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特表2022-547588モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜
<図1>
  • 特表-モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜 図1
  • 特表-モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜 図2
  • 特表-モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜 図3
  • 特表-モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜 図4
  • 特表-モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜 図5
  • 特表-モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜 図6
  • 特表-モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜 図7
  • 特表-モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜 図8
  • 特表-モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜 図9
  • 特表-モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】モノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン、並びにそれらから作られる高密度の有機シリカ膜
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/312 20060101AFI20221107BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20221107BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H01L21/312 C
C23C16/42
C07F7/18 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516121
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2020050283
(87)【国際公開番号】W WO2021050798
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/899,807
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】マンチャオ シアオ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ロバート エントレー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ピー.スペンス
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ニコラス バーティス
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー リン アン アチタイル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ゴードン リッジウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
【テーマコード(参考)】
4H049
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ21
4H049VR11
4H049VR22
4H049VR41
4H049VS21
4H049VU31
4H049VV16
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA16
4K030BA44
4K030DA08
4K030EA06
4K030FA01
4K030LA15
5F058AA02
5F058AC03
5F058AD05
5F058AF02
5F058AH02
(57)【要約】
改善された機械特性を有する高密度の有機ケイ素膜を製造するための方法であって、基材を反応チャンバー中に提供する工程;新規のモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物を反応チャンバー中に導入する工程;及び反応チャンバー中の新規のモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、新規のモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘起して、基材に有機ケイ素膜を堆積する工程を含み、有機ケイ素膜が、約2.8~約3.3の誘電率、約7~約30GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10~約30at%の炭素を有する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された機械特性を有する高密度の有機シリカ膜を製造するための方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
式(I)及び(2):
(1)HR12SiOR3
(式中、R1が、メチルであり、R2が、分岐鎖又は環状のC3~C10アルキル、好ましくはイソ-プロピル若しくはtert-ブチルから選択され、R3が、直鎖、分岐鎖又は環状のC1~C10アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル若しくはシクロヘキシルから選択される)
(2)R45Si(OR62
(式中、R4が、水素又はメチルであり、R5が、直鎖、分岐鎖又は環状のC1~C10アルキル、好ましくはイソ-プロピル若しくはtert-ブチルから選択され、R6が、直鎖、分岐鎖又は環状のC3~C10アルキル、好ましくはイソ-プロピル、sec-ブチル、イソ-ブチル、シクロヘキシル若しくはtert-ブチルから選択される)
において与えられる構造を有する少なくとも1つのモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物を前記反応チャンバー中に導入する工程;並びに
前記反応チャンバー中のモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含む前記ガス状の組成物にエネルギーを適用して、モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含む前記ガス状の組成物の反応を誘起して、前記基材に有機ケイ素膜を堆積する適用工程
を含み、前記有機シリカ膜が、約2.80~約3.30の誘電率及び約7~約30GPaの弾性率を有する、方法。
【請求項2】
少なくとも1つのモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含む前記ガス状の組成物が、硬化添加剤を含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(1)又は(2)の前記モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランが、ハライド、水、金属及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数の不純物を実質的に含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
化学気相堆積方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プラズマ強化化学気相堆積方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含む前記ガス状の組成物が、O2、N2O、NO、NO2、CO2、水、H22、オゾン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの酸化剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含む前記ガス状の組成物が、酸化剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記適用工程において、前記反応チャンバーが、He、Ar、N2、Kr、Xe、CO2及びCOからなる群から選択される少なくとも1つのガスを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有機シリカ膜が、632nmにおける約1.3~約1.6の屈折率(RI)、及びXPSによって測定した場合に約10at%~約30at%の炭素を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有機シリカ膜が、約5nm/分~約700nm/分の速度で堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記有機シリカ膜が、約10~約30の、SiCH2Si/SiOx×104のIR比を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス状の組成物中の前記モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランが、イソ-プロピル-メチル-メトキシシラン、イソプロピル-メチル-エトキシシラン、n-ブチル-メチル-イソ-プロポキシシラン、イソ-ブチル-メチル-イソ-プロポキシシラン、イソプロピル-メチル-イソプロポキシシラン、sec-ブチルメチルメトキシシラン、sec-ブチルメチルエトキシシラン、sec-ブチルメチル-イソ-プロポキシシラン、t-ブチル-メチル-メトキシシラン、t-ブチル-メチル-エトキシシラン、t-ブチル-メチル-イソプロポキシシラン、シクロヘキシル-メチル-メトキシシラン、シクロペンチル-メチル-メトキシシラン、シクロペンチル-メチル-イソ-プロポキシシラン、シクロヘキシル-メチル-エトキシシラン、シクロヘキシル-イソ-プロポキシメチルシラン、ジ-イソ-プロポキシ-ジメチルシラン、ジ-イソプロポキシ-メチルシラン、ジ-t-ブトキシ-ジメチルシラン、ジ-t-ブトキシ-メチルシラン、ジシクロヘキソキシ-ジメチルシラン、ジシクロヘキソキシ-メチルシラン、ジ-sec-ブトキシ-ジメチルシラン、ジ-sec-ブトキシ-メチルシラン、ジシクロペントキシジメチルシラン及びジシクロペントキシメチルシランからなる群から選択される1つ又は複数の前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ガス状の組成物中の前記モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランが、イソ-プロピル-メチル-エトキシシラン、イソ-メチル-プロピル-イソ-プロポキシシラン、ジ-イソ-プロポキシ-ジメチルシラン、ジ-t-ブトキシ-ジメチルシラン、ジ-sec-ブトキシ-ジメチルシラン、ジシクロヘキソキシ-ジメチルシラン、ジシクロヘキソキシメチルシラン、ジシクロペントキシ-ジメチルシラン及びジシクロペントキシメチルシランからなる群から選択される1つ又は複数の前駆体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
