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特表2022-548021モノアルコキシシラン、及びそれから作られる高密度の有機シリカ膜
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  • 特表-モノアルコキシシラン、及びそれから作られる高密度の有機シリカ膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】モノアルコキシシラン、及びそれから作られる高密度の有機シリカ膜
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/312 20060101AFI20221109BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221109BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20221109BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H01L21/312 A
H01L21/31 C
C23C16/42
C07F7/18 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516031
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2020050095
(87)【国際公開番号】W WO2021050659
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/899,824
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】マンチャオ シアオ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ロバート エントレー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ピー.スペンス
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ニコラス バーティス
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー リン アン アチタイル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ゴードン リッジウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
【テーマコード(参考)】
4H049
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ21
4H049VR23
4H049VR41
4H049VS02
4H049VT17
4H049VT30
4H049VU31
4H049VV16
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA24
4K030BA44
4K030EA06
4K030FA01
4K030FA10
4K030JA06
4K030JA12
4K030LA15
5F045AA08
5F045AB39
5F045AC07
5F045AC11
5F045AC17
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045AE25
5F045DC62
5F045DC63
5F045HA01
5F058AA10
5F058AF01
5F058AH02
(57)【要約】
改善された機械特性を有する高密度の有機ケイ素膜を製造するための方法であって、基材を反応チャンバー中に提供する工程;新規のモノアルコキシシランを含むガス状の組成物を反応チャンバー中に導入する工程;及び反応チャンバー中の新規のモノアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、新規のモノアルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘起して、基材に有機ケイ素膜を堆積する工程、を含み、有機ケイ素膜が、約2.80~約3.30の誘電率、約9~約32GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10~約30at%の炭素を有する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された機械特性を有する高密度の有機シリカ膜を製造するための方法であって、
基材を反応チャンバー中に導入する工程;
式(1)又は(2):
(1)R12MeSiOR3
(式中、R1及びR2が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはエチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチルから独立に選択され、R3が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル若しくはtert-ブチルから選択される)
(2)R4(Me)2SiOR5
(式中、R4が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはエチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチルから選択され、R5が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはエチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル若しくはtert-ブチルから選択される)
において与えられる構造を有するモノアルコキシシランであって、ハライド、水、金属及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ又は複数の不純物を実質的に含有しないモノアルコキシシランを含むガス状の組成物を前記反応チャンバー中に導入する工程;並びに
前記反応チャンバー中のモノアルコキシシランを含む前記ガス状の組成物にエネルギーを適用して、モノアルコキシシランを含む前記ガス状の組成物の反応を誘起して、前記基材に有機シリカ膜を堆積する適用工程
を含み、前記有機シリカ膜が、約2.8~約3.30の誘電率及び約9~約32GPaの弾性率を有する、方法。
【請求項2】
モノアルコキシシランを含む前記ガス状の組成物が、硬化添加剤を含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学気相堆積方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プラズマ強化化学気相堆積方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
モノアルコキシシランを含む前記ガス状の組成物が、O2、N2O、NO、NO2、CO2、CO、水、H22、オゾン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
モノアルコキシシランを含む前記ガス状の組成物が、酸化剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記適用工程における前記反応チャンバーが、He、Ar、N2、Kr、Xe、CO2及びCOからなる群から選択される少なくとも1つのガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記有機シリカ膜が、632nmにおいて約1.3~約1.6の屈折率(RI)、及びXPSによって測定した場合に約10at%~約30at%の炭素含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有機シリカ膜が、約5nm/分~約700nm/分の速度で堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有機シリカ膜が、約8~約30の、SiCH2Si/SiOx×104のIR比を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
誘電体膜の気相堆積のための組成物であって、式(1)又は(2):
(1)R12MeSiOR3
(式中、R1及びR2が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはエチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチルから独立に選択され、R3が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル若しくはtert-ブチルから選択される)
(2)R4(Me)2SiOR5
