IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ コーニング コーポレーションの特許一覧 ▶ ダウ・東レ株式会社の特許一覧

特表2022-542537チキソトロピック性の硬化性シリコーン組成物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-05
(54)【発明の名称】チキソトロピック性の硬化性シリコーン組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20220928BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220928BHJP
   C08K 5/549 20060101ALI20220928BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220928BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K3/36
C08K5/549
C08K3/013
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021575399
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 CN2019092283
(87)【国際公開番号】W WO2020252772
(87)【国際公開日】2020-12-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホン、トーポー
(72)【発明者】
【氏名】リー、シウツオ
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一利
(72)【発明者】
【氏名】安達 浩
(72)【発明者】
【氏名】ファン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP051
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ017
4J002EX039
4J002EX078
4J002FD016
4J002FD017
4J002GJ01
4J002GJ02
(57)【要約】
【解決手段】 チキソトロピック性の硬化性シリコーン組成物の製造方法を開示し、チキソトロピック性の硬化性シリコーン組成物は、(A)1分子中に少なくとも2つのアルコキシシリル含有基を有するオルガノポリシロキサン、及びヒュームドシリカ以外の充填剤を含むシリコーンベース材と、(B)疎水性ヒュームドシリカと、(C)カルバシラトラン誘導体と、(D)アルコキシシラン又はその部分的に加水分解及び縮合した生成物と、(E)縮合反応触媒とを含み、方法は以下の工程、(I)成分(A)と(B)を混合する工程、(II)成分(C)を上記工程(I)で得られた混合物と混合する工程、次いで、(III)成分(D)及び(E)を、水分を含まない条件下で、上記工程(II)で得られた混合物と混合する工程、を含む。本方法によって得られる硬化性シリコーン組成物はチキソトロピック特性を有し、空気中の水分と接触することによって室温で硬化することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン組成物の製造方法であって、前記硬化性シリコーン組成物が、
(A)シリコーンベース材であって、1分子中に少なくとも2つの以下の式によって表されるアルコキシシリル含有基を有する100質量部のオルガノポリシロキサンを含み、
-R-(SiR O)-SiR -R-SiR (OR(3-a)
式中、Rが、1~6個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキル基であり、Rが、1~3個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキル基であり、Rが、2~6個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキレン基であり、「a」が0又は1であり、「n」が1~10の整数であり、また、100~500質量部のヒュームドシリカ以外の充填剤を含む、シリコーンベース材と、
(B)100~400m/gのBET比表面積を有する疎水性ヒュームドシリカと、
(C)以下の一般式によって表されるカルバシラトラン誘導体であって、
【化1】
式中、Rが、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、Rが、同じ又は異なって、水素原子、又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが、同じ又は異なって、以下の一般式によって表される基から選択され、
-R-SiR (OR(3-b)
-R10-O-R11
式中、Rが、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが、1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基、又は4~12個の炭素原子を有するアルキレンオキシアルキレン基であり、R10が、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、R11が、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、又は2~6個の炭素原子を有するアシル基であり、「b」が、0、1、又は2である、カルバシラトラン誘導体と、
(D)アルコキシシラン又はその部分的に加水分解及び縮合した生成物であって、前記アルコキシシランが以下の一般式によって表され、
12 Si(OR13(4-c)
