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特表2022-542020多孔質焼結膜及び多孔質焼結膜を調製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(54)【発明の名称】多孔質焼結膜及び多孔質焼結膜を調製する方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/11 20060101AFI20220921BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20220921BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B22F3/11
C22C33/02 101
C22C33/02 102
B22F3/02 S
B22F3/02 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022502836
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 US2020041462
(87)【国際公開番号】W WO2021015959
(87)【国際公開日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】62/876,160
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワーク, ヴィレンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ディオン, デヴォン エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】スミス, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】レッディ, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック, メーガン
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA07
4K018AA33
4K018BA04
4K018BA17
4K018BB02
4K018CA07
4K018CA08
4K018CA29
4K018DA03
4K018GA06
(57)【要約】
多孔質焼結体及び射出成形ステップを含むステップによって多孔質焼結体を製造する方法が記載される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形された金型キャビティ内に液体射出組成物を粒子射出成形することによって多孔質焼結体を製造する方法であって、
液体射出組成物が、
少なくとも1つのポリマー結合剤、及び
液体射出組成物の総体積に基づいて、20~50体積%の固体無機粒子
を含む、成形された金型キャビティ内に液体射出組成物を流すことと、
成形された金型キャビティ内でポリマー結合剤の固化を引き起こして、固体無機粒子を取り囲む固体結合剤を含む固化した射出組成物を形成することと
を含む、方法。
【請求項2】
金型キャビティから固化した射出組成物を除去することと、
固化した射出組成物から固体結合剤を除去して、多孔質非焼結体を形成することと、
多孔質非焼結体を焼結して、多孔質焼結膜を形成することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体無機粒子が、樹枝状又は繊維状であり、2.0グラム/立方センチメートル未満の見掛け密度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
固体無機粒子が、粒子の理論密度の5~35%の範囲にある相対見掛け密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
多孔質焼結膜が、50~80%の範囲にある多孔度を有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー結合剤が、ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、エチルビニルアセテート、及びそれらの組合せから選択される熱可塑性ポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー結合剤が、固化した射出組成物を摂氏40度~80度の範囲にある温度の水、有機溶媒、及びそれらの組合せから選択される液体溶媒と接触させることによって、固化した射出組成物から除去され得る一次結合剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
一次結合剤が、ワックス及びポリエチレングリコールから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固化した射出組成物を摂氏40度~100度の範囲にある温度の水及び有機溶媒から選択される液体溶媒と接触させることによって、固化した射出組成物から一次結合剤を除去することをさらに含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
有機溶媒が、ヘプタン、ヘキサン、ハイドロフルオロエーテル、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、及びそれらの混合物から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ポリマー結合剤が、固化した射出組成物を摂氏600度以下の温度まで加熱することによって、固化した射出組成物から除去され得る二次結合剤を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
二次結合剤が、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、エチルビニルアセテートから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
一次結合剤の少なくとも一部を除去した後、固化した射出組成物を摂氏600度以下の温度まで加熱して、固体結合剤を除去することをさらに含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
多孔質焼結体が、三次元の管を含む形状を有する環状ろ過膜である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
管が、管の軸の方向で見た場合、円形断面を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
管が、管の軸の方向で見た場合、非円形断面を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
非円形断面がひだのあるパターンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
多孔質焼結体が三次元の非管状ろ過膜である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
液体射出組成物であって、
液体射出組成物の総体積に基づいて、
50~80体積%のポリマー結合剤と、
固体無機粒子の理論密度の5~35%の範囲にある相対見掛け密度を有する20~50体積%の固体無機粒子と
を含む、液体射出組成物。
【請求項20】
無機粒子が、樹枝状又は繊維状であり、2.0グラム/立方センチメートル未満の見掛け密度を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
焼結粒子を含み、50~80%の範囲にある多孔度を有する、射出成形された多孔質焼結体。
【請求項22】
粒子が樹枝状粒子である、請求項21に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項23】
粒子が繊維状粒子である、請求項21に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項24】
三次元の管を含む形状を有する環状ろ過膜の形態である、請求項21~23のいずれか一項に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項25】
管が、管の軸の方向で見た場合、円形断面を有する、請求項24に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項26】
