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特表2022-543885タングステンエッチング抑制用組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(54)【発明の名称】タングステンエッチング抑制用組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221006BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20221006BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20221006BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508507
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2020071890
(87)【国際公開番号】W WO2021028264
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】19190905.0
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ラウター,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】グェヴェンク,ハチ オスマン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,トー ユイ
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,チン スン
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA01
3C158DA12
3C158EB01
3C158ED08
3C158ED22
3C158ED26
5F057AA08
5F057AA09
5F057AA28
5F057BA15
5F057BA22
5F057BB16
5F057BB25
5F057BB34
5F057BB38
5F057CA12
5F057CA25
5F057DA03
5F057DA38
5F057EA01
5F057EA06
5F057EA07
5F057EA11
5F057EA16
5F057EA17
5F057EA18
5F057EA22
5F057EA25
5F057EA31
5F057EC30
5F057FA37
(57)【要約】
本特許請求の範囲に記載の発明は、エッチングを抑制するための組成物及び方法に関する。本特許請求の範囲に記載の発明は、特に、タングステンエッチングを抑制するための組成物及び方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンエッチング抑制用組成物であって、
(A)少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(C)水性媒体
を含み、
該組成物のpHが5.0以上11.0以下の範囲であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の無機研磨粒子(A)が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の濃度が、前記組成物の総質量に基づいて、0.01質量%以上10.0質量%以下の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の腐食抑制剤(B)がクロルヘキシジンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の腐食抑制剤(B)の濃度が、前記組成物の総質量に基づいて、0.001質量%以上0.05質量%以下の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
ポリアクリルアミド及びポリアクリルアミド共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤(D)をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の腐食抑制剤(D)の、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した質量平均分子量が、5000g/mol以上50,000g/mol以下の範囲である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の腐食抑制剤(D)の濃度が、前記組成物の総質量に基づいて、0.001質量%以上0.5質量%以下の範囲である、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
有機過酸化物、無機過酸化物、過硫酸塩、ヨウ素酸塩、水酸化カリウム、硝酸第二鉄、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、リン酸、臭素酸及び臭素酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸化剤(E)をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の酸化剤(E)が、有機過酸化物、硝酸第二鉄及びリン酸からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の酸化剤(E)の濃度が、前記組成物の総質量に基づいて0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲である、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項で定義した組成物の存在下で、半導体産業で使用される基板(S)を化学的機械的に研磨することを含み、該基板(S)が
(i)タングステン及び/又は
(ii)タングステン合金
を含むことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項14】
タングステンの静的エッチ速度(SER)が12Å/分未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
タングステンのエッチングを抑制するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許請求の範囲に記載の発明は、エッチングを抑制するための組成物及び方法に関する。特に、本特許請求の範囲に記載の発明は、タングステンのエッチングを抑制するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
半導体デバイス(素子、装置)を形成する集積回路は、基板内に化学的・物理的に接続されたアクティブデバイス(能動素子)を、マルチレベルインターコネクト(多重レベル相互接続)により相互接続したものである。一般的に、マルチレベルインターコネクトは機能回路を形成し、第1の金属層、インターレベル(層間)誘電体層、及び、任意で第3の金属層を含む。各層が形成されると、新たに形成された層の上に後続の層を形成することできるようその層の平坦化を行う。半導体業界では、化学的機械的研磨(CMP)は、よく知られた技術であり、半導体ウェハなどの高度な、フォトニック、マイクロエレクトロメカニカル(材料及びデバイス)、マイクロエレクトロニクス材料及びデバイスの製造に応用されている。
【0003】
CMPは、化学的作用と機械的作用との相互作用を利用して、研磨すべき面の平面性を実現するものである。化学的作用は、CMP組成物又はCMPスラリーとも呼ばれる化学組成物によってもたらされる。機械的作用は、研磨パッドを、通常、研磨されるべき表面に押し付けることにより行う。このパッドは、移動プラテンに取り付けられている。一般的なCMPプロセス段階では、回転ウェハホルダーが、研磨すべきウェハを研磨パッドに接触させる。CMP組成物は、通常、被研磨ウェハと研磨パッドとの間に塗布する。
【0004】
超大規模集積回路(ULSI)技術におけるフィーチャーサイズの継続的な縮小に伴い、銅相互接続構造のサイズはますます小型化している。抵抗(R)及びキャパシタンス(C)によって回路配線を通過する信号速度が遅れるRC遅延を低減するために、銅相互接続構造のバリア層又は接着層の厚さを薄くしている。従来の銅バリア/接着層スタックのTa/TaNでは、Taの抵抗率が比較的高く、銅をTaに直接電気めっきすることができないため、もはや適していない。導電材料としてタングステンを使用して相互接続を形成するケースが増えている。典型的な製造プロセスでは、二酸化ケイ素の隆起部分を露出させて誘電体層を形成することができる平面が得られるまで、タングステン被覆層の厚さを減らす目的でCMPを使用している。一般的に、タングステンを含有する基板を研磨するためのCMP組成物は、タングステンをエッチングすることができる化合物を含んでいる。タングステンをエッチングできる化合物は、タングステンを機械的な摩耗により除去可能な柔らかい酸化膜に変える。CMPプロセスの研磨工程では、基板の平面性を確保するために、タングステンのオーバーコート層を除去する。しかし、このプロセスでは、静的なエッチングと研磨剤の機械的作用の組合せにより、タングステンが望ましくない形で腐食され、ディッシング(dishing)又はエロージョン(erosion)が発生することがある。
【0005】
当技術分野では、タングステンエッチングに対する抑制剤を含む組成物が知られており、例えば、以下の文献に記載されている。
【0006】
U.S.6,273,786 B1には、タングステンを保護するために、リン酸塩、ポリリン酸塩、及びケイ酸塩、具体的には次亜リン酸カリウム及びケイ酸カリウムを含むタングステン腐食抑制剤(corrosion inhibitors)を含む組成物及び方法が記載されている。
【0007】
U.S.6,083,419 Aには、タングステンをエッチングすることができる化合物と、少なくとも1種のタングステンエッチングの抑制剤とを含む化学機械研磨組成物が記載されている。該タングステンエッチングの抑制剤は、窒素-水素結合を有しない窒素含有複素環、スルフィド、オキサゾリジン、又は官能基の混合物から選択される少なくとも1つの官能基を1つの化合物中に含む化合物である。
【0008】
U.S.9,303,188 B2には、タングステンのエッチングを抑制するアミン化合物を含む化学的機械研磨組成物が開示されている。