式(I)及び(2):
(1)HR12SiOR3
(式中、R1が、メチルであり、R2が、分岐鎖又は環状のC3~C10アルキル、好ましくはイソ-プロピル若しくはtert-ブチルから選択され、R3が、直鎖、分岐鎖又は環状のC1~C10アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル若しくはシクロヘキシルから選択される)
(2)R45Si(OR62
(式中、R4が、水素又はメチルであり、R5が、直鎖、分岐鎖又は環状のC1~C10アルキル、好ましくはイソ-プロピル若しくはtert-ブチルから選択され、R6が、直鎖、分岐鎖又は環状のC3~C10アルキル、好ましくはイソ-プロピル、sec-ブチル、イソ-ブチル、シクロヘキシル若しくはtert-ブチルから選択される)
において与えられる構造を有する少なくとも1つのモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物であって、ハライド、水、金属及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数の不純物を実質的に含有しない、ガス状の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つのモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランが、イソ-プロピル-メチル-メトキシシラン、イソプロピル-メチル-エトキシシラン、n-ブチル-メチル-イソ-プロポキシシラン、イソ-ブチル-メチル-イソ-プロポキシシラン、イソプロピル-メチル-イソプロポキシシラン、sec-ブチルメチルメトキシシラン、sec-ブチルメチルエトキシシラン、sec-ブチルメチル-イソ-プロポキシシラン、t-ブチル-メチル-メトキシシラン、t-ブチル-メチル-エトキシシラン、t-ブチル-メチル-イソプロポキシシラン、シクロヘキシル-メチル-メトキシシラン、シクロペンチル-メチル-メトキシシラン、シクロペンチル-メチル-イソ-プロポキシシラン、シクロヘキシル-メチル-エトキシシラン、シクロヘキシル-イソ-プロポキシメチルシラン、ジ-イソ-プロポキシ-ジメチルシラン、ジ-イソプロポキシ-メチルシラン、ジ-t-ブトキシ-ジメチルシラン、ジ-t-ブトキシ-メチルシラン、ジシクロヘキソキシ-ジメチルシラン、ジシクロヘキソキシ-メチルシラン、ジ-sec-ブトキシ-ジメチルシラン、ジ-sec-ブトキシ-メチルシラン、ジシクロペントキシジメチルシラン及びジシクロペントキシメチルシランからなる群から選択される、請求項14に記載のガス状の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1つのモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランが、イソ-プロピル-メチル-エトキシシラン、イソ-メチル-プロピル-イソ-プロポキシシラン、ジ-イソ-プロポキシ-ジメチルシラン、ジ-t-ブトキシ-ジメチルシラン、ジ-sec-ブトキシ-ジメチルシラン、ジシクロヘキソキシ-ジメチルシラン、ジシクロヘキソキシメチルシラン、ジシクロペントキシ-ジメチルシラン及びジシクロペントキシメチルシランからなる群から選択される、請求項14に記載のガス状の組成物。
【請求項17】
ICP-MSによって測定した場合に、5ppm未満の、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Fe、Ni及びCrからなる群から選択される金属を有する、請求項14に記載のガス状の組成物。
【請求項18】
ICP-MSによって測定した場合に、0.1ppm未満の、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Fe、Ni及びCrからなる群から選択される金属を有する、請求項14に記載のガス状の組成物。
【請求項19】
50ppm未満のハライドを有する、請求項14に記載のガス状の組成物。
【請求項20】
前記ハライドが塩化物イオンであり、存在する場合には、ICによって測定した場合に、10ppm以下の濃度で存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ハライドが塩化物イオンであり、存在する場合には、ICによって測定した場合に、5ppm以下の濃度で存在する、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
イソ-ブチル-メチル-イソ-プロポキシシラン、イソプロピル-メチル-イソプロポキシシラン、sec-ブチルメチルエトキシシラン、sec-ブチルメチル-イソ-プロポキシシラン、t-ブチル-メチル-イソプロポキシシラン、シクロヘキシルエトキシメチルシラン、シクロヘキシルイソプロポキシメチルシラン、ジ-イソ-プロポキシ-ジメチルシラン、ジ-t-ブトキシ-ジメチルシラン、ジ-sec-ブトキシ-ジメチルシラン、ジシクロヘキソキシ-ジメチルシラン、ジシクロヘキソキシメチルシラン、ジシクロペントキシ-ジメチルシラン及びジシクロペントキシメチルシランからなる群から選択される少なくとも1つのモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含む、ケイ素含有膜の気相堆積のためのガス状の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月13日に提出された米国仮特許出願第62/899807号の利益を主張する。その出願の開示は、参照によって、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを前駆体として使用する、高密度の有機シリカ誘電体膜の、膜への形成のための組成物及び方法が本明細書において説明される。より具体的には、k≧2.7の誘電率を有する高密度の膜を形成するための組成物及び化学気相堆積(CVD)方法であって、膜が、従来の前駆体から作られた膜と比較して、高い弾性率、及びプラズマ誘起損傷に対する優れた抵抗性を有する、組成物及び化学気相堆積(CVD)方法が本明細書において説明される。
【背景技術】
【0003】
エレクトロニクス産業は、集積回路(IC)及び関連するエレクトロニクス装置の回路と構成要素との間の絶縁層として、誘電体材料を利用する。配線の寸法は、マイクロエレクトロニクス装置(例えばコンピュータチップ)の速度及びメモリストレージ能力を増加させるために、小さくされている。配線の寸法が小さくなるにつれて、層間誘電体(ILD)についての絶縁要件は、さらにより厳しくなっている。間隔を縮小することは、RC時定数を最小化するために、より低い誘電率を必要とし、ここで、Rは伝導性配線の抵抗であり、Cは絶縁誘電体層間層のキャパシタンスである。キャパシタンス(C)は間隔に反比例し、層間誘電体(ILD)の誘電率(k)に比例する。SiH4又はTEOS(Si(OCH2CH34、テトラエチルオルトシリケート)及びO2から製造された従来のシリカ(SiO2)CVD誘電体膜は、4.0超の誘電率kを有する。より低い誘電率を有するシリカベースのCVD膜を製造するために、当産業において試みられてきた種々の手法があり、最も成功しているものは、有機基による絶縁性酸化ケイ素膜のドープであり、約2.7~約3.5の誘電率を提供する。この有機シリカガラスは、典型的には、有機ケイ素前駆体、例えばメチルシラン又はシロキサンと、酸化剤、例えばO2又はN2Oとから、高密度の膜(約1.5g/cm3の密度)として堆積される。本明細書において、有機シリカガラスはOSGといわれる。
【0004】
米国特許出願公開第2011/10113184号明細書は、約k=2.4~k=2.8の誘電率を有する絶縁膜を、PECVDプロセスによって堆積するのに使用することができる種類の材料を開示している。材料は、互いに対して結合して、Si原子とともに環状構造を形成することができる2つの炭化水素基を有するSi化合物、又は1つ以上の分岐鎖の炭化水素基を有するSi化合物を含む。分岐鎖の炭化水素基において、Si原子に結合されたC原子であるα-Cはメチレン基を構成し、メチレン基に結合されたC原子であるβ-C、又はβ-Cに結合されたC原子であるγ-Cは分岐点である。具体的には、Siに結合されたアルキル基のうち2つは、CH2CH(CH3)CH3、CH2CH(CH3)CH2CH3、CH2CH2CH(CH3)CH3、CH2C(CH32CH3及びCH2CH2CH(CH32CH3を含み、ケイ素に結合された第三の基は、OCH3及びOC25を含む。この発明は、高密度のSiCH2Si基は、堆積されたままの膜においてSiCH2Rからのアルキル基Rのプラズマ解離を介して形成すると主張していて、この特許出願における例は、高密度のSiCH2Si基は、膜が紫外線照射に暴露された後にのみ生じることを示している。紫外線照射への暴露の後のSiCH2Si基の形成は、文献(Grill,A.“PECVD low and Ultralow Dielectric Constant Materials:From Invention and Research to Products”、J.Vac.Sci.Technol.B、2016、34、020801-1 - 020801-4;Baklanov,M.R.ら“Plasma Processing of Low-k Dielectrics”、J.Appl.Phys.、2013、113、041101-1 - 041101-41;Priyadarshini,D.;Nguyen,S.V.;Shobha,H.;Liniger,E.,Chen,J.H.-C.;Huang,H.;Cohen,S.A.;Grill,A.“Advanced Single Precursor Based pSiOCH k=2.4 for ULSI Interconnects”J.Vac.Sci.Technol.B、2017、35、021201-021201-6)においてよく記載されている。
【0005】
米国特許出願公開第2011/10113184号明細書で開示される手法に対する様々な他の欠点が存在する。第一には、前駆体構造中に分岐鎖のアルキル基を含む大きいアルキル基を必要とすることである。これらの分子は、合成するのにコストがかかり、それらの本来的に高い分子量のために、典型的には高い沸点及び低い揮発性を有する。高い沸点及び低い揮発性は、PECVDプロセスについて要求されるように、このような分子を気相の状態で効率的に輸送することを困難にする。おそらくは最も重要なことには、この手法において報告されている誘電率の値は低く、2.8以下である。妥当な機械特性を有する高密度の低k膜のための達成可能な最小の誘電率は、おおよそ2.7~2.8であることが世間的に認められている。従って、米国出願公開第2011/10113184号明細書で開示されている手法は、後堆積処理(すなわちUV硬化)なしの、高密度の低k膜の堆積に関するものではなく、多孔性の低k膜を生成するための連結されたポロゲンの手法に、より近いものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
