(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-05
(54)【発明の名称】熱機械アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220928BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G03F7/20 521
H01L21/68 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021576571
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(85)【翻訳文提出日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2020068432
(87)【国際公開番号】W WO2021018499
(87)【国際公開日】2021-02-04
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,バス
(72)【発明者】
【氏名】ボス,コエン,マーティン,ウィレム,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フェルメーレン,ヨハネス,ペトラス,マルチヌス,ベルナルドス
【テーマコード(参考)】
2H197
5F131
【Fターム(参考)】
2H197CD02
2H197CD03
2H197CD05
2H197CD06
2H197CD07
2H197CD12
2H197CD41
2H197CD42
2H197CD43
2H197CD48
2H197DB18
2H197DC03
2H197FB02
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197HA10
2H197JA02
2H197JA09
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA12
5F131BA11
5F131CA02
5F131EA22
5F131KA12
5F131KB02
5F131KB42
(57)【要約】
少なくとも1つのピエゾ素子(120)を備えるピエゾモジュール(110)を備えた熱機械アクチュエータ(100)であって、熱機械アクチュエータが、ピエゾモジュールの熱挙動を制御するための熱作動信号(132)を受信する、又はピエゾモジュールの熱状態を表す熱感知信号(132)を供給するように構成され、熱機械アクチュエータが、ピエゾモジュールの機械的挙動を制御するための機械的作動信号(134)を受信する、又はピエゾモジュールの機械的状態を表す機械的感知信号(134)を供給するように構成された熱機械アクチュエータ(100)が開示される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのピエゾ素子を備えるピエゾモジュールを備えた熱機械アクチュエータであって、前記熱機械アクチュエータが、
前記ピエゾモジュールの熱挙動を制御するための熱作動信号を受信する、又は
前記ピエゾモジュールの熱状態を表す熱感知信号を供給するように構成され、
前記熱機械アクチュエータが、
前記ピエゾモジュールの機械的挙動を制御するための機械的作動信号を受信する、又は
前記ピエゾモジュールの機械的状態を表す機械的感知信号を供給するように構成された、熱機械アクチュエータ。
【請求項2】
前記熱作動信号が前記ピエゾモジュール内に熱流束を生成するように構成され、前記機械的作動信号が前記ピエゾモジュールを変形させるように構成された、請求項1に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項3】
前記熱作動信号が、前記ピエゾモジュールの第1のピエゾ素子内に熱流束を生成するように構成され、前記機械的作動信号が、前記ピエゾモジュールの第2のピエゾ素子を変形させるように構成された、請求項2に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項4】
前記熱作動信号が、前記ピエゾモジュールの第1のピエゾ素子内に熱流束を生成するように構成され、前記機械的作動信号が、前記ピエゾモジュールの前記第1のピエゾ素子を変形させるように構成された、請求項2に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項5】
前記ピエゾモジュールを制御するための制御ユニットを更に備えた、請求項1から4のいずれかに記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項6】
前記制御ユニットが、前記熱作動信号及び前記機械的作動信号を前記ピエゾモジュールに供給するように構成された、請求項5に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項7】
前記制御ユニットが、前記熱感知信号及び前記機械的感知信号を前記ピエゾモジュールから受信するように構成された、請求項5に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項8】
前記制御ユニットが、前記熱作動信号及び前記機械的作動信号を前記ピエゾモジュールに交互に供給するように構成された、請求項6に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項9】
前記制御ユニットが、前記熱作動信号及び前記機械的作動信号を前記ピエゾモジュールに同時に供給するように構成された、請求項6に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項10】
前記制御ユニットが、前記熱感知信号の前記ピエゾモジュールからの受信及び前記熱作動信号の前記ピエゾモジュールへの供給を交互に行うように構成された、請求項5に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項11】
前記制御ユニットが、前記熱感知信号を前記ピエゾモジュールの第1のピエゾ素子から受信し、前記熱作動信号を前記ピエゾモジュールの第2のピエゾ素子に供給するように構成された、請求項5に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項12】
前記ピエゾモジュールが、前記熱作動信号もしくは前記機械的作動信号のいずれか一方、又は両方により制御されるように構成された複数のピエゾ素子を備えた、請求項1から11のいずれかに記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項13】
前記複数のピエゾ素子が実質的に平面状のアレイに配置された、請求項12に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項14】
前記ピエゾモジュールから熱を除去する、及び/又は前記ピエゾモジュールに熱を供給するように構成されたヒートシンクを更に備えた、請求項1から13のいずれかに記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の1つ以上の熱機械アクチュエータを備えた光学素子。
【請求項16】
前記熱機械アクチュエータが、前記光学素子の表面を変形させ、前記光学素子の温度を制御するように構成された、請求項15に記載の光学素子。
【請求項17】
オブジェクトを支持するための支持面を備え、請求項1から16のいずれかに記載の熱機械アクチュエータを更に備えたオブジェクトテーブル。
【請求項18】
前記熱機械アクチュエータが前記支持面を変形させるように構成された、請求項17に記載のオブジェクトテーブル。
【請求項19】
前記熱機械アクチュエータが、端面が前記支持面を構成する複数のピエゾ素子を備えた、請求項18に記載のオブジェクトテーブル。
【請求項20】
前記支持面にオブジェクトをクランプするためのクランプ機構を更に備えた、請求項17から19のいずれかに記載のオブジェクトテーブル。
【請求項21】
前記クランプ機構が静電クランプ又は真空クランプを含む、請求項20に記載のオブジェクトテーブル。
【請求項22】
請求項17から21のいずれかに記載のオブジェクトテーブル、及び
前記オブジェクトテーブルを位置決めするための位置決めデバイス、を備えたステージ装置。
【請求項23】
請求項22に記載のステージ装置を備えたリソグラフィ装置。
【請求項24】
リソグラフィ装置用のコンポーネント、及び
請求項1から14のいずれかに記載の熱機械アクチュエータを備え、
前記熱機械アクチュエータが、前記コンポーネントの熱挙動及び機械的挙動を制御するように構成された、アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2019年7月29日に出願された欧州出願19188866.8の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、熱機械アクチュエータ、並びにリソグラフィ装置用のコンポーネント及び熱機械アクチュエータを備えるアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と称されることも多い)を、基板(例えばウェーハ)上に提供された放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] 半導体製造プロセスが進み続けるにつれ、回路素子の寸法は継続的に縮小されてきたが、その一方で、デバイス毎のトランジスタなどの機能素子の量は、「ムーアの法則」と通称される傾向に従って、数十年にわたり着実に増加している。ムーアの法則に対応するために、半導体産業はますます小さなフィーチャを作り出すことを可能にする技術を追求している。基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、基板上にパターニングされるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm、及び13.5nmである。4nmから20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する、極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置を使用して、例えば193nmの波長を伴う放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さなフィーチャを、基板上に形成することができる。