【0009】
先行技術に開示されている方法及び組成物には限界がある。先行技術に開示されている方法及び組成物の場合、その抑制剤は、トレンチ内でのタングステンのエロージョンを防ぐのに必ずしも有効ではない。加えて、先行技術で知られている抑制剤を高濃度で使用すると、タングステン層を含む基板の研磨速度を許容できないほど低下させてしまう可能性がある。そのため、タングステンのエッチングを抑制するための改良した組成物及び方法、並びにCMPプロセス中のタングステンのエロージョンを低減することを実現し得る組成物が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】U.S.6,273,786 B1
【特許文献2】U.S.6,083,419 A
【特許文献3】U.S.9,303,188 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本特許請求の範囲に記載の発明の目的は、タングステンのエッチングを抑制するための改良した組成物及び改良した方法を提供することにある。
【0012】
概要
これは、驚くべきことであるが、本明細書に記載されているように、本特許請求の範囲に記載の発明の組成物は、タングステンのための低い静的エッチング速度を提供し、かつ、タングステンのエッチングを抑制することができることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本特許請求の範囲に記載の発明の一態様では、タングステンエッチング抑制用組成物であって、
(A)少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(C)水性媒体
を含み、
該組成物のpHが5.0以上(≧)11.0以下(≦)の範囲である、組成物が提供される。
【0014】
別の態様では、本特許請求の範囲に記載の発明は、本明細書に記載の組成物の存在下で、半導体産業で使用される基板(S)を化学的機械的に研磨することを含み、該基板(S)が
(i)タングステン及び/又は
(ii)タングステン合金
を含む、半導体デバイス(素子、装置)の製造方法に関するものである。
【0015】
また、別の態様では、本特許請求の範囲に記載の発明は、タングステンのエッチングを抑制するための本明細書に記載の組成物の使用方法に関するものである。
【0016】
本特許請求の範囲に記載の発明は、以下の利点のうち、少なくとも1つを伴うものである。
(1)本特許請求の範囲に記載の発明の組成物及び方法は、エッチングの抑制、特にタングステンエッチングの抑制に際し改善した性能を示す。
(2)本特許請求の範囲に記載の発明の組成物及び方法は、タングステンを含有する基板の化学的機械研磨の際にタングステンのエロージョンを防止する。
(3)本特許請求の範囲に記載の発明の組成物は、相分離が生じない、安定した配合物又は分散物を提供する。
(4)本特許請求の範囲に記載の発明の方法は、適用が容易であり、できる限り少ない工程しか必要としない。
(5)本特許請求の範囲に記載の発明の組成物及び方法は、化学的機械的研磨の際の基板の研磨速度に影響を与えない。
【0017】
本特許請求の範囲に記載の発明の他の目的、利点及び使用用途は、以下の詳細な説明から当業者には明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
以下に行う詳細な説明は、本質的に単なる例示であって、本特許請求の範囲に記載の発明、又は本特許請求の範囲に記載の発明の適用と使用用途を限定することを意図するものではない。さらに、前述した、技術分野、背景、概要、又は以下の発明の詳細な説明に提示した理論に拘束されることを意図するものでもない。
【0019】
本明細書で使用する「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「から構成される(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又は非制限的であり、追加の、列挙しなかった構成員、要素又は方法工程を排除するものではない。本明細書で使用する「含む」、「含む」、及び「から構成される」という用語は、「からなる(consisting of)」、「からなる(consists)」、及び「からなる(consists of)」という用語を含むものと理解される。
【0020】
また、明細書及び特許請求の範囲で使用する「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等の用語は、類似する要素を区別するために使用するものであって、必ずしも、順序又は時系列を記述するためではない。このように使用する用語は、適切な状況下では交換可能であり、また、本明細書に記載の、本特許請求の範囲に記載の発明の実施形態は、本明細書に記載した又は図示した以外の順序で実施することもできることを理解されたい。「(A)」、「(B)」及び「(C)」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「(i)」、「(ii)」などの用語が、方法又は使用方法又はアッセイの各工程に関連する場合、工程間に時間一貫性又は時間間隔の一貫性が存在しない。すなわち、本明細書で上述した又は下記に示す使用用途で別段言及しない限り、これらの工程は、同時に実施してもよく、又は、そのような工程間に秒、分、時間、日、週、月、又はさらには年の時間間隔が存在してもよい。
【0021】
以下の各節では、本特許請求の範囲に記載の発明についての様々な態様をより詳細に明らかにする。このように明示する各態様は、明確にこれとは矛盾する指示がない限り、他のいずれかの態様又は複数の態様と組み合わせることができるものである。特に、好適又は有利であると示された特徴は、好適又は有利であると示された他のいずれかの特徴又は複数の特徴と組み合わせることができるものである。
【0022】
本明細書の全体を通じて、「一実施形態」又は「実施形態」又は「好適な実施形態」と言う場合は、当該実施形態に関連して説明した、特定の特徴、構造又は特性が本特許請求の範囲に記載の発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所で「一実施形態では」又は「実施形態では」又は「好適な実施形態では」という文言が出現する場合は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らないが、そういう場合もあり得る。さらに、特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態で、本開示から当業者に明らかであるような、適切な方法で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれる他の特徴ではない、特徴を含むが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本主題の範囲内にあり、異なる実施形態を形成することを意味する。この点は当業者に理解されるところである。例えば、添付の特許請求の範囲では、各請求項に記載の実施形態は、いずれも任意に組み合わせて使用することができる。
【0023】
さらに、明細書全体を通じて定義する範囲には両端の値も含まれる。つまり、1~10の範囲とした場合には、1と10の両方の値がその範囲に含まれることを意味する。疑義を回避するために、出願人は、適用される法律に従って均等とされるものについて主張する法的権利を有するものである。
【0024】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、本特許請求の範囲に記載の発明で使用する「質量%」は、コーティング組成物の総質量に対するものである。さらに、各成分における、以下で記載する、すべての化合物の質量%は、合計で100質量%になるようにする。
【0025】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的にあっては、腐食抑制剤は、金属表面に保護分子層を形成する化学物質と定義する。
【0026】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、キレート化剤を、特定の金属イオンと可溶性の複合分子を形成し、そのイオンを不活性化して、他の元素又はイオンと通常のように反応して沈殿物又はスケールを生成できないようにする化学物質と定義する。
【0027】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、low-k(低誘電率)材料とは、k値(誘電率)が3.5未満、好ましくは3.0未満、より好ましくは2.7未満の材料である。超低誘電率(ultra-low-k)材料はk値(誘電率)が2.4未満の材料である。
【0028】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、コロイド無機粒子は、湿式沈殿法によって製造できる無機粒子である。また、ヒュームド無機粒子は酸素の存在下で、例えば金属塩化物の前駆体を水素で高温火炎加水分解することによって、例えば、Aerosil(登録商標)法を用いて製造できる粒子である。
【0029】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、「コロイドシリカ」とは、Si(OH)の縮合重合により製造された二酸化ケイ素をいう。前駆体Si(OH)は、例えば、高純度アルコキシシランの加水分解によって、又はケイ酸塩水溶液の酸性化によって得ることができる。このようなコロイドシリカは、米国特許第5,230,833号に基づいて製造することができ、あるいは、各種の市販製品、例えば、Fuso(登録商標)PL-1、PL-2、及びPL-3、Nalco 1050、2327及び2329の製品、並びに、DuPont、Bayer、Applied Research、日産化学、Nyacol及びClariantから入手可能な同様の製品として得ることができる。
【0030】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、平均粒子径(mean particle size)は、水性媒体(H)中の無機研磨粒子(A)の粒度分布(particle size distribution)のd50値として定義する。
