(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(54)【発明の名称】偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221014BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20221014BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20221014BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221014BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20221014BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20221014BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221014BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20221014BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
G02B5/00 Z
H05B33/14 A
H05B33/02
H01L27/32
G09F9/00 313
G09F9/30 365
G09F9/30 349E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510838
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 KR2020012675
(87)【国際公開番号】W WO2021060779
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0116807
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジェ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ヒュク・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヨン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・キ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ウォン・イ
【テーマコード(参考)】
2H042
2H149
2K009
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H042AA03
2H042AA04
2H042AA19
2H042AA26
2H149AA18
2H149AB01
2H149AB11
2H149AB24
2H149BA02
2H149BA13
2H149CA02
2H149CA08
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA27
2H149EA02
2H149EA06
2H149EA12
2H149EA19
2H149EA22
2H149FA02Y
2H149FA02Z
2H149FA05Z
2H149FA12Z
2H149FA21Y
2H149FC03
2H149FD05
2H149FD06
2H149FD32
2H149FD47
2K009AA15
2K009BB11
2K009DD02
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107CC32
3K107CC37
3K107CC41
3K107EE26
3K107FF02
3K107FF06
3K107FF15
5C094AA15
5C094AA31
5C094AA36
5C094BA27
5C094DA06
5C094DA13
5C094ED14
5C094FB06
5C094HA08
5C094JA01
5C094JA07
5C094JA08
5C094JA11
5G435AA07
5G435AA14
5G435AA18
5G435BB05
5G435DD11
5G435FF05
5G435HH05
5G435LL04
5G435LL08
(57)【要約】
本出願は、正面のみならず側面まで含む全方位反射防止性能に優れ、フォールディング(folding)耐久性及び短波長に対する耐久性に優れた薄型化された偏光板を提供することができる。また、本出願は、前記偏光板が適用された有機発光表示装置及びこれを含むディスプレイ装置を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルム;
前記偏光フィルムの上部に形成されているハードコーティング層;及び
前記偏光フィルムの下部に形成されている位相差層を含むことを特徴とする、偏光板。
【請求項2】
ハードコーティング層は、他の層を介在せずに偏光フィルムの上部に直接形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
ハードコーティング層の鉛筆硬度が0.5H以上であることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項4】
ハードコーティング層の厚さが1μm~10μm範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項5】
厚さが45μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項6】
位相差層は、偏光フィルムの下部に位置し、下記数式1による面内位相差が550nm波長を基準として100~150nm範囲内であり、遅相軸が前記偏光フィルムの吸収軸と成す角度のうち小さい角度が35度~55度範囲内の角度を成すように配置されている第1位相差層;及び前記第1位相差層の下部に位置し、下記数式2による厚さ方向位相差が550nm波長を基準として30~150nm範囲内である第2位相差層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の偏光板:
[数1]
R
in=d×(n
x-n
y)
[数2]
R
th=d×(n
z-n
y)
数式1及び数式2で、R
inは、面内位相差であり、R
thは、厚さ方向位相差であり、dは、第1又は第2位相差層の厚さであり、n
xは、第1又は第2位相差層の遅相軸方向の屈折率であり、n
yは、第1又は第2位相差層の進相軸方向の屈折率であり、n
zは、第1又は第2位相差層の厚さ方向の屈折率である。
【請求項7】
第1位相差層は、下記数式3による分散係数が1未満であることを特徴とする、請求項6に記載の偏光板。
[数3]
分散係数=R
in(450)/R
in(550)
数式3で、R
in(450)は、第1位相差層の450nm波長を基準とした面内位相差であり、R
in(550)は、第1位相差層の550nm波長を基準とした面内位相差である。
【請求項8】
等方性層をさらに含み、前記等方性層の第1面には位相差層が形成されており、前記等方性層の第2面が偏光フィルムに付着されていることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項9】
