(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-24
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 51/04 20060101AFI20221017BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20221017BHJP
C08L 25/16 20060101ALI20221017BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221017BHJP
【FI】
C08L51/04
C08L33/10
C08L25/16
C08L101/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022511090
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2021006917
(87)【国際公開番号】W WO2022019471
(87)【国際公開日】2022-01-27
(31)【優先権主張番号】10-2020-0090490
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0069027
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】デウン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ワンレ・ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンミン・ジャン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC092
4J002BG064
4J002BN114
4J002BN121
4J002BN123
4J002EA036
4J002EC056
4J002EH046
4J002EH076
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD146
4J002FD156
4J002FD160
4J002FD180
4J002GC00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、A-1)平均粒径が50~150nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体0.5~45重量%と、A-2)平均粒径が151~600nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体20~80重量%と、B)重量平均分子量が60,000~180,000g/molであるα-メチルスチレン系共重合体10~45重量%とを含む、ベース樹脂100重量部と;C)重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体0.5~10重量部と;を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関する。
本発明によれば、衝撃強度、引張強度、曲げ強度、硬度などの機械的物性に優れながら、耐熱性及び加工性に優れるため、既存の押出機設備を用いてPVC樹脂を代替することができる効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A-1)平均粒径が50~150nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体0.5~45重量%と、
A-2)平均粒径が151~600nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体20~80重量%と、
B)重量平均分子量が60,000~180,000g/molであるα-メチルスチレン系共重合体10~45重量%とを含む、ベース樹脂100重量部と;
C)重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体0.5~10重量部と;を含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記A-1)グラフト共重合体及び前記A-2)グラフト共重合体は、独立して、アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物5~25重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記B)α-メチルスチレン系共重合体は、α-メチルスチレン系化合物50~80重量%、ビニルシアン化合物20~50重量%、及びα-メチルスチレンを除いた芳香族ビニル化合物0~10重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記C)超高分子量共重合体は、C-1)アクリル系共重合体、C-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、またはこれらの混合であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記C-1)アクリル系共重合体は、(i)架橋剤及びアルキルアクリレート単量体5~20重量%を含んでなるアルキルアクリレート系架橋体と、(ii)メチルメタクリレート単量体55~90重量%と、(iii)アルキルアクリレート単量体及びアルキルメタクリレート単量体からなる群から選択される1種以上5~40重量%とを含んでなることを特徴とする、請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記架橋剤は、アリールメタクリレート、トリメチロールプロパン、トリアクリレート及びジビニルベンゼンからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記架橋剤は、C-1)アクリル系共重合体の重合に使用された単量体総100重量部に対して0.01~0.3重量部であることを特徴とする、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物は、FT-IRで測定した総ゴム含量が23~43重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂組成物は、TAインスツルメント(TA Instruments)(米国デラウェア州、ニューキャッスル)のARESレオメータに取り付けられた伸長粘度装置(EVF)を用いて、180×10×7mmの試片を190℃で30秒間予熱した後、1秒後に測定した伸長粘度が530,000~760,000Pa・Sであることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256に準拠して測定した衝撃強度(23℃、1/4″)が23kgf・cm/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D638に準拠して測定した引張強度が230kgf/cm
2以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D790に準拠して測定した曲げ強度が330kgf/cm
