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特表2022-544274酸化剤の添加によるモノチオカーボネート化合物の臭気の低減
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(54)【発明の名称】酸化剤の添加によるモノチオカーボネート化合物の臭気の低減
(51)【国際特許分類】
   C07D 327/04 20060101AFI20221007BHJP
【FI】
C07D327/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022508782
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2020072721
(87)【国際公開番号】W WO2021028521
(87)【国際公開日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】19191796.2
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティール,アンドル
(72)【発明者】
【氏名】ヴルム,トーマス マキシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,ペーター
(57)【要約】
略してモノチオカーボネート化合物と称される、少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物の臭気を低減する方法であって、モノチオカーボネート化合物が液相中にあり、これを酸化剤と接触させる、方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略してモノチオカーボネート化合物と称される、少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物の臭気を低減する方法であって、
モノチオカーボネート化合物が液相中にあり、これを酸化剤と接触させる、方法。
【請求項2】
モノチオカーボネート化合物が、式(I):
【化1】
[式中、R1a~R4aは互いに独立して、水素又は50個までの炭素原子を有する有機基を表し、或いは、R2a、R4a及びモノチオカーボネート基の2個の炭素原子は一緒になって、5~10員炭素環を形成してもよい]
の化合物、
若しくは式(II):
【化2】
[式中、R1b~R4bは互いに独立して、水素又は50個までの炭素原子を有する有機基を表し、或いは、R2b、R4b及びモノチオカーボネート基の2個の炭素原子は一緒になって、5~10員炭素環を形成してもよく、基R1b~R4bのうちの1つはZへの連結基であり、nは少なくとも2の整数を表し、Zはn価の有機基を表す]
の化合物、
又はこれらの混合物
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モノチオカーボネート化合物が、
- 少なくとも1個のエポキシ基又は少なくとも1個のハロヒドリン基を有する化合物を、ホスゲン又はギ酸アルキルと反応させて、付加物を得ること、及び
- 次いで、付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させること、
- 場合により、続いて、得られた粗生成物を抽出又は蒸留によって更に処理すること
を含む方法により生成物として得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
酸化剤が過酸化水素である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
酸化剤及びモノチオカーボネート化合物を10~100℃で接触させる、請求項1から4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
接触時間が5分間から10時間である、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物の臭気を低減する方法であって、有機硫黄化合物が液相中にあり、これを酸化剤と接触させる、方法である。
【背景技術】
【0002】
有機硫黄化合物は、硫黄の含有量により引き起こされる様々な所望の特性を有する貴重な化合物である。これらは、反応物としてメルカプタン、硫黄又は硫化物の使用を伴う化学反応によって得ることができる。
【0003】
しかし、得られる有機硫黄化合物は、多くの場合に悪臭を有し、このことは、おそらくメルカプト基の形態で硫黄を含む望ましくない揮発性の副産物の含有、又は硫黄原子を有する任意の未反応出発物質の含有に起因する。
【0004】
有機硫黄化合物の一例は、環式モノチオカーボネートである。環式モノチオカーボネートの適切な合成は、WO2019/034469A1に記載されている。しかし、得られるモノチオカーボネートは、硫黄含有副産物により引き起こされる不快又は嫌な臭いを有する。
【0005】
過酸化水素を用いた硫黄化合物から対応するスルホキシド化合物への酸化は、A. Devender Rao、CH. Ravishankar、及びV. Malla ReddyによりIndian J. Pharm. Sci. 1986, 48 (1), pages 13 to 15に記載されている。14頁の表1は、直鎖チオカーボネート化合物(化合物II d及びII jを参照すること)を含み、これら直鎖チオカーボネート化合物は、容易に酸化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、有機硫黄化合物の臭気を低減するが、硫黄化合物はそのまま維持する、容易で経済的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
