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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(54)【発明の名称】耐熱性を有する熱可塑性成形組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20221102BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221102BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20221102BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L101/00
C08K5/3417
C08K7/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022515025
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2020074525
(87)【国際公開番号】W WO2021043859
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】19195672.1
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラー,ティナ エリザベート
(72)【発明者】
【氏名】ヘドラー,アンドレアス トマス
(72)【発明者】
【氏名】アイベック,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ズレ,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】デグルマン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】グッベルス,エリク
(72)【発明者】
【氏名】シェマー,マルティナ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002CF061
4J002CF071
4J002CL011
4J002CL031
4J002CL051
4J002DL007
4J002EP028
4J002EU026
4J002FA047
4J002FD017
4J002FD066
4J002FD168
4J002FD178
4J002GK01
4J002GN00
4J002GN01
4J002HA09
(57)【要約】
A)10~99.99質量%の熱可塑性ポリマー、
B)0.01~20質量%の、置換及び非置換のカルバゾール、及び少なくとも1つの化学的に結合した置換又は非置換のカルバゾール残基を含有する有機化合物から選択される少なくとも1種のカルバゾール化合物、
C)0~70質量%のさらなる添加剤
を含む熱可塑性成形組成物であって、
成分A)~C)の質量パーセントの合計が100質量%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)10~99.99質量%の熱可塑性ポリマー、
B)0.01~20質量%の、置換及び非置換のカルバゾール、及び少なくとも1つの化学的に結合した置換又は非置換のカルバゾール残基を含有する有機化合物から選択される少なくとも1種のカルバゾール化合物、
C)0~70質量%のさらなる添加剤
を含む熱可塑性成形組成物であって、
成分A)~C)の質量パーセントの合計が100質量%である、熱可塑性成形組成物。
【請求項2】
1~50質量%の繊維状又は粒子状の添加剤C1)を含む、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーA)が、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレンポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリケトンから、好ましくはポリアミド、ポリアルキレンテレフタレート及びこれらの混合物から、より好ましくは脂肪族又は半芳香族ポリアミド及びポリブチレンテレフタレートから、最も好ましくはPA 6、PA 66、PA 6/66、PA 66/6、PA 6/6.36、PA 6I/6T、PA 6T/6I、PA 9T及びPA 6T/66又はポリブチレンテレフタレートから選択される、請求項1又は2に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のカルバゾール化合物において、カルバゾール窒素が、非置換であるか、又は置換基として少なくとも1つのアルファ水素原子を有する炭化水素残基を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のカルバゾール化合物が、
- 置換されたカルバゾール残基を有し、分子量が少なくとも200g/molであり、前記カルバゾール残基の窒素原子が水素又はC1~20-アルキル置換基を有する、化合物、
- 1つ以上の1級アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、無水物基、イソシアネート基、及び/又はエポキシ基に、又は少なくとも1つのこれらの基を有する残基に置換されたカルバゾール残基を有する化合物、又は
- その分子構造中に少なくとも2つの置換又は非置換のカルバゾール残基を有する化合物
からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項6】
前記カルバゾール化合物B)が、その分子構造中に少なくとも3つの置換又は非置換のカルバゾール残基を有するポリマーであるか、又はカルバゾール残基の窒素原子が水素で置換されたカルバゾール化合物であるか、又は3-、4-又はN-位でカルバゾール残基に共有結合されている少なくとも1つの1級アミノ基、カルボキシル基及び/又はエポキシ基を有するカルバゾール化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項7】
前記カルバゾール化合物が、3,3’-ビカルバゾール、11H-ベンゾ[a]カルバゾール、7H-ベンゾ[c]カルバゾール、5H-ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-c]カルバゾール、10-ブロモ-7H-ベンゾ[c]カルバゾール、1-ブロモカルバゾール、2-ブロモカルバゾール、3-ブロモカルバゾール、4-ブロモカルバゾール、2-ブロモ-7-メトキシ-9H-カルバゾール、3-(tert-ブチル)-9H-カルバゾール、3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾール、カルプロフェン、2-クロロ-9H-カルバゾール、3,6-ジアミノカルバゾール、7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール、2,7-ジブロモカルバゾール、3,6-ジブロモカルバゾール、3,6-ジクロロカルバゾール、3,6-ジエチニルカルバゾール、10,15-ジヒドロ-5H-ジインドロ[3,2-a:3’,2’-c]カルバゾール、5,7-ジヒドロインドロ[2,3-b]カルバゾール、5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾール、11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール、11,12-ジヒドロ-11-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール、3,6-ジヨードカルバゾール、2,7-ジメトキシ-9H-カルバゾール、3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール、3,6-ジメチルカルバゾール、3,6-ジフェニルカルバゾール、2,7-ジフェニル-9H-カルバゾール、3-フルオロカルバゾール、2-フルオロ-9H-カルバゾール、4-グリシジルオキシカルバゾール、3-ヨードカルバゾール、2-メトキシカルバゾール、メチル-9H-カルバゾール、2-フェニル-9H-カルバゾール、3-フェニル-9H-カルバゾール、4-フェニル-9H-カルバゾール、5-フェニル-5,12-ジヒドロインドロ[3,2-a]カルバゾール、1,3,6,8-テトラブロモカルバゾール、1,3,6,8-テトラ-tert-ブチルカルバゾール、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン、及びポリ(N-ビニルカルバゾール)からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項8】
成分B)が、3,3’-ビカルバゾール、11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール、3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾール、6-ジアミノカルバゾール、3,6-ジブロモカルバゾール、3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール、4-グリシジルオキシカルバゾール及びポリ(N-ビニルカルバゾール)からなる群から選択される、請求項7に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項9】
トリプレットエミッターを含まない、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項10】
置換又は非置換のカルバゾール、及び少なくとも1つの化学的に結合した置換又は非置換のカルバゾール残基を含有する有機化合物から選択される少なくとも1種のカルバゾール化合物の、熱可塑性成形組成物における熱安定剤としての使用方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種のカルバゾール化合物において、カルバゾール窒素が、非置換であるか、又は少なくとも1つのアルファ水素原子を有する炭化水素残基に置換されている、請求項10に記載の使用方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種のカルバゾール化合物が、
- 置換されたカルバゾール残基を有し、分子量が少なくとも200g/molであり、前記カルバゾール残基の窒素原子が水素又はC1~20-アルキル置換基を有する、化合物、
- 1つ以上の1級アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、無水物基、イソシアネート基、及び/又はエポキシ基に、又は少なくとも1つのこれらの基を有する残基に置換されたカルバゾール残基を有する化合物、又は
- その分子構造中に少なくとも2つの置換又は非置換のカルバゾール残基を有する化合物
からなる群から選択される、請求項10又は11に記載の使用方法。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物を、任意のタイプの繊維、ホイル又は成形品の製造に使用する方法。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物から作られた繊維、ホイル又は成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された耐熱老化性(heat-aging resistance)を有する熱可塑性成形組成物に関する。
【0002】