2以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D648に準拠して、18.6kgfの荷重下で測定した耐熱度が67℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
A-1)平均粒径が50~150nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体0.5~45重量%と、A-2)平均粒径が151~600nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体20~80重量%と、B)重量平均分子量が60,000~180,000g/molであるα-メチルスチレン系共重合体10~45重量%とを含む、ベース樹脂100重量部と;C)重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体0.5~10重量部と;を混合した後、200~300℃下で10~100ファイの規格で押出混練機を用いてペレットを製造するステップを含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2020年07月21日付の韓国特許出願第10-2020-0090490号及びこれに基づいて2021年05月28日付で再出願された韓国特許出願第10-2021-0069027号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性に優れながら、既存の設備を用いてPVC樹脂を代替することができる加工性及び耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
塩化ビニル樹脂(Polyvinylchloride;以下、「PVC樹脂」という)は、汎用樹脂であって、安価であり、難燃性、耐化学性及び加工性に優れながら、製品の硬度の調節が容易であるため、建築用外装材、特に窓枠などに適用されている。
【0004】
しかし、PVC樹脂は、素材の特性上、再加工が難しく、製造及び廃棄時に有害物質が発生し、他の樹脂に比べて耐熱度が低いため、熱変形に脆弱であり、これにより、屋外用窓枠は主に白色で製造されている。
【0005】
最近、建築用資材に対する新素材及び高級な外観に対するニーズが増加するに伴い、有色の窓枠に対する需要が増大しているため、PVC樹脂で製造された窓枠に色を付けるために塗色を行ったり、シートを付着したりしたが、スクラッチ又は変色が発生するという問題がある。
【0006】
アクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体(以下、「ASA樹脂」という)は、耐候性、耐光性、耐化学性、耐熱性及び耐衝撃性に優れるため、電気・電子部品、建築資材、自動車、船舶、レジャー用品などの様々な分野に広範囲に適用されている。
【0007】
ASA樹脂は、PVC樹脂を代替できる樹脂として脚光を浴びているが、流れ性が高いため、加工性が不良であり、PVC樹脂を使用していた既存の押出機を取り替えなければならないため、これによるコストが発生するという問題がある。樹脂の種類が変更されると、押出機の形態も変更されなければならない。
【0008】
したがって、屋外の輻射熱による変形が防止されると共に、既存の設備を用いてPVC樹脂を代替して製造することができる加工性に優れたASA樹脂組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1444054号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性に優れながら、既存の押出機設備を用いてPVC樹脂を代替することができる加工性及び耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、A-1)平均粒径が50~150nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体0.5~45重量%と、A-2)平均粒径が151~600nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体20~80重量%と、B)重量平均分子量が60,000~180,000g/molであるα-メチルスチレン系共重合体10~45重量%とを含む、ベース樹脂100重量部と;C)重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体0.5~10重量部と;を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、A-1)平均粒径が50~150nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体0.5~45重量%と、A-2)平均粒径が151~600nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体20~80重量%と、B)重量平均分子量が60,000~180,000g/molであるα-メチルスチレン系共重合体10~45重量%とを含む、ベース樹脂100重量部と;C)重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体0.5~10重量部と;を混合した後、200~300℃下で10~100ファイの規格で押出混練機を用いてペレットを製造するステップを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性を維持しながら、流れ性を低下させ、耐熱度及び伸長粘度を向上させることで、建築用外装材のような加工性及び屋外の輻射熱による耐変形性が求められる分野に高品質で適用可能な熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を提供する効果がある。
【0016】
特に、PVC樹脂を代替しながらも、既存の押出機設備を用いることができるという経済的な効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を詳細に説明する。
【0018】
本発明者らは、平均粒径が異なるアクリレートゴム粒子を有する2種のアクリレート系ゴム-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と、α-メチルスチレン-ビニルシアン共重合体とを含むベース樹脂に、超高分子量共重合体を所定の含量比で添加してなる熱可塑性樹脂組成物の場合、機械的物性に優れながらも、耐熱性及び加工性に優れるためPVC樹脂を代替し、さらに、既存の押出機設備を用いて生産できるという効果を確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して、本発明を完成するようになった。
【0019】
