(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-11
(54)【発明の名称】ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 81/02 20060101AFI20221003BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20221003BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20221003BHJP
【FI】
C08L81/02
C08L53/02
C08L77/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507631
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2020070481
(87)【国際公開番号】W WO2021023502
(87)【国際公開日】2021-02-11
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/099492
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,チュン チエ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シー ヤン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BP013
4J002CL03X
4J002CN01W
4J002DL006
4J002EG037
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD078
4J002FD177
(57)【要約】
本発明は、A)ポリフェニレンスルファイドとB)ポリアミドとC)本明細書及び特許請求の範囲で定義されている構造式(I)S1
p-D-S2
qを有する水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーを含むか又はこれらからなる相溶化剤とを含むポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物に関する。また、本発明は、そのポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物によって得られるか又は得ることができる物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリフェニレンスルファイドと、B)ポリアミドと、C)下記構造式(I)を有する水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーを含むか又はこれらからなる相溶化剤
S
1
p-D-S
2
q (I)
(式中、S
1及びS
2は、互いに独立して、スチレン系モノマーに由来するポリマーブロックであり、
Dは、スチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとを共重合し、そしてエチレン性二重結合を水素化して得られるコポリマーブロックであり、そのコポリマーブロックが、場合により、無水マレイン酸をグラフト化したブロックであり、
p及びqは、互いに独立して、0又は1であり、但し、p及びqの少なくとも一方は1であり、
S
1、S
2、及びDを得るための前記スチレン系モノマーは、同一又は異なるものであり、そして、
前記スチレン系モノマーに由来するすべてのモノマー単位が、前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの40~80質量%を占める)
とを含む、ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記相溶化剤が、前記ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物の合計質量を100%として、0.1~10%、好ましくは0.5~6%の含有量で含まれている、請求項1に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項3】
前記コポリマーブロックDが、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのセグメントからなり、各セグメントが、前記スチレン系モノマーと前記共役ジエン系モノマーとをブロック共重合し、そしてエチレン性二重結合を水素化して得られるブロックに由来するものであり、そのブロックが、場合により、無水マレイン酸をグラフト化したブロックである、請求項1又は2に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項4】
前記水素化スチレン-ジエン系ブロックコポリマーが、下記構造式(II)又は(III)を有する星型の水素化スチレン-ジエン系ブロックコポリマー
[S
1-D-S
2]
m-R
1 (II)、又は
[S
1-D]
m-R
1 (III)
(式中、S
1、S
2、及びDは、請求項1又は3で定義した通りであり、
R
1は、カップリング剤の残基であり、そして、
mは、星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの腕の数を表し、少なくとも3の数である)
である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項5】
前記水素化スチレン-ジエン系ブロックコポリマーが、下記構造式(IV)又は(V)を有する星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー
[S
1-(A
x-B
y)
n-S
2]
m-R
1 (IV)、又は
[S
1-(A
x-B
y)
n]
m-R
1 (V)
(式中、S
1及びS
2は、互いに独立して、スチレン系モノマーに由来するポリマーブロックであり、
A
xは、スチレン系モノマーに由来するポリマーマイクロブロックであり、
B
yは、共役ジエンを重合しそして水素化することによって得られるポリマーマイクロブロックであり、そのポリマーマイクロブロックが、残留のエチレン性二重結合を含んでいてもよく、そして、場合により、無水マレイン酸をグラフト化したマイクロブロックであり、
xは、1~100の範囲内のスチレン系モノマー単位の平均数であり、
yは、1~170の範囲内の共役ジエンモノマー単位の平均数であり、
nは、構造単位-(A
x-B
y)-の平均数であり、3~1100の範囲にあり、
mは、前記星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの腕の数を表し、3~55の範囲の数であり、
R
1は、カップリング剤の残基であり、
各構造単位-(A
x-B
y)-は、別の構造単位-(A
x-B
y)-を得るためのスチレン系モノマー及び共役ジエンと同一又は異なるスチレン系モノマー及び共役ジエンに由来してもよく、そして、各構造単位-(A
x-B
y)-中のx及びyの数は、別の構造単位-(A
x-B
y)-中のx及びyの数と同一又は異なっている)
であり、そして、
前記スチレン系モノマーに由来する全てのモノマー単位が、前記星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの40~80質量%を占めている、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項6】
前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーにおいて、前記スチレン系モノマーに由来する全てのモノマーが、前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの50~80質量%、好ましくは55~75質量%、より好ましくは60~75質量%を占める、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項7】
前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーが、80~99.99%の範囲、好ましくは88~99%の範囲の水素化度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項8】
前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーが、その水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーを基準にして、無水マレイン酸をグラフト化した単位を0~3質量%、好ましくは1~2質量%で有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項9】
前記相溶化剤が、熱可塑性エラストマーの合計質量を基準にして、
(1)55~92%の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー、及び
(2)8~45%の単分散ポリスチレン
を含むか又はこれらからなる熱可塑性エラストマーである、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項10】
前記ポリフェニレンスルファイドA)が、ISO1133-1-2011に準拠して316℃/5kgで測定して、10~3,000g/10分、好ましくは80~2,000g/10分、より好ましくは80~300g/10分、最も好ましくは100~200g/10分の範囲のメルトマスフローレート(MFR)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項11】
前記ポリアミドB)が脂肪族ポリアミドの中から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項12】
前記ポリアミドB)が、30~100mmol/kg、好ましくは50~100mmol/kg、より好ましくは70~100mmol/kgの範囲内のアミノ末端基の含有量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項13】
前記ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物の合計質量を100%として、
A)20~50質量%、好ましくは20~40質量%の前記ポリフェニレンスルファイド;
B)20~50質量%、好ましくは20~40質量%の前記ポリアミド;及び
C)0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%、より好ましくは0.5~5質量%、1~4質量%、又は1~3質量%の前記相溶化剤
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項14】
前記ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物の合計質量を100%として、
A)20~50質量%、好ましくは20~40質量%の前記ポリフェニレンスルファイド;
B)20~50質量%、好ましくは20~40質量%の前記ポリアミド;
C)0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%、より好ましくは0.5~5質量%、1~4質量%、又は1~3質量%の前記相溶化剤;
D)10~50質量%、好ましくは20~40質量%の補強剤(好ましくは、ガラス繊維);及び
E)任意に、10質量%以下の追加の添加剤
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項15】
前記ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物の合計質量を100%として、
A)20~40質量%の前記ポリフェニレンスルファイド;
B)20~40質量%の前記ポリアミド;
C)0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%の前記相溶化剤(この相溶化剤において、コポリマーブロックD又は高分子マイクロブロックB
yは無水マレイン酸がグラフトしていない);
D)20~40質量%の補強剤(好ましくは、ガラス繊維);及び
E)0~10質量%の追加の添加剤
を含むか、又は
A)20~40質量%の前記ポリフェニレンスルファイド;
B)20~40質量%の前記ポリアミド;
C)0.1~5質量%、好ましくは0.5~4質量%の前記相溶化剤(この相溶化剤において、コポリマーブロックD又は高分子マイクロブロックB
yは無水マレイン酸をグラフト化したブロック又はマイクロブロックである);
D)20~40質量%の補強剤(好ましくは、ガラス繊維);及び
E)0~10質量%の追加の添加剤
を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【請求項16】
ポリフェニレンスルファイドとポリアミドとのブレンド中における相溶化剤としての、請求項1~8のいずれか一項に記載の前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は請求項9に記載の前記熱可塑性エラストマーの使用方法。
【請求項17】
前記ポリフェニレンスルファイドA)が、ISO1133-1-2011に準拠して316℃/5kgで測定して、10~3,000g/10分、好ましくは80~2,000g/10分、より好ましくは80~300g/10分、最も好ましくは100~200g/10分の範囲のメルトマスフローレート(MFR)を有し、そして/又は、前記ポリアミドB)が脂肪族ポリアミド類の中から選択される、請求項16に記載の使用方法。
【請求項18】
前記ポリアミドB)が、30~100mmol/kg、好ましくは50~100mmol/kg、より好ましくは70~100mmol/kgの範囲のアミノ末端基の含有量を有する、請求項16又は17に記載の使用方法。
【請求項19】
前記相溶化剤が、前記ブレンドの合計質量を基準にして、0.1~10%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは0.5~5%、1~4%又は1~3%の量で使用される、請求項16~18のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項20】
請求項1~8のいずれか一項に記載の前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は請求項9に記載の前記熱可塑性エラストマーが、前記ポリフェニレンスルファイドと前記ポリアミドとの相溶化剤として使用される、ポリフェニレンスルファイドとポリアミドとを含むブレンドを製造する方法。
【請求項21】
前記ポリフェニレンスルファイドA)が、ISO1133-1-2011に準拠して316℃/5kgで測定して、10~3,000g/10分、好ましくは80~2,000g/10分、より好ましくは80~300g/10分、最も好ましくは100~200g/10分の範囲のメルトマスフローレートを有し、そして/又は、前記ポリアミドB)が脂肪族ポリアミド類の中から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリアミドB)が、30~100mmol/kg、好ましくは50~100mmol/kg、より好ましくは70~100mmol/kgの範囲のアミノ末端基の含有量を有する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記相溶化剤が、ブレンドの合計質量を基準にして、0.1~10%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは0.5~5%、1~4%、又は1~3%の量で使用される、請求項20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~15のいずれか一項に記載の前記ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物から得られるか又は得ることができる物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーを含むポリフェニレンスルファイド/ポリアミド(PPS/PA)組成物及びそのPPS/PA組成物から得られるか又は得ることのできる物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンスルファイド(PPS:Polyphenylene sulfide)は、約280℃の高融点を有すると共に結晶部分を有する線状ポリマーである。PPSは、良好な高温性能及び耐熱性、優れた機械的特性(例えば、高い剛性)、優れた耐薬品性、良好な寸法安定性を有し、そして電気絶縁性及び本質的には難燃性である。PPSは、様々な分野(例えば、電気及び電子、自動車、化学工業、及び航空機の用途)で広く使用されているエンジニアリングプラスチックである。しかし、PPSは、硬い構造のせいで、靭性が低く、耐衝撃性が低いという欠点がある。
【0003】
ポリアミド(PA:Polyamide)は、エンジニアリングプラスチックとしても知られており、そして、望ましい機械的特性(例えば、強度及び靭性)、熱安定性、耐薬品性、溶融加工性を有するので、機械、電気及び電子、自動車、輸送などの分野で広く使用されている。
【0004】
個々の成分からバランスのとれた特性及び利点(例えば、PPSの靱性の向上とPAの溶融強度の向上)を有するポリマーブレンドを提供するために、PPSとPAとを組み合わせる試みがなされている。しかし、PPSとPAとは互いに相溶性が悪く、従って、それらをブレンドした場合には、PPS/PAブレンドから製造された物品についての機械的強度の低下及び表面状態の悪化などの問題がある。
【0005】
PPSとPAとの相溶性を向上させるために、様々な相溶化剤が提案されている。
【0006】
当技術分野で知られているPPSとPAとの相溶性を改善するための相溶化剤の1つの分類は、JPS59155462Aに記載されているような1つ又は複数のエポキシ基を含むエポキシ樹脂である。例えば、グリシジル基を含有するエポキシ樹脂は、PPSとPAとの相溶化剤として一般的である。
従来のエラストマー(例えば、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)及び無水マレイン酸をグラフト化した誘導体(SEBS-g-MA))は、線状のトリブロック構造及び低いスチレン含有量(30%以下)を有する。SEBS及びSEBS-g-MAは、Weihua Tang,et al,“Toughening and Compatilization of Polyphenylene Sulfide/PA66 Blends With SEBS and Maleic Anhydride Grafted SEBS Triblock Copolymers”,Journal of Applied Polymer Science,Vol.106,2648-2655(2007)に記載されているように、PPSとNylon66との相容性を改善するために提案されている。しかし、このような靭性の向上は、SEBSの含有量が20質量%未満の場合にかなり限定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PPS/PAブレンドの他の機械的特性を大きく犠牲にすることなく、PPS/PAブレンドの靭性及び溶融流動性を更に向上させることができる相溶化剤があれば望ましい。
【0009】
従って、本発明の目的は、靭性及び/又は溶融流動性が改善されたポリフェニレンスルファイド(PPS)とポリアミド(PA)とのブレンドを提供することにある。本発明の目的は、PPSとPAとの相溶化剤として、水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーによって達成されることを見出したことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の実施形態を提供するが、これらに限定されるものではない。
【0011】
実施形態1.A)ポリフェニレンスルファイドと、B)ポリアミドと、C)下記構造式(I)を有する水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーを含むか又はからなる相溶化剤
S1
p-D-S2
q (I)
(式中、S1及びS2は、互いに独立して、スチレン系モノマーに由来するポリマーブロックであり、
Dは、スチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとを共重合し、そしてエチレン性二重結合を水素化して得られるコポリマーブロックであり、そのコポリマーブロックが、場合により、無水マレイン酸をグラフト化したブロックであり、
p及びqは、互いに独立して、0又は1であり、但し、p及びqの少なくとも一方は1であり、
S1、S2、及びDを得るための前記スチレン系モノマーは、同一又は異なるものであり、そして、
前記スチレン系モノマーに由来するすべてのモノマー単位が、前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの40~80質量%を占める)
とを含む、ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0012】
実施形態2.前記相溶化剤が、前記ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物の合計質量を100%として、0.1~10%、好ましくは0.5~6%の含有量で含まれている、実施形態1に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0013】
実施形態3.前記コポリマーブロックDが、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのセグメントからなり、そのコポリマーブロックDにおいて、各セグメントが、前記スチレン系モノマーと前記共役ジエン系モノマーとをブロック共重合し、そしてエチレン性二重結合を水素化して得られるブロックに由来するものであり、そのブロックが、場合により、無水マレイン酸をグラフト化したブロックである、実施形態1又は2に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0014】
実施形態4.前記水素化スチレン-ジエン系ブロックコポリマーが、下記構造式(II)又は(III)を有する星型の水素化スチレン-ジエン系ブロックコポリマー
[S1-D-S2]m-R1 (II)、又は
[S1-D]m-R1 (III)
(式中、S1、S2、及びDは、実施形態1又は3で定義した通りであり、
R1は、カップリング剤の残基であり、そして、
mは、星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの腕の数を表し、少なくとも3の数である)
である、実施形態1~3のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0015】
実施形態5.前記水素化スチレン-ジエン系ブロックコポリマーが、下記構造式(IV)又は(V)を有する星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー
[S1-(Ax-By)n-S2]m-R1 (IV)、又は
[S1-(Ax-By)n]m-R1 (V)
(式中、S1及びS2は、互いに独立して、スチレン系モノマーに由来するポリマーブロックであり、
Axは、スチレン系モノマーに由来するポリマーマイクロブロックであり、
Byは、共役ジエンを重合しそして水素化することによって得られるポリマーマイクロブロックであり、そのポリマーマイクロブロックが、残留のエチレン性二重結合を含んでいてもよく、そして、場合により、無水マレイン酸をグラフト化したマイクロブロックであり、
xは、1~100の範囲内のスチレン系モノマー単位の平均数であり、
