(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】高分子マイクロ粒子の製造方法、高分子マイクロ粒子、それを含む医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品
(51)【国際特許分類】
A61K 47/30 20060101AFI20221014BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20221014BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221014BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20221014BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20221014BHJP
C08J 3/16 20060101ALI20221014BHJP
C08J 3/24 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
A61K47/30
A61K9/50
A61K8/02
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/42
A61Q1/00
C08J3/16 CEP
C08J3/24 Z CFG
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510214
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2021006828
(87)【国際公開番号】W WO2021246764
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0066053
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0070287
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユンソプ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ユン・シン
(72)【発明者】
【氏名】チャンジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・オ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヨン・リュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4F070
【Fターム(参考)】
4C076AA61
4C076EE37
4C076EE42
4C076EE45
4C076FF36
4C076GG01
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD411
4C083AD412
4C083BB24
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4C083FF01
4F070AA01
4F070AA62
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4F070AC14
4F070AC15
4F070AC36
4F070AC39
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4F070AE08
4F070AE28
4F070DA39
4F070DA47
4F070DB06
4F070DB09
4F070DC16
4F070GA08
4F070GA10
4F070GB05
4F070GB10
4F070GC01
(57)【要約】
本発明によれば、金属イオンによる架橋以後の有機架橋剤による追加架橋を含む高分子マイクロ粒子の製造方法、高分子マイクロ粒子、それを含む医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応させて高分子架橋粒子を形成する段階と、
反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒中で前記高分子架橋粒子をさらに架橋する段階と、を含む、高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項2】
前記生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応させて高分子架橋粒子を形成する段階は、極性溶媒中で行われる、請求項1に記載の高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項3】
前記生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応させて高分子架橋粒子を形成する段階は、
前記生体適合性高分子を溶かした水溶液を形成する段階と、
前記金属イオンを含む化合物を極性溶媒に添加して金属イオンを含む溶液を形成する段階と、
前記生体適合性高分子を溶かした水溶液の液滴と前記金属イオンを含む溶液を混合して混合溶液を形成する段階と、を含む、請求項1に記載の高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記生体適合性高分子を溶かした水溶液は、
生体適合性高分子を溶かした水溶液の全重量に対して、前記生体適合性高分子を0.01重量%以上10重量%以下で含む、請求項3に記載の高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記金属イオンを含む化合物は、前記生体適合性高分子100重量部に対して200重量部以上1000重量部以下で含まれる、請求項3に記載の高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒中で前記高分子架橋粒子をさらに架橋する段階において、
前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、前記生体適合性高分子100重量部に対して150重量部以上1000重量部以下で含まれる、請求項1に記載の高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記極性溶媒としては、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグリム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群より選択される一つである、請求項1に記載の高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、
ホルミル基またはエポキシ基を1個以上含む、請求項1に記載の高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記金属イオンは、鉄イオン、アルミニウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオンなどからなる群より選択される一つを含む、請求項1に記載の高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸およびゼラチンの混合物を含む、請求項1に記載の高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記ヒアルロン酸およびゼラチンの混合物は、
ヒアルロン酸100重量部に対して、ゼラチンを50重量部以上500重量部以下で含む、請求項10に記載の高分子マイクロ粒子の製造方法。
【請求項12】
第1生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むコアと、
前記コアの全部または一部を囲み、第2生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むシェルと、を含むコア-シェル構造を有する、高分子マイクロ粒子。
【請求項13】
前記コアは、第1生体適合性高分子が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを含み、
前記シェルは、第2生体適合性高分子が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを含む、請求項12に記載の高分子マイクロ粒子。
【請求項14】
前記第1生体適合性高分子はヒアルロン酸を含み、
前記第2生体適合性高分子はゼラチンを含む、請求項12に記載の高分子マイクロ粒子。
【請求項15】
前記コアは、コアに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、
ヒアルロン酸が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超過で含む、請求項13に記載の高分子マイクロ粒子。
【請求項16】
前記シェルは、シェルに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、
ゼラチンが金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超過で含む、請求項13に記載の高分子マイクロ粒子。
【請求項17】
前記高分子マイクロ粒子は、蒸留水での平均直径が1μm以上である、請求項12に記載の高分子マイクロ粒子。
【請求項18】
前記高分子マイクロ粒子の最長径を有する断面を基準として、