低k膜におけるプラズマ又はプロセス誘起損傷(PID)は、プラズマ暴露の間、特にはエッチング及びフォトレジスト剥離プロセスの間の、膜からの炭素の除去によって引き起こされる。低k膜における炭素欠乏は、以下の問題:膜の誘電率の増加;湿式洗浄工程の間の膜のエッチング及び特徴の曲がり(すなわち外形浸食);疎水性の損失による膜中への水分吸収;パターンエッチングの後の湿式洗浄工程の間の細かい特徴のパターン崩壊;並びに/又は続く層、例えば、以下に限定するものではないが、銅拡散バリア、例えばTa/TaN、進歩したCo若しくはMnNバリア層を堆積するときの統合の問題、のうち1つ又は複数を引き起こす場合がある。従って、低k膜におけるプロセス誘起損傷は、ULSI相互接続において低k材料を組み込むときに、装置製造者が解決しなければならない重要な問題である。向上した機械特性(高い弾性率、高い硬度)を有する膜は、パターニングされた特徴における配線エッジ粗さを減少させ、パターン崩壊を減少させ、相互接続における、より大きい内部機械応力をもたらし、エレクトロマイグレーションに起因する欠陥を減少させる。従って、所与の誘電率で、PIDに対する強い抵抗性と、可能な限り高い機械特性とを有する低k膜のための要求が存在する。さらに、UV硬化は大量製造環境における処理量を減少させ、プロセスに対するコスト及び複雑さを付加し、膜の炭素含有量を減少させ(PIDの深さを増加させ)、膜の多孔性を増加させる(PIDの深さを増加させる)ため、UV硬化などの後堆積処理を必要とせずにこれらの膜を堆積するための要求が存在する。すなわち、堆積されたままの膜の特性は、UV硬化などの後堆積処理を必要とせずに許容可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において説明される方法及び組成物は、上で説明された1つ又は複数の要求を満たす。モノアルコキシシラン又はジアルコキシシラン前駆体を使用して、約2.80~約3.30のkの値を有する高密度の低k膜を堆積することができる。本発明において説明されるモノアルコキシシラン及びジアルコキシシラン前駆体の両方は、予期されない高い機械特性を有する膜をもたらす一方で、ジアルコキシシラン前駆体は、可能な限り高い機械特性をもたらし、モノアルコキシシラン前駆体は、予期されない高い弾性率/硬度を示し、かつ所与の誘電率の値でプラズマ誘起損傷に対する予期されない高い抵抗性を示すことが期待される膜をもたらす。膜の特性は堆積されたままの膜について観測されたが、後堆積処理、例えばUV硬化を使用して、膜の機械特性をさらに向上することができる。
【0008】
1つの態様において、本開示は、改善された機械特性を有する高密度の有機シリカ膜(又は低k膜)を製造するための方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
式(I)及び(2):
(1)HR12SiOR3
(式中、R1が、メチルであり、R2が、分岐鎖又は環状のC3~C10アルキル、好ましくはイソ-プロピル、sec-ブチル若しくはtert-ブチルから選択され、R3が、直鎖、分岐鎖又は環状のC1~C10アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル若しくはtert-ブチルから選択される)
(2)R45Si(OR62
(式中、R4が、水素又はメチルであり、R5が、直鎖、分岐鎖又は環状のC1~C10アルキル、好ましくはイソ-プロピル若しくはtert-ブチルから選択され、R6が、直鎖、分岐鎖又は環状のC3~C10アルキル、好ましくはプロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル若しくはtert-ブチルから選択される)
において与えられる構造を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物を反応チャンバー中に導入する工程(上の式について、アルキル基の組み合わせは、分子の沸点が200℃未満であるように選択され、加えて、最適な性能のために、R基は、ホモリティック結合解離に際して二級又は三級ラジカルを形成する(例えば、SiO-R→SiO・+R・又はSi-R→Si・+R・、ここで、Rは二級又は三級ラジカルであり、例えばイソプロピルラジカル、sec-ブチルラジカル又はtert-ブチルラジカルである)ように選択することができる);並びに
反応チャンバー中のモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の反応組成物にエネルギーを適用して、モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘起して、基材に有機ケイ素膜を堆積する工程
を含み、有機シリカ膜が、約2.8~約3.3の誘電率及び約7~約30GPaの弾性率を有する、方法を提供する。
【0009】
別の態様において、本開示は、改善された機械特性を有する高密度の有機シリカ膜を製造するための方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物を反応チャンバー中に導入する工程;及び
反応チャンバー中のモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の反応組成物にエネルギーを適用して、モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘起して、基材に有機シリカ膜を堆積する工程
を含み、有機シリカ膜が、約2.8~約3.3の誘電率、約7~約30GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10~約30at%の炭素を有する、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】薄膜中のSi-Me基の%対機械強度の関係を描いたグラフである。
図2】ジメチル-ジ-イソ-プロポキシシラン(DMDIPOS)、イソ-プロピル-メチル-エトキシシラン(IPMEOS)及びジメチル-ジメトキシシラン(DMDMOS)を使用して堆積された低k(3.1)膜についてのIRスペクトルを描いたチャートである。
図3】異なる誘電率を有する、高密度のジメチル-ジ-イソ-プロポキシシラン及びジメチル-ジメトキシシランの膜の弾性率の関係を描いたグラフである。
図4】異なる誘電率を有する、高密度のジメチル-ジ-イソ-プロポキシシラン及びジメチル-ジメトキシシランの膜のSi(CH3)基の密度の関係を描いたグラフである。
図5】ジメチル-ジ-イソ-プロポキシシラン、イソ-プロピル-メチル-エトキシシラン、ジエトキシ-メチルシラン及びジメチル-ジメトキシシランを使用して堆積された高密度のk=3.1膜についての硬度に対してプロットされた、赤外分光法によって測定した場合の末端ケイ素メチル密度(Si(CH3x)を描いたグラフである。
図6】イソ-プロピル-メチル-エトキシシラン及びジエトキシ-メチルシランを使用して堆積された、異なる誘電率を有する高密度の膜のSiCH2Si基の密度の間の関係を描いたフラフである。
図7】例1に従って合成されたイソ-プロピル-メチル-エトキシシランについてのGC-MSクロマトグラムである。
図8】例2に従って合成されたイソ-プロピル-メチル-イソ-プロポキシシランについてのGC-MSクロマトグラムである。
図9】例3に従って合成されたジ-イソ-プロポキシジメチルシランについてのGC-MSクロマトグラムである。
図10】例4に従って合成されたジ-sec-ブトキシジメチルシランについてのGC-MSクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
改善された機械特性を有する高密度の有機シリカ膜を製造するための化学気相堆積方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物、O2又はN2Oなどのガス状の酸化剤、及びHeなどの不活性ガスを反応チャンバー中に導入する工程;並びに
反応チャンバー中のモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘起して、基材に有機シリカ膜を堆積する工程
を含み、有機シリカ膜が、約2.7~約3.3の誘電率、約7~約30GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10~約30at%の炭素を、好ましくは約2.9~約3.2の誘電率、約9~約30GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10~約25at%の炭素を有する、方法が本明細書において説明される。
【0012】
さらに、改善された機械特性を有する高密度の有機シリカ膜を製造するための方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物、O2又はN2Oなどのガス状の酸化剤、及びHeなどの不活性ガスを反応チャンバー中に導入する工程;並びに
モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、基材に有機シリカ膜を堆積する工程
を含み、有機シリカ膜が、約3.0~約3.2の誘電率及び約12~約30GPaの弾性率を有する、方法が本明細書において説明される。
【0013】
本発明において説明されるモノアルコキシシラン又はジアルコキシシラン化合物は、先行技術の構造形成前駆体、例えばジエトキシメチルシラン(DEMS(登録商標))及びジメトキシ-ジメチルシラン(DMDMOS)と比較して、約2.7~約3.3の所与の誘電率の値で、驚くべきことに予期されない高い機械特性を示すことを可能にし、かつ高密度の有機シリカ膜を達成することを可能にする固有の性質を提供する。理論によって拘束されるものではないが、本発明において説明されるモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランは、プラズマ強化化学気相堆積の間に安定なラジカル、例えば(CH32CH・及び(CH33C・を提供することができると考えられる。このようなラジカルは、先行技術において開示されるメチルラジカル、例えばMe3SiOMe又はMe3SiOEt(Bayer,C.ら“Overall Kinetics of SiOx Remote-PECVD using Different Organosilicon Monomers”、116-119、Surf.Coat.Technol.、874、(1999))と比較して、より安定である。プラズマ中の、より高い密度の安定なラジカル、例えば(CH32CH・及び(CH33C・は、式(1)の化合物又は式(2)の化合物中の末端ケイ素メチル基との反応の可能性を増加させる。このことは、膜中の末端ケイ素メチル基の密度を減少させ、より高い機械特性をもたらす。プラズマ中の、より高い密度の安定なラジカルは、ケイ素原子に直接結合されたアルキル基が、分岐鎖又は環状のアルキル、例えばイソプロピル、sec-ブチル、t-ブチル若しくはシクロヘキシルから選択されるときに、達成することができると認められる。
【0014】