管が、管の軸の方向で見た場合、非円形断面を有する、請求項24に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項27】
非円形断面がひだのあるパターンを含む、請求項26に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項28】
2つの対向する主要な表面と、2つの対向する表面の間の厚さとを含み、非円柱形状を有する、請求項21~23のいずれか一項に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項29】
少なくとも1つの主要な表面が、高くなった隆起部、チャネル、又はワッフリングなどのパターンを含む構造を有する、請求項28に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項30】
射出成形金型マーキングをさらに含む、請求項21~29のいずれか一項に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項31】
分割線マーク(金型の分割線によって形成される)、インジェクタピンマーク(金型の射出ピンによって形成される)、ゲートマーク(金型のゲート又はゲート開口部によって形成される)、又はキャビティ番号(金型表面のキャビティ番号マークによって形成される)のうちの1つ又は複数を更に含む、請求項21~29のいずれか一項に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記載された本発明は、多孔質焼結体に関し、射出成形ステップを含むステップによって多孔質焼結体を製造する方法を含む。
【背景技術】
【0002】
多孔質の焼結体は、エレクトロニクス及び半導体製造産業、並びに加工のために高純度材料を必要とする他の産業で使用される材料のろ過を含めた様々な産業用途で使用される。例えば、半導体及びマイクロエレクトロニクス産業では、製造プロセスへの粒子状物質の導入を防止するために、流体から粒子状物質を除去するためにインラインフィルタが使用されることが多い。流体は、気体又は液体の形態であってもよい。
【0003】
現在、多孔質焼結体を商業的に調製する一般的な方法は、多孔質体の中間(インプロセス)形態を手動で移動すること及び扱うことを伴う形成ステップ及び焼結ステップを含む。これらのステップは、労働集約的である。さらに、その焼結体は、壊れやすく、形成ステップは不明確であり得る。これらの特徴により、方法は、かなりの無駄、望ましくない低効率、及び望ましくない高コストになりやすい。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、多孔質焼結体を形成するための代替技術について記載する。開示された方法は、現在の技術に匹敵する非効率性及びコスト上の欠点を被らず、労働集約的で、精度が低く、潜在的に変動性のある手動ステップを、より正確で、労働集約性がより低い射出成形ステップに置き換える。射出成形ステップは、多孔質焼結体を形成する旧来の及び現在使用されている方法と比較して、より自動化され得、より正確であり得、より少ない量の廃棄物を生成し得る。記載された方法は、再現性の高い(正確な)多孔質焼結体の大量生産を達成するために実施することができる。現在の(非射出成形)商業プロセスでは、手動ステップ及び労働集約的ステップが妨げとなり、生産収率は60~80%の範囲にある。比較すると、本明細書に記載される、良好に制御され、自動化された射出成形プロセスは、より高い生産量(スループットの増加)、より低い廃棄物、及びより高い収率で、改善された均一性及び精度(例えば、部品内、部品間、及びバッチ間の低減された変動)を達成する潜在能力を有する。
【0005】
金属射出成形技術は、比較的低い多孔度の物体を調製するために使用されてきたが、本発明は、より高い多孔度の物体を製造することができる。金属射出成形方法の現在の商業的な例は、射出組成物(「供給原料」)、及び大量の粒子及び比較的低い多孔度を含有する結果として生じる焼結体を伴うものであり、射出された金属部品に対して1%未満の多孔度(体積による空隙率)をしばしば又は典型的に目標としている。通常、より高い多孔度を有する金属部品を製造しようとするものではないが、使用されている金属射出成形方法及び材料は、やや高い気孔率レベル、例えば、最大15、20、25、又は30%の体積空隙率、及び少なくとも70%の、結果として生じる焼結体の対応する固形分(金属)%を有する、射出成形された金属部品を製造することが可能である。
【0006】
対照的に、本記載の方法は、比較的低い百分率の粒子、例えば、20~50(体積)%の粒子、及び50~80%の結合剤を含有する射出組成物を使用することができる。このプロセスは、これに対応して、50~80%の範囲にある多孔度を有する最終的な多孔質焼結体を製造することができる。このようにして加工を首尾よく行うために、驚くべきことに、焼結多孔質体を形成するために使用される粒子は、粒子の形態(例えば、形状)の関数であり得る比較的低い「相対見掛け密度」を示すように選択され得ることが見出された。
【0007】
一態様では、成形された金型キャビティ内に液体射出組成物を粒子射出成形することによって多孔質焼結体を製造する方法が開示される。液体射出組成物は、ポリマー結合剤と、液体射出組成物の総体積に基づいて、20~50体積%の固体無機粒子とを含有する。方法は、成形された金型キャビティ内に液体射出組成物を流すことと、成形された金型キャビティ内で液体結合剤の固化を引き起こして、固体無機粒子を取り囲む固体結合剤を含む固化した射出組成物を形成することとを含む。
【0008】
別の態様では、液体射出組成物であって、液体射出組成物の総体積に基づいて、50~80体積%のポリマー結合剤と、粒子の理論密度の5~35%の範囲にある相対見掛け密度を有する20~50体積%の固体無機粒子とを含む、液体射出組成物が開示される。
【0009】
別の態様では、焼結粒子を含み、50~80%の範囲にある多孔度を有する射出成形された多孔質焼結体が本明細書で開示される。
【0010】
本開示は、添付の図面に関連して様々な例示的な実施形態の以下の記載を考慮してより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】多孔質焼結体を形成する上述の方法の例示的なステップを示す図である。
図2A】本説明に記載される無機(金属)粒子の集合体を示す図である。
図2B】本説明に記載される無機(金属)粒子の集合体を示す図である。
図2C】本説明に記載される無機(金属)粒子の集合体を示す図である。
図2D】本説明に記載される無機(金属)粒子の集合体を示す図である。
図3A図3Aは、本明細書に記載の例示的な射出成形焼結多孔質体の様々な形状を示す図である。
図3B図3Bは、本明細書に記載の例示的な射出成形焼結多孔質体の様々な形状を示す図である。
図3C図3Cは、本明細書に記載の例示的な射出成形焼結多孔質体の様々な形状を示す図である。
図3D図3Dは、本明細書に記載の例示的な射出成形焼結多孔質体の様々な形状を示す図である。
図4A図4Aは、本明細書に記載の例示的な射出成形焼結多孔質体を示す図である。
図4B図4Bは、本明細書に記載の例示的な射出成形焼結多孔質体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の記載によれば、多孔質焼結膜が、「粒子射出成形」技術と呼ばれることもある技術、より具体的には金属粒子の使用に関する、「金属射出成形」技術、つまり「MIM」などの射出成形法によって調製される。記載された方法は、無機(例えば、金属)粒子及びポリマー結合剤を含有する射出組成物の使用を伴う。射出組成物は、液体として金型キャビティ内に流され(射出され)、金型キャビティ内で固化されて、固化した成形体の形態の固化した射出組成物を形成する。固化した成形体は、キャビティから取り外すことができ、自立した形態である。成形体は、潜在的に壊れやすいが、ポリマー結合剤を除去すること、及び無機(例えば、金属)粒子を焼結して、多孔質焼結体を形成することを含むステップによって取り扱い、さらに加工することができる。
【0013】
結果として生じる多孔質焼結体は、融合し、それによって相互接続された粒子の固体(例えば、剛性又は半剛性)マトリックスを含む(又はそれからなる、又はそれから本質的になる)。マトリックスは、多孔質(例えば、高度に多孔質である)であり、マトリックスの粒子は、焼結ステップ中に、隣接する表面で互いに接続されている(例えば、「相互接続されている」)。
【0014】
