(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】計測デバイスおよびそのための位相変調装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507794
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020071083
(87)【国際公開番号】W WO2021028202
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】デン ボーフ、アリー、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマン、シモン、ライナルト
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197AA12
2H197CC01
2H197CC02
2H197CC03
2H197EA19
2H197EB05
2H197HA03
2H197JA23
(57)【要約】
【解決手段】第1位相変調器を少なくとも備える入力放射を変調するための位相変調装置、および、このような位相変調装置を備える計測デバイスが開示される。第1位相変調器は、少なくとも稼働状態において入力放射を回折し、回折された放射の周波数をドップラーシフトさせる第1移動格子と、前記回折された放射の少なくとも一次の回折の波長に依存する分散を補償するように構成されるピッチを備える第1補償格子要素と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも稼働状態において入力放射を回折し、回折された放射の周波数をドップラーシフトさせる第1移動格子と、
前記回折された放射の少なくとも一次の回折の波長に依存する分散を補償するように構成されるピッチを備える第1補償格子要素と、
を備える第1位相変調器を少なくとも備える、
入力放射を変調するための位相変調装置。
【請求項2】
第1移動格子としての第1移動音響格子を提供可能な第1音響光学変調器を備える、請求項1に記載の位相変調装置。
【請求項3】
第1音響光学変調器は音響光学調整可能フィルタを備える、請求項2に記載の位相変調装置。
【請求項4】
第1位相変調器は、第1補償格子要素の上に少なくとも一次の回折をリフォーカスする第1光学配置を備える、請求項1から3のいずれかに記載の位相変調装置。
【請求項5】
第1補償格子要素の格子ピッチは第1移動格子のピッチにマッチングされ、当該マッチングは第1移動格子と第1補償格子要素の間に介在する倍率を補償する、請求項1から4のいずれかに記載の位相変調装置。
【請求項6】
前記入力放射は複数の波長を備える、請求項1から5のいずれかに記載の位相変調装置。
【請求項7】
第1移動格子からの放射出力の周波数をダウンシフトさせるために、少なくとも稼働状態において第1移動格子からの放射出力を回折し、この回折された放射の周波数をドップラーシフトさせる第2移動格子を備える、請求項1から6のいずれかに記載の位相変調装置。
【請求項8】
位相変調装置からの放射出力の出力周波数が、第1移動格子またはその移動を生成するために使用される第1周波数、および、第2移動格子またはその移動を生成するために使用される第2周波数の差を含むように、第1移動格子によって回折された前記少なくとも一次の回折、および、前記第2移動格子によって回折された少なくとも一次の回折は、逆の符号の回折次数を備える、請求項7に記載の位相変調装置。
【請求項9】
第2移動格子としての第2移動音響格子を提供可能な第2音響光学変調器を備える、請求項8に記載の位相変調装置。
【請求項10】
第1移動格子を生成するために使用される第1周波数および第2移動格子を生成するために使用される第2周波数の差は1MHzより小さい、請求項9に記載の位相変調装置。
【請求項11】
前記逆の符号の回折次数は、+1の回折次数および-1の回折次数を含む、請求項10に記載の位相変調装置。
【請求項12】
第2移動格子を生成するために使用される第2周波数は、第2移動格子の格子ピッチが第1移動格子のそれにマッチングされ、当該マッチングが第1移動格子と第2移動格子の間に介在する倍率を補償し、前記第1補償格子要素が前記第2移動格子を構成するものである、請求項9から11のいずれかに記載の位相変調装置。
【請求項13】
第2音響光学変調器と、
第2補償格子要素と、
第2補償格子要素の上に第2移動格子からの回折された放射の少なくとも一次の回折をリフォーカスする第2光学配置と、
を備える第2位相変調器を備え、
第2補償格子要素は、前記第2移動格子によって回折された少なくとも一次の回折の波長に依存する分散を補償するように構成されるピッチを備える、
請求項9から11のいずれかに記載の位相変調装置。
【請求項14】
第2補償格子要素の格子ピッチは第2移動格子のそれとマッチングされ、当該マッチングは第2移動格子と第2補償格子要素の間に介在する倍率を補償する、請求項13に記載の位相変調装置。
【請求項15】
ドップラーシフトさせることは波長に依存しない線型時間可変位相シフトを各回折次数に付加できる、請求項1から14のいずれかに記載の位相変調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、(1)2019年8月9日に出願された米国仮出願62/884702号、(2)2019年9月17日に出願された欧州出願19197783.4号、(3)2020年1月15日に出願された欧州出願20152053.3号、の優先権を主張する。これらの優先出願の全体が参照によって本書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本発明は、リソグラフィプロセスにおいて基板にパターンを適用するための方法および装置に関する。本発明は特に、アライメントセンサ等の計測デバイスおよびこのような計測デバイスのための位相変調装置に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は基板上、通常は基板のターゲット部分の上に所望パターンを適用する装置である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用されうる。この場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスが、ICの各層に形成される回路パターンを生成するために使用されてもよい。このパターンは、基板(例えばシリコンウェーハ)のターゲット部分(例えば、ダイの部分、一つのダイ、複数のダイを含む)の上に転写されうる。パターンの転写は、典型的には基板上に提供される放射感応性材料(レジスト)の層における結像による。一般的に単一の基板は、連続的にパターン形成される隣り合うターゲット部分のネットワークを含む。