(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(54)【発明の名称】酸性ガスを流体ストリームから除去する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20221104BHJP
C07C 319/20 20060101ALI20221104BHJP
C07C 323/25 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
B01D53/14 210
C07C319/20
C07C323/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515484
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2020074181
(87)【国際公開番号】W WO2021047928
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルカム,トーマス,ウェスリー
(72)【発明者】
【氏名】イングラム,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】パンチェンコ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シーダー,ゲオルク
【テーマコード(参考)】
4D020
4H006
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020AA04
4D020AA06
4D020AA10
4D020BA16
4D020BA18
4D020BA19
4D020BB03
4D020BB04
4D020BC01
4D020BC02
4D020BC10
4D020CB10
4D020CB18
4D020CB25
4D020CB31
4D020CB40
4H006AA02
4H006AC63
4H006TA04
(57)【要約】
酸性ガスを流体ストリームから除去する方法であって、流体ストリームを吸収剤と接触させて、処理した流体ストリーム、及び吸収した吸収剤を得、吸収剤が、少なくとも1種の希釈剤、及び一般式(I)(式中、R1は、C
1~C
3-アルキルであり、R2は、C
1~C
3-アルキルであり、R3は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択され、R4は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択され、nは、1から4の範囲の整数である)の化合物を含む、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性ガスを流体ストリームから除去する方法であって、流体ストリームを吸収剤と接触させて、処理した流体ストリーム、及び吸収した吸収剤を得、吸収剤が、少なくとも1種の希釈剤及び一般式(I)
【化1】
(式中、R1は、C
1~C
3-アルキルであり、R2は、C
1~C
3-アルキルであり、R3は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択され、R4は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択され、nは、1から4の範囲の整数である)の化合物を含む、方法。
【請求項2】
R1、R2及びR3のそれぞれが、C
1-アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(I)の化合物が、2-[2-(tert-ブチルアミノ)エチルスルファニル]エタノールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
希釈剤が水を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
吸収剤が、酸を追加で含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
希釈剤が、非水性有機溶媒を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
有機溶媒が、C
4~10アルコール、ケトン、エステル、ラクトン、アミド、ラクタム、スルホン、スルホキシド、グリコール、ポリアルキレングリコール、ジ又はモノ(C
1~C
4アルキルエーテル)グリコール、ジ又はモノ(C
1~4アルキルエーテル)ポリアルキレングリコール、環状尿素、チオアルカノール及びその混合物から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
吸収剤が、立体的に障害がない第一級アミン及び/又は立体的に障害がない第二級アミンから選択される少なくとも1種の活性化物質を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
活性化物質がピペラジンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
二酸化炭素及び硫化水素を含む流体ストリームから硫化水素を選択的に除去する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
吸収した吸収剤が、加熱、減圧及び不活性流体を用いたストリッピングの手段の少なくとも1つによって再生される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
酸性ガスを流体ストリームから除去するための、請求項1から9のいずれか一項に記載の吸収剤の使用、又は、二酸化炭素及び硫化水素を含む流体ストリームから硫化水素を選択的に除去するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の吸収剤の使用。
【請求項13】
式(II)
【化2】
(式中、
R1は、C
1~C
3-アルキルであり、R2は、C
1~C
3-アルキルであり、R3は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択される)のアミンを、
式(III)
【化3】
(式中、R4は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択され、nは、1から4の範囲の整数である)のアルコールで、液相にて、且つ触媒の存在下で変換することにより、式(I)の化合物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収剤の使用、及び酸性ガスを流体ストリームから除去する方法に関する。ある実施形態では、本発明は、二酸化炭素及び硫化水素を含む流体ストリームからの硫化水素の選択的除去に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性ガス、例えばCO2、H2S、SO2、CS2、HCN、COS又はメルカプタンの、流体ストリーム、例えば天然ガス、製油所ガス又は合成ガスからの除去は、様々な理由で望ましい。天然ガス中の硫黄化合物は、特に天然ガスが同伴することが多い水と共に、腐食性酸を形成する傾向がある。パイプラインでの天然ガスの運搬又は天然ガス液化プラントにおけるさらなる加工(LNG=液化天然ガス)では、したがって硫黄を含有する不純物に対して一定の制約が遵守されなければならない。さらに、多数の硫黄化合物は低濃度でも悪臭を放ち、毒性がある。
【0003】
二酸化炭素は、高濃度のCO2がガスの発熱量を低下させるため、天然ガスから除去されなければならない。さらに、CO2は湿度と共に、パイプ及びバルブの腐食を引き起こし得る。
【0004】
酸性ガスを除去する公知の方法は、無機又は有機塩基の吸収剤水溶液を用いた洗浄作業を含む。酸性ガスが吸収剤に溶解している場合、イオンが塩基と共に生じる。吸収剤は、より低い圧力への減圧及び/又はストリッピングにより再生でき、それによってイオン性化学種は逆反応し、酸性ガスが放出され、且つ/又は不活性流体、例えばスチームによってストリッピングされる。再生プロセス後、吸収剤は再使用できる。