多孔質体は、平坦なシート、例えば、実質的に平面の、本質的に二次元の(非常に薄い厚さを有する)平坦なシート又は膜の形状を有し得る膜の形態であり得る。しかしながら、これらの物体を形成するための射出成形技術は、成形体の形状又は形態を選択する際の柔軟性を高めることができる。多孔質体の形状の他の例は、非平面、例えば三次元であり得る。例えば、多孔質体は、湾曲した又は丸いプレート又は「カップ」の形態であってもよい。あるいは、多孔質体は、管、すなわち円筒の軸に沿って見た場合、丸い又は円形断面を有する管の形態などの三次元、例えば環状膜であってもよい。他の管は、角度、角、又はひだのあるパターン(多点星形、又は円形の「ジグザグ」パターン)を含む形状など、断面が非円形の形状を有してもよい。膜(任意の形状)は、2つの対向する主表面と、2つの対向する主表面の間の厚さとを含む。
【0015】
膜の厚さ(例えば、管又は円筒の物体壁の厚さ)は、多孔質体をフィルタとして用いるのに有効な範囲とすることができる。有用な厚さの例は、0.5~5ミリメートル、例えば1~4ミリメートルの範囲であり得る。
【0016】
多孔質体は、例えば50~80%、又は55~75%の比較的高い多孔度を有し、多孔質体のろ過膜としての性能に関連する他の有用な特性、例えば、有用なろ過膜に必要とされることが知られている流動特性及び保持特性を有し得る。本明細書では、及び多孔質焼結体の技術分野では、多孔質焼結体の「多孔度」(空隙率と呼ばれることもある)は、多孔質焼結体の総体積の%としての多孔質焼結体内の空隙(すなわち、「空」)空間の尺度であり、多孔質焼結体の総体積に対する多孔質焼結体の空隙の体積の比として計算される。0%の多孔度を有する物体は、完全に固体である。
【0017】
多孔質体の調製方法としては、液状の射出組成物(すなわち、「液体射出組成物」)を金型キャビティ内に射出して、成形体を形成することによって、射出組成物を射出成形するステップが挙げられる。成形体は、金型キャビティ内で固化されて、固化した成形体を形成することができる。その後のステップでは、成形体を金型キャビティから取り外すことができ、ポリマー結合剤を成形体の粒子から分離することができ、粒子同士を焼結ステップによって融着させて、自立した多孔質焼結体を形成することができる。
【0018】
射出組成物は、ポリマー結合剤を含有し、無機粒子がポリマー結合剤全体に分配されている。射出成形を含むステップによって、粒子を加工して、多孔質膜を形成することを可能にするために、粒子は、粒子が比較的少量で射出組成物に含まれることを可能にする形態学的特性(形状を含む)及び密度特性を含む物理的特性を示すが、焼結ステップによって依然として相互接続されて、自立した多孔質焼結体を形成するように選択される。より具体的には、粒子は、低い「相対見掛け密度」を有する。低い「相対見掛け密度」では、粒子は、射出組成物内に低い体積百分率で、例えば、総体積射出組成物に基づいて50体積%未満の粒子の量で存在することができるが、自立した多孔質焼結体を形成するように加工することは依然として可能である。低い「相対見掛け密度」では、粒子は、射出組成物の体積の低い百分率で存在する場合であっても、焼結によって共に効果的に融合して、有用な多孔質焼結体、例えば、「自立しており」、融合した相互接続された粒子からなる多孔質体を形成することができ、これは、一例として、本明細書に記載のろ過膜として有用である。
【0019】
粒子は、集合体として、粒子が比較的低い体積量で液体ポリマー結合剤内に分配されることを可能にするサイズ、形状、及び密度を含む物理的特性を有するが、依然として射出成形及び焼結によって加工されて、有用な(例えば、相互接続され、自立した)多孔質焼結体を形成することが可能である。射出組成物中の粒子の体積量は、結果として生じる焼結体が比較的高い多孔度を示すように、焼結体がろ過膜として効果的に使用され得るように、低いことが望ましい。しかし、(高多孔度焼結体を製造するための)射出組成物中の低体積量であっても、射出組成物に含まれる粒子は、焼結時に効果的に融合及び相互接続されるように十分な量の隣接表面間に十分な近接性を有さなければならず、その結果、焼結体を形成する粒子は、高度に相互接続され、したがって焼結体は自立している。
【0020】
本明細書では、「自立した」物体は、所与の形態又は形状で、つぶれることなく、好ましくはわずかな程度を超えてたるむことなく、有効な期間(例えば、加工ステップ間)にわたってその自重を支持することができる物体である。自立している本明細書に記載の焼結体は、ポリマー結合剤などの別の構造からの支持を必要とせずに、取り扱う、移動させる(いくつかの自立した焼結体は壊れやすく、移動のために高度な注意を必要とする)、さらに加工することができる。
【0021】
自立した焼結体に関して具体的には、(例えば、成形される)粒子の集合体が、焼結時に融着する(すなわち、「接続される」又は「相互接続される」)のに十分に互いに近い(例えば、接触又は接触に近い表面を有する)粒子を十分に高い百分率で含む場合、粒子の集合体は、自立している焼結体に形成され得る。好ましくは、射出組成物の粒子の大部分又は本質的にすべての粒子(例えば、粒子の総量の95、99、又は99.9%)が焼結多孔質体の融合粒子になるように、射出組成物の高百分率の粒子が、十分に近接して位置する、例えば、少なくとも1つの他の粒子表面と接触するか又はほぼ接触する少なくとも1つの表面を有する。粒子表面間の高度な接触又は近接(近接触)は、固化した射出組成物の形態で金型キャビティに含有される成形体中に存在することができる。粒子表面間の高度な接触又は近接はまた、溶媒脱結合ステップ中、並びに熱脱結合ステップ中及び熱脱結合ステップ後に残る。物体は、熱脱結合ステップの後及び焼結ステップの前に、隣接する粒子表面間に高度の接触又は近接を有し、表面間に空隙を有する粒子のみからなる。この物体は、ポリマーによって一緒に保持されていなくても、たとえ粒子が焼結によってまだ融合されていなくても、物体の粒子間の高度の近接及び接触のみに起因して、自立した状態であり得る。
【0022】
射出成形及び焼結によって自立した多孔質焼結体を形成するのに有効であるために、粒子のサイズ、形状、及び密度の特徴は、粒子がポリマー結合剤内に分配された粒子を含む成形体(例えば、金型キャビティ内に含有された固化した射出組成物)に形成されることを可能にし、その際、粒子間には高度の近接及び接触があるが、結果として生じる多孔質焼結体の有用な(比較的高い)多孔度をもたらす量の空隙も存在する。射出組成物の一部として、特に固化した射出組成物の一部として、粒子は、結果として生じる焼結体が焼結体がろ過膜として有効であることを可能にする空隙(多孔度)を有するのに十分な程度に、互いに離間している。同時に、粒子は、成形体が後にポリマーを除去するために加工されるとき、残りの粒子のみ(ポリマーが存在しない)が自立した体を形成するように、粒子の表面間にある程度の近接又は接触を有する。粒子間の同様の高い接触又は近接はまた、粒子(ポリマーのすべてを除去した後)が続いて焼結によって加工されることを可能にし、その際、粒子同士は、結果として生じる焼結体が自立する程度に融着し、相互接続されている。
【0023】
図1を参照すると、記載される方法は、無機粒子、ポリマー結合剤、及び有用な射出組成物を形成するのに有効な任意選択の成分を含む原料(10)の使用を含む。
【0024】
有用な無機粒子には、本明細書に記載のように加工することができる無機粒子が含まれ、これは、成形体を形成するために金型キャビティに分配するための液体射出組成物に効果的に形成されること、続いて、粒子単独からなる自立した物体を形成し、自立した物体は、その後、粒子同士を効果的に融着させて、相互接続された自立した多孔質焼結体を形成する焼結ステップによって加工され得ることによる。
【0025】
粒子は、例えば粉末としての小粒子の集合体の形態であり得、粒子は、とりわけ「凝集粒子」、「樹枝状粒子」又は「繊維状粒子」と呼ばれる個々の粒子などの様々な既知の粒子形態のいずれかであり得る。粒子は、ミクロンスケール(例えば、500ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、10ミクロン、又は5ミクロン未満の平均サイズを有する)の小さい又は比較的小さい粒子を含めた、有効な任意のサイズ又はサイズ範囲のものであり得る。
【0026】
粒子は、金属製の粒子、セラミック製の粒子、又はセラミック粒子と金属粒子の両方の組合せを含めた、1つ又は複数の異なる種類の無機材料を含み得る。本明細書で使用される「金属」という用語は、任意の金属若しくは半金属の化学元素又はこれらの元素の2つ以上の合金を指す。
【0027】