(式中、R4が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはエチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチルから選択され、R5が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはエチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル若しくはtert-ブチルから選択される)
において与えられる構造を有するモノアルコキシシランであって、ハライド、水及び金属からなる群から選択される1つ又は複数の不純物を実質的に含有しないモノアルコキシシランを含む、組成物。
【請求項12】
前記モノアルコキシシランが、ジ(エチル)-メチル-メトキシシラン、ジ(エチル)-メチル-エトキシシラン、ジ(エチル)-メチル-n-プロポキシシラン、ジ(エチル)-メチル-イソ-プロポキシシラン、ジ(エチル)メチル(n-ブトキシ)シラン、ジ(エチル)メチル(sec-ブトキシ)シラン、ジ(エチル)メチル(tert-ブトキシ)シラン、トリメチル(イソ-プロポキシ)シラン、トリメチル(イソ-ブトキシ)シラン、トリメチル(sec-ブトキシ)シラン、トリメチル(n-ブトキシ)シラン、トリメチル(tert-ブトキシ)シラン、ジ(プロピル)メチル(メトキシ)シラン、ジ(プロピル)メチル(エトキシ)シラン、ジ(プロピル)メチル(プロポキシ)シラン、ジ(プロピル)メチル(イソ-プロポキシ)シラン、ジ(n-プロピル)メチル(ブトキシ)シラン、ジ(n-プロピル)メチル(sec-ブトキシ)シラン、ジ(n-プロピル)メチル(tert-ブトキシ)シラン、ジ(n-プロピル)メチル(イソ-ブトキシ)シラン、ジ(イソ-プロピル)メチル(メトキシ)シラン、ジ(イソ-プロピル)メチル(エトキシ)シラン、ジ(イソ-プロピル)メチル(プロポキシ)シラン、ジ(イソ-プロピル)メチル(イソ-プロポキシ)シラン、ジ(イソ-プロピル)メチル(n-ブトキシ)シラン、ジ(イソ-プロピル)メチル(sec-ブトキシ)シラン、ジ(イソ-プロピル)メチル(tert-ブトキシ)シラン、ジ(イソ-プロピル)メチル(イソ-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)エチル(メトキシ)シラン、ジ(メチル)エチル(エトキシ)シラン、ジ(メチル)エチル(n-プロポキシ)シラン、ジ(メチル)エチル(イソ-プロポキシ)シラン、ジ(メチル)エチル(n-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)エチル(sec-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)-エチル-tert-ブトキシシラン、ジ(メチル)エチル(イソ-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)n-プロピル(メトキシ)シラン、ジ(メチル)n-プロピル(エトキシ)シラン、ジ(メチル)n-プロピル(n-プロポキシ)シラン、ジ(メチル)n-プロピル(イソ-プロポキシ)シラン、ジ(メチル)n-プロピル(ブトキシ)シラン、ジ(メチル)n-プロピル(sec-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)n-プロピル(tert-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)n-プロピル(イソ-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)イソ-プロピル(メトキシ)シラン、ジ(メチル)イソ-プロピル(エトキシ)シラン、ジ(メチル)イソ-プロピル(n-プロポキシ)シラン、ジ(メチル)イソ-プロピル(イソ-プロポキシ)シラン、ジ(メチル)イソ-プロピル(n-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)イソ-プロピル(sec-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)イソ-プロピル(tert-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)イソ-プロピル(イソ-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)n-ブチル(メトキシ)シラン、ジ(メチル)n-ブチル(エトキシ)シラン、ジ(メチル)n-ブチル(プロポキシ)シラン、ジ(メチル)n-ブチル(イソ-プロポキシ)シラン、ジ(メチル)n-ブチル(n-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)-n-ブチル(sec-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)n-ブチル(tert-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)-n-ブチル(イソ-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)sec-ブチル(メトキシ)シラン、ジ(メチル)sec-ブチル(エトキシ)シラン、ジ(メチル)sec-ブチル(n-プロポキシ)シラン、ジ(メチル)sec-ブチル(イソ-プロポキシ)シラン、ジ(メチル)sec-ブチル(n-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)sec-ブチル(sec-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)sec-ブチル(tert-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)sec-ブチル(イソ-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)tert-ブチル(メトキシ)シラン、ジ(メチル)tert-ブチル(エトキシ)シラン、ジ(メチル)tert-ブチル(プロポキシ)シラン、ジ(メチル)tert-ブチル(イソ-プロポキシ)シラン、ジ(メチル)tert-ブチル(n-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)tert-ブチル(sec-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)tert-ブチル(tert-ブトキシ)シラン、ジ(メチル)tert-ブチル(イソ-ブトキシ)シラン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ハライドが、塩化物イオンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記塩化物イオンが、存在する場合には、ICによって測定した場合に50ppm以下の濃度で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記塩化物イオンが、存在する場合には、ICによって測定した場合に10ppm以下の濃度で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記塩化物イオンが、存在する場合には、ICによって測定した場合に5ppm以下の濃度で存在する、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月13日に提出された米国仮特許出願第62/899824号の利益を主張する。その出願の開示は、参照によって、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
モノアルコキシシランを前駆体として使用する、高密度の有機シリカ誘電体膜の、膜への形成のための組成物及び方法が本明細書において説明される。より具体的には、k≧2.7の誘電率を有する高密度膜を形成するための組成物及び化学気相堆積(CVD)方法であって、膜が、従来の前駆体から作られた膜と比較して、高い弾性率、及びプラズマ誘起損傷に対する優れた抵抗性を有する、組成物及び化学気相堆積(CVD)方法が本明細書において説明される。
【背景技術】
【0003】
エレクトロニクス産業は、集積回路(IC)及び関連するエレクトロニクス装置の回路と構成要素との間の絶縁層として、誘電体材料を利用する。配線の寸法は、マイクロエレクトロニクス装置(例えばコンピュータチップ)の速度及びメモリストレージ能力を増加させるために、小さくされている。配線の寸法が小さくなるにつれて、層間誘電体(ILD)についての絶縁要件は、さらにより厳しくなっている。間隔を縮小することは、RC時定数を最小化するために、より低い誘電率を必要とし、ここで、Rは伝導性配線の抵抗であり、Cは絶縁誘電体中間層のキャパシタンスである。キャパシタンス(C)は間隔に反比例し、層間誘電体(ILD)の誘電率(k)に比例する。SiH4又はTEOS(Si(OCH2CH34、テトラエチルオルトシリケート)及びO2から製造された従来のシリカ(SiO2)CVD誘電体膜は、4.0超の誘電率kを有する。より低い誘電率を有するシリカベースのCVD膜を製造するために、当産業において試みられてきた種々の手法があり、最も成功しているものは、有機基による絶縁性酸化ケイ素膜のドープであり、約2.7~約3.5の誘電率を提供する。この有機シリカガラスは、典型的には、有機ケイ素前駆体、例えばメチルシラン又はシロキサンと、酸化剤、例えばO2又はN2Oとから、高密度膜(約1.5g/cm3の密度)として堆積される。本明細書において、有機シリカガラスはOSGといわれる。