ハードコーティング層の厚さ(H)と偏光フィルムの厚さ(S)の比(H/S)は、0.01~1.5の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項10】
ハードコーティング層の厚さ(H)と位相差層の厚さ(T)の比(H/T)は、0.1~5の範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項11】
ハードコーティング層の厚さ(H)と等方性層の厚さ(P)の比(H/P)は、0.01~1.5の範囲内であることを特徴とする、請求項8に記載の偏光板。
【請求項12】
下記数式4による反射色相値の変化(ΔE
*
ab)が10以下であることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
[数4]
ΔE
*
ab=[(ΔL
*)
2+(Δa
*)
2+(Δb
*)
2]
1/2
数式4で、ΔL
*は、L
*
a-L
*
iであり、Δa
*は、a
*
a-a
*
iであり、Δb
*は、b
*
a-b
*
iであり、L
*
a、a
*
a及びb
*
aは、それぞれ前記偏光板を25℃の温度で420nm波長の光を0.75~0.85W/m
2の光量で50時間の間露光させる前の色座標L
*、a
*及びb
*であり、L
*
i、a
*
i及びb
*
iは、それぞれ前記偏光板を25℃の温度で420nm波長の光を0.75~0.85W/m
2の光量で50時間の間露光させた後の色座標L
*、a
*及びb
*である。
【請求項13】
位相差層の下部にのみ形成されている粘着剤層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の偏光板を含むことを特徴とする、有機発光表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の有機発光表示装置を含むことを特徴とする、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、偏光板、有機発光表示装置及びディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置(Organic Light Emitting Device、OLED)は、自ら発光する自発光型表示装置であって、別のバックライト(Backlight)を必要としないため、厚さを減らすことができ、フレキシブル(flexible)表示装置を具現するのに有利である。
【0003】
しかし、有機発光表示装置は、有機発光表示パネルに形成された金属電極及び金属配線による外部光の反射によって、視認性とコントラスト比が低下して表示品質が落ちる問題、短波長領域帯の光に長期間露出するとき寿命が低下する問題などがある。また、モニター又はテレビなどの軽量化及び薄型化に対する要求レベルが高くなることによって、有機発光表示装置を一層軽く且つ薄く具現することが継続して要求されており、フレキシブル表示装置に適用したときのフォールディングによるクラック発生などの品質低下も問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、正面のみならず側面まで含む全方位反射防止性能に優れ、フォールディング(folding)耐久性及び短波長に対する耐久性に優れた薄型化された偏光板を提供することを一つの目的とする。
【0005】
本出願は、前記偏光板が適用された有機発光表示装置及びこれを含むディスプレイ装置を提供することをまた一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で言及する位相差や屈折率などの光学特性の基準波長は、特に別に規定しない限り、約550nmである。
【0007】
本明細書で用語「面内位相差」は、下記数式1によって規定される光学特性であり、用語「厚さ方向位相差」は、下記数式2によって規定される光学特性である。
【0008】
[数1]
【0009】
Rin=d×(nx-ny)
【0010】
[数2]
【0011】
Rth=d×(nz-ny)
【0012】
数式1及び数式2で、Rinは、面内位相差であり、Rthは、厚さ方向位相差であり、dは、第1又は第2位相差層の厚さであり、nxは、第1又は第2位相差層の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、第1又は第2位相差層の進相軸方向の屈折率であり、nzは、第1又は第2位相差層の厚さ方向の屈折率である。
【0013】
上記で用語「層」は、面内位相差又は厚さ方向位相差の測定対象の層であり、したがって、例えば、位相差層の面内位相差又は厚さ方向位相差を求める前記数式での層は、前記位相差層である。
【0014】
本明細書で角度を定義する用語「垂直」、「水平」、「直交」、「平行」及び「角度」の数値は、実質的な意味での垂直、水平、直交、平行及び前記数値であって、約±10度以内、±9度以、±8度以内、±7度以内、±6度以内、±5度以内、±4度以内、±3度以内、±2度以内又は±1度以内の誤差を含むことができる。
【0015】
本出願の偏光板は、偏光フィルム、前記偏光フィルムの上部に形成されているハードコーティング層及び前記偏光フィルムの下部に形成されている位相差層を含むことができる。前記位相差層は、単層構造であるか、多層構造の積層体であってもよい。本明細書で用語「下部」は、前記偏光フィルムで位相差層に向かう方向を意味し、「上部」は、その反対方向を意味する。一つの例示で、前記下部は、本出願の偏光板が有機発光ディスプレイ装置に適用されたときに前記偏光板で後述する有機発光表示パネルに向かう方向と一致することができ、上部は、視認側に向かう方向と一致することができる。
【0016】
本出願の偏光板は、一つの例示で、前記ハードコーティング層が他の層を介在せずに前記偏光フィルムの上部に直接形成されている偏光板であってもよい。
【0017】
通常的に、有機発光表示装置の使用時に偏光フィルムにスクラッチなどが発生しないように偏光フィルムを保護するために保護フィルムを適用することができる。前記保護フィルムは、通常的にガラス基板及び/又は高分子フィルムであってもよい。
【0018】
しかし、本出願の偏光板は、例えば、前記保護フィルムなどの他の層を適用せず、また、他の層の介在なしに前記偏光フィルムの上部にハードコーティング層が直接形成され得る。前記のように後述する特徴を有するハードコーティング層が他の層を介在せずに偏光フィルムの上部に直接形成されることで、有機発光表示装置の取り扱い及び/又は使用時に偏光フィルムを保護する役目を行うと共に偏光板の総厚さを減少させ得る。これによって、短波長に対する耐久性に優れるだけでなく、フォールディング耐久性にも優れた薄型化された偏光板を提供することができる。
【0019】
本明細書で前記ハードコーティング層は、一定レベル以上の鉛筆硬度を有する層であってもよい。前記鉛筆硬度は、一般的な鉛筆硬度測定装備を用い、約25℃の温度及び50%の相対湿度で500gの荷重及び45度の角度で鉛筆の芯をハードコーティング層表面に擦る方式で測定することができる。ハードコーティング層の表面で圧痕、スクラッチ又は破裂などのような欠陥の発生が確認されるまで鉛筆の芯の硬度を段階的に増加させながら鉛筆硬度を測定することができる。
【0020】