公知のリソグラフィ装置は、ターゲット部分上に全体パターンを一度に露光することで各ターゲット部分が照射されるいわゆるステッパ、および、放射ビームを通じてパターンを所定方向(「スキャン」方向)にスキャンすると同時に、この方向に平行または非平行に基板をスキャンすることで、各ターゲット部分が照射されるいわゆるスキャナを含む。基板上にパターンをインプリントすることで、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リソグラフィ動作中は、異なる処理ステップが、基板上に順次形成される異なる層を必要としうる。従って、先に形成されたパターンに関して、基板を高精度に配置する必要が出てくる。一般的に、アライメントのためのアライメントマークが基板上に配置され、第2オブジェクトに対して位置決めされる。リソグラフィ装置は、マスクからの正確な露光を担保するために、アライメントマークの位置を検知し、アライメントマークを使用して基板のアライメントを取るためのアライメント装置を使用してもよい。二つの異なる層におけるアライメントマーク間のミスアライメントは、オーバーレイ誤差として測定される。このように、高い正確性およびより少ない変動を伴うアライメントを提供するシステムおよび方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の第1側面では、入力放射を変調するための位相変調装置が提供される。この装置は、少なくとも稼働状態において入力放射を回折し、回折された放射の周波数をドップラーシフトさせる第1移動格子と、前記回折された放射の少なくとも一次の回折の波長に依存する分散を補償するように構成されるピッチを備える第1補償格子要素と、を備える第1位相変調器を少なくとも備える、
【0006】
発明の第2側面は、第1側面の位相変調装置を備える計測デバイスを構成する。
【0007】
発明の更なる側面、フィーチャおよび利点は、発明の様々な実施形態の構造および作用と共に、付随する図面を参照して以下で詳細に記述される。発明は、ここで記述される特定の実施形態に限定されないと理解される。このような実施形態は、例示のみを目的として提示される。追加的な実施形態は、ここに含まれる教示に基づいて当業者にとって明白である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
発明の実施形態は以下の付随する図面を参照して例示的に記述される。
図1は、半導体デバイスのための製造設備を構成する他の装置と共にリソグラフィ装置を示す。
図2は、例示的な実施形態に係るアライメント装置の模式図である。
図3(a)および3(b)は、回折格子と共に設計された本開示の実施形態に係るアライメントターゲットを例示する。
図4は、二次元回折格子と共に設計された本開示の実施形態に係るアライメントターゲットを例示する。
図5は、発明の第1実施形態に係る線型位相変調器の模式図である。
図6は、発明の第2実施形態に係る線型位相変調器の模式図である。
図7は、発明の第3実施形態に係る線型位相変調器の模式図である。
図8は、発明の実施形態に係る線型位相変調器を備える軸外アライメント装置を示す。
図9は、発明の実施形態に係る線型位相変調器を備えるヘテロダインアライメント装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の実施形態を詳細に記述する前に、本発明の実施形態が実施されうる環境例について説明する。
【0010】
図1における200は、大量リソグラフィ製造プロセスを実施する産業製造設備の一部としてのリソグラフィ装置LAを示す。この例では、製造プロセスが半導体ウェーハ等の基板上の半導体製品(集積回路)のための製造に適合される。当業者は、様々なタイプの基板を当該プロセスの変形で処理することで、多種多様な製品が製造されうると理解する。今日大きな商業的な重要性を持つ半導体製品の製造は、純粋に例として使用される。
【0011】
リソグラフィ装置(または簡潔に「リソツール」200)内では、測定ステーションMEAが202に示され、露光ステーションEXPが204に示される。制御ユニットLACUは206に示される。この例では、各基板がパターン適用のために測定ステーションおよび露光ステーションに移動する。光学リソグラフィ装置では、例えば、調整された放射を使用してパターニングデバイスMAから基板上に製品パターンを転写するために投影システムが使用される。これは、放射感応性レジスト材料の層にパターンの像を形成することによって行われる。
【0012】
用語「投影システム」は、使用される露光放射、または、液浸液または真空の使用等の他の要素にとって適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁気型および/または静電型の光学システム、またはこれらの任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを包含するものと広義に解釈されるべきである。パターニングデバイスMAは、それによって透過または反射される放射ビームにパターンを形成するマスクまたはレチクルでもよい。周知の動作モードは、ステッピングモードおよびスキャニングモードを含む。周知のように、投影システムは、基板に亘る多くのターゲット部分に所望パターンを適用するための各種の方法で、基板およびパターニングデバイスの支持システムおよび位置決めシステムと協働してもよい。プログラマブルパターニングデバイスが、固定パターンを有するレチクルの代わりに使用されてもよい。放射は、例えば、深紫外(DUV)または極端紫外(EUV)の波長帯における電磁放射を含んでもよい。本開示は、他のタイプのリソグラフィプロセス、例えば、インプリントリソグラフィおよび電子ビーム等による直接書込リソグラフィにも適用可能である。
【0013】
リソグラフィ装置制御ユニットLACUは、基板WおよびレチクルMAを受け取ってパターニング動作を実施するために、様々なアクチュエータおよびセンサの全ての移動および測定を制御する。LACUは、装置の動作に関する所望の演算を実行するための信号処理およびデータ処理機能も含む。実際は、制御ユニットLACUは、それぞれがリアルタイムデータの取得や、装置内のサブシステムまたはコンポーネントの処理および制御を担う、多くのサブユニットのシステムとして実現される。
【0014】
