわたって使用できるようなベロー(蛇腹)は、十分なコンプライアンスを提供しうることが当業者に理解されよう。ベローは、金属を備えてもよい。
【0132】
図9は、第4実施形態に係るFIV低減システムの実施例の透過損失が膜804の厚さにどのように依存するかを示す。大きな透過損失は、液体中の圧力変動が抑制される結果、液体中のFIVが低減されることを示す。
【0133】
図9は、様々な膜構成について計算した透過損失を周波数の関数として示す。計算は、1mm、2mm、3mmおよび4mmの膜厚についてステンレス鋼製(
図9のSS)の膜804について実行し、6.5mmの厚さについてアルミニウム製(
図9のALU)の膜804について実行した。また、それぞれがステンレス鋼製で2mmの厚さを有する二つの膜804(
図9の2×2mmSS)を用いた透過損失の計算も含まれる。この二つの膜は、双方が同じ液体充填空洞801のための膜であり、堅固な構成要素に互いに取り付けられて横並びで配置された。全ての膜804は、同じ面積を有した。液体は水であり、ガスは空気であった。
【0134】
図9において、膜804の厚みが小さいほど、透過損失のピークが存在する周波数が低くなることが分かる。また、二つの膜を用いるシステムにおける共振周波数は、同じ厚さの一つの膜804のみを用いるシステムよりも低いことも分かる。
【0135】
したがって、薄い膜804を有することが好ましい。しかしながら、薄い膜804は、低い動作圧力にしか耐えられないかもしれないため、膜804をどの程度薄くできるかには限界がある。より高い動作圧力の場合、膜804の塑性変形が生じるかもしれず、および/または、膜804が割れたり破れたりするかもしれない。
【0136】
また、6.5mmの厚さを有するアルミニウムの膜は、4mmの厚さを有するステンレス鋼の膜と同じ共振周波数を有することが分かる。したがって、鋼鉄ではなくアルミニウムを使用することは、より厚い膜でも同じ振動性能を達成できるために好ましいかもしれない。
【0137】
膜の厚さに依存して、最大動作圧力に限界がある。この問題を軽減するため、エンドストップ802が用いられてもよい。エンドストップ802は、動作圧力が十分に高いときにエンドストップ802が膜804のさらなる撓みを防止し、塑性変形または他の損傷を防止するようにし、膜804の可能性のある変形を制限する。通常の動作圧力の間、エンドストップ802は膜804と接触していなくてもよく、動作圧力が通常の限界を超えて増加する場合にのみ接触が生じてもよい。エンドストップ802は、エンドストップ802と膜804の間に接触がない通常の動作圧力の間にある
図10Aに見ることができる。動作圧力が通常の限界を超えて増加する場合のエンドストップ802の動作は、
図10Bに見ることができる。
【0138】
ガスチャンバ402を備えるある実施形態において、ガスチャンバ402の端部であるガスチャンバ402の側面は、膜804の平面に対して実質的に平行であり、エンドストップ802を提供してもよい。このような構成は、エンドストップを備えるガスチャンバ402の側面がエンドストップ802として機能するために膜804に十分に近くなければならないため、ガスチャンバ402のサイズを制限するかもしれない。ガスチャンバ402内のガスが加圧されるのを防ぐため、エンドストップは、ガスが通って流れることができる一以上の貫通孔を有してもよい。エンドストップは、代わりに貫通孔を有さなくてもよい。
【0139】
代わりに、エンドストップ802は、ガスチャンバ402の内側に配置されてもよい。その結果、エンドストップ802は、構造的な支持のためにガスチャンバ402のいずれかの側面に取り付けられてもよい。さらに、ガスチャンバ402を二つの分かれた区画に分割しないようにするため、エンドストップ802に一以上の貫通孔があってもよい。これは、ガスチャンバ402の体積が十分となることを可能にし、したがって、ガス体積の液圧剛性を十分に低くすることを可能にする。代わりに、エンドストップ802に貫通孔がなくてもよい。
【0140】
エンドストップ802は、通常の動作圧力よりも高い圧力で膜804の塑性変形を防止する機能を果たす限り、いくつかの異なる設計であってもよい。エンドストップ802の可能性のある一つの設計は、
図10Aに示されるような平板設計である。このような設計において、最も撓みであろう膜804の中心は、膜804の周辺領域よりも先にエンドストップ802に接触するであろう。このような設計は、応力が最初に最も高くなる膜804の中心での塑性変形を防ぐ。
【0141】
エンドストップ802は、代わりに、膜804が弾性変形する場合に膜804の全体がエンドストップ802に接触するように、