有機化学において、一級炭素ラジカル(例えばエチルラジカルCH3CH2・)を生成するために、二級炭素ラジカル(例えばイソプロピルラジカル(CH32CH・)よりも多くのエネルギーを供給しなければならないことは周知である。これは、エチルラジカルに対する、イソプロピルラジカルの、より高い安定性に起因する。同じ原理は、ケイ素アルコキシ基中の酸素-炭素結合のホモリティック結合解離に当てはまり;イソプロポキシシラン中の酸素-炭素結合を解離するために、エトキシシランにおけるよりも少ないエネルギーを必要とする。同様に、イソプロピルシラン中のケイ素-炭素結合を解離するために、エチルシランにおけるよりも少ないエネルギーを必要とする。理論によって拘束されるものではないが、切るのにより少ないエネルギーを必要とする結合は、プラズマ中で、より解離しやすいと推測される。従って、Si-OPri、Si-OBus又はSi-OBut基を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランは、プラズマ中で、Si-OMe基を有するものと比較して、より高い密度のSiO・型のラジカルをもたらすことができる。同様に、Si-Et、Si-Pri、Si-Bus又はSi-But基を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランは、プラズマ中で、Si-Me基のみを有するものと比較して、より高い密度のSi・型のラジカルをもたらすことができる。推定するに、このことは、Si-OPri、Si-OBus又はSi-OBut基を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを使用して堆積された膜の、Si-OMe基を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを使用して堆積された膜に対する、差別化された特性に寄与する。同様に、このことは、推定するに、Si-Pri、Si-Bus又はSi-But基を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを使用して堆積された膜の、Si-Me基を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを使用して堆積された膜に対する、差別化された特性に寄与する。
【0015】
ケイ素前駆体としてのモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランによって達成される、先行技術に対する利点のうち幾つかは、以下に限定するものではないが、より高い機械特性、より低いコスト、合成のしやすさ、及びモノアルコキシシランの場合には、より高いジシリルメチレン(SiCH2Si)密度、を含む。
【0016】
以下の表には、式1又は2を有する選択されるモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランが列挙されている。最も好ましい分子は、分子の沸点が200℃未満(好ましくは150℃未満)となるように選択されたアルキル基の組み合わせを有する分子である。加えて、最適な性能のために、アルコキシ基は、ホモリティック結合解離に際して二級又は三級ラジカルを形成する(例えば、Si-R2→Si・+R2・又はSiO-R3→SiO・+R3・、ここで、R2・及びR3・は二級又は三級ラジカルであり、例えばイソプロピルラジカル又はtert-ブチルラジカルである)を形成するように選択することができる。さらに、本発明による最も好ましいモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランは、R1、R2、R4又はR5として少なくとも1つのメチル基を含む。
【0017】
式1又は2を有する例示的なモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランのリスト
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0018】
好ましくは、本発明による式1又は2を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシラン、及び本発明による式1又は2を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシラン化合物を含む組成物は、ハライドイオンを実質的に含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、ハライドイオン(又はハライド)、例えば塩化物(すなわち塩化物含有種、例えばHCl又は少なくとも1つのSi-Cl結合を有するケイ素化合物、例えばMe2HSiCl)、フッ化物、臭化物及びヨウ化物に関するとき、イオンクロマトグラフィ(IC)によって測定した場合に(重量で)50ppm未満、イオンクロマトグラフィ(IC)によって測定した場合に(重量で)10ppm未満、イオンクロマトグラフィ(IC)によって測定した場合に(重量で)5ppm未満、好ましくはICによって測定した場合に3ppm未満、より好ましくはICによって測定した場合に1ppm未満、最も好ましくはICによって測定した場合に0ppmを意味する。塩化物は、式1又は2を有するケイ素前駆体化合物についての分解触媒として作用することが知られている。最終生成物中の有意なレベルの塩化物は、ケイ素前駆体化合物を分解させる場合がある。ケイ素前駆体化合物の緩やかな分解は、膜堆積プロセスに直接的に影響を与えて、半導体製造者が膜の仕様を満たすことを困難にする場合がある。加えて、貯蔵寿命又は安定性は、ケイ素前駆体化合物の、より速い分解速度によって負に影響を受け、それによって1~2年の貯蔵寿命を保証することを困難にする。従って、ケイ素前駆体化合物の加速された分解は、これらの可燃性及び/又は自然発火性のガス状の副生成物の形成に関する安全性及び性能の懸念をもたらす。好ましくは、式1又は2を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランは、金属又は金属、例えばLi、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crを実質的に含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、このような金属又は金属に関するとき、ICP-MSによって測定した場合に(重量で)5ppm未満、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0.1ppm未満を意味する。幾つかの実施態様において、式1及び2を有するケイ素前駆体化合物は、金属又は金属、例えばLi、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crを含有しない。本明細書において使用されるとき、用語金属不純物を「含有しない」は、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関するとき、ICP-MS又は金属を測定するための他の分析方法によって測定した場合に、(重量で)1ppm未満、好ましくは0.1ppm未満を意味する。好ましくは、式1又は2を有するモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランはまた、水を実質的に含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、水の含有量に関するとき、カールフィッシャー滴定又はICP-MSによって測定した場合に、(重量で)10ppm未満、好ましくは5ppm未満、より好ましくは3ppm未満、最も好ましくは0.1ppm未満を意味する。加えて、好ましくは、式1又は2を有するモノアルコキシシランは、有機シリカガラス(「OSG」)膜を堆積するための前駆体として使用されるとき、GCによって測定した場合に98wt%以上、より好ましくは99wt%以上の純度を有する。
【0019】
低k誘電体膜は、有機シリカガラス(「OSG」)膜又は材料である。有機シリケートは、エレクトロニクス産業において、例えば低k材料として用いられる。材料特性は、膜の化学組成及び構造に依存する。有機ケイ素前駆体の種類は、膜の構造及び組成に対して強い効果を有するため、所望の誘電率に達するのに必要とされる量の多孔性の付与が機械的に不健全な膜を製造しないことを確実にするために要求される膜の特性を提供する前駆体を使用することが有益である。本明細書において説明される方法及び組成物は、電気特性及び機械特性の所望のバランス、並びに他の有益な膜の特性、例えば十分な合計の炭素含有量及び炭素の種類(Si(CH3x、SiCH2Siなど)を有する低k誘電体膜を生成して、改善された統合プラズマ抵抗を提供する手段を提供する。
【0020】
本明細書において説明される方法及び組成物の特定の実施態様において、ケイ素含有誘電体材料の層は、反応チャンバーを用いる化学気相堆積(CVD)プロセスを介して、基材の少なくとも一部に堆積される。従って、方法は、基材を反応チャンバー中に提供する工程を含む。適した基材は、以下に限定するものではないが、半導体材料、例えばヒ化ガリウム(「GaAs」)、ケイ素、並びにケイ素含有組成物、例えば結晶性ケイ素、ポリシリコン、非晶質ケイ素、エピタキシャルケイ素、二酸化ケイ素(「SiO2」)、ケイ素ガラス、窒化ケイ素、溶融シリカ、ガラス、石英、ホウケイ酸ガラス及びそれらの組み合わせ、を含む。他の適した材料は、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、銅、金属合金、並びに半導体、集積回路、フラットパネルディスプレイ及びフレキシブルディスプレイ用途において一般に用いられる他の金属を含む。基材は、さらなる層、例えばケイ素、SiO2、有機シリケートガラス(OSG)、フッ素化シリケートガラス(FSG)、炭窒化ホウ素、炭化ケイ素、水素化された炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化された窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化された炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、有機-無機複合材料、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔性の有機及び無機の材料及び複合物、酸化アルミニウム及び酸化ゲルマニウムなどの金属酸化物を有してよい。さらに、さらなる層は、ゲルマノシリケート、アルミノシリケート、銅、コバルト及びアルミニウム、及び拡散バリア材料、例えば、以下に限定するものではないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W又はWNであってよい。
【0021】
典型的には、反応チャンバーは、例えば熱CVD若しくはプラズマ強化CVD反応器、又は様々な方法におけるバッチ炉型の反応器である。1つの実施態様において、液体輸送システムを利用することができる。液体輸送配合物において、本明細書において説明される前駆体は、未希釈の液体の形態で輸送することができるか、又は代替的に、本明細書において説明される前駆体を含む溶媒配合物又は組成物で用いることができる。従って、特定の実施態様において、前駆体配合物は、所与の最終使用用途において基材に膜を形成するために所望される及び有利である場合がある適した特徴の1つ又は複数の溶媒構成成分を含んでよい。
【0022】
本明細書において開示される方法は、モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物を反応チャンバー中に導入する工程を含む。幾つかの実施態様において、組成物は、さらなる反応体、例えば酸素含有種、例えばO2、O3及びN2O、ガス状又は液体の有機物質、CO2若しくはCOを含んでよい。1つの特定の実施態様において、反応チャンバー中に導入される反応混合物は、O2、N2O、NO、NO2、CO2、水、H22、オゾン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの酸化剤を含む。代替の実施態様において、反応混合物は酸化剤を含まない。
【0023】
本明細書において説明される誘電体膜を堆積するための組成物は、約40~約100wt%のモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含む。