本出願のハードコーティング層の鉛筆硬度は、一つの例示で、約0.5H以上であってもよく、他の例示で、約0.6H以上、0.7H以上、0.8H以上、0.9H以上、1H以上又は2H以上であるか、10H以下、9H以下、8H以下、7H以下、6H以下、5H以下、4H以下、3H以下又は2H以下であってもよい。
【0021】
前記ハードコーティング層は、一つの例示で、厚さが1μm~10μm範囲内であってもよい。他の例示で、1.5μm以上、2.0μm以上、2.5μm以上又は3μm以上であるか、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下又は3μm以下であってもよい。
【0022】
前記範囲の鉛筆硬度を有するとともに、厚さが前記のように制御されて及び/又は後述する材料で形成されたハードコーティング層を適用することで、偏光フィルムの上部に他の層を介在せずに単独で形成しても外部衝撃及び/又は短波長光に対して偏光板を保護することができ、偏光板の厚さ減少などを通じて偏光板のフォールディング耐久性も確保することができる。
【0023】
上記のようなハードコーティング層を形成する材料としては、偏光板にハードコーティング層を形成することに適用される公知の素材を用いることができる。偏光板に形成されるハードコーティング層としては、一般的に、偏光フィルムの一面に付着される保護フィルムの表面に形成されるハードコーティング層又は偏光フィルムの一面には保護フィルムが付着され、他の面にはハードコーティング層と粘着剤層が順次形成される、いわゆる片面偏光板に形成されるハードコーティング層があるが、上のようなハードコーティング層の形成に適用される材料が本出願の偏光板にも同一に適用され得る。一つの例示で、前記ハードコーティング層としては、重合性エポキシ化合物及び/又はオキセタン化合物を含むハードコーティング層が適用され得る。このような材料としては、例えば、大韓民国公開特許第2019-0072151号、大韓民国公開特許第2019-0072168号又は大韓民国公開特許第2019-0072460号などで偏光フィルムの一面に形成される保護層材料として公知されている材料が例示され得る。
【0024】
上記で記述した従来技術におけるハードコーティング層は、例えば、偏光フィルムの破れなどを考慮して、偏光フィルムの上部表面に直接形成されはしなかった。すなわち、従来の偏光板に適用されるハードコーティング層は、偏光フィルム上に直接形成されず、偏光フィルムに付着される保護フィルムの表面に形成されるか、偏光フィルム上に直接形成される場合にも偏光フィルムの下部、すなわち偏光板がディスプレイ装置に適用されたときに偏光フィルムのディスプレイ装置を向いた表面に形成された。しかし、本発明者らは、前記ハードコーティング層を本明細書で記述する特有の構造の偏光板に適用することで、目的とする他の物性とともにフォールディング耐久性及び短波長耐久性に優れた偏光板の提供が可能である点を発見した。
【0025】
例えば、本出願の偏光板は、下記数式4による反射色相値の変化が10以下であってもよい。
【0026】
[数4]
【0027】
ΔE*
ab=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
【0028】
数式4で、ΔL*は、L*
a-L*
iであってもよく、Δa*は、a*
a-a*
iであってもよく、Δb*は、b*
a-b*
iであってもよく、L*
a、a*
a及びb*
aは、それぞれ前記偏光板を25℃の温度で420nm波長の光を0.75~0.85W/m2の光量で50時間の間露光させる前の色座標L*、a*及びb*であってもよく、L*
i、a*
i及びb*
iは、それぞれ前記偏光板を25℃の温度で420nm波長の光を0.75~0.85W/m2の光量で50時間の間露光させた後の色座標L*、a*及びb*であってもよい。
【0029】
前記L、a、b値は、下記に記載したCIE Lab色空間のL、a、bを意味することができる。このような色空間で、L値は明度を示し、L値が0であると黒色、L値が100であると白色を示す。また、a値が負数であると、緑色にかたよった色になり、正数であると、赤色又は紫色側にかたよった色になる。また、b値が負数であると、青色にかたよった色になり、b値が正数であると、黄色にかたよった色になる。
【0030】
前記CIE Lab色空間での各数値は、前記色空間の各座標を測定する一般的な方式を適用して測定することができ、例えば、測定位置に積分球形態の検出器(detector)を有する装備(spectrophotometer)(KONICA MINOLTA社、CM-2600d)を位置させた後に製造社のマニュアルによって測定することができる。このような測定は、通常的に、20℃~30℃の温度条件、40~50%湿度条件で行われ得るが、これに制限されるものではない。
【0031】
本出願で偏光板の前記数値4による反射色相値の変化(ΔE*
ab)は、他の例示で、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下又は0.2以下であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0032】
本出願の偏光板は、特に、上述したハードコーティング層を他の層の介在なしに偏光フィルム上に導入することで、厚さを薄く形成するとともに短波長に長期間露出する場合にも偏光板の寿命低下などの問題が制御された偏光板を提供することができる。
【0033】
本出願の偏光板は、一つの例示で、厚さが45μm以下であってもよい。他の例示で、前記偏光板の厚さは、44μm以下、43μm以下、42μm以下、41μm以下、40μm以下、39μm以下、38μm以下、37μm以下、36μm以下又は35μm以下であるか、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上又は35μm以上であってもよいが、これに制限されるもではない。
【0034】
偏光板の厚さを上記のような範囲に制御することで、フォールディング時にクラックなどの外観不良が発生しない偏光板を提供することができ、前記偏光板を有機発光表示装置及びこれを含むフレキシブルディスプレイ装置に適用してフォールディング耐久性に優れたフレキシブルフォールディング装置を提供することができる。
【0035】
また、本出願の偏光板は、偏光フィルムの下部に位相差層を含むことができる。位相差層は、単層構造であるか、多層構造であってもよい。多層構造である場合に、位相差層は、例えば、第1位相差層及び/又は第2位相差層を含むことができる。一つの例示で、前記偏光フィルムの下部に前記第1位相差層が存在し、前記第1位相差層の下部に前記第2位相差層が存在して、
図1のように、ハードコーティング層500、偏光フィルム100、第1位相差層201、第2位相差層202が順次に積層されていてもよい。
【0036】
このような位置関係で各位相差層の光学特性を下記のように設計してディスプレイ装置、特に有機発光表示装置に適用されて正面のみならず側面を含んだ全方位反射防止性能及び/又はカラー特性に優れ、短波長耐久性にも優れた偏光板を提供することができる。
【0037】
本明細書で用語「位相差層」は、光学異方性層であって、複屈折を制御することで入射偏光を変換し得る素子を意味する。本明細書で位相差層のx軸、y軸及びz軸を記載しながら特に言及がない限り、前記x軸は、位相差層の面内遅相軸と平行な方向を意味し、y軸は、位相差層の面内進相軸と平行な方向を意味し、z軸は、位相差層の厚さ方向を意味する。前記x軸とy軸は、面内で互いに直交を成すことができる。