yは、1~170の範囲内の共役ジエンモノマー単位の平均数であり、
nは、構造単位-(Ax-By)-の平均数であり、3~1100の範囲にあり、
mは、前記星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの腕の数を表し、3~55の範囲の数であり、
R1は、カップリング剤の残基であり、
各構造単位-(Ax-By)-は、別の構造単位-(Ax-By)-を得るためのスチレン系モノマー及び共役ジエンと同一又は異なるスチレン系モノマー及び共役ジエンに由来してもよく、そして、各構造単位-(Ax-By)-中のx及びyの数は、別の構造単位-(Ax-By)-中のx及びyの数と同一又は異なっている)
であり、そして、
前記スチレン系モノマーに由来する全てのモノマー単位が、前記星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの40~80質量%を占めている、実施形態1~4のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0016】
実施形態6.前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーにおいて、前記スチレン系モノマーに由来する全てのモノマーが、前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの50~80質量%、好ましくは55~75質量%、より好ましくは60~75質量%を占める、実施形態1~5のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0017】
実施形態7.前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーが、80~99.99%の範囲、好ましくは88~99%の範囲の水素化度を有する、実施形態1~6のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0018】
実施形態8.前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーが、その水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーを基準にして、無水マレイン酸をグラフト化した単位を0~3質量%、好ましくは1~2質量%で有する、実施形態1~7のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0019】
実施形態9.前記相溶化剤が、熱可塑性エラストマーの合計質量を基準にして、
(1)55~92%の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー、及び
(2)8~45%の単分散ポリスチレン
を含むか又はからなる熱可塑性エラストマーである、実施形態1~8のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0020】
実施形態10.前記ポリフェニレンスルファイドA)が、ISO1133-1-2011に準拠して316℃/5kgで測定して、10~3,000g/10分、好ましくは80~2,000g/10分、より好ましくは80~300g/10分、最も好ましくは100~200g/10分の範囲のメルトマスフローレート(MFR)を有する、実施形態1~9のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0021】
実施形態11.前記ポリアミドB)が脂肪族ポリアミド類の中から選択される、実施形態1~10のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0022】
実施形態12.前記ポリアミドB)が、30~100mmol/kg、好ましくは50~100mmol/kg、より好ましくは70~100mmol/kgの範囲内のアミノ末端基の含有量を有する、実施形態1~11のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0023】
実施形態13.前記ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物の合計質量を100%として、
A)20~50質量%、好ましくは20~40質量%の前記ポリフェニレンスルファイド;
B)20~50質量%、好ましくは20~40質量%の前記ポリアミド;及び
C)0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%、より好ましくは0.5~5質量%、1~4質量%、又は1~3質量%の前記相溶化剤
を含む、実施形態1~12のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0024】
実施形態14.前記ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物の合計質量を100%として、
A)20~50質量%、好ましくは20~40質量%の前記ポリフェニレンスルファイド;
B)20~50質量%、好ましくは20~40質量%の前記ポリアミド;
C)0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%、より好ましくは0.5~5質量%、1~4質量%、又は1~3質量%の前記相溶化剤;
D)10~50質量%、好ましくは20~40質量%の補強剤(好ましくは、ガラス繊維);及び
E)任意に、10質量%以下の追加の添加剤
を含む、実施形態1~13のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0025】
実施形態15.前記ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物の合計質量を100%として、
A)20~40質量%の前記ポリフェニレンスルファイド;
B)20~40質量%の前記ポリアミド;
C)0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%の前記相溶化剤、この相溶化剤においてコポリマーブロックD又は高分子マイクロブロックByは無水マレイン酸がグラフトしていない;
D)20~40質量%の補強剤(好ましくは、ガラス繊維);及び
E)0~10質量%の追加の添加剤
を含むか、又は
A)20~40質量%の前記ポリフェニレンスルファイド;
B)20~40質量%の前記ポリアミド;
C)0.1~5質量%、好ましくは0.5~4質量%の前記相溶化剤、この相溶化剤においてコポリマーブロックD又は高分子マイクロブロックByは無水マレイン酸をグラフト化したブロック又はマイクロブロックである;
D)20~40質量%の補強剤(好ましくは、ガラス繊維);及び
E)0~10質量%の追加の添加剤
を含む、実施形態1~14のいずれか一項に記載のポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物。
【0026】
実施形態16.ポリフェニレンスルファイドとポリアミドとのブレンド中における相溶化剤としての、実施形態1~8のいずれか一項に記載の前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は実施形態9に記載の前記熱可塑性エラストマーの使用方法。
【0027】
実施形態17.前記ポリフェニレンスルファイドA)が、ISO1133-1-2011に準拠して316℃/5kgで測定して、10~3,000g/10分、好ましくは80~2,000g/10分、より好ましくは80~300g/10分、最も好ましくは100~200g/10分の範囲のメルトマスフローレート(MFR)を有し、そして/又は、前記ポリアミドB)が脂肪族ポリアミド類の中から選択される、実施形態16に記載の使用方法。
【0028】
実施形態18.前記ポリアミドB)が、30~100mmol/kg、好ましくは50~100mmol/kg、より好ましくは70~100mmol/kgの範囲のアミノ末端基の含有量を有する、実施形態16又は17に記載の使用方法。
【0029】
実施形態19.前記相溶化剤が、前記ブレンドの合計質量を基準にして、0.1~10%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは0.5~5%、1~4%又は1~3%の量で使用される、実施形態16~18のいずれか一項に記載の使用方法。
【0030】
実施形態20.実施形態1~8のいずれか一項に記載の前記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は実施形態9に記載の前記熱可塑性エラストマーが、前記ポリフェニレンスルファイドと前記ポリアミドとの相溶化剤として使用される、ポリフェニレンスルファイドとポリアミドとを含むブレンドを製造する方法。
【0031】
実施形態21.前記ポリフェニレンスルファイドA)が、ISO1133-1-2011に準拠して316℃/5kgで測定して、10~3,000g/10分、好ましくは80~2,000g/10分、より好ましくは80~300g/10分、最も好ましくは100~200g/10分の範囲のメルトマスフローレートを有し、そして/又は、前記ポリアミドB)が脂肪族ポリアミド類の中から選択される、実施形態20に記載の方法。
【0032】
実施形態22.前記ポリアミドB)が、30~100mmol/kg、好ましくは50~100mmol/kg、より好ましくは70~100mmol/kgの範囲のアミノ末端基の含有量を有する、実施形態20又は21に記載の方法。
【0033】
実施形態23.前記相溶化剤が、ブレンドの合計質量を基準にして、0.1~10%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは0.5~5%、1~4%、又は1~3%の量で使用される、実施形態20~22のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
実施形態24.実施形態1~15のいずれか一項に記載の前記ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物から得られるか又は得ることができる物品。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明を詳細に説明する。本発明は、多くの異なる方法で具現化することができ、本明細書に記載された実施形態に限定して解釈されるものではないことを理解されたい。特に言及しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。文脈の中では、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数のものを含む。したがって、例えば、「ポリフェニレンスルファイド(a polyphenylene sulfide)」の言及は、2以上のポリフェニレンスルファイド成分の組合せを含む。
【0036】
本明細書において、A)ポリフェニレンスルファイド、B)ポリアミド、及びC)相溶化剤を含むPPS/PA組成物は、ポリフェニレンスルファイド/ポリアミド組成物又はPPS/PA組成物と略称される。
【0037】
A)ポリフェニレンスルファイド(PPS)
本発明によるPPS/PA組成物に有用なポリフェニレンスルファイドは、下記構造式:
【化1】
で一般に表される繰り返し単位を有するポリマーである。
【0038】
本発明によるPPS/PA組成物に有用なポリフェニレンスルファイドは、ホモポリマーに限定されずに、上記に示すような繰り返し単位と他のコモノマー繰り返し単位とを有するコポリマーであってもよいことが理解される。
【0039】
特に、本発明によるPPS/PA組成物に有用なポリフェニレンスルファイドは、上記に示すような繰り返し単位を70mol%以上、特に90mol%以上有するポリマーである。また、ポリフェニレンスルファイドは、以下の構造式:
【化2】
を有する繰り返し単位を30mol%以下、好ましくは10mol%以下有していてもよい。
