(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(54)【発明の名称】溶融フィラメント製造法による3D物体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20221021BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221021BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221021BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20221021BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20221021BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20221021BHJP
B29C 64/259 20170101ALI20221021BHJP
【FI】
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/321
B33Y40/00
B29C64/295
B29C64/259
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022512756
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020072914
(87)【国際公開番号】W WO2021037593
(87)【国際公開日】2021-03-04
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】アルプター,レネ
(72)【発明者】
【氏名】ザイラー,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】シュタウト,トルシュテン マルティン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA31
4F213AB11
4F213AB25
4F213AC02
4F213WA25
4F213WB01
4F213WK03
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL74
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのフィラメントと3次元(3D)押出プリンタを採用する溶融フィラメント製造法によって3次元(3D)物体を製造する方法に関する。前記方法では、フィラメントはまず冷却装置に送られ、そこでフィラメントは20℃以下の温度に冷却される。その後、冷却されたフィラメントは、3D押出プリンタのプリントヘッド内に設置された加熱装置に送られ、そこで冷却されたフィラメントは、フィラメントを少なくとも部分的に溶融するのに十分に高い温度に加熱される。加熱されたフィラメントは、押出ストランドを得るために3D押出プリンタのプリントヘッドのノズルを通って押し出され、該押出ストランドは次に、それぞれの3D物体を1層ずつ形成するために使用される。本発明は、このような溶融フィラメント製造法又は3D印刷技術でそれぞれ使用される装置にさらに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフィラメントと3次元(3D)押出プリンタを採用する溶融フィラメント製造法によって3次元(3D)物体を製造する方法であって、以下の工程a)~e):
a) 前記少なくとも1つのフィラメントを温度T
1≦20℃に冷却するために、前記少なくとも1つのフィラメントを冷却装置に供給する工程と、
b) 工程a)で得られた冷却された前記少なくとも1つのフィラメントを、前記3D押出プリンタのプリントヘッド内に設置された加熱装置に送る工程と、
c) 前記加熱装置内で冷却された前記少なくとも1つのフィラメントを温度T
2まで加熱する工程であって、前記温度T
2は、前記少なくとも1つのフィラメントを少なくとも部分的に溶融するのに十分な高さである、工程と、
d) 少なくとも1つの押出ストランドを得るために、工程c)で得られた加熱された前記少なくとも1つのフィラメントを、前記3D押出プリンタのプリントヘッドのノズルを通して押し出す工程と、
e) 工程d)で得られた前記少なくとも1つの押出ストランドから、前記3D物体を1層ずつ形成する、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフィラメントは、
i) 少なくとも1つのポリマー、好ましくは少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含むフィラメント、
ii) 少なくとも1つの無機粉末及び少なくとも1つのポリマーを含むフィラメントであって、好ましくは、前記無機粉末は、金属、金属合金及びセラミック材料からなる群から選択される少なくとも1つの無機材料の粉末である、フィラメント、
iii) 少なくとも1つのシェル材料(SM)の層でコーティングされた少なくとも1つのコア材料(CM)を含むフィラメント、又は
iv) 少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)と少なくとも1つのポリマーを含むフィラメントであって、好ましくは、前記繊維状充填剤(FF)は少なくとも1つの炭素繊維である、フィラメント、
から選択され、
好ましくは、前記少なくとも1つのフィラメントは、少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)と少なくとも1つのポリマーを含むフィラメントから選択され、好ましくは、前記繊維状充填剤(FF)は、少なくとも1つの炭素繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフィラメントは、シェル材料(SM)の層でコーティングされたコア材料(CM)を含むフィラメントであって、
前記コア材料(CM)は、成分a)~c)
a) 少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)と、
b) 少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP1)と、
c) 任意に、少なくとも1つの添加剤(A)と、
を含み、
前記シェル材料(SM)は、成分d)~f)
d) 少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP2)と、
e) 任意に少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)と、
f) 任意に少なくとも1つの添加剤(A)と、
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)は、合成繊維及び無機繊維から選択され、好ましくは、アラミド繊維、ガラス繊維及び炭素繊維から選択され、より好ましくは、E、A、又はCガラスで構成されるガラス繊維及び炭素繊維から選択され、最も好ましくは、炭素繊維から選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフィラメントは、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンを含み、好ましくは、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンは、以下の成分:
(a) 1つ以上の有機ジイソシアネート、
(b) イソシアネートに対して反応性のある1つ以上の化合物、
(c) 好ましくは60g/mol~499g/molの分子量を有する1つ以上の鎖延長剤、及び
(d) 任意に、少なくとも1つの触媒、及び/又は
(e) 任意に、少なくとも1つの補助剤、及び/又は
(f) 任意に、少なくとも1つの添加剤、
を重合することによって取得可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
i) 前記1つ以上の有機ジイソシアネート(成分a))は、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)、及びジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)から選択され、及び/又は
ii) 前記イソシアネートに対して反応性のある1つ以上の化合物(成分b))は、多価アルコール、ポリエステルオール、ポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオールから選択され、及び/又は
iii) 前記1つ以上の鎖延長剤(化合物c))は、1,4-ブタンジオール、1,2-エチレンジオール及び1,6-ヘキサンジオールから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
i) 前記少なくとも1つのフィラメントは、工程a)で、-50℃~20℃の範囲、好ましくは-30℃~15℃の範囲、より好ましくは-20℃~10℃の範囲の温度T
1まで冷却され、
ii) 工程a)で採用される前記冷却装置は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記3D押出プリンタのハウジングの内部に配置され,
iii) 前記冷却装置は、少なくとも1つの換気ユニット、少なくとも1つのペルチェ素子、フィラメントを送るための少なくとも1つの開口部、及び/又は、液体又は気体の冷却流体の外部源に接続された少なくとも1つの冷却体を備えている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
i) 冷却された前記少なくとも1つのフィラメントは、工程b)で、少なくとも1つのコンベアユニットによって、好ましくは少なくとも1つの加熱可能なコンベアユニットによって、及び/又は、少なくとも1つのギア、少なくとも1つのロール、少なくとも1つのホイール、又は、少なくとも1つの摩擦ホイールを含むコンベアユニットによって、送られ、
ii) 工程a)で得られた冷却された前記少なくとも1つのフィラメントは、工程c)で温度T
2まで加熱され、T