さらに、本発明は、任意のタイプの繊維、ホイル及び成形品を製造するための本発明の成形組成物の使用方法、並びに得られた成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性ポリマーは、ガラス繊維強化成形組成物の形態で、その寿命の間に高温にさらされる構成要素の設計における材料としてよく使用される。このようなポリマー、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、スチレンポリマー、ポリウレタン及びポリオレフィンは、熱、光又は触媒によって促進される酸化劣化反応を特に起こしやすい構造要素を有している。
【0004】
熱酸化劣化は、既知の熱安定剤を添加することで遅らせることができるが、長期的には防ぐことができず、例えば機械的特性のレベルが低下していることで明らかになる。
【0005】
H-ドナー、ヒドロペルオキシド分解剤、アルキルラジカル捕捉剤及び金属不活性化剤を含む熱安定剤の異なるクラスの概要は、Hans Zweifelが編集したPlastics Additives Handbook,第1章(第6版,Carl Hanser Verlag,Munich)で見出すことができる。
【0006】
ポリアミド、ポリエステル又はポリケトンをベースとするポリマー化合物は、DE 197 12 788 A1に開示されているように、有機トリアリールホスファイトと立体障害フェノール酸化剤の組み合わせによって熱に対して安定化させることができる。
【0007】
異なるHAR添加剤、例えば元素鉄粉末、Cu含有安定剤と酸化鉄の組み合わせ、有機HALS(ヒンダードアミン光安定剤)化合物又は立体障害フェノール又はポリヒドロキシアルコールは、ポリアミド成形組成物に使用される。より最近のポリアミド用HAR添加剤は、WO 2011/110508 A1に開示されているようなメラミン-ウレアポリマー用の高分岐メラミンポリマー、WO 2011/157615に開示されているような3~1350mgKOH/gポリエーテルオールのヒドロキシル価を有する高官能ポリエーテルオール、又はWO 2012/0062594 A1に開示されているようなポリビニルアミド用のポリアクリルアミドである。
【0008】
ホスファイトエステルをベースとする安定剤によるポリエステルの熱安定化は、DE 26 15 341 A1、DE 27 08 790 A1及びEP 0 048 878 A1から知られている。
【0009】
既知の成形組成物の耐熱老化性は、特に熱に長時間さらされた場合、不十分なままである。
【0010】
これらのポリマーの耐熱老化性(HAR)を改善することは、熱応力を受ける構成要素の寿命を延ばすことができるか、又はこれらが故障するリスクを減らすことができるため、非常に望ましいことである。また、HARを改善させることで、より高い温度での構成要素の使用も可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE 197 12 788 A1
【特許文献2】WO 2011/110508 A1
【特許文献3】WO 2011/157615
【特許文献4】WO 2012/0062594 A1
【特許文献5】DE 26 15 341 A1
【特許文献6】DE 27 08 790 A1
【特許文献7】EP 0 048 878 A1
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Hans Zweifelが編集したPlastics Additives Handbook,第1章(第6版,Carl Hanser Verlag,Munich)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、HARが改善され、熱老化後に良好な機械的特性を有する、熱可塑性成形組成物、好ましくはポリアミド又はポリブチレンテレフタレート成形組成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、この目的は、
A)10~99.99質量%の熱可塑性ポリマー、
B)0.01~20質量%の、置換及び非置換のカルバゾール、及び少なくとも1つの化学的に結合した置換又は非置換のカルバゾール残基を含有する有機化合物から選択される少なくとも1種のカルバゾール化合物、
C)0~70質量%のさらなる添加剤
を含む熱可塑性成形組成物によって達成され、
ここで、成分A)~C)の質量パーセントの合計が100質量%である。
【0015】
好ましくは、少なくとも1種のカルバゾール化合物において、カルバゾール窒素は、非置換であるか、又は少なくとも1つのアルファ水素原子を有する炭化水素残基で置換されている。
【0016】
より好ましくは、カルバゾール化合物は、
- 置換カルバゾール残基を有し、分子量が少なくとも200g/molであり、カルバゾール残基の窒素原子が水素又はC1~20-アルキルで置換されている、化合物、
- カルバゾール残基が1つ以上の1級アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、無水物基、イソシアネート基、及び/又はエポキシ基で置換されているか、又はこれらの基の少なくとも1つを有する残基で置換されている、化合物、又は
- 分子構造に少なくとも2つの置換又は非置換のカルバゾール残基を有する、化合物
からなる群から選択される。
【0017】
さらに、この目的は、置換及び非置換のカルバゾール、及び少なくとも1つの化学的に結合した置換又は非置換のカルバゾール残基を含有する有機化合物から選択される少なくとも1種のカルバゾール化合物を、熱可塑性成形組成物の熱安定剤として使用する方法によって達成される。
【0018】
さらに、この目的は、上記熱可塑性成形組成物を任意のタイプの繊維、ホイル又は成形品の製造に使用する方法によって、及び上記熱可塑性成形組成物で作られた繊維、ホイル又は成形品によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によれば、カルバゾール及びカルバゾール化合物が熱可塑性成形組成物において熱安定剤として作用することが見出された。置換及び非置換のカルバゾール、及び少なくとも1つの化学的に結合した置換又は非置換のカルバゾール残基を含有する有機化合物は、熱可塑性成形組成物のための新しいクラスの熱安定剤を形成する。熱安定化効果は、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレンポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリケトン及びさらなるポリマーを含む幅広い種類の熱可塑性ポリマーで達成することができる。
【0020】
本発明に従って採用される好適な熱可塑性ポリマーは、当業者に知られている。本発明に従って採用することができる可能な熱可塑性ポリマーの非網羅的なリストには、ポリ(メチルメタクリレート)を含むアクリルポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ターポリマー、スチレンアクリロニトリル(SAN)コポリマー、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、特にモノマー単位としてのビスフェノールAをベースとするポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリアリールエーテルケトンを含むポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを含むポリエチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンフルオリド、ポリテトラフルオロエチレン、及びこれらの混合物が含まれる。
【0021】
熱安定化効果は、ポリアミド及びポリアルキレンテレフタレートで、より具体的には脂肪族又は半芳香族ポリアミド及びポリブチレンテレフタレートで最も顕著であり、したがってこれらは成分A)として好ましい。したがって、成形組成物は、好ましくはポリアミド及び/又はポリアルキレンテレフタレートを主要部分として含有し、これらは、成形組成物に含有される熱可塑性ポリマー又はポリマーの好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、最も好ましくは85~100質量%を形成する。カルバゾール化合物が、調製中及び成形温度で熱可塑性成形組成物から出ないように、十分に高い分子量を有する場合に、その効果が最も顕著になる。あるいは、最も顕著な効果のために、カルバゾール化合物は、ポリマーの末端基又は官能基と反応することができるので、ポリマー鎖に共有結合し、成形組成物の調製及び繊維、ホイル又は成形品の調製の間に生じるような高い温度下で熱可塑性成形組成物からの流出も防止することができる。
【0022】
特に明記しない限り、以下の量は、100質量%である成分A)~C)の合計に基づくものである。
【0023】
好ましくは、熱可塑性成形組成物は、トリプレットエミッター(triplet emitters)を含まず、したがって好ましくは、DE 10 2010 048 498の特に段落115に開示されているトリプレットエミッターを含有しない。好ましくは、成形組成物は、OLED混合物のための材料ではない。
【0024】
本発明の成形組成物は、成分A)として、10~99.99質量%、好ましくは45~95.9質量%、特に69~95.8質量%の、少なくとも1種の、熱可塑性ポリマー、好ましくはポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、スチレンポリマー、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリケトン、より好ましくはポリアミド又はポリアルキレンテレフタレート、又はそれらの混合物を含む。
【0025】
本発明の成形組成物のポリアミドは、一般に90~350ml/g、好ましくは90~240ml/g、より好ましくは110~240ml/gの、ISO 307に従って25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%の溶液で決定された粘度数(VN)(又は還元粘度(reduced viscosity))を有する。
【0026】
例えば、以下の米国特許:2 071 250、2 071 251、2 130 523、2 130 948、2 241 322、2 312 966、2 512 606及び3 393 210に記載されている、少なくとも5000の分子量(質量平均)を有する半結晶又は非晶性樹脂が好ましい。
【0027】
これらの例としては、7~13員環を有するラクタムに由来するポリアミド、例えばポリカプロラクタム、ポリカプリロラクタム及びポリラウロラクタム、及びまたジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られるポリアミドが挙げられる。
【0028】
使用することができるジカルボン酸は、4~40個、好ましくは6~12個、特に6~10個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸である。単なる例として、ここで言及されるものは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びテレフタル酸及び/又はイソフタル酸である。
【0029】
特に好適なジアミンとしては、4~12個、特に6~8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、及びまたm-キシリレンジアミン(例えば、BASF SE社からのUltramid(登録商標)X17、ここでMXDAとアジピン酸のモル比は1:1である)、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパン及び1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンが挙げられる。