本発明による熱可塑性樹脂組成物を詳細に説明すると、次の通りである。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、A-1)平均粒径が50~150nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体0.5~45重量%と、A-2)平均粒径が151~600nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体20~80重量%と、B)重量平均分子量が60,000~180,000g/molであるα-メチルスチレン系共重合体10~45重量%とを含む、ベース樹脂100重量部と;C)重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体0.5~10重量部と;を含むことを特徴とする。このような場合、衝撃強度、引張強度、曲げ強度、硬度などの機械的物性に優れながら、耐熱性及び加工性に優れるため既存の押出機設備を用いてPVC樹脂を代替することができるという効果がある。
【0021】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成別に詳細に説明する。
【0022】
A-1)アクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体
前記A-1)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、一例として、平均粒径が50~150nm、好ましくは60~140nmであり、より好ましくは70~140nm、さらに好ましくは80~140nmであり、この範囲内で、最終製造される熱可塑性樹脂組成物に、優れた衝撃強度、引張強度、曲げ強度及び硬度と共に、加工性を付与することができる。
【0023】
本発明において、平均粒径は、動的光散乱法(dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳細には、粒子測定器(製品名:Nicomp 380、製造社:PSS)を用いてガウス(Gaussian)モードでインテンシティ(intensity)値で測定する。このとき、具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを脱イオン水又は蒸留水で1,000~5,000倍希釈して、すなわち、インテンシティセットポイント(Intensity Setpoint)300kHzを大きく外れないように適切に希釈して、ガラス管(glass tube)に入れて準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/Intensity 300KHz/Intensity-weight Gaussian Analysisとし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、チャンネル幅(channel width)10μsecとして測定することができる。
【0024】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として、ベース樹脂の総重量に対して0.5~45重量%、好ましくは1~35重量%、より好ましくは10~25重量%であり、この範囲内で、機械的強度と伸長粘度とのバランスに優れるという効果がある。
【0025】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として、アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物5~25重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度及び伸長粘度に優れるという効果がある。
【0026】
好ましい例として、前記A-1)グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度及び伸長粘度に優れるという効果がある。
【0027】
本発明において、ある化合物を含んでなる重合体とは、その化合物を含んで重合された重合体を意味するもので、重合された重合体内の単位体がその化合物に由来する。
【0028】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合に、引張強度、衝撃強度及び曲げ強度などの機械的強度に優れるという効果がある。
【0029】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0030】
本発明において、アクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が2~8個であるアルキルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、アルキル基の炭素数が4~8個であるアルキルアクリレートであり、より好ましくは、ブチルアクリレート又はエチルヘキシルアクリレートである。
【0031】
本発明において、芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びp-tert-ブチルスチレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはスチレンである。
【0032】
本発明において、ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0033】
A-2)アクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体
前記A-2)グラフト共重合体のアクリレートゴムは、一例として、平均粒径が151~600nmであってもよく、好ましくは200~500nmであってもよく、より好ましくは300~450nmであり、さらに好ましくは350~430nmであり、この範囲内で、最終製造される熱可塑性樹脂組成物に、優れた衝撃強度、引張強度、曲げ強度及び硬度と共に、加工性を付与することができる。
【0034】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として、ベース樹脂の総重量に対して20~80重量%、好ましくは30~75重量%、より好ましくは40~70重量%であってもよく、この範囲内で、機械的強度と伸長粘度とのバランスに優れるという効果がある。
【0035】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として、アクリレートゴム40~60重量%、芳香族ビニル化合物25~45重量%及びビニルシアン化合物5~25重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度及び伸長粘度に優れるという効果がある。
【0036】
好ましい例として、前記A-2)グラフト共重合体は、アクリレートゴム45~55重量%、芳香族ビニル化合物30~40重量%及びビニルシアン化合物10~20重量%を含んでなってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度及び伸長粘度に優れるという効果がある。
【0037】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合に、引張強度、衝撃強度及び曲げ強度などの機械的強度に優れるという効果がある。
【0038】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0039】