【0004】
CVD方法の分野による多孔性のILDの分野における特許、出願公開及び公表物は、欧州特許出願公開第1119035号明細書及び米国特許第6171945号明細書(N2O及び任意選択で過酸化物の存在の下で、不安定な基を有する有機ケイ素前駆体からOSG膜を堆積するプロセスを説明していて、続く熱アニールによって不安定な基の除去を伴って、多孔性のOSGを提供する);米国特許第6054206号及び6238751号明細書(酸化アニールによって、堆積されたOSGから本質的に全ての有機基を除去して、多孔性の無機SiO2を得ることを教示している);欧州特許出願公開第1037275号明細書(水素化された炭化ケイ素膜の堆積を記載していて、それが酸化プラズマによる続く処理によって多孔性の無機SiO2に変換される);並びに米国特許第6312793号明細書、国際公開第00/24050号(有機ケイ素前駆体及び有機化合物からの膜の共堆積と、ポリマー化された有機構成成分のうち一部が保持された複相のOSG/有機膜を提供するための続く熱アニールとを全て教示している)を含む。後者の参照において、膜の最終的な最終組成は、残留ポロゲンと、おおよそ80~90at%の多量の炭化水素膜含有量とを示している。さらに、最終膜は、有機基についての酸素原子の一部の置換を有する、SiO2に類似の網目構造を保持している。
【0005】
米国特許出願公開第2011/10113184号明細書は、約k=2.4~k=2.8の誘電率を有する絶縁膜を、PECVDプロセスによって堆積するのに使用することができる種類の材料を開示している。材料は、互いに対して結合して、Si原子とともに環状構造を形成することができる2つの炭化水素基を有するSi化合物、又は1つ以上の分岐鎖の炭化水素基を有するSi化合物を含む。分岐鎖の炭化水素基において、Si原子に結合されたC原子であるα-Cはメチレン基を構成し、メチレン基に結合されたC原子であるβ-C、又はβ-Cに結合されたC原子であるγ-Cは分岐点である。具体的には、Siに結合されたアルキル基のうち2つは、CH2CH(CH3)CH3、CH2CH(CH3)CH2CH3、CH2CH2CH(CH3)CH3、CH2C(CH32CH3及びCH2CH2CH(CH32CH3を含み、ケイ素に結合された第三の基は、OCH3及びOC25を含む。この手法には様々な欠点が存在する。第一には、前駆体構造中に分岐鎖のアルキル基を含む大きいアルキル基が必要であることである。このような分子は、合成するのにコストがかかり、それらの本質的に高い分子量のために、典型的には高い沸点及び低い揮発性を有する。高い沸点及び低い揮発性は、PECVDプロセスについて要求されるように、このような分子を気相で効率的に輸送することを困難にする。さらに、この手法において開示される低k膜中の高密度のSiCH2Si基は、堆積されたままの膜が紫外光照射にさらされた後に(すなわち膜がUV硬化された後に)形成される。しかし、紫外線照射への暴露の後のSiCH2Si基の形成は、例えばGrill,Aの“PECVD low and Ultralow Dielectric Constant Materials:From Invention and Research to Products”、J.Vac.Sci.Technol.B、2016、34、020801-1 - 020801-4において開示されているように、文献において良く記載されており、従って堆積プロセスのみの結果ではあり得ない。最後に、この手法における誘電率の報告されている値は低く、2.8以下である。従って、この手法は、後堆積処理(すなわちUV硬化)なしの高密度の低k膜の堆積についてのものというよりも、多孔性の低k膜を生成するための連結されたポロゲンの手法に、より近いものである。
【0006】
低k膜におけるプラズマ又はプロセス誘起損傷(PID)は、プラズマ暴露の間、特にはエッチング及びフォトレジストストリップ剥離プロセスの間の、膜からの炭素の除去によって引き起こされる。これは、プラズマ損傷領域を、疎水性から親水性に変化させる。損傷した層のような親水性のSiO2の、(界面活性剤などの添加剤を伴う、又は伴わない)希釈HFベースの湿式化学後プラズマ処理への暴露は、低k膜の有効な誘電率の増加、及びプラズマ損傷した層の急速な分解を引き起こす。これは、パターニングされた低kウエハにおいて、外形の浸食を引き起こす。低k膜におけるプロセス誘起損傷及び引き起こされる外形浸食は、低k材料をULSI相互接続において組み込むときに、装置製造者が解決しなければならない重大な問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
向上した機械特性(より高い弾性率、より高い硬度)を有する膜は、パターニングされた特徴における配線エッジ粗さを減少させ、パターン崩壊を減少させ、相互接続におけるより大きい内部機械応力をもたらし、エレクトロマイグレーションに起因する欠陥を減少させる。従って、所与の誘電率で、好ましくは後堆積処理を、例えばUV硬化を必要とせずに、PIDに対する優れた抵抗性と、可能な限り高い機械特性とを有する高密度の低k膜のための要求が存在する。UV硬化は、処理量を減少させ、コストを増価させ、かつ複雑さを増加させるだけでなく、炭素含有量を減少させ、膜に多孔性を導入する。減少した炭素含有量及び増加した多孔性は、より大きいプラズマ誘起損傷を引き起こす。本発明における前駆体は、後堆積処理を必要とせずに、約2.8~3.3の誘電率を有し、先行技術の前駆体の機械強度を超える機械強度を有し、プラズマ誘起損傷に対する良好な抵抗性を有する高密度の低k膜を堆積するように設計されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において説明される方法及び組成物は、上で説明される1つ又は複数の要求を満たす。モノアルコキシシラン前駆体を使用して、後堆積処理を必要とせずに、約2.8~約3.3のkの値を有する高密度の低k膜を堆積することができ、このような膜は、予期されない高い弾性率/硬度、及びプラズマ誘起損傷に対する予期されない高い抵抗性を示す。
【0009】
1つの態様において、本開示は、改善された機械特性を有する高密度の有機シリカ膜を製造するための方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
式(1)又は(2):
(1)R12MeSiOR3
(式中、R1及びR2が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチルから独立に選択され、R3が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル若しくはtert-ブチル、より好ましくはイソ-プロピル、sec-ブチル、イソ-ブチル及びtert-ブチルから選択される)
(2)R4(Me)2SiOR5
(式中、R4が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチルから選択され、R5が、直鎖又は分岐鎖のC1~C5アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル(すなわちn-Pr若しくはPr-n)、イソ-プロピル(すなわちi-Pr、Pr-i、イソ-Pr、Pr-イソ若しくはPri)、ブチル(すなわちn-Bu、Bu-n若しくはBun)、sec-ブチル(すなわちsec-Bu、Bu-sec、s-Bu、Bu-s若しくはBus)、イソ-ブチル(すなわちイソ-Bu、Bu-イソ、i-Bu、Bu-i若しくはBui)若しくはtert-ブチル(tert-Bu、Bu-tert、t-Bu、Bu-t若しくはBut)、より好ましくはイソ-プロピル、sec-ブチル、イソ-ブチル及びtert-ブチルから選択される)
において与えられる構造を有するモノアルコキシシランを含むガス状の組成物を反応チャンバー中に導入する工程(上の式について、アルキル基の組み合わせは、分子の沸点が200℃未満であるように選択される。加えて、最適な性能のために、R基は、ホモリティック結合解離に際して二級又は三級ラジカルを形成する(例えば、SiO-R→SiO・+R・、ここで、Rは二級又は三級ラジカルであり、例えばイソプロピルラジカル、sec-ブチルラジカル又はtert-ブチルラジカルである)ように選択される);並びに
反応チャンバー中のモノアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、モノアルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘起して、基材に有機ケイ素膜を堆積する工程