【0030】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド及びポリカプロラクタム、及びまた特に5~95質量%のカプロラクタム単位を有するナイロン-6/6,6コポリアミド(例えば、BASF SE社からのUltramid(登録商標)C31)である。
【0031】
他の好適なポリアミドは、例えばDE-A 10313681、EP-A 1198491及びEP 922065に記載されているように、水の存在下で直接重合として知られているものを介して、ω-アミノアルキルニトリル、例えばアミノカプロニトリル(PA 6)及びアジポジニトリル(adipodinitrile)とヘキサメチレンジアミン(PA 66)から得ることができる。
【0032】
また、例えば1,4-ジアミノブタンとアジピン酸を高温で縮合させることによって得ることができるポリアミド(ナイロン-4,6)も挙げられる。この構造のポリアミドの調製方法は、例えば、EP-A 38 094、EP-A 38 582、及びEP-A 39 524に記載されている。
【0033】
他の好適な例は、2種以上の上記のモノマーの共重合によって得ることができるポリアミド、及び任意の所望の混合比での2種以上のポリアミドの混合物である。ナイロン-6,6と他のポリアミドとの混合物、特にナイロン-6/6,6コポリアミドが特に好ましい。
【0034】
特に有利であることが判明している他のコポリアミドは、半芳香族コポリアミド、例えばPA 6T/6及びPA 6T/66であり、ここで、これらのトリアミン含有量は0.5質量%未満、好ましくは0.3質量%未満である(EP-A 299 444を参照)。高温に耐性のある他のポリアミドは、EP-A 19 94 075から知られている(PA 6T/6I/MXD6)。
【0035】
以下の非網羅的なリストは、記載されているポリアミドA)、及び本発明の目的のための他のポリアミドA)、及び含まれるモノマーを含む:
ABポリマー:
PA 4 ピロリドン
PA 6 ε-カプロラクタム
PA 7 エタノールラクタム
PA 8 カプリロラクタム
PA 9 9-アミノペラルゴン酸
PA 11 11-アミノウンデカン酸
PA 12 ラウロラクタム
AA/BBポリマー:
PA 46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA 56 ペンタメチレンジアミン、アジピン酸
PA 510 ペンタメチレンジアミン、セバシン酸
PA 512 ペンタメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA 66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA 69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA 610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA 612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA 613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA 1212 1,12-ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸
PA 1313 1,13-ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸
PA 6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA MXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA 9T ノナメチレンジアミン、テレフタル酸
AA/BBポリマー:
PA 6I ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA 6-3-T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA 6/6T (PA 6及びPA 6Tを参照)
PA 6/66 (PA 6及びPA 66を参照)
PA 6/12 (PA 6及びPA 12を参照)
PA 66/6/610 (PA 66、PA 6及びPA 610を参照)
PA 6I/6T (PA 6I及びPA 6Tを参照)
PA 6T/6I (PA 6I及びPA 6Tを参照)
PA PACM 12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウロラクタム
PA 6I/6T/PACMT PA 6I/6T+ジアミノジシクロヘキシルメタン
PA 6/6.36 カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミン、C36-ジカルボン酸
PA 6T/66 (PA 6T及びPA 66を参照)
PA 12/MACMI ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA 12/MACMT ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA-T フェニレンジアミン、テレフタル酸。
【0036】
PA 6、PA 66、PA 6/66、PA 66/6、PA 6/6.36、PA 6I/6T、PA 6T/6I、PA 9T及びPA 6T/66が最も好ましい。
【0037】
ポリアルキレンテレフタレートは、好ましくはポリC2~6-アルキルテレフタレート、より好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はこれらの混合物である。それらは、好ましくは50~220、好ましくは70~160の範囲の粘度数(ISO 1628に従って、フェノール-o-ジクロロベンゼン混合物(25℃で質量比1:1)中の0.5質量%の溶液で測定される)を有する。
【0038】
射出成形のため、粘度数は、好ましくは70~130cm/gの範囲、より好ましくは75~115cm/gの範囲である。
【0039】
好適なポリアルキレンテレフタレートのさらなる開示については、WO 2019/068597及びそこに引用されている文献を参照することができる。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、成分A)は、ポリアミド/ポリアルキレンテレフタレートのブレンド、好ましくは脂肪族又は半芳香族ポリアミドとポリブチレンテレフタレートとのブレンドである。ポリアミドとポリアルキレンテレフタレートとの質量比は、好ましくは95:5~5:95、より好ましくは90:10~10:90、最も好ましくは20:80~80:20である。
【0041】
本発明の成形組成物は、成分B)として、0.01~20質量%、好ましくは0.1~5質量%、特に0.2~1質量%の、置換又は非置換のカルバゾール、又は少なくとも1つの化学的に結合した置換又は非置換のカルバゾール残基を含有する有機化合物、好ましくは、カルバゾール窒素が非置換であるか、又は置換基として少なくとも1つのアルファ水素原子を有する炭化水素残基を有する少なくとも1つのカルバゾール化合物、より好ましくは、以下のものからなる群から選択される少なくとも1つのカルバゾール化合物を含む:
- 置換されたカルバゾール残基を有し、分子量が少なくとも200g/molであり、カルバゾール残基の窒素原子が水素又はC1~20-アルキル置換基を有する、化合物、
- 1つ以上の1級アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、無水物基、イソシアネート基、及び/又はエポキシ基に、又は少なくとも1つのこれらの基を有する残基に置換されたカルバゾール残基、好ましくは1つのカルバゾール残基を有する化合物、好ましくは、1つ又は2つの1級アミノ基又はエポキシ基又は残基に置換された1つのカルバゾール残基を有する化合物、又は
- その分子構造中に少なくとも2つの置換又は好ましくは非置換のカルバゾール残基を有する、好ましくはその分子構造中に2つ又は3つの非置換のカルバゾール残基を有する化合物。3,3’-ビカルバゾールが最も好ましい。
【0042】
典型的な置換基は、C1~12-アルキル、C6~12-アリール、C7~13-アルカリール及びC7~13-アラルキル残基であり得る。さらに、ハロゲン、アミノ、カルボキシ及びヒドロキシル基を好適な置換基として挙げることができる。
【0043】
少なくとも1つの化学的に結合したカルバゾール残基を含有する有機化合物において、カルバゾール残基は、窒素原子又は1つの炭素原子を介して結合することができる。
【0044】
置換されたカルバゾールは、好ましくは、窒素原子に対してp-位に置換基を有する。
【0045】
好ましくは、カルバゾール基の窒素原子は、フェニレン残基又はtert-ブチル残基に置換されていない。なぜなら、これらの残基はアルファ水素原子を持たないからである。
【0046】
最も高い熱安定化効果を達成するために、カルバゾール化合物は、好ましくは以下の特徴の1つ以上を有すべきである:
- 少なくとも200g/mol、好ましくは少なくとも220g/mol、より好ましくは少なくとも229g/molの分子量、
- カルバゾール化合物と熱可塑性樹脂成形組成物のポリマーとの共有結合を可能にする置換基又は少なくとも1つの置換基、すなわち、反応性置換基(単数又は複数)、
- 分子構造と組み合わせている2つ以上の、好ましくは非置換のカルバゾール単位。
【0047】
本発明に従って採用される好ましいカルバゾール化合物は、非置換であっても置換されていてもよい。好ましい置換基は、C1~12-アルキル、C1~12-アルコキシ、ハロゲン、C1~12-アミノ、C1~12-カルボキシ、アミノ、エポキシ、例えばグリシジル、カルボキシル、カルボジイミド、無水物、イソシアネート、好ましくは(1級)アミノ又はグリシジルから選択される。好ましくは、成分B)は、3,3’-ビカルバゾール又はその分子構造中に少なくとも3つの置換又は非置換のカルバゾール残基を有するポリマーであるか、又はカルバゾール残基の窒素原子が水素で置換されたカルバゾール化合物であるか、又は3-、4-又はN-位でカルバゾール残基に共有結合されている少なくとも1級アミノ基、カルボキシル基及び/又はエポキシ基を有するカルバゾール化合物である。
【0048】
好ましくは、成分B)は、ホウ素エステル基を含まない、又は含有しない、かつ、例えばUS 3,505,226に開示されているようにホウ素エステルではない。したがって、好ましくは、成分B)はホウ素エステル結合を含有しない。
【0049】