【0040】
本発明によるPPS/PA組成物に有用なポリフェニレンスルファイドは、一般に、ISO 1133-1-2011に準拠して316℃/5kgで測定した場合において、10~3,000g/10分、好ましくは80~2,000g/10分、より好ましくは80~300g/10分、最も好ましくは100~200g/10分の範囲のメルトマスフローレート(MFR:melt mass flow rate)を有する。
【0041】
本発明によるPPS/PA組成物に有用なポリフェニレンスルファイドは、特に制限なく種々のグレード(例えば、押出グレード、コーティンググレード、射出成形グレード、繊維グレード)を使用することができる。
【0042】
本発明によるPPS/PA組成物に有用なポリフェニレンスルファイドは、当技術分野で公知の任意のプロセスによって製造してもよく、又は、市販品、例えば、商品名で、Albis Plastic社製のTedur(登録商標);DIC社製のDIC.PPS;Polyplastics社製のDURAFIDE(登録商標);INITZ社製のECOTRAN(登録商標); Ticona社製のFortron(登録商標);Tosoh社製のPetcoal(登録商標);PolyOne社製のTherma-Tech(商標)TT9200-5001;Solvay Specialty Polymers社製のRyton(登録商標);Toray社製のTorelina(登録商標);及びZhejiang NHU SPECIAL MAT社製のNHU-PPSであってもよい。
【0043】
ポリフェニレンスルファイドA)は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、好ましくは20~50%、より好ましくは20~40%の含有率で含まれる。
【0044】
B)ポリアミド(PA)
本発明によるPPS/PA組成物に有用なポリアミドは、任意の従来の熱可塑性ポリアミド(例えば、脂肪族ポリアミド及び/又は半芳香族ポリアミド)、すなわち、非晶質、半結晶又は結晶性ポリアミド、及び/又はそれらのポリアミドコポリマーであってもよい。本発明の目的のためには、脂肪族ポリアミド類がより好ましい。
【0045】
ポリアミドの繰り返し単位は、ラクタム、ジカルボン酸及びジアミン、並びにアミノカルボン酸からなる群から選択される出発材料(1種又は複数種)に由来する。
【0046】
好適なラクタムは、6~14個の炭素原子を有するラクタム、例えば、ブチロラクタム、2-ピロリドン(γ-ブチロラクタム)、バレロラクタム、2-ピペリドン(δ-バレロラクタム)、ε-カプロラクタム、カプロラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム、エナントラクタム(7-ヘプタネラクタム)、及び/又はラウロラクタム等が好ましく、その中でも、ε-カプロラクタムがより好ましい。
【0047】
ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸、シクロ脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸であり得る。本発明の目的には、脂肪族ジカルボン酸及び/又はシクロ脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0048】
好適な脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは4~24個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン-1,11-ジカルボン酸、ドデカン-1,12-ジカルボン酸、フマル酸及び/又はイタコン酸である。
【0049】
好適なシクロ脂肪族ジカルボン酸は、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ビス(メチルシクロヘキシル)メタンからなる群より選ばれる少なくとも1つの炭素骨格を含むシクロ脂肪族ジカルボン酸であることが好適である。より好ましくは、シクロ脂肪族ジカルボン酸は、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,4-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸から選ばれる。
【0050】
好適な芳香族ジカルボン酸は、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及び/又はジフェニルジカルボン酸である。
ジアミンは、脂肪族ジアミン、シクロ脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンであり得る。本発明の目的のためには、脂肪族ジアミン及び/又はシクロ脂肪族ジアミンが好ましい。
【0051】
好適な脂肪族ジアミンは、好ましくは、4~24個の炭素原子を有する脂肪族ジアミン、例えば、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、ヘプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、オクタデカンジアミン、オクタデセンジアミン、エイコサンジアミン、 ドコサンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナン-1,9-ジアミン、及び/又は2,4-ジメチルオクタンジアミンである。
【0052】
好適なシクロ脂肪族ジアミンは、好ましくは、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM又はMACM)、p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、及び/又はイソホロンジアミン(IPDA)である。
【0053】
好適な芳香族ジアミンは、好ましくは、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、3-メチルベンジジン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノナフタレン、1,3-ジアミノナフタレン、1,4-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノトルエン、N,N’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジアミン、ビス(4-メチルアミノフェニル)メタン、及び/又は2,2’-ビス(4-メチルアミノフェニル)プロパンである。
【0054】
好適なアミノカルボン酸は、好ましくは、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、及び/又は12-アミノドデカン酸である。
【0055】
特に、本発明によるPPS/PA組成物に有用なポリアミドは、PA 5、PA 6、PA 8、PA 9、PA 10、PA 11、PA 12、PA 13、PA 14、PA 46、PA 48、PA 410、PA 412、PA 55、PA 510、PA 512、PA 66、PA 68、PA 69、PA 610、PA 612、PA 618、PA 88、PA 810、PA 812、PA 99、PA 910、PA 912、PA 1010、PA 1012、PA 1014、PA 1018、PA 1212、PA 1214、PA 1218、PA 6/66、PA 6/12、PA 6/11、PA 66/11、PA 66/12、PA 6/610、PA 66/610、PA 46/6、及びPA6/66/610からなる群から選択される少なくとも1種である。より好ましくは、PA5、PA 6、PA 8、PA 9、PA 10、PA 11、PA 12、PA 13、PA 14、PA 46、PA 48、PA 410、PA 412、PA 55、PA 510、PA 512、PA 66、PA 68、PA 69、PA 610、PA 612、PA 618、PA 88、PA 810、PA 812、PA 99、PA 910、PA912、PA 1010、PA 1012、PA 1014、PA 1018、PA 1212、PA 1214、及びPA 1218である。最も好ましくは、PA 5、PA 6、PA 46、PA 66、PA 610、PA 612、PA 910、PA 912、PA1010、PA1012、及びPA1212である。
【0056】
本発明によるPPS/PA組成物に有用なポリアミドは、例えば、DuPont社のZytel(登録商標)、Solvay社のTechnyl(登録商標)、Arkema社のRilsan(登録商標)及びRilsamid(登録商標)、並びにRadici Group社のRadipol(登録商標)の商品名で市販されているものであってもよい。
【0057】
本発明によるPPS/PA組成物に有用なポリアミドは、後述の実施例に記載の方法に従って測定したアミノ末端基の含有量が、30~100mmol/kg、好ましくは50~100mmol/kg、より好ましくは70~100mmol/kgの範囲であることが好ましい。
【0058】
ポリアミドB)は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、好ましくは20~50%、より好ましくは20~40%の含有率で含まれる。
【0059】
C)相溶化剤
本発明によるPPS/PA組成物に有用な相溶化剤は、以下の構造式(I):
S1
p-D-S2
q (I)(式中、S1及びS2は、互いに独立して、スチレン系モノマーに由来するポリマーブロックであり、
Dは、スチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとを共重合し、そしてエチレン性二重結合を水素添加することによって得られるコポリマーブロックであり、そのブロックは、場合により、無水マレイン酸をグラフト化したブロックであり、
p及びqは、互いに独立して、0又は1であり、ただし、p及びqの少なくとも一方は1であり、
S1、S2及びDを得るためのスチレン系モノマーは、同一であっても異なっていてもよい)
を有する水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーを含むか又はそれからなり、そして、
スチレン系モノマーに由来する全てのモノマー単位は、水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの40~80質量%を占める。
【0060】
以下、構造式(I)を有する水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーについて言及する場合には、「水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー」又は「本発明に係る水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー」という表現も使用する。
【0061】
本発明による水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーにおいて、コポリマーブロックDは、好ましくは、各セグメントがスチレン系モノマーと共役ジエンモノマーとをブロック共重合しエチレン性二重結合を水素化して得られる少なくとも2セグメント、より好ましくは少なくとも3セグメントからなり、そして、場合により、無水マレイン酸をグラフト化したブロックである。
【0062】
本発明による水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーにおいて、コポリマーブロックS1及びS2は、従来のポリスチレンブロックであり、好ましくはリビング重合により形成され、より好ましくはスチレン系モノマーのアニオン性リビング重合により形成されたものである。
【0063】
好ましくは、ポリマーブロックS1及びS2は、互いに独立して、それぞれ、水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの8~20質量%、好ましくは8~18質量%、なお好ましくは8~15質量%、より好ましくは10~14質量%を占めている。