を含み、有機シリカ膜が、約2.8~約3.3の誘電率及び約9~約32GPaの弾性率を有する、方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本開示は、改善された機械特性を有する高密度の有機シリカ膜を製造するための方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
モノアルコキシシランを含むガス状の組成物を反応チャンバー中に導入する工程;及び
反応チャンバー中のモノアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、モノアルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘起して、基材に有機シリカ膜を堆積する工程
を含み、有機シリカ膜が、約2.8~約3.3の誘電率、約9~約32GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10at%~約30at%の炭素を有する、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】薄膜中のSi-Me基の%に対する機械強度の関係を示すグラフである。
図2】例1において説明される方法に従って合成された、イソ-プロピルジメチル-イソ-プロポキシシランについてのGC-MSデータを示すチャートである。
図3】3つの前駆体、ジ(エチル)メチル-イソプロポキシシラン(DEMIPS)、ジエトキシ-メチルシラン(DEMS(登録商標))及び1-メチル-1-イソプロポキシ-1-シラシクロペンタン(MPSCP)から形成された高密度の低k膜の赤外スペクトルを示すグラフである。
図4】低k前駆体としてジエトキシ-メチルシラン(DEMS(登録商標))及び1-メチル-1-イソプロポキシ-1-シラシクロペンタン(MPSCP)を使用して堆積された高密度の低k膜に対する、低k前駆体としてジ(エチル)メチル-イソプロポキシシラン(DEMIPS)を使用して堆積された例示的な高密度の低k膜についての、XPS炭素含有量に対する誘電率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
改善された機械特性を有する高密度の有機シリカ膜を製造するための化学気相堆積方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
モノアルコキシシラン、O2又はN2Oなどのガス状の酸化剤、及びHeなどの不活性ガスを含むガス状の組成物を反応チャンバー中に導入する工程;反応チャンバー中のモノアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、モノアルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘起して、基材に有機シリカ膜を堆積する工程
を含み、有機シリカ膜が、約2.8~約3.3の誘電率、約9~約32GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10at%~約30at%の炭素を、好ましくは約2.9~約3.2の誘電率、約10~約29GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10at%~約30at%の炭素を有する、方法が本明細書において説明される。
【0013】
さらに、改善された機械特性を有する高密度の有機シリカ膜を製造するための方法であって、
基材を反応チャンバー中に提供する工程;
モノアルコキシシラン、O2又はN2Oなどのガス状の酸化剤、及びHeなどの不活性ガスを含むガス状の組成物を反応チャンバー中に導入する工程;
モノアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、有機シリカ膜を基材に堆積する工程
を含み、有機シリカ膜が、約2.70~約3.3の誘電率及び約9~約32GPaの弾性率を有する、方法も本明細書において説明される。
【0014】
モノアルコキシシランは、先行技術の構造形成前駆体、例えばジエトキシメチルシラン(DEMS(登録商標))及び1-イソプロポキシ-1-メチル-1-シラシクロペンタン(MESCP)と比較して、高密度の有機シリカ膜について、相対的に低い誘電率を達成し、驚くべきことに優れた機械特性を示すことを可能とする固有の性質を提供する。理論によって拘束されるものではないが、本発明のモノアルコキシシランは、R1及びR2が、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル又はtert-ブチルからなる群から選択され、R3が、先行技術において開示されるメチル、例えばMe3SiOMe又はMe3SiOEt(Bayer,C.ら“Overall Kinetics of SiOx Remote-PECVD using Different Organosilicon Monomers”、116-119、Surf.Coat.Technol.、874、(1999))と比較して、より安定であるラジカルを提供するメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル又はtertブチルからなる群から選択されるとき、プラズマ強化化学気相堆積の間に安定なラジカル、例えばCH3CH2・、(CH32CH・及び(CH33C・を提供することができると考えられる。プラズマ中の、より高密度の安定なラジカル、例えばCH3CH2・、(CH32CH・及び(CH33C・は、前駆体中の末端ケイ素メチル基(Si-CH3)からの水素原子の抽出(SiCH2の形成)の可能性を増加させ、堆積されたままの膜におけるジシリルメチレン基(すなわちSi-CH2-Si部分)の形成を促進する。おそらくは、R1Me2SiOR3型の分子において、前駆体中の、より高密度の末端ケイ素メチル基(ケイ素原子毎に2つ)は、堆積されたままの膜中の高密度のジシリルメチレン基(Si-CH2-Si)の形成をさらに助ける。
【0015】
有機化学において、一級炭素ラジカル(例えばエチルラジカルCH3CH2・)を生成するために、二級炭素ラジカル(例えばイソプロピルラジカル(CH32CH・)よりも多くのエネルギーを供給しなければならないことは周知である。これは、エチルラジカルに対する、イソプロピルラジカルの、より高い安定性に起因する。同じ原理は、ケイ素アルコキシ基中の酸素-炭素結合のホモリティック結合解離に当てはまり;イソプロポキシシラン中の酸素-炭素結合を解離するために、エトキシシランにおけるよりも少ないエネルギーを必要とする。同様に、イソプロピルシラン中のケイ素-炭素結合を解離するために、エチルシランにおけるよりも少ないエネルギーを必要とする。切るのにより少ないエネルギーを必要とする結合は、プラズマ中で、より解離しやすいと推測される。従って、従って、Si-OPri、Si-OBus又はSi-OBut基を有するモノアルコキシシランは、プラズマ中で、Si-OEt基を有するものと比較して、より高い密度のSiO型のラジカルをもたらすことができる。同様に、Si-Et、Si-Pri、Si-Bus又はSi-But基を有するモノアルコキシシランは、プラズマ中で、Si-Me基のみを有するものと比較して、より高い密度のSi型のラジカルをもたらすことができる。おそらくは、これは、Si-OEtを有するモノアルコキシシランに対する、Si-OPri、Si-OBus又はSi-OBut基を有するモノアルコキシシランを使用して堆積されたものの、差別化された特性に寄与する。
【0016】
ケイ素前駆体としてのモノアルコキシシランによって達成される、先行技術に対する利点のうち幾つかは、以下に限定するものではないが、
合成のしやすさ及び低コスト
高い弾性率/高い硬度
広範囲のXPS炭素
高いジシリルメチレン密度
を含む。
【0017】
表1は、式1及び2を有する選択されるモノアルコキシシランが列挙されている。多くの化合物が開示されているが、最も好ましい分子は、分子の沸点が200℃未満(好ましくは150℃未満)であるように選択されたアルキル基(R1、R2、R3、R4及びR5)の組み合わせを有する分子である。加えて、最適な性能のために、R1、R2、R3、R4及びR5基は、ホモリティック結合解離に際して、その幾つか又は全てが、二級又は三級ラジカルを形成する(例えば、Si-R2→Si・+R2・又はSiO-R3→SiO・+R3・、ここで、R2及びR3は二級又は三級ラジカルであり、例えばイソプロピルラジカル、sec-ブチルラジカル、tert-ブチルラジカル又はシクロヘキシルラジカルである)を形成するように選択することができる。最も好ましい例はジ-イソ-プロピルメチル(イソ-プロポキシ)シランであり、760Torrにおいて168℃の予測される沸点を有する。
【0018】
表1 式1及び2を有する例示的なモノアルコキシシランのリスト
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0019】