露光ステーションEXPにおいてパターンが基板に適用される前に、様々な準備ステップが実行されうるように基板は測定ステーションMEAで処理される。準備ステップは、レベルセンサを使用した基板の表面高さのマッピングや、アライメントセンサを使用した基板上のアライメントマークの位置の測定を含んでもよい。アライメントマークは、略規則的なグリッドパターンに配置される。しかし、マーク生成時の誤差や、処理の際に発生する基板の変形のために、マークは理想的なグリッドから乖離する。結果的に、装置が製品フィーチャを正確な位置に極めて高精度に形成する場合、基板の位置および方向の測定に加えて、アライメントセンサが実際は基板領域に亘る多くのマークの位置を詳細に測定しなければならない。装置は、それぞれが制御ユニットLACUによって制御される位置決めシステムを備える、二つの基板テーブルを有するいわゆるデュアルステージタイプでもよい。一の基板テーブル上の一の基板が露光ステーションEXPで露光されている間に、様々な準備ステップが実行されうるように他の基板が測定ステーションMEAで他の基板テーブル上に載置されうる。アライメントマークの測定は非常に時間がかかるが、二つの基板テーブルを設けることで装置のスループットを実質的に向上させられる。位置センサIFが測定ステーションや露光ステーションにおいて基板テーブルの位置を測定できない場合、両ステーションにおいて基板テーブルの位置を追跡可能にするための第2位置センサが提供されてもよい。リソグラフィ装置LAは、例えば、二つの基板テーブルおよび二つのステーション(露光ステーションおよび測定ステーション)を有し、当該ステーション間で基板テーブルが交換されうるいわゆるデュアルステージタイプでもよい。
【0015】
製造設備内における装置200は、装置200によるパターニングのために感光性レジストおよび他のコーティングを基板Wに適用するためのコーティング装置208も含む「リソセル」または「リソクラスタ」の一部を形成する。装置200の出力側では、露光パターンを物理的なレジストパターンに現像するために、ベーキング装置210および現像装置212が提供される。これらの全ての装置の間では、基板ハンドリングシステムが基板の支持および装置のある部分から次の部分への移送を担う。しばしばトラックと総称されるこれらの装置は、それ自体が監視制御システムSCSによって制御されるトラック制御ユニットの制御下にある。監視制御システムSCSは、リソグラフィ装置制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置も制御する。このように、異なる装置がスループットおよび処理効率を最大化するために稼働されうる。監視制御システムSCSは、パターン形成された各基板を生成するために実行されるステップの極めて詳細な定義を提供するレシピ情報Rを受け取る。
【0016】
リソセルにおいて一旦パターンが適用されて現像されると、パターン形成された基板220は222、224、226に示されるような他の処理装置に移送される。典型的な製造設備における様々な装置によって、広範な処理ステップが実行される。例えば、本実施形態における装置222はエッチングステーションであり、装置224はエッチング後のアニーリングステップを実行する。更に、物理的および/または化学的な処理ステップが、更なる装置226等において適用される。物質の成膜、表面物性の改変(酸化、ドーピング、イオン注入等)、化学的機械研磨(CMP)等の様々なタイプのオペレーションが実際のデバイスを製造するために必要とされうる。装置226は、実際には、一または複数の装置において実行される一連の異なる処理ステップを表してもよい。他の例として、装置および処理ステップは、リソグラフィ装置によって配置された前駆体(precursor)パターンに基づいて複数のより小さいフィーチャを形成するために、自己整合された複数のパターン形成の実行のために提供されてもよい。
【0017】
周知の通り、半導体デバイスの製造は、基板上の層毎に適切な物質およびパターンを有するデバイス構造を構築するために、このような処理の多くの繰り返しを伴う。従って、リソクラスタに到達する基板230は、新たに用意された基板でもよいし、このクラスタまたは全く他の装置において先に処理された基板でもよい。同様に、必要とされる処理に応じて、装置226を離れる基板232は、同じリソクラスタにおける後続のパターン形成動作のために戻されてもよいし、異なるクラスタにおけるパターン形成動作が予定されてもよいし、ダイシングおよびパッケージングに送られる完成品でもよい。
【0018】
製品構造の各層は異なる一連の処理ステップを必要とし、各層で使用される装置226はタイプが全く異なりうる。更に、装置226によって適用される処理ステップが実質的に同じ場合であっても、大きな設備では異なる基板上にステップ226を実行するために並行に稼働する複数の同等の装置が存在しうる。セットアップにおける僅かな差またはこれらの装置の間の誤差は、異なる基板に異なる態様で影響を及ぼしうる。エッチング(装置222)のような各層に比較的共通のステップでさえ、実質的に同じだがスループットを最大化するために並行に稼働する複数のエッチング装置によって実行されうる。更に実際には、エッチング対象材料の詳細や異方性エッチングのような特別な要件に応じて、異なる層が異なるエッチングプロセス、例えばケミカルエッチング、プラズマエッチングを必要とする。
【0019】
前述したように、先行および/または後続のプロセスが、異なるタイプのリソグラフィ装置を含む他のリソグラフィ装置で実行されうる。例えば、解像度およびオーバーレイ等のパラメータにおける要求が非常に高いデバイス製造プロセスにおけるいくつかの層は、要求が低い他の層より高度なリソグラフィツールで実行されうる。従って、いくつかの層は液浸タイプのリソグラフィツールで露光され、他の層は「ドライ」ツールで露光されてもよい。いくつかの層はDUV波長で稼働するツールで露光され、他の層はEUV波長放射を使用して露光されてもよい。
【0020】
リソグラフィ装置によって露光される基板が正しく一貫して露光されるように、連続する層の間のオーバーレイ誤差、線厚、臨界寸法(CD)等の特性を測定するために露光される基板を検査するのが望ましい。そこで、リソセルLCが位置する製造設備は、リソセルで処理された基板Wの一部または全部を受け取る計測システムも含む。計測結果は、直接的または間接的に監視制御システムSCSに提供される。誤差が検知された場合、特に同じバッチの他の基板が露光される前に計測が迅速に行われうる場合、後続の基板の露光に対して調整が施されてもよい。また、欠陥が検知された基板上に更なる処理が実行されるのを避けるために、露光済の基板が歩留まりを高めるために取り除かれて再処理されてもよいし廃棄されてもよい。基板の一部のターゲット部分のみに欠陥がある場合、更なる露光は欠陥のないターゲット部分のみに実行されうる。
【0021】
図1には、製造プロセスの望ましい段階で製品のパラメータの測定を行うために提供される計測装置240も示されている。現代のリソグラフィ製造設備における計測ステーションの一般的な例は、ダークフィールドスキャトロメータ、角度分解スキャトロメータまたは分光スキャトロメータ等のスキャトロメータであり、装置222におけるエッチングより前の220において現像基板の特性を測定するために適用されてもよい。計測装置240を使用して、例えば、オーバーレイまたは臨界寸法(CD)等の重要な性能パラメータが、現像されたレジストにおける正確性の要件を満たさないことを判定してもよい。エッチングステップより前に、現像されたレジストを取り除き、リソクラスタを通じて基板220に再処理を施す機会が存在する。装置240からの計測結果242は、リソクラスタにおけるパターン形成動作の正確な実行を維持し、仕様外の製品が製造されてやり直しが必要となるリスクを最小化するために、細かい経時的な調整を施す監視制御システムSCSおよび/または制御ユニットLACU206によって使用されうる。
