(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(54)【発明の名称】低発塵または無発塵水分散性架橋ポリビニルピロリドン顆粒の調製物
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20220930BHJP
A23L 2/70 20060101ALI20220930BHJP
A23L 2/80 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CER
A23L2/00 K
A23L2/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022506912
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020071842
(87)【国際公開番号】W WO2021023726
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタッフ,ローラント,ヒンリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】クレス,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ハッセ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4B117
4F070
【Fターム(参考)】
4B117LC09
4B117LC10
4B117LK06
4B117LP07
4F070AA38
4F070DA26
4F070DA55
4F070DB01
(57)【要約】
低発塵または無塵水分散性架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)顆粒の調製物であって、前記PVPPおよび水からなるドウをダイプレートを通して押し出し、その後に顆粒を乾燥させることを特徴とする、調製物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PVPPからなる低発塵または無発塵顆粒の調製物であって、前記PVPPおよび水からなるドウをダイプレートを通して押し出し、その後に顆粒を乾燥させることを特徴とする、調製物。
【請求項2】
乾燥後に10重量%~2重量%の残留湿度を有する、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
顆粒の乾燥後に70~0の粉塵数を有する、請求項1または2に記載の調製物。
【請求項4】
乾燥後に65~0の粉塵数を有する、請求項3に記載の調製物。
【請求項5】
乾燥後に52~0の粉塵数を有する、請求項4に記載の調製物。
【請求項6】
乾燥後に10~0の粉塵数を有する、請求項5に記載の調製物。
【請求項7】
直径500μm以上の顆粒が、前記調製物の75%以上を構成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の調製物。
【請求項8】
直径500μm以上の顆粒が、前記調製物の95%以上を構成する、請求項7に記載の調製物。
【請求項9】
直径850μm以上の顆粒が、前記調製物の10%以下を構成する、請求項7または8に記載の調製物。
【請求項10】
PVPPからなる低発塵または無発塵顆粒を製造する方法であって、前記PVPPおよび水からなるドウをダイプレートを通して押し出すステップであって、前記ドウが25重量%~75重量%の含水量を有するステップ、及びその後に顆粒を乾燥させるステップを特徴とする方法。
【請求項11】
PVPPからなる低発塵または無発塵顆粒を製造する請求項10に記載の方法であって、前記PVPPおよび水からなるドウをダイプレートを通して押し出すステップであって、前記ドウが30重量%~70重量%の含水量を有するステップ、及びその後に顆粒を乾燥させるステップを特徴とする方法。
【請求項12】
PVPPからなる低発塵または無発塵顆粒を製造する請求項11に記載の方法であって、前記PVPPおよび水からなるドウをダイプレートを通して押し出すステップであって、前記ドウが40重量%~65重量%の含水量を有するステップ、及びその後に顆粒を乾燥させるステップを特徴とする方法。
【請求項13】
PVPPからなる低発塵または無発塵顆粒を製造する請求項12に記載の方法であって、前記PVPPおよび水からなるドウをダイプレートを通して押し出すステップであって、前記ドウが45重量%~65重量%の含水量を有するステップ、及びその後に顆粒を乾燥させるステップを特徴とする方法。
【請求項14】