【0024】
複数の実施態様において、モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物を、硬化添加剤とともに使用して、堆積されたままの膜の弾性率をさらに増加させることができる。
【0025】
複数の実施態様において、モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物は、ハライド、例えば塩化物を実質的に含有しないか、又は含有しない。
【0026】
モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランに加えて、堆積反応の前、間及び/又は後に、さらなる材料を反応チャンバー中に導入することができる。このような材料は、例えば不活性ガス(例えば、より低揮発性の前駆体のためのキャリアガスとして用いることができるか、及び/又は堆積されたままの材料の硬化を促進して、より安定な最終的な膜を提供することができる、He、Ar、N2、Kr、Xeなど)を含む。
【0027】
モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含む、用いられる任意の試剤を、別の供給源から別々に、又は混合物として、反応器中に輸送することができる。任意の多くの手段によって、好ましくは適したバルブを備えた、プロセス反応器への液体の輸送を可能とする加圧可能なステンレス鋼容器を使用して、試剤を反応器システムに輸送することができる。好ましくは、前駆体は、気体としてプロセス真空チャンバー中に輸送され、すなわち、液体は、プロセスチャンバー中に輸送される前に気化されなければならない。
【0028】
本明細書において開示される方法は、反応チャンバー中のモノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、モノアルコキシシラン又はジアルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘起して、基材に有機シリカ膜を堆積する工程を含み、有機シリカ膜は、幾つかの実施態様においては約2.8~約3.3、他の実施態様においては2.90~3.3、さらに好ましい実施態様においては3.0~3.2の誘電率、約7~約30GPa、好ましくは10~30GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10~約30at%の炭素を有する。ガス状の試剤にエネルギーが適用されて、モノアルコキシシラン又はジアルコキシシラン、及び存在する場合には他の反応体を誘起して反応させて、基材に膜を形成する。このようなエネルギーは、例えばプラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、リモートプラズマ、ホットフィラメント及び熱(すなわち非フィラメント)方法によって提供することができる。二次rf周波数源を使用して、基材表面におけるプラズマ特性を改質することができる。好ましくは、膜は、プラズマ強化化学気相堆積(「PECVD」)によって形成される。
【0029】
好ましくは、ガス状の試剤のそれぞれについての流量は、単一の300mmウエハ毎に、10~5000sccm、より好ましくは30~3000sccmである。必要とされる実際の流量は、ウエハのサイズ及びチャンバーの構成に依存してよく、決して300mmウエハ又は単一ウエハチャンバーに限定されない。
【0030】
特定の実施態様において、膜は、約5~約700ナノメートル(nm)毎分の堆積速度で堆積される。他の実施態様において、膜は、約30~200ナノメートル(nm)毎分の堆積速度で堆積される。
【0031】
典型的には、堆積の間の、反応チャンバー中の圧力は、約0.01~約600torr又は約1~15torrである。
【0032】
好ましくは、膜は0.001~500ミクロンの厚さに堆積されるが、厚さは要求に応じて変えることができる。パターニングされていない表面に堆積されるブランケット膜は、妥当なエッジエクスクルージョンで(例えば基材の最も外側のエッジ5mmは、均一性の統計的計算において含まれない)、基材にわたって、3%/1標準偏差未満の厚さの変化を伴う優れた均一性を有する。
【0033】
本発明のOSG製品に加えて、本発明は、その製品を製造するプロセス、その製品を使用する方法、並びにその製品を調製するために有用な化合物及び組成物を含む。例えば、半導体装置上に集積回路を製造するためのプロセスは、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6583049号明細書において開示されている。
【0034】
開示される方法によって製造される高密度の有機シリカ膜、特に低k前駆体として式(1)のモノアルコキシシラン化合物を使用して製造される高密度の有機シリカ膜は、特にエッチング及びフォトレジスト剥離プロセスの間の、プラズマ誘起損傷に対する良好な抵抗性を示す。
【0035】
開示される方法によって製造される高密度の有機シリカ膜は、同じ誘電率を有するが、商業的に入手可能な先行技術の構造形成前駆体、例えばジエトキシメチルシラン(DEMS(登録商標))及びジメトキシ-ジメチルシラン(DMDMOS)から作られる高密度の有機シリカ膜と比較して、所与の誘電率について優れた機械特性を示す。典型的には、得られる(堆積されたままの)有機シリカ膜は、幾つかの実施態様においては約2.80~約3.30、他の実施態様においては約2.90~約3.20、さらに他の実施態様においては約3.0~約3.2の誘電率、約7~約30GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10~約30at%の炭素を有する。
【0036】
得られる高密度の有機シリカ膜は、堆積された後に後処理プロセスを受けてもよい。従って、本明細書において使用されるとき、用語「後処理」は、膜をエネルギー(例えば熱、プラズマ、フォトン、電子、マイクロ波など)又は化学物質で処理して、材料の特性をさらに向上させることを意味する。
【0037】
後処理が行われる条件は、大きく変えることができる。例えば、後処理は、高圧の下で、又は真空雰囲気の下で行われてよい。
【0038】
UVアニールは、以下の条件の下で行われる好ましい方法である。
【0039】
環境は、不活性(例えば窒素、CO2、貴ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)又は還元性(希薄若しくは濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖若しくは分岐鎖、芳香族)など)であってよい。好ましくは、圧力は約1Torr~約1000Torrである。しかし、熱アニール並びに任意の他の後処理手段のためには、真空雰囲気が好ましい。好ましくは、温度は200~500℃であり、温度傾斜率は0.1~100℃/分である。好ましくは、合計のUVアニール時間は、0.01分~12時間である。
【0040】
本発明は、以下の例を参照して、より詳細に例示されるが、以下の例に限定されるものと認められるとは理解されるべきでない。本発明において説明される前駆体を使用して、既存の多孔性の低k膜に対する類似のプロセスの利点(すなわち、所与の誘電率の値についてのプラズマ誘起損傷に対するより高い抵抗性、及びより高い弾性率)を有する多孔性の低k膜を堆積することもできることも認識される。
【実施例
【0041】
例1:イソ-プロピル-メチル-エトキシシラン(IPMEOS)の合成
229.0g(1.70mol)のジエトキシメチルシラン及び1Lのヘキサンを、熱電対及び濃縮器を有する三口の丸底フラスコに装填した。THF中の853mL(1.70mol)の2Mイソプロピルマグネシウムクロリドを滴下して、反応混合物の温度を35℃に、緩やかに上昇させた。得られた灰色のスラリーを、撹拌しながら室温まで冷却して戻した。マグネシウム塩を反応混合物からろ過した。蒸留による溶媒の除去の後に、分別蒸留は148gのイソプロピル-メチル-エトキシシランを捕集した。収率は66%であった。図7は、合成したイソプロピル-メチル-エトキシシランについてのGC-MSクロマトグラムである。
【0042】
例2:イソ-プロピル-メチル-イソ-プロポキシシランの合成
THF中の3.4mL(6.84mmol)の2.0Mのイソ-プロピルマグネシウムクロリドを、ヘキサン中の1.11g(6.84mmol)のジ-イソ-プロポキシ-メチルシランに、室温で滴下した。直ちに塩が沈殿し、反応はわずかに発熱性であった。2時間の撹拌の後、塩をバイアルの底部に沈殿させた。図8は、合成したイソ-プロピル-メチル-イソ-プロポキシ-シランについてのGC-MSクロマトグラムである。
【0043】
例3:ジ-イソ-プロポキシジメチルシランの合成
380g(6.31mol)のイソプロピルアルコールを、還流における500mLのヘキサン中の327g(2.53mol)のジクロロジメチルシランに滴下した。窒素パージを導入して、HClをパージした。添加が完了した後、1時間還流を続け、次いで反応を、室温に冷却するまでそのままにした。30mLのイソ-プロピルアミンを添加して、反応を完了に至らせた。ろ過によってイソ-プロピルアミンヒドロクロリドを除去した後、88℃、180Torrで、粗生成物を分別蒸留した。99.8%の純度で、392gのジ-イソ-プロポキシジメチルシランを得た。収率は86%であった。図9は、合成したジ-イソ-プロポキシジメチルシランについてのGC-MSクロマトグラムである。
【0044】
例4:ジ-sec-ブトキシジメチルシランの合成
646.0g(8.72mol)の2-ブタノールを、還流における500mLのヘキサン中の500.0g(3.87mol)のジクロロジメチルシランに滴下した。窒素パージを導入して、HClをパージした。添加が完了した後、1時間還流を続け、次いで反応を、室温に冷却するまでそのままにした。162mLのイソ-プロピルアミンを添加して、反応を完了に至らせた。得られた反応スラリーをろ過して、大気圧における蒸留によって溶媒を除去した。50℃/6mmHgにおける真空蒸留は、99.2%の純度で、695.6gのジ-sec-ブトキシジメチルシランを生成した。収率は88%であった。図10は、合成したジ-sec-ブトキシジメチルシランについてのGC-MSクロマトグラムである。
【0045】
例5~8:式2を有するさらなるジアルコキシシランの合成
例4と類似の手法でさらなるジアルコキシシランを製造し、GC-MSによって特性評価した。それぞれの化合物の分子量(MW)、構造、及び対応する主要なMS開裂ピークを下に提供していて、それらの同定を確実にした。
【表2】
【0046】
比較実験を含む全ての堆積実験を、2つのウエハに同時に膜を堆積する300mmのAMAT Producer(登録商標)SEにおいて行った。従って、前駆体及びガスの流量は、同時に2つのウエハに膜を堆積するのに要求される流量に対応する。それぞれのウエハ処理ステーションがそれ自体の独立のRF電力供給を有するとき、記載された、ウエハ毎のRF電力は正しい。両方のウエハ処理ステーションが同じ圧力に保持されるとき、記載された堆積圧力は正しい。Producer(登録商標)SEは、堆積処理が完了した後に特定の膜をUV硬化するのに使用するProducer(登録商標)Nanocureチャンバーを備えていた。
【0047】
