(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】抵抗変化型ランダムアクセスメモリデバイスにおけるフォーミング電圧を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8239 20060101AFI20220930BHJP
C23C 16/56 20060101ALI20220930BHJP
H01L 45/00 20060101ALI20220930BHJP
H01L 49/00 20060101ALI20220930BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220930BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20220930BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H01L27/105 448
C23C16/56
H01L45/00 Z
H01L49/00 Z
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H05H1/46 B
H01L21/316 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021570744
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 US2020035101
(87)【国際公開番号】W WO2020243417
(87)【国際公開日】2020-12-03
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】510215639
【氏名又は名称】インターナショナル ビジネス マシーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】コンシグリオ,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ワイダ,コリー
(72)【発明者】
【氏名】タピリー,カンダバラ
(72)【発明者】
【氏名】角村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】安藤 崇志
(72)【発明者】
【氏名】ジャミソン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】カルティエ,エドゥアルド アルバート
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン,ヴィジャイ
(72)【発明者】
【氏名】ホプスタケン,マリナス ジェイ.,ピー.
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F045
5F058
5F083
【Fターム(参考)】
2G084AA01
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC06
2G084CC08
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD04
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2G084FF15
4K030AA11
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5F045AA06
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5F045AB31
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5F083JA40
5F083JA60
5F083PR21
(57)【要約】
抵抗変化型ランダムアクセスメモリ(ReRAM)デバイスにおける誘電体膜のフォーミング電圧を制御する方法。本方法は、真性欠陥を含む誘電体膜を基板上に堆積させることと、H2ガスを含むプラズマ励起処理ガスを形成することと、誘電体膜の物理的な厚さを実質的に変えることなく誘電体膜に追加的な欠陥を作るために、プラズマ励起処理ガスに誘電体膜を曝露させることであって、追加的な欠陥が、誘電体膜を横断して導電性フィラメントを生成するために必要なフォーミング電圧を下げる、こととを含む。誘電体膜は金属酸化物膜を含むことができ、プラズマ励起処理ガスはマイクロ波プラズマ源を使用して形成され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真性欠陥を含む誘電体膜を基板上に堆積させることと、