式中、R12が、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R13が、1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、「c」が、0、1又は2である、アルコキシシラン又はその部分的に加水分解及び縮合した生成物と、
(E)縮合反応触媒と、を含み、
成分(A)中の前記オルガノポリシロキサン100質量部に対して、それぞれ、成分(B)の含有量が0.1~50質量部の量であり、成分(C)の含有量が0.1~20質量部の量であり、成分(D)の含有量が0.5~30質量部の量であり、成分(E)の含有量が0.1~10質量部の量であり、
前記方法が以下の工程、
(I)成分(A)と(B)を混合する工程、次いで
(II)成分(C)を、前記工程(I)で得られた混合物と混合する工程、次いで
(III)成分(D)及び(E)を、水分を含まない条件下で、前記工程(II)で得られた混合物と混合する工程、を含む、方法。
【請求項2】
成分(A)中の前記充填剤が、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、石英、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、又はそれらの混合物から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分(A)が、前記オルガノポリシロキサン及び前記熱伝導性の充填剤を、表面処理剤の存在下、60~250℃の加熱下で混合することによって調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記表面処理剤が、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジビニルジシラザン、又はビニルトリメトキシシランから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
成分(C)が、以下の式によって表されるカルバシラトラン誘導体である、請求項1に記載の方法。
【化2】
【請求項6】
前記工程Iが10~50℃で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程IIが10~50℃で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工程IIIが10~50℃で行われる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の水分と接触することによって室温で硬化することができるチキソトロピック性の硬化性シリコーン組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の水分と接触することによって硬化することができる室温硬化性シリコーン組成物は、それらが硬化に加熱を必要としないことから、電気/電子機器のシーラント、接着剤、又はコーティングとして使用されている。特定の用途では、硬化性シリコーン組成物のチキソトロピック特性が、それを分配した後にその形状を保持するために必要とされる。硬化性シリコーン組成物のチキソトロピック特性は概して、疎水性ヒュームドシリカなどの微細充填剤、及びシラノール基、エポキシ基、アミン基、又はポリエーテル基などの極性基を有するいくつかの種類の有機液体化合物を添加することによって得られることがよく知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シラノール基で分子鎖の両端が末端封止されたジオルガノポリシロキサンと、加水分解性基を有する有機ケイ素化合物と、充填剤と、シリコーン変性ポリオキシアルキレン化合物と、を含む、室温硬化性シリコーン組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ヒドロキシルで末端封止されたジメチルポリシロキサン、フェニル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基を有しヒドロキシルで末端封止されたジオルガノシロキサンオリゴマーを混合し、次いで、未処理のヒュームドシリカを混合し、次いで、アルミナ三水和物粉末を混合し、次いで、(D)非反応性溶媒を混合し、次いで、水分が存在しない条件下でジメチルポリシロキサン用の水分活性化架橋系を混合することから本質的になるチキソトロピック性シリコーン分散体の調製方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、1つの分子中の分子鎖のケイ素原子上に少なくとも2つの特定のアルコキシシリル含有基を有するオルガノポリシロキサンと、分子鎖中のケイ素原子上にヒドロキシル基もアルコキシ基も有していないオルガノポリシロキサンと、アルコキシシラン又はその部分的に加水分解及び縮合した生成物と、縮合反応触媒と、任意選択で接着促進剤及び/又は補強充填剤と、を含む、室温硬化性シリコーン組成物が開示されている。
【0006】
先行技術文献
特許文献
特許文献1:米国特許第4,618,646(A)号
特許文献2:米国特許第5,036,131(A)号
特許文献3:米国特許第8,957,153(B2)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の組成物のチキソトロピック特性は不十分である。組成物のチキソトロピック特性が不十分であるため、組成物が硬化するときにそれが電気/電子装置の望ましくない領域に広がるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、優れたチキソトロピック特性を有し、空気中の水分と接触することによって室温で硬化することができるチキソトロピック性の硬化性シリコーン組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
問題の解決策
チキソトロピック性の硬化性シリコーン組成物を製造するための本発明の方法であり、チキソトロピック性の硬化性シリコーン組成物は、