【0005】
CO2及びH2Sが実質的に除去される方法は、「全吸収」と呼ばれる。CO2の除去は、腐食の問題を避け、消費者に必要な発熱量を提供するのに必須なことがあるが、時折、混合物からH2Sを選択的に除去する一方、CO2の除去を最小限に抑えるように、CO2及びH2Sの両方を含有する酸性ガス混合物を処理することが必須になる、又は望ましい。天然ガスパイプラインの仕様は、H2SがCO2より毒性且つ腐食性なので、例えばH2Sレベルに対してCO2より厳密な制約を定めている。通例の天然キャリアガスパイプラインの仕様は、典型的にはH2S含有量を4ppmvに制約しており、CO2に対する制約は2vol%でより緩い。選択的なH2S除去は、硫黄回収、例えば下流のClausプラントへの供給流中のH2Sレベルを高めるのに望ましいことが多い。
【0006】
高度立体障害第二級アミン、例えば2-(2-tertブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)及び第三級アミン、例えばメチルジエタノールアミン(MDEA)は、CO2よりもH2Sに対して動的選択性を呈する。そのようなアミンは、したがって、CO2及びH2Sを含むガス混合物からCO2よりもH2Sを選択的に除去するのに好適であり、一般的に水性混合物として利用される。これらのアミンは、CO2と直接反応しないが、その代わりCO2は、遅い反応でアミン及び水と反応して、重炭酸イオンが得られる。反応速度論により、H2Sは収着剤のアミン基と直接、より急速に反応して、水溶液中に水硫化物イオンを形成できる。
【0007】
ヒドロキシル置換アミン(アルカノールアミン)、例えば上で言及されているものの使用は、ヒドロキシル基の存在が、幅広く使用される水性溶媒システムにおいて、吸収剤及びその酸性ガス反応生成物の溶解度を改善する傾向があり、その結果、相分離を抑制することにより従来の吸収塔/再生塔ユニットを通る溶媒の循環を促進するので通例となっている。ヒドロキシル基の存在は、アミンの揮発性を低下させ、結果として、作業中のアミン損失を低下させることもできる。
【0008】
しかし、この選好は、ある状況においてそれ自体の問題を呈することがある。アルカノールアミンは、高い圧力で酸性ガスを効率的に除去するが、H2S除去に対する選択性は、液体溶媒におけるCO2の直接的な物理的吸収、及びアミン化合物が有するヒドロキシル基との反応の両方により、著しく低下すると予想され得る。CO2はアミノ窒素と優先的に反応するが、高い圧力により酸素との反応を強いられ、高い圧力下で、ヒドロキシル部位での反応により形成される重炭酸塩/ヘミ炭酸塩/炭酸塩反応生成物は安定化し、圧力の上昇に伴ってH2S選択性を漸進的に失う。
【0009】
さらに、ヒドロキシル基の存在は、アミンの水溶解度を改善するが、ヒドロキシル基は、界面活性剤特性を吸収剤/酸性ガス反応生成物に付与する傾向があり、それにより、ガス処理ユニットの作業中に、煩わしい発泡現象を潜在的に引き起こす。
【0010】
ガス混合物の吸収処理において、水性アミン混合物を使用することの別の公知の問題は、いくつかの相への分離が、水性アミン混合物に対する再生温度の範囲内にある、通常50℃から170℃の範囲の温度にて発生し得ることである。
【0011】
US4,487,967、US4,665,195及びUS4,894,178は、立体障害アミノエーテルアルコール、又はジアミノポリアルキレンエーテルを、水素化触媒の存在下で調製する方法に関する。
【0012】
US2015/0027055は、立体障害がある末端エーテル化アルカノールアミンを含む吸収剤によって、CO2含有ガス混合物からH2Sを選択的に除去する方法について記載している。アルカノールアミンの末端エーテル化及び水の排除により、H2S選択性をより高くすることができると見出された。
【0013】
US2010/0037775は、アルキルアミノアルキルオキシ(アルコール)モノアルキルエーテルを含む酸性ガス吸収剤、並びに、前記モノアルキルエーテルを含む吸収剤溶液を使用して、H2S及びCO2を含有するガス状混合物からH2Sを選択的に除去する方法について記載している。
【0014】
WO2013/181245は、H2Sの選択的除去に有用な吸収剤組成物について記載しており、吸収剤組成物は、tert-ブチルアミン及びポリエチレングリコール混合物のアミノ化反応生成物、並びにスルホン、スルホン誘導体及びスルホキシドから選択される有機共溶媒、並びに相分離を阻害する強酸の水性アミン混合物を含む。
【0015】
WO2014/001664は、ヒンダードアミノエチルモルホリンファミリーに属する第三級ジアミンでできている吸収剤溶液を開示している。これらの化合物は、第三級アミノ基のみを含み、これはそれぞれ、塩基性窒素原子を特徴とする。
【0016】
US2013/011314は、2個のアミン官能基が環により互いにつながっておらず、α-位におけるアミン官能基が常に第三級であり、ω-位におけるアミン官能基が、常に第一級又は第二級である1つ以上のジアミンを含有する化合物について、並びにH2S及びCO2を含有するガスからのH2Sの選択的除去におけるそのような化合物の使用について記載している。ここに記載されている化合物は、第二級アミノ基及び第三級アミノ基を特徴とし、これらの両方が、塩基性窒素原子を特徴とする。
【0017】
WO2017/186466は、モルホリン系ヒンダードアミン化合物を用いた、酸性ガスを流体ストリームから除去する方法を開示する。
【0018】
WO2018/146233は、グリシドール誘導体と立体障害アミン、例えばtert-ブチルアミンの反応から得られた流体ストリームから酸性ガスを除去する方法について記載している。
【0019】
WO2019/043099は、tert-ブチルアミンとヒドロキシエチルピロリドンの反応に由来する吸収剤溶液、及び構造的に関連した化合物、及びガス処理におけるその使用を対象とする。
【0020】
US2017/0320008は、混合物を、アミン、水及び少なくとも1種のC1~4-チオアルコールを含む吸収剤と接触させることにより、H2S及びCO2の両方を含むガス状混合物からH2Sを選択的に除去する方法を開示している。開示されている方法は、H2S除去に対する高い選択性を有し、他の硫黄成分、特にメルカプタンの改善された除去も可能とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、酸性ガスを流体ストリームから除去するのに好適なさらなる方法を提供することである。方法は、CO2及びH2Sが実質的に除去される全吸収に適用するのに、並びに硫化水素を流体ストリームから選択的に除去するのに有用である。方法に使用される吸収剤は、高いサイクル能力及び低い揮発性を有する。本発明のさらなる目的は、より長時間にわたり高温にて作用できる向上した熱安定性を有する溶媒に基づく、ガス処理方法を提供することであった。本発明のさらなる目的は、H2S及びCO2の両方を含むガス状混合物からの、H2Sの除去に対する高い選択性を有するガス処理方法であって、H2S及びCO2の両方を含むガス状混合物に追加で含まれ得る他の硫黄成分の除去も可能とする、ガス処理方法を提供することであった。特に、本発明の方法は、そのような選択的ガス処理プロセスにおいて、メルカプタンの除去も可能とすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
目的は、
酸性ガスを流体ストリームから除去する方法であって、流体ストリームを吸収剤と接触させて、処理した流体ストリーム及び吸収した吸収剤を得、吸収剤が、少なくとも1種の希釈剤及び一般式(I)
【0023】
【化1】
(式中、R1は、C
1~C
3-アルキルであり、R2は、C
1~C
3-アルキルであり、R3は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択され、R4は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択され、nは、1から4の範囲の整数である)の化合物を含む、方法により達成される。