前記A-1)グラフト共重合体は、好ましくは、前記A-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれてもよく、より好ましくは、A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体の重量比は1:3~1:5、より好ましくは1:3.3~1:4.7であってもよく、この範囲内で、機械的物性と伸長粘度とのバランスに優れるという効果がある。
【0040】
本発明において、AとBの重量比は、A:Bの重量比を意味する。
【0041】
前記A-2)グラフト共重合体に含まれたアクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類は、本発明のA-1)グラフト共重合体に含まれるアクリレート、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類と同じ範疇内のものであってもよい。
【0042】
B)α-メチルスチレン系共重合体
前記B)α-メチルスチレン系共重合体は、一例として、ベース樹脂の総重量に対して10~45重量%、好ましくは15~40重量%、より好ましくは20~35重量%であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度、硬度などの機械的物性に優れながら、耐熱性及び加工性に優れるため既存の押出機設備を用いてPVC樹脂を代替することができるという効果がある。
【0043】
前記B)α-メチルスチレン系共重合体は、耐熱性共重合体であってもよく、この場合に、最終製造される熱可塑性樹脂組成物に、機械的物性を維持しながら耐熱性を付与することができる。
【0044】
本発明において、耐熱性共重合体は、本発明の属する技術分野で一般的に耐熱性樹脂と称される重合体であれば、特に制限されないが、具体的には、スチレン単量体に比べてガラス転移温度(重合体のときを基準とする)が高い単量体、すなわち、耐熱性単量体を含んでなる重合体を意味することができる。
【0045】
前記B)α-メチルスチレン系共重合体は、一例として、α-メチルスチレン系単量体とビニルシアン化合物の共重合体、またはα-メチルスチレン系単量体、ビニルシアン化合物及びα-メチルスチレンを除いた芳香族ビニル化合物の共重合体であってもよく、好ましくは、α-メチルスチレン、アクリロニトリル及びスチレンの共重合体であってもよい。
【0046】
具体的には、前記B)α-メチルスチレン系共重合体は、α-メチルスチレン系単量体50~80重量%;ビニルシアン化合物20~50重量%;及びα-メチルスチレンを除いた芳香族ビニル化合物0~10重量%、または0重量%超~10重量%以下を含んでなる共重合体であってもよく、この場合、衝撃強度が維持されながら、耐熱度に優れることで屋外の輻射熱によって分解されないため、変形が防止されるという効果がある。
【0047】
好ましくは、前記B)α-メチルスチレン系共重合体は、α-メチルスチレン50~80重量%;アクリロニトリル20~50重量%;及びスチレン0~10重量%、または0重量%超~10重量%以下を含んでなる共重合体であってもよく、この場合、衝撃強度が維持されながら、耐熱度に優れることで屋外の輻射熱によって分解されないため、変形が防止されるという効果がある。
【0048】
前記α-メチルスチレン系単量体は、一例として、α-メチルスチレン及びその誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、耐熱性に優れるという効果がある。前記α-メチルスチレンの誘導体は、好ましくは、その水素のうち1または2以上が炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン基などの置換基で置換された化合物であってもよく、より好ましくは、その芳香族環(aromatic ring)内の水素のうち1または2以上が炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン基などの置換基で置換された化合物であってもよい。
【0049】
前記B)α-メチルスチレン系共重合体は、一例として、重量平均分子量が60,000~180,000g/molであることが好ましく、より好ましくは80,000~120,000g/molであり、この範囲内で、衝撃強度が維持されながら、耐熱度に優れるという効果がある。
【0050】
本発明において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を通じて、標準PS(ポリスチレン標準(standard polystyrene))試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒はTHF、カラム温度は40℃、流速は0.3ml/min、試料の濃度は20mg/ml、注入量は5μlとし、カラムモデルは、1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、測定機器はAgilent 1200 series system、屈折率検出器(Refractive index detector):Agilent G1362 RID、RI温度は35℃、データの処理はAgilent ChemStation S/W、及び試験方法(Mn、Mw及びPDI)は、OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0051】
前記B)α-メチルスチレン系共重合体は、ガラス転移温度が110~150℃であることが好ましく、より好ましくは110~140℃であり、この範囲内で、耐熱度などに優れるという効果がある。
【0052】
本発明において、ガラス転移温度は、ASTM D 3418に準拠して、TA Instruments Q100 DSC(示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry))を用いて10℃/min.の昇温速度で測定することができる。
【0053】
前記B)α-メチルスチレン系共重合体は、一例として、溶液重合または塊状重合で製造されてもよく、この場合、耐熱性及び衝撃強度などに優れるという効果がある。
【0054】
前記溶液重合及び塊状重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる溶液重合及び塊状重合方法による場合、特に制限されない。
【0055】
C)重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体
前記C)超高分子量共重合体は、一例として、ベース樹脂100重量部に対して0.5~10重量部、好ましくは1~7重量部、より好ましくは1.5~5重量部であってもよく、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度、硬度などの機械的物性に優れながら、耐熱性及び加工性に優れるため既存の押出機設備を用いてPVC樹脂を代替することができるという効果がある。
【0056】
本発明において、超高分子量は、重量平均分子量を基準として1,000,000~12,000,000g/molの重量平均分子量として定義することができ、したがって、重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体は、重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである共重合体と同じ意味である。