(A)シリコーンベース材であって、1分子中に少なくとも2つの以下の式によって表されるアルコキシシリル含有基を有する100質量部のオルガノポリシロキサンを含み、
-R-(SiR O)-SiR -R-SiR (OR(3-a)
式中、Rは、1~6個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキル基であり、Rは、1~3個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキル基であり、Rは、2~6個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキレン基であり、「a」は0又は1であり、「n」は1~10の整数であり、また、100~500質量部のヒュームドシリカ以外の充填剤を含む、シリコーンベース材と、
(B)100~400m/gのBET比表面積を有する疎水性ヒュームドシリカと、
(C)以下の一般式によって表されるカルバシラトラン誘導体であって、
【化1】
式中、Rが、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、Rが、同じ又は異なって、水素原子、又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが、同じ又は異なって、以下の一般式によって表される基から選択され、
-R-SiR (OR(3-b)
-R10-O-R11
式中、Rが、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが、1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基、又は4~12個の炭素原子を有するアルキレンオキシアルキレン基であり、R10が、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、R11が、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、又は2~6個の炭素原子を有するアシル基であり、「b」が、0、1、又は2である、カルバシラトランと、
(D)アルコキシシラン又はその部分的に加水分解及び縮合した生成物であって、アルコキシシランが以下の一般式によって表され、
12 Si(OR13(4-c)
式中、R12が、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、R13が、1~3個の炭素原子を含有するアルキル基であり、「c」が、1又は2である、アルコキシシラン又はその部分的に加水分解及び縮合した生成物と、
(E)縮合反応触媒と、を含み、
成分(A)中のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、それぞれ、成分(B)の含有量が0.1~50質量部の量であり、
成分(C)の含有量が0.1~20質量部の量であり、成分(D)の含有量が0.5~30質量部の量であり、成分(E)の含有量が0.1~10質量部の量であり、
方法は以下の工程、
(I)成分(A)と(B)を混合する工程、次いで
(II)成分(C)を、上記工程(I)で得られた混合物と混合する工程、次いで
(III)成分(D)及び(E)を、水分を含まない条件下で、上記工程(II)で得られた混合物と混合する工程を含む。
【0010】
成分(A)中の充填剤は、典型的には、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、石英、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、又はそれらの混合物から選択される。
【0011】
成分(A)は、典型的には、オルガノポリシロキサンと熱伝導性の充填剤を、表面処理剤の存在下で、60~250℃の加熱下で混合することによって調製される。
【0012】
表面処理剤は、典型的には、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジビニルジシラザン、又はビニルトリメトキシシランである。
【0013】
成分(C)は、典型的には、以下の式によって表されるカルバシラトラン誘導体である。
【化2】
【0014】
工程Iは、典型的には、10~50℃で行われる。
【0015】
工程IIは、典型的には10~50℃で行われる。
【0016】
工程IIIは、典型的には10~50℃で行われる。
【0017】
発明の効果
本発明の方法によると、本方法によって得られる硬化性シリコーン組成物は、優れたチキソトロピック特性を有し、空気中の水分と接触することによって室温で硬化することができる。
【0018】
定義
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0019】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様について記載している、本明細書で依拠とされたいずれかのマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素とは無関係のそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けるものである。
【0020】
本発明の様々な実施形態の記載で依拠とされた任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていない場合であっても、説明し、想定することが理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、具体的な実施形態を十分に裏付けることができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けるものである。最終的に、開示した範囲内の個々の数が依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けるものである。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点を含む個々の数(又は分数)、例えば4.1を含み、これは、依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