【0005】
[0005] 高まり続ける回路素子の寸法の縮小要求に対応するために、パターニングプロセスのより精密な制御が望まれることがあったり、必要とされる。特に、パターニングプロセス中の基板の位置をより良く制御することや、パターニングプロセス中の基板の温度をより良く制御することが望まれることがある。同様に、基板上に投影されるパターン形成された放射ビームを発生させるのに使用される光学素子の形状や位置や温度をより良く制御することが望まれることがある。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本発明の目的は、リソグラフィ装置のコンポーネントやリソグラフィ装置で使用されるコンポーネントなどのコンポーネントの制御、具体的には熱及び機械制御の改善を可能にすることである。
【0007】
[0007] 本発明のある態様によれば、少なくとも1つのピエゾ素子を備えるピエゾモジュールを備えた熱機械アクチュエータであって、熱機械アクチュエータが、
ピエゾモジュールの熱挙動を制御するための熱作動信号を受信する、又は
ピエゾモジュールの熱状態を表す熱感知信号を供給するように構成され、
熱機械アクチュエータが、
ピエゾモジュールの機械的挙動を制御するための機械的作動信号を受信する、又は
ピエゾモジュールの機械的状態を表す機械的感知信号を供給するように構成された、熱機械アクチュエータが提供される。
【0008】
[0008] 本発明の別の態様によれば、
リソグラフィ装置用のコンポーネント、及び
本発明に係る熱機械アクチュエータを備え、
熱機械アクチュエータが、コンポーネントの熱挙動及び機械的挙動を制御するように構成された、アセンブリが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
[0009] 本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0010】
【
図2】
図1のリソグラフィ装置の一部の詳細図である。
【
図4】本発明に係る熱機械アクチュエータの様々な実施形態を示す。
【
図5】本発明に係る熱機械アクチュエータの様々な実施形態を示す。
【
図6】本発明に係る熱機械アクチュエータの様々な実施形態を示す。
【
図7】本発明に係る熱機械アクチュエータの様々な実施形態を示す。
【
図8】本発明に係る熱機械アクチュエータに適用され得るピエゾ素子の様々な実施形態を示す。
【
図9】本発明に係る熱機械アクチュエータに適用され得るピエゾ素子の様々な実施形態を示す。
【
図10】本発明に係る熱機械アクチュエータに適用され得るピエゾ素子の様々な実施形態を示す。
【
図11】本発明に係るアセンブリの実施形態を示す。
【
図12】本発明に係るアセンブリの実施形態を示す。
【
図13】本発明に係るアクチュエータの動作サイクルを示す。
【
図14】本発明に係るアクチュエータの露光シーケンス中の動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本文書では、「放射」及び「ビーム」という用語は、特に明記しない限り、紫外線(例えば、波長が365、248、193、157又は126nmの波長)及びEUV(極端紫外線放射、例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する)を含む、すべてのタイプの電磁放射を包含するために使用される。
【0012】
「レチクル」、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターン付き断面を与えるため使用できる汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈され得る。また、この文脈において「ライトバルブ」という用語も使用できる。古典的なマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)以外に、他のそのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイを含む。
【0013】
[00010]
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射、又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに連結されたマスクサポート(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構築された第2のポジショナPWに連結された基板サポート(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0014】
[00011] 動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して放射源SOから放射ビームを受ける。照明システムILは、放射を誘導し、整形し、及び/又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、及び/又はその他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使用して放射ビームBを調節し、パターニングデバイスMAの平面において、その断面にわたって所望の空間及び角度強度分布が得られるようにしてもよい。
【0015】
[00012] 本明細書で用いられる「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、及び/又は液浸液の使用や真空の使用のような他のファクタに合わせて適宜、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム、及び/又は静電気光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈するべきである。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用される場合、これは更に一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0016】
[00013] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を例えば水のような比較的高い屈折率を有する液体で覆うことができるタイプでもよい。これは液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技法に関する更なる情報は、参照により本願に含まれる米国特許第6952253号に与えられている。
【0017】
[00014] リソグラフィ装置LAは、2つ以上の基板サポートWTを有するタイプである場合もある(「デュアルステージ」という名前も付いている)。このような「マルチステージ」機械においては、基板サポートWTを並行して使用するか、及び/又は、一方の基板サポートWT上の基板Wにパターンを露光するためこの基板を用いている間に、他方の基板サポートWT上に配置された基板Wに対して基板Wの以降の露光の準備ステップを実行することができる。
【0018】
[00015] 基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージを含むことができる。測定ステージは、センサ及び/又は洗浄デバイスを保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性又は放射ビームBの特性を測定するよう配置できる。測定ステージは複数のセンサを保持することができる。洗浄デバイスは、例えば投影システムPSの一部又は液浸液を提供するシステムの一部のような、リソグラフィ装置の一部を洗浄するよう配置できる。基板サポートWTが投影システムPSから離れている場合、測定ステージは投影システムPSの下方で移動することができる。
【0019】
[00016] 動作中、放射ビームBは、マスクサポートMT上に保持されている、例えばマスクのようなパターニングデバイスMAに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(設計レイアウト)によってパターンが付与される。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに集束させる。第2のポジショナPW及び位置測定システムIFを用いて、例えば、放射ビームBの経路内の集束し位置合わせした位置に様々なターゲット部分Cを位置決めするように、基板サポートWTを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPMと、場合によっては別の位置センサ(