H
2ガスを含むプラズマ励起処理ガスを形成することと、
前記誘電体膜に追加的な欠陥を作るために、前記プラズマ励起処理ガスに前記誘電体膜を曝露させることであって、前記追加的な欠陥が、前記誘電体膜を横断して導電性フィラメントを生成するために必要なフォーミング電圧を下げる、ことと
を含む、抵抗変化型ランダムアクセスメモリ(ReRAM)デバイスを形成する方法。
【請求項2】
前記プラズマ励起処理ガスに前記誘電体膜を前記曝露させることが、前記誘電体膜の物理的な厚さを実質的に変えない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘電体膜が、HfO
2、ZrO
2、TiO
2、NiO、Al
2O
3、Ta
2O
5、及びそれらの積層膜からなる群から選択される金属酸化物膜を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プラズマ励起処理ガスを前記形成することが、マイクロ波プラズマ源を使用して前記処理ガスを励起することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理ガスが、H
2ガス、又はH
2ガス及びArガスから構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プラズマ励起処理ガスに前記誘電体膜を前記曝露させることに続いて、前記誘電体膜上に追加的な誘電体膜を堆積させること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記追加的な誘電体膜に追加的な欠陥を作るために、H
2ガスを含む追加的なプラズマ励起処理ガスに前記追加的な誘電体膜を曝露させること
を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
金属酸化物誘電体膜を基板上に堆積させることであって、前記金属酸化物誘電体膜が酸素空孔を含む真性欠陥を含む、ことと、
H
2ガスを含むプラズマ励起処理ガスを形成することであって、前記形成することが、マイクロ波プラズマ源を使用して前記処理ガスを励起することを含む、ことと、
前記金属酸化物誘電体膜の物理的な厚さを実質的に変えることなく前記金属酸化物誘電体膜に追加的な欠陥を作るために、前記プラズマ励起処理ガスに前記金属酸化物誘電体膜を曝露させることであって、前記追加的な欠陥が、前記金属酸化物誘電体膜を横断して導電性フィラメントを生成するために必要なフォーミング電圧を下げる、ことと
を含む、抵抗変化型ランダムアクセスメモリ(ReRAM)デバイスを形成する方法。
【請求項9】
前記金属酸化物膜が、HfO
2、ZrO
2、TiO
2、NiO、Al
2O
3、Ta
2O
5、及びそれらの積層膜からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記処理ガスが、H
2、又はH
2及びArから構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記基板が基材上に第1の電極膜を含み、前記方法が、
前記金属酸化物誘電体膜上に第2の電極膜を形成すること
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記プラズマ励起処理ガスに前記金属酸化物誘電体膜を前記曝露させることに続いて、前記金属酸化物誘電体膜上に追加的な金属酸化物誘電体膜を堆積させること
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記追加的な金属酸化物誘電体膜に追加的な欠陥を作るために、H
2ガスを含む追加的なプラズマ励起処理ガスに前記追加的な金属酸化物誘電体膜を曝露させること
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基板上にある誘電体膜であって、前記誘電体膜が真性欠陥を含む、誘電体膜と、H
2ガスを含むプラズマ励起処理ガスに前記誘電体膜を曝露させることによって作られた追加的な欠陥であって、前記誘電体膜における前記追加的な欠陥が、前記誘電体膜の物理的な厚さを実質的に変えることなく作られ、前記追加的な欠陥が、前記誘電体膜を横断して導電性フィラメントを生成するために必要なフォーミング電圧を下げる、追加的な欠陥と
を備える、抵抗変化型ランダムアクセスメモリ(ReRAM)デバイス。
【請求項15】
前記誘電体膜が、HfO
2、ZrO
2、TiO
2、NiO、Al
2O
3、Ta
2O
