(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】分子状汚染物及び粒子軽減のための真空アクチュエータ封入
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20221007BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20221007BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20221007BHJP
G02B 7/00 20210101ALI20221007BHJP
G02B 7/22 20210101ALI20221007BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G03F1/84
G01N21/956 A
G02B7/00 B
G02B7/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508578
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(85)【翻訳文提出日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 US2020045684
(87)【国際公開番号】W WO2021030302
(87)【国際公開日】2021-02-18
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マークス ゼフラム
(72)【発明者】
【氏名】デルガド ギルダルド アール
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ルディ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン マシュー
【テーマコード(参考)】
2G051
2H043
2H195
4M106
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AA56
2H043AB01
2H043AB08
2H043AB14
2H043DA02
2H195BA10
2H195BD05
2H195BD14
2H195CA11
4M106AA09
4M106CA39
4M106CA41
4M106DH34
4M106DH47
4M106DJ03
(57)【要約】
真空環境内光学マウント用アクチュエータであり、アクチュエータコンパートメントを取り巻くベロウズを有する。そのベロウズによりそのアクチュエータを巡る封止を担う。フィルタアセンブリをアクチュエータコンパートメント・真空チャンバ内部間に配置する。そのフィルタアセンブリを、第1粒子フィルタ、第2粒子フィルタ並びに第1粒子フィルタ・第2粒子フィルタ間浄化媒質を有するものとする。そのアクチュエータコンパートメント内の真空条件をその真空チャンバ用のポンプで以て達成しうる一方、そのアクチュエータ又はアクチュエータコンパートメントからの粒子及び汚染物をそのフィルタアセンブリにより捕獲する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内に配置された光学マウントと、
前記真空チャンバ内の前記光学マウント上に配置された光学部材と、
ベースと、
前記ベース・前記光学マウント間に配置されたベロウズであり、自ベロウズ、前記ベース及び前記光学マウントによりそれらの間にアクチュエータコンパートメントを形成し、また前記ベース・前記光学マウント間封止を担うベロウズと、
前記アクチュエータコンパートメント内に配置されたアクチュエータであり、前記ベースに対し前記光学マウントを動かすよう構成されているアクチュエータと、
前記アクチュエータコンパートメントと前記真空チャンバの内部との間に通流配置されたフィルタアセンブリであり、第1粒子フィルタ、第2粒子フィルタ、並びに前記第1粒子フィルタ・前記第2粒子フィルタ間に配置された浄化媒質を有するフィルタアセンブリと、
を備えるシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記フィルタアセンブリが前記ベース内に配置されたシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、更に、前記ベース上に配置されたガス通路を備え、そのガス通路が前記アクチュエータコンパートメント・前記真空チャンバ間にて通流状態であり、前記フィルタアセンブリが前記ガス通路内に配置されているシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記ベロウズがステンレス鋼で作成されているシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記第1粒子フィルタ及び前記第2粒子フィルタのうち少なくとも一方が金属メッシュであるシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記第1粒子フィルタ及び前記第2粒子フィルタのうち少なくとも一方が焼結金属であるシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記浄化媒質が活性炭、ゼオライト、シリカゲル及びポリマのうち少なくとも一つを含有するシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記第1粒子フィルタ及び前記第2粒子フィルタが金属メッシュであり、前記浄化媒質が活性炭を含有するシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、更に、前記ベロウズから見て前記アクチュエータコンパートメントとは逆側にて前記光学マウント上に配置された複数枚のバッフルを備え、前記バッフルが前記ベースの方に延びているシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、前記フィルタアセンブリが、3nm以上の直径を有する粒子のうち90%超を捕獲するシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記光学部材が極端紫外波長での使用向けに構成されているシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムを有する極端紫外半導体検査ツール。
【請求項13】
真空チャンバ内の光学マウント上に光学部材を設け、
前記光学マウントとベースとの間に配置されたアクチュエータを設け、ベロウズを前記ベース・前記光学マウント間に配置し、前記ベロウズ、前記ベース及び前記光学マウントによりそれらの間にアクチュエータコンパートメントを形成し、前記ベロウズにより前記ベース・前記光学マウント間封止を担い、
前記真空チャンバ内の圧力を真空ポンプで以て低下させ、且つ
前記アクチュエータコンパートメント内の圧力を前記真空ポンプで以て低下させ、前記アクチュエータコンパートメントから排出されるガスを、前記アクチュエータコンパートメント・前記真空チャンバ間にてフィルタアセンブリに通し、前記フィルタアセンブリを、第1フィルタ、浄化媒質及び第2フィルタを有するものとする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記フィルタアセンブリを前記ベース内に配置する方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、前記フィルタアセンブリを、前記ベース上に配置されたガス通路内に配置する方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、前記第1フィルタ及び/又は前記第2フィルタが金属製メッシュであり、前記浄化媒質が活性炭、ゼオライト、シリカゲル及びポリマのうち少なくとも一つを含有する方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、更に、前記アクチュエータを用い前記ベースに対し前記光学マウントを動かす方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法であって、更に、前記真空チャンバを通じ極端紫外光ビームを前記光学部材に差し向ける方法。
【請求項19】
請求項13に記載の方法であって、前記フィルタアセンブリが、3nm以上の直径を有する粒子のうち90%超を捕獲する方法。
【請求項20】
請求項13に記載の方法であって、前記圧力が10
-6Torr未満である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示は半導体検査又は計量用光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願への相互参照]
本願では、2019年8月12日付米国仮特許出願第62/885798号に基づき優先権を主張し、その開示内容を参照により本願に繰り入れる。
【0003】
半導体製造業の進展により歩留まり管理に、とりわけ計量及び検査システムに寄せられる期待が増している。限界寸法が縮まり続けているだけでなく、業界ではより短時間で高歩留まり高付加価値生産を達成することが求められている。歩留まり問題を察知してからそれを正すまでの合計時間を縮めることが、半導体製造業者にとり投資収益率の決め手となっている。
【0004】
半導体デバイス、例えば論理デバイス及びメモリデバイスを製造する際には、通常、多数の製造プロセスを用い半導体ウェハを処理することで、それら半導体デバイスの様々なフィーチャ(外形特徴)及び複数個の階層を形成する。例えばリソグラフィリソグラフィなる半導体製造プロセスでは、半導体ウェハ上に配列されたフォトレジストへとレティクルからパターンを転写する。半導体製造プロセスの更なる例としては、これに限られるものではないが化学機械研磨(CMP)、エッチング、堆積及びイオンインプランテーションがある。単一の半導体ウェハ上に作成され配列をなしている複数個の半導体デバイスを、個別の半導体デバイスへと分けるようにするとよい。