【0031】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、平均粒子径は、例えば、動的光散乱法(DLS)又は静的光散乱法(SLS)を用いて測定する。これらの方法及び他の方法は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、Kuntzsch,Timo;Witnik,Ulrike;Hollatz,Michael Stintz;Ripperger,Siegfried;半導体産業における化学機械研磨(CMP)に用いられるスラリーの特性;Chem.Eng.Technol;26(2003)、第12巻、1235頁を参照されたい。
【0032】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、動的光散乱(DLS)では、典型的にはHoriba LB-550V(DLS、動的光散乱測定)又はその他の同様な装置を使用する。この技術は、入射光に対して90°又は173°の角度で検出されたレーザー光源(λ=650nm)を粒子が散乱させるときの、粒子の流体力学的直径を測定するものである。散乱光の強度の変化量は、粒子が入射ビームを通過する際のランダムなブラウン運動に起因するものであり、時間の関数としてモニターする。遅延時間の関数として装置によって実行される自己相関関数を使用して減衰定数を引き出す。小さい粒子ほど、より速い速度で入射ビームを通過し、より速い減衰に相当する。
【0033】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、減衰定数は、無機研磨粒子の拡散係数Dに比例するものであり、下記のストークス・アインシュタインの式に従って粒子径(particle size)を計算するのに使用する。
【0034】
【数1】
【0035】
ここでは、懸濁粒子は、(1)球状形態を有し、(2)水性媒体全体に均一に分散している(すなわち、凝集していない)ものと仮定する。この関係は、η=0.96mPa・s(T=22℃)である、水性分散媒の粘度に顕著な偏差がないため、固形分が1質量%未満の粒子分散液にも当てはまると考えられる。ヒュームド又はコロイド無機粒子分散液の粒度分布は、通常、プラスチック製キュベット中で固形分濃度0.1~1.0%で測定し、必要に応じて分散媒又は超純水で希釈する。
【0036】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、無機研磨粒子のBET表面積はDIN ISO9277:2010-09に従って決定する。
【0037】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、酸化剤とは、研磨すべき基板又はその基板の層の1つを酸化させることができる化学物質と定義する。
【0038】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、pH調整剤とは、そのpH値を必要な値に調整するために添加する化合物と定義する。
【0039】
本特許請求の範囲に記載の発明に関連し、ここに開示した測定技術は、当業者によく知られているものであり、したがって、本特許請求の範囲に記載の発明を制限するものではない。
【0040】
本特許請求の範囲に記載の発明の一態様では、タングステンの抑制用組成物であって、
(A)少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(C)水性媒体
を含み、
該組成物のpHが5.0以上11.0以下の範囲である、組成物が提供される。
【0041】
この組成物は、成分(A)、(B)及び(C)と、以下に記載する、更なる成分とを含んでいる。
【0042】
本特許請求の範囲に記載の発明の一実施形態では、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択する。
【0043】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の化学的性質は特に限定されない。少なくとも1種の無機研磨粒子(A)は、同じ化学的性質を有するものであってもよく、あるいは、異なる化学的性質の粒子の混合物であってもよい。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、互いに、化学的性質が同じである無機研磨粒子(A)が好適である。無機研磨粒子(A)は、メタロイド、メタロイド酸化物又は炭化物を含む、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミック、ダイヤモンド、有機/無機ハイブリッド粒子、シリカ、及び無機粒子の任意の混合物からなる群から選択される。
【0044】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためにあっては、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)は、下記のもの、
・1種類のコロイド無機粒子、
・1種類のヒュームド無機粒子、
・異なる種類のコロイド及び/又はヒュームド無機粒子の混合物
であることができる。
【0045】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、少なくとも1種の無機粒子(A)は、コロイド又はヒュームド無機粒子又はこれらの混合物からなる群から選択される。これらの中でも、金属又はメタロイドの酸化物及び炭化物が好適である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種の無機粒子(A)は、アルミナ、セリア、酸化銅、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化マンガン、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化スズ、チタニア、炭化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、ジルコニア、又はこれらの混合物又は複合物からなる群から選択するのが好ましい。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種の無機粒子(A)は、アルミナ、セリア、シリカ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの混合物又は複合物からなる群から選択するのがより好ましい。特に、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)はシリカである。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、少なくとも1種の無機粒子(A)は、コロイドシリカ粒子であることが最も好ましい。
【0046】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の実施形態では、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の濃度は、組成物の総質量に基づいて0.01質量%以上10.0質量%以下の範囲内である。
【0047】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の濃度は、組成物の総質量に基づいて、10.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以下、特に3.0質量%以下、例えば2.0質量%以下、最も好ましくは1.8質量%以下、特に1.5質量%以下である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の濃度は、組成物の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも0.01質量%、より好ましくは少なくとも0.1質量%、最も好ましくは少なくとも0.2質量%、特には、少なくとも0.3質量%である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の濃度は、より好ましくは、組成物の総質量に基づいて0.3質量%以上1.2質量%以下の範囲である。
【0048】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)は、様々な粒度分布で組成物に含有することができる。少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の粒度分布は、単峰性であっても多峰性であってもよい。多峰性の粒度分布の場合には、二峰性の粒度分布が好適であることが多い。なお、本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、無機研磨粒子(A)の粒度分布は単峰性であることが好適である。しかし、無機研磨粒子(A)の粒度分布は特に限定されない。
【0049】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、動的光散乱法に従って決定した、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の平均粒子直径は、1nm以上1000nm以下の範囲内である。
【0050】
少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の平均粒子径は、広い範囲内で変動させることができる。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の平均粒子径は、好ましくは1nm以上1000nm以下の範囲、好ましくは10nm以上400nm以下の範囲、より好ましくは20nm以上200nm以下の範囲、さらに好ましくは25nm以上180nm以下の範囲、最も好ましくは30nm以上170nm以下の範囲、特に好ましくは40nm以上160nm以下の範囲、特に最も好ましくは45nm以上150nm以下の範囲である。いずれの場合も、例えばMalvern Instruments, Ltd.製の高性能粒径測定器(High Performance Particle Sizer(HPPS)又はHoriba LB550などの機器を用いて動的光散乱法で測定したものである。
【0051】
少なくとも1種の無機研磨粒子(A)のBET表面積は、広い範囲内で変化させることができる。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)のBET表面積は、好ましくは1m/g以上500m/g以下の範囲内、より好ましくは5m/g以上250m/g以下の範囲内、最も好ましくは10m/g以上100m/g以下の範囲内、特に好ましくは20m/g以上95m/g以下の範囲内、特に最も好ましくは25m/g以上92m/g以下の範囲内であり、いずれの場合もDIN ISO9277:2010-09に従って決定した。