【0057】
前記C)超高分子量共重合体は、一例として、C-1)アクリル系共重合体、C-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体、またはこれらの混合であってもよく、この場合に、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性を維持しながら、流れ性を低下させることで加工性に優れるという効果がある。
【0058】
前記C-1)アクリル系共重合体は、一例として、(i)架橋剤及びアルキルアクリレート単量体5~20重量%を含んでなるアルキルアクリレート系架橋体と;(ii)メチルメタクリレート単量体55~90重量%と;(iii)アルキルアクリレート単量体及びアルキルメタクリレート単量体からなる群から選択される1種以上5~40重量%と;を含んでなるものであってもよく、この場合、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性を維持しながら、流れ性を低下させることで加工性に優れるという効果がある。
【0059】
前記C-1)アクリル系共重合体は、好ましくは、(i)架橋剤及びアルキルアクリレート単量体10~17重量%を含んでなるアルキルアクリレート系架橋体と;(ii)メチルメタクリレート単量体60~80重量%と;(iii)アルキルアクリレート単量体及びアルキルメタクリレート単量体からなる群から選択される1種以上10~30重量%と;を含んでなるものであってもよく、この場合、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性を維持しながら、流れ性を低下させることで加工性に優れるという効果がある。
【0060】
前記架橋剤は、一例として、アリールメタクリレート、トリメチロールプロパン、トリアクリレート及びジビニルベンゼンからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0061】
前記架橋剤は、一例として、C-1)アクリル系共重合体の重合に使用された単量体総100重量部に対して0.01~0.3重量部であってもよく、この範囲内で、伸長粘度が向上して加工性に優れるという効果がある。
【0062】
前記アルキルアクリレート系架橋体は、一例として、膨潤指数が3~10、好ましくは4~9であってもよく、この範囲内で、伸長粘度が向上して加工性に優れるという効果がある。
【0063】
本発明において、膨潤指数は、アルキルアクリレート系架橋体粉末1gにアセトンを加えた後、常温で24時間撹拌した後に遠心分離して、アセトンに溶けていない部分のみを採取した後、乾燥前/後の重量を測定して、下記の式で膨潤指数を測定することができる。
【0064】
*膨潤指数=遠心分離後、乾燥前の重量/遠心分離後、乾燥後の重量
【0065】
前記アルキルアクリレート単量体は、一例として、アルキル基の炭素数が1~18である線状、分岐状または環状であってもよく、好ましくは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及びシクロヘキシルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0066】
前記アルキルメタクリレート単量体は、一例として、アルキル基の炭素数が2~18である線状または環状であってもよく、好ましくは、n-ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0067】
前記C-1)アクリル系共重合体は、一例として、重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/mol、好ましくは1,000,000~9,000,000g/mol、より好ましくは1,000,000~6,000,000g/molであってもよく、この範囲内で、機械的物性に優れながらも、流れ性が向上するという効果がある。
【0068】
前記C-1)アクリル系共重合体は、一例として、乳化重合、懸濁重合、または溶液重合で製造されてもよく、好ましくは乳化重合であってもよく、この場合、加工性及び衝撃強度などに優れるという効果がある。
【0069】
前記乳化重合、懸濁重合、及び溶液重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合、懸濁重合、溶液重合による場合、特に制限されない。
【0070】
前記C-1)アクリル系共重合体の製造方法は、好ましくは、(i)架橋剤とアルキルアクリレート系単量体5~20重量%から、膨潤指数が3~10であるアルキルアクリレート系架橋体を製造するステップと;前記(i)アルキルアクリレート系架橋体を製造するステップの前又は後に、(ii)メチルメタクリレート単量体27.5~45重量%、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキルアクリレート単量体及びアルキル基の炭素数が2~18であるアルキルメタクリレート単量体からなる群から選択される1種以上2.5~20重量%、乳化剤、架橋剤、重合開始剤及び酸化還元触媒を含んで乳化重合して重合体を製造するステップと;前記(i)ステップで製造されたアルキルアクリレート系架橋体及び前記(ii)ステップで製造された重合体に、メチルメタクリレート単量体27.5~45重量%、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキルアクリレート単量体及びアルキル基の炭素数が2~18であるアルキルメタクリレート単量体からなる群から選択される1種以上2.5~20重量%、乳化剤、架橋剤、重合開始剤及び酸化還元触媒をさらに含めて乳化重合を終了するステップと;を含むことができ、この場合に、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性を維持しながら、流れ性を低下させることで加工性に優れるという効果がある。
【0071】
前記(i)と前記(ii)は、一例として、別々の場所または反応器で製造されてもよい。
【0072】
前記乳化剤は、一例として、C-1)アクリル系共重合体の重合に使用された単量体総100重量部に対して0.5~5重量部であってもよい。
【0073】
前記乳化剤の種類としては、特に制限されないが、脂肪族エステル(aliphatic ester)、アルキルベンゼンスルホネート(alkyl benzene sulfonate)、アルキルホスフェート塩(alkyl phosphate salt)及びジアルキルスルホサクシネート(dialkylsulfosuccinate)からなるアニオン性乳化剤、およびポリオキシエチレンアルキルエーテル(polyoxyethylene alkyl ether)及びアルキルアミンエステル(alkylamine esters)からなる非イオン性乳化剤からなる群から選択される1種以上を使用することができる。
【0074】
前記架橋剤は、一例として、C-1)アクリル系共重合体の重合に使用された単量体総100重量部に対して0.01~0.3重量部であってもよい。
【0075】
前記架橋剤は、一例として、アリールメタクリレート、トリメチロールプロパン、トリアクリレート及びジビニルベンゼンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリレート系化合物である。