【0005】
集積回路デバイスの設計幾何の継続的縮小により、改善された光学検査及び計量ツールを求める継続的需要が発生している。例えばフォトリソグラフィシステム用光源は、より短い波長へと歴史的に進化してきており、それによってより小さな構造の構築が可能となってきている。例えば可視波長光(例.400nm)の使用が近紫外光(例.300nm)にとってかわられ、それが深紫外(DUV)光(例.200nm)にとってかわられている。更に、より最近においては、DUV光源が極端紫外(EUV)源(例.13.5nm)に取って代わられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0255407号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体テクノロジにおけるフィーチャサイズがますます小さくなるにつれ、リソグラフィやウェハ及びマスクの検査及び計量を初め半導体プロセスにて用いられる光学プロセスにて、光波長が制約因子となってきている。先進的光学テクノロジでは、EUV光(例えば11nm~15nm域内波長、より具体的には13.5nmなる波長)を用いることで、フィーチャサイズの更なる縮小に起因する諸問題に対処しているので、デブリがない高輝度EUV光源は、次世代半導体プロセスの探求においてかけがえのないものである。高輝度EUV光源開発の難題的側面の一つは、プラズマ生成プロセスに由来するデブリを軽減しつつ、そのプラズマにより生成されるEUV光の損失を最低限にすることにある。
【0008】
EUV方式に従い動作する検査ツールの難点の一つは、より長波長で動作するツールにて常用されている粒子保護デバイス、例えばペリクルを、そうした保護デバイスがEUV波長にて不透明であることから、EUVセッティングにて用いえないことである。更に、EUVツール上で検査されることが想定されているレティクルの限界寸法は、非常に小さくなりうるので、レティクル表面上に存するほとんど全ての粒子が、認容できない問題を引き起こすこととなる。例えば、そのレティクルに検査光を差し向けるのに用いられる近隣光学系から、汚染粒子が発出することがある。加えて、検査中にそのレティクルを動かすのに用いられるレティクルステージも、汚染粒子源となりうる。
【0009】
更に、EUVその他の真空環境検査システム内光学系のうち幾つかは、アライメント(整列)を理由として駆動する必要がある。これには一通り又は複数通りの自由度に亘る高精度(例.サブナノメートル精度)で正確な動きが必要になる。加えて、光学系のなかには、大きくて(例.数キログラムあり)動かすのに駆動力が必要なものがある。こうした光学系が、真空中で動かされる。その露出光学面が、揮発性有機化合物(VOC)に由来する汚染及び粒子に由来する汚染の双方に対し敏感である。VOCは汚染物たりうる。その光学系を動かすのに必要なアクチュエータから揮発性炭化水素がアウトガッシングされうる。その駆動により生じた粒子がそのシステム内の重要面上に着地することがありうる。
【0010】
現在、光ベースのレティクル検査システムにおける粒子制御は、流動空気で以て既知方向に粒子を押すことで実行されている。真空システム例えば電子ビーム検査システムでは、粒子制御が、些少な量の正圧と、一般に粒子個数を減らせるよう設計される粒子低減法とで以て、行われている。これら従来方法には数個の難点がある。例えば、これらでは、10nmに至る直径の粒子を排除する能力が判然としていない。加えて、従来方法は、検査後のレティクル清掃が可能なプロセスでしか用いられてこなかった。しかしながら、EUVレティクル検査ツールでは、検査後清掃が許されないため、より小さな粒子に挑む必要がある。
【0011】
差圧ポンピングを用い、アウトガッシング部分入りの真空環境を分離させることができる。差圧ポンピングされる真空領域にはポンピングシステムへの連結が必要である。大き目のアセンブリ内の真空チャンバに関しこれを達成するのは難しい。加えて、その真空ポンプにて生じる振動が、高精度配列光学系にとり致命的となりうる。
【0012】
清掃プロセスにより行えるのは諸部材からのアウトガッシング速度の低減である。大抵のアクチュエータ内にはアウトガッシングする潤滑剤その他の物質があり、それらを全面軽減することは決してできない。加えて、運動中に生じる付加的な分子状及び粒子汚染物を、清掃で以て全面的に除去することはできない。
【0013】