5、及びそれらの積層膜からなる群から選択される金属酸化物膜を含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項16】
前記処理ガスが、H
2ガス、又はH
2ガス及びArガスから構成される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項17】
前記基板が基材上に第1の電極膜を含み、前記デバイスが、前記誘電体膜上に第2の電極膜を更に含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項18】
前記プラズマ励起処理ガスが、マイクロ波プラズマ源を使用して励起される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項19】
前記金属酸化物誘電体膜上にある追加的な金属酸化物誘電体膜
を更に備える、請求項12に記載のデバイス。
【請求項20】
前記追加的な金属酸化物膜が、真性欠陥と、H
2ガスを含む追加的なプラズマ励起処理ガスに前記追加的な金属酸化物誘電体膜を曝露させることにより作られた追加的な欠陥とを含む、請求項19に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月31日に出願された「METHOD FOR CONTROLLING THE FORMING VOLTAGE IN RESISTIVE RANDOM ACCESS MEMORY DEVICES」と題する米国特許出願第16/428,554号の優先権を主張するものであり、同米国特許出願の開示はその全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、半導体処理及び半導体デバイスに関し、より詳細には、抵抗変化型ランダムアクセスメモリ(ReRAM)デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ReRAMデバイスは、高密度/低コスト/低エネルギーの不揮発性メモリに対する投資回収の可能性により注目されている一種のストレージメモリデバイスである。ReRAMデバイスの基本的な考え方は、通常は絶縁体である誘電体膜が、フォーミング電圧として知られる十分に高い電圧を膜の厚さ方向に印加した後に形成されるフィラメント又は伝導経路を通じて、電流を流すようにされ得るというものである。伝導経路は、空孔又は金属欠陥のマイグレーションを含む様々なメカニズムから生じ得る。一般に、誘電体膜の厚さを薄くすることによりフォーミング電圧を直線的に下げることができるが、誘電体膜の厚さを変えることなくフォーミング電圧を調整することは困難である。更に、誘電体膜の厚さを変えると、他のデバイス性能の問題を引き起こしたり、又は別の誘電体材料への切り替えが必要になったりし得る。したがって、誘電体膜の厚さに実質的に影響することなくフォーミング電圧を調整するための方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、誘電体膜の堆積後の処理によって誘電体膜のフォーミング電圧を制御する方法を提供する。誘電体膜は、例えば、ReRAMデバイスの一部分を形成し得る。
【0005】
一実施形態によれば、ReRAMデバイスを形成する方法が、真性欠陥を含む誘電体膜を基板上に堆積させることと、H2ガスを含むプラズマ励起処理ガスを形成することと、誘電体膜の物理的な厚さを実質的に変えることなく誘電体膜に追加的な欠陥を作るために、プラズマ励起処理ガスに誘電体膜を曝露させることであって、追加的な欠陥が、誘電体膜を横断して導電性フィラメントを生成するために必要なフォーミング電圧を下げる、こととを含む。一例では、誘電体膜は金属酸化物誘電体膜を含み、曝露させることはマイクロ波プラズマ源を使用して処理ガスを励起することを含む。いくつかの例では、処理ガスは、H2ガス、又はH2ガス及びArガスから構成される。
【0006】
別の実施形態によれば、真性欠陥を含む誘電体膜と、H2ガスを含むプラズマ励起処理ガスに誘電体膜を曝露させることにより作られた追加的な欠陥であって、誘電体膜における追加的な欠陥が、誘電体膜の物理的な厚さを実質的に変えることなく作られ、追加的な欠陥が、誘電体膜を横断して導電性フィラメントを生成するために必要なフォーミング電圧を下げる、追加的な欠陥とを備える、ReRAMデバイスが説明される。一例では、誘電体膜は、HfO2、ZrO2、TiO2、NiO、Al2O3、Ta2O5、及びそれらの積層膜からなる群から選択され得る金属酸化物膜を含む。