前記PVPPおよび水からなるドウを追加の加熱なしに押し出すことを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
飲料を処理する方法であって、(i)飲料を、請求項1から9のいずれか一項に記載のPVPP顆粒または請求項10から14のいずれか一項に従って得られるPVPP顆粒と接触させるステップ、及び(ii)その後に、飲料を濾過し、沈降させおよび/または遠心分離してPVPPを除去するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低発塵または無発塵水分散性架橋ポリビニルピロリドン(PVPP)顆粒の調製物であって、前記PVPPおよび水からなるドウをダイプレートを通して押し出し、その後に顆粒を乾燥させることを特徴とする、調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
PVPPは様々な用途が知られている。1つのそのような用途は、アルコールまたは非アルコール飲料の清澄剤としての用途である。そのような清澄剤としてのPVPPの用途は、主に、そのような飲料において見られるフェノールおよびポリフェノール化合物、例えばアントシアノゲンおよび他のタンニン、ならびにそれらの酸化生成物を除去するが、またそのような飲料からある特定の金属イオンも除去する、そのような材料の能力によるものである。
【0003】
PVPPがポリフェノール吸収剤としての価値があるビール産業では、製品性能は粒子サイズに直接関連する。McMurroughら(J Agricult Food Chem、43、10、2687~2691、1995)による研究では、「市販のPVPPの吸着能は粒子サイズの低下とともに増加した」ことが示された。
【0004】
飲料、清浄化、および薬学的技術分野におけるPVPPの広範な用途にもかかわらず、PVPP粉末は、いくつかの望ましくない取扱い上の問題を有し、具体的にはPVPP粉末の移送中の著しい発塵の可能性を有する。
【0005】
より「使用しやすい」PVPP製品、例えばより良好な粉末特性を有するPVPPを製造し、顧客に供給することが試みられている。
【0006】
WO2010/065603は、発塵の問題を克服するためにPVPP顆粒を作製する方法を概説している。この方法は、2つのステップ、すなわち、合着塊を形成するための圧縮ステップ、および圧縮された組成物を別個の小片に破砕するための破砕ステップを必要とする。得られた顆粒は、約200~1000μmの範囲内のサイズである。この2つのステップの方法は、コストの観点から理想的とは言えない。さらに、破砕ステップは、PVPPの微細構造をさらに損傷して望ましくない濾液特性をもたらす可能性を有する。さらに、顆粒化プロセスは、「顆粒組成物は非顆粒原料の元のポリフェノール除去の80%以上を保持する」という開示された記述により示されるように、元の粉末と比較して、顆粒PVPPのポリフェノール除去能にマイナスの影響を与える可能性があると思われる。
【0007】
WO 2018064795は、少なくとも70重量%のPVPP、より好ましくは少なくとも95重量%のPVPPを含む、最小限の発塵および許容され得る機械的特性を有する乾燥した直接圧縮錠剤を提供する。これらの錠剤が処理される飲料に入れられると、PVPPの分解特性により錠剤は速やかに分解し、元の粉末PVPPを製造する。得られた錠剤は感湿性であり、特別な、ひいては高価な包装処理を必要とする。分解には2分30秒を要する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、低発塵または無発塵顆粒を製造する方法であって、顆粒が感湿性を示さず、保存中により小さい粒子に分解せず、前記PVPPおよび水からなるドウをダイプレートを通して押し出し、続いて顆粒を乾燥させることにより製造される、方法に関する。
【0009】
推奨される操作様式では、好適な混合器を使用してPVPP粉末および水がある特定の比率で混合される。得られたドウは、25重量%~75重量%、好ましくは30重量%~70重量%、より好ましくは40重量%~65重量%、および最も好ましくは40重量%~65重量%の含水量を有し、好ましくは押出プロセス中いかなる追加の加熱もなしに、200μm~5mmの範囲の直径の単一孔を有するダイプレートを通して押し出される。好ましくは、直径は500μm~1mmであり、最も好ましくは700μmの直径である。押出速度は、一定の材料流量に達するように選択される。ダイプレートから押し出されたストリングは、ダイプレートの直後に、または振盪等の若干の機械的撹拌後に、圧密微小顆粒に分解する。これらの顆粒はまだ、ドウの調製中に選択された水分量を含有する。次いで、顆粒は、炉、流動床、パドル乾燥機もしくはベルト乾燥機等の乾燥機械、または同様の好適な機器内に移されるが、流動床乾燥機が好ましい。乾燥機械内では、顆粒は相対湿度が10重量%~2重量%となるまで乾燥される。