【0052】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)は、様々な形状であることができる。その結果、その粒子(A)の形状は、1種類又は本質的に1種類のみのタイプの形状であってもよい。しかし、粒子(A)の形状が様々であることもあり得る。例えば、2種類の異なる形状の粒子(A)が存在する場合もある。例えば、(A)は、突起又は窪みの有無にかかわらず、凝集体(agglomerates)、立方体、面取りされた縁を持つ立方体、八面体、二十面体、繭形(コクーン)、小塊、球形などの形状を有することができる。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、無機研磨粒子(A)は、本質的に球形であることが好ましく、それによって典型的には突起又は窪みを有する。
【0053】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)は繭形状であることが好ましい。この繭には、突起又は窪みがある場合とない場合がある。繭形状の粒子は、好ましくは短軸が10nm以上200nm以下の粒子であり、好ましくは長軸/短軸の比が1.4以上2.2以下、より好ましくは1.6以上2.0以下の粒子である。平均形状係数は好ましくは0.7以上0.97以下、より好ましくは0.77以上0.92以下であり、平均球形度は好ましくは0.4以上0.9以下、より好ましくは0.5以上0.7以下であり、また、平均円相当径は好ましくは41nm以上66nm以下、より好ましくは48nm以上60nm以下である(これらの各場合、透過型電子顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で測定した)。
【0054】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、繭(コクーン)形状粒子の形状係数、球形度、円相当径の測定について以下に説明する。形状係数は、個々の粒子の形状及び窪みに関する情報を提供するものであって、下記の式で算出することができる。
【0055】
形状係数=4π(面積/周長2)
【0056】
窪みのない球状粒子の形状係数は1である。形状係数の値は、窪みの数が増えると減少する。球形度は、平均値に関するモーメントを用いて個々の粒子の伸び(elongation)に関する情報を与えるものであり、次の式に従って計算することができる。この式中、Mはそれぞれの粒子の重心である。
【0057】
球形度=(Mxx-Myy)-[4Mxy2+(Myy-Mxx)2]0.5/(Mxx-Myy)+[4Mxy2+(Myy-Mxx)2]0.5
伸び=(1/球形度)0.5
【0058】
式中、
Mxx=Σ(x-x平均)/N
Myy=Σ(y-y平均)/N
Mxy=Σ[(x-x平均)*(y-y平均)]/N
Nはそれぞれの粒子の画像を形成する画素の数であり、
x、yはピクセル(画素)の座標であり、
平均は前記粒子の画像を形成するN個の画素のx座標の平均値であり、
平均は前記粒子の画像を形成するN個の画素のy座標の平均値である。
【0059】
球状粒子の球形度は1である。球形度の値は、粒子が細長くなると減少する。個々の非円形粒子の円相当径(以下、ECDと略す)は、それぞれの非円形粒子と同じ面積を持つ円の直径に関する情報を提供する。平均形状係数、平均球形度、平均ECDは、分析した粒子数に関連するそれぞれの特性の算術平均である。
【0060】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、粒子形状の特性評価手順は以下の通りである。固形分20質量%の繭形状の水性シリカ粒子分散液をカーボン箔上に分散させ、乾燥させる。乾燥した分散液について、エネルギーフィルタ型透過電子顕微鏡(EF-TEM)(120キロボルト)及び走査型電子顕微鏡二次電子画像(SEM-SE)(5キロボルト)を用いて解析する。解析には、2k、16ビット、0.6851nm/ピクセルの解像度を有するEF-TEM画像を使用する。ノイズを除去した後、これら画像について、閾値(threshold)を用いて2値化処理する。その後、粒子を手作業で分離する。重なり合った粒子及びエッジ粒子は、判別し、解析には使用しない。先に定義したECD、形状係数及び球形度を計算し、統計的に分類する。
【0061】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のため、繭状粒子の代表例としては、平均一次粒子径(average primary particle size)(d1)が35nmで、平均二次粒子径(average secondary particle size)(d2)が70nmの扶桑化学工業株式会社製「FUSO(登録商標)PL-3」を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0062】
本特許請求の範囲に記載の発明についてのより好適な実施形態では、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)は、35nmの平均一次粒子径(d1)及び70nmの平均二次粒子径(d2)を有するシリカ粒子である。
【0063】
本特許請求の範囲に記載の発明の最も好適な実施態様においては、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)は、35nmの平均一次粒子径(d1)及び70nmの平均二次粒子径(d2)を有するコロイドシリカ粒子である。
【0064】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の最も好適な実施形態では、少なくとも1種の無機研磨粒子(A)は、35nmの平均一次粒子径(d1)及び70nmの平均二次粒子径(d2)を有する繭状のシリカ粒子である。
【0065】
本組成物は、さらに、クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤(B)を含有する。腐食抑制剤(B)は、成分(A)、(C)、(D)、(E)及び(F)とは異なる。
【0066】
本特許請求の範囲に記載の発明の一実施形態では、該少なくとも1種の腐食抑制剤(B)はクロルヘキシジンである。
【0067】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、クロルヘキシジン塩は、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジンジグルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩、クロルヘキシジン二塩酸塩、クロルヘキシジン酢酸塩、クロルヘキシジン二酢酸塩、クロルヘキシジンヘキサメタリン酸塩、クロルヘキシジンメタリン酸塩及びクロルヘキシジントリメタリン酸塩からなる群から選択する。
【0068】
本特許請求の範囲に記載の発明の実施形態では、少なくとも1種の腐食抑制剤(B)は、組成物の総質量に基づいて0.001質量%以上0.05質量%以下の範囲内の量で存在する。
【0069】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、少なくとも1種の腐食抑制剤(B)は、好ましくは、組成物の総質量に基づいて、0.05質量%以下、より好ましくは0.04質量%以下、最も好ましくは0.03質量%以下、最も好ましくは0.01質量%以下の量で存在する。(B)の量は、組成物の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも0.001質量%、より好ましくは少なくとも0.002質量%である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、少なくとも1種の腐食抑制剤(B)の濃度は、より好ましくは、組成物の総質量に基づいて0.001質量%以上0.03質量%以下の範囲である。
【0070】
この組成物は、さらに、水性媒体(C)を含む。水性媒体(C)は、1種類であっても、異なる種類の水性媒体の混合物であってもよい。
【0071】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、水性媒体(C)は水を含有する任意の媒体であることができる。水性媒体(C)は、水と、水と混和できる有機溶媒との混合物であることが好ましい。有機溶媒の代表例としては、C~Cアルコール、アルキレングリコール及びアルキレングリコール誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水性媒体(C)としては水であることがより好ましい。本特許請求の範囲に記載の発明の実施形態では、水性媒体(C)は脱イオン水である。
【0072】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、(C)以外の成分の量が合計で組成物のy質量%である場合、(C)の量は組成物の(100-y)質量%となる。
【0073】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、組成物中の水性媒体(C)の量は、組成物の総質量に基づいて、99.9質量%以下、より好ましくは99.6質量%以下、最も好ましくは99質量%以下、特に好ましくは98質量%以下、特に好ましくは97質量%以下、例えば95質量%以下である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のためには、組成物中の水性媒体(C)の量は、組成物の総質量に基づいて、少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、最も好ましくは少なくとも80質量%、特に好ましくは少なくとも85質量%、特に少なくとも90質量%、例えば少なくとも93質量%である。
【0074】
組成物の特性は、その対応する組成物のpHに依存することがある。本特許請求の範囲に記載の発明の目的ために、組成物のpH値は、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.7以下、最も好ましくは10.5以下、特に好ましくは10.3以下、特に最も好ましくは10.0以下である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的ために、組成物のpH値は、好ましくは少なくとも5.0、より好ましくは少なくとも5.5、最も好ましくは少なくとも6.0、特に好ましくは少なくとも6.5、特に最も好ましくは少なくとも7.0である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、組成物のpH値は、好ましくは5.0以上11.0以下の範囲、好ましくは5.5以上11.0以下、より好ましくは5.5以上10.7以下、最も好ましくは6.0以上11.0以下である。