従って、改善された粒子軽減システム及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1実施形態ではシステムを提供する。本システムは、真空チャンバと、その真空チャンバ内に配置された光学マウントと、その真空チャンバ内光学マウント上に配置された光学部材と、ベース(基部)と、それらベース・光学マウント間に配置されたベロウズ(蛇腹)と、アクチュエータコンパートメント(分室)内に配置されたアクチュエータと、アクチュエータコンパートメント・真空チャンバ内部間に通流配置されたフィルタアセンブリと、を有する。それらベロウズ、ベース及び光学マウントが、それらの間にアクチュエータコンパートメントを形成する。ベロウズはベース・光学マウント間封止を担う。アクチュエータは、ベースに対し光学マウントを動かすよう構成する。フィルタアセンブリは、第1粒子フィルタ、第2粒子フィルタ、並びに第1粒子フィルタ・第2粒子フィルタ間に配置された浄化媒質を有するものとする。
【0015】
フィルタアセンブリはベース内に配置しうる。
【0016】
一例に係るシステムは、更に、ベース上に配置されたガス通路を有する。そのガス通路がアクチュエータコンパートメント・真空チャンバ間で通流状態となる。そのガス通路内にフィルタアセンブリを配置する。
【0017】
ベロウズはステンレス鋼その他の素材で作成しうる。
【0018】
第1粒子フィルタ及び第2粒子フィルタのうち少なくとも一方を金属メッシュ又は焼結金属としうる。浄化媒質は、活性炭、ゼオライト、シリカゲル及びポリマのうち少なくとも一つを含有するものとしうる。一例としては、それら第1粒子フィルタ及び第2粒子フィルタを金属メッシュ、浄化媒質を活性炭入りのものとする。
【0019】
本システムは、ベロウズから見てアクチュエータコンパートメントとは逆側にあり光学マウント上に配置されている複数枚のバッフル(阻流板)を、有するものとしうる。それらバッフルをベースの方に延ばす。
【0020】
フィルタアセンブリは、3nm以上の直径を有する粒子のうち90%超を捕獲するものとしうる。
【0021】
光学部材は極端紫外波長での使用向けに構成しうる。
【0022】
第1実施形態のシステムは極端紫外半導体検査ツールに組み込める。
【0023】
第2実施形態では方法を提供する。真空チャンバ内の光学マウント上に光学部材を設ける。その光学マウントとベースとの間に配置されたアクチュエータを設ける。ベロウズをそれらベース・光学マウント間に配置する。それらベロウズ、ベース及び光学マウントにより、それらの間にアクチュエータコンパートメントを形成する。そのベロウズがベース・光学マウント間封止を担う。
【0024】
それら真空チャンバ内及びアクチュエータコンパートメント内の圧力を真空ポンプで以て低下させる。そのアクチュエータコンパートメントから排出されるガスを、それらアクチュエータコンパートメント・真空チャンバ間にてフィルタアセンブリに通す。そのフィルタアセンブリを、第1フィルタ、浄化媒質及び第2フィルタを有するものとする。
【0025】
フィルタアセンブリの配置先はベース内、或いはそのベース上に配置されたガス通路内としうる。
【0026】
第1フィルタ及び/又は第2フィルタを金属製メッシュとしうる。浄化媒質は活性炭、ゼオライト、シリカゲル及びポリマのうち少なくとも一つを含有するものとしうる。一例としては、それら第1フィルタ及び第2フィルタを金属製メッシュ、浄化媒質を活性炭入りのものとする。
【0027】
本方法にて、更に、アクチュエータを用いベースに対し光学マウントを動かすことができる。
【0028】
本方法にて、更に、真空チャンバを通じ光学部材に極端紫外光ビームを差し向けることができる。
【0029】
フィルタアセンブリを、3nm以上の直径を有する粒子のうち90%超を捕獲するものとしうる。
【0030】
圧力は10-6Torr未満としうる。
【0031】
本件開示の性質及び目的をより遺漏なく理解頂くため、後掲の詳細記述と併せ以下の添付図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本件開示に係るシステム実施形態の断面図である。
【
図2】本件開示に係るシステム実施形態の一部分の別の断面図である。
【
図3】本件開示に係るシステム実施形態の一部分の別の断面図である。
【
図4】本件開示に係るシステム実施形態の一部分の別の断面図である。
【
図5】本件開示に係る方法実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
特許請求の範囲記載の主題を特定の諸実施形態により記述するが、本願にて説明されている利益及び特徴が皆は提供されない諸実施形態を含め、他の諸実施形態も本件開示の技術的範囲内に存している。様々な構造的、論理的、処理ステップ的及び電子的改変を、本件開示の技術的範囲から離隔せずになすことができる。従って、本件開示の技術的範囲を画定するには別項の特許請求の範囲を参照するしかない。
【0034】