【0010】
得られた顆粒は、前記調製物の75%以上を構成する直径500μm以上の粒子サイズを有し、好ましくは、前記調製物の95%以上を構成する直径500μm以上の粒子サイズを有する、低または無発塵性および自由流動性である。低または無発塵および自由流動顆粒のさらなる具体的な実施形態において、直径850μm以上の粒子サイズを有する前記調製物における前記顆粒は、前記調製物の10%以下、最も好ましくは5%以下を構成する。顆粒の直径および粒子サイズ分布は、顆粒を異なるサイズ画分(0~1000μm)に分割する篩分析により決定される。
【0011】
乾燥した顆粒は、処理される飲料中に入れられると数分で分解し、PVPP粉末を製造する。PVPP顆粒と元のPVPP粉末とでは、観察されるポリフェノール吸収能に差はない。処理された飲料は、水性および含水アルコール性の両方であってもよく、例えば、ビールおよび同様の発酵製品、ワイン、茶、果汁、酢ならびに野菜抽出物を含み得る。乾燥した顆粒は、単独で、または他の製品と組み合わせて使用され得る。
【0012】
乾燥した顆粒の粉塵数(dust number)は、70~0、好ましくは65~0、より好ましくは52~0、及び最も好ましくは10~0である。比較のために、PVPP粉末である原材料Divergan Fの粉塵数は108であった。
【0013】
PVPP顆粒の粉塵数は、粉塵測定デバイス(DustView II、Palas GmbH、Karlsruhe(Germany))により決定される。これは、材料を充填するための漏斗、竪樋、および取り外し可能な粉塵ケージを有する集塵箱からなる。発塵性の乾燥材料の成分は、光電子手段により定量的に測定される。発塵材料は、測光法により測定される光ビームの減衰をもたらす。測定値およびその後の計算の両方が計測器により行われる。これは2つの値を示し、一方は0.5秒後に(最大値)、他方は30秒後に(粉塵値(dust-value))示される。粉塵数は、最大値および粉塵値の合計である。粉塵数の解釈は以下の通りである。
【0014】
粉塵数25~100以上:発塵性~極めて発塵性
粉塵数12~25:やや発塵性~発塵性
粉塵数8~12:ほぼ無発塵性
粉塵数8未満:ほぼ無発塵性~無発塵性
【0015】
ここで、以下の限定されない実施例を具体的に参照して本発明を説明する。
【0016】
[実施例]
[例1]
微粉末としての架橋PVPP(Divergan F)および水を、35対65の重量比率で標準的なLodigeミキサー(LodigeプロシェアミキサーM5 RMK、速度はチョッパにより160rpmに設定、Gebruder Lodige Maschinenbau GmbH製)内で十分に混合する。ドーム式押出機(Dome-Granulator DG-L1、Fuji Paudal Co.製)において、得られたドウを0.7mmの孔直径を有するダイプレートを通して50rpmの押出機速度で室温(20℃、1013,25mbar)で押し出す。これによって直接、落下により、および/または若干の機械的撹拌により単一顆粒に砕けるストリングが得られる。次いで、顆粒をポリプロピレンの箱に入れ、50℃で運転される標準的な実験炉内に移す。一晩乾燥させた後、顆粒は少なくとも90%の架橋PVPPからなっていた。顆粒は自由流動性であり、ほぼ無発塵性を示す(粉塵数13,8)。顆粒を水に50g/hLの濃度で添加すると、それらは速やかに分解してPVPP粒子の水中微細懸濁液となる。顆粒は67.6%のカテキン吸収を示し、一方、顆粒を作製するために用いられた非顆粒PVPPは67.0%のカテキン吸収を示す。
【0017】
[例2a]
例1と同様であるが、40rpmの押出機速度を使用し、50℃の大気温度で運転される流動床(Aeromatic AGの流動床Aeromatic Strea 1)内で乾燥を行った。得られた顆粒は、ほぼ無発塵性(粉塵数10,6)であり、自由流動性であり、水への添加後に極めて速やかに分解した。
【0018】
[例2b]
例2aと同様であるが、60rpmの押出機速度を使用した。得られた顆粒は、例2aからの顆粒と比較して差を示さなかった(粉塵数13,4)。
【0019】
[例2c]
例2aと同様であるが、80rpmの押出機速度を使用した。得られた顆粒は、例2aからの顆粒と比較して差を示さなかった(粉塵数6,4)。
【0020】
[例3a]
(本発明によらない)
80対20のPVPPと水との比を使用した。その他は例1と同じプロセスであったが、40rpmの押出機速度を用いた。篩い分けステップの前の著しい数の微粉(粉塵数142)を有する顆粒を得、顆粒はまた容易に砕ける。顆粒の粒子サイズ分布を表2に示す。
【0021】
[例3b]