【0024】
一般式(I)の化合物は、チオジグリコール及びその誘導体に基づき、チオエーテル官能基を含む。オキシ-エーテル官能基を含む従来技術のガス処理溶媒と比較して、式(I)の化合物を含む溶媒を使用したガス処理方法は、好都合な吸収特性を維持しつつ、より高い熱安定性を呈することが意外にも見出された。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】TBAESE及びTBAEEのpK
a値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
吸収剤:
本発明による方法は、吸収剤の存在下で実施される。吸収剤は、式(I)の化合物及び少なくとも1種の希釈剤を含む。
【0027】
式(I)の化合物:
吸収剤は、式(I)の化合物を含む。
【0028】
式(I)では、
R1は、C1~C3-アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル及びイソプロピル、最も好ましくはメチルであり、R2は、C1~C3-アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル及びイソプロピル、最も好ましくはメチルであり、
R3は、水素及びC1~C3-アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル及びイソプロピル、最も好ましくはメチルから選択され、
R4は、水素及びC1~C3-アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル及びイソプロピル、最も好ましくはメチルから選択され、
nは、1から4の範囲、好ましくは1又は2、最も好ましくは1の整数である。
【0029】
好ましい実施形態では、R1及びR2はメチルであり、R3は水素であり、又はR1、R2及びR3はメチルであり、又はR1及びR2はメチルであり、R3はエチルである。とりわけ好ましい実施形態では、R1、R2及びR3はメチルである。
【0030】
好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物は、
2-[2-(tert-ブチルアミノ)エチルスルファニル]エタノール、又は
N-[2-(2-メトキシエチルスルファニル)エチル]-2-メチル-プロパン-2-アミン、又は
N-[2-(2-エトキシエチルスルファニル)エチル]-2-メチル-プロパン-2-アミン、又は
2-[2-(イソプロピルアミノ)エチルスルファニル]エタノール、又は
N-[2-(2-メトキシエチルスルファニル)エチル]プロパン-2-アミン、又は
N-[2-(2-エトキシエチルスルファニル)エチル]プロパン-2-アミンから選択される。
【0031】
最も好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物は、2-[2-(tert-ブチルアミノ)エチルスルファニル]エタノールである。
【0032】
吸収剤は、吸収剤の合計重量に対して、好ましくは10重量%から70重量%、より好ましくは15重量%から65重量%、最も好ましくは20重量%から60重量%の一般式(I)の化合物を含む。
【0033】
式(I)の化合物の合成:
式(I)の化合物は市販されている、又は様々な手立てで調製できる。
【0034】
好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、式(II)
【0035】
【化2】
(式中、R1は、C
1~C
3-アルキルであり、R2は、C
1~C
3-アルキルであり、R3は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択される)のアミンを
式(III)
【0036】
【化3】
(式中、R4は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択され、nは、1から4の範囲の整数である)のアルコールで、液相にて、且つ触媒の存在下で変換することにより調製される。
【0037】
好ましくは、式(II)のアミンは、tert-ブチルアミン又はイソプロピルアミンである。最も好ましくは、式(II)のアミンは、tert-ブチルアミンである。
【0038】
式(III)のアルコールは、好ましくは
2-(2-ヒドロキシエチルスルファニル)エタノール(チオジグリコール)、又は
2-(2-メトキシエチルスルファニル)エタノール、又は
2-(2-エトキシエチルスルファニル)エタノールである。
【0039】
最も好ましい実施形態では、式(II)のアミンは、tert-ブチルアミンであり、式(III)のアルコールは、チオジグリコールである。
【0040】
さらなる実施形態では、nは、3又は4に等しく、R4はメチルである。
【0041】
好ましくは、式(II)のアミンと式(III)のアルコールとのモル比は、0.8:1から1.2:1、より好ましくは0.9:1から1.1:1の範囲、最も好ましくは1:1である。
【0042】
好ましくは、反応は、好ましくは水素化/脱水素化触媒の存在下で実行される。
【0043】
触媒は、原則として、ニッケル、コバルト、鉄、銅、クロム、マンガン、銅、モリブデン、タングステン並びに/又は元素周期表8及び/若しくは9及び/若しくは10及び/若しくは11族の他の金属を含み得る。
【0044】
Cu、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Ag、Au、Re及びIrからなる群から選択される、少なくとも1種の金属を含む触媒を使用することが好ましい。
【0045】
Cu、Co、Ni、Pd、Pt及びRuからなる群から選択される、少なくとも1種の金属を含む触媒を使用することがより好ましい。
【0046】
上で言及されている触媒に、プロモーターを、例えばクロム、鉄、コバルト、マンガン、モリブデン、チタン、スズ、アルカリ金属群の金属、アルカリ土類金属群の金属及び/又はリンを、慣例の手段でドープしてよい。
【0047】
触媒は、担持触媒であっても、非担持触媒であってもよい。
【0048】
好適な担体材料は、炭素化合物、例えばグラファイト、カーボンブラック及び/又は活性炭、酸化アルミニウム(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ(kappa)、カイ(chi)又はそれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルミノケイ酸塩又はそれらの混合物である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、ラネー型触媒が使用される。
【0050】
ラネー触媒として、ラネーコバルト触媒、ラネーニッケル触媒及び/又はラネー銅触媒が、好ましくは使用される。ラネーコバルト触媒が特に好ましい。
【0051】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、触媒は、前述の金属が、酸素含有化合物、例えばその酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩、の形態で存在する触媒前駆体の還元により調製される。
【0052】
触媒前駆体は、公知の方法により、例えば沈殿、沈殿適用(precipitative application)又は含浸により調製され得る。
【0053】
特に好ましい一実施形態では、担持銅、ニッケル及びコバルト含有水素化/脱水素化触媒が使用され、触媒の触媒活性材料は、水素を用いたその還元前に、アルミニウム、銅、ニッケル及びコバルトの酸素化合物、並びにSnOとして計算して0.2から5.0重量%の範囲でスズの酸素化合物を含む。好ましい実施形態では、WO2011/067199で請求されている触媒による触媒が使用される。
【0054】
好ましい実施形態では、反応は、150から260℃の温度にて実行される。とりわけ好ましい実施形態では、反応は、170から240℃の温度にて実行される。最も好ましい実施形態では、反応は、180から220℃の温度にて実行される。