【0022】
加えて、計測装置240および/または他の計測装置(不図示)が、処理済基板232、234および未処理基板230の特性を測定するために適用されうる。計測装置は、オーバーレイまたはCD等の重要なパラメータを決定するために、処理済基板に対して使用されうる。
【0023】
図2は、実施形態に係る、リソグラフィ装置100または100′の一部として実装可能なアライメント装置400の模式的な断面図を例示する。本実施形態の例では、アライメント装置400が、基板(例えば基板W)をパターニングデバイス(例えばパターニングデバイスMA)に対して整列させるように構成されてもよい。アライメント装置400は更に、基板上のアライメントマークの検知した位置を使用して、基板をパターニングデバイスまたはリソグラフィ装置100または100′の他のコンポーネントに対して整列させるように構成されてもよい。このような基板のアライメントによって、基板上の一または複数のパターンの正確な露光が担保されうる。
【0024】
本実施形態では、アライメント装置400が、照明システム402、ビームスプリッタ414、干渉計426、検出器428および信号分析器430を含んでもよい。照明システム402は、一または複数の通過帯域を有する電磁気的な狭帯域放射ビーム404を提供するように構成されてもよい。例えば、一または複数の通過帯域は、約400nmと約2.0μmの間の波長のスペクトル内でもよい。他の例では、一または複数の通過帯域は、約400nmと約2.0μmの間の波長のスペクトル内の離散的で狭い通過帯域でもよい。
【0025】
ビームスプリッタ414は、放射ビーム404を受け取り、ステージ422上に載置された基板420上に放射サブビーム415を向けるように構成されてもよい。一例では、ステージ422は方向424に沿って移動可能である。放射サブビーム415は、基板420上に位置するアライメントマークまたはターゲット418を照明するように構成されてもよい。アライメントマークまたはターゲット418は、放射感応性フィルムで被覆されてもよい。他の例では、アライメントマークまたはターゲット418は、180度の対称性を有してもよい。すなわち、アライメントマークまたはターゲット418が、それらの平面に垂直な対称軸の周りに180度回転された場合、回転されたアライメントマークまたはターゲット418は、回転される前のアライメントマークまたはターゲット418と実質的に等しくなってもよい。基板420上のターゲット418は、(a)固形レジスト線で形成されるバーを備えるレジスト層格子、または(b)製品層格子、または(c)製品層格子に重ねられたまたは織り交ぜられたレジスト格子を備えるオーバーレイターゲット構造における複合格子スタック、のいずれでもよい。なお、バーは基板中にエッチングされてもよい。
【0026】
ビームスプリッタ414は更に、回折放射ビーム419を受け取り、回折された放射サブビーム429を干渉計426に向けるように構成されてもよい。
【0027】
実施形態の例では、回折された放射サブビーム429は、アライメントマークまたはターゲット418から反射された放射サブビーム415の少なくとも一部でもよい。本実施形態の例では、干渉計426は、任意の適切な光学要素の組、例えば、受け取られた回折された放射サブビーム429に基づいて、アライメントマークまたはターゲット418の二つの像を形成するように構成されるプリズムの組合せを備える。干渉計426は更に、二つの像の一方を二つの像の他方に対して180度回転させ、回転された像と回転されなかった像を干渉法的に再結合するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、干渉計426は、米国特許番号6,628,406(Kreuzer)で開示され、その全体が参照によって本書に援用される自己参照干渉計でもよい。
【0028】
実施形態では、アライメント装置400のアライメント軸421がアライメントマークまたはターゲット418の対称中心(不図示)を通過する場合、検出器428が、干渉計信号427を介して再結合された像を受け取り、再結合された像の結果として干渉を検知するように構成されてもよい。このような干渉は、アライメントマークまたはターゲット418が180度の対称性を有し、再結合された像が建設的または破壊的に干渉するために発生しうる。検知された干渉に基づいて、検出器428は更に、アライメントマークまたはターゲット418の対称中心の位置を決定し、結果的に基板420の位置を検知するように構成されてもよい。一例では、アライメント軸421は、基板420に垂直で、像回転干渉計426の中央を通過する光学ビームに対して整列されてもよい。検出器428は更に、センサ特性およびウェーハマークプロセス変動との相互作用によって、アライメントマークまたはターゲット418の位置を推定するように構成されてもよい。
【0029】
更なる実施形態では、検出器428が、以下の一または複数の測定を実行することで、アライメントマークまたはターゲット418の対称中心の位置を決定する。
・様々な波長についての位置変動(色の間の位置シフト)の測定
・様々な次数についての位置変動(回折次数の間の位置シフト)の測定
・様々な偏光についての位置変動(偏光の間の位置シフト)の測定
【0030】
このデータは、例えば任意のタイプのアライメントセンサ、例えば、いずれも全体が参照によって本書に援用される、単一の検出器および四つの異なる波長と共に自己参照干渉計を利用し、ソフトウェアまたはATHENA(Advanced Technology using High order ENhancement of Alignment)でアライメント信号を抽出する米国特許番号6,961,116、七つの回折次数のそれぞれを専用検出器に向ける米国特許番号6,297,876、に開示されているSMASH(SMart Alignment Sensor Hybrid)センサで取得できる。ここで記述される概念に適した他のアライメントセンサは、参照によって本書に援用されるUS2008/0043212に開示されている、株式会社ニコンからのレーザ干渉アライメント(LIA)センサおよび/またはそれらのアライメントシステムである。
【0031】
実施形態では、信号分析器430が、ステージ422の位置を決定し、ステージ422の位置をアライメントマークまたはターゲット418の対称中心の位置と相関させるように構成されてもよい。このように、アライメントマークまたはターゲット418の位置、ひいては基板420の位置が、ステージ422に対して正確に検知される。
【0032】