前記シェルの厚さが前記高分子マイクロ粒子の最長径の95%以下である、請求項12に記載の高分子マイクロ粒子。
【請求項19】
前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、
反応性官能基を1個以上含む炭素数1~30の架橋剤を含む、請求項12に記載の高分子マイクロ粒子。
【請求項20】
前記高分子マイクロ粒子は、
粒子平均直径の25%水準に変形したときの平均圧縮強度が0.1mN以上である、請求項12に記載の高分子マイクロ粒子。
【請求項21】
光学写真での任意の粒子の最長径に対する最短径の比率(長短比)である球形化度が0.9以上1.0以下である、請求項12に記載の高分子マイクロ粒子。
【請求項22】
請求項12に記載の高分子マイクロ粒子および前記高分子マイクロ粒子中に含まれている薬学的有効物質を含む、医療用組成物。
【請求項23】
請求項12に記載の高分子マイクロ粒子および前記高分子マイクロ粒子中に含まれている美容的有効物質を含む、美容組成物。
【請求項24】
請求項22に記載の医療用組成物を含む、医療用品。
【請求項25】
請求項23に記載の美容組成物を含む、美容用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年6月1日付の韓国特許出願第10-2020-0066053号、および2021年5月31日付の韓国特許出願第10-2021-0070287号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れた機械的強度および安定性を実現できる高分子マイクロ粒子の製造方法、高分子マイクロ粒子、それを含む医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオ医薬品および再生医療分野が拡張されるにつれ、細胞、組織、微生物などを効率的に生産できる細胞の大量培養技術に係る要求が増大している。
【0004】
付着性を有する細胞は、3Dバイオリアクター(bioreactor)内でマイクロキャリアを用いて培養される。バイオリアクター内に細胞、培養液およびマイクロキャリアを入れ、培養液を攪拌して細胞およびマイクロキャリアを接触させることによって、細胞をマイクロキャリアの表面に付着させて培養する。この際、使用するマイクロキャリアは細胞が付着して増殖できる高い表面積比率(surface area/volume)を提供するので、細胞の大量培養に適する。しかし、マイクロキャリアを用いて付着性細胞を拡張培養する場合、培養が終了した後、細胞の脱着過程により細胞を回収する過程が必ず伴う。前記細胞の脱着過程は、タンパク質分解酵素を使用するか、または温度を変化させて細胞の脱着を誘導するが、このような脱着工程が追加される場合、製造費用が増加して経済性が低下し、細胞の損傷を誘発する問題が存在した。
【0005】
これを解決するための新たな素材や工程の開発が着実に進められており、特に、生体内細胞を注入する細胞治療剤の場合、細胞を培養するマイクロキャリアの生体適合性を確保して分離精製過程を省略するための努力があった。この場合、培養過程および生体注入後のキャリア周辺の流体によって加わるストレスに耐えられる強度を実現する粒子を必要とする。
【0006】
しかも、薬物あるいは生理活性物質を捕集したマイクロキャリアをマイクロニードルに搭載して送達する経皮薬物送達技術の場合、マイクロキャリアは生体に適用するのに適した高分子を利用しなければならないし、皮膚の角質層(stratum corneum layer)を通過する過程で粒子の変形が起こらないように十分な強度を有さなければならない。安定的に経皮を透過したマイクロキャリアは、搭載された薬物をlocalあるいはsystemic deliveryして必要な病巣に作用できるようになる。
【0007】
生体適合性物質として主に用いられるヒアルロン酸は、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸から構成されており、前記繰り返し単位が線状に連結されている生体高分子物質である。眼の硝子体、関節の滑液および鶏のトサカなどに広く存在している。ヒアルロン酸は、優れた生体適合性と粘弾性によって生体注入型物質としてよく使用されるが、それ自体のみでは生体内(in vivo)または酸、アルカリなどの条件で容易に分解されるので使用が制限的である。また、マイクロキャリアに適用する場合、生体のpH範囲でヒアルロン酸は負電荷を帯び、これによって細胞付着性が顕著に低下する問題があった。
【0008】
また、ゼラチンは、生体結合組織であるコラーゲンを加水分解した高分子であって、細胞培養用スキャフォルダーとして活用される。細胞を捕集または培養することができるが、その強度が弱く、温度に敏感で、化学的方法で官能基を導入してその強度を向上しようとする研究があった。
【0009】
そこで、生体に適し、かつ、物理的強度および熱と酵素に対する安定性などの優れた物性と優れた安定性を有するマイクロキャリアまたは高分子マイクロ粒子の開発を必要とするのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、優れた機械的強度および安定性を実現できる高分子マイクロ粒子の製造方法を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記の製造方法によって製造される高分子マイクロ粒子を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記高分子マイクロ粒子を含む医療用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記高分子マイクロ粒子を含む美容組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記医療用組成物を含む医療用品を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記美容組成物を含む美容用品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応させて高分子架橋粒子を形成する段階と、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒中で前記高分子架橋粒子をさらに架橋する段階と、を含む、高分子マイクロ粒子の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明は、第1生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むコア、および前記コアの全部または一部を囲み、第2生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むシェルを含むコア-シェル構造を有する、高分子マイクロ粒子が提供される。
【0018】
また、本発明は、前記高分子マイクロ粒子および前記高分子マイクロ粒子中に含まれている薬学的有効物質を含む、医療用組成物が提供される。
【0019】
また、本発明は、前記高分子マイクロ粒子および前記高分子マイクロ粒子中に含まれている美容的有効物質を含む美容組成物が提供される。
【0020】
また、本発明は、前記医療用組成物を含む医療用品が提供される。
【0021】
また、本発明は、前記美容組成物を含む美容用品が提供される。
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態による高分子マイクロ粒子の製造方法、高分子マイクロ粒子、それを含む医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品について、より詳しく説明する。
【0023】
本明細書において明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0024】
本明細書において使用される単数形は、文脈上明らかに反対の意味を示さない限り、複数形も含む。
【0025】
本明細書において使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0026】
また、本明細書において、「第1」および「第2」などの序数を含む用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素とも名付けられてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素とも名付けられてもよい。
【0027】
本明細書において、(共)重合体は、重合体または共重合体をいずれも含む意味であり、前記重合体は単一の繰り返し単位からなる単独重合体を意味し、共重合体は2種以上の繰り返し単位を含む複合重合体を意味する。
【0028】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、前記思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0029】
本明細書においてマイクロ粒子とは、粒子の断面が円形または楕円形であり、粒子の短軸/長軸の比(球形化率)が0.7~1.0の範囲であることを意味する。粒子の短軸および長軸の長さは、粒子に対する光学写真を撮影し、光学写真での任意の粒子30個~100個の平均値を計算することによって導出することができる。
【0030】
本明細書において粒径(Dn)は、粒径による粒子数累積分布のn体積%地点での粒径を意味する。すなわち、D50は粒子の粒径を昇順に累積したとき、粒子数累積分布の50%地点での粒径であり、D90は粒径による粒子数累積分布の90%地点での粒径であり、D10は粒径による粒子数累積分布の10%地点での粒径である。
【0031】
前記Dnは、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定できる。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(Horiba LA-960)に導入して粒子がレーザビームを通過するとき、粒子の大きさによる回折パターン差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径による粒子数累積分布の10%、50%、および90%になる地点での粒子直径を算出することによって、D10、D50、およびD90を測定することができる。より具体的には、本明細書における粒径はD50を意味する。
【0032】
本明細書においてエマルジョンとは、油相または水相の混ざらない液体中の一つ以上を微粒子の状態(分散質)で他の液体(分散媒)に分散させた混合相を意味する。エマルジョンは分散相の粒子の大きさによって、通常、マクロエマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョンに分けられる。
【0033】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0034】
1.高分子マイクロ粒子の製造方法
本発明の一実施形態によれば、生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応させて高分子架橋粒子を形成する段階と、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒中で前記高分子架橋粒子をさらに架橋する段階と、を含む、高分子マイクロ粒子の製造方法が提供される。
【0035】
従来の高分子マイクロ粒子は、オイルを利用するW/Oエマルジョンを形成した後、架橋されることによってオイル洗浄工程が必ず伴い、工程効率性が不良であるだけでなく、残余オイルの除去が難しい技術的な問題があった。
【0036】
そこで、本発明者らは前記一実施形態の高分子マイクロ粒子の製造方法と同様に、金属イオンによって架橋させた後、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を利用した追加架橋反応を進行することによって工程効率性が極大化されると同時に、マイクロ粒子の機械的強度と安定性が顕著に向上することを実験により確認して発明を完成した。
【0037】
具体的には、前記生体適合性高分子とは、人体に適用される有効物質を伝達するために、人体内に直接注入が可能な高分子を意味する。具体的には、前記生体適合性高分子としては、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose:CMC)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン、カラギーナン、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン、ポリリシン(polylysine)、コラーゲン、ゼラチン、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン、アガロース、プルラン、ポリラクチド、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-グリコリド共重合体(PLGA)、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン-ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非-分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、シクロデキストリン、およびこのような高分子を形成する単量体の共重合体およびセルロースからなる群より選択される1個以上の高分子であり得る。
【0038】
より具体的には、前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、およびゼラチンの混合物であり得る。
【0039】
ヒアルロン酸のみを使用して製造された高分子マイクロ粒子は、それ自体のみでは生体内(in vivo)または酸、アルカリなどの条件で容易に分解されるので使用が制約的であるだけでなく、細胞付着性が顕著に低下し、ゼラチンのみを使用して製造された高分子マイクロ粒子は機械的物性が顕著に低下する。
【0040】
したがって、生体適合性高分子としてヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)およびゼラチンの混合物を使用することによって、優れた細胞付着性と共に機械的物性を実現することができる。
【0041】
本明細書においてヒアルロン酸は、ヒアルロン酸自体とヒアルロン酸塩をいずれも含む意味である。したがって、ヒアルロン酸水溶液は、ヒアルロン酸の水溶液、ヒアルロン酸塩の水溶液、およびヒアルロン酸とヒアルロン酸塩の混合水溶液をいずれも含む概念である。前記ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルトなどの無機塩と、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩およびその混合物であり得る。
【0042】
本発明の一実施形態において、ヒアルロン酸の分子量は、特に限定されないが、多様な物性と生体適合性を実現するために10,000g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0043】
本明細書においてゼラチンは、動物由来のコラーゲンを酸またはアルカリで処理し、後続して抽出して得られるタンパク質を意味する。
【0044】
本発明の一実施形態において、ゼラチンの分子量は、特に限定されないが、多様な物性と生体適合性を実現するために10,000g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0045】
前記発明の一実施形態において前記ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)およびゼラチンの混合物は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)100重量部に対して、ゼラチンを50重量部以上500重量部以下、100重量部以上500重量部以下、または100重量部以上300重量部以下で含み得る。
【0046】
ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)100重量部に対して、ゼラチンを50重量部未満で含む場合、製造される高分子マイクロ粒子の細胞付着性が不良であり、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)100重量部に対して、ゼラチンを500重量部超で含む場合、製造される高分子マイクロ粒子の機械的物性が低下することがある。すなわち、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)およびゼラチンの混合物は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)100重量部に対して、ゼラチンを50重量部以上500重量部以下で含むことによって、優れた細胞付着性と共に機械的物性を実現できる高分子マイクロ粒子が製造される。
【0047】
前記本発明の一実施形態において金属イオンは、鉄イオン(Fe3+)、アルミニウムイオン(Al3+)、銅イオン(Cu2+)、鉄イオン(Fe2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、バリウムイオン(Ba2+)、カルシウムイオン(Ca2+)などからなる群より選択される一つを含み得る。より具体的には、前記金属イオンは、鉄イオン、アルミニウムイオンまたはその混合物であり得る。
【0048】
本発明の一実施形態において、前記生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応させて高分子架橋粒子を形成する段階は、前記生体適合性高分子を溶かした水溶液を形成する段階と、前記金属イオンを含む化合物を極性溶媒に添加して金属イオンを含む溶液を形成する段階と、前記生体適合性高分子を溶かした水溶液の液滴と前記金属イオンを含む溶液を混合して混合溶液を形成する段階と、を含み得る。
【0049】
具体的には、前記生体適合性高分子を溶かした水溶液を形成する段階において、前記生体適合性高分子を溶かした水溶液は生体適合性高分子全体を溶かした水溶液重量に対して、前記生体適合性高分子を0.01重量%以上10重量%以下、0.01重量%以上5重量%以下、1重量%以上5重量%以下、1重量%以上3重量%以下、2重量%以上3重量%以下、2重量%以上2.5重量%以下で含み得る。
【0050】
本発明の一実施形態でのように、金属イオンによって架橋反応させた以後、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤によって追加架橋反応を進行することによって、従来のようにW/Oエマルジョンを形成した後、架橋反応させる場合と比較して、前記のように0.01重量%以上10重量%以下の少ない含有量の生体適合性高分子でも、機械的強度と安定性に優れたマイクロ粒子を製造することができる。
【0051】
前記金属イオンを含む化合物を極性溶媒に添加して金属イオンを含む溶液を形成する段階は、特に限定されないが、例えば、金属イオンを含む化合物をエタノールなどの極性溶媒に分散させて形成することができる。