【0055】
反応は、5から300barの圧力で実行され得る。好ましい実施形態では、反応は、50から200bar(絶対圧)の圧力で実行される。とりわけ好ましい実施形態では、反応は、60から130bar(絶対圧)の圧力で実行される。
【0056】
式(II)のアミン及び式(III)のアルコールの変換は、好ましくは液相で実施される。本発明の意味の範囲内では、式(II)のアミン、式(III)のアルコール又は溶媒が、反応の条件下で液相である場合、変換は液相で実施される。
【0057】
変換は、好ましくは水素の存在下で実行される。反応中、水素は消費されないが、触媒活性の維持に対して有益な効果を有する。水素の分圧は、好ましくは2.5から200barの範囲、より好ましくは5から150barの範囲、より一層好ましくは10から100barの範囲、最も好ましくは20から50barの範囲である。
【0058】
変換は、溶媒の存在下で実行され得る。使用される溶媒は、反応条件下で不活性であり、反応物及び反応生成物に対して十分な溶解度を有する、いかなる溶媒であってもよい。有用な溶媒は、アミノ化反応の条件下で式(II)のアミンと反応し得る官能基、例えばヒドロキシル基を含まない。好ましくは、1種以上の溶媒は、水、エーテル、好ましくはメチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、プログリム(proglyme)、ジグリム、ポリグリム(polyglymes)、一般的にはオリゴ-及びポリプロピレンオキシド、並びにオリゴ-及びポリエチレンオキシド、又は混合オリゴ-若しくはポリアルキレンオキシドのジエーテルである。
【0059】
有用な溶媒は、上に列挙されている溶媒の好適な混合物も含む。
【0060】
特に好ましい溶媒は、グリム、THF及び水である。
【0061】
反応混合物に存在する溶媒の量は、反応混合物の合計重量に対して、通常1から95重量%、好ましくは2.5から70%、より好ましくは5から40%の範囲であり、反応混合物の合計重量は、式(II)のアミンの変換に添加される全成分、すなわち式(II)のアミン、及び式(III)のアルコール、及び溶媒の質量の総和で構成される。
【0062】
反応は、撹拌タンク反応器、固定床管型反応器及び多管型反応器を使用して実行され得る。これは、粗反応混合物のリサイクルを伴う、また、伴わないバッチ、セミバッチ及び連続モードで実行され得る。好ましい実施形態では、反応は、固定床管型反応器において連続モードで実行される。
【0063】
触媒充填は、式(II)のエーテル0.01から2kg/(L・h)の範囲で、好ましくは0.1から1.0kg/(L・h)の範囲で、とりわけ好ましい実施形態では0.2から0.8kg/(L・h)の範囲で、変動し得る。
【0064】
反応生成物は、未反応の式(II)のアミン、式(III)のアルコール、及び式(III)の化合物を含む。
【0065】
反応生成物は、好ましくは1つ以上の蒸留ステップの実施により精製される。
【0066】
実験室規模では、式(I)の化合物は、式(IV)
【0067】
【化4】
(式中、R4は、水素及びC
1~C
3-アルキルから選択され、
nは、1から4の範囲の整数である)の化合物
及び2-クロロ-N-tert-ブチルエチルアミン塩酸塩の、ナトリウムエタノレート(sodium ethanolate)の存在下での反応によっても得ることができる。
【0068】
典型的な実験室合成では、式(IV)の化合物は、エタノール中のナトリウムメチラートの10wt.-%溶液に溶解する。2-クロロ-N-tert-ブチルエチルアミンは、通常エタノール中の5から10wt.-%溶液として添加される。混合は、通常、生じた混合物の温度が35から40℃の範囲で維持されるような手段で実施され、反応を完了するために、生じた反応混合物は、典型的には75℃にて90分、室温にてさらに6から12時間撹拌される。
【0069】
好ましくは、反応は、不活性条件、例えば窒素雰囲気下で、乾燥溶媒を使用して実施される。生じた懸濁液は、通常、実験室フィルターを通して濾過し、濾液をロータリーエバポレーターで蒸発させて、エタノールを除去し、望ましい生成物を得る。
【0070】
希釈剤:
一般式(I)の化合物は、希釈剤、好ましくは低コストの希釈剤で希釈する。希釈剤は、二酸化炭素及びガスの他の成分、例えばH2Sに対する物理的吸収能力しか有さないものであり得る。しかし好ましくは、希釈剤は、プロセスの酸-塩基化学物質と相互作用する。特に、希釈剤は、水性希釈剤である。その立体障害のため、一般式(I)の化合物は、CO2分子における直接的な求核攻撃に対して十分に求核性のアミン部位を有さない。したがって、水の酸素は、ブレンステッド酸、H2CO3を形成する求核試薬として作用し、これは、ブレンステッド塩基として作用する一般式(I)の化合物により中和されて、重炭酸アンモニウムを形成する。
【0071】
最も好ましい実施形態では、希釈剤は水である。
【0072】
活性化物質:
好ましい実施形態では、吸収剤は、立体的に障害がない第一級アミン及び/又は立体的に障害がない第二級アミンから選択される少なくとも1種の活性化物質を含む。立体的に障害がない第一級アミンは、第一級又は第二級炭素原子のみが結合している第一級アミノ基を有する化合物を意味すると理解される。立体的に障害がない第二級アミンは、第一級炭素原子のみが結合している第二級アミノ基を有する化合物を意味すると理解される。立体的に障害がない第一級アミン又は立体的に障害がない第二級アミンは、CO2吸収の強力な活性化物質として作用する。したがって、活性化物質の存在は、酸性ガスの非選択的除去を対象とした用途、又はCO2の除去がとりわけ重要な用途に望ましくなり得る。
【0073】
活性化物質は、好ましくは酸性基、例えば、詳細にはホスホン酸、スルホン酸及び/又はカルボン酸基を含まない。
【0074】
活性化物質は、例えば:
アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、エチルアミノエタノール、1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール、2-アミノ-1-ブタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール及び2-(2-アミノエトキシ)エタンアミン、
ポリアミン、例えばヘキサメチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,3-ジアミノプロパン、3-(メチルアミノ)プロピルアミン(MAPA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン(DMAPA)、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、N,N'-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、
環内に少なくとも1個のNH基を有し、環内に窒素及び酸素から選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を含み得る5-、6-又は7員環飽和ヘテロ環、例えばピペラジン、2-メチルピペラジン、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、ホモピペラジン、ピペリジン及びモルホリンから選択される。
【0075】
環内に少なくとも1個のNH基を有し、環内に窒素及び酸素から選択される1又は2個のさらなるヘテロ原子を含み得る、5-、6-又は7-員環の飽和ヘテロ環が特に好ましい。ピペラジンが特にきわめて好ましい。
【0076】
吸収剤が活性化物質を含むこの好ましい実施形態では、吸収剤は、好ましくは10重量%から70重量%、より好ましくは15重量%から65重量%、最も好ましくは20重量%から60重量%の活性化物質を含む。
【0077】
立体的に障害がないアミンの欠如