いくつかの実施形態では、検出器428が正確なスタックプロファイル検知を可能にする検出器アレイでもよい。検出器アレイには様々なオプション(例えば、マルチモードファイバー束、チャネル毎の離散的なピン検出器、CCDまたはCMOS(線型)アレイ)がある。マルチモードファイバー束の使用は、任意の損失要素を安定性のために遠隔に配置することを可能にする。離散的なPIN検出器は、広いダイナミックレンジを提供するが、それぞれが個別のプリアンプを必要とする。このように、要素の数は限られている。CCD線型アレイは、高速読出可能な多くの要素を提供し、特に位相ステッピング検知が使用される場合に有効である。
【0033】
図3(a)は、実施形態に係る回折格子516の断面図である。回折格子516は、基板520上に形成されるピッチまたは周期「Λ」および格子線幅「d」を含みうる。高い回折次数の効率は、格子構造のプロファイル(例えば矩形状)、フィルムスタック厚「t」、デューティサイクル「F」等の回折格子516のパラメータによって決定されうる。デューティサイクル「F」は、格子幅dおよびピッチΛの比と定義されうる(F=d/Λ)。回折効率は、光が伝播する際の電磁場を完全に記述するマックスウェル方程式を解くための厳密ベクトル波モデリングまたは様々な他の方法を使用して予測されうる。一例では、回折格子516のスペクトル特性(例えば回折角)が、格子方程式によって記述されうる。例えば、波長λ、m次の回折角θ
mを有する放射ビーム515の通常の入射では、次の式によって予測されうる。
Λsinθ
m=mλ (1)
また、θ
0の入射角では、回折方程式(1)は次のように修正される。
Λ(sinθ
m-sinθ
0)=mλ (2)
【0034】
回折格子はアライメントマーク(アライメントターゲットとも呼ばれる)として使用されうる。アライメントシステムの動作は、二つの対称な高次回折、例えば、m=+1の回折ビーム519-1およびm=-1の回折ビーム519-2の間の位相シフトΔφに基づきうる。回折格子516が移動していない場合、回折ビーム519-1および519―2の周波数νは略等しく、例えばνλ=c(cは光速)である。この例では、回折ビーム519-1および519-2の位相が合っている。例えば、対物レンズ512または干渉計(不図示)に対してスキャン方向524に沿って速度Vstageで回折格子516または基板520が移動している場合、ドップラー効果によって、回折ビーム519-1の周波数がΔνだけ増加し、回折ビーム519-2の周波数がΔνだけ減少する。結果として生じる周波数差は、干渉計に到達した回折ビーム519-1および519-2の間の、次の式によって表される位相差Δφ(t)をもたらす。
Δφ(t)=2π(2Δν)t=4π(Vstage/Λ)t (3)
【0035】
他のより高次の回折ビームも同様の挙動を示す。このように、干渉計の出力において測定される光強度ISUMは、格子中心からのシフトである格子オフセットx0の関数となりえる。
ISUM=I0+I1cos(4πx0/Λ+Δφ(t)) (4)
【0036】
格子516(
図3(b)では上面視で示される)をスキャンすることで、アライメント信号が変調され、光強度I
SUMに時間的変調が現れる。データ処理および分析を通じて、ノイズおよび他の要素が除去され、パラメータフィッティングおよび測定された光強度I
SUMからの抽出によって格子オフセットx
0が決定されうる。
図3(b)では、回折格子516が基板520上でx方向またはy方向を向いている。いくつかの実施形態では、回折格子516が基板520上で任意の他の方向を向いていてもよい。例えば、回折格子516は、x方向に対して45度の角をなしてもよい(
図3(b)では不図示)。
【0037】
リソグラフィシステムは集積回路のために高度な技術ノードでのますます微細なパターン形成フィーチャを提供するが、ますます微細なアライメントマークまたはターゲットを受け取る異なるリソグラフィレベルの間のアライメントの正確性を高める必要がある。通常のアライメントマークは、パッケージング前のダイのダイシングの際に廃棄されるスクライブライン、チップまたはダイ(製品領域)の間の領域に配置されうる。与えられたプロセスモニタリング領域にとって、より小さいサイズは、ウェーハに亘るアライメントおよび/またはオーバーレイ均一性を向上させるために、より多くのアライメントマークを様々な位置に分布できることも意味する。あるいは、大きい領域を有するダイにとって、製品チップに亘るアライメントを向上させるために、より小さいアライメントマークはダイの内部に配置されうる。
【0038】
現在の干渉に基づくアライメントシステムは、変調されたアライメント信号を生成するための格子スキャンに依存している。
図3(b)は、基板520上のxおよびy方向に沿ったいくつかの実施形態に係るアライメントマークを示す。放射ビーム515は、アライメントマークに亘ってx方向およびy方向にスキャンできる。いくつかの実施形態では、基板520が放射ビーム515の代わりに移動する。
【0039】
一例では、信頼できるアライメント信号を生成するために、長いアライメントマークが十分なスキャン距離を提供するために設計される。イメージに基づくアライメントシステムでは、小さいアライメントマークが使用されうる。しかし、大量のデータの取得および処理のために、解像度および速度が制限されうる。
【0040】
本開示に係る様々な実施形態は、能動的な位相変調を使用することで小さいマークでのアライメントを可能にする装置および方法を提供する。例えば、xおよびy寸法が6μmより小さいアライメントマーク(例えば、5μm四方程度)でも、良好な解像度のアライメント信号を提供するには十分である。例示的なアライメントマークまたはターゲット618が上面視で
図4に示される。放射ビーム515を移動させることなくアライメントターゲット618の位置が決定されうるように、二次元回折格子がxおよびy方向に配置される。能動的な位相変調を使用することで、アライメントターゲット618のxおよびy方向に沿ったアライメント信号が同時に測定され、アライメントターゲット618のxおよびy方向における位置が同時に決定されうる。
【0041】
いくつかの実施形態では、アライメントターゲット618が、xまたはy方向と異なる任意の方向に向いた回折格子を含みうる。例えば、回折格子は、xまたはy方向に対して45度の角を形成しうる。
【0042】
アライメント用途(またはヘテロダイン検知を使用する任意の他の計測用途)のためのこの位相変調を実現するために、様々な位相変調器が提案された。ピエゾ変調器(例えばスキャニングミラー)が提案された。しかし、これはキャリブレーションを必要とするミラーの移動および使用される波長によって位相変調が決定されることを意味する。電気光学変調器の使用は、使用される波長に位相変調が依存することを意味する。音響光学変調器は波長に依存しない線型位相スイープを提供するが、各波長が異なる出力角を有する。これは、正しくキャリブレーションが行われなかった場合に、単一のカラーバンド内における位置誤差をもたらす。
【0043】
そこで、全ての波長に対して一定の位相スイープおよび共通の出力角を提供する位相変調器のデザインが提案される。更に、開示される実施形態は、現在の多くのアライメントセンサに使用されているような低ノイズ検出器によって検出されうる周波数で一定の位相スイープを提供する。