例3aと同様であるが、PVPPと水との比は75対25であった。得られた顆粒は、大幅により細かくない微粉を示し、砕けるのがより容易ではない。顆粒の粒子サイズ分布を表2に示す。
【0022】
[例3c]
例3aと同様であるが、PVPPと水との比は70対30であった。得られた顆粒はそれほど発塵性ではなく(粉塵数64)、安定である。顆粒の粒子サイズ分布を表2に示す。
【0023】
[例3d]
例3aと同様であるが、PVPPと水との比は60対40であった。得られた顆粒はそれほど発塵性ではなく(粉塵数52)、安定である。顆粒の粒子サイズ分布を表2に示す。
【0024】
[例3e]
例3aと同様であるが、PVPPと水との比は50対50であった。得られた顆粒は発塵性ではなく(粉塵数8,5)、安定である。顆粒の粒子サイズ分布を表2に示す。
【0025】
[例3f]
例3aと同様であるが、PVPPと水との比は65対35であった。得られた顆粒は発塵性ではなく(粉塵数3,04)、安定である。顆粒の粒子サイズ分布を表2に示す。
【0026】
本発明によらない例
[例4]
例3aと同様であるが、PVPPと水との比は100対0であった。顆粒は得られず、むしろ元の使用されたPVPP粉末である。
【0027】
[例5]
例3aと同様であるが、PVPPと水との比は20対80であった。得られたドウは過度に湿潤しているため押し出すことができない。
【0028】
例1~5の結果を表1に報告する
【0029】
【0030】
分析ツール:
湿度測定:Mettler Toledoハロゲン乾燥機HR73で、1gの試料を秤に置き、質量の変化が50秒で1mg未満となるまで130℃で乾燥させることにより残留湿度を測定した。
【0031】
篩分析:粒子サイズ分布に関して、直径200mmの篩を使用するRetsch振動篩機AS 200コントロールgに25gの試料を置くことにより、篩分析を行った。その後、篩を10分間、2.0mmの振幅で振動させた。分析のために、篩を振動の前後に秤量した。
篩分析の結果を表2に報告する。
【0032】
【0033】
カテキン吸収:5%エタノール溶液中のフェノール化合物(+)-カテキンを含有するビールモデル系を、PPVPの吸収能の相対的測定として使用した。溶媒ブランクに対して、吸光度を280nmで測定した。
【0034】
試薬として、無水エタノール(DAB品質)、乾燥(+)-カテキン水和物(例えばFluka、製品番号22110、カテキン水和物の乾燥プロセス:60℃の真空乾燥機内で12時間、その後デシケータ内に保存された乾燥物質の決定)、超純水、HPLC品質(Millipore処理機器)を用いた。カテキン溶液に関しては、80mg(乾燥物質に基づく)を50mLのエタノールとともに1Lのメスフラスコに移し、激しく混合することにより溶解し、較正マークまで超純水を補充し、再び混合した。エタノール溶液に関しては、50mLのエタノールを1Lのメスフラスコに充填し、較正マークまで超純水を補充した。
【0035】
全ての場合において、分析に必要なPVPP品質の厳密な計算のためにDiverganの乾燥物質が決定される。50mgの乾燥PVPPを150mLのビーカー内で秤量し、ブランクを形成した。その後、ブランクが入ったビーカーに、厳密に5分の接触時間の間、100mLのエタノール溶液を加えた。懸濁液を速やかにガラスフィルタータイプG3(細孔サイズ16~40μm)、または極めて微細なPVPPの場合はガラスフィルタータイプG4(細孔サイズ10~16μm)に通して濾過し、5%エタノール溶液に対して280nmで測定した(EBL)。試料を形成するために、乾燥物質を考慮して50mgのPVPP試料を第2のビーカー内に秤量した。その後、100mLのカテキン溶液を試料に添加し、ブランク試料(ESA)の場合と同じ様式で進めた。「未処理」カテキン溶液を5%エタノール溶液に対して280nmで測定した。この値は基本容量E100と参照される。
【0036】
全ての溶液は、標準的なUV-Vis分光計において、1cmの石英キュベット内で280nmで測定された。カテキン吸着は、以下により計算される。
【0037】
【0038】
E100:カテキン溶液の消光
ESA:試料の消光
EBL:ブランクの消光
【0039】
粉末流動特性の決定
90mmの高さ、30°の傾斜角、ならびに上部が48mmで下端が2.5mm、5mm、8mm、12mmおよび18mmの開口を有する様々なガラス漏斗に、下部の開口を閉鎖したままで所与の生成物の代表的な試料を縁まで充填した。開放すると、生成物は漏斗から流れ出す。生成物が流動しない場合、次に大きい開口を有する次の漏斗を採用して、生成物が漏斗を通って流動したとみなされるまでこの手順を繰り返す。極めて高い流動性を有する試料は2.5mmの漏斗を通って流動し、極めて低い流動性を有する試料は18mmの漏斗を通って流動しない。
【0040】
【国際調査報告】