硬化性シリコーン組成物を製造するための本発明の方法について詳細に説明する。
【0022】
本発明の方法によって得られる硬化性シリコーン組成物は、
(A)オルガノポリシロキサン及びヒュームドシリカ以外の充填剤を含むシリコーンベース材、
(B)疎水性ヒュームドシリカ、
(C)カルバシラトラン誘導体、
(D)アルコキシシラン又はその部分的に加水分解及び縮合した生成物、並びに
(E)縮合反応触媒を含む。
【0023】
成分(A)は、1分子中に少なくとも2つの以下の式によって表されるアルコキシシリル含有基を有するオルガノポリシロキサンである。
-R-(SiR O)-SiR -R-SiR (OR(3-a)
【0024】
式中、Rは1~6個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘプチル基が挙げられるが、経済効率及び耐熱性の観点からメチル基が好ましい。
【0025】
式中、Rは1~3個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、及びプロピル基が挙げられるが、組成物の硬化性の観点からメチル基が好ましい。
【0026】
式中、Rは2~6個の炭素原子を有する同じ又は異なるアルキレン基である。アルキレン基の例としては、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、及びヘプチレン基が挙げられるが、経済効率及び耐熱性の観点からエチレン基及びプロピレン基が好ましい。
【0027】
式中、「a」は0又は1であり、好ましくは0である。
【0028】
式中、「n」は、1~10の整数であり、好ましくは1である。
【0029】
アルコキシシリル含有基の例としては、以下の式によって表される基を挙げることができる。
-C-Si(CHO-Si(CH-C-Si(OCH
-C-Si(CHO-Si(CH-C-Si(OCH
-C-Si(CHO-Si(CH-C-SiCH(OCH
-C-Si(CHO-Si(CH-C-Si(OCH
-C-Si(CHO-Si(CH-C-Si(OCH
-C-Si(CHO-Si(CH-C12-Si(OCH
-C-[Si(CHO]-Si(CH-C-Si(OCH
【0030】
オルガノポリシロキサン中の上記のアルコキシシリル含有基以外のケイ素結合有機基は限定されないが、例としては脂肪族不飽和結合を含まない、1~12個の炭素原子を有する一価炭化水素基が挙げられる。一価炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、又は同様のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、又は同様のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、又は同様のアラルキル基;及び3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、又は同様のハロゲン化アルキル基によって例示されるが、経済効率及び耐熱性の観点から、メチル基が好ましい。
【0031】
オルガノポリシロキサンの分子構造は限定されないが、例として直鎖、部分的に分枝した直鎖、及び分枝鎖が挙げられる。オルガノポリシロキサンの25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、約100~約1,000,000mPa・sの範囲、あるいは約100~約100,000mPa・sの範囲、あるいは約100~約10,000mPa・sの範囲である。
【0032】
このようなオルガノポリシロキサンを合成する方法は、公知である。米国特許第4,687,829(A)号、同第4,711,928(A)号、同第4,772,675(A)号、同第4,871,827(A)号、同第4,888,404(A)号及び同第4,898,910(A)号は、オルガノポリシロキサンの調製を示すため参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
成分(A)中の充填剤は限定されないが、典型的には、酸化鉄、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、石英、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、又はそれらの混合物から選択される。
【0034】
成分(A)は、典型的には、オルガノポリシロキサンと充填剤を表面処理剤の存在下、60~250℃の加熱下、好ましくは100~200℃の加熱下で混合することによって調製される。
【0035】
表面処理剤は限定されないが、例としてオルガノジシラザン、アルケニル基含有アルコキシシラン、アルキル基含有アルコキシシラン、アルコキシ官能性オリゴシロキサン、環状ポリオルガノシロキサン、ヒドロキシル官能性オリゴシロキサン、オルガノクロロシラン、又はそれらの少なくとも2つの任意の組合せが挙げられる。オルガノジシラザンは、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジビニル-トリメチルジシラザン、又はそれらの任意の2つ以上の混合物であってもよい。アルケニル基含有アルコキシシランは、ビニルトリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、又はそれらの任意の2つ以上の混合物であってもよい。アルキル基含有アルコキシシランは、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、又はそれらの少なくとも2つの任意の組合せであってもよい。アルコキシ官能性オリゴシロキサンは、(CHO)Si[(OSi(CH]C17、(CHO)Si[(OSi(CH1017、(CHO)Si[(OSi(CH]C1225、(CHO)Si[(OSi(CH101225、又はそれらの少なくとも2つの任意の組合せであってもよい。ヒドロキシル官能性オリゴシロキサンは、ジメチルシロキサン又はメチルフェニルシロキサンであってもよい。オルガノクロロシランは、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、又はトリメチルクロロシランであってもよい。