臭気が低減されたモノチオカーボネート化合物は、特定の酸化剤を使用する方法により得ることができることを、今回見出した。
【0008】
したがって、本発明は、少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物の臭気を低減する方法であって、有機硫黄化合物が液相中にあり、これを酸化剤と接触させる、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
モノチオカーボネート化合物
少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物は、略して「モノチオカーボネート化合物」と称される。
【0010】
「モノチオカーボネート化合物」への任意の言及は、特に記述のない限り又は文脈から明白ではない限り、異なるモノチオカーボネート化合物の混合物を含む。
【0011】
1個の5員環式モノチオカーボネート基は、好ましくは5員を有する環系であり、そのうちの3員はモノチオカーボネート-O-C(=O)-S-のものであり、更に2員は5員環を閉環する炭素原子である。
【0012】
モノチオカーボネート化合物は、例えば、1000個まで、特に500個まで、好ましくは100個までの5員環式モノチオカーボネート基を含むことができる。
【0013】
好ましい実施形態において、モノチオカーボネート化合物は、1~10個、とりわけ1~5個の5員環式モノチオカーボネート基を含む。最も好ましい実施形態において、モノチオカーボネート化合物は、1~3個、特に1又は2個の5員環式モノチオカーボネート基を含む。
【0014】
モノチオカーボネート化合物は、例えば、500,000g/molまでの分子量を有することができる。好ましいモノチオカーボネート化合物は、1000g/molまでの分子量を有する。最も好ましくは、500g/molまでの分子量を有する化合物である。
【0015】
好ましい実施形態において、モノチオカーボネート化合物は、いずれの第一級又は第二級アミノ基も含まない。
【0016】
特に好ましい実施形態において、モノチオカーボネート化合物は、モノチオカーボネート基、カルボン酸エステル基若しくはエーテル基、又は塩化物以外の他の官能基を含まない。
【0017】
用語「塩化物」は、本明細書で使用されるとき、共有結合されたCl原子の慣用名である。
【0018】
1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する適切なモノチオカーボネート化合物は、WO2019/034470に開示されている。1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する好ましいモノチオカーボネート化合物は、式(I):
【0019】
【化1】
[式中、R1a~R4aは互いに独立して、水素又は50個までの炭素原子を有する有機基を表し、或いは、R2a、R4a及びモノチオカーボネート基の2個の炭素原子は一緒になって、5~10員炭素環を形成してもよい]
の化合物である。
【0020】
1個を超える5員環式モノチオカーボネート基を有する適切なモノチオカーボネート化合物は、例えばWO2019/034473A1に開示されている。1個を超える5員環式モノチオカーボネート基を有する好ましいモノチオカーボネート化合物は、式(II):
【0021】
【化2】
[式中、R1b~R4bは互いに独立して、水素又は50個までの炭素原子を有する有機基を表し、或いは、R2b、R4b及びモノチオカーボネート基の2個の炭素原子は一緒になって、5~10員炭素環を形成してもよく、基R1b~R4bのうちの1つはZへの連結基であり、nは少なくとも2の整数を表し、Zはn価の有機基を表す]
の化合物である。
【0022】
様々な方法が、モノチオカーボネート化合物の調製について知られている。
【0023】
米国特許第3,072,676号及び米国特許第3,201,416号によると、エチレンモノチオカーボネートは2工程方法により調製することができる。第1の工程では、メルカプトエタノール及びクロロカルボキシレートを反応させて、ヒドロキシエチルチオカーボネートを得、これを第2の工程において金属塩触媒の存在下で加熱して、エチレンモノチオカーボネートにする。
【0024】
米国特許第3,517,029号によると、アルキレンモノチオカーボネートは、メルカプトエタノール及びカーボネートジエステルをトリウムの触媒活性塩の存在下で反応させることによって得られる。
【0025】
米国特許第3,349,100号に開示されている方法によると、アルキレンモノチオカーボネートは、エポキシドを硫化カルボニルと反応させることによって得られる。
【0026】
ホスゲンを出発物質として使用する合成は、米国特許第2,828,318号によって知られている。ホスゲンをヒドロキシメルカプタンと反応させる。
【0027】
好ましくは、上記に定義された精製方法に使用されるモノチオカーボネート化合物は、
- 少なくとも1個のエポキシ基又は少なくとも1個のハロヒドリン基を有する化合物を、ホスゲン又はギ酸アルキルと反応させて、付加物を得ること、及び