【0038】
前記第1位相差層は、前記数式1の面内位相差(550nm波長基準)が約100~150nmの範囲内であってもよい。前記面内位相差は、他の例示で、約110nm以上、120nm以上、130nm以上、131nm以上、132nm以上、133nm以上、134nm以上、135nm以上、136nm以上、137nm以上、138nm以上、139nm以上又は140nm以上であるか、149nm以下、148nm以下、147nm以下、146nm以下、145nm以下、144nm以下、143nm以下、142nm以下又は141nm以下であってもよい。
【0039】
前記偏光板の上記のような配置で、前記第1位相差層は、例えば、その遅相軸が偏光フィルムの吸収軸と約35度~55度の範囲内の角度を成すように配置され得る。前記角度は、他の例示で、約15度以上、20度以上、25度以上、30度以上、35度以上、40度以上又は45度以上であるか、65度以下、60度以下、55度以下、50度以下又は45度以下程度であってもよい。より好ましくは、約40度~50度の範囲内の角度を成すように配置され得るが、これに制限されるものではない。
【0040】
また、本出願で前記第1位相差層は、下記数式3による分散係数が1未満であってもよい。
【0041】
[数3]
【0042】
分散係数=Rin(450)/Rin(550)
【0043】
数式3で、Rin(450)は、第1位相差層の450nm波長を基準とした面内位相差であり、Rin(550)は、第1位相差層の550nm波長を基準とした面内位相差である。
【0044】
また、本出願で前記第1位相差層は、QWP(Quarter Wave Plate)であってもよい。本明細書で用語「QWP」は、1/4波長の位相遅延特性を有する波長板であり、線偏光である入射偏光を円編光に変える役目をする波長板を意味する。本明細書でn波長の位相遅延特性は、少なくとも一部の波長範囲内で入射光をその入射光の波長のn倍ほど位相遅延させ得る特性を意味する。したがって、前記1/4波長の位相遅延特性は、少なくとも一部の波長範囲内で入射光をその入射光の波長の1/4倍ほど位相遅延させ得る特性を意味することができる。
【0045】
本出願で前記第1位相差層は、一つの例示で、厚さが25μm以下であってもよい。他の例示で、24μm以下、23μm以下、22μm以下、21μm以下、20μm以下、19μm以下、18μm以下、17μm以下、16μm以下、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下又は3μm以下であるか、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上、0.6μm以上、0.7μm以上、0.8μm以上、0.9μm以上、1.0μm以上、1.1μm以上、1.2μm以上、1.3μm以上、1.4μm以上、1.5μm以上、1.6μm以上、1.7μm以上、1.8μm以上又は1.9μm以上であってもよいが、目的とする位相差を示すことができる限り、これに制限されるものではない。
【0046】
このように、前記範囲の面内位相差を示すと共に、第1位相差層の遅相軸と偏光フィルムの吸収軸が上記のような範囲内に配置された第1位相差層を適用することで、後述する第2位相差層との組み合わせを通じて可視光領域内の波長による適切なレベルの補償機能を示すことができ、それによって、優れた全方位反射防止性能、カラー特性及び/又は短波長耐久性を確保することができる。
【0047】
本出願の偏光板は、例えば、前記第1位相差層の下部に第2位相差層を含むことができる。このとき、前記第2位相差層は、前記第1位相差層と接しているか、あるいは第1及び第2位相差層の間に他の要素、例えば、粘着層などや高分子フィルムなどが存在していてもよい。
【0048】
前記第2位相差層は、前記数式2の厚さ方向位相差(550nm波長基準)が約30nm~150nmの範囲内にあってもよい。前記厚さ方向位相差は、他の例示で、約35nm以上、40nm以上、45nm以上、50nm以上、55nm以上又は60nm以上であるか、140nm以下、130nm以下、120nm以下、110nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下又は70nm以下であってもよい。
【0049】
前記第2位相差層は、一つの例示で、実質的に面内位相差を有しない層であってもよい。このような第2位相差層の面内位相差(550nm波長基準)は、例えば、約10nm以下、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下又は1nm以下であるか、実質的に0nmであってもよい。
【0050】
第2位相差層の場合、上述したように、実質的に面内位相差を有さず、したがって、その遅相軸の配置は、偏光板の性能に大きい影響を及ぼさない。ただし、第2位相差層に遅相軸が存在する場合に、その配置は、偏光層の吸収軸と垂直であったり又は水平であることができる。
【0051】
本出願で前記第2位相差層は、一つの例示で、厚さが10μm以下であってもよい。他の例示で、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μmm以下、3μm以下又は2μm以下であるか、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上、0.6μm以上、0.7μm以上、0.8μm以上又は0.9μm以上であってもよいが、目的とする位相差を示すことができる限り、これに制限されるものではない。
【0052】
第2位相差層の厚さ方向位相差などの範囲が前記のように制御され、所定位置で上述した第1位相差層と組み合わされることで、本出願の目的に適合した効果を達成することができる。
【0053】
第1及び第2位相差層としては、前記言及された特性を満たす限り、多様な種類の位相差層を制限なしに用いることができる。
【0054】
通常、位相差層としては、一軸又は二軸延伸などの延伸によって光学異方性を付与した高分子フィルムや、重合性液晶化合物(いわゆるRM(Reactive Mesogen))を配向して重合させて形成される液晶フィルム又は液晶高分子フィルムなどが適用され、上で記述した特性を満たす限り、前記のような公知の位相差層が全て用いられ得る。
【0055】
一つの例示で、第1及び/又は第2位相差層は、重合性液晶化合物を配向して重合させて形成される液晶フィルム又は液晶高分子フィルムであってもよく、この場合、前記第1及び/又は第2位相差層は、第1及び/又は第2液晶位相差層であると呼称され得る。前記液晶フィルム又は液晶高分子フィルムの製造に適用され得る重合性液晶化合物(いわゆるRM(Reactive Mesogen))は、多様に知られており、これを適用して液晶フィルム又は液晶高分子フィルムを製造する方式は、公知である。上のような重合性液晶化合物としては、いわゆる重合性ネマチック液晶化合物や、重合性スメチック液晶化合物などが知られている。分散係数の調節の容易性の観点からこのような重合性液晶化合物を適用することが効果的であるが、他の種類の液晶化合物であっても本出願の要件を満たす限り、適用が可能である。
【0056】