別の好ましい実施形態では、吸収剤は、立体的に障害がない第一級アミン又は立体的に障害がない第二級アミンを一切含まない。立体的に障害がない第一級アミン又は立体的に障害がない第二級アミンは、CO2吸収の強力な活性化物質として作用するので、吸収剤にそれらが存在すると、吸収剤のH2S選択性が失われ得る。したがって、高いH2S選択性が望ましい用途では、そのような化合物を本質的に含まない吸収剤が好ましい。
【0078】
追加の立体障害アミン
一実施形態では、吸収剤は、一般式(I)の化合物以外に、第三級アミン又は高度立体障害第一級アミン及び/若しくは高度立体障害第二級アミンを含む。高度立体障害は、第一級又は第二級窒素原子に直接隣接している第三級炭素原子を意味すると理解される。この実施形態では、吸収剤は、一般式(I)の化合物以外の第三級アミン又は高度立体障害アミンを、吸収剤の合計重量に対して、一般的に5重量%から50重量%、好ましくは10重量%から40重量%、より好ましくは20重量%から40重量%の量で含む。
【0079】
1.第三級アルカノールアミン、例えば
ビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアミン(メチルジエタノールアミン、MDEA)、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン(トリエタノールアミン、TEA)、トリブタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール(ジエチルエタノールアミン、DEEA)、2-ジメチルアミノエタノール(ジメチルエタノールアミン、DMEA)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(N,N-ジメチルプロパノールアミン)、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、2-ジイソプロピルアミノエタノール(DIEA)、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)メチルアミン(メチルジイソプロパノールアミン、MDIPA)、
2.第三級アミノエーテル、例えば
3-メトキシプロピルジメチルアミン、
3.第三級ポリアミン、例えばビス-第三級ジアミン、例として
N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチル-N',N'-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N',N'-テトラエチル-1,3-プロパンジアミン(TEPDA)、N,N,N',N'-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジメチル-N',N'-ジエチルエチレンジアミン(DMDEEDA)、1-ジメチルアミノ-2-ジメチルアミノエトキシエタン(ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]エーテル)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(TEDA)、テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン
及びそれらの混合物。
【0080】
第三級アルカノールアミン、すなわち、窒素原子に結合している少なくとも1個のヒドロキシアルキル基を有するアミンが一般的に好ましい。メチルジエタノールアミン(MDEA)が特に好ましい。
【0081】
一般式(I)の化合物以外に、好適な高度立体障害アミン(すなわち、第一級又は第二級窒素原子に直接隣接している第三級炭素原子を有するアミン)は、とりわけ、
1.高度立体障害第二級アルカノールアミン、例えば
2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)、2-(2-tert-ブチルアミノ)プロポキシエタノール、2-(2-tert-アミルアミノエトキシ)エタノール、2-(2-(1-メチル-1-エチルプロピルアミノ)エトキシ)エタノール、2-(tert-ブチルアミノ)エタノール、2-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-ブタノール及び3-アザ-2,2-ジメチルヘキサン-1,6-ジオール、
2.高度立体障害第一級アルカノールアミン、例えば
2-アミノ-2-メチルプロパノール(2-AMP)、2-アミノ-2-エチルプロパノール及び2-アミノ-2-プロピルプロパノール、
3.高度立体障害アミノエーテル、例えば
1,2-ビス(tert-ブチルアミノエトキシ)エタン、ビス(tert-ブチルアミノエチル)エーテル、
並びにそれらの混合物を含む。
【0082】
高度立体障害第二級アルカノールアミンが、一般的に好ましい。
【0083】
2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール及び2-Nメチルアミノ-2-メチルプロパン-1-オールが特に好ましい。
【0084】
酸:
別の好ましい実施形態では、吸収剤は、水性吸収剤(希釈剤は水を含むものを意味する)であり、吸収剤は、酸を追加で含む。
【0085】
酸は、吸収剤を再生させて充填を少なくし、方法の効率を向上させるのを助ける。プロトン化平衡が、酸及び一般式(I)の化合物の間において生じる。平衡の位置は温度依存性であり、平衡は、高温にて、遊離オキソニウムイオン及び/又はプロトン化エンタルピーがより低いアミン塩へとシフトされる。吸収ステップにおいて見られる比較的低い温度では、より高いpHが酸性ガス吸収を促進するのに対して、脱着ステップにおいて見られる比較的高い温度では、より低いpHが吸収された酸性ガスの放出を支持する。
【0086】
酸は、大気圧下で25℃にて測定して、好ましくは6未満、とりわけ5未満のpKaを有する。1つ超の解離段階を有し、したがって1つ超のpKaを有する酸の場合では、この要件は、pKa値の1つが、指定された範囲内である場合に満たされる。酸は、好適にはプロトン酸(ブレンステッド酸)から選択される。
【0087】
酸は、好ましくは120℃にて測定した水溶液のpHが、7.9から9.5未満、好ましくは8.0から8.8未満、より好ましくは8.0から8.5未満、最も好ましくは8.0から8.2未満であるような量で添加される。
【0088】
酸の量は、吸収剤の合計重量に対して、一実施形態では、0.1重量%から5.0重量%、好ましくは0.2重量%から15 4.5重量%、より好ましくは0.5重量%から4.0重量%、最も好ましくは1.0重量%から2.5重量%である。
【0089】
酸は、有機及び無機酸から選択される。好適な有機酸は、例えば、ホスホン酸、スルホン酸、カルボン酸及びアミノ酸を含む。特定の実施形態では、酸は多塩基酸である。
【0090】
好適な酸は、例えば:
鉱酸、例として塩酸、硫酸、アミド硫酸、リン酸、リン酸の部分エステル、例としてリン酸モノ及びジアルキル、並びにリン酸モノ及びジアリール、例としてリン酸トリデシル、リン酸ジブチル、リン酸ジフェニル及びビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ホウ酸、カルボン酸、例として飽和脂肪族モノカルボン酸、例としてギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、n-ヘプタン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプロン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸;飽和脂肪族ポリカルボン酸、例としてシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸;脂環式モノ及びポリカルボン酸、例としてシクロヘキサンカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、樹脂酸、ナフテン酸;脂肪族ヒドロキシカルボン酸、例としてグリコール酸、乳酸、マンデル酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸;ハロゲン化脂肪族カルボン酸、例としてトリクロロ酢酸又は2-クロロプロピオン酸;芳香族モノ及びポリカルボン酸、例として安息香酸、サリチル酸、没食子酸、位置異性体のトルイル酸、メトキシ安息香酸、クロロ安息香酸、ニトロ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸;工業用(technical)カルボン酸混合物、例としてバーサティック酸(versatic acid)、