先行技術のケイ素含有構造形成前駆体、例えばDEMS(登録商標)は、反応チャンバー中で励起された後にポリマー化して、ポリマー主鎖中に-O-結合を有する構造(例えば-Si-O-Si-又はSi-O-C-)を形成し、式(1)又は式(2)を有するモノアルコキシシラン化合物、例えばDEMIPS分子は、ポリマー化して、主鎖中の高い割合の-O-架橋が-CH2-メチレン又は-CH2CH2-エチレン架橋で置換されている構造を形成する。炭素が主にSi-Me基の形態で存在する構造形成前駆体として、DEMS(登録商標)を使用して堆積された膜において、%Si-Me(直接的には%Cに関する)と機械強度との間には、ある関係があり、例えば、図1に示されるモデルワークを参照せよ。ここでは、架橋Si-O-Si基を2つの末端Si-Me基で置換することが、網目構造が崩壊するために、機械特性を低下させている。式(1)又は式(2)のモノアルコキシシラン化合物の場合において、膜の堆積の間に前駆体構造が破壊されて、SiCH2Si又はSiCH2CH2Si架橋基を形成すると考えられる。このようにして、機械強度の観点から、膜中の炭素含有量の増加によって網目構造を崩壊させないように、架橋基の形態の炭素を組み込むことができる。理論によって拘束されるものではないが、この性質は、例えば膜のエッチング、フォトレジストのプラズマアッシング及び銅表面のNH3プラズマ処理などのプロセスによる高密度の膜の炭素欠乏に対して、膜を、より回復しやすいものにするように、膜に炭素を添加する。高密度の低k膜における炭素欠乏は、膜の有効な誘電率の増加、膜のエッチングに伴う問題、及び湿式洗浄工程の間の特徴の曲がり、及び/又は銅拡散バリアを堆積するときの統合の問題を引き起こす場合がある。先行技術の構造形成剤、例えばMESCPは、非常に高密度の架橋SiCH2Si及び/又はSiCH2CH2Si基を有する低k膜を堆積することができるが、これらの膜は、最終的にこの種類の先行技術の低k前駆体によって達成することができる最高の弾性率を限定する、非常に高いSi-Me密度及び合計の炭素含有量も有する。
【0020】
好ましくは、本発明による式1及び2を有するモノアルコキシシラン、及び本発明による式1及び2を有するモノアルコキシシラン化合物を含む組成物は、ハライドイオンを実質的に含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、ハライドイオン(又はハライド)、例えば塩化物(すなわち塩化物含有種、例えばHCl又は少なくとも1つのSi-Cl結合を有するケイ素化合物)、フッ化物、臭化物及びヨウ化物に関するとき、イオンクロマトグラフィ(IC)によって測定した場合に(重量で)5ppm未満、好ましくはICによって測定した場合に3ppm未満、より好ましくはICによって測定した場合に1ppm未満、最も好ましくはICによって測定した場合に0ppmを意味する。塩化物は、ケイ素前駆体化合物についての分解触媒として作用することが知られている。最終生成物中の有意なレベルの塩化物は、ケイ素前駆体化合物を分解させる場合がある。ケイ素前駆体化合物の緩やかな分解は、膜堆積プロセスに直接的に影響を与えて、半導体製造者が膜の仕様を満たすことを困難にする場合がある。加えて、貯蔵寿命又は安定性は、ケイ素前駆体化合物の、より速い分解速度によって負に影響を受け、それによって1~2年の貯蔵寿命を保証することを困難にする。従って、ケイ素前駆体化合物の加速された分解は、これらの可燃性及び/又は自然発火性のガス状の副生成物の形成に関する安全性及び性能の懸念をもたらす。好ましくは、式1及び2を有するモノアルコキシシランは、金属イオン、例えばLi+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+を実質的に含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関するとき、ICP-MSによって測定した場合に(重量で)5ppm未満、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0.1ppm未満を意味する。幾つかの実施態様において、式Aを有するケイ素前駆体化合物は、金属イオン、例えばLi+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+を含有しない。本明細書において使用されるとき、用語金属不純物を「含有しない」は、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関するとき、1ppm未満、好ましくはICP-MSによって測定した場合に(重量で)0.1ppm未満、最も好ましくはICP-MS又は金属を測定するための他の分析方法によって測定した場合に(重量で)0.05ppm未満を意味する。加えて、好ましくは、式1及び2を有するモノアルコキシシランは、ケイ素含有膜を堆積するための前駆体として使用されるとき、GCによって測定した場合に、98wt%以上の純度、好ましくは99w%以上の純度を有する。
【0021】
低k誘電体膜は、有機シリカガラス(「OSG」)膜又は材料である。有機シリケートは、エレクトロニクス産業において、例えば低k材料として用いられる。材料特性は、膜の化学組成及び構造に依存する。有機ケイ素前駆体の種類は、膜の構造及び組成に対して強い効果を有するため、所望の誘電率に達するのに必要とされる量の多孔性の付与が機械的に不健全な膜を製造しないことを確実にするために要求される膜の特性を提供する前駆体を使用することが有益である。本明細書において説明される方法及び組成物は、電気特性及び機械特性の所望のバランス、並びに高い炭素含有量などの他の有益な膜の特性を有する低k誘電体膜を生成して、改善された統合プラズマ抵抗を提供する手段を提供する。
【0022】
本明細書において説明される方法及び組成物の特定の実施態様において、ケイ素含有誘電体材料の層は、反応チャンバーを用いる化学気相堆積(CVD)プロセスを介して、基材の少なくとも一部に堆積される。従って、方法は、基材を反応チャンバー中に提供する工程を含む。適した基材は、以下に限定するものではないが、半導体材料、例えばヒ化ガリウム(「GaAs」)、ケイ素、並びにケイ素含有組成物、例えば結晶性ケイ素、ポリシリコン、非晶質ケイ素、エピタキシャルケイ素、二酸化ケイ素(「SiO2」)、ケイ素ガラス、窒化ケイ素、溶融シリカ、ガラス、石英、ホウケイ酸ガラス及びそれらの組み合わせ、を含む。他の適した材料は、クロム、モリブデン、並びに半導体、集積回路、フラットパネルディスプレイ及びフレキシブルディスプレイ用途において一般に用いられる他の金属を含む。基材は、さらなる層、例えばケイ素、SiO2、有機シリケートガラス(OSG)、フッ素化シリケートガラス(FSG)、炭窒化ホウ素、炭化ケイ素、水素化された炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化された窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化された炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、有機-無機複合材料、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔性の有機及び無機の材料及び複合物、酸化アルミニウム及び酸化ゲルマニウムなどの金属酸化物を有してよい。さらに、さらなる層は、ゲルマノシリケート、アルミノシリケート、銅及びアルミニウム、及び拡散バリア材料、例えば、以下に限定するものではないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W又はWNであってよい。
【0023】
典型的には、反応チャンバーは、例えば熱CVD若しくはプラズマ強化CVD反応器、又は様々な方法におけるバッチ炉型の反応器である。1つの実施態様において、液体輸送システムを利用することができる。液体輸送配合物において、本明細書において説明される前駆体は、未希釈の液体の形態で輸送することができるか、又は代替的に、本明細書において説明される前駆体を含む溶媒配合物又は組成物で用いることができる。従って、特定の実施態様において、前駆体配合物は、所与の最終使用用途において基材に膜を形成するために所望される及び有利である場合がある適した特徴の1つ又は複数の溶媒構成成分を含んでよい。
【0024】
本明細書において開示される方法は、モノアルコキシシランを含むガス状の組成物を反応チャンバー中に導入する工程を含む。幾つかの実施態様において、組成物は、さらなる反応体、例えば酸素含有種、例えばO2、O3及びN2O、ガス状又は液体の有機物質、CO2若しくはCOを含んでよい。1つの特定の実施態様において、反応チャンバー中に導入される反応混合物は、O2、N2O、NO、NO2、CO2、水、H22、オゾン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの酸化剤を含む。代替の実施態様において、反応混合物は酸化剤を含まない。
【0025】
本明細書において説明される誘電体膜を堆積するための組成物は、約40~約100wt%のモノアルコキシシランを含む。
【0026】
複数の実施態様において、モノアルコキシシランを含むガス状の組成物を、硬化添加剤とともに使用して、堆積されたままの膜の弾性率をさらに増加させることができる。