2はそれぞれのフィラメント内に含有される少なくとも1つのポリマーの融点よりも少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃高く、及び/又は、前記温度T
2は、140℃~240℃の範囲、好ましくは160℃~220℃の範囲である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程a)で採用される前記少なくとも1つのフィラメントは、少なくとも1つのスプール上に提供され、前記スプールから前記冷却装置に供給され、好ましくは、前記少なくとも1つのスプールは、前記3D押出プリンタのハウジングの外側に設置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのフィラメントは、工程a)の前に行われる任意の工程f)で加熱され、好ましくは、前記少なくとも1つのフィラメントは、工程f)で、室温からそれぞれのフィラメント内に含有される少なくとも1つのポリマーの融点より低い温度の間の範囲の温度T
3に加熱され、より好ましくは、工程f)内での前記少なくとも1つのフィラメントの加熱は、前記フィラメントがまだ前記スプール上に巻かれているとき、及び/又は、工程a)にしたがって、前記フィラメントが前記スプールから前記冷却装置に供給されるときに実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
i) 前記少なくとも1つのスプールが加熱装置を含み、及び/又は、オーブン内に配置され、及び/又は
ii) 前記少なくとも1つのフィラメントが、工程f)において、前記スプールから加熱管又は分離管を介して前記冷却装置に供給される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
溶融フィラメント製造法で使用される装置であって、
i) フィラメント用の少なくとも1つの冷却装置と、
ii) プリントヘッド内に設置された少なくとも1つの第1加熱装置と、
iii) 前記プリントヘッド内に設置された少なくとも1つのノズルと、
iv) 前記冷却装置から前記第1加熱装置にフィラメントを送るための少なくとも1つのコンベアユニットと、
を含み、前記装置は、少なくとも1つのフィラメントがそれを通って前記少なくとも1つの冷却装置に供給される少なくとも1つの加熱管及び/又は少なくとも1つの分離管に接続されている、装置。
【請求項13】
i) 前記少なくとも1つのコンベアユニットは、加熱可能なコンベアユニットであり、及び/又は、少なくとも1つのギア、少なくとも1つのロール、少なくとも1つのホイール又は少なくとも1つの摩擦ホイールを含み、及び/又は、
ii) 前記少なくとも1つの冷却装置は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記3D押出プリンタのハウジングの内部に配置され、及び/又は、
iii) 前記冷却装置は、少なくとも1つの換気装置、少なくとも1つのペルチェ素子、フィラメントを送るための少なくとも1つの開口部、及び/又は、液体又は気体の冷却流体の外部源に接続された少なくとも1つの冷却体を備え、及び/又は、
iv) 前記少なくとも1つの冷却装置、前記少なくとも1つのコンベアユニット、及び、前記少なくとも1つの第1加熱装置と前記少なくとも1つのノズルを含む少なくとも1つの前記プリントヘッドは、3D押出プリンタのハウジング内に設置され、及び/又は、
v) 前記装置が3D押出プリンタである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置がフィラメント用の少なくとも1つのスプールに接続され、好ましくは、前記少なくとも1つのスプールは加熱装置を含み、及び/又は、オーブン内に配置されている、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
3次元(3D)押出プリンタとしての、及び/又は、3次元(3D)物体を好ましくは溶融フィラメント製造法で印刷及び/又は製造するための、請求項12~14のいずれか1項による少なくとも1つの装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのフィラメント及び3次元(3D)押出プリンタを採用する溶融フィラメント製造法によって、3次元(3D)物体を製造する方法に関する。前記方法では、フィラメントはまず冷却装置に送られ、そこでフィラメントは20℃以下の温度に冷却される。その後、冷却されたフィラメントは、3D押出プリンタのプリントヘッド内に設置された加熱装置に送られ、そこで冷却されたフィラメントは、フィラメントを少なくとも部分的に溶融するのに十分に高い温度に加熱される。加熱されたフィラメントは、押出ストランドを得るために3D押出プリンタのプリントヘッドのノズルを通って押し出され、該押出ストランドは次に、それぞれの3D物体を1層ずつ形成するために使用される。本発明は、このような溶融フィラメント製造法又は3D印刷技術でそれぞれ使用される装置にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
近来よく直面する作業は、高分子体、金属体又はセラミック体などのプロトタイプ及びモデル、特に複雑な形状を示すプロトタイプ及びモデルの製作である。特にプロトタイプの製作には、迅速な製作プロセスが必要である。このいわゆる「高速プロトタイピング」には、さまざまな方法が知られている。最も経済的なものの1つは、「熱溶解積層法」(FDM)又は熱溶解層法(FLM)としても知られている溶融フィラメント製造法(FFF)である。
【0003】
溶融フィラメント製造法(FFF)は、積層造形(additive manufacturing)技術である。3次元物体は、ノズルを通って熱可塑性材料を押し出し、押し出し後に熱可塑性材料が硬化するにつれて層を形成することにより、製造される。ノズルは加熱されて熱可塑性材料をその溶融温度及び/又はガラス転移温度を超えて加熱し、次に熱可塑性材料は押出ヘッドによってベース上に堆積されて3次元物体を層状に形成する。熱可塑性材料が通常選択され、その温度は、熱可塑性材料が押出時に、又は所望の3次元物体を形成するために複数層の堆積でベース上に分配された時に、実質的に直ちに固化するように制御される。
【0004】
各層を形成するために、駆動モータが、ベース及び/又は押出ノズル(分配ヘッド)をx、y及びz軸に沿って所定のパターンで互いに対して移動させるように提供されている。FFF法は、US5,121,329に初めて記載された。
【0005】
3次元物体を製造するための典型的な材料は、熱可塑性材料である。溶融フィラメント製造法による3次元金属又はセラミック物体の製造は、金属又はセラミック材料が、ノズルによって加熱されて溶融され得るような低融点を有する場合にのみ可能である。金属又はセラミック材料の融点が高い場合、結合剤組成物中の金属又はセラミック材料を押出ノズルに供給する必要がある。結合剤組成物は、通常、熱可塑性材料を含む。結合剤中の金属又はセラミック材料をベース上に堆積させる場合、形成された3次元物体は、結合剤中に金属又はセラミック材料を含む、いわゆる「未焼結体(green body)」となる。所望の金属又はセラミックの物体を入手するために、結合剤は除去されなければならず、最後に物体は焼結されなければならない。結合剤を除去した後に形成される3次元物体は、いわゆる「脱脂体(brown body)」であり、焼結後に形成される3次元物体は、いわゆる「焼結体(sintered body)」である。
【0006】
WO2016/012486は、無機粉末と結合剤を含む混合物を用いて3次元未焼結体を製造する溶融フィラメント製造法を記載している。溶融フィラメント製造の工程に続いて、3次元未焼結体から結合剤の少なくとも一部を除去して、3次元脱脂体を形成する脱結合剤工程が行われる。脱結合剤工程は、ガス状の酸と、酸の凝縮を回避するために任意にキャリアガスを含む雰囲気中で、180℃までの温度で、3次元未焼結体を処理することによって行われる。適切な酸は、ハロゲン化水素及び硝酸などの無機酸、ならびにギ酸及び酢酸などの有機酸である。脱結合剤工程後、形成された3次元脱脂体は焼結されて3次元焼結体が形成される。
【0007】
WO2017/009190は、3次元の未焼結体を調製するための溶融フィラメント製造法で使用するフィラメントについて記載している。フィラメントは、シェル材料の層でコーティングされたコア材料を含む。コア材料は、無機粉末と結合剤を含んでいる。3次元脱脂体及び3次元焼結体の調製は、WO2016/012486に記載されているのと同様に調製することができる。しかし、WO2017/009190に記載されているコア-シェル-フィラメントは、より安定しており、スプールに容易に巻き取ることができ、WO2016/012486に開示されているものよりも保管及び処理が容易である。
【0008】
繊維状充填剤を含むコア材料に基づくフィラメントは、国際出願PCT/EP2019/054604に開示されている。それぞれのフィラメントは、繊維状充填剤(FF)及び熱可塑性ポリマー(TP1)を含むコア材料(CM)を含んでいる。コア材料(CM)は、熱可塑性ポリマー(TP2)を含むシェル材料(SM)の層でコーティングされている。それぞれのフィラメントは、溶融フィラメント製造技術を採用する3次元物体の調製方法で使用することができる。
【0009】
US2018/0345573は、金属供給原料を入口管と液化器に供給するように構成された駆動機構を含む、金属ワイヤ材料を用いる3D印刷に構成された積層造形システムを開示している。
【0010】
論文「3D printing of shape memory polymer for functional part fabrication」(Yang Yangらによる、The International Journal of Advanced Manufacturing Technology,2016年 84,2079~2095頁)は、積層造形方法、特に熱溶解積層法(FDM)のための形状記憶ポリマー(SMP)処理の新しい方法を示している。
【0011】
WO2018/204749は、積層造形機で使用するフィラメントをまっすぐにするためのフィラメントストレートナーを開示している。
【0012】