【0064】
本発明による水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーにおいて、スチレン系モノマーに由来する全モノマー単位は、好ましくは、水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの50~80質量%、好ましくは55~75質量%、より好ましくは60~75質量%を占める。
【0065】
ポリマーブロックS
1及びS
2並びにコポリマーブロックDを得るためのスチレン系モノマーは、互いに独立して、下記一般式:
【化3】
(式中、R
2は、水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくは水素原子又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基であり;そして
R
3は、同一又は異なっており、水素原子、12個までの炭素原子を有する脂肪族、シクロ脂肪族又は芳香族炭化水素基、好ましくは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは水素原子又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択される)
で表される。
【0066】
特に、スチレン系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、ビニルトルエン、例えば、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン及びパラ-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、パラ-α-ジメチルスチレン、2-エチルスチレン、 3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-イソプロピルスチレン、3-イソプロピルスチレン、4-イソプロピルスチレン、ビニルナフタレン、パラ-tert-ブチルスチレン、及びその任意の組み合わせから選択することができる。これらの中でも、スチレン、α-メチルスチレン、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0067】
コポリマーブロックDを得るための共役ジエンモノマーは、非置換ブタジエン若しくは置換ブタジエン(例えば、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン)又はこれらの組み合わせから選択することができる。
【0068】
これらの中でも、ブタジエン、イソプレン、又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0069】
相溶化剤C)は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、好ましくは0.1~10%、より好ましくは0.5~6%、更に好ましくは0.5~5%、1~4%又は1~3%の含有量で含まれる。
【0070】
水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーにおけるコポリマーブロックDが無水マレイン酸をグラフト化していない本発明による特定の実施形態において、相溶化剤C)は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、0.1~10%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは0.5~5%、1~4%又は1~3%の含有量で含まれている。
【0071】
水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーにおけるコポリマーブロックDが無水マレイン酸をグラフト化したブロックである本発明による特定の実施形態において、相溶化剤C)は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、0.1~5%、好ましくは0.5~4%、より好ましくは1~4%又は1~3%の含有量で含まれる。
【0072】
好ましい実施形態において、水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーは、下記構造式(II)又は(III):
[S1-D-S2]m-R1 (II)、又は
[S1-D]m-R1 (III)
(式中、S1及びS2は、互いに独立して、スチレン系モノマーから誘導されるポリマーブロックであり、
Dは、スチレン系モノマーと共役ジエン系モノマーとを共重合し、エチレン性二重結合を水素化することによって得られるコポリマーブロックであり、そして、場合により、無水マレイン酸をグラフト化したブロックであり、
R1は、カップリング剤の残基であり、
mは、星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの腕の数を表し、少なくとも3の数であり、
S1、S2及びDを誘導するためのスチレン系モノマーは、同一であっても異なっていてもよく、そして
スチレン系モノマーに由来する全てのモノマー単位は、星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの40~80質量%を占める)
を有する星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーである。
【0073】
式(I)におけるポリマーブロックS1、S2及びコポリマーブロックDについて本明細書に記載したような説明及び好適態様は、本明細書において式(II)及び(III)に対して適用できることが理解されよう。
【0074】
本明細書では、構造式(II)若しくは(III)を有する星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー、又は下記式(IV)若しくは(V)を有する星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーを挙げた場合には、「星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー」又は「本発明による星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー」という表現も使用される。
【0075】
本発明による水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーにおいて、コポリマーブロックDは、好ましくは、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのセグメント(このコポリマーブロックDにおいて、各セグメントは、スチレン系モノマーと共役ジエンモノマーとをブロック共重合しエチレン性二重結合を水素化したものに由来する)、そして、場合により、無水マレイン酸をグラフト化したブロックである。
【0076】
星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー中のコポリマーブロックDが無水マレイン酸をグラフト化していない本発明による特定の実施形態において、相溶化剤C)は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、0.1~10%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは0.5~5%、1~4%又は1~3%の含有量で含まれる。
【0077】
星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー中のコポリマーブロックDが無水マレイン酸をグラフト化したブロックである本発明による特定の実施形態において、相溶化剤C)は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、0.1~5%、好ましくは0.5~4%、より好ましくは1~4%又は1~3%の含有量で含まれる。
【0078】
より具体的には、星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーは、下記構造式(IV)又は(V):
[S1-(Ax-By)n-S2]m-R1 (IV)、又は
[S1-(Ax-By)n]m-R1 (V)
(式中、S1及びS2は、互いに独立して、スチレン系モノマーに由来するポリマーブロックであり、
Axは、スチレン系モノマーに由来するポリマーマイクロブロックであり、
Byは、共役ジエンを重合して水素化することによって得られるポリマーマイクロブロックであり、残留のエチレン性二重結合を含んでいてもよく、そして、無水マレイン酸をグラフト化したマイクロブロックであり、
xは、1~100の範囲内のスチレン系モノマー単位の平均数であり、
yは、1~170の範囲内の共役ジエンモノマー単位の平均数であり、
nは、構造単位-(Ax-By)-の平均数であり、3~1100の範囲にあり、
mは、星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの腕の数を表し、3~55の範囲の数であり、
R1は、カップリング剤の残基であり、
各構造単位-(Ax-By)-は、別の構造単位-(Ax-By)-を得るためのスチレン系モノマー及び共役ジエンと同一又は異なるスチレン系モノマー及び共役ジエンに由来してもよく、そして、各構造単位-(Ax-By)-中のx及びyの数は、別の構造単位-(Ax-By)-中のx及びyの数と同一又は異なっていてもよく)
を有し、そして、
スチレン系モノマーに由来する全てのモノマー単位が、星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの40~80質量%を占めている。
【0079】
本発明の文脈における用語「マイクロブロック」は、各コポリマーブロックにおいて単一のモノマーからなる構造単位を意味することを意図している。
【0080】
式(I)におけるポリマーブロックS1、S2、及びコポリマーブロックDのスチレン系モノマー及び共役ジエン系モノマーについての本明細書で前述したような説明及び好適態様は、本明細書では式(IV)及び(V)について適用できることが理解されよう。
【0081】
カップリング剤としては、特に制限はない。カップリング剤としては、当該技術分野において多種多様なものが知られており、例えば、ジハロアルカン、ハロゲン化ケイ素、シロキサン、多官能性エポキシド、ポリアルケニル化合物(例えば、m-ジビニルベンゼン等)、珪素含有化合物(例えば、アルコキシシラン、アルキルシラン、アルキルアルコキシシラン等)、一価アルコールとカルボン酸のエステル(例えば、アジピン酸ジメチル等)、及びエポキシ化油が挙げられる。テトラアルコキシシラン類(例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン)、アルキルトリアルコキシシラン(例えば、メチルトリメトキシシラン(MTMQ))、脂肪族ジエステル(例えば、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル)、及び、ジグリシジル芳香族エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応から得られるジグリシジルエーテル)が好ましい。カップリング剤は、ジビニルベンゼン、SiCl4又はSnCl4からなる群から選択されることがより好ましい。
【0082】
本発明による特定の実施形態では、式(IV)又は(V)の星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーは、以下の好適態様(i)~(v)の1つ以上を有する:
(i)ポリマーマイクロブロックAx中のスチレン系モノマー単位の平均数xは、好ましくは1~90、より好ましくは1~70、最も好ましくは1~30の範囲である;
(ii)共役ジエンモノマー単位の平均数yは、好ましくは1~150、より好ましくは1~90、最も好ましくは1~35の範囲である;