【0027】
複数の実施態様において、モノアルコキシシランを含むガス状の組成物は、ハライド、例えば塩化物を実質的に含有しないか、又は含有しない。
【0028】
モノアルコキシシランに加えて、堆積反応の前、間及び/又は後に、さらなる材料を反応チャンバー中に導入することができる。このような材料は、例えば不活性ガス(例えば、より低揮発性の前駆体のためのキャリアガスとして用いることができるか、及び/又は堆積されたままの材料の硬化を促進して、より安定な最終的な膜を提供することができる、He、Ar、N2、Kr、Xeなど)を含む。
【0029】
モノアルコキシシランを含む、用いられる任意の試剤を、別の供給源から別々に、又は混合物として、反応器中に輸送することができる。任意の多くの手段によって、好ましくは適したバルブを備えた、プロセス反応器への液体の輸送を可能とする加圧可能なステンレス鋼容器を使用して、試剤を反応器システムに輸送することができる。好ましくは、前駆体は、気体としてプロセス真空チャンバー中に輸送され、すなわち、液体は、プロセスチャンバー中に輸送される前に気化されなければならない。
【0030】
本明細書において開示される方法は、反応チャンバー中のモノアルコキシシランを含むガス状の組成物にエネルギーを適用して、モノアルコキシシランを含むガス状の組成物の反応を誘起して、基材に有機シリカ膜を堆積する工程を含み、有機シリカ膜は、幾つかの実施態様においては約2.8~約3.3、他の実施態様においては2.90~3.2、さらに好ましい実施態様においては3.0~3.2の誘電率、約9~約32GPa、好ましくは10~29GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10~約30at%の炭素を有する。ガス状の試剤にエネルギーが適用されて、モノアルコキシシラン、及び存在する場合には他の反応体を誘起して反応させて、基材に膜を形成する。このようなエネルギーは、例えばプラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、リモートプラズマ、ホットフィラメント及び熱(すなわち非フィラメント)方法によって提供することができる。二次rf周波数源を使用して、基材表面におけるプラズマ特性を改質することができる。好ましくは、膜は、プラズマ強化化学気相堆積(「PECVD」)によって形成される。
【0031】
好ましくは、ガス状の試剤のそれぞれについての流量は、単一の300mmウエハ毎に、10~5000sccm、より好ましくは30~3000sccmである。必要とされる実際の流量は、ウエハのサイズ及びチャンバーの構成に依存してよく、決して300mmウエハ又は単一ウエハチャンバーに限定されない。
【0032】
特定の実施態様において、膜は、約5~約700ナノメートル(nm)毎分の堆積速度で堆積される。他の実施態様において、膜は、約30~200ナノメートル(nm)毎分の堆積速度で堆積される。
【0033】
典型的には、堆積の間の、反応チャンバー中の圧力は、約0.01~約600torr又は約1~15torrである。
【0034】
好ましくは、膜は0.001~500ミクロンの厚さに堆積されるが、厚さは要求に応じて変えることができる。パターニングされていない表面に堆積されるブランケット膜は、妥当なエッジエクスクルージョンで(例えば基材の最も外側のエッジ5mmは、均一性の統計的計算において含まれない)、基材にわたって、3%/1標準偏差未満の厚さの変化を伴う優れた均一性を有する。
【0035】
本発明のOSG製品に加えて、本発明は、その製品を製造するプロセス、その製品を使用する方法、並びにその製品を調製するために有用な化合物及び組成物を含む。例えば、半導体装置上に集積回路を製造するためのプロセスは、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6583049号明細書において開示されている。
【0036】
開示される方法によって製造される高密度の有機シリカ膜は、特にエッチング及びフォトレジスト剥離プロセスの間の、プラズマ誘起損傷に対する良好な抵抗性を示す。
【0037】
開示される方法によって製造される高密度の有機シリカ膜は、同じ誘電率を有するが、モノアルコキシシランではない前駆体から作られる高密度の有機シリカ膜と比較して、所与の誘電率について優れた機械特性を示す。典型的には、得られる(堆積されたままの)有機シリカ膜は、幾つかの実施態様においては約2.8~約3.3、他の実施態様においては約2.9~約3.2、さらに他の実施態様においては約3.0~約3.2の誘電率、約9~約32GPaの弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10~約30at%の炭素を有する。他の実施態様において、得られる有機シリカ膜は、幾つかの実施態様においては約2.9~約3.2、他の実施態様においては約3.0~約3.20の誘電率、及び約9~約32GPaの弾性率を有する。他の実施態様において、得られる有機シリカ膜は、幾つかの実施態様においては約10~約29、他の実施態様においては約11~約29の弾性率、及びXPSによって測定した場合に約10~約30at%の炭素を有する。
【0038】
得られる高密度の有機シリカ膜は、堆積された後に後処理プロセスを受けてもよい。従って、本明細書において使用されるとき、用語「後処理」は、膜をエネルギー(例えば熱、プラズマ、フォトン、電子、マイクロ波など)又は化学物質で処理して、材料の特性をさらに向上させることを意味する。
【0039】
後処理が行われる条件は、大きく変えることができる。例えば、後処理は、高圧の下で、又は真空雰囲気の下で行われてよい。
【0040】
UVアニールは、以下の条件の下で行われる好ましい方法である。
【0041】
環境は、不活性(例えば窒素、CO2、貴ガス(He、Ar、Ne、Kr、Xe)など)、酸化性(例えば酸素、空気、希薄酸素環境、富化酸素環境、オゾン、亜酸化窒素など)又は還元性(希薄若しくは濃縮水素、炭化水素(飽和、不飽和、直鎖若しくは分岐鎖、芳香族)など)であってよい。好ましくは、圧力は約1Torr~約1000Torrである。しかし、熱アニール並びに任意の他の後処理手段のためには、真空雰囲気が好ましい。好ましくは、温度は200~500℃であり、温度傾斜率は0.1~100℃/分である。好ましくは、合計のUVアニール時間は、0.01分~12時間である。
【0042】
本発明は、以下の例を参照して、より詳細に例示されるが、以下の例に限定されるものと認められるとは理解されるべきでない。本発明において説明される前駆体を使用して、既存の多孔性の低k膜に対する類似のプロセスの利点(すなわち、所与の誘電率の値についてのプラズマ誘起損傷に対するより高い抵抗性、及びより高い弾性率)を有する多孔性の低k膜を堆積することもできることも認識される。
【実施例
【0043】
例1:ジ(エチル)メチル-イソ-プロポキシシランの合成
500mLのフラスコにおいて、Ru3(CO)12を、20gのTHF中に溶解した。次いで、200g(3.33mol)のIPA(イソプロピルアルコール)を添加した。この溶液を75℃に加熱した。撹拌しながら、200g(1.96mol)のジ(エチル)メチルシランを、添加漏斗を通して滴下した。反応は発熱性であり、水素泡が観察された。添加が完了した後、室温で30分間、反応混合物を撹拌した。余剰のIPA及びTHFを、大気圧における蒸留によって除去した。分別真空蒸留によって、55mmHgにおいて63℃の沸点を有する250gのジ(エチル)メチル-イソ-プロポキシシラン(純度99.3%)を製造した。収率は80%であった。GC-MS:160(M+)、145、131、101、88、73、61、45。
【0044】
例2:ジ(メチル)-イソ-プロピル-イソ-プロポキシシランの合成
THF中の992mL(1.98mol)の2Mイソプロピルマグネシウムクロリドを、室温で、1Lのヘキサン中の303.0g(1.98mol)のジ(メチル)-イソ-プロピルクロロシランに添加した。反応混合物を、60℃の温度に緩やかに昇温した。添加を完了した後、室温まで冷却させて、一晩撹拌した。得られた明るい灰色のスラリーをろ過した。蒸留によって溶媒を除去した。生成物を、大気圧で蒸留した。分別真空蒸留によって、134℃の沸点を有する218gのジ(メチル)イソ-プロピル-イソ-プロポキシシランを製造した。図2は、合成したジ(メチル)イソ-プロピル-イソ-プロポキシシランのGC-MSデータを示すチャートである。収率は69%であった。GC-MS:160(M+)、145、117、101、87、75、49、45。
【0045】
以下の全ての堆積実験を、2つのウエハに同時に膜を堆積する300mmのAMAT Producer(登録商標)SEにおいて行った。従って、前駆体及びガスの流量は、同時に2つのウエハに膜を堆積するのに要求される流量に対応する。それぞれのウエハ処理ステーションがそれ自体の独立のRF電力供給を有するとき、記載された、ウエハ毎のRF電力は正しい。両方のウエハ処理ステーションが同じ圧力に保持されるとき、記載された堆積圧力は正しい。Producer(登録商標)SEは、堆積処理が完了した後に特定の膜をUV硬化するのに使用するProducer(登録商標)Nanocureチャンバーを備えていた。