粒子は、上述のような加工の効率を達成するように選択されることができ、射出成形され、粒子からなる成形された自立した体に形成され、次いで焼結されて、ろ過膜として効果的に機能することになる自立した多孔質焼結体に形成されることができる。粒子のサイズ、形状、及び化学的構成は、これらの目的に有効な任意のものであり得る。いくつかの実施形態では、例えば、記載されるように(相互接続された粒子からなり、自立しており、また比較的高い多孔度並びに効果的な流れ及びろ過特性を示す)多孔質焼結体を形成するために射出成形によって加工することができる、本明細書に記載されるように有用であると同定された粒子は、サイズ、形状(形態学的特性を含む)、及び密度特性に基づいて選択することができる。
【0028】
選択された粒子の密度特性は、見掛け密度(別名かさ密度)及び相対見掛け密度(見掛け密度を理論的な(又は「粒子」密度)で割ったもの)として記載することができる。粉末形態で測定された、ニッケル、ニッケル合金、又はステンレス鋼で作られた例示的な粒子は、2グラム/立方センチメートル(g/cc)未満、例えば1.8g/cc未満、又は1.5g/cc未満の見掛けの(「かさ」)密度を有し得る。他の材料は、より高い密度値(例えば、耐火性金属)又はより低い見掛け密度値(例えば、特定のセラミック材料)を有し得る。既知のように、粉末(粒子の集合体)の見掛け(かさ)密度は、所与の体積の粉末に対する粉末の質量を指し、体積は、粒子の体積並びに粉末形態の粒子間の空間の体積を含む。見掛け(かさ)密度を測定するための方法は周知であり、ASTM B703-17「Standard Test Method for Apparent Density of Metal Powders and Related Compounds Using the Arnold Meter」を含む。
【0029】
粉末の形態の例示的な粒子はまた、射出成形ステップを含むステップによって多孔質焼結体を製造するために、記載のような加工を可能にする「相対見掛け密度」を有するように選択することができる。本明細書で特定されるように、粒子は、粒子を射出成形及びその後の焼結によって首尾よく加工して、望ましくは高い多孔度を有する多孔質焼結体を製造することを可能にするために、また相互接続され、自立した体を形成する粒子と共に、相対見掛け密度に基づいて選択することができる。本明細書では、一般に理解されるように、「相対見掛け密度」という用語は、粉末の理論密度で割った粉末の見掛け密度の比として計算される。粒子(例えば、粉末)の集合体の理論密度は、粒子の「粒子密度」とも呼ばれ、粒子を構成する材料(例えば、金属、セラミック)の密度、例えば、単一粒子の密度(体積当たりの質量)、又は体積当たりの重量に基づいて計算される粒子の集合体の密度を指し、体積は、粒子の体積のみを含み、粒子間の空隙の体積は含まないように計算される。記載される方法による有用な例示的な粒子は、理論密度の5~35%の範囲にある相対見掛け密度を有する粉末の形態であり得る。
【0030】
本明細書によれば、低い「相対見掛け密度」を示す粒子を射出成形によって加工して、高い多孔度及びそれに対応して低い固体含量(50%未満)(すなわち、高い多孔度)を有する多孔質焼結体を形成することができることが分かった。低い相対見掛け密度粒子は、粒子間に高い空隙を伴って、(たとえ射出組成物中に少量(低い体積%)で存在するとしても)射出組成物に含まれる場合に、粒子の表面間に高い程度の接触又は近接を引き起こす物理的形状及びサイズ特性を有する。粒子の表面間の高度な接触又は近接は、射出組成物から、例えば成形によって形成された物体にも存在する。粒子表面間の接触又は近接が高いと、高い空隙があっても、ポリマー結合剤を除去することができ、粒子は、自立型の、自立した物体の形態のままであり、焼結によってさらに加工して、粒子の表面で粒子同士を十分に融着させて、相互接続及び自立させ、有用な多孔質焼結膜を形成することができる。
【0031】
比較的低い「相対見掛け密度」は、粒子の物理的サイズ及び形状特性によって直接影響され得る粒子の集合体の特性である。無機粉末(金属又はセラミック製)のサイズ及び形状特性は、大きく異なり得、既知の粒子は、多くの異なる形状を有する。一般的な粒子形状のいくつかの例には、球状、丸い、角状、薄片状、円筒状、針状、立方体状、柱状、樹枝状、繊維状、細長い、及び分岐状と呼ばれるものが含まれる。他の粒子形状、及び特定の形状を記載するために使用される他の用語も知られている。異なる型の粒子はまた、凝集若しくは非凝集、又は「繊維状」であってもよい。小さい厚さ寸法及び幅寸法に対して優勢な長さ寸法を有する特定の型の粒子又はその枝若しくはフィブリルは、高いアスペクト比を有することによって特徴付けることができる。
【0032】
記載されるような射出成形方法において有用な粒子は、例えば、粉末として粒子間に高レベルの空隙、例えば低充填密度を含む粒子の集合体を形成するために、粒子に低い相対見掛け密度を生じさせる形状及びサイズの特徴を有する。低い相対見掛け密度を有する粒子のサイズ及び形状の特徴には、低い充填密度(「充填効率」)を引き起こす特徴が含まれる。低い充填密度(及び高い空隙)を生成することができる粒子の形状特徴には、粒子が粉末の一部である場合、粒子の密接な充填を防止し、粒子間の実質的な空隙の存在をもたらす、粒子間のランダムな(非反復)配置で複数のフィブリル又は枝を含む不規則な(幾何学的でない)形状特徴、粒子又は粒子の一部の細長い形状(例えば、高アスペクト比)、高表面積、分枝、ねじれた、曲げられた、又は湾曲したフィラメント又は枝などが含まれる。
【0033】
低い相対見掛け密度をもたらし得る粒子形状の例には、分岐した形状、「樹枝状」と称される形状、「繊維状」と称される形状が含まれる。
【0034】
樹枝状粒子は、米国特許第5,814,272号に記載されているような樹枝状形態学的特性を有する粒子を含む。この文献に示されるように、「樹枝状」という用語は、フィラメントの他の2つの寸法よりも実質的に大きい1つの寸法を個々に有する1つ又は複数のフィラメントを含む高度に異方性の不規則な形態学的特性を指す。フィラメントは、直線状又は屈曲していてもよく、また、不規則な表面を有する分岐状又は非分岐状であってもよい。樹枝状粒子は、より規則的な形態学的特性の粒子と比較して低い充填効率によって特徴付けられ、したがって、より規則的な形態学的特性の粒子によって形成されるものよりも低い見掛け(かさ)密度の粉末を形成する。樹枝状粒子の例には、図2Aに示すNickel255粒子、及び図2Cに示す処理されたステンレス鋼粒子が含まれる。
【0035】
樹枝状粒子は、粒子が所望の樹枝状形態学的特性及び有用な相対見掛け密度を達成するように調製及び加工することができる。記載の密度特性を有する樹枝状粒子を製造するのに有用なプロセスの例は、米国特許第5,814,272号に提示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で記載されるように、粒子を加工して樹枝状にすることにより、粒子を比較的低い「相対見掛け密度」を有するように加工することができる。一般に、効果的な加工方法は、(1)非樹枝状粒子を含む粉末を、軽度に焼結した材料を形成するのに適した条件下で加熱するステップ、及び(2)軽度に焼結した材料を破壊して、樹枝状粒子を含む粉末を形成するステップを含む。
【0036】
「軽度に焼結した材料」という用語は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、Randall(Randall in’’Powder Metallurgy Science,’’second edition,German,ed.,Metal Powder Federation Industry(1994))によって定義されるように、焼結の初期段階を通して金属粉末粒子の融合を引き起こすように加工された材料を指す。焼結又は短距離拡散焼結の初期段階では、接触した粒子表面で粒子間に結合が形成され、粒子とその直近の隣接物のみとの融合がもたらされる。したがって、焼結の初期段階は、低い機械的強度の脆い構造をもたらす。所与の材料では、焼結は、この初期段階を超えて、材料の焼結範囲の下端の温度でゆっくりと進行する。本記載の目的に関して、「初期段階焼結」という用語は、焼結が初期段階を実質的に超えて進行しない条件下での粉末の焼結を指す。
【0037】
図2Aは、Nickel255(市販の純粋なニッケル金属粉末の一例)で作られた樹枝状粒子を示す顕微鏡写真である。図2Bは、樹枝状形態を有するように粒子を加工する前のステンレス鋼粒子の顕微鏡写真であり、図2Cは、粒子を加工して樹枝状にした後の図2Bのステンレス鋼粒子の顕微鏡写真である。
【0038】