【0076】
前記重合開始剤は、一例として、C-1)アクリル系共重合体の重合に使用された単量体総100重量部に対して0.0005~0.005重量部であってもよい。
【0077】
前記重合開始剤は、一例として、水溶性開始剤、脂溶性開始剤及びレドックス開始剤からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0078】
前記水溶性開始剤は、好ましくは、過硫酸カリウム(potassium persulfate)、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)、及び過硫酸ナトリウム(sodium persulfate)からなる群から選択された1種以上である。
【0079】
前記脂溶性開始剤は、好ましくは、t-ブチルヒドロペルオキシド(t-butyl hydroperoxide)、クメンヒドロペルオキシド(cumene hydroperoxide)、ベンゾイルペルオキシド(benzoylpoeroxide)及びラウロイルペルオキシド(lauroyl peroxide)からなる群から選択された1種以上である。
【0080】
前記酸化還元触媒は、一例として、C-1)アクリル系共重合体の重合に使用された単量体総100重量部に対して0.01~0.1重量部であってもよい。
【0081】
前記酸化還元触媒は、一例として、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ジナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、硫酸第一鉄、エチレンナトリウムジアミンテトラアセテート及び第二硫酸銅からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0082】
前記乳化重合によって製造されたラテックス状態のアクリル系共重合体は、一例として、凝集、脱水及び乾燥ステップを通じて粉末状態のアクリル系共重合体として製造することができる。
【0083】
前記C-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、芳香族ビニル化合物60~80重量%及びビニルシアン化合物20~40重量%を含んでなり、より好ましくは、芳香族ビニル化合物65~75重量%及びビニルシアン化合物25~35重量%を含んでなり、この範囲内で、衝撃強度、引張強度、曲げ強度などの機械的物性を維持しながら、流れ性を低下させることで加工性に優れるという効果がある。
【0084】
前記C-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/mol、好ましくは1,000,000~10,000,000g/mol、より好ましくは1,000,000~7,000,000g/mol、さらに好ましくは1,000,000~6,000,000g/molであり、この範囲内で、加工性に優れるという効果がある。
【0085】
前記C-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくはスチレン-アクリロニトリル共重合体であってもよく、この場合、加工性に優れるという効果がある。
【0086】
前記C-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、乳化重合、塊状重合または懸濁重合により製造されてもよく、好ましくは乳化重合であってもよく、この場合、耐熱性及び流動性などに優れるという効果がある。
【0087】
前記芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を乳化重合する際に、通常の乳化重合時に使用される乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤、イオン交換水などの成分を添加することができ、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合方法による場合、特に制限されない。
【0088】
前記C-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体に含まれた芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類は、本発明のA-1)グラフト共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類と同じ範疇内のものであってもよい。
【0089】
添加剤
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、一例として、酸化防止剤、紫外線安定剤、UV安定剤、蛍光増白剤、鎖延長剤、離型剤、顔料、染料、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、発煙抑制剤、無機充填剤、ガラス繊維、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことができ、前記添加剤は、一例として、ベース樹脂100重量部に対して、それぞれ、0.01~5重量部、好ましくは0.05~3重量部、より好ましくは0.1~2重量部であってもよく、この場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に具現されるという効果がある。
【0090】
熱可塑性樹脂組成物
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、総ゴム含量が25~43重量%であってもよく、より好ましくは27~40重量%、さらに好ましくは30~35重量%であってもよく、この範囲内で、機械的物性及び加工性に優れるという効果がある。
【0091】
本発明において、ゴムの含量はFT-IRを用いて測定する。
【0092】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、TAインスツルメント(TA Instruments)(米国デラウェア州、ニューキャッスル)のARESレオメータに取り付けられた伸長粘度装置(EVF)を用いて、180×10×7mmの試片を190℃で30秒間予熱した後、1秒後に測定した伸長粘度が530,000~760,000Pa・S、好ましくは540,000~750,000Pa・S、より好ましくは550,000~740,000Pa・S、さらに好ましくは570,000~730,000Pa・S、より一層好ましくは600,000~720,000Pa・Sであってもよく、この範囲内で、加工性に優れながらも、全ての物性バランスに優れ、既存のPVC設備を用いて押出が可能であるという効果がある。
【0093】
本発明において、伸長粘度は、伸長応力によって流体が変形するときの流体の抵抗度を指し、伸長粘度が高いほど溶融樹脂の流れ性が低いため、押出加工性に優れる。
【0094】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D256に準拠して測定した衝撃強度(23℃、1/4″)が、23kgf・cm/cm以上、好ましくは25kgf・cm/cm以上、より好ましくは25~42kgf・cm/cm、さらに好ましくは27~42kgf・cm/cmであってもよく、この範囲内で、全ての物性バランスに優れるという効果がある。