【0036】
表面処理剤の量は、充填剤を調製するために十分な任意の量である。具体的な量は、選択される特定の処理剤及び処理する未処理の充填剤の表面積及び量などの要因に応じて変化し得る。処理に有効な量は、成分(A)の質量に基づいて、0.01質量%~20質量%、あるいは0.1質量%~15質量%、あるいは0.5質量%~5質量%の範囲であり得る。
【0037】
典型的には、方法の手順は、混合に適した装置で成分を接触させ混合することを含む。装置に特に制限はないが、例えば、比較的高流動性(低動的粘度)の組成物における撹拌バッチ釜、リボンブレンダ-、溶液ブレンダ-、コニーダー、ツインローターミキサー、バンバリー型ミキサー、又は押出機であり得る。方法は、押出機などの連続混練装置を使用することができ、例えば、押出機、二軸スクリュー押出機(例えば、Baker Perkinsのシグマブレードミキサー又は高剪断Turelloミキサー)などの押出機を用いて、比較的多量の粒子状物質を含有する組成物を調製することができる。組成物は、バッチ、半バッチ、半連続、連続プロセスで調製され得る。一般的な方法は公知であり、例えば、米国特許出願公開第2009/0291238号、同第2008/0300358号が公知である。
【0038】
成分(B)は、100~400m/g、好ましくは150~400m/g、あるいは200~400m/gのBET比表面積を有する疎水性ヒュームドシリカである。これは、ヒュームドシリカのBET比表面積が上の範囲内である場合に硬化性シリコーン組成物のチキソトロピック特性が改善されるためである。
【0039】
成分(B)の含有量は、成分(A)中のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、約0.1~約50質量部の量、好ましくは約0.5~約30質量部の量、あるいは約1~約20質量部の量、あるいは約1~約15質量部の量である。これは、成分(B)の含有量が上記範囲の下限以上である場合に硬化性シリコーン組成物のチキソトロピック特性が改善され、また、成分(B)の含有量が上記範囲の上限以下である場合に硬化性シリコーン組成物の取扱性が改善されるためである。
【0040】
成分(C)は、以下の一般式によって表されるカルバシラトラン誘導体である。
【化3】
【0041】
式中、Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、及びプロピル基が挙げられるが、経済効率及び耐熱性の観点からメチル基が好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。
【0042】
式中、Rは同じ又は異なって、水素原子、又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が挙げられるが、経済効率及び耐熱性の観点からメチル基が好ましい。
【0043】
式中、Rは同じ又は異なって、以下の一般式によって表される基から選択される。
-R-SiR (OR(3-b)
-R10-O-R11
【0044】
式中、Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。
【0045】
式中、Rは、1~3個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、及びプロピル基が挙げられる。
【0046】
式中、Rは、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基、又は4~12個の炭素原子を有するアルキレンオキシアルキレン基である。アルキレン基の例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、及びオクチレン基が挙げられるが、経済効率の観点からエチレン基及びプロピレン基が好ましい。アルキレンオキシアルキレン基の例としては、エチレンオキシエチレン基、プロピレンオキシエチレン基、ブチレンオキシプロピレン基、及びプロピレンオキシプロピレン基が挙げられるが、経済効率の観点からエチレンオキシプロピレン基及びプロピレンオキシプロピレン基が好ましい。
【0047】
式中、R10は、2~6個の炭素原子を有するアルキレン基である。アルキレン基の例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、及びオクチレン基が挙げられるが、経済効率の観点からエチレン基及びプロピレン基が好ましい。
【0048】
式中、R11は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、又は2~6個の炭素原子を有するアシル基である。アルキル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、及びヘキセニル基が挙げられるが、アリル基が好ましい。アシル基の例としては、アセチル基、プロピオニル基、アクリル基、メタクリル基、ブチリル基、イソブチリル基が挙げられるが、アセチル基が好ましい。
【0049】
式中、「b」は、0、1、又は2であり、好ましくは0又は1である。
【0050】
成分(C)のカルバシラトラン誘導体の例としては、以下の式によって表される化合物が挙げられる。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0051】