前記延伸高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリノルボルネンフィルムなどの環型オレフィンポリマー(Cycloolefin polymer)フィルム、アクリルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム又はTAC(Triacetyl cellulose)フィルムなどのセルロースエステル系ポリマーフィルム又はPET(poly(ethylene terephthalate))フィルムや、PC(polycarbonate)フィルムなどのポリエステルフィルムや前記ポリマーを形成する単量体のうち2種以上の単量体の共重合体フィルムなどが例示され得る。一つの例示で、高分子フィルムとしては、環型オレフィンポリマーフィルム又はアクリルフィルムを用いることができる。前記環型オレフィンポリマーとしては、ノルボルネンなどの環型オレフィンの開環重合体又はその水素添加物、環型オレフィンの付加重合体、環型オレフィンとα-オレフィンのような他の共単量体の共重合体、又は前記重合体又は共重合体を不飽和カルボン酸やその誘導体などで変性させたクラフト重合体などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0057】
本出願の偏光板は、偏光フィルム、第1及び第2位相差層の上部及び/又下部に他の要素を含むことができる。ただし、前記偏光板は、位相差層としては、前記第1及び第2位相差層のみを含むことができる。すなわち、前記偏光板は、前記偏光層と第1及び第2位相差層を除くと、いわゆる等方性層のみをさらに含むことができる。
【0058】
本明細書で言及する等方性層は、実質的な等方性層であって、該当層がある程度の位相差を有すると言っても偏光板に対して設計された光学構造を毀損しない程度の位相差であれば、等方性層として取り扱われ得る。一つの例示で、本出願で言及する用語「等方性層」は、前記面内位相差及び厚さ方向位相差が同時に20nm以下の層である。前記位相差は、他の例示で、19nm以下、18nm以下、17nm以下、16nm以下、15nm以下、14nm以下、13nm以下、12nm以下、11nm以下、10nm以下、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下又は1nm以下であるか、0nmであってもよい。したがって、反対に前記面内位相差及び厚さ方向位相差のうちいずれか一つでも20nmを超過する層は、本出願で位相差層として取り扱われ得る。
【0059】
本出願の偏光板は、例えば、等方性層をさらに含み、前記等方性層の第1面には前記位相差層が順次形成されており、前記等方性層の第2面が前記偏光フィルムに付着されていてもよい。
【0060】
前記等方性層は、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアクリレートフィルム又はポリビニルアルコールフィルムなどであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0061】
前記等方性層の厚さは、例えば、5μm~35μmの範囲内であってもよい。等方性層の厚さを前記のように制御することで、偏光板の薄型化によるフォールディング耐久性などの確保が可能である。前記等方性層の厚さは、他の例示で、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上、13μm以上、14μm以上、15μm以上、16μm以上、17μm以上、18μm以上又は19μm以上であるか、34μm以下、33μm以下、32μm以下、31μm以下、30μm以下、29μm以下、28μm以下、27μm以下、26μm以下、25μm以下、24μm以下、23μm以下、22μm以下又は21μm以下であってもよい。
【0062】
本出願の偏光板は、例えば、上述したハードコーティング層の厚さ(H)と前記等方性層の厚さ(P)の比(H/P)、ハードコーティング層の厚さ(H)と位相差層の厚さ(T)の比(H/T)及び/又はハードコーティング層の厚さ(H)と偏光フィルムの厚さ(S)の比(H/S)などを所定範囲に制御することで、目的とする効果を一層極大化することができる。
【0063】
前記ハードコーティング層の厚さ(H)と前記等方性層の厚さ(P)の比(H/P)は、一つの例示で、0.01~1.5の範囲内であってもよい。前記ハードコーティング層の厚さ(H)と前記等方性層の厚さ(P)の比(H/P)は、他の例示で、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上又は0.14以上であるか、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、0.19以下、0.18以下、0.17以下又は0.16以下であってもよい。
【0064】
前記ハードコーティング層の厚さ(H)と前記位相差層の厚さ(T)の比(H/T)は、一つの例示で、0.1~5の範囲内であってもよい。ここで、前記位相差層の厚さは、位相差層が単層構造である場合、単層構造の厚さを意味することができ、位相差層が2層以上の積層体である場合、各層の厚さを全て合わせた総厚さを意味することができる。一つの例示で、前記位相差層の厚さ(T)は、前記位相差層が第1位相差層及び第2位相差層の2層構造である場合、前記第1位相差層の厚さ(T1)及び前記第2位相差層の厚さ(T2)の和を意味することができる。前記ハードコーティング層の厚さ(H)と前記位相差層の厚さ(T)の比(H/T)は、他の例示で、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上又は0.9以上であるか、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下又は1.5以下であってもよい。
【0065】
前記ハードコーティング層の厚さ(H)と前記偏光フィルムの厚さ(S)の比(H/S)は、一つの例示で、0.01~1.5の範囲内であってもよい。前記ハードコーティング層の厚さ(H)と前記偏光フィルムの厚さ(S)の比(H/S)は、0.05以上、0.1以上、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.30以上、0.35以上又は0.40以上であるか、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下又は0.5以下であってもよい。
【0066】
前記のように、ハードコーティング層と他の層の間の厚さの比を所定範囲に制御することで、鉛筆硬度、短波長耐久性及び/又はフォールディング耐久性などの効果に優れた偏光板を提供することができる。
【0067】
また、本出願の偏光板は、粘着剤層をさらに含むことができる。このような粘着剤層は、本出願の偏光板をディスプレイ装置に付着するために含まれ得る。したがって、前記粘着剤層は、前記位相差層の下部に形成され得る。したがって、本出願の偏光板は、ハードコーティング層、偏光フィルム、位相差層及び前記粘着剤層を前記順序で含むことができる。一つの例示で、前記偏光板で前記粘着剤層は、前記位相差層の下部にのみ形成されていてもよい。したがって、前記偏光板構造で前記ハードコーティング層の上部には、粘着剤層が形成されなくてもよい。粘着剤層としては、特に制限なしに公知の偏光板に適用される粘着剤層が適用され得る。
【0068】