【0095】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D638に準拠して測定した引張強度が、230kgf/cm2以上、好ましくは250kgf/cm2以上、より好ましくは250~400kgf/cm2、さらに好ましくは270~380kgf/cm2、より一層好ましくは300~370kgf/cm2であってもよく、この範囲内で、全ての物性バランスに優れるという効果がある。
【0096】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D790に準拠して測定した曲げ強度が、330kgf/cm2以上、好ましくは350kgf/cm2以上、より好ましくは350~700kgf/cm2、さらに好ましくは400~680kgf/cm2、より一層好ましくは430~650kgf/cm2であってもよく、この範囲内で、全ての物性バランスに優れるという効果がある。
【0097】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D785に準拠して測定した硬度が、38以上、好ましくは40以上、より好ましくは40~85、さらに好ましくは45~80、より一層好ましくは50~75であってもよく、この範囲内で、全ての物性バランスに優れるという効果がある。
【0098】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、ASTM D648に準拠して測定した耐熱度が、67℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは70~85℃、さらに好ましくは75~82℃であってもよく、この場合に、全ての物性バランスに優れるという効果がある。
【0099】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、Tダイ(T-Die)押出機を用いて、200℃で成形圧力100kgf/cm2の条件下で3Tのシートとして製造した表面を目視で観察し、表面が均一であり、シートの収縮がなく、外形が一定に維持されるという効果がある。
【0100】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、A-1)平均粒径が50~150nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体0.5~45重量%と、A-2)平均粒径が151~600nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体20~80重量%と、B)重量平均分子量が60,000~180,000g/molであるα-メチルスチレン系共重合体10~45重量%とを含む、ベース樹脂100重量部と;C)重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体0.5~10重量部と;を混合した後、200~300℃下で10~100ファイの規格で押出混練機を用いてペレットを製造するステップを含むことを特徴とする。
【0101】
このような場合、衝撃強度、引張強度、曲げ強度、硬度などの機械的物性に優れながら、耐熱性及び既存の押出機設備を用いてPVC樹脂を代替することができる加工性に優れるという効果がある。
【0102】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前述した熱可塑性樹脂組成物の全ての技術的特徴を共有する。したがって、重複部分についての説明は省略する。
【0103】
前記押出混練機を用いてペレットを製造するステップは、好ましくは、200~300℃下で25~75ファイの規格で行うものであってもよく、より好ましくは、210~260℃下で30~75ファイの規格で行うものであってもよく、この範囲内で、安定した押出が可能であり、混練効果に優れる。このとき、温度は、シリンダーに設定された温度であり、ファイは外径(単位:mm)を意味する。
【0104】
前記押出混練機は、本発明の属する技術分野で通常用いられる押出混練機であれば、特に制限されず、好ましくは二軸押出混練機であってもよい。
【0105】
成形品
本発明の成形品は、一例として、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とし、この場合、衝撃強度、引張強度、曲げ強度、硬度などの機械的物性に優れながら、耐熱性及び既存の設備を用いてPVC樹脂を代替することができる加工性に優れるという効果がある。
【0106】
前記成形品は、好ましくは建築用外装材であってもよく、具体的には、窓枠、ドア、屋根またはフェンスであってもよく、この場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物によって、市場で求められる品質以上の高品質で提供可能であるという利点がある。
【0107】
前記成形品の製造方法は、A-1)平均粒径が50~150nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体0.5~45重量%と、A-2)平均粒径が151~600nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体20~80重量%と、B)重量平均分子量が60,000~180,000g/molであるα-メチルスチレン系共重合体10~45重量%とを含む、ベース樹脂100重量部と;C)重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体0.5~10重量部と;を混合した後、200~300℃の条件下で混練及び押出してペレットに製造するステップと;製造されたペレットを成形温度180~300℃でシート成形又は射出成形して成形品を製造するステップとを含むことを特徴とする。このような場合、加工性に優れた熱可塑性樹脂製品を製造できるという利点がある。
【0108】
前記成形品を製造するステップは、好ましい例として、製造されたペレットを成形温度180~300℃の条件下でシート成形することを含むことができ、より好ましい例として、成形温度180~300℃及び成形圧力50~300kgf/cm2の条件下でシート成形することを含むことができ、このような場合、加工性に優れ、表面が均一なシート成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0109】
前記成形温度は、好ましくは190~230℃、より好ましくは200~220℃であり、この範囲内で、加工性に優れ、表面が均一なシート成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0110】
前記成形圧力は、好ましくは50~200kgf/cm2、より好ましくは80~150kgf/cm2であり、この範囲内で、衝撃強度の高いシート成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0111】