本件開示の諸態様は、プラズマ生成光源の光路上のデブリによる損傷を軽減すること、とりわけウェハ及びマスクの検査、計量並びにリソグラフィを初め次世代半導体製造プロセスにて用いられレーザ生成プラズマ及び放電生成プラズマにより生成されるEUV光に係るそれを、指向している。アクチュエータコンパートメントを封止することは、真空環境をより強固にすること、ひいてはガスは浸透可能だが粒子及びVOCは浸透不能なものにすることと関わりがある。これにより粒子数が減ることとなり、振動を引き起こしかねない余計なポンプが不要となる。
【0035】
インサイチュー(その場的)な光学駆動で以てこれらの問題を軽減するため、全能動型駆動アセンブリをガス封止環境内に配置する。その囲い(エンクロージャ)の壁を可撓真空素材、例えばステンレス鋼製ベロウズとする。その囲い内の領域から大気ガスを汲み出すため及び領域間圧力勾配が大きくなるのを防ぐため、その囲いを、一連の粒子及び分子状汚染物フィルタを通り外部の真空中に至る流れを許容するものにすることができる。
【0036】
図1はシステム100の断面図である。本システム100は真空チャンバ101を有している。一例に係る真空チャンバ101はEUV半導体検査ツールの一部分である。その真空チャンバ内には光学部材105がある。その真空チャンバ101の壁により内部102が画定されており、そこを低圧又は真空圧へとポンピングすることができる。その真空圧を10
-7Torr以下とすることができる。炭化水素分圧を10
-12Torr以下とすることができる。
【0037】
一例に係る真空チャンバ101は超高真空(UHV)にて稼働させうるものである。その真空チャンバ101内の合計圧をUHV(例.10-6Torr未満)としうるところ、その大半は水蒸気である。炭化水素による分圧はより低くすることができる(例.10-12Torr未満)。
【0038】
光学部材105を光学マウント103により保持することができる。その光学マウント103は支え104を有している。その支え104により光学部材105を保持することができる。
【0039】
光学部材105たりうるものにはレンズ、鏡、アパーチャ、センサ、フィルタ、アッテネータ、シャッタ等がある。その光学部材105をEUV波長での使用向けに構成することができる。別例に係る光学部材105はマスクである。そのマスクがペリクルを有していないもの、即ちそのマスク上のたった1個の粒子でさえ動作中の不具合を意味しうるものであってもよい。光学部材105を、真空中でリモート駆動される他の部材とすることもできる。
【0040】
EUV光その他の波長の光を光学部材105の随所に差し向けることができる。真空チャンバ101内に光源を設けてもよい。
【0041】
光学マウント103はベース106に連結されている。ベース106・光学マウント103間にはベロウズ108が配置されている。そのベロウズ108がベース106・光学マウント103間封止を担っている。この封止により、分子相手の数桁規模の保護を提供することができる。例えば、その封止により約108の保護ファクタを提供することができる。10nm以上のサイズを有する粒子のほぼ全てを、ベロウズ108を用い封じ込めることができる。
【0042】
ベース106を脚その他の支え(図示せず)の上に配することで、そのベース106の外面のうち少なくとも一部分を、真空チャンバ101側に露出させることができる。これにより、アクチュエータコンパートメント110へとガスを流すことが可能となる。
【0043】
ベロウズ108、ベース106及び光学マウント103により、それらの間にアクチュエータコンパートメント110が形成されている。
図1が断面図であるところ、ベロウズ108をベース106及び光学マウント103の全周を巡り延設することで、そのアクチュエータコンパートメント110を封止することができる。そのベロウズ108をベース106及び光学マウント103に連結するに当たっては、熔接、蝋接、半田付けその他の技術を用いることができる。
【0044】
一例に係るベロウズ108はステンレス鋼で作成されたものである。これには304、316、316L又は310ステンレス鋼が含まれる。ベロウズ108を、Invar(登録商標)、SuperInvar(登録商標)、アルミニウム、Hastelloy(登録商標;以下注記省略)C-276、HastelloyC-22、HastelloyX、Monel(登録商標)400、ニッケル200、Inconel(登録商標)600その他の素材で作成してもよい。ベロウズ108は、真空コンパチブルであり且つ汚染物通過の大半を防げる何れの可撓素材ともすることができる。
【0045】
そのアクチュエータコンパートメント内にはアクチュエータ109が配置されている。このアクチュエータ109は、ベース106に対し光学マウント103を動かすよう構成されている。通常、アクチュエータ109は動作用潤滑剤を有しており、アクチュエータ109のどのような動きでも粒子及びVOCが生じうる。通常、それら粒子は真空チャンバ101の内部又は周囲にある物質、或いはフィルタアセンブリ111内物質により組成される。例えば、真空チャンバ101内の二部材が擦れ合い、粒子が生じることがある。VOCたりうるものには潤滑剤、洗浄剤、機械工場由来の残滓、真空チャンバ101内物質等がある。