本出願で前記偏光フィルムは、例えば、ポリビニルアルコール偏光フィルムであってもよい。本明細書で用語「偏光フィルム」及び「偏光板」は、互いに区別される対象を指称する。偏光フィルムは、偏光機能を示すフィルム、シート又は素子それ自体を指称し、前記偏光フィルムは、多くの方向に振動する入射光から一側方向に振動する光を抽出することができる機能性素子である。偏光板は、前記偏光フィルムと共に他の要素を含む光学素子を意味する。偏光フィルムとともに光学素子に含まれ得る他の要素としては、偏光フィルムの保護フィルム又は位相差層などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0069】
上記で偏光フィルムは、吸収型であるか、反射型偏光フィルムであってもよく、基本的には特に制限されない。本出願で偏光フィルムは、例えば、ポリビニルアルコール偏光フィルムであってもよい。用語「ポリビニルアルコール偏光フィルム」は、例えば、ヨウ素や二色性色素のような異方吸収性物質を含むポリビニルアルコール(以下、ポリビニルアルコールと呼称できる)系列の樹脂フィルムを意味することができる。このようなフィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに異方吸収性物質を含ませ、延伸などにより配向させて製造することができる。上記でポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール又はエチレン-酢酸ビニル共重合体のけん化物などが挙げられる。前記ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、100~5,000又は1,400~4,000程度であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0070】
上記のような偏光フィルムの厚さは特に制限されず、目的によって適正な厚さで形成され得る。偏光フィルムの厚さは、例えば、1μm~100μm範囲内であってもよい。他の例示で、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上又は12μm以上であるか、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、19μm以下、18μm以下、17μm以下、16μm以下、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、11μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下又は7μm以下であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0071】
このようなポリビニルアルコール偏光フィルムは、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、染色工程、架橋工程及び延伸工程を少なくとも行って製造することができる。染色工程、架橋工程及び延伸工程には、それぞれ染色浴、架橋浴及び延伸浴の各処理浴が用いられ、これら各処理浴は、各工程による処理液が用いられ得る。
【0072】
染色工程では、前記ポリビニルアルコール系フィルムに異方吸収性物質を吸着及び/又は配向させ得る。このような染色工程は、延伸工程とともに行われ得る。染色工程は、前記フィルムを異方吸収性物質を含む溶液、例えば、ヨウ素溶液に浸漬させて行われ得る。ヨウ素溶液としては、例えば、ヨウ素及び溶解補助剤であるヨウ化物によりヨードイオンを含有させた水溶液などが用いられ得る。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ又はヨウ化チタンなどが用いられ得る。ヨウ素溶液中でヨウ素及び/又はヨウ化イオンの濃度は、目的とする偏光フィルムの光学特性を考慮して調節され得、このような調節方式は公知である。染色工程でヨウ素溶液の温度は、通常的に、20℃~50℃、25℃~40℃程度であり、浸漬時間は、通常的に、10秒~300秒又は20秒~240秒程度であるが、これに制限されるものではない。
【0073】
偏光フィルムの製造過程で行われる架橋工程は、例えば、ホウ素化合物のような架橋剤を用いて行うことができる。架橋工程の順序は特に制限されず、例えば、染色及び/又は延伸工程とともに行うか、別に進行することができる。架橋工程は、複数回実施してもよい。前記ホウ素化合物としては、ホウ酸又はホウ砂などが用いられ得る。ホウ素化合物は、水溶液又は水と有機溶媒の混合溶液の形態で一般的に用いられ得、通常的には、ホウ酸水溶液が用いられる。ホウ酸水溶液でのホウ酸濃度は、架橋度とそれによる耐熱性などを考慮して適正範囲に選択され得る。ホウ酸水溶液などにもヨウ化カリウムなどのヨウ化物を含有させ得る。
【0074】
架橋工程は、前記ポリビニルアルコール系フィルムをホウ酸水溶液などに浸漬することで行うことができるが、この過程で処理温度は、通常的に、25℃以上、30℃~85℃又は30℃~60℃程度の範囲であり、処理時間は、通常的に、5秒~800秒間又は8秒~500秒間程度である。
【0075】
延伸工程は、一般的に一軸延伸で行う。このような延伸は、前記染色及び/又は架橋工程とともに行ってもよい。延伸方法は特に制限されず、例えば、湿潤式延伸方式が適用され得る。このような湿潤式延伸方法では、例えば、染色後に延伸を行うことが一般的であるが、延伸は架橋とともに行ってもよく、複数回又は多段で行ってもよい。
【0076】
湿潤式延伸方法に適用される処理液にヨウ化カリウムなどのヨウ化物を含有させ得る。延伸で処理温度は、通常的に、25℃以上、30℃~85℃又は50℃~70℃の範囲内程度であり、処理時間は、通常、10秒~800秒又は30秒~500秒間であるが、これに制限されるものではない。
【0077】
延伸過程で総延伸倍率は、配向特性などを考慮して調節することができ、ポリビニルアルコール系フィルムの本来の長さを基準に総延伸倍率が3倍~10倍、4倍~8倍又は5倍~7倍程度であってもよいが、これに制限されるものではない。上記で総延伸倍率は、延伸工程以外の膨潤工程などにおいても延伸を伴う場合には、各工程における延伸を含んだ累積延伸倍率を意味することができる。このような総延伸倍率は、配向性、偏光フィルムの加工性乃至は延伸切断可能性などを考慮して適正範囲に調節され得る。
【0078】
偏光フィルムの製造工程では、前記染色、架橋及び延伸に追加で前記工程を行う前に膨潤工程を行ってもよい。膨潤によりポリビニルアルコール系フィルム表面の汚染やブロッキング防止剤を洗浄することができ、また、それによって染色偏差などの不均一を減らし得る効果もある。
【0079】
膨潤工程では、通常的に、水、蒸溜水又は純水などが用いられ得る。当該処理液の主成分は、水であり、必要に応じて、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物又は界面活性剤などのような添加物や、アルコールなどが少量含まれていてもよい。
【0080】
膨潤過程での処理温度は、通常的に、20℃~45℃又は20℃~40℃程度であるが、これに制限されない。膨潤偏差は、染色偏差を誘発することができるので、このような膨潤偏差の発生ができるだけ抑制されるように工程変数が調節され得る。
【0081】