図1には明示的に図示されていない)を用いて、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いて位置合わせすることができる。図示されている基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占有するが、それらをターゲット部分間の空間に位置付けることも可能である。基板アライメントマークP1、P2は、これらがターゲット部分C間に位置付けられている場合、スクライブラインアライメントマークとして知られている。
【0020】
[00017] 本発明を明確にするため、デカルト座標系が用いられる。デカルト座標系は3つの軸、すなわちx軸、y軸、及びz軸を有する。3つの軸の各々は他の2つの軸に対して直交している。x軸を中心とした回転をRx回転と称する。y軸を中心とした回転をRy回転と称する。z軸を中心とした回転をRz回転と称する。x軸及びy軸は水平面を画定し、z軸は垂直方向を画定する。デカルト座標系は本発明を限定せず、単に明確さのため使用される。代わりに、円筒座標系のような別の座標系を用いて本発明を明確にすることも可能である。デカルト座標系の配向は、例えばz軸が水平面に沿った成分を有するように、異なるものとしてもよい。
【0021】
[00018]
図2は、
図1のリソグラフィ装置LAの一部のより詳細な図である。リソグラフィ装置LAは、ベースフレームBF、バランスマスBM、メトロロジフレームMF及び振動絶縁システムISを備えることがある。メトロロジフレームMFは投影システムPSを支持する。また、メトロロジフレームMFは、位置測定システムPMSの一部を支持することがある。メトロロジフレームMFは、振動絶縁システムISを介してベースフレームBFによって支持される。振動絶縁システムISは、振動がベースフレームBFからメトロロジフレームMFに伝搬するのを防止又は低減するように配置されている。
【0022】
[00019] 第2のポジショナPWは、基板サポートWTとバランスマスBMとの間に駆動力を提供することによって基板サポートWTを加速するように配置されている。駆動力は、基板サポートWTを所望の方向に加速させる。運動量が保存されるため、駆動力はバランスマスBMにも等しい大きさで加わるが、所望の方向とは反対の方向になる。典型的には、バランスマスBMの質量は、第2のポジショナPW及び基板サポートWTの可動部の質量よりも著しく大きい。
【0023】
[00020] ある実施形態では、第2のポジショナPWはバランスマスBMによって支持されている。例えば、第2のポジショナPWは、バランスマスBMより上に基板サポートWTを浮遊させるための平面モータを含む。別の実施形態では、第2のポジショナPWは、ベースフレームBFによって支持されている。例えば、第2のポジショナPWはリニアモータを含み、第2のポジショナPWは、ベースフレームBFより上に基板サポートWTを浮揚させる、ガスベアリングのようなベアリングを含む。
【0024】
[00021] 位置測定システムPMSは、基板サポートWTの位置を決定するのに適した任意のタイプのセンサを含むことがある。位置測定システムPMSは、マスクサポートMTの位置を決定するのに適した任意のタイプのセンサを含むことがある。センサは、干渉計又はエンコーダなどの光センサである場合がある。位置測定システムPMSは、干渉計とエンコーダとの複合システムを含むことがある。センサは、磁気センサ、静電容量センサ又は誘導センサなどの別のタイプのセンサである場合がある。位置測定システムPMSは、基準、例えば、メトロロジフレームMF又は投影システムPSに対する位置を決定することがある。位置測定システムPMSは、位置を測定することによって、又は速度もしくは加速度などの位置の時間導関数を測定することによって、基板テーブルWT及び/又はマスクサポートMTの位置を決定することがある。
【0025】
[00022] 位置測定システムPMSはエンコーダシステムを含むことがある。エンコーダシステムとしては、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、2006年9月7日に出願された米国特許出願公開第US2007/0058173A1号が知られている。エンコーダシステムは、エンコーダヘッド、格子及びセンサを含む。エンコーダシステムは、一次放射ビーム及び二次放射ビームを受けることがある。一次放射ビームも二次放射ビームも同じ放射ビーム、すなわち原放射ビームから発生する。一次放射ビーム及び二次放射ビームの少なくとも一方は、原放射ビームを格子で回折することによって生成される。一次放射ビームも二次放射ビームも原放射ビームを格子で回折することによって生成される場合、一次放射ビームは二次放射ビームとは異なる回折次数を有する必要がある。異なる回折次数は、例えば、+1次、-1次、+2次及び-2次である。エンコーダシステムは、一次放射ビームと二次放射ビームを光学的に結合して、結合放射ビームにする。エンコーダヘッドのセンサが、結合放射ビームの位相又は位相差を決定する。センサは、位相又は位相差に基づいて信号を発生させる。信号は、格子に対するエンコーダヘッドの位置を表している。エンコーダヘッド及び格子のうちの一方は、基板構造WT上に配置されることがある。エンコーダヘッド及び格子のうちの他方は、メトロロジフレームMF又はベースフレームBF上に配置されることがある。例えば、複数のエンコーダヘッドがメトロロジフレームMF上に配置されるのに対して、格子が基板サポートWTの上面に配置される。別の例では、格子が基板サポートWTの底面に配置され、エンコーダヘッドが基板サポートWTの下方に配置される。
【0026】
[00023] 位置測定システムPMSは干渉計システムを含むことがある。干渉計システムとしては、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、1998年7月13日に出願された米国特許第US6,020,964号が知られている。干渉計システムは、ビームスプリッタ、ミラー、基準ミラー及びセンサを含むことがある。放射ビームがビームスプリッタによって基準ビームと測定ビームとに分割される。測定ビームはミラーに伝搬し、ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻る。基準ビームは基準ミラーに伝搬し、基準ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻る。ビームスプリッタでは、測定ビーム及び基準ビームが結合されて結合放射ビームになる。結合放射ビームはセンサに入射する。センサは、結合放射ビームの位相又は周波数を決定する。センサは、位相又は周波数に基づいて信号を発生させる。信号はミラーの変位を表している。ある実施形態では、ミラーは、基板サポートWTに接続されている。基準ミラーはメトロロジフレームMFに接続されることがある。ある実施形態では、測定ビーム及び基準ビームは、ビームスプリッタの代わりに追加の光学コンポーネントによって結合されて結合放射ビームになる。
【0027】
[00024] 第1のポジショナPMは、ロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを含むことがある。ショートストロークモジュールは、ロングストロークモジュールに対してマスクサポートMTを小さな移動範囲にわたって高精度で移動させるように配置されている。ロングストロークモジュールは、投影システムPSに対してショートストロークモジュールを大きな移動範囲にわたって比較的低精度で移動させるように配置されている。ロングストロークモジュールとショートストロークモジュールとの組み合わせにより、第1のポジショナPMは、大きな移動範囲にわたって高精度で投影システムPSに対してマスクサポートMTを移動させることができる。同様に、第2のポジショナPWは、ロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを含むことがある。ショートストロークモジュールは、ロングストロークモジュールに対して基板サポートWTを小さな移動範囲にわたって高精度で移動させるように配置されている。ロングストロークモジュールは、投影システムPSに対してショートストロークモジュールを大きな移動範囲にわたって比較的低精度で移動させるように配置されている。ロングストロークモジュールとショートストロークモジュールとの組み合わせにより、第2のポジショナPWは、大きな移動範囲にわたって高精度で投影システムPSに対して基板サポートWTを移動させることができる。
【0028】
[00025] 第1のポジショナPM及び第2のポジショナPWはそれぞれ、マスクサポートMT及び基板サポートWTをそれぞれ移動させるためのアクチュエータを備えている。アクチュエータは、単一の軸、例えば、y軸に沿って駆動力を提供するためのリニアアクチュエータである場合がある。複数のリニアアクチュエータを適用して、複数の軸に沿って駆動力を提供することがある。アクチュエータは、複数の軸に沿って駆動力を提供するための平面アクチュエータである場合がある。例えば、平面アクチュエータは、基板サポートWTを6自由度で移動させるように配置されることがある。アクチュエータは、少なくとも1つのコイル及び少なくとも1つの磁石を含む電磁アクチュエータである場合がある。アクチュエータは、少なくとも1つのコイルに電流を印加することによって、少なくとも1つの磁石に対して少なくとも1つのコイルを移動させるように配置されている。アクチュエータは、可動磁石型アクチュエータである場合があり、これはそれぞれ基板サポートWT及びマスクサポートMTに結合された少なくとも1つの磁石を有する。アクチュエータは、それぞれ基板サポートWT及びマスクサポートMTに結合された少なくとも1つのコイルを有する可動コイル型アクチュエータである場合がある。アクチュエータは、ボイスコイルアクチュエータ、リラクタンスアクチュエータ、ローレンツアクチュエータもしくはピエゾアクチュエータ、又は他の任意の適切なアクチュエータである場合がある。