【0046】
即ち、粒子を発生させうる原因には、何らかの擾乱により引き起こされる物質細断がある。そうした粒子は、一般に、アクチュエータと同物質(例.金属、プラスチック及び潤滑剤)で組成される。それらたりうる細断物質は、二種類の物質の擦れ合いや、移動及び振動により生じた緩付着物質(例.堆積粒子、潤滑剤等)脱落により、もたらされる。一般に、何であれ動くもの(例.アクチュエータ109)は粒子を発生させうる。加えて、静止物体でさえも、その素材が劣化するにつれ、或いは付着していた揮発性化合物がアウトガッシングを通じ蒸散するにつれ、VOCを発生させうる。
【0047】
潤滑剤にてアウトガッシングが生じる一方、その破損に伴い素材自体からもアウトガッシングが生じうる。例えばプラスチックにてアウトガッシングが生じうる。アウトガッシングは、きれいであったはずの面に付着している分子状汚染物、例えば金属にも由来しうる。一般に、汚染物は製造中の残滓汚染からも生じる。
【0048】
それら粒子のサイズは、動く部分・部品、物質又は表面仕上げに依存しうる。粒子は5nm以上の直径、例えば10nm以上の直径となりうる。
【0049】
フィルタアセンブリ111は、アクチュエータコンパートメント110と真空チャンバ101の内部102の間で通流状態となっている。一例に係るフィルタアセンブリ111はボトム106に設けられている。フィルタアセンブリ111があるので、ガスがアクチュエータコンパートメント110と真空チャンバ101の内部102との間で流れうる。即ち、アクチュエータコンパートメント110内圧力を、真空チャンバ101の内部102のそれと同じポンプ112を用い低下させることができる。ポンプダウンを経て、アクチュエータコンパートメント110内圧力を真空チャンバ101の内部102と同じ圧力にすることができる。
【0050】
システムポンプダウン中にアクチュエータコンパートメント110内に捕われたガスを除去するため、軽い大気ガス(例.水素、窒素、酸素又は水)を、フィルタアセンブリ111を介しアクチュエータコンパートメント110から脱出させることができる。そのフィルタアセンブリ111にて粒子及びVOCが捕獲されるので、粒子及びVOCが光学部材105その他、システム100内の敏感な部材に到達しにくい。一例に係るフィルタアセンブリ111は、3nm以上の直径を有する粒子及びVOCを捕獲しうるものである。例えば、10nm以上の直径を有する粒子のほぼ100%を捕獲する。3nm以上の直径を有する粒子のうち75%超、80%超、85%超、90%超又は95%超を捕獲する。
【0051】
フィルタアセンブリ111は、光学マウント103内ではなくベース106内に配置されている。即ち、そのフィルタアセンブリ111により捕獲されなかった粒子や汚染物が皆、光学部材105とは逆の側に排出されるので、粒子や汚染物がその光学部材105に影響する確率が低くなる。無論、粒子や汚染物の捕獲レベルが許容しうるものであるか、小さめの粒子をさして懸念していないのであれば、フィルタアセンブリ111を光学マウント103内に配置することもできる。
【0052】
フィルタアセンブリ111は、第1粒子フィルタ113、第2粒子フィルタ115、並びにそれら第1粒子フィルタ113及び第2粒子フィルタ115の間に配置された浄化媒質114を有している。
【0053】
第1粒子フィルタ113は、粒子阻止素材例えば焼結金属(例.モット素材)又は精細なワイヤメッシュとすることができ、それにより粒子が捕獲されることとなる。その焼結素材、メッシュ又はそれらの組合せに多孔性を持たせ又はメッシュ型にすることで、アクチュエータコンパートメント110内に封じ込められるサイズの粒子をフィルタリングする(即ち光学部材105から遠ざける)ことができる。浄化媒質114たりうるものには、VOCを吸着しうる化学的に活性な吸着物質がある。吸着物質により、VOCその他の化学種を、吸着性素材の小粒、ビーズ又は結晶の表面(大抵は内表面)上に吸着させることができる。その吸着物質たりうるものには活性炭、ゼオライト、シリカゲル、ポリマ等がある。第2粒子フィルタ115は付加的な粒子フィルタであり、それにより浄化媒質114における粒子発生を防ぐことができる。
【0054】
第1粒子フィルタ113と第2粒子フィルタ115とを、別々の仕様を有するものとしてもよい。即ち、第1粒子フィルタ113及び第2粒子フィルタ115の素材その他のパラメタを別々のものにすることができる。
【0055】
ある例によれば、第1粒子フィルタ113及び第2粒子フィルタ115を金属製メッシュとすることができる。
【0056】