必要に応じて、膨潤工程でも適切な延伸が行われ得る。延伸倍率は、ポリビニルアルコール系フィルムの本来の長さを基準に6.5倍以下、1.2~6.5倍、2倍~4倍又は2倍~3倍程度であってもよい。膨潤過程での延伸は、膨潤工程後に行われる延伸工程での延伸を小さく制御することができ、フィルムの延伸破断が発生しないように制御することができる。
【0082】
偏光フィルムの製造過程では、金属イオン処理が行われ得る。このような処理は、例えば、金属塩を含有する水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することで行う。これを通じて、偏光子内に金属イオンを含有させ得るが、この過程で金属イオンの種類乃至は割合を調節することでもポリビニルアルコール系偏光フィルムの色調の調節が可能である。適用できる金属イオンとしては、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロム、アルミニウム、銅、マンガン又は鉄などの転移金属の金属イオンが例示され得、このうち適切な種類の選択により色調の調節が可能であり得る。
【0083】
偏光フィルムの製造過程では、染色、架橋及び延伸後に洗浄工程が進行され得る。このような洗浄工程は、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物溶液又は水により行われ得る。
【0084】
このような水による洗浄とヨウ化物溶液による洗浄は、組み合わされてもよく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール又はプロパノールなどの液体アルコールを配合した溶液が用いられてもよい。
【0085】
このような工程を経た後に乾燥工程を行って偏光フィルムを製造することができる。乾燥工程では、例えば、偏光フィルムに要求される水分率などを考慮して適切な温度で適切な時間の間行われ得、このような条件は特に制限されない。
【0086】
前記偏光フィルムは、一つの例示で、偏光板の高温耐久性の確保のために亜鉛イオンのような亜鉛成分を含むことができる。
【0087】
前記亜鉛成分の含量は、追加に調節され得る。例えば、前記偏光フィルムは、亜鉛成分(Zn)を0.1~10重量%範囲内で含むことができる。前記含量は、他の例示で、約0.2重量%以上程度、0.3重量%以上程度、0.4重量%以上程度又は0.5重量%以上程度であるか、9重量%以下程度、8重量%以下程度、7重量%以下程度、6重量%以下程度、5重量%以下程度、4重量%以下程度、3重量%以下程度、2重量%以下程度、1重量%以下程度、0.9重量%以下程度、0.8重量%以下程度、0.7重量%以下程度、0.6重量%以下程度、0.5重量%以下程度、0.4重量%以下程度又は0.3重量%以下程度であってもよい。
【0088】
上記のような形態で偏光フィルムに亜鉛成分を含ませることによって、高温で維持及び/又は駆動される場合にも優れた光学特性を維持し得る高温耐久性に優れた偏光板の提供が可能である。
【0089】
また、本出願は、前記偏光板の用途に関する。前記偏光板は、例えば、有機発光表示装置などに効果的に適用され得る。
図2は、前記有機発光表示装置を例示的に示した断面図である。
図2を参照すると、前記有機発光表示装置60は、有機発光表示パネル600と有機発光表示パネル600の一面に位置する偏光板10を含む。前記偏光板10の第1位相差層201及び第2位相差層202が偏光フィルム100に比べて有機発光表示パネル600に隣接するように配置され得る。
【0090】
前記有機発光表示パネルは、ベース基板、下部電極、有機発光層、上部電極及び封止基板などを含むことができる。前記下部電極及び上部電極のうち一つは、アノード(anode)であり、他の一つは、カソード(cathode)であってもよい。アノードは、正孔(hole)が注入される電極として仕事関数(work function)が高い導電物質で作られ得、カソードは、電子が注入される電極として仕事関数が低い導電物質で作られ得る。下部電極及び上部電極のうち少なくとも一つは、発光された光が外部に出ることができる透明導電物質で作られ得、例えば、ITO又はIZOであってもよい。有機発光層は、下部電極と上部電極に電圧が印加されたときに光を出すことができる有機物質を含むことができる。
【0091】
下部電極と有機発光層の間及び上部電極と有機発光層の間には、付帯層をさらに含むことができる。付帯層は、電子と正孔の均衡を取るための正孔伝達層(hole transporting layer)、正孔注入層(hole injecting layer)、電子注入層(electron injecting layer)及び電子伝達層(electron transporting layer)を含むことができるが、これに限定されるものではない。封止基板は、ガラス、金属及び/又は高分子から作られ得、下部電極、有機発光層及び上部電極を封止して外部から水分及び/又は酸素が流入することを防止することができる。
【0092】
偏光板10は、有機発光表示パネル600で光が出る側に配置され得る。例えば、ベース基板側から光が出る背面発光(bottom emission)構造の場合、ベース基板の外側に配置され得、封止基板側から光が出る前面発光(top emission)構造の場合、封止基板の外側に配置され得る。偏光板10は、外光が有機発光表示パネル600の電極及び配線などのように金属で作られた反射層により反射されて有機発光表示装置60の外側に出ることを防止することで、有機発光装置の表示特性を改善することができる。また、本出願の偏光板10は、上述したように、正面のみならず側面においても反射防止効果を示すことができるので、側面視認性を改善することができる。
【0093】
また、本出願は、前記有機発光装置を含むディスプレイ装置に関する。一つの例示で、前記ディスプレイ装置は、フレキシブル(flexible)ディスプレイ装置であってもよい。前記ディスプレイ装置に本出願の偏光板を含む有機発光装置が適用される場合に、前記装置などを構成する他の部品やその装置の構成方法は特に制限されず、前記有機発光装置が用いられる限り、該当分野において公知となっている任意の材料や方式が全て採用され得る。本出願の偏光板を含む有機発光装置が前記フレキシブルディスプレイ装置に適用されることで、全方位反射防止性能、フォールディング耐久性及び短波長に対する耐久性に優れたフレキシブルディスプレイの提供が可能である。
【発明の効果】
【0094】
本出願は、正面のみならず側面まで含む全方位反射防止性能に優れ、フォールディング(folding)耐久性及び短波長に対する耐久性に優れた薄型化された偏光板を提供することができる。また、本出願は、前記偏光板が適用された有機発光表示装置及びこれを含むディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】
図1は、本出願の偏光板を示す例示的な図である。
【
図2】
図2は、有機発光表示装置を示す例示的な図である。
【
図3】
図3は、実施例1の偏光板に対してフォールディングテストをした後の状態を示す。
【
図4】
図4は、比較例1の偏光板に対してフォールディングテストをした後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下、実施例及び比較例を通じて本出願の内容をより具体例に説明するが、本出願の範囲が下記提示された内容によって制限されるものではない。
【0097】
<製造例1>