より好ましくは、カルバゾール化合物は、3,3’-ビカルバゾール、11H-ベンゾ[a]カルバゾール、7H-ベンゾ[c]カルバゾール、5H-ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-c]カルバゾール、10-ブロモ-7H-ベンゾ[c]カルバゾール、1-ブロモカルバゾール、2-ブロモカルバゾール、3-ブロモカルバゾール、4-ブロモカルバゾール、2-ブロモ-7-メトキシ-9H-カルバゾール、3-(tert-ブチル)-9H-カルバゾール、3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾール、カルプロフェン、2-クロロ-9H-カルバゾール、3,6-ジアミノカルバゾール、7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール、2,7-ジブロモカルバゾール、3,6-ジブロモカルバゾール、3,6-ジクロロカルバゾール、3,6-ジエチニルカルバゾール、10,15-ジヒドロ-5H-ジインドロ[3,2-a:3’,2’-c]カルバゾール、5,7-ジヒドロインドロ[2,3-b]カルバゾール、5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾール、11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール、11,12-ジヒドロ-11-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール、3,6-ジヨードカルバゾール、2,7-ジメトキシ-9H-カルバゾール、3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール、3,6-ジメチルカルバゾール、3,6-ジフェニルカルバゾール、2,7-ジフェニル-9H-カルバゾール、3-フルオロカルバゾール、2-フルオロ-9H-カルバゾール、4-グリシジルオキシカルバゾール、3-ヨードカルバゾール、2-メトキシカルバゾール、メチル-9H-カルバゾール、2-フェニル-9H-カルバゾール、3-フェニル-9H-カルバゾール、4-フェニル-9H-カルバゾール、5-フェニル-5,12-ジヒドロインドロ[3,2-a]カルバゾール、1,3,6,8-テトラブロモカルバゾール、1,3,6,8-テトラ-tert-ブチルカルバゾール、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン、及びポリ(N-ビニルカルバゾール)からなる群から選択される。
【0050】
最も好ましくは、成分B)は、3,3’-ビカルバゾール、11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール、3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾール、3,6-ジアミノカルバゾール、3,6-ジブロモカルバゾール、3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール、4-グリシジルオキシカルバゾール及びポリ(N-ビニルカルバゾール)からなる群から選択される。
【0051】
本発明のカルバゾールポリマーB)の数平均モル質量Mは、好ましくは少なくとも5000g/mol、特に好ましくは少なくとも10000g/mol、特に少なくとも20000g/molである。
【0052】
本発明の目的のために提供される分子量及びモル質量データ(M、M)、及び多分散性データは、PMMA較正を有する、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して得られた値に基づくものである。
【0053】
特に明記しない限り、以下の一般的な選択及び定義は、カルバゾールの可能な置換基に適用される。
【0054】
~C-アルキルは、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状アルキルラジカルである。メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、及びtert-ブチルが挙げられる。
【0055】
直鎖C~C-アルキルは、1~4個の炭素原子を有する直鎖アルキルラジカルである。メチル、エチル、n-プロピル、及びn-ブチルが挙げられる。
【0056】
~C12-アルキルは、1~12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状アルキルラジカルである。その例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、2-プロピルヘプチル、4-メチル-2-プロピルヘキシル、ウンデシル、ドデシル、及びこれらの構造異性体が挙げられる。
【0057】
アリールは、6~14個の炭素原子を有する炭素環式芳香族ラジカル、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、又はフェナントレニルである。アリールは、好ましくはフェニル又はナフチルであり、特にフェニルである。
【0058】
アリール-C~C-アルキルは、上記で定義されたC~C-アルキルであるが、水素原子がアリール基で置換されているものである。例としては、ベンジル、フェネチルなどが挙げられる。
【0059】
~C-アルキレンは、1、2、3、又は4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状の2価アルキルラジカルである。例としては、-CH-、-CHCH-、-CH(CH)-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-、-CHCH(CH)-、-C(CH-、-CHCHCHCH-、-CH(CH)CHCH-、-CHCHCH(CH)-、-C(CHCH-、-CHC(CH-、及び-CHCHCHCHCH-が挙げられる。
【0060】
直鎖又は分岐状C~C-アルキレンは、2、3、4、又は5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状の2価アルキルラジカルである。例としては、-CHCH-、-CH(CH)-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-、-CHCH(CH)-、-C(CH-、-CHCHCHCH-、-CH(CH)CHCH-、-CHCHCH(CH)-、-C(CHCH-、-CHC(CH-、及び-CHCHCHCHCH-が挙げられる。
【0061】
直鎖又は分岐状C~C-アルキレンは、4~8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状の2価アルキルラジカルである。例としては、-CHCHCHCH-、-CH(CH)CHCH-、-CHCHCH(CH)-、-C(CHCH-、-CHC(CH-、-CHCHCHCHCH-、-CHC(CHCH-、-CHCHCHCHCHCH-、-(CH-、-(CH-、及びこれらの位置異性体が挙げられる。
【0062】
直鎖又は分岐状C~C10-アルキレンは、2~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状の2価アルキルラジカルである。例としては、上記のC~C-アルキレンラジカルに加えて、6~10個の炭素原子を有する高次同族体、例えばヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、及びデシレンが挙げられる。
【0063】
直鎖又は分岐状C~C20-アルキレンは、2~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐状の2価アルキルラジカルである。例としては、上記のC~C-アルキレンラジカルに加えて、6~20個の炭素原子を有する高次同族体、例えばヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレン、オクタデシレン、ノナデシレン、及びエイコシレンが挙げられる。
【0064】
アルケニレンは、例えば2~20個、又は2~10個、又は4~8個の炭素原子を有する、直鎖又は分岐状の脂肪族モノ-又はポリオレフィン性不飽和、例えばモノ-又はジオレフィン性不飽和の、2価ラジカルである。ラジカルが2つ以上の炭素-炭素二重結合を含む場合、これらは好ましくはビシナル(vicinal)でない、すなわちアレン(allenic)でない。
【0065】
アルキニレンは、例えば2~20個、又は2~10個、又は4~8個の炭素原子を有し、1個以上、例えば1個又は2個の炭素-炭素三重結合を含む、直鎖又は分岐状の脂肪族の2価ラジカルである。
【0066】
~C-シクロアルキレンは、5~8個の炭素環員を有する2価の単環式飽和炭化水素基である。例としては、シクロペンタン-1,2-ジイル、シクロペンタン-1,3-ジイル、シクロヘキサン-1,2-ジイル、シクロヘキサン-1,3-ジイル、シクロヘキサン-1,4-ジイル、シクロヘプタン-1,2-ジイル、シクロヘプタン-1,3-ジイル、シクロヘプタン-1,4-ジイル、シクロオクタン-1,2-ジイル、シクロオクタン-1,3-ジイル、シクロオクタン-1,4-ジイル、及びシクロオクタン-1,5-ジイルが挙げられる。
【0067】
Nを介して結合し、1個又は2個のさらなる窒素原子、又は1個のさらなる硫黄原子又は酸素原子を環員として含むことができる5員又は6員の不飽和非芳香族複素環としては、例えば、ピロリン-1-イル、ピラゾリン-1-イル、イミダゾリン-1-イル、2,3-ジ-ヒドロオキサゾール-3-イル、2,3-及び2,5-ジヒドロイソキサゾール-2-イル、2,3-ジヒドロチアゾール-3-イル、2,3-及び2,5-ジヒドロイソチアゾール-2-イル、[1,2,3]-1H-トリアゾリン-1-イル、[1,2,4]-1H-トリアゾリン-1-イル、[1,3,4]-1H-トリアゾリン-1-イル、[1,2,3]-2H-トリアゾリン-2-イル、1,2-ジヒドロピリジン-1-イル、1,4-ジヒドロピリジン-1-イル、1,2,3,4-テトラヒドロピリジン-1-イル、1,2-ジヒドロピリダジン-1-イル、1,4-ジヒドロピリダジン-1-イル、1,6-ジヒドロピリダジン-1-イル、1,2,3,4-テトラヒドロピリダジン-1-イル、1,4,5,6-テトラヒドロピリダジン-1-イル、1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル、1,4-ジヒドロピリミジン-1-イル、1,6-ジヒドロピリミジン-1-イル、1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-1-イル、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-1-イル、1,2-ジヒドロピラジン-1-イル、1,4-ジヒドロピラジン-1-イル、1,2,3,4-テトラヒドロピラジン-1-イル、1,4-オキサジン-4-イル、2,3-ジヒドロ-1,4-オキサジン-4-イル、2,3,5,6-テトラヒドロ-1,4-オキサジン-4-イル、1,4-チアジン-4-イル、2,3-ジヒドロ-1,4-チアジン-4-イル、2,3,5,6-テトラヒドロ-1,4-チアジン-4-イル、1,2-ジヒドロ-1,3,5-トリアジン-1-イル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1,3,5-トリアジン-1-イルなどが挙げられる。
【0068】
Nを介して結合し、さらなる窒素原子を環員として含むことができる5員又は6員の不飽和芳香族複素環は、例えば、ピロール-1-イル、ピラゾール-1-イル、イミダゾール-1-イル、及びトリアゾール-1-イルである。
【0069】
1級アミノ基は、-NHラジカルである。
【0070】
本発明の成形組成物は、成分C)として、最大70質量%、好ましくは最大50質量%、より好ましくは最大30質量%のさらなる添加剤を含むことができる。
【0071】
本発明の熱可塑性成形組成物は、成分C)として、従来の加工助剤、例えば安定剤、酸化遅延剤、熱による分解及び紫外線による分解を抑える助剤、潤滑剤及び離型剤、着色剤、例えば染料及び顔料、核剤、可塑剤などを含むことができる。
【0072】
繊維状又は粒子状のフィラーC1)としては、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、チョーク、粉状石英、マイカ、硫酸バリウム及び長石が挙げられ、使用することができるこれらの量は、100質量%である成分A)~C)の合計に基づいて、1~50質量%、特に5~45質量%、好ましくは10~40質量%である。