【0052】
また、前記生体適合性高分子を溶かした水溶液の液滴と前記金属イオンを含む溶液を混合して混合溶液を形成する段階において、encapsulator(BUCHI、B-390)装置を用いて、粒子の大きさを適切に制御することができる。
【0053】
前記生体適合性高分子を溶かした水溶液の液滴と前記金属イオンを含む溶液を混合して混合溶液を形成する段階を含むことによって、前記生体適合性高分子に金属イオンがキレートされ、金属イオンを介して生体適合性高分子が架橋構造を形成することができる。
【0054】
前記発明の一実施形態でのように、生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応させて高分子架橋粒子を形成する段階を含むことによって、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤のみを使用して架橋反応を進行する場合と比較してオイルを使用せずに極性溶媒中でマイクロ粒子を製造することができ、オイル洗浄工程が省略されるので工程効率性に優れた効果を具現することができる。
【0055】
すなわち、生体適合性高分子に金属イオンがキレートされ、金属イオンを介して生体適合性高分子が架橋構造を形成することによって反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤のみを使用して架橋反応を進行する場合と比較してオイルを使用せずに極性溶媒中でマイクロ粒子を製造することができ、オイル洗浄工程が省略されるので工程効率性に優れた効果を具現することができる。
【0056】
また、前記金属イオンを含む化合物は、前記生体適合性高分子100重量部に対して200重量部以上1000重量部以下、300重量部以上1000重量部以下、または500重量部以上1000重量部以下で含まれる。
【0057】
本発明の一実施形態による高分子マイクロ粒子の製造方法は、上述のように金属イオンによる架橋反応後、追加架橋反応を進行することによって、前記生体適合性高分子100重量部に対して200重量部以上1000重量部以下で金属イオンを含む混合物を少量添加しても十分な機械的強度および球形化度を実現する高分子マイクロ粒子を製造することができる。
【0058】
前記金属イオンを含む化合物の含有量が、前記生体適合性高分子100重量部に対して1000重量部を超えて添加される場合、残量の金属イオンが架橋粒子に残存する技術的な問題が発生することがある。
【0059】
前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、反応性官能基を1個以上含む炭素数1~30の架橋剤を含み得る。
【0060】
上述したように金属イオンによって架橋させた後、反応性官能基を1個以上含む炭素数1~30の架橋剤を使用した追加架橋反応を進行することによって工程効率性が極大化されるとともに、マイクロ粒子の機械的強度と安定性が顕著に向上することができる。
【0061】
前記反応性官能基の種類は、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、(メタ)アクリレート基、ニトリル基、チオール基、アルデヒド基、またはビニル基が挙げられる。
【0062】
具体的には、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、ホルミル基またはエポキシ基を1個以上、または2個以上含み得る。前記ホルミル基またはエポキシ基は、上述した生体適合性高分子と反応して架橋粒子を形成する、架橋性官能基であり得る。
【0063】
前記発明の一実施形態において反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、特に限定されない。具体的には、前記架橋剤としては、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)、ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butanediol diglycidyl ether:BDDE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethylene glycol diglycidyl ether:EGDGE)、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,6-hexanediol diglycidyl ether)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(propylene glycol diglycidyl ether)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(polypropylene glycol diglycidyl ether)、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(polytetramethylene glycol diglycidyl ether)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(neopentyl glycol diglycidyl ether)、ポリグリコールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、グリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル(tri-methylpropane polyglycidyl ether)、ビスエポキシプロポキシエチレン(1,2-(bis(2,3-epoxypropoxy)ethylene))、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(pentaerythritol polyglycidyl ether)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)、ジビニルスルホン(divinylsulfone)、およびエピクロロヒドリン(epichlorohydrin)からなる群より選択される一つを含み得る。
【0064】
より具体的には、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)またはブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butanediol diglycidyl ether:BDDE)であり得る。
【0065】
また、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒中で前記高分子架橋粒子をさらに架橋する段階で、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤は、前記生体適合性高分子100重量部に対して150重量部以上1000重量部以下、200重量部以上1000重量部以下、300重量部以上800重量部以下、400重量部以上500重量部以下で含まれる。
【0066】
本発明の一実施形態による高分子マイクロ粒子の製造方法は、上述のように架橋反応後、追加架橋反応を進行することによって、前記生体適合性高分子100重量部に対して150重量部以上1000重量部以下で反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を少量添加しても十分な機械的強度および球形化度を実現する高分子マイクロ粒子を製造することができる。
【0067】
反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤の含有量が、前記生体適合性高分子100重量部に対して1000重量部を超えて添加される場合、残量の未反応の架橋剤が架橋粒子に残存する技術的な問題が発生することがある。
【0068】
一方、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒中で前記高分子架橋粒子をさらに架橋する段階で、前記極性溶媒は特に限定されないが、例えば、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグリム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群より選択される一つであり得る。
【0069】
また、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒中で前記高分子架橋粒子をさらに架橋する段階で、前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒はアルカリ性混合溶媒であり得る。
【0070】
すなわち、極性溶媒にアルカリ水溶液を混合したアルカリ性混合溶媒中で本発明の追加架橋反応が行われる。前記アルカリ水溶液の例は特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム水溶液などであり得る。
【0071】
前記反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒がアルカリ性混合溶媒であるので、求核置換反応(SN reaction)に有利な環境を作って架橋反応の効率を増加させることができる。
【0072】
2.高分子マイクロ粒子