(iii)構造単位-(Ax-By)-の平均数nは、好ましくは5~1100、又は10~1100、又は20~1100、又は30~1100、又は300~1100、又は650~1100、又は900~1100の範囲である;
(iv)腕の数mは、好ましくは3~55、好ましくは3~40、より好ましくは3~15、最も好ましくは3~5の範囲である。
【0083】
本発明による水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーは、好ましくは80~99.99%の範囲、より好ましくは88~99%の範囲の水素化度(hydrogenation degree)を有する。水素化度は、共重合共役ジエンの構造単位に含まれるエチレン性二重結合の水素化度を意味することが理解される。
【0084】
星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー中のポリマーマイクロブロックByが無水マレイン酸をグラフトしていない本発明による特定の実施形態において、相溶化剤C)は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、0.1~10%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは0.5~5%、1~4%又は1~3%の含有量で含まれる。
【0085】
星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー中のコポリマーマイクロブロックByが無水マレイン酸をグラフト化したマイクロブロックである本発明による特定の実施形態において、相溶化剤C)は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、0.1~5%、好ましくは0.5~4%、より好ましくは1~4%又は1~3%の含有量で含まれる。
【0086】
本発明による水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー及び星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーは、当技術分野で公知の任意のプロセス、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2016127355Aに記載されるようなプロセスによって製造することができる。WO2016127355Aに記載されているようなプロセスは、以下を含む:
(a)第1段階の重合:スチレン系モノマーをアニオンリビング重合すること;
(b)第2段階の重合:第1段階の重合のモノマー転換率が95%以上の場合において少なくとも2つのバッチを介して共役ジエンモノマーとスチレン系モノマーとのモノマー混合物を投入して第2段階の重合を行い、先行するバッチのモノマー転換率が95%以上の場合において後者のバッチに投入し、各バッチのスチレン系モノマー及び共役ジエンモノマーの種類類及び/又はその割合は同一でも異なってもよいこと;
(c)任意の第3段階の重合:スチレン系モノマーを投入し、重合すること;
(d)熟成:第2段階の重合又は(第3段階の重合が行われる場合には)第3段階の重合についてのモノマー変換が少なくとも95%である場合において、好ましくは20~120分間熟成して、線状ポリマーを得ること;
(e)任意のカップリング:カップリング剤を投入して線状ポリマーをカップリングして、星型のポリマーを得ること、及び
(f)水素化処理、及び任意の後処理を行うこと。
【0087】
第1段階、第2段階及び第3段階の重合は、50~100℃の範囲の温度で行うことが好ましい。第1段階、第2段階及び第3段階で使用するスチレン系モノマーは、同一であっても異なっていてもよい。
【0088】
第2段階の重合において、共役ジエン系モノマーとスチレン系モノマーとのモノマー混合物は、好ましくは3~60バッチ、より好ましくは5~55バッチ、最も好ましくは8~40バッチを介して重合系に投入される。バッチを介してモノマー混合物を投入することにより、スチレン系モノマーのマイクロブロックと共役ジエン系モノマーのマイクロブロックとを得ることができる。好ましくは、モノマー混合物の各バッチは、同じ質量を有する。好ましくは、モノマー混合物の各バッチは、同じモノマー比率を有する。各バッチ中のスチレン系モノマーは、各バッチ中のモノマー混合物の20~70質量%、好ましくは30~60質量%を占めてもよい。スチレン系モノマーは、第2段階の重合におけるモノマー混合物の20~64質量%、好ましくは30~60質量%、より好ましくは40~60質量%を占めてもよい。
【0089】
水素化段階においては、水素化触媒の存在下、60~140℃の範囲の温度及び0.8~2.2MPaの範囲の圧力で水素化を実施することが好ましい。
【0090】
アニオンリビング重合の有用な開始剤としては、アルキルリチウム又は他の有機リチウム、例えば、n-ブチリチウム、sec-ブチリチウム又はtert-ブチリチウムを挙げることができる。
【0091】
第1段階、第2段階及び第3段階の重合のための有用な溶媒は、形成されたポリマーのリビングアニオン性基と反応しないアニオン性リビング重合のための従来の溶媒、好ましくは非極性脂肪族炭化水素溶媒であってよい。非極性脂肪族炭化水素溶媒の例としては、シクロアルカン(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及び/又はシクロオクタン)、トルエン、ベンゼンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
モノマー転換率は、一般的な方法による気相クロマトグラフィーで測定することができる。
【0093】
重合には、特に制限なく、例えばWO2016/127355A1から当技術分野で公知の様々な適切な失活剤、カップリング剤、連鎖停止剤を使用することができる。
【0094】
本発明による水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー及び星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーは、その数平均分子量(Mn)が、ポリスチレン基準のTHF中ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して、20,000~800,000g/mol、好ましくは40, 000~600,000g/mol、より好ましくは50,000~400,000g/mol、なお好ましくは50,000~300,000g/mol、最も好ましくは100,000~300,000g/molの範囲である。本発明による水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーは、好ましくは1.01~1.5、より好ましくは1.01~1.3、最も好ましくは1.01~1.25の範囲の多分散度(Mw/Mn)を有する。
【0095】
本発明による水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー及び星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーは、熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0096】
本発明のさらなる実施形態では、相溶化剤は、以下のものを含むか又はからなる熱可塑性エラストマーである:
(1) 本発明による水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー55~92%、及び
(2) 単分散ポリスチレン8~45%
(それぞれ、熱可塑性エラストマーの合計質量を基準とする)。
【0097】
式(I)の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー、及び式(II)、(III)、(IV)及び(V)の星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーについて先に述べた説明及び好適態様は、本明細書では、水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーと単分散ポリスチレンを含むか又はからなる熱可塑性エラストマーに含まれる成分(1)にも適用される。
【0098】
単分散ポリスチレンは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が20,000~50,000万g/molで、多分散度(Mw/Mn)が1.01~1.20の範囲のアニオン性重合ポリスチレンであることが好ましい。単分散ポリスチレンを生成するための重合は、溶媒中における活性剤、触媒の存在下で、従来のアニオン重合を介して実施することができる。
【0099】
水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーと単分散ポリスチレンとを含むか又はからなる熱可塑性エラストマーは、成分(1)及び(2)のそれぞれのモノマーの代わりに重合して生じた成分の物理的な混合物ではないことが理解されよう。
【0100】
水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーと単分散ポリスチレンとを含むか又はからなる熱可塑性エラストマーは微細相分離構造になっており、ポリスチレンが、ポリマー母体中に分散相の形で存在し、原子間力顕微鏡で観察して、平均粒子径400~900nmの大型ポリスチレン分散相と平均粒子径10~95nmの小型ポリスチレン分散相とを含む。
【0101】
水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーと単分散ポリスチレンとを含むか又はからなる熱可塑性エラストマーは、示差走査熱量測定法(DSC)により昇温速度10K/分で求めたガラス転移温度(Tgs)が60℃以下のものを2つ有することが好ましい。特には、熱可塑性エラストマーは、低い方のTgが-35℃~-10℃であり、高い方のTgが10℃~30℃である。
【0102】
水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーと単分散ポリスチレンとを含むか又はからなる熱可塑性エラストマーは、当技術分野で公知の任意のプロセスによって、例えば参照によりその全体をここに組み込むWO2016127353Aに記載のようなプロセスによって製造することができる。WO2016127353Aに記載されているようなプロセスは、以下を含む:
(a)第1段階の重合:スチレン系モノマーをモノマー転換率95%以上にアニオンリビング重合し、リビング種を30~65質量%の割合で部分的に失活させて単分散ポリスチレンを得た後に、スチレン系モノマーを添加して更に重合するか又は第2重合段階へ直接移行すること、
(b)第2段階の重合:第1段階の重合のモノマー転換率が95%以上の場合において、少なくとも2つのバッチを介して共役ジエンモノマーとスチレン系モノマーとのモノマー混合物を投入して第2段階の重合を実施し、後続のバッチは先行のバッチのモノマー転換率が95%以上の場合に投入し、各バッチのスチレン系モノマー及び共役ジエンモノマーの種類及び/又はその割合は同一でも異なってもよいこと、
(c)場合により第3段階の重合:スチレン系モノマーを投入し、重合すること、
(d)熟成:第2段階の重合又は(第3段階の重合が行われる場合には)第3段階の重合のモノマー転換が少なくとも95%である場合には、熟成して線状ポリマーを得ること、
(e)場合によりカップリング:カップリング剤を投入して線状ポリマーをカップリングさせ、星型のポリマーを得ること、及び
(f)生成物を不活性化及び水素化処理にさらすこと。
【0103】
第1段階、第2段階、第3段階で使用するスチレン系モノマーの種類は、同一でも異なっていてもよい。重合は、50~100℃の範囲の温度で行われることが好ましい。
【0104】
水素化段階では、水素化は、水素化触媒の存在下で、60~140℃の範囲の温度及び0.8~2.2MPaの範囲の圧力で実施することが好ましい。
【0105】