【0007】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示し、上記の本発明の概要及び下記の詳細な説明と共に本発明を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の一実施形態による、膜構造のフォーミング電圧を制御する方法を概略的に示す。
【
図1B】本発明の一実施形態による、膜構造のフォーミング電圧を制御する方法を概略的に示す。
【
図2A】本発明の別の実施形態による、膜構造のフォーミング電圧を制御する方法を概略的に示す。
【
図2B】本発明の別の実施形態による、膜構造のフォーミング電圧を制御する方法を概略的に示す。
【
図2C】本発明の別の実施形態による、膜構造のフォーミング電圧を制御する方法を概略的に示す。
【
図3A】本発明の実施形態による、ReRAMデバイスのための形成工程、リセット工程、及びセット工程を示す。
【
図3B】本発明の実施形態による、ReRAMデバイスのための形成工程、リセット工程、及びセット工程を示す。
【
図4】本発明の実施形態による、プラズマ処理によって改質された10ミクロン×10ミクロンの領域の金属-絶縁体-金属キャパシタにおける、HfO
2誘電体膜について測定されたフォーミング電圧を示す。
【
図5】RLSA(商標)プラズマ源を含むマイクロ波プラズマ処理システムの概略図である。
【
図6】RLSA(商標)プラズマ源を含むマイクロ波プラズマ処理システムの概略図である。
【
図7】RLSA(商標)プラズマ源を含むマイクロ波プラズマ処理システムの概略図である。
【
図8】マイクロ波プラズマ処理システムの電子温度対ギャップ距離を示す。
【
図9】マイクロ波プラズマ処理システムの電子密度対ギャップ距離を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態は、誘電体膜の堆積後の処理によって誘電体膜のフォーミング電圧を制御するための方法を提供する。誘電体膜は、例えば、第1の電極膜(例えば、TiN)、誘電体膜、及び第2の電極膜(例えば、TiN)の積層体を備えるReRAMデバイスの一部分を形成し得る。堆積後の処理は、誘電体膜をプラズマ処理することを含み、プラズマ処理によって、誘電体膜の厚さを大幅に減らしたり、又は他の重要な誘電体パラメータを変更したりすることなく、フォーミング電圧の制御が高度に制御可能なものとなる。ReRAMデバイスでは、誘電体膜における導電性フィラメントの形成及び崩壊によって、抵抗変化型スイッチングが制御される。金属酸化物誘電体膜の場合、スイッチングのメカニズムは、局所ドーパントとして働く荷電酸素空孔の移動に起因する。
【0010】
一実施形態によれば、ReRAMデバイスを形成するための方法が説明され、本方法は、真性欠陥を含む誘電体膜を基板上に堆積させることと、H2ガスを含むプラズマ励起処理ガスを形成することと、誘電体膜に追加的な欠陥を作るために、プラズマ励起処理ガスに誘電体膜を曝露させることであって、追加的な欠陥が、誘電体膜を横断して導電性フィラメントを生成するために必要なフォーミング電圧を下げる、こととを含む。
【0011】
別の実施形態によれば、本方法は、真性欠陥を含む誘電体膜を基板上に堆積させることと、H2ガスを含むプラズマ励起処理ガスを形成することと、誘電体膜に追加的な欠陥を作るために、プラズマ励起処理ガスに誘電体膜を曝露させることと、誘電体膜を横断して導電性フィラメントを生成するためのフォーミング電圧を印加することであって、追加的な欠陥が、導電性フィラメントを生成するために必要なフォーミング電圧を下げる、こととを含む。
【0012】
図1A及び
図1Bは、本発明の一実施形態による、膜構造のフォーミング電圧を制御する方法を概略的に示している。
図1Aは、基板100と、基板100上にある誘電体膜102とを備える膜構造1を示している。基板100は、基材(例えば、中間膜誘電体膜)上に第1の電極膜(例えば、TiN)を備え得る。誘電体膜102は、気相堆積法、例えば原子層堆積法(ALD)又は化学気相堆積法(CVD)によって堆積され得る。誘電体膜102は、誘電体膜102の堆積又は形成中に形成されたイオン転位及び/又はイオン空孔に起因し得る、化学量論的欠陥とも呼ばれる真性欠陥104を含む。一例では、成膜されたままの金属酸化物誘電体膜が、酸素空孔、酸素転位、又はその両方などの真性欠陥を含み得る。誘電体膜102は、例えば、HfO
2、ZrO
2、TiO
2、NiO、Al
2O
3、Ta
2O
5、及びそれらの積層膜からなる群から選択される金属酸化物膜を含み得る。いくつかの例では、誘電体膜102の厚さは、約2nm~約20nm、約2nm~約10nm、約2nm~約5nm、約5nm~約20nm、又は約10nm~約20nmであり得る。
【0013】
図1Bは、プラズマ励起処理ガスへの気体曝露中の膜構造1を示している。いくつかの例では、処理ガス106は、H