CN106915075は、スプレーヘッドホットエンドアセンブリを含む溶融堆積型3Dプリンタのスプレーヘッド冷却装置を開示しており、該ホットエンドアセンブリは、ネジ構造を介してベンチュリーアセンブリに接続され、該ベンチュリーアセンブリはネジ構造を介してベンチュリー冷却アセンブリと接続され、該ベンチュリー冷却アセンブリは固定フレームを介してワイヤ供給機構と接続され、該ベンチュリー冷却アセンブリは、第1冷却管コネクタ及び第2冷却管コネクタを介して冷蔵装置と接続され、制御装置が電源線を介してスプレーヘッドのホットエンドアセンブリと接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US5,121,329
【特許文献2】WO2016/012486
【特許文献3】WO2017/009190
【特許文献4】国際出願PCT/EP2019/054604
【特許文献5】US2018/0345573
【特許文献6】WO2018/204749
【特許文献7】CN106915075
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】論文「3D printing of shape memory polymer for functional part fabrication」(Yang Yangらによる、The International Journal of Advanced Manufacturing Technology,2016年 84,2079~2095頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
FFF/FDM方式の3D印刷技術は、長年にわたって広く実用化されているにもかかわらず、この3D印刷技術にはいくつかの欠点がある。採用するフィラメントが柔らかすぎる場合(ショアA硬度が80以下など)及び/又はそれぞれのフィラメントの剛性が十分でない場合、3D印刷処理中に、それぞれの3D押出プリンタのプリントヘッド内で問題が発生する。これは、送り力が制限されるため、3D押出プリンタのプリントヘッド内でそれぞれのフィラメントの屈曲又は座屈が引き起こされるという事実による。その結果、ノズル内での溶融速度が制限され、印刷工程がしたがってより遅くなり、又は停止される。さらに、印刷工程を中止することによる無駄も多く発生する。
【0016】
したがって、本発明の目的は上記の従来技術の欠点を示さないか、又はより少ない程度しかない溶融フィラメント製造法による新しい3次元物体製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、以下の工程a)~e)を含む3次元(3D)印刷方法を採用する3次元(3D)物体の製造方法によって達成される:
a)少なくとも1つのフィラメントを温度T1≦20℃に冷却するために、少なくとも1つのフィラメントを冷却装置に供給する工程と、
b)工程a)で得られた少なくとも1つの冷却されたフィラメントを、3D押出プリンタのプリントヘッド内に設置された加熱装置に送る工程と、
c)加熱装置内で少なくとも1つの冷却されたフィラメントを温度T2まで加熱する工程であって、該温度T2は、少なくとも1つのフィラメントを少なくとも部分的に溶融するのに十分な高さである、工程と、
d)少なくとも1つの押出ストランドを得るために、工程c)で得られた少なくとも1つの加熱されたフィラメントを、3D押出プリンタのプリントヘッドのノズルを通して押し出す工程と、
e)工程d)で得られた少なくとも1つの押出ストランドから、3D物体を1層ずつ形成する、工程と、
を含む。
【0018】
本発明の1つの利点は、3D印刷方法の動作中にフィラメントの剛性を変更/制御できるということに見られる。それぞれのフィラメントが、それぞれのフィラメントを加熱/押し出す前の工程でかなり低い温度まで冷却されるため、それぞれのフィラメントの剛性が冷却工程によって増加することにより、かなり柔らかいフィラメントをより簡単に及び/又はより速く印刷することができる。その結果、特にボーデン式プリンタ/ボーデン式押出機を使用している場合、プリントヘッド内でのそれぞれのフィラメントの屈曲又は座屈を回避することができる。
【0019】
冷却工程による別の効果は、それぞれのフィラメントの表面硬度の増加に見られる。これにより、特にコンベアユニットを使用している場合には、送りの精度が向上し、そこでは、例えば、前記コンベアユニット内に収容されたギアがそれぞれのフィラメントの表面に接触する。さらに、ボーデン管などのガイド要素における軟質フィラメントの摩擦が低減され、より長い送り距離の実現にも好影響を与える。ボーデン式押出機が3D押出印刷方法で使用される場合、長い送り距離は重要である。
【0020】
冷却工程の他の利点は、3D押出プリンタのプリントヘッド内でフィラメントが屈曲した場合、(かなり柔軟な)フィラメントの再追跡がより簡単かつより正確であるという事実に見ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、以下により詳細に特定される。
【0022】
本発明の第1の主題は、少なくとも1つのフィラメントと3次元(3D)押出プリンタを採用する溶融フィラメント製造法による、3次元(3D)物体を製造する方法であって、以下の工程a)~e):
a)少なくとも1つのフィラメントを温度T1≦20℃に冷却するために、少なくとも1つのフィラメントを冷却装置に供給する工程と、
b)工程a)で得られた少なくとも1つの冷却されたフィラメントを、3D押出プリンタのプリントヘッド内に設置された加熱装置に送る工程と、
c)加熱装置内の少なくとも1つの冷却されたフィラメントを温度T2まで加熱する工程であって、該温度T2は、少なくとも1つのフィラメントを少なくとも部分的に溶融するのに十分な高さである、工程と、
d)少なくとも1つの押出ストランドを得るために、工程c)で得られた少なくとも1つの加熱されたフィラメントを、3D押出プリンタのプリントヘッドのノズルを通して押し出す工程と、
e)工程d)で得られた少なくとも1つの押出ストランドから、3D物体を1層ずつ形成する、工程と、
を含む方法である。
【0023】
すでに上述したように、溶融フィラメント製造法(FFF)による3次元(3D)印刷技術は、当業者に知られている。したがって、3D印刷方法、特にFFF印刷方法で使用するのに適した3次元(3D)押出プリンタも当業者に知られている。さらに、従来の3D印刷方法、特に従来のFFF印刷方法で使用可能であるような任意のフィラメントも本発明で採用され得る。このようなフィラメント、及びこのようなフィラメントを製造するための方法は、当業者に知られている。例えば、特定のフィラメントは、それぞれの(ポリマー性)組成物の顆粒を押し出すことにより、それぞれの(ポリマー)組成物から調製することができる。本発明の文脈の中で採用される適切なフィラメントは、例えば、WO2016/012486、WO2017/009190又はPCT/EP2019/054604に開示されている。
【0024】
本発明の方法で使用可能なフィラメントの具体例は、
i)少なくとも1つのポリマー、好ましくは少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含むフィラメント、
ii)少なくとも1つの無機粉末及び少なくとも1つのポリマーを含むフィラメントであって、好ましくは、該無機粉末は、金属、金属合金及びセラミック材料からなる群から選択される少なくとも1つの無機材料の粉末である、フィラメント、
iii)少なくとも1つのシェル材料(SM)の層でコーティングされた少なくとも1つのコア材料(CM)を含むフィラメント、又は
iv)少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)と少なくとも1つのポリマーを含むフィラメントであって、好ましくは、該繊維状充填剤(FF)は少なくとも1つの炭素繊維である、フィラメント、
から選択され、
好ましくは、少なくとも1つのフィラメントは、少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)及び少なくとも1つのポリマーを含むフィラメントから選択され、好ましくは、繊維状充填剤(FF)は、少なくとも1つの炭素繊維である。
【0025】
上記に例示したような、本発明の方法による方法内で採用され得る任意のフィラメントは、当業者が適切と考える任意の長さ及び/又は直径を呈し得る。好ましくは、フィラメントの直径は1~3mm、より好ましくは1.2~1.8mm、最も好ましくは1.4~2.6mmである。それぞれのフィラメントの長さは、通常、特定の値に限定されず、それぞれのフィラメントは、数メートルにもおよぶ長さを有することができる。通常、このようなフィラメントはスプールに巻かれている。
【0026】
それぞれのフィラメントが少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)を含む場合、当業者に知られている任意の繊維状充填剤を採用することができる。好ましくは、少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)は、合成繊維及び無機繊維から選択され、好ましくは、アラミド繊維、ガラス繊維及び炭素繊維から選択され、より好ましくは、E、A、又はCガラスで構成されるガラス繊維及び炭素繊維から選択され、最も好ましくは、炭素繊維から選択される。
【0027】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのフィラメントは、シェル材料(SM)の層でコーティングされたコア材料(CM)を含むフィラメントである。このようなフィラメントは、例えば、WO2017/009190又はPCT/EP2019/054604に開示されている。本発明の文脈内で採用されるそれぞれのフィラメントがコア/シェルフィラメントである場合、少なくとも1つのフィラメントが、シェル材料(SM)の層でコーティングされたコア材料(CM)を含むフィラメントであることが好ましく、コア材料(CM)は、成分a)~c)
a)少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)と、
b)少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP1)と、
c)任意に、少なくとも1つの添加剤(A)と、
を含み、
シェル材料(SM)は、成分d)~f)
d)少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP2)と、
e)任意に少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)と、
f)任意に少なくとも1つの添加剤(A)と、
を含む。
【0028】
シェル材料(SM)の層は、当業者によって適切と考えられる任意の厚さを有することができる。
【0029】
好ましくは、シェル材料(SM)の層の厚さは0.04~0.6mm、より好ましくは0.06~0.3mmである。
【0030】
コア材料(CM)は、当業者によって適切と考えられる任意の直径を有することができる。
【0031】
好ましくは、コア材料(CM)の直径は1~2mm、より好ましくは1.2~1.8mm、最も好ましくは1.4~1.6mmである。
【0032】
コア材料(CM)は、当業者によって適切と考えられる任意の量の少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)を含んでいてよい。好ましくは、コア材料(CM)は、コア材料(CM)の総質量に基づいて、10~50質量%、より好ましくは15~45質量%、最も好ましくは20~40質量%の少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)を含んでいる。
【0033】
成分a)として、任意の既知の繊維状充填剤(FF)を使用することができる。好ましくは、少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)は、天然繊維、合成繊維及び無機繊維からなる群から選択される。
【0034】
適切な天然繊維の例としては、セルロース繊維、タンパク質繊維、ポリラクチド繊維が挙げられる。
【0035】
適切な合成繊維の例としては、アラミド繊維、ポリアクリル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維又はポリブチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維が挙げられる。
【0036】
適切な無機繊維の例としては、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維及び玄武岩繊維などが挙げられる。
【0037】
繊維状充填剤(FF)がガラス繊維の場合、ガラス繊維はE、A、又はCガラスで構成されていることが好ましい。ガラス繊維は、ロービング(連続フィラメント繊維)として、又は市販のチョップドガラス繊維(ステープル)の形態で使用することができる。
【0038】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP1)は、熱可塑性のホモポリマー、熱可塑性のコポリマー、ならびに熱可塑性ポリマーのブレンドを含んでもよい。
【0039】
コア材料(CM)は、当業者が適切と考える任意の量で少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP1)を含んでよい。好ましくは、コア材料(CM)は、コア材料(CM)の総質量に基づいて、50~90質量%、より好ましくは55~85質量%、最も好ましくは60~80質量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP1)を含む。
【0040】
成分b)として、任意の既知の熱可塑性ポリマーを使用することができる。好ましくは、コア材料(CM)の少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP1)は、耐衝撃性改質ビニル芳香族コポリマー、スチレンベースの熱可塑性エラストマー(S-TPE)、ポリオレフィン(PO)、脂肪族-芳香族コポリエステル、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン及びポリイミド(PI)からなる群から選択され、より好ましくは、耐衝撃性改質ビニル芳香族コポリマー、ポリオレフィン(PO)、脂肪族-芳香族コポリエステル及びポリアミド(PA)から選択される。
【0041】
コア材料(CM)の少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP1)は、耐衝撃性改質ビニル芳香族コポリマーから選択することができる。
【0042】
耐衝撃性改質ビニル芳香族コポリマーは、それ自体公知であり、市販されている。
【0043】
好ましい耐衝撃性改質ビニル芳香族コポリマーは、ビニル芳香族モノマーとシアン化ビニルとで構成される耐衝撃性改質コポリマー(スチレンアクリロニトリルコポリマー(SAN))である。使用される好ましい耐衝撃性改質SANは、好ましくはアクリロニトリルスチレンアクリレート(ASA)ポリマー及び/又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ポリマー、又は(メタ)アクリラート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンポリマー(「MABS」、透明ABS)、又はSAN、ABS、ASA、及びMABSと他の熱可塑性樹脂、例えばポリカルボナート、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリ塩化ビニル(PVC)、又はポリオレフィン(PO)とのブレンドを含む。
【0044】
コア材料(CM)の少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP1)は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から選択することもできる。
【0045】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、カルバメート単位を有するポリマーである。熱可塑性ポリウレタン及びその調製は、当業者に知られている。
【0046】
本発明の本実施形態内で熱可塑性ポリマー(TP1)として採用され得るそのような熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、PCT/EP2019/054604内、又は本発明の文脈で採用されるフィラメントの下記のさらなる実施形態で開示されている。
【0047】
コア材料(CM)は、少なくとも1つの添加剤(A)を、当業者が適切と考える任意の量で含んでよい。好ましくは、コア材料(CM)は、少なくとも1つの添加剤(A)のコア材料(CM)の総質量に基づいて、0~20質量%、より好ましくは0~15質量%、最も好ましくは0~10質量%を含む。
【0048】
成分c)として、任意の既知の添加剤(A)を使用することができる。好ましくは、添加剤(A)は、分散剤、安定剤、顔料及び粘着付与剤からなる群から選択される。
【0049】
シェル材料(SM)は、成分d)~f)を含む。
【0050】
成分d)として、シェル材料(SM)は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP2)を含む。
【0051】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP2)は、熱可塑性のホモポリマー、熱可塑性のコポリマー、ならびに熱可塑性ポリマーのブレンドを含んでよい。
【0052】
シェル材料(SM)は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP2)を、当業者が適切と考える任意の量で含んでよい。好ましくは、シェル材料(SM)は、シェル材料(SM)の総質量に基づいて、75~100質量%、より好ましくは80~98質量%、最も好ましくは90~95質量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP2)を含む。
【0053】
成分d)として、当業者は任意の技術的に適切な熱可塑性ポリマーを選択してもよい。
【0054】
シェル材料(SM)中の熱可塑性ポリマー(TP2)は、
i)コア材料(CM)の少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP1)と同じもの、又は
ii)コア材料(CM)の少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP1)とは異なるものであってもよい。
【0055】
好ましくは、シェル材料(SM)の少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(TP2)は、ポリオキシメチレン(POM)、耐衝撃性改質ビニル芳香族コポリマー、スチレンベースの熱可塑性エラストマー(S-TPE)、ポリオレフィン(PO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)、ポリエーテル(PETH)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン及びポリイミド(PI)からなる群から選択され、好ましくはポリオレフィン(PO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリスルホン及びポリイミド(PI)から選択される。
【0056】
シェル材料内に存在し得る任意の成分e)及びf)は、コア材料(CM)内に含まれる成分b)又はc)について上述したのと同じ種類の特定の成分から選択することができる。
【0057】
本発明の好ましい実施形態では、採用される少なくとも1つのフィラメントは、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む。より好ましくは、それぞれの少なくとも1つのフィラメントは、全体が少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンからなる。そのような熱可塑性ポリウレタンは、当業者に知られており、例えば、WO2016/184771に、又はPCT/EP2019/054604の一実施形態におけるフィラメントとして開示されている。
【0058】
好ましくは、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンは、以下の成分:
(a)1つ以上の有機ジイソシアネート、
(b)イソシアネートに対して反応性のある1つ以上の化合物、
(c)好ましくは60g/mol~499g/molの分子量を有する1つ以上の鎖延長剤、及び
(d)任意に、少なくとも1つの触媒、及び/又は
(e)任意に、少なくとも1つの補助剤、及び/又は
(f)任意に、少なくとも1つの添加剤、
の重合によって取得可能である。
【0059】
適切な熱可塑性ポリウレタンは、例えば、8*104g/mol~1.8*105g/mol、より好ましくは、1.0*105g/mol~1.5*105g/molの範囲の数平均分子量を有する。
【0060】
成分(a)、(b)、(c)及び任意の成分(d)、(e)、(f)は、現在最新の技術で一般的に知られており、以下に例を挙げて説明される。
【0061】
適切な有機ジイソシアネート(a)は、慣用の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族のイソシアネートである。その例として、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、及びそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
適切な有機ジイソシアネートはまた、2,4-パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)及び2,4-テトラメチレンキシレンジイソシアネート(TMXDI)である。
【0063】
ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)及びジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)が好ましい。ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネートが特に好ましい。
【0064】
有機ジイソシアネート(a)は、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)を少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、さらに好ましくは少なくとも98質量%含み、及び、残分として他のジイソシアネートを含むイソシアネート混合物であることも可能である。
【0065】
一般に、イソシアネートは、イソシアネート単体又はイソシアネートの混合物として使用される。
【0066】
一般に、任意の適切な既知の成分(b)を、本発明の文脈において使用することができる。イソシアネートに対して反応性のある化合物(b)は、好ましくは、多価アルコール、ポリエステルオール(すなわちポリエステルポリオール)、ポリエーテルオール(すなわちポリエーテルポリオール)及び/又はポリカーボネートジオールであり、これらの総称としての「ポリオール」という用語が通常使用される。これらポリオールの数平均分子量(Mn)は、0.5kg/mol~8kg/mol、好ましくは0.6kg/mol~5kg/mol、非常に好ましくは0.8kg/mol~3kg/mol、特に1kg/mol~2kg/molである。
【0067】
これらのポリオールは、さらに、好ましくは、第一級ヒドロキシ基のみを有する。ポリオールは、特に好ましくは、直鎖状ヒドロキシル末端ポリオールである。本製造方法により、これらのポリオールは、多くの場合、非直鎖状の化合物を少量含む。従って、これらはしばしば「本質的に直鎖状のポリオール」と称される。
【0068】
ポリオールは、単一のポリオール又はポリオールの混合物として使用される。別の好ましい実施形態では、ポリオールは、2つ以上のポリオールの混合物である。好ましい一実施形態では、それはポリエステルポリオールと、化合物(b)としてのポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及び/又はポリカーボネートジオールなどの他のポリオールとの混合物である。ポリエステルポリオール及び、1つ以上のポリエーテルポリオールの混合物が特に好ましい。
【0069】
ポリオールの混合物の場合、少なくとも1つのポリエステルポリオールは、混合物の総質量に基づいて、40質量%を超える量で、好ましくは60質量%を超える量で、より好ましくは80質量%を超える量で、最も好ましくは90質量%を超える量で使用される。
【0070】
本発明におけるポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、及びポリカーボネートジオールは、一般的に知られており、熱可塑性ポリウレタンの調製に頻繁に用いられるものである。
【0071】
ポリエステルジオールは、2~12個の炭素原子、好ましくは4~8個の炭素原子を有するジカルボン酸に基づくことができ、これらは、一般的に、ポリエステルジオール及び多価アルコールの調製に一般的に知られている。
【0072】
多価アルコールの例としては、2~10個の、好ましくは2~6個の炭素原子を有するアルカンジオール、例えば、エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ならびにジエチレングリコール及びジプロピレングリコールなどのジアルキレンエーテルグリコールである。多価アルコールの他の例としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)1,3-プロパンジオール及びトリメチロールプロパンである。所望の特性に応じて、多価アルコールは単独でも、又は、適切な場合、互いに混合して使用することができる。ポリオールのガラス転移温度Tgを非常に低く維持するために、分岐ジオールに基づくポリエステルジオール、特に好ましくは3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオールに基づくポリエステルジオールを使用するのが有利であり得る。ポリエステルジオールは、特に好ましくは、少なくとも2つの異なるジオールに基づくものであり、すなわちジカルボン酸と少なくとも2つの異なるジオールの混合物との縮合によって調製されるポリエステルジオールである。そのうちの少なくとも1つが分岐ジオール、例えば2-メチル-1,3-プロパンジオールであるジオールの混合物の場合、分岐ジオールの量は、ジオール混合物の総質量に基づいて、40質量%を超える、好ましくは70質量%を超える、さらに好ましくは90質量%を超える量である。
【0073】
好ましいジカルボン酸としては、例えば:コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、好ましくはアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸、及び、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸である。ジカルボン酸は、個別に、又は、混合物として、例えばコハク酸、グルタル酸及びアジピン酸の混合物の形態で、使用することができる。芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸の混合物も同様に使用することができる。ポリエステルオールを調製するには、ジカルボン酸の代わりに、アルコールラジカル中に1~4個の炭素原子を有するジカルボン酸エステル、ジカルボン酸無水物又はジカルボン酸塩化物のような、対応するジカルボン酸誘導体を使用することが有利である。ポリエステルジオールは、特に好ましくはアジピン酸に基づく。さらに別の実施形態では、ε-カプロラクトンに基づくポリエステルポリオールが好ましい。
【0074】
好適なポリエステルポリオールは、例えば、数平均分子量(Mn)を、0.5~3kg/mol、好ましくは0.8kg/mol~2.5kg/mol、さらに好ましくは1kg/mol~2kg/molの範囲、特に1kg/molで有してよい。
【0075】
適切なポリエーテルポリオールは、アルキレンラジカル中に2~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキレンオキシドを、2個の活性水素原子を含有する出発物質分子と反応させることによって調整することができる。典型的なアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、並びに、1,2-及び2,3-ブチレンオキシドである。エチレンオキシド、及び1,2-プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物を利用することが好ましい。アルキレンオキシドは、個別に、あるいは、交互に連続して、又は混合物として使用することができる。典型的な出発物質分子は、例えば、水、N-アルキルジエタノールアミンなどのアミノアルコール、及びジオール、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールである。出発物質分子の混合物を使用することも可能である。適切なポリエーテルポリオールとして、テトラヒドロフランのヒドロキシル基含有重合生成物も含まれる。
【0076】
好ましくは、ヒドロキシル基含有ポリテトラヒドロフラン、及び1,2-プロピレンオキシドとエチレンオキシドのコポリエーテル(co-polyether)ポリオールが使用され、ここで、ヒドロキシル基の50%超が第一級ヒドロキシル基であり、好ましくは60~80%であり、及び、エチレンオキシドの少なくとも一部は末端位置でブロックされている。
【0077】
最も好ましいポリエーテルポリオールは、数平均分子量が0.6~3kg/mol、好ましくは0.8~2.5kg/mol、より好ましくは1kg/mol~2kg/molの範囲にあるヒドロキシル基含有ポリテトラヒドロフランである。
【0078】
好ましいポリオールは、少なくとも1つのポリエステルポリオールと少なくとも1つのポリエーテルポリオールの混合物である。
【0079】
ポリエーテルポリオールの例としては、一般に既知の出発物質及び慣用のアルキレンオキシドに基づくものを含むが、これらに限定されない。
【0080】
本発明の文脈で使用することができるポリオールは、イソシアネートと反応してイソシアネートプレポリマーを生成するか、又はイソシアネートプレポリマーと反応して熱可塑性ポリウレタンを生成することができる。
【0081】
イソシアネートと反応させてイソシアネートプレポリマーを生成するのに使用される適切なポリオールは、2よりも大きい、好ましくは2.1~3の間の、より好ましくは2.1~2.7の間の、最も好ましくは2.2~2.5の間の平均官能性を有してよい。さらに、イソシアネートプレポリマーと反応させてTPUを生成するのに使用される適切なポリオールは、好ましくは1.8~2.3、好ましくは1.9~2.2の、特に2の平均官能性を有する。「官能性」という用語は、重合条件下でイソシアネートと反応する基の数を意味する。
【0082】
鎖延長剤(c)として、分子量が60g/mol~499g/mol、好ましくは60g/mol~400g/molである、一般的に知られている脂肪族化合物、芳香脂肪族化合物、芳香族化合物及び/又は脂環式化合物を使用することができ、より好ましくは、二官能性化合物、例えばジアミン、及び/又は、アルキレンラジカルに2~10個の炭素原子を有するアルカンジオール、特に1,2-エチレンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-プロパンジオール、及び/又はアルキレン部位に2~8個の炭素原子をもつ、ジアルキレン-、トリアルキレン-、テトラアルキレン-、ペンタアルキレン-、ヘキサアルキレン-、ヘプタアルキレン-、オクタアルキレン-、ノナアルキレン-及び/又はデカアルキレン-グリコール、好ましくは対応するオリゴプロピレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールを使用することができる。鎖延長剤の混合物を使用することも可能である。鎖延長剤としては、1,4-ブタンジオール、1,2-エチレンジオール、1,6-ヘキサンジオール又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0083】
好ましい実施形態では、鎖延長剤(c)は、成分(a)、(b)及び(c)の総質量に基づいて、2質量%~20質量%、好ましくは5質量%~15質量%の量で使用される。
【0084】
鎖延長剤としては、単一の鎖延長剤又は鎖延長剤の混合物が使用される。
【0085】
特に、有機ジイソシアネート(a)のNCO基とポリオール(b)と成分(c)との間の反応を促進する好適な触媒(d)は、従来技術において既知であり、慣用されている第三級アミンであり、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N、N’-ジメチルピペラジン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなど、及び特に、有機金属化合物、例えば、チタン酸エステル、ビスマスカルボン酸エステル、亜鉛酸エステル、例えば鉄(III)アセチルアセトナートなどの鉄化合物、スズ化合物、例えばスズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレート、又は脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなどである。ビスマス塩の場合、ビスマスの酸化状態は、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0086】
ビスマスカルボン酸エステルの好ましいカルボン酸は、6~14個の炭素原子、より好ましくは8~12個の炭素原子を有する。ビスマス塩の好ましい例としては、ビスマス(III)-ネオデカノアート、ビスマス-2-エチルヘキサノアート及びビスマス-オクタノアートである。
【0087】
触媒は、使用される場合には、通常、ポリオール(b)100質量部当たり0.0001~0.1質量部の量で使用される。スズ触媒、特にスズジオクトエートが好ましい。
【0088】
触媒(d)以外に、所望の場合は、慣用の補助剤(e)及び/又は添加剤(f)を、成分(a)~(c)に加えて、添加することができる。
【0089】
補助剤(e)として、例えば表面活性物質、難燃剤、核剤、潤滑ワックス、染料、顔料、及び安定剤、例えば酸化、加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤を用いることができ、及び、添加剤(f)として、例えば無機及び/又は有機充填剤及び補強物質を用いることができる。加水分解抑制剤としては、オリゴマー及び/又はポリマーの脂肪族又は芳香族カルボジイミドが好ましい。熱可塑性ポリウレタンをエージングに対して安定化させるために、安定剤を添加することもできる。
【0090】
任意の補助剤及び添加剤に関するさらなる詳細については、専門家文献、例えば、プラスチック添加剤ハンドブック(Plastics Additive Handbook)、第5版、H.Zweifel編、Hanser出版社、ミュンヘン、2001年、に見出だすことができる。
【0091】
前述の成分a)、b)及びc)、及び必要に応じて成分d)及びe)の他に、通常は31g/mol~3kg/molの数平均分子量を有する鎖調節剤を使用することが可能である。これらの鎖調節剤は、例えば、単官能性アルコール、単官能性アミン及び/又は単官能性ポリオールなどの、イソシアネート反応性官能基を1つだけ有する化合物である。この種の鎖調節剤により、特にTPUの場合には、正確なレオロジーを設定することができる。鎖調整剤は、成分b)の100質量部に基づいて、一般に0~5質量部、好ましくは0.1~1質量部の量で使用することができ、及び、定義上は成分(c)に含まれる。
【0092】
熱可塑性ポリウレタンの硬度を調整するために、イソシアネートに対して反応性のある成分(b)及び鎖延長剤(c)は、比較的広い範囲のモル比で変えることができる。使用される成分(b)の鎖延長剤(c)全体に対するモル比は10:1~1:10、特に1:1~1:4が有用であることが見出され、(c)の含有量の増加に伴って熱可塑性ポリウレタンの硬度が増加する。
【0093】
好適な熱可塑性ポリウレタンは、DIN 53505に従って、一般に、98ショアA未満のショアA硬度を有することが好ましく、より好ましくは60ショアA~98ショアA、さらにより好ましくは70ショアA~95ショアA、最も好ましくは75ショアA~90ショアAのショアA硬度を有する。
【0094】
好ましくは、本発明の文脈において好適な熱可塑性ポリウレタンは、1.0g/cm3~1.3g/cm3の範囲の密度を有する。DIN 53504による熱可塑性ポリウレタンの引張強度は、10MPaより大きく、好ましくは15MPaより大きく、特に好ましくは20MPaより大きい。本発明の文脈において好適な熱可塑性ポリウレタンは、DIN 53516に従って、一般に150mm3未満の、好ましくは100mm3未満の摩耗損失を有する。
【0095】
一般的に、熱可塑性ポリウレタンは、(a)イソシアネートと、(b)通常0.5kg/mol~10kg/mol、好ましくは0.5kg~5kg/mol、特に好ましくは0.8kg/mol~3kg/molの数平均分子量(Mn)を有する、イソシアネートに対して反応性のある化合物と、(c)0.05kg/mol~0.499kg/molの数平均分子量(Mn)を有する鎖延長剤と、適切な場合には(d)触媒及び/又は(e)従来の添加剤の存在下で、反応させることにより調製される。
【0096】
熱可塑性ポリウレタンは、2つの異なる種類のプロセス、すなわち現在最新の技術から既知の「一段階」プロセスと「二段階」プロセスによって生成することができる。
【0097】
工程(ii)に従って、溶融した熱可塑性ポリウレタンに、イソシアネートプレポリマー組成物が添加され、得られた混合物が混合されて溶融物が形成される。好適なイソシアネートプレポリマーは、例として以下に記述されている。
【0098】
このようなプロセスにおいて、イソシアネートプレポリマー組成物は、好ましくは、より良好な流動性を有するために、20℃を超える温度で加熱及び使用され、イソシアネートプレポリマー組成物の温度は、望ましくない反応、例えばアロファンテ(allophante)架橋を回避するため、80℃未満であることが好ましい。
【0099】
本発明の目的のために、「イソシアネートプレポリマー」という用語は、イソシアネートと、イソシアネートに対して反応性がある、0.5kg/molから10kg/molの範囲、好ましくは1kg/molから5kg/molの範囲の数平均分子量を有する化合物との反応生成物を指す。イソシアネートプレポリマーは、イソシアネート重付加反応の中間体である。好ましい実施形態では、プレポリマーは、DIN EN ISO 11357-1に従ってDSCによって測定されて、-15℃未満のガラス転移温度Tg及び70℃未満の溶融温度を有する。
【0100】
適切なイソシアネートプレポリマーは、イソシアネートプレポリマーの質量に基づいて、好ましくは4~27質量部のNCO含有量を有することができる。本発明による適切なイソシアネートプレポリマーは、単一のイソシアネートプレポリマー又はイソシアネートプレポリマーの混合物の形態で使用することができる。
【0101】
最も好ましいイソシアネートプレポリマーは、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、及び/又はジフェニルメタン2,2’-ジイソシアネート、及び/又はジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート(MDI)と、アジピン酸、2-メチル-1,3-プロパンジオール及び1,4-ブタンジオールに基づくポリエステルポリオールとの反応生成物であり、前記ポリエステルポリオールの前記ジイソシアネートに対するモル比は、1:1~1:5、好ましくは1:1.2~1:3、より好ましくは1:1.5~1:2.5、例えば1:2などである。
【0102】
本発明の文脈において、イソシアネートプレポリマーは、2以上、好ましくは2と3の間、より好ましくは2と2.7の間、最も好ましくは2と2.5の間の平均イソシアネート官能性(Fn)を有する。
【0103】
さらに、可塑剤は、熱可塑性ポリウレタンに基づいたフィラメントの調製方法において使用することができる。好適な可塑剤は、現在最新の技術、例えばDavid F.Cadogan と Christopher J.Howickによる「Plasticizers」、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry 2000年、Wiley-VCH,Weinheimから、一般に知られている。
【0104】
適切な可塑剤は、C3-15、好ましくはC3-10のポリカルボン酸及びそれらの直鎖状又は分岐鎖状C2-30の脂肪族アルコールとのエステル、安息香酸、エポキシ化植物油、スルホンアミド、有機リン酸塩、グリコール及びその誘導体、及びポリエーテルである。好ましい可塑剤は、セバシン酸、セバケート、アジピン酸、アジペート、グルタル酸、グルタレート、フタル酸、(例えばC8アルコールとの)フタレート、アゼライン酸、アゼレート、マレイン酸、マレエート、クエン酸及びその誘導体であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2010/125009を参照されたい。可塑剤は、組み合わせて、又は個別に使用することができる。
【0105】
例えばポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどのさらなる添加剤(任意成分f))が、熱可塑性ポリウレタンに基づくフィラメントを調製するプロセスにおいて加えられてよい。
【0106】
TPUに関連した本発明の実施形態の目的のために、「さらなる添加剤」という用語は、前記熱可塑性ポリウレタン、前記イソシアネートプレポリマー及び前記可塑剤の反応系に添加される任意の物質を指し、ただし、前記熱可塑性ポリウレタン、前記イソシアネートプレポリマー及び前記可塑剤を含まない。通常、このような物質は、この技術分野で一般的に使用される補助剤及び添加剤を含む。
【0107】
上述の実施形態の中で、
i) 1つ以上の有機ジイソシアネート(成分a))は、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)、及びジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)から選択され、及び/又は
ii) イソシアネートに対して反応性のある1つ以上の化合物(成分b))は、多価アルコール、ポリエステルオール、ポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオールから選択され、及び/又は
iii) 1つ以上の鎖延長剤(化合物c))は、1,4-ブタンジオール、1,2-エチレンジオール及び1,6-ヘキサンジオールから選択される、
ことが好ましい。
【0108】
本発明による方法の工程a)は、少なくとも1つのフィラメントを温度T1≦20℃に冷却するために、少なくとも1つのフィラメントを冷却装置に供給することによって行われる。
【0109】
工程a)内では、少なくとも1つのフィラメントが、工程a)で-50℃~20℃の範囲、好ましくは-30℃~15℃の範囲、より好ましくは-20℃~10℃の範囲の温度T1まで冷却されることが好ましい。
【0110】
本発明の工程a)の中で採用されるような冷却装置は、当業者に知られている。冷却装置は、それぞれの3D押出プリンタのハウジングの内側又は外側に配置されてよい。しかし、本発明の文脈では、工程a)で採用される冷却装置は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、3D押出プリンタのハウジングの内部に配置されることが好ましい。
【0111】
好ましくは、冷却装置は、少なくとも1つの換気ユニット、少なくとも1つのペルチェ素子、フィラメントを送るための少なくとも1つの開口部、及び/又は、液体又は気体の冷却流体の外部源に接続された少なくとも1つの冷却体を備える。
【0112】
好ましくは、工程a)で採用される少なくとも1つのフィラメントは、少なくとも1つのスプール上に提供され、スプールから冷却装置に供給され、好ましくは、少なくとも1つのスプールは、3D押出プリンタのハウジングの外側に設置されている。
【0113】
本発明の方法の工程b)は、工程a)で得られた少なくとも1つの冷却されたフィラメントを、3D押出プリンタのプリントヘッド内に設置された加熱装置に送ることによって行われる。
【0114】
工程b)による搬送は、当業者に知られている任意の手段で行われることができ、例えば、少なくとも1つの冷却されたフィラメントは、工程b)で、少なくとも1つのコンベアユニットによって、好ましくは少なくとも1つの加熱可能なコンベアユニットによって、及び/又は、少なくとも1つのギア、少なくとも1つのロール、少なくとも1つのホイール、又は、少なくとも1つの摩擦ホイールを含むコンベアユニットによって、送られることができる。
【0115】
工程b)で冷却されたフィラメントを送るために採用され得るコンベアユニットは、当業者に知られている。コンベアユニットは、それぞれの3D押出プリンタのハウジング内に完全に入っていてもよいが、コンベアユニットの一部がそれぞれのハウジングの外に出ていてもよい。後者は、例えば、本発明の方法でボーデン式プリンタが採用され得る場合である。
【0116】
本発明による方法の工程c)は、少なくとも1つの冷却されたフィラメントを加熱装置内で温度T2まで加熱することによって行われ、温度T2は、少なくとも1つのフィラメントを少なくとも部分的に溶融するのに十分な高さである。
【0117】
工程a)で得られた少なくとも1つの冷却されたフィラメントは、工程c)内で温度T2まで加熱されることが好ましく、ここで、T2はそれぞれのフィラメント内に含有される少なくとも1つのポリマーの融点よりも少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃高く、及び/又は、温度T2は、140℃~240℃の範囲、好ましくは160℃~220℃の範囲である。
【0118】
本発明による方法の工程c)内で採用される加熱装置は、当業者に知られている。加熱装置は、通常、それぞれの3D押出プリンタのノズルと直接接続されている。しかし、一方の加熱装置と他方のノズルは、通常、互いに独立して動作する2つの装置である。例えば、加熱装置の温度は、ノズルの温度と同じであってもよいが、加熱装置の温度は、ノズルのそれぞれの温度よりも低くてもよい。加熱装置の温度は、通常、それぞれのフィラメント/ポリマーを流動可能な状態に維持するのに必要なだけ高い。
【0119】
本発明による方法の工程d)は、少なくとも1つの押出ストランドを得るために、工程c)で得られた少なくとも1つの加熱されたフィラメントを、3D押出プリンタのプリントヘッドのノズルを通して押し出すことによって行われる。
【0120】
本発明の方法の工程e)は、工程d)で得られた少なくとも1つの押出ストランドから3D物体を1層ずつ形成することによって行われる。
【0121】
このような本発明による工程d)及びe)は、当業者に知られている。ボーデン式プリンタを含むいかなる従来の3D押出プリンタも、本発明の方法内で採用することができる。そのような従来の3D押出プリンタは、通常、当業者に知られているノズルを含むプリントヘッドを含む。工程c)で得られたそれぞれの加熱されたフィラメントの押し出しにより、工程d)内で、採用されたフィラメントのそれぞれの押し出されたストランドが得られる。例えば、工程d)による押し出しが一定期間中断された場合、採用されたフィラメントを別のフィラメントに置き換え、その後押し出しを継続することができる。その結果、それぞれのフィラメントが、中断の前後でそれぞれの化学組成に関して異なる可能性があるため、新しいタイプの押出ストランドが得られ得る。これは、本発明の方法の工程e)によってステップバイステップで(1層ずつ)構築されるそれぞれの層のなかで、異なる個々の化学組成を有する3D物体を提供するために行われ得る。
【0122】
工程e)による1層ずつのモードで3D物体を形成することは、当業者に知られている。それぞれの3D物体をステップバイステップで得るために、通常、それぞれのプリンタ、特にノズルを含むプリントヘッドを、z方向及び/又はx方向又はy方向のいずれかに移動させることができる。通常、そのような3D物体は、z方向及び/又はx方向又はy方向に移動可能なプレート上に配置される。完全性のために、x方向、y方向、z方向は、デカルト座標系に関連していることを示しておく。
【0123】
本発明の一実施形態では、工程a)の前に、任意の工程f)が追加で実施されることが好ましい。この実施形態では、少なくとも1つのフィラメントは、工程a)の前に実施される任意の工程f)で加熱され、好ましくは、少なくとも1つのフィラメントは、工程f)内で、室温からそれぞれのフィラメント内に含有される少なくとも1つのポリマーの融点より低い温度の間の範囲の温度T3に加熱され、より好ましくは、工程f)内での少なくとも1つのフィラメントの加熱は、フィラメントがまだスプール上に巻かれているとき、及び/又は、工程a)にしたがって、フィラメントがスプールから冷却装置に供給されるときに実施される。
【0124】
必須の工程a)及び/又は任意の工程f)に関して、本発明の文脈では以下のこと、
i) 少なくとも1つのスプールが加熱装置を含むこと、及び/又はオーブン内に配置されていること、及び/又は
ii) 前記少なくとも1つのフィラメントが、工程f)において、スプールから加熱管又は分離管を介して冷却装置に供給されること、
が、一般的に好ましい。
【0125】
本発明の別の主題は、溶融フィラメント製造法内で使用される装置であって、以下の、
i) フィラメント用の少なくとも1つの冷却装置と、
ii) プリントヘッド内に設置された少なくとも1つの第1加熱装置と、
iii) プリントヘッド内に設置された少なくとも1つのノズルと、
iv) 冷却装置から第1加熱装置にフィラメントを送るための少なくとも1つのコンベアユニットと、
を含み、該装置は、これを通って少なくとも1つのフィラメントが少なくとも1つの冷却装置に供給される少なくとも1つの加熱管及び/又は少なくとも1つの分離管に、接続されている。
【0126】
上述の装置は、本発明による上述の方法で採用されるのに適している。フィラメント用の少なくとも1つの冷却装置は、本発明の方法の工程a)で採用されるのに適している。プリントヘッドに設置されている少なくとも1つの加熱装置は、本発明の方法の工程c)で採用されるのに適している。プリントヘッド内に設置されている少なくとも1つのノズルは、本発明の方法の工程d)を実施するのに適している。フィラメントを冷却装置から第1加熱装置に送るための少なくとも1つのコンベアユニットは、本発明の方法の工程b)を実施するのに適している。本発明による上述の装置のそのような個々の部品は、当業者に知られている。
【0127】
本発明による装置は、好ましくは、以下の部品/ユニットの少なくとも1つを含み、及び/又は以下の選択肢:
i) 少なくとも1つのコンベアユニットは、加熱可能なコンベアユニットである、及び/又は、少なくとも1つのギア、少なくとも1つのロール、少なくとも1つのホイール又は少なくとも1つの摩擦ホイールを含む、及び/又は、
ii) 少なくとも1つの冷却装置は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、3D押出プリンタのハウジングの内部に配置されている、及び/又は
iii) 冷却装置は、少なくとも1つの換気装置、少なくとも1つのペルチェ素子、フィラメントを送るための少なくとも1つの開口部、及び/又は、液体又は気体の冷却流体の外部源に接続された少なくとも1つの冷却体を備える、及び/又は
iv) 少なくとも1つの冷却装置、少なくとも1つのコンベアユニット、及び、少なくとも1つの第1加熱装置と少なくとも1つのノズルを含む少なくとも1つのプリントヘッドは、3D押出プリンタのハウジング内に設置されている、及び/又は
v) 装置が3D押出プリンタである、
のうちの少なくとも1つに従って設計される。
【0128】
さらに好ましくは、上述の5つの選択肢i)からv)のすべてが、本発明による装置内で満たされている。
【0129】
さらに、本発明による装置は、以下の追加の特徴:
i) 装置がフィラメント用の少なくとも1つのスプールに接続され、好ましくは、少なくとも1つのスプールは加熱装置を含み、及び/又は、オーブン内に配置されている、
を有してよい。
【0130】
本発明の別の主題は、上述の少なくとも1つの装置の、3次元(3D)押出プリンタとしての使用、及び/又は、3次元(3D)物体を好ましくは溶融フィラメント製造法で印刷及び/又は製造するための使用である。
【0131】
本発明の別の実施形態は、溶融フィラメント製造法で使用される装置であって、
i) フィラメント用の少なくとも1つの冷却装置と、
ii) プリントヘッドに設置された少なくとも1つの第1加熱装置と、
iii) プリントヘッドに設置された少なくとも1つのノズルと、
iv) 冷却装置から第1加熱装置にフィラメントを送るための少なくとも1つのコンベアユニットと、
を含む、装置である。装置に関する上述の実施形態及び選好は同様に適用される。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフィラメントと3次元(3D)押出プリンタを採用する溶融フィラメント製造法によって3次元(3D)物体を製造する方法であって、以下の工程a)~e):
a) 前記少なくとも1つのフィラメントを温度T
1≦20℃に冷却するために、前記少なくとも1つのフィラメントを冷却装置に供給する工程と、
b) 工程a)で得られた冷却された前記少なくとも1つのフィラメントを、前記3D押出プリンタのプリントヘッド内に設置された加熱装置に送る工程と、
c) 前記加熱装置内で冷却された前記少なくとも1つのフィラメントを温度T
2まで加熱する工程であって、前記温度T
2は、前記少なくとも1つのフィラメントを少なくとも部分的に溶融するのに十分な高さである、工程と、
d) 少なくとも1つの押出ストランドを得るために、工程c)で得られた加熱された前記少なくとも1つのフィラメントを、前記3D押出プリンタのプリントヘッドのノズルを通して押し出す工程と、
e) 工程d)で得られた前記少なくとも1つの押出ストランドから、前記3D物体を1層ずつ形成す
る工程であって、前記少なくとも1つのフィラメントは、少なくとも1つの繊維状充填剤(FF)と少なくとも1つのポリマーを含むフィラメントから選択される、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記繊維状充填剤(FF)は、少なくとも1つの炭素繊維である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフィラメントは、少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンを含み、好ましくは、前記少なくとも1つの熱可塑性ポリウレタンは、以下の成分:
(a) 1つ以上の有機ジイソシアネート、
(b) イソシアネートに対して反応性のある1つ以上の化合物、
(c) 好ましくは60g/mol~499g/molの分子量を有する1つ以上の鎖延長剤、及び
(d) 任意に、少なくとも1つの触媒、及び/又は
(e) 任意に、少なくとも1つの補助剤、及び/又は
(f) 任意に、少なくとも1つの添加剤、
を重合することによって取得可能である、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
i) 前記1つ以上の有機ジイソシアネート(成分a))は、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)、及びジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び/又は2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)から選択され、及び/又は
ii) 前記イソシアネートに対して反応性のある1つ以上の化合物(成分b))は、多価アルコール、ポリエステルオール、ポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオールから選択され、及び/又は
iii) 前記1つ以上の鎖延長剤(化合物c))は、1,4-ブタンジオール、1,2-エチレンジオール及び1,6-ヘキサンジオールから選択される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
i) 前記少なくとも1つのフィラメントは、工程a)で、-50℃~20℃の範囲、好ましくは-30℃~15℃の範囲、より好ましくは-20℃~10℃の範囲の温度T
1まで冷却され、
ii) 工程a)で採用される前記冷却装置は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記3D押出プリンタのハウジングの内部に配置され,
iii) 前記冷却装置は、少なくとも1つの換気ユニット、少なくとも1つのペルチェ素子、フィラメントを送るための少なくとも1つの開口部、及び/又は、液体又は気体の冷却流体の外部源に接続された少なくとも1つの冷却体を備えている、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
i) 冷却された前記少なくとも1つのフィラメントは、工程b)で、少なくとも1つのコンベアユニットによって、好ましくは少なくとも1つの加熱可能なコンベアユニットによって、及び/又は、少なくとも1つのギア、少なくとも1つのロール、少なくとも1つのホイール、又は、少なくとも1つの摩擦ホイールを含むコンベアユニットによって、送られ、
ii) 工程a)で得られた冷却された前記少なくとも1つのフィラメントは、工程c)で温度T
2まで加熱され、T
2はそれぞれのフィラメント内に含有される少なくとも1つのポリマーの融点よりも少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、より好ましくは少なくとも10℃高く、及び/又は、前記温度T
2は、140℃~240℃の範囲、好ましくは160℃~220℃の範囲である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)で採用される前記少なくとも1つのフィラメントは、少なくとも1つのスプール上に提供され、前記スプールから前記冷却装置に供給され、好ましくは、前記少なくとも1つのスプールは、前記3D押出プリンタのハウジングの外側に設置されている、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのフィラメントは、工程a)の前に行われる任意の工程f)で加熱され、好ましくは、前記少なくとも1つのフィラメントは、工程f)で、室温からそれぞれのフィラメント内に含有される少なくとも1つのポリマーの融点より低い温度の間の範囲の温度T
3に加熱され、より好ましくは、工程f)内での前記少なくとも1つのフィラメントの加熱は、前記フィラメントがまだ前記スプール上に巻かれているとき、及び/又は、工程a)にしたがって、前記フィラメントが前記スプールから前記冷却装置に供給されるときに実施される、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
i) 前記少なくとも1つのスプールが加熱装置を含み、及び/又は、オーブン内に配置され、及び/又は
ii) 前記少なくとも1つのフィラメントが、工程f)において、前記スプールから加熱管又は分離管を介して前記冷却装置に供給される、請求項
7又は
8に記載の方法。
【請求項10】
溶融フィラメント製造法で使用される装置であって、
i) フィラメント用の少なくとも1つの冷却装置と、
ii) プリントヘッド内に設置された少なくとも1つの第1加熱装置と、
iii) 前記プリントヘッド内に設置された少なくとも1つのノズルと、
iv) 前記冷却装置から前記第1加熱装置にフィラメントを送るための少なくとも1つのコンベアユニットと、
を含み、前記装置は、少なくとも1つのフィラメントがそれを通って前記少なくとも1つの冷却装置に供給される少なくとも1つの加熱管及び/又は少なくとも1つの分離管に接続されている、装置。
【請求項11】
i) 前記少なくとも1つのコンベアユニットは、加熱可能なコンベアユニットであり、及び/又は、少なくとも1つのギア、少なくとも1つのロール、少なくとも1つのホイール又は少なくとも1つの摩擦ホイールを含み、及び/又は、
ii) 前記少なくとも1つの冷却装置は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記3D押出プリンタのハウジングの内部に配置され、及び/又は、
iii) 前記冷却装置は、少なくとも1つの換気装置、少なくとも1つのペルチェ素子、フィラメントを送るための少なくとも1つの開口部、及び/又は、液体又は気体の冷却流体の外部源に接続された少なくとも1つの冷却体を備え、及び/又は、
iv) 前記少なくとも1つの冷却装置、前記少なくとも1つのコンベアユニット、及び、前記少なくとも1つの第1加熱装置と前記少なくとも1つのノズルを含む少なくとも1つの前記プリントヘッドは、3D押出プリンタのハウジング内に設置され、及び/又は、
v) 前記装置が3D押出プリンタである、請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置がフィラメント用の少なくとも1つのスプールに接続され、好ましくは、前記少なくとも1つのスプールは加熱装置を含み、及び/又は、オーブン内に配置されている、請求項
10又は
11に記載の装置。
【請求項13】
3次元(3D)押出プリンタとしての、及び/又は、3次元(3D)物体を好ましくは溶融フィラメント製造法で印刷及び/又は製造するための、請求項
10~12のいずれか1項による少なくとも1つの装置の使用。
【国際調査報告】