【0029】
[00026] リソグラフィ装置LAは、
図3に概略的に示されるような位置制御システムPCSを含む。位置制御システムPCSは、セットポイントジェネレータSP、フィードフォワードコントローラFF及びフィードバックコントローラFBを含む。位置制御システムPCSは、アクチュエータACTに駆動信号を供給する。アクチュエータACTは、第1のポジショナPM又は第2のポジショナPWのアクチュエータである場合がある。アクチュエータACTはプラントPを駆動し、プラントPは、基板サポートWT又はマスクサポートMTを含むことがある。プラントPの出力は、位置、速度、加速度などの位置量である。位置量は、位置測定システムPMSで測定される。位置測定システムPMSは、プラントPの位置量を表す位置信号である信号を発生させる。セットポイントジェネレータSPは、プラントPの所望の位置量を表す基準信号である信号を発生させる。基準信号は、例えば基板サポートWTの所望の軌道を表す。基準信号と位置信号との差がフィードバックコントローラFBの入力を形成する。入力に基づいて、フィードバックコントローラFBは、アクチュエータACTに駆動信号の少なくとも一部を供給する。基準信号は、フィードフォワードコントローラFFの入力を形成することがある。入力に基づいて、フィードフォワードコントローラFFは、アクチュエータACTに駆動信号の少なくとも一部を供給する。フィードフォワードFFは、質量、剛性、共振モード及び固有周波数などの、プラントPの動的特性に関する情報を利用することがある。
【0030】
[00027] パターニングプロセスや露光プロセスを正確に実行するために、パターン形成された放射ビームが、例えば先にパターン形成された層を含む基板に対して正確に位置決めされることが必要である。半導体デバイス又は回路の適切な動作を保証するために、パターン形成された放射ビームと先にパターン形成された層との正確なアライメントが必要とされる。このような正確なアライメントには、例えば、基板を基板の主面に実質的に平行なxy平面において正確に位置決めすることが必要である場合がある。本発明の趣旨の範囲内において、x軸及びy軸が、基板の表面に実質的に平行な2つの実質的に垂直な軸として定義される。通常、x軸及びy軸は、実質的に水平なxy平面を画定する。更に、基板を合焦状態に保つために、パターン形成された放射ビーム、具体的にはパターン形成された放射ビームの焦点面と基板の表面とのz方向のアライメントも正確でなければならないことを指摘することができる。
【0031】
また、パターン形成された放射ビームのパターンと基板との正確なアライメントを実現するために、基板、具体的にはパターン形成されているエリアの温度の正確な制御が必要であることを指摘することができる。
【0032】
更に、リソグラフィ装置のパターン形成された放射ビームの発生に関与するコンポーネントに同様の配慮が適用されることを指摘することができる。具体的には、所望のパターン形成された放射ビームを発生させるために、照明システム及び投影システムのコンポーネントの位置、形状及び温度を正確に制御することも必要である。
【0033】
[00028] 基板をパターン形成された放射ビームに対して位置決めするために、上記のような位置決めデバイスを適用することができる。更に、例えば基板、又はミラーなどの光学コンポーネントを冷却するための冷却デバイスを適用することが知られている。ただし、このようなデバイスはかなり大型である場合があり、ローカルレベルで位置又は温度を制御することができず、むしろグローバルレベルで動作する、すなわち、細かい部品又は部分ではなく基板又はミラー全体に作用する。このようなデバイスは、例えば基板又は光学コンポーネントの各部分に不十分な空間解像度で作用することがある。
【0034】
[00029] 本発明は、オブジェクトの形状、位置又は温度をきめ細かく制御することができる熱機械アクチュエータを提供する。
【0035】
[00030]
図4は、本発明に係る熱機械アクチュエータ100のある実施形態を概略的に示している。図示される熱機械アクチュエータ100は、少なくとも1つのピエゾ素子120を含むピエゾモジュール110を含む。
【0036】
[00031] 本発明の趣旨の範囲内において、ピエゾ素子は、PZTなどのピエゾ材料を含む又はこれで作られたコンポーネントを指す。本発明の趣旨の範囲内において、ピエゾ材料は、電場にさらされたときに変形し、機械的歪み又は圧力にさらされたときに電場を発生させる材料である。本発明では更に、適用されるピエゾ材料が焦電特性及び電気熱量特性も有することになることが仮定される。このような特性は、電場にさらされたときに温度変化する、また熱流束にさらされたときに電場を発生させるような材料の特性を指す。
【0037】
[00032] 本発明によれば、熱機械アクチュエータは更に、第1の信号132を受信又は供給し、第2の信号134を受信又は供給するように構成される。本発明のある実施形態では、第1及び第2の信号132、134は、アクチュエータ100のピエゾモジュール110によって受信又は供給されることがある。具体的には、第1及び第2の信号132、134は、
図4の点線で示すようにアクチュエータ100の少なくとも1つのピエゾ素子120によって受信又は供給されることがある。
【0038】
[00033] 本発明によれば、第1の信号132は、本発明に係る熱機械アクチュエータ100のピエゾ素子120に適用されるピエゾ材料の熱的特性又は性質と関連付けることができる。具体的には、第1の信号132は、ピエゾモジュールの熱挙動を制御するための熱作動信号であるか、又はピエゾモジュールの熱状態を表す熱感知信号である可能性がある。後者の場合、ピエゾモジュール、例えばピエゾモジュールのピエゾ素子は、センサ、すなわち温度センサとして使用される。したがって、このような場合は、ピエゾモジュールの焦電特性に依存する。前者の場合、ピエゾモジュール、例えばピエゾモジュールのピエゾ素子は熱アクチュエータとして使用される。本発明の趣旨の範囲内において、熱作動は熱流束を生成する動作を指す。したがって、この場合は、ピエゾモジュールの電気熱量特性に依存する。
【0039】
[00034] 本発明によれば、第2の信号134は、本発明に係る熱機械アクチュエータ100のピエゾ素子120に適用されるピエゾ材料の機械的特性と関連付けることができる。具体的には、第2の信号134は、ピエゾモジュールの機械的挙動を制御するための機械的作動信号であるか、又はピエゾモジュールの機械的状態を表す機械的感知信号である可能性がある。後者の場合、ピエゾモジュール、例えばピエゾモジュールのピエゾ素子は、センサ、すなわち圧力センサ又は歪みセンサとして使用される。このような場合は、本発明に係る熱機械アクチュエータのピエゾモジュールのピエゾ素子は、さらされた歪み又は圧力に応じて電場を発生させることがある。前者の場合、ピエゾモジュール、例えばピエゾモジュールのピエゾ素子は機械アクチュエータとして使用される。これは印加された電場に応じて変形することができる。
【0040】
[00035] したがって、本発明に係る熱機械アクチュエータは、機械的動作モードが熱的動作モードと組み合わせられる様々な動作モードに適用されることがある。具体的には、次の動作モードを特定することができる。
本発明に係る熱機械アクチュエータは、次の機械的動作モードで動作することがある、
機械アクチュエータとしての動作に対応する第1の機械的動作モード、
機械センサとしての動作に対応する第2の機械的動作モード。
本発明に係る熱機械アクチュエータは、次の熱的動作モードで動作することがある、
熱アクチュエータとしての動作に対応する第1の熱的動作モード、
熱センサとしての動作に対応する第2の熱的動作モード。
【0041】
[00036] 本発明のある実施形態では、本発明に係る熱機械アクチュエータに適用されるピエゾ素子が、上で定義した動作モードのうちの単一の動作モードに適用又は使用される。このようなピエゾ素子は、単一モードピエゾ素子又は専用ピエゾ素子と呼ばれることがある。このような実施形態では、本発明に係る熱機械アクチュエータは、それぞれが特定の動作モードで動作するように構成された2つ以上のこのような素子を含むことがある。
【0042】
[00037]
図5は、このような実施形態を概略的に示している。
図5は、本発明に係る、第1のピエゾ素子220.1と第2のピエゾ素子220.2とを含むピエゾモジュール210を含む熱機械アクチュエータ200を概略的に示す。図示される実施形態では、熱機械アクチュエータ200は更に、第1の信号232を受信又は供給し、第2の信号234を受信又は供給するように構成される。図示される実施形態では、第1の信号232は、第1のピエゾ素子220.1によって受信又は供給されるように構成されるのに対して、第2の信号234は、第2のピエゾ素子220.2によって受信又は供給されるように構成される。
【0043】
[00038] 本発明のある実施形態では、ピエゾ素子220.1は、例えば機械アクチュエータとしての動作に対応する第1の機械的動作モードで動作することがあるのに対して、ピエゾ素子220.2は、例えば熱センサとしての動作に対応する第2の熱的動作モードで動作することがある。理解されるように、動作モードの他の組み合わせも考案されることがある。具体的には、
ピエゾ素子220.1は機械センサとして動作することがあるのに対して、ピエゾ素子220.2は熱センサとして動作することがある、又は
ピエゾ素子220.1は機械センサとして動作することがあるのに対して、ピエゾ素子220.2は熱アクチュエータとして動作することがある、又は