本発明の一実施形態によれば、第1生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むコアと、前記コアの全部または一部を囲み、第2生体適合性高分子、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含むシェルと、を含むコア-シェル構造を有する、高分子マイクロ粒子が提供される。
【0073】
本発明者らは、高分子マイクロ粒子に対する研究を行い、上述のように金属イオンによって架橋反応させた後、追加架橋反応を進行することによって工程効率性が極大化されるとともに、マイクロ粒子の機械的強度と細胞付着性が顕著に向上することを実験によって確認して発明を完成した。
【0074】
本発明の一実施形態において、前記コアは、第1生体適合性高分子が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを含み、前記シェルは、第2生体適合性高分子が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを含み得る。
【0075】
具体的には、前記高分子マトリックスは、生体適合性高分子が金属イオンを介して架橋された第1架橋領域と、生体適合性高分子が反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された第2架橋領域と、を含み得る。
【0076】
前記第1架橋領域は、生体適合性高分子と金属イオンの架橋反応が行われて形成された架橋領域を意味し、前記第2架橋領域は、生体適合性高分子と金属イオンとの架橋反応の代わりに、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤と架橋反応が行われて形成された架橋領域および第1架橋領域と反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤が追加架橋反応により形成された架橋領域を意味する。すなわち、前記実施形態の高分子マイクロ粒子は、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を使用した架橋反応により製造される。
【0077】
具体的には、前記生体適合性高分子とは、人体に適用される有効物質を伝達するために、人体内に直接注入が可能な高分子を意味する。具体的には、前記生体適合性高分子としては、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose:CMC)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン、カラギーナン、コンドロイチン(硫酸)、デキストラン(硫酸)、キトサン、ポリリシン(polylysine)、コラーゲン、ゼラチン、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン、アガロース、プルラン、ポリラクチド、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-グリコリド共重合体(PLGA)、ポリアンヒドリド(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン-ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非-分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、シクロデキストリン、およびこのような高分子を形成する単量体の共重合体およびセルロースからなる群より選択される1個以上の高分子であり得る。
【0078】
より具体的には、前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、およびゼラチンの混合物であり得る。
【0079】
ヒアルロン酸のみを使用して製造された高分子マイクロ粒子は、それ自体のみでは生体内(in vivo)または酸、アルカリなどの条件で容易に分解されるので使用が制約的であるだけでなく、細胞付着性が顕著に低下し、ゼラチンのみを使用して製造された高分子マイクロ粒子は機械的物性が顕著に低下する。
【0080】
したがって、生体適合性高分子としてヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)およびゼラチンの混合物を使用することによって、優れた細胞付着性と共に機械的物性を実現することができる。
【0081】
具体的には、前記第1生体適合性高分子はヒアルロン酸を含み、前記第2生体適合性高分子はゼラチンを含み得る。
【0082】
本明細書においてヒアルロン酸は、ヒアルロン酸自体とヒアルロン酸塩をいずれも含む意味である。したがって、ヒアルロン酸水溶液は、ヒアルロン酸の水溶液、ヒアルロン酸塩の水溶液、およびヒアルロン酸とヒアルロン酸塩の混合水溶液をいずれも含む概念である。前記ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルトなどの無機塩と、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩およびその混合物であり得る。
【0083】
本発明の一実施形態において、ヒアルロン酸の分子量は、特に限定されないが、多様な物性と生体適合性を実現するために10,000g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0084】
本明細書においてゼラチンは、動物由来のコラーゲンを酸またはアルカリで処理し、後続して抽出して得られるタンパク質を意味する。
【0085】
本発明の一実施形態において、ゼラチンの分子量は、特に限定されないが、多様な物性と生体適合性を実現するために10,000g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0086】
一方、前記高分子マイクロ粒子は、コア-シェル構造を有する。前記コア-シェル構造は、高分子マイクロ粒子に含まれる高分子マトリックスが2種以上の生体適合性高分子を含むことによって、生体適合性高分子と金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤間の反応性の差などによって具現される。
【0087】
前記コア-シェル構造において前記コアは、コアに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、ヒアルロン酸が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超過、60体積%以上、70体積%以上、または75体積%以上で含み得る。また、100体積%以下、100体積%未満、95体積%以下、または90体積%以下で含み得る。また、50体積%超過100体積%以下、50体積%超過100体積%未満、60体積%以上100体積%未満、60体積%以上95体積%以下、70体積%以上95体積%以下、70体積%以上90体積%以下、または75体積%以上90体積%以下で含み得る。すなわち、前記コアは、ゼラチンに対して過剰のヒアルロン酸を含み得る。
【0088】
コアに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、ヒアルロン酸が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超過で含むのは、当該領域が全体面積の50%を超えて分布していることを視覚的または測定装置によって確認することができる。
【0089】
具体的には、前記コアに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対するヒアルロン酸が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスの体積比率の計算は、特に限定されず、通常の測定方法によって計算することができる。例えば、製造された高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm-1)に対して相対化したヒアルロン酸の特性ピーク(1080cm-1)に対するIR写真を撮影して確認することができる。
【0090】
前記コア-シェル構造において前記シェルは、シェルに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、ゼラチンが金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超過、60体積%以上、70体積%以上、または75体積%以上で含み得る。また、100体積%以下、100体積%未満、95体積%以下、または90体積%以下で含み得る。また、50体積%超過100体積%以下、50体積%超過100体積%未満、60体積%以上100体積%未満、60体積%以上95体積%以下、70体積%以上95体積%以下、70体積%以上90体積%以下、または75体積%以上90体積%以下で含み得る。すなわち、前記シェルは、ヒアルロン酸に対して過剰のゼラチンを含み得る。
【0091】
シェルに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対して、ゼラチンが金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%超過で含むのは、当該領域が全体面積の50%を超えて分布していることを視覚的または測定装置によって確認することができる。
【0092】
前記シェルに含まれる高分子マトリックス全体の体積に対するゼラチンが金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスの体積比率の計算は、特に限定されず、通常の測定方法によって計算することができる。例えば、製造された高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm-1)に対するIR写真を撮影して確認することができる。