重合には、特に制限なく、例えばWO2016/127355A1から当技術分野で公知の様々な適切な開始剤、失活剤、カップリング剤、連鎖停止剤、及び溶媒を使用することができる。
【0106】
なお、水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーが無水マレイン酸がグラフト化した単位を含む場合には、そのグラフト化は従来の任意のプロセスに従って実施することができる。本発明の目的のために、無水マレイン酸は、連鎖停止剤としても有用である。特に、無水マレイン酸がグラフト化した単位は、水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーの0~3質量%、好ましくは1~2質量%を占めている。
【0107】
ポリフェニレンスルファイド、ポリアミド、及び相溶化剤を含む組成物(PPS/PA組成物)
本発明によるPPS/PA組成物は、好ましくは以下のものを含む。
A)20~50質量%のポリフェニレンスルファイド、
B)20~50質量%のポリアミド、及び
C)0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%、より好ましくは0.5~5質量%、1~4質量%又は1~3質量%の相溶化剤
(それぞれ、PPS/PA組成物の合計質量100%を基準とする)。
【0108】
本発明によるPPS/PA組成物は、D)補強剤を更に含んでいてもよい。補強剤の例としては、繊維状の補強剤、例えば、無機繊維及び炭素質繊維(例えば、ガラス繊維)、並びに、中空又は固体粒状の補強剤(例えば、ケイ酸塩、金属酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ガラスビーズ、シリカ、窒化ホウ素及び/又は炭化ケイ素)が挙げられる。補強剤としては、ガラス繊維が最も好ましい。
【0109】
補強剤は、PPS/PA組成物の合計質量を基準にして、10~50%、好ましくは20~40%の範囲の量で、本発明によるPPS/PA組成物に含まれてもよい。
【0110】
本発明によるPPS/PA組成物は、滑剤、安定剤(例えば熱、光、放射線又は加水分解安定剤を含む)、表面効果添加剤、可塑剤、染料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、流動調整剤、離型剤、難燃剤及び帯電防止剤から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含んでいてもよい。少なくとも1種の添加剤については、特に制限はない。それらの添加剤は、それぞれ、当技術分野で公知の従来の量、例えば、PPS/PA組成物の合計質量を基準にして0.01~2質量%で使用することができる。また、PPS/PA組成物中に1種を超える添加剤を含有する場合には、その添加剤の合計量は、一般に、PPS/PA組成物の合計質量を基準にして10質量%以下である。
【0111】
本発明によるPPS/PA組成物に有用な滑剤は特に限定されず、例えば、10~40個の炭素原子を有する脂肪酸のエステル又はアミド、ポリエチレンワックス、EVAワックス、酸化ポリエチレンワックス、脂肪アルコール、脂肪酸、モンタンワックス、シリコンワックス、脂肪酸のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム及び/又はステアリン酸マグネシウム)である。好ましい滑剤は、ステアリン酸カルシウムである。
【0112】
滑剤は、好ましくは、PPS/PA組成物の合計質量を基準にして、約0~3%、より好ましくは約0.01~2%、0.1~1%又は0.2~0.8%の量で、本発明によるPPS/PA組成物に含有される。
【0113】
有用な光安定剤は、ヒンダードアミン系光安定剤(「HALS」)であり、ヒンダードアミン系光安定剤の例としては、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、コハク酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、セバシン酸ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、マロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)ブチル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタン-テトラカルボキシレート、1,1’-(1,2-エタンジイル)-ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、4-ベンゾイル-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、マロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)-2-n-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)、 3-n-オクチル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン、セバシン酸ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジ)コハク酸塩、4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン、N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-n-ドデシルスクシンイミド、N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-n-ドデシルスクシンイミド、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン、3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジル)ピロリジン-2,5-ジオン、及び3-ドデシル-1-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ピロリジン-2,5-ジオンが挙げられる。
【0114】
本発明によるPPS/PA組成物に有用な酸化防止剤は、特に限定されず、例えば、芳香族アミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン酸塩系酸化防止剤、金属及びその塩、及びヨウ化物が挙げられる。
【0115】
芳香族アミン系酸化防止剤の例としては、ポリ(1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン)、ビス(4-オクチルフェニル)アミン、4,4’-ビス(α、α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N、N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N、N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、及び/又はN,N’-ビス(メチルフェニル)-1,4-ベンゼンジアミンが挙げられる。
【0116】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例としては、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)-α-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロピル]-ω-[3-[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]-1-オキソプロポキシ]、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、オクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7-C9-分岐アルキルエステル、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-o-クレゾール、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸オクタデシルエステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及び/又はBASF SE社製Irganox(登録商標)1098を挙げることができる。
【0117】
亜リン酸塩系酸化防止剤の例としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)168、BASF SE)、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(Ultranox(登録商標)626,Chemtura社製) 、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADK Stab PEP-36、ADEKA社製)、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト(Doverphos(登録商標)S-9228, Dover Chemical社製)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)TNPP、BASF SE)、(2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール)-2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールホスファイト(Ultranox(登録商標)641、Chemtura社製)、及びクラリアント社製のHostanox(登録商標)P-EPQが挙げられる。
【0118】
金属及びその塩の例としては、銅、鉄、ヨウ化銅、ヨウ化カリウム、臭化銅、及び臭化カリウムが挙げられる。
【0119】
市販の酸化防止剤の例としては、銅塩とヨウ化物との組み合わせ、例えば、Brueggemann-Gruppe社製のBrueggolen H3350、PolyAd Services社製のPolyad(登録商標)PB201が挙げられる。
酸化防止剤は、好ましくは、PPS/PA組成物の合計質量を基準にして、約0~2%、より好ましくは約0.01~1%又は約0.1~1%、最も好ましくは約0.2~0.8%の量で本発明によるPPS/PA組成物に含有される。
【0120】
本発明によるPPS/PA組成物に有用な着色剤は、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、硫化亜鉛、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ニグロシン及び/又はアントラキノンが挙げられる。
【0121】
本発明による特定の実施形態において、本発明によるPPS/PA組成物は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、以下を含む:
A)20~50質量%、好ましくは20~40質量%のポリフェニレンスルファイド;
B)20~50質量%、好ましくは20~40質量%のポリアミド;
C)0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%、より好ましくは0.5~5質量%、1~4質量%、又は1~3質量%相溶化剤;
D)10~50質量%、好ましくは20~40質量%の補強剤、好ましくはガラス繊維;及び
E)任意に、10質量%以下の任意の追加の添加剤。
【0122】
本発明によるより具体的な実施形態では、本発明によるPPS/PA組成物は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、以下を含む:
A)20~40質量%のポリフェニレンスルファイド;
B)20~40質量%のポリアミド;