このようなカルバシラトラン誘導体の合成方法は公知である。日本の特許第3831481(B2)号及び米国特許第8,101,677(B2)号は、カルバシラトラン誘導体の調製を示すため参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
成分(C)の含有量は、成分(A)中のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、約0.1~約20質量部の量、好ましくは、約1~約20質量部の量、あるいは約1~約10質量部の量である。これは、成分(C)の含有量が上記範囲の下限以上である場合に硬化性シリコーン組成物のチキソトロピック特性が改善され、また、成分(C)の含有量が上記範囲の上限以下である場合に硬化性シリコーン組成物の保存安定性が改善されるためである。
【0053】
成分(D)は本組成物の架橋剤として機能し、アルコキシシラン、又はその部分的に加水分解及び縮合した生成物であり、アルコキシシランは以下の一般式によって表される。
12 Si(OR13(4-c)
【0054】
式中、R12は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。
【0055】
式中、R13は、1~3個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、及びプロピル基が挙げられる。
【0056】
式中、「c」は、0、1、又は2である。
【0057】
成分(D)の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びフェニルトリメトキシシランなどの三官能性アルコキシシラン、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランなどの四官能性アルコキシシラン、及び前述のものの部分的に加水分解及び縮合した生成物が挙げられる。単一のアルコキシシラン又はその部分的に加水分解及び縮合した生成物を使用してもよく、又は、2つ以上の混合物を使用してもよい。
【0058】
成分(D)の含有量は、成分(A)中のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、約0.5~約30質量部の量、好ましくは約0.5~約20質量部の量、あるいは約1~約15質量部の量、あるいは約5~約15質量部の量である。これは、成分(D)の含有量が上記範囲の下限以上である場合に、得られる組成物が十分な硬化性を示し、また、水分のない条件下での得られる組成物の保存寿命が延長され、成分(D)の含有量が上記範囲の上限以下である場合に、得られる組成物が大気中の水分によって急速に硬化するためである。
【0059】
成分(E)は、本組成物における架橋を促進する縮合反応触媒である。成分(E)の例としては、ジメチルスズジネオデカノエート及びオクタン酸第一スズなどのスズ化合物、並びにテトラ(イソプロポキシ)チタン、テトラ(n-ブトキシ)チタン、テトラ(t-ブトキシ)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ(イソプロポキシ)ビス(メチルアセトアセテート)チタン、及びジ(イソプロポキシ)ビス(アセチルアセトナート)チタンなどのチタン化合物を挙げることができる。
【0060】
成分(E)の含有量は、成分(A)中のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、約0.1~約10質量部の量、あるいは約0.5~約10質量部の量、あるいは約0.5~約5質量部の量である。これは、成分(E)の含有量が上記範囲の下限以上である場合に、得られる組成物が大気中の水分の効果で十分な硬化性を示し、また、成分(E)の含有量が上記範囲の上限以下である場合に、水分のない条件下での得られる組成物の保存寿命が延長されるためである。
【0061】
本発明の目的が損なわれない限り、硬化性シリコーン組成物は、他の任意選択の成分、例えば、炭酸カルシウム粉末、珪藻土粉末、炭酸亜鉛粉末などの非補強充填剤、難燃剤、熱安定剤、可塑剤、及びチタン酸化物、カーボンブラックなどの顔料を含有することができる。
【0062】
本発明の方法は、以下の
(I)成分(A)と(B)を混合する工程、
(II)成分(C)を、上記工程(I)で得られた混合物と混合する工程、次いで、
(III)成分(D)及び(E)を、水分を含まない条件下で、上記工程(II)で得られた混合物と混合する工程を含む。
【0063】
工程Iは、典型的には、約10~約50℃、あるいは約20~約35℃で行われる。
【0064】
次いで、工程IIは、好ましくは工程Iの直後に、典型的には、約10~約50℃、あるいは約20~約35℃で行われる。
【0065】
次いで、工程IIIは、典型的には、10~50℃、あるいは約20~約35℃で行われる。
【0066】
典型的には、方法の手順は、混合に適した装置で成分を接触させ混合することを含む。装置に特に制限はないが、例えば、比較的高流動性(低動的粘度)の組成物における撹拌バッチ釜、リボンブレンダ-、溶液ブレンダ-、コニーダー、ツインローターミキサー、バンバリー型ミキサー、又は押出機であり得る。方法は、押出機などの連続混練装置を使用することができ、例えば、押出機、二軸スクリュー押出機(例えば、Baker Perkinsのシグマブレードミキサー又は高剪断Turelloミキサー)などの押出機を用いて、比較的多量の粒子状物質を含有する組成物を調製することができる。組成物は、バッチ、半バッチ、半連続、連続プロセスで調製され得る。
【0067】