例えば、第1粒子フィルタ113及び/又は第2粒子フィルタ115を、0.039インチ~0.125インチのステンレス鋼(例.316L)厚を有するものとすることができる(1インチ=約2.54cm)。この厚みを、310ステンレス鋼、304ステンレス鋼、HastelloyC-276、HastelloyC-22、HastelloyX、Monel(登録商標)400、ニッケル200、Inconel(登録商標)600にも適用することができる。VOCを捕獲するには、第1粒子フィルタ113及び/又は第2粒子フィルタ115の最小厚を0.039インチ超とすればよい。その最大厚は、空間的制約により支配されうるものの、0.125インチ未満とすることができる。
【0057】
浄化媒質114は、活性炭、ゼオライト、シリカゲル及びポリマのうち少なくとも一つを含有するものとすることができる。その浄化媒質114を、吸着すべきアウトガッシング種向けに仕立てることができる。例えば、所望の粒又は孔サイズを有し或いは化学活性面を有する浄化媒質114の床を、選択することができる。
【0058】
浄化媒質114によりVOCを吸収すること、例えば広い表面積及び炭化水素に対する親和性による物理吸着を通じそうすることができる。その浄化媒質114の厚みを捕獲効率及び総吸収容量に関連付けることができる。VOCを捕獲するには、その浄化媒質114の最小厚を0.25インチ超とすればよい。その最大厚は空間的制約により支配されうる。
【0059】
フィルタアセンブリ111により、3nm以上のサイズを有する粒子をフィルタリングすることができる。VOCの大半をそのフィルタアセンブリ111により捕獲することができる。
【0060】
浄化媒質114向けの活性炭は、石炭、木材、樹皮、ヤシ殻等の熱分解により作成することができる。そうした物質を高温制御酸化プロセスにて活性化させる。活性炭には、広い表面積を呈する傾向がある。
【0061】
ゼオライトをVOCの除去に用いることができる。例えば、アルミノ珪酸塩結晶等の天然発生ゼオライトは親水性であり、これはそれらゼオライトが極性分子例えば水に対し親和性を呈することを意味している。天然ゼオライトを脱アルミニウム化して疎水性にすることができ、これはその脱アルミニウム化ゼオライトが非極性物質例えば多くのVOCに対し親和性を呈することを意味している。疎水性ゼオライトは、1マイクロメートル~1ミリメートルの直径を有する結晶の態で合成することができ、それらを接合してより大きな小粒にすることで、気流に対するそれらの抵抗を下げることができる。
【0062】
ポリマベースの吸着剤は、特定用途向けに設計された孔付で製造することができる。それらの孔は、マクロ孔サイズから分子サイズに及びうる。ポリマは小粒又はビーズの態で用いられる。ポリマのなかには炭素よりも脱離・放出が速いものも見受けられる。炭素と同様、ポリマは、それらが吸着することとなるVOCに関し通常は高選択性であるとは考えられていないが、ポリマのなかには、ある種のVOCを他のものより良好に吸着するものがある。
【0063】
一例に係る浄化媒質114は本願開示の素材の組合せである。
【0064】
ある例によれば、第1粒子フィルタ113及び第2粒子フィルタ115が金属メッシュとされ、浄化媒質114が活性炭入りのものとされる。
【0065】
フィルタアセンブリ111は、交換から交換まで10年以上存続させうるものの、より頻繁な交換も可能である。フィルタアセンブリ111内に連続ガス流が現れないので、寿命を長くすることができる。
【0066】
図1に見られる通り、分子状及び粒子汚染物の発生元たるアクチュエータ109が、光学部材105の光学面がある真空環境から分離されている。ベロウズ108は、アクチュエータ109を可動にする一方で、ガス不浸透性熔接で以て光学マウント103及びベース106に連結しうるものである。これにより、真空下での整列のため光学部材105をインサイチューに動かすことが可能となると共に、光学部材105その他、本システム内の光学系が粒子やVOCで以て汚染されるリスクが低下する。本願開示の諸実施形態は自己完結的なものとすることができ、また真空チャンバ101用のポンプ112とは別の真空ポンプを用いなくてもよい。
【0067】
図2はシステム100の一部分の別の断面図である。本実施形態では、アクチュエータ109が六脚、リニアアクチュエータの組合せ、或いは回動能力付アクチュエータとされる。フィルタアセンブリ111は、軽いガスを通す一方で、粒子を阻止し且つVOCを吸着する。アクチュエータコンパートメント110は適宜サイズ設定されており、アクチュエータ109による所望の運動が可能となるようそのベロウズが配置されている。ベース106中には描かれていないが、封止されている場合、ベース106の縁まで浄化媒質114を延設することができる。真空チャンバ101の内部102に対するフィルタアセンブリ111の最終界面を第2粒子フィルタ115とすることで、その浄化媒質114自体による粒子発生を防ぐことができる。浄化媒質114を微細粉体としてもよい。
【0068】
図2ではフィルタアセンブリ111がベース106内に作り込まれており、第1粒子フィルタ113や第2粒子フィルタ115がその各端に存している。フィルタアセンブリ111内ガス流が、第1粒子フィルタ113、浄化媒質114及び第2粒子フィルタ115を通じ直列になっている。真空チャンバ101及びアクチュエータコンパートメント110が共に真空圧であるときには、フィルタアセンブリ111内合計流が些少なものとなる。