【0093】
ヒアルロン酸が金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%以上で含むコアおよびゼラチンが、金属イオンおよび反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を介して架橋された高分子マトリックスを50体積%以上で含むシェルを含むコア-シェル構造は、溶解度、温度反応性、イオン結合性などの物理化学的要因によって具現される。より具体的には、前記高分子マイクロ粒子の製造工程において、エタノールなどの極性溶媒に対する溶解度が低く、温度反応性の高いゼラチンは、流動性が低下して粒子表面に固定して存在してシェルを形成することができ、したがって、相対的に粒子内部にヒアルロン酸がさらに多く分布してコアを形成することができる。
【0094】
特に、前記一実施形態の高分子マイクロ粒子の製造方法において、反応性官能基を1個以上含む有機架橋剤を含む極性溶媒中で高分子架橋粒子をさらに架橋する段階以前に、生体適合性高分子および金属イオンを含む混合物を反応させて高分子架橋粒子を形成する段階を含むことによって、金属イオンとヒアルロン酸に含まれているカルボキシル基間のイオン結合によってコア-シェル構造がより明らかになる。
【0095】
一方、前記高分子マイクロ粒子は、蒸留水での平均直径が1μm以上、1μm以上450μm以下、100μm以上450μm以下、または200μm以上400μm以下、または300μm以上400μm以下であり得るが、高分子マイクロ粒子の平均直径が上記の範囲を満たす場合、細胞付着および培養性能に優れる。
【0096】
前記平均直径とは、直径に応じた粒子数累積分布の50体積%地点での直径を意味する。
【0097】
前記一実施形態の高分子マイクロ粒子で前記高分子マイクロ粒子の最長径を有する断面を基準として、前記シェルの厚さが前記高分子マイクロ粒子の最長径の95%以下、90%以下、80%以下、75%以下、50%以下、30%以下、25%以下、または20%以下であり得る。また、前記高分子マイクロ粒子の最長径を有する断面を基準として、前記シェルの厚さが前記高分子マイクロ粒子の最長径の0.01%以上、1%以上、または5%以上であり得る。
【0098】
また、前記一実施形態の高分子マイクロ粒子において前記高分子マイクロ粒子の最長径を有する断面を基準として、前記コアの厚さが前記高分子マイクロ粒子の最長径の5%以上、10%以上、20%以上、25%以上、50%以上、70%以上、75%以上、または80%以上であり得る。また、前記高分子マイクロ粒子の最長径を有する断面を基準として、前記コアの厚さが前記高分子マイクロ粒子の最長径の99.99%以下、99%以下、または95%以下であり得る。
【0099】
また、前記高分子マイクロ粒子は、0.9以上1.0以下、0.93以上1.0以下、0.94以上0.99以下、または0.94以上0.98以下の球形化度を有する。
【0100】
前記球形化度は、高分子マイクロ粒子の光学写真を撮影し、光学写真での任意の粒子30個~100個の平均値を計算することによって得られる。
【0101】
また、前記高分子マイクロ粒子は、蒸留水で24時間以上膨潤した粒子に対して平均直径の25%水準に変形したときの平均圧縮強度が0.1mN以上、0.1mN以上100mN以下、0.3mN以上100mN以下、0.35mN以上100mN以下、0.35mN以上30mN以下、0.35mN以上10mN以下、または0.35mN以上3mN以下であり得る。
【0102】
前記平均圧縮強度は、前記高分子マイクロ粒子n個に対して、平均直径の25%水準に変形したときの圧縮強度をnで割った値である。
【0103】
例えば、本明細書において前記平均圧縮強度は、前記高分子マイクロ粒子30個に対して、平均直径の25%水準に変形したときの圧縮強度を30で割った値である。
【0104】
前記高分子マイクロ粒子の平均圧縮強度が0.1mN未満の場合、高分子マイクロ粒子の機械的強度が劣り、安定性が低下する技術的な問題が発生することがある。
【0105】
3.医療用組成物
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記他の実施形態の高分子マイクロ粒子および前記高分子マイクロ粒子中に含まれている薬学的有効物質を含む医療用組成物が提供される。前記高分子マイクロ粒子に関する内容は、前記他の実施形態で上述したすべての内容を含み得る。
【0106】
前記薬学的有効物質は、前記高分子マイクロ粒子中に含有された状態で存在する。
【0107】
前記薬学的有効物質の例は特に限定されず、前記一実施形態の高分子マイクロ粒子の適用用途によって、当該用途に適した有効物質を制限なく適用できる。すなわち、前記薬学的有効物質の具体的な例は限定されず、アムペタミニル(ampetaminil)、アレコリン(arecolin)、アトロフィン(atrophine)、ブプラノロール(bupranolol)、ブプレノルフィン(buprenorphine)、カプサイシン(capsaicin)、カリソプロドール(carisoprodol)、クロルプロマジン(chlorpromazine)、シクロピロクスオラミン(ciclopirox olamine)、コカイン(cocaine)、デシプラミン(desipramine)、ジクロニン(dyclonine)、エピネフリン(epinephrine)、エトスクシミド(ethosuximide)、フロキセチン(floxetine)、ヒドロモルヒネ(hydromorphine)、イミプラミン(imipramine)、リドカイン(lidocaine)、メタンフェタミン(methamphetamine)、メルプロン酸(melproic acid)、メチルフェニデート(methylphenidate)、モルヒネ(morphine)、オキシブチニン(oxibutynin)、ナドロール(nadolol)、ニコチン(nicotine)、ニトログリセリン(nitroglycerin)、ピンドロール(pindolol)、プリロカイン(prilocaine)、プロカイン(procaine)、プロパノロール(propanolol)、リバスチグミン(rivastigmine)、スコポラミン(scopolamine)、セレギリン(selegiline)、ツロブテロール(tulobuterol)、バルプロ酸(valproic acid)、ドネペジル(Donepezil)などからなる群より選択される薬物、およびEPO(Erythropoietin)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エキセナチド(Exenatide)、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)、インシュリン、CSF(Granulocyte colony-stimulating factor)、エストロゲン、プロゲステロンパラチロイドホルモン(PTH)などからなる群より選択されるペプチドまたはタンパク質系薬物などがあり、薬理効果が立証されたすべての薬理物質を制限なく適用可能である。
【0108】
前記薬学的有効物質の添加量もまた、特に限定されず、適用用途と対象によって含有量を制限なく使用できる。例えば、前記有効物質は、前記高分子マイクロ粒子100重量部に対して0.0001重量部以上1000000重量部以下で、高分子マイクロ粒子に対して少量、過剰の制限なく含まれる。
【0109】
4.美容組成物
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記他の実施形態の高分子マイクロ粒子および前記高分子マイクロ粒子中に含まれている美容有効物質を含む美容組成物が提供される。前記高分子マイクロ粒子に関する内容は、前記他の実施形態で上述したすべての内容を含み得る。
【0110】
前記美容有効物質は、前記高分子マイクロ粒子中に含有された状態で存在する。
【0111】
前記美容有効物質の例は、特に限定されず、前記一実施形態の高分子マイクロ粒子の適用用途によって、当該用途に適した有効物質を制限なく適用できる。すなわち、前記美容有効物質の具体的な例は限定されず、天然抽出物、タンパク質、ビタミン、酵素、抗酸化剤などがあり、美容効果が立証されたすべての物質を制限なく適用可能である。
【0112】
前記美容有効物質の添加量もまた、特に限定されず、適用用途と対象によって含有量を制限なく使用できる。例えば、前記美容有効物質は、前記高分子マイクロ粒子100重量部に対して0.0001重量部以上1000000重量部以下で、高分子マイクロ粒子に対して少量、過剰の制限なく含まれる。
【0113】
5.医療用品
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記他の実施形態の医療用組成物を含む医療用品が提供される。前記医療用組成物に関する内容は、前記他の実施形態で上述したすべての内容を含み得る。
【0114】
前記医療用品の例は特に限定されないが、本発明の特性を実現するため、体内に埋め込んで使用するか、あるいは長期間強度を維持しなければならない場合に適しており、例えば、体内プロテーゼ、体内埋め込み型の薬物送達体、経皮パッチ、創傷治療剤などが挙げられる。
【0115】
6.美容用品
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明は、前記他の実施形態の美容組成物を含む美容用品が提供される。前記美容組成物に関する内容は、前記他の実施形態で上述したすべての内容を含み得る。
【0116】