【0044】
図5は、提案される第1実施形態に係る線型位相変調器LPMを例示する。位相変調スキームは、音響光学変調器AOM(例えば、音響光学調整可能フィルタ(AOTF))等の音響光学フィルタに基づく。AOMの圧電トランスデューサは、AOM媒体(例えば、石英または任意の他の適した音響光学材料)内で非常に安定した移動音響波をもたらす非常に安定した周波数で駆動されうる。調整可能なAOMによって、例えば回折次数を最適化するために、回折次数からの回折角の調整が可能になる。
【0045】
図5では、周波数ν
1を有するAOM媒体内の音響波を提供するように構成される音響光学変調器AOMを使用して、入力ビームIBが変調される。この進行波は、入射光(入力ビームIB)を回折する移動音響格子を形成する。移動格子であるため、各回折次数は次のドップラーシフトΔν
1を受ける。
Δν
1=n*ν
1 (5)
ここで、nは放射される回折次数である。このドップラーシフトは、入力ビームIBに含まれる各波長にとっての線型位相スイープに相当し、この位相スイープ(時間的な位相シフトφ(t))は次の関数によって記述される。
φ(t)=2*π*Δν
1*t (6)
ここで、tは時間である。
【0046】
AOMは、例えば水晶発振器(極めて安定している)によって、MHzオーダーの周波数で励起されてもよい。これは、容易に空間的に分離可能で必要に応じて遮断可能な少数の回折次数のみをもたらす。例えば、零次(0)が零次ストップまたはビームダンプBDで遮断されてもよく、同様のビームダンプが任意の他の次数を遮断するために使用されてもよい。AOMによって各次数に付加される回折角は、例えば所望の回折次数における光量を最大化するために調整可能である。例えば、現実的な実施形態は、約50%の入射光を所望の回折次数に振り分け、残りを隣接する次数に振り分けるように構成されてもよい。簡素化のみを目的として、零次(0)および第1回折次数(例えば、+1の回折次数)が
図5に示されている。
【0047】
音響光学変調器AOMの利点は、全ての波長が同じ線型位相スイープを受けることである。しかし、各波長(一次回折の三つの波長+1λ1、+1λ2、+1λ3が図示されている)は、異なる伝播方向を有する。これは多色用途にとって問題になるばかりでなく、単色用途にとってもアライメントおよびオーバーレイにおいて問題になる。後者の場合に典型的には5nmより大きいバンド幅の色が存在すると、このバンド幅内の各波長が異なる方向に伝播し、キャリブレーションされないと誤差をもたらす恐れがあることを意味する。
【0048】
ここで提案される解決手段は、AOMの音響格子にマッチングされるピッチを備える格子G上にAOMの出力をリフォーカスするものであり、必要に応じて、レンズL1、L2の光学配置等による任意の光学素子間の倍率の補正を含む。簡素化のために、この光学配置は4fスキーム(それぞれ焦点距離fL1、fL2を有する二つのレンズL1、L2)として示される。もちろん、これは単なる一例であり、代わりに使用されうるレンズ、ミラーおよび/または他の光学要素を使用して、ビームをリフォーカスするための多くの代替的な配置が可能である。
【0049】
既に前述したように、実施形態ではAOMがMHzレベルの周波数で駆動されてもよい。これは、このような周波数が望ましい範囲(例えば、1-100μm)におけるピッチの音響格子をもたらすためである。残念ながら、この結果として出力ビームOBν1は、現在の多くのアライメントセンサ配置において典型的に使用されているタイプの低ノイズ検出器では検知できないMHzの周波数シフト(例えば、周波数ν1)を受けてしまう。高い周波数は高い検知バンド幅を必要とするが、多くのノイズをもたらす。
【0050】
図6は、この問題を解決し、低ノイズ検出器と共に使用されうる更なる実施形態を例示する。本実施形態は、第1周波数ν
1(MHz範囲)を低ノイズ検出器によって検知可能な周波数(例えば典型的にはkHz範囲)に光学的にダウンミックスする第2線型位相変調器LPM2を提供する。第2線型位相変調器LPM2は、AOMによって付加される周波数および付加される回折次数(すなわち、第1と逆の符号の回折次数)を除いて、第1線型位相変調器LPM1(すなわち、
図5の線型位相変調器LPM)と実質的に同様である。第1線型位相変調器LPM1は+1の回折次数に、1*ν
1の第1ドップラーシフトΔν
1をもたらす。第2線型位相変調器LPM2は-1の回折次数に、-1*ν
2(負の回折次数がこの第2ステージで選択されているため)の第2ドップラーシフトΔν
2をもたらす。このように、出力ビームOB
ν1-ν2は、ν
1-ν
2だけドップラーシフトされている。なお、両方のAOM(LPM1およびLPM2内)をMHz周波数で駆動することも可能だが、それぞれのMHz周波数は周波数差がkHz範囲で極めて安定的に維持されるように選択される。この結果、周波数差でのドップラーシフトに対応して全ての色について線型に位相スイープされた出力ビームが得られる。
【0051】
図7は、
図6と実質的に同じ機能をより簡素な構成で実現する他の実施形態を例示する。それぞれが個別の補償格子Gを有する第1線型位相変調器LPM1および第2線型位相変調器LPM2の代わりに、この配置は第1音響光学変調器AOM1および第2音響光学変調器AOM2を有する単一の線型位相変調器LPMを備える。第1音響光学変調器AOM1は、
図6の第1線型位相変調器LPM1のAOMと同様に動作する。例えば、第1音響光学変調器AOM1は、+1の回折次数に1*ν
1の第1ドップラーシフトΔν
1を付加する。第2音響光学変調器AOM2は、
図6の第2線型位相変調器LPM2のAOMと同様に動作する。例えば、第2音響光学変調器AOM2は、-1の回折次数に-1*ν
2の第2ドップラーシフトΔν
2を付加する。更に、第2音響光学変調器AOM2は、線型位相変調器LPMからの-1の回折次数の出力ビームOB
ν1-ν2における波長分散が無視できる(分散された鏡面反射放射がビームダンプBD2によって遮断される)ように、第1音響光学変調器AOM1によって付加される波長に依存する分散を補償する。
図6および7の底部における同様のブロック図に示されるように、これらの配置は出力ビームOB
ν1-ν2に同じ効果をもたらす。
【0052】
必要な波長補償を実現するために、第2音響光学変調器AOM2の周波数が、レンズL1、L2の光学配置等による任意の光学素子によって付加される任意の倍率を考慮して、第1音響光学変調器AOM1にマッチングされる。簡素化のために、この光学配置は4fスキーム(それぞれ焦点距離fL1、fL2を有する二つのレンズL1、L2)として示される。もちろん、これは単なる一例であり、代わりに使用されうるレンズ、ミラーおよび/または他の光学要素を使用して、ビームをリフォーカスするための多くの代替的な配置が可能である。より一般化すれば、AOM1およびAOM2の間の光学要素の倍率のマッチングによって、異なる周波数でのAOMの動作が許容される。