スルホン酸、例としてメチルスルホン酸、ブチルスルホン酸、3-ヒドロキシプロピルスルホン酸、スルホ酢酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-キシレンスルホン酸、4-ドデシルベンゼンスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸及びジノニルナフタレンジスルホン酸、トリフルオロメチル-又はノナフルオロ-n-ブチルスルホン酸、カンファースルホン酸、2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(HEPES)、
有機ホスホン酸、例として式(IV)
R4-PO3H (IV)
(式中、R4は、カルボキシル、カルボキシアミド、ヒドロキシル及びアミノから独立して選択される4個までの置換基により任意選択で置換されているC1-C1~18アルキルである)のホスホン酸である。
【0091】
これらは、アルキルホスホン酸、例えばメチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、2-メチルプロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、nブチルホスホン酸、2,3-ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸;ヒドロキシアルキルホスホン酸、例えばヒドロキシメチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチルホスホン酸、2-ヒドロキシエチルホスホン酸;アリールホスホン酸、例えばフェニルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、アミノアルキルホスホン酸、例えばアミノメチルホスホン酸、1-アミノエチルホスホン酸、1-ジメチルアミノエチルホスホン酸、2-アミノエチルホスホン酸、2-(Nメチルアミノ)エチルホスホン酸、3-アミノプロピルホスホン酸、2-アミノプロピルホスホン酸、1-アミノプロピルホスホン酸、1-アミノプロピル-2-クロロプロピルホスホン酸、2-アミノブチルホスホン酸、3-アミノブチルホスホン酸、1-アミノブチルホスホン酸、4-アミノブチルホスホン酸、2-アミノペンチルホスホン酸、5-アミノペンチルホスホン酸、2-アミノヘキシルホスホン酸、5-アミノヘキシルホスホン酸、2-アミノオクチルホスホン酸、1-アミノオクチルホスホン酸、1-アミノブチルホスホン酸;アミドアルキルホスホン酸、例えば3-ヒドロキシメチルアミノ-3-オキソプロピルホスホン酸;並びにホスホノカルボン酸、例えば2-ヒドロキシホスホノ酢酸及び2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸;
式(V)
【0092】
【化5】
(式中、R5は、H又はC
1~5アルキルであり、QはH、OH又はNR6
2であり、R6は、H又はCH
2PO
3H
2である)のホスホン酸、例えば1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸;
式(VI)
【0093】
【化6】
(式中、Zは、C
2~5-アルキレン、シクロアルカンジイル、フェニレン又はシクロアルカンジイル若しくはフェニレンにより中断されるC
2~5-アルキレンであり、Yは、CH
2PO
3H
2であり、mは0から4である)のホスホン酸、例えばエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びビス(ヘキサメチレン)トリアミンペンタ(メチレンホスホン酸);
式(VII)
R7-NY
2 (VII)
(式中、R7は、C
1~5アルキル、C
2~5-ヒドロキシアルキル又はR8であり、R8は、CH
2PO
3H
2である)のホスホン酸、例えばニトリロトリス(メチレンホスホン酸)及び2-ヒドロキシエチルイミノビス(メチレンホスホン酸);
第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するアミノカルボン酸、
例えば
第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するα-アミノ酸、例としてN,N-ジメチルグリシン(ジメチルアミノ酢酸)、N,N-ジエチルグリシン、アラニン(2-アミノプロピオン酸)、N-メチルアラニン(2-(メチルアミノ)プロピオン酸)、Nジメチルアラニン、N-エチルアラニン、2-メチルアラニン(2-アミノイソ酪酸)、ロイシン(2-アミノ-4-メチルペンタン-1-オイック酸)、N-メチルロイシン、N,N-ジメチルロイシン、イソロイシン(1-アミノ-2-メチルペンタン酸)、N-メチルイソロイシン、N,N-ジメチルイソロイシン、バリン(2-アミノイソ吉草酸)、α-メチルバリン(2-アミノ-2-メチルイソ吉草酸)、N-メチルバリン(2-メチルアミノイソ吉草酸)、N,N-ジメチルバリン、プロリン(ピロリジン-2-カルボン酸)、N-メチルプロリン、N-メチルセリン、N,N-ジメチルセリン、2-(メチルアミノ)イソ酪酸、ピペリジン-2-カルボン酸、N-メチルピペリジン-2-カルボン酸、
第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するβ-アミノ酸、例えば3-ジメチルアミノプロピオン酸、N-メチルイミノジプロピオン酸、N-メチルピペリジン-3-カルボン酸、
第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するγ-アミノ酸、例えば4-ジメチルアミノ酪酸、
或いは第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するアミノカルボン酸、例えばN-メチルピペリジン-4-カルボン酸を含む。
【0094】
無機酸のうち、リン酸及び硫酸、とりわけ硫酸が好ましい。
【0095】
カルボン酸のうち、ギ酸、酢酸、安息香酸、コハク酸及びアジピン酸が好ましい。
【0096】
スルホン酸のうち、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及び2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(HEPES)が好ましい。
【0097】
ホスホン酸のうち、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(HDTMP)及びニトリロトリス(メチレンホスホン酸)が好ましく、そのうち1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸が特に好ましい。
【0098】
第三級アミノ基、又はアミノ基に直接隣接した少なくとも1個の第二級若しくは第三級炭素原子を有するアミノ基を有するアミノカルボン酸のうち、N,N-ジメチルグリシン及びN-メチルアラニンが好ましい。
【0099】
より好ましくは、酸は無機酸である。
【0100】
非水性有機溶媒:
一実施形態では、吸収剤の希釈剤は、少なくとも1種の非水性有機溶媒を含む。特定の場合では、希釈剤は、非水性有機溶媒に加えて、限られた量の水しか含有しない、又は本質的に水を含有しない。吸収剤の水含有量は、例えば最高で20重量%、或いは最高で10重量%、好ましくは最高で5重量%、又は最高で2重量%に制約することが望ましい。
【0101】
非水性有機溶媒は、好ましくは:
C4~C10アルコール、例えばn-ブタノール、n-ペンタノール及びn-ヘキサノール、
ケトン、例えばシクロヘキサノン、
エステル、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル、
ラクトン、例えばy-ブチロラクトン、o-バレロラクトン及びE-カプロラクトン、
アミド、例えば第三級カルボキサミド、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、又はN-ホルミルモルホリン及びN-アセチルモルホリン、
ラクタム、例えばy-ブチロラクタム、o-バレロラクタム、及びE-カプロラクタム、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、
スルホン、例えばスルホラン、
スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、
グリコール、例えばエチレングリコール(EG)及びプロピレングリコール、
ポリアルキレングリコール、例えばジエチレングリコール(DEG)及びトリエチレングリコール(TEG)、
ジ又はモノ(C1~4-アルキルエーテル)グリコール、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、
ジ又はモノ(C1~4-アルキルエーテル)ポリアルキレングリコール、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテル、
環状尿素、例えばN,N-ジメチルイミダゾリジン-2-オン及びジメチルプロピレン尿素(DMPU)、
チオアルカノール、例えばエチレンジチオエタノール、チオジエチレングリコール(チオジグリコール、TDG)及びメチルチオエタノール、
並びにそれらの混合物から選択される。
【0102】
より好ましくは、非水性溶媒は、スルホン、グリコール及びポリアルキレングリコールから選択される。最も好ましくは、非水性溶媒は、スルホンから選択される。好ましい非水性溶媒は、スルホランである。
【0103】
他の添加剤:
吸収剤は、添加剤、例えば腐食防止剤、酵素、消泡剤等も含み得る。一般に、そのような添加剤の量は、吸収剤の合計重量に対して、約0.005%から3%の範囲である。
【0104】
吸収剤の使用:
本発明は、酸性ガスを流体ストリームから除去するための、本明細書に記載されている吸収剤の使用にも関する。
【0105】
一実施形態では、本発明は、酸性ガスを流体ストリームから非選択的に除去するための、本明細書に記載されている吸収剤の使用に関する。この場合では、吸収剤は、上記のように、立体的に障害がない第一級アミン及び/又は立体的に障害がない第二級アミンから選択される少なくとも1種の活性化物質を含むことが好ましい。
【0106】
別の実施形態では、本発明は、二酸化炭素及び硫化水素を含む流体ストリームから硫化水素を選択的に除去するための、本明細書に記載されている吸収剤の使用に関する。この場合では、吸収剤が、立体的に障害がない第一級アミン又は立体的に障害がない第二級アミンを一切含まないことが好ましい。
【0107】
一実施形態では、方法は、酸性ガスを流体ストリームから非選択的に除去する方法である。この場合では、吸収剤は、上記のように、立体的に障害がない第一級アミン及び/又は立体的に障害がない第二級アミンから選択される少なくとも1種の活性化物質を含むことが好ましい。
【0108】
別の実施形態では、方法は、二酸化炭素及び硫化水素を含む流体ストリームから硫化水素を選択的に除去する方法である。この場合では、吸収剤が、立体的に障害がない第一級アミン又は立体的に障害がない第二級アミンを一切含まないことが好ましい。
【0109】
この文脈では、「硫化水素に対する選択性」は、以下:
[mol(H2S)/mol(CO2)]液相/[mol(H2S)/mol(CO2)]ガス相
(式中、[mol(H2S)/mol(CO2)]液相は、ガス相と接触する液相におけるモルH2S/CO2比であり、
[mol(H2S)/mol(CO2)]ガス相は、ガス相におけるモルH2S/CO2比である)の指数の値を意味すると理解される。
【0110】
標準的なガス洗浄プロセスでは、液相は、吸収器の下部の吸収した吸収剤であり、ガス相は、処理される流体ストリームである。
【0111】
方法は、上記指数の値が1を超える場合、H2S選択的と理解される。方法が、二酸化炭素及び硫化水素を含む流体ストリームから硫化水素を選択的に除去する方法である場合、硫化水素に対する選択性は、好ましくは少なくとも1.1、より一層好ましくは少なくとも2、最も好ましくは少なくとも4である。
【0112】
本明細書に記載されている吸収剤は、あらゆる種類の流体の処理に好適である。流体は、まずガス、例えば天然ガス、合成ガス、コークス炉ガス、クラッキングガス、石炭ガス化ガス、サイクルガス、ランドフィルガス及び燃焼ガス、次に吸収剤と本質的に非混和性の液体、例えばLPG(液化石油ガス)又はNGL(天然ガス液)である。本発明の方法は、炭化水素系流体ストリームの処理に特に好適である。存在する炭化水素は、例えば脂肪族炭化水素、例としてC1~C4炭化水素、例としてメタン、不飽和炭化水素、例としてエチレン若しくはプロピレン、又は芳香族炭化水素、例としてベンゼン、トルエン又はキシレンである。
【0113】
本発明の吸収剤は、酸性ガス、例えばCO2、H2S、SO3、SO2、CS2、HCN、COS及びメルカプタンの除去に好適である。これは、流体ストリームに存在する他の酸性ガス、例えばCOS及びメルカプタンに対しても可能である。
【0114】
吸収剤は、二酸化炭素及び硫化水素を含む流体ストリームからの硫化水素の選択的除去に好適であり、低い溶媒循環速度で、高いH2Sの選択的清浄化を可能とする。吸収剤は、硫黄プラントテールガス処理ユニット(TGTU)用途、希薄酸オフガスを処理ユニットからより高品質のClausプラント供給流へとアップグレードする酸性ガス富化(AGE)プロセス、又は付随ガス及び製油所ガスの処理に有用である。
【0115】
本発明の方法では、流体ストリームは、吸収ステップで吸収器において吸収剤と接触させ、その結果として、二酸化炭素及び硫化水素は、少なくとも部分的に洗い落とされる。これにより、CO2及びH2Sが排除された流体ストリーム及びCO2及びH2Sを吸収した吸収剤が得られる。
【0116】
使用される吸収器は、慣例のガス洗浄プロセスに使用される洗浄装置である。好適な洗浄装置は、例えば、不規則充填物、構造化充填物を有し、トレイを有する塔(column)、膜接触器、ラジアルフロー洗浄器、ジェット洗浄器、ベンチュリ洗浄器及びロータリー噴霧洗浄器、好ましくは構造化充填物を有し、不規則充填物を有し、トレイを有する塔、より好ましくはトレイを有し、不規則充填物を有する塔である。流体ストリームは、好ましくは、塔において、向流で吸収剤を用いて処理される。流体は一般的に、塔の下方領域、吸収剤は塔の上方領域に供給される。シーブトレイ、バブルキャップトレイ又はバルブトレイがトレイ塔に取り付けられ、その上を液体が流れる。不規則充填物を有する塔は、異なる成形体で満たしてよい。熱及び物質移動は、通常約25から80mmの大きさの成形体によって引き起こされる表面積の増加により改善される。公知の例は、Raschigリング(中空シリンダー)、Paliリング、Hiflowリング、Intaloxサドルなどである。不規則充填物は、順番に、或いは無作為に(ベッドとして)塔に導入され得る。考えられる材料は、ガラス、セラミック、金属及びプラスチックを含む。構造化充填物は、順序付けられた不規則充填物のさらなる発展である。これらは、規則的構造を有する。結果として、充填物の場合では、ガス流における圧力下降を抑制することが可能である。様々な設計の構造化充填物、例えば織物充填物又はシート金属充填物が存在する。使用される材料は、金属、プラスチック、ガラス及びセラミックであり得る。
【0117】
吸収ステップにおける吸収剤の温度は、一般的に約30から100℃であり、塔が使用される場合、例えば塔の上部で30から70℃、及び塔の下部で50から100℃である。
【0118】