図10Cに示されるようにカーブした3D設計であってもよい。したがって、エンドストップ802のプロファイルは、膜804の変形プロファイルに合致する。したがって、3Dエンドストップを有する第4実施形態に係るFIV低減システムは、膜804の全ての部分が損傷点まで撓むのをエンドストップ802によって防止するため、膜804が割れたり破れたりすることなく通常よりも実質的に高い動作圧力に耐えるように設計されうる。しかしながら、膜804と3Dエンドストップの間の接触を強いる十分に高い動作圧力は、FIV低減システムの性能を制限するかもしれないため、通常の動作圧力は依然として任意に大きくはならないかもしれない。
【0142】
エンドストップ802は、ガス体積が事実上無制限であるとみなしうるように、その表面を貫通する一以上の孔を有してもよい。そのような孔は、膜804の塑性変形を防止するためのエンドストップ802の基本機能を阻害しない程度に十分に小さくするべきである。
【0143】
図11は、第4実施形態に係るFIV低減システムのテスト装置における性能を示す。閉ループ回路テスト装置は、FIV低減システムの上流に位置するポンプと、FIV低減システムの下流に配置され、音響ノイズを発生させるオリフィスと、FIV低減システムの上流に配置され、その場所での圧力変動を測定する圧力プローブとを備える。オリフィスからの音響ノイズは、圧力変動を通じてFIV低減システムの上流に伝わってFIV低減システムを通過し、その後、圧力変動が圧力プローブによって測定された。測定は、通常の動作圧力(つまり、膜804がエンドストップに接触していない状態)でなされた。導管および液体充填空洞801内で使用された液体は水であり、ガスチャンバ402内のガスは空気であった。
【0144】
図11Aは、パワースペクトル密度(PSD)に対する膜厚の減少の影響を周波数の関数として示す。測定は、ステンレス鋼からできた膜804を用いて、1mm、2mm、3mm、4mmおよび7mmの膜厚を用いてなされた。
【0145】
テスト結果は、第4実施形態に係るFIV低減システムを使用した場合、500Hz未満の周波数におけるパワースペクトル密度の減少を示す。また、膜厚が減少するにつれてカットオフ周波数が低下し、低周波数の減衰が改善することも示す。
【0146】
図11Bは、挿入損失に対する膜厚の減少の影響を周波数の関数として示す。挿入損失ILは以下のように定義される。
【数8】
ここで、P
1は、第4実施形態に係るFIV低減システムを実装した場合の音圧レベルであり、P
0は、FIV低減システムを実装していない場合の音圧レベルである。
【0147】
テスト結果は、膜厚が減少するにつれて低周波数における挿入損失が増加することを示す。これは、特に20Hz未満の周波数で顕著である。
【0148】
図11から、第4実施形態に係るFIV低減装置により、低周波ノイズが大幅に抑制されていることが示される。この抑制は、10-100Hzの範囲の周波数において約1-2桁の大きさである。
【0149】
第4実施形態に係るFIV低減システムの実施例は、少なくとも以下を含んでもよい。
-
図8に係る単一システムであって、ガスチャンバ402およびエンドストップ802がない。これは、固定の共振周波数を有するパッシブシステムである。
-
図8に係る単一システムであって、エンドストップ802が平板設計を有する。エンドストップ802は、ガスチャンバ402内に設けられてもよい。これは、固定の共振周波数を有するパッシブシステムである。
-
図8に係る単一システムであって、エンドストップ802が3D設計を有する。エンドストップ802は、ガスチャンバ402内に設けられてもよい。これは、固定の共振周波数を有するパッシブシステムである。
-
図8に係る単一システムであって、二以上の膜804がある。複数の膜804は、横並びで配置され、一以上の堅固な構成要素によって連結されてもよい。それぞれの膜804の厚さは、同じでもよいし、異なってもよい。同じ量の減衰に対し、この実施例は、一つの膜804のみを備える実施例に比べてより高い動作圧力に耐えるかもしれない。
-
図8に係る二以上のシステムであって、複数のシステムが直列で配置される。膜804は、同じコンプライアンス(例えば厚さ)を有さなくてもよい。したがって、複数のシステムは、低周波数から中周波数までの広帯域の減衰を可能にする。各エンドストップ802は、それぞれの膜804のコンプライアンスに依存して設計されるであろう。
【0150】
第1から第4実施形態のFIV低減システムは、少なくとも以下の四つの実施例を含む。
1.