- 次いで、付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させること、
- 場合により、続いて、得られた粗生成物を抽出又は蒸留によって更に処理すること
を含む方法により生成物として得られる化合物である。
【0028】
上記の方法は、WO2019/034469A1(第1工程の反応にエポキシ化合物を用いる)及び出願番号PCT/EP2020/051110号のPCT特許出願(第1工程の反応にハロヒドリンを用いる)に開示されている。
【0029】
得られるモノチオカーボネート化合物は、通常、ある含有量の硫黄を有する副産物を含む。そのような副産物は、非常に嫌な臭いを引き起こす。多くの場合にそのような副産物は、方法工程、例えば、蒸留を伴う又は1回以上の抽出、とりわけ塩基、例えば水性NaHCO3による抽出を伴う標準的な処理によって完全に除去することができない。モノチオカーボネート化合物の臭気は、通常、そのような標準的な処理の後でも依然として悪いものである。
【0030】
本方法に使用されるモノチオカーボネート化合物は、液相中にある。
【0031】
調製方法により得られるモノチオカーボネート化合物は、21℃、1バールで液体又は固体であり得る。
【0032】
21℃、1バールで液体であるモノチオカーボネート化合物は、溶媒を用いることなく、そのまま使用することができる。
【0033】
21℃、1バールで固体であるモノチオカーボネート化合物は、好ましくは溶液の形態で使用される。
【0034】
固体モノチオカーボネート化合物に適した溶媒は、プロトン性溶媒、又はとりわけ非プロトン性溶媒である。
【0035】
非プロトン性溶媒は、疎水性溶媒、例えば、芳香族炭化水素及び塩素化炭化水素を含む炭化水素、例えば、トルエン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン、クロロホルムであってもよく、或いは親水性溶媒、例えば、アセトニトリル又はジメチルスルホキシド、若しくはエステル、又はテトラヒドロフラン、ジオキサン、ポリエーテル若しくはグリムのようなエーテルであってもよい。
【0036】
方法
モノチオカーボネート化合物を酸化剤と接触させる。
【0037】
用語「酸化剤」は、単一の酸化剤、又は異なる酸化剤の混合物を含む。
【0038】
適切な酸化剤は、とりわけ、酸素、オゾン、過酸化水素、及び高含有量の酸素を有する任意の他の無機化合物、例えば、酸素を含む窒素化合物、例えば、二酸化窒素、硝酸、又はこれらの任意の塩若しくはとりわけ無機過酸化物である。
【0039】
そのような無機過酸化物は、酸又は塩、とりわけ、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、過クロム酸塩、次亜塩素酸塩又は過ホウ酸塩、好ましくは、過塩素酸塩、過マンガン酸塩又は過ホウ酸塩から選択される、陰イオンとの金属塩であり得る。
【0040】
特に好ましい酸化剤は、過酸化水素及び硝酸(HNO3)である。
【0041】
最も好ましいものは、過酸化水素である。
【0042】
酸化剤は、好ましくは溶液の形態、特に水溶液の形態で使用される。水溶液中の酸化剤の濃度は、好ましくは50重量%未満、より好ましくは40重量%未満である。好ましくは、水溶液中の酸化剤の濃度は、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%である。
【0043】
酸化剤は、100molの有機硫黄化合物当り、好ましくは少なくとも5mol、とりわけ少なくとも10molの量で使用される。
【0044】
酸化剤は、100molの有機硫黄化合物、すなわちモノチオカーボネート化合物当り、好ましくは最大で40mol、とりわけ最大で30mol、より好ましくは最大で20molの量で使用される。
【0045】
酸化剤は有機硫黄化合物、すなわち、モノチオカーボネート化合物と任意の適切な方法で接触させることができる。
【0046】
本方法の好ましい実施形態において、酸化剤は、液体状態である有機硫黄化合物、すなわち、モノチオカーボネート化合物に添加される。
【0047】
酸化剤と有機硫黄化合物、すなわち、モノチオカーボネート化合物の接触は、好ましくは少なくとも20℃、とりわけ少なくとも30℃、より好ましくは少なくとも40℃、最も好ましくは少なくとも50℃、特に少なくとも55℃の温度において行われる。好ましくは、温度は最大で150℃、とりわけ最大で100℃である。
【0048】
接触時間は、好ましくは5分間から10時間、より好ましくは10分間から6時間、より好ましくは20分間から3時間、最も好ましくは30分間から2時間である。
【0049】
有機硫黄化合物、すなわち、モノチオカーボネート化合物と組み合わせて使用される任意の溶媒は、例えば蒸留によって除去することができる。
【0050】
本発明の方法は、回分法、半連続法又は連続法であり得る。連続法では、全ての出発物質が反応器に連続的に供給され、全ての生成物が連続的に取り出され、それにより酸化剤が通常の手段によって、例えば、場合に応じて蒸留、濾過若しくは沈殿によって、又は分解反応によって生成物流から分離され得る。
【0051】
本発明の方法を、他の精製及び臭気低減方法、例えば、抽出方法、例えば塩基、例えば水性NaHCO3による抽出、例えば吸着剤として金属酸化物を用いる吸着方法、又は副産物が化学反応により除去される若しくは問題のない化合物に変わる方法と組み合わせて使用することができる。
【0052】