2ガス、若しくはH
2ガス及び希ガス(例えば、Arガス)を含み得る、又はH
2ガス、若しくはH
2ガス及び希ガス(例えば、Arガス)から構成され得る。プラズマ曝露は、誘電体膜102の物理的な厚さを大きく変えることなく、誘電体膜102に追加的な欠陥108を導入する。結果として得られる誘電体膜102は、真性欠陥104と追加的な欠陥108とを含む。更に、H
2ガスのみ、又はH
2ガス及びArガスを使用した場合、H
2(又はH)のみ、又はH
2(又はH)及びArがプラズマ曝露によって誘電体膜102内に導入される。プラズマ曝露及びフォーミング電圧の低下は高度に制御可能であり、処理条件(例えば、プラズマ源の出力、曝露時間、及び基板温度)は、制御された数の追加的な欠陥108が誘電体膜102に導入されるように選択され得る。一実施形態によれば、マイクロ波プラズマ源がプラズマ励起に使用され得る。例示的なマイクロ波プラズマ源については、
図5~
図7において説明する。マイクロ波プラズマ源は、誘電体膜102の厚さを実質的に変えることなく、又は誘電体膜102に深刻な損傷を与えることなく、追加的な欠陥108を誘電体膜102に効果的に導入するために、低電子温度且つ高電子密度のプラズマを発生させる。よって、マイクロ波プラズマは、誘電体膜102への追加的な欠陥108の高度に制御可能な導入に良く適している。別の実施形態によれば、容量結合型プラズマ(CCP)源又は誘導結合型プラズマ(ICP)源がプラズマ励起に使用され得る。
【0014】
いくつかの例では、誘電体膜102のプラズマ曝露は、約200℃以上、例えば、約200℃~約500℃、約200℃~約300℃、約300℃~約400℃、約300℃~約500℃、約400℃~約500℃の基板温度で行われ得る。一例では、基板温度は約400℃であり得る。
【0015】
一実施形態によれば、プラズマ曝露中の処理条件は、約400℃の基板温度、約0.95トルのプロセスチャンバ圧力、及び約1700Wのマイクロ波出力であり得る。
【0016】
一実施形態によれば、誘電体膜の堆積及び堆積後の処理は、誘電体膜の堆積を少なくとも1回中断し、誘電体膜の堆積を継続する前にプラズマ曝露を行うことによって行われ得る。このことが、
図2A~
図2Cに概略的に示されている。
【0017】
図2A~
図2Cは、本発明の一実施形態による、膜構造のフォーミング電圧を制御する方法を概略的に示している。膜構造2は、
図1Aの膜構造1と同様であり、基板200と、基板200上に堆積又は形成された誘電体膜202とを備える。基板200は、基材(例えば、中間膜誘電体膜)上に第1の電極膜(例えば、TiN)を備え得る。誘電体膜202は、
図1Aの誘電体膜102よりも薄くすることができ、真性欠陥204を含む。誘電体膜202は、例えば、HfO
2、ZrO
2、TiO
2、NiO、Al
2O
3、Ta
2O
5、及びそれらの積層膜からなる群から選択される高誘電率金属酸化物を含み得る。いくつかの例では、誘電体膜202の厚さは、約1nm~約10nm、約2nm~約10nm、約2nm~約5nm、約5nm~約10nm、又は約5nm~約20nmであり得る。
【0018】
図2Bは、プラズマ励起処理ガス206への気体曝露中の膜構造2を示している。いくつかの例では、処理ガス206は、H
2ガス、若しくはH
2ガス及び希ガス(例えば、Arガス)を含み得る、又はH
2ガス、若しくはH
2ガス及び希ガス(例えば、Arガス)から構成され得る。プラズマ曝露は、誘電体膜202の物理的な厚さを著しく変えることなく、誘電体膜202に追加的な欠陥208を導入する。結果として得られる誘電体膜202は、真性欠陥204と追加的な欠陥208とを含む。更に、H
2ガスのみ、又はH
2ガス及びArガスを使用した場合、H
2(又はH)のみ、又はH
2(又はH)及びArがプラズマ曝露によって誘電体膜102内に導入される。プラズマ曝露及びフォーミング電圧の低下は高度に制御可能であり、処理条件(例えば、プラズマ源の出力、曝露時間、及び基板温度)は、制御された数の追加的な欠陥208が誘電体膜202に導入されるように選択され得る。一実施形態によれば、マイクロ波プラズマ源がプラズマ励起に使用され得る。別の実施形態によれば、CCP源又はICP源がプラズマ励起に使用され得る。
【0019】
図2Cは、誘電体膜202上への追加的な誘電体膜210の堆積後の膜構造2を示しており、追加的な誘電体膜210は真性欠陥212を含む。一例では、追加的な誘電体膜210は、誘電体膜202と同じ誘電体材料を含み得る。別の例では、追加的な誘電体膜210は、誘電体膜202とは異なる誘電体材料を含み得る。一実施形態によれば、追加的な誘電体膜210に更なる追加的な欠陥を導入するために、追加的なプラズマ曝露が追加的な誘電体膜210に対して行われる。