【0075】
本特許請求の範囲に記載の発明の実施形態では、組成物のpHは5.5以上10.5以下の範囲にある。
【0076】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、組成物のpHは6.0以上10.0以下の範囲にある。
【0077】
組成物は、さらに、少なくとも1種の腐食抑制剤(D)を含む。腐食抑制剤(D)は、成分(A)、(B)、(C)、(E)及び(F)とは異なる。
【0078】
本特許請求の範囲に記載の発明の実施形態では、少なくとも1種の腐食抑制剤(D)は、ポリアクリルアミド及びポリアクリルアミド共重合体から選択される。
【0079】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、前記ポリアクリルアミド共重合体は、アニオン性又は非イオン性のポリアクリルアミド共重合体である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、ポリアクリルアミド共重合体としては、好ましくは、カチオン性ポリアクリルアミド共重合体から選択しない。カチオン性のポリアクリルアミド共重合体を組成物に使用すると、凝集して不安定になる場合がある。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、ポリアクリルアミド共重合体は、非イオン性ポリアクリルアミド共重合体である。
【0080】
本特許請求の範囲に記載の発明の特に好適な実施形態では、前記ポリアクリルアミドはポリアクリルアミドのホモポリマーである。
【0081】
本特許請求の範囲に記載の発明の実施形態では、少なくとも1種の腐食抑制剤(D)は、組成物の総質量に基づいて0.001質量%以上0.5質量%以下の範囲の量で存在する。
【0082】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種の腐食抑制剤(D)は、好ましくは、組成物の総質量に基づいて、0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、最も好ましくは、0.3質量%以下、最も好ましくは、0.2質量%以下の量で存在する。(D)の量は、組成物の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも0.001質量%、より好ましくは少なくとも0.002質量%、最も好ましくは少なくとも0.001質量%、特に好ましくは少なくとも0.01質量%である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種の腐食抑制剤(D)の濃度は、組成物の総質量に基づいて、より好ましくは0.01質量%以上0.3質量%以下の範囲であり、最も好ましくは0.01質量%以上0.2質量%以下の範囲である。
【0083】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な一実施形態では。少なくとも1種の腐食抑制剤(D)の、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した質量平均分子量は、5000g/mol以上50,000g/mol以下の範囲にある。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した、少なくとも1種の腐食抑制剤(D)の質量平均分子量は、5000g/mol以上40,000g/mol以下の範囲内である。本特許請求の範囲に記載の発明の最も好適な実施形態では、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した、少なくとも1種の腐食抑制剤(D)の質量平均分子量は7500g/mol以上15,000g/mol以下の範囲内である。
【0084】
組成物は、さらに、少なくとも1種の酸化剤(E)を含む。酸化剤は、成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(F)とは異なる。
【0085】
本特許請求の範囲に記載の発明の実施形態では、少なくとも1種の酸化剤(E)としては、有機過酸化物、無機過酸化物、硝酸塩、過硫酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、臭素酸、及び臭素酸塩からなる群から選択される。
【0086】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態にあっては、少なくとも1種の酸化剤(E)として、過酸化物及び硝酸第二鉄からなる群から選択される。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、少なくとも1種の酸化剤(E)は過酸化水素である。
【0087】
本特許請求の範囲に記載の発明の一実施形態では、少なくとも1種の酸化剤(E)は、組成物の総質量に基づいて0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲の量で存在する。
【0088】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種の酸化剤(E)の濃度は、組成物の総質量に基づいて、1.0質量%以下、より好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種の酸化剤(E)の濃度は、組成物の総質量に基づいて、少なくとも0.01質量%、より好ましくは少なくとも0.05質量%、最も好ましくは少なくとも0.1質量%である。
【0089】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、酸化剤としての過酸化水素の濃度は、組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.01質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上1.0質量%以下、最も好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以上0.1質量%以下である。
【0090】
本特許請求の範囲に記載の発明の組成物は、さらに任意に、少なくとも1種のpH調整剤(F)を含むことができる。少なくとも1種のpH調整剤(F)は、成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)とは異なる。
【0091】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種のpH調整剤(E)としては、無機酸、カルボン酸、アミン塩基、アルカリ水酸化物、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドを含むアンモニウム水酸化物からなる群から選択される。少なくとも1種のpH調整剤(E)として、硝酸、硫酸、亜リン酸、リン酸、アンモニア、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択することが好ましい。特には、pH調整剤(E)としては水酸化カリウムが好ましい。
【0092】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種のpH調整剤(E)の量は、組成物の総質量に基づいて、好ましくは10質量%以下、より好ましくは2質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下、特には0.1質量%以下、例えば0.05質量%以下である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、少なくとも1種のpH調整剤(E)の量は、組成物の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも0.0005質量%、より好ましくは少なくとも0.005質量%、最も好ましくは少なくとも0.025質量%、特には少なくとも0.1質量%、例えば少なくとも0.4質量%である。
【0093】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、組成物は任意で添加剤を含むことができる。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のために、添加剤の代表的な具体例としては、安定剤が含まれるが、これに限定されない。一般に組成物に採用する添加剤は、例えば、分散液を安定させるために使用するものである。
【0094】
本特許請求の範囲に記載の発明の目的のため、添加剤の濃度は、組成物の総質量に基づいて、10.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以下、例えば0.01質量%以下である。本特許請求の範囲に記載の発明の目的のため、添加剤の濃度は、組成物の総質量に基づいて、少なくとも0.0001質量%、より好ましくは少なくとも0.001質量%、最も好ましくは少なくとも0.01質量%、例えば少なくとも0.1質量%である。
【0095】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)ポリアクリルアミド及びポリアクリルアミド共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.0以上11.0以下の範囲である、組成物に向けたものである。
【0096】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)ポリアクリルアミド及びポリアクリルアミド共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが6.0以上10.0以下の範囲である、組成物に向けたものである。
【0097】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、