ピエゾ素子220.1は機械アクチュエータとして動作することがあるのに対して、ピエゾ素子220.2は熱センサとして動作することがある。
【0044】
[00039] また、本発明に係る熱機械アクチュエータは、それぞれが上記動作モードのうちの1つのモードで動作するように構成された2つ以上のピエゾ素子を含むこともある。
【0045】
[00040] 本発明のある実施形態では、本発明に係る熱機械アクチュエータに適用されるピエゾ素子は、上で定義された動作モードの複数の異なる動作モードに適用又は使用することができる。このようなピエゾ素子は、多重モードピエゾ素子と呼ばれることがある。
【0046】
[00041]
図6は、このような多重モードピエゾ素子320を含む、本発明に係る熱機械アクチュエータ300のある実施形態を概略的に示している。図示される熱機械アクチュエータ300は、ピエゾ素子320、具体的には様々な動作モードで動作可能なピエゾ素子を含むピエゾモジュール310を含む。図示される熱機械アクチュエータ300は更に、第1の信号332を受信又は供給し、第2の信号334を受信又は供給するように構成される。図示される実施形態では、第1の信号332及び第2の信号334は、ピエゾモジュール310、具体的にはピエゾモジュール310の多重モードピエゾ素子320によって受信又は供給されるように構成される。
【0047】
[00042] ある実施形態では、第1の信号332は、例えばピエゾ素子320を機械アクチュエータとしての動作に対応する第1の機械的動作モードで動作するように制御するように構成されることがあるのに対して、第2の信号334は、例えばピエゾ素子320を熱アクチュエータとしての動作に対応する第1の熱的動作モードで動作するように制御するように構成されることがある。
【0048】
[00043] 代替的な実施形態では、第1の信号332は、例えばピエゾ素子320を機械アクチュエータとしての動作に対応する第1の機械的動作モードで動作するように制御するように構成されることがあるのに対して、第2の信号334は、熱センサとしての動作に対応する第2の熱的動作モードで動作しているときにピエゾ素子320により供給される、熱機械アクチュエータの出力信号である場合がある。
【0049】
[00044] 更に別の実施形態では、本発明に係る熱機械アクチュエータは、2つ以上の多重モードピエゾ素子を含む。このような実施形態は、
図7に概略的に示される。
【0050】
[00045]
図7は、2つの多重モードピエゾ素子420.1及び420.2を含む、本発明に係る熱機械アクチュエータ400のある実施形態を概略的に示している。図示される熱機械アクチュエータ400は、第1の多重モードピエゾ素子420.1及び第2の多重モードピエゾ素子420.2、すなわち様々な動作モードで動作し得るピエゾ素子を含むピエゾモジュール410を含む。図示される熱機械アクチュエータ400は更に、第1の信号432を受信又は供給し、第2の信号434を受信又は供給するように構成される。図示される実施形態では、第1の信号432及び第2の信号434は、ピエゾモジュール410の第1の多重モードピエゾ素子420.1によって受信又は供給されるように構成される。図示される熱機械アクチュエータ400は更に、第3の信号436を受信又は供給し、第4の信号438を受信又は供給するように構成される。図示される実施形態では、第3の信号436及び第4の信号438は、ピエゾモジュール410の第2の多重モードピエゾ素子420.2によって受信又は供給されるように構成される。
【0051】
[00046] このような実施形態では、第1の信号432及び第2の信号434は、例えば熱機械アクチュエータの機械センサ及び機械アクチュエータとしての動作とそれぞれ関連付けることができるのに対して、第3の信号436及び第4の信号438は、例えば熱機械アクチュエータの熱センサ及び熱アクチュエータとしての動作とそれぞれ関連付けることができる。
【0052】
[00047] 本発明では、熱的動作モードでも機械的動作モードでも動作するように構成される熱機械アクチュエータが開示される。ある実施形態では、以下でより詳細に示されるように、熱機械アクチュエータは両方の動作モードで同時に動作するように構成される可能性がある。このような実施形態では、本発明に係る熱機械アクチュエータは、例えば温度センサとして動作すると同時に、機械アクチュエータとして動作することがある。このような機能性は、単一のピエゾ素子、又は複数、例えば2つのピエゾ素子の結合体に組み込まれることがある。ある実施形態では、熱機械アクチュエータは、2つ以上の動作モードで交互に動作する、例えば、感知モードと作動モードで交互に動作する、又は熱作動モードと機械的作動モードで交互に動作するように構成される可能性がある。
【0053】
[00048] 本発明では、1つ以上のピエゾ素子を使用する熱機械アクチュエータが説明される。このような素子は一般に知られており、電場が印加されるときに変形する特性を示し、逆に圧力や歪みが印加されるときに電場を発生させる。このような素子に適用されるピエゾ材料は更に、電気熱量挙動又は焦電挙動として知られている挙動や特性を示す。電気熱量効果(ECE)とも呼ばれる電気熱量挙動は、素子内部の電場が変化したり、電場が印加されたりするときにその温度を変化させるピエゾ材料の特性を指す。焦電効果は、ピエゾ素子の温度変化がピエゾ素子に電場の発生又は生成をもたらす逆の効果を指す。電気熱量効果(ECE)は文献によって十分に裏付けられている。例えば、https://www.springer.com/gp/book/9783642402630, Electrocaloric Materials, New Generation of Coolers by Correia, Tatiana and Zhang, Qiを参照することができる。
【0054】
[00049] 本発明に係る熱機械アクチュエータでは、ピエゾ材料のピエゾ特性と電気熱量特性の両方が利用される。具体的には、本発明に係る熱機械アクチュエータは、ある実施形態において、熱機械アクチュエータのピエゾモジュールのピエゾ素子内部にピエゾ素子を変形させる電場が印加されるときに機械アクチュエータとして動作することができる。なお、これは上記の第1の機械的動作モードに相当する。本発明に係る熱機械アクチュエータは、ある実施形態では、ピエゾモジュールのピエゾ素子内部にピエゾ素子の変形により生じる電場が発生するときに機械センサとして動作することもある。なお、これは上記の第2の機械的動作モードに相当する。
【0055】
[00050] 電気熱量効果(ECE)について、このプロセス又は効果は実質的に断熱的であると考えられることを指摘することができる。これは、電場がピエゾ材料に印加されるときに温度変化が起こることを意味している。このような温度変化によって、ピエゾ材料を含むピエゾ素子は、その周囲、例えばピエゾ素子が接続される又は取り付けられるコンポーネントに対するその温度を変化させることになる。このような場合、温度変化は、温度変化の兆しに応じてピエゾ素子への又はピエゾ素子からの熱流束を生じさせることになる。
【0056】
[00051] 上記の効果について、これらの効果は、適用された材料の結晶構造の配向に応じて方向依存性があることを更に指摘することができる。前述の効果は、例えば、3つの直交方向x、y、zの方向場(Ex,Ey,Ez)として表し得る電場Eの印加と、電場の機械的効果及び熱的効果との間の相関関係を記述し得るテンソルによって説明することができる。なお、機械的効果は、せん断効果以外にピエゾ素子の伸長又は圧縮を含むことがある。認識される機械的効果及び熱的効果はまた、印加された電場の周波数に依存し得ることも指摘することができる。
【0057】
[00052] ピエゾ素子内部に前述の電場を発生させるために、又は1つ以上のピエゾ素子の内部に誘導される又は発生する電場を感知するために、本発明に係る熱機械アクチュエータに適用される1つ以上のピエゾ素子は、1つ以上の電極を備えることがある。
【0058】
[00053]
図8は、本発明に係る熱機械アクチュエータのピエゾモジュールに適用され得るピエゾ素子820を概略的に示している。図示される実施形態では、ピエゾ素子820は立方体形状を有し、一対の電極、すなわち下部電極820.1及び上部電極820.2を備える。ある実施形態では、下部電極820.1は、例えば接地又は接地電位830に接続されることがある。上部電極820.2が電圧源840に接続され、電圧信号842が供給されるとき、図示されたZ方向に向かう電場Ezがピエゾ素子820に発生する。ある実施形態では、このような電場Ezによって、例えばピエゾ素子820は変形する、例えば伸長したり、圧縮されたり、せん断されたりすることがある。このような場合、電極820.1に供給される電圧信号842は、機械的作動信号と呼ばれることもある。ある実施形態では、電圧信号が発生させる電場Ezはピエゾ素子の温度変化を生じさせることもある。このような場合、電圧信号842は熱作動信号と呼ばれることもある。
【0059】
[00054] 本発明のある実施形態では、本発明に係る熱機械アクチュエータは、作動信号が合成又は重畳される機械アクチュエータとしても熱アクチュエータとしても動作するように構成される。このような実施形態では、機械的作動信号は、例えばピエゾ素子800の変形をもたらすDC電場Ez_dcを発生させるためのDC信号である場合があるのに対して、熱作動信号は、例えばピエゾ素子800に温度変化を生じさせるAC電場Ez_acを発生させるためのAC信号である場合がある。このような実施形態では、Ez=Ez_dc+Ez_acである。このような実施形態について、発生する温度変化はAC電場Ez_acの周波数に依存し得ることを指摘することができる。AC電場Ez_acの周波数が比較的低いとき、機械的作動に及ぶ影響が少ないことがあり、したがって、機械的作動及び熱作動の実質的な独立制御が可能になる。AC電場Ez_acを発生させるためのAC信号の代用として、一定のデューティサイクル又は周波数でオンオフが切り替わるDC信号が印加されることもある。