前記美容用品の例は特に限定されないが、本発明の特性を実現するため、例えば美容クリーム、ローション、ヘアジェル、パックなどが挙げられる。
【0117】
前記美容パックの構造は特に限定されないが、例えば、保持体、および前記保持体上に形成され、前記他の実施形態の高分子マイクロ粒子を含む美容的有効物質送達層を含み得る。前記保持体の例としては、織布、不織布、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、金属網、ポリエステルなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0118】
本発明によれば、優れた機械的強度および細胞付着性を実現できる高分子マイクロ粒子の製造方法、高分子マイクロ粒子、それを含む医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】実施例1の高分子マイクロ粒子に対する光学顕微鏡(OM)写真である。
【
図2】実施例1の高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm
-1)に対するIR写真である。
【
図3】実施例1の高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm
-1)に対して相対化したヒアルロン酸の特性ピーク(1080cm
-1)に対するIR写真である。
【発明を実施するための形態】
【0120】
本発明を下記の実施例でより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は本発明の例示に過ぎず、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0121】
実施例1:高分子マイクロ粒子の製造
0.1N NaOH水溶液にヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa、製造会社:SKバイオランド)200mgを2wt.%に溶かし、蒸留水にゼラチン(ゼリー強度:300g Bloom、製造会社:Sigma、製品名:G2500)250mgを2.5wt.%に溶かしたそれぞれの溶液10mLを混合して20mLを製造した後、これを鉄イオン(Fe3+)を含む化合物であるFeCl3が4g添加されたエタノール溶液80mLにencapsulator(BUCHI、B-390)装置を用いて形成された液滴を添加し、4℃で2時間架橋反応させた後、エタノールで洗浄して架橋粒子を製造した。
【0122】
0.1N NaOH水溶液を20%含有している80%エタノール溶液に、1,4-ブタンジオールジグリシジルエテール(1,4-Butanediol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g混合した後、前記架橋粒子を添加し、常温で3日間架橋反応させて高分子マイクロ粒子を製造した。製造された粒子をエタノール、蒸留水の順に洗浄した後、ふるい目の大きさが45μmの網ふるいを用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子をふるい目の大きさが500μmの網ふるいでろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0123】
製造された高分子マイクロ粒子に対する撮影した光学顕微鏡(OM)写真を
図1に示す。
【0124】
製造された高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm
-1)に対するIR写真を
図2に示す。ゼラチンの特性ピーク(1650cm
-1)の強度(intensity)差によってゼラチンが含まれている部分を明るくして、ゼラチンが製造された高分子マイクロ粒子のシェルに分布することを確認した。
【0125】
製造された高分子マイクロ粒子のゼラチンの特性ピーク(1650cm
-1)に対して相対化したヒアルロン酸の特性ピーク(1080cm
-1)に対するIR写真を
図3に示す。ヒアルロン酸がゼラチンに対して高い相対量で含まれる部分を明るくして、製造された高分子マイクロ粒子のコアにゼラチンに比べてヒアルロン酸が高い相対量に分布していることを確認した。
【0126】
実施例2:高分子マイクロ粒子の製造
鉄イオン(Fe3+)を含む化合物であるFeCl3が4g添加されたエタノール溶液の代わりに、アルミニウムイオン(Al3+)を含む化合物であるAlCl3が4g添加されたエタノール溶液を使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子マイクロ粒子を製造した。
【0127】
実施例3:高分子マイクロ粒子の製造
1,4-ブタンジオールジグリシジルエテール(1,4-Butanediol diglycidyl ether、BDDE)2.2gの代わりに、50%グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)2.2gを添加したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で高分子マイクロ粒子を製造した。
【0128】
比較例1:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa、製造会社:SKバイオランド)およびゼラチン(ゼリー強度:300g Bloom、製造会社:Sigma、製品名:G2500)をそれぞれ蒸留水に2wt.%、20wt.%に溶かして5mlずつ製造した後、この2つの溶液を混合した溶液を流動パラフィン溶液と混合してマイクロエマルジョンを含む混合液を製造した。その後、前記混合液に、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエテール(1,4-Butanediol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g添加し、常温で5日間架橋反応させて高分子マイクロ粒子を製造した。製造された粒子をアセトン、ジクロロメタン、蒸留水の順に洗浄した後、ふるい目の大きさが45μmの網ふるいを用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子をふるい目の大きさが500μmの網ふるいでろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0129】
比較例2:高分子マイクロ粒子の製造
0.1N NaOH水溶液にヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa、製造会社:SKバイオランド)を2wt.%に溶かし、蒸留水にゼラチン(ゼリー強度:300g Bloom、製造会社:Sigma、製品名:G2500)を2.5wt.%に溶かしたそれぞれの溶液10mLを混合して20mLを製造した後、これを鉄イオン(Fe3+)を含む化合物であるFeCl3が4g添加されたエタノール溶液80mLにencapsulator(BUCHI、B-390)装置を用いて形成された液滴を添加し、4℃で2時間架橋反応させた後、エタノールおよび蒸留水で洗浄して架橋粒子を製造した。製造された架橋粒子をふるい目の大きさが45μmの網ふるいを用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子をふるい目の大きさが500μmの網ふるいでろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0130】
比較例3:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa、製造会社:SKバイオランド)200mgを0.1N NaOH水溶液に2wt.%の濃度に、ゼラチン(ゼリー強度:300g Bloom、製造会社:Sigma、製品名:G2500)250mgを蒸留水に2.5wt.%の濃度にそれぞれ溶かして10mlずつ製造した後、この2つの溶液を混合した溶液を流動パラフィン溶液と混合してマイクロエマルジョンを含む混合液を製造した。その後、前記混合液に、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエテール(1,4-Butanediol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g添加し、常温で5日間架橋反応させた。これをアセトン、ジクロロメタン、蒸留水の順に洗浄した後、ふるい目の大きさが45μmの網ふるいを用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子をふるい目の大きさが500μmの網ふるいでろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0131】
比較例4:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa、製造会社:SKバイオランド)を0.1N NaOH水溶液に2wt.%の濃度に、ゼラチン(ゼリー強度:300g Bloom、製造会社:Sigma、製品名:G2500)を蒸留水に2.5wt.%の濃度にそれぞれ溶かして5mlずつ製造した後、この2つの溶液を混合した溶液を流動パラフィン溶液と混合してマイクロエマルジョンを含む混合液を製造した。その後、前記混合液に、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエテール(1,4-Butanediol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g添加し、常温で5日間架橋反応させた。これをアセトン、ジクロロメタン、蒸留水の順に洗浄した後、ふるい目の大きさが45μmの網ふるいを用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子をふるい目の大きさが500μmの網ふるいでろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0132】