特定の具体的な実施態様及び例を参照して上で例示及び説明がされたが、それでも、本発明は、示された詳細に限定されることを意図されない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲において、かつ本発明の趣旨から逸脱することなく、詳細において種々の変更をすることができる。例えば、本文献において広く記載された全ての範囲は、それらの範囲内に、その広い範囲内にある全てのより狭い範囲を含むことが、明確に意図されている。本発明において式(1)又は式(2)に開示される化合物はまた、高い弾性率、高いXPS炭素含有量、及びプラズマ誘起損傷に対する高い抵抗性を有する多孔性の低k膜の堆積のための構造形成剤として使用することができると認められる。
【0048】
厚さ及び屈折率を、WoollamモデルM2000分光エリプソメータにおいて測定した。誘電率を、中度の抵抗のp型ウエハ(8~12Ω・cm)に対してHgプローブ技術を使用して決定した。FTIRスペクトルを、12インチウエハを処理するための窒素パージPike Technologies Map300を備えるThermo Fisher Scientific Model iS50分光計を使用して測定した。FTIRスペクトルを使用して、膜中の架橋ジシリルメチレン基の相対密度、又は末端ケイ素メチル基(Si-Me若しくはSi(CH3x、式中xは1、2若しくは3)の相対密度を計算した。赤外分光法によって決定した場合に、膜中の末端ケイ素メチル基(すなわちSi-Me又はSi(CH3xの密度)は、1270cm-1付近を中央とするSi(CH3x赤外バンドの面積を、おおよそ1250cm-1~920cm-1のSiOxバンドの面積によって割ったものの100倍として定義する。赤外分光法によって決定した場合に、膜中の架橋ジシリルメチレン基の相対密度(すなわちSiCH2Siの密度)は、1360cm-1付近を中央とするSiCH2Si赤外バンドの面積を、おおよそ1250cm-1~920cm-1のSiOxバンドの面積によって割ったものの10000倍として定義する。機械特性を、KLA iNanoナノインデンターを使用して決定した。
【0049】
組成データを、PHI 5600(73560、73808)又はThermo K-Alpha(73846)のいずれかにおいてX線光電子分光法(XPS)によって得て、原子重量パーセントで提供する。表に記録した原子重量パーセント(%)の値は、水素を含んでいない。
【0050】
下に列挙される例におけるそれぞれの前駆体について、堆積条件を、3.1又は3.2の誘電率で高い機械特性を有する膜を製造するように最適化した。
【0051】
比較例1:高密度の、ジエトキシメチルシラン(DEMS(登録商標))ベースの膜の堆積
高密度の、DEMS(登録商標)ベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。DEMS(登録商標)前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、750mg/分の流量で、1500sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、345℃の土台温度で、10Torrのチャンバー圧力で、300ワットの13.56MHzプラズマを適用した。堆積したままの膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって決定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成)を、上で説明したように得て、表2に提供する。
【0052】
比較例2:高密度の、ジメチル-ジメトキシシラン(DMDMOS)ベースの膜の堆積
高密度の、DMDMOSベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。DMDMOS前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、1500mg/分の流量で、1500sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、25sccmのO2流量で、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、350℃の土台温度で、7.5Torrのチャンバー圧力で、376ワットの13.56MHzプラズマを適用した。堆積したままの膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、及び赤外分光法によって決定した場合の種々の官能基の密度)を、上で説明したように得て、表1に提供する。
【0053】
比較例3:高密度の、ジメチル-ジメトキシシラン(DMDMOS)ベースの膜の堆積
高密度の、DMDMOSベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。DMDMOS前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、2000mg/分の流量で、1500sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、25sccmのO2流量で、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、350℃の土台温度で、7.5Torrのチャンバー圧力で、430ワットの13.56MHzプラズマを適用した。堆積したままの膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって決定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成)を、上で説明したように得て、表2に提供する。
【0054】
例9:高密度の、ジメチル-ジ-イソ-プロポキシシラン(DMDIPOS)ベースの膜の堆積
高密度の、DMDIPOSベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。DMDIPOS前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、700mg/分の流量で、925sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、20sccmのO2流量で、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、350℃の土台温度で、6.25Torrのチャンバー圧力で、425ワットの13.56MHzプラズマを適用した。堆積したままの膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって決定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成)を、上で説明したように得て、表1に提供する。
【0055】
例10:高密度の、ジメチル-ジ-イソ-プロポキシシラン(DMDIPOS)ベースの膜の堆積
高密度の、DMDIPOSベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。DMDIPOS前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、800mg/分の流量で、925sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、8sccmのO2流量で、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、400℃の土台温度で、7.0Torrのチャンバー圧力で、200ワットの13.56MHzプラズマを適用した。堆積したままの膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって決定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成)を、上で説明したように得て、表2に提供する。
【0056】
例11:高密度の、イソ-プロピル-メチル-エトキシシラン(IPMEOS)ベースの膜の堆積
高密度の、IPMEOSベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。IPMEOS前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、1100mg/分の流量で、900sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、8sccmのO2流量で、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、390℃の土台温度で、7.5Torrのチャンバー圧力で、270ワットの13.56MHzプラズマを適用した。堆積したままの膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、及び赤外分光法によって決定した場合の種々の官能基の密度)を、上で説明したように得て、表1に提供する。
【0057】
例12:高密度の、イソ-プロピル-メチル-エトキシシラン(IPMEOS)ベースの膜の堆積
高密度の、IPMEOSベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。IPMEOS前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、1100mg/分の流量で、1200sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、24sccmのO2流量で、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、390℃の土台温度で、7.5Torrのチャンバー圧力で、270ワットの13.56MHzプラズマを適用した。堆積したままの膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって決定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成)を、上で説明したように得て、表2及び3に提供する。
【0058】
例13:高密度の、UV硬化したイソプロピル-メチル-エトキシシラン(IPMEOS)ベースの膜の堆積
高密度の、IPMEOSベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。IPMEOS前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、1100mg/分の流量で、1200sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、24sccmのO2流量で、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、390℃の土台温度で、7.5Torrのチャンバー圧力で、270ワットの13.56MHzプラズマを適用した。堆積したままの膜の機械特性を向上するために、膜を、Producer(登録商標)NanocureTMチャンバー中で、400℃の土台温度でUV硬化した。UV硬化プロセスの長さを、膜の機械特性を最大化するように、一方で膜の誘電率に対する影響がほぼないか全くないように調節した。UV硬化した膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって決定した場合の種々の官能基の密度、及び炭素の原子重量パーセント(%C))を、上で説明したように得て、表3に提供する。
【0059】
表1.高い弾性率を得るように調節した、3.2の誘電率を有する選択膜についての処理条件
【表3】
【0060】