【0073】
好ましい繊維状フィラーとしては、炭素繊維、アラミド繊維、及びチタン酸カリウム繊維が挙げられ、ガラス繊維が特に好ましく、最も好ましくはEガラスの形態のガラス繊維である。これらは、ロービングとして、又は市販のチョップドガラスの形態で使用することができる。
【0074】
繊維状フィラーは、熱可塑性プラスチックとの適合性を改善するために、シラン化合物で表面前処理されてもよい。
【0075】
好適なシラン化合物は、一般式


(X-(CH2)n)k-Si-(O-CmH2m+1)4-k

(式中、置換基を以下のように定義する:
【化1】
【0076】
nは、2~10、好ましくは3~4の整数であり、
mは、1~5、好ましくは1~2の整数であり、
kは、1~3、好ましくは1の整数である)
を有する。
【0077】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン及びアミノブチルトリエトキシシラン、及びまたグリシジル基を置換基Xとして含む対応するシランである。
【0078】
一般に表面コーティングに用いられるシラン化合物の量は、0.01~2質量%、好ましくは0.025~1.0質量%、特に0.05~0.5質量%である(C1)に基づいて)。
【0079】
針状鉱物フィラーも好適である。
【0080】
本発明の目的のために、針状鉱物フィラーは、強く発達した針状特性を有する鉱物フィラーである。例として、針状ウォラストナイトが挙げられる。鉱物は、好ましくは8:1~35:1、好ましくは8:1~11:1のL/D(長さ/直径)比を有する。鉱物フィラーは、任意に、上記のシラン化合物で前処理されていてもよいが、前処理は必須でない。
【0081】
挙げられる他のフィラーは、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、タルク及びチョーク、及びラメラ又は針状ナノフィラーであり、これらの量は好ましくは0.1~10%である。この目的のために好ましい材料は、ベーマイト、ベントナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト、及びラポナイトである。ラメラナノフィラーは、有機バインダーとの良好な相溶性を与えるために、先行技術的な方法によって有機的に修飾される。本発明のナノコンポジットにラメラ又は針状ナノフィラーを添加することにより、機械的強度がさらに向上する。
【0082】
最も好ましくは、成形組成物は、1~50質量%のガラス繊維を含む。
【0083】
本発明の成形組成物は、成分C2)として、0.05~3質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、特に0.1~1質量%の潤滑剤を含むことができる。
【0084】
Al、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属の塩、又は10~44個の炭素原子、好ましくは12~44個の炭素原子を有する脂肪酸のエステル又はアミドが好ましい。
【0085】
金属イオンは、好ましくはアルカリ土類金属及びAlであり、特に好ましくはCa又はMgである。
【0086】
好ましい金属塩は、ステアリン酸Ca及びモンタン酸Ca、及びまたステアリン酸Alである。
【0087】
また、任意の所望の混合比の各種塩の混合物を使用することも可能である。
【0088】
カルボン酸は、一塩基性又は二塩基性であることができる。挙げられる例は、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸、特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸、及びまたモンタン酸(30~40個の炭素原子を有する脂肪酸の混合物)である。
【0089】
脂肪族アルコールは、一価~四価のものであり得る。アルコールの例としては、n-ブタノール、n-オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトールが挙げられ、グリセロール及びペンタエリスリトールが好ましい。
【0090】
脂肪族アミンは、一塩基性~三塩基性のものであり得る。これらの例としては、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6-アミノヘキシル)アミンが挙げられ、エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステル又はアミドは、対応するグリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールトリラウレート、グリセロールモノベヘネート、及びペンタエリスリトールテトラステアレートである。
【0091】
また、任意の所望の混合比の、各種のエステル又はアミドの混合物、又はエステルをアミドと組み合わせた混合物を使用することも可能である。
【0092】
本発明の成形組成物は、成分C3)として、0.05~3質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、特に0.1~1質量%の、銅安定剤、好ましくはCu(I)ハライド、特にアルカリ金属ハライド、好ましくはKIとの混合物(特に1:4の比で)、又は立体障害フェノール、又はこれらの混合物を含むことができる。
【0093】
使用される好ましい一価銅の塩は、酢酸第一銅、塩化第一銅、臭化第一銅、及びヨウ化第一銅である。材料は、ポリアミドに基づいて、5~500ppm、好ましくは10~250ppmの量の銅でこれらを含む。
【0094】
銅がポリアミド中に分子分布を持って存在する場合、特に有利な特性が得られる。ポリアミド、一価銅の塩、固体均一溶液の形態でのアルカリ金属ハロゲン化物を含む濃縮物を添加する場合、これは達成される。例えば、典型的な濃縮物は、79~95質量%のポリアミドと、21~5質量%のヨウ化銅又は臭化銅及びヨウ化カリウムから構成される混合物から構成される。固体均一溶液中の銅の濃度は、溶液の総質量に基づいて、好ましくは0.3~3質量%、特に0.5~2質量%であり、ヨウ化第一銅のヨウ化カリウムに対するモル比は、1~11.5、好ましくは1~5である。
【0095】
濃縮物に適したポリアミドは、ホモポリアミド及びコポリアミド、特にナイロン-6及びナイロン-6,6である。
【0096】
酸化遅延剤及び熱安定剤の例としては、立体障害フェノール及び/又はホスファイト及びアミン(例えばTAD)、ヒドロキノン、ジフェニルアミンなどの芳香族2級アミン、これらのグループの様々な置換されたもの、及びこれらの混合物が挙げられ、熱可塑性成形組成物の質量に基づいて1質量%以下の濃度である。
【0097】
好適な立体障害フェノールC4)は、原則として、フェノール構造を有し、かつ、フェノール環上に少なくとも1つの嵩高い(bulky)基を有する全ての化合物である。
【0098】
例えば、下記の式
【化2】
(式中、R及びRは、アルキル基、置換されたアルキル基、又は置換されたトリアゾール基であり、ラジカルR及びRは、同一であっても又は異なってもよく、Rは、アルキル基、置換されたアルキル基、アルコキシ基、又は置換されたアミノ基である)
の化合物を使用することが好ましい。
【0099】
上記のタイプの酸化防止剤は、例えば、DE-A 27 02 661(US-A 4 360 617)に記載されている。
【0100】
好ましい立体障害フェノールの別の群は、置換されたベンゼンカルボン酸、特に置換されたベンゼンプロピオン酸に由来するものによって提供される。
【0101】
このクラスからの特に好ましい化合物は、下記の式の化合物である
【化3】
【0102】
(式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、それ自体が置換基(少なくとも1つの置換基が嵩高い基である)を有してもよいC~C-アルキル基であり、Rは、1~10個の炭素原子を有し、かつ、その主鎖がC-O結合を有してもよい2価の脂肪族ラジカルである)。
【0103】
これらの式に対応する好ましい化合物は、以下である。
【0104】
【化4】
(BASF SE社のIrganox(登録商標)245)


(BASF SE社のIrganox(登録商標)259)
【0105】
立体障害フェノールの例として、以下のすべてが挙げられる:
2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジステアリル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7-トリオキサ-1-ホスファビシクロ[2.2.2]オクト-4-イルメチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-3,5-ジステアリールチオトリアジルアミン、2-(2’-ヒドロキシ-3’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルジメチルアミン。
【0106】
特に有効であることが証明されており、したがって好ましく使用される化合物としては、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,6-ヘキサンジオールビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox(登録商標)259)、ペンタエリスリチルテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、及びまたN,N’-ヘキサメチレンビス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド(Irganox(登録商標)1098)、及び特に良好な適合性を有するBASF SE社の上記製品Irganox(登録商標)245が挙げられる。
【0107】
個別に又は混合物として使用することができる酸化防止剤C)の含有量は、成形組成物のA)~C)の総質量に基づいて、0.05~3質量%以下、好ましくは0.1~1.5質量%、特に0.1~1質量%である。
【0108】
場合によっては、特に長期間にわたる拡散光での保存時の色堅牢度を評価する場合、フェノール性ヒドロキシ基に関してオルト位に1つ以下の立体障害基を有する立体障害フェノールは、特に有利であることが証明されている。
【0109】
本発明の成形組成物は、成分C5)として、0.05~5質量%、好ましくは0.1~2質量%、特に0.25~1.5質量%のニグロシンを含むことができる。
【0110】
ニグロシンは、一般に、インジュリンに関連し、さまざまな形態(水溶性、油溶性、醇溶性(spirit-soluble))をとる黒色又は灰色のフェナジン染料(アジン染料)の一群であり、羊毛染色及び羊毛印刷、シルクの黒色染色、皮革、靴クリーム、ワニス、プラスチック、ストービングラッカー、インクなどの着色に、及び顕微鏡用染料として使用されている。
【0111】
ニグロシンは、ニトロベンゼン、アニリン、アニリン塩酸塩を金属鉄及びFeClと共に加熱することにより工業的に得られる(この名前はラテン語のniger=黒に由来する)。
【0112】
成分C5)は、遊離塩基の形態で、又は塩(例えば塩酸塩)の形態で使用することができる。
【0113】
ニグロシンに関するさらなる詳細は、例えば、電子百科事典Roempp Online,Version 2.8,Thieme-Verlag Stuttgart,2006年,キーワード「Nigrosine」に見出すことができる。
【0114】
本発明の成形組成物は、成分C6)として、0.001~20質量%、好ましくは0.05~10質量%、特に0.1~5質量%の、最大10μmの粒径(d50値)を有する鉄粉を含むことができ、ここで、この粉末は好ましくはペンタカルボニル鉄の熱分解によって得ることができる。