本方法により得られるモノチオカーボネート化合物は、臭気が大幅に低減されている。酸化方法は、モノチオカーボネートそれ自体に対して大きな影響を有さないことが明白であり、モノチオカーボネート化合物それ自体の酸化が観察されなかった。酸化方法は、合成方法から生じる望ましくない恐らく揮発性の副産物に対してのみ、主な影響を有すると思われる。有機硫黄化合物それ自体の酸化は、観察されない又はほとんど観察されない。通常、モノチオカーボネート化合物の10mol%未満、とりわけ5mol%未満、最も好ましくは2未満、個々には1mol%未満が、それ自体を酸化剤と反応させて、酸化生成物の中に移行する。
【0053】
[実施例]
略してブタンジオールジチオカーボネート又はBDO-TCと称される、下記式の5-[4-[(2-オキソ-1,3-オキサチオラン-5-イル)メトキシ]ブトキシメチル]-1,3-オキサチオラン-2-オンの合成。
【0054】
【化3】
【0055】
この合成は、WO2019/034469A1に開示されている方法に従って行った。
【0056】
合成の第1の工程では、エポキシドである1,4-ブタンジオール-ジグリシジルエーテルをホスゲンとWO2019/034469A1に記載されているように反応させた。
【0057】
第2の工程では、得られたβ-クロロアルキルクロロホルメート(chloroformiate)([2-クロロ-1-[4-(3-クロロ-2-クロロカルボニルオキシ-プロポキシ)ブトキシメチル]エチル]カルボノクロリデート)(845g、2.1mol)及びジクロロメタン(2.5L)を8リットルの反応器の中に入れた。溶液を0℃に冷却した後、温度を5℃に維持しながらNa2S(2.2当量、15wt%水溶液)をゆっくりと添加した。完全に添加した後、反応混合物を室温に温め、1時間撹拌した。相を分離し、水相をジクロロメタン(1×0.5L)で抽出した。合わせた有機相を水(3×0.5L)で抽出し、Na2SO4で乾燥し、Celite 545(初期クロロホルメート1kg当り300g)で濾過した。溶媒を有機相から減圧下で除去し、所望の生成物を透明な粘稠液体(656g、96%)として得た。
【0058】
上記の合成を2つの異なるグレードの1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルで行った。
【0059】
1つのグレードは、僅かな含有量で他のエポキシド、とりわけ高分子量のエポキシドを有する比較的純粋なグレード(pure grade)である。
【0060】
もう一方のグレードは、かなりの含有量で他のエポキシドを含む工業グレードであった。
【0061】
したがって、2つの異なる生成物を合成から得た。
【0062】
「純粋BDO-TC」と称される、1つの生成物は、ガスクロマトグラフィーで測定して84.2面積%のBDO-TCの含有量を有する。
【0063】
「工業BDO-TC」と称される、もう1つの生成物は、ガスクロマトグラフィーで測定して61.3面積%のBDO-TCの含有量を有する。
【0064】
実施例1~8
酸化
個々のBDO-TC(5g)をトルエン(10g)に溶解し、酸化剤の水溶液(水中30重量%のH2O2、KMnO4の0.1モル水溶液)を添加した。混合物を個々の温度で30分間撹拌した。相を分離した後、有機相を水(v/v 1:1)により同じ温度で2回洗浄した。最後の相分離の後、トルエンを有機相から減圧下で除去し、BDO-TCを粘稠液体として得た。
【0065】
KMnO4の溶液を、BDO-TCの容積当り1容積の量で使用した。
【0066】
H2O2の溶液を、BDO-TCの100mol当り10molのH2O2の量で使用した。
【0067】
酸化後に得たBDO-TCのガスクロマトグラフは、BDO-TCそれ自体の酸化生成物に関連する追加のピークを示さなかった。
【0068】
試験
得られたBDO-TCの臭気を直後に試験した。試料を3名の異なる人により室温で試験した。参加者は、以下の分類スキームに従って嗅覚評価を報告した。
【0069】
1:無臭
2:僅かなむっとする臭い(stale odor)
3:僅かな「メルカプタン臭」
4:「メルカプタン臭」
5:はっきりとした「メルカプタン臭」
【0070】
酸化剤による処理の前に、純粋BDO-TCは分類4の臭気を有した。
【0071】
酸化剤による処理の前に、工業BDO-TCは分類5の臭気を有した。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例9~12
酸化と他の処理との組合せ
a)酸化と、化学反応(二重結合に対するマイケル付加)による不純物の除去との組合せ
個々のBDO-TC(5g)をトルエン(10g)に溶解し、メタクリル酸メチル(MMA)を添加した。混合物を25℃で30分間撹拌した。次いで、H2O2(30%水溶液)を25℃で添加し、混合物を更に30分間撹拌した。相を分離した後、有機相を水(v/v 1:1)で抽出した。全ての揮発物及びトルエンを有機相から減圧下で除去し、BDO-TCを粘稠液体として得た。
【0074】
b)酸化と抽出との組合せ
個々のBDO-TC(5g)をトルエン(10g)に溶解し、NaHCO3水溶液(v/v 1:1)で25℃で2回抽出し、続いて水(v/v 1:1)で抽出した。次いで、H2O2(30%水溶液)を25℃で添加し、混合物を更に30分間撹拌した。相を分離した後、有機相を水(v/v 1:1)で抽出した。全ての揮発物及びトルエンを有機相から減圧下で除去し、BDO-TCを粘稠液体として得た。
【0075】
【表2】
【国際調査報告】