本発明の方法は、1つ以上、とりわけ2つの連続する吸収ステップを含み得る。吸収は、複数の連続する構成ステップで実施され得、この場合では、酸性ガス成分を含む粗ガスは、構成ステップのそれぞれにおいて吸収剤のサブストリームと接触させる。粗ガスが接触する吸収剤は、酸性ガスを既に部分的に包含していることがあり、例えば、下流吸収ステップから最初の吸収ステップにリサイクルされている吸収剤、又は部分的に再生した吸収剤であり得ることを意味する。二段階吸収の実施に関しては、公報EP0 159 495、EP0 190 434、EP0 359 991及びWO00100271が参照される。
【0119】
当業者は、吸収ステップにおける条件、例えば、より詳細には、吸収剤/流体ストリーム比、吸収器の塔の高さ、吸収器における接触を促進する内部構造のタイプ、例えば不規則充填物、トレイ若しくは構造化充填物、及び/又は再生した吸収剤の残留担持量を変動させることにより、定義されている選択性で高いレベルの硫化水素除去を達成できる。CO2はH2Sよりもゆっくり吸収されるので、短い滞留時間よりも長い滞留時間でより多くCO2が吸収される。反対に、長い滞留時間でH2S選択性は低下する。より高い塔は、したがって選択的吸収がより少なくなる。比較的高い液体のホールドアップを有するトレイ又は構造化充填物も、同じくより少ない選択的吸収を引き起こす。再生の際に導入される加熱エネルギーは、再生した吸収剤の残留担持量を調整するために使用され得る。再生した吸収剤の残留担持量がより少ないと、改善した吸収につながる。
【0120】
方法は、好ましくは、CO2及びH2Sを吸収した吸収剤が再生される再生ステップを含む。再生ステップでは、CO2及びH2S、並びに任意選択でさらなる酸性ガス成分が、CO2及びH2Sを吸収した吸収剤から放出されて、再生した吸収剤が得られる。好ましくは、再生した吸収剤は、続いて吸収ステップにリサイクルされる。一般に、再生ステップは、加熱、減圧及び不活性流体を用いたストリッピングの手段の少なくとも1つを含む。
【0121】
再生ステップは、好ましくは、例えばボイラー、自然循環エバポレーター、強制循環エバポレーター又は強制循環フラッシュエバポレーターによって、酸性ガス成分を有する、吸収した吸収剤を加熱するステップを含む。吸収される酸性ガスは、溶液を加熱することにより得られたスチームによってストリッピングされる。スチームではなく不活性流体、例えば窒素を使用することも可能である。脱着装置における絶対圧力は、通常0.1から3.5bar、好ましくは1.0から2.5barである。温度は、通常50℃から170℃、好ましくは80℃から130℃であり、温度はもちろん圧力に依存する。いくつかの場合では、再生した吸収溶媒のスリップストリームの追加の再生ステップが必要となる。流体ストリームにおけるSOx、NOx及びCOの存在下で、硫酸塩、硝酸塩及びギ酸塩のような熱安定性塩が形成され得る。これらの望ましくない成分の濃度をより低くするために、上昇温度においてさらなる蒸留ステップが適用され得る、或いは熱安定性塩がイオン交換プロセスにより除去され得る。
【0122】
再生ステップは、減圧を代替として又は追加で含んでよい。これは、吸収した吸収剤の、吸収ステップの誘導に存在する高圧からより低い圧力への、少なくとも1回の減圧を含む。減圧は、例えば、スロットルバルブ及び/又は減圧タービンによって達成され得る。減圧段階を伴う再生は、例えば、公報US4,537,753及びUS4,553,984で記載されている。
【0123】
酸性ガス成分は、例えば減圧塔、例として、垂直若しくは水平に取り付けられたフラッシュ容器、又は内部構造を有する向流塔において再生ステップで放出され得る。
【0124】
再生塔は、同じく不規則充填物を有し、構造化充填物を有し、又はトレイを有する塔であり得る。再生塔は、下部にヒーター、例えば循環ポンプを有する強制循環エバポレーターを有する。上部に、再生塔は、放出された酸性ガスの流出口を有する。同伴される吸収媒体の蒸気は、コンデンサーにおいて凝縮され、塔に再循環される。
【0125】
複数の減圧塔を連続してつなげることが可能であり、そこでは再生が異なる圧力で遂行される。例えば、再生は、予備減圧塔において、典型的には、吸収ステップにおける酸性ガス成分の分圧を約1.5barを超える高圧で、また、主要な減圧塔において低圧、例えば1から2絶対barで遂行できる。2つ以上の減圧段階を用いる再生は、公報US4,537,753、US4,553,984、EP O 159 495、EP O 202 600、EP O 190 434及びEP O 121 109に記載されている。
【0126】
式(I)の化合物を使用した本発明の方法は、H2S及びCO2の両方を含むガス状ストリームの処理において高い選択性を示す。本発明の方法はさらに、そのようなガス状ストリームに存在し得る、メルカプタン、又は他の硫黄化合物の除去速度を高くする。式(I)の化合物は、高い熱安定性を示し、これにより、高温での再生、及び担持率が低下する吸収剤溶液のより完全な再生が可能となる。
【0127】
本発明は、後続する実施例により詳細に例証される。
【0128】
[実施例1]
2-[2-(tert-ブチルアミノ)エチルスルファニル]エタノールの調製。
1,7のナトリウムメチラートを、15ml乾燥エタノールに溶解した。メルカプトエタノールを溶液に撹拌しながら添加した。混合を完了した後で、混合物をさらに15分撹拌し、50ml乾燥エタノールに溶解した2.5gの2-クロロ-N-tert-ブチルエチルアミン塩酸塩の溶液を滴下添加して、35から40℃の範囲で温度を維持した。混合プロセスを完了した後で、生じた懸濁液を、75℃に加熱し、さらに90分撹拌した。終夜室温にて撹拌した後で、懸濁液を濾過し、濾液を、ロータリーエバポレーターにおいて、90℃及び60mbarにて蒸発させた。
【0129】
2.5gの2-[2-(tert-ブチルアミノ)エチルスルファニル]エタノールを得、収率を97%と計算した。化合物の構造は、1H-NMRにより確認した。
【0130】
[実施例2]
2-[2-(tert-ブチルアミノ)エチルスルファニル]エタノール(TBAESE)及び2-[2-(tert-ブチルアミノ)エトキシ]エタノール(TBAEE)の特性の比較
a)熱安定性
TBAESEの熱安定性は、酸性ガス担持を伴う、また伴わないTBAEE及びMDEAと比較した。
【0131】
シリンダー(10mL)にそれぞれの溶液(8mL)を最初に入れ、シリンダーを閉じた。シリンダーを150℃に125時間加熱した。酸性ガスの担持下で実施される実験では、溶液の酸性ガス担持量は、CO2 20Nm3/t溶媒及びH2S 20Nm3/t溶媒であった。アミンの分解レベルは、実験の前後にガスクロマトグラフィーにより測定したアミン濃度から計算した。結果は、表1に示されている。
【0132】
【0133】
TBAESEが、酸性ガス担持の存在下で、水溶液中において、MDEA及びTBAEEより高い熱安定性を有することは明白である。
【0134】
b)酸性ガス担持及び再生
TBAESE及びTBAEEのpK
a値を、20℃から120℃の温度範囲で測定した。結果は、
図1で示されている。0.01mol/lの濃度を有するアミン水溶液を、0.005mol/l HCl溶液により50%中和した。その結果、50%中和されたアミン溶液の測定されたpHは、アミンのpKa値に等しい。測定は、水及び溶媒の損失を一切避けるように、窒素で加圧したガラス容器において行った。
【0135】
TBAESE及びTBAEEのpKa値は、測定した範囲全体にわたって同等であり、MDEAのpKa値より著しく高いことがわかる。これらの測定から、TBAESEの酸性ガス担持及び再生は、TBAEEと同等であると結論付けられる。
【0136】
要約すれば、TBAESE及びTBAEEは、同様の吸収特性を有するが、TBAESEが若干改善された熱安定性を示す。これにより、TBAESEを、より若干高い再生温度下で取り扱うことが可能になり、吸収剤のより完全な再生が可能となる。さらにTBAESEは、単一分子で、H2Sに対する高い選択性のような立体障害アミンの利点、及び供給ガスに存在し得る、他の硫黄化合物、特にメルカプタンの高い除去速度のようなチオアルコールの利点を組み合わせる。
【国際調査報告】