【0115】
鉄は多くの同素体で存在する:
1.α-Fe(フェライト)は空間中心の(space-centered)立方格子を形成し、磁化可能で、少量の炭素を溶解し、最大928℃での純鉄で生成する。770℃(キュリー温度)で強磁性を失い常磁性になる。770~928℃の範囲の温度での鉄はβ-Feとも呼ばれる。常温及び少なくとも13000MPaの圧力では、α-Feは、体積が約0.20cm/mol減少し、密度(20000MPaで)が7.85から9.1に増加するいわゆるε-Feとなる;
2.γ-Fe(オーステナイト)は面心立方格子を形成し、非磁性であり、多量の炭素を溶解し、928~1398℃の範囲の温度でのみ観察される;
3.δ-鉄は、空間中心で、1398℃から1539℃の融点まで存在する。
【0116】
金属鉄は、一般に銀白色であり、密度が7.874(重金属)、融点が1539℃、沸点が2880℃、比熱(18~100℃)が約0.5g-1-1、引張強度が220~280N/mmである。これらの値は化学的に純粋な鉄に適用される。
【0117】
鉄の工業生産には、鉄鉱石、鉄鋼スラグ、焼成パイライト、又は高炉ダストなどの製錬、及びスクラップ及び合金の再製錬が使用される。
【0118】
本発明の鉄粉は、好ましくは150℃~350℃の温度で、ペンタカルボニル鉄の熱分解によって製造される。このようにして得られる粒子は、好ましい球状を有し、したがって球状又はほぼ球状である(使用される別の用語は、spheroliticである)。
【0119】
好ましい鉄粉は、以下に記載する粒度分布を有する。ここでの粒度分布は、非常に希薄な水性懸濁液中(例えば、Beckmann LS13320を使用する)のレーザー散乱によって決定される。以下に記載される粒径(及び分布)は、任意に、粉砕及び/又は篩い分けによって得ることができる。
【0120】
ここで、dXXは、粒子の総体積のXX%が記載の値よりも小さいことを意味する。
【0121】
50値:最大10μm、好ましくは1.6~8μm、特に2.9~7.5μm、極めて特に3.4~5.2μmであり、
10値:好ましくは1~5μm、特に1~3μm、極めて特に1.4~2.7μmであり、
90値:好ましくは3~35μm、特に3~12μm、極めて特に6.4~9.2μmである。
【0122】
成分C6)は、好ましくは97~99.8g/100g、好ましくは97.5~99.6g/100gの鉄含有量を有する。他の金属の含有量は、好ましくは1000ppm未満、特に100ppm未満、極めて特に10ppm未満である。
【0123】
Fe含有量は、通常、赤外分光法で決定される。
【0124】
C含有量は、好ましくは0.01~1.2g/100g、好ましくは0.05~1.1g/100g、特に0.4~1.1g/100gである。好ましい鉄粉中のこのC含有量は、熱分解プロセスの後に水素を用いて還元しない粉末に対応する。
【0125】
炭素含有量は、通常、試料を酸素の流れの中で燃焼させ、その後、ASTM E1019に基づく方法により、IRを用いて、生じたCOガスを検出する(Juwe社のLeco CS230又はCS-mat 6250によって)ことによって決定される。
【0126】
窒素含有量は、好ましくは最大1.5g/100g、好ましくは0.01~1.2g/100gである。
【0127】
酸素含有量は、好ましくは最大1.3g/100g、好ましくは0.3~0.65g/100gである。
【0128】
N及びOは、グラファイト炉で約2100℃に試料を加熱することによって決定される。ここで、試料から得られた酸素はCOに変換され、IR検出器によって測定される。反応条件下でN含有化合物から遊離したNは、キャリアガスとともに排出され、TCD(熱伝導度検出器)により検出及び記録される(いずれもASTM E1019に基づく方法)。
【0129】
タップ密度は、好ましくは2.5~5g/cm、特に2.7~4.4g/cmである。これは一般に、例えば粉末を容器に入れ、振動により圧縮したときの密度を意味する。さらに好ましい鉄粉は、リン酸鉄、亜リン酸鉄、又はSiOで表面コーティングされたものであり得る。
【0130】
DIN ISO 9277によるBET表面積は、好ましくは0.1~10m/g、特に0.1~5m/g、好ましくは0.2~1m/g、特に0.4~1m/gの範囲である。
【0131】
鉄粒子の特に良好な分散を達成するために、ポリマーを含むマスターバッチを使用してもよい。この目的に適したポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、又はポリアミドであり、ここではマスターバッチポリマーが成分A)と同じであることが好ましい。ポリマー中の鉄の質量割合は、一般に15~80質量%であり、好ましくは20~40質量%である。
【0132】
他の従来の添加剤C7)の例は、25質量%以下の量、好ましくは20質量%以下の量の、エラストマーポリマー(しばしば、衝撃改良剤、エラストマー、又はゴムとも呼ばれる)である。
【0133】
これらは、非常に一般的には、好ましくは少なくとも2種の以下のモノマーから構成されるコポリマーである:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、ビニルアセテート、スチレン、アクリロニトリル、及びアルコール成分中に1~18個の炭素原子を有するアクリレート及び/又はメタクリレート。
【0134】
このタイプのポリマーは、例えば、Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie,vol.14/1(Georg-Thieme-Verlag,Stuttgart,Germany,1961),392~406頁、及びC.B.Bucknallによるモノグラフ,「Toughened Plastics」(Applied Science Publishers,London,UK,1977)に記載されている。
【0135】
一部の好ましいタイプのこのようなエラストマーは以下に記載されている。
【0136】
好ましいタイプのこのようなエラストマーは、エチレン-プロピレン(EPM)ゴム及びエチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)ゴムとして知られているものである。
【0137】
EPMゴムは一般に残留の二重結合を実質的に有さないが、EPDMゴムは100個の炭素原子当たり1~20個の二重結合を有してもよい。
【0138】
EPDMゴムのためのジエンモノマーの例としては、共役ジエン、例えばイソプレン及びブタジエン、5~25個の炭素原子を有する非共役ジエン、例えば1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン及び1,4-オクタジエン、環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン及びジシクロペンタジエン、及びまたアルケニルノルボルネン、例えば5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ブチリデン-2-ノルボルネン、2-メタリル-5-ノルボルネン及び2-イソプロペニル-5-ノルボルネン、及び三環式ジエン、例えば3-メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]-3,8-デカジエン、及びこれらの混合物が挙げられる。1,5-ヘキサジエン、5-エチリデンノルボルネン及びジシクロペンタジエンが好ましい。EPDMゴムのジエン含有量は、ゴムの総質量に基づいて、好ましくは0.5~50質量%、特に1~8質量%である。
【0139】
EPMゴム及びEPDMゴムは、好ましくは、反応性カルボン酸又はこれらの誘導体でグラフト化されてもよい。これらの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、及びその誘導体、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、及び無水マレイン酸が挙げられる。
【0140】
エチレンとアクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はこれらの酸のエステルとのコポリマーは、好ましいゴムの別の群である。ゴムはまた、ジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸、又はこれらの酸の誘導体、例えばエステル及び無水物、及び/又はエポキシ基を含むモノマーを含んでいてもよい。これらのジカルボン酸誘導体又はエポキシ基を含むモノマーは、好ましくはジカルボン酸基及び/又はエポキシ基を含み、一般式I又はII又はIII又はIVを有するモノマーをモノマー混合物に添加することによってゴムに組み込まれる
【0141】

R1C(COOR2)=C(COOR3)R4 (I)

【化5】

(式中、R~Rは、水素又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、mは0~20の整数であり、gは0~10の整数であり、pは0~5の整数である)。
【0142】
好ましくは、ラジカルR~Rは水素であり、mは0又は1であり、gは1である。対応する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテル及びビニルグリシジルエーテルである。
【0143】
式I、II及びIVの好ましい化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸、及びエポキシ基を含む(メタ)アクリレート、例えばグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレート、及び3級アルコールとのエステル、例えばtert-ブチルアクリレートである。後者は遊離のカルボキシ基を持たないが、その挙動は遊離酸と近似しているので、潜在的なカルボキシ基を有するモノマーと呼ばれる。
【0144】
コポリマーは、有利には、50~98質量%のエチレン、0.1~20質量%のエポキシ基を含むモノマー及び/又はメタクリル酸及び/又は無水物基を含むモノマー、残りの(メタ)アクリレートから構成されている。
【0145】
特に好ましいのは、以下の成分から構成されるコポリマーである:
- 50~98質量%、特に55~95質量%のエチレン、
- 0.1~40質量%、特に0.3~20質量%の、グリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸及び/又は無水マレイン酸、及び
- 1~45質量%、特に5~40質量%の、n-ブチルクリレート及び/又は2-エチルヘキシルアクリレート。
【0146】
他の好ましい(メタ)アクリレートは、メチル、エチル、プロピル、イソブチル及びtert-ブチルエステルである。
【0147】
これらと一緒に使用されるコモノマーは、ビニルエステル及びビニルエーテルである。
【0148】
上記のエチレンコポリマーは、それ自体既知のプロセスによって、好ましくは高圧及び高温でのランダム共重合によって調製することができる。適切なプロセスは周知である。
【0149】
他の好ましいエラストマーはエマルジョンポリマーであり、その調製が例えばBlackleyによるモノグラフ「Emulsion Polymerization」に記載されている。使用することができる乳化剤及び触媒はそれ自体既知である。
【0150】
原則として、均一に構造化されたエラストマー又はシェル構造を有するエラストマーを使用することが可能である。シェル型構造は、個々のモノマーの添加順序によって決定される。ポリマーの形態も、この添加順序によって影響を受ける。
【0151】