図4に係るシステムであって、界面領域403と導管401の間に液体充填空洞がなく、界面領域403は膜を備えず、ガスは導管401内の液体と直接接触する。ガスチャンバ402の体積は、必要な量のFIV低減の提供に十分な大きさである。システムは、液体中に溶解するガスに起因するガスチャンバ402内のガス圧力の任意の減少を補償するガス供給装置を備えてもよい。
2.
図4に係るシステムであって、界面領域403と導管401の間に液体充填空洞がなく、界面領域403はガスを導管401内の液体から分離する膜を備える。ガスチャンバ402の体積は、必要な量のFIV低減の提供に十分な大きさである。膜は、低周波FIV性能を実質的に劣化させないために、高い柔軟性を有する。
3.
図4に係るシステムであって、界面領域403と導管401の間に液体充填空洞がなく、界面領域403はガスを導管401内の液体から分離する膜を備える。システムは、低周波FIVを低減させるよう構成されるガス圧力制御装置を備える。ガスチャンバ402の体積は、上述の実施例1)および2)より小さくてもよい。
4.
図8に係る一以上のシステムであって、膜のコンプライアンスが導管401内の液体中の低周波FIVを低減させる。エンドストップ802は、塑性変形が防止されるように膜を拘束するために設けられてもよい。
【0151】
本実施形態は、温度制御対象の構成要素の流路に設けられる一以上のFIV低減システムを含む。第1FIV低減システムは、温度制御対象の構成要素の入口に設けられてもよく、第2FIV低減システムは、温度制御対象の構成要素の出口に設けられてもよい。このような構成において、供給経路および戻り経路の双方におけるFIVが抑制される。
図12は、ある実施形態に係る温度制御対象の構成要素1204の流路に二つのFIV低減システムがどのように設けられてもよいかを示す。システムは、供給マニホールド1205と、戻りマニホールド1207と、キャビネット1206と、温度制御対象の構成要素1204と、FIV低減システム1201と、ダイナミックリンク1202および1203とを備える。ダイナミックリンク1202は、周囲環境と真空環境の間の遷移を横切ってもよい。ダイナミックリンク1203は、すでに真空環境内にあり、例えばEUVリソグラフィ装置内において力フレームからセンサフレームを分離してもよい。真空環境において、温度調整システムを通る流体経路は、実質的に最適化されている。しかしながら、この流体経路から離れたところに大きな擾乱源が存在する。例えば、供給マニホールド1205および戻りマニホールド1207までの分岐自体には、絞り、ヒータ、温度センサなどがあり、これらは実質的なFIVを発生させうる。FIVの他の源は、キャビネット1206(ポンプなどを含む)、供給マニホールド1205、戻りマニホールド1207、および、他の並列する流体流路の振動である。FIV低減システム1201は、真空環境内に伝搬して構成要素1204に到達するFIVを低減する。
【0152】
リソグラフィ装置は、通常、温度制御を必要とする複数の構成要素を備え、各構成要素への液体の供給および戻り経路が必要である。リソグラフィ装置は、全ての構成要素に液体を送るための単一のポンプシステムを備えることが知られている。このような構成において、単一の構成要素に供給される液体の量は、ポンプシステムによって送られる液体の比較的小さな割合でありうる。これは、温度制御対象の構成要素の全てに液体を供給するのに十分となる程度に液体のポンプが強力である必要があるため、POBのようなFIVに最も敏感である温度制御対象の構成要素が大きなFIVを受ける結果となる。
【0153】
本実施形態は、代わりに複数の個別の熱調整システムを備えるリソグラフィ装置も含む。各熱調整システムは、温度制御対象の構成要素のうちの一つだけ、または、全てではないいくつかに液体を供給するための独自のポンプシステムを有する。したがって、ポンプシステムは、全ての構成要素に液体を供給するための単一のポンプシステムよりも小さい出力であってよく、したがって、最も敏感な温度制御対象の構成要素に供給される液体中のFIVが低減される。
【0154】