【0060】
[00055] ある実施形態では、電圧源840は、所要の制御信号又は動作信号842を発生させるための制御ユニットを含むことがある。
【0061】
[00056] 適用される又は所望の動作モードの実質的に独立した制御を得るための代替的な方法は、適用される1つ以上のピエゾ素子に様々な方向の電場を発生させるように構成される複数の電極を適用することである。ピエゾ材料の適切な選択及び1つ以上の素子及び電極の適切な配向によって、熱的動作モードと機械的動作モードとを切り離すことができる。
【0062】
[00057]
図9は、上記の動作モードに適用され得るピエゾ素子920を概略的に示している。ピエゾ素子920は、例えば、本発明に係る熱機械アクチュエータのピエゾモジュールに適用することができる。図示される実施形態では、ピエゾ素子920は立方体形状を有し、下部電極920.1及び上部電極920.2からなる電極の第1の対と、左側電極920.3及び右側電極920.4からなる電極の第2の対とを備える。ある実施形態では、下部電極920.1及び右側電極920.4は、例えば接地又は接地電位930に接続されることがある。上部電極920.2が電圧源940に接続され、電圧信号942が供給されるとき、図示されたZ方向に向かう電場Ezがピエゾ素子920に発生する。ある実施形態では、このような電場Ezによって、例えばピエゾ素子920は変形する、例えば伸長したり、圧縮されたり、せん断されたりすることがある。このような場合、電極920.2に供給される電圧信号942は、機械的作動信号と呼ばれることもある。左側電極920.3が電圧源940に接続され、電圧信号944が供給されるとき、図示されたX方向に向かう電場Exがピエゾ素子920に発生する。ある実施形態では、このような電場Exは、例えばピエゾ素子920の温度変化を生じさせることがある。このような場合、電圧信号944は熱作動信号と呼ばれることもある。
【0063】
[00058] ある実施形態では、電圧源940は、所要の制御信号又は動作信号942及び944を発生させるための制御ユニットを含むことがある。
【0064】
[00059] ある実施形態では、本発明に係る熱機械アクチュエータに適用されるピエゾモジュールは、それぞれがアクチュエータ信号を受信するか又は感知信号を供給するための1つ以上の電極を備えた複数のピエゾ素子を含む。
【0065】
[00060]
図10は、本発明に係る熱機械アクチュエータに適用され得るピエゾモジュール1010を概略的に示している。図示される実施形態では、ピエゾモジュール1010は、それぞれが立方体形状を有し、一対の電極、すなわち下部電極1000.11、1000.21及び上部電極1000.12、1000.22を備える2つのピエゾ素子1020.1及び1020.2を含む。ある実施形態では、下部電極1000.11、1000.21は、例えば接地又は接地電位1030に接続されることがある。2つのピエゾ素子1020.1、1020.2、又は一般に適用される複数の素子は、共通の電極、例えば共通の接地電極を有し得ることを指摘することができる。素子1020.1も1020.2も、例えば上記と同様の方法で制御されることがある。一例として、上部電極1020.12は電圧源1040に接続され、電圧信号1042が供給され、図示されたZ方向に向かう電場Ezがピエゾ素子1020.1に発生する。ある実施形態では、このような電場Ezによって、例えばピエゾ素子1020.1は変形する、例えば伸長したり、圧縮されたり、せん断されたりすることがある。更に、素子1020.2の上部電極1020.22は、電圧源1040に接続され、電圧信号1044が供給され、図示されたZ方向に向かう電場Ezがピエゾ素子1020.2に発生することがある。ある実施形態では、このような電場Ezによって、例えばピエゾ素子1020.2が熱くなったり冷たくなったりすることがある。
【0066】
[00061] 当業者には明らかなように、ピエゾ素子820もしくは920又はピエゾモジュール1010は、より大きい又はより精密な熱機械アクチュエータを形成するために結合されることがある。ある実施形態では、本発明に係る熱機械アクチュエータは、例えば一次元アレイ又は二次元アレイに配置された複数のピエゾ素子又はピエゾモジュールを含む。
【0067】
[00062] このような熱機械アクチュエータを用いて、オブジェクトのきめ細かい熱機械制御を得ることができる。
【0068】
[00063] リソグラフィ装置では、このようなきめ細かい熱機械制御が、様々な場所で様々なプロセス中に望まれる及び/又は必要とされる。上記のリソグラフィ装置及び露光又はパターニングプロセスを参照すると、例えば、基板及び/又はパターニングデバイスの正確な位置決めが、基板又はパターニングデバイスの表面に平行な平面と、放射ビーム又はパターン形成された放射ビームに平行な方向との両方において必要であることを指摘することができる。このような正確な位置決めは、パターン形成された放射ビームが、基板に対して、特に基板上の先に提供されたパターンに対して正確に位置決めされることを保証するために必要である。このような正確な位置決めを得るために、基板及びパターニングデバイスの正確な温度制御も必要である。また、照明システムIL及び投影システムPSは、パターン形成された放射ビームを正確に整形及び位置決めするために、熱的観点からも機械的観点からも正確に制御される必要がある1つ以上の光学素子、例えばミラーやレンズを含むことを指摘することができる。
【0069】
[00064] したがって、本発明のある実施形態では、本発明に係る熱機械アクチュエータは、リソグラフィ装置のコンポーネント、又はリソグラフィ装置で使用されるかもしくはリソグラフィ装置で処理されるオブジェクトを制御するために適用される。このようなコンポーネントの例には、これらに限定されるわけではないが、パターニングデバイスや基板などのオブジェクトを保持するためのオブジェクトテーブル、パターニングデバイスや基板などのオブジェクトをクランプするためのクランプ、例えば真空クランプや静電クランプ、レンズ及びミラーなどの光学素子が含まれる。このような実施形態は、例えば、
リソグラフィ装置用のコンポーネント、及び
本発明に係る熱機械アクチュエータ、を備え、
熱機械アクチュエータがコンポーネントの熱挙動及び機械的挙動を制御するように構成されたアセンブリとして説明することができる。
【0070】
[00065]
図11はこのようなアセンブリを概略的に示している。
図11は、リソグラフィ装置用のコンポーネント1150、及び本発明に係る複数の熱機械アクチュエータ1100を概略的に示す。図示されるコンポーネント1150は、例えば光学コンポーネント、具体的には入射放射ビーム1160を反射するように構成されるミラーである場合がある。本発明によれば、熱機械アクチュエータ1100は、コンポーネントの熱挙動も機械的挙動も制御する、及び/又はコンポーネントの熱挙動も機械的挙動も感知することができる。図示される実施形態では、各アクチュエータ1100は、アクチュエータの熱的かつ機械的な二重機能性を示す2つのピエゾ素子1120を含む。図示される実施形態では、熱機械アクチュエータ1100は、この実施形態ではミラーであるコンポーネント1150の底面1150.1に取り付けられる。なお、コンポーネント1150の向きによって、アクチュエータがコンポーネント1150を支持するだけで十分な場合がある。アクチュエータ1100の適切な制御によって、すなわち、アクチュエータに適切な作動信号を供給すること又は感知信号を得ることによって、熱挙動も機械的挙動も制御することができる。具体的には、熱機械アクチュエータ1100は、例えば底面1150.1に力を与え、結果としてミラーの上面1150.2を変形させるように構成されることがある。そうすることによって、上面1150.2、すなわち入射ビーム1160を反射する表面を、所要又は所望の形状及び/又は位置にする又は維持することができる。同様に、熱機械アクチュエータ1100は、コンポーネントの熱挙動、例えばコンポーネントの温度又は温度分布を制御するように構成されることがある。これは例えば、上記のように熱機械アクチュエータのピエゾ素子の適切な加熱又は冷却によって実現することができる。そうすることによって、コンポーネント1150の所望の温度又は温度分布を得たり維持したりすることができる。ある実施形態では、熱機械アクチュエータ1100は、例えば共通のフレームに取り付けられることがある。このような構成が
図12に示されている。
【0071】
[00066]
図12は、リソグラフィ装置用のコンポーネント1250、及び本発明に係る熱機械アクチュエータ1200を概略的に示している。図示されるコンポーネント1250は、例えば光学コンポーネントである場合がある。図示される実施形態では、熱機械アクチュエータ1200は複数のピエゾ素子1220を含む。図示される実施形態では、熱機械アクチュエータ1200、具体的にはアクチュエータのピエゾ素子1220は、コンポーネント1250の底面1250.1と係合するように構成される。このような実施形態では、コンポーネント1250の底面1250.1は、例えばピエゾ素子1220の端面と接触していることがある。このような端面は、例えばコンポーネント1250を支持するための支持面、又はコンポーネント1250を取り付けることができる取り付け面を構成することがある。アクチュエータ1200の適切な制御によって、すなわち、アクチュエータ1200のピエゾ素子1220に適切な作動信号を供給すること又は感知信号を得ることによって、コンポーネント1250の熱挙動も機械的挙動も制御することができる。図示される実施形態では、ピエゾ素子1220は共通の部材又はフレーム1270に取り付けられる。例えば、このようなフレームは、例えば低い熱膨張係数又はコンポーネントの材料の熱膨張係数と同じかほぼ同じ熱膨張係数を有する材料で作られた、実質的に剛性の構造を含むことができる。好ましくは、フレーム1270は、例えばコンポーネント1250から抽出された熱の除去を促進するために、高い熱伝導率を有する材料で作られるか又はこれを含む。図示される実施形態では、フレーム1270の上面1270.1は、ピエゾ素子を接地するための共通の接地電極を備える。代替的に、コンポーネント1250の底面1250.1がこのような接地電極を備えることもある。本発明のある実施形態では、フレーム1270は、例えばコンポーネント1250からの熱を除去するためのヒートシンクとしての機能を果たすことがある。