【0046】
特定の具体的な実施態様及び例を参照して、上で例示及び説明がされたが、それでも、本発明は、示された詳細に限定されることを意図されない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲において、及び本発明の趣旨から逸脱することなく、詳細において種々の変更をすることができる。例えば、本文献において広く記載された全ての範囲は、それらの範囲内に、その広い範囲内にある全てのより狭い範囲を含むことが、明確に意図されている。本発明において式(1)及び式(2)において開示される化合物はまた、高い弾性率、高いXPS炭素含有量、及びプラズマ誘起損傷に対する高い抵抗性を有する多孔性の低k膜の堆積のための構造形成剤として使用することができると認められる。
【0047】
厚さ及び屈折率を、WoollamモデルM2000分光エリプソメータにおいて測定した。誘電率を、中度の抵抗のp型ウエハ(8~12Ω・cm)に対してHgプローブ技術を使用して決定した。FTIRスペクトルを、12インチウエハを処理するための窒素パージPike Technologies Map300を備えるThermo Fisher Scientific Model iS50分光計を使用して測定した。FTIRスペクトルを使用して、膜中の架橋ジシリルメチレン基の相対密度を計算した。赤外分光法によって決定した場合に、膜中の末端ケイ素メチル基(すなわちSi-Me又はSi(CH3xの密度、ここでxは1、2又は3である)の合計の密度は、1270cm-1付近を中央とするSi(CH3x赤外バンドの面積を、おおよそ1250cm-1~920cm-1のSiOxバンドの面積によって割ったものの100倍として定義する。赤外分光法によって決定した場合に、膜中の架橋ジシリルメチレン基の相対密度(すなわちSiCH2Siの密度)は、1360cm-1付近を中央とするSiCH2Si赤外バンドの面積を、おおよそ1250cm-1~920cm-1のSiOxバンドの面積によって割ったものの10000倍として定義する。機械特性を、KLA iNanoナノインデンターを使用して決定した。
【0048】
組成データを、PHI 5600(73560、73808)又はThermo K-Alpha(73846)のいずれかにおいてX線光電子分光法(XPS)によって得て、原子重量パーセントで提供する。表に記録した原子重量パーセント(%)の値は、水素を含んでいない。
【0049】
下に列挙される例におけるそれぞれの前駆体について、堆積条件を、3.1又は3.2の誘電率で高い機械特性を有する膜を製造するように最適化した。
【0050】
比較例3:高密度の、ジエトキシメチルシラン(DEMS(登録商標))ベースの膜の堆積
高密度の、DEMS(登録商標)ベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。DEMS(登録商標)前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、750mg/分の流量で、1500sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、345℃の土台温度で、10Torrのチャンバー圧力で、300ワットの13.56MHzプラズマを適用した。膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって決定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成(%C、%O及び%Si))を、上で説明したように得て、表2に提供する。
【0051】
比較例4:高密度の、ジエトキシメチルシラン(DEMS(登録商標))ベースの膜の堆積
高密度の、DEMS(登録商標)ベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。DEMS(登録商標)前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、750mg/分の流量で、2250sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、345℃の土台温度で、10Torrのチャンバー圧力で、200ワットの13.56MHzプラズマを適用した。膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって決定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成(%C、%O及び%Si))を、上で説明したように得て、表3に提供する。
【0052】
比較例5:高密度の、1-メチル-1-イソプロポキシ-1-シラシクロペンタン(MESCP)ベースの膜の堆積
高密度の、MPSCPベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。MPSCP前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、850mg/分の流量で、750sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、390℃の土台温度で、7.5Torrのチャンバー圧力で、225ワットの13.56MHzプラズマを適用した、膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって測定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成(%C、%O及び%Si))を、上で説明したように得て、表2に提供する。
【0053】
比較例6:高密度の、1-メチル-1-イソプロポキシ-1-シラシクロペンタン(MPSCP)ベースの膜の堆積
高密度の、MPSCPベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した、MPSCP前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、850mg/分の流量で、750sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、390℃の土台温度で、7.5Torrのチャンバー圧力で、275ワットの13.56MHzプラズマを適用した。膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって測定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成(%C、%O及び%Si))を、上で説明したように得て、表3に提供する。
【0054】
例7:高密度の、ジ(エチル)メチル-イソプロポキシシラン(DEMIPS)ベースの膜の堆積
高密度の、ジ(エチル)メチル-イソプロポキシシランベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。ジ(エチル)メチル-イソプロポキシシラン前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、850mg/分の流量で、750sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、8sccmのO2流量で、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、390℃の土台温度で、7.5Torrのチャンバー圧力で、225ワットの13.56MHzプラズマを適用した。膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって測定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成(%C、%O及び%Si))を、上で説明したように得て、表2に提供する。
【0055】
例8:高密度の、ジ(エチル)メチル-イソプロポキシシランベースの膜の堆積
高密度の、ジ(エチル)メチル-イソプロポキシシランベースの膜を、300mm処理のための以下のプロセス条件を使用して堆積した。ジ(エチル)メチル-イソプロポキシシラン前駆体を、反応チャンバーに、直接液体注入(DLI)を介して、850mg/分の流量で、750sccmのHeキャリアガス流を使用して輸送し、8sccmのO2流量で、380ミリインチのシャワーヘッド/加熱した土台の間隔で、390℃の土台温度で、7.5Torrのチャンバー圧力で、275ワットの13.56MHzプラズマを適用した。膜の種々の性質(例えば誘電率(k)、弾性率、硬度、赤外分光法によって測定した場合の種々の官能基の密度、及びXPSによる原子組成(%C、%O及び%Si))を、上で説明したように得て、表3に提供する。
【0056】
300mmのPECVD反応器において、低k前駆体としてDEMIPS、DEMS(登録商標)及びMPSCPを使用して堆積した、高密度の低k膜の堆積のための処理条件を、下の表2に与える。これらの堆積のそれぞれについての処理条件を、3.1の誘電率で高い弾性率を得るように調節した。表2の高密度の低k膜の赤外スペクトルを、表3に示す。それぞれの膜におけるSi(CH3x基及びSiCH2Si基の相対密度を、先に説明したその赤外スペクトルから計算した。