比較例5:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa、製造会社:SKバイオランド)およびゼラチン(ゼリー強度:300g Bloom、製造会社:Sigma、製品名:G2500)をそれぞれ蒸留水に2wt.%、2.5wt.%に溶かして5mlずつ製造した後、この2つの溶液を混合した溶液を流動パラフィン溶液と混合してマイクロエマルジョンを含む混合液を製造した。その後、前記混合液に、架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエテール(1,4-Butanediol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g添加し、常温で5日間架橋反応させた。これをアセトン、ジクロロメタン、蒸留水の順に洗浄した後、ふるい目の大きさが45μmの網ふるいを用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子をふるい目の大きさが500μmの網ふるいでろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0133】
比較例6:高分子マイクロ粒子の製造
アルジネート(製造会社:Sigma、製品名:180947)、およびセルロース(製造会社:Sigma、製品名:C5678)をそれぞれ蒸留水に2.5wt.%に溶かしたそれぞれの溶液10mLを混合して20mLを製造した後、これをカルシウムイオン(Ca2+)を含む化合物であるCaCl2が4g添加されたエタノール溶液80mLにencapsulator(BUCHI、B-390)装置を用いて形成された液滴を添加し、常温で2時間架橋反応させた後、エタノールで洗浄して架橋粒子を製造した。
【0134】
0.1N NaOH水溶液を20%含有している80%エタノール溶液に1,4-ブタンジオールジグリシジルエテール(1,4-Butanediol diglycidyl ether、BDDE)を2.2g混合した後、前記架橋粒子を添加し、常温で3日間架橋反応させて高分子マイクロ粒子を製造した。製造された粒子をエタノール、蒸留水の順に洗浄した後、ふるい目の大きさが45μmの網ふるいを用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子をふるい目の大きさが500μmの網ふるいでろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0135】
比較例7:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa、製造会社:SKバイオランド)200mgを0.1N NaOH水溶液に2wt.%の濃度に、ゼラチン(ゼリー強度:300g Bloom、製造会社:Sigma、製品名:G2500)250mgを蒸留水に2.5wt.%の濃度に溶かしたそれぞれの溶液10mLを混合して20mLを製造した後、これを鉄イオン(Fe3+)を含む化合物であるFeCl3が4g添加されたエタノール溶液80mLにencapsulator(BUCHI、B-390)装置を用いて形成された液滴を添加し、4℃で2時間架橋反応させた後、エタノールで洗浄して架橋粒子を製造した。
【0136】
前記架橋粒子をカルシウムイオン(Ca2+)を含む化合物であるCaCl2が4g添加されたエタノール溶液80mLに添加し、4℃で2時間架橋反応させた後、高分子マイクロ粒子を製造した。製造された粒子をエタノール、蒸留水の順に洗浄した後、ふるい目の大きさが45μmの網ふるいを用いて製造された架橋粒子を回収した。回収された架橋粒子をふるい目の大きさが500μmの網ふるいでろ過して残った架橋粒子を分析した。
【0137】
実験例:高分子マイクロ粒子の物性測定
前記実施例および比較例で製造された高分子マイクロ粒子について、以下の方法で高分子マイクロ粒子の平均直径、球形化度、強度、細胞培養適合性、および安定性を評価した。
【0138】
1.平均直径
前記実施例および比較例の高分子マイクロ粒子の蒸留水での平均直径は、レーザ粒度分析装置(Horiba、Partica LA-960)を用いて測定した。
【0139】
2.球形化度
前記実施例および比較例の高分子マイクロ粒子の光学(Olympus、BX53)写真を撮影し、それに基づいて球形化度を計算した。
【0140】
本発明による球形化度は、光学写真での任意の30個の粒子の最長径に対する最短径の比率(長短比)の平均値で計算した。
【0141】
このとき、球形化度の値が1に近いほど球形に近いことを意味する。
【0142】
3.強度
前記実施例および比較例の高分子マイクロ粒子について、テクスチャーアナライザー(Texture analyzer)装置を用いて、マイクロ粒子の強度を測定した。5N ロードセル(load cell)が取り付けられた装置のフラット円筒プローブ(flat cylindrical probe)の下の領域に蒸留水で膨潤された30個のマイクロ粒子を単層に載せた。初期トリガー荷重(trigger force)は1mNに設定し、1mm/sの速度で粒子を圧縮した。粒子平均直径の25%水準に変形したときの力を圧縮力とした。
【0143】
平均圧縮強度は、前記圧縮力を測定対象であるマイクロ粒子の個数の30で割って計算した。
【0144】
4.細胞培養適合性
6ウェルプレート(well plate)に細胞培養液を満たし、高分子マイクロ粒子と細胞を入れてプレート-ロッキング(plate-rocking)方式で細胞を培養した。この時、培養液の温度は37℃を維持し、3日間培養して高分子マイクロ粒子で培養された細胞数を確認した。
【0145】
このとき、細胞培養適合性は、以下の基準により評価した。
【0146】
適合:投入された細胞数に対する培養された細胞数が100%以上の場合
不適合:投入された細胞数に対する培養された細胞数が100%未満であるか、または培養中のマイクロ粒子が分解される場合
【0147】
5.安定性
高温高圧方式減菌装置(Autoclave)を用いてリン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline)溶液に浸した高分子マイクロ粒子の滅菌処理の際、安定性および長期培養による粒子安定性を以下の基準により評価した。
【0148】
適合:Autoclaveの使用前と使用後の乾燥された高分子マイクロ粒子の重量減少率が20%以下の場合
不適合:Autoclaveの使用前と使用後の乾燥された高分子マイクロ粒子の重量減少率が20%を超える場合
【0149】
【0150】
上記表1に示すように、実施例の高分子マイクロ粒子は、まず、投入された細胞数に対する培養された細胞数が100%以上と細胞培養に適するだけでなく、Autoclave処理前と処理後の乾燥された高分子マイクロ粒子の重量減少率が20%以下であり、滅菌処理および長期培養に適することを確認することができた。
【0151】
しかも、実施例の高分子マイクロ粒子は、平均圧縮強度が0.37mN以上であり、優れた機械的物性を実現すると共に、高い架橋密度を示す粒子の比率が高いことを確認することができた。
【0152】
すなわち、実施例の高分子マイクロ粒子は、細胞培養、滅菌処理および長期培養に適し、かつ優れた架橋密度および機械的物性を実現することを確認した。
【0153】
反面、比較例1の高分子マイクロ粒子は、Autoclave処理前と処理後の乾燥された高分子マイクロ粒子の重量減少率が20%を超えるので、滅菌処理および長期培養に不適であるだけでなく、平均圧縮強度が0.23mNであり、機械的物性が劣り、低い架橋密度を示す粒子の比率が高いことを確認することができた。
【0154】
そして、比較例2の高分子マイクロ粒子は、蒸留水の洗浄段階で架橋されない高分子が溶解して粒子が収縮することが観察された。また、細胞培養中のマイクロ粒子が分解され、投入された細胞数に対する培養された細胞数が100%未満で、細胞培養に不適であるだけでなく、Autoclave処理前と処理後の乾燥された高分子マイクロ粒子の重量減少率が20%を超えるので、滅菌処理および長期培養に不適であることを確認することができた。また、平均圧縮強度が0.1mNであり、機械的物性が劣ることを確認することができた。
【0155】
また、比較例3~比較例5の高分子マイクロ粒子は、比較例1とは異なり、生体適合性高分子を溶かした水溶液の濃度を実施例1と同じ水準に調節することによって、高分子マイクロ粒子が形成されず、実施例の場合、低い生体適合性高分子の濃度でも高分子マイクロ粒子の形成が可能であることを確認することができた。
【0156】
比較例6の高分子マイクロ粒子は、架橋剤による化学的架橋によって蒸留水の状態で0.29mNの平均圧縮強度を示したが、生体適合性高分子として細胞付着性のないアルジネートとセルロースを使用することで細胞培養に不適であることを確認することができた。また、金属イオンとしてカルシウムイオン(Ca2+)を使用して架橋することによって、細胞培養液に存在するカルシウムイオンと可逆的に反応することができ、細胞培養時の粒子強度が低くなる。
【0157】
比較例7の高分子マイクロ粒子は、イオン架橋のみを経て製造されることによって、滅菌処理および細胞培養中の一部のマイクロ粒子が分解されて細胞培養に不適であることを確認することができた。
【国際調査報告】