調製後に、組成物はすぐに使用することができ、又は、使用する前に、任意の実用的な期間、例えば、1時間以上、あるいは1日以上、あるいは1週間以上、あるいは30日以上、あるいは300日以上、あるいは2年以上保存することができる。組成物は、硬化のトリガー(例えば、トリガー剤、例えば、水又は低級アルコール)又はトリガーとなる条件(例えば、水放出剤を有するか、又はない条件下での熱)に組成物が暴露されないように保護する容器内に保存することができる。保存は、好適な温度下(例えば、40℃以下、例えば、25℃)、及び不活性ガス雰囲気下(例えば、N又はArガス)、又はその両方)である。
【0068】
次いで、必要なときに、硬化のトリガーに暴露することによって組成物の硬化(縮合反応を介する)を開始させて硬化物を得ることができる。例えば、組成物を、有効量のトリガー剤(例えば、適切な量の水、メタノール、又はエタノール)、トリガーとなる有効な条件(例えば、熱)、又はその両方と接触させて、成分(E)の縮合触媒によって触媒される縮合反応を開始させることにより、硬化物を調製することができる。環境湿度への暴露は、トリガー量の水を提供することができる。組成物のタックフリーな表面への硬化は、25℃で、2時間未満、あるいは1時間未満、あるいは20分未満、あるいは10分未満、あるいは5分未満で生じる。所望の場合、硬化は、より高い又はより低い温度で、より短い又はより長い時間にわたって行われてもよい。硬化すると、生じた硬化物は、ガム、ゲル、ゴム、又は樹脂を形成し得る。
【0069】
組成物及び硬化物は、接着剤、あるいはコーティング、あるいは充填剤、あるいはシーラントとして有用である。組成物及び硬化物は、製品の基材上又は基材中に容易に組み込まれ得る。基材は、木材、ビニール製品、グラスファイバー、アルミニウム、又はガラスであり得る。製品は、建築部材(例えば、窓又はドアアセンブリ)、自動車部品、又は電子部品であり得る。基材の空洞を本組成物で充填することにより、又は、はけ塗り、カレンダリング、ディッピング、塗り伸ばし、(共)押出し、ローリング、スプレー、又はワイピングなどの任意の好適な手段で本組成物を基材の少なくとも外側又は内側表面部分に適用して、本組成物がその中又はその上に適用された物品を得ることによって、物品を製造することができる。所望の場合には、適用された組成物は、次に、硬化物を有する製品を作製するために、基材の中又は上で硬化されてもよい。
【実施例
【0070】
硬化性シリコーン組成物を製造するための本発明の方法について、実施例及び比較例を用いて以下に詳細に説明する。しかし、本発明は、以下に列挙する実施例の説明により限定されるものではない。粘度を25℃で測定した。
【0071】
組成物のスランプは、ASTM D2202に従って、以下のように評価した。
クリーンなフロージグを、プランジャーがその移動限界(3/8インチ)に押し下げられた状態で平坦なレベルの表面に向けて置く。空洞を試料で満たす。中心から始めてジグの片側に移動するブレードを2回通過させて表面を水平にする。ローディングの操作は、0.5分以内に、かつ試料の最小の作業量で完了することとする。すぐにジグを垂直の位置にセットし、プランジャーをその順方向の移動限界に前進させて、タイマを開始する。ジグを3時間静置する。試料は、ジグの面を下に流れている。目盛りを使用して最も遠い前進点を記録する。結果を10分の1インチ刻みで記録する。
【0072】
以下の成分を使用して、実施例及び比較例の硬化性シリコーン組成物を調製した。
成分(a-1):約500mPa×sの粘度、及び分子鎖の両末端のケイ素原子上に以下の式によって表されるトリメトキシシリルエチル含有基を有するジメチルポリシロキサン:
-C-Si(CHOSi(CH-C-Si(OCH
成分(a-2):約12,000mPa×sの粘度、及び分子鎖の両末端のケイ素原子上に以下の式によって表されるトリメトキシシリルエチル含有基を有するジメチルポリシロキサン:
-C-Si(CHOSi(CH-C-Si(OCH
成分(a-3):平均粒径が約2μmの水酸化アルミニウム粉末。
成分(a-4):平均粒径が約15μmの水酸化アルミニウム粉末。
成分(a-5):平均粒径が約4.3μmのシリカ石英粉末。
成分(a-6):平均粒径が約0.24μmのヒュームド二酸化チタン粉末。
成分(a-7):ビニルトリメトキシシラン。
成分(b-1):約200m/gのBET法による比表面積を有し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性ヒュームドシリカ粉末。
成分(b-2):約200m/gのBET法による比表面積を有し、ジメチルジクロロシランで表面処理された疎水性ヒュームドシリカ粉末。
成分(b-3):約200m/gのBET法による比表面積を有する親水性ヒュームドシリカ粉末。
成分(c-1):以下の式によって表されるカルバシラトラン誘導体。
【化8】
成分(c-2):3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
成分(d-1):メチルトリメトキシシラン。
成分(d-2):ジメチルジメトキシシラン。
成分(e-1):ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン。
【0073】
参考例1 (シリコーンベース材(1)の調製)
シリコーンベース材(1)は、63.7質量部の成分(a-1)、36.3質量部の成分(a-2)、138.0質量部の成分(a-3)、72.4質量部の成分(a-4)、19.2質量部の成分(a-5)、5.4質量部の成分(a-6)、4.3質量部の成分(a-7)を均一にブレンドされるまで25℃でTurelloタイプの高剪断ミキサーで高剪断混合し、次いで-0.01~-0.1Mpaの真空下、120℃~200℃の温度でブレンドを加熱して、30分~3時間、揮発性物質をストリッピングし、残留材料を25℃に冷却して調製した。
【0074】
実施例1
参考例1で得られたシリコーンベース材(1)を、シリコーンベース材(1)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部あたり9.1質量部の量で、成分(b-1)と均一にブレンドされるまで25℃で混合して、混合物(1)を得た。混合物(1)はわずかな流動性を有し、スランプは16mmであった。