【0057】
高密度の低k誘電体膜の堆積のシリーズを、低k前駆体としてDEMIPS、DEMS(登録商標)又はMPSCPを使用して、PECVD反応器において、170~425ワットのプラズマ電力、7.5~10Torrのチャンバー圧力、345~390℃の基材温度、0~30sccmのO2ガス流、600~2250sccmのHeキャリアガス流、0.75~2.0g/分の前駆体液体流、及び0.380インチの電極間隔の種々のプロセス条件の下で堆積した。本明細書において説明されるように、XPSによって炭素含有量を測定した。図4は、異なる誘電率を有する、高密度の、DEMIPS、DEMS(登録商標)及びMPSCP(登録商標)膜の炭素含有量(at%)の間の関係を示している。図4が示すように、先行技術又はDEMS(登録商標)の低k膜は、誘電率が約2.75から約3.45に増加するとき、約17~22at%の狭い範囲の炭素含有量を有していた。図4はまた、先行技術又はMPSCPの底k膜が、同じ誘電率の範囲に対して、約19~約42at%の、より広い範囲の炭素含有量を有していたことを示している。DEMIPS膜はまた、同じ誘電率に対して、約12~31at%の広い範囲の炭素含有量を有しているが、対称的に、DEMIPS膜の炭素含有量は、同じ誘電率におけるMPSCPベースの膜の炭素含有量よりも少ない。このことは、本明細書において説明される式(1)又は式(2)のモノアルコキシシラン化合物をDEMIPSとして使用することの、類似の値の誘電率である高密度の低k誘電体膜を堆積するための他の先行技術の構造形成剤を使用することに対する重要な利点のうち1つを示していて、モノアルコキシシラン前駆体DEMIPSは、MPSCPなどの先行技術の前駆体よりも少ない合計の炭素で、DEMS(登録商標)などの先行技術の前駆体よりも多い合計の炭素で、広い調節可能な範囲である炭素含有量を可能とする。
【0058】
表2は、低k前駆体としてDEMIPS、DEMS(登録商標)及びMPSCPを使用する、k=3.1の誘電率を有する高密度の低k膜の比較を提供している。与えられる膜についての処理条件は、UV硬化などの後処理なしに、高い弾性率を得るように調節した。低炭素含有量の、先行技術のDEMS(登録商標)及びMPSCPベースの膜と比較して、DEMIPS膜は、有意に高い弾性率(約+20%)を有する。さらに、DEMIPS膜は、DEMS(登録商標)ベースの膜と比較して、より高い炭素含有量(約+23%)、より低いSi(CH3)基の密度(約-30%)、及びより高いSiCH2Si基の密度(約+40%)を有する。さらに、DEMIPS膜は、MPSCPベースの膜と比較して、より低い炭素含有量(約-40%)、より低いSi(CH3)基の密度(約-45%)、及びより低いSiCH2Si基の密度(約-40%)を有する。このことは、本明細書において説明される式(1)又は式(2)のモノアルコキシシラン化合物をDEMIPSとして使用することの、類似の値の誘電率である高密度の低k誘電体膜を堆積するための他の先行技術の構造形成剤を使用することに対する、重要な利点を示していて、モノアルコキシシラン前駆体DEMIPSは、非常に高い弾性率、広い調節可能な範囲の炭素含有量、低いSi(CH3)基の密度、及び高いSiCH2Si基の密度を有する低k誘電体膜の堆積を可能とする。同じ値の誘電率について、DEMIPSベースの膜は、少ない合計の炭素含有量を有する膜をもたらすDEMS(登録商標)などの先行技術の前駆体ベースの膜よりも多い合計の炭素含有量を有し、かつ高い合計の炭素含有量を有する膜をもたらすMPSCPなどの先行技術の前駆体ベースの膜よりも少ない合計の炭素含有量を有する。このことは、先行技術のMPSCPベースの膜の非常に高い炭素含有量及び高いSi(CH3)密度は、最終的に、この種類の前駆体を使用して得ることができる最大の弾性率を制限するため、非常に重要な差異である。一方で、低い炭素含有量を有する膜をもたらすDEMS(登録商標)などの先行技術の前駆体は、炭素を、酸化物網目構造中に、SiCH2Siの代わりに、主にSi(CH3)基として組み込んでいて、従って、この種類の前駆体によって得ることができる最大の弾性率を制限している。さらに、低い炭素含有量の、DEMS(登録商標)などの先行技術の前駆体は、それらの低い炭素含有量のために、プラズマ誘起損傷(PID)に対する制限された抵抗性を有する。このことは、本明細書において説明される式(1)又は式(2)のモノアルコキシシラン化合物をDEMIPSとして使用することの、類似の値の誘電率である高密度の低k誘電体膜を堆積するための他の先行技術の構造形成剤を使用することに対する、別の重要な利点を示していて、モノアルコキシシラン前駆体DEMIPSは、DEMS(登録商標)などの先行技術の前駆体と比較して、高い弾性率、その中度の炭素含有量に起因するプラズマ誘起損傷に対する高い抵抗性、低いSi(CH3)基の密度、及び高いSiCH2Si基の密度を有する膜の堆積を可能とする。実際に、高い弾性率、中度の炭素含有量、低いSi(CH3)密度、及び高いSiCH2Si密度の組み合わせは、DEMIPSベースの膜よりも高い炭素含有量を有する低k膜の堆積をもたらすMPSCPなどの先行技術の前駆体と類似のPIDに対する抵抗性を提供することが予期される。
【0059】
表2.高い弾性率を得るように調節した、3.1の誘電率を有する選択膜についての処理条件
【表2】
【0060】
表3は、低k前駆体としてDEMIPS、DEMS(登録商標)及びMPSCPを使用する、k=3.2の誘電率を有する高密度の低k膜の比較を提供している。与えられる膜についての処理条件は、UV硬化などの後処理なしに、高い弾性率を得るように調節した。低炭素含有量の、先行技術のDEMS(登録商標)及びMPSCPベースの膜と比較して、DEMIPSベースの膜は、有意に高い弾性率(約+16~20%)を有する。さらに、DEMIPS膜は、DEMS(登録商標)ベースの膜と比較して、より高い炭素含有量(約+57%)、より低いSi(CH3)基の密度(約-20%)、及びより高いSiCH2Si基の密度(約+35%)を有する。さらに、DEMIPS膜は、MPSCPベースの膜と比較して、より低い炭素含有量(約-33%)、より低いSi(CH3)基の密度(約-41%)、及びより低いSiCH2Si基の密度(約-36%)を有する。このことは、本明細書において説明される式(1)又は式(2)のモノアルコキシシラン化合物をDEMIPSとして使用することの、類似の値の誘電率である高密度の低k誘電体膜を堆積するための他の先行技術の構造形成剤を使用することに対する、重要な利点を示していて、モノアルコキシシラン前駆体DEMIPSは、非常に高い弾性率、広い調節可能な範囲の炭素含有量、低いSi(CH3)基の密度、及び高いSiCH2Si基の密度を有する低k誘電体膜の堆積を可能とする。同じ値の誘電率について、DEMIPSベースの膜は、DEMS(登録商標)などの先行技術の前駆体ベースの膜よりも多い合計の炭素含有量を有し、かつMPSCPなどの先行技術の前駆体ベースの膜よりも少ない合計の炭素含有量を有する。このことは、先行技術のMPSCPベースの膜の非常に高い炭素含有量及び高いSi(CH3)密度は、最終的に、この種類の前駆体を使用して得ることができる最大の弾性率を制限するため、非常に重要な差異である。一方で、低い炭素含有量を有する膜をもたらすDEMS(登録商標)などの先行技術の前駆体は、炭素を、酸化物網目構造中に、SiCH2Siの代わりに、主にSi(CH3)基として組み込んでいて、従って、この種類の前駆体によって得ることができる最大の弾性率を制限している。さらに、低い炭素含有量の、DEMS(登録商標)などの先行技術の前駆体は、それらの低い炭素含有量のために、プラズマ誘起損傷(PID)に対する制限された抵抗性を有する。このことは、本明細書において説明される式(1)又は式(2)のモノアルコキシシラン化合物をDEMIPSとして使用することの、類似の値の誘電率である高密度の低k誘電体膜を堆積するための他の先行技術の構造形成剤を使用することに対する、別の重要な利点を示していて、モノアルコキシシラン前駆体DEMIPSは、DEMS(登録商標)などの先行技術の前駆体と比較して、より高い弾性率、及び予期される誘起損傷に対するより高い抵抗性を有する膜の堆積を可能とする。これは、DEMS(登録商標)などの先行技術の前駆体から堆積された膜に対する、DEMIPSベースの膜中の、より高い炭素含有量、より低いSi(CH3x基の密度、及びより高いSiCH2Si基の密度に起因する。実際に、高い弾性率、中度の炭素含有量、低いSi(CH3x密度、高いSiCH2Si密度の組み合わせは、MPSCPベースの膜はDEMIPSベースの膜よりも高い炭素含有量を有する低k膜の堆積をもたらすにも関わらず、MPSCPなどの先行技術の前駆体と類似のPIDに対する抵抗性を提供することが予期される。
【0061】
表3.高い弾性率を得るように調節した、3.2の誘電率を有する選択膜についての処理条件
【表3】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】