(D)ポリアクリルアミド及びポリアクリルアミド共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(E)有機過酸化物、無機過酸化物、過硫酸塩、ヨウ素酸塩、水酸化カリウム、硝酸第二鉄、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、リン酸、臭素酸、及び臭素酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸化剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.0以上11.0以下の範囲である、組成物に向けたものである。
【0098】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、
(D)ポリアクリルアミド及びポリアクリルアミド共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(E)有機過酸化物、無機過酸化物、過硫酸塩、ヨウ素酸塩、水酸化カリウム、硝酸第二鉄、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、リン酸、臭素酸、及び臭素酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸化剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.0以上11.0以下の範囲である、組成物に向けたものである。
【0099】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)0.01質量%以上10.0質量%以下の、少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)0.001質量%以上0.05質量%以下の、少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(C)水性媒体
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.0以上11.0以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは組成物の総質量に基づいている、組成物に向けたものである。
【0100】
本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)0.01質量%以上10.0質量%以下の、少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)0.001質量%以上0.05質量%以下の、少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(C)水性媒体
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは組成物の総質量に基づいている、組成物に向けたものである。
【0101】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)0.01質量%以上10.0質量%以下の、少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)0.001質量%以上0.05質量%以下の、少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)0.001質量%以上0.5質量%以下の、少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.0以上11.0以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは組成物の総質量に基づいている、組成物に向けたものである。
【0102】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)0.01質量%以上10.0質量%以下の、少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)0.001質量%以上0.05質量%以下の、少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)0.001質量%以上0.5質量%以下の、少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは組成物の総質量に基づいている、組成物に向けたものである。
【0103】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(C)水性媒体
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲である、組成物に向けたものである。
【0104】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)ポリアクリルアミド又はアクリルアミドの共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲である、組成物に向けたものである。
【0105】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)コロイドシリカ、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)ポリアクリルアミド又はアクリルアミドの共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.0以上11.0以下の範囲である、組成物に向けたものである。
【0106】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)コロイドシリカ、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)ポリアクリルアミド又はアクリルアミドの共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(E)少なくとも1種の酸化剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが6.0以上10.0以下の範囲である、組成物に向けたものである。
【0107】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)0.01質量%以上10.0質量%以下の、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)0.001質量%以上0.05質量%以下の、クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)0.001質量%以上0.5質量%以下の、ポリアクリルアミド又はアクリルアミドの共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは組成物の総質量に基づいている、組成物に向けたものである。
【0108】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)0.01質量%以上10.0質量%以下の、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)0.001質量%以上0.05質量%以下の、クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)0.001質量%以上0.5質量%以下の、ポリアクリルアミド又はアクリルアミドの共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが6.0以上10.0以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは組成物の総質量に基づいている、組成物に向けたものである。
【0109】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)0.01質量%以上10.0質量%以下の、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)0.001質量%以上0.05質量%以下の、クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、
(D)0.001質量%以上0.5質量%以下の、ポリアクリルアミド又はアクリルアミドの共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(E)0.01質量%以上1.0質量%以下の、少なくとも1種の酸化剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが6.0以上10.0以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは組成物の総質量に基づいている、組成物に向けたものである。
【0110】
本特許請求の範囲に記載の発明の別の好適な実施形態は、以下の成分:
(A)0.01質量%以上5質量%以下の、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)0.001質量%以上0.01質量%以下の、クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、
(D)0.001質量%以上0.3質量%以下の、ポリアクリルアミド又はアクリルアミドの共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(E)0.01質量%以上1.0質量%以下の、少なくとも1種の酸化剤
を含む組成物であって、
該組成物のpHが6.0以上10.0以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは、組成物の総質量に基づいている、組成物に向けたものである。
【0111】
タングステンのエッチングを抑制するための組成物の調製方法は一般に知られている。これらの方法を、本特許請求の範囲に記載の発明の組成物の調製に適用することができる。この方法は、上記成分(A)、(B)、(D)及び(E)を水性媒体(C)、好ましくは水に分散又は溶解させることにより、また必要により、酸、塩基、緩衝剤又はpH調整剤(F)を添加してpH値を調整することにより実施することができる。この目的のためには、慣用的で標準的な混合方法及び混合装置、例えば、撹拌容器、高剪断インペラー、超音波ミキサー、ホモジナイザーノズル又はカウンターフローミキサーなどを使用することができる。