本実施形態は、EUVリソグラフィ装置のPOBの温度制御対象のセンサフレームが経験するFIVの低減に特に適している。しかしながら、本実施形態は、レンズ、ミラー、または基板ステージといった他の温度制御対象の構成要素が経験するFIVを低減するために用いられてもよい。本実施形態はまた、DUVリソグラフィ装置といった他の種類の装置において用いられてもよい。
【0155】
図13は、ある実施形態に係るリソグラフィ装置内の構成要素の温度を制御する温度調整システムの液体の流れ誘起振動(FIV)を低減する方法のフローチャートである。
【0156】
ステップ1301において、方法が開始する。
【0157】
ステップ1303において、方法は、液体充填空洞内の液体と、リソグラフィ装置の領域の雰囲気圧力に実質的にあるガスとの間に膜を設け、膜のコンプライアンスが液体の少なくとも低周波FIVを低減させるようにすることを備える。
【0158】
ステップ1305において、方法は終了する。
【0159】
本実施形態は、上述の技術に対する多数の変形例を含む。
【0160】
上述の
図1に示されるものの代わりとして、パターニングデバイスMAでの反射ではなく、放射ビームPBがパターニングデバイスMAを通過するときに、放射ビームPBにパターンを付与する代替的な種類のパターニングデバイスMAを有するリソグラフィ装置が用いられてもよい。
【0161】
本実施形態は、DUV装置といった任意の種類のリソグラフィ装置とともに用いられてもよい。
【0162】
この文章では、リソグラフィ装置の文脈で本発明の実施形態への特定の言及がなされるかもしれないが、本発明の実施形態は、他の装置で使用されてもよい。本発明の実施形態は、マスク検査装置、計測装置、またはその構成要素の温度制御を必要とする任意の装置の一部を形成してもよい。
【0163】
「EUV放射」の用語は、4-20nmの範囲内、例えば13-14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含するとみなされてよい。EUV放射は、10nm未満の波長、例えば6.7nmまたは6.8nmといった4-10nmの範囲内の波長を有してもよい。
【0164】
この文章では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用について特定の言及がなされたかもしれないが、本書に記載されるリソグラフィ装置は、他の用途を有してもよいことが理解されよう。可能性のある他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造を含む。
【0165】
本実施形態は、以下の番号が付された項を含む。
項1.リソグラフィ装置内の少なくとも一つの構成要素の温度を制御する温度調整システムに用いるための流れ誘起振動(FIV)低減システム(1201)であって、FIV低減システム(1201)は、
FIV低減システム(1201)を通る液体のための流路を提供する導管(401)と、
加圧されたガスを備えるよう構成されるガスチャンバ(402)と、を備え、
ガスチャンバ(402)と導管(401)の間に界面領域(403)があり、使用時に、ガスチャンバ(402)内のガスのコンプライアンスが導管(401)を通って流れる液体中の少なくとも低周波FIVを低減するよう構成される、FIV低減システム(1201)。
項2.液体中の低周波FIVは、30Hz以下の周波数を有するFIVである、項1に記載のFIV低減システム(1201)。
項3.FIV低減システム(1201)は、液体中のFIVの反射および/または吸収によって液体中のFIVを低減するよう構成される、項1または項2に記載のFIV低減システム(1201)。
項4.界面領域(403)は、ガスチャンバ(402)内のガスを導管(401)内のガスから分離するよう構成されるフレキシブル膜を備える、項1から項3のいずれか一項に記載のFIV低減システム(1201)。
項5.界面領域(403)において、使用時に、ガスチャンバ(402)内のガスは、導管(401)内の液体と直接接触する、項1から項3のいずれか一項に記載のFIV低減システム(1201)。
項6.FIV低減システム(1201)は、ガスチャンバ(402)内のガス圧力を制御するよう構成されるガス圧力制御システム(404)をさらに備える、項1から項5のいずれか一項に記載のFIV低減システム(1201)。