他の好ましい例として、前記成形品を製造するステップは、製造されたペレットを、射出温度200~260℃、射出圧力60~100bar及び保圧25~55barの条件下で射出成形することを含むことができ、このような場合、衝撃強度などの機械的物性に優れた射出成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0112】
前記射出温度は、好ましくは200~230℃、より好ましくは210~220℃であり、この範囲内で、衝撃強度などの機械的物性に優れた射出成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0113】
前記射出圧力は、好ましくは70~90bar、より好ましくは75~85barであり、この範囲内で、衝撃強度などの機械的物性に優れた射出成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0114】
前記保圧は、好ましくは30~50barであってもよく、より好ましくは35~50barであり、この範囲内で、衝撃強度などの機械的物性に優れた射出成形品を容易に製造できるという利点がある。
【0115】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0116】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0117】
[実施例]
下記の実施例及び比較例で用いられた物質は、次の通りである。
【0118】
*A-1)グラフト共重合体:アクリレートゴムの平均粒径が120nmであるブチルアクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ブチルアクリレート50重量%、スチレン35重量%及びアクリロニトリル15重量%)
【0119】
*A-2)グラフト共重合体:アクリレートゴムの平均粒径が400nmであるブチルアクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ブチルアクリレート50重量%、スチレン35重量%及びアクリロニトリル15重量%)
【0120】
*B)α-メチルスチレン系共重合体:耐熱SAN樹脂(α-メチルスチレン65重量%、アクリロニトリル30重量%及びスチレン5重量%、重量平均分子量90,000g/mol)
【0121】
*C-1)超高分子量アクリル系共重合体:重量平均分子量1,000,000g/molのアクリル系共重合体(ブチルアクリレート15重量%及びメチルメタクリレート85重量%)
【0122】
*C-2)超高分子量SAN共重合体:重量平均分子量5,000,000g/molのスチレン-アクリロニトリル共重合体(Zibo Huaxing Addtivies社のZB-869)
【0123】
実施例1~11及び比較例1~9
下記表1及び表2に記載された成分及び含量を二軸押出機に投入し、シリンダー温度230℃で混練及び押出してペレットを製造した。製造されたペレットで、成形温度200℃及び成形圧力100kgf/cm2の条件下でTダイ(T-Die)押出機を用いて3Tであるシートを製造し、成形性を評価した。さらに、製造されたペレットを射出機のバレル温度220℃で射出して物性測定用試片を作製し、これを用いて衝撃強度、引張強度、曲げ強度、硬度、耐熱度及び伸長粘度を測定した。
【0124】
[試験例]
前記実施例1~11及び比較例1~9で製造された試片の特性を下記の方法により測定し、その結果を下記の表1及び表2に示した。
【0125】
測定方法
*ゴム含量(重量%):Agilent Cary 660 FT-IR(Agilent社)を用いて、熱可塑性樹脂組成物ペレットのゴム含量を測定した。
【0126】
*衝撃強度(kgf・cm/cm):ASTM D256に準拠して、厚さ1/4″で23℃で測定した。
【0127】
*引張強度(kgf/cm2):ASTM D638に準拠して測定した。
【0128】
*曲げ強度(kgf/cm2):ASTM D790に準拠して測定した。
【0129】
*硬度:ASTM D785に準拠して測定した。
【0130】
*耐熱度(℃):ASTM D648に準拠して18.6kgfの荷重下で測定した。
【0131】
*伸長粘度(Pa・S):TAインスツルメント(TA Instruments)のARESレオメータに取り付けられた伸長粘度装置(EVF)を用いて、180×10×7mmの試片を190℃で30秒間予熱した後、1秒後に伸長粘度を測定した。
【0132】
*シート成形性:Tダイ(T-Die)押出機を用いて、成形温度200℃及び成形圧力100kgf/cm2の条件下で3Tのシートを製造し、それの表面均一性及び外形(収縮や変形の発生の有無)を目視で判別して、下記のように評価した。
○:表面均一性及び外形がいずれも優れる
△:表面均一性または外形が優れる
×:表面均一性及び外形がいずれも劣悪である
【0133】
【0134】
【表2】
(前記表1及び表2において、A-1)、A-2)及びB)の各含量は、これらの総重量を基準とした重量%であり、C)の含量は、前記A-1)、A-2)及びB)の総重量100重量部を基準とした重量部である。)
【0135】
前記表1及び表2に示したように、本発明に係る実施例1~11は、比較例1~9と比較して、衝撃強度、引張強度、曲げ強度及び硬度が維持されながら、耐熱度及び伸長粘度に優れ、シート成形性が改善されて既存のPVC設備を用いて押出が可能であることが確認できた。特に、実施例1及び6~11は、伸長粘度、機械的強度及び耐熱性と、シート成形性の全てが優れていた。
【0136】
具体的には、C-1)超高分子量アクリル系共重合体を本発明の範囲未満で含む比較例1は、伸長粘度が低く、シート成形性が劣悪であり、C-1)アクリル系共重合体を過量で含む比較例2は、伸長粘度が大幅に高くなることでシート成形性が劣悪であった。
【0137】
また、B)共重合体が過量で含まれ、熱可塑性樹脂組成物内に総ゴム含量が少量である比較例3は、衝撃強度及び伸長粘度が低くなり、シート成形性が不良であり、B)共重合体が少量で含まれ、熱可塑性樹脂組成物内に総ゴム含量が過量である比較例4及び5は、耐熱度及び伸長粘度が低くなり、シート成形性が不良であった。
【0138】
また、A-1)樹脂を含まない比較例6は、耐熱度が低下し、A-1)樹脂とA-2)樹脂の含量範囲が本発明を外れた比較例7は、伸長粘度及び衝撃強度が著しく低下した。
【0139】
また、C-2)超高分子量SAN系樹脂を本発明の範囲未満で含む比較例8は、伸長粘度が極めて低くなり、シート成形性が不良であり、C-2)超高分子量SAN系樹脂を本発明の範囲を超えて含む比較例9は、伸長粘度が非常に高くなり、シート成形性がむしろ不良であった。
【0140】
結論として、本発明に係る、平均粒径が50~150nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体と;平均粒径が151~600nmであるアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体と;重量平均分子量が60,000~180,000g/molであるα-メチルスチレン系共重合体と;を含むベース樹脂100重量部に、重量平均分子量が1,000,000~12,000,000g/molである超高分子量共重合体を所定の含量で添加してなる熱可塑性樹脂組成物は、機械的物性が維持されながら、耐熱性及び伸長粘度に優れ、シート成形性が改善されて既存の設備を用いてPVC樹脂を代替可能であることが確認できた。
【国際調査報告】