【0112】
本特許請求の範囲に記載の発明の一態様は、本明細書に記載の組成物の存在下で、半導体産業で使用される基板(S)を化学的機械的に研磨する(CMP)ことを含み、該基板(S)が
(i)タングステン及び/又は
(ii)タングステン合金
を含む、半導体デバイスの製造方法に向けたものである。
【0113】
本特許請求の範囲に記載の発明に係る方法で製造可能な半導体デバイスは、特に限定されない。半導体デバイスとしては、例えばシリコン、ゲルマニウム、及びIII-V族材料などの半導体材料を含む電子部品であることができる。半導体デバイスには、単一のディスクリート・デバイスとして製造されるものと、ウェハ上に製造された複数のデバイスが相互に接続されて成る集積回路(IC)として製造されるものがある。半導体デバイスとしては、例えばダイオードなどの二端子素子、例えばバイポーラトランジスタなどの三端子素子、例えばホール効果センサ(Hall effect sensor)などの四端子素子、あるいは多端子素子であることができる。半導体デバイスは多端子素子であることが好ましい。多端子素子としては、集積回路及びマイクロプロセッサなどの論理デバイス、又は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み込み専用メモリ(ROM)及び相変化ランダムアクセスメモリ(PCRAM)などの記憶デバイスであることができる。半導体デバイスとしては多端子論理デバイスであることが好ましい。特に、半導体デバイスとしては、集積回路又はマイクロプロセッサであることが好ましい。
【0114】
一般に集積回路では、銅相互接続(インターコネクト)にタングステン(W)が使われている。誘電体上の余分なタングステンは、既知の化学的機械的研磨プロセスによって除去することができる。
【0115】
一般に、このタングステン/タングステン合金は、ALD、PVD又はCVDプロセスなど、さまざまな方法で製造又は入手することができる。一般に、このタングステン及び/又はタングステン合金は、どのような種類、形態、又は形状であってもよい。このタングステン及び/又はタングステン合金は、層及び/又はオーバーグロース(overgrowth)の形状をしていることが好ましい。このタングステン及び/又はタングステン合金が層及び/又はオーバーグロースの形状を有する場合、タングステン及び/又はタングステン合金の含有量は、対応する層及び/又はオーバーグロースの質量に対して、好ましくは90%を超え、より好ましくは95%を超え、最も好ましくは98%を超え、特に99%を超え、例えば99.9%を超える。このタングステン及び/又はタングステン合金は、他の基板間のトレンチ又はプラグ内に充填したもの又はそこで成長させたものであることが好ましく、また、より好ましくは、例えばSiO、シリコン、低誘電率材料(BD1、BD2)又は超低誘電率材料のような誘電体材料、又は半導体産業で使用する他の絶縁体及び半導体材料のトレンチ又はプラグ内に充填したもの又はそこで成長させたものである。例えば、シリコン貫通電極(TSV、Through Silicon Vias)の中間プロセスでは、ポリマー、フォトレジスト及び/又はポリイミドなどの隔離(isolated)材料を、ウェットエッチング及びCMPの後続する処理工程の間で、絶縁/隔離特性のために、ウェハの裏面からTSVを露出させた後、絶縁材料として使用することができる。
【0116】
本特許請求の範囲に記載の発明の一実施形態では、タングステンの静的エッチング速度又は静的エッチ速度(SER)は12Å/分未満である。本特許請求の範囲に記載の発明の好適な実施形態では、タングステンの静的エッチ速度(SER)は10Å/分未満である。本特許請求の範囲に記載の発明のより好適な実施形態では、タングステンの静的エッチ速度(SER)は6Å/分未満である。
【0117】
本特許請求の範囲に記載の発明の一態様は、タングステンのエッチンングを抑制するための本特許請求の範囲に記載の発明の組成物の使用方法に向けたものである。
【0118】
本特許請求の範囲に記載の発明に係る組成物は、以下の利点のうちの少なくとも1つを有している。
(1)本特許請求の範囲に記載の発明の組成物及び方法は、エッチングの抑制、特にタングステンエッチングの抑制に際し改善した性能を示す。
(2)本特許請求の範囲に記載の発明の組成物及び方法は、タングステンを含有する基板の化学的機械研磨の際にタングステンのエロージョンを防止する。
(3)本特許請求の範囲に記載の発明の組成物は、相分離が起こらない安定した配合物又は分散液を提供する。
(4)本特許請求の範囲に記載の発明の方法は、適用が容易であり、可能な限り少ない工程数で済む。
(5)本特許請求の範囲に記載の発明の組成物及び方法は、化学的機械的研磨の際の基板の研磨速度に影響を与えない。
【0119】
実施形態
以下に、本開示をさらに説明するための実施形態のリストを提供する。ただし、本開示を以下に列挙する特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0120】
1.タングステンエッチング抑制用組成物であって、
(A)少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(C)水性媒体
を含み、
該組成物のpHが5.0以上11.0以下の範囲である、組成物。
【0121】
2.前記少なくとも1種の無機研磨粒子(A)が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される、実施形態1に記載の組成物。
【0122】
3.前記少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の、動的光散乱法に従って決定した平均粒子直径が、1nm以上1000nm以下の範囲にある、実施形態1に記載の組成物。
【0123】
4.前記少なくとも1種の無機研磨粒子(A)の濃度が、前記組成物の総質量に基づいて、0.01質量%以上10.0質量%以下の範囲である、実施形態1に記載の組成物。
【0124】
5.前記少なくとも1種の腐食抑制剤(B)がクロルヘキシジンである、実施形態1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【0125】
6.前記クロルヘキシジン塩が、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジンジグルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩、クロルヘキシジン二塩酸塩、クロルヘキシジン酢酸塩、クロルヘキシジン二酢酸塩、クロルヘキシジンヘキサメタリン酸塩、クロルヘキシジンメタリン酸塩及びクロルヘキシジントリメタリン酸塩からなる群から選択される、実施形態1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【0126】
7.前記少なくとも1種の腐食抑制剤(B)の濃度が、前記組成物の総質量に基づいて、0.001質量%以上0.05質量%以下の範囲である、実施形態1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【0127】
8.前記水性媒体(C)が脱イオン水である、実施形態1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【0128】
9.前記組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲にある、実施形態1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【0129】
10.前記組成物のpHが6.0以上10.0以下の範囲にある、実施形態1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【0130】
11.ポリアクリルアミド及びポリアクリルアミド共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤(D)をさらに含む、実施形態1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【0131】
12.前記ポリアクリルアミド共重合体が、アニオン性又は非イオン性のポリアクリルアミド共重合体である、実施形態11に記載の組成物。
【0132】
13.前記ポリアクリルアミドがポリアクリルアミドのホモポリマーである、実施形態11に記載の組成物。
【0133】
14.前記少なくとも1種の腐食抑制剤(D)の濃度が、前記組成物の総質量に基づいて、0.001質量%以上0.5質量%以下の範囲である、実施形態11~13のいずれか一項に記載の組成物。
【0134】
15.前記少なくとも1種の腐食抑制剤(D)の、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した質量平均分子量が、5000g/mol以上50,000g/mol以下の範囲である、実施形態11~14に記載の組成物。
【0135】
16.有機過酸化物、無機過酸化物、過硫酸塩、ヨウ素酸塩、水酸化カリウム、硝酸第二鉄、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過マンガン酸塩、過塩素酸、過塩素酸塩、リン酸塩、臭素酸及び臭素酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の酸化剤(E)をさらに含む、実施形態1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【0136】
17.前記少なくとも1種の酸化剤(E)が、有機過酸化物、硝酸第二鉄及びリン酸からなる群から選択される、実施形態16に記載の組成物。
【0137】
18.前記少なくとも1種の酸化剤(E)の濃度が、前記組成物の総質量に基づいて0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲である、実施形態16又は17に記載の組成物。
【0138】
19.下記のもの、
(A)0.01質量%以上10.0質量%以下の、少なくとも1種の無機研磨粒子、
(E)0.001質量%以上0.05質量%以下の、少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(C)水性媒体
を含み、