低い充填効率及び比較的低い「相対見掛け密度」によって特徴付けられる粒子の別の例は、「繊維状」粒子と呼ばれる粒子である。繊維状粒子は、少なくとも10:1(長さ:直径)、少なくとも30:1、少なくとも50:1、又は少なくとも75:1又は少なくとも100:1のアスペクト比(長さ対直径の比)などの高アスペクト比を有し、細長く(例えば、「麺状」)、任意選択で湾曲又は曲げられている。繊維状粒子の例には、図2Dに示すもののような繊維状ステンレス鋼粒子が含まれる。
【0039】
非樹枝状及び非繊維状であると認識される粉末形態の他の型の無機粒子が知られており、これらも焼結によって金属体を調製するのに有用である。これらの粒子は、樹枝状粒子又は繊維状粒子と比較して比較的高い充填効率を示し、通常(樹枝状粒子又は繊維状粒子と組み合わされることなく)低い相対見掛け密度を有さない。これらの型の粒子の例には、球状、丸い、角状、薄片状、円筒状、針状、及び立方体と呼ばれる粒子型を含めて、一般に(実質的に)分岐していない、比較的低いアスペクト比(例えば、5未満:1又は3未満:1又は2未満:1)を有する粒子が含まれる。
【0040】
記載される方法において有用な、粉末の形態であり、低い相対見掛け密度を有する粒子の集合体は、すべてが実質的に同じ又は同等のサイズ、形状、及び形態学的特性を有する粒子、例えば、すべて樹枝状粒子の集合体、又はすべて繊維状粒子の集合体を含有し得る。あるいは、所望であれば、粒子の集合体は、異なるサイズ、形状、又は形態学的特性特徴を有する2つ以上の異なる型の粒子の組合せを含有し得る。粉末の粒子は、例えば、樹枝状粒子と非樹枝状粒子の両方の組合せ、又は繊維状粒子と非繊維状粒子の両方の組合せなどを含み得、組合せは、記載されるように、焼結多孔質体及びその前駆体を形成するために加工されるのに十分な相対見掛け密度を有する。
【0041】
粒子の集合体は、金属製の粒子、セラミック製の粒子、又はセラミック粒子と金属粒子の両方の組合せを含めた、1つ又は複数の異なる型の無機粒子を含み得る。有用な粒子の例には、実質的に又は完全に金属粒子で作られた粒子の集合体、例えば、鋼粒子(例えば、ステンレス鋼)、ニッケル粒子、ニッケル合金粒子、又は別の金属若しくは金属合金で作られた粒子などの少なくとも90、95、99、又は99.9重量%の金属(又は金属合金)で作られた粒子の集合体が含まれる。市販の例には、以下の名称:Nickel255、「Alloy22」(Hastelloy(登録商標)C-22)、及び316L Stainless Steelで販売されているものが含まれる。
【0042】
ニッケル粒子は、典型的には、炭素などの不純物をほとんど含まず、少なくとも99重量%のニッケルを含有する。
【0043】
ニッケル合金の例は、鉄、コバルト、タングステン、マンガン、ケイ素、炭素、バナジウム、及び銅などのより少量の金属と共に、ニッケル(例えば、45~56重量%)、クロム(例えば、15~30重量%)、及びモリブデン(例えば、8~18重量%)の組合せを含有する合金とすることができる。一般的にニッケル「合金22」(例えば、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標))と呼ばれるニッケル合金の具体例は、ニッケル(56残部)、クロム(22)、モリブデン(13)、鉄(3)、コバルト(最大2.5)、タングステン(3)、マンガン(最大0.5)、ケイ素(最大0.08)、炭素(最大0.01)、バナジウム(最大0.35)、及び銅(最大0.5)を含有する(重量%)。
【0044】
ステンレス鋼合金の例は、Stainless Steel Alloy 316Lであり、これは、クロム(16-18)、ニッケル(10-14)、モリブデン(2-3)、マンガン(最大2.0)、ケイ素(最大.75)、炭素(最大0.08)、リン(最大0.045)、硫黄(最大0.30)、窒素(最大0.10)、及び鉄(残部)を含有し得る(重量%)。
【0045】
記載される有用かつ好ましい粒子は、記載されるように、特徴的な密度特性及び密度特性の特徴的な組合せを有する特定の金属合金を用いて、見掛け密度及び相対見掛け密度を有し得る。
【0046】
有用又は好ましいステンレス鋼粒子は、0.5~2グラム/立方センチメートル、例えば、0.8~1.2グラム/立方センチメートルの範囲の見掛け密度、及び理論密度の5~25、例えば、7~20%の範囲にある相対見掛け密度を有し得る。
【0047】
有用又は好ましいニッケル粒子は、0.3~1.5グラム/立方センチメートル、例えば、0.4~0.8グラム/立方センチメートルの範囲にある見掛け密度、及び理論密度の4~17%、例えば、理論密度の5~9%の範囲にある相対見掛け密度を有し得る。
【0048】
Hastelloy(登録商標)C-22などの大量(重量%)のニッケル(例えば、45~56重量%)、クロム(例えば、15~30重量%)、及びモリブデン(例えば、8~18重量%)を有するニッケル合金で作られた有用又は好ましい粒子は、0.5~2グラム/立方センチメートル、例えば、1.2~1.8グラム/立方センチメートルの範囲にある見掛け密度、及び理論密度の5~13%、例えば、理論密度の7~11%の範囲にある相対見掛け密度を有し得る。
【0049】
射出組成物中の粒子の量は、本明細書に記載の多孔度を有する本明細書に記載の多孔質焼結体を製造するのに有用な量とすることができる。例は、総体積基準で、総体積射出組成物に基づいて20~50体積%、例えば、25~45%の範囲とすることができる。有用なプロセスによれば、粒子は、ポリマー結合剤及び任意選択で1つ又は複数の追加の成分(例えば、加工を容易にするために)と組み合わされて、液体(例えば、「液体結合剤温度」で)の形態をとることができる射出組成物を形成し、射出組成物は、金型キャビティに射出することができ、金型キャビティ(例えば、有効圧力での「固体結合剤温度」で、)内で固化することもでき、すなわち、その後、金型キャビティの形状を有する固化した射出組成物の形態をとることができる。ポリマー結合剤は、熱可塑性材料又は熱硬化性材料であってもよく、熱可塑性材料が潜在的に好ましい。熱可塑性ポリマー組成物は、加熱された液体状態と冷却された固体状態との間で変化するように可逆的に加熱及び冷却され得るポリマー組成物である。
【0050】
有用なポリマー結合剤は、粒子を分散させることができる任意のポリマー結合剤(結合剤材料の組合せを含む)とすることができ、これは、液体射出組成物(例えば、高温で)の形態をとることができ、続いて固化した射出組成物(例えば、常温(摂氏25度)とすることができる冷却温度で、又は高温より低い別の温度で)の形態をとることができる。ポリマー結合剤はまた、成形体として固化した射出組成物を金型キャビティから取り外した後に固化した射出組成物を支持するのに十分に強く凝集性であるポリマー材料である。ポリマー結合剤はまた、粒子上に残留物がほとんど又は全く残っていない状態で粒子から完全に又は本質的に完全に洗浄されて、実質的に残留物のない多孔質焼結体を製造することができるべきである。
【0051】
有用な又は好ましい射出組成物によれば、ポリマー結合剤は、少なくとも2つの異なる型のポリマー材料、すなわち、液体溶媒(例えば、有機又は水性)を使用して除去することができる第1のポリマー結合剤(別名「一次結合剤」)と、液体溶媒への曝露によって除去されず、液体溶媒を使用して第1のポリマー結合剤が除去された後に物体と共に残る第2のポリマー結合剤(別名「二次結合剤」)とを含有することができる。結合剤系の「骨格ポリマー」と呼ばれることもある第2のポリマー結合剤は、第1のポリマー結合剤が除去された後、その後の加工中に成形体(例えば、茶色の物体)の一部として粒子を支持するのに有効であり得る。
【0052】
「充填剤」と呼ばれることもある第1の結合剤は、常温(摂氏25度)又は典型的には、摂氏40度~摂氏80度の温度などの高温で水又は有機溶媒に可溶型である。第1の結合剤の除去に有効であり得る有機溶媒の例には、ヘプタン、ヘキサン、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、ジクロロエチレン、及びトリクロロエチレンが含まれる。別の例として、物体を超臨界二酸化炭素に曝露することによって、物体からポリマーを除去することができる。
【0053】
第1の結合剤の種類のいくつかの非限定的な例には、パラフィンワックス、カルナウバワックス、ポリエチレングリコール、寒天、及び鉱油などのワックスが含まれる。
【0054】
射出組成物中の第1の結合剤の量は、本明細書に記載の加工を可能にする任意の量とすることができ、例は、射出組成物の総重量に基づいて10~25重量%の範囲である。
【0055】
例示的な射出組成物はまた、水又は第1の結合剤を除去するために使用される有機溶媒に可溶型ではない、「骨格ポリマー」と呼ばれることもある第2の結合剤を含有する。第2の結合剤は、第1の結合剤の除去時に物体(「茶色の物体」と呼ばれることもある)の一部として残ることになる。第2の結合剤は、茶色の物体の粒子と共に留まることによって、さらなる加工のために茶色の物体を支持する。