【0069】
図3はシステムの一部分の別の断面図である。バッフル107が、アクチュエータコンパートメント110の外側、ベロウズ108の脇にて、光学マウント103及びベース106上に配置されている。光学マウント103上のバッフル107はベース106の方へと延びている。ベース106上のバッフル107は光学マウント103の方へと延びている。駆動中におけるベロウズ108からの粒子発生を軽減すべく、バッフル107をベロウズ108より外側に配置し、入り組んだ粒子向け経路を発生させることができる。
【0070】
バッフル107を、アクチュエータコンパートメント110内で光学マウント103及び/又はベース106上に配置することもできる。これにより、フィルタアセンブリ111に達する前に粒子を捕獲することができる。
【0071】
図4はシステム100の一部分の別の断面図である。ベース106上にガス通路116が配置されている。そのガス通路116が、アクチュエータコンパートメント110とベース106を挟み逆側にある真空チャンバとの間で通流状態となっている。そのガス通路116内にフィルタアセンブリ111が配置されている。
【0072】
パイプ、ダクト又は導路をガス通路116とすることができる。ガス通路116は、ベース106下で終端される態で描かれているが、より離れた場所につなぐこともできる。例えば、ガス通路116を真空チャンバ101用真空ポンプ、真空チャンバ101外のどこか、或いはアクチュエータコンパートメント110用の別の真空ポンプにて、終端させてもよい。
【0073】
ガス通路116を用いる場合、ベース106を真空チャンバ101の表面上に平置きしてもよい。ガス通路116は、その上に真空チャンバ101が実装されている面の随所に形成することができる。
【0074】
図5は方法200のフローチャートである。本方法200はシステム内、例えばシステム100内で用いることができる。201では真空チャンバ内の光学マウント上に光学部材を設ける。201では、その光学マウントとベースとの間に配置されたアクチュエータをも設ける。ベロウズをそれらベース・光学マウント間に配置する。それらベロウズ、ベース及び光学マウントにより、それらの間にアクチュエータコンパートメントを形成する。そのベロウズがベース・光学マウント間封止を担う。
【0075】
202では、それら光学部材及びベロウズを囲む真空チャンバ内の圧力を、真空ポンプで以て低下させる。
【0076】
203では、そのアクチュエータコンパートメント内の圧力を、その真空ポンプで以て低下させる。そのアクチュエータコンパートメントから排出されるガスを、それらアクチュエータコンパートメント・真空チャンバ間にあるフィルタアセンブリに通す。このフィルタアセンブリは、第1フィルタ、浄化媒質及び第2フィルタを有するものである。その第1フィルタ及び/又は第2フィルタを金属製メッシュとすることができる。浄化媒質は、活性炭、ゼオライト、シリカゲル及びポリマのうち少なくとも一つを含有するものとすることができる。一例に係る第1フィルタ及び第2フィルタは金属製メッシュであり、浄化媒質は活性炭入りのものである。このフィルタアセンブリは、ベース内に配置することも、そのベース上に配置されたガス通路内に配置することもできる。
【0077】
その光学マウントを、そのアクチュエータを用いそのベースに対して動かすことができる。EUV光ビームを、その真空チャンバを介しその光学部材に差し向けることができる。
【0078】
光学部材上の粒子及び汚染の低減として開示したが、本願開示の諸実施形態によってアクチュエータコンパートメント外環境からアクチュエータを守ることもできる。光学部材が備わるエリアを清掃する際に溶剤、プラズマ、O3、紫外光及び/又はH2が用いられることがある。これらの清掃技術ではそのアクチュエータが損傷しかねない。ベロウズ及びフィルタアセンブリによりこれら清掃技術からアクチュエータを守ることができる。
【0079】
本件開示の随所で提供されている記述は、EUVリソグラフィツール、EUV計量ツール又はEUVレティクル検査ツール内光学部材周辺での粒子制御に的を絞ったものであり、本願開示の諸実施形態は、EUV光学ツール又はその他の光波長向けの光学ツールのあらゆる重要領域、特に粒子の存在に対し敏感なそれに適用可能なものであると、解されるべきである。本願開示の諸実施形態は、粒子に対し敏感なその他の真空システム、例えば電子ビームシステムにも、適用することができる。
【0080】
1個又は複数個の具体的実施形態を基準にして本件開示を記述してきたが、理解し得るように、本件開示の技術的範囲から離隔することなく本件開示の他の諸実施形態をなすこともできる。従って、本件開示は、添付する特許請求の範囲及びその合理的解釈によってのみ限定されるものと認められる。
【国際調査報告】