【0020】
図3A及び
図3Bは、本発明の実施形態による、ReRAMデバイスの形成工程、リセット工程、及びセット工程を示している。
図3Aは、ReRAMデバイスの誘電体膜において電流を通すフィラメントの形成の実験結果を示している。形成工程の際、ReRAMスタックを流れる初期リーク電流は小さいが、誘電体膜にかかる印加バイアス電圧の増加に伴って、リーク電流が急激に増加する。リーク電流は、トランジスタなどの外部デバイスによって設定されたコンプライアンス電流に到達する。
図3Aの例では、コンプライアンス電流は約100μAである。
【0021】
図3Bは、ReRAMデバイスのリセット工程及びセット工程の実験結果を示している。
図3Aの形成工程では、電流を通すフィラメントが形成されており、デバイスは低抵抗状態に設定されていた。反対の極性に向かってその後の電圧掃引中に、
図3Bに示すように、ある閾値電圧において高抵抗状態への移行が生じる。この動作がリセットと呼ばれ、これによりフィラメントが切断される。次いで、電圧をリセットから反対の極性に向かって掃引すると、デバイスの抵抗が低抵抗状態に戻され得る。この動作がセットと呼ばれる。セット工程ではフィラメント全体を成長させる必要はなく、接続を再構築するだけであるため、形成工程よりもセット工程の方が印加バイアス電圧が少なくて済む。
【0022】
図4は、本発明の実施形態による、プラズマ処理によって改質されたHfO
2誘電体膜の測定されたフォーミング電圧を示している。HfO
2誘電体膜は、いずれも約5nmの厚さを有し、金属-絶縁体-金属キャパシタの領域は10マイクロメートル×10マイクロメートルであった。HfO
2誘電体膜では、HfO
2誘電体膜を横断して酸素空孔が並ぶと、真性欠陥及び堆積後の処理によって導入された追加的な欠陥が導電性フィラメントを形成し、フォーミング電圧は、真性欠陥及び追加的な欠陥の合計数に強く影響される。
【0023】
図4では、HfO
2誘電体膜102、104、106、及び108を
図1A及び
図1Bの方法で説明したように処理し、HfO
2誘電体膜101及び103を
図2A~
図2Cの方法で説明したように処理した。HfO
2誘電体膜は、熱ALDプロセスにおいて約300℃の基板温度で、Hf(NEtMe)
4とH
2Oとの交互ガス曝露を用いて堆積させた。
【0024】
HfO2誘電体膜100は、堆積後の処理をしていない堆積させたままの基準試料とし、測定されたフォーミング電圧は約3.4Vであった。H2ガス及びArガスを含むマイクロ波プラズマ励起処理ガスにHfO2誘電体膜102~108を曝露させた。HfO2誘電体膜102、104、106、及び108のプラズマ曝露は、それぞれ30秒、40秒、50秒、及び60秒で実施した。HfO2誘電体膜102~108の測定されたフォーミング電圧は、約3.1Vから約2.85Vまで単調減少した。
【0025】
4nmの第1のHfO2誘電体膜を基板上に堆積させ、H2ガス及びArガスを含むマイクロ波プラズマ励起処理ガスに第1のHfO2誘電体膜を30秒曝露させ、その後、第1のHfO2誘電体膜上に追加的に1nmの第2のHfO2誘電体膜を堆積させることによりHfO2誘電体膜101を準備した。2nmの第1のHfO2誘電体膜を基板上に堆積させ、H2ガス及びArガスを含むマイクロ波プラズマ励起処理ガスに第1の誘電体HfO2膜を30秒曝露させ、その後、第1のHfO2誘電体膜上に追加的に3nmの第2のHfO2誘電体膜を堆積させることによりHfO2誘電体膜103を準備した。プラズマ処理及び第2のHfO2誘電体膜の堆積後のHfO2誘電体膜101及び103の測定されたフォーミング電圧は、それぞれ約3.0V及び約2.8Vであった。
【0026】
図4の実験結果は、30秒~60秒のプラズマ曝露を使用して、5nmの厚さのHfO
2誘電体膜のフォーミング電圧を約3.4Vから約2.8Vまで制御可能に下げたことを示している。更に、第1のHfO
2誘電体膜が初期の厚さに到達したときにHfO
2誘電体材料の堆積を中断し、第1のHfO
2誘電体膜に対してプラズマ曝露を行い、所望の厚さ(すなわち、5nm)に到達するまで第2のHfO
2誘電体膜を堆積させることにより、フォーミング電圧をより効果的に下げることができた。第1のHfO
2誘電体膜の厚さが薄いほどフォーミング電圧をより効果的に下げることができることが観測された。
【0027】
プラズマ処理されたHfO2誘電体膜二次イオン質量分析法(SIMS)のデプスプロファイルは、水素(H)濃度が基準試料と比較して明らかに増加したことを示した。
【0028】