【0056】
有用な第2の結合剤の例には、水及び第1の結合剤を除去するために使用される有機溶媒中で安定(不溶型)であるが、例えば炉内での熱処理によって茶色の物体から非常に高度の除去(低残留物)まで除去することができるポリマーが含まれる。有用な二次結合剤の例には、特定のポリオレフィン、ポリアセタール、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、エチルビニルアセテート(これらのホモポリマー及び共重合体を含む)、及びこれらの型のポリマーの2つ以上の組合せが含まれる。第2の結合剤として有用な市販のポリマーの具体例には、ポリプロピレン及びCelanese Celon(登録商標)M450アセタール共重合体が含まれる。
【0057】
射出組成物中の第2の結合剤の量は、本明細書に記載の加工を可能にする任意の量とすることができ、例は、射出組成物の総重量に基づいて5~20重量%の範囲である。
【0058】
所望され、有効であると考えられる場合、射出成形方法において既知であり、有用であると考えられる成分を含めた他の成分も射出組成物に含めることができる。例には、少量での抗酸化剤、界面活性剤(乳化剤を含む)、潤滑剤などが含まれる。
【0059】
再び図1を参照すると、例示的なプロセス100の一ステップは、成分を混合するステップ(20)である。混合ステップ中、成分を一緒にコンパウンディングし、均一な混合物が得られるまで混合することができる。成分は、完全に「乾燥」していてもよく、これは、成分が実質的に固体形態であり、液体成分を含有しないことを意味し、この場合、混合ステップは「乾式混合ステップ」である。乾燥成分は、ポリマー結合剤(例えば、第1の結合剤及び第2の結合剤)、無機(例えば、金属)粒子、及び抗酸化剤、界面活性剤、潤滑剤などの任意の他の乾燥成分を含むことができる。
【0060】
あるいは、混合ステップの成分は、「乾燥」又は固体形態である必要はない。混合ステップは、液体形態の1つ又は複数の成分を含む成分を混合するために行うことができ、「湿式混合」ステップであってもよい。例えば、混合ステップは、液体ポリマー成分、例えば、溶媒に溶解したポリマーを含む成分をコンパウンディングすることを含み得る。液体ポリマー成分の単一の例として、ポリエチレングリコール(他の多くのポリマーの中でも)は、固体(乾燥)形態であり得、又は代わりに混合ステップ中に水又は有機溶媒に溶解されてもよい。
【0061】
混合ステップの混合物は、結合剤(例えば、第1の結合剤及び第2の結合剤)、無機(例えば、金属)粒子、及び他の任意選択の乾燥成分を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になることができる。本明細書では、指定された成分、組成物、又は成分の組合せ「から本質的になる」成分、組成物、又は成分の組合せは、列挙された成分、組成物、又は成分の組合せ、及びわずかな量以下の他の材料、例えば、成分、組成物、又は成分の組合せの総重量に基づいて5、2、1、又は0.5重量%未満の任意の他の材料を含有すると考えられる。
【0062】
乾式混合ステップの後、混合された乾式成分は、成形ステップにおいて液体射出組成物として使用することができる供給原料を形成するために、コンパウンディングステップ(30)によってさらにコンパウンディングすることができる。組合せステップは、典型的には、成分が液体の形態をとる温度で行われる。組合せステップの例示的な温度は、常温(摂氏25度)を上回ることができ、例えば、摂氏125度~200度の範囲であり得る(ポリマーの型に依存する)。組合せ後、混合物を冷却して、固体形態のペレット化された供給原料(例えば、室温で)を形成することができ、次いで、これを射出成形系に配置し、加熱して、ポリマーを再溶融し、成形体を形成するために金型キャビティ内に分配(例えば、射出)することができる液体射出組成物を形成することができる。液体射出組成物中の粒子は、粒子の表面が互いに十分に近接又は接触して、粒子が、自立しているが、本明細書に記載の例えば20~50%の範囲の多孔度をなお有する、結果として生じる多孔質焼結体を生成することを可能にするために、総体積%で有用な体積で存在することができる。
【0063】
次のステップは、射出成形(40)のステップであり得る。このステップは、組合せステップ中に生成された固体供給原料を再溶融して、金型キャビティに射出される液体射出組成物を形成することと、液体射出組成物を金型キャビティ(例えば、温度の低下及び充填圧力の上昇によって、)内で固化させて、固化した射出組成物を形成することと、固体(固化した)ポリマー結合剤に分散した粒子を含有する成形体の形態で、固化した射出組成物を金型から取り外すこととを含むことができる。
【0064】
次いで、成形体を加工して、粒子からポリマー(結合剤)を除去し、粒子を融合させる。例えば、図1に示すように、成形体は、成形体を溶媒と接触させる水/溶媒脱結合ステップ(50)によって加工することができ、溶媒は、有機、水、又は水と有機溶媒の組合せであってもよい。溶媒は、任意の量のポリマー結合剤又は溶媒に可溶型の他の固体(非粒子)材料(すなわち、一次結合剤)を成形体から除去する。残りの物体(本明細書では「茶色の物体」と呼ばれ得る)は、溶媒に可溶型ではない、残りのポリマー結合剤(二次結合剤)に懸濁された粒子、任意選択の抗酸化剤及び界面活性剤などを含む。水/溶媒脱結合ステップは、第1の(一次)結合剤を含めて、水又は溶媒可溶型材料の実質的にすべてを除去するのに十分な条件、例えば温度で成形体を溶媒に曝露することによって実施される。水/溶媒脱結合ステップの温度は、摂氏40度~摂氏80度の範囲の温度などの任意の有効温度であってもよい。
【0065】
図1のプロセス100の例示的なステップにより、次いで、茶色の物体は、熱脱結合ステップ(60)で熱に曝露されて、ポリマー(第2又は「二次」結合剤)及び抗酸化剤、界面活性剤などの任意の他の残りの非粒子材料を茶色の物体から除去する。このステップでは、茶色の物体は、残りの固体(非粒子)材料を除去し、自立した構造を形成するが融合によってまだ相互接続されていない粒子のみを実質的に含む実質的に残留物を含まない多孔質体を提供するのに十分な高温に曝露される。例えば、熱脱結合ステップ後(又は、焼結ステップの後に交互に)、多孔質体は、1、0.5、0.1、0.05、又は0.01重量%以下の結合剤、抗酸化剤、界面活性剤などの任意の成分を含有することができ、すなわち、少なくとも99、99.5、99.9、99.95、又は99.99重量%の射出組成物の粒子を含有する。
【0066】
熱脱結合ステップの温度は、茶色の物体から結合剤及び他の固体の非粒子材料を実質的に除去するのに有用な任意の温度であり得る(ただし、粒子の焼結又は溶融を引き起こすことなく)。特定の温度は、ポリマーの型並びに粒子の形態学的特性及び組成(並びに焼結温度及び溶融温度)などの特徴に依存し得る。特定の実施形態では、熱脱結合ステップは、茶色の物体のポリマーの熱重量分析(TGA)プロファイルに基づいて、温度を「保持」又はプラトー(一定温度の期間)でゆっくりと上昇させることによって実施することができる。熱脱結合ステップ中の温度の任意の上昇速度(「ランプ速度」)は、同様に有用であり得、例示的な速度は、毎分摂氏2度である。熱脱結合ステップ中に到達する最高温度は、ポリマーの型に応じて同様に有用であり得、一例は最大摂氏500度又は少なくとも摂氏600度である。典型的には、熱脱結合温度は、摂氏600度を超えない。
【0067】
また、多孔質体を焼結ステップ(70)に曝露し、粒子同士を融合かつ接続させる。本明細書で使用される「焼結」という用語は、金属ろ過膜として使用され得る型の多孔質焼結金属膜などの多孔質焼結金属構造の技術分野で使用される場合にこの用語が与えられる意味と一致する意味を有する。これと一致して、「焼結」という用語は、粒子の表面が、粒子表面間の物理的(機械的)結合によって粒子表面を互いに融着させるが、粒子を溶融させない(すなわち、いずれの金属材料もその溶融温度に達しない)温度に達するように、非酸化性環境において粒子(すなわち、多孔質体に)に熱を加えることによって、1つ又は複数の異なる型(サイズ、組成、形状など)の小さな焼結性粒子の集合体を互いに結合させる(例えば、「固相溶接」又は「融合」)プロセスを指すために使用することができる。
【0068】
焼結ステップは、物体の粒子の焼結点より高いが、粒子の溶融温度より低い温度で行われる。本明細書では、粒子の「焼結点」は、粒子の材料が焼結され得る温度、すなわち、粒子が焼結される物体の他の粒子に付着し始め、例えば、大気圧などの特定の圧力で別の粒子に融合することができる温度である。材料(例えば、金属)の焼結点は、通常、材料の溶融温度、つまり、金属が液体になる温度より低い。