【0072】
[00067]
図13は、熱的動作モード及び機械的動作モードが結合される、本発明に係る熱機械アクチュエータのより詳細な動作モードを概略的に示している。
図13は、本発明に係る熱機械アクチュエータにより実行され得る一連の動作を概略的に示す。
図13では、1300が制御対象のコンポーネントを指し、1310がヒートシンク、すなわち、例えば冷却剤を用いて実質的に一定の温度に保持される物体を指す。1320が本発明に係る熱機械アクチュエータのピエゾ素子を指し、1330及び1340が熱機械アクチュエータの隣接するピエゾ素子の一部を指す。
図13(a)は、動作モード又はサイクルの初期状態を示す。
図13(a)では、矢印1350は、初期状態においてピエゾ素子1320に印加された電場を指す。この実施形態では、電場1350が存在するときに素子1320が熱的中立状態にあると仮定される。更に、電場1350の除去によってピエゾ素子1320の温度降下が生じることになり、電場の印加(又は再印加)によってピエゾ素子1320の温度上昇が生じることになると仮定される。熱的中立状態では、素子1320の温度がヒートシンク1310の温度と実質的に一致すると仮定することができる。
【0073】
[00068]
図13(b)に示す動作サイクルの第1のステップでは、電場1350が除去されることによって、ピエゾ素子1320が冷たくなる。その結果、熱流束1360がコンポーネント1300から素子1320に発生することによって、素子は温かくなる。別の言い方をすれば、ピエゾ素子1320はコンポーネント1300から熱を吸収することになる。
【0074】
[00069]
図13(c)に示す動作サイクルの第2のステップでは、電場1350と異なる向きを有する電場1370が素子1320に印加され、電場1370によってピエゾ素子1320が圧縮される。図から分かるように、この圧縮によってコンポーネントと素子1320の上面1320.1との間にギャップが生じる。
【0075】
[00070]
図13(d)に示す動作サイクルの第3のステップでは、電場1350、又は同様の向きを有する場が再印加されることによって、素子1320が温まる。その結果、熱流束1380がピエゾ素子1320からヒートシンク1310に向かって生じることになる。一旦熱流束1380がヒートシンク1310に移動すると、電場1370を除去することができ、その結果、素子は伸長し、アクチュエータは再び
図13(a)の初期状態になる。この状態は
図13(e)に示されている。上記のサイクルを繰り返すことによって、熱負荷にさらされるオブジェクト、例えばリソグラフィ装置の投影システムもしくは照明システムなどの光学システムのコンポーネント、又はリソグラフィ装置で使用されるパターニングデバイスもしくは基板から熱を除去することができる。
【0076】
[00071] 本発明のある実施形態では、適用される1つ以上の熱機械アクチュエータの動作モードは時間と共に変化することがある。そのような実施形態は
図14に概略的に示される。
【0077】
[00072]
図14は、パターン形成された放射ビーム1410による基板1400の露光プロセスを概略的に示している。図示される実施形態では、基板1400は、本発明に係る熱機械アクチュエータ1430の複数のピエゾ素子1420によって支持される。図示される実施形態では、熱機械アクチュエータ1430は、冷却剤を収容するための冷却チャネル1442が設けられたヒートシンク1440に取り付けられる。基板、アクチュエータ及びヒートシンクのアセンブリは、基板1400を放射ビーム1410に対して、例えば矢印1460により示される方向に移動させるように構成される位置決めデバイス1450に取り付けられる。図示される実施形態では、ピエゾ素子1420は主に基板1400の位置を制御するように適用される、すなわち、機械作動モードで動作する。放射ビーム1410によりもたらされた熱負荷を考慮するために、黒く塗りつぶされたいくつかの素子1420が、基板1400から熱を除去する熱的モードで動作する。したがって、図示される実施形態では、アクチュエータ1430の素子1420の動作モードは、放射ビーム1410と素子1420との相対位置に依存する。
【0078】
[00073] 例えば、PZT、PMN-PT、PZN、BaTiO、LiNbO3などを含む様々な種類の材料を、本発明に係る熱機械アクチュエータのピエゾ素子として適用することができると言える。
【0079】
[00074] 本発明に係る熱機械アクチュエータを製造するために、伝統的なピエゾアクチュエータに適用された製造技術と類似した様々な技術を適用することができる。また、PLD、スピンコーティング又はスプレーコーティングを含む薄膜技術も適用することができる。
【0080】
[00075] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0081】
適用範囲
[00076] 本明細書ではリソグラフィ装置に関連して本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置に使用することもできる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又はウェーハ(あるいはその他の基板)もしくはマスク(あるいはその他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成してよい。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0082】
[00077] 以上では光学リソグラフィと関連して本発明の実施形態の使用に特に言及しているが、本発明は、例えばインプリントリソグラフィなど、その他の適用例において使用されてもよく、文脈が許す限り、光学リソグラフィに限定されないことが理解されるであろう。
【0083】
[00078] 文脈上許される場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサにより読み取られて実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令として実装することも可能である。機械可読媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)により読み取り可能な形態で情報を記憶又は伝送するための任意の機構を含むことができる。例えば機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外信号、デジタル信号など)、及び他のものを含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本明細書で説明されることがある。しかしながら、そのような説明は単に便宜上のものであり、そのようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又は他のデバイスから生じ、実行する際、アクチュエータ又は他のデバイスが物質世界と相互作用し得ることを理解すべきである。
【0084】
[00079] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのピエゾ素子を備えるピエゾモジュールを備えた熱機械アクチュエータであって、前記熱機械アクチュエータが、
前記ピエゾモジュールの熱挙動を制御するための熱作動信号を受信する、又は
前記ピエゾモジュールの熱状態を表す熱感知信号を供給するように構成され、
前記熱機械アクチュエータが、
前記ピエゾモジュールの機械的挙動を制御するための機械的作動信号を受信する、又は
前記ピエゾモジュールの機械的状態を表す機械的感知信号を供給するように構成さ
れ、
前記熱作動信号が前記ピエゾモジュール内に熱流束を生成するように構成され、前記機械的作動信号が前記ピエゾモジュールを変形させるように構成された、熱機械アクチュエータ。
【請求項2】
前記熱作動信号が、前記ピエゾモジュールの第1のピエゾ素子内に熱流束を生成するように構成され、前記機械的作動信号が、前記ピエゾモジュールの第2のピエゾ素子を変形させるように構成された、請求項
1に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項3】
前記熱作動信号が、前記ピエゾモジュールの第1のピエゾ素子内に熱流束を生成するように構成され、前記機械的作動信号が、前記ピエゾモジュールの前記第1のピエゾ素子を変形させるように構成された、請求項
1に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項4】
前記ピエゾモジュールを制御するための制御ユニットを更に備えた、請求項1から
3のいずれかに記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項5】