プラズマ処理中の基板温度の影響によって、約300℃超の基板温度は、約300℃以下の温度よりもHfO2誘電体膜のフォーミング電圧を下げるのにより効果的であることが示されている。例えば、約350℃の基板温度の方が、約300℃の基板温度よりも効果的であり、約400℃の基板温度の方が、約350℃の基板温度よりも効果的であった。
【0029】
図5~
図7は、東京エレクトロン株式会社、赤坂、日本から入手可能なRLSA(商標)プラズマ源を含むマイクロ波プラズマ処理システムの概略図である。
図5に示すように、プラズマ処理システム10は、プラズマ処理チャンバ20(真空チャンバ)と、アンテナユニット50と、基板ホルダ21とを備える。プラズマ処理チャンバ20の内部は、プラズマガス供給ユニット30の下方に配置されたプラズマ発生領域R1と、基板ホルダ21の上方に配置されたプラズマ拡散領域R2とに大まかに区分されている。プラズマ発生領域R1で発生されるプラズマは、数エレクトロンボルト(eV)の電子温度を有し得る。成膜処理を行うプラズマ拡散領域R2内にプラズマを拡散させると、基板ホルダ21付近のプラズマの電子温度は約1eV~約2eVの値に低下し得る。この低い電子温度を、プロセスガス供給ユニット40と基板ホルダ21との間のギャップ距離の関数として
図8に示す。更に、
図9に示すように、プラズマ拡散領域R2における電子密度は、約70mm未満のギャップ距離では、約1.0E+12cm
-1よりも大きくなり得る。
【0030】
基板ホルダ21は、プラズマ処理チャンバ20の底部の中央に配置され、基板Wを支持するための基板ホルダとしての役割を果たす。基板ホルダ21の内部には、絶縁部材21aと、冷却ジャケット21bと、基板温度を制御するための温度制御ユニット(図示せず)とが設けられている。
【0031】
プラズマ処理チャンバ20の上部は開放されている。プラズマガス供給ユニット30は、基板ホルダ21に対向して配置され、Oリング(図示せず)などのシール部材を介してプラズマ処理チャンバ20の上部に取り付けられている。誘電体窓としても機能し得るプラズマガス供給ユニット30は、酸化アルミニウム又は石英などの材料から作ることができ、平坦な表面を有している。複数のガス供給孔31が、基板ホルダ21に対向して、プラズマガス供給ユニット30の平坦な表面の上に設けられている。複数のガス供給孔31は、ガス流路32を介してプラズマガス供給ポート33に連通している。プラズマガス供給源34が、プラズマガス、例えば、アルゴンArガス、H2ガス、若しくはArガスとH2ガスとの両方、又は他のガスをプラズマガス供給ポート33内に供給する。次いで、プラズマガスは、複数のガス供給孔31を介してプラズマ発生領域R1内に均一に供給される。
【0032】
プラズマ処理システム10は、プラズマ発生領域R1とプラズマ拡散領域R2との間で、プラズマ処理チャンバ20の中心に配置されたプロセスガス供給ユニット40を更に備える。プロセスガス供給ユニット40は、導電性材料、例えば、マグネシウム(Mg)を含むアルミニウム合金、又はステンレス鋼から作ることができる。プラズマガス供給ユニット30と同様に、複数のガス供給孔41がプロセスガス供給ユニット40の平坦な表面に設けられている。プロセスガス供給ユニット40の平坦な表面は、基板ホルダ21と対向して配置されている。
【0033】
プラズマ処理チャンバ20は、プラズマ処理チャンバ20の底部に接続された排気ライン26と、排気ライン26を圧力制御弁28及び真空ポンプ29に接続する真空ライン27とを更に備える。圧力制御弁28は、プラズマ処理チャンバ20内で所望のガス圧力を実現するために使用され得る。
【0034】
プロセスガス供給ユニット40の平面図を
図6に示す。この図に示すように、プロセスガス供給ユニット40内には、格子状のガス流路42が形成されている。格子状のガス流路42は、鉛直方向に形成されている複数のガス供給孔41の上端に連通している。複数のガス供給孔41の下部は、基板ホルダ21に面する開口部である。複数のガス供給孔41は、格子状のガス流路42を介してプロセスガス供給ポート43に連通している。
【0035】
更に、プロセスガス供給ユニット40には複数の開口部44が形成されて、複数の開口部44がプロセスガス供給ユニット40を鉛直方向に貫通するようになっている。複数の開口部44は、プラズマガス、例えば、Ar、H
2、又は他のガスを基板ホルダ21の上方のプラズマ拡散領域R2内に導入する。
図6に示すように、複数の開口部44は、隣接するガス流路42の間に形成されている。プロセスガスは、3つの別個のプロセスガス供給源45~47からプロセスガス供給ポート43に供給され得る。プロセスガス供給源45~47は、H
2ガス、N
2ガス、及びArガスを供給することができる。
【0036】