【0053】
もちろん、
図6および7の各例では、各ステージでの次数が逆でもよい。すなわち、-1次が第1AOMから得られ、+1次が第2AOMから得られてもよい。なお、前述の全ての例において、逆の符号の次数は、光源に対するフェーズフロントの伝播方向に応じて互いに区別されてもよい。各回折次数方向にとってのフェーズフロント伝播の方向は、移動(例えば、音響)格子の移動方向および再結像システム(例えば、レンズL1、L2によって代表される)の詳細に依存する。ここで、正の次数+1は、フェーズフロントが光源から遠ざかる(AOMから遠ざかる)回折次数と定義され、-1の次数は、フェーズフロントが光源に近づく(AOMに近づく)回折次数と定義される。このように、
図6および7の配置では、回折次数が光源に対する逆の伝播回折次数を各ステージ(例えば、各移動格子/AOMで付加される)で持つ。与えられた特定の例では、これは
図6の配置における二つの音響格子が同じ方向に移動することを意味する。
図7では対照的に、第2音響光学変調器AOM2上へのリフォーカスされたビームの入射角のために、二つの音響格子が逆の方向に移動する。これは、図における各AOM上の矢印によって示されている。
【0054】
第1の例として
図8は、
図6/7(または
図5その他の本開示の範囲内)の線型位相変調配置を利用する回折に基づく例示的なアライメントセンサ配置を示す。
図8は、測定ビームB1、B2が通常とは異なる角度でアライメントマークAM上に入射する軸外アライメントセンサ配置を示す。光源配置は、ビームスプリッタBS
50:50を使用して、入力ビームIBをビームB1、B2に等しく分ける。ビームB1は、第1方向にアライメントマークAM上に入射する(例えば、ミラーM1および対物レンズOLを介して)方向に向けられ、ビームB2は、第2方向にアライメントマークAM上に入射する(例えば、ミラーM2、スポットミラーSMおよび対物レンズOLを介して)方向に向けられる。ビームB1、B2のいずれかの経路は、線型位相変調配置LPM1、LPM2を備える。図の配置はビームB1に作用する位置にあるが、ビームB2に作用する位置にあってもよい。回折された放射+1
λ1、+1
λ2、+1
λ3、-1
λ1、-1
λ2、-1
λ3は、自己参照干渉計SRIに伝播してアライメント位置を取得するために干渉される(SRIについては詳細に説明せず、残りのアライメントセンサの詳細も示さないが、これらの側面は既に参照された多くの公開文献(例えばUS6,628,406)で十分に解説されている)。
【0055】
線型位相変調配置LPM1、LPM2は、ビームB2に起因する正の回折次数+1λ1、+1λ2、+1λ3およびビームB1に起因する負の回折次数-1λ1、-1λ2、-1λ3の間の位相シフトφを導入し、検出器で測定された光強度を次のように変更するように動作可能である。
ISUM=1+cos(4πx0/Λ+φ) (7a)
IDIFF=1-cos(4πx0/Λ+φ) (7b)
ここで、Λは音響格子のピッチである。
【0056】
このような配置は、図示の軸外アライメントセンサと異なる様々な回折に基づくアライメントセンサに実装されてもよい。この配置は、照明光学要素における位相が制御される配置に特に適している。しかし、線型位相変調配置LPM1、LPM2は、回折次数の相補的なペアの一方の回折次数に線型時間可変位相差を付加するために、システムの任意の場所に実装できる。例えば、正の回折次数+1λ1、+1λ2、+1λ3または負の回折次数-1λ1、-1λ2、-1λ3の一方に直接的に線型時間可変位相差を付加してもよい(例えば、これらの次数の全ての波長に対して)。
【0057】
なお、位相変調技術および装置は、ヘテロダインスキーム(アライメントまたはオーバーレイ計測等に使用されうる)等の他の干渉技術に適用されてもよい。アライメントのためにヘテロダインスキームを使用する例は、参照によって本書に援用されるWO2017/125352等に開示されている。
【0058】
図9は、アライメント配置においてバランスされたヘテロダイン検知を適用する例示的なヘテロダインアライメントセンサ配置を示す。放射源は、入力ビームIBを提供する。その放射の一部(例えば10%)がビームスプリッタBS
90:10によって取り出されて参照ビームRBを構成し、残りの放射が測定ビームMBを構成する。
図6/7(または
図5その他の本開示の範囲内)の線型位相変調器LPM1、LPM2は、測定ビームMBに対する位相変調を参照ビームRBに適用する。位置信号を構成するアライメントマークAMから回折された放射+1、-1は単一のカメラでは結像されず、ビームスプリッタBS2において参照ビームRB(ビームエキスパンダBEによって拡大されている)と混合される。
【0059】
適用された相対的な位相変調のために、参照ビームRBおよび回折された放射+1、-1の間の干渉が、各検出器CAM1、CAM2で結像される光学位置信号のペアをもたらす。これらの光学位置信号はそれぞれ、位相変調器LPM1、LPM2によって適用された位相における時間変動に対応する時間可変コンポーネントを含む。二つの光学位置信号における時間可変コンポーネントは、互いに正確に逆相である。二つの検出器からの信号の減算によって、時間可変コンポーネントが顕在化する。あるいは、アライメント情報は一方の信号(例えば、検出器CAM2で結像された信号(検出器CAM1での信号は無視される))のみから抽出されてもよい。検出器CAM2での像は、強いDCコンポーネントにも関わらず振動の痕跡を含んでおり、そこからアライメント位置が決定されうる。適用される位相変調の知識に基づく同期検知を使用することで、光学位置信号は信号対雑音比が向上した電子的な位置信号を取得するために使用されうる。
【0060】
以上では、アライメントまたは位置センサのための使用に関して線型位相変調配置LPM1、LPM2が説明されたが、オーバーレイまたはフォーカスを測定するためのスキャトロメトリに基づくセンサ等の他の計測センサに使用されてもよい。
【0061】
また、以上の説明は、移動格子(すなわち移動音響格子)を得るためのAOMの使用に関するが、ここで記述される技術的思想はそれに限定されない。回折された放射に波長に依存しない線型時間可変位相シフトを付加しうる移動格子を得るための任意の配置が使用されうる。従って、このような配置は提供された移動する物理的な格子(例えば、アクチュエータ等を介して駆動される)を包含し、以上のAOMへの言及は一般化された移動格子にも当てはまるものと理解される。
【0062】
位相変調技術はヘテロダイン検知を含む全ての干渉技術で利用でき、スキャンフリーな回折に基づくアライメント(または他の計測)、すなわち、スポットをターゲット上で駆動またはスキャンする必要がないアライメントを可能にする。また、このような方法は振幅情報に加えて位相情報を生成するという点でも利点がある。これは、回折に基づくアライメントのためのバランスされたヘテロダイン検知を可能にする。
【0063】