前記制御ユニットが、前記熱作動信号及び前記機械的作動信号を前記ピエゾモジュールに供給するように構成された、請求項
4に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項6】
前記制御ユニットが、前記熱感知信号の前記ピエゾモジュールからの受信及び前記熱作動信号の前記ピエゾモジュールへの供給を交互に行うように構成された、請求項
4に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項7】
前記制御ユニットが、前記熱感知信号を前記ピエゾモジュールの第1のピエゾ素子から受信し、前記熱作動信号を前記ピエゾモジュールの第2のピエゾ素子に供給するように構成された、請求項
4に記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項8】
前記ピエゾモジュールが、前記熱作動信号もしくは前記機械的作動信号のいずれか一方、又は両方により制御されるように構成された複数のピエゾ素子を備えた、請求項1から
7のいずれかに記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項9】
前記ピエゾモジュールから熱を除去する、及び/又は前記ピエゾモジュールに熱を供給するように構成されたヒートシンクを更に備えた、請求項1から
8のいずれかに記載の熱機械アクチュエータ。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれかに記載の1つ以上の熱機械アクチュエータを備えた光学素子。
【請求項11】
前記熱機械アクチュエータが、前記光学素子の表面を変形させ、前記光学素子の温度を制御するように構成された、請求項
10に記載の光学素子。
【請求項12】
オブジェクトを支持するための支持面を備え、請求項1から
11のいずれかに記載の熱機械アクチュエータを更に備えたオブジェクトテーブル。
【請求項13】
前記熱機械アクチュエータが前記支持面を変形させるように構成された、請求項
12に記載のオブジェクトテーブル。
【請求項14】
前記支持面にオブジェクトをクランプするためのクランプ機構を更に備えた、請求項
12又は13に記載のオブジェクトテーブル。
【請求項15】
請求項
12から14のいずれかに記載の
オブジェクトテーブルを備えたリソグラフィ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
[0007] 本発明のある態様によれば、少なくとも1つのピエゾ素子を備えるピエゾモジュールを備えた熱機械アクチュエータであって、熱機械アクチュエータが、
ピエゾモジュールの熱挙動を制御するための熱作動信号を受信する、又は
ピエゾモジュールの熱状態を表す熱感知信号を供給するように構成され、
熱機械アクチュエータが、
ピエゾモジュールの機械的挙動を制御するための機械的作動信号を受信する、又は
ピエゾモジュールの機械的状態を表す機械的感知信号を供給するように構成され、
熱作動信号がピエゾモジュール内に熱流束を生成するように構成され、機械的作動信号がピエゾモジュールを変形させるように構成された、熱機械アクチュエータが提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
[00060]
図10は、本発明に係る熱機械アクチュエータに適用され得るピエゾモジュール1010を概略的に示している。図示される実施形態では、ピエゾモジュール1010は、それぞれが立方体形状を有し、一対の電極、すなわち下部電極1000.11、1000.21及び上部電極10
20.12、10
20.22を備える2つのピエゾ素子1020.1及び1020.2を含む。ある実施形態では、下部電極1000.11、1000.21は、例えば接地又は接地電位1030に接続されることがある。2つのピエゾ素子1020.1、1020.2、又は一般に適用される複数の素子は、共通の電極、例えば共通の接地電極を有し得ることを指摘することができる。素子1020.1も1020.2も、例えば上記と同様の方法で制御されることがある。一例として、上部電極1020.12は電圧源1040に接続され、電圧信号1042が供給され、図示されたZ方向に向かう電場Ezがピエゾ素子1020.1に発生する。ある実施形態では、このような電場Ezによって、例えばピエゾ素子1020.1は変形する、例えば伸長したり、圧縮されたり、せん断されたりすることがある。更に、素子1020.2の上部電極1020.22は、電圧源1040に接続され、電圧信号1044が供給され、図示されたZ方向に向かう電場Ezがピエゾ素子1020.2に発生することがある。ある実施形態では、このような電場Ezによって、例えばピエゾ素子1020.2が熱くなったり冷たくなったりすることがある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
[00079] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
[00080] 本発明の他の側面は、次の番号付けされた条項などで提示される。
1. 少なくとも1つのピエゾ素子を備えるピエゾモジュールを備えた熱機械アクチュエータであって、前記熱機械アクチュエータが、
前記ピエゾモジュールの熱挙動を制御するための熱作動信号を受信する、又は
前記ピエゾモジュールの熱状態を表す熱感知信号を供給するように構成され、
前記熱機械アクチュエータが、
前記ピエゾモジュールの機械的挙動を制御するための機械的作動信号を受信する、又は
前記ピエゾモジュールの機械的状態を表す機械的感知信号を供給するように構成された、熱機械アクチュエータ。
2. 前記熱作動信号が前記ピエゾモジュール内に熱流束を生成するように構成され、前記機械的作動信号が前記ピエゾモジュールを変形させるように構成された、条項1に記載の熱機械アクチュエータ。
3. 前記熱作動信号が、前記ピエゾモジュールの第1のピエゾ素子内に熱流束を生成するように構成され、前記機械的作動信号が、前記ピエゾモジュールの第2のピエゾ素子を変形させるように構成された、条項2に記載の熱機械アクチュエータ。
4. 前記熱作動信号が、前記ピエゾモジュールの第1のピエゾ素子内に熱流束を生成するように構成され、前記機械的作動信号が、前記ピエゾモジュールの前記第1のピエゾ素子を変形させるように構成された、条項2に記載の熱機械アクチュエータ。
5. 前記ピエゾモジュールを制御するための制御ユニットを更に備えた、条項1から4のいずれかに記載の熱機械アクチュエータ。
6. 前記制御ユニットが、前記熱作動信号及び前記機械的作動信号を前記ピエゾモジュールに供給するように構成された、条項5に記載の熱機械アクチュエータ。
7. 前記制御ユニットが、前記熱感知信号及び前記機械的感知信号を前記ピエゾモジュールから受信するように構成された、条項5に記載の熱機械アクチュエータ。
8. 前記制御ユニットが、前記熱作動信号及び前記機械的作動信号を前記ピエゾモジュールに交互に供給するように構成された、条項6に記載の熱機械アクチュエータ。
9. 前記制御ユニットが、前記熱作動信号及び前記機械的作動信号を前記ピエゾモジュールに同時に供給するように構成された、条項6に記載の熱機械アクチュエータ。
10. 前記制御ユニットが、前記熱感知信号の前記ピエゾモジュールからの受信及び前記熱作動信号の前記ピエゾモジュールへの供給を交互に行うように構成された、条項5に記載の熱機械アクチュエータ。
11. 前記制御ユニットが、前記熱感知信号を前記ピエゾモジュールの第1のピエゾ素子から受信し、前記熱作動信号を前記ピエゾモジュールの第2のピエゾ素子に供給するように構成された、条項5に記載の熱機械アクチュエータ。
12. 前記ピエゾモジュールが、前記熱作動信号もしくは前記機械的作動信号のいずれか一方、又は両方により制御されるように構成された複数のピエゾ素子を備えた、条項1から11のいずれかに記載の熱機械アクチュエータ。
13. 前記複数のピエゾ素子が実質的に平面状のアレイに配置された、条項12に記載の熱機械アクチュエータ。
14. 前記ピエゾモジュールから熱を除去する、及び/又は前記ピエゾモジュールに熱を供給するように構成されたヒートシンクを更に備えた、条項1から13のいずれかに記載の熱機械アクチュエータ。
15. 条項1から14のいずれかに記載の1つ以上の熱機械アクチュエータを備えた光学素子。
16. 前記熱機械アクチュエータが、前記光学素子の表面を変形させ、前記光学素子の温度を制御するように構成された、条項15に記載の光学素子。
17. オブジェクトを支持するための支持面を備え、条項1から16のいずれかに記載の熱機械アクチュエータを更に備えたオブジェクトテーブル。
18. 前記熱機械アクチュエータが前記支持面を変形させるように構成された、条項17に記載のオブジェクトテーブル。
19. 前記熱機械アクチュエータが、端面が前記支持面を構成する複数のピエゾ素子を備えた、条項18に記載のオブジェクトテーブル。
20. 前記支持面にオブジェクトをクランプするためのクランプ機構を更に備えた、条項17から19のいずれかに記載のオブジェクトテーブル。
21. 前記クランプ機構が静電クランプ又は真空クランプを含む、条項20に記載のオブジェクトテーブル。
22. 条項17から21のいずれかに記載のオブジェクトテーブル、及び
前記オブジェクトテーブルを位置決めするための位置決めデバイス、を備えたステージ装置。
23. 条項22に記載のステージ装置を備えたリソグラフィ装置。
24. リソグラフィ装置用のコンポーネント、及び
条項1から14のいずれかに記載の熱機械アクチュエータを備え、
前記熱機械アクチュエータが、前記コンポーネントの熱挙動及び機械的挙動を制御するように構成された、アセンブリ。
【国際調査報告】