プロセスガスは、格子状のガス流路42を流れ、複数のガス供給孔41を介してプラズマ拡散領域R2内に均一に供給される。プラズマ処理システム10は、4つのバルブ(V1~V4)と、プロセスガスの供給を制御するための4つのマスフローコントローラ(MFC1~MFC4)とを更に備える。
【0037】
外部マイクロ波発生器55が、同軸導波管54を介してアンテナユニット50に所定の周波数のマイクロ波を供給する。同軸導波管54は、内側導体54Bと外側導体54Aとを備え得る。マイクロ波発生器55からのマイクロ波は、プラズマ発生領域R1においてプラズマガス供給ユニット30の直下に電界を発生させ、これによりプラズマ処理チャンバ20内のプロセスガスを励起させる。マイクロ波の出力は、例えば、約0.5w/cm2~約4w/cm2とすることができる。或いは、マイクロ波の出力は、約0.5w/cm2~約3w/cm2とすることができる。マイクロ波照射は、約300MHzから約10GHz、例えば約2.45GHzのマイクロ波周波数のものであり得る。
【0038】
図7は、アンテナユニット50の部分断面図を示している。この図に示すように、アンテナユニット50は、平面アンテナ本体51と、ラジアルラインスロットプレート52と、マイクロ波の波長を短くする誘電体プレート53とを備え得る。平面アンテナ本体51は、底面が開放された円形の形状を有し得る。平面アンテナ本体51及びラジアルラインスロットプレート52は、導電性材料から作ることができる。
【0039】
ラジアルラインスロットプレート52には、円偏波を発生させるための複数のスロット56が設けられている。複数のスロット56は、各スロットの間に小さな間隙がある状態で略T字形に配置されている。複数のスロット56は、周方向に沿って同心円状又は螺旋状に配置されている。スロット56a、56bは互いに直交しているため、ラジアルラインスロットプレート52からは、直交する2つの偏波成分を含む円偏波が平面波として放射される。
【0040】
誘電体プレート53は、低損失誘電体材料、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)又は窒化ケイ素(Si3N4)から作ることができ、ラジアルラインスロットプレート52と平面アンテナ本体51との間に配置される。ラジアルラインスロットプレート52は、ラジアルラインスロットプレート52がカバープレート23に密接するように、シール部材(図示せず)を使用してプラズマ処理チャンバ20に取り付けられ得る。カバープレート23は、プラズマガス供給ユニット30の上面に配置され、酸化アルミニウム(Al2O3)などのマイクロ波透過性の誘電体材料から形成されている。
【0041】
外部高周波電源22は、整合回路25を介して基板ホルダ21に電気的に接続されている。外部高周波電源22は、基板Wに引き込まれるプラズマ中のイオンのエネルギーを制御するために、所定の周波数、例えば13.56MHzのRFバイアス電力を発生させる。電源22は、RFバイアス電力のパルスを任意選択で供給するように更に構成される。パルス周波数は、1Hzよりも大きくすることができ、例えば、2Hz、4Hz、6Hz、8Hz、10Hz、20Hz、30Hz、50Hz又はそれ以上とすることができる。電源22は、0W~100W、100W~200W、200W~300W、300W~400W、又は400W~500WのRFバイアス電力を供給するように構成される。電源22の電力レベルは処理される基板のサイズに関連することを当業者には理解されよう。例えば、300mmSiウェハは、処理中に200mmウェハよりも大きな電力消費を必要とする。プラズマ処理システム10は、-5kV~+5kVのDC電圧バイアスを基板ホルダ21に供給することができるDC電圧発生器35を更に備える。
【0042】
処理ガスに対するプラズマ曝露によってReRAMデバイスのフォーミング電圧を制御するための複数の実施形態を説明してきた。本発明の実施形態の上述の説明は、例示及び説明を目的として提示したものである。この説明は、網羅的であること又は開示されているまさにその形態に本発明を限定することを意図するものではない。本明細書及び以下の特許請求の範囲は、説明目的でのみ使用され、限定するものとして解釈されるべきではない用語を含む。関連する技術分野の当業者であれば、上記の教示に照らして多くの修正形態及び変形形態が可能であることを理解し得る。当業者は、図に示されている様々な構成要素の様々な均等な組み合わせ及び置換形態を認識するであろう。したがって、本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろ本明細書に添付された特許請求の範囲によって限定されることを意図している。
【国際調査報告】