表2.高い弾性率を得るように調節した、3.1の誘電率を有する選択膜についての処理条件
【表4】
【0061】
表3.イソ-プロピル-メチル-エトキシシラン(IPMEOS)を使用して堆積した、堆積したままのk=3.1の膜、及びUV硬化したk=3.1の膜の比較の膜の特性
【表5】
【0062】
表1は、ジメチル-ジイソプロポキシシラン(DMDIPOS)、イソ-プロピル-メチル-エトキシシラン(IPMEOS)及びジメチル-ジメトキシシラン(DMDMOS)を使用して堆積したk=3.2の膜の、比較の膜の特性を示している。表2は、DMDIPOS、IPMEOS、ジエトキシ-ジメチルシラン(DEMS(登録商標))及びDMDMOSを使用して堆積したk=3.1の膜の比較の膜の特性を示している。表1及び2における全ての膜の処理条件を、高い弾性率を達成するように調節した。表2における4つの膜の赤外スペクトルを、図2に示す。これらのスペクトルを使用して、先に説明したそれぞれの膜中のSi-Me(又はSi(CH3x)基の相対密度及びSiCH2Si基の相対密度を計算した。同様に、表1における膜の赤外スペクトルを使用して、先に説明したそれぞれの膜中のSi(CH3x基及びSiCH2Si基の相対密度を計算した。
【0063】
表1に要約するように、DMDIPOS及びIPMEOSを使用して堆積した膜は、DMDMOSベースの膜に対して、予期されない高い弾性率及び硬度を有し、全ての膜は3.2の測定した誘電率を有する。DMDMOSベースの膜と比較して、DMDIPOS及びIPMEOSベースの膜は、有意に高い機械特性と、より低いSi(CH3x密度を有している。同様の傾向は表2においても観察され、DMDIPOS及びIPMEOSを使用して堆積した膜は、DEMS(登録商標)及びDMDMOSベースの膜に対して、予期されない高い弾性率及び硬度を有している。DEMS(登録商標)及びDMDMOSベースの膜と比較して、DMDIPOS及びIPMEOSベースの膜は、有意に高い機械特性と、より低いSi(CH3x密度を有している。
【0064】
図5は、表2における膜の、硬度に対する相対Si(CH3x密度のプロットを示している。データは、膜のSi(CH3xの密度が減少するにつれて、膜の硬度が増加することを示している。ケイ素メチル密度の減少に伴って機械強度が上昇する傾向は、文献において先に報告された挙動と一致している。しかし、IPMEOS、式(1)のモノアルコキシシラン化合物から堆積した膜が、ジアルコキシシラン化合物DEMS(登録商標)から堆積した膜よりも高い機械強度を示すことは、DEMS(登録商標)ベースの膜は、それらの高い機械強度が周知となっているため、予期されないことである。同様に、DMDIPOS、式(2)のジアルコキシシラン化合物が、DMDMOSから堆積した膜に対して、このような非常に高い機械特性を示すことは、これらの2つの前駆体がアルコキシ基を除いては同じであるため、予期されないことである。DMDIPOSベースの膜が、膜のこのシリーズのうちで最も高い機械強度を示すこともまた予期されないことである。
【0065】
先行技術のケイ素含有構造形成前駆体、例えばDEMS(登録商標)は、反応チャンバー中で励起された後にポリマー化されて、ポリマーの主鎖中に-O-結合を有する構造(例えば-Si-O-Si-又はSi-O-C-)を形成するが、式(1)に与えられる構造を有するモノアルコキシシラン化合物、例えばIPMEOS分子は、ポリマー化して、高い割合の主鎖中の-O-架橋が-CH2-メチレン又は-CH2CH2-エチレン架橋で置き換えられている構造を形成すると考えられる。構造形成前駆体として、炭素が主に末端Si-Me基の形態で存在する先行技術の前駆体、例えばDEMS(登録商標)及びDMDMOSを使用して堆積される膜において、%Si-Me(直接的には%Cに関する)と機械強度との間には、ある関係があり、例えば、図1に示されるモデルワークを参照せよ。ここでは、架橋Si-O-Si基を2つの末端Si-Me基で置換することが、網目構造が崩壊するために、機械特性を低下させている。式(1)を有するモノアルコキシシラン化合物の場合において、膜の堆積の間に前駆体構造が破壊されて、SiCH2Si又はSiCH2CH2Si架橋基を形成すると考えられる。このようにして、機械強度の観点から、膜中の炭素含有量の増加によって網目構造を崩壊させないように、架橋基の形態の炭素を組み込むことができる。理論によって拘束されるものではないが、この性質は、例えば膜のエッチング、フォトレジストのプラズマアッシング及び銅表面のNH3プラズマ処理などのプロセスによる高密度の膜の炭素欠乏に対して、膜を、より回復しやすいものにするように、膜に炭素を添加する。高密度の低k膜における炭素欠乏は、膜の有効な誘電率の増加、膜のエッチングに伴う問題、及び湿式洗浄工程の間の特徴の曲がり、及び/又は銅拡散バリアを堆積するときの統合の問題を引き起こす場合がある。先行技術の構造形成剤、例えばMESCP(1-メチル-1-エトキシ-1-シラシクロペンタン)の堆積は、非常に高い密度の架橋SiCH2Si及び/又はSiCH2CH2Si基を有する低k膜を堆積することができるが、これらの膜は、最終的にこの種類の先行技術の低k前駆体によって達成することができる最高の弾性率を限定する、非常に高いSi-Me密度及び合計の炭素含有量も有する。例えば、米国特許第9922818号明細書において教示されているように、高い機械特性について最適化されるとき、MESCPベースの膜の弾性率は、同じ値の誘電率において、DEMS(登録商標)ベースの膜の弾性率に近い。
【0066】
300mmのPECVD反応器において、低k前駆体として、DMDIPOS、IPMEOS、DEMS(登録商標)及びDMDMOSを使用して堆積される高密度の低k膜の堆積のための処理条件を、表2に与える。これらの堆積のそれぞれについての処理条件は、3.1の誘電率で高い弾性率を得るように調節した。表1における高密度の低k膜の赤外スペクトルを、図2に示す。それぞれの膜中のSi(CH3x基及びSiCH2Si基の相対密度を、先に説明した、その赤外スペクトルから計算した。
【0067】
高密度の低k誘電体膜の堆積のシリーズを、低k前駆体としてDMDIPOS又はDMDMOSのいずれかを使用して、300mmのPECVD反応器において、230~525ワットのプラズマ電力、6.25~7.50Torrのチャンバー圧力、350~400℃の基材温度、8~125sccmのO2ガス流、925~1500sccmのHeキャリアガス流、0.7~3.3g/分の前駆体液体流及び0.380インチの電極間隔の種々のプロセス条件の下で堆積した。弾性率を、本明細書において説明されるように、ナノインデンテーションによって測定した。図3は、異なる誘電率を有する、高密度の、DMDIPOS及びDMDMOSの膜の弾性率の間の関係を示している。図3が示すように、先行技術又はDMDMOSの低k膜は、誘電率が約2.9から約3.2に増加するときに、DMDIPOSベースの膜よりも、同じ値の誘電率で、より低い弾性率を有する。このことは、本明細書において説明される式(2)のジアルコキシシラン化合物をDMDIPOSとして使用することの、類似の値の誘電率である高密度の低k誘電体膜を堆積するための他の先行技術の構造形成剤を使用することに対する重要な利点のうち1つを示していて、ジアルコキシシラン前駆体DMDIPOSを使用して、より高い弾性率を有する膜を堆積することができることを示している。
【0068】
高密度の低k誘電体膜の堆積のシリーズを、低k前駆体としてDMDIPOS又はDMDMOSのいずれかを使用して、300mmのPECVD反応器において、230~525ワットのプラズマ電力、6.25~7.50Torrのチャンバー圧力、350~400℃の基材温度、8~125sccmのO2ガス流、925~1500sccmのHeキャリアガス流、0.7~3.3g/分の前駆体液体流及び0.380インチの電極間隔の種々のプロセス条件の下で堆積した。Si(CH3x基の密度を、本明細書において説明されるように、それぞれの膜についての赤外スペクトルから計算した。図4は、異なる誘電率を有する、高密度の、DMDIPOS及びDMDMOSの膜のSi(CH3x基の密度の間の関係を示している。図4が示すように、先行技術又はDMDMOSの低k膜は、誘電率が約2.9から約3.2に増加するときに、DMDIPOSベースの膜よりも、同じ値の誘電率で、より高密度のSi(CH3x基を有する。このことは、本明細書において説明される式(2)のジアルコキシシラン化合物をDMDIPOSとして使用することの、類似の値の誘電率である高密度の低k誘電体膜を堆積するための他の先行技術の構造形成剤を使用することに対する重要な利点のうち1つを示していて、ジアルコキシシラン前駆体DMDIPOSを使用して、より低密度のSi(CH3x基を有する膜を堆積することができることを示している。より低密度のSi(CH3x基は、網目構造が、より崩壊しないため、増加した機械特性を有する高密度の低k膜をもたらす。
【0069】
高密度の低k誘電体膜の堆積のシリーズを、低k前駆体としてIPMEOS又はDEMS(登録商標)のいずれかを使用して、300mmのPECVD反応器において、170~550ワットのプラズマ電力、7.0~10.0Torrのチャンバー圧力、345~390℃の基材温度、0~40sccmのO2ガス流、600~2250sccmのHeキャリアガス流、1.1~2.5g/分の前駆体液体流及び0.380インチの電極間隔の種々のプロセス条件の下で堆積した。SiCH2Si基の密度を、本明細書において説明されるように、それぞれの膜についての赤外スペクトルから計算した。図6は、異なる誘電率を有する、高密度の、IPMEOS及びDEMS(登録商標)の膜のSiCH2Si基の密度の間の関係を示している。図6が示すように、先行技術又はDEMS(登録商標)の低k膜は、誘電率が約2.9から約3.2に増加するときに、IPMEOSベースの膜に対して、同じ値の誘電率で、より低密度のSiCH2Si基を有する。このことは、本明細書において説明される式(1)のモノアルコキシシラン化合物をIPMEOSとして使用することの、類似の値の誘電率である高密度の低k誘電体膜を堆積するための他の先行技術の構造形成剤を使用することに対する重要な利点のうち1つを示していて、モノアルコキシシラン前駆体IPMEOSを使用して、より高密度のSiCH2Si基を有する膜を堆積することができる。このようにして、機械強度の観点から、膜中の炭素含有量の増加によって網目構造を崩壊させないように、架橋基の形態の炭素を組み込むことができる。理論によって拘束されるものではないが、この性質は、例えば膜のエッチング、フォトレジストのプラズマアッシング及び銅表面のNH3プラズマ処理などのプロセスによる高密度の膜の炭素欠乏に対して、膜を、より回復しやすいものにするように、膜に炭素を添加する。
【0070】