【0075】
次いで、混合物(1)を、混合物(1)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部あたり1.8質量部の量で、成分(c-1)と均一にブレンドされるまで25℃で混合して、混合物(2)を得た。混合物(2)は非流動性であり、スランプは0mmであった。
【0076】
次いで、混合物(2)を、混合物(2)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部に対して、それぞれ5.8質量部、4.0質量部、及び4.0質量部の量で成分(d-1)、(d-2)及び(e-1)と均一にブレンドされるまで25℃、無水雰囲気下で混合して、硬化性シリコーン組成物を得た。硬化性シリコーン組成物は、非流動性であり、スランプは3mmであった。
【0077】
実施例2
実施例1で得られた混合物(1)を、混合物(1)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部あたり18質量部の量で成分(c-1)と均一にブレンドされるまで25℃で混合して、混合物(3)を得た。混合物(3)は非流動性であり、スランプは0mmであった。
【0078】
次いで、混合物(3)を、混合物(3)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部に対して、それぞれ5.8質量部、4.0質量部、及び4.0質量部の量で成分(d-1)、(d-2)及び(e-1)と均一にブレンドされるまで25℃、無水雰囲気下で混合して、硬化性シリコーン組成物を得た。硬化性シリコーン組成物は、非流動性であり、スランプは4mmであった。
【0079】
実施例3
参考例1で得られたシリコーンベース材(1)を、シリコーンベース材(1)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部あたり9.1質量部の量で、成分(b-2)と均一にブレンドされるまで25℃で混合して、混合物(4)を得た。混合物(4)は非流動性であり、スランプは0.5mmであった。
【0080】
次いで、混合物(4)を、混合物(1)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部あたり1.8質量部の量で、成分(c-1)と均一にブレンドされるまで25℃で混合して、混合物(5)を得た。混合物(5)は非流動性であり、スランプは0mmであった。
【0081】
次いで、混合物(5)を、混合物(5)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部に対して、それぞれ5.8質量部、4.0質量部、及び4.0質量部の量で成分(d-1)、(d-2)及び(e-1)と均一にブレンドされるまで25℃、無水雰囲気下で混合して、硬化性シリコーン組成物を得た。硬化性シリコーン組成物はわずかな流動性を有し、スランプは16mmであった。
【0082】
比較例1
実施例1で得られた混合物(1)を、混合物(1)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部に対して、それぞれ5.8質量部、4.0質量部、及び4.0質量部の量で、成分(d-1)、(d-2)及び(e-1)と均一にブレンドされるまで25℃、無水雰囲気下で混合して、硬化性シリコーン組成物を得た。硬化性シリコーン組成物は流動性を有し、スランプは46mmであった。
【0083】
比較例2
参考例1で得られたシリコーンベース材(1)を、シリコーンベース材(1)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部あたり9.1質量部の量で、成分(b-3)と均一にブレンドされるまで25℃で混合して、混合物(6)を得た。混合物(6)はわずかな流動性を有し、スランプは9mmであった。
【0084】
次いで、混合物(6)を、混合物(6)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部あたり1.8質量部の量で、成分(c-1)と均一にブレンドされるまで25℃で混合して、混合物(7)を得た。混合物(7)は流動性を有し、スランプは100mm超であった。
【0085】
次いで、混合物(7)を、混合物(7)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部に対して、それぞれ5.8質量部、4.0質量部、及び4.0質量部の量で成分(d-1)、(d-2)及び(e-1)と均一にブレンドされるまで25℃、無水雰囲気下で混合して、硬化性シリコーン組成物を得た。硬化性シリコーン組成物は流動性を有し、スランプは100mm超であった。
【0086】
比較例3
実施例1で得られた混合物(1)を、混合物(1)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部あたり1.8質量部の量で、成分(c-2)と均一にブレンドされるまで25℃で混合して、混合物(8)を得た。混合物(8)はわずかな流動性を有し、スランプは38mmであった。
【0087】
次いで、混合物(8)を、混合物(8)中の成分(a-1)と(a-2)100質量部に対して、それぞれ5.8質量部、4.0質量部、及び4.0質量部の量で成分(d-1)、(d-2)及び(e-1)と均一にブレンドされるまで25℃、無水雰囲気下で混合して、硬化性シリコーン組成物を得た。硬化性シリコーン組成物は流動性を有し、スランプは57mmであった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の方法によると、本方法によって得られるチキソトロピック性の硬化性シリコーン組成物は、優れたチキソトロピック特性を有し、空気中の水分と接触することによって室温で硬化することができる。したがって、硬化性シリコーン組成物は、電気/電子装置のシーラント、接着剤、又はコーティングに有用である。
【国際調査報告】