【0069】
したがって、焼結ステップを実施するための有用な温度は、粒子の組成、粒子の焼結点、並びに焼結される粒子のサイズ、例えば、粒子が「粗」(より大きい)か、あるいは微細(より小さい)かに依存し得る。ニッケルの場合、焼結点は、摂氏550度~750度の範囲内とすることができ、焼結ステップは、摂氏550度~800度の範囲内の温度で行うことができる。ニッケル及びステンレス鋼合金の場合、焼結点は、摂氏950度~1250度の範囲内とすることができ、焼結ステップは、摂氏950度~1300度の範囲の温度で行うことができる。焼結ステップは、炉又はオーブン内で、及び焼結される物体の金属粒子と反応しないか又は有害な影響を与えない非酸化性雰囲気中で、例えば、真空中又は濃縮若しくは純粋な水素、濃縮若しくは純粋な不活性ガス、又は濃縮若しくは純粋な水素と不活性ガスとの組合せの雰囲気中で行うことができる。
【0070】
詳細を追加した1つの例示的な方法により、二軸スクリュー押出機又はプレップミキサーなどの既知のポリマー組合せ装置を使用し、界面活性剤、抗酸化剤、潤滑剤などの任意選択の加工助剤と共に、第1の溶媒可溶型結合剤及び第2の溶媒不溶型結合剤を含む結合剤系を使用して、射出組成物を調製することができる。組み合わされた供給原料(射出組成物)は、射出成形機で使用するためにペレット化することができる。射出組成物は、従来のプラスチック又は金属射出成形プロセスと同様の方法によって射出成形することができる。射出成形ステップによって形成された成形体は、2つの別々のステップで脱結合することができる。第1の(溶媒)脱結合ステップは、成形体を加熱された水又は溶媒浴に曝露して、一次結合剤成分を除去し、茶色形態を作り出す。第2の(熱)脱結合ステップを行って、炉内で二次結合剤及び添加剤を熱的に除去して、実質的に残留物のない自立した粒子構造を残すことができる。次いで、この構造は、金属膜の所望の多孔度を達成するために、非酸化性、例えば、水素、不活性ガス、又は真空雰囲気を含有する炉内でその最終密度まで焼結される。
【0071】
記載の方法に従って調製された多孔質焼結体は、ガス、例えば半導体加工に使用されるガスをろ過するためのろ過膜として有用であり得る。多孔質焼結体の種々の特徴は、ろ過膜としての多孔質体の有用性に影響を及ぼすと考えられる。半導体加工に使用するガス状材料をろ過する際に、ガス状流体は、ほぼ大気圧(例えば、2気圧下)である、大気圧より高い、又は大気圧より低い(例えば真空条件)圧力で供給されてもよい。ガス状流体を使用するプロセスは、ナノスケール及びミクロンスケールの粒子、例えば、ろ過ステップの「対数減少値」(LRV)によって測定される少なくとも3、4、5、7、又は9の非常に高い除去速度を必要とし得る。これらのガス状材料をろ過するプロセスはまた、比較的低い流量、例えば、前面フィルタ面積1平方センチメートル当たり毎分50、25、10、5、2、1、又は0.5標準リットル(slpm)未満で行われてもよい。本明細書に記載の方法は、これらのような要件を満たすろ過膜を調製して、ろ過膜をろ過膜として、例えば、半導体加工に使用するガス状材料をろ過するために効果的に使用することを可能にするのに有用であり得る。
【0072】
有利には、射出成形のステップによって形成された焼結多孔質体は、ろ過膜として有用な型の多孔質体を形成するための以前の非射出成形技術によって製造することが不可能であり得る特定の型の形状を含めた、非常に多種多様な三次元形状のいずれかを有するように調製することができる。
【0073】
射出成形膜の例示的な形状は、非管状(例えば、いくらか又は実質的に平坦又は平面)の形態、及び実質的に環状又は円筒状の形態又はその変形を含む管状の形態を含めて、一般に三次元であり得る。
【0074】
非管状形状の例は、2つの対向する主表面及び2つの対向する表面の間の厚さを有する平坦な、湾曲した、又は丸いプレート又は「カップ」の形態であってもよい。対向する主表面は、一般に、平坦又は湾曲していてもよく、さらに、平坦であるか、又は高くなった隆起部若しくは壁、窪み若しくはチャネル、又は「ワッフリング」などの非平坦なパターン化又は非パターン化三次元構造を含む表面構造を有してもよい。図3A図3B図3C、及び図3Dを参照すると、図3A及び図3Cは上面図であり、図3B及び図3Dは、幅及び長さ、並びに幅及び長さよりも実質的に小さい2つの表面間の厚さを有する2つの対向する主表面を含み得るろ過膜200及び204の斜視図である。少なくとも1つの表面(例えば、図3A及び図3Bの表面202)は、窪み(例えば、沈められたチャネル)又は隆起若しくは高くなった隆起部、壁などの繰り返し又は非繰り返しパターンを含めた三次元構造を含むことができ、一例は、図3A図3B図3C、及び図3Dに示すようなワッフリングパターンである。現在記載されている射出成形技術を使用して、表面構造及びパターンの他の形状も可能である。
【0075】
あるいは、多孔質焼結体は、管、すなわち円筒の軸に沿って見た場合、丸い又は円形断面を有する管(例えば、管、円筒)の形態などの三次元、例えば管状膜であってもよい。他の管は、管の内面又は外面の周りに延びる角度、角、曲線(例えば、フルーティング)、又はひだのあるパターン(多点星形、又は円形の「ジグザグ」パターン)の繰り返しパターンを含む形状など、断面が非円形形状を有してもよい。膜(任意の形状)は、2つの対向する主表面と、2つの対向する主表面の間の厚さとを含む。管状膜の少なくとも1つの端部は開いていてもよく、第2の端部は開いていても閉じていてもよい。図4A及び図4Bは、一方の開放端及び一方の閉鎖端を有する複数の繰り返し湾曲面、例えば「ペダル」又は「溝」を含む非円形断面を有する環状ろ過膜210の斜視図を示す。
【0076】
本明細書では、「射出成形された多孔質焼結体」(又は「射出成形体」など)と呼ばれる物体は、射出成形ステップによって製造された物体として構造的又は物理的に識別可能な物体、すなわち、物体が射出成形技術によって形成されていることを示す物理的特徴を含む物体である。射出成形時には、成形体の形状を形成するために、金型表面を有する金型キャビティが使用される。金型キャビティは、金型によって調製された物体の表面に異なる物理的マーキングを生成する1つ又は複数の構造的特徴を含む。例示的な金型キャビティは、とりわけ、金型表面の金型番号、分割線(金型の2つの部品が一緒になる境界又は縁部)、インジェクタピン、ゲート又はゲート開口部を含むことができる。キャビティ金型のこれら又は他の構造は、金型を使用して形成された物体の表面に残る物理的マーク(「射出成形マーク」)を形成することができる。したがって、「射出成形された多孔質焼結体」は、これらの射出成形マーク、例えば、分割線マーク(分割線によって形成される)、インジェクタピンマーク(射出ピンによって形成される)、ゲートマーク(ゲート又はゲート開口部によって形成される)、又はキャビティ番号(金型表面のキャビティ番号マークによって形成される)の1つ又は複数の存在によって識別することができる。
【0077】
例示的な結合剤成分を以下の表1及び表2に示す。
【0078】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を記載してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内でさらに他の実施形態を作製及び使用することができることを容易に理解するであろう。本文書によってカバーされる本開示の多くの利点は、前述の記載に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲を超えることなく、詳細、特に部品の形状、サイズ、及び配置に関する事項を変更することができる。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される文言で定義される。
【0079】
第1の態様では、成形された金型キャビティ内に液体射出組成物を粒子射出成形することによって多孔質焼結体を製造する方法は、成形された金型キャビティ内に液体射出組成物を流すことであって、液体射出組成物が、少なくとも1つのポリマー結合剤と、液体射出組成物の総体積に基づいて、20~50体積%の固体無機粒子とを含むことと、成形された金型キャビティ内でポリマー結合剤の固化を引き起こして、固体無機粒子を取り囲む固体結合剤を含む固化した射出組成物を形成することとを含む。
【0080】
第1の態様による第2の態様は、金型キャビティから固化した射出組成物を取り外すことと、固化した射出組成物から固体結合剤を除去して、多孔質非焼結体を形成することと、多孔質非焼結体を焼結して、多孔質焼結膜を形成することとをさらに含む。