該組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは組成物の総質量に基づいている、実施形態1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【0139】
20.下記のもの、
(A)0.01質量%以上10.0質量%以下の、少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)0.001質量%以上0.05質量%以下の、少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)0.001質量%以上0.5質量%以下の、少なくとも1種の腐食抑制剤
を含み、
該組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは組成物の総質量に基づいている、実施形態1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【0140】
21.下記のもの、
(A)金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、及び
(C)水性媒体
を含み、
該組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲である、実施形態1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【0141】
22.下記のもの、
(A)金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)ポリアクリルアミド又はアクリルアミドの共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含み、
該組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲である、実施形態1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【0142】
23.下記のもの、
(A)0.01質量%以上10.0質量%以下の、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、ケイ化物、ホウ化物、セラミックス、ダイヤモンド、有機ハイブリッド粒子、無機ハイブリッド粒子及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種の無機研磨粒子、
(B)0.001質量%以上0.05質量%以下の、クロルヘキシジン及びクロルヘキシジン塩から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤、
(C)水性媒体、及び
(D)0.001質量%以上0.5質量%以下の、ポリアクリルアミド又はアクリルアミドの共重合体から選択される少なくとも1種の腐食抑制剤
を含み、
該組成物のpHが5.5以上10.5以下の範囲であり、
各場合の質量パーセントは組成物の総質量に基づいている、実施形態1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【0143】
24.実施形態1~23のいずれか一項で定義した組成物の存在下で、半導体産業で使用される基板(S)を化学的機械的に研磨することを含み、該基板(S)が
(i)タングステン及び/又は
(ii)タングステン合金
を含む、半導体デバイスの製造方法。
【0144】
25.タングステンの静的エッチング速度(SER)が12Å/分未満である、実施形態24に記載の方法。
【0145】
26.タングステンのエッチングを抑制するための、実施形態1~23のいずれか一項に記載の組成物の使用方法。
【0146】
現在特許請求の範囲に記載の発明について、これまで、その特定の実施形態の観点から説明してきたが、一定の変更及び均等物は当業者に明らかであり、これらも本特許請求の範囲に記載の発明の範囲内に含むことを意図している。
【実施例
【0147】
本特許請求の範囲に記載の発明について、下記の実施例により詳細に説明する。より具体的には、以下に明記する試験方法は、本出願の一般的な開示の一部であり、特定の実施例に限定されない。
スラリー調製と実験についての一般的な手順を以下に説明する。
【0148】
成分
・シリカ粒子(扶桑化学工業株式会社製のFuso(登録商標)PL-3の商品名で販売されている)
・クロルヘキシジン及びクロルヘキシジンジグルコン酸塩(Sigma Aldrich社から入手可能)
・脱イオン水(BASF SE社から入手可能)
・ポリアクリルアミド(Sigma Aldrich社から入手可能)
・過酸化水素(BASF SE社から入手可能)
・L-アルギニン(Sigma Aldrich社から入手可能)
・グアニジン炭酸塩(Sigma Aldrich社から入手可能)
・セチルトリメチルアンモニウムブロミド(Sigma Aldrich社から入手可能)。
【0149】
スラリー組成物
スラリー組成物は、
(A)無機研磨剤:シリカ粒子
(B)腐食抑制剤:クロルヘキシジン又はクロルヘキシジン塩
(C)脱イオン水(DIW)
(D)腐食抑制剤:ポリアクリルアミド
(E)酸化剤:過酸化水素(H
を含有する。
酸化剤(E)(1%H)は、スラリーを静的エッチング速度(SER)の測定に使用する直前(1~15分)に添加した。
【0150】
方法
スラリー組成物の調製手順
スラリー組成物中の各成分を十分に混合した。すべての混合手順を撹拌下で行った。各化合物(A)、(B)、(D)及び(E)の水性ストック溶液は、それぞれの化合物の所望の量を超純水(UPW)に溶解することにより調製した。各成分のそのストック溶液にあっては、水酸化カリウム(KOH)又はリン酸(HPO)を用いて溶解を支援することが好ましい。ストック溶液のpHは、KOHでpH10に、HPOでpH6に調整した。(B)についての各ストック溶液は、クロルヘキシジン又は20質量%クロルヘキシジンジグルコン酸塩溶液を使用する場合、それぞれの添加剤の濃度は0.05質量%であり、(D)及び(E)のストック溶液についてはそれぞれの添加剤の濃度は1.0質量%であった。(A)については、供給会社から提供された分散液を使用した。一般に、質量で約20%~30%の研磨剤濃度であった。酸化剤(E)は、30質量%のストック溶液として使用した。
【0151】
10000gのスラリーを調製するため、必要量の(B)ストック溶液を混合タンク又はビーカーに入れ、350rpmの攪拌速度でKOHを加えてpHを6又は10に調整した。所望濃度に達するように、(D)のストック溶液の量を添加した。KOHを使用して当該溶液のpHを6又は10の所望値に保った。その後、(A)を必要量で加えた。最終濃度を調整するために、必要量の酸化剤ストック溶液に対して、バランス水として(C)を加えた。KOH(又はHPO)でpHを所望の値に調整した。エッチングの約60分前に、酸化剤を所望量(0.1質量%)で添加した。
【0152】
各実施例に使用した無機粒子(A)
平均一次粒子径(d1)が35nm、平均二次粒子径(d2)が70nm(堀場製作所の装置を用いた動的光散乱法で測定)で、比表面積が約46m/gのコロイド繭形状のシリカ粒子(A1)(例えばFuso(登録商標)PL-3)を使用した。
【0153】
粒子形状の特性評価手順
固形分20質量%の繭形状の水性シリカ粒子分散液をカーボンフォイル上に分散させ、乾燥させた。乾燥した分散液を、エネルギーフィルタ型透過電子顕微鏡(EF-TEM)(120キロボルト)及び走査型電子顕微鏡二次電子像(SEM-SE)(5キロボルト)を用いて解析した。解析には、解像度2k、16Bit、0.6851nm/ピクセルのEF-TEM画像を用いた。ノイズ除去後、その画像について、閾値を用いて2値化処理した。その後、粒子を手作業で分離した。重なり合った粒子とエッジ粒子を区別し、これは解析に使用しなかった。先に定義したECD、形状係数及び球形度を計算し、統計的に分類した。
【0154】
A2は、平均一次粒子径(d1)が35nm、平均二次粒子径(d2)が75nm(堀場製作所の装置による動的光散乱法で測定)で、比表面積が約90m/gの凝集粒子(例えばFuso(登録商標)PL-3H)を使用した。
【0155】
pHの測定
pH値測定は、pH複合電極(Schott、ブルーライン22pH電極)を用いて行った。
【0156】
静的エッチ速度(SER)実験
SER実験は以下のようにして実施した。
・2.5×2.5cmのPVDタングステン(W)をカットし、脱イオン水(DIW)で洗浄した。
・各試験片クーポンを、0.1%クエン酸溶液で4分間処理した後、DIWで洗浄した。
・タングステン(W)の膜厚(d前)を4探針式プローブで測定した。
・必要な過酸化水素濃度を持つ、新しく調製したスラリー300mlをビーカーに入れ、60℃に加熱した。
・タングステン(W)試験片をそのスラリーに入れ、SER装置内で10分間スラリー中に保持した。
・タングステン(W)試験片を取り外し、DIWで1分間洗浄した後、窒素で乾燥させた。
・再び同じ装置でタングステン(W)の膜厚(d後)を測定した。
・静的エッチ速度(SER)を以下の式で決定した。
【0157】
SER(A/分)=(d前-d後)/10
【0158】
【表1】
【0159】
【表2】
【0160】
結果ついての考察
表1に、種々のスラリー組成物の静的エッチング速度、すなわち静的エッチ速度(SER)を示す。スラリーに腐食抑制剤(B)としてクロルヘキシジン又はクロルヘキシジンジグルコン酸塩を添加することで、用意されたpH範囲でタングステンのSERが12Å/分未満になる。また、表1は、ポリアクリルアミドを単独でスラリーに添加しても(実施例13、14、15、16)、同じpH範囲でクロルヘキシジン又はクロルヘキシジンジグルコン酸塩を添加したときに得られたSERと比較して、タングステン(W)の低いSERは得られないことを示している。
【0161】
同じ条件でL-アルギニン、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、グアニジン炭酸塩などの先行技術で知られている他の腐食抑制剤を添加する場合には、タングステン(W)のSERが高くなるか、不安定なスラリーが形成することになる。また、表1では、タングステンのSERに関しpHの影響が大きいことを示している。アルカリ性のpH範囲では、タングステン(W)の静的エッチ速度が低下する。
【0162】
本特許請求の範囲に記載の発明に係る各実施例の組成物は、タングステンのエッチング挙動が低くなり、また、分散安定性が高くなるという改善された性能を示す。
【国際調査報告】