例えば、エラストマーのゴム画分を調製するために、ここでは単に例として挙げることができるモノマーは、アクリレート、例えばn-ブチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレート、対応するメタクリレート、ブタジエン及びイソプレン、及びこれらの混合物である。これらのモノマーは、他のモノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテルと、及び他のアクリレート又はメタクリレート、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート又はプロピルアクリレートと共重合されてもよい。
【0152】
エラストマーの軟質相又はゴム相(ガラス転移温度が0℃未満)は、コア、外被(outer envelope)又は中間シェル(その構造が2つを超えるシェルを有するエラストマーの場合)であってもよい。また、2つ以上のシェルを有するエラストマーは、ゴム相から構成されるシェルを2つ以上有してもよい。
【0153】
エラストマーの構造中に、ゴム相の他に1つ以上の硬質要素(ガラス転移温度が20℃超)が含まれる場合、これらは一般に、主モノマーとして、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、又はアクリレート又はメタクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート又はメチルメタクリレートを重合することによって調製される。これらに加えて、比較的少量の割合の他のコモノマーを使用することも可能である。
【0154】
場合によっては、表面に反応性基を有するエマルジョンポリマーを使用することが有利であることが証明されている。このタイプの基の例としては、エポキシ基、カルボキシ基、潜在化(latent)カルボキシ基、アミノ基及びアミド基、及び下記の一般式のモノマーを併用することによって導入できる官能基が挙げられる
【化6】
【0155】
(式中、置換基を以下のように定義することができる:
10は、水素又はC~C-アルキル基であり、
11は、水素、C~C-アルキル基又はアリール基、特にフェニルであり、
12は、水素、C~C10-アルキル基、C~C12-アリール基、又は-OR13であり、
13は、Oを含む基又はNを含む基による置換基を任意に有することができる、C~C-アルキル基又はC~C12-アリール基であり、
Xは、化学結合、C~C10-アルキレン基、又はC~C12-アリーレン基、又は
【化7】
であり、
【0156】
Yは、O-Z又はNH-Zであり、
Zは、C~C10-アルキレン基又はC~C12-アリーレン基である)。
【0157】
EP-A 208 187に記載されているグラフトモノマーも、表面に反応性基を導入するのに適している。
【0158】
他の例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、及び置換アクリレート又はメタクリレート、例えば(N-tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、(N,N-ジメチルアミノ)エチルアクリレート、(N,N-ジメチルアミノ)メチルアクリレート及び(N,N-ジエチルアミノ)エチルアクリレートが挙げられる。
【0159】
また、ゴム相の粒子は、架橋されていてもよい。架橋性モノマーの例としては、1,3-ブタジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート及びジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、及びEP-A 50 265に記載されている化合物が挙げられる。
【0160】
また、グラフト結合モノマーとして知られているモノマー、すなわち重合中に異なる速度で反応する2つ以上の重合性二重結合を有するモノマーを使用することも可能である。少なくとも1つの反応性基が他のモノマーとほぼ同じ速度で重合し、他の反応性基(又は複数の反応性基)が、例えば、著しくゆっくりと重合する、このタイプの化合物の使用が好ましい。異なる重合速度により、ゴム中の不飽和二重結合の割合が一定になる。その後、このタイプのゴムに別の相をグラフトした場合、ゴム中に存在する二重結合の少なくとも一部はグラフトモノマーと反応して化学結合を形成し、すなわちグラフトされた相はグラフトベースに少なくともある程度の化学結合を有することになる。
【0161】
このタイプのグラフト結合モノマーの例としては、アリル基を含むモノマー、特にエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート及びジアリルイタコネート、及びこれらのジカルボン酸の対応するモノアリル化合物が挙げられる。これらに加えて、多種多様な他の好適なグラフト結合モノマーは存在する。さらなる詳細については、ここで、例えば、米国特許第4 148 846号を参照することができる。
【0162】
耐衝撃性改良ポリマー中のこれらの架橋性モノマーの割合は、耐衝撃性改良ポリマーに基づいて、一般に5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。
【0163】
一部の好ましいエマルジョンポリマーを以下に挙げる。ここでまず、コア及び少なくとも1つの外殻を有し、以下の構造を有するグラフトポリマーについて言及することができる。
【0164】
【表1】
【0165】
複数のシェルを有する構造のグラフトポリマーの代わりに、1,3-ブタジエン、イソプレン及びn-ブチルアクリレート、又はこれらのコポリマーから構成される均質な、すなわち単一シェルのエラストマーを使用することも可能である。これらの製品も、架橋性モノマー又は反応性基を有するモノマーを併用することにより調製することができる。
【0166】
好ましいエマルジョンポリマーの例としては、n-ブチルアクリレート-(メタ)アクリル酸コポリマー、n-ブチルアクリレート/グリシジルアクリレート又はn-ブチルアクリレート/グリシジルメタアクリレートコポリマー、n-ブチルアクリレートから構成され、又はブタジエンをベースとするインナーコア、及び上記のコポリマーから構成される外被を有するグラフトポリマー、及びエチレンと反応性基を供給するコモノマーとのコポリマーが挙げられる。
【0167】
記載されたエラストマーは、他の従来のプロセス、例えば懸濁重合によって調製することもできる。
【0168】
DE-A 37 25 576、EP A 235 690、DE-A 38 00 603及びEP-A 319 290に記載されているように、シリコーンゴムも好ましい。
【0169】
もちろん、上記で挙げたタイプのゴムの混合物を使用することも可能である。
【0170】
挙げることができるUV安定剤は、その使用量が成形組成物に基づいて一般に2質量%以下であり、様々な置換レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、及びベンゾフェノンである。
【0171】
着色剤として添加することができる材料は、無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄及びカーボンブラック、及びまた有機顔料、例えばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、及びまた染料、例えばアントラキノンである。
【0172】
核剤として使用することができる材料は、ナトリウムフェニルホスフィナート、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、及びまた好ましくはタルクである。
【0173】
本発明の熱可塑性成形組成物は、それ自体公知のプロセスにより、出発成分を従来の混合装置、例えばスクリュー式押出機、ブラベンダーミキサー、又はバンバリーミキサーで混合し、その後これを押し出すことにより製造することができる。押出成形後、押出成形物を冷却し、ペレット化することができる。また、個々の成分を予備混合し、その後、残りの出発材料を個別に及び/又は同様に混合物の形態で添加することも可能である。混合温度は、一般に230~320℃である。
【0174】
別の好ましい操作モードでは、成分B)及びC)を、任意にプレポリマーと混合し、配合し、ペレット化することができる。その後、得られたペレットを、不活性ガス下で、成分A)の融点未満の温度で、所望の粘度に達するまで連続的に又はバッチ式で固相凝縮させる。
【0175】
本発明の熱可塑性樹脂成形組成物は、良好な機械的特性とともに良好な加工性、及びまた著しく改善されたウエルドライン強度及び表面、及びまた熱安定性を特徴とする。
【0176】
これらの材料は、任意のタイプの繊維、ホイル、及び成形品の製造に適している。一部の例としては以下が挙げられる:シリンダーヘッドカバー、オートバイのカバー、インテークマニホールド、インタークーラー(給気冷却器)、プラグコネクター、ギアホイール、冷却ファンホイール、及び冷却水タンク。
【0177】
電気及び電子分野では、改良型流動ポリアミド(improved-flow polyamides)は、プラグ、プラグ部品、プラグコネクタ、メンブレンスイッチ、プリント回路基板モジュール、マイクロエレクトロニクス部品、コイル、I/Oプラグコネクタ、プリント回路基板(PCB)用プラグ、フレキシブルプリント回路(FPC)用プラグ、フレキシブル集積回路(FFC)用プラグ、高速プラグ接続部、端子台、コネクタプラグ、デバイスコネクタ、ケーブルハーネス部品、回路マウント、回路マウント部品、三次元射出成形回路マウント、電気接続素子、及びメカトロニクス部品を製造することに使用することができる。
【0178】
自動車内装における可能な使用は、ダッシュボード、ステアリングコラムスイッチ、シート部品、ヘッドレスト、センターコンソール、ギアボックス部品、及びドアモジュール、自動車外装における可能な使用は、ドアハンドル、エクステリアミラー部品、フロントワイパー部品、フロントワイパー保護ハウジング、グリル、ルーフレール、サンルーフフレーム、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、吸気管(特にインテークマニホール)、フロントワイパー、及び車体外装部品である。
【0179】
改良型流動ポリアミドの可能な使用は、キッチン及び家庭用品分野では、キッチン装置の部品、例えばフライヤー、スムージングアイロン、ノブ、及びまた園芸及びレジャー分野では、灌漑システムの部品、又は園芸用品、及びドアハンドルの製造である。
【実施例
【0180】
以下の成分を使用した。
【0181】
成分A1:
ISO 1628に従って25℃でフェノール/1,2-ジクロロベンゼン(1:1)中で測定した粘度数VNが130ml/gであるポリブチレンテレフタレート(BASF SE社のUltradur(登録商標)B4500)。
【0182】
成分A2:
ISO 307に従って25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%の溶液で測定した粘度数VNが150ml/gであるポリアミド6(BASF SE社のUltramid(登録商標)B27)。
【0183】
成分A3:
ISO 307に従って25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%の溶液で測定した粘度数VNが150ml/gであるポリアミド66(BASF SE社のUltramid(登録商標)A27)。
【0184】
成分A4:
ISO 307に従って25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%の溶液で測定した粘度数VNが117ml/gであるポリアミド9T(Kuraray社のGenestar(商標)GC72018)。