【0081】
第1又は第2の態様による第3の態様は、その態様において、固体無機粒子が、樹枝状又は繊維状であり、2.0グラム/立方センチメートル未満の見掛け密度を有するものである。
【0082】
任意の先行する態様による第4の態様は、その態様において、固体無機粒子が、粒子の理論密度の5~35%の範囲にある相対見掛け密度を有するものである。
【0083】
任意の先行する態様による第5の態様は、その態様において、多孔質焼結膜が、50~80%の範囲にある多孔度を有するものである。
【0084】
任意の先行する態様による第6の態様は、その態様において、ポリマー結合剤が、ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、エチルビニルアセテート、及びそれらの組合せから選択される熱可塑性ポリマーを含むものである。
【0085】
任意の先行する態様による第7の態様は、その態様において、ポリマー結合剤が、固化した射出組成物を摂氏40度~80度の範囲にある温度の水、有機溶媒、及びそれらの組合せから選択される液体溶媒と接触させることによって、固化した射出組成物から除去され得る一次結合剤を含むものである。
【0086】
第7の態様による第8の態様は、その態様において、一次結合剤が、ワックス及びポリエチレングリコールから選択されるものである。
【0087】
第7又は第8の態様による第9の態様は、固化した射出組成物を摂氏40度~100度の範囲にある温度の水及び有機溶媒から選択される液体溶媒と接触させることによって、固化した射出組成物から一次結合剤を除去することをさらに含む。
【0088】
第9の態様による第10の態様は、その態様において、有機溶媒が、ヘプタン、ヘキサン、ハイドロフルオロエーテル、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、及びそれらの混合物から選択されるものである。
【0089】
第7~第10の態様による第11の態様は、その態様において、ポリマー結合剤が、固化した射出組成物を摂氏600度以下の温度まで加熱することによって、固化した射出組成物から除去され得る二次結合剤を含むものである。
【0090】
第11の態様による第12の態様は、その態様において、二次結合剤が、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、エチルビニルアセテートから選択されるものである。
【0091】
第9~第11による第13の態様は、一次結合剤の少なくとも一部を除去した後、固化した射出組成物を摂氏600度以下の温度まで加熱して、固体結合剤を除去することをさらに含む。
【0092】
任意の先行する態様による第14の態様は、その態様において、多孔質焼結体が、三次元の管を含む形状を有する環状ろ過膜であるものである。
【0093】
第14の態様による第15の態様は、その態様において、管が、管の軸の方向で見た場合、円形断面を有するものである。
【0094】
第14の態様による第16の態様は、その態様において、管が、管の軸の方向で見た場合、非円形断面を有するものである。
【0095】
第16の態様による第17の態様は、その態様において、非円形断面がひだのあるパターンを含むものである。
【0096】
任意の先行する態様による第18の態様は、その態様において、多孔質焼結体が、三次元非管状ろ過膜であるものである。
【0097】
第19の態様では、液体射出組成物は、液体射出組成物の総体積に基づいて、50~80体積%のポリマー結合剤と、固体無機粒子の理論密度の5~35%の範囲にある相対見掛け密度を有する20~50体積%の固体無機粒子とを含む。
【0098】
第19の態様による第20の態様は、その態様において、固体無機粒子が、樹枝状又は繊維状であり、2.0グラム/立方センチメートル未満の見掛け密度を有するものである。
【0099】
第21の態様では、射出成形された多孔質焼結体は、焼結粒子を含み、50~80%の範囲にある多孔度を有する。
【0100】
第21の態様による第22の態様は、その態様において、粒子は、樹枝状粒子であるものである。
【0101】
第21の態様による第23の態様は、その態様において、粒子が繊維状粒子であるものである。
【0102】
第21~23の態様による第24の態様は、三次元の管を含む形状を有する環状ろ過膜の形態である。
【0103】
第24の態様による第25の態様は、その態様において、管が、管の軸の方向で見た場合、円形断面を有するものである。
【0104】
第24の態様による第26の態様は、その態様において、管が、管の軸の方向で見た場合、非円形断面を有するものである。
【0105】
第26の態様による第27の態様は、その態様において、非円形断面がひだのあるパターンを含むものである。
【0106】
第21~第23の態様による第28の態様は、2つの対向する主表面と、2つの対向する表面の間の厚さとを含み、非円柱形状を有する。
【0107】
第28の態様による第29の態様は、その態様において、少なくとも1つの主表面が、高くなった隆起部、チャネル、又はワッフリングなどのパターンを含む構造を有するものである。
【0108】
第21~第29の態様による第30の態様は、射出成形金型マーキングをさらに含む。
【0109】
第21~第29の態様による第31の態様は、分割線マーク(金型の分割線によって形成される)、インジェクタピンマーク(金型の射出ピンによって形成される)、ゲートマーク(金型のゲート又はゲート開口部によって形成される)、又はキャビティ番号(金型表面のキャビティ番号マークによって形成される)のうちの1つ又は複数をさらに含む。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
【手続補正書】
【提出日】2022-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形された金型キャビティ内に液体射出組成物を粒子射出成形することによって多孔質焼結体を製造する方法であって、
成形された金型キャビティ内に、
少なくとも1つのポリマー結合剤、及び
液体射出組成物の総体積に基づいて、20~50体積%の固体無機粒子
を含む液体射出組成物を流すことと、
成形された金型キャビティ内でポリマー結合剤の固化を引き起こして、固体無機粒子を取り囲む固体結合剤を含む固化した射出組成物を形成することと
を含む、方法。
【請求項2】
金型キャビティから固化した射出組成物を除去することと、
固化した射出組成物から固体結合剤を除去して、多孔質非焼結体を形成することと、
多孔質非焼結体を焼結して、多孔質焼結膜を形成することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体無機粒子が、樹枝状又は繊維状であり、2.0グラム/立方センチメートル未満の見掛け密度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー結合剤が、固化した射出組成物を摂氏40度~80度の範囲にある温度の水、有機溶媒、及びそれらの組合せから選択される液体溶媒と接触させることによって、固化した射出組成物から除去され得る一次結合剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー結合剤が、固化した射出組成物を摂氏600度以下の温度まで加熱することによって、固化した射出組成物から除去され得る二次結合剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
液体射出組成物であって、
液体射出組成物の総体積に基づいて、
50~80体積%のポリマー結合剤と、
固体無機粒子の理論密度の5~35%の範囲にある相対見掛け密度を有する20~50体積%の固体無機粒子と
を含む、液体射出組成物。
【請求項7】
焼結粒子を含み、50~80%の範囲にある多孔度を有する、射出成形された多孔質焼結体。
【請求項8】
三次元の管を含む形状を有する環状ろ過膜の形態である、請求項7に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項9】
2つの対向する主要な表面と、2つの対向する表面の間の厚さとを含み、非円柱形状を有する、請求項7に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【請求項10】
射出成形金型マーキングをさらに含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の射出成形された多孔質焼結体。
【国際調査報告】