C)0.5~6質量%、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは1~4質量%又は1~3質量%の相溶化剤;
D)20~40質量%の補強剤;及び
E)滑剤及び酸化防止剤、それぞれ、0.1~1質量%、好ましくは0.2~0.8質量%の量である。
【0123】
本発明によるさらなる特定の実施形態において、本発明によるPPS/PA組成物は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、以下を含む:
A)20~50質量%、好ましくは20~40質量%のポリフェニレンスルファイド;
B)20~50質量%、好ましくは20~40質量%のポリアミド;
C)0.1~10質量%、好ましくは0.5~6質量%、より好ましくは0.5~5質量%、1~4質量%又は1~3質量%の相溶化剤、この相溶化剤においてコポリマーブロックD又は高分子マイクロブロックByは無水マレイン酸がグラフトしていない;
D)10~50質量%、好ましくは20~40質量%の補強剤、好ましくはガラス繊維;及び
E)0~10質量%の任意の追加の添加剤。
【0124】
本発明による更に特定の実施形態において、本発明によるPPS/PA組成物は、PPS/PA組成物の合計質量を100%として、以下を含む:
A)20~50質量%、好ましくは20~40質量%のポリフェニレンスルファイド;
B)20~50質量%、好ましくは20~40質量%のポリアミド;
C)0.1~5質量%、好ましくは0.5~4質量%、より好ましくは1~4質量%又は1~3質量%の相溶化剤、この相溶化剤においてコポリマーブロックD又は高分子マイクロブロックByは無水マレイン酸をグラフト化したブロック又はマイクロブロックである;
D)10~50質量%、好ましくは20~40質量%の補強剤、好ましくはガラス繊維;及び
E)0~10質量%の任意の追加の添加剤。
【0125】
本発明によるPPS/PA組成物は、公知の種々の方法によって製造又は加工することができる。例えば、本発明によるPPS/PA組成物は、押出機を通して、供給ゾーンにポリアミド、相溶化剤、ポリフェニレンスルファイド、滑剤及び酸化防止剤を導入し、下流の供給ゾーンに補強剤を導入して混練及び押出し加工することにより製造又は加工することができる。なお、ポリアミド等の成分は、必要に応じて予め乾燥させておいてもよい。なお、各成分を同一の供給ゾーンに導入する場合には、その形態又は性質に応じて異なるホッパーを介して導入してもよいことは理解されよう。例えば、PPS、酸化防止剤及び滑剤は、粉末ホッパーのような同一のホッパーを介して押出機に導入され、ポリアミド及び相溶化剤は、顆粒ホッパーのような別のホッパーを介して同一ゾーンに導入することができる。
【0126】
本発明の第2の観点は、上記の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー、又は水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーと単分散ポリスチレンとを含むかからなる熱可塑性エラストマーの、ブレンド中のポリフェニレンスルファイド及びポリアミドに対する相溶化剤としての使用に関するものである。相溶化剤は、ブレンドの合計質量を100%として、好ましくは0.1~10%、より好ましくは0.5~6%、最も好ましくは0.5~5%、1~4%又は1~3%の量で使用される。
【0127】
本発明の第2の観点による特定の実施形態において、コポリマーブロックDが無水マレイン酸をグラフト化していない相溶化剤は、ブレンドの合計質量を100%として、好ましくは0.1~10%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは0.5~5%、1~4%又は1~3%の含有量で使用される。
【0128】
本発明の第2の観点による特定の実施形態において、コポリマーブロックDが無水マレイン酸をグラフト化したブロックである相溶化剤は、ブレンドの合計質量を100%として、好ましくは0.1~5%、好ましくは0.5~4%、より好ましくは1~4%又は1~3%の含有量で使用される。
【0129】
ポリフェニレンスルファイドA)は、ISO1133-1-2011に準拠して316℃/5kgで測定したメルトマスフローレート(MFR)が、好ましくは10~3,000g/10分、より好ましくは80~2,000g/10分、80~300g/10分、最も好ましくは100~200g/10分の範囲である。
【0130】
ポリアミドB)は、好ましくは脂肪族ポリアミド類の中から選択される。ポリアミド(B)は、好ましくは30~100mmol/kg、より好ましくは50~100mmol/kg、最も好ましくは70~100mmol/kgの範囲内のアミノ末端基の含有量を有する。
【0131】
本発明の第3の観点は、上記水素化スチレン-ジエンブロックコポリマー又は星型の水素化スチレン-ジエンブロックコポリマーと単分散ポリスチレンとを含むか又はからなる熱可塑性エラストマーをポリフェニレンスルファイドとポリアミドとの相溶化剤として使用するポリフェニレンスルファイド及びポリアミドを含むブレンドの製造方法に関するものである。相溶化剤は、ブレンドの合計質量を100%として、好ましくは0.1~10%、より好ましくは0.5~6%、最も好ましくは0.5~5%、1~4%又は1~3%の含有量で使用される。
【0132】
本発明の第3の観点による特定の実施形態において、相溶化剤(この相溶化剤において、コポリマーブロックDが無水マレイン酸をグラフト化していない)は、ブレンドの合計質量を100%として、好ましくは0.1~10%、好ましくは0.5~6%、より好ましくは0.5~5%、1~4%又は1~3%含有量で使用される。
【0133】
本発明の第3の観点による特定の実施形態において、相溶化剤(この相溶化剤において、コポリマーブロックDが無水マレイン酸をグラフト化したブロックである)は、ブレンドの合計質量を100%として、好ましくは0.1~5%、好ましくは0.5~4%、より好ましくは1~4%又は1~3%の含有量で使用される。
【0134】
ポリフェニレンスルファイドA)は、ISO1133-1-2011に準拠して316℃/5kgで測定したメルトマスフローレート(MFR)が、好ましくは10~3,000g/10分、より好ましくは80~2,000g/10分、80~300g/10分、最も好ましくは100~200g/10分の範囲である。
【0135】
ポリアミドB)は、好ましくは、脂肪族ポリアミド類の中から選択される。ポリアミド(B)は、好ましくは30~100mmol/kg、より好ましくは50~100mmol/kg、最も好ましくは70~100mmol/kgの範囲のアミノ末端基の含有量を有する。
【0136】
本発明の第4の観点は、本発明によるPPS/PA組成物から得られるか又は得ることができる物品に関するものである。
【0137】
本発明は、以下の実施例を参照して更に説明される。実施例は、例示のために記載されたものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0138】
以下の実施例で使用した材料を表1にまとめる。
【0139】
【0140】
実施例で使用するか又は得られた材料の特性は、特に断りのない限り、以下の記載に従った。
【0141】
アミノ末端基の含有量
アミノ末端基含有量は、ポリアミド1.0gをフェノール-メタノール混合液(質量比3:1)30mlに92℃で溶解して測定する。冷却後、得られた溶液を25℃で0.02mol/Lの塩酸で滴定して、そして、滴定、データ計算、及び結果計算を自動で行うMetrohm Titrando 905(スイス)で測定する。アミノ末端基含有量の計算は、以下の式で行う:
A = (V-V0)×F×1000
E×(100-試料の含水率)
(式中、
Aは、アミノ末端基含有量(meq/kg)を表す;
Vは、HCl消費量(ml)を表す;
Eは、サンプル量(g)を表す;
Fは、校正係数を表す;
V0は、ブランクのHCl消費量(ml)を表す)。
【0142】
校正係数Fは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを標準物質として用いて決定される。120℃で乾燥後冷却したトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン30~40gをフェノール-メタノール混合液(質量比3:1)30mLに溶解し、そして、0.02mol/L塩酸で滴定する。校正係数Fは、以下の式に従って計算する:
F = E’×1000
121.14×V’
(式中、V’は、塩酸の消費量(ml)を表す;
E’は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの量(g)を表す)。
【0143】
アミノ末端基含有量の計算値が90mmol/kg以下の場合には、その計算値をポリアミドのアミノ末端基含有量として決定する。アミノ末端基含有量の計算値が90mmol/kgより大きい場合には、0.5gのポリアミドで測定を繰り返し、そして、この測定の2回目の計算値をポリアミドのアミノ末端基含有量として決定する。
【0144】
SEBSの材料特性:
Kraton(登録商標)FG1924 G、Oretel(登録商標)HES6702、及びOretel(登録商標)HES6831のそれぞれのモノマー単位含有量は、100℃のテトラクロロエタンC2D2Cl4中において150MHzの13CNMRで測定される。
【0145】
引張試験:
ISO527-1-2012に準拠して、Zwick Z050引張試験機を用いて材料の破断引張強さ、弾性、破断伸びを測定する試験である。
【0146】
シャルピー衝撃試験:
ISO179-1-2010に準拠して、Ceast Resil Impactor P/N6958によって、23℃で材料の靭性を測定する試験である。
【0147】
メルトフロー試験:
材料のメルトフローレートは、ISO1133-1-2011に準拠して、GOETTFERT社のmi-2モデルメルトインデックス試験装置で測定する。特に断りのない限り、ポリフェニレンスルファイド(PPS)については316℃/5kgの条件でメルトマスフローレート(MFR)値を測定して、モールドについては290℃/5kgの条件でメルトボリュームフローレート(MVR)値を測定する。
【0148】
また、実際の射出成形流動性の指標として、材料のメルトフローをスパイラルフロー試験で測定している。試験には、深さ2mm、幅5mm、長さ115cmの螺旋状の流路を中央から出てくるように有するモールドを使用する。流路の最外壁の2点間の最長距離は15.0cm、流路の最外壁の2点間の最短距離は3.7cmである。流路には、1cmごとにエッチングされたノッチがあり、中心からの距離を識別するために5cmごとに番号が付けられている。試験対象のメルトは、290℃、500barでスパイラルの中心にあるスプルーから注入され、80℃の温度に保たれたモールドの流路に沿って流れる。流れが止まるまでのメルトフローの距離を記録する。流れが止まるまでの距離が長いほど、射出成形におけるメルトフロー性能が優れていることになる。
【0149】
以下の表2に示す配合量及び条件に従って、5種類の組成物を配合し、そして二軸押出機ZSK26(Coperion GmbH、ドイツ)を用いて、180℃~300℃の範囲の温度で、スクリュー回転数300~350rpmの一連の条件で溶融押出し、ペレット化して乾燥させ、PPS/PAペレットを得た。
【0150】
この乾燥ペレットを、射出成形機ARBURG 370C(Arburg GmbH+Co KG、ドイツ)を用いて、以下の表2に示す条件で加工し、試験片を得た。
【0151】
【0152】
表2に示すような試験結果から明らかなように、実施例1~3によるPPS/PA組成物では、靭性(シャルピー衝撃)及びメルトフロー性が向上している。参考例1のPPS/PAブレンドと比較して、実施例1~3による組成物では、ノッチ無しのシャルピー強度が9~17.3%向上しており、一方、ポリスチレン単位の含有量が低いSEBSを含むPPS/PA組成物では、ノッチ無しのシャルピー強度が0.9%しか向上していない。また、実施例1及び2によるPPS/PA組成物では、靭性、流動性、及び引張性が同時に顕著に向上していることが明らかである。
【国際調査報告】