実施形態は、更に以下の項目を使用して記述されてもよい。
項目1:
少なくとも稼働状態において入力放射を回折し、回折された放射の周波数をドップラーシフトさせる第1移動格子と、
前記回折された放射の少なくとも一次の回折の波長に依存する分散を補償するように構成されるピッチを備える第1補償格子要素と、
を備える第1位相変調器を少なくとも備える、
入力放射を変調するための位相変調装置。
項目2:
第1移動格子としての第1移動音響格子を提供可能な第1音響光学変調器を備える、項目1に記載の位相変調装置。
項目3:
第1音響光学変調器は音響光学調整可能フィルタを備える、項目2に記載の位相変調装置。
項目4:
第1位相変調器は、第1補償格子要素の上に少なくとも一次の回折をリフォーカスする第1光学配置を備える、項目1から3のいずれかに記載の位相変調装置。
項目5:
第1補償格子要素の格子ピッチは第1移動格子のピッチにマッチングされ、当該マッチングは第1移動格子と第1補償格子要素の間に介在する倍率を補償する、項目1から4のいずれかに記載の位相変調装置。
項目6:
前記入力放射は複数の波長を備える、項目1から5のいずれかに記載の位相変調装置。
項目7:
第1移動格子からの放射出力の周波数をダウンシフトさせるために、少なくとも稼働状態において第1移動格子からの放射出力を回折し、この回折された放射の周波数をドップラーシフトさせる第2移動格子を備える、項目1から6のいずれかに記載の位相変調装置。
項目8:
位相変調装置からの放射出力の出力周波数が、第1移動格子またはその移動を生成するために使用される第1周波数、および、第2移動格子またはその移動を生成するために使用される第2周波数の差を含むように、第1移動格子によって回折された前記少なくとも一次の回折、および、前記第2移動格子によって回折された少なくとも一次の回折は、逆の符号の回折次数を備える、項目7に記載の位相変調装置。
項目9:
第2移動格子としての第2移動音響格子を提供可能な第2音響光学変調器を備える、項目8に記載の位相変調装置。
項目10:
第1移動格子を生成するために使用される第1周波数および第2移動格子を生成するために使用される第2周波数の差は1MHzより小さい、項目9に記載の位相変調装置。
項目11:
前記逆の符号の回折次数は、+1の回折次数および-1の回折次数を含む、項目10に記載の位相変調装置。
項目12:
第2移動格子を生成するために使用される第2周波数は、第2移動格子の格子ピッチが第1移動格子のそれにマッチングされ、当該マッチングが第1移動格子と第2移動格子の間に介在する倍率を補償し、前記第1補償格子要素が前記第2移動格子を構成するものである、項目9から11のいずれかに記載の位相変調装置。
項目13:
第2音響光学変調器と、
第2補償格子要素と、
第2補償格子要素の上に第2移動格子からの回折された放射の少なくとも一次の回折をリフォーカスする第2光学配置と、
を備える第2位相変調器を備え、
第2補償格子要素は、前記第2移動格子によって回折された少なくとも一次の回折の波長に依存する分散を補償するように構成されるピッチを備える、
項目9から11のいずれかに記載の位相変調装置。
項目14:
第2補償格子要素の格子ピッチは第2移動格子のそれとマッチングされ、当該マッチングは第2移動格子と第2補償格子要素の間に介在する倍率を補償する、項目13に記載の位相変調装置。
項目15:
ドップラーシフトさせることは波長に依存しない線型時間可変位相シフトを各回折次数に付加できる、項目1から14のいずれかに記載の位相変調装置。
項目16:
前記項目のいずれかに記載の位相変調装置を備える計測デバイス。
項目17:
位相変調装置は、構造の測定から得られる一対の回折次数を含む信号の相補的なペアの一方の回折次数を含む信号に対して、一対の回折次数を含む信号の相補的なペアの他方の回折次数を含む信号との線型時間可変位相差を導入できる、項目16に記載の計測デバイス。
項目18:
計測デバイスは軸外計測デバイスであり、位相変調装置は軸外測定ビームのペアの一方の測定ビームのみに線型時間可変位相シフトを付加できる、項目16または17に記載の計測デバイス。
項目19:
計測デバイスはヘテロダイン計測デバイスであり、位相変調装置は計測デバイスによって生成された参照ビームに線型時間可変位相シフトを付加できる、項目16に記載の計測デバイス。
項目20:
位相変調装置は計測デバイスの照明配置に位置する、項目16から19のいずれかに記載の計測デバイス。
項目21:
計測デバイスはアライメントセンサを備える、項目16から20のいずれかに記載の計測デバイス。
項目22:
前記線型時間可変位相シフトの結果として、測定ビームをアライメントマークに対して移動させることなく、アライメントマークの測定から変調されたアライメント信号を生成できる、項目21に記載の計測デバイス。
項目23:
基板平面におけるいずれかの寸法が6μmより小さいアライメントマークを、アライメントマークに対して静的な測定ビームを使用して測定できる、項目21または22に記載の計測デバイス。
項目24:
項目21から23のいずれかに記載のアライメントセンサを備えるリソグラフィ装置。
項目25:
基板を保持する基板ステージと、
パターニングデバイスを保持するレチクルステージと、
前記パターニングデバイス上のパターンを前記基板上に投影する投影レンズと、
を更に備え、
アライメントセンサは基板ステージおよびレチクルステージの一方または両方の位置を測定できる、
項目24に記載のリソグラフィ装置。
項目26:
スキャトロメトリに基づく計測装置を備える、項目16から20のいずれかに記載の計測デバイス。
【0064】
リソグラフィ装置に関して使用される「放射」および「ビーム」の用語は、紫外(UV)放射(例えば、約365、355、248、193、157または126nmの波長を有する)および極端紫外(EUV)放射(例えば、5-20nmの範囲の波長を有する)、あるいはイオンビームまたは電子ビーム等の粒子ビームを含む全てのタイプの電磁放射を包含する。
【0065】
用語「レンズ」は、文脈が許す限り、屈折型、反射型、磁気型、電磁気型および静電型の光学コンポーネントを含む様々なタイプの任意の光学コンポーネントまたはそれらの組合せを指しうる。
【0066】
特定の実施形態の以上の記述は、他者が、当技術分野における知識を適用することによって、過度の実験や本発明の概念からの逸脱を伴わずに、このような特定の実施形態を様々な用途に合わせて容易に改変できる、および/または、適合させられるように、発明の本質を完全に明らかにする。従って、このような適合および改変は、ここで提示された教示および示唆に基づいて、開示された実施形態の均等物の意味および範囲内にある。ここでの表現または用語は限定しない例示を目的としており、本明細書の用語または表現は教示および示唆の下で当業者によって解釈されると理解される。
【0067】
本発明の幅および範囲は、前述の例示的な実施形態によって限定されるべきでなく、以下の請求項およびそれらの均等物のみによって定義されるべきである。
【国際調査報告】