DEMS(登録商標)ベースの膜は、それらが高い機械強度であることが周知であるため、IPMEOS、式(1)のモノアルコキシシラン化合物から堆積された膜が、周知の市販のジアルコキシシラン化合物DEMS(登録商標)から堆積された膜よりも高い機械強度を示すことは予期されなかったことである。例示のために、(類似の堆積条件を前提として)高密度の低k膜について、低k前駆体中のケイ素-アルコキシ基(例えばSi-OCH3、Si-OCH2CH3など)の数が増加し、前駆体中のケイ素-炭素結合(例えばSi-CH3、Si-CH2CH3など)の数が減少するにつれて、堆積されたままの膜の誘電率及び機械特性が向上し、膜の炭素含有量が減少することが認められる。従って、前駆体中のケイ素原子毎に、4つのケイ素-アルコキシ基を含有し、かつケイ素-炭素結合を含有しない前駆体(例えばTEOS)から堆積された膜は、ケイ素毎に3つのケイ素-アルコキシ基を含有し、かつケイ素毎に1つ以下のケイ素-炭素結合を含有する前駆体(例えばトリエトキシシラン又はTES、及びメチル-トリエトキシシラン又はMTES)から堆積された膜と比較して、より高い誘電率、より高い機械特性及びより少ない炭素を有し、同様に、ケイ素毎に3つのケイ素-アルコキシ基を含有し、かつケイ素毎に1つ以下のケイ素-炭素結合を含有する前駆体から堆積された膜は、ケイ素毎に2つのケイ素-アルコキシ基を含有し、かつ1つ又は2つのケイ素-炭素結合を含有する前駆体(例えばDEMS(登録商標)及びDMDMOS)から堆積された膜と比較して、より高い誘電率、より高い機械特性及びより少ない炭素を有し、同様に、ケイ素毎に2つのケイ素-アルコキシ基を含有し、かつ1つ又は2つのケイ素-炭素結合を含有する前駆体から堆積された膜は、ケイ素毎に1つのみのケイ素-アルコキシ基を含有し、かつ3つ以下のケイ素-炭素結合を含有する前駆体(例えばジエチル-メチル-イソ-プロポキシシラン及びトリメチルシラン)から堆積された膜と比較して、より高い弾性率を有する。実際に、米国特許第8137764号明細書において、このコンセプトを利用して、堆積プロセスの間に2つの異なる前駆体の制御された混合を使用して膜を堆積することによって、高密度の低k膜の機械特性を向上させている。1つの前駆体(硬化添加剤)は、膜の機械特性を向上させるように選択され、ケイ素原子毎に3~4個のケイ素酸素結合を含有し、ケイ素-炭素結合を含有せず、例えばTEOS及びトリエトキシシラン(TES)である。第二の前駆体、低k前駆体は、1つ又は複数のケイ素-炭素結合を含有していて、例えばDEMS(登録商標)又はDMDMOSである。代表的な例は、TES(50%)及びDEMS(登録商標)(50%)のブレンドからの低k膜の堆積である。TES及びDEMS(登録商標)のブレンドから堆積されて得られたk=3.17の膜は、同じ値の誘電率で、DEMS(登録商標)のみから堆積された膜の硬度(1.58GPa)よりも高い硬度(1.76GPa)を有していた。TES及びDEMS(登録商標)のブレンドから堆積された低k膜の、より高い弾性率は、この膜の、DEMS(登録商標)のみから堆積された膜と比較して、より高い酸素含有量、及びおそらくは、より低い炭素含有量に起因する。増加した酸素含有量及び減少した炭素含有量は、より良好な三次元網目構造接続性、及びそれによる改善された機械特性をもたらすことができる。従って、特に、DEMS(登録商標)ベースの膜は、それらが高い機械強度であることが周知であるため、IPMEOS、式(1)のモノアルコキシシラン化合物から堆積された膜が、ジアルコキシシラン化合物DEMS(登録商標)から堆積された膜よりも高い機械強度を示すことは予期されなかったことである。
【0071】
表1及び2中のDMDIPOS及びIPMEOSから堆積された膜を比較することも教示を与えるものである。DMDIPOSベースの膜は、式(2)に対応するジアルコキシシラン化合物から堆積された膜に対応し、一方でIPMEOSベースの膜は、式(1)に対応するモノアルコキシシラン化合物から堆積された膜に対応する。表1及び表2の両方において、DMDIPOSベースの膜は、IPMEOSベースの膜と比較して、より高い機械特性、より低いSi(CH3x密度及びより低いSiCH2Si密度を有する。従って、これらの例において、式(2)に対応するジアルコキシシラン化合物から堆積された膜は、式(1)に対応するモノアルコキシシランベースの化合物から堆積された膜と比較して、より高い機械特性、より低いSi(CH3x密度、及びより低いSiCH2Si密度を有する。
【0072】
表2中のデータは、IPMEOSベースの膜、式(1)に対応するモノアルコキシシラン化合物から堆積された膜は、ジアルコキシシラン化合物DEMS(登録商標)から堆積された膜よりも、有意に高い機械特性を有することを示している。このことは、DEMS(登録商標)ベースの膜は、それらが高い機械強度であることが周知であるため、予期されなかったことである。
【0073】
表1及び表2中のデータは、IPMEOSベースの膜が、3つの他のジアルコキシシラン化合物、DMDIPOS、DEMS(登録商標)及びDMDMOSから堆積された膜と比較して、最大の炭素含有量及び最大のSiCH2Si密度を有することを示している。従って、IPMEOSから堆積された膜が、DMDIPOS、DEMS(登録商標)及びDMDMOSから堆積された膜と比較して、PIDに対する、より高い抵抗性を有することは予期されることである。すなわち、同じ値の誘電率について、式(1)に対応するモノアルコキシシラン化合物から堆積された膜が、式(2)に対応するジアルコキシシラン化合物から堆積された膜と比較して、より高い炭素含有量及びより高いSiCH2Si密度を有することは予期されることである。従って、同じ値の誘電率について、式(1)に対応するモノアルコキシシラン化合物から堆積された膜が、式(2)に対応するジアルコキシシラン化合物から堆積された膜と比較して、PIDに対する、より高い抵抗性を有することは予期されることである。式(1)に対応するモノアルコキシシラン化合物から堆積された膜はまた、産業標準のジアルコキシシラン低k前駆体、例えばDEMS(登録商標)及びDMDMOSから堆積された膜と比較して、予期されない高い機械特性を示す。
【0074】
表1中のDMDIPOSベースの膜の機械強度は、表1中のDMDMOSベースの膜の機械強度と比較して、有意に高いことが認められる。さらに、表1中のDMDIPOSベースの膜は、表1中のDMDMOSベースの膜と比較して、より低いSi(CH3x密度を有する。同様に、表2中のDMDIPOSベースの膜の機械強度は、表2中のDMDMOSベースの膜の機械強度と比較して、有意に高い。さらに、表2中のDMDIPOSベースの膜は、表2中のDMDMOSベースの膜と比較して、より低いSi(CH3x密度を有する。
【0075】
ジメチル-ジ-アルコキシシランベースのDMDIPOS及びDMDMOS前駆体は、アルコキシ基以外は同じである(DMDIPOSにおいて、アルコキシ基はイソ-プロポキシ(分岐鎖のアルコキシ基)であり、DMDMOSにおいて、アルコキシ基はメトキシである)ため、DMDIPOSベースの膜とDMDMOSベースの膜との間の機械強度及びSi(CH3x密度の差は、予期されなかったことである。先行技術は、アルコキシ基は異なるが他は同じである前駆体分子の、これらの前駆体から堆積された膜の特性に対する影響を考慮していない。上の例において、分岐鎖のイソプロポキシ誘導体(DMDIPOS)から堆積された膜が、非分岐鎖のメトキシ誘導体(DMDMOS)から堆積された膜と比較して、有意に、より高い機械特性及びより低いSi(CH3x密度を有することは明確である。理論によって拘束されるものではないが、本発明における式(2):
(2) R45Si(OR62
のジアルコキシシラン化合物は、アルコキシ基中のR基が、先行技術(Bayer,C.ら“Overall Kinetics of SiOx Remote-PECVD using Different Organosilicon Monomers”、116-119、Surf.Coat.Technol.、874、(1999))において開示されるメチル、例えばMe3SiOMe又はMe3SiOEtよりも安定なラジカルを提供する、直鎖、分岐鎖又は環状のC3~C10アルキル、好ましくはプロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル若しくはtert-ブチル、から選択されるときに、プラズマ強化化学気相堆積の間に、安定なラジカル、例えば(CH32CH・及び(CH33C・を提供することができる。プラズマ中の安定なラジカル、例えば(CH32CH・及び(CH33C・の、より高い密度は、DMDIPOS中の末端ケイ素メチル基の1つ又は両方との反応の可能性を増加させる。このことは、膜中の末端ケイ素メチル基の密度を減少させ、より高い機械特性を有する低k膜をもたらす。プラズマ中の安定なラジカルの、より高い密度は、式(2)のジアルコキシシラン化合物におけるアルキル基R5が、分岐鎖又は環状のアルキル、例えばイソプロピル、sec-ブチル、t-ブチル若しくはシクロヘキシル、から選択されるときに達成することができることが認められる。
【0076】
ここまでで説明された特性は、全て、UV硬化などの後堆積処理を伴わない、堆積されたままの膜に対応するが、式(1)のモノアルコキシシラン化合物又は式(2)のジアルコキシシラン化合物から堆積された膜をUV硬化することによって、有意に、より高い機械特性を得ることができる。例示のために、表3中のデータは、堆積及びUV硬化された、k=3.1のIPMEOSベースの低k膜の膜特性を比較している。k=3.1のIPMEOSベースの低k膜は、表2において説明されているものと同じ膜である。UV硬化の後、膜の機械特性は、おおよそ14%増加し、3.1の誘電率及び27GPaの弾性率を有する膜をもたらし、27GPaの弾性率は、3.1の誘電率を有する低k膜としては非常に高い弾性率である。UV硬化プロセスは、膜の炭素含有量(おおよそ-4%)及びSi(CH3x密度(約-28%)の両方を減少させ;SiCH2Si密度(約+20%)を増加させる。UV硬化プロセスは、幾らかの少量の多孔性を導入し、膜の合計の炭素含有量を減少させ得るため、UV硬化された膜が、対応する堆積されたままの膜と比較して、PIDに対して、より低い抵抗性を示すことは、予期されなかったことである。
【0077】
商業的に入手可能な産業標準のジアルコキシシラン低k前駆体、例えばDEMS(登録商標)又はDMDMOSと比較して、式(1)に対応するモノアルコキシシラン化合物から堆積された膜、例えばIPMEOSベースの膜、及び式(2)に対応するジアルコキシシラン化合物から堆積された膜、例えばDMDIPOSベースの膜は、同じ値の誘電率について、予期されない高い機械特性、及びより低いSi(CH3x密度を有する。従って、その両方は、DEMS(登録商標)ベース又はDMDMOSベースの膜よりも高い機械特性を有する低k膜が要求される用途のために適している。
【0078】
DMDIPOSベースの膜は、IPMEOSベースの膜と比較して、より高い機械特性を有するが、IPMEOSベースの膜は、同じ値のkのDMDIPOSベースの膜と比較して、より高い炭素含有量、より高いSi(CH3x密度及びより高いSiCH2Si密度を有する。従って、IPMEOSベースの膜は、DMDIPOSベースの膜と比較して、PIDに対して、より高い抵抗性を示すことが予期される。さらに、IPMEOSベースの膜は、表1及び表2における最高のSiCH2Si密度を有する。さらに、IPMEOSベースの膜は、表2における最大の炭素含有量を有する。従って、IPMEOSベースの膜が、同じ値の誘電率で、DMDIPOS、DEMS(登録商標)又はDMDMOSから堆積された膜と比較して、PIDに対して、最大の抵抗性を示すことは、予期されることである。すなわち、同じ値の誘電率について、式(1)のモノアルコキシシラン化合物を使用して堆積された膜は、式(2)のジアルコキシシラン化合物を使用して堆積された膜と比較して、より高い炭素含有量、より高いSi(CH3x密度、より高いSiCH2Si密度、及びPIDに対する、より高い抵抗性を有することが予期される。従って、式(1)のモノアルコキシシラン化合物は、高い機械強度、及びPIDに対する強い抵抗性の両方が要求される用途のために、より適している場合がある。
【0079】
利用可能にされた、式(1)のモノアルコキシシラン化合物又は式(2)のジアルコキシシラン化合物を使用して堆積された高密度の低k膜の利点は、高密度の低k膜に限定されず、多孔性の低k堆積プロセスに、容易に拡張することができると認められる。
図1
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【国際調査報告】