【0185】
成分A5:
ISO 307に従って25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%の溶液で測定した粘度数VNが93ml/gであるポリアミド6T/6I(三井化学株式会社のArlen(商標)A3000)。
【0186】
成分A6:
ISO 1628に従って25℃でフェノール/1,2-ジクロロベンゼン(1:1)中で測定した粘度数VNが75~100ml/gであるポリエチレンテレフタレート。
【0187】
成分B/1:
3,3’-ビカルバゾール(CAS:1984-49-2,Interchim社)。
【0188】
成分B/2:
4-グリシジルオキシカルバゾール(CAS:51997-51-4,TCI社)。
【0189】
成分B/3:
ポリ(N-ビニルカルバゾール)(CAS:25067-59-8,TCI社)。
【0190】
成分B/4:
3,6-ジアミノカルバゾール(CAS 86-71-5,Interchim社)。これらのうち、B/1が最も好ましく、次いでB/2、B/4、B/3の順となる。
【0191】
成分C/1a:
ガラス繊維(日本電気硝子株式会社のECS03T-127H)。
【0192】
成分C/2a:
潤滑剤(Emery Oleochemicals社のLoxiol(登録商標)P 861/3.5)。
【0193】
成分C/1b:
ガラス繊維(3B Fibreglass社のDS 1125-10N)。
【0194】
成分C/2b:
N,N’-エチレンジ(ステアラミド)(Lonza Cologne GmbH社のAcrawax(登録商標)C)。
【0195】
成分C/1c:
ガラス繊維(日本電気硝子株式会社のNEG 3660)。
【0196】
成分C/2c:
潤滑剤(BASF SE社のLuwax(登録商標)OA)。
【0197】
PBT及びPBT/PETブレンドの実施例
PBT顆粒を、0.04質量%未満の水分含有量になるまで、80℃で乾燥した。その後、25mmの直径及び44のL/D比を有し、185分-1、9.8kg/h及び270℃のシリンダー温度で運転した二軸押出機で、他の成分と混合した。
【0198】
得られた顆粒を射出成形引張り棒(injection molding tensile bars)に使用した。2019年時点のISO 527に従って、機械的特性を決定した。180℃で2016時間熱処理する前及び熱処理した後の結果を以下の表に示している。
【0199】
【表2】
【0200】
【表3】
【0201】
【表4】
【0202】
【表5】
【0203】

ポリアミドの実施例
ポリアミド顆粒を、0.1質量%未満の水分含有量になるまで、80℃で乾燥した。その後、25mmの直径及び44のL/D比を有し、280分-1、10.5kg/h及び280℃のシリンダー温度で運転した二軸押出機で、他の成分と混合した。
【0204】
得られた顆粒を射出成形引張り棒に使用した。2019年時点のISO 527に従って、機械的特性を決定した。280℃で2016時間熱処理する前及び熱処理した後の結果を以下の表に示している。
【0205】
ポリアミド6:
【0206】
【表6】
【0207】
【表7】
【0208】
【表8】
【0209】
【表9】
【0210】
ポリアミド9T及び6T/6I
高温ポリアミド顆粒を、0.05質量%未満の水分含有量になるまで、100℃で乾燥した。その後、25mmの直径及び44のL/D比を有し、200分-1、10kg/h及び320~340℃のシリンダー温度で運転した二軸押出機で、他の成分と混合した。
【0211】
得られた顆粒を射出成形引張り棒に使用した。2019年時点のISO 527に従って、機械的特性を決定した。180℃で2016時間熱処理する前及び熱処理した後の結果を以下の表に示している。
【0212】
【表10】
【0213】
【表11】
【手続補正書】
【提出日】2021-05-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)10~99.99質量%の、脂肪族又は半芳香族ポリアミド及びポリブチレンテレフタレートから選択される熱可塑性ポリマー、
B)0.01~20質量%の、置換及び非置換のカルバゾール、及び少なくとも1つの化学的に結合した置換又は非置換のカルバゾール残基を含有する有機化合物から選択される少なくとも1種のカルバゾール化合物、
C)0~70質量%のさらなる添加剤
を含む熱可塑性成形組成物であって、
成分A)~C)の質量パーセントの合計が100質量%である、熱可塑性成形組成物。
【請求項2】
1~50質量%の繊維状又は粒子状の添加剤C1)を含む、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーA)が、PA 6、PA 66、PA 6/66、PA 66/6、PA 6/6.36、PA 6I/6T、PA 6T/6I、PA 9T及びPA 6T/66又はポリブチレンテレフタレートから選択される、請求項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のカルバゾール化合物において、カルバゾール窒素が、非置換であるか、又は置換基として少なくとも1つのアルファ水素原子を有する炭化水素残基を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のカルバゾール化合物が、
- 置換されたカルバゾール残基を有し、分子量が少なくとも200g/molであり、前記カルバゾール残基の窒素原子が水素又はC1~20-アルキル置換基を有する、化合物、、
- 1つ以上の1級アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、無水物基、イソシアネート基、及び/又はエポキシ基に、又は少なくとも1つのこれらの基を有する残基に置換されたカルバゾール残基を有する化合物、又は
- その分子構造中に少なくとも2つの置換又は非置換のカルバゾール残基を有する化合物
からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項6】
前記カルバゾール化合物B)が、その分子構造中に少なくとも3つの置換又は非置換のカルバゾール残基を有するポリマーであるか、又はカルバゾール残基の窒素原子が水素で置換されたカルバゾール化合物であるか、又は3-、4-又はN-位でカルバゾール残基に共有結合されている少なくとも1つの1級アミノ基、カルボキシル基及び/又はエポキシ基を有するカルバゾール化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項7】
前記カルバゾール化合物が、3,3’-ビカルバゾール、11H-ベンゾ[a]カルバゾール、7H-ベンゾ[c]カルバゾール、5H-ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-c]カルバゾール、10-ブロモ-7H-ベンゾ[c]カルバゾール、1-ブロモカルバゾール、2-ブロモカルバゾール、3-ブロモカルバゾール、4-ブロモカルバゾール、2-ブロモ-7-メトキシ-9H-カルバゾール、3-(tert-ブチル)-9H-カルバゾール、3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾール、カルプロフェン、2-クロロ-9H-カルバゾール、3,6-ジアミノカルバゾール、7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール、2,7-ジブロモカルバゾール、3,6-ジブロモカルバゾール、3,6-ジクロロカルバゾール、3,6-ジエチニルカルバゾール、10,15-ジヒドロ-5H-ジインドロ[3,2-a:3’,2’-c]カルバゾール、5,7-ジヒドロインドロ[2,3-b]カルバゾール、5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾール、11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール、11,12-ジヒドロ-11-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール、3,6-ジヨードカルバゾール、2,7-ジメトキシ-9H-カルバゾール、3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール、3,6-ジメチルカルバゾール、3,6-ジフェニルカルバゾール、2,7-ジフェニル-9H-カルバゾール、3-フルオロカルバゾール、2-フルオロ-9H-カルバゾール、4-グリシジルオキシカルバゾール、3-ヨードカルバゾール、2-メトキシカルバゾール、メチル-9H-カルバゾール、2-フェニル-9H-カルバゾール、3-フェニル-9H-カルバゾール、4-フェニル-9H-カルバゾール、5-フェニル-5,12-ジヒドロインドロ[3,2-a]カルバゾール、1,3,6,8-テトラブロモカルバゾール、1,3,6,8-テトラ-tert-ブチルカルバゾール、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジアミン、及びポリ(N-ビニルカルバゾール)からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項8】
成分B)が、3,3’-ビカルバゾール、11,12-ジヒドロインドロ[2,3-a]カルバゾール、3,6-ジ-tert-ブチルカルバゾール、6-ジアミノカルバゾール、3,6-ジブロモカルバゾール、3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール、4-グリシジルオキシカルバゾール及びポリ(N-ビニルカルバゾール)からなる群から選択される、請求項7に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項9】
トリプレットエミッターを含まない、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項10】
置換又は非置換のカルバゾール、及び少なくとも1つの化学的に結合した置換又は非置換のカルバゾール残基を含有する有機化合物から選択される少なくとも1種のカルバゾール化合物の、脂肪族又は半芳香族ポリアミド又はポリブチレンテレフタレートを熱可塑性ポリマーとして含む熱可塑性成形組成物における熱安定剤としての使用方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種のカルバゾール化合物において、カルバゾール窒素が、非置換であるか、又は少なくとも1つのアルファ水素原子を有する炭化水素残基に置換されている、請求項10に記載の使用方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種のカルバゾール化合物が、
- 置換されたカルバゾール残基を有し、分子量が少なくとも200g/molであり、前記カルバゾール残基の窒素原子が水素又はC1~20-アルキル置換基を有する、化合物、
- 1つ以上の1級アミノ基、カルボキシル基、カルボジイミド基、無水物基、イソシアネート基、及び/又はエポキシ基に、又は少なくとも1つのこれらの基を有する残基に置換されたカルバゾール残基を有する化合物、又は
- その分子構造中に少なくとも2つの置換又は非置換のカルバゾール残基を有する化合物
からなる群から選択される、請求項10又は11に記載の使用方法。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物を、任意のタイプの繊維、ホイル又は成形品の製造に使用する方法。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物から作られた繊維、ホイル又は成形品。
【国際調査報告】