項7.ガス圧力制御システム(404)は、平均ガス圧力が実質的に一定となるようにガスチャンバ(402)内のガス圧力を制御するよう構成される、項6に記載のFIV低減システム(1201)。
項8.ガス圧力制御システム(404)は、使用時に、液体中の低周波FIVを低減するようガス圧力が制御されるように、ガスチャンバ(402)内のガス圧力を低周波数の応答で制御するよう構成される、項6または項7に記載のFIV低減システム(1201)。
項9.使用時に、導管(401)を通って流れる液体は水である、項1から項8のいずれか一項に記載のFIV低減システム(1201)。
項10.使用時に、ガスチャンバ(402)内のガスは空気、窒素または四フッ化炭素である、項1から項9のいずれか一項に記載のFIV低減システム(1201)。
項11.使用時に、ガスチャンバ(402)内のガスの圧力は、1から10Baraの範囲内にある、項1から項10のいずれか一項に記載のFIV低減システム(1201)。
項12.ガスチャンバ(402)内のガスの体積は、少なくとも2mLであり、好ましくは少なくとも100mLであり、より好ましくは少なくとも1000mLである、項1から項11のいずれか一項に記載のFIV低減システム(1201)。
項13.リソグラフィ装置内の少なくとも一つの構成要素の温度を制御するよう構成される温度調整システムであって、温度調整システムは、
構成要素(1204)を通って流れる液体によって温度制御されるよう構成される構成要素(1204)と、
項1から項12のいずれか一項に記載の少なくとも一つのFIV低減システム(1201)と、を備える温度調整システム。
項14.構成要素(1204)は、投影光学系ボックス用のセンサフレーム、レンズ、ミラーおよび基板ステージのいずれかである、項13に記載の温度調整システム。
項15.使用時に、各FIV低減システム(1201)の導管(401)を通る液体の流れは、構成要素(1204)を通る液体の流れと直列である、項13または項14に記載の温度調整システム。
項16.温度調整システムは、構成要素の入口側にある少なくとも一つのFIV低減システム(1201)、および/または、構成要素(1204)の出口側にある少なくとも一つのFIV低減システム(1201)を備える、項13から項15のいずれか一項に記載の温度調整システム。
項17.温度調整システム内の液体のための流路を提供するよう構成される少なくとも一つのフレキシブル導管および/または少なくとも一つのリジッド導管を備える、項13から項16のいずれか一項に記載の温度調整システム。
項18.項13から項17のいずれか一項に記載の温度調整システムを備えるリソグラフィ装置。
項19.リソグラフィ装置内の構成要素(1204)の温度を制御する温度調整システムの液体中の流れ誘起振動(FIV)を低減する方法であって、この方法は、
ガスチャンバ(402)内のガスと導管(401)内の液体との間に界面領域(403)を設け、ガスチャンバ(402)内のガスのコンプライアンスが液体中の少なくとも低周波FIVを低減させるようにすることを備える方法。
項20.方法は、項1から項12のいずれか一項に記載のFIV低減システム(1201)によって実行される、項19に記載の方法。
項21.エンドストップ(802)は、貫通開口を備えない、項1から項12のいずれか一項に記載のFIV低減システム(1201)。
項22.エンドストップ(802)は、膜(804)の平面と実質的に平行な平板である、項1から項12のいずれか一項に記載のFIV低減システム(1201)。
項23.ベロー(蛇腹)をさらに備える、項1に記載のFIV低減システム(1201)。
項24.ベローは、金属を備える、項23に記載のFIV低減システム(1201)。
【0166】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は、説明した以外の方法で実施されてもよいことが理解されよう。上記の説明は、例示を意図し、限定を意図していない。したがって、当業者であれば、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、説明された発明に変更がなされてもよいことは明らかであろう。
【国際調査報告】