厚さが約20μmであるポリビニルアルコール(poly(vinyl alcohol))フィルム(クラレ社、TS20)をヨウ素(I2)0.3重量%及びヨウ化カリウム(KI)3.0重量%を含む28℃の染色液に60秒間浸漬させて染色処理した。その後、染色されたポリビニルアルコールフィルムをホウ素1重量%及びヨウ化カリウム(KI)3重量%を含む35℃の水溶液(架橋液)に60秒間浸漬させて架橋処理した。以後、架橋されたポリビニルアルコールフィルムをロール間延伸方法を用いて5.4倍の延伸倍率で延伸した。延伸されたポリビニルアルコールフィルムを25℃のイオン交換水に60秒間浸漬させて洗浄し、窒酸亜鉛約3重量%を含む25℃の水溶液に30秒間浸漬させた。その後、ポリビニルアルコールフィルムを80℃の温度で60秒間乾燥させてポリビニルアルコール偏光フィルムを製造した。
【0098】
<実施例1>
フォールディング耐久性及び高温耐久性を評価するために、ハードコーティング層、偏光フィルム及び位相差層の積層体を順次に含む偏光板を製造した。
【0099】
前記偏光フィルムは、製造例1によって製造された偏光フィルムを適用した。前記製造された偏光フィルムの最終厚さは、約7μm程度であり、亜鉛成分は、約0.2~0.3重量%を含んだ。
【0100】
前記位相差層の積層体は、下記のように製造した。
【0101】
まず、逆分散特性を有し、550nm波長に対する面内位相差が141nm程度であって、QWP(Quarter wave plate)の役目をし得る重合性液晶化合物(Fuji社)の重合層(第1液晶位相差層)が一面に約2μmの厚さで形成されている実質的に等方性であるトリアセチルセルロースフィルム(厚さ約20μm)を準備した。前記フィルムの第1液晶位相差層上にバーコーティング方式で垂直配向膜をコーティングし、前記垂直配向膜上に重合性液晶化合物(Merck社)をコーティングし、その重合性液晶化合物を垂直配向した状態で重合させ、550nm波長に対する厚さ方向位相差が62nm程度であるpositive Cフィルム(第2液晶位相差層)を1μmの厚さで形成して、多層構造の位相差層を製造した。
【0102】
その後、前記多層構造の位相差層を光学用UV接着剤(厚さ:2μm)を用いて前記偏光フィルムの一面に付着した。このとき、前記位相差層の積層体は、トリアセチルセルロースフィルム上に第1及び第2液晶位相差層が形成されなかった面を偏光フィルムに付着し、前記第1液晶位相差層の遅相軸と偏光フィルムの吸収軸が成す角度のうち小さい角度が45度になるように配置した。
【0103】
同時に、前記偏光フィルムの他の一面にハードコーティング層の機能を有する、エポキシ化合物とオキセタン化合物を含むUV接着剤(LG CHEM社)を塗布し、一面に離型処理がなされているポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理面を前記UV接着剤の塗布層に付着した後、UV lampを通過させ、厚さが約3μm程度であり、鉛筆硬度2H程度であるハードコーティング層を形成した。前記ポリエチレンテレフタレートフィルムは、最終的に剥離した。
【0104】
その結果、ハードコーティング層/偏光フィルム/UV接着剤層/トリアセチルセルロースフィルム/第1液晶位相差層/第2液晶位相差層が順次積層された構造の偏光板を製造した。前記偏光板の最終厚さは、約35μmであった。
【0105】
<比較例1>
フォールディング耐久性及び高温耐久性を評価するために、シクロオレフィンフィルム、偏光フィルム、ハードコーティング層及び位相差層の積層体を順次に含む偏光板を準備した。
【0106】
前記偏光フィルムは、製造例1によって製造された偏光フィルムを適用した。前記製造された偏光フィルムの最終厚さは、約7μm程度であり、亜鉛成分は、約0.2~0.3重量%を含む。
【0107】
前記偏光フィルムの一面にハードコーティング処理されたシクロオレフィンポリマーフィルム(Zeon社、厚さ約29μm)を光学用UV接着剤(厚さ:2μm)を用いて付着し、前記偏光フィルムの他の一面にハードコーティング層をバーコーティング方式で厚さが約3μmになるようにコーティングした。
【0108】
一方、前記位相差層の積層体は、逆分散特性を有し、550nm波長に対する面内位相差が141nmであるQWP(Quarter wave plate)液晶(Fuji社)を550nm波長に対する厚さ方向位相差が62nmであるpositive Cフィルム(Merck社、厚さ約1μm)上に約2μmの厚さでコーティングして製造した。
【0109】
その後、前記位相差層の積層体の液晶層部分を一般的な光学用UV接着剤(厚さ:2μm)を用いて前記ハードコーティング層に付着した。
【0110】
その結果、シクロオレフィンポリマーフィルム/UV接着剤層/偏光フィルム/ハードコーティング層/UV接着剤層/位相差層の積層体(逆分散QWP/positive Cフィルム)が順次積層された構造の偏光板が製造された。前記偏光板の最終厚さは、約46μmであった。
【0111】
<評価例1.フォールディング(Folding)耐久性テスト>
【0112】
実施例及び比較例の偏光板をフォールディングテストチャンバ(Y.M.RTC社、YM-THC430S)に投入した後、フォールディング(Folding)耐久性を評価した。
【0113】
このとき、実施例及び比較例に対して、(1)25℃/20%で200,000回フォールディング、(2)60℃/20%で20,000回フォールディング、(3)60℃/90%で20,000回フォールディング、(4)-20℃/0%で20,000回フォールディングされるように条件を設定し、各条件別に分当たり60回の速度でフォールディングさせて耐久性をテストした。
【0114】
前記テストの終了後、偏光板のクラック(crack)、破れなどの外観不良有無を確認し、その結果を表1及び
図3及び4に示した。
【0115】
<評価例2.反射色相値変化の評価>
実施例及び比較例の偏光板を、偏光フィルムに比べて第1位相差層及び第2位相差層がOLEDパネルに一層近くなるように、OLEDパネル(550nm波長に対する反射率が55%)に付着した。その後、KONICA MINOLTA社のCM-2600d装備を用いて短波長テスト前/後の前記偏光板に対して色座標L、a、bを測定した。
【0116】
本明細書で短波長テストは、前記偏光板を25℃温度のチャンバ(Atlas社)に入れ、420nm波長の光を0.75~0.85W/m2の光量で50時間の間露光させるテストである。
【0117】
前記測定結果及び下記数式4によって計算された反射色相値の変化(ΔE*
ab)値を表2に示した。
【0118】
【0119】
【0120】
前記表1及び
図3のように、実施例1の偏光板は、25℃/20%で200,000回フォールディング(条件(1))した後にも偏光板にクラック(crack)が発生しない一方、表1及び
図4のように、比較例1の偏光板は、実施例1と同一の条件のフォールディングテスト後にクラック(crack)が発生したことを確認することができる。
【0121】
前記表2のように、反射色相値の変化(ΔE*
ab)も実施例1の偏光板が比較例1の偏光板対比小さいことを通じて、本出願の偏光板が優れた短波長耐久性を有することが確認できる。
【符号の説明】
【0122】
10:偏光板
100:偏光フィルム
201:第1位相差層
202:第2位相差層
500:ハードコーティング層
60:有機発光表示装置
600:有機発光表示パネル
70:クラック
【国際調査報告】