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特表2022-545726走査型電子顕微法アプリケーション用センサモジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(54)【発明の名称】走査型電子顕微法アプリケーション用センサモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/244 20060101AFI20221021BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20221021BHJP
   H01J 37/06 20060101ALI20221021BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20221021BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/28 B
H01J37/06 A
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513137
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 US2020047709
(87)【国際公開番号】W WO2021041356
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】62/892,545
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/000,231
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トリンプル マルセル
【テーマコード(参考)】
4M118
5C101
【Fターム(参考)】
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA04
4M118BA05
4M118CA02
4M118DD04
4M118EA14
4M118HA25
4M118HA31
5C101AA03
5C101AA22
5C101DD09
5C101EE12
5C101EE51
5C101GG04
5C101GG05
5C101GG09
5C101GG36
5C101GG42
5C101HH11
(57)【要約】
走査型電子顕微法(SEM)システムを開示する。本SEMシステムは、電子ビームを生成するよう構成された電子源、並びにその電子ビームで標本を横断走査しその標本にて散乱された電子を1枚又は複数枚のイメージング面上へと集束させるよう構成された一組の電子光学系を有する。本SEMシステムはその1枚又は複数枚のイメージング面に配置された第1検出器モジュールを有し、その第1検出器モジュールが、その標本からの散乱粒子例えば電子及び/又はX線を等価な一組の信号電荷へと変換するよう構成された多画素固体センサを有する。その多画素固体センサを、同センサの1個又は複数個の画素からの一組の信号電荷を処理するよう構成された複数個の用途特化集積回路(ASIC)に接続する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型電子顕微法システムであって、
電子ビームを生成するよう構成された電子源と、
前記電子ビームにより標本を横断走査しその標本にて散乱された電子を1枚又は複数枚のイメージング面上へと集束させるよう構成された一組の電子光学系と、
前記1枚又は複数枚のイメージング面に配置された第1検出器モジュールと、
を備え、前記第1検出器モジュールが、前記標本からの散乱粒子を等価な一組の信号電荷へと変換するよう構成された多画素固体センサを有し、
前記多画素固体センサが、自センサの1個又は複数個の画素からの前記一組の信号電荷を処理するよう構成された、複数個の用途特化集積回路(ASIC)に接続されている走査型電子顕微法システム。
【請求項2】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記多画素固体センサの画素が、前記等価な信号電荷を集め等価電圧を生成する静電容量性の浮動拡散ノードと、その浮動拡散ノードの前記電圧を制御するリセット段と、前記浮動拡散ノードの前記電圧であり前記複数個のASICの入力に対するものを駆動する増幅器と、を備える走査型電子顕微法システム。
【請求項3】
請求項2に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記第1検出器モジュールの前記多画素固体センサの前記画素が、その画素のリセット段に接続されており前記複数個のASICにより制御される第2コンタクトを、備える走査型電子顕微法システム。
【請求項4】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記電子源が、第2電子ビームを生成するよう構成された多ビーム電子源を備え、前記一組の電子光学系が、更に、前記第2ビームにより前記標本を横断走査するよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項5】
請求項4に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記一組の電子光学系が、更に、前記電子ビームに由来し前記標本にて散乱された電子を前記多画素センサの第1画素に集束させるよう、且つ前記第2電子ビームに由来し前記標本にて散乱された第2電子を前記多画素固体センサの第2画素に集束させるよう、構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項6】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記第1検出器モジュールが、別々のウェハ上に作成された多画素固体センサ層及びASIC層を有し、それら多画素固体センサ層及びASIC層が、100~200μmピッチの直接接合界面接続及びマイクロソルダバンプのうち少なくとも一方により直結されており、1個又は複数個のASICが基板に装着されており、且つ前記1個又は複数個のASICの入力及び出力のうち少なくとも1個が、ワイヤボンディングにより前記基板上の導電トレースに接続されている走査型電子顕微法システム。
【請求項7】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記多画素固体センサと前記複数個のASICとが、スルーシリコンインタポーザ(TSI)を介し接続されている走査型電子顕微法システム。
【請求項8】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記複数個のASICが、更に、前記複数個のASICの1個又は複数個の入力及び1個又は複数個の出力を基板上のトレースに接続するスルーシリコンビア(TSV)を備える走査型電子顕微法システム。
【請求項9】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、更に、前記第1検出器モジュールに対し実質的にコプレーナな少なくとも1個の第2検出器モジュールを備え、前記第1検出器モジュール及び前記少なくとも1個の第2検出器モジュールが、前記電子ビーム用の開口を形成するよう構成されており、前記一組の電子光学系が、前記電子ビームを前記開口内に通すよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項10】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記複数個のASICのうち少なくとも1個が、第1閾値及び第2閾値を格納するよう構成されたルックアップテーブル(LUT)と、信号電荷を前記第1閾値と比較し且つ前記第2閾値と比較するよう構成された比較器と、を備え、その比較器が、各信号電荷が前記第1及び前記第2閾値の枠内にあるか否かを示す結果を生成するよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項11】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記第1検出器モジュールが1個又は複数個のスクリーンを備え、その1個又は複数個のスクリーンが低原子番号素材で形成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項12】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記低原子番号素材が、ベリリウム、炭素、硼素、マグネシウム及びアルミニウムのうち少なくとも一種類を含む走査型電子顕微法システム。
【請求項13】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記第1検出器モジュールが、前記標本からの後方散乱電子を検出するよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項14】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記第1検出器モジュールが、前記標本からの二次電子を検出するよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項15】
請求項1に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記第1検出器モジュールが、前記標本からのX線を検出するよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項16】
走査型電子顕微法システムであって、
電子ビームを生成するよう構成された電子源と、
前記電子ビームにより標本を横断走査しその標本にて散乱された電子を1枚又は複数枚のイメージング面上へと集束させるよう構成された一組の電子光学系と、
前記1枚又は複数枚のイメージング面に配置された第1検出器モジュールと、
を備え、前記第1検出器モジュールが多画素用途特化集積回路(ASIC)を有し、その多画素ASICの各画素が、前記標本にて散乱された粒子を等価電気信号へと変換するよう構成されたフォトダイオードを備え、前記多画素ASICの各画素が、前記等価電気信号を処理する回路を有する走査型電子顕微法システム。
【請求項17】
請求項16に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記電子源が、第2電子ビームを生成するよう構成された多ビーム電子源を備え、前記一組の電子光学系が、更に、前記第2ビームにより前記標本を横断走査するよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項18】
請求項17に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記一組の電子光学系が、更に、前記電子ビーム由来で前記標本にて散乱された電子を前記多画素センサの第1画素に集束させるよう、且つ前記第2電子ビーム由来で前記標本にて散乱された第2電子を前記多画素固体センサの第2画素に集束させるよう、構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項19】
請求項16に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記多画素用途特化集積回路(ASIC)が、更に、その多画素用途特化集積回路(ASIC)の1個又は複数個の入力及び1個又は複数個の出力を基板上のトレースに接続するスルーシリコンビア(TSV)を備える走査型電子顕微法システム。
【請求項20】
請求項16に記載の走査型電子顕微法システムであって、更に、前記第1検出器モジュールに対し実質的にコプレーナな少なくとも1個の第2検出器モジュールを備え、前記第1検出器モジュール及び前記少なくとも1個の第2検出器モジュールが、前記電子ビーム用の開口を形成するよう構成されており、前記一組の電子光学系が、前記電子ビームを前記開口に通すよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項21】
請求項16に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記ASICが、第1閾値及び第2閾値を格納するよう構成されたルックアップテーブル(LUT)と、信号電荷を前記第1閾値と比較し且つ前記第2閾値と比較するよう構成された比較器と、を備え、その比較器が、各信号電荷が前記第1及び前記第2閾値の枠内にあるか否かを示す結果を生成するよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項22】
請求項16に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記第1検出器モジュールが1個又は複数個のスクリーンを備え、その1個又は複数個のスクリーンが低原子番号素材で形成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項23】
請求項22に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記低原子番号素材が、ベリリウム、炭素、硼素、マグネシウム及びアルミニウムのうち少なくとも一種類を含む走査型電子顕微法システム。
【請求項24】
請求項16に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記第1検出器モジュールが、前記標本からの後方散乱電子を検出するよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項25】
請求項16に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記第1検出器モジュールが、前記標本からの二次電子を検出するよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項26】
請求項16に記載の走査型電子顕微法システムであって、前記第1検出器モジュールが、前記標本からのX線を検出するよう構成されている走査型電子顕微法システム。
【請求項27】
標本を検査する方法であって、
走査クロック信号を生成し、
第1電子ビームを生成し、
前記走査クロック信号と同期し前記第1電子ビームを偏向させて前記標本上のあるエリアを走査し、
前記電子ビームに応じ前記標本にて生じた信号を、2個以上の画素が備わるクラスタに差し向け、
前記クラスタにより収集された電荷を、前記走査クロックに同期している第1期間にて検出することで、前記クラスタにより前記第1期間にて収集された前記電荷に対応する第1電気信号を生成し、その第1電気信号を第1ディジタル信号へと変換し、
前記クラスタにより収集された前記電荷を、前記走査クロックに同期している第2期間にて検出することで、前記第2期間にて収集された前記電荷に対応する第2電気信号を生成し、その第2電気信号を第2ディジタル信号へと変換し、但しその第2電気信号の変換を、前記第1電気信号の変換が完了する前に開始させ、且つ
前記第1ディジタル信号及び前記第2ディジタル信号を分析することで欠陥の存否を判別する方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記電荷の検出に際し前記2個以上の画素からの電荷を総和する方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記総和に際し電圧ドメイン及び電流ドメインのうち一方を総和する方法。
【請求項30】
標本を検査する方法であって、
走査クロック信号を生成し、
第1電子ビームを生成し、
前記第1電子ビームを前記標本上の第1個所の方へと偏向させ、
前記第1電子ビームに応じ前記標本にて生じた信号を画素に差し向け、
前記画素により収集された電荷を検出することで、前記画素により収集された前記電荷に対応する電気信号を生成し、且つ
前記電気信号を第1閾値及び第2閾値と比較し、前記電気信号が前記第1閾値より大きく且つ前記電気信号が前記第2閾値より小さい場合に、元素の存在有りと判別する方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記第1閾値が、前記元素の特性エネルギに対応する電気信号よりも小さく、前記第2閾値が、前記元素の特性エネルギに対応する前記電気信号よりも大きい方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、前記元素がシリコン、アルミニウム、銅、タングステン及びチタンのうち少なくとも一種類を含む方法。
【請求項33】
請求項30に記載の方法であって、更に、
前記第1電子ビームを前記標本上の第2個所の方へと偏向させ、
前記第1電子ビームに応じ前記標本にて生じた第2信号を画素に差し向け、
前記画素により収集された第2電荷を検出することで、前記画素により収集された前記第2電荷に対応する第2電気信号を生成し、
前記第2電気信号を前記第1閾値及び前記第2閾値と比較し、前記第2電気信号が前記第1閾値より大きく且つ前記第2電気信号が前記第2閾値より小さい場合に、前記元素の存在有りと判別し、且つ
前記標本上で前記元素が存在しているところのマップを生成する方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、更に、
前記第1及び第2電気信号を第3閾値及び第4閾値と比較し、前記第2電気信号が前記第3閾値より大きく且つ前記第2電気信号が前記第4閾値より小さい場合に、第2元素の存在有りと判別し、且つ
前記標本上で前記第1又は第2元素のうち少なくとも一方が存在しているところのマップを生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は総じて走査型電子顕微法の分野に関し、より具体的には、走査型電子顕微法アプリケーション用多目的センサモジュールによる適応クラスタリング及び分散ディジタイゼーション方式の実行に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願への相互参照]
本願では、Marcel Trimplを発明者とする2019年8月28日付米国仮特許出願第62/892545号に基づき優先権を主張し、参照によりその全容を本願に繰り入れる。
【0003】
半導体デバイス、例えば論理デバイス及びメモリデバイスを製造する際には、通常、多数の製造プロセスを用い基板例えば半導体ウェハを処理することで、それら半導体デバイスの様々なフィーチャ(外形特徴)及び複数個の階層を形成する。半導体デバイスサイズがますます小さくなるにつれ、より秀逸な半導体デバイスとフォトマスク検査装置及びレビュー装置とを開発することが重要になっている。走査型電子顕微法(SEM)システムはそうしたテクノロジの一つであり、それを用い標本を検査及びレビューすることができる。SEMシステムには粒子検出器が組み込まれており、それを用いることで、一次電子ビームによる標本の横断走査に応じその標本から散乱又は放射されてくる二次電子、後方散乱電子及びX線を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9767986号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SEMシステムの効率及び正確性を改善するため、粒子(例.電子及びX線)センサデバイス及び方法を改善することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
走査型電子顕微法システムを開示する。ある例証的実施形態のシステムは、電子ビームを生成するよう構成された電子源を有する。また、ある例証的実施形態のシステムは、その電子ビームにより標本を横断走査しその標本にて散乱された電子を1枚又は複数枚のイメージング面上へと集束させるよう構成された、一組の電子光学系を有する。また、ある例証的実施形態のシステムは、その1枚又は複数枚のイメージング面に配置された第1検出器モジュールを有する。また、ある例証的実施形態では、第1検出器モジュールが、その標本からの散乱粒子を等価な一組の信号電荷へと変換するよう構成された、多画素固体センサを有する。また、ある例証的実施形態では、その多画素固体センサが、自センサの1個又は複数個の画素からの前記一組の信号電荷を処理するよう構成された、複数個の用途特化集積回路(ASIC)に接続される。
【0007】
付加的及び/又は代替的な走査型電子顕微法を開示する。ある例証的実施形態のシステムは、電子ビームを生成するよう構成された電子源を有する。ある例証的実施形態のシステムは、その電子ビームにより標本を横断走査しその標本にて散乱された電子を1枚又は複数枚のイメージング面上へと集束させるよう構成された、一組の電子光学系を有する。また、ある例証的実施形態のシステムは、その1枚又は複数枚のイメージング面に配置された第1検出器モジュールを有する。また、ある例証的実施形態では第1検出器モジュールが多画素用途特化集積回路(ASIC)を有する。また、ある例証的実施形態では、その多画素ASICの各画素が、その標本にて散乱された粒子を等価電気信号へと変換するよう構成されたフォトダイオードを備え、その多画素ASICの各画素が、その等価電気信号を処理する回路を有する。
【0008】
標本検査方法を開示する。ある例証的実施形態の方法では走査クロック信号を生成する。また、ある例証的実施形態の方法では第1電子ビームを生成する。また、ある例証的実施形態の方法では、その走査クロック信号と同期し第1電子ビームを偏向(方向転換)させてその標本上のあるエリアを走査する。また、ある例証的実施形態の方法では、その電子ビームに応じその標本にて生じた信号を、複数個の画素が備わるクラスタに差し向ける。また、ある例証的実施形態の方法では、そのクラスタにより収集された電荷を、その走査クロックに同期している第1期間にて検出することで、そのクラスタにより第1期間にて収集された電荷に対応する第1電気信号を生成し、第1電気信号を第1ディジタル信号へと変換する。また、ある例証的実施形態の方法では、そのクラスタにより収集された電荷を、その走査クロックに同期している第2期間にて検出することで、第2期間にて収集された電荷に対応する第2電気信号を生成し、第2電気信号を第2ディジタル信号へと変換し、但し第2電気信号の変換を第1電気信号の変換が完了する前に開始させる。また、ある例証的実施形態の方法では、第1ディジタル信号及び第2ディジタル信号を分析することで欠陥の存否を判別する。
【0009】
付加的及び/又は代替的な標本検査方法を開示する。ある例証的実施形態の方法では走査クロック信号を生成する。また、ある例証的実施形態の方法では第1電子ビームを生成する。また、ある例証的実施形態の方法では、第1電子ビームをその標本上の第1個所の方へと偏向させる。また、ある例証的実施形態の方法では、第1電子ビームに応じその標本にて生じた信号を画素に差し向ける。また、ある例証的実施形態の方法では、その画素により収集された電荷を検出することで、その画素により収集された電荷に対応する電気信号を生成する。また、ある例証的実施形態の方法では、その電気信号を第1閾値及び第2閾値と比較し、その電気信号が第1閾値より大きく且つその電気信号が第2閾値より小さい場合に、元素の存在有りと判別する。
【0010】
理解し得るように、前掲の概略記述及び後掲の詳細記述は共に専ら例示的且つ説明的なものであり、特許請求の範囲記載の発明を必ずしも限定するものではない。添付図面は、本明細書に組み込まれて一部分をなし、本発明の諸実施形態を描出し、概略記述と相俟ち本発明の諸原理を説明する役目を有している。
【0011】
本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)であれば、添付図面を参照することによって、本件開示の数多な長所をより良好に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る走査型電子顕微法システムを描出する図である。
図2A】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り二次電子検出器として構成されている多画素検出器モジュールを描出する図である。
図2B】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り後方散乱電子及び/又はX線検出器として構成されている多画素検出器モジュールを描出する図である。
図2C】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り多電子ビームコンフィギュレーションに従い配列されている多画素検出器モジュールを描出する図である。
図3A】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りASICにより指定個数のチャネルに配給されるクラスタの結合を描出する図である。
図3B】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りASICにより指定個数のチャネルに配給されるクラスタの結合を描出する図である。
図3C】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りASICにより指定個数のチャネルに配給されるクラスタの結合を描出する図である。
図3D】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りASICにより指定個数のチャネルに配給されるクラスタの結合を描出する図である。
図4A】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りセンサ・ASIC間接続及び単一読出しチャネル内動作のブロック構成を描出する図である。
図4B】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係るセンサ画素の粗フロアプラン(平面配置)の概念的構成を描出する図である。
図5A】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る検出器モジュールの実体アセンブリを描出する図である。
図5B】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る検出器モジュールの実体アセンブリを描出する図である。
図5C】本件開示の1個又は複数個の付加的及び/又は代替的実施形態に係る検出器モジュールの実体アセンブリを描出する図である。
図5D】本件開示の1個又は複数個の付加的及び/又は代替的実施形態に係る検出器モジュールの実体アセンブリを描出する図である。
図6A】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り数個のASIC内ADCを用いクラスタを処理する分散ディジタイゼーション方式のタイミングの概念的構成を描出する図である。
図6B】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り、1個又は複数個の画素からの信号に対するサンプルアンドホールド回路の適用並びにそれに後続するその信号のアナログディジタル変換、の概念的構成を描出する図である。
図7】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り読出しASICの画素内に設けられているアナログディジタル変換(ADC)ユニットのブロック構成を描出する図である。
図8】本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る標本検査方法を示すフローチャートを描出する図である。
図9】本件開示の1個又は複数個の付加的及び/又は代替的実施形態に係る標本検査方法を示すフローチャートを描出する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ある種の実施形態及びその具体的諸特徴との関連で本件開示を具体的に図示及び記述する。本願中で説明される諸実施形態は限定ではなく例証であるものと把握されるべきである。いわゆる当業者には直ちに察せられるべきことに、本件開示の神髄及び技術的範囲から離隔することなく形態及び細部に様々な改変及び修正を施すことができる。以下、開示されており添付図面に描かれている主題を詳細に参照する。
【0014】
本件開示の諸実施形態は、走査型電子顕微法アプリケーションに適する多目的センサモジュール及び方法であり、適応クラスタリング及び分散ディジタイゼーション方式を伴うものを指向している。
【0015】
図1には、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る走査型電子顕微法(SEM)システム100の概念的構成が描かれている。本SEMシステム100は、検査及び/又はレビューツールとして構成することができる。その場合、本SEMシステム100を用い欠陥に関し標本128をレビュー及び/又は検査すること、並びにその標本128及び/又は欠陥の物質的組成を解明することができる。これに代え、本SEMシステム100を撮像式オーバレイ計量ツールとして構成することもできる。その場合、本SEMシステム100を用い、標本128上に配置されているオーバレイ計量ターゲットの像を捉えることができ、そしてそれを用いその標本128の相次ぐ諸層間のオーバレイ誤差を求めることができる。
【0016】
実施形態のSEMシステム100は電子源102を有している。電子源102は、1本又は複数本の電子ビーム106を生成するのに適する何れの電子源であってもよい。電子源102は、1個又は複数個の電子エミッタ101を有するものとすることができる。例えば、その1個又は複数個の電子エミッタ101を単一の電子エミッタで構成してもよい。また例えば、その1個又は複数個の電子エミッタ101を複数個の電子エミッタで構成してもよい。その1個又は複数個の電子エミッタ101には、電子放出の分野で既知なあらゆる電子エミッタを含めることができる。電子源102は、1個又は複数個のエクストラクタ103を有するものとすることができる。
【0017】
実施形態のSEMシステム100は電子光学システム111を有しており、その電子光学システム111では一組の電子光学系が電子光学カラムの態で配列されている。電子光学システム111は、標本128上に電子ビーム106を集束させる集束光学系を1個又は複数個有するものとすることができる。電子光学システム111は、標本128をビーム106で横断走査するよう構成された偏向光学系を、1個又は複数個有するものとすることができる。電子光学システム111に設ける集束及び偏向光学系を、走査型電子顕微法の分野で既知な何れの集束及び偏向光学系としてもよい。例えば、その1個又は複数個の集束光学系のなかに、これに限られるものではないが1個又は複数個のコンデンサレンズ107や1個又は複数個の対物レンズ110を含めることができる。その1個又は複数個の偏向光学系のなかに、これに限られるものではないが1個又は複数個のデフレクタ(例.走査コイル)を含めることができる。例えば、電子光学システム111を、1個又は複数個のデフレクタ105と、1個又は複数個の下デフレクタ109とを、有するものとすることができる。動作時には電子源102にて電子ビーム106が生成される。その電子ビーム106を、電子光学システム111に備わる複数個の集束及び偏向光学系105,107,109,110により、可動ステージ130上に配置されている標本128上へと集束及び偏向させることができる。実施形態によっては、電子源102にて複数本のビームを生成し、それらを標本128上へと集束及び偏向させることもできる。注記されることに、電子源102及び電子光学カラム111を配列する際、単ビームコンフィギュレーションの態としても、複数個の電子源/カラムを有する多ビームコンフィギュレーションの態としてもよい。
【0018】
実施形態のシステム100は、電子光学システム111内の1個又は複数個の指定個所に配置された1個又は複数個の検出器モジュールを有している。その1個又は複数個の検出器モジュール各々が、1個又は複数個の多画素固体センサを有している。例えば、検出器モジュール122a、122b及び/又は122cそれぞれを、1個又は複数個の固体センサを有するものとすることができる。例えば、第1の多画素検出器モジュール122aを標本128から離れたところに配置し、その検出器モジュール122aに備わる1個又は複数個の多画素固体センサの検出器平面上に、その標本にて散乱され電極121により収集及び加速された二次電子129が集まるようにすることができる。また例えば、検出器モジュール122b及び/又は122cを標本128の近くに配置し、これに限られるものではないがその標本128に発する後方散乱電子、X線及び/又はオージェ電子等の粒子(例.非常に高い立体角にてその標本から発せられる粒子)がそこに集まるようにすることができる。図1に示す通り、検出器モジュール122a~122cのうち1個又は複数個を、その電子光学カラム内に配置することができる。注記されることに、本件開示の技術的範囲は、図1に示されている位置又は個数の検出器モジュールに限定されるものではなく、何個の多画素検出器モジュール及び何通りの位置をシステム100内に設けることもできる。
【0019】
実施形態では、検出器モジュール122a、122b及び/又は122cに備わる多画素固体センサのうち1個又は複数個が、複数個の論理素子に接続されている。例えば、それら多画素固体センサのうち1個又は複数個を、複数個の用途特化集積回路(ASIC)に接続することができる。実施形態では、それら複数個の論理素子が、所与の多画素固体センサの画素群からの一組の信号電荷を処理するように構成されている。注記されることに、その1個又は複数個の検出器モジュールにて利用される論理素子は、画素群からの信号電荷を処理するのに適し本件技術分野にて既知な何れの論理素子でもよいが、単純化を目的として、ASICの文脈に沿い検出器モジュールにつき記述することにする。こうした構成を以て、本件開示の技術的範囲に対する限定として解すべきではない。
【0020】
図2A図2Cには、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りシステム100内での使用に適する多画素検出器モジュールにつき、様々な構成が描かれている。図2Aに描かれている構成の多画素検出器モジュールは、二次電子検出器としての使用に適している。図2Bに描かれている構成の多画素検出器モジュールは、後方散乱電子及び/又はX線検出器としての使用に適している。図2Cに描かれている構成の多画素検出器モジュールは多電子ビームシステム用であり、どの電子ビームを由来とする偏向信号もその多画素検出器モジュールにて同時検出される。
【0021】
図2Aに示す実施形態では、多画素検出器モジュール122が基板キャリア201を有している。例えば、その基板キャリア201をセラミック素材入りのものとし、ASICにより読み取られる多画素固体センサをその上に実装することができる。基板キャリア201は駆動制御電圧用に一組の導電コンタクト203を有しており、且つそのモジュールによるデータ収集を可能とするデータ路を提供している。エリア202は1個のASICによりカバーされるエリアを表している。図2Bに示す例では、エリア202が、ASIC1個によりカバーされるエリアであり、4mm×4mmのサイズを有していて16×16個の画素読出しチャネルが組み込まれうるものを、表している。注記されることに、本件開示の技術的範囲は、画素群のASICクラスタリングの個数、サイズ又は位置を図2Aに示すそれにしたものに、限定されるものではない。寧ろ、注記されることに、用例の違いを踏まえ相異なるASICクラスタリングコンフィギュレーションを実施することができる。表1には、クラスタサイズ及びその帰結たるクラスタ変換速度が示されている。
【0022】
【表1】
【0023】
この例は、250μmのセンサ画素、ASIC1個当たり合計16×16個の読取対象センサ画素、並びに各読出し画素に組み込まれていて変換速度が3MHzのデータコンバータを、用いたものである。
【0024】
図2Aの例では8×8画素サイズのクラスタが作成されており、ASIC1個につき合計4個のクラスタが生成されている。こうした構成は二次電子検出器の場合にとりわけ有用たりうる。この構成におけるクラスタ毎変換速度は約200MHzとなる。更に、ASICにより生成されたクラスタを下流のデータ路上で再処理し、その検出器のサブチャネルを1個又は複数個生成することができる。注記されることに、図2Bに描かれている例ではそのモジュールにより5個のチャネルが生成されている。
【0025】
図2Bに示す実施形態によれば、複数個の検出器モジュールを設けることができる。図2Bに示す例では複数個の検出器モジュール122(例.2個、3個、4個、5個、6個、N個の検出器モジュール)が1次ビーム106の周囲に配列され、それにより標本平面(例.ウェハ平面)付近に通過開口205が形成されているので、後方散乱電子及び/又はその他の粒子例えばX線やオージェ電子を高い立体角にて集めることができる。実施形態によっては、各検出器モジュール122を、その検出の目的を踏まえ別様に構成することができる。図2Bに示す用例では、2×2なるクラスタサイズで以て3個の検出器モジュールがかたちづくられており、そのうちある1個の検出器モジュール(右上)が、その標本により放射されるX線を検出しうるよう構成されている。注記されることに、その配列、個数及びクラスタサイズは前述のものに限定されない。寧ろ、注記されることに、図2Bに示す一組の検出器モジュールにおいて、何個のモジュール122をどのようなパターンに従い配列して開口205を形成するのでもよく、またそれらモジュールがどのようなクラスタサイズを有するのでもよい。注記されることに、4×4サイズのクラスタを用いることで、50MHz近いクラスタ変換速度をもたらすことができる。X線検出の場合、検出器モジュールを、これに限られるものではないが3MHz等、低い変換速度にて各画素(例.1×1のクラスタ)を個別に読み取るよう構成してもよい。
【0026】
実施形態によっては、検出器モジュール122のうち1個又は複数個にスクリーン204を設けることができる。1個又は複数個のモジュール122の頂部上にスクリーン204を挿入することができる。そのスクリーンは低原子番号の薄手素材で形成することができる。例えば、スクリーン204を、これに限られるものではないが50~150μm厚の薄手ベリリウムスクリーンで構成することができる。例えば、そのスクリーンを100μm厚ベリリウムスクリーンとすることができる。また例えば、そのスクリーンを、そのセンサモジュール122上に直接形成された素材層で構成することができる。例えば、そのスクリーンを、これに限られるものではないが、センサモジュール122上に直接堆積された硼素、炭素又はアルミニウムの層を有するものと、することができる。動作時には、このスクリーン204は、走査中に標本にて散乱された電子を吸収する一方、走査中にその標本にて生じたX線の大半を通すので、より効率的な検出が実現される。スクリーン204は、検出器モジュールのうち1個又は複数個に付加することができ、また、恒久的に実装することや、その挿入及び抜出が可能でモジュール122の構成を変えうるものにすることができる。注記されることに、スクリーン204の利用形態は図2Bに示した構成に限られず、1個又は複数個のスクリーン204を何個の検出モジュール122と共に、またどのような配列に従い、利用してもよい。
【0027】
図2Cに示す実施形態では、検出器モジュール122のASICが4×4なるクラスタサイズで以て作成されている。注記されることに、こうした検出器モジュールを仮に多ビームコンフィギュレーションのSEMシステム100内に設けたとしたら、そのモジュールで以て、合計400本の散乱ビームが50MHzに近い速度にて検出されよう。
【0028】
図3A図3Dには、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係りASICにより指定個数のチャネルに配給されるクラスタの組合せが描かれている。注記されることに、それら複数個のチャネルの形成を図3A図3Dに示す如く調整して、そのSEMシステム100の様々な用例向けのものとすることができる。例えば図3Aには、1個のセンターチャネル301及び4個のサイドチャネル302a,302b,302c,302dを有する構成が描かれている。クラスタの組合せは走査中に動的に実行することができ、それによってそのモジュール122内でチャネルの形状及びサイズを変化させることができる。こうした特徴により、走査中における散乱ビーム129の変化、例えば1次ビーム106の合焦/離焦状態の変化や散乱ビーム129の放浪に対処することができる。例えば、図3Bのクラスタ構成を実施することで、散乱電子ビーム129が放浪又はドリフトしてそのモジュールの中心位置から非中心位置へと動く状況に、対処することができる。
【0029】
また例えば、図3Cのクラスタ構成を実施することで、大き目なセンターチャネルが必要な状況に対処することができる。また例えば、図3Dのクラスタ構成を実施することで、小さ目なセンターチャネルが必要な状況に対処することができる。また例えば、複数個の別々なクラスタを組み合わせて単一のセンターチャネルにすることができる。
【0030】
図4Aには、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係るセンサ・ASIC間接続及び単一読出しチャネル内動作のブロック構成が描かれている。
【0031】
実施形態では、画素1個当たり少なくとも一通りの接続で以てセンサ401が1個又は複数個のASIC402に付設されている。ある構成によれば、そのセンサ画素403を浮動拡散ノード(FD)例えば浮動拡散キャパシタで構成することで、増幅器段のゲートに接続されているボリューム内に、その画素内で生じた電荷が集まるようにすることができる。本例によれば、その増幅器段を共通電圧VOD(電圧ドレイン)によりバイアスすることができる。その増幅器段の出力(OS)を、そのASICの個別の読出し画素404に接続して更なる処理に供することができる。実施形態によっては、そのセンサ画素内増幅器を適宜接続することで、そのソース電位が一定電圧でバイアスされ且つそのドレインにて信号が読み取られるようにすることができる。
【0032】
実施形態ではその浮動拡散ノードの電圧がリセット段により制御されている。この構成によれば、そのリセット段を単純なリセットトランジスタが備わるものとし、そのトランジスタのドレインを大域リセット電圧(RD)に接続することができる。そのリセット段を、リセットゲート(RG)を通じ制御することができる。
【0033】
実施形態によっては、そのセンサアレイの全画素にとり共通な大域信号を、そのリセットゲートにより供給することができる。
【0034】
実施形態によっては、そのセンサ層の画素のリセットゲートと、そのASICの各画素内のリセット回路ユニットとの間に、付加的な画素毎コンタクトを設けることができる。
【0035】
本アセンブリの上部センサ段401を、「走査型電子顕微鏡並びに標本検査及びレビュー方法」(Scanning electron microscope and methods of inspecting and reviewing samples)と題し2017年9月19日付で発行されたBrown et al.名義の特許文献1に記載の浮動拡散テクノロジ及び抵抗性ゲートを利用するセンサ層とすることができるので、参照によりその全容を本願に繰り入れることにする。
【0036】
実施形態によっては、読出しASICに付設されたセンサ層401の使用に代え、フォトダイオードをそのASICの各画素内に設けて、走査中に標本128から偏向粒子を検出することができる。このフォトダイオードは、10V超の電源レールでの高電圧(HV)プロセスによる深部注入の使用により、作成することができる。
【0037】
実施形態では、読出しASICの画素404が、センサ画素からの信号を入力段で以て受け取っている。増幅器出力とその入力段との間の寄生インピーダンスを最低限に保つことで、最大限の処理速度を所与の消費電力にて達成することができる。その入力段を、その画素からの信号と隣接画素群からの信号とを総和するクラスタ総和回路により、クラスタに接続している。図4Aには、すぐ隣にある2個の画素に対する中央の画素からの接続が示されており、また周辺にある他の画素群からの付加的入力が示されている。そのクラスタの現実的なサイズは1~10画素の範囲内とされるべきである;但し、1画素のクラスタとは、総和がディスエーブル化され各画素が個別処理されるそれのことである(例.表1記載の例を参照)。その後は、このクラスタ信号をディジタイゼーション及び付加的処理により更に処理すればよい。そのディジタイゼーションステップには、標準的なアナログディジタル変換を、等距離量子化ステップや、図7にて詳述される多閾値化学元素サーチと共に、組み込むことができる。個別事象検出が必須なアプリケーション向けに、各事象の到来をその走査クロックで以て記録しその標本上の走査個所にその事象を割り当てるタイムスタンプユニットを、設けることもできる。注記されることに、この後処理の一部分には、各画素からのデータを各ASIC外に取り出すのに必要なデータストリームハンドリングが組み込まれる。画素値の総和を、ディジタイゼーション後に後処理ユニット内で実行してもよい。
【0038】
実施形態によれば、リセット回路をそのディジタイゼーションユニットによりトリガすることで、そのセンサ画素のリセットゲートの電圧を制御することができる。そのリセット回路では高電圧プロセス部品が用いられており、それによりそのリセット段に相応しい電圧を供給して機能させることができる(例.10~30V)。そのリセットゲートの制御を、リセットパルスにより浮動拡散をリセットする形態とすることができる。画素毎リセットにより、そのセンサ画素のダイナミックレンジを無限に拡大すること及びそのセンサ内の画素間の粒子束変動に対処することができる。そうしたリセットパルスをそのセンサの全画素に関し同期させることで、大域リセットの機能を模することができる。センサアレイ全体を通じルーティングされる大域リセットに比しかなり小さな静電容量が駆動されることから、画素毎リセットの利用によって、より低電力での非常に高速なリセットが可能となる。そのリセット回路からアナログ電圧を供給することで、浮動拡散に対する閉ループフィードバック制御を形成して、画素対画素トランジスタ変動及び熱ドリフトに対する免疫性を増強することもできる。
【0039】
図4Bには、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係るセンサ画素の粗フロアプランの概念的構成が描かれている。図4Bに示すセンサ画素粗フロアプランでは、リセットゲート(RG)及び出力信号(OS)が読出しASICその他のバイアスポイントに接続されており、そのセンサ画素のリセットドレイン(RD)及び電圧ドレイン(VOD)がそのセンサアレイ全体に亘り大域信号としてルーティングされている。諸実施形態のうち、リセットゲート(RG)がASICの画素毎に設けられていないものでは、リセットドレイン及び電圧ドレイン信号と同様に、そのリセットゲート(RG)をそのセンサ上でロー毎に或いは大域的にルーティングすることができる。
【0040】
図5A及び図5Bには、それぞれ、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る検出器モジュール122の実体アセンブリが描かれている。
【0041】
図5Aには一実施形態に係る多画素検出器モジュールの背面外観が示されており、数個のASIC507がそのセンサに接続されている。この眺望はそれらASICの背面上へと向かうそれである。図5Bには、背面処置501付の多画素固体センサ502を有する検出器モジュール122の側面外観が示されている。実施形態によっては、その背面処置を硼素被覆込みのものとすることができる。実施形態ではそのセンサ層が半田バンプを介しスルーシリコンビアインタポーザ(TSI)504に接続されている。その他のアセンブリ技術、例えばDBI(Direct-Bond-Interconnect;商標)を利用してもよい。約100μm厚のTSIでは精細なピッチ(10μm~20μm)を利用することができる。スルーシリコンビア505により、そのTSIの表側をその裏側と電気的に接続することができる。TSIにおけるTSVのピッチは、そのセンサ又はASICにおける画素ピッチよりもかなり密にすることができる。そのTSIの裏側にて、複数個(例.4個以上)の金属層506が備わる多金属再分配層(RDL)を用いることで、そのセンサからの様々な画素出力をASIC507の入力へとルーティングすること、またそれを様々なピッチにて行うことができる。例えば、そのセンサ層上の250μm×250μmサイズ画素を、ASIC内の約180μm×180μmサイズの画素とマッチングさせることができよう。
【0042】
図5Bに示す実施形態によれば、そのASICによりTSVを体現することができ、またそのASICの入出力を、そのASICの裏側で、メカニカル基板509上の導電接続部に接続することができる。各ASICにより16×16画素がカバーされている場合、ASIC・センサ間の画素サイズ差により、アセンブリマージンとしてASIC間に約1mmのスペースを残すことができる。
【0043】
実施形態によってはASICにTSVが組み込まれないことがある。その場合は図5C及び図5Dに示す代替的アセンブリを実施すればよい。本実施形態では、そのセンサの側部にある1本のASICロー511をずらすことで、その基板への接続向けにワイヤボンディングパッドを露出させアクセス可能としている。そのセンサエリアの下方にあるASIC相互間での駆動信号及びデータの転送は、そのTSIに対する付加的な半田接続を通じ達成することができ、またそれらはそのTSIのRDL内で他のASICへとルーティングされることとなる。
【0044】
注記されることに、検出器モジュール122にて1個又は複数個のASIC内TSVが利用される実施形態では、そのモジュールの感応エリア内にギャップを生成することなく、無限スケーリング可能な検出器モジュールの構築を行うことができる。
【0045】
図5Dに示されているアセンブリは、以下の手順を用い製造することができる。
【0046】
指定厚(例.約100μm)を呈するようTSI504を作成し、指定厚(例.約100μm)までASIC507を薄化させ、薄化されていないセンサ502を提供すればよい。まず、ハンドルウェハ(図示せず)をセンサ502の表側(図5Dでの図示によればセンサ502の下側)に装着すればよい。その上で、センサ502の裏側を薄化させればよい。薄化後にセンサ502の裏側を処置すればよい。例えば、センサ502の裏側を硼素注入プロセスで以て処置して硼素注入層501を形成すればよい。その上で、ハンドルウェハ(図示せず)をセンサ502の裏側(図5Dでの図示によればセンサ502の上側)に装着すればよい。次いで、そのハンドルウェハをセンサ502の表側から除去すればよい。その上で、センサ502の表側を(例.半田バンプ又は直接接合(DBI)技術で以て)1個又は複数個の接続機構503を介しそのTSIの表側に導電接続すればよい。加えて、ASIC507を再分配層506で以てTSI504の裏側に導電接続すればよい。そして、そのハンドルウェハをセンサ502の裏側から除去し、そのセンサ/TSI/ASICアセンブリを基板509に装着すればよい。そのハンドルウェハを、センサ/TSI/ASICアセンブリを基板509に装着した後に除去するのでもよい。
【0047】
注記されることに、図5Bに示したアセンブリを製造する手順も、図5Dに示したアセンブリ向けの手順と、類似した方法に則るものとすることができる。加えて、図5Bのアセンブリの製造に際しては、ASICにTSV(スルーシリコンビア)を付設し、ハンドルウェハを用いASIC507を薄化させて基板509に実装し半田バンプ513で以てパッドと導電接続する付加的な工程を行えばよい。
【0048】
図6Aには、本件開示の1個又は複数個の実施形態に従い、数個のASIC内ADCを用いクラスタを処理する分散ディジタイゼーション方式のタイミングの概念的構成600が描かれている。注記されることに、この分散ディジタイゼーション方式では、これに限られるものではないが256個等、何個のADCを用いることもできる。図6Bには、1個又は複数個の画素からの信号に対するサンプルアンドホールド回路及びそれに後続するその信号のアナログディジタル変換の概念的構成610が示されている。図6Bに示す通り、各ディジタイザにて高速S&H回路を用い標本走査クロックt1の速度でアナログ値を保持(ホールド)すること、即ち電子ビームにより標本がラスタ走査される速度にて保持することができる。その後、各ADCにて、t1よりもかなり低速な変換期間t2の間に、そのアナログ値をディジタル値に変換することができる。変換期間t2は、標本走査の回数、並びに結合されて単一クラスタを構成する画素(ひいてはADC)の個数に対し、無矛盾なものとする。一例としては、そのセンサの8×8画素を結合させて単一クラスタとし、64個のADCをそのクラスタの変換に用いることができよう。この例では、3MHzなる単一の変換周波数により192MHzなるウェハ走査クロックをサポートすることができる。
【0049】
図7には、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係り読出しASICの各画素内にあるアナログディジタル変換(ADC)ユニット700が描かれている。実施形態では、冒頭のS&Hユニット内に、標本走査のクロックサイクル毎に検出器からの捕捉済信号が格納される。その上で、ADC700を用い、SAR(逐次近似レジスタ)ADC原理に従い古典的アナログディジタル変換を行うことができる。「ADCモード」では、DAC(ディジタルアナログコンバータ)に、等距離ディジタイゼーションをもたらすバイナリサーチを踏まえ標準的な変換ステップが組み込まれた標準的な変換テーブルたるルックアップテーブル(LUT)が、供給される。
【0050】
実施形態によれば、そのDACを、例えばシリコン、アルミニウム、銅、チタンその他、標本走査中に出現しうる化学元素の上閾値及び下閾値(エネルギ窓を定めるそれ)と等価な参照レベルが入っているルックアップテーブル(LUT)により、駆動することもできる。各信号とそのエネルギ窓との比較の結果として、特定の化学元素の存否が判明する。このモードのことを「元素IDモード」と呼ぶことができる。実施形態によれば、ADCユニット700を、ADCモード・元素IDモード間で切り換えることができる。注記されることに、ADCモード・元素IDモード間切換に必要なのは、そのADCにて用いられるルックアップテーブルを異なる構成にすることだけである。そのADCユニット内に、検出すべき特定の元素それぞれに関しエネルギ窓を定める上閾値用のそれ及び下閾値用のそれを含め、複数個の比較器を設けることができる。
【0051】
図8には、本件開示の1個又は複数個の実施形態に係る標本検査方法800のフローチャートが描かれている。本願にて注記されることに、方法800の諸ステップはシステム100により全て又は部分的に実施することができる。とはいえ、更なる認識によれば、本方法800はシステム100に限定されるものではなく、付加的又は代替的なシステムレベル実施形態にて方法800の諸ステップの全て又は一部を実行することもできる。
【0052】
本方法のステップ802では走査クロック信号を生成する。本方法のステップ804では第1電子ビームを生成する。本方法のステップ806では、その走査クロック信号と同期し第1電子ビームを偏向させることで、標本上のあるエリアを走査する。本方法のステップ808では、その電子ビームに応じその標本にて生じた信号を、複数個の画素が備わるクラスタに差し向ける。本方法のステップ810では、そのクラスタにより収集された電荷を、その走査クロックに同期している第1期間にて検出することで、そのクラスタにより第1期間にて収集された電荷に対応する第1電気信号を生成し、その第1電気信号を第1ディジタル信号へと変換する。本方法のステップ812では、そのクラスタにより収集された電荷を、その走査クロックに同期している第2期間にて検出することで、第2期間にて収集された電荷に対応する第2電気信号を生成し、その第2電気信号を第2ディジタル信号へと変換し、但しその第2電気信号の変換を、第1電気信号の変換が完了する前に開始させる。本方法のステップ814では、第1ディジタル信号及び第2ディジタル信号を分析することで欠陥の存否を判別する。
【0053】
図9には、本件開示の1個又は複数個の付加的及び/又は代替的実施形態に係る標本検査方法900のフローチャートが描かれている。本願にて注記されることに、方法900の諸ステップはシステム100により全て又は部分的に実施することができる。とはいえ、更なる認識によれば、本方法900はシステム100に限定されるものではなく、付加的又は代替的なシステムレベル実施形態にて方法900の諸ステップの全て又は一部を実行することもできる。
【0054】
本方法のステップ902では走査クロック信号を生成する。本方法のステップ904では第1電子ビームを生成する。本方法のステップ906では、第1電子ビームをその標本上の第1個所の方へと偏向させる。本方法のステップ908では、第1電子ビームに応じその標本にて生じた信号を画素に差し向ける。本方法のステップ910では、その画素により収集された電荷を検出することで、その画素により収集された電荷に対応する電気信号を生成する。本方法のステップ912では、その電気信号を第1閾値及び第2閾値と比較し、その電気信号が第1閾値より大きく且つその電気信号が第2閾値より小さい場合に、元素の存在有りと判別する。
【0055】
翻って図1によれば、実施形態に係るシステム100はコントローラ140を有している。そのコントローラ140を用い、電子源102、電子光学カラム111及び/又は検出器アセンブリ122a~122cに一通り又は複数通りの制御信号Cを供給することができる。こうすることで、コントローラ140によりSEMシステム100のあらゆる側面を制御することができる。実施形態におけるコントローラ140は、標本128に備わる1個又は複数個の特徴(例.欠陥、パターンフィーチャ、計量ターゲット等)を示し又はそれを包含する一通り又は複数通りの画像データ信号ID1,ID2を、検出器アセンブリ122a~122cから受け取ることができる。コントローラ140は、記憶媒体に格納されているプログラム命令を実行するよう構成された1個又は複数個のプロセッサを、有するものとすることができる。この場合、コントローラ140に備わる1個又は複数個のプロセッサにより、本件開示の随所に記載されている様々なプロセスステップの何れをも実行することができる。
【0056】
本願記載の何れの方法でも、それら方法実施形態の1個又は複数個のステップの結果をメモリ内に格納することができる。それら結果に本願記載の何れの結果が含まれていてもよいし、それら結果を本件技術分野で既知な何れの要領で格納してもよい。そのメモリには、本願記載のあらゆるメモリ、或いは本件技術分野にて既知で好適な他のあらゆる格納媒体が含まれうる。結果格納後は、そのメモリ内の諸結果にアクセスすること、それら結果を本願記載の方法又はシステム実施形態のうち任意のもので用いること、ユーザへの表示向けにフォーマットすること、別のソフトウェアモジュール、方法又はシステムにて用いること等々ができる。更に、結果格納は「恒久的」でも「半恒久的」でも「一時的」でも或いは幾ばくかの期間に亘るものでもよい。例えば、そのメモリをランダムアクセスメモリ(RAM)としてもよく、結果がそのメモリ内に必ずしも永久には存在しないのでもよい。
【0057】
更なる熟考によれば、上述した方法の諸実施形態それぞれに、本願記載の何れの他方法(群)の何れの他ステップ(群)をも、組み込むことができる。加えて、上述した方法の諸実施形態それぞれを本願記載のシステムの何れにより実行してもよい。
【0058】
いわゆる当業者には理解し得るように、本願記載の諸部材、諸動作、諸デバイス、諸物体及びそれらに付随する議論は概念的明瞭さに資する例として用いられており、様々な構成上の修正が慮内とされている。従って、本願での用法によれば、先に説明した具体的な手本及びそれに付随する議論の意図は、それらのより一般的な分類階級の代表たることにある。一般に、どのような具体的手本の使用の意図もその分類階級の代表たることにあるので、具体的な諸部材、諸動作、諸デバイス及び諸物体が含まれていないことを限定として捉えるべきではない。
【0059】
本願で用いられている方向指示語、例えば「頂」、「底」、「上方」、「下方」、「上寄り」、「上向き」、「下寄り」、「下降」及び「下向き」の趣旨は、記述目的で相対位置を提示することにあり、絶対座標系を指定する趣旨ではない。様々な修正を記載諸実施形態になしうることはいわゆる当業者にとり明らかであろうし、本願にて規定されている一般的諸原理は他の諸実施形態にも適用することができる。
【0060】
本願におけるほぼ全ての複数形語及び/又は単数形語の使用に関し、いわゆる当業者は、文脈及び/又は用途に見合うように、複数形から単数形へ及び/又は単数形から複数形へと読み替えることができる。明瞭性のため、本願では、様々な単数形/複数形読み替えについて明示的に説明していない。
【0061】
本願記載の主題は、様々な部材が他部材内に組み込まれ又は他部材に接続・連結されることを往々にして表している。ご理解頂けるように、それら図示アーキテクチャは単なる例示であり、実のところは、他の多くのアーキテクチャを実施し同じ機能を実現することが可能である。概念的には、同じ機能を実現する部材配置は皆、その所望機能が実現されるよう有効に「連携」しているのである。従って、本願中の何れの二部材であれ特定機能を実現すべく組み合わされているものは、その所望機能が実現されるよう互いに「連携」していると見なせるのであり、アーキテクチャや介在部材の如何は問われない。同様に、何れの二部材であれそのように連携しているものはその所望機能を実現すべく互いに「接続・連結され」又は「結合され」ているとも見ることができ、また何れの二部材であれそのように連携させうるものはその所望機能を実現すべく互いに「結合可能」であるとも見ることができる。結合可能、の具体例としては、これに限られないが、部材同士が物理的に嵌合可能であり及び/又は物理的に相互作用すること、及び/又は部材同士が無線的に相互作用可能であり及び/又は無線的に相互作用すること、及び/又は部材同士が論理的に相互作用可能であり及び/又は論理的に相互作用することがある。
【0062】
更に、理解し得るように、本発明は別項の特許請求の範囲によって定義される。いわゆる当業者にはご理解頂けるように、総じて、本願特に別項の特許請求の範囲(例.別項の特許請求の範囲の本文)にて用いられる語は概ね「開放」語たる趣旨のものである(例.語「~を含んでいる」は「~を含んでいるが~に限られない」、語「~を有している」は「少なくとも~を有している」、語「~を含む」は「~を含むが~に限られない」等々と解されるべきである)。いわゆる当業者にはやはりご理解頂けるように、ある具体的個数の請求項内導入要件を意図しているのであれば、その意図がその請求項に明示されるので、そうした要件記載がなければそうした意図がないということである。例えば、理解の助けとして、後掲の添付諸請求項には、導入句「少なくとも1個」及び「1個又は複数個」の使用による請求項内要件の導入が組み込まれているものがある。しかしながら、不定冠詞「a」又は「an」による請求項内導入要件の導入によりその請求項内導入要件を含む個別請求項全てがその構成要件を1個しか含まない発明に限定される、といった含蓄があるかのように、そうした語句の使用を解釈すべきではないし、まさにその請求項に導入句「1個又は複数個」又は「少なくとも1個」と不定冠詞例えば「a」又は「an」が併存している場合でもそう解釈すべきではないし(例えば「a」及び/又は「an」は、通常、「少なくとも1個」又は「1個又は複数個」を意味するものと解すべきである)、またこれと同じことが定冠詞の使用による請求項内要件の導入に関しても成り立つ。加えて、ある請求項内導入要件につき具体的な個数が明示されている場合でも、いわゆる当業者には理解し得るように、通常は、少なくともその明示個数、という意味にその個数記載を解すべきである(例.他の修飾語句を欠く「2個の構成要件」なる抜き身的表現は、通常、少なくとも2個の要件或いは2個以上の要件という意味になる)。更に、「A、B及びCのうち少なくとも1個等々」に類する規約が用いられている例では、総じて、いわゆる当業者がその規約を理解するであろう感覚に従いそうした構文が企図されている(例.「A、B及びCのうち少なくとも1個を有するシステム」には、これに限られるものではないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A・B双方、A・C双方、B・C双方、及び/又は、A・B・C三者を有するシステム等々が包含されることとなろう)。「A、B又はCのうち少なくとも1個等々」に類する規約が用いられている例では、総じて、いわゆる当業者がその規約を理解するであろう感覚に従いそうした構文が企図されている(例.「A、B又はCのうち少なくとも1個を有するシステム」には、これに限られるものではないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A・B双方、A・C双方、B・C双方、及び/又は、A・B・C三者を有するシステム等々が包含されることとなろう)。やはりいわゆる当業者には理解し得るように、2個以上の代替的な語を提示する分離接続詞及び/又は分離接続句はほぼ全て、明細書、特許請求の範囲及び図面のうちどこにあるのかを問わず、一方の語、何れかの語、或いは双方の語を包含する可能性が考慮されているものと理解すべきである。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を包含するものと解されよう。
【0063】
本件開示及びそれに付随する長所の多くについては上掲の記述により理解し得るであろうし、開示されている主題から離隔することなく或いはその主要な長所全てを損なうことなく諸部材の形態、構成及び配置に様々な改変を施せることも明らかであろう。述べられている形態は単なる説明用のものであり、後掲の特許請求の範囲の意図はそうした改変を包括、包含することにある。更に、本発明を定義しているのは別項の特許請求の範囲